説明

NSAID含有ロゼンジの製造方法、その組成物、その医学的使用

(a)非ステロイド性抗炎症薬の塩(NSAID塩)及び溶媒系を含む液体組成物を提供するステップ、(b)溶融ロゼンジ形成用組成物を提供するステップ、(c)該液体組成物を該溶融ロゼンジ形成用組成物と混合するステップ、並びに(d)得られる混合物を治療有効量の前記NSAID塩/NSAID混合物をそれぞれ含むロゼンジに形成するステップを含む、医薬ロゼンジ製剤の製造方法。本出願は、咽頭炎治療用医薬の製造のための対応するNSAID含有ロゼンジ組成物及びその使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬ロゼンジ製剤の製造方法及びそれから得られるロゼンジ製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
治療有効量のNSAID、例えばフルルビプロフェンを含有するロゼンジ製剤が、咽頭炎の治療に使用されている。適切には、ロゼンジは、このような治療を必要とする患者によって舐められ、NSAIDが口腔に放出され、咽頭炎の表面(即ち粘膜)に送達される。
【0003】
NSAIDSは、一般的に、咽頭炎に付随する症状を軽減するが、NSAIDSは、一般的に、口中に保持されたときに、口の奥に不快な、焼けるような感覚をもたらす。このことは治療される患者には明らかに受け入れられない。従って、NSAIDを含有するロゼンジ製剤の製造方法は、それから形成されるロゼンジが咽頭炎の症状を軽減するが、患者が許容できない、焼けるような感覚を経験しないところで考案されてきた。
【0004】
The Boots Company PLCによる国際公開WO98/52539は、フルルビプロフェンを含むロゼンジ製剤の製造方法を開示している。該方法は、顆粒状のフルルビプロフェン組成物を形成するステップ、次いで該顆粒状組成物を溶融ロゼンジ形成用組成物と混合するステップ、及び得られる混合物をロゼンジに形成するステップを含む。得られるロゼンジは、咽頭炎の症状を、許容できない、焼けるような感覚を生じることなく効果的に軽減する。一般的には、しかしながら、ロゼンジは、酸度調節剤、乳白剤、安定化剤、緩衝剤、着香料、甘味料、着色料及び保存剤などの他の追加の成分を含む。これらの追加の成分は、フルルビプロフェン顆粒をそれに添加する前又は後のいずれかに、溶融ロゼンジ形成用組成物に添加することができる。別法として、これらの追加の成分を上記顆粒に混合することができる。予想外に、このような追加の成分、特に着香料が溶融ロゼンジ形成用組成物に添加される場合に、得られるロゼンジは、追加の成分、特に着香料が上記顆粒に混合される比較のロゼンジに比べて一般的により不安定であることが見出された。
【0005】
適切には、このような顆粒成分を用いるロゼンジ製造工程におけるNSAIDを含有する顆粒成分中への追加ロゼンジ成分(即ち着香料)の混合は、許容できない、焼けるような感覚を生じることなく咽頭炎の症状を軽減する、許容される安定性を有するロゼンジを提供しうるが、このようなロゼンジ製造工程を用いて様々な特徴及び性質を有するロゼンジを製造するためには、ロゼンジ製造工程の前にそれぞれのバッチが所望の追加のロゼンジ成分を含む上記顆粒成分の別々のバッチを作製することが一般的に必要である。例えば、様々な香りを有するロゼンジを製造するためには、NSAID及び特定の着香料を含有する第1の顆粒成分、並びにNSAID及び様々な着香料を含有する別の顆粒成分を作製し、次いで各バッチをロゼンジ製造工程に用いることが、安定性の考慮により望ましい。当然、これは不都合であるばかりでなく、それはロゼンジ製造工程の全体の費用と複雑さを一般的に増加させてもいる。
【0006】
更に、着香料が溶融ロゼンジ形成用組成物に添加される場合、それは一般的に液体(即ち着香料に加えてプロピレングリコール、トリアセチン、エタノール又は精油などの適切な担体)の形態であるか、又はそれは溶融ロゼンジ形成用組成物中に融解する。対照的に、着香料がNSAIDを含む顆粒成分に混合される場合、液体の着香料を顆粒成分中に混合することが一般的に難しいので、着香料は一般的に固体(即ち粉末)の形態である。しかしながら、得られるロゼンジの安定性の考慮により、着香料を顆粒成分に添加することが好ましい。不幸にも、しかしながら、固体形態のものに比べてより多くの種類の潜在的な液体形態の着香料があり、液体形態の着香料はそれらの固体の対照物に比べてより強力な香りを示す。このように、顆粒のNSAID成分を用いるロゼンジ製造工程によって、許容できない、焼けるような感覚を生じることなく咽頭炎の症状を効果的に軽減するロゼンジが製造されうるが、このような工程は得られるロゼンジ中に含めることができる可能性のある着香料の種類を一般的に制限し、得られるロゼンジの香りの強さを一般的に制限する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従って、ロゼンジ製造工程に関係する前述の技術的問題の1つ又は複数を克服することを究明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、本発明は
(a)非ステロイド性抗炎症薬の塩(NSAID塩)及び溶媒系を含む液体組成物を提供するステップ、
(b)溶融ロゼンジ形成用組成物を提供するステップ、
(c)上記液体組成物を上記溶融ロゼンジ形成用組成物と混合するステップ、並びに
(d)得られる混合物を治療有効量のNSAID塩/NSAID混合物をそれぞれ含むロゼンジに形成するステップ
を含むロゼンジ製剤の製造方法を提供する。
【0009】
このような方法は以降「本発明の方法」と呼ぶことができる。
【0010】
一般的に、NSAID塩及び溶媒系を含む液体組成物は特に室内温度及び室内圧力で許容される安定性を示す。都合よくは、液体組成物の大きなバッチを調製して後日に1つ又は複数のロゼンジ製造工程での使用のために貯蔵することができる。
【0011】
更に本発明の方法にNSAID塩を用いることによって得られるロゼンジは、一般的に、1種又は複数の任意選択のロゼンジの成分、即ち酸度調節剤、乳白剤、安定化剤、緩衝剤、甘味料、着香料、特に着香料がロゼンジ製造工程の任意の段階に含まれる場合に、許容される安定性を示す。好都合には、単に液体組成物の単一のストックをいくつかのバッチに分割し液体の各バッチを特定のロゼンジ製造工程に使用することによって、液体組成物の単一のストックから様々な特徴と性質を有するロゼンジを製造することが可能である。例えば、液体組成物のバッチを特定の香りを有するロゼンジを製造するのに使用することができ、液体組成物の別のバッチを異なる香りを有するロゼンジを製造するのに使用することができる。これは単にロゼンジ製造工程中に含まれる着香料を変更することによって達成することができる。都合よくは、本発明の方法に液体組成物を用いることによって、ロゼンジ製造工程の前に液体組成物の別々のバッチを作製する必要なく、様々な特徴と性質を有するロゼンジを製造することができる。
【0012】
都合よくは、本発明の方法における液体組成物の使用は、一般的に、ロゼンジ製造工程の柔軟性を増加し、複雑さを最小化し且つ全体の費用を削減する。
【0013】
更に、本発明の方法に使用される液体組成物、溶融ロゼンジ形成用組成物、液体組成物及び溶融ロゼンジ形成用組成物の混合物並びにそれらから形成されるロゼンジは、一般的に、着香料、特に液体着香料がそれに添加される場合に許容される安定性を示す。都合よくは、本発明の方法における液体組成物中へのNSAID塩の使用は、一般的に、顆粒のNSAID成分を使用するロゼンジ製造工程によって形成されるロゼンジと比較してより広い範囲の香りを有するロゼンジの形成を可能にする。更には、液体形態の着香料はその粉末の対照物に比べてより強力な香りを一般的に示すので、実質的により少量の着香料を含むより強力な香りを有するロゼンジを本発明の方法によって製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書に使用される「NSAID塩」という用語によって、本発明者らは、塩の形態の非ステロイド性抗炎症薬、即ちイブプロフェンナトリウム又はフルルビプロフェンナトリウムを意味する。本明細書に使用される「NSAID」という用語によって、本発明者らは、遊離酸の形態の非ステロイド性抗炎症薬を意味する。
【0015】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)は、プロスタグランジン(PG)の産生に関与する酵素である、シクロオキシゲナーゼ(Cox)を抑制する広く使用されるクラスの薬剤である。Coxは少なくとも2つの形態、即ちCox−1とCox−2を有する。本明細書で使用されるNSAID及びNSAID塩という用語は任意の形態のシクロオキシゲナーゼを抑制する任意の薬物を含むが、好ましくはNSAID又はその塩は選択的にCox−1とCox−2を抑制する。
【0016】
Cox−1を選択的に抑制する適切なタイプのNSAIDSは、次のカテゴリー、即ち
(1)プロピオン酸誘導体、
(2)酢酸誘導体、
(3)フェナム酸(fenamic acid)誘導体、
(4)ビフェニルカルボン酸誘導体
から選択することができる。
【0017】
本発明での使用のための適切なプロピオン酸誘導体には、それだけには限らないが、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラポプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、及びブクロキサン酸が含まれる。プロピオン酸グループの好ましいメンバーには、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン及びフェンブフェン、特にイブプロフェン及びフルルビプロフェン、特にフルルビプロフェンが含まれる。
【0018】
本発明での使用のための適切な酢酸誘導体には、それだけには限らないが、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、アルクロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナク及びオキシピナクが含まれる。酢酸グループの好ましいメンバーには、トルメチンナトリウム、ゾメピラクナトリウム、スリンダク及びインドメタシンが含まれる。
【0019】
本発明での使用のためのフェナム酸誘導体には、それだけには限らないが、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸及びトルフェナム酸が含まれる。フェナム酸グループの好ましいメンバーにはメフェナム酸及びメクロフェナム酸が含まれる。
【0020】
本発明での使用のためのビフェニルカルボン酸誘導体には、それだけには限らないがジフルニサル及びフルフェニサルが含まれる。
【0021】
本発明の方法に使用することができるCox−2薬の例には、Etodolac(AHP(Shire、英国)から得られる)、Meloxicam(Boehringer Ingelheimから得られる)、Nimesulide(Helsinnから得られる)、Rofecoxib(Merckから得られる)及びCelecoxib(Pfizer/Rocheから得られる)が含まれる。好ましくは、Cox−2薬はEtodolac又はMeloxicamである。
【0022】
適切には、本発明での使用のためのNSAIDSは一般的に異性を示す。適切には、用語NSAID及びNSAID塩はすべての立体異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体及びラセミ混合物を含めたそれらの混合物を含む。
【0023】
好ましくは、NSAID(及びNSAID塩)は選択的にCox−1を抑制する。より好ましくは、NSAID(及びNSAID塩)はプロピオン酸誘導体、特には本明細書で定義されるアリールプロピオン酸誘導体を含む。好ましいプロピオン酸誘導体には、ナプロキセン、フルルビプロフェン、イブプロフェン及びケトプロフェン、特にそのラセミ混合物及びS−光学異性体が含まれる。より好ましいプロピオン酸誘導体には、フルルビプロフェン及びイブプロフェン、特にそのラセミ混合物及びS−光学異性体が含まれる。一層より好ましいプロピオン酸誘導体には、ラセミフルルビプロフェン及びラセミイブプロフェン、特にラセミフルルビプロフェンが含まれる。
【0024】
液体組成物のNSAIDは、塩の形態(即ち、それはNSAID塩である)である。
【0025】
液体組成物中のNSAIDの全量に対して、NSAIDの好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更により好ましくは95重量%以上、更により好ましくは97重量%以上、更により好ましくは99重量%以上が、塩の形態である。最も好ましくは、液体組成物中のNSAIDの本質的にすべてが、塩の形態である。
【0026】
好ましくは、本明細書で定義される本発明の方法は、NSAIDのpKaを上回るpHにおいて実施される。適切には、本発明の方法によって形成されるロゼンジ中のNSAIDは、一般的に、塩の形態である。しかしながら、液体組成物中のある割合のNSAID塩はロゼンジ製造工程中にNSAID(即ち遊離酸)に変換することができること、又は液体組成物中のある割合のNSAIDは、遊離酸の形態であってもよいことは当分野の技術者には理解されよう。従って、上記ロゼンジは、NSAID塩のみの、又は前記NSAID塩及び前記遊離酸の形態のNSAIDの混合物の治療有効量を含むことができる。従って、ロゼンジ中の「治療有効量のNSAID塩/NSAID混合物」という用語によって、本発明者らは、ロゼンジ中のNSAID塩/NSAID混合物の全量が治療効果を提供することができるように、ロゼンジ中の本質的にすべてのNSAIDが塩の形態であること、又はロゼンジがNSAID塩及び遊離酸の形態のNSAIDの混合物を含むことを意味する。従って、本発明の方法によって製造されるロゼンジ中の少なくともある割合のNSAIDは、塩の形態である。
【0027】
本発明の方法によって形成されるロゼンジ中の前記NSAID塩/NSAID混合物の全量に対して、NSAID塩/NSAID混合物の、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更により好ましくは40重量%以上、更により好ましくは50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更により好ましくは85重量%以上、更により好ましくは90重量%以上、更により好ましくは95重量%以上、更により好ましくは97重量%以上、更により好ましくは99重量%以上が、塩の形態のNSAIDを含む。適切には、本発明の方法によって形成されるロゼンジ中の前記NSAID塩/NSAID混合物の全量に対して、NSAID塩/NSAID混合物の残余が、遊離酸の形態のNSAIDを含む。従って、本発明の方法によって形成されるロゼンジ中の前記NSAID塩/NSAID混合物の全量に対して、NSAID塩/NSAID混合物の、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更により好ましくは60重量%以下、更により好ましくは50重量%以下、更により好ましくは40重量%以下、更により好ましくは20重量%以下、更により好ましくは10重量%以下、更により好ましくは5重量%以下、更により好ましくは3重量%以下、更により好ましくは1重量%以下が、遊離酸の形態の前記NSAIDを含む。
【0028】
最も好ましくは、ロゼンジ中のNSAID塩/NSAID混合物の全量に対して、本発明の方法によって形成されるロゼンジのNSAID塩/NSAID混合物中の本質的にすべてのNSAIDが、塩の形態である。
【0029】
好ましいNSAID塩には、アルカリ金属塩(即ち周期律表のI族の元素のもの)、特にナトリウム又はカリウム;アルカリ土類金属塩(即ち周期律表のII族の元素のもの)、特にカルシウム又はマグネシウム;他の金属塩、例えばアルミニウム塩;アミノ酸塩、例えばリシン又はアルギニン塩;或いはアミン塩、例えばメグラミン(meglamine)塩が含まれる。
【0030】
好ましい塩には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩及びアミノ酸塩が含まれる。より好ましい塩には、アルカリ金属塩及びアミノ酸塩が含まれる。最も好ましい塩には、アルカリ金属塩、特にナトリウム塩又はカリウム塩、特にカリウム塩が含まれる。
【0031】
適切には、本発明の方法での使用のための極めて好ましいNSAID塩は、本明細書で定義されるプロピオン酸誘導体のナトリウム塩又はカリウム塩、好ましくはラセミイブプロフェン又はラセミフルルビプロフェンのナトリウム塩又はカリウム塩、より好ましくはラセミフルルビプロフェンのナトリウム塩又はカリウム塩、特にラセミフルルビプロフェンのカリウム塩を含む。
【0032】
適切には、NSAID塩は、液体組成物の全重量に対して、液体組成物の、10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、最も好ましくは20重量%以上の量で存在する。
【0033】
適切には、NSAID塩は、液体組成物の全重量に対して、液体組成物の、80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下、最も好ましくは65重量%以下の量で存在する。
【0034】
液体組成物中のNSAID塩の量、ひいては本発明の方法によって形成されるロゼンジ中のNSAID塩/NSAID混合物の量は、特に、用いられるNSAID塩の特定のタイプによることは、当分野の技術者には理解されよう。
【0035】
有効な治療のための単位用量は、各NSAIDについて当分野の技術者には周知である。例えば、それらはNSAIDを5mg、10mg、12.5mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、500mg、600mg及び800mgまで含むことができる。本発明の方法におけるようにNSAID塩が用いられる場合、通常、正確な単位用量は、上記に示された相当するNSAID用量を与えるよう選択される。
【0036】
本発明の方法によって形成されるロゼンジ中のNSAID塩/NSAID混合物の治療有効量は、一般的に、全身性の抗炎症性及び/又は鎮痛効果を達成するよう摂取によって与えられる場合の正常な成人用量の5%から40%である。フルルビプロフェン(遊離酸としての)は、一般的に、2.5から20mg、好ましくは5から12.5mgの量でロゼンジ中に存在する。イブプロフェン(遊離酸としての)は、5から100mg、より好ましくは10から50mgの量でロゼンジ中に存在してよい。適切には、NSAID塩が本発明の方法に使用されるときに、使用される上記塩の量は、得られるロゼンジ中で上記に定義されたフルルビプロフェン又はイブプロフェンの所望の量を提供するものであるべきである。
【0037】
適切には、NSAID塩/NSAID混合物は、一般的に、ロゼンジの全重量に対して、本発明の方法によって形成されるロゼンジの10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下の量で存在する。
【0038】
本明細書で使用される「ロゼンジ」という用語は、上記製品が糖ベース又は糖アルコールベース(例えばイソマルト)のNSAID塩/NSAID混合物を含有する融解した塊を冷却することによって形成されるすべての剤形を含む。適切には、「溶融ロゼンジ形成用組成物」という用語は、糖ベース又は糖アルコールベース(例えばイソマルト)の融解した塊を含む。
【0039】
ロゼンジは患者によって舐められることを目的とした固体の剤形である。適切には、本発明の方法によって得られる治療有効量のNSAID塩/NSAID混合物を含むロゼンジ製剤は、このような治療を必要とする患者への投与によって咽頭炎の治療に使用されることを目的としている。NSAID塩/NSAID混合物は、一般的に、口腔中でロゼンジから放出され、それによりNSAID又はその塩が咽頭炎の表面に送達される。予想外に、本発明の方法によって得られるロゼンジ製剤が咽頭炎を治療するのに使用される場合に、許容できない、焼けるような感覚は一般的に経験されないが、患者は咽頭炎の症状の軽減を受ける。
【0040】
好ましくは、溶媒系は、水、アルコール、ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルポリオールの誘導体から選択される1種又は複数の溶媒を含む。
【0041】
本明細書で使用される「アルコール」という用語によって、本発明者らは、単一の置換されていないヒドロキシル官能基を含む有機分子を意味する。好ましくは、アルコール中に存在する唯一の官能基は、置換されていないヒドロキシル官能基である。好ましくは、アルコールには、エタノール、ベンジルアルコール、ブタノール及びプロパノール、特にエタノールが含まれる。
【0042】
本明細書で使用される「ポリオール」という用語によって、本発明者らは、ポリオール誘導体が少なくとも1つの遊離(即ち置換されていない)ヒドロキシル官能基を含むことを条件に、2つ以上の場合によっては置換されたヒドロキシル官能基を含む有機分子を意味する。好ましくは、ポリオールは、2つ又は3つのヒドロキシ官能基を含む。より好ましくは、ポリオール中に存在する唯一の官能基が、ヒドロキシル官能基である。更により好ましくは、ポリオールのヒドロキシル官能基がまったく置換されていない、即ちヒドロキシル官能基のすべてが遊離のヒドロキシル官能基である。極めて好ましいポリオールには、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、エチレングリコール及びグリセロール、特にプロピレングリコールが含まれる。
【0043】
本明細書で使用される「ポリエーテルポリオール」という用語によって、本発明者らは、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール並びにポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールのコポリマーを意味する。好ましくは、ポリエーテルポリオールは、ポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコール、特にポリエチレングリコールである。ポリエーテルポリオールはある範囲の分子量を有することができる。適切なポリプロピレングリコールは、425、725、1,000、2,000、3,000及び4,000の数平均分子量(Mn)を有する。適切なポリエチレングリコールは、200、300、400、600、900、1,000、1,500、2,000、4,600、8,000、10,000及び20,000の数平均分子量(Mn)を有する。
【0044】
本明細書で使用される「ポリエーテルポリオールの誘導体」という用語によって、本発明者らは、ポリエーテルポリオールの1つ又は両方の末端ヒドロキシル官能基が置換されて異なる官能基が形成された、本明細書で定義されるポリエーテルポリオール(即ちポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール並びにポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールのコポリマー)を意味する。好ましいポリエーテルポリオールの誘導体には、ポリエーテルポリオールの1つ又は両方の末端ヒドロキシル基が、それぞれ、置換されてエーテル官能基が形成されたモノ−又はジ−エーテル誘導体;ポリエーテルポリオールの1つ又は両方の末端ヒドロキシル基が、それぞれ、置換されてエステル官能基が形成されたモノ−又はジ−エステル誘導体;及びポリエーテルポリオールの末端ヒドロキシル基の1つが、置換されてエーテル官能基が形成され、ポリエーテルポリオールの他の末端ヒドロキシル基が、置換されてエステル官能基が形成されたモノ−エーテル及びモノ−エステル誘導体が含まれる。エーテル及びエステル官能基は、可能な場合、そのヒドロキシ官能基も置換されてよい1つ又は複数のポリエーテルポリオールも含むことができる。ポリエーテルポリオールの極めて好ましい誘導体には、Tween(登録商標)グループの化合物、例えばTween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、Tween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)及びTween85(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート)並びにBrij(登録商標)グループの化合物(即ち、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル)、例えばBrij30、Brij35、Brij52、Brij56、Brij58、Brij72、Brij76、Brij78、Brij92が含まれる。最も好ましいポリエーテルポリオールの誘導体は、Tween化合物、特にTween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)及びTween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)である。
【0045】
本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、本明細書で定義される溶媒系は2種以上の溶媒を含む。好ましくは、溶媒系は、本明細書で定義される2種の異なる溶媒から本質的に構成される。溶媒系が「2種の異なる溶媒から本質的に構成される」という用語によって、本発明者らは、前記2種の異なる溶媒が、溶媒系中に存在する溶媒の全体積の、90体積%以上、好ましくは95体積%以上、より好ましくは97体積%以上、更により好ましくは99体積%以上を占めることを意味する。最も好ましくは、2つの異なる溶媒が、溶媒系に存在する唯一の2種の溶媒になる。
【0046】
同様に、液体組成物は、本明細書で定義される2種以上の溶媒を含むことができる。好ましくは、液体組成物は、本明細書で定義される2種の異なる溶媒から本質的に構成される。「液体組成物は2種の異なる溶媒から本質的に構成される」という用語によって、本発明者らは、前記2種の異なる溶媒が、液体組成物中に存在する溶媒の全体積の、90体積%以上、好ましくは95体積%以上、より好ましくは97体積%以上、更により好ましくは99体積%以上を占めることを意味する。最も好ましくは、液体組成物は、2種の異なる溶媒だけを含む。
【0047】
溶媒系及び/又は液体組成物中に存在する溶媒に関して本明細書で使用される「異なる溶媒」という用語によって、本発明者らは、溶媒系及び/又は液体組成物が、従って、第2の溶媒と異なる化学構造を有する第1の溶媒を含むことを意味する。例えば、第1の溶媒が、本明細書で定義されるポリオールであってよく、第2の溶媒が本明細書で定義されるポリエーテルポリオールであってよい。別法として、第1及び第2の溶媒の両方が、同じ属性群、例えば、第1の溶媒がプロパノールであり第2の溶媒がエタノールである、アルコールであってよい。
【0048】
従って、溶媒系は、前記第1及び第2の溶媒が本明細書で定義された通りである、第1の溶媒及び第2の溶媒を含むことができる。好ましくは、前記第1の溶媒は前記第2の溶媒と異なる。
【0049】
好ましくは、第1の溶媒は、本明細書で定義される、水、アルコール、ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルポリオールの誘導体から選択される。より好ましくは、第1の溶媒は、アルコール、ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルポリオールの誘導体を含む。更により好ましくは、第1の溶媒は、ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルポリオールの誘導体、特にポリエーテルポリオール及びポリエーテルポリオールの誘導体、特にポリエーテルポリオールを含む。
【0050】
好ましくは、第2の溶媒は、本明細書で定義される、水、アルコール、ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルポリオールの誘導体から選択される。より好ましくは、第2の溶媒は、水、アルコール及びポリオール、特に水を含む。
【0051】
第1の溶媒及び第2の異なる溶媒を含む極めて好ましい溶媒系には
(i)ポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコールを含む第1の溶媒、及び水を含む第2の溶媒、
(ii)ポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコールを含む第1の溶媒、及びアルコール、特にエタノールを含む第2の溶媒、
(iii)ポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコールを含む第1の溶媒、及びポリオール、特にグリセロール又はプロピレングリコールを含む第2の溶媒、
(iv)ポリエーテルポリオールの誘導体、特にTween(登録商標)タイプの化合物を含む第1の溶媒、及び水を含む第2の溶媒、
(v)ポリエーテルポリオールの誘導体、特にTween(登録商標)タイプの化合物を含む第1の溶媒、及びアルコール、特にエタノールを含む第2の溶媒、並びに
(vi)ポリエーテルポリオールの誘導体、特にTween(登録商標)タイプの化合物を含む第1の溶媒、及びポリオール、特にグリセロール又はプロピレングリコールを含む第2の溶媒
が含まれる。
【0052】
上記の(i)から(vi)に挙げられた極めて好ましい溶媒系のうち、溶媒系(i)から(iii)は、一般的に溶媒系(iv)から(vi)に比べてより好ましい。最も極めて好ましい溶媒系は、溶媒系(i)、特にポリエチレングリコール及び水の混合物を含む。
【0053】
好ましくは、第1の溶媒と第2の溶媒の割合(重量%)は、一般的に1:5、より好ましくは1:3、最も好ましくは1:2の範囲である。
【0054】
本発明の方法の別の一実施形態においては、溶媒系及び/又は液体組成物は、本明細書で定義される単一の溶媒から本質的に構成される。「単一の溶媒から本質的に構成される」という用語によって、本発明者らは、単一の溶媒が、溶媒系及び/又は液体組成物中にそれぞれ存在する溶媒の全体積の、90体積%以上、好ましくは95体積%以上、より好ましくは97体積%以上、更により好ましくは99体積%以上を占めることを意味する。最も好ましくは、単一の溶媒が、溶媒系及び/又は液体組成物中に存在する唯一の溶媒になる。
【0055】
適切には、溶媒系及び/又は液体組成物が、単一の溶媒から本質的に構成される場合、本明細書で定義される前記第1及び第2の溶媒は同一、即ち溶媒のそれぞれが同一の化学構造を有する。
【0056】
好ましくは、溶媒系及び/又は液体組成物が、単一の溶媒から本質的に構成される場合、単一の溶媒が、本明細書で定義される、アルコール、ポリオール、又はポリエーテルポリオールから選択される。より好ましくは、単一の溶媒は、アルコール又はポリオール、特にエタノール、プロピレングリコール又はグリセロール、特にプロピレングリコールから選択される。
【0057】
適切には、本明細書で定義される溶媒系は、液体組成物の全重量に対して、液体組成物の90重量%以下、好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更により好ましくは75重量%以下、更により好ましくは70重量%以下、更により好ましくは65重量%以下、最も好ましくは60重量%以下の量で存在する。
【0058】
適切には、本明細書で定義される溶媒系は、液体組成物の全重量に対して、液体組成物の20重量%以上、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更により好ましくは35重量%以上、更により好ましくは40重量%以上の量で存在する。
【0059】
液体組成物は、本明細書で定義されるNSAID塩を本明細書で定義される溶媒系と合わせることによって形成することができる。適切には、固体の形態のNSAID塩を溶媒系と、好ましくは混合しながら、且つ場合によっては加熱しながら合わせて液体組成物を形成することができる。好ましくは、しかしながら、液体組成物は、NSAIDそれ自体(即ち遊離酸の形態で)を使用する方法で形成される。
【0060】
従って、本発明の好ましい一実施形態によれば、液体組成物は、NSAID、塩基及び溶媒系を合わせることによって形成される。
【0061】
適切には、NSAID及び塩基が相互作用して溶媒系中にNSAID塩を形成する。NSAID、塩基及び溶媒系は、好ましくは、混合しながら、且つ場合によっては適切な場合には100℃までの温度で加熱しながら合わせる。
【0062】
適切には、NSAID、塩基及び溶媒系は、任意の順で合わせることができる。従って、NSAIDを全体の溶媒系に添加し、塩基を得られる混合物に添加して液体組成物を形成することができ、又は塩基を全体の溶媒系に添加し、NSAIDを得られる混合物に添加して液体組成物を形成することができる。別法として、塩基を溶媒系の一部に添加し、NSAIDを溶媒系の別の部分に添加し、次いでNSAID及び塩基をそれぞれ含むそれぞれの部分を合わせて液体組成物を形成することができる。
【0063】
好ましくは、NSAIDを溶媒系の一部に添加し、塩基を溶媒系の別の部分に添加し、次いでNSAID及び塩基をそれぞれ含むそれぞれの部分を合わせて液体組成物を形成する。
【0064】
従って、溶媒系及び/又は液体組成物が単一の溶媒で本質的に構成される、本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、NSAIDを単一の溶媒の一部に添加し、塩基を単一の溶媒の別の部分に添加し、次いでNSAID及び塩基をそれぞれ含む得られる部分の両方を合わせて液体組成物を形成する。より好ましくは、塩基を含む単一の溶媒の部分を、NSAIDを含む単一の溶媒の別の部分に添加する。上記に述べられたように、好ましくは、単一の溶媒が、アルコール、ポリオール、又はポリエーテルアルコール、より好ましくはアルコール又はポリオール、特にはエタノール、プロピレングリコール又はグリセロール、特にプロピレングリコールから選択される。
【0065】
溶媒系及び/又は液体組成物が本明細書で定義される2種以上の溶媒を含む、本発明の方法の別の好ましい態様によれば、特に溶媒系及び/又は液体組成物が2種の異なる溶媒から本質的に構成される場合、NSAID、塩基及び2種以上の溶媒を任意の順で合わせることができる。例えば、次の組合せが適切な可能性を示す。
(i)NSAID及び塩基の両方を第1の溶媒に同時又は逐次的のいずれかで添加し、次いで第2の溶媒を得られる混合物に添加して液体組成物を形成することができ、或いは
(ii)NSAIDを第1の溶媒に添加し、塩基を第2の溶媒に添加し、次いでNSAID及び塩基をそれぞれ含む得られる第1及び第2の溶媒の混合物を合わせて液体組成物を形成することができる。
【0066】
予想外に、NSAID及び塩基を最初に第1の溶媒に添加し、次いで第2の溶媒を得られる混合物に添加する場合(即ち上記(i))、塩基、NSAID及び第1溶媒の混合物は、操作し、且つ/又は第2の溶媒と溶媒和するのが難しいことがあることが見出された。特に、塩基、NSAID及び第1の溶媒の混合物は、第2の溶媒と溶媒和するのが難しい粘性のある半固体の塊を形成することがある。この効果は、第1の溶媒がポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリオールの誘導体を含む場合に特に顕著であることがある。
【0067】
従って、好ましくは、溶媒系及び/又は液体組成物が本明細書で定義される2種以上の溶媒を含む場合、NSAIDを第1の溶媒に添加し、塩基を第2の溶媒に添加し、次いでNSAID及び塩基をそれぞれ含む得られる第1及び第2の溶媒の混合物を合わせて液体組成物を形成する。より好ましくは、塩基を含む第2の溶媒の混合物を、NSAIDを含む第1の溶媒の混合物に添加する。適切には、このような方法は、一般的に、粘性の固体の塊の形成を排除し且つ/又は減少させる。好都合には、液体組成物は、一般的に、本発明の方法において取り扱い使用するのにより容易である。
【0068】
好ましくは、第1の溶媒及び第2の溶媒は本明細書で定義された通りである。特に、NSAID及び塩基をそれぞれ含む極めて好ましい第1及び第2の溶媒の混合物には、
(i)NSAID及びポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコールを含む第1の溶媒を含む第1の溶媒混合物と、塩基及び水を含む第2の溶媒混合物、
(ii)NSAID及びポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコールを含む第1の溶媒混合物と、塩基及びアルコール、特にエタノールを含む第2の溶媒混合物、
(iii)NSAID及びポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコールを含む第1の溶媒混合物と、塩基及びポリオール、特にグリセロール又はプロピレングリコールを含む第2の溶媒混合物、
(iv)NSAID及びポリエーテルポリオールの誘導体、特にTween(登録商標)タイプの化合物を含む第1の溶媒混合物と、塩基及び水を含む第2の溶媒混合物、
(v)NSAID及びポリエーテルポリオールの誘導体、特にTween(登録商標)タイプの化合物を含む第1の溶媒混合物と、塩基及びアルコール、特にエタノールを含む第2の溶媒化合物、並びに
(vi)NSAID及びポリエーテルポリオールの誘導体、特にTween(登録商標)タイプの化合物を含む第1の溶媒混合物と、塩基及びポリオール、特にグリセロール又はプロピレングリコールを含む第2の溶媒混合物
が含まれる。
【0069】
上記(i)から(vi)に挙げられた極めて好ましい第1及び第2の溶媒混合物のうちで、溶媒混合物(i)から(iii)は、一般的に、溶媒混合物(iv)から(vi)に比べてより好ましい。最も極めて好ましい第1及び第2の溶媒混合物は、上記に詳述された(i)、即ち、NSAID及びポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコールを含む第1の溶媒を含む第1の溶媒混合物と、塩基及び水を含む第2の溶媒混合物である。
【0070】
更に、溶媒系が2種以上の溶媒を含み、第1の溶媒が本明細書で定義されるポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリオールの誘導体、特にポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール)を含み、第2の溶媒がポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリオールの誘導体を含んでいない場合、NSAIDを第1の溶媒に添加し、塩基を第2の溶媒に添加することが、塩基を第1の溶媒に添加し、NSAIDを第2の溶媒に添加することに比べて望ましいこと(即ち、塩基よりもNSAIDを、ポリエーテルポリオール又は存在する場合にポリエーテルポリオールの誘導体に添加する)も見出された。予想外に、NSAIDがそれに添加される前に、塩基がポリエーテルポリオール又はその誘導体に添加される場合、ポリエーテルポリオール又はその誘導体は、一般的に、変色し、人目を引かない茶色を形成することがある。理論上だけのことであるが、塩基だけが含まれることがポリエーテルポリオール又はその誘導体の化学組成の変化、即ち分解を引き起こすかもしれないことは可能性がある。明らかに、このような反応が起こることは極めて望ましくない。
【0071】
従って、このような望ましくない副反応を減少させ、且つ/又は排除するために、溶媒系が本明細書で定義される第1及び第2の溶媒を含む場合、特に、第1の溶媒がポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリオールの誘導体を含み、第2の溶媒がポリエーテルポリオール又はその誘導体を含まない場合、塩基及び第2の溶媒を含む第2の溶媒混合物が、好ましくは、NSAID及び第1の溶媒を含む第1の溶媒混合物に添加される。好ましくは、第2の溶媒は水を含む。都合よくは、第1の溶媒と反応/相互作用できる遊離塩基の量は、一般的に、塩基がNSAIDと選択的に反応してNSAID塩を形成する最小/ごくわずかな量に保たれる。
【0072】
好ましくは、液体組成物は、溶液、特に無色溶液の形態である。
【0073】
適切には、溶媒系が2種以上の溶媒を含み、そのうち1種がポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリオールの誘導体であり、液体組成物がNSAID及び塩基を合わせることによって形成される場合、NSAIDは、ポリエーテルポリオール又はその誘導体に優先的に添加されて、ペーストを形成し、塩基は第2の溶媒に添加される。好ましくは、第2の溶媒は、アルコール又は水、特に水を含む。好ましくは塩基及び第2の溶媒を、NSAID及びポリエーテルポリオール又はその誘導体の混合物に添加することによって得られる溶媒混合物を混合することによって、一般的に溶液の形態の液体組成物が作製される。
【0074】
好ましくは、液体組成物がNSAID及び塩基を合わせることによって形成される場合、液体組成物に用いられる塩基のNSAIDに対するモル比は、一般的に、0.9以上:1、より好ましくは0.95以上:1、更により好ましくは0.99以上:1、最も好ましくはおおよそ1:1である。
【0075】
「塩基」という用語は、水に溶解された場合に7より大きいpHを有する溶液を生ずる任意の物質を含む。好ましい塩基には、アルカリ金属の塩(即ち周期律表のI族の元素のもの)、特にナトリウム又はカリウム、及びアルカリ土類金属の塩(即ち周期律表のII族の元素のもの)、特にカルシウム又はマグネシウムが含まれる。I族及びII族金属の適切な塩には、水酸化物、炭酸化物及び炭酸水素塩、好ましくは水酸化物が含まれる。別の好ましい塩基には、アンモニアなどのアミン及びリシン及びアルギニンなどの塩基性アミノ酸が含まれる。極めて好ましい塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リシン及びアルギニン、特に水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが含まれる。最も好ましい塩基は水酸化カリウムである。
【0076】
ロゼンジ形成用組成物が糖ベースである場合、スクロース又はグルコースなどの単糖を含むことができる。別法として、ロゼンジ形成用組成物は、糖の混合物(例えばスクロースとグルコースの混合物)を含むことができる。好ましくは、ロゼンジ形成用組成物が糖ベースである場合、糖、特にスクロース及びグルコースの混合物を含む。より好ましくは、ロゼンジ形成用組成物がスクロース及びグルコースの混合物を含む場合、ロゼンジ形成用組成物及び最終ロゼンジ中のスクロースのグルコースに対する重量比は、一般的に、1:1から1:2、好ましくは1:1から1:1.5の範囲である。
【0077】
本発明の方法に用いられる糖ベースのロゼンジ形成用組成物は、好ましくは液糖の形態である。本明細書に使用される「液糖」という用語によって、本発明者らは、適切な溶媒、好ましくは水を含む溶媒中に溶解された糖又は糖の混合物を意味する。最も好ましい液糖には、グルコース(例えばグルコースを含む65から90重量%の糖の固体)を含む水溶液を含む液体グルコース、及びスクロース(例えば55から80重量%のスクロース)の水溶液を含む液体スクロースが含まれる。適切には、液糖の本質的にすべての水が、本発明の方法中で蒸発する。
【0078】
ロゼンジ形成用組成物が、糖アルコールベースである場合、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、マルチトールシロップなどの水素化デンプン加水分解物又はそれらの混合物の1つ又は複数を含むことができ、それらは、遊離糖アルコール、それらの誘導体又はそれらの混合物の形態であってよい。好ましい糖アルコールベースのロゼンジ形成用組成物は、ソルビトール、マルチトール、及び水素化デンプン加水分解物又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む。より好ましい糖アルコールベースのロゼンジ形成用組成物は、ソルビトール、マルチトール及び水素化グルコースシロップ、即ちLycasinの商標で販売され、一般的にマルチトール、ソルビトール及び水素化オリゴ−及びポリ−サッカリドの混合物を含むマルチトールシロップの1つ又は複数を含む。好ましくは、糖アルコールベースのロゼンジ形成用組成物は、本明細書で定義される1種又は複数の糖アルコールから本質的に構成される。好ましくは、糖アルコールベースのロゼンジ形成用組成物は、糖から本質的に構成されない。
【0079】
好ましい糖アルコールベースのロゼンジ形成用組成物は、α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール及びα−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトール(Palatinat(登録商標)の商標で販売されているイソマルト)のほぼ等モルの混合物を、場合によってはLycasin(登録商標)などの水素化グルコースシロップと共に含む。別の好ましい糖アルコールベースのロゼンジ形成用組成物は、Lycasin(登録商標)などの水素化グルコースシロップを含む。極めて好ましい糖アルコールベースのロゼンジ形成用組成物は、イソマルト及びLycasin(登録商標)(即ちイソマルト及びマルチトールシロップ)の混合物を含む。
【0080】
好ましくは、本発明の方法によって製造されるロゼンジの全重量は、1g以上、より好ましくは1.5g以上、最も好ましくは2g以上である。
【0081】
好ましくは、本発明の方法によって製造されるロゼンジの全重量は、4g以下、より好ましくは3.5g以下、最も好ましくは3g以下である。
【0082】
好ましくは、ロゼンジ形成用組成物は、ロゼンジの全重量に対して、ロゼンジの90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、最も好ましくは97重量%以上の量で存在する。
【0083】
ロゼンジは、The Boots Company PLCによる欧州特許第0862424B(PCT/EP96/05208)に開示されたように、当分野の技術者に周知の標準の技術によって形成することができる。
【0084】
例えば、ロゼンジは、ロゼンジ形成用組成物(例えばスクロース及び液体グルコースの混合物)を好ましくは真空下で加熱して過剰な水を除去することによって形成することができる。一般的には、ロゼンジ形成用組成物を、110から175℃、特に糖ベースのロゼンジ形成用組成物については110から150℃及び糖アルコールベースのロゼンジ形成用組成物については145から175℃の範囲の温度で加熱する。液体組成物及び本明細書に記載される任意の他の選択の組成物を、次いで、溶融ロゼンジ形成用組成物中にブレンドする。適切には、液体組成物中に存在する1種又は複数の溶媒は、ロゼンジ製造工程中に蒸発しうる。得られる混合物の含水率は、一般的に、混合物の全重量に対して、5重量%以下、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。融解した混合物は、各ロゼンジが形成される個別の型に送ることができ、又はそれより個別のロゼンジが形成される連続した円筒形の塊に引くことができる。ロゼンジは、次いで冷却され、目視検査にかけられて適切な包装に詰められる。適切な包装の一形態は、金属の(例えばアルミニウム)箔で閉じられた水不浸透性プラスチック材料(例えばポリ塩化ビニル)を含むブリスター包装である。患者はブリスターに圧力を加えてロゼンジに金属箔シールを破裂させて通過させることによってロゼンジを取り出すことができる。ロゼンジは、通常、患者によって舐められてそれよりNSAID塩/NSAID混合物が放出される。
【0085】
本発明の方法によって形成されるロゼンジは患者が咀嚼することもできる。適切な咀嚼できるロゼンジは、1種又は複数の起泡剤、保湿剤、潤滑剤、着香料及び着色剤が添加された、液体組成物及び溶融ロゼンジ形成用組成物の押出された混合物から調製することができる(「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」:Tablets、Volume 1、Second Edition edited by H A Lieberman、L Lachman and J B Schwartz published in 1989を参照されたい)。
【0086】
ロゼンジは、酸度調節剤、乳白剤、安定化剤、緩衝剤、着香料、甘味料、着色剤及び保存料などの1種又は複数の任意選択の成分も含むことができる。これらの追加の成分を、液体組成物、溶融ロゼンジ形成用組成物、又は液体組成物と溶融ロゼンジ形成用組成物の混合物に添加することができる。適切には、ロゼンジ中に存在する、本明細書で定義される1種又は複数の任意選択の成分の全量が、一般的に、該ロゼンジの全重量に対して、5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。
【0087】
予想外に、NSAID塩及び溶媒系を含む液体組成物は、一般的に、前段落に記載された前記任意選択の1種又は複数の成分がそれに添加される場合に、許容される安定性を示す。特に、液体組成物、溶融ロゼンジ形成用組成物、及び液体組成物と溶融ロゼンジ形成用組成物の混合物は、一般的に、着香料、特に液体着香料がそれに添加される場合に、許容される安定性を示す。適切には、本発明の方法によって形成されるロゼンジは、一般的に、液体着香料がロゼンジ製造工程中に含まれる場合に、許容される安定性を示す。適切には、本発明の方法でのNSAID塩の使用は、固体及び液体着香料の両方の使用を可能にする。都合よくは、より広い範囲の適切な着香料が液体形態のみで入手可能であるので、本発明の方法は、一般的に、より広い範囲の香りを有するロゼンジの形成を可能にする。更に、液体形態の着香料は、一般的に、その粉末の対応物と比べてより強い香りを示す。適切には、実質的により少ない着香料を含む、より強い香りを有するロゼンジを本発明の方法によって製造することができる。
【0088】
従って、更なる一態様によれば、本発明の方法は、着香料、特に液体形態の着香料を含めるステップを更に含む。着香料は、ロゼンジ製造工程中の任意の時点で添加することができる。適切には、着香料を、液体組成物、溶融ロゼンジ形成用組成物又は液体組成物と溶融ロゼンジ形成用組成物の混合物の1つ又は複数に添加することができる。好ましくは、着香料は、溶融ロゼンジ形成用組成物及び/又は液体組成物と溶融ロゼンジ形成用組成物の混合物に添加される。最も好ましくは、着香料と液体組成物が、溶融ロゼンジ形成用組成物に別々に且つ実施的に同時に添加される。
【0089】
一般的に、本発明の方法によって作製されるロゼンジは、水中に溶解された場合に酸性のpHを示す。好ましくは、本発明の方法によって製造されるロゼンジの水溶液は、6.8以下、より好ましくは6.5以下、最も好ましくは6.0以下のpHを有する。好ましくは、本発明の方法によって製造されるロゼンジの水溶液は、5.0以上、好ましくは5.5以上のpHを有する。ロゼンジの酸性pHは、単にロゼンジの成分、例えば酸性でありうる着香料の酸性の性質の結果として起こりうる。酒石酸、マレイン酸又はクエン酸などの別々の有機酸が本発明の方法に含まれないことが好ましい。というのは、このような酸を含むことが、NSAID塩のNSAIDへの変換を促進しうるからである。
【0090】
本発明の第2の態様によれば、本発明の方法によって得られるロゼンジが提供される。
【0091】
好ましくは、ロゼンジは、本明細書で定義されるロゼンジ形成用組成物及び本明細書で定義されるNSAID塩/NSAID混合物を含む。より好ましくは、ロゼンジは、ロゼンジの全重量に対して、95重量%以上、より好ましくは97重量%以上の本明細書で定義されるロゼンジ形成用組成物、及び5重量%以下、より好ましくは3重量%以下のNSAID塩/NSAID混合物を含む。好ましくは、NSAID塩/NSAID混合物は、イブプロフェンのナトリウム若しくはカリウム塩、又はフルルビプロフェンのナトリウム若しくはカリウム塩、特にラセミフルルビプロフェンのナトリウム若しくはカリウム塩を含む。最も好ましくは、NSAID塩/NSAID混合物は、ラセミフルルビプロフェンのカリウム塩を含む。
【0092】
好ましくは、ロゼンジは、着香料を更に含む。適切には、着香料は、ロゼンジの全重量に対して、ロゼンジの3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下の量で存在する。
【0093】
前述の通り、液体組成物及び溶融ロゼンジ形成用組成物(例えば水)の混合物中の少なくともいくらかの成分は、ロゼンジ製造工程中に部分的に又は完全に蒸発しうる。他のより高い沸点の成分(例えば、液体組成物中に存在する場合のポリエーテルポリオール及びその誘導体及びポリオール)は、ロゼンジ製造工程中に蒸発しえない。適切には、ロゼンジは、ロゼンジの全重量に対して、5重量%以下、より好ましくは3重量%以下の本明細書で定義される1種又は複数の溶媒を含む。好ましくは、ロゼンジは、ロゼンジの全重量に対して、3重量%以下、より好ましくは2重量%以下の水を含む。好ましくは、ロゼンジは、ロゼンジの全重量に対して、2重量%以下、より好ましくは1重量%以下の、本明細書で定義されるポリオール、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリオールの誘導体、特にポリエーテルポリオールを含む。
【0094】
従って、第3の態様によれば、本発明は、本明細書で定義される溶融ロゼンジ形成用組成物を冷却することによって形成されるロゼンジベース中に含まれた、本明細書で定義される治療有効量のNSAID塩/NSAID混合物を含むロゼンジ製剤を提供する。
【0095】
好ましくは、NSAID塩/NSAID混合物は、ロゼンジの全重量に対して、5重量%以下、より好ましくは3重量%以下の量で存在する。好ましくは、ロゼンジベース(即ち、冷却された溶融ロゼンジ形成用組成物)は、ロゼンジの全重量に対して、95重量%以上、より好ましくは97重量%以上の量で存在する。
【0096】
好ましくは、NSAID塩/NSAID混合物は、ラセミフルルビプロフェンのカリウム塩を含む。好ましくは、NSAID塩/NSAID混合物は、2.5mgから20mgのフルルビプロフェン遊離酸と等価である量のラセミフルルビプロフェンのカリウム塩を含む。
【0097】
好ましくは、ロゼンジは本明細書で定義される着香料を含む。
【0098】
好ましくは、ロゼンジは、ロゼンジの全重量に対して、5重量%以下、より好ましくは3重量%以下の、本明細書で定義される1種又は複数の溶媒を含む。
【0099】
極めて好ましい糖ベースのロゼンジは、グルコース又はスクロース又はそれらの組合せ、3重量%以下の本明細書で定義される1種又は複数の溶媒、及び1重量%以下の1種又は複数の着香料を含む、溶融ロゼンジ形成用組成物を冷却することによって形成される、95重量%以上のロゼンジベースに含まれた、ラセミイブプロフェンのカリウム塩を含む、5重量%以下のNSAID塩/NSAID混合物を含む。
【0100】
極めて好ましい糖アルコールベースのロゼンジは、イソマルト又は水素化グルコースシロップ又はそれらの組合せ、3重量%以下の本明細書で定義される1種又は複数の溶媒及び1重量%以下の1種又は複数の着香料を含む、溶融ロゼンジ形成用組成物を冷却することによって形成される、95重量%以上のロゼンジベースに含まれた、ラセミイブプロフェンのカリウム塩を含む、5重量%以下のNSAID塩/NSAID混合物を含む。
【0101】
本発明によって提供されるロゼンジ製剤は、患者が舐めることができる、一般的にゆっくりとNSAID塩/NSAID混合物を放出する組成物である。NSAID塩/NSAID混合物は、次いで、喉の粘膜を通過し、そこでいくらかが吸収され局所的な軽減が提供される。吸収されないNSAID塩/NSAID混合物は、次いで患者によって摂取され、血流中に吸収される。このように吸収されるNSAID塩/NSAID混合物は、NSAID塩/NSAID混合物の喉の粘膜への局所適用から来る緩和に加えて、全身的に作用して鎮痛、抗炎症性及び解熱の作用を提供することができる。
【0102】
第4の態様によれば、本発明は、医薬における使用のための、特に咽頭炎の症状の治療及び/又は予防のための、本明細書で定義される又は本発明の方法によって得られるロゼンジを提供する。
【0103】
従って、本発明の第5の態様によれば、NSAID又はその塩を咽頭炎の表面に送達するように、口腔中にNSAID塩/NSAID混合物を放出する医薬の製造における、本明細書で定義されるNSAID塩、及び本明細書で定義される溶媒系、及び本明細書で定義されるロゼンジ形成用組成物を含む液体組成物の使用が提供される。
【0104】
本発明の各態様のすべての特徴は、本発明のすべての他の態様の好ましい特徴とみなすことができる。
【0105】
本発明が、これから次の非制限的な実施例を用いて例証される。
【実施例】
【0106】
(実施例1から33)
NSAID及び塩基からの液体組成物の調製
表1に詳述された実施例1から33の次の液体組成物を、場合によっては加熱しながら、高剪断(high shear)ミキサー(Silverson L4RT(ベンチ規模)及びSilverson AX−3(工場規模))を使用して、ラセミ形態のNSAIDを第1の溶媒と混合して第1の溶媒混合物を形成し、塩基を第2の溶媒と室温で混合して第2の溶媒混合物を形成し、次いで第2の溶媒混合物を室温で攪拌しながら第1の溶媒混合物にゆっくり添加することによって調製した。別法として、小規模な調製のために、NSAIDを、スパチュラ及び続いての手動による混合ステップを用いて、第1の溶液と混合することができる。
【0107】
PEG1000(実施例16)、PEG8000(実施例17)及びPEG20000(実施例23)が第1の溶媒として使用される実施例においては、フルルビプロフェンの分散を促進するために、PEGがフルルビプロフェンのそれへの添加の前に溶かされる。実施例24においては、少量の第2の溶媒(水)が、PEG20000に添加されてPEG中のフルルビプロフェンの分散が促進された。
【0108】
実施例25及び26においては、第1及び第2の溶媒は同じでありプロピレングリコールを含む。従って、これらの実施例の液体組成物は単一の溶媒だけからなる。
【0109】
実施例1から33のすべてにおいて、液体組成物は安定な無色の溶液である。
【0110】
【表1−1】


【表1−2】

【0111】
(実施例34から37)
NSAID塩からの液体組成物の調製
表2に詳述された実施例34から37の次の液体組成物を、ラセミ形態のNSAID塩を溶媒系と室温において高剪断(high shear)ミキサーを用いて混合することによって調製した。
【0112】
【表2】

【0113】
(実施例38から45)
糖ベースロゼンジの製造
糖ベースのロゼンジが、おおよそ同重量のスクロース及び液体グルコースからの糖の固体を含む、糖(スクロース)及び液体グルコース(グルコースを含む糖の固体80重量%及び水20重量%)の混合物を140℃の温度に加熱し真空を適用して混合物の含水率を減少させることによって調製される。実施例1から37の適切な量の液体組成物が、融解した糖及びグルコースの混合物にブレンドされ、得られる混合物が冷却されそれからロゼンジが形成される連続した円筒形の塊に形成される。個々のロゼンジが目視で検査され次いで包装される。
【0114】
酸度調節剤、乳白剤、安定化剤、緩衝剤、着香料、甘味料、着色剤及び保存料などの任意選択の成分を、液体組成物、融解したスクロース及びグルコースの混合物又は液体組成物と融解したスクロース及びグルコースの混合物の1つ又は複数に添加することができる。好ましくは、液体組成物が、融解した糖及びグルコースの混合物に添加されると同時に、着香料が、融解した糖及びグルコースの混合物に添加される。
【0115】
この方法で、ロゼンジ毎のミリグラムの重量として表された次の成分を含むロゼンジが調製された。
【0116】
【表3】

【0117】
実施例38及び42は、実施例16の液体組成物から調製され、実施例39は実施例17の液体組成物から調製され、実施例40は実施例1の液体組成物から調製され、実施例41は実施例14の液体組成物から調製され、実施例43から45は実施例11の液体組成物から調製された。着香料チェリー(International Flavors & Fragrancesからの15061357)及びレボメントール(Fuerst Day Lawson Ltd)は、液体着香料であり、液体組成物に添加された。得られたロゼンジは、味のよい、安定且つ有効な咽頭炎用の治療を提供することが見出された。
【0118】
(実施例46から53)
糖アルコールベースのロゼンジの製造
糖アルコールベースのロゼンジが、糖と液体グルコースの混合物が、最少量の水に溶解され、適切な場合にはLycasinも添加されるイソマルトで代替されることを除いて、糖ベースのロゼンジと同じ方法で調製される。得られる混合物は170℃に加熱されて、液体組成物及び他の任意選択の成分がそれに添加される。
【0119】
この方法で、ロゼンジ毎のミリグラムの重量として表される次の成分を含むロゼンジが調製された。
【0120】
【表4】

【0121】
実施例46及び50は、実施例16の液体組成物から調製され、実施例47は実施例17の液体組成物から調製され、実施例48は実施例1の液体組成物から調製され、実施例49は、実施例14の液体組成物から調製され、実施例51から53は実施例11の液体組成物から調製された。International Flavors & Fragrancesからの着香料チェリー(15061357)及びFuerst Day Lawson Ltdからのレボメントールは、液体着香料であり、液体組成物中に含まれた。
【0122】
得られるロゼンジは、味のよい、安定且つ有効な咽頭炎の治療を提供することが見出された。
【0123】
(実施例54から59)
水酸化カリウム及びポリエーテルポリオールの混合物の変色
表3に詳述された次の液体組成物が、水酸化カリウム(KOH)及び適切なポリエーテルポリオール(Tween(登録商標)80、Tween(登録商標)20、PEG300)の混合物を形成すること、及び任意選択で水、エタノール又はグリセロールを含むことによって調製された。水、エタノール又はグリセロールが存在する場合、水酸化カリウムが、最初に、室温において攪拌しながらこれらの溶媒の1つに溶解され、次いで、得られる溶液がポリエーテルポリオールと混合される。ポリエーテルポリオールが液体組成物中の唯一の溶媒である場合、水酸化カリウムが、攪拌しながらポリエーテルポリオールに直接添加される。各溶液の色変化が室温において24時間にわたって観察された。
【0124】
【表5】

【0125】
表3の結果は、水酸化カリウムがNSAIDの非存在下でポリエーテルポリオールに添加される場合、得られる液体組成物は変色することがあり、それにより得られる液体組成物が不安定でありうることが示唆されることを示している。
【0126】
対照的に、実施例1から33によって示されたように、最初にNSAIDをポリエーテルポリオールに添加し、次いで塩基をそれに添加することによって形成される液体組成物は、一般的に安定な無色の溶液を形成する。
【0127】
(実施例60から64)
NSAID塩を含む液体組成物の安定性研究
表4に詳述された次の液体組成物が、ラセミフルルビプロフェンをポリエチレングリコール400(PEG400)と室温において手動で混合してペーストを形成することによって調製された。塩基(水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム)を含む第2の水溶液が、室温において攪拌しながらラセミフルルビプロフェン及びPEG400を含む上記ペーストに添加されて無色の溶液が形成された。各液体組成物は、室温において24時間貯蔵されたときに無色の溶液のままであった。
【0128】
【表6】

【0129】
(実施例65から67)
NSAID塩及び着香料を含む液体組成物の安定性研究
着香料(実施例65)を含む液体組成物が、得られた溶液が、87.5mgのフルルビプロフェン及び100mgのレボメントールに相当する量を含むように、レボメントール(Fuerst Day Lawson Ltd)を実施例60に詳述された液体組成物に添加することによって調製された。同様に、87.5mgのフルルビプロフェン及び100mgのレボメントールに相当する量を含む、実施例66及び67と呼ばれる、着香料を含む液体組成物が、レボメントールを実施例61及び62のそれぞれの適切な量の液体組成物に添加することによって調製された。レボメントールを含む得られた液体組成物(実施例65から67)が、50℃において14日間ガラス瓶中に貯蔵され、次いで、分解生成物、特にフルルビプロフェン−メンチルエステルを検知するためにHPLCによって分析された。結果は表5に示されている。
【0130】
【表7】

【0131】
結果は、フルルビプロフェン及び着香料を含む液体組成物は、微量の分解生成物しか検知されなかったので許容される安定性を示すことを示している。
【0132】
(実施例68から70)
フルルビプロフェン及び着香料を含むロゼンジの安定性研究
実施例68と呼ばれる糖ベースのロゼンジが、得られたロゼンジが8.75mgのフルルビプロフェン遊離酸に相当する量のNSAID塩/NSAID混合物及び8mgのレボメントールを含むように、着香料としてレボメントール(Fuerst Day Lawson Ltd)を含む実施例62に詳述された液体組成物を用いて、実施例38から45に詳述された手順に従って調製された。同様に、実施例69及び70と呼ばれるロゼンジが、これらの実施例の得られたロゼンジがまた、8.75mgのフルルビプロフェン遊離酸に相当する量のNSAID塩/NSAID混合物及び8mgのレボメントールを含むように、実施例63及び64のそれぞれの液体組成物から調製された。
【0133】
ロゼンジは、40℃及び50℃において28日間貯蔵され、次いで分解生成物、特にフルルビプロフェン−メンチルエステル及びポリエチレングリコールエステル(PEGエステル)を検知するためにHPLCによって分析された。結果が表6に示されている。
【0134】
【表8】

【0135】
表6の結果は、本発明の方法によって製造された、着香料を含むロゼンジは許容される安定性を示すことを表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)非ステロイド性抗炎症薬の塩(NSAID塩)及び溶媒系を含む液体組成物を提供するステップ、
(b)溶融ロゼンジ形成用組成物を提供するステップ、
(c)液体組成物を溶融ロゼンジ形成用組成物と混合するステップ、並びに
(d)得られる混合物を治療有効量のNSAID塩/NSAID混合物をそれぞれ含むロゼンジに形成するステップ
を含む、医薬ロゼンジ製剤の製造方法。
【請求項2】
前記液体組成物が、NSAID、塩基及び溶媒系を合わせることによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒系が、水、アルコール、ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルポリオールの誘導体から選択される1種又は複数の溶媒を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒系のアルコールが、メタノール又はエタノール、好ましくはエタノールを含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒系のポリオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセロールを含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒系のポリエーテルポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びそれらのコポリマーを含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒系の前記ポリエーテルポリオールの誘導体が、ポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコールを含み、該ポリエーテルポリオールの末端ヒドロキシル基の1つ又は両方が、誘導体化されてエーテル及び/又はエステル官能基が形成されている、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒系が、第1の溶媒及び第2の溶媒を含み、前記第1及び第2の溶媒が、請求項3から7までのいずれか一項に記載のように、水、アルコール、ポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリエーテルエチルポリオールの誘導体を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の溶媒が、アルコール、ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルポリオールの誘導体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の溶媒が、水、アルコール又はポリオールを含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の溶媒が、前記第2の溶媒と異なる、請求項8から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液体組成物が、
(a)NSAIDを第1の溶媒と混合してNSAID及び第1の溶媒の混合物を形成するステップ、
(b)塩基を第2の溶媒と混合して塩基及び第2の溶媒の混合物を形成するステップ、並びに
(c)第1の溶媒の混合物を第2の溶媒の混合物と混合して液体組成物を形成するステップ
によって形成される、請求項8から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の溶媒が、ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコールの誘導体、特にポリエチレングリコールを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の溶媒が、水、アルコール又はポリオール、特に水を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒系が、請求項2から7までのいずれか一項に記載の単一の溶媒から本質的になる、請求項2から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記液体組成物が、NSAIDを前記単一の溶媒の第1の部分と混合するステップ、塩基を前記単一の溶媒の第2の部分と混合するステップ、及び次いで前記単一の溶媒の前記第1の部分を前記単一の溶媒の前記第2の部分と混合するステップによって形成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記単一の溶媒が、ポリオール、好ましくはプロピレングリコールを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記液体組成物、前記溶融ロゼンジ形成用組成物又は前記液体組成物及び前記溶融ロゼンジ形成用組成物の混合物の1つ又は複数に着香料を含めるステップを更に含む、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記NSAID塩が、アリールプロピオン酸の塩を含む、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記アリールプロピオン酸が、フルルビプロフェン又はイブプロフェン、好ましくはフルルビプロフェンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記NSAID塩が、前記NSAIDのI族金属塩、前記NSAIDのII族金属塩、又は前記NSAIDのアミノ酸塩、好ましくは前記NSAIDのI族金属塩を含む、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記NSAID塩が、前記NSAIDのナトリウム塩又はカリウム塩を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記溶融ロゼンジ形成用組成物が、1種又は複数の糖を含む、請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記溶融ロゼンジ形成用組成物が、スクロース及びグルコースの混合物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記溶融ロゼンジ形成用組成物が、1種又は複数の糖アルコールを含む、請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶融ロゼンジ形成用組成物が、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、水素化デンプン加水分解物、ラクチトール、マンニトール又はそれらの誘導体の1つ又は複数を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶融ロゼンジ形成用組成物が、α−D−グルコピラノシル−1,6−D−ソルビトール及びα−D−グルコピラノシル−1,1−D−マンニトールのほぼ等モルの混合物を含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶融ロゼンジ形成用組成物が、水素化グルコースシロップも含む、請求項25から27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1から27までのいずれか一項に記載の方法によって得られる医薬ロゼンジ製剤。
【請求項30】
溶融ロゼンジ形成用組成物を冷却することによって形成されるロゼンジベース中に含まれた治療有効量のNSAID塩/NSAID混合物を含む医薬ロゼンジ製剤。
【請求項31】
前記ロゼンジベースが、融解した糖ベース又は糖アルコールベースの融解した塊を冷却することによって形成される、請求項30に記載のロゼンジ製剤。
【請求項32】
前記NSAID塩/NSAID混合物を患者の喉の表面に送達するように、該患者の口腔への投与及び該患者が舐めることに続いて、治療有効量の前記NSAID塩/NSAID混合物を該患者の口腔に放出するよう適合された、請求項30又は31に記載の医薬ロゼンジ製剤。
【請求項33】
咽頭炎の症状の治療及び/又は予防のための、請求項29から32までのいずれか一項に記載の医薬ロゼンジ製剤。
【請求項34】
咽頭炎の治療用の医薬の製造における、前記NSAID又はその塩を咽頭炎の表面に送達するように、該医薬が前記NSAID塩/NSAID混合物を口腔に放出する、請求項1から28までのいずれか一項に記載の液体組成物及び請求項1から28までのいずれか一項に記載のロゼンジ形成用組成物の使用。

【公表番号】特表2008−531664(P2008−531664A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557571(P2007−557571)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000680
【国際公開番号】WO2006/092569
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(506254732)レキット ベンキーザー ヘルスケア (ユーケイ) リミテッド (5)
【Fターム(参考)】