説明

NEMOオリゴマー化を妨害するように設計されたペプチドによるNF−κB活性化の選択的阻害

本発明は、NF-κBシグナル伝達経路を阻害するポリペプチド及び該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明は更に、本発明のポリペプチドをその必要がある患者に投与することにより、炎症応答、腫瘍形成、ウイルス感染の調整及び/又は治療;細胞増殖及びアポトーシスの調節;及び抗原刺激におけるB又はTリンパ球の調節をする方法を提供する。最後に、本発明は、NEMOのオリゴマー化を調整するポリペプチドを同定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NF-κBシグナル伝達経路を阻害するポリペプチド及びこのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明は更に、その必要がある患者に、本発明のポリペプチドを投与することによる、炎症応答、腫瘍形成、ウイルス感染の調整及び/又は治療方法;細胞増殖及びアポトーシスの調節方法;並びに抗原刺激におけるB又はTリンパ球の調節方法を提供する。最後に、本発明は、NEMOのオリゴマー化を調整するポリペプチドを同定する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
核因子-κB(Nuclear factor-κB)(NF-κB)シグナル伝達は、炎症応答、腫瘍形成、ウイルス感染、細胞増殖及びアポトーシスの調節に、並びにB及びTリンパ球の場合には抗原刺激(Ghosh, 1998, Annu. Rev. Immunol.;Karin, 1999, J. Biol. Chem.;Israel, 2000, Trends Cell Biol.;Santoro, 2003, EMBO J.)に関与する本質的なシグナルトランスダクション経路である。哺乳動物細胞では、ダイマー化する5つのNF-κBファミリーメンバーが存在する:RelA、RelB、c-Rel、NF-κB2/p100/p52及びNF-κB1/p105/p50。その優勢な形態がp50及びRelAサブユニットから構成されるヘテロダイマー転写因子であるNF-κBは、IκBとして知られるタンパク質の阻害ファミリーのメンバーとの結合を通じて細胞質中に隔離されて留まる。サイトカインTNF-α及びインターロイキン-1、エンドトキシン(LPS)、微生物及びウイルス感染による刺激に際して、炎症増強シグナルは、2つのキナーゼサブユニットIKKα/IKK-1及びIKKβ/IKK-2と構造/調節サブユニットNEMO/IKK-γとから構成されるタンパク質複合体である正準(canonical)IkBキナーゼ複合体(IKK)に集中する。一旦活性化されたIKK複合体はIkBタンパク質をリン酸化し、ユビキチン結合及びその後のプロテアソームによる分解をトリガーする。次いで、遊離NF-κBは核内に移動して遺伝子発現を開始又はアップレギュレートすることができる。IKKα及びIKKβは著しい構造的類似性(52%)を示すが、精巧な遺伝子研究により、これらはNF-κBの活性化の2つの経路に関与していることが示されている(Pomerantz, 2002, Mol Cell)。IKKβは古典的NF-κB複合体の活性化を担う炎症増強キナーゼである一方、IKKαは、NF-κB誘導キナーゼ(NIK)と結合して、非正準NF-κBシグナル伝達経路における本質的役割を演じる(Senftleben, 2001, Science)。IKKαはまた、ケラチノサイト分化において或る役割を演じるが、このプロセスはキナーゼ活性とは無関係である(Hu, 2001, Nature)。
【0003】
NEMOタンパク質(NF-κB必須モジュレーター;NF-κB essential modulator)は、NF-κB経路活性化において鍵の役割を演じる。NEMOタンパク質は、IKKα及びIKKβタンパク質キナーゼと結合して、IKK複合体と呼ばれる高分子量複合体となる。IKKキナーゼは、NEMOオリゴマー化の結果であると考えられている未知の機序でのリン酸化により活性化される(Agouら, 2004, J. Biol. Chem.)。NEMO欠損細胞は多くの刺激に対してNF-κBを活性化することができないので、NEMOタンパク質の存在はIKK活性化の基礎をなしている。NEMOは、大きなコイルドコイル(CC1)を含むN末端IKK結合ドメインから構成される。C末端ドメインはこのタンパク質の調節部分として機能する。この調節部分は、しばしば、多くの上流シグナル伝達分子又はウイルスタンパク質を連結する結合鋳型として報告されている(Ghosh, 1998, Annu. Rev. Immunol.; Santoro, 2003, EMBO J.)。興味深いことに、IP及びEDA-ID病理を担う変異が当該分子のこの部分に主として見出された(Doffinger, 2001, Nature Gen.; Zonana, 2000, Am. J. Hum. Genet.)。C末端ドメインは、2つの連続コイルドコイルモチーフCC2(残基246〜286)及びLZ(残基390〜412)を含む最小オリゴマー化ドメインとC末端のジンクフィンガーモチーフから構成される(Tegethoff, 2003, Mol. Cell Biol.; Agou et al., 2004, J. Biol. Chem.)。
【0004】
炎症増強刺激に対してIKKの活性化をトリガーする生化学的機序は不明のままである。活性化T-ループ中の2つのセリン残基に対するリン酸化がIKKβの活性化を誘導することが証明されている。しかし、このリン酸化事象を導く機序は依然として不明である。1つの可能性のある機序は、NEMOオリゴマー化により誘導されるキナーゼのコンホメーション変化からなる(Agouら、2004, J. Biol. Chem.)。オリゴマー状態のこの変化は、トランス-自己リン酸化(trans-auto-phosphorylation)の機序によりT-ループ活性化を誘導し得る(Zandi, 1997, Cell; Tang, 2003, J. Biol. Chem.)。IKK活性化におけるNEMOオリゴマー化の役割と一致して、最小オリゴマー化ドメイン中の変異は、多くの刺激に対するNEMO欠損細胞活性化において、遺伝子相補によりNF-κBをレスキューできなかった。更に、NEMOの強化したオリゴマー化は、IKK複合体の完全な活性化を導く(Inohara, 2000, J. Biol. Chem.; Poyet, 2000, J. Biol. Chem.; Poyet, 2001, J. Biol. Chem.)。最近、TNF-αに応答するNEMOのリン酸化及びユビキチン結合が報告されている(Carter, 2001, J. Biol. Chem.; Trompouky, 2003, Nature; Kovalenko, 2003, Nature)。しかし、これらNEMO改変は、未だに、幾つかの炎症増強刺激に応答してIKK複合体を活性化する決定的な段階として証明されていない。
【0005】
NF-κB活性化の阻害は、新たな抗炎症薬及び抗ガン薬の開発の特権的な標的を構成する(May, 2000, Science; Poulaki, 2002, Am J Pathol.)。NF-κBシグナル伝達経路における多くのタンパク質の動作主の中で、IKK複合体は、新たな特異的NF-κB阻害剤の発見について最も見込みのある分子標的の1つを代表する。インビボで起こり得る毒性効果を最小化するため、治療的成功は、NF-κB活性の基礎レベルを改変することなく活性化シグナルを遮断するNF-κB阻害剤の能力に大きく依存する。Mayらは、IKKキナーゼとの構成性NEMO相互作用を妨害することにより炎症増強性NF-κB活性化を特異的に遮断する細胞透過可能なペプチド性阻害剤を記載した(May, 2000, Science; May, 2002, J. Biol. Chem.)。タンパク質の機能を変化させるペプチドの合理的な設計によりタンパク質-タンパク質相互作用を調整することは、特には可撓性でダイナミックな結合特性を示すシグナル伝達タンパク質(Pawson, 2003, Science)を用いる、新たなクラスの治療薬の基礎研究及び開発の両方に重要なツールを提供する(Souroujon, 1998, Nat Biotechnol.)。ペプチドモジュレーターの多くの研究が文献に記載されており、そこでは、ペプチドは、局在化(トランスロケーション)(Lin, 1995, J. Biol. Chem.)、レセプターへの動員(recruitment)(Chang, 2000, J. Biol. Chem.)、分子内相互作用(Souroujon, 1998, Nat Biotechnol.)及びオリゴマー化(Judice, 1997, P.N.A.S.)と干渉することによりタンパク質機能を媒介する。後者では、種々のペプチドでのHIV-1 gp41融合タンパク質の阻害は、概念の明確な証明を提供している(総説についてはChan, 1998, Cell and Eckert, 2001, Ann. Rev. Biochem.を参照).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NF-κB活性化の阻害は新たな抗炎症薬及び抗ガン薬の開発のための所望の標的を提供するというこの理論の下、本発明者らは、候補の抗炎症薬及び抗ガン薬を見出すこと、及びそれらをスクリーニングする方法を提供することを目指した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
NF-κBシグナル伝達経路の調節及び/又は阻害に有用であるNEMO由来ポリペプチドを提供することが本発明の目的である。
この目的のため、本発明は、NF-κBシグナル伝達経路を阻害するNEMO由来ポリペプチドを提供する。
【0008】
本発明1つの実施形態において、NEMO由来ポリペプチドはCC2ドメイン(マウス:配列番号3又はヒト:配列番号14)である。
本発明の別の実施形態において、NEMO由来ポリペプチドはLZドメイン(マウス:配列番号7又はヒト:配列番号16)である。
本発明の好ましい実施形態において、NEMO由来ポリペプチドは、スペーサー配列を介して高トランスダクション能を有するポリペプチドに融合されている。
【0009】
更に、本発明の別の実施形態は、スペーサー配列及び高トランスダクション能を有するポリペプチドを伴うか又は伴わないNEMO由来ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
本発明のなお別の実施形態は、その必要がある患者にNEMO由来ポリペプチドを投与することにより、NF-κBシグナル伝達経路により調節される障害を調整するか又は治療する方法である。NF-κBシグナル伝達経路により調節される障害としては、炎症応答、腫瘍形成、及びウイルス感染が挙げられる。
【0010】
本発明はまた、その必要がある患者にNEMO由来ポリペプチドを投与することにより、細胞増殖又はアポトーシスを調節する方法を提供する。
本発明の更に別の実施形態は、その必要がある患者にNEMO由来ポリペプチドを投与することにより、抗原刺激においてB又はTリンパ球を調節する方法である。
【0011】
本発明のなお別の実施形態において、本発明は更に、
a)候補ポリペプチド配列を同定すること;
b)候補ポリペプチド配列を高トランスダクション能を有するポリペプチドにスペーサー配列を介して連結することによりポリペプチド融合構築物を作成すること;
c)細胞培養物をポリペプチド融合構築物と接触させること;及び
d)NF-κBシグナル伝達経路の活性をモニターすること;
e)ポリペプチド融合構築物の存在下でのNF-κBシグナル伝達経路の活性をポリペプチド融合構築物の非存在下でのNF-κBシグナル伝達経路の活性と比較して、ポリペプチド融合構築物による相対的阻害を決定すること;及び
f)ポリペプチド融合構築物による相対的阻害をNEMOオリゴマー化と相関させること
によりNEMOのオリゴマー化を調整するポリペプチドを同定する方法を提供する。
【0012】
上記目的は本発明の特定の観点を強調する。本発明の更なる目的、観点及び実施形態は、以下の発明の詳細な説明に見出される。
本発明のより完全な理解及び本発明の多くの付随する利点は、下記の詳細な説明と併せて、以下の図面を参照することでより十分に理解できるので、容易に認識できる。
【0013】
図1:NEMOタンパク質の機能的ドメイン
(A)マウスNEMOタンパク質は412アミノ酸を含有し、N末端IKK結合ドメイン及びオリゴマー化ドメインを含む複数のドメイン、プロリンリッチモチーフ(PPP)及びC末端のジンクフィンガーモチーフ(ZF)を含有する。Wolfら(1997, Protein Sci.)により開発されたアルゴリズムを用いるコイルドコイル予測(白抜き箱)及びNLM保存モチーフ(黒塗り横棒)が示されている。二番目のコイルドコイル(CC2)及びロイシンジッパー(LZ)モチーフに対応するNEMO253-337の配列(配列番号12の残基253〜337)が示されている。このNEMO253-337配列が、NEMOオリゴマー化に必要な全ての決定基を含有する(Agouら、2004, J. Biol. Chem.)。NLM保存モチーフ(配列番号12の残基293〜322)に下線を付し、コイルドコイル配列を配列の下に円筒として示している。配列のすぐ上の文字は、コイルドコイル配列の鍵となる特徴である(Vinson, 2002, Mol. Cell. Biol.)ヘプタドリピート(heptad repeat)の「a」位及び「d」位を示す。
【0014】
(B)ハツカネズミ(Mus musculus)(Mm)、ヒト(Homo sapiens)(Hs)、ウシ(Bos taurus)(Bt)及びキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(Dm)に由来するNEMOタンパク質の複数配列アラインメント。NEMO様モチーフ(NLM)が異なる種のNRP/オプチニューリン(optineurin)、ABIN-1/Naf 1、ABIN-2及びABIN-3/LINDで共有されていることを示す(それぞれ配列番号19〜29)。複数配列アラインメントは、PSI-BLASTで作成した最高スコアの配列セグメント対を解析し、CLUSTAL Wを用いてそれら配列を再度整列させることにより構築した(Thompson, 1994, N.A.R.)。同一アミノ酸残基及び類似アミノ酸残基(影付)をそれぞれ(!)又は(*)で示す。
【0015】
図2:NEMOペプチド取り込みのフローサイトメトリー分析
(A)アンテナペディアペプチドとの共役により媒介されるNEMOペプチドの細胞送達。70Z/3細胞を2時間37℃にて、示されるように2μMのBODIPYタグ化Ant-CC2野生型(WT)若しくはAnt-CC2変異体(Mu)又はAnt-LZ野生型(WT)若しくはAnt-LZ変異体(Mu)ペプチドの非存在下(W/O)又は存在下で、或いは2μMのBODIPY共役BSA(BODIPY-BSA)又はBODIPY-FL単独に対応するコントロールと共に、インキュベートした。
【0016】
(B)70Z/3-C3細胞における37℃にて5時間の0、0.2、2及び20μM Ant-CC2のアンテナペディア媒介取り込みの濃度依存性(左パネル)、並びに37℃の20μM Ant-CC2の添加後0、0.5、1、2又は5時間のBODIPY共役Ant-CC2のFACS動力学的分析。
【0017】
図3:細胞透過可能なAnt-CC2及びAnt-LZペプチドによるLPS誘導NF-κB活性化の阻害。
(A)70Z3リンパ球Bを、NF-κBの制御下にβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を有するpIL1-β-ガラクトシダーゼで安定にトランスフェクトした(「材料及び方法」を参照)。得られる細胞株70Z3-C3を、20μMのアンテナペディアペプチド(Ant)、又はBODIPY標識アンテナペディアペプチド(BODIPY-Ant)、又はCC2ペプチド若しくはLZペプチドにカップリングしたBODIPY標識アンテナペディアペプチド(BODIPY-Ant-CC2若しくはBODIPY-Ant-LZ)の非存在下又は存在下で2時間インキュベートした。ペプチドインターナリゼーション後、細胞を、LPSで5時間処理するか(3μg/ml、左パネル中の(+))又は処置しなかった(右パネル及び左パネル中の(-))。NF-κB活性をβ-ガラクトシダーゼアッセイにより測定した。エラーバーは3つの別個の実験の標準偏差を表す。
【0018】
(B)BODIPY-Ant-CC2ペプチド(左パネル)又はBODIPY-Ant-LZペプチド(右パネル)によるLPS誘導NF-κB活性化の阻害の濃度依存性。細胞を、示されるような異なる濃度のペプチドで(a)と同様に処理した。LPS誘導NF-κB活性化を阻害する各ペプチドの能力を、コントロール(ペプチドなし)(c)と比較してLPS誘導NF-κB活性化の50%阻害に対応するIC50値を決定することにより測定した。
【0019】
(D)NF-κB活性化の阻害に対するアンテナペディアのN融合配列の効果。コントロール(ペプチドなし)、又はN末端にアンテナペディア配列を有するCC2若しくはLZペプチド(BODIPY-ANT-CC2、BODIPY-ANT-LZ)又は有しないCC2若しくはLZペプチド(CC2、LZ)を、70Z3-C3細胞と2時間インキュベートし、続いて3時間のLPS-処理をしたか(+)又はしなかった(-)。次いでNF-κB活性をβ-ガラクトシダーゼアッセイにより測定した。
【0020】
図4:LPSに対するNF-κB活性化の特異的阻害は、CC2及びLZコイルドコイルの疎水性コア中の少数の変異に依存する。
左パネルは、CC2(a)及びLZ(b)ペプチドのヘリカルホイール図(helical wheel diagram)を示す。この図は分子の上からの図である。コイルドコイル配列の本質的特徴である(Vinson, 2002, Mol. Cell. Biol.)(a)位〜(g)位は、各ペプチド配列中での連続位置を表す。一般的には疎水性アミノ酸により占められている最初の(a)位及び4番目の(d)位は、平行及び逆平行のコイルドコイルの疎水性コアを構成する。CC2変種(BODIPY-Ant-CC2(Mu);配列番号5の残基6〜40に対応する、グリシン変異を有する配列番号3の残基6〜40として示される)の(a)位又はLZ変種(BODIPY-Ant-(Mu))の(d)位に導入された変異が示されている。
【0021】
右パネルでは、70Z3-C3細胞を、10μMの細胞透過可能な野生型CC2ペプチド(BODIPY-Ant-CC2(WT))若しくは変異体CC2ペプチド(BODIPY-Ant-CC2(Mu))(A)、又は野生型LZペプチド(BODIPY-Ant-LZ(WT))若しくは変異体LZペプチド(BODIPY-Ant-(Mu))(B)の存在下又は非存在下(コントロール)に2時間インキュベートした。次いで、細胞を広範に洗浄して、インターナライズされなかった過剰のペプチドを除去した。次いで細胞を3倍に希釈し24時間増殖させ、その後LPSで5時間処理したか(+)又はしなかった(−)。NF-κB活性をβ-ガラクトシダーゼアッセイで測定した。エラーバーは2つの独立実験の標準偏差を表す。
【0022】
図5:LZペプチドによるNF-κB活性化の阻害は、特異的コイルドコイル鎖の形成を通じて起こる。
(A)NEMO由来LZペプチド(配列番号12の残基301〜336)及びGCN4ペプチド(配列番号8の残基23〜-55)の配列アラインメント。両コイルドコイルモチーフを、clustalXを用いて整列させた。同一及び類似のアミノ酸残基(影付き)をそれぞれ(!)又は(*)により示す。(B)GCN4コイルドコイルの概観及びヘリカルホイール図(上面図)。GCN4のアミノ酸配列はその対応する[a〜g]位と共に示し、対応のNEMO由来LZ配列と異なる残基を、保存の程度に従って囲っている。同一残基(白抜き四角)及び類似残基(白抜き三角)を示す。(C)LPS誘導NF-κB活性化の阻害についての細胞透過可能なNEMO由来LZペプチドとGCN4ペプチドとの比較。70Z3-C3細胞を、10μMのアンテナペディア融合LZペプチド(BODIPY-Ant-LZ)又はGCN4ペプチド(BODIPY-Ant-GCN4)の存在下又は非存在下(ペプチドなし)で2時間インキュベートした。次いで、細胞を広範に洗浄して、インターナライズしなかった過剰のペプチドを除去し、3倍に希釈して24時間の増殖を促進にした後、5時間LPSで処理するか(+)又は処理しなかった(−)。NF-κB活性を、β-ガラクトシダーゼアッセイを使用して測定した。エラーバーは、2つの独立実験の標準偏差を表す。
【0023】
図6:アンテナペディア配列を伴うか又は伴わないNEMO由来ポリペプチドのオリゴマー化特性
全てのペプチドを、0.1mM DDMを含有する緩衝液中で平衡化したsuperdex 75 HR10/30カラム上に10μM濃度で負荷して回収を向上させた(「材料及び方法」を参照)。左パネルには、アンテナペディア配列に融合したCC2変異体(破線)及びCC2野生型(実線)(BODIPY-Ant-CC2(WT)、BODIPY-Ant-CC2(Mu))又は融合していないCC2変異体(破線)及びCC2野生型(実線)(CC2(WT)、CC2(Mu))のクロマトグラフプロフィールを示す。右パネルには、アンテナペディア配列に融合したLZ変異体(破線)及び野生型(実線)(BODIPY-Ant-LZ(WT)、BODIPY-Ant-LZ(Mu))又は融合していないLZ変異体(破線)及び野生型(実線)(LZ(WT)、LZ(Mu))の溶出プロフィールを示す。球状タンパク質マーカーの溶出容積を矢印で示す:Oval、オボアルブミン(43kDa);Chym、キモトリプシノゲンA(25kDa);Ribo、リボヌクレアーゼ(13.4kDa)及びApro、アプロチニン(6.5kDa)。
【0024】
図7:CC2ペプチドとのAnt-CC2及びAnt-LZペプチドの結合
(A)蛍光異方性によるCC2でのBODIPY-Ant-CC2(1μM)の直接滴定。CC2の濃度をアミノ酸分析により決定した。BODIPY-Ant-CC2異方性値を、ミリ単位(mA)で、CC2ペプチドの漸増濃度に対してプロットした。データ点は15.2μMのKDを有する結合等温式(実線)にフィットした(材料及び方法)。2つの破線は化学量論的滴定を表し、16μMのCC2濃度で交差する。1μM濃度のBODIPY-Ant-CC2とすれば、これは0.8の複合化学量論を与える。(B)蛍光異方性によるCC2でのBODIPY-Ant-LZ(0.1μM)の直接滴定。BODIPY-Ant-LZの単独(白色バー)又はCC2ペプチドの存在下(30μM、灰色バー;100μM、黒色バー)での異方性値をミリ単位(mA)で与える。
【0025】
図8:Ant-CC2及びAnt-LZペプチドにより網膜芽細胞腫細胞株Y79において誘導される細胞死
Rb細胞株Y79を、種々の濃度のAnt-CC2(WT)(黒塗り四角)又はAnt-CC2(Mu)(白抜き四角)(A)、或いはAnt-LZ(WT)(黒塗り丸)又はAnt-LZ(Mu)(白抜き丸)(B)、或いはAntペプチド(白抜き三角)(C)で、3時間(A、B)又は16時間(C)処理した。次いで、細胞の生存を、「材料及び方法」に記載されるようにMTSアッセイを用いて評価した。
【0026】
特に定義がない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語及び科学用語は、酵素学、生化学、細胞生物学、分子生物学及び医科学における当業者により通常理解される意味と同じ意味を有する。
本明細書中で記載したものと類似又は等価の全ての方法及び材料が、本発明の実施又は試験に使用することができる。適切な方法及び材料は本明細書中に記載されている。本明細書中で言及する全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参照としてその全体が組み込まれる。矛盾する場合には本明細書(定義を含む)に従う。更に、材料、方法及び例は単なる例示であり、特に断らない限り、限定する意図はない。
【0027】
本出願において、本発明者らは、NEMOオリゴマー化を妨害するように設計されたペプチドによるNF-κB活性化の阻害を研究した。本発明者らは、以前に、最小トリマー化ドメインがCC2-LZコイルドコイルサブドメインを含んでなること及び単離及び/又は精製したCC2及びLZドメインが互いに結合してヘテロダイマーの安定なトリマーを形成することを示した。この構造モデルは、HIV-1のgp41外部ドメイン(ectodomain)のフォールディングを連想させる(Agouら、2004, J. Biol. Chem.)。これは、NEMOのC末端部に由来するLZヘリカルモチーフ(CC2コイルドコイルの外側の周りに逆平行様式で束ねられている(packed))に取り囲まれている中央の三重鎖コイルドコイル(NEMOのCC2コイルドコイルモチーフにより形成される)からなる。このモデルに基づいて、本発明者らは、NEMOサブユニット間の接触領域を模倣するCC2又はLZサブドメインの最適な部分に対応する2つの細胞透過可能ペプチドを合理的に設計した。ペプチドトランスダクションをFACSによりモニターし、LPS誘導NF-κB活性化に対するそれらの効果を、安定にトランスフェクトしたpre-B 70Z/3リンパ球において、NF-κB依存β-ガラクトシダーゼアッセイを用いて定量化した。本発明者らはまた、LZペプチド、及びより少ない程度ではあるがCC2ペプチドも、μM範囲のIC50値でNF-κB活性化を特異的に阻害することを証明した。変異CC2及びLZペプチド並びに異種コイルドコイルペプチド(GCN4)を含むコントロールペプチドが、NF-κB活性化に対して阻害効果を有さなかったので、この効果は特異的であった。更に、本発明者らは、これらNF-κBペプチド性阻害剤が、構成的なNF-κB活性を示すヒト網膜細胞腫細胞株Y79において細胞死を引き起こしたことを示した。まとめると、本発明者らは、NEMOのオリゴマー化を標的することによりNF-κB経路を阻害するための新規で見込みのあるストラテジーを提供する。
【0028】
本発明者らは、NEMOが、NF-κB活性化経路から上流で作用するので、NF-κBシグナル伝達経路を阻害する薬物の探索に好ましい標的を構成することを証明した。NEMO及びその種々のドメインの役割は、以下の論文で部分的に研究され発表された:「NEMO trimerizes through its coiled-coil C-terminal domain.」 J Biol Chem, 2002 May 17;277(20):17464-75(Agou F.ら、これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0029】
本発明において、本発明者らは、オリゴマー化ドメイン(CC2ドメイン=約40残基)又はLZモチーフ(LZドメイン=約40残基)のいずれかを模倣するペプチドを合成した。これらペプチドの組合せは、NEMOのオリゴマー化又はNEMOのタンパク質エフェクターとの結合のいずれかを変化させ、両方の場合でNF-κB経路を阻害する。
【0030】
本発明の或る観点では、ペプチド薬物は、16アミノ酸長のペプチド(ペネトラチン(penetratin)/アンテナペディア)と化学的に結合させ、そのことによりその細胞内輸送を可能にされる。得られるペプチドはまた、FACSによりBリンパ球細胞株中へのインターナリゼーションをモニターするために、蛍光トレーサーと化学的にカップリングさせ得る。
これらペプチドの作用を、β-ガラクトシダーゼキャリア遺伝子が安定に組み込まれており、そのプロモーターの上流に幾つかのNF-κB転写因子(クローンC3)活性化部位もまた有するBリンパ球で直接試験した(下記の実施例を参照)。
【0031】
本発明者らは、LPSによるBリンパ球の刺激後に同様に測定することによって、これらのペプチド阻害効果をモニターすることに成功した。
全体の結果より、「CC2」モチーフを模倣するペプチドの存在は、20μMの比較的低用量で、コントロールペプチドと比較して、NF-κB活性を70%低減することが明らかになる。この濃度の「ロイシンジッパー」ペプチドの効果は、培地中に存在することにより細胞応答が完全に除去されるので、なおさら顕著である。
【0032】
NF-κB細胞シグナル伝達経路のこれら新たな阻害剤は、抗炎症化合物として、また抗腫瘍化合物として大きな利点を提供する。これらは、ガン及び他の障害の治療及び/又は予防に使用され得る。
【0033】
本発明は、NEMOのオリゴマー化を調整するために使用される化合物、ペプチド又は組成物に関する。詳細には、本明細書中下記に記載のペプチド化合物は、単離及び/又は精製された形態、或いはベクター化剤(vectorizing agent)とカップリングされたか又はされていない形態であり得る。本発明はまた、そのホモログが阻害活性を保有する限り、NEMO由来ポリペプチドと少なくとも70%相同性を有するペプチドを包含すると理解されるべきである。NEMO由来ポリペプチド及びそのホモログの阻害活性を評価する方法は、下記に提供され、本願実施例に例示される。本発明のペプチド及びその用量は、NF-κB活性がコントロールペプチドと比較して少なくとも50%低減する場合に阻害活性を保有すると見なされる。
【0034】
本発明はまた、特には炎症応答、腫瘍形成、ウイルス感染を治療するため、細胞増殖及びアポトーシスを調節するため、並びに抗原刺激を調節するために使用する医薬の製造のための、該ペプチドを含有する医薬組成物に関する。好ましい実施形態では、該ペプチドを含有する医薬組成物は、ガンの治療に有用である。
【0035】
特に2003年4月1日にCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(28 rue du Docteur Roux, 75724 PARIS Cedex 15, France)に番号I-3004で寄託された70Z/3-C3細胞株を用いて、NF-κBシグナル伝達経路を阻害するペプチド及び化合物を取得、製造及び同定する方法もまた、本発明に包含される。
【0036】
本明細書で使用する用語「低減」又は「阻害」は、NF-κB経路中の1又はそれより多い酵素の細胞内活性を直接又は間接のいずれかで減少させることを意味する。句「NF-κB経路を阻害する」は、好ましくは、NF-κB経路がNEMOオリゴマー化の妨害によって阻害されることを意味する。
【0037】
本明細書中で使用する用語「増強」は、NEMO由来ペプチド(対応DNAによりコードされる)の細胞内活性又は濃度を増大させることを意味する。増強は、細菌細胞の種々の操作を用いて達成することができる。増強(特に過剰発現)を達成するためには、対応遺伝子のコピー数を増加させることができ、強力プロモーターを使用することができ、又は、構造遺伝子の上流に位置するプロモーター領域及び調節領域又はリボソーム結合部位を変異させることができる。構造遺伝子の上流に組み込まれた発現カセットは同様に作用する。加えて、誘導性プロモーターを用いることにより、発現を増大させることが可能である。高い活性を有する対応酵素をコードする遺伝子もまた使用することができる。発現はまた、mRNAの寿命を延長するための手段により向上させることができる。更に、酵素の分解を防ぐことにより全体として酵素活性が増大する。更に、これらの手段はまた、随意に、任意の所望の様式で組み合せることができる。植物において遺伝子活性を変化させるためのこれらの方法及び他の方法は、例えばMethods in Plant Molecular Biology, Maligaら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1995)に記載されるように、公知である。
【0038】
NF-κB経路を阻害する高い活性を有する対応するか又は変種のNEMO由来ペプチドをコードする遺伝子もまた使用することができる。好ましくは、対応酵素は、天然型形態のNEMOタンパク質より大きなNF-κB経路を阻害する能力を有し、より好ましくは少なくとも5、10、25%又は50%大きい阻害の範囲で該能力を有する。最も好ましくは、本発明のNEMO由来ペプチドは、NF-κB経路を、天然型NEMOタンパク質の存在下での該経路と比べて少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%低減させる。
【0039】
本出願に関しては、ポリヌクレオチド配列は、その塩基組成及び塩基配列の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%が本発明による配列に対応する場合、本発明による配列と「相同」である。本発明によれば、「相同タンパク質」又は「相同ペプチド」は、その少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%が、マウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)のアミノ酸配列に、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含有するタンパク質(ペプチド)を含んでなると理解されるべきである。ここで、「対応する」は、対応アミノ酸が同一アミノ酸であるか又は相互に相同なアミノ酸であるかのいずれかであることを意味すると理解されるべきである。本発明の実施例より明らかなように、CC2の相同ペプチドは好ましくはコイルドコイルモチーフ構造を保持し、LZの相同ペプチドは好ましくはヘリカルモチーフ構造を保持することが更に理解されるべきである。配列番号3、配列番号7、配列番号14及び配列番号16の同定及び下記の実施例中の詳細な説明により提供されるガイダンスにより、本発明の範囲内の理論的変異のスクリーニングには、当業者の技術水準を超えるものは何も必要としない。より具体的には、当該分野において慣用であるように、候補配列(すなわち、配列番号3、配列番号7、配列番号14及び配列番号16に対応する領域)の同定により、当業者は、1つ又は全てのあり得る順列(permutation)をアッセイ及びスクリーニングして、同一の又はより良好な治療効力を保有する変異体を同定する。
【0040】
表現「相同アミノ酸」は、特に電荷、疎水性状、立体特性などに関して、対応する性質を有するものをいう。
【0041】
ヌクレオチド又はアミノ酸配列の相同性、配列類似性又は配列同一性は、従来どおり、公知のソフトウェア又はコンピュータプログラム、例えばBestFit又はGapペアワイズ比較プログラム(GCG Wisconsin Package, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin 53711)を用いることにより決定され得る。BestFitは、Smith and Watermanの局所相同性アルゴリズム(Advances in Applied Mathematics 2: 482-489 (1981))を使用して、2つの配列間で同一性又は類似性の最良セグメントを見出す。Gapは全体アラインメントを実行する:Needleman and Wunschの方法(J. Mol. Biol. 48:443-453 (1970))を使用して或る配列を全てについて別の類似配列の全てと整列させる。BestFitのような配列アラインメントプログラムを使用して、配列相同性、類似性又は同一性の程度を決定する場合、初期設定を使用してもよく、或いは同一性、類似性又は相同性スコアを最適化するために適切なスコア付けマトリクスを選択してもよい。同様に、BestFitのようなプログラムを使用して、2つの異なるアミノ酸配列間の配列同一性、類似性又は相同性を決定する場合、初期設定を使用してもよく、或いは同一性、類似性又は相同性スコアを最適化するために、blosum45又はblosum80のような適切なスコア付けマトリクスを選択してもよい。
【0042】
本発明はまた、マウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)を、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)を、或いはそれらのフラグメントをコードするポリヌクレオチド、及びマウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域配列番号7)を、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)を、或いはそれらのフラグメントをコードするポリヌクレオチドの配列を含有するプローブとの対応する遺伝子バンクのハイブリダイゼーションを用いてスクリーニングすることにより取得することができるポリヌクレオチド、及びこれらDNA配列の単離に関する。
【0043】
本発明によるポリヌクレオチド配列は、マウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)を、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)を、或いはそれらのフラグメントをコードする配列との高い程度の類似性を示すcDNA又は遺伝子を同定するための、RNA、cDNA及びDNAのハイブリダイゼーションプローブとして適切である。
【0044】
本発明によるポリヌクレオチド配列はまた、NF-κB経路を阻害する能力を有するNEMO由来ポリペプチドをコードするDNAの製造のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用プライマーとして適切である。
【0045】
これらのようなオリゴヌクレオチドは、プローブ又はプライマーとして働くが、30より多い、好ましくは30まで、より好ましくは20まで、最も好ましくは少なくとも15の連続ヌクレオチドを含有することができる。少なくとも40又は50ヌクレオチドの長さを有するオリゴヌクレオチドもまた適切である。
【0046】
用語「単離及び/又は精製」は天然の環境から分離されることを意味する。
用語「ポリヌクレオチド」は、一般には、ポリリボヌクレオチド及びポリデオキシリボヌクレオチドをいい、未改変のRNA又はDNA或いは改変したRNA又はDNAを示すことができる。
用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して結合している2又はそれより多いアミノ酸を含有するペプチド又はタンパク質を意味すると理解されるべきである。
【0047】
本発明によるポリペプチドは、マウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)に、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)に、或いはそれらのフラグメントに対応するポリペプチド、特にNF-κB経路を阻害する生物学的活性を有するものを包含し、またその少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%が、マウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)に、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)に、或いはそれらのフラグメントに対応するポリペプチドと相同であるもの、最も好ましくはマウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)に、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)に、或いはそれらのフラグメントに対応するポリペプチドと少なくとも90%〜95%の相同性を示すものであって当該活性を有するものを包含する。
【0048】
本発明はまた、遺伝子コードの縮重により、マウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)を、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)を、或いはそれらのフラグメントをコードするコードDNA配列に関する。当業者は、上記DNA配列がマウス由来NEMOの全長DNA配列(配列番号11)及びヒト由来NEMOの全長DNA配列(配列番号17)に基づいてもよく、このことにより、これら配列が本発明に従ってこれら配列の範囲を確認するために使用されてもよいことを理解する。
【0049】
同様に、本発明は更に、マウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)を、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)を、或いはそれらのフラグメントをコードするDNA配列とハイブリダイズするDNA配列に関する。
【0050】
更に、当業者はまた、当該タンパク質の活性に基本的な変化を生じない(すなわち機能的に天然である)「センス変異」として、タンパク質中の保存アミノ酸置換、例えばアラニンによるグリシンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換に気付く。タンパク質のN末端及び/又はC末端での変化はその機能を実質的に損なわず、当該機能を安定化さえし得ることもまた知られている。
【0051】
同様に、本発明はまた、マウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)を、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)を、或いはそれらのフラグメントをコードするDNA配列とハイブリダイズするDNA配列に関する。本発明はまた、マウス由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号3)又はNEMOのLZ領域(配列番号7)を、ヒト由来NEMOの場合にはNEMOのCC2領域(配列番号14)又はNEMOのLZ領域(配列番号16)を、或いはそれらのフラグメントをコードするDNA配列から得られるオリゴヌクレオチドプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により製造されるDNA配列に関する。この型のオリゴヌクレオチドは、代表的には、少なくとも15ヌクレオチドの長さを有する。
【0052】
用語「ストリンジェントな条件」又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ポリヌクレオチドが、他の配列より検出可能に高い程度に(例えばバックグランドに対して少なくとも2倍)、その標的配列とハイブリダイズする条件への言及を含む。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる状況では異なる。ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、プローブに100%相補である標的配列を同定することができる(相同プロービング)。或いは、ストリンジェンシー条件は、配列中に幾つかのミスマッチを許容し、その結果より低い程度の類似性が検出されるように適合させることができる(非相同プロービング)。
【0053】
代表的には、ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3にて、塩濃度が約1.5M Naイオン未満、代表的には約0.01〜1.0M Naイオン濃度(又は他の塩)であり、温度が短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)に関しては少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば50ヌクレオチドより大きい)に関しては少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、不安定化剤、例えばホルムアミドの添加で達成し得る。例示の低ストリンジェンシー条件は、30〜35%のホルムアミド、1M NaCl、1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の37℃の緩衝液溶液でのハイブリダイゼーション、及び50〜55℃の1×〜2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)中での洗浄を含む。例示の中程度のストリンジェンシー条件は、37℃にて40〜45%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中のハイブリダイゼーション、及び55〜60℃にて0.5×〜1×SSC中の洗浄を含む。例示の高ストリンジェンシー条件は、37℃にて50%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中のハイブリダイゼーション、及び60〜65℃にて0.1×SSC中の洗浄を包含する。
【0054】
特異性は、代表的には、ハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、重要な因子は最終の洗浄溶液のイオン強度及び温度である。DNA--DNAハイブリッドに関しては、TmはMeinkoth and Wahl(Anal. Biochem., 138:267-284(1984))の式から近似することができる:Tm=81.5℃+16.6(log M)+0.41(%GC)−0.61(% form)−500/L;式中、Mは一価カチオンのモル数、%GCはDNA中のグアノシン及びシトシンヌクレオチドのパーセンテージ、% formはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージ、Lは塩基対中のハイブリッドの長さである。Tmは、(規定されたイオン強度及びpHの下で)相補標的配列の50%が完全適合プローブにハイブリダイズする温度である。Tmは、1%がミスマッチングであるごとに約1℃下がる。このため、Tm、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件は、所望の同一性の配列にハイブリダイズするように適合させることができる。例えば、約90%の同一性を有する配列を探索する場合、Tmは10℃下げることができる。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度及びpHでの特異配列とその相補物との熱融解温度(Tm)より約5℃低く選択される。しかし、厳格にストリンジェントな条件は、熱融解温度(Tm)より約1、2、3又は4℃低い温度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を使用することができ;中程度のストリンジェントな条件は、熱融解温度(Tm)より約6、7、8、9又は10℃低い温度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を使用することができ;低いストリンジェンシー条件は、熱融解温度(Tm)より約11、12、13、14、15又は20℃低い温度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を使用することができる。上記式、ハイブリダイゼーション及び洗浄組成物、及び所望のTmを使用して、当業者は、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄溶液のストリンジェンシーのバリエーションが固有的に記述されることを理解する。所望の程度のミスマッチが45℃(水溶液)又は32℃(ホルムアミド溶液)より低いTmを生じる場合、より高い温度が使用できるようにSSC濃度を増加させることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範なガイドは、Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 2, Ausubelら編, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York (2000)に見出される。
【0055】
このように、上記情報を用いて、当業者は、本ポリヌクレオチドに実質的に類似するポリヌクレオチドを同定、単離及び/又は精製することができる。このように単離したポリヌクレオチドは、例えばNF-κB経路を阻害することにおいて、本発明のポリヌクレオチドとして使用することができる。
【0056】
本発明の1つの実施形態は、本発明のポリヌクレオチドに実質的な相同性を有するポリヌクレオチドについて、好ましくはNF-κB経路を阻害する能力を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドについて、スクリーニングする方法である。
【0057】
本発明のポリヌクレオチド配列は、植物などの当該分野において公知の1又はそれより多い適切なプラスミドベクター上に保有させることができる。
【0058】
1つの実施形態において、その細胞型に適切なベクターを用いて細菌又は真菌系統中に保有させることがポリヌクレオチドを増殖させるために有利であり得る。これら細胞型中でポリヌクレオチドを増殖させ、タンパク質を産生させる通常の方法は、当該分野において公知であり、例えばManiatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1982)、及びSambrookら Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1989)に記載されている。
【0059】
上記実施形態は、配列番号3(NEMOタンパク質のCC2領域;すなわち配列番号12のアミノ酸246〜286)及び配列番号7(NEMOタンパク質のLZ領域;すなわち配列番号12のアミノ酸390〜412)に関して記載されている。ここで、配列番号12はマウス由来NEMOである。上記実施形態は、配列番号18(ヒト由来NEMO)に由来する配列番号14及び配列番号16に基づいて更に記載されている。しかし、本発明は、好ましくは、真核細胞中にインターナライズされ得るNEMOタンパク質のペプチド誘導体を提供することが理解される。NEMOペプチド誘導体のインターナリゼーションは、NEMOペプチド誘導体又はそのホモログを高トランスダクション能を有するポリペプチドと融合することにより付与され得る。当業者は、本明細書中で使用する用語「高トランスダクション能」が、ポリペプチド及びその融合タンパク質が細胞膜を容易に横断し、細胞環境中への融合ペプチドのインターナリゼーションを生じることを意味することを容易に理解する。高トランスダクション能を有するペプチドの例としては:アンテナペディア/ペネトラチンタンパク質(Ant)(Prochiantz, 2000,Curr. Opin. Cell Biol.)、の第3ヘリックス、TAT由来ペプチド(Fawel, 1994, P.N.A.S.)、HSV-1由来のVP22(Stroh C. 2003, Oncogene)、Pep.1(Morris, 2001, Nature Biotech.)が挙げられる。
【0060】
本発明及びその利用を例示するため、本発明者らは、短いSKGMQリンカー(配列番号9)又はLKAQADIリンカー(配列番号10)より分離されたインターナリゼーションペプチドAnt(配列番号1)に配列番号3及び配列番号7を融合した。得られるAnt-CC2構築物は、配列:CRQIKIWFQNRRMKWKKSKGMQLEDLRQQLQQAEEALVAKQELIDKLKEEAEQHKIV(配列番号2)を有する。ここで、N末端システインは、蛍光体にカップリングしてインターナリゼーション及び/又は阻害の検出を容易にするために付加されている。得られたAnt-LZ構築物は、配列:CRQIKIWFQNRRMKWKKLKAQADIYKADFQAERHAREKLVEKKEYLQEQLEQLQREFNKL(配列番号6)を有する。ここで、N末端システインは、蛍光体にカップリングしてインターナリゼーション及び/又は阻害の検出を容易にするために付加されている。
【0061】
本発明では、N末端システインは最適な付加であり、そうであるので、この残基は、最終的な阻害性ペプチドから削除されてもよい。更に、本発明では、高トランスダクション能を有するペプチド(例えばAnt)とCC2又はLZペプチドとの間のリンカーは、リンカー配列がCC2又はLZペプチドの阻害特性を有意に減じない限りで、不定の配列及び/又は長さであり得る。この目的のため、リンカーは、1〜35アミノ酸、好ましくは2〜25アミノ酸、より好ましくは3〜15アミノ酸、最も好ましくは4〜10アミノ酸の範囲の長さであり得る。特に好ましい実施形態では、リンカー配列は、配列番号9又は配列番号10のものである。
【0062】
上記のように、融合構築物中であっても、CC2の相同ペプチドは、好ましくは、コイルドコイルモチーフ構造を保持し、LZの相同ペプチドは、好ましくは、ヘリカルモチーフ構造を保持することを理解すべきである。このように、本発明は、相同ペプチドがそれぞれCC2及びLZの構造を保持し、NF-κB経路を阻害する能力を保持するという前提で、配列番号2及び配列番号6(マウス由来)並びに配列番号13及び配列番号15(ヒト由来)の上記の相同性の制約内の相同ペプチドを包含する。
【0063】
本発明の実施形態において、本発明者らは、野生型NEMOのN末端領域、特に図1Aに見られるNLM保存モチーフ(配列番号12の残基293〜322)を調べた。この目的のため、以下の配列を作製した(対応配列については表1を参照):
NLM-DR (配列番号30)
Ant.NLM-DR (配列番号31)
Tat NLM-DR (配列番号32)
R7-NLM-DR (配列番号33)
R9-NLM-DR (配列番号34)
【0064】
NLM-DRは、図1Aに示されるより長い30アミノ酸の保存NLMモチーフに由来する21アミノ酸の「モチーフ」(及び同じアミノ酸範囲をカバーする対応野生型NLM)である。NLM-DRは、野生型配列中の残基11のアスパラギン酸がアルギニンで置換されているという点で、野生型NLM配列から変異されている(表1及び配列番号30を参照)。この変異は、構造研究により確証されたように、得られるポリペプチドが、ヘリコイダル(helicoidal)形態でのペプチドの安定化を許容する分子内塩橋架けを容易にすることから選択された。
【0065】
円二色性研究(CD)から、CC2及びLZペプチドがその濃度に依存してヘリコイダル構造を採用するように見える。CC2は、LZより安定なヘリックスを創る。RMN及びRayon X回折研究により、CC2の構造が確証されている。CD研究により、NLM-DRペプチドは、常に、野生型ペプチドより安定なヘリックスとして構造化される。
【0066】
本実施例で使用したポリペプチドは21アミノ酸長であるが、本発明において、NLMフラグメントの操作可能なサイズは、15アミノ酸程度の短さであり得ると企図される。加えて、ヘリシティ及び当該ペプチドとその分子標的との間の分子間相互作用を強化することができるNLMポリペプチドの配列中の任意の変異は、特に興味深く、本発明の範囲内である。
【0067】
本発明において、アンテナペディアを媒介するペプチドのモノマー化は重要であり得ることが推測される。具体的には、モノマー化により、ペプチドがNEMOオリゴマー化と干渉すること可能になると推測される。
【0068】
核因子-kB(NF-κB)シグナル伝達は、炎症応答、腫瘍形成、ウイルス感染、細胞増殖及びアポトーシスの調節に、並びにB及びTリンパ球の場合には抗原刺激に関与する本質的なシグナルトランスダクション経路である(Ghosh, 1998, Annu. Rev. Immunol.;Karin, 1999, J. Biol. Chem.;Israel, 2000, Trends Cell Biol.;Santoro, 2003, EMBO J.)。このように、本発明のペプチドは、炎症応答、腫瘍形成、ウイルス感染の調整及び/又は治療;細胞増殖及びアポトーシスの調節;並びに抗原刺激におけるB又はTリンパ球の調節に有用である。したがって、本発明は、その必要がある患者に本発明によるペプチドを投与することによりこれらを治療する方法を提供する。
【0069】
本発明において、「その必要がある患者」は、ヒト、家庭用家畜、酪農用家畜、又は野生に一般的に見出される動物であり得る。例えば、患者は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、マウス、モルモット、ヒツジ、ブタなどから選択され得る。
【0070】
明らかなことではあるが、投与するペプチドの量は、ペプチドを投与する患者に依存する。患者がヒトである場合、投与するペプチドの量は、患者の年齢、病状の重篤度及び過去の病歴を含む多くの要因に依存し、常に、投与する医師の信頼できる判断力の範囲内にある。一般に、ヒト又は他の哺乳動物に単回用量又は分割用量で投与する本発明の化合物の総日用量は、単回用量又は複数回用量で、例えば0.1mg/Kg/日〜30mg/Kg/日のペプチド、好ましくは0.1mg/Kg/日〜20mg/Kg/日のペプチド、より好ましくは2mg/Kg/日〜10mg/Kg/日のペプチドの量であることができる。単回用量組成物は、日用量を構成する量又はその約数を含有し得る。好ましい実施形態において、好ましい用量は、投与する患者当たり10mgを日に2回である。特に好ましい実施形態において、投与経路は静脈内である。
【0071】
本発明のペプチドはまた、医薬的に投与可能な組成物の成分として投与され得る。換言すれば、ペプチドは、その必要がある患者に投与するために製剤中に存在し得る。本発明のペプチドは、NF-κB経路阻害のため、又は炎症応答、腫瘍形成、ウイルス感染の治療、細胞増殖及びアポトーシスの調節及び抗原刺激の調節のための単独の活性成分であり得る。或いは、組成物はまた、上記のものを治療するために使用され得る1又はそれより多い追加の化合物を含有し得る。加えて、本発明のペプチドは、NF-κB経路により引き起こされない障害の治療に有用である1又はそれより多い化合物を含有する組成物中に存在し得る。
【0072】
本発明における投与に適切なペプチドの治療有効量は、単独で又は1若しくはそれより多い医薬的に許容されるキャリアとの組合せで投与され得る。本明細書中で使用する用語「医薬的に許容されるキャリア」は、任意の型の、非毒性、不活性の、固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材又は製剤助剤を意味する。医薬的に許容されるキャリアとして働き得る材料のいくつかの例は、糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばコーンスターチ及びポテトスターチ;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバター及び坐剤ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝剤溶液、並びに他の非毒性の混和性潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムである。着色剤、放出剤(releasing agent)、コーティング剤、甘味剤、矯味矯臭剤及び香料、保存料及び抗酸化剤もまた、製剤化する者の判断に従って、組成物中に存在することができる。
【0073】
本発明において投与に適切な医薬組成物は、ヒト及び他の動物に、経口で、直腸に、鼻に、非経口で(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内又は皮下の注射又は移植)、槽内に、膣に、腹腔内に、舌下に、局所に(例えば、粉体、軟膏又はドロップとして)、口腔粘膜に、口腔スプレー又は鼻スプレーとして投与することができる。医薬組成物は、各々の投与経路に適切な投薬形態で製剤化することができる。
【0074】
経口投与のための液体投薬形態としては、医薬的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤が挙げられる。活性なNEMO由来ポリペプチドに加えて、液体投薬形態は、当該分野において通常に使用される不活性希釈剤を含有し得る。不活性希釈剤としては、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実、ラッカセイ、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシ及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を挙げ得る。経口投与用の液体投薬形態はまたアジュバントを含有し得、これには、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤及び香料が含まれる。他の経口投与用投薬形態には、例えば、非毒性懸濁剤(例えばカルボキシ-メチルセルロースナトリウム)の存在下に水性媒体中に活性なNEMO由来ポリペプチドを含有する水性懸濁液、及び適切な植物油(例えばラッカセイ油)中に本発明のNEMO由来ポリペプチドを含有する油状懸濁液が含まれる。
【0075】
注入可能調製物、例えば滅菌の注入可能な水性又は油性の懸濁液が、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌の注入可能な調製物はまた、非毒性の非経口で許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌の注入可能な溶液(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として)、懸濁液又はエマルジョンであり得る。用いてもよい許容されるビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル溶液、U.S.P.及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌の固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来から用いられている。この目的のためには、任意の無刺激性の(bland)固定油を用いることができ、これには合成モノグリセリド又はジグリセリドが含まれる。加えて、脂肪酸、例えばオレイン酸が、注射可能物質の製造に使用される。
【0076】
注入可能製剤は、例えば細菌固定フィルターで濾過することにより、又は使用前に滅菌水又は他の滅菌注入可能媒体中に溶解又は分散することができる滅菌固体組成物の形態に滅菌化剤を組み込むことにより、滅菌化することができる。
【0077】
本発明のNEMO由来ポリペプチドの効果を延長するために、皮下又は筋肉内の注入からのペプチドの吸収を緩慢にすることが望ましいこともある。このことは、水に難溶性である結晶性又は非晶質の材料の液体懸濁液の使用により達成し得る。NEMO由来ポリペプチドの吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度は、結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。或いは、油ビヒクル中にこの薬物を溶解又は懸濁することにより、非経口的に投与されたNEMO由来ポリペプチド形態の遅延吸収が達成される。注入可能なデポー剤形態は、生分解性ポリマー(例えばポリ乳酸ポリグリコール酸)中でNEMO由来ポリペプチドがマイクロカプセル化された基質を形成することにより作製される。NEMO由来ポリペプチドとポリマーとの比及び用いる特定ポリマーの性質に依存して、NEMO由来ポリペプチド放出の速度は制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー剤の注入可能製剤はまた、体組織に適合性であるリポソーム又はマイクロエマルジョン中にNEMO由来ポリペプチドを閉じ込めることにより製造される。
【0078】
直腸投与又は膣投与用組成物は、好ましくは、本発明のNEMO由来ポリペプチドを、周囲温度で固体であるが体温では液体でありしたがって直腸腔若しくは膣腔において溶融しペプチドを放出する適切な非刺激性賦形剤若しくはキャリア(例えばココアバター、ポリエチレングリコール)又は坐薬ワックスと混合することにより製造される坐薬である。
【0079】
経口投与用固体投薬形態としては、カプセル、錠剤、ピル、小球(prill)、粉剤及び顆粒剤が挙げられる。このような固体投薬形態において、ペプチドは、少なくとも1つの不活性の医薬的に許容される賦形剤又はキャリアと混合される。加えて、固体投薬形態は、1又はそれより多い充填剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、緩染剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤又は潤滑剤を含有し得る。適切な充填剤又は増量剤の例としては、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸、クエン酸ナトリウム及びリン酸二カルシウムが挙げられる。適切な結合剤の例としては、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース及びアカシアゴムが挙げられる。グリセロールは適切な保湿剤の例である。適切な崩壊剤の例としては、寒天-寒天、炭酸カルシウム、ポテト又はタピオカスターチ、モロコシスターチ、アルギン酸、或る種のシリケート及び炭酸ナトリウムが含まれる。パラフィンは適切な溶液緩染剤の例である。吸収促進剤としては、任意の四級アンモニウム化合物を使用し得る。適切な湿潤剤の例としては、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールが挙げられる。適切な吸収剤の例としては、カオリン及びベントナイトクレイが挙げられる。適切な潤滑剤の例としては、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。カプセル、錠剤及びピルの場合、投薬形態はまた、緩衝化剤を含んでなってもよい。
【0080】
錠剤は、所望であれば、公知の方法、及び例えばフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる腸溶性被覆を含み得る賦形剤を使用して被覆してもよい。錠剤は、本発明のNEMO由来ポリペプチドの持続性放出が得られるように、当業者に公知の様式で製剤され得る。このような錠剤は、所望であれば、公知の方法、例えば酢酸フタル酸セルロースの使用により腸溶性被覆を備えてもよい。これらは任意に不透明化剤を含有してもよい。これらはまた、活性成分のみを、好ましくは腸管中の或る部分で、任意に遅延様式で、放出する組成であることができる。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー性物質及びワックスが挙げられる。
【0081】
同様に、追加の賦形剤を共に又は伴わずに活性ペプチドを含有するカプセル、例えば硬カプセル(hard gelatin capsule)又は軟カプセル(soft gelatin capsule)は、公知の方法により製造され得、所望であれば、公知の様式で腸溶性被覆を備え得る。カプセルの内容物は、活性なNEMO由来ポリペプチドの持続性放出を与えるように、公知の方法を用いて製剤化され得る。このような固体投薬形態において、活性なNEMO由来ポリペプチドは、少なくとも1つの不活性希釈剤、例えばスクロース、ラクトース又はデンプンと混合され得る。このような投薬形態はまた、通常の実務のように、不活性希釈剤以外の追加物質、例えば錠剤化潤滑剤及び他の錠剤助剤(例えばステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロース)を含んでなってもよい。カプセル、錠剤及びピルの場合、投薬形態はまた、緩衝化剤を含んでなってもよい。これらは任意に不透明化剤を含有してもよい。これらはまた、活性成分のみを、好ましくは腸管中の或る部分で、任意に遅延様式で、放出する組成であることができる。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー性物質及びワックスが挙げられる。
【0082】
同様な型の固体組成物はまた、ラクトース又は乳糖のような賦形剤並びに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用する軟カプセル及び硬カプセル中の充填剤として用い得る。
【0083】
所望であれば、本発明のNEMO由来ポリペプチドは、徐放送達システム又は標的送達システム中、例えばポリマーマトリクス、リポソーム及びマイクロスフェア中に組み込むことができる。これらは、例えば細菌固定フィルターで濾過することにより、又は使用直前に滅菌水又は幾つかの他の滅菌注入可能媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌化剤を組み込むことにより滅菌化してもよい。
【0084】
NEMO由来ポリペプチドは、追加の賦形剤と共に又は伴わずに顆粒剤に製剤化してもよい。顆粒剤は、患者により直接摂取されてもよく、又は顆粒剤は、摂取前に適切な液体キャリア(例えば水)に添加してもよい。顆粒剤は、液体媒体における分散を容易にするために、崩壊物質、例えば酸と炭酸塩又は重炭酸塩とから形成される発泡性カップルを含有してもよい。
【0085】
本発明のペプチドの局所投与又は経皮投与用の投薬形態としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉剤、溶液、スプレー剤、吸入剤又はパッチが挙げられる。経皮パッチは、身体へのペプチドの制御送達を提供するという追加の利点を有する。その速度は、速度制御皮膜を提供するか又はポリマーマトリクス若しくはゲル中にペプチドを分散させるかのいずれかにより制御することができる。活性構成成分は、滅菌の条件下で、医薬的に許容されるキャリア、及び必要に応じて、任意の必要な保存料又は緩衝液と混合される。適切な媒体中にペプチドを溶解するか又は分散させることにより、このような投薬形態を製造することができる。吸収増強剤もまた、皮膚を横切るペプチドの流量を増大させるために使用することができる。眼用製剤、点鼻剤、眼軟膏、粉剤及び溶液もまた、本発明の範囲内であるように企図される。
【0086】
局所投与用投薬形態は、ペプチドを経皮的に投与するために、皮膚との接触を保持するように本発明のNEMO由来ポリペプチドが薬理学的に分散されたマトリクスを含んでなってもよい。適切な経皮組成物は、医薬的に活性なNEMO由来ポリペプチドを、局所ビヒクル、例えば動物性及び植物性の脂質、油、ワセリン、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、又はそれらの混合物と、潜在的経皮促進剤、例えばジメチルスルホキシド又はプロピレングリコールと共に、混合することにより製造してもよい。或いは、活性なNEMO由来ポリペプチドは、医薬的に許容されるペースト、クリーム、ゲル又は軟膏基剤中に分散させてもよい。局所製剤中に含有される活性なNEMO由来ポリペプチドの量は、治療有効量のペプチドが局所製剤が皮膚上に存在すると意図される期間に送達されるような量であるべきである。
【0087】
粉剤及びスプレー剤は、本発明のNEMO由来ポリペプチドに加えて、賦形剤、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれら物質の混合物を含有することができる。スプレー剤は、慣用の噴霧剤、例えばクロロフルオロヒドロカーボンを追加して含有することができる。治療上活性なNEMO由来ポリペプチドは、患者の口腔又は鼻腔中にエアロゾルとして分散する組成物に製剤化されてもよい。このようなエアロゾルは、揮発性噴霧剤を含有するポンプパック(pump pack)又は加圧パックから投与されてもよい。
【0088】
本発明の方法において使用される治療上活性なNEMO由来ポリペプチドはまた、外部供給源から、例えば静脈内注入により、又は身体内に配置されたNEMO由来ポリペプチド供給源からのいずれかからの連続注入により投与されてもよい。内部供給源としては、注入すべきNEMO由来ポリペプチドを含有しそれが例えば浸透圧により連続的に放出される移植レザバー、及び(a)液体、例えば注入すべきペプチドの、例えば非常に水に溶け難い誘導体、例えばドデカン酸塩又は親油性エステルの形態の油状懸濁液であり得るか、又は(b)注入すべきNEMO由来ポリペプチドのための、例えば合成樹脂又はワックス材の移植支持体の形態の固体であり得る移植物が挙げられる。支持体は、送達すべきペプチド全量を含有する単一の物体であってもよいし、各々が送達すべき一部量のペプチドを含有する幾つかの物体の連なりであってもよい。内部供給源中に存在する活性ペプチドの量は、治療有効量のペプチドが長期間にわたって投与されるような量であるべきである。
【0089】
本発明はまた、その必要がある患者においてNF-κBシグナル伝達経路により調節される障害を調整するか又は治療する医薬の製造のために、本発明によるポリペプチド融合構築物及び1又はそれより多い医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤を含んでなる組成物の有効量を使用することに関する。
前記使用の有利な実施形態によれば、NF-κBシグナル伝達経路により調節される障害は、炎症応答、腫瘍形成及びウイルス感染からなる群より選択される。
【0090】
本発明はまた、その必要がある患者において細胞増殖又はアポトーシスを調節する医薬の製造のために、本発明によるポリペプチド融合構築物及び1又はそれより多い医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤を含んでなる組成物の有効量を使用することに関する。
本発明はまた、その必要がある患者において抗原刺激でB又はTリンパ球を調節する医薬の製造のために、本発明によるポリペプチド融合構築物及び1又はそれより多い医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤を含んでなる組成物の有効量を使用することに関する。
【0091】
前記使用の有利な実施形態によれば、その必要がある患者はヒトである。
前記使用の別の有利な実施形態によれば、有効量は0.1mg/Kg/日〜30mg/Kg/日の範囲である。
前記使用の別の有利な実施形態によれば、組成物は、経口、直腸、鼻、非経口、槽内、膣内、腹腔内、舌下、局所及び口腔粘膜投与からなる群より選択される形態で投与される。
前記使用の別の有利な実施形態によれば、組成物は、好ましくは静脈内投与される。
【0092】
本発明は更に、
a)候補ポリペプチド配列を同定し;
b)候補ポリペプチド配列を高トランスダクション能を有するポリペプチドにスペーサー配列を介して連結することによりポリペプチド融合構築物を作製し;
c)細胞培養物をポリペプチド融合構築物と接触させ;そして
d)NF-κBシグナル伝達経路の活性をモニターし;
e)ポリペプチド融合構築物の存在下でのNF-κBシグナル伝達経路の活性を、ポリペプチド融合構築物の非存在下でのNF-κBシグナル伝達経路の活性と比較して、ポリペプチド融合構築物による相対阻害を決定し;そして
f)ポリペプチド融合構築物による相対阻害をNEMOオリゴマー化と相関させること
によりNEMOのオリゴマー化を調整するポリペプチドを同定する方法を提供する。
【0093】
この方法において、候補ポリペプチド配列は、好ましくは、コイルドコイル又はヘリカル構造を有する。より好ましくは、候補ポリペプチド配列は20〜60アミノ酸を有する。候補ポリペプチド配列がNEMOに由来することもまた好ましい。
【0094】
上記の実施形態で記載したように、スペーサー配列は1〜35アミノ酸の範囲の長さを有し得るが、より短い長さもまた使用してもよい(上記)。スペーサー配列の例としては、配列番号9及び配列番号10が挙げられる。更に、高トランスダクション能を有するポリペプチドの例は、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0095】
好ましい実施形態において、細胞培養物は、NF-κB依存性β-ガラクトシダーゼレポーター遺伝子でトランスフェクトされているpre-B 70Z/3リンパ球を含有する。
ポリペプチド融合構築物が細胞培養物中に含有される細胞中に実際に組み込まれることを確実にするため、ポリペプチド融合構築物はN末端システイン残基を有していることが望ましい。この様式において、ポリペプチド融合構築物は、システイン残基を蛍光体(例えばBODIPY)と化学的に反応させることにより標識して、FACSのような技術により細胞取込みのモニターを可能にしてもよい。
【0096】
したがって、NEMOのオリゴマー化を調整するポリペプチドを同定する方法は、以下の工程:
b-1)ポリペプチド融合構築物を標識する工程;及び
c-1)標識したポリペプチド融合構築物の細胞取込みをモニターする工程
を含んでもよい。
【0097】
更に、当業者はまた、NEMOがインビボでペプチドと結合することを示すために、タグ化ペプチドを用いる追い込み実験(pull down experiment)によりNF-κB経路阻害をNEMOオリゴマー化の調整と相関付けることができる。このペプチド結合NEMOタンパク質のオリゴマー状態を特徴付けることができた(架橋、ゲル濾過)。インビトロにおける、NEMOオリゴマー化を模倣する蛍光アンテナペディア標識CC2又はLZペプチドとCC2又はLZペプチドとの結合に起因する異方性増加の阻害は、インビボでNF-κB経路を阻害する化合物を試験するために使用することができる。
【0098】
一般的に本発明を記載してきたが、或る具体例を参照することにより更なる理解を得ることができる。これら具体例は、単に説明を目的として本明細書中で提供され、特に断らない限り本発明を制限することを意図しない。
【実施例】
【0099】
実施例
材料及び方法
細胞培養、安定なトランスフェクション及び細胞株
マウスpre-B 70Z/3の増殖条件は、Courtoisら、1997 Mol. cell. Biol.に記載のとおりであった。70Z3-C3安定細胞株を、IL-2プロモーター(Fieringら、1990)中にNF-κB部位の3つのタンデムコピーを有するプラスミドcx12lacZ-kB(G.R. Crabtreeからの厚意による贈与)を用いたCourtoisらに記載のエレクトロポレーションにより調製した。ヒト網膜芽細胞腫細胞株Y79は、American Type Culture Collection(Manassas、VA)より購入し、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、及び10%ウシ胎仔血清(FCS)を補充したRPMI 1640培地中で増殖させた。
【0100】
FACS分析
0.5ml中0.5×106個の70Z/3-C3細胞を、図の説明に示した種々の濃度のペプチドと共に、異なる時間37℃にてインキュベートした。細胞懸濁液を1,000×gで室温にて遠心分離し、次いで細胞ペレットをPBS緩衝液(1ml)で3回洗浄し、最後に0.1%アジ化ナトリウムを含有する500μlのPBS緩衝液に再懸濁した。蛍光分析をFACSCalibur(BD Biosciences)で実施し、サンプル当たり最小限15,000イベントを選択した。全ての実験を二重に行った。
【0101】
ペプチド合成及び精製
ペプチドを、Applied Biosystems(Foster City、CA)のPioneerペプチド合成機で連続フローFmoc/tBu化学(Chan, WC and White, P.D. (2000);Fmoc Solid Phase Peptido Synthesis. A pratical approach)を使用することにより、Moussonら(Biochemistry, 41 p13611-p13616, 2002)に記載のように合成した。全ての化学試薬は、Applied Biosystemsから購入した。全てのペプチドをN末端ではアセチル基で、C末端ではアミドでブロックした。その後の特異的標識のために、ペプチドのN末端に1つの余分なシステイン残基を組み込んだ(表1を参照)。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
粗製ペプチドを、0.08%水性トリフルオロ酢酸(TFA)(pH2)中のアセトニトリルの線形勾配(1%/分)を用い、18ml/分の流量にて60分間、Nucleoprep 20μM C18 100Å分取カラムでの逆相中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)により直接精製した。ペプチドの純度を、0.08%水性TFA(pH2)中のアセトニトリルの線形勾配(0.5%/分)を用い、1ml/分の流量にて20分間、5μM C18 300Å分析カラムで検証した。スルフヒドリル基への蛍光体bodipy(登録商標)FL N-(2 アミノエチル)マレイミド(Molecular Probes)の共役は、暗所にて30分間、50mM酢酸アンモニウム緩衝液中pH6の等モル条件下であった。次いで、混合物をNucleoprep 20μM C18 100Å分取カラムに負荷して、BODIPY共役ペプチドを精製した。細胞死実験において、BODIPY標識を有していない全てのペプチドを、ヨードアセトアミドでの処理に付し、システイン残基の酸化を防止した。次いで、全ての精製ペプチドをアミノ酸分析により定量し、最後に陽イオンエレクトロスプレーイオン化質量分析(ES+)を使用することにより特徴付けた。ペプチドの完全性及びカップリング効率が質量分析により検証されると、ペプチドが芳香族残基を含有しているときのペプチドの消衰係数を505nm又は280nmで測定した(表1を参照)。280nm及び505nmでのペプチドの吸光度を測定し、吸光度比を算出することにより、標識の安定性を定期的にモニターした。全てのペプチドを水に溶解して、2mMのストックとした。
【0105】
NF-κB阻害アッセイ
第1の手順では、10%ウシ胎仔血清(FCS)及び50μM β-メルカプトエタノールを補充した220μlのRPMI 1640中2.2×105個の70Z/3-C3細胞を、96ウェルプレート中に置き、5%CO2インキュベータ中で37℃にて種々の濃度のペプチド(0〜20μM)とインキュベートした。2時間後、各細胞サンプルの等部分(100μl)を各々105細胞を含有するように2つのウェルに移した。次いで、一方の細胞アリコートを0.5μg/mlの最終濃度のSalmonella abortus由来リポ多糖(Sigma)で5時間処理し、他方は処理しないままにした。5時間後、細胞を400×gで5分間室温にて遠心分離し、細胞ペレットを遠心分離により冷PBS(250μl)で3回洗浄した。次いで、細胞を溶解緩衝液(25mMトリス-リン酸緩衝液(pH7.8)、8mM塩化マグネシウム、1mMジチオエリトリトール、1% Triton X-100、15%グリセロール及びプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche)を含有)中で溶解し、サンプルを4℃にて20分間遠心分離し、溶解物を清澄化した。次いで上清を氷上に維持し、次いで30μlをアッセイして、プレートルミノメーター(Berthold)で化学発光基質としてgalacton-star(BD Biosciences Clontech、Bronsteinら、1989)を用いてβ-ガラクトシダーゼ活性を測定した。30μlの溶解緩衝液と反応緩衝液(196μl)及びBD Biosciencesより提供されたgalacton-star基質(4μl)とを1時間混合することにより反応のバックグランドを測定した。第2の手順及びより厳密なアッセイでは、70Z/3-C3細胞(220μlの培地中2.2×105細胞)を、2時間のペプチドインターナリゼーション後、400×gで室温にて遠心分離し、細胞ペレットを遠心分離により200μlのPBSで3回洗浄した。次いで、細胞を完全培地で3倍に希釈し、少なくとも24時間増殖させた。以下の工程は、第1の手順と同一である。
【0106】
細胞死アッセイ
細胞死の検出を、Promegaにより提供されたMTSアッセイ(CellTiter 96(登録商標) AQueous one solution cell proliferation assay)を使用して実施した。簡潔には、450μl中0.3×106個のY79細胞を、37℃の無血清RPMI培地中で、50μlの野生型Ant-CC2及びAnt-LZペプチド(0.1〜20μM)又はそれらの変異体Ant-CC2(Mu)、Ant-LZ(Mu)又はAntで処理したか、又は未処理のままとした。1時間又は14時間のインキュベーション後、細胞懸濁液のアリコート(200μl、0.12×106細胞)を、次いで、96ウェルプレートに移し、MTS化合物及びフェナジンエトスルフェートを含有するMTS溶液(40μl)と混合した。2時間後、490nm吸光度で自動化マイクロプレートリーダー(Bio-TeK Instruments、INC)を使用して、生存細胞により産生されたホルマザンの量を測定した。細胞生存を顕微鏡下で観察し、未処理コントロールの値のパーセンテージとして評価した。MTS溶液と無細胞RPMI培地を混合することにより反応のバックグランドを決定した。細胞死アッセイの感度を増大させるため、本発明者らはBODIPY標識を有しないペプチドを使用した。なぜなら、蛍光体の吸収スペクトルがホルマザン産物の吸収スペクトルと重なるからである。全ての実験を2回繰り返し、各実験条件を各実験で2連ウェルで繰り返した。
【0107】
分析ゲル濾過実験
ペプチドのオリゴマー状態を、Traincardら、2003に記載の濾過により決定した。簡潔には、500μlサンプルを、200mM NaCl及び0.1mM DDMを含有する50mMトリス-HCl(pH8.0)中で平衡化したSuperdex 75 HR 10/30カラムに、0.4ml/分の定流量で負荷した。カラム中の吸着を最小限にし、ペプチド回収を増加させるために、DDM界面活性剤を平衡緩衝液に添加した。ブルーデキストラン2000(空隙容量)、ジチオエリトリトール(総容量)、ウシ血清アルブミン(67kDa、Rs = 35.2Å)、オボアルブミン(43kDa、Rs = 27.5Å)、キモトリプシノゲンA(25kDa、Rs = 21.1Å)、リボヌクレアーゼA(13.7kDa、Rs = 16.4Å)、シトクロムC(12.4kDa、Rs = 17.7Å)及びアプロチニン(6.5KDa、Rs = 13.5Å)を有する同じ平衡緩衝液中でカラムを較正した。
【0108】
蛍光異方性測定
励起及び射出ビーム用の偏光子を備えたPTI Quantamaster蛍光光度計で異方性測定を実施した。この装置はL配置のPMTを使用する。全ての実験を、1cm路長キュベット中で22℃にてそれぞれ495nm及び520nmの励起波長及び射出波長で行った。励起及び射出モノクロメーターのバンドパスをそれぞれ2nm及び4nmに設定した。定常状態の蛍光異方性をミリ異方性(millianisotropy)(mA)として表し、式:(1)A=(IVV−GIVH)/(IVV+2GIVH);(2)G=IHV/IHH;式中、Aは異方性であり、Gは波長依存性の歪みのための補正因子であり、Iは蛍光強度成分(下付き文字は、励起偏光子及び射出偏光子のそれぞれでの垂直位置及び水平位置を示す)に従って算出した。実験を少なくとも2回実施し、各データは2分間の20記録の結果である。全ての測定は、150mM KClを含有する50mMトリス-HCl緩衝液(pH8)中で行った。本発明者らは、使用したBODIPY-Ant-CC2及びBODIPY-Ant LZ濃度(それぞれ1μM及び0.1μM)で、フィルター効果が無視できることを検証した。異方性測定の前に、BODIPY-Ant-CC2ペプチドを一晩22℃にて、単独で又は漸増濃度(1〜125μM)のCC2と共にプレインキュベートした。異方性測定の前に、BODIPY-Ant-LZペプチド(100nM)を一晩22℃にて、単独で又は10μM及び100μM濃度のCC2と共にプレインキュベートした(図7の説明を参照)。Kaleidagraph非線形回帰ソフトウェア(Synergy Software、reading PA)を用いて、異方性データをAgouら(2004、J Biol Chem.)に記載の結合等温式に全体的にフィットさせることにより、解離定数パラメータを評価した。結合化学量論nは、異方性データの漸減領域及びプラトー領域を通って引かれた線の交差点から評価した(図7中の破線)。
【0109】
結果
NF-κB活性化を遮断するNEMO由来ペプチドの合理的設計
本発明者らは、以前に、NEMOの最小トリマー化ドメインが配列251〜337から構成されることを示した(図1A)。この領域は、N末端及びC末端にそれぞれ、CC2(残基253〜285)及びLZ(301〜337)と呼ばれる約35残基の2つのコイルドコイル配列を含有するようである。最小オリゴマー化ドメインの構造は未だ決定されていないが、蛍光偏光法と組み合せた幾つかの生化学的研究に基づいて、本発明者らは、CC2/LZトリマーがおそらく、逆平衡配向で近接して束ねられたCC2及びLZコイルドコイルから構成される6鎖ヘリカルバンドルを形成していることを提案した(Traincard、2003、掲載依頼中)。更に、PSI-BLAST検索により、NEMOのこのドメインは、ABIN-1(Heyninck、1999、J. Cell. Biol.)、ABIN-2/NAF(Van Huffel、2001、J. Biol. Chem)、ABIN-3/LIND (Staege、2001、Immunogenetics)及びNRP/オプチニューリン(Schwamborn、2000、J. Biol. Chem)を含む4つの他のタンパク質と共有する「NEMO様モチーフ」(NLM)と呼ばれる20残基の保存モチーフを含有することが明らかである(図1B)。興味深いことに、この保存モチーフを含むこれらタンパク質のほとんどABIN-1タンパク質(Heyninck、2003、FEBS Letters)、NEMOタンパク質のC末端ドメイン(Le Page、2001、Virology)及びABIN-2タンパク質(Liu WK、2003、Biochemical Journal)又はABIN-3/LINDタンパク質(Heyninck、2003、FEBS letters)が、細胞中で過剰に発現した場合に優勢ネガティブ様式でNF-κB活性化を阻害することが示されている。NF-κBと干渉するABINペプチドを開示する2つの更なる参考文献もまた、上記を支持している:WO 99/57133及びWO 03/00280。
【0110】
NEMOオリゴマー化を妨害することは、NF-κB活性化を阻害するための可能性のある治療ストラテジーであるので、本発明者らは、CC2又はLZ配列のいずれかを模倣するNEMO由来のパートナーペプチドを設計した(表1)。興味深いことに、CC2ペプチドとは異なり、LZペプチドはまた、N末端の先端にNLMモチーフを含むことに気付く。細胞中への全てのペプチド取り込みを媒介するために、本発明者らは、ペプチドN末端に、アンテナペディア/ペネトラチンタンパク質(Ant)の第3ヘリックスに由来する16アミノ酸配列から構成される機能的アナログを共役させた。この両親媒性ヘリックスはインターナリゼーションベクターとして作用する(Prochiantz、2000、Curr. Opin. Cell Biol.)。アンテナペディア融合ペプチドのほとんどをBODIPY蛍光体で標識して、細胞中への各ペプチドのトランスダクション能を分析した。N末端の先端に単一システイン残基を付加することにより特異的標識を実施し、配列の完全性を質量分析により検証した(「材料及び方法」及び表1を参照)。
【0111】
アンテナペディア融合ペプチドにより媒介されるNEMO由来ペプチドの細胞取込み
生きている細胞中へのBODIPY標識NEMOペプチドの取り込みを、細胞インターナリゼーションを定量化するために使用される従来ツールである蛍光活性化セルソーティング(FACS)によりモニターした。図2Aは、Ant-CC2(WT)、Ant-CC2(Mu)、Ant-LZ(WT)又はAnt-LZ(Mu)BODIPY-ペプチドで2時間37℃にて処理した細胞のFACS分析を示す。これを、未処理細胞及び等しい濃度の遊離BODIPY又はBODIPY共役BSAで処理したコントロール細胞の自己蛍光のものと比較した。哺乳動物細胞中へペプチド及びタンパク質をトランスダクションするアンテナペディアペプチドの役割と一致して、100%の70Z3-C3細胞株が、4つの異なるNEMOペプチドにより同様にトランスダクションされた。このことは、処理集団の全ての細胞がほぼ同一の細胞内濃度のNEMO由来BODIPYペプチドを有することを示唆する。比較分析により、未処理細胞及びBODIPY-BSA又は遊離BODIPYでの処理細胞が同様な細胞蛍光を提示することが示される。このことは、FACS分析前の広範な洗浄プロトコルが、NEMOペプチドインターナリゼーションの測定における表面結合ペプチドの寄与を最小化するために最適であったことを検証する(「材料及び方法」を参照)。したがって、これらデータは、観察した細胞蛍光シグナル伝達のほとんどが、トランスダクションされたNEMOペプチドの細胞内濃度を反映し、膜表面への非特異的吸着を反映していないことを示唆する。
【0112】
次いで、本発明者らは、他のNEMOペプチドのトランスダクションは同様な様式で生じるべきであると考えて、Ant-CC2 BODIPYペプチドについて細胞取込みの動力学及び濃度依存性を調べた(図2B及び2C)。37℃にて0.2、2又は20μMのBODIPY-Ant-CC2ペプチドで処理した70Z3-C3細胞の添加後5時間でのFACS分析により、文献(Lindsay、2002、Current Opinion in Pharmacology)に広く報告されるように、アンテナペディア融合ペプチドのインキュベーション濃度の関数として細胞内濃度の線形依存性が証明される。特に、37℃で20μMのAnt-CC2で処理した細胞は、30分で既に最大細胞内濃度に達し、5時間まで変化しないままである。LPSに応答して強力なNF-κB活性化を誘導する時間は、3〜5時間の細胞処理を必要とするので、この結果は、各ペプチドの細胞内濃度がLPS刺激の間一定のままであることを示す。
【0113】
細胞透過可能なCC2及びLZによるLPS誘導NF-κB活性化の特異的阻害
細胞透過可能なBODIPY-Ant-CC2及びBODIPY-Ant-LZペプチドによるLPS-誘導NF-κB活性化の阻害能を分析するため、本発明者らは、マウスpre-B 70Z3細胞株を、NF-κB転写因子の制御下にβ-ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を有するp12XlacZ-kBで安定にトランスフェクトした。得られた細胞株70Z3-C3をLPS(3μg/ml)で5時間処理すると、LacZ遺伝子の100倍の活性化が観察された。このことは、細胞アッセイが極度の感受性でLSPに応答するNF-κB活性化をモニターすることを示す(図3A、コントロール「ペプチドなし)。興味深いことに、20μMの両NEMO由来ポリペプチドとの細胞のインキュベーションは、NF-κB活性化を有意に減少させた。この低下は、BODIPY-Ant-CC2と比較して、BODIPY-Ant-LZの存在下でより強力であった。阻害効果は本質的にNEMO配列に起因した。なぜなら、N末端BODIPY標識を含有するか又は含有しない単離及び/又は精製アンテナペディアペプチド(BODIPY-Ant又はAnt)の存在は、コントロールと同じレベルのNF-κB活性化を誘導するからである(図3A)。LPSの非存在下で測定した基礎NF-κB活性は、全てのサンプルで非常に類似しており、このことは両CC2及びLZペプチドが、本来の基礎NF-κB活性に影響を与えることなく、LPSに対する応答性を消滅させることを示していることに留意すべきである。このことは、NF-κBの阻害により誘導されるアポトーシスに主に起因するインビボ細胞毒性を最小化するために必須であった(Chen、2003、Nature Med.)。
【0114】
BODIPY-Ant-LZペプチド又はBODIPY-Ant-CC2ペプチドが最も効率的な阻害剤であるかを決定するために、本発明者らは、次に、各ペプチドの濃度依存性阻害を測定した。図3Bに示されるように、両NEMOペプチドは、LPSに応答するNF-κBのNF-κB用量依存性阻害を示す。BODIPY-Ant-LZは、NF-κBをBODIPY-Ant-CC2より大きな程度で阻害し、IC50値はそれぞれ3μM及び22μMであった(図3C)。この顕著な差異は、LZ配列中に含まれるNLMモチーフによって説明し得る。NEMO標的の細胞内の性質と一致して、アンテナペディアタンパク質トランスダクションドメイン(PTD)と融合していないLZ及びCC2ペプチドは共に、コントロールと同じレベルの活性化を示した(図3D)。このことは、NEMO由来ペプチドがNF-κBの阻害のために細胞膜を横切らなければならないことを確証する。まとめると、これらの結果は、NEMOオリゴマー化ドメインの2つのコイルドコイル配列を模倣するペプチドが、LPSに応答するNF-κB活性化の強力なペプチド阻害剤であることを示している。
【0115】
LZ及びCC2コイルドコイルの疎水性コア中の変異は、NF-κBシグナル伝達経路の特異的阻害を妨害する
理論的には、BODIPY-Ant-LZ又はBODIPY-Ant-CC2ペプチドが、NEMOオリゴマー化ドメインへの特異的結合を通じて、NF-κB活性化を阻害するなら、コイルドコイル結合を妨害する変異は、NF-κB阻害を阻害する能力を損なうはずである。α-ヘリカル コイルドコイル相互作用は広範に研究されており、その特異的アセンブリを支配する規則のほとんどが十分に考証されている(Vinson、2002、Mol. Cell. Biol.)。ヘプタドリピートの第1位(a)及び第4位(d)により代表されるコイルドコイル界面は、一般に、疎水性アミノ酸で占められている。プロリン又はグリシンは、ヘリカル構築を保存するために、ほとんど排除されている。コア極性残基は、変化がd位で生じるとき特に、ロイシン置換体と比較して、不安定化している。これらの規則を考慮して、本発明者らは、d位に2つの変異L→Sを含有するBODIPY-Ant-LZの変種(BODIPY-Ant-LZ(Mu))及びa位に2つの変異L→G及び1つの変異I→Gを含有するBODIPY-Ant-CC2の変種(BODIPY-Ant-CC2(Mu))を合成した(図4A及び4B、及び表1)。可能性のあるNF-κB活性化の阻害に対するこれら変異の効果を試験するため、本発明者らは、2時間のペプチドのインターナリゼーション、続く細胞外培地に残存するペプチドを除去するための70Z3-C3細胞の広範な洗浄からなるより厳密な細胞アッセイを開発した。LPS誘導NF-κB活性化の前に、細胞を少なくとも24時間増殖させた。この方法で、LPSのレセプター結合とのペプチド干渉が排除された。上記の細胞アッセイと同様に、BODIPY-Ant-CC2(WT)及びBODIDY-Ant-LZ(WT)もNF-κB活性化を阻害し、10μM濃度を使用した場合、それぞれ1/1.7低減及び1/5.8低減であった(図4A及び4B)。このことは、ペプチドがLPSのレセプター結合に対して競合的に作用しないことを示す。予測されたように、CC2変種(BODIPY-Ant-CC2(Mu))の存在はNF-κB活性化に影響しなかった。なぜなら、β-ガラクトシダーゼ活性は、コントロールの活性と等しかったからである(図4A、ペプチドなし)。LPSに応答して、NF-κBは、BODIPY-Ant LZ変異体の存在下で、野生型の存在下より強力に活性化される。しかし、BODIPY-Ant-CC2(Mu)とは異なり、コントロールと比較してLZ変異体の僅かな阻害が観察された(15%)。まとめると、これらのデータは、CC2及びLZ変異体が、野生型のように効率的には、LPS誘導NF-κB活性化を阻害することができないことを証明する。
【0116】
NF-κB活性化の阻害は、LZペプチドの特異的コイルドコイル相互作用により媒介される。
プログラムMULTICOIL(Wolf、1997、Protein Science)を用いるコンピュータ分析により、配列決定されたゲノム中に見出された全ての推定ORFの5%より多くが、コイルドコイルモチーフを含有すると予測され(Newman、2000、Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、タンパク質中の約2〜4%のアミノ酸がコイルドコイルフォールディングを採用していると推定される(Berger、1995、Proc.Natl.Acad.Sci. USA)。この夥しさは、NEMO由来LZペプチドがインビボでコイルドコイル相互作用と組む特異性を維持するかどうかという疑問を提起する。この疑問に取り組みため、本発明者らは、GCN4ロイシンジッパーの配列を模倣する別のコイルドコイルペプチドを合成し、NF-κB活性化を阻害する能力を試験した。BODIPY-Ant-GCN4は、ペプチド送達の簡便のために、N末端のアンテナペディア配列及びCC2配列と同一の短いSKGMQリンカー(配列番号9)を含有していた(表1)。これはまた、FACSにより細胞取込みをモニターするために、N末端にてBODIPYで標識された(データは示さず)。GCN4ペプチドは、NEMOのLZ配列と低い配列類似性(22%)を示すが、同一残基はほとんどd位のロイシンにより代表される(図5)。これら残基は、そのエネルギーのほとんどをコイルドコイルオリゴマー化安定性に寄与させる(Vinson、2002、Mol. Cell. Biol.)。コイルドコイル特異性に重要であるa位(Vinson、2002、Mol. Cell. Biol)は、異なるアミノ酸のセットから構成されていることに留意すべきである。GCN4は、疎水性残基及び代表的なアスパラギン残基から構成されるが、NEMOのLZは2つの荷電アミノ酸R及びKを含有する(図4B及び図5A)。したがって、コイルドコイル界面に位置するこれら残基は、コイルドコイル相互作用の選択性に寄与してる可能性が高い。
【0117】
図5Bは、LPSに応答するNF-κB活性化の阻害に対する10μM濃度のBODIPY-Ant-GCN4の効果を示す。コイルドコイル配列の効果を比較するため、本発明者らは上記の厳密な細胞アッセイ使用した。NF-κB活性化のレベルがペプチドを含まないコントロールのレベルに近かったので、BODIPY-Ant-GCN4は、BODIPY-Ant-LZとは異なり、NF-κB活性化を阻害する能力を有さない。これら結果は、NEMOのLZペプチドが選択的コイルドコイル相互作用を通じてNF-κB活性化を阻害するという仮説を強力に支持する。
【0118】
アンテナペディア配列はNF-κBペプチド阻害剤のモノマー化を誘導する
アンテナペディア配列は、α-ヘリカル両媒性構造を採用するタンパク質トランスダクションドメイン(PTD)である(Prochiantz、2000、Curr. Opin. Cell Biol.)。CC2又はLZのようなコイルドコイル配列のN末端に融合する場合、アンテナペディアは、分子内相互作用を通じて、コイルドコイルの疎水性界面を覆うことにより、コイルドコイル結合を変化させ得る。CC2及びLZペプチドのオリゴマー化特性に対するアンテナペディアペプチドのN-融合の効果を調べるために、本発明者らは、ゲル濾過により、そのN末端にアンテナペディア配列を含有するか又は含有しないペプチドを分析した。図6に示されるように、アンテナペディアのN末端融合を含有する全てのペプチドが、球状タンパク質マーカーと比較してそのモノマー形態に対応する溶出容積で同時溶出する。本発明者らは、ペプチド回収を向上させるために、cmc下の緩衝液に界面活性剤を添加しなければならなかったことに留意すべきである。同じ10μM濃度で注入した場合、アンテナペディアN-融合を有さないCC2野生型及びLZ野生型はオリゴマー化する。CC2(WT)はトリマーを形成する一方、LZ(WT)は最近報告されたようにダイマーを形成する(Traincardら)。予測されたように、CC2変異体がa位の両媒性残基の3つをグリシン残基で置換して化学的に得られた場合、これは、オリゴマー化する能力を喪失した(下パネル、破線)。LZ(変異体)で、d位の2つのL→S変異の効果は然程強くない。しかし、本発明者らは、10μM濃度でLZ変異体のダイマー化を依然として検出した(破線)が、その結合は、野生型LZ(実線)と比較して、変異により顕著に低減した。まとめると、これらデータは、両CC2及びLZペプチドへのアンテナペディア配列のN-融合がホモタイプコイルドコイル相互作用を変化させ、NEMO由来ペプチドのモノマー化を容易にすることを示している。更に、これら結果はまた、a位及びb位での残基変化がLZ及びCC2ペプチドのオリゴマー化を変化させることをを示す。したがって、合成ペプチドがαヘリカルコイルドコイル構造を形成する可能性が高い。
【0119】
アンテナペディア配列のN-融合を有するCC2及びLZペプチド並びに有さないCC2及びLZペプチドのホモタイプ及びヘテロタイプの相互作用
アンテナペディアのN-融合はCC2及びLZペプチドのオリゴマー化特性を改変するので、本発明者らは、次に、蛍光偏光により、BODIPYで標識したAnt-CC2及びAnt-LZモノマーが、アンテナペディア配列を有しないNEMO由来ポリペプチドと結合し得るかどうかを研究した。これらペプチドCC2及びLZはまた、細胞透過可能なBODIPY-Ant-CC2及びBODIPY-Ant-LZ NF-κB阻害剤の両方のインビボ結合標的として考えられ得る。図7は、種々の濃度のCC2ペプチドと固定濃度のBODIPY-Ant-CC2との相互作用についての代表的な結合等温線を示す。結合曲線の形状はS字状でない。このことは、CC2が協同性なくBODIPY-Ant-CC2ペプチドに結合することを示す。異方性の最初の部分の正接と漸近線との切片から算出した化学量論は、0.8に等しい。この化学量論を考慮して、解離定数KDは15.2μMである。本発明者らが以前に報告したように、同様な結果が、固定濃度のBODIPY-Ant-LZを種々の濃度のCC2ペプチドで滴定した場合に得られた(図7挿入図、Traincardら)。まとめると、これらデータは、両Ant-CC2及びAnt-LZモノマーがインビトロでNEMOの最小オリゴマー化ドメインを構成するCC2ペプチドに結合することを証明する。
【0120】
ヒト網膜芽細胞腫細胞における細胞死は、NF-κB阻害剤Ant-CC2及びAnt-LZにより誘導されるが、変異体Ant-CC2(Mu)及びAnt-LZ(Mu)によっては誘導されない
構成的に活性化されたNF-κB転写因子は、正常ヒト細胞のガン細胞への転換を示す細胞生理学上の6つの本質的な変化(総説についてはHanahan、2000、Cell)のほとんどを含む腫瘍形成の幾つかの局面に関連することが明らかになってきている(Karin総説)。このことは、新たな抗ガン治療としてのNF-κB阻害剤の使用に対する顕著な意欲を導く。見込みのある結果が、核転座をブロックするプロテアソーム阻害剤又はSN50ペプチドを使用して最近報告されている(Orlowski、2002、Trends in Molecular Medicine; Mitsiades、2002、Blood)。しかし、これら薬剤のNF-κB阻害に対する特異性は疑問とされている。Poulakiら(2002、Am J Pathol.)は、最近、SN50ペプチドでのヒト網膜芽細胞腫(Rb)細胞株Y79の処理がガン細胞のアポトーシスを誘導することを示した。マウス及びヒトNEMOタンパク質の配列アラインメントにより、NEMOの最小オリゴマー化ドメインが厳密に保存されていることが示される。このことは、NF-κB阻害の同様な効果がげっ歯類細胞及びヒト細胞で観察されることを示唆する。
【0121】
特異的NF-κB阻害がガン細胞のアポトーシスをトリガーするとして、本発明者らは、ヒト網膜芽細胞腫細胞の生存力に対する細胞透過可能なAnt-LZ及びAnt-CC2ペプチドの両方の効果を調べた。これらの実験において、本発明者らは、MTSアッセイとの干渉を防止するために、N末端BODIPY標識を有していないNEMO由来ポリペプチドを使用した(「材料及び方法」を参照)。図7に示されるように、本発明者らは、細胞をAnt-CC2(図8A)又はAnt-LZ(図8B)で3時間処理したときのY79細胞生存力の用量依存性を見出した。細胞死に対するAnt-LZペプチドの効果は、Ant-CC2のものより強かった。この細胞死誘導は有意であった。なぜなら、ガン細胞を20μM濃度のAnt-LZ及びAnt-CC2ペプチドで3時間処理したとき、Rb細胞生存がそれぞれ20%及び65%であったからである。驚くべきことに、Ant-CC2(Mu)(図8A)又はAnt-CC2(Mu)(図8B)での同じ細胞処理は、WTペプチドが細胞死を誘導する濃度で、細胞死を誘導しなかった。細胞死に対するこれらの効果は、本質的にNEMO配列に起因する。なぜなら、アンテナペディアペプチドでのY79細胞株のより長い処理は細胞生存に影響しなかったからである(図8C)。対照的に、80%及び55%のY79細胞が、5μM濃度のそれぞれAnt-LZ及びAnt-CC2の存在下で死亡した(図8C)。まとめると、これら結果は、Ant-CC2及びAnt-LZペプチドによる特異的NF-κB阻害が、Rb細胞株において細胞死を誘導することを示す。このことは、抗ガン化学療法としての特異的NF-κB阻害剤の使用を妥当化する。
【0122】
炎症増強シグナルの非存在下で、アッセイした全てのペプチドが、MTSアッセイ、顕微鏡下での直接観察、並びにFACS分析から演繹される前方散乱-FSC及び側方散乱-SSCパラメータによれば、30μMまでの濃度で試験したリンパ球に対して検出可能な細胞毒性を有しない。しかし、本発明者らは、FACSにより、NEMO由来ポリペプチドの存在下でLPSがpre-Bリンパ球を刺激した場合に、濃度依存性様式の僅かな細胞死を検出することができた。細胞死の細胞割合は、20μM濃度のAnt-CC2での刺激がない場合9%であったが、LPS刺激後には13%に増大した(データは示さず)。これは、アポトーシスからの細胞の保護におけるNF-κB経路の役割と一致した。細胞死は、構成的なNF-κB活性が報告されている(Poulaki、2002、Am J Pathol.)Rb細胞株Y79に対して、より明白で迅速であった。本発明者らは、ここでは、アネキシンV標識及びTUNEL法により、NEMOペプチド誘導細胞死が確かにアポトーシスであることを証明していない。にもかかわらず、アポトーシスの調節におけるNF-κB経路の役割を考慮すれば、NEMO由来ポリペプチドにより誘導される細胞死は性質的にアポトーシスである可能性が高い。
【0123】
上記の結果より、この分子事象は炎症増強シグナルに厳密に依存するので、将来のNF-κB阻害剤(有機又はペプチド模倣化合物)の性質にかかわらず、NEMOのオリゴマー化を標的することは、IKKキナーゼ活性及びNEMO-キナーゼ結合と比較して、より魅力的で見込みのあるストラテジーである。したがって、このような薬物は、細胞生存力に必要である正常細胞中の基礎NF-κB活性との干渉が少ない。
【0124】
野生型NEMOのN末端領域に由来するペプチド
本発明者らは、野生型NEMOのN末端領域、特に図1Aに見られるNLM保存モチーフ(配列番号12の残基293〜322)を調べた。この目的のため、以下の配列を作製した(対応配列については表1を参照):
NLM-DR (配列番号30)
Ant.NLM-DR (配列番号31)
Tat NLM-DR (配列番号32)
R7-NLM-DR (配列番号33)
R9-NLM-DR (配列番号34)
【0125】
NLM-DRは、図1Aに示したより長い30アミノ酸の保存NLMモチーフに由来する21アミノ酸の「モチーフ」(及び同じアミノ酸範囲をカバーする対応する野生型NLM)である。NLM-DRは、野生型NLM配列から、野生型配列中の残基11のアスパラギン酸がアルギニンにより置換されている点で変異している(表1及び配列番号30を参照)。
【0126】
本発明者らは、それぞれの協同性指数を測定することにより、NLM-DRを対応するNLMペプチドと比較した。このことは、野生型に対するNLM-DR変異ペプチドの利点を証明する。
Hill係数を用いる「共同性指数」の算出は以下の式に基づく:
Boundmax × Ln/(KDn+Ln)
式中、
Boundmaxは結合リガンドの最大濃度であり、
Lは遊離リガンドの濃度であり、
nは協同性指数であり、
KDはタンパク質によるリガンドの親和定数である。
【0127】
Hill係数計算を用いて算出された協同性指数は、
・変異体NLMペプチド(NLM-DR)については、170μMの解離定数Kd及び1.4(1326μM)の協同性指数;及び
・対応する野生型NLMペプチド(NLM)については、240μMの解離定数Kd及び2.1(99642μM)の協同性指数
である。
【0128】
これらの値が協同性を説明しない曲線から得られる値に匹敵する場合、NLM-DRペプチドの親和性は、野生型NLMペプチドの親和性より75倍高い。
本発明者らまた、NF-κB活性化経路の阻害、IC50及び毒性結果(FACS)に適用して、上記形態のNLM-DRについての生物学的関連する結果を評価した。結果を表2に示す:
【表3】

【0129】
上記の教示に照らして、本発明に対して多くの改変及び変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は本明細書に具体的に記載されたもの以外で実施し得ることを理解すべきである。
【0130】
参考文献
【0131】
【表4】

【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
【表8】

【0136】
【表9】

【0137】
【表10】

【0138】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】NEMOタンパク質の機能的ドメインを示す。
【図2】NEMOペプチド取り込みのフローサイトメトリー分析を示す。
【図3】細胞透過可能なAnt-CC2及びAnt-LZペプチドによるLPS誘導NF-κB活性化の阻害を示す。
【図4】LPSに対するNF-κB活性化の特異的阻害がCC2及びLZコイルドコイルの疎水性コア中の少数の変異に依存することを示す。
【図5】LZペプチドによるNF-κB活性化の阻害が特異的コイルドコイル鎖の形成を通じて起こることを示す。
【図6】アンテナペディア配列を伴うか又は伴わないNEMO由来ポリペプチドのオリゴマー化特性を示す。
【図7】CC2ペプチドとのAnt-CC2及びAnt-LZペプチドの結合を示す。
【図8】Ant-CC2及びAnt-LZペプチドにより網膜芽細胞腫細胞株Y79において誘導される細胞死を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチドが以下:
(a)配列番号2、配列番号3、配列番号6、配列番号7、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38及び配列番号39からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)(a)に規定されるものに相補的な精製ポリヌクレオチド;
(c)(a)に規定されるポリヌクレオチドに少なくとも70%同一である精製ポリヌクレオチド;
(d)(a)に規定されるポリヌクレオチドに少なくとも80%同一である精製ポリヌクレオチド;
(e)(a)に規定されるポリヌクレオチドに少なくとも90%同一である精製ポリヌクレオチド;及び
(f)50〜68℃の温度にて5×SSC中で洗浄することを含んでなるストリンジェントな条件下で、(a)に規定されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする精製ポリヌクレオチド
からなる群において選択される、NF-κBシグナル伝達経路を阻害するポリペプチドをコードする精製ポリヌクレオチド。
【請求項2】
ポリペプチドがNF-κB経路を阻害する請求項1に記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項3】
ポリペプチドがNEMOオリゴマー化を妨害する請求項2に記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1に記載の精製ポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項5】
請求項1に記載の精製ポリヌクレオチドを含んでなる宿主細胞。
【請求項6】
以下:
a)配列番号3、配列番号7、配列番号14、配列番号16、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38及び配列番号39からなる群において選択されるアミノ酸配列を有するNEMO型ポリペプチド;
b)a)に規定されるポリペプチドに少なくとも70%同一である精製ポリペプチド;
c)a)に規定されるポリペプチドに少なくとも80%同一である精製ポリペプチド;
(d)a)に規定されるポリペプチドに少なくとも90%同一である精製ポリペプチド;
(e)a)に規定されるポリペプチドに少なくとも95%同一である精製ポリペプチド
からなる群において選択されるNF-κB経路を阻害する精製ポリペプチド。
【請求項7】
NF-κB経路を阻害する請求項6に記載の精製ポリペプチド。
【請求項8】
NEMOオリゴマー化を妨害する請求項6に記載の精製ポリペプチド。
【請求項9】
以下:
a)配列番号3、配列番号7、配列番号14、配列番号16、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38及び配列番号39からなる群において選択され、且つ高トランスダクション能を有するポリペプチドに連結されているアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド融合構築物;
b)a)に規定されるアミノ酸配列に少なくとも80%同一なアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド融合構築物;
c)a)に規定されるアミノ酸配列に少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド融合構築物;
d)a)に規定されるアミノ酸配列に少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド融合構築物;
e)配列番号3、配列番号7、配列番号14、配列番号16、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38及び配列番号39からなる群より選択されるアミノ酸配列に少なくとも70%同一であり、且つ高トランスダクション能を有するポリペプチドに連結されているアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド融合構築物;
からなる群において選択されるアミノ酸配列を含んでなるNF-κB経路を阻害するポリペプチド融合構築物。
【請求項10】
ポリペプチド融合構築物がNEMOオリゴマー化を妨害する請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
連結が1〜35アミノ酸の範囲の長さを有するアミノ酸スペーサー配列による請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項12】
アミノ酸スペーサー配列が配列番号9及び配列番号10からなる群より選択される請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
高トランスダクション能を有するポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を有する請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項14】
ポリペプチド融合構築物が配列番号2、配列番号6、配列番号13及び配列番号15からなる群において選択されるアミノ酸配列を有する請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
インビトロで真核細胞を請求項9〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド融合構築物と接触させることを含んでなるNF-κBシグナル伝達経路を阻害する方法。
【請求項16】
インビトロでNEMOを請求項9〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド融合構築物と接触させることを含んでなるNEMOのオリゴマー化を妨害する方法。
【請求項17】
NF-κBシグナル伝達経路により調節される障害をその必要がある患者において調整するか又は治療する医薬の製造のための、請求項9〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド融合構築物と、1又はそれより多い医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤とを含んでなる有効量の組成物の使用。
【請求項18】
その必要がある患者がヒトである請求項17に記載の使用。
【請求項19】
有効量が0.1mg/Kg/日〜30mg/Kg/日の範囲である請求項17又は18に記載の使用。
【請求項20】
NF-κBシグナル伝達経路により調節される障害が炎症応答、腫瘍形成及びウイルス感染からなる群より選択される請求項17〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
組成物が経口、直腸、経鼻、非経口、槽内、膣内、腹腔内、舌下、局所及び口腔粘膜投与からなる群より選択される形態で投与される請求項17〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
組成物が好ましくは静脈内投与される請求項17〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
細胞増殖又はアポトーシスをその必要がある患者において調節する医薬の製造のための、請求項9〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド融合構築物と、1又はそれより多い医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤とを含んでなる有効量の組成物の使用。
【請求項24】
その必要がある患者がヒトである請求項23に記載の使用。
【請求項25】
有効量が0.1mg/Kg/日〜30mg/Kg/日の範囲である請求項23又は24に記載の使用。
【請求項26】
組成物が経口、直腸、経鼻、非経口、槽内、膣内、腹腔内、舌下、局所及び口腔粘膜投与からなる群より選択される形態で投与される請求項23〜25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
組成物が好ましくは静脈内投与される請求項23〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
抗原刺激におけるB又はTリンパ球をその必要がある患者において調節する医薬の製造のための、請求項9〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド融合構築物と、1又はそれより多い医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤とを含んでなる有効量の組成物の使用。
【請求項29】
その必要がある患者がヒトである請求項28に記載の使用。
【請求項30】
有効量が0.1mg/Kg/日〜30mg/Kg/日の範囲である請求項28又は29に記載の使用。
【請求項31】
組成物が経口、直腸、経鼻、非経口、槽内、膣内、腹腔内、舌下、局所及び口腔粘膜投与からなる群より選択される形態で投与される請求項28〜30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
組成物が好ましくは静脈内投与される請求項28〜31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
a)候補ポリペプチド配列を同定すること;
b)候補ポリペプチド配列を高トランスダクション能を有するポリペプチドにスペーサー配列を介して連結することによりポリペプチド融合構築物を創ること;
c)細胞培養物をポリペプチド融合構築物と接触させること;及び
d)NF-κBシグナル伝達経路の活性をモニターすること;
e)ポリペプチド融合構築物の存在下でのNF-κBシグナル伝達経路の活性を、ポリペプチド融合構築物の非存在下でのNF-κBシグナル伝達経路の活性と比較して、ポリペプチド融合構築物による相対的阻害を決定すること;及び
f)ポリペプチド融合構築物による相対的阻害をNEMOオリゴマー化に相関させること
を含んでなるNEMOのオリゴマー化を調整するポリペプチドを同定する方法。
【請求項34】
候補ポリペプチド配列がコイルドコイル又はヘリカル構造を有する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
候補ポリペプチド配列が20〜60アミノ酸を有する請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
候補ポリペプチド配列がNEMO由来である請求項33〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
スペーサー配列が1〜35アミノ酸の範囲の長さを有する請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
スペーサー配列が配列番号9及び配列番号10からなる群より選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
高トランスダクション能を有するポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を有する請求項33に記載の方法。
【請求項40】
細胞培養物が、2003年4月1日にフランス、75724 パリ セデックス15、リュ ドゥ ドクトール リュー 28のCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)に番号I-3004で寄託された、NF-κB依存性β-ガラクトシダーゼレポーター遺伝子でトランスフェクトされたpre-B 70Z/3リンパ球を含んでなる請求項33に記載の方法。
【請求項41】
ポリペプチド融合構築物がN末端システイン残基を更に含んでなる請求項33に記載の方法。
【請求項42】
b-1)ポリペプチド融合構築物を標識すること;及び
c-1)標識したポリペプチド融合構築物の細胞取込みをモニターすること
を更に含んでなる請求項39に記載の方法。
【請求項43】
標識がシステイン残基を蛍光体と化学的に反応させることを含んでなる請求項42に記載の方法。
【請求項44】
蛍光体がBODIPYである請求項43に記載の方法。
【請求項45】
細胞取込みをモニターすることがFACSによる請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−506422(P2007−506422A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527513(P2006−527513)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003352
【国際公開番号】WO2005/027959
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501474748)インスティティ・パスツール (27)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【住所又は居所原語表記】28,rue du Docteur Roux,F−75724 Paris Cedex 15 FRANCE
【出願人】(500488225)アンスティテュ ナシオナル ド ラ サント エ ド ラ ルシュルシェ メディカル(アンセルム) (26)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE(INSERM)
【住所又は居所原語表記】101,rue de Tolbiac,F−75654 Paris Cedex 13 France
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】