説明

NSCLCの診断のためのGITR抗体

本発明は、癌、例えば上皮起源のNSCLC、例えば、肺癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌および大腸癌ならびに悪性腫瘍の進行を検出、診断、予測、およびモニターするための方法および組成物、ならびに該方法に用いるキットを提供する。さらに、これらの癌および悪性腫瘍に関連する抗原のアゴニストおよびアンタゴニストを同定するためのスクリーニング方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ヒトの癌および関連した悪性腫瘍の治療方法、診断方法、およびスクリーニング方法において有用な組成物および方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2005年1月19日に出願され、参照により本明細書にその全体が組み入れられる米国特許仮出願第60/645,349号の恩典を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
背景
医学研究におけるいちじるしい進歩にもかかわらず、癌は、米国で二番目に主な死因のままである。先進工業国では、およそ5人に1人が癌で死亡する。外科的切除、放射線療法、および化学療法などの臨床看護の従来の様式では、特に固形腫瘍について、有意な不全率を有する。不全は、初期腫瘍が、感受性が鈍いためか、または当初の部位および/または転移での再成長による再発のためか、いずれかによって生じる。
【0004】
肺癌は、世界的に最も一般的悪性腫瘍のうちの1つであり、男性における癌死の第二の主因である。American Cancer Society, Cancer facts and figures, 1996, Atlanta(非特許文献1)を参照されたい。1997年には、約178,100の新たな肺癌の症例が診断されており、癌診断の13%の原因であった。1997年には、肺癌による約160,400人の死は、全ての癌死の29%の原因であり、乳癌、前立腺癌および結腸直腸癌の組み合わせよりも肺癌での死亡が多い(Jemal, A. et al. (2004) Cancer Statistics 2004, CA: A Cancer Journal for Clinicians 53:5-26(非特許文献2))。肺癌についての1年生存率は、主に外科的技術の改善により、1973年の32%から1993年の41%に増大した。全ての段階を合わせた5年生存率は、14%だけである。生存率は、疾患がまだ局在しているときに検出された場合に関して48%であるが、早期に発見されるのは、肺癌の15%だけである。
【0005】
種々の形態の肺癌の中で、非小細胞肺癌(NSCLC)は、毎年全ての新たな肺癌症例のほぼ80%を占める。小細胞肺癌は、肺癌のうち最も悪性かつ最も速く増殖する形態である。原発腫瘍は、一般に化学療法に応答するが、広範な転移を伴う。診断時の生存期間の中央値は、約1年であり、5%の5年生存率である。NSCLCと診断される患者に対しては、外科的切除が、意味ある生存の唯一のチャンスを提供する。
【0006】
次の5つの種類の非小細胞肺癌が存在する:扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、腺扁平上皮癌、および未分化癌腫。腺扁平上皮癌は、顕微鏡下で観察した際に扁平に見える細胞で発生する。未分化癌腫細胞は正常細胞のようには見えず、かつ無制限に増加する。扁平上皮細胞癌は、最も一般的な種類の肺癌である。これは、気道に沿って並ぶ細胞から発生する。腺癌は、粘液(痰)を作る腺細胞または分泌細胞から発生する。大細胞肺癌は、顕微鏡下で観察した際に細胞が大きくかつ円形に見えるためにそのように名づけられた。
【0007】
非小細胞癌はまた、4つの臨床病期によって特徴づけられる。病期Iは、リンパ節における癌の無い、極めて局在的な癌である。病期IIの癌は、冒された肺の上部のリンパ節に広がっている。病期IIIの癌は、癌の発生部の近傍に広がっている。これは、胸壁、肺の被覆(胸膜)、胸部の中央(縦隔)、または他のリンパ節に広がる可能性がある。病期IVの癌は、身体の他の部位に広がっている。
【0008】
いくつかの抗体療法が、肺癌を処置するために開発下にある。セツキシマブおよびギフィチニブが、これらの癌に対し、米国食品医薬品局に承認されている。化学療法と併用したセツキシマブはNSCLC患者に対しある程度の効果をもたらしたが、さらなる試みがなお必要である。Kelly, K. et al. (2003) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 22:644(非特許文献3)。
【0009】
したがって、NSCLCに対する効果的な処置が依然として必要である。本発明は、この必要性を満たし、同時に関連する利点を提供する。
【0010】
【非特許文献1】American Cancer Society, Cancer facts and figures, 1996, Atlanta
【非特許文献2】Jemal, A. et al. (2004) Cancer Statistics 2004, CA: A Cancer Journal for Clinicians 53:5-26
【非特許文献3】Kelly, K. et al. (2003) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 22:644
【発明の開示】
【0011】
発明の開示
本発明は、細胞の状態の診断を補助するための、正常細胞と新生物性細胞とを同定および/または区別するための、並びに新生物を逆転および/または被検体に新生物性細胞が存在することと関連する症候を寛解させるための、組成物および方法を提供する。
【0012】
したがって、本発明の態様は、表1で同定された示差的に発現する遺伝子の存在をスクリーニングすることによって、細胞の状態を診断する方法に向けられる。一つの局面において、遺伝子の示差的発現は、上皮起源の細胞、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、乳癌、前立腺癌および大腸癌細胞の新生物状態を表す。発現は、例えば、遺伝子から転写されるmRNAの量、または遺伝子から転写されるmRNAの逆転写によって産生されたcDNAの量、または遺伝子によってコードされるポリペプチドもしくはタンパク質の量を検出する段階を含む、任意の適切な方法によって検出することができる。これらの方法は、試料に基づいて、またはハイスループット解析用に修飾することにより、試料に対して行うことができる。加えて、細胞試料から単離された定量的完全もしくは部分的転写物またはタンパク質配列を含むデータベースにより、転写物または発現された遺伝子産物の存在および量について検索し、および解析することができる。
【0013】
本発明のもう一つの局面は、新生物および腫瘍を逆転させるか、または治療する治療剤を同定するためのスクリーニングであり、前記細胞および/または腫瘍が、表1で同定されるポリペプチドまたはタンパク質の示差的発現によって特徴づけられる。本方法は、この遺伝子型を有することが以前に同定された細胞を有効な量の潜在性薬剤と接触させる段階、および新生物状態の逆転についてアッセイする段階を含む。
【0014】
表1で示されるタンパク質、それらの断片、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(本明細書において、遺伝子発現産物とも称される)、これらのポリヌクレオチドを含む遺伝子送達媒体、およびこれらのポリヌクレオチドを含む宿主細胞がさらに提供される。タンパク質、ポリペプチド、またはそれらの断片は、これらの分子を特異的に認識し、かつ結合する抗体を作製するためにも有用である。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであってもよい。これらの抗体は、ポリペプチドをコードする遺伝子から発現されるタンパク質またはポリペプチドを単離するため、および新生物性細胞または腫瘍を検出するために使用することができる。
【0015】
また、本発明は、表1において同定されたペプチドおよび/またはそれらの断片をコードするポリヌクレオチドを含む単離された宿主細胞および組換え宿主細胞を提供する。細胞は、原核生物または真核生物であってもよく、例えば例示するだけであるが、細菌、酵母、動物、哺乳類、ヒト、およびこれらの特定のサブタイプ、例えば幹細胞、樹状細胞(DC)もしくはT細胞などの抗原提示細胞(APC)のいずれか1つまたは複数であることができる。
【0016】
(表1)

*ウェブアドレス= ncbi.nlm.nih.gov/LocusLink/list.cgi.
【0017】
関心対象遺伝子の発現レベルを、異なる時間にてアッセイし、遺伝子の発現レベルを比較して、または発現が増減したかどうかを決定し、これにより被検体における癌をモニターすることにより、被検体における癌をモニターするための方法が本発明によってさらに提供される。診断法または薬物スクリーニングに使用するためのキットが、さらに本明細書に提供される。キットは、遺伝子の発現を検出する少なくとも1つの薬剤(例えば、プローブ、プライマー、または抗体)と使用説明書とを含む。
【0018】
配列表の簡単な説明
本明細書に使用されるように、「GITR遺伝子」という用語は、本明細書に記載したとおりの生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする、連続するポリヌクレオチド配列の少なくともORFをいう。前記LocusLinkは、この遺伝子によってコードされるタンパク質がTNF受容体スーパーファミリーのメンバーであることを報告している。この受容体は、T細胞活性化に発現増加を有することが報告されており、これが、CD25(+)CD4(+)抑制性T細胞によって維持される優性の免疫学的自己寛容において重要な役割を果たすと考えられる。また、マウスにおけるノックアウト研究は、この受容体の役割が、CD3駆動T細胞活性化およびプログラム細胞死の制御にあることを示唆する。異なるアイソフォームをコードするこの遺伝子の3つの選択的にスプライスされた転写物変異体が報告された。
【0019】
配列番号:1は、GITRポリヌクレオチド配列の一例であり、その他のものは、当技術分野において公知であり、その例には、表1に記載の配列および本明細書で定義したようなGITR遺伝子発現産物をコードする配列が含まれるが、これらに限定されることはない。また、配列番号:2のポリペプチドをコードする配列、およびデフォルト・パラメーター下で実行される同一性(%)配列分析によって決定すると配列番号:1などの例示的配列と少なくとも90%または少なくとも95%の相同性を有するものなどの生物学的に等価の配列もこの定義に含まれる。また、高ストリンジェンシー条件下でマイナス鎖にハイブリダイズする能力によって同定される生物学的に同等の遺伝子またはポリヌクレオチドもこの定義内にある。非ヒト遺伝子を使用することが望ましく、そのポリヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。例えば、UniGene Cluster Hs.212680を参照されたい。また、ポリヌクレオチド断片も当技術分野において公知であり、例えばGenbankアクセッション番号:BI911657.1;AI499936.1;AI214481.1;およびAI923712.1下で同定されるものを含むが、これらに限定されるわけではない。これらは、特にプローブまたはプライマーとして有用である。
【0020】
本明細書に使用されるように、「GITR遺伝子発現産物、タンパク質、またはポリペプチド」という用語は、遺伝子発現系、例えば細菌またはその他の原核細胞、酵母細胞、サル、ウシ、もしくはヒト細胞などの哺乳類細胞に関係なく、配列番号:2のアミノ酸配列、並びに上で同定されるGITR遺伝子から転写および翻訳されたアミノ酸配列を含む。本用語は、組織試料から単離された、単離された天然に存在するポリペプチド、並びに組換えで産生されたタンパク質およびポリペプチドを含む。また、本用語は、配列番号:2に対して少なくとも90%または少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を有し、かつ本明細書に記載されているとおりの生物活性を有するポリペプチドを含む。相同的アミノ酸配列の例は、配列番号:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは保存的アミノ酸置換によって修飾されたその他のGITR遺伝子発現産物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0021】
本発明を実施する様式
本開示を通じて、様々な刊行物、特許、および公開された特許明細書が、識別する引用によって参照される。これらの刊行物、特許、および公開された特許明細書の開示は、本発明が属する技術分野の現状をより詳しく説明するために、本開示内に参照として本明細書に組み入れられる。
【0022】
定義
本発明の実施は、特に明記していなければ、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来の技術を用い、これらは当業者の範囲内である。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd edition (1989); CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al. eds., (1987)); the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M.J. Mac Pherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, および ANIMAL CELL CULTURE (R.I. Freshney, ed. (1987))を参照されたい。
【0023】
本明細書に使用される特定の用語は、以下に定義された意味を有する。
【0024】
本明細書および請求の範囲において用いられるように、単数形「一つの(a、an)」および「その(the)」には、文脈が明白に他の意味を指示していない限り、複数の言及が含まれる。例えば、「一つの細胞(a cell)」という用語には、その混合物を含む複数の細胞が含まれる。
【0025】
範囲を含む全ての数値名、例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量は、(+)または(-)0.1の増分までの変更を加えた近似値である。常に明確に述べているのではないが、全ての数値名に「約」が先行することが理解される。また、常に明確に述べているのではないが、本明細書に記載されている試薬は、単に例示するだけであり、当技術分野に公知であるようにその同等物であることが理解される。
【0026】
「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはこれらの類似体のいずれかの任意の長さのヌクレオチドの重合体形態をいう。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を遂行してもよい。以下のものは、ポリヌクレオチドの非限定の例である:遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、EST、またはSAGEタグ)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝のポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾されたヌクレオチドを含むことができる。存在する場合は、ヌクレオチド構造に対する修飾は、重合体構築の前または後に与えることができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断することができる。ポリヌクレオチドは、標識化成分での抱合などにより、重合後にさらに修飾することができる。また、本用語は、二本鎖および一本鎖分子の両方をいう。他に明記され、または必要でない限り、ポリヌクレオチドである本発明の任意の態様は、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが公知であるか、または予測される2つの相補的一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0027】
ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基の特定の配列で構成される:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAの場合にグアニンに対してウラシル(U)。したがって、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表現である。このアルファベット表現は、中央処理装置を有し、かつ機能的ゲノム科学および相同性検索などの生物情報学的適用のために使用されるコンピュータのデータベースに入力することができる。
【0028】
「遺伝子」は、転写され、翻訳された後に特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含むポリヌクレオチドをいう。本明細書に記載されている任意のポリヌクレオチド配列は、これらに付随する遺伝子のより大きな断片または全長コード配列を同定するために使用してもよい。より大きな断片配列を単離する方法は、当業者に公知である。
【0029】
「遺伝子産物」または「遺伝子発現産物」は、遺伝子が転写され、翻訳されるときに産生されるアミノ酸(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)をいう。
【0030】
「ポリペプチド」という用語は、「タンパク質」という用語と交換可能に使用され、その最も広い意味において、2つまたはそれ以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド模倣物の化合物をいう。サブユニットは、ペプチド結合によって連結されていてもよい。もう一つの態様において、サブユニットは、その他の結合、例えばエステル、エーテルなどによって連結されていてもよい。本明細書に使用される、「アミノ酸」という用語は、グリシン、並びにDおよびL光学異性体の両方、アミノ酸類似体およびペプチド模倣物を含む、天然および/または非天然または合成アミノ酸のいずれかを意味する。3つまたはそれ以上のアミノ酸のペプチドは、ペプチド鎖が短ければ一般的にオリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長い場合、ペプチドは一般的にポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0031】
「転写制御下」とは、当技術分野で十分に理解されている用語であり、ポリヌクレオチド配列、通常はDNA配列の転写が、転写の開始に関与するか、または転写を促進するエレメントに、機能的に結合していることに依存することを示す。「機能的に連結された」とは、エレメントが、これらが機能するように配置されている近接位置を意味する。
【0032】
本明細書に使用される「含む(comprising)」という用語は、引用された要素を含む組成物および方法を意味することが企図されるが、他の要素を除外しない。「本質的にからなる(consisting essentially of)」とは、組成物および方法を定義するために使用した場合、組み合わせに対して本質的な重要性を有する他の任意の要素を除外することを意味する。したがって、本明細書に定義したとおりの要素から本質的になる組成物は、単離および精製法に由来する微量混入物およびリン酸緩衝生理食塩液、保存剤等などの薬学的に許容される担体を除外しないと考えられる。「からなる(consisting of)」とは、他の成分の微量以上の要素を除外して、本発明の組成物を投与するための実質的な方法工程を含むことを意味する。これらの移行用語のそれぞれによって定義される態様は、本発明の範囲に含まれる。
【0033】
「単離された」とは、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはこれらの断片が天然において通常付随する、構成成分、細胞、およびその他から分離されることを意味する。本発明の一つの側面において、単離されたポリヌクレオチドは、その自然または天然の環境において、例えば染色体上で通常結合している3’および5’配列から分離されている。当業者に明らかであるように、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはこれらの断片は、これを「単離」して天然に存在するその相対物と区別することを必要としない。さらに、「濃縮された」、「分離された」、または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはこれらの断片は、容積あたりの分子の濃度または数が、その天然に存在する相対物より顕著に「濃縮されている」またはあまり「分離されていない」という点において、その天然に存在する相対物と識別することができる。その一次配列、または例えばそのグリコシル化パターンによって天然に存在する相対物とは異なるポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはこれらの断片は、これをその一次配列によって、またはグリコシル化パターンのようなもう一つの特徴によって天然に存在する相対物と区別できることから、単離型で存在する必要はない。したがって、天然に存在しないポリヌクレオチドは、単離された天然に存在するポリヌクレオチドとは異なる態様として提供される。細菌細胞において産生されたタンパク質は、本来産生される真核細胞から単離された天然に存在するタンパク質とは異なる態様として提供される。
【0034】
本明細書に使用される「遺伝子送達」、「遺伝子移入」等は、導入のために使用される方法にかかわらず、宿主細胞に外因性ポリヌクレオチド(時に、「導入遺伝子」とも呼ばれる)を導入することを意味する用語である。このような方法には、ベクターを媒介した遺伝子移入(例えば、ウイルス感染/トランスフェクション、または様々なタンパク質に基づくもしくは脂質に基づく遺伝子送達複合体による)と共に「裸の」ポリヌクレオチドの送達を促進する技術(エレクトロポレーション、「遺伝子銃」送達およびポリヌクレオチドを導入するために用いられる様々な他の技術)などの多様な周知技術が含まれる。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞において安定または一過性に維持されてもよい。安定な維持は、典型的には導入されたポリヌクレオチドが、宿主細胞と適合性の複製開始点を含むか、または染色体外レプリコン(例えば、プラスミド)または核もしくはミトコンドリア染色体のような宿主細胞のレプリコンに組み入れられることを必要とする。多くのベクターが哺乳類細胞への遺伝子の移入を媒介できることが、当技術分野において公知である。
【0035】
「遺伝子送達媒体」とは、宿主細胞に挿入されたポリヌクレオチドを運ぶことができる任意の分子として定義される。遺伝子送達媒体の例は、リポソーム、天然ポリマー、および合成ポリマーを含む生体適合性ポリマー;リポタンパク質;ポリペプチド;多糖類;リポ多糖類;人工ウイルスエンベロープ;組換え酵母細胞、金属粒子;並びに細菌、またはバキュロウイルス、アデノウイルス、およびレトロウイルスなどのウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクター、並びに多様な真核および原核宿主において発現させるために記載されており、かつ遺伝子治療のために、並びに簡単なタンパク質発現のために使用してもよい当技術分野で典型的に使用されるその他の組換え媒体である。
【0036】
「ウイルスベクター」は、インビボ、エキソビボ、もしくはインビトロのいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む組換えで産生されたウイルスまたはウイルス粒子として定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター等が含まれる。セムリキ森林熱ウイルスに基づくベクター、およびシンドビスウイルスに基づくベクターのようなアルファウイルスベクターも同様に、遺伝子治療および免疫治療に使用するために開発されている。SchlesingerおよびDubensky(1999) Curr. Opin. Biotechnol. 5: 434-439 および Ying et al. (1999) Nat. Med. 5 (7): 823-827を参照されたい。遺伝子移入がレトロウイルスベクターによって媒介される局面において、ベクター構築物は、レトロウイルスゲノムまたはその一部と、治療遺伝子とを含むポリヌクレオチドをいう。本明細書に使用される「レトロウイルスを媒介した遺伝子移入」または「レトロウイルス形質導入」は、同じ意味を有し、ウイルスが細胞内に入り、そのゲノムを宿主細胞ゲノムに組み込むことによって遺伝子または核酸配列が宿主細胞に安定に導入されるプロセスをいう。ウイルスは、その通常の感染機構によって宿主細胞に入ることができ、またはこれが異なる宿主細胞表面受容体もしくはリガンドに結合して細胞に入るように改変することができる。本明細書に使用される、レトロウイルスベクターは、ウイルスまたはウイルス様の侵入機構によって細胞に外因性核酸を導入することができるウイルス粒子をいう。
【0037】
レトロウイルスは、RNAの形で遺伝子情報を有するが;しかし、ウイルスが細胞に感染すると、RNAをDNA型に逆転写して、これが感染細胞のゲノムDNAに組み込まれる。組み込まれたDNA型をプロウイルスと呼ばれている。
【0038】
遺伝子移入がアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)のようなDNAウイルスベクターによって媒介される局面において、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその一部と導入遺伝子とを含むポリヌクレオチドを意味する。アデノウイルス(Ads)は、比較的十分に特徴が調べられ、50血清型以上を含む均一なウイルスの群である。例えば、国際公開公報第95/27071号を参照されたい。アデノウイルスは容易に増殖して宿主細胞ゲノムに組み入れられる必要がない。組換えアデノウイルス由来ベクター、特に野生型ウイルスの組換えおよび増殖能を低下させたベクターも同様に構築されている。例えば国際公開公報第95/00655号および国際公開公報第95/11984号を参照されたい。野生型AAVは、宿主細胞ゲノムに組み入れられる高い感染性と特異性とを有する。Hermonat and Muzyczka (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470およびLebkowski et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:3988-3996を参照されたい。
【0039】
プロモーターおよびポリヌクレオチドが機能的に連結することができるクローニング部位の両方を含むベクターは、当技術分野で周知である。このようなベクターは、インビトロまたはインビボでRNAを転写することができ、Stratagene(La Jolla, CA)およびPromega Biotech(Madison, WI)などの供与源から市販されている。発現および/またはインビトロ転写を最適にするために、余分のおそらく不適当なもう一つの翻訳開始コドン、または転写もしくは翻訳レベルのいずれかで発現を妨害もしくは減少させる可能性がある他の配列を除去するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去、付加、または変化させる必要がある可能性がある。または、発現を増強するために、コンセンサスリボソーム結合部位を開始コドンのすぐ5’に挿入することができる。
【0040】
また、遺伝子送達媒体は、DNA/リポソーム複合体、標的化ウイルスタンパク質-DNA複合体を含むいくつかの非ウイルスベクターが含まれる。同様に、ターゲットされた抗体またはその断片も含むリポソームを本発明の方法に使用することができる。細胞への送達を増強するために、本発明の核酸またはタンパク質を細胞表面抗原、例えばTCR、CD3、もしくはCD4に結合する抗体またはこれらの結合断片に抱合させることができる。
【0041】
「プローブ」は、ポリヌクレオチド操作の状況において使用されるときは、標的とハイブリダイズすることにより、関心対象の試料中に潜在的に存在する標的を検出するための試薬として提供されるオリゴヌクレオチドをいう。通常、プローブは、標識、またはハイブリダイゼーション反応の前もしくは後のいずれかにおいて標識を付着することができる手段を含む。適切な標識は、放射性同位元素、蛍光色素、化学発光化合物、色素、および酵素を含むタンパク質を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
「プライマー」は、一般に、標的とハイブリダイズし、その後に標的に対して相補的なポリヌクレオチドの重合を促進することによって、関心対象の試料中に潜在的に存在する標的または「鋳型」と結合する、遊離の3’-OH基をもつ短いポリヌクレオチドである。「ポリメラーゼ連鎖反応法」(「PCR」)は、「上流」および「下流」プライマーからなる「プライマー対」または「プライマーのセット」と、DNAポリメラーゼ、典型的には熱的に安定なポリメラーゼ酵素などの重合触媒とを使用して、標的ポリヌクレオチドの複製コピーが作製される反応である。PCRのための方法は、当技術分野において周知であり、例えば“PCR: A PRACTICAL APPROACH“(M. MacPherson et al., IRL Press at Oxford University Press (1991))に教示されている。PCRまたは遺伝子クローニングなどのポリヌクレオチドの複製コピーを産生する全てのプロセスをひとまとめにして本明細書において「複製」と称する。また、プライマーは、サザンまたはノーザンブロット解析などのハイブリダイゼーション反応のプローブとしても使用することができる。Sambrook et al.,前記。
【0043】
発現「データベース」は、一まとまりの配列を表し、次に一まとまりの生物学的参考資料を表す記憶データのセットを意味する。
【0044】
「cDNA」という用語は、逆転写酵素などの酵素でcDNA内に作製される細胞または生物体内に存在するmRNA分子である相補的なDNAをいう。「cDNAライブラリー」は、全てが酵素逆転写酵素でcDNA分子に変えられて、次いで「ベクター」(外来性DNAの添加後に複製し続けることができるその他のDNA分子)に挿入された、細胞内または生物体に存在するmRNA分子の全てのコレクションである。ライブラリーのための例示的なベクターは、バクテリオファージ(「ファージ」としても知られる)、細菌に感染するウイルス、例えばλファージを含む。次いで、関心対象の特定のcDNA(およびしたがって、mRNA)についてライブラリーをプローブすることができる。
【0045】
本明細書に使用される「発現」は、それによってポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、および/またはそれによってその後にmRNAがペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを意味する。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞宿主におけるmRNAのスプライシングを含んでいてもよい。遺伝子に適用される「示差的に発現される」とは、遺伝子から転写および/または翻訳されるmRNA、または遺伝子によってコードされるタンパク質産物の示差的産生をいう。示差的に発現された遺伝子は、正常もしくは対照細胞の発現レベルと比較して過剰発現されていても、または過小発現されていてもよい。しかし、本明細書において使用されるように、過剰発現は、正常または健常な対照細胞または組織で検出される発現の少なくとも1.25倍、または少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍である。また、「示差的に発現される」という用語は、対照細胞において無変化の場合に発現されているか、または対照細胞において発現されている場合に発現されていない、細胞または組織内のヌクレオチド配列をいう。
【0046】
本明細書に使用される「固相支持体」または「固体支持体」は、交換可能に使用され、特定のタイプの支持体に限定されるわけではない。むしろ、多くの支持体を利用でき、当技術分野の当業者に公知である。固相支持体は、シリカゲル、樹脂、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、ワタ、プラスチックビーズ、アルミナゲル、マイクロアレイおよびチップを含む。本明細書に使用される「固相支持体」は、合成抗原提示マトリクス、細胞、およびリポソームを含む。適切な固相支持体は、所望の目的の用途および様々なプロトコルのための適切性に基づいて選択してもよい。例えば、ペプチド合成のためには、固相支持体は、ポリスチレン(例えば、 Bachem Inc., Peninsula Laboratories等から得られるPAM-樹脂)、ポリハイプ(登録商標)樹脂(Aminotech, Canadaから得られる)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratoriesから得られる)、ポリスチレングリコールを接合したポリスチレン樹脂(テンタゲル(登録商標)、Rapp Polymere, Tubingen, Germany)、またはポリジメチルアクリルアミドゲル(Milligen/Biosearch, Californiaから得られる)などの樹脂を適用してもよい。
【0047】
また、ポリヌクレオチドは、ハイスループットスクリーニングアッセイ法に使用するための固体支持体に付着することができる。例えば、PCT国際公開公報第97/10365号は、高密度オリゴヌクレオチド・チップの構築を開示する。また、米国特許第5,405,783号;同第5,412,087号;および同第5,445,934号も参照されたい。この方法を使用して、チップアレイとしても公知の、プローブを誘導体化されたガラス面上で合成する。光防護ヌクレオシド・ホスホラミダイトをガラス面に結合され、写真平板マスクを介した光分解によって選択的に脱保護し、第二の保護されたヌクレオシド・ホスホラミダイトと反応させる。所望のプローブが完了するまで、カップリング/脱保護プロセスを繰り返す。
【0048】
「ハイブリダイゼーション」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドがヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化される複合体を形成するように反応する反応である。水素結合は、ワトソン-クリックの塩基対形成、フーグスティーン(Hoogstein)結合によって、または任意の他の配列特異的様式で生じもよい。複合体は、二重鎖構造を形成する二つの鎖を含んでもよく、多重鎖複合体を形成する3つもしくはそれ以上の鎖、自己ハイブリダイズ鎖、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断などのより広範囲のプロセスにおける一段階を構成してもよい。
【0049】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」条件下で行うことができる。一般に、低ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション反応は、約40℃にて、10×SSC中で、または同等のイオン強度/温度の溶液にて実施される。中程度ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーションは、典型的には約50℃にて6×SSC中で行われ、高ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション反応は一般に、約60℃にて1×SSC中で行われる。
【0050】
ハイブリダイゼーションが、2つの一本鎖ポリヌクレオチド間の逆平行の配置で生じるときは、反応は、「アニーリング」と呼ばれ、これらのポリヌクレオチドは「相補的」と記載される。ハイブリダイゼーションが、第一のポリヌクレオチドの鎖の1つと第二との間で生じることができる場合、二本鎖ポリヌクレオチドは、もう一つのポリヌクレオチドに対して「相補的」または「相同的」であることができる。「相補性」または「相同性」(1つのポリヌクレオチドがもう一つと相補である程度)は、一般に認められる塩基対合則に従って互いに水素結合を形成することが予想される対向する鎖の塩基の比率に関して、定量化可能である。
【0051】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、もう一つの配列と「配列同一性」に関して特定の百分率(例えば、80%、85%、90%、または95%)を有し、これは並置して二つの配列を比較する場合に塩基(またはアミノ酸)の百分率が同じであることを意味する。このアラインメントおよび相同性%または配列同一性%は、例えばCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F. M. Ausubel et al., eds., 1987) Supplement 30, section 7.7.18, Table 7.7.1に記載されるプログラムなどの当技術分野において公知のソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。好ましくは、アラインメントのためにデフォルトパラメータを使用する。好ましいアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いるBLASTである。特に、好ましいプログラムは、以下のデフォルトパラメータを用いるBLASTNおよびBLASTPである:遺伝子コード = 標準;フィルター = なし;鎖 = 両方;カットオフ = 60;予測値 = 10;マトリクス(Matrix)= BLOSUM62;表示 = 50配列;選別 = ハイスコア;データベース = 非重複、GenBank + EMBL + DDBJ + PDB + GenBank CDS翻訳 + スイスプロテイン(SwissProtein) + SPアップデート + PIR。これらのプログラムの詳細は以下のインターネットアドレスで見ることができる:www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST。
【0052】
過形成は、構造または機能における有意な変化を伴わずに、組織または器官の細胞数の増加を含む制御された細胞増殖の形態である。異形成は、完全に分化した細胞の1つの型が、別の型の分化細胞に置換する制御された細胞増殖の形態である。異形成は、上皮または結合組織細胞に生じ得る。異型の異形成は、やや無秩序な上皮異形成を含む。
【0053】
本明細書に使用される「新生物性細胞」、「新生物」、「腫瘍」、「腫瘍細胞」、「癌」、および「癌細胞」という用語(交換可能に使用される)は、比較的自発的増殖を示し、その結果、これらは細胞増殖の制御の有意な喪失(例えば、調節解除された細胞分裂)によって特徴づけられる異常増殖表現型を示す細胞をいう。新生物性細胞は、悪性または良性であることができる。転移細胞または組織は、細胞が隣接する体内構造に侵入し、破壊することができることを意味する。
【0054】
腫瘍の増殖の「抑制」は、治療的介入がない場合の増殖と比較して、増殖が減少した状態を示す。腫瘍細胞の増殖は、腫瘍の大きさを測定すること、3H-チミジン取り込みアッセイ法を使用するか、または腫瘍細胞の計数によって腫瘍細胞が増殖するか否かを決定することを含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知の任意の手段によって評価することができる。腫瘍細胞増殖の「抑制」は、以下の状態のいずれかまたは全てを意味する:腫瘍の増殖の遅れ、遅延、および停止、並びに腫瘍縮小。
【0055】
「抗原」という用語は、当技術分野において周知であり、免疫原である物質を含む。また、本明細書に使用される本用語は、免疫学的無反応性またはアネルギーを誘導する物質を含む。
【0056】
「天然」、「自然」、または「野生型」抗原は、エピトープを含み、かつ自然生物学的起源から単離されたポリペプチド、タンパク質、または断片である。また、これは、抗原受容体と特異的に結合することができる。
【0057】
本明細書に使用される「抗体」は、完全抗体および任意のこれらの抗原結合断片または単鎖を含む。したがって、「抗体」という用語は、少なくとも一部の免疫グロブリン分子を含む任意のタンパク質またはペプチド含有分子を含む。このような例は、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)またはこれらのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、骨組み(FR)領域、またはこれらの任意の部分、または結合タンパク質の少なくとも1つの部分を含むが、これらに限定されるわけではなく、これらのいずれも、本発明の抗体に組み込むことができる。
【0058】
抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであることができ、任意の適切な生物源、例えば、マウス、ラット、ヒツジ、およびイヌから単離することができる。さらなる供与源を下に同定してある。
【0059】
「抗体」という用語は、消化断片、特定された部分、これらの誘導体、並びに変異体を包含することがさらに企図され、抗体擬態を含むか、または抗体もしくはこれらの特定された断片もしくは部分の構造および/または機能を模倣する抗体の部分を含み、単鎖抗体およびこれらの断片を含む。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例は、Fab断片、VL、VH、CL、およびCHドメインからなる一価の断片;F(ab')2断片、ヒンジ領域にてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;VHおよびCHドメインからなるFd断片;VHドメインからなる、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、dAb断片(Ward et al.(1989)Nature 341:544-546);並びに単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え法を使用して、VLおよびVH領域が対になって一価の分子を形成する単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として公知)として作製することを可能にする合成リンカーよって連結することができる。Bird et al. (1988) Science 242:423-426 およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad Sci. USA 85:5879-5883。また、単鎖抗体は、「抗体の断片」という用語の範囲内で包含されることが企図される。いずれの上記の抗体断片も、当業者に公知の従来技術を使用して得られ、断片は、無処置の抗体と同様に、結合特異性および中和活性がスクリーニングされる。
【0060】
「エピトープ」という用語は、抗体に対する特異的結合が可能なタンパク質決定因子を意味する。エピトープは、通常アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面グループ化からなり、通常特異的な三次元構造的特徴、並びに特異的電荷特性を有する。高次構造上と非高次構造上のエピトープは、後者ではなく前者のものに対する結合が変性溶媒の存在下において失われないという点で区別される。
【0061】
「抗体誘導体」という用語は、上記記載のとおりエピトープに結合し、かつ本発明の天然のモノクローナル抗体の修飾または誘導体である分子を包含することが企図される。誘導体は、例えば二特異的、多特異的、異種特異的、三特異的、四特異的、多特異的抗体(diabodies)、キメラ、組換え型、およびヒト化を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0062】
「二特異的分子」という用語は、2つの異なる結合特異性を有する任意の薬剤、例えば、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド複合体を含むことが企図される。「多特異的分子」または「異種特異的分子」という用語は、2つ以上の異なる結合特異性を有する任意の薬剤、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド複合体を含むことが企図される。
【0063】
「異種抗体」という用語は、共に連結された2つ以上の抗体、抗体結合断片(例えば、Fab)、これらの誘導体、または抗原結合領域であって、そのうちの少なくとも2つが異なる特異性を有するものをいう。
【0064】
本明細書に使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが企図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含んでいてもよい(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)。しかし、本明細書に使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒト骨組み配列に移植された抗体を含むことは企図されない。したがって、本明細書に使用される「ヒト抗体」という用語は、タンパク質の実質的にあらゆる部分(例えば、CDR、骨組み、CL、CHドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3)、ヒンジ(VL、VH))が、実質的にヒトにおいて非免疫原性である軽微な配列変化または変異のみをもつ抗体をいう。同様に、霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジー、その他)、齧歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)、およびその他の哺乳類を指定された抗体は、このような種、亜属、属、サブファミリ、ファミリー特異的抗体を指定する。さらに、キメラ抗体は、上記のものの任意の組み合わせを含む。このような変化または変異は、修飾されていない抗体と比較して、任意に、および好ましくは、ヒトもしくはその他の種における免疫原性を保持するか、または減少させる。したがって、ヒト抗体は、キメラ、またはヒト化抗体とは異なる。ヒト抗体は、機能的に再編成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖および/または軽鎖)遺伝子を発現することができるヒト以外の動物または原核生物もしくは真核生物の細胞によって産生することができることが指摘されている。さらに、ヒト抗体が単鎖の抗体であるときは、これは、天然のヒト抗体には見られないリンカー・ペプチドを含むことができる。例えば、Fvは、重鎖および軽鎖の可変領域の可変領域を接続する、2〜約8グリシンまたはその他のアミノ酸残基などのリンカー・ペプチドを含むことができる。このようなリンカー・ペプチドは、ヒト起源であるとみなされる。
【0065】
本明細書に使用されるヒト抗体は、抗体が例えばヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを免疫することによって、またはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって、ヒト免疫グロブリン配列を使用して系から得られる場合、特定の生殖系列配列に「由来する」。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に「由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較することによって同定することができる。選択されたヒト抗体は、典型的には、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列が少なくとも90%同一であり、その他の種の生殖系列免疫グロブリン・アミノ酸配列(例えば、マウス生殖系列配列)と比較したときに、ヒトと同様にヒト抗体を同定するアミノ酸残基を含む。一定の場合において、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%同一であってもよい。典型的には、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10アミノ酸相違を超える相違を示さない。一定の場合において、ヒト抗体は生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列から5を超えない、またはさらに4つ、3つ、2つ、もしくは1つを超える相違を示さない。
【0066】
本明細書に使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成の抗体分子の標品をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。
【0067】
「ヒト・モノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体をいう。
【0068】
本明細書に使用される「組換えヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックか、またはトランスクロモソーマル(transchromosomal)である動物(例えば、マウス)もしくはそこから調製したハイブリドーマから単離された抗体、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離された抗体、組換えコンビナトリアル・ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、およびヒト免疫グロブリン遺伝子配列のその他のDNA配列に対するスプライシングを含む任意の他の手段によって調製され、発現され、作製され、または単離された抗体などの、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、または単離された全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかし、一定の態様において、このような組換えヒト抗体をインビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列に対して動物トランスジェニックが使用されるときは、インビボ体細胞変異誘発)に供することができ、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し、並びに関連する一方で、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在していなくてもよい配列である。
【0069】
本明細書に使用される「アイソタイプ」は、重鎖定常域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいう。
【0070】
「トランスジェニック非ヒト動物」という用語は、ヒトの一つまたは複数の重鎖および/または軽鎖の導入遺伝子またはトランスクロモソーム(transchromosome)(動物の天然ゲノムDNAに組み込まれた、または組み込まれていない)を含み完全ヒト抗体を発現することが可能なゲノムを有する、ヒト以外の動物を意味する。例えば、トランスジェニックラットは、本ラットがヒト抗INF-α抗体を生成するように、ヒト軽鎖導入遺伝子、およびヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖トランスクロモソームのいずれかを有することができる。このヒト重鎖導入遺伝子はラットの染色体DNAに組み込むことができ、またはこのヒト重鎖導入遺伝子は、染色体外に維持することができる。トランスジェニック動物およびトランスクロモソーマル(transchromosomal)動物は、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチ(isotype switching)を経ることによって、αV(例えばIgG、IgA、および/またはIgE)に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプを生成することが可能である。
【0071】
「組成物」はまた、活性剤と、他の担体、例えばアジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩類、親油性溶剤、保存剤、アジュバントなどの不活性(例えば、検出可能な薬剤または標識)または活性な化合物または組成物との組み合わせを包含することが意図される。担体はまた、医薬賦形剤および添加物であるタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、および、糖質(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、およびオリゴ糖を含む糖;例えばアルジトール、アルドン酸、エステル型の糖などの誘導体化された糖;および多糖類または糖ポリマー)も含み、これらは単独で、または組み合わせて存在することができ、単独または組合せで1〜99.99の重量%または容量を占める。例示的なタンパク質賦形剤は、例えばヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどの血清アルブミンを含む。緩衝能力においても機能することができる代表的なアミノ酸/抗体成分には、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが含まれる。糖質賦形剤もまた本発明の範囲内にあることが意図され、これらの例には、限定されるものではないが、例えば果糖、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどの単糖;例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖;例えばラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖;ならびに例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール・ソルビトール(グルシトール)、およびミオイノシトールなどのアルジトールが含まれる。
【0072】
担体という用語は緩衝剤またはpH調整剤をさらに含み;典型的に、緩衝剤は有機酸または有機塩基から調製された塩である。代表的な緩衝剤は、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、もしくはフタル酸の塩類などの有機酸塩;トリス、塩酸トロメタミン、またはリン酸緩衝剤を含む。追加的な担体には、ポリビニルピロリドン、フィコール(高分子の糖)、デキストレート(dextrates)(例えば、2-ヒドロキシプロピル-直角(クアドラチュア(quadrature))-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、矯味矯臭剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化物、帯電防止剤、界面活性剤(例えば「TWEEN 20」および「TWEEN 80」などのポリソルベート)、脂質(例えばリン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えばコレステロール)、およびキレート剤(例えばEDTA)などの、高分子賦形剤/添加剤が含まれる。
【0073】
本明細書に使用される、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水乳剤、または水/油乳剤などの乳剤、および様々な種類の湿潤剤などの、標準的な任意の薬学的担体を包含する。組成物はまた、インビボでの使用に許容されるという追加的な条件で、安定剤および保存剤ならびに任意の上記の担体を含むことができる。担体、安定剤、およびアジュバントの例については、Martin REMINGTON'S PHARM. SCI., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton (1975) およびWilliams & Williams, (1995), ならびに「PHYSICIAN'S DESK REFERENCE」, 52nd ed., Medical Economics, Montvale, N.J. (1998)を参照されたい。
【0074】
「有効な量」とは、有益なまたは望ましい結果を生じさせるために十分な量のことである。有効な量は、1つもしくは複数の投与、適用、または投与量で投与することができる。
【0075】
本発明は、表1において同定される遺伝子によって発現されるポリペプチドまたはタンパク質上のエピトープを特異的に認識および結合する、抗体またはその変異体、誘導体、もしくは断片を提供する。ある局面において、抗体は単離される。別の局面において、抗体は適切な担体と組み合わせられる。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであることができ、かつマウス、ラット、サルの任意の種から単離するか、または組換えにより作製して単離することができる。これらのモノクローナルの抗体を作るハイブリドーマ細胞株もまた、担体と組み合わせて単独でまたは培養下で、本発明により提供される。
【0076】
免疫グロブリン鎖およびCDRを含むがこれに限定されない抗体、その変異体、誘導体、または断片を含むポリペプチドもまた、本発明により提供される。
【0077】
本発明は、さらに抗イディオタイプの抗体を提供する。抗イディオタイプ抗体は、本発明の抗体に組み込むことが可能な、重鎖もしくは軽鎖の少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)またはそのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖の可変領域、重鎖もしくは軽鎖の定常領域、フレームワーク領域、またはこれらの任意の部分等の、しかしこれらに限定されない、少なくとも一部の免疫グロブリン分子を含む分子を含有する、任意のタンパク質またはペプチドを含む。本発明の抗イディオタイプ抗体は、例えばヒト、マウス、ウサギ、ラット、げっ歯類、霊長類などの、しかしこれらに限定されない、任意の哺乳動物を含むかまたはこれらの動物に由来し得る。
【0078】
本発明は、本発明の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドを、ベクター、担体、薬学的に許容される担体、希釈剤、および宿主細胞と組み合わせて、単独でさらに提供する。
【0079】
ある局面において、本発明は、本発明の少なくとも一つの抗体または抗イディオタイプ抗体をコードし、少なくとも一つの特定の配列、ドメイン、部分、もしくは変異体を含むポリヌクレオチドを含む、このポリヌクレオチドに相補的な、またはこのポリヌクレオチドにハイブリダイズする、単離された核酸分子をさらに提供する。本発明は、ヌクレオチドを含む組換えベクター、核酸および/または組換えベクターを含有する宿主細胞、ならびにこのような核酸、ベクター、および/または宿主細胞を作製および/または使用する方法をさらに提供する。ポリヌクレオチドを単離する、複製する、および発現する方法は当技術分野において公知であり、かつ以下に記載されている。
【0080】
上記の一つまたは複数のものは、診断または治療の方法において、抗体または関連する組成物の使用に適切な、担体、薬学的に許容される担体、または医療装置とさらに組み合わせられる。
【0081】
本担体は、液相担体、または例えばビーズ、ゲル、またはリポソームなどの担体分子等の固相担体であることができる。組成物は、任意で少なくとも一つのさらなる化合物、タンパク質、または組成物をさらに含むことができる。
【0082】
「担体」の追加的な例には、他のペプチドまたはタンパク質(例えばFab'断片)などの治療的に有効な薬剤が含まれる。例えば、本発明の抗体、その変異体、誘導体、または断片は、他の抗体(例えば、二重特異性抗体または多重特異性抗体を作製するため)、細胞毒素、細胞リガンド、または抗原などの一つまたは複数の他の分子的単位に対して機能的に結合(例えば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合、またはその他による)することができる。したがって、本発明は、これらが本発明の抗体と同じエピトープを標的にしているかどうかに関わらず、多種多様な抗体複合体、二重特異性分子および多重特異性分子、ならびに融合タンパク質を包含する。
【0083】
担体のさらなる追加的な例は、共有結合により直接的または間接的に本発明の抗体に結合する、有機分子(変性剤とも呼ばれる)または活性化剤である。分子の結合は、薬物動態学的特性を向上させることができる(例えばインビボでの血清半減期の増加)。有機分子の例には親水性の高分子基、脂肪酸基、または脂肪酸エステル基が含まれるが、これらに限定されるものではない。本明細書で使用する場合、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸およびジカルボン酸を包含する。「親水性高分子基」は、本用語が本明細書において使用される場合、オクタンよりも水に溶けやすい有機ポリマーを意味する。
【0084】
本発明の抗体の修飾に適した親水性ポリマーは線状または分枝状のポリマーであることができ、かつ、例えばポリアルカングリコール(例えば、PEG、モノメトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)、PPGなど)、糖質(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖類など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸など)、ポリアルカンオキシド(例えば、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレンなど)、およびポリビニルピロリドンを含む。本発明の抗体を修飾する適切な親水性ポリマーは、別々の分子的単位で約800ダルトン〜約150,000ダルトンの分子量を有する。この親水性高分子基は、1個〜約6個のアルキル基、脂肪酸基、または脂肪酸エステル基により置換させることができる。脂肪酸基または脂肪酸エステル基により置換される親水性ポリマーは、適切な方法を用いることによって調製することができる。例えば、アミン基を含んでいるポリマーは脂肪酸または脂肪酸エステルのカルボキシラートに連結させることができ、脂肪酸または脂肪酸エステル上の活性化カルボキシラート(例えばN,N-カルボニルジイミダゾールを用いて活性化)は、ポリマー上の水酸基に連結させることができる。
【0085】
本発明の抗体の修飾に適した脂肪酸および脂肪酸エステルは、飽和させることができる、または不飽和の一つまたは複数のユニットを含有することができる。このようなものの例は、n-ドデカノアート、n-テトラデカノアート、n-オクタデカノアート、n-エイコサノアート、n-ドコサノアート、n-トリアコンタノアート、n-テトラコンタノアート、シス-Δ9-オクタデカノアート、全てのシス-Δ5,8,11,14-エイコサテトラエノアート、スベリン酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸等を含むがこれに限定されるものではない。適切な脂肪酸エステルは、線状または分枝状の低級アルキル基を含むジカルボン酸のモノエステルを含む。この低級アルキル基は、1個〜約12個、好ましくは1個〜約6個の炭素原子を含み得る。
【0086】
さらにもう一つの局面において、本発明は、上記に定義される本発明の抗体と類似した少なくとも一つのタンパク質サブタイプを中和する完全ヒトモノクローナル抗体を発現する、例えばトランスジェニックマウス(本明細書において、「HuMAbマウス」とも称される)などのトランスジェニック非ヒト動物を提供する。特定の態様において、このトランスジェニック非ヒト動物は、本発明の抗αV抗体を全てまたは一部コードするヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスである。好ましくは、トランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスは、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチを経ることによって、関心対象のエピトープに対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプを作製することが可能である。アイソタイプスイッチは、例えば、古典的なまたは非古典的なアイソタイプスイッチにより生じ得る。
【0087】
したがって、他の態様において、本発明は、例えばヒト抗体を発現するトランスジェニックマウスなどの上記のトランスジェニック非ヒト動物に由来する、またはこのトランスジェニック非ヒト動物から単離された、単離細胞を提供する。この単離されたB細胞はその後不死化細胞に融合させることによって不死化させ、ヒト抗体の供給源(例えばハイブリドーマ)を提供することができる。これらのハイブリドーマもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0088】
本発明は、当技術分野において公知のようにおよび/または本明細書において記載されているように、細胞、組織、器官、動物、もしくは患者において、および/または関連した状態の前、状態の後、または状態の間に、上皮起源の癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、または大腸癌を診断するための、少なくとも一つの抗体法または組成物をさらに提供する。これらは、疾患進行を予測するまたはモニターするために使用される。
【0089】
さらに、上皮起源の癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、および大腸癌と関連した症状の調整もしくは改善、またはそのような癌の少なくとも一つに対する処置に有効な量の投与に適切な、本発明の少なくとも一つの抗体、その変異体、誘導体、または断片を含有している組成物が提供される。本組成物は例えば薬学的組成物/キット、および診断的組成物/キットも含み、これらは薬学的に許容される担体、および本発明の少なくとも一つの抗体、その変異体、誘導体、または断片を含む。上記のように、本組成物は、追加的な抗体または治療薬剤をさらに含むことができ、これは組み合わさって、最大の治療的恩恵を提供するように調整された複数の治療法を提供する。
【0090】
あるいは、本発明の組成物は、それらに対して結合されているかまたは同じ投薬で投与されるかに関わらず、他の治療薬剤および細胞毒性薬剤と共に併用投与することができる。これらは、このような薬剤と同時に(例えば、単一の組成物で、もしくは別々に)併用投与することができるか、またはこのような薬剤の投与前もしくは投与後に投与することができる。このような薬剤は、コルチコステロイド、非ステロイド性免疫抑制剤、抗マラリア剤、および非ステロイド性抗炎症薬を含み得る。本組成物は、コルチコステロイド、非ステロイド性免疫抑制剤、抗マラリア剤、および非ステロイド性抗炎症薬の投与のような代替療法と併用することができる。
【0091】
本発明の方法は、インビトロでまたはインビボで実施することができる。インビトロで実施する場合、本方法は細胞を、上記の抗体を含む一つまたは複数の抗体および/または関連する治療組成物、誘導体等と接触させる(例えば、細胞に投与または送達する)ことを必要とする。
【0092】
本抗体および組成物は任意の適切な手段によって、および任意の適切な製剤を用いて送達することができる。したがって、本発明の抗体を含む製剤が本明細書においてさらに提供される。本製剤は、水様希釈剤中のフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、およびチメロサール、またはこれらの混合物などの、一つまたは複数の保存剤または安定剤をさらに含むことができる。例えば限定されるものではないが、0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、またはその中の任意の範囲または値のような、0.001〜5%またはその中の任意の範囲または値などの任意の適切な濃度または混合物が、当技術分野において公知のように使用され得る。非限定的な例には、保存剤を含まない、0.1〜2%のm-クレゾール(例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.9、1.0%)、0.1〜3%のベンジルアルコール(例えば0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001〜0.5%のチメロサール(例えば、0.005、0.01)、0.001〜2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005〜1.0%のアルキルパラベン(例えば0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、および1.0%)が含まれる。
【0093】
上記のように、本発明はパッケージ材と、ならびに任意で水様希釈剤において、所定の緩衝剤および/または保存剤と共に少なくとも本発明の時点での抗体の溶液を含む、少なくとも一つのバイアルとを含む製造品を提供する。ここで、該パッケージ材には、このような溶液が、1、2、3、4、5、6、9、12、18、20、24、30、36、40、48、54、60、66、72時間またはそれ以上の時間にわたって維持可能であることを示すラベルが含まれる。本発明はさらに、パッケージ材と、少なくとも一つの凍結乾燥された本発明の抗体を含む第一のバイアル、および所定の緩衝剤または保存剤の水様希釈剤を含む第二のバイアルとを含む製造品を含み、ここで、該パッケージ材には、水様希釈剤中で抗体を再形成して溶液を形成するよう患者に指示するラベルが含まれ、この溶液は、24時間またはそれ以上の時間にわたって維持することができる。
【0094】
再形成で生じる抗体包含量の範囲は、湿式/乾式である場合、約1.0μg/mlから約1000mg/mlまでの濃度であるが、より低い、およびより高い濃度でも実施可能であり、かつ、これらは意図された送達媒体に依存し、例えば、溶液製剤は、経皮パッチ、肺で行われる方法、経粘膜的方法、または浸透ポンプもしくはマイクロポンプによる方法と異なる。
【0095】
本発明の製剤は、本発明の少なくとも一つの抗体と、水様希釈剤中のフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン、(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、およびチメロサールまたはこれらの混合物からなる群より選択される保存剤とを混合する段階を含むプロセスによって調製することができる。水様希釈剤における抗体および保存剤の混合は、従来の溶解および混合の手順を用いることによって実行される。例えば、緩衝溶液中の少なくとも一つの測定された量の抗体を、緩衝溶液中の所望の保存剤と、抗体および保存剤を所望の濃度で提供するのに十分な量で混合する。本プロセスの変化形は当業者により認識されると考えられ、例えば、成分を添加する順序、追加的な添加剤を使用するかどうか、製剤を調製する温度およびpHは全て、濃度および使用する投与手段に関連して最適化することができる要素である。
【0096】
本組成物および製剤は、透明溶液として、または第二のバイアルに含有される水様希釈剤により再形成される凍結乾燥された抗体のバイアルを含む、2つの部分からなるバイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアルまたは再形成を必要とする2つの部分からなるバイアルはいずれも複数回再利用することができ、かつ、一回または複数回の患者の処置に十分であることが可能であり、したがって、現在利用可能であるものよりさらに便利な治療法を提供する。これらの単一バイアル系を含む承認された器具には、例えばBecton Dickensen(Franklin Lakes, N.J.、bectondickenson.comで利用可能)、Disetronic(Burgdorf, Switzerland、disetronic.comで利用可能); Bioject, Portland, Oregon(bioject.comで利用可能); National Medical Products, Weston Medical(Peterborough, UK、weston-medical.comで利用可能)、Medi-Ject社(Minneapolis, Minn.、mediject.comで利用可能)によって製造または開発された、BDペン、BD Autojectore、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B-D(登録商標)ペン、AutoPen(登録商標)、およびOptiPen(登録商標)、GenotropinPen(登録商標)、Genotronorm Pen(登録商標)、Humatro Pen(登録商標)、Reco-Pen(登録商標)、Roferon Pen(登録商標)、Biojector(登録商標)、iject(登録商標)、J-tip Needle-Free Injector(登録商標)、Intraject(登録商標)、Medi-Ject(登録商標)などの、溶液送達のためのペン型注射器が含まれる。
【0097】
抗体
本発明の抗体はモノクローナル抗体であるが、特定の局面においてはポリクローナル抗体を利用することができる。これらは機能性断片、抗体誘導体、または抗体変異体であることもできる。これらは、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体であることができる。抗体の機能性断片は、Fab、Fab’、Fab2、Fab'2、および単鎖可変領域を含むが、これらに限定されるわけではない。抗体は、細胞培養において、ファージにおいて、またはウシ、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、類人猿等を含むが、これらに限定されない種々の動物において産生することができる。本発明の抗体としての結合特異性または中和能力を保持する限り、断片または誘導体は使用され得る。抗体は、所与の条件下における、適切な抗原に対する結合と、無関係な抗原または抗原混合物に対する結合との比較により、結合特異性について試験することができる。抗体が、適切な抗原に対して、無関係な抗原または抗原混合物に対する結合よりも少なくとも2倍、5倍、7倍、および好ましくは10倍結合する場合、特異的であるとみなされる。特異性アッセイ、例えば、特異性決定のためのELISAが当技術分野において公知である。
【0098】
抗体はまた、関心対象のエピトープを特異的に認識し結合するそれらの能力によって、特徴づけられる。
【0099】
本発明のモノクローナル抗体は、当技術分野において公知で、十分に文献に記載されている従来のハイブリドーマ技術を使用して作製することができる。例えば、ハイブリドーマは、適切な不死化株化細胞を融合することによって産生される(例えば、Sp2/0、Sp2/0-AG14、NSO、NS1、NS2、AE-1、L.5、>243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2SA5、U397、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA-1、JURKAT、WEHI、K-562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL-60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2A、CHO、PerC.6、YB2/Oなど(しかし、これらに限定されない)の骨髄腫株化細胞)等、または異種骨髄腫、これらの融合産物、またはこれらに由来する任意の細胞もしくは融合細胞、または当技術分野において公知の任意のその他の適切な株化細胞(例えばwww.atcc.org、www.lifetech.com.等を参照されたい)を、単離もしくはクローン化された脾臓、末梢血、リンパ、扁桃腺、またはその他の免疫性もしくはB細胞含有細胞、または内因性もしくは外因性核酸として、組換えもしくは内因性のウイルス、細菌、藻類、原核生物、両生類、昆虫、爬虫類、魚類、哺乳類、げっ歯類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ヒツジ、霊長類、成熟核、ゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNAもしくはRNA、葉緑体DNAもしくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、一重、二重、または三重鎖ハイブリダイズされたもの等、またはこれらの任意の組み合わせとしてのいずれかで重鎖もしくは軽鎖定数または可変またはフレームワークまたはCDR配列を発現する任意のその他の細胞など(しかし、これらに限定されない)の抗体産生細胞と融合することによって産生される。また、抗体産生細胞は、末梢血、または好ましくは、関心対象の抗原で免疫されたヒトもしくはその他の適切な動物の脾臓もしくはリンパ節から得ることができる。また、他のいかなる適切な宿主細胞も、本発明の抗体、これらの特定された断片、または変異体をコードする異種または内在性の核酸を発現させるために使用することができる。融合細胞(ハイブリドーマ)または組換え細胞は、選択培養状態またはその他の適切な公知の方法を使用して単離して、限界希釈もしくは細胞選別、または他の公知の方法によってクローン化することができる。
【0100】
必要な特異性の抗体を産生または単離するその他の適切な方法は、当技術分野において公知の方法を使用して、ペプチドまたはタンパク質ライブラリー(例えば、限定されるわけではないが、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなど、ディスプレイ・ライブラリー;例えば、Cambridge Antibody Technologies (Cambridgeshire, UK), MorphoSys (Martinsreid/Planegg, Del.), Biovation (Aberdeen, Scotland, UK) BioInvent (Lund, Sweden)などの種々の市販のベンダーから入手可能)から組換え抗体を選択する方法を使用することができるが、これらに限定されるわけではない。米国特許第4,704,692号;第5,723,323号;第5,763,192号;第5,814,476号;第5,817,483号;第5,824,514号;第5,976,862号を参照されたい。代替法は、当技術分野において公知および/または本明細書に記載されているような、ヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物の免疫化に依存する(例えば、SCIDマウス、 Nguyen et al. (1977) Microbiol. Immunol. 41: 901-907 (1997); Sandhu et al., (1996) Crit. Rev. Biotechnol. 16:95-118; Eren et al. (1998) Immunol. 93:154-161)。このような技術は、以下を含むが、これらに限定されるわけではない:リボソーム・ディスプレイ(Hanes et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:4937-4942; Hanes et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:14130-14135);単一細胞抗体産生技術(例えば、選択的リンパ球抗体法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wen et al. (1987) J. Immunol. 17: 887-892; Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93:7843-7848);ゲル・ミクロ小滴およびフローサイトメトリー(Powell et al. (1990) Biotechnol. 8:333-337; One Cell Systems, (Cambridge, Mass).; Gray et al. (1995) J. Imm. Meth. 182:155-163; Kenny et al. (1995) Bio/Technol. 13:787-790);B細胞選択(Steenbakkers et al. (1994) Molec. Biol. Reports 19:125-134 (1994)。
【0101】
また、本発明の抗体変異体は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを適切な宿主に送達する工程を使用して調製し、その乳にこのような抗体を産生するトランスジェニック動物またはヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ等の哺乳類を提供することができる。これらの方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,827,690号;第5,849,992号;第4,873,316号;第5,849,992号;第5,994,616号;第5,565,362号;および第5,304,489号に記載されている。
【0102】
「抗体変異体」という用語は、抗体または断片の直鎖状ポリペプチド配列に対する翻訳後修飾を含む。例えば、米国特許第6,602,684 B1号には、免疫グロブリンのFc領域と同等の領域を含み、Fc媒介細胞の毒性が増強されている完全抗体分子、抗体断片、または融合タンパク質、およびこうして作製された糖タンパク質を含む抗体の修飾されたグリコール型の産生のために方法が記載されている。
【0103】
また、このような抗体、植物部分の、もしくはそこから培養された細胞の特定された部分または変異体を産生するトランスジェニック植物および培養植物細胞(例えば、タバコ、トウモロコシ、およびウキクサ(しかし、これらに限定されるわけではない))を提供するために、抗体変異体を本発明のポリヌクレオチドを送達することによって調製することができる。例えば、Cramer et al. (1999) Curr. Top. Microbol. Immunol. 240:95-118およびその中の引例は、例えば、誘導性プロモーターを使用する大量の組換えタンパク質を発現するトランスジェニック・タバコ葉の産生を記載する。トランスジェニック・トウモロコシは、市販の産生レベルにて、その他の組換え系で産生されたか、または天然の供与源から精製したものと同等の生物活性をもつ哺乳類タンパク質を発現するために使用されてきた。例えば、Hood et al., Adv. Exp. Med. Biol. (1999) 464:127-147およびその中の引例を参照されたい。また、抗体変異体は、タバコ種子およびジャガイモ塊茎を含む、単鎖抗体(scFv’s)などの抗体断片を含むトランスジェニック植物種子から大量に産生された。例えば、Conrad et al. (1998) Plant Mol. Biol. 38:101-109およびその中の引例を参照されたい。したがって、本発明の抗体は、公知の方法に従って、トランスジェニック植物を使用して産生することができる。
【0104】
抗体誘導体は、免疫原性を修飾するか、または結合、親和性、結合速度(on-rate)、解離速度(off-rate)、結合活性、特異性、半減期、もしくは任意のその他の適切な特徴を減少させ、増強し、または修飾するために、例えば外来性配列を添加することによって産生することができる。一般に、非ヒトまたはヒトCDR配列の一部または全体は、維持されており、一方で、可変領域および定常領域の非ヒト配列は、ヒトまたはその他のアミノ酸で置換される。
【0105】
一般に、抗原結合への影響において、CDR残基が直接および最も実質的に関与する。本発明の抗体のヒト化または操作は、米国特許第5,723,323号;第5,976,862号;第5,824,514号;第5,817,483号;第5,814,476号;第5,763,192号;第5,723,323号;第5,766,886号;第5,714,352号;第6,204,023号;第6,180,370号;第5,693,762号;第5,530,101号;第5,585,089号;第5,225,539号、および第4,816,567号に記載されているものなど(しかし、これらに限定されるわけではない)の任意の公知の方法を使用して行うことができる。
【0106】
部分的から完全なヒト抗体を作製するための技術は、当技術分野において公知であり、このような技術のいずれを使用することもできる。一つの態様によれば、完全ヒト抗体配列は、ヒト重鎖および軽鎖抗体遺伝子を発現するように操作されたトランスジェニックマウスにおいて作製される。抗体の異なるクラスを産生することができるこのようなトランスジェニックマウスの複数株を作製した。所望の抗体を産生するトランスジェニックマウスに由来するB細胞を融合して、所望の抗体の持続的産生のためのハイブリドーマ株化細胞を作製することができる。(例えば、Russel, N. D. et al. (2000) Infection and Immunity April 2000:1820-1826; Gallo, M. L. et al. (2000) European J. of Immun. 30:534-540; Green, L. L. (1999) J. of Immun. Methods 231:11-23; Yang, X-D et al. (1999A) J. of Leukocyte Biology 66:401-410; Yang, X-D (1999B) Cancer Research 59 (6):1236-1243; Jakobovits, A. (1998) Advanced Drug Delivery Reviews 31:33-42; Green, L. and Jakobovits, A. (1998) J. Exp. Med. 188 (3):483-495; Jakobovits, A. (1998) Exp. Opin. Invest. Drugs 7 (4):607-614; Tsuda, H. et al. (1997) Genomics 42:413-421; Sherman-Gold, R. (1997). Genetic Engineering News 17 (14); Mendez, M. et al. (1997) Nature Genetics 15:146-156; Jakobovits, A. (1996) WEIR’S HANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY, THE INTEGRATED IMMUNE SYSTEM VOL. IV, 194.1-194. 7; Jakobovits, A. (1995) Current Opinion in Biotechnology 6:561-566; Mendez, M. et al. (1995) Genomics 26:294-307; Jakobovits, A. (1994) Current Biology 4 (8):761-763; Arbones, M. et al. (1994) Immunity 1 (4):247-260; Jakobovits, A. (1993) Nature 362 (6417):255-258; Jakobovits, A. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA90 (6):2551-2555; Kucherlapati, et al.米国特許第6,075,181号を参照されたい)。
【0107】
また、ヒト・モノクローナル抗体は、不死化された細胞に融合された、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生することができる。
【0108】
本発明の抗体はまた、キメラ抗体を作製するために修飾することができる。キメラ抗体は、抗体の重鎖および軽鎖の種々のドメインが、複数の種に由来するDNAによってコードされるものである。例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい。
【0109】
また、「抗体誘導体」という用語は、2つの抗原結合部位をもつ小さな抗体断片であって、断片が同じポリペプチド鎖(VH VL)の軽鎖可変ドメイン(VL)につながった重鎖可変ドメイン(VH)を含む「ダイアボディー(diabodies)」を含む。例えば、欧州特許第404,097号;国際公開公報第93/11161号;およびHollinger et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448を参照されたい。あまりに短すぎて同じ鎖の上の2つのドメイン間の対形成ができないリンカーを使用することにより、ドメインは、もう一つの鎖の相補的ドメインと強制的に対になり、2つの抗原結合部位を作製する。また、1つまたは複数のアミノ酸が親抗体の高頻度可変領域に挿入され、かつ抗原に対して親抗体の結合親和性よりも少なくとも約2倍強力な、標的抗原に対する結合親和性を有する抗体変異体を開示するChen et al.に対する米国特許第6,632,926号も参照されたい。
【0110】
「抗体誘導体」という用語は、「直鎖状抗体」をさらに含む。作製するための手順は、当技術分野において公知であり、Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8 (10):1057-1062に記載されている。簡潔には、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対の直列型Fdセグメント(VH-CH 1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二特異性または単一特異性であることができる。
【0111】
本発明の抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含むが、これらに限定されるわけではない公知の方法によって、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。また、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も、精製のために使用することができる。
【0112】
本発明の抗体は、天然の精製された産物、化学物質合成法の産物、並びに例えば、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物細胞を含む真核生物宿主由来の、または代わりに上記のとおりの原核細胞由来の組換え技術によって産生される産物を含む。
【0113】
本発明のいくつかの局面において、抗体を検出可能な程度に、または治療的に標識することも有用である。これらの薬剤に対して抗体を抱合するための方法は、当技術分野において公知である。例示のみの目的であるが、抗体は、放射性原子、発色団、フルオロフォア、などの検出可能な部分で標識することができる。このような標識された抗体は、インビボ、または単離された試験試料での診断技法に使用することができる。また、抗体は、例えば、化学療法剤または毒素などの医薬品に抱合することができる。これらは、サイトカインに、リガンドに、もう一つの抗体に連結することができる。抗腫瘍効果を達成するために抗体に結合させるために適した薬剤は、インターロイキン2(IL-2)および腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホナート、ヘマトポルフィリン、およびフタロシアニンを含む、光感作療法に使用するための光増感剤;ヨウ素-131(131I)、イットリウム90(90Y)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(2l3Bi)、テクネチウム99m(99mTc)、レニウム-186(186Re)、およびレニウム-188(188Re)などの放射性核種;ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、ダウノマイシン、ネオカルチノスタチン、およびカルボプラチンなどの抗生物質;ジフテリア毒素、プソイドモナス外毒素A、ブドウ球菌腸毒素A、アブリン-A毒素、リシンA(脱グリコシルされたリシンAおよび天然のリシンA)、TGFアルファ毒素、チャイニーズ・コブラ(naja naja atra)由来の細胞毒、およびゲロニン(植物性毒素)などの、細菌、植物、並びにその他の毒素;レストリクトシン(アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)によって産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(saporin)(サポナリア・オフィシナリス(Saponaria officinalis)由来のリボソーム不活性化タンパク質)、およびRNaseなどの、植物、細菌、並びに真菌由来のリボソーム不活性化タンパク質;チロシンキナーゼ阻害剤;ly207702(二フッ化プリンヌクレオシド);抗嚢胞性薬(例えば、毒素、メトトレキセート、その他をコードするアンチセンスオリゴヌクレオチド、プラスミド)を含むリポソーム;並びにその他の抗体またはF(ab)などの抗体断片を含む。
【0114】
有機分子に共有結合性に連結される抗体を含むものの調製に関して、これらは、1つまたは複数の修飾薬との反応によるなどの適切な方法を使用して調製することができる。このようなものの例は、修飾基および活性基を含む。本明細書に使用される用語としての「修飾薬」は、活性基を含む適切な有機基(例えば、親水性重合体、脂肪酸、脂肪酸エステル)をいう。これらの具体例は、前記に提供してある。「活性基」は、適切な状態下で、第二の化学基と反応することができ、これにより修飾薬と第二の化学基との間で共有結合を形成する化学的部分または官能基である。このようなものの例は、トシル化、メシレート、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)などの求電子性基である。チオールと反応することができる活性基は、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5-チオール-2-ニトロ安息香酸チオール(TNB-チオール)などを含む。アルデヒド官能基は、アミンまたはヒドラジド含有分子に結合することができ、アジ化物基は、三価の亜リン酸基と反応してホスホロアミダートまたはホスホロイミド結合を形成することができる。活性基を分子に導入するための適切な方法は、当技術分野において公知である(例えば、Hermanson, G. T., BIOCONJUGATE TECHNIQUES, Academic Press: San Diego, Calif. (1996)を参照されたい)。活性基は、有機基(例えば、親水性重合体、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接、またはリンカー部分、例えば1つもしくは複数の炭素原子を酸素、窒素、または硫黄などのヘテロ原子によって置換することができる二価のC1〜C12基を介して結合することができる。適切なリンカー部分は、例えば、テトラエチレングリコールを含む。リンカー部分を含む修飾薬は、例えばモノ-Boc-アルキルジアミン(例えば、モノ-Boc-エチレンジアミン、モノ-Boc-ジアミノヘキサン)を、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下において脂肪酸と反応させて、遊離アミンと脂肪酸カルボン酸塩との間でアミド結合を形成させることによって産生することができる。Boc保護基は、記載したとおりに、トリフルオロ酢酸(TFA)で処置して、もう一つのカルボン酸塩に結合することができる一級アミンに曝露することによって産物から除去することができ、または無水マレイン酸と反応させて、生じる産物を環化させて脂肪酸の活性化されたマレイミド誘導体を産生することができる。
【0115】
本発明の修飾された抗体は、ヒト抗体または抗原結合性断片を修飾薬と反応させることによって産生することができる。例えば、有機部分をアミン反応性の修飾薬、例えばPEGのNHSエステルを使用することによって、非部位特異的様式で抗体に結合させることができる。また、修飾されたヒト抗体または抗原結合性断片は、抗体または抗原結合断片のジスルフィド結合(例えば、鎖内ジスルフィド結合)を還元させることによって調製することができる。次いで、還元された抗体または抗原結合性断片をチオール反応性の修飾薬と反応させて、本発明の修飾された抗体を産生することができる。本発明の抗体の特定部位に結合される有機部分を含む修飾されたヒト抗体および抗原結合性断片は、逆タンパク質分解(reverse proteolysis)などの適切な方法を使用して調製することができる。一般に、Hermanson, G. T., BIOCONJUGATE TECHNIQUES, Academic Press: San Diego, Calif. (1996)を参照されたい。
【0116】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、およびその断片は、表1(および以下の配列表)に提供される配列情報、およびPerkin Elmer/Applied Biosystems社により製造される合成機、モデル430Aまたは431A、Foster City, CA, USA、などの市販の自動化されたペプチド合成機を用いた化学合成を利用することにより得ることができる。合成したタンパク質またはポリペプチドを沈殿させ、例えば高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によってさらに精製することができる。したがって、本発明はまた、タンパク質の配列、およびアミノ酸および酵素などの試薬を提供し、アミノ酸を適切な方向かつ直鎖状の配列に共に結合させることによって、本発明のタンパク質を化学的に合成するためのプロセスも提供する。
【0117】
あるいは、タンパク質およびポリペプチドは、本明細書に記載される宿主細胞およびベクター系を用いた、本明細書に記載される周知の組換え方法によって得ることができる。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。宿主細胞系は、上記に記載されている。
【0118】
診断法
上記の如く、本発明は、例えば悪性腫瘍、過形成、または異形成の形態の異常な細胞増殖によって特徴づけられる細胞の状態の診断を助けるための種々の方法を提供する。本方法は、特に上皮起源の癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、乳癌、前立腺癌および大腸癌の診断を補助するために有用である。細胞の新生物状態は、細胞の増殖が、通常の正常な増殖を制限することによって支配されないかどうかに注目することによって決定され得る。本発明の目的上、本用語は、また、腫瘍の形態でこの増殖が検出される前に生じ、かつこれらの表現型変化の原因である遺伝子型変異を含む。細胞の新生物状態と関連する表現型変化(インビボでの腫瘍化能に関連したインビトロの特徴のセット)は、より丸い細胞形態、よりゆるい基層付着、接触阻止の喪失、固定依存性の喪失、プラスミノーゲンアクティベーターなどのプロテアーゼの放出、増大された糖輸送、減少した血清要求、胎児抗原の発現などを含む。(Luria et al. (1978) GENERAL VIROLOGY, 3d edition, 436-446 (John Wiley & Sons, New York)を参照されたい)。
【0119】
したがって、一つの態様は、遺伝子を発現する細胞を含むか、または含むことが疑われる試料から単離された示差的に発現されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドの存在についてスクリーニングすることにより、細胞の状態を診断する方法であり、遺伝子の示差的発現が細胞の新生物状態を表す。以下に示すように、遺伝子は、対照の正常または健常な細胞または組織と比較して、肺、卵巣および前立腺の1つまたは複数の細胞である癌または腫瘍細胞において、より発現される。
【0120】
検出は、例えば、遺伝子から転写されるmRNAの量、または遺伝子から転写されるmRNAの逆転写によって産生されたcDNAの量、または遺伝子によってコードされるポリペプチドもしくはタンパク質の量を検出することを含む、任意の適切な方法によることができる。これらの方法のそれぞれのためのプローブは、表1において同定されたペプチドを逆転写することによって、およびペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用することによって提供される。これらの方法は、試料に基づいて、またはハイスループット解析のために修飾することにより、試料に対して行うことができる。加えて、細胞試料から単離された定量的完全もしくは部分的転写物またはタンパク質配列を含むデータベースにより、転写物または発現された遺伝子産物の存在および量について検索し、並びに解析することができる。一つの局面において、データベースは、表1に示した配列の少なくとも1つおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0121】
例示目的のみのために、遺伝子発現は、関心対象の遺伝子から転写されるmRNAのレベルで、試験系の遺伝子の発現量(もしあれば、例えば変更されたもの)に注目することによって決定される。別の態様において、関心対象の遺伝子によってコードされるポリペプチドまたはタンパク質のレベルの増強は、細胞の新生物状態の存在を表す。本方法は、肺癌、卵巣癌または前立腺癌の診断を補助するために使用することができる。したがって、腫瘍増殖の前にこの遺伝子型を検出することよって、癌に対する素因を予測すること、および/または早期診断および治療を提供することができる。
【0122】
本発明のために使用される細胞または組織試料は、体液、固体組織試料、そこに由来する組織培養もしくは細胞およびこれらの子孫、並びに任意のこれらの供与源から調製される切片もしくはスミア、または本明細書に記載されている遺伝子を有する細胞を含み得る任意のその他の試料を包含する。一つの態様において、試料は、被検体の組織、例えば転移を含み得る肺または組織から調製される細胞を含む。
【0123】
mRNAレベルでの変化をアッセイする際には、上述した試料に含まれる核酸が当技術分野において標準的な方法に従って最初に抽出される。例えば、mRNAは、前記Sambrook et al.(1989)に記載されている手順に従って種々の溶菌酵素もしくは化学溶液を使用して単離するか、または製品によって提供される添付の説明書に従って核酸結合樹脂によって抽出することができる。次いで、抽出された核酸試料に含まれる遺伝子のmRNAを、ハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット解析)および/または当技術分野において広く公知の、または本明細書に例示される方法に基づく方法に従った増幅手順によって検出する。
【0124】
少なくとも10ヌクレオチドを有し、および表1で同定されたペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドに対して配列相補性または相同性を示す核酸分子は、ハイブリッド形成プローブとして有用性を見いだされる。特異的ハイブリダイゼーションのためには、「完全にマッチした」プローブが必要でないことは、当技術分野に公知である。少数の塩基の置換、欠失、または挿入によって達成されるプローブ配列のわずかな変更は、ハイブリダイゼーション特異性に影響を及ぼさない。一般に、20%の塩基対ミスマッチ(至適に整列させたとき)でも、許容することができる。好ましくは、mRNAを検出するために有用なプローブは、表1で同定されたペプチドをコードする遺伝子またはポリヌクレオチドに含まれる同等のサイズの相同領域と少なくとも約80%の同一性を有する。一つの局面において、プローブは、相同領域の整列後に、対応するポリヌクレオチド配列と85%同一であるか、または90%の同一性を示す。これらのプローブは、関心対象のポリヌクレオチドの示差的発現により生じる種々の新生物状態を検出する、予測する、診断する、またはモニターするための放射分析(例えば、サザンおよびノーザンブロット解析)に使用することができる。断片の総サイズ、並びに相補的ひと配列のサイズは、使用目的または特定の核酸セグメントの適用に依存する。公知の配列に由来するより小さな断片は、一般に、相補領域の長さが、検出を望む相補的配列に従って約10〜約100ヌクレオチドの間、またはさらに全長などで変更されていてもよいハイブリダイゼーション態様での使用が見いだされる。
【0125】
一つの局面において、ハイブリッドの安定性および選択性を増大し、これにより特定のハイブリッド分子の特異性を改善するために、長さが約10ヌクレオチドよりも大きなひと配列にわたって相補配列を有するヌクレオチド・プローブが使用される。または、長さが約25よりも大きく、もしくは約50ヌクレオチドよりも大きい、または望まれる場合にはさらに長い遺伝子相補的ひと配列を有する核酸分子をデザインすることができる。例えば、このような断片は、米国特許第4,603,102号に記載されているように、2つのプライミング・オリゴヌクレオチドと共にPCR(商標)技術などの核酸複製技術を適用することにより、または組換え産生のための組換えベクターに選択した配列を導入することより、化学的手段によって断片を直接合成することによって容易に調製され得る。一つの局面において、プローブは、長さが約50〜約75ヌクレオチドまたは約50〜約100ヌクレオチドである。これらのプローブを、全長遺伝子の配列から設計することができる。
【0126】
ある態様において、ハイブリダイゼーションおよびしたがって相補配列を検出するために、標識などの適切な手段と組み合わせて、本明細書に記載したとおりの核酸配列を使用することが有利である。蛍光、放射性、酵素、またはアビジン/ビオチンなどの、検出可能なシグナルを与えることができるその他のリガンドを含む多種多様な適切な指示手段が当技術分野において公知である。放射性またはその他の環境の望ましくない試薬の代わりに、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、またはペルオキシダーゼなどの、蛍光標識または酵素タグを使用することができる。酵素タグの場合、相補核酸を含む試料との特異的ハイブリダイゼーションを同定するためのヒト眼的または分光光学的可視化手段を提供するために使用することができる比色指標基質が公知である。
【0127】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」条件下で行うことができる。関連する条件は、温度、イオン強度、インキュベーション時間、ホルムアミドなどの反応混合物中のさらなる溶質の存在、および洗浄手順を含む。高ストリンジェンシー条件は、より高温およびより低ナトリウムイオン濃度などの条件であり、安定なハイブリダイゼーション複合体を形成するためには、ハイブリダイズするエレメント間により高度な最小相補性が必要である。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを増大する条件は、広く公知であり、当技術分野において公表されている。例えば、Sambrook et al.(1989)前記を参照されたい。
【0128】
また、本発明のヌクレオチド・プローブは、プライマーおよび一定の体組織において示差的に発現される遺伝子または遺伝子転写物の検出として使用することができる。加えて、上述した示差的に発現されたmRNAを検出するために有用なプライマーは、表1で同定されたペプチドをコードする以前に同定された配列に含まれる同等のサイズの相同領域と少なくとも約80%の同一性を有する。本発明の目的のためには、「増幅」は、合理的な忠実度で標的配列を複製することができるプライマー依存的ポリメラーゼを使用する任意の方法を意味する。増幅は、T7 DNAポリメラーゼ、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼのクレノーフラグメント、および逆転写酵素などの天然のまたは組換えDNAポリメラーゼによって実施してもよい。
【0129】
公知の増幅方法には、PCR, MacPherson et al., PCR: A PRACTICAL APPROACH, (IRL Press at Oxford University Press (1991))がある。しかし、それぞれの適用反応のために使用されるPCR条件は、経験的に決定される。多くのパラメータが反応の成功に影響する。プライマー、鋳型、およびデオキシリボヌクレオチドのアニーリング温度および時間、伸張時間、Mg2+ ATP濃度、pH、および相対濃度は、これらのうちの一つである。
【0130】
増幅後、生じるDNA断片は、アガロースゲル電気泳動、続いて臭化エチジウム染色および紫外線照明で可視化することによって検出することができる。関心対象の示差的に発現された遺伝子の特異的増幅は、増幅されたDNA断片が予測されるサイズを有すること、予測された制限酵素消化パターンを示すこと、および/または正確なクローン化DNA配列にハイブリダイズすることを証明することによって検証することができる。
【0131】
また、プローブは、当技術分野において公知の方法を使用して、ハイスループットスクリーニングアッセイ法に使用するための固体支持体に付着することができる。PCT国際公開公報第97/10365号および米国特許第5,405,783号;第5,412,087号、および第5,445,934号は、例えば、本明細書に開示された配列の1つまたは複数を含むことができる高密度オリゴヌクレオチド・チップの構築を開示する。米国特許第5,405,783号;第5,412,087号、および第5,445,934号に開示された方法を使用して、本発明のプローブを誘導体化されたガラス面上で合成する。光保護されたヌクレオシドホスホラミダイトをガラス面に結合させ、光リソグラフィーでのマスクを介した光分解によって選択的に脱保護し、第二の保護されたヌクレオシド・ホスホラミダイトと反応させる。所望のプローブが完了するまで、カップリング/脱保護プロセスを繰り返す。
【0132】
また、遺伝子の発現レベルは、プローブで修飾されたチップに対する核酸試料の曝露を介して決定することができる。抽出された核酸は、好ましくは増幅工程の間に、例えば蛍光タグで標識される。標識した試料のハイブリダイゼーションは、適切なストリンジェンシーレベルにて行う。プローブ-核酸ハイブリダイゼーションの程度は、共焦点顕微鏡などの検出装置を使用して定量的に測定する。米国特許第5,578,832号および第5,631,734号を参照されたい。得られた測定値を遺伝子発現レベルと直接相関させる。
【0133】
また、プローブおよび高密度オリゴヌクレオチド・プローブアレイは、関心対象の遺伝子の発現をモニターする有効な手段を提供する。また、これらは、関心対象の遺伝子の発現をアップレギュレートするか、またはダウンレギュレートする組成物をスクリーニングするためにも有用である。
【0134】
もう一つの態様において、本発明の方法は、薬物に対する細胞または被検体の曝露などの所定の刺激に応答して本発明のプローブに対して特異的にハイブリダイズする関心対象の遺伝子の発現をモニターするために使用される。
【0135】
一つの態様において、ハイブリダイズされた核酸は、試料核酸に付着した1つまたは複数の標識を検出することによって検出される。標識は、当業者に公知の任意の多数の手段によって組み入れてもよい。しかし、一つの局面において、標識は、試料核酸の調製における増幅工程の間に同時に組み入れられる。したがって、例えば、標識されたプライマーまたは標識されたヌクレオチドでのポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)では、標識された増幅産物を提供する。別の態様において、上記のとおり、標識されたヌクレオチド(例えば、フルオレッセイン標識されたUTPおよび/またはCTP)を使用する転写増幅により、転写された核酸に標識を組み込む。
【0136】
または、標識は、本来の核酸試料(例えば、mRNA、ポリA、mRNA、cDNA、その他)に、または増幅が完了後の増幅産物に、直接付加してもよい。核酸に標識を付着する手段は、当業者に公知であり、例えば、ニックトランスレーションまたは核酸のキナーゼ処理(kinasing)およびその後の試料核酸を標識(例えば、フルオロフォア)に連結する核酸リンカーの付着(ライゲーション)による末端標識化(例えば、標識されたRNAで)を含む。
【0137】
本発明に使用するために適した検出可能な標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的手段によって検出可能な任意の組成物を含む。本発明に有用な標識は、標識されたストレプトアビジン抱合体での染色のためのビオチン、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレッセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射標識(例えば、3H、l25I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および一般にELISAに使用されるその他)、およびコロイド金または色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、乳液、その他)ビーズなどの比色標識を含む。このような標識の使用を教示する特許は、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号、および第4,366,241号を含む。
【0138】
このような標識を検出する手段は、当業者に公知である。したがって、例えば、放射標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出してもよく、蛍光マーカーは、放射された光を検出するための光センサーを使用して検出してもよい。酵素標識は、典型的には、酵素に基質を提供する段階および基質に対する酵素の作用によって産生される反応産物を検出する段階によって検出され、比色標識は、単に有色標識を視覚化することによって検出される。
【0139】
国際公開公報第97/10365号においてさらに詳細に記載されているように、標識は、ハイブリダイゼーションの前に、または後に標的(試料)核酸に付加してもよい。検出可能な標識は、ハイブリダイゼーションの前に標的(試料)核酸に直接付着されるか、または組み入れられる。対照的に、「間接的標識」は、ハイブリダイゼーションの後にハイブリッド二重鎖に連結される。間接的標識は、ハイブリダイゼーションの前に標的核酸に付着された結合部分に付着されることが多い。したがって、例えば、標的核酸をハイブリダイゼーションの前にビオチン化してもよい。ハイブリダイゼーションの後、アビジン抱合されたフルオロフォアを、容易に検出される標識を提供するビオチンを有するハイブリッド二重鎖に結合させる。核酸の標識化および標識したハイブリダイズされた核酸の検出の方法の詳細な総説については、LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 24: Hybridization with Nucleic Acid Probes, P. Tijssen, ed. Elsevier, N. Y. (1993)を参照されたい。
【0140】
また、核酸試料は、当技術分野において公知の方法、例えば国際公開公報第97/10365号に開示されている方法を使用して、試料の複雑さを減少させ、これによりバックグラウンド・シグナルを減少させ、かつ測定の感受性を改善するために、高密度プローブアレイに対するハイブリダイゼーションの前に修飾してもよい。
【0141】
チップ・アッセイ法による結果は、典型的にはコンピュータ・ソフトウェア・プログラムを使用して解析される。例えば、欧州特許第0717 113 A2号および国際公開公報第95/20681号を参照されたい。ハイブリダイゼーション・データをプログラムに読み込んで、これにより、ターゲットされた遺伝子、すなわち表1で同定される遺伝の発現レベルを算出する。この図は、病気にかかった個体および健康な個体についての遺伝子発現レベルの既存のデータセットに対して比較する。得られたデータと病気にかかった個体のセットとの間の相関は、被検体患者における疾患の発症を示す。
【0142】
また、表1の一覧表に記載されたペプチドの配列、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはそれらの一部の1つまたは複数を含む新生物性肺組織の検出のために有用なデータベースも、本出願の範囲内である。
【0143】
これらのポリヌクレオチド配列は、肺癌細胞を同定する遺伝子の標準化された表現のためのデータ処理システムがコンパイルされるように、デジタル記憶媒体に貯蔵されている。データ処理システムは、最初に、新生物の表現型または遺伝子型であることが疑われる細胞を選択し、次いで、細胞からポリヌクレオチドを単離することにより、2つの細胞間の遺伝子発現を解析するために有用である。次いで、単離されたポリヌクレオチドをシーケンスする。試料由来の配列を上記した相同性検索技術を使用して、データベースに存在する配列と比較する。一つの局面において、ポリヌクレオチドが上記のような肺癌細胞、前立腺癌細胞または卵巣癌細胞から単離されたことのポジティブな指標である、試験配列と表1で同定された少なくとも1つの配列もしくはそれをコードするポリヌクレオチド、またはその相補物との間で90%を超えるものが選択され、または95%を超えるものが選択され、または97%以上の配列同一性のものが選択される。
【0144】
または、試料をデータベースに対して比較することができる。簡潔には、当技術分野において公知であり、および例えば前記Sambrook et al.(1989)に記載されている方法を使用して、複数のRNAを細胞または組織試料から単離する。任意に、遺伝子転写物をcDNAに変換することができる。遺伝子転写物のサンプリングを配列特異的解析に供し、定量化する。これらの遺伝子転写物配列存在量を、病気にかかった患者および健康な患者についての正常なデータセットを含む参照データベース配列存在量に対して比較する。患者は、本明細書において同定される転写物の過剰発現を含む患者のデータセットが最も密接に相関する疾患を有する。
【0145】
また、関心対象の遺伝子の示差的発現は、タンパク質産物を調べることによって決定することができる。タンパク質解析のために、当技術分野における種々の技術を利用できる。これらは、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドイッチ」免疫アッセイ法、免疫放射線アッセイ法、インサイチュー免疫アッセイ法(例えば、コロイド金、酵素、または放射性同位元素標識を使用する)、ウエスタンブロット分析法、免疫沈降アッセイ法、免疫蛍光アッセイ法、およびPAGE-SDS法を含むが、これらに限定されるわけではない。タンパク質レベルを決定する1つの手段は、(a)ポリペプチドを含む生体試料を提供する段階;および(b)関心対象の遺伝子の発現産物に反応性の抗体と試料中の成分との間で生じる任意の免疫特異性結合の量を測定する段階であって、免疫特異的結合の量が発現タンパク質のレベルを示す段階を含む。
【0146】
これらの遺伝子のタンパク質産物を特異的に認識して結合する抗体が、これらの免疫アッセイ法に必要であった。これらは、市販のベンダーから購入してもよく、または当技術分野において周知の方法を使用して作製し、およびスクリーニングしてもよい。HarlowおよびLane(1988)前記およびSambrook et al.(1989)前記を参照されたい。または、関心対象の遺伝子のタンパク質産物を特異的に認識して結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、公知の方法を使用して作製し、単離することができる。
【0147】
遺伝子の示差的発現によって特徴づけられる悪性腫瘍、過形成、または異形成を診断する際に、典型的には、被検体および適切な対照の比較解析を行う。好ましくは、診断試験には、関心対象の遺伝子の発現に予測される変化および関心対象の悪性腫瘍または異形成の臨床的特徴、を示す被検体に由来する対照試料(以下に「ポジティブ対照」)を含む。または、診断はまた、試料が、新生物状態の臨床的特徴を欠いており、かつ問題の遺伝子の発現レベルが正常範囲内にある、被検体に由来する対照試料(以下に「ネガティブ対照」)を含む。同定される変化に関して、被検体とポジティブ対照との間の順相関は、該疾患の存在または性質を示す。被検体とネガティブ対照との間の相関の欠如により、診断を確認する。好ましい態様において、本方法は、関心対象の遺伝子の示差的発現に基づいて、上皮起源、例えば肺、卵巣または前立腺の癌を診断するために使用される。
【0148】
スクリーニングアッセイ法
また、本発明は、細胞の新生物状態を逆転させるか、または上記した細胞の成長もしくは増殖を選択的に阻害するための、リード、薬物、治療的生物製剤、および方法を同定するためのスクリーニングを提供する。一つの局面において、本スクリーニングは、関心対象の遺伝子の示差的発現によって特徴づけられる悪性腫瘍、過形成、もしくは異形成の治療のために有用であるリード化合物または生物学的薬剤を同定する。
【0149】
したがって、本方法をインビトロで実施するためには、最初に、適切な細胞培養または組織培養が提供される。細胞は、新生物性細胞と関連する関心対象遺伝子を示差的に発現する、培養細胞または遺伝子改変細胞であることができる。または、細胞は、組織生検由来であることができる。細胞は、密度依存的制約のない指数増殖を達成するための条件下(温度、増殖培地または培養培地、およびガス(CO2))および適切な量の時間で培養する。また、さらに別の細胞培養;対照として試験する薬剤を受けていないものを維持することが望ましい。
【0150】
当業者には明らかなとおり、本方法は、ハイスループット解析のために修飾することができ、適切な細胞をマイクロタイタープレートで培養してもよく、遺伝子型変異、表現型変化、および/または細胞死に注目することによって、いくつかの薬剤を同時にアッセイしてもよい。
【0151】
薬剤が、DNAまたはRNA核酸分子以外の組成物であるときは、適切な条件は、細胞培養に直接添加されるもの、または添加のために培地に添加されるものを含む。当業者には明らかなとおり、添加しなければならない「有効な」量は、経験的に決定することができる。
【0152】
本スクリーニングは、薬剤を、関心対象の遺伝子の示差的発現によって特徴づけられる試験細胞と接触させる段階、および次いで関心対象遺伝子の発現レベルについて細胞をアッセイする段階を含む。いくつかの局面において、アッセイ法の前に関心対象遺伝子の発現レベルを決定することが必要であってもよい。これにより、細胞培養への薬剤の投与後に発現を比較するためのベースラインがもたらされる。もう一つの態様において、試験細胞は、関心対象の遺伝子を示差的に発現する樹立細胞系に由来する培養細胞である。遺伝子発現が、正常または非腫瘍状態の細胞に存在するレベルに戻される(減少させる、または増大する)か、または細胞が選択的に死滅するか、または成長率の減少を示す場合、薬剤は、治療剤の可能性がある。
【0153】
さらにもう一つの局面において、試験細胞または組織試料が、治療される被検体から単離され、1つまたは複数の潜在的薬剤を、その個々の患者のための最適の治療的なおよび/または治療の経過を決定するためにスクリーニングする。
【0154】
本発明の目的上、「薬剤」は、単一もしくは複合体の有機もしくは無機分子などの生物学的製剤もしくは化学物質、ペプチド、タンパク質、またはオリゴヌクレオチドを含む(しかし、これらに限定されるわけではない)ことが企図される。化合物の莫大なアレイ、例えばオリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチドなどのオリゴマー、並びに種々のコア構造に基づく合成の有機化合物を合成することができ、これらの化合物も「薬剤」という用語に含まれる。加えて、種々の天然の供与源により、植物または動物抽出物などのスクリーニングするための化合物を提供することができる。常に明確に述べられるわけではないが、薬剤は、単独で、または本発明のスクリーニングによって同定される薬剤と同じもしくは異なる生物活性を有するもう一つの薬剤と組み合わせて使用されることが理解されるはずである。また、本薬剤および方法は、その他の療法と組み合わせられることも企図される。
【0155】
本明細書に使用される「細胞の新生物状態を逆転させる」という用語は、アポトーシス、壊死、または本明細書に記載したような細胞分裂、減少した腫瘍形成能、薬学的耐性の喪失、成熟、分化、もしくは新生物表現型の復帰を防げる任意の他の手段を含むことが企図される。上記の如く、新生物状態を生じる関心対象の遺伝子の示差的発現を有する肺細胞は、本方法によって最適に治療される。これらの細胞は、遺伝子の示差的発現を同定することができる当技術分野において公知の任意の方法によって同定することができる。
【0156】
薬剤が核酸であるときは、リン酸カルシウム沈殿、微量注入法、または電気穿孔法を含むが、これらに限定されるわけではない当技術分野において公知の方法により、これを細胞培養に添加することができる。または、もしくは加えて、核酸は、細胞に組み込むために発現または挿入ベクターに組み込むことができる。プロモーターおよびポリヌクレオチドを機能的に連結することができるクローニング部位の両方を含むベクターは、当技術分野において周知であり、および簡単に下に記載してある。
【0157】
ポリヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法を使用して、ベクターゲノム内に挿入される。例えば、挿入断片およびベクターDNAは、適切な状態下で制限酵素と接触させて、それぞれの分子に対して、互いに対になることができ、かつリガーゼで共に連結することができる相補末端を作製することができる。または、合成核酸リンカーを制限されたポリヌクレオチドの終端に結合することができる。これらの合成リンカーは、ベクターDNAの特定の制限部位に対応する核酸配列を含む。加えて、終止コドンおよび適切な制限部位を含むオリゴヌクレオチドは、例えば、以下のいくつかまたは全部を含むベクターに挿入するために結合させることができる:哺乳動物細胞における安定または一過性トランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子などの、選択可能なマーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMV前初期遺伝子由来のエンハンサ/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40由来の転写終結およびRNAプロセシング・シグナル;適当なエピソームの複製のためのSV40ポリオーマ複製開始点およびColE1;多用途マルチクローニングサイト;並びにセンスおよびアンチセンスRNAのインビトロでの転写のためのT7およびSP6 RNAプロモーター。その他の手段が当技術分野において周知であり、利用することができる。
【0158】
本方法の目的、すなわち細胞の新生物状態の逆転が、細胞分裂の減少、細胞の分化、または遺伝子過剰発現の減少についてアッセイすることによって達成されるかどうかを決定することができる。細胞の分化は、組織学的な方法によって、または未分化表現型と関連していてもよい一定の細胞表面マーカーの存在もしくは喪失、例えば関心対象遺伝子の発現についてモニタリングすることによって、モニターすることができる。
【0159】
また、薬剤と本明細書に記載したスクリーニングおよびインビトロ方法を行うために必要な説明書とを含むキットが主張される。
【0160】
被検体がラットまたはマウスなどの動物であるときは、本方法は、治療剤の臨床試験の前に、またはリード最適化のために使用することができる便利な動物モデル系を提供する。この系では、遺伝子発現が正常レベルに戻される場合、または関心対象の遺伝子の示差的発現を含む、細胞の存在に関連するか、もしくは相関される症候が寛解させられる場合、候補薬剤は、それぞれ病理学的細胞を有する未処置の動物と比較して、潜在的薬物である。また、健康で、かつ治療されていない細胞または動物の別の負の対照群を有することも有用であり得るし、比較のための基礎を提供する。
【0161】
治療法
本発明によって提供される治療剤は、低分子、ポリヌクレオチド、ペプチド、抗体、抗原提示細胞を含むが、これらに限定されることはなく、関心対象の遺伝子を発現する細胞を特異的に認識し、かつ溶解する免疫エフェクター細胞を含む。当技術分野において公知の方法を使用して、1つまたは複数の薬剤を被検体または患者から単離された腫瘍細胞に対してスクリーニングすることによって、被検体または患者が、薬剤の使用によって有利に治療されるかどうかを決定することができる。追加的な方法は以下に提供される。
【0162】
一つの態様において、治療剤は、上皮起源の癌、例えば肺癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌および大腸癌を治療するのに有効な量で投与される。また、本発明の治療は、前新生物状態または非悪腫瘍状態から新生物状態または悪性腫瘍状態への進行を予防するために使用することができる。
【0163】
種々の送達系、例えばリポソーム内にカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、組換え細胞による発現、受容体依存性エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu(1987) J. Biol. Chem. 262: 4429-4432を参照されたい)、レトロウイルスまたはその他のベクターの一部としての治療的核酸の構築、その他が公知であり、本発明の治療剤を投与するために使用することができる。送達の方法は、動脈内、筋肉内、静脈内、鼻腔内、および経口経路を含むが、これらに限定されるわけではない。特定の態様において、治療を必要とする領域に局所的に本発明の薬学的組成物を投与することが望ましく;これは、例えば、限定されるわけではないが、外科手術の間に局部的な注入によって、注射によって、またはカテーテルによって達成してもよい。
【0164】
本明細書においてこれらの企図された目的に関して有効と同定された薬剤は、関心対象の遺伝子の示差的発現に相関した疾患に感受性か、もしくは発病するリスクのある被検体または個体に投与することができる。薬剤が、マウス、ラット、またはヒト患者などの被検体に投与されるときは、薬剤を薬学的に許容される担体に添加することができ、被検体に全身性または局所的に投与することができる。一つの局面において、有利に治療することができる患者を決定するためには、腫瘍試料を患者から取り出し、関心対象の遺伝子の示差的発現について細胞をアッセイする。治療的な量は、経験的に決定することができ、治療される病態、治療される被検体、並びに薬剤の有効性および毒性により変化する。動物に送達するときは、本方法は、薬剤の有効性をさらに確認するために有用である。動物モデルの一例として、ヌードマウス(Balb/c NCR nu/nu female, Simonsen, Gilroy, CA)群には、それぞれ本明細書で定義したとおりの約105〜約109高増殖性癌または標的細胞を皮下に接種する。腫瘍が確立されるときに、薬剤を、例えば腫瘍周辺に皮下注射によって投与する。腫瘍サイズの減少を決定するための腫瘍測定を週に2回ベニヤカリパス(venier calipers)を使用して二次元で行う。また、その他の動物モデルを適切なときに使用してもよい。
【0165】
インビボの投与は、治療の経過の全体にわたって、1用量、連続的、または断続的に遂行することができる。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療法のために使用される組成物、治療法の目的、治療される標的細胞、および治療される被検体により変化する。処理医師によって選択された服用レベルおよびパターンで、一回または複数回の投与を実施することもできる。薬剤を投与するための適切な投薬量製剤および方法は、下記に見いだすことができる。
【0166】
本発明の薬剤および組成物は、医薬の製造において、並びに活性成分の薬学的組成物などの従来の手順に従って投与することによって、ヒトおよびその他の動物を治療するために使用することができる。
【0167】
薬学的組成物は、経口的、鼻腔内、非経口的、または吸入療法によって投与することができ、錠剤、ロゼンジ、顆粒、カプセル、丸剤、アンプル、坐薬、またはエアロゾル形態の形をとってもよい。これらは、活性成分の水性もしくは非水性希釈剤中の懸濁液、溶液、およびエマルジョン、シロップ、顆粒、または粉末の形をまたとってもよい。本発明の薬剤に加えて、薬学的組成物は、その他の薬学的活性化合物または本発明の複数の組成物を含むこともできる。
【0168】
より具体的には、本明細書において活性成分とも称される本発明の薬剤は、経口、直腸、経鼻、局所的(経皮、エアロゾル、頬側、および舌下腺を含む)、膣、非経口的(parental)(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)、および肺を含む任意の適切な経路による治療法のために投与してもよい。また、好ましい経路は、レシピエントの状態および年齢、並びに治療される疾患で異なることが認識される。
【0169】
理想的には、薬剤は、疾患部位で活性化合物のピーク濃度を達成するように投与されるべきである。これは、例えば、任意に塩類溶液中の、薬剤の静脈内注射によって、または経口投与、例えば活性成分を含む錠剤、カプセル、もしくはシロップとして達成してもよい。望ましい薬剤の血液濃度は、疾患組織内で活性成分の治療的な量を提供するために、連続注入によって維持してもよい。それぞれの個々の治療的化合物または薬物が単独で使用されるときに必要とされるよりも低いそれぞれの成分抗ウイルス薬の総投薬量を必要とする治療的組み合わせを提供し、これにより副作用を減少させるために、効果のある組み合わせの使用が想定される。
【0170】
薬剤を単独で投与することもできるが、上記記載のとおり、少なくとも1つの活性成分を、そのための1つまたは複数の薬学的に許容される担体および任意にその他の治療剤と共に含む薬学的製剤としてこれを提示することが好ましい。それぞれの担体は、製剤のその他の成分と適合性で、かつ患者に有害でないという意味において「許容され」なければならない。
【0171】
製剤は、経口、直腸、経鼻、局所的(経皮、頬側、および舌下腺を含む)、膣、非経口的(皮下、筋肉内、経静脈、および皮内を含む)、および肺の投与のために、適切なものを含む。製剤は、都合よくは、単位用量形態で提示してもよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法によって調製してもよい。このような方法は、活性成分を1つまたは複数の付属の成分を構成する担体と結合させる段階を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体もしくは微粉固体担体、または両方と均一かつ本質的に結合させ、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0172】
経口投与のために適切な本発明の製剤は、それぞれが所定量の活性成分を含むカプセル、カシェ剤、または錠剤などの別々のユニットとして;粉末もしくは顆粒として;水性もしくは非水溶液体中の溶液もしくは懸濁液の状態として;または水中油型液状エマルジョンもしくは油中水型液状エマルジョンとして提示してもよい。また、活性成分は、大量瞬時投与、舐剤、またはペーストを呈していてもよい。
【0173】
錠剤は、任意に1つまたは複数の付属の成分と共に、圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠剤は、任意に結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋されたポビドン、架橋されたカルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、または分散剤と混合された、粉末もしくは顆粒などの自由に流れる形態の活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製してもよい。すりこみ錠剤は、不活性液状希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作製してもよい。錠剤は、任意にコーティングしても、または刻みめを入れてもよく、その中の活性成分の緩徐な放出または徐放性を提供するために、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、所望の放出プロフィールを提供するように比率を変化させて処方してもよい。錠剤は、胃以外の腸部分における放出を提供するために、任意に腸溶コーティングを提供してもよい。
【0174】
口における局所的投与に適した製剤は、風味をつけた基材、通常ショ糖およびアカシアまたはトラガカンタ中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンなどの不活性基材、またはショ糖およびアカシア中に活性成分を含むパステル;並びに適切な液体担体中に活性成分を含む含嗽薬を含む。
【0175】
本発明による局所的投与のための薬学的組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト(past)、ゲル、スプレー、エアロゾル、または油として処方してもよい。または、製剤は、活性成分と任意に1つもしくは複数の賦形剤または希釈剤とが含浸された包帯もしくは絆創膏などのパッチまたは包帯剤を含んでいてもよい。
【0176】
必要に応じて、クリーム基材の水相は、例えば、少なくとも約30% w/wの多価アルコール、すなわちプロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、およびポリエチレングリコールなどの2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコール並びにこれらの混合物を含んでいてもよい。局所製剤は、望ましくは皮膚もしくはその他の患部を介した薬剤の吸収または透過を増強する化合物を含んでいてもよい。このような経皮透過増強剤の例は、ジメチルスルホキシドおよび関連した類似体を含む。
【0177】
本発明のエマルジョンの油性相は、公知の様式の公知の成分から構成されていてもよい。この相は、単に乳化剤(別に、腎脈管としても公知)だけを含んでいてもよいが、これは、望ましくは脂肪もしくは油と、または脂肪および油の両方と、少なくとも1つの乳化剤の混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。また、油および脂肪を含むことが好ましい。合わせると、安定剤を伴うか、または伴わない乳化剤は、いわゆる乳化蝋を構成し、蝋は、油および/または脂肪と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0178】
本発明の製剤に使用するために適した腎脈管および乳化安定剤は、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、およびドデシル硫酸ナトリウムを含む。
【0179】
薬学的エマルジョン製剤に使用される可能性が高い大部分の油中での活性化合物の溶解度は非常に低いので、製剤のための適切な油または脂肪の選択は、所望の化粧品特質を達成することに基づく。したがって、クリームは、好ましくは、チューブまたはその他の容器から漏れを回避するために、適切な硬度をもつ油っぽくなく、染色されておらず、および水に溶ける製品であるべきである。ジ-イソアジアパート、イソセチルステアラート、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレイナート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアラート、2-エチルヘキシルパルミタート、またはCrodamol CAPとして公知の分枝鎖エステルの配合物などの、直鎖状または分岐鎖の、一もしくは二塩基性アルキルエステルを使用してもよく、最後3つが好ましいエステルである。これらは、必要とされる特質に応じて単独でまたは共に使用してもよい。または、白い軟パラフィンおよび/または流動パラフィン、またはその他の鉱油などの高融点脂質を使用することもできる。
【0180】
また、眼に対する局所的投与のために適した製剤は、活性成分が適切な担体、特に薬剤のための水性溶媒に溶解または懸濁された点眼を含む。
【0181】
直腸投与のための製剤は、例えば、カカオ脂またはサリチラート含む適切な塩基と共に坐薬として提示してもよい。
【0182】
膣の投与のために適した製剤は、当技術分野において適切であることが公知である担体などの薬剤に加えて含む、ペッサール、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡、またはスプレー製剤として提示してもよい。
【0183】
担体が固体である鼻噴投与のために適切な製剤は、例えば、吹入剤が摂取される様式で、すなわち、鼻部の至近距離に保持された粉末の容器からの経鼻通過を介して迅速吸入法によって投与される、約20〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗末を含む。担体が、例えば、鼻内噴霧、点鼻液として、または噴霧器によるエアロゾル投与による投与のための液体である適切な製剤は、薬剤の水溶液または油溶液を含む。
【0184】
非経口投与のために適した製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、および企図されるレシピエントの血液と等張性の製剤を与える溶質を含んでいてもよい、水性および非水性の等張性無菌注射溶液;並びに懸濁剤、糊料、および血液成分または1つもしくは複数の器官に化合物をターゲットするようにデザインされたリポソームまたはその他のミクロ粒子系を含んでいてもよい、水性および非水溶無菌懸濁液を含む。本製剤は、単位用量または多用量密封容器、例えばアンプルおよびバイアル中に提示してもよく、使用直前に、無菌の液体担体、例えば注射用水を添加することだけが必要な冷凍乾燥された(凍結乾燥された)状態で貯蔵されてもよい。即席注射溶液および懸濁液は、前述した種類の無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製してもよい。
【0185】
好ましい単位用量製剤は、本明細書に上述したような、薬剤の1日用量もしくは単位、1日副用量、またはこれらの適切な画分を含むものである。
【0186】
トランスジェニック動物
もう一つの局面において、関心対象の遺伝子は、トランスジェニック動物モデルを作製するために使用することができる。近年、遺伝学者は、発生中の胚の遺伝子を操作し、外来遺伝子をこれらの胚に導入することによって、トランスジェニック動物、例えばマウスを作製することに成功した。一旦これらの遺伝子がレシピエント胚のゲノムに組み込まれれば、生じる胚または成体動物を解析して、遺伝子の機能を決定することができる。インビボでの公知の遺伝子の機能を理解するため、およびヒト疾患の動物モデルを作製するために、変異体動物が作製される。(Chisaka et al. (1992) 355:516-520; Joyner et al. (1992) in POSTIMPLANTATION DEVELOPMENT IN THE MOUSE (Chadwick and Marsh, eds., John Wiley & Sons, United Kingdom) pp:277-297; Dorin et al. (1992) Nature 359:211-215を参照されたい)。
【0187】
米国特許第5,464,764号および第5,487,992号は、関心対象の遺伝子が欠失または変異されてその機能が破壊されているトランスジェニック動物の一タイプを記載する。(また、米国特許第5,631,153号および第5,627,059号を参照されたい)。これらの「ノックアウト」動物は、相同組換え現象を利用することによって作製され、インビボにおいて特定の遺伝子配列の機能を研究するために使用することができる。本明細書に記載されているポリヌクレオチド配列は、肺癌の動物モデルを調製する際に有用である。
【0188】
実験方法
実験1:発現解析
世界的に、非小細胞肺癌は、非常に満たされていない医学的必要性がある。感染症のない個々の患者から、新鮮な非壊死性NSCLC腫瘍組織および対応する正常組織を得た。新鮮な組織試料は、手術から24時間未満の少なくとも1.5グラムの組織であり、濡れた氷上で輸送された。解析の前に、病理学者が腫瘍含量の割合(%)、腫瘍の病期、および組織型について組織を評価した。受け取った組織は全て、手術が第一のまたは主な処置である、病期I、II、またはIIIaの原発性肺癌であった。
【0189】
組織を受け取った後直に、試料組織を、交差したメスを用いて細かく切り刻んだ。この細かく切り刻んだ組織を、単個細胞懸濁液が得られるまで、コラゲナーゼおよびエラスターゼを用いて処置した。この単個細胞懸濁液を数回洗浄し、赤血球を溶解させた。白血球は、細胞懸濁液を磁気ビーズに結合した抗体CD64、CD45、およびCD14に曝露することによって除去した。上皮細胞を、BerEP4に対する、磁気ビーズに結合した抗体を使用して単離した。内皮細胞を、CD31に対する、磁気ビーズに結合した抗体を使用して単離した。RNAは、上皮細胞試料および内皮細胞試料から直ちに調製した。
【0190】
上皮細胞および内皮細胞由来のRNAの質を、全体的に、かつ、細胞の種類に関して特異的なマーカーの発現によって評価した。サイトケラチン18、フォンウィルブランド因子、EF1、P1H12、hevin、およびサイトケラチン8を、収集したRNAが上皮細胞または内皮細胞の比較的純粋な細胞集団を示すかどうかを決定するためのマーカーとして使用した。RNAの質の評価の後、4つの扁平上皮癌試料、2つの腺癌試料、および3つの正常な肺組織試料が、SAGE解析にとって十分な量および質であった。
【0191】
LongSAGE(商標)を、Nature Biotechnology (2002) 20:508-512で開示される方法を使用して、約50,000個のタグの量で、各ライブラリについて、前記の9つのRNA試料に実施した。SAGEデータを特徴づけるために、腫瘍の種類間、ならびに正常肺細胞と比較した扁平上皮癌および腺癌におけるmRNAの発現増加に基づいて、詳細なバイオインフォマティクス解析を行った。潜在的な抗体治療標的の焦点は、原形質膜で発現されるタンパク質にあった。
【0192】
GITR、グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質は、活性化されたT細胞およびTreg細胞によって発現することが知られている。GITRはまた、活性化誘導性TNFRファミリー受容体(AITR)および腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー18(TNFRSF-18)としても公知である(Stephens, G.L. et al. (2004) J. Immunol. 173:5008-5020 および Nocentini, G. et al. (1997) P.N.A.S. 94:6216-6221)。GITRリガンドはGITRに結合し、TRAF2を介してNF-κBの活性化を誘発する。GITRとGITRリガンドの相互作用はT細胞においてTCR-CD3活性化誘導アポトーシスを妨害し、かつ、細胞の生存に関与している可能性がある。GITRリガンドはまた、AITRL、GITRL、TL6、およびhGIRTLとしても知られている。GITRは、4-1BBおよびCD27と類似していることが示唆される、228アミノ酸の膜貫通タンパク質である。GITRタンパク質は、19アミノ酸のシグナル配列、3つのシステインリッチモチーフを含む134アミノ酸の細胞外領域、23アミノ酸の膜貫通セグメント、および52アミノ酸の細胞質ドメインを有する。本GITRリガンドは、内皮細胞(HUVECを含む)、B1リンパ球、成熟したおよび未熟な樹状細胞、ならびにマクロファージによって発現される(Stephens, G. et al. (2004)、上記)。GITRは、Tリンパ球と内皮細胞との間の相互作用およびT細胞受容体によって媒介される細胞死の調節に関与している。GITRは、TRAF2/NIK経路を介してNF-κB活性化を媒介する。GITRは、TNF受容体関連因子-1(TRAF1)、TRAF2、およびTRAF3に結合するが、TRAF5およびTRAF6には結合しない(Nocentini, G. et al. (1997)、上記)。
【0193】
GITRは、CD4+CD25+ T細胞上で発現し、GITRLとの相互作用の後、T調節サプレッサーの活性をダウンレギュレートする。腫瘍細胞上へのGITRの標的化およびCD4+CD25+ T細胞の枯渇は、活動性腫瘍に特異的な治療法の有効性を強化する可能性がある(Kohm, A.P. et al. (2004) J. Immunol. 172:4686-4690 および Shimizu, J. et al. (2002) Nature Immunol. 3:135-142)。
【0194】
55個の肺腫瘍および18個の正常肺組織由来のバルク組織RNAのRT-PCRは、正常組織と比較して、76%の腫瘍において2倍以上増加したGITR RNAのレベルを示した。RT-PCRによると、GITRは乳房、前立腺、脳、心臓、腎臓、肝臓、唾液腺、脾臓、胃、胸腺、および子宮を含む様々な正常組織において、極めて軽微な発現を有する。様々な腫瘍および対応する正常組織に由来するバルク組織RNAのRT-PCRは、50%の卵巣癌(n=40)、25%の黒色腫(n=22)、50%の前立腺癌(n=24)、20%の大腸癌(n=26)、および66%の乳癌(n=23)において、2倍以上増加したGITR RNAのレベルを示した。
【0195】
免疫組織化学を、ホルマリン固定したパラフィン包埋ヒト非小細胞肺癌標本に対して実施した。使用した抗体は、抗GITR(Research Systems、BA689)、抗RDC1(Lifescience、RDC1-LP1439)、CD31(DAKO、M0823)、抗α平滑筋アクチン(DAKO、M0851)、抗上皮膜抗原(DAKO、M0804)、および広範囲サイトケラチン(DAKO、Z0622)であった。
【0196】
全体として、肺の腺癌および扁平上皮癌の両方の腫瘍細胞に強いGITR反応性が存在した。また、肺の腺癌および扁平上皮癌の両方の腫瘍間質における浸潤細胞にも強い反応性が存在した。肺の腺癌および扁平上皮癌の両方の腫瘍細胞に強いRDCl反応性が存在した。腫瘍血管系と関連した内皮細胞および周皮細胞/平滑筋細胞には、中程度のRDC1反応性が存在した。
【0197】
蛍光活性化サイトメトリー(FACS)によると、NCI-H358およびNCI-H1436細胞株はGITRの極めて良好な発現を有し、NCI-H1299、NCI-H522 NCI-H23、およびNCI-H647はGITRの良好な発現を有する。FACSによると、活性化PBMCおよび活性化CD3+T細胞におけるGITRの発現は、非小細胞肺癌細胞株における発現よりも極めて低い。
【0198】
実験2:機能バイオアッセイ
生成の後、細胞に基づいたアッセイを用いて抗体のパネルをスクリーニングし、標的タンパク質の機能を中和し、悪性表現型を逆転させるものを、当技術分野において公知の方法を用いて同定する。説明を目的としたものであるが、このような方法は以下に記載されている:Stanton, CA. et al. (2004) Blood 103(2):601-606 および Malinda, K.M. et al. (1999) Exp. Cell Res. 250:168-173 (遊走アッセイ) ; 米国特許公開公報第2004/0253708号A1の段落[0210]〜[0226] (アポトーシス) ; 米国特許公開公報第2004/0258685号A1の段落[0183]〜[0194] (阻害アッセイ、抗増殖アッセイ、ブロッキングアッセイ、およびエピトープ結合アッセイ) ; Stanton, CA. et al. (2004) 上記 (増殖アッセイおよび細胞毒性アッセイ) ; Manches, O. et al. (2003) Blood 101(3):949-954 (アポトーシスアッセイ、貪食アッセイ、およびADCCアッセイ) ; および米国特許公開公報第2004/0228859号A1の段落[0066] (CDCアッセイ) 。
【0199】
実験3:インビボ有効性
次いで、例えば実験2に記載されるような、必要な生物活性を有する抗体を、同系腫瘍モデルまたはヒト腫瘍異種移植片モデルを用いて、インビボ有効性についてさらにスクリーニングする。そのようなアッセイ法およびモデルは当業者に公知である。説明を目的としたものであるが、このような方法はTumor Models in Cancer Research, Teicher, B.A. ed.、the series Cancer Drug Discovery and Development, Humana Press, 2004 および Lev. A. et al. (2004) PNAS 101(24):9051-9056に記載されている。
【0200】
上記の実験および詳細な説明はNSCLCに対する使用に関して記載されているが、本発明の方法および組成物が表1で同定される他の癌に対して適切であることは、当業者にとって明らかであるはずである。したがって、本発明は、同様にこれらの悪性腫瘍を診断および予測する方法および組成物を提供する。
【0201】
本発明を、上述の態様と関連させて説明したが、前記の記載および以下の例は説明を意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。本発明の範囲内のその他の局面、利点、および変更は、本発明が属する分野の当業者に明らかであると考えられる。
【0202】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1で同定された遺伝子もしくは遺伝子産物またはその断片の発現レベルを被検体において検出する段階を含む、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、および大腸癌からなる群より選択される癌を診断または予測する方法であって、該遺伝子または遺伝子産物の過剰発現が、被検体における前記癌の予測される陽性の診断または予測である方法。
【請求項2】
遺伝子もしくは遺伝子産物またはその断片の発現レベルが免疫化学的に決定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
遺伝子もしくは遺伝子産物またはその断片の発現レベルが抗体によって免疫化学的に決定される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
遺伝子もしくは遺伝子産物またはその断片の発現レベルが、モノクローナル抗体、その変異体または誘導体によって免疫化学的に決定される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
遺伝子もしくは遺伝子産物またはその断片の発現レベルが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体変異体、抗体誘導体、ヒト化抗体、および抗体断片からなる群より選択される抗体によって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
遺伝子または遺伝子産物の発現レベルが、ポリヌクレオチドの量を検出することによって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
検出段階が被検体から単離された適切な試料において実施される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
適切な試料が、保存された組織試料、組織生検試料、または体液試料である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
適切な試料が、尿、血液、および血清からなる群より選択される体液試料である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
ポリヌクレオチドがmRNAおよびcDNAからなる群より選択される、請求項6記載の方法。

【公表番号】特表2008−527998(P2008−527998A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552289(P2007−552289)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/002050
【国際公開番号】WO2006/078911
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(593119583)ジェンザイム・コーポレイション (17)
【氏名又は名称原語表記】Genzyme Corporation
【Fターム(参考)】