説明

NTSC同一チャネル干渉を検出する装置および方法

テレビジョン装置(10)に含まれているATSC受信機(15)は、NTSCビデオ・キャリア信号のキャリア・トラッキングに基づくNTSC同一チャネル干渉検出器(40)を含んでいる。NTSC同一チャネル干渉検出器は、キャリア・トラッキング・ループ(50)と判断装置(55)とを含む。そのキャリア・トラッキング・ループは、受信信号を処理して、NTSCビデオ・キャリア信号の可能性ある存在を検出し、その存在を表すトラッキング信号を供給する。その判断装置は、トラッキング信号を受信し、その信号からDCオフセットを復元する。次いで、その判断装置は、DCオフセット信号が予め定められた閾値より大きい場合に、NTSC同一チャネル干渉が存在すると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、通信システムに関し、特に受信機における干渉検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
米国においてアナログからディジタルへの地上波テレビジョンの移行期間に、アナログNTSC(National Television Systems Committee)ベースの送信方式と、ディジタルATSC−HDTV(Advanced Television Systems Committee−High Definition Television)ベースの送信方式とが、多年にわたって共存すると予期される。従って、NTSC放送信号とATSC放送信号が同じ6MHz(100万Hz)幅のチャネルを共用することがある。これが図1に示されており、図1には、ディジタルVSB(残留側波帯)ATSC信号スペクトルに対するNTSC信号キャリア(ビデオ、オーディオおよびクロマ(色度))の相対的なスペクトル位置が示されている。従って、ATSC受信機は、NTSC同一チャネル(co−channel:共通チャネル)干渉または妨害を効率的に検出し、除去(reject:拒否、拒絶)することができなければならない。
【0003】
ATSC−HDTVディジタル受信機において、NTSC同一チャネル干渉除去は、櫛形フィルタによって実行してもよい(例えば、United States Advanced Television Systems Committee、“ATSC Digital Television Standard(ATSCディジタル・テレビジョン標準)”、Document A/53、September 16,1995参照)。この櫛形フィルタは、NTSC信号キャリア(搬送波)の位置およびその付近にスペクトル・ナル(null:ゼロ)を有する12シンボル線形フィード・フォワード型フィルタであり、NTSC干渉が検出されたときだけ適用される(例えば、United States Advanced Television Systems Committee、“Guide to the Use of the ATSC Digital Television Standard”、Document A/54、October 04,1995参照)。テストの結果、櫛形フィルタが、最大16dB(デシベル)までのD/U(Desired−to−Undesired、所望対不所望)信号電力比に対して効率的なNTSC信号除去を行うことが示された。D/U信号電力比は、平均ディジタルVSB ATSC信号電力を平均NTSCピーク(最大)信号電力で除算した値として定義される。
【0004】
NTSC干渉が検出されたときだけ櫛形フィルタが適用されるので、最初にNTSC同一チャネル干渉の存在を検出する必要がある。さらに、高いD/U比のNTSC同一チャネル干渉を検出できることが望ましい。上述の“Guide to the Use of the ATSC Digital Television Standard”には、櫛形フィルタの入力信号と出力信号の間の電力差を用いるNTSC検出器の実現法が記述されている。特に、この実現法では、櫛形フィルタの入力信号と出力信号の間の電力に大きなまたは充分な差があるときに、NTSC同一チャネル信号が存在することを検出する。残念ながら、この設計では、10dBより大きいD/U比に対しては信頼性がない。
【発明の開示】
【0005】
(発明の概要)
本発明の原理によれば、同一チャネル干渉検出器は、受信信号を処理して、干渉信号の少なくとも1つのキャリアの可能性ある存在(possible presence、存在の可能性)を示すトラッキング(追従)信号を供給するキャリア・トラッキング・ループと、干渉信号がトラッキング信号の関数の形式で存在するかどうかを判定する判断装置(デシジョン・デバイス)と、を含んでいる。
【0006】
本発明の実施形態では、テレビジョン装置はATSC受信機を含んでおり、ATSC受信機は、NTSCビデオ・キャリア信号のキャリア・トラッキングに基づくNTSC同一チャネル干渉検出器を含んでいる。NTSC同一チャネル干渉検出器は、キャリア・トラッキング・ループおよび判断装置を含んでいる。キャリア・トラッキング・ループは、受信信号を処理して、NTSCビデオ・キャリア信号の可能性ある存在を検出し、その存在を表すトラッキング信号を供給する。判断装置は、トラッキング信号を受信し、その信号からDC(直流)オフセットを復元(回復)する。次いで、判断装置は、DCオフセット信号が予め定めた閾値より大きい場合に、NTSC同一チャネル干渉が存在すると判定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の技術的思想部分(concept)以外の図示された各要素は周知であり、詳しく説明しない。例えば、本発明の技術的思想部分以外の、テレビジョン、各コンポーネント(構成要素)、例えばフロントエンド、ヒルベルト・フィルタ、キャリア・トラッキング・ループ、ビデオ・プロセッサ、遠隔制御手段、等は、周知であり、ここでは詳しく説明しない。さらに、本発明の技術的思想部分は、ここで説明しない通常のプログラミング技術を用いて実現してもよい。最後に、図面において同じ番号は同様の要素を表している。
【0008】
図2には、本発明の原理による具体例のテレビジョン装置10の高いレベルのブロック図が示されている。テレビジョン(TV)装置10は受信機15およびディスプレイ(表示器)20を含んでいる。具体的には、受信機15はATSCコンパチブル(両立性、適合型)受信機である。受信機15は、NTSCコンパチブルであってもよく、即ちテレビジョン装置10がNTSC放送またはATSC放送からのビデオ・コンテンツを表示することができるようなNTSC動作モードおよびATSC動作モードを有していてもよい。しかし、この説明の文脈では、ATSC動作モードを説明する。受信機15は、放送信号11を(例えば、アンテナ(図示せず)を介して)受信して処理して、その信号から例えばHDTVビデオ信号を復元(回復)してディスプレイ20に供給してビデオ・コンテンツをディスプレイ20に表示する。上述し図1に示したように、信号11は、放送ATSC信号だけでなく、同一チャネル放送NTSC信号からの干渉または妨害をも含んでいることがある。この点に関して、図2の受信機15は、上述のようなNTSC信号干渉を除去するための例えば上述の櫛形フィルタのような除去フィルタ(図示せず)を含み、本発明の原理に従って、さらにNTSCビデオ・キャリア信号のキャリア・トラッキング(追従)に基づくNTSC同一チャネル干渉検出器をも含んでいる。以下で説明するように、NTSC同一チャネル干渉検出器は、NTSC同一チャネル干渉を検出すると、NTSC同一チャネル干渉を軽減するように信号11を処理する除去フィルタの使用を可動化する。
【0009】
次に、図3には、本発明の原理によるNTSC同一チャネル干渉検出器を含む受信機15の関連部分が示されている。具体的には、受信機15は、アナログ−ディジタル変換器(ADC)105、自動利得制御手段(AGC)110、帯域通過フィルタ(BPF)115、遅延/ヒルベルト・フィルタ素子120、キャリア・トラッキング・ループ(CTL)125、平均化フィルタ135および比較器140を含んでいる。
【0010】
入力信号101は、上述の“ATSCディジタル・テレビジョン標準”に従ったディジタルVSB変調済み信号を表し、特定のIF(中間周波数)fIFHzを中心周波数としている。しかし、上述のように、入力信号101は、NTSC同一チャネル干渉をも含んでいることがある。入力信号101はADC105によってサンプリングされてサンプル信号またはサンプリング済み信号に変換され、次いでそれがAGC110によって利得制御される。後者(AGC110)は、非コヒーレントまたは非干渉性であり、信号101内に含まれるVSB信号の第1のレベルの利得制御(キャリア・トラッキング前の利得制御)、シンボル・タイミングおよび同期検波(検出)を行う混合モード(アナログおよびディジタル)ループである。AGC110は、基本的に、ADC105からのサンプル信号の絶対値を所定の閾値と比較し、エラー(誤差)を累積し、その情報を信号112を介してADC105の前の利得制御用のチューナ(図示せず)にフィードバックする。このようにして、AGC110は、利得制御された信号113をATSC VSB処理回路(図示せず)とBPF115とに供給する。本発明の特徴によれば、BPF115は、NTSCビデオ・キャリアを中心周波数とし、600KHz(千Hz)以下の狭い帯域幅を有する。VSB信号と同一チャネルNTSC信号の間には送信されたオフセットがないものと仮定し、ハイサイド注入(high side injection)を仮定すると、NTSCビデオ・キャリアは周波数fVIDEOを有すると予期される。ここで、fVIDEO=fIF−1.75MHzである。
【0011】
次いで、BPF115からの出力信号は遅延/ヒルベルト・フィルタ素子120中を通過する。後者(素子120)は、ヒルベルト・フィルタと、ヒルベルト・フィルタ処理遅延と一致または整合する等量遅延線(equivalent delay line)とを含んでいる。この分野で知られているように、ヒルベルト・フィルタは、0(ゼロ)より大きい全ての入力周波数に対して−90度移相を(および負の周波数に対して+90度移相を)導入する全域通過フィルタである。ヒルベルト・フィルタは、BPF115からの出力信号の直交成分の復元(回復)を可能にする。CTLが位相を補正しNTSCビデオ・キャリアにロック(固定)するためには、その信号の同相および直交成分が必要である。
【0012】
遅延/ヒルベルト・フィルタ素子120からの出力信号121は、同相(I)および直交(Q)成分を含む複素サンプル・ストリームである。図において複素信号経路が二重線で示されていることに留意すべきである。信号121はキャリア・トラッキング・ループ(CTL)125に供給され、このCTL125は位相ロック・ループであり、位相ロック・ループは、信号121の複素サンプル・ストリームを処理して、IF信号をベースバンドにダウンコンバートし(周波数逓降を行い)、放送NTSCビデオ・キャリアの送信機(図示せず)と受信機チューナ局部発振器(図示せず)の間の周波数オフセット(偏移)に対して補正を行うものである。CTL125は、2次(second order)ループであり、理論的には、周波数オフセットが位相エラーなしで、トラッキングまたは追従されるようにする。実際には、位相エラーは、ループ・バンド幅、入力位相ノイズ、熱的ノイズ、および、データのビット・サイズ、積分器、および利得乗算器のような実現上の制約、の関数である。
【0013】
次に、図4にはCTL125の具体的実施形態が示されている。CTL125は、複素乗算器150、位相検波器155、ループ・フィルタ160、合成器(または加算器)165、数値制御発振器(NCO)170、およびサイン/コサイン(sin/cos)テーブル175を含んでいる。同じ性能を達成するのであれば、その他のキャリア・トラッキング・ループ設計も可能であることに留意すべきである。複素乗算器150は、信号121の複素サンプル・ストリームを受信し、計算された位相角だけ複素サンプル・ストリームの逆回転(de−rotation:回転解除)を行う。具体的には、信号121の同相および直交成分は或る位相だけ回転される。後者(或る位相)は、sin/cosテーブル175(以下で説明する)によって与えられる特定のサインおよびコサイン値を表す信号176によって供給される。複素乗算器150からの出力信号、即ちCTL125からの出力信号は、逆回転された複素サンプル・ストリームを表す信号126である。信号126をここではトラッキング信号ともいう。図4から分かるように、トラッキング信号126は位相検波器155にも供給され、位相検波器155は、トラッキング信号126中に依然として存在するいかなる位相オフセットでも計算し、それ(オフセット)を表す位相オフセット信号を供給する。この計算は、“I*Q”または“sign(I)*Q”(符号(I)*Q)の関数を用いて行うことができる。位相検波器155によって供給される位相オフセット信号は、比例プラス積分の利得(比例利得と積分利得)を有する1次フィルタであるループ・フィルタ160に供給される。一時的に、合成器165を無視すると、ループ・フィルタ160からのループ濾波済み出力信号はNCO170に供給される。後者(ループ・フィルタ160)は積分器であり、この積分器は、入力信号として周波数を取り込み、この入力周波数に対応する位相角を表す出力信号を供給する。しかし、捕捉速度を増大させるために、NCO170には、fVIDEOに対応する周波数オフセットFOFFSETが供給され、この際、fVIDEOは合成器165を介してループ・フィルタ出力信号に加算されて、合成信号がNCO170に供給される。NCO170は、出力位相角信号171をsin/cosテーブル175に供給し、sin/cosテーブル175は、その対応するサインおよびコサイン値を、CTL入力信号121を逆回転させる複素乗算器150に供給して、トラッキング信号126を供給する。
【0014】
次に、図3を再び参照すると、図2の受信信号11中にNTSC同一チャネル干渉が存在するとき、トラッキング信号126は、受信NTSCビデオ・キャリアの電力レベルに比例したまたは応じたベースバンドのDCオフセットを含んでいる。このDCオフセットの符号は、キャリア・トラッキング・ループに於いて取り得る180度の不明確さ(ambiguity:多値性)に応じて決まり、その不明確さは、キャリア・トラッキング・ループ実現に応じて決まる。図3に示されているように、トラッキング信号126の同相(実)成分は、例えば100Hzといった低い帯域幅を有する低域通過フィルタ(LPF)である平均化フィルタ135に供給される。本発明の特徴によれば、平均化フィルタ135は、トラッキング信号126の同相成分をディジタル領域で平均化して信号136を供給する。信号136は、DCオフセットを表し、即ち、NTSC同一チャネル干渉の可能性ある存在の平均DC指標(measure、尺度)を表す。信号136は、相加性白色ガウス・ノイズ(AWGN)、位相ノイズおよびVSB信号の存在とは無関係になるはずである。その理由は、これらのノイズおよび信号は平均すると0(ゼロ)になるからである。受信信号11中にNTSCビデオ・キャリアが存在しない場合、またはNTSCビデオ・キャリア電力レベルが低すぎてCTL125が収束しない場合には、信号136の平均DC値が0(ゼロ)となることに留意すべきである。
【0015】
NTSC同一チャネル干渉の存在の判定は、出力フラグ信号141を供給する比較器140によって行われる。ここで図5を参照されたい。図5は、本発明の原理による具体例のフローチャートを示している。具体的には、信号136は、NTSCビデオ・キャリア信号の可能性ある検出を表すものであり、比較器140に供給される(図5、ステップ305)。後者(比較器140)は、信号136の値を所定の正の閾値と比較する(図5、ステップ310)。DCオフセットの絶対値が所定の閾値より大きい場合は、比較器140は、出力フラグ信号141を、NTSCビデオ・キャリアの検出を表す即ち同一チャネル干渉の検出を表す所定値、例えば論理「1」に対応する値に設定する。次いで、出力フラグ信号は他の回路(図示せず)によって用いられて、前述したように、適切なNTSC除去濾波が可動化される(図5、ステップ320)。しかし、DCオフセットの絶対値が所定の閾値より大きくない(以下の)場合は、出力フラグ信号141は、同一チャネル干渉がないことを表す論理「0」(ゼロ)に対応する値に設定される。この場合、その出力フラグ信号を用いて、NTSC除去濾波が前に可動化されていた場合にはNTSC除去濾波を非可動化するようにしてもよい(図5、ステップ315)。従って、本発明の原理によれば、NTSCビデオ・キャリアを示す信号が検出された場合には、テレビジョン装置10の受信機15は、例えば上述の櫛形フィルタを介して、適切なNTSC除去濾波を行う。
【0016】
ADC110の後の上述の実施形態のシミュレーションは、Cプログラミング言語で記述されたプログラムによって実行された。このプログラムは、特定のD/U比のNTSC同一チャネル干渉が加算されたATSC信号をそれぞれ表す相異なる入力データ・ファイルを処理した。相異なるデータ・ファイルは、図6に示されたシミュレータ構成を用いて得られた。NTSCビデオ源420はNTSC信号をNTSC変調器425に供給する。後者(NTSC変調器425)は、NTSCビデオを搬送するNTSC送信信号を減衰器430に供給する。減衰器430を用いてNTSC送信信号の電力レベルを変化させて、相異なるD/U比を得る。減衰されたNTSC送信信号は合成器410に供給され、合成器410は、擬似ノイズ(PN)モードに設定されたVSB変調器405によって供給されたATSC信号に、減衰されたNTSC送信信号を加える。NTSC送信信号とATSC信号の双方は44MHzのIF(中間周波数)に中心周波数を有する。この合成された信号、即ち、ATSC信号と同一チャネルNTSC干渉信号の合成信号は、ディジタル・オシロスコープ415に供給される。具体的には、ディジタル・オシロスコープ415は、サンプリング・レートfSAMP=25Mサンプル/sec(百万サンプル/秒)および8ビット/サンプルでその合成信号をサンプリングし、その結果、fIF=6MHzのIFを中心周波数とするサンプリング済みの高い注入信号が得られる。その他のサンプリング・レートおよび中間周波数を用いることもできるであろう。
【0017】
図7および8にはこのシミュレーションの幾つかの結果が示されている。図7は10dBのD/U比に関する具体例のグラフを示している。特に、図7は、サンプル数に対する平均のフィルタ出力のCTL周波数偏移およびDCオフセットの各グラフを示している。双方の曲線とも、キャリア・トラッキング・ループおよびDCオフセットのそれぞれの安定した収束を示している。
【0018】
次に、図8を参照すると、表1は、平均化フィルタの出力におけるDCオフセットの対応する絶対値と、キャリア・トラッキング・ループ収束状態とを指定した幾つかのD/U比のシミュレーション結果を示している。表1から、キャリア・トラッキング・ループが最大約20dBのD/Uまでの同一チャネルNTSC干渉を効率的に検出することが分かる。表1の各エントリ(項目)を用いて、図3の比較器140において用いるための具体例の閾値を与えることができる。例えば、閾値が31に設定されている場合、判断装置(例えば、図3の比較器140)は、18dBより小さいD/Uに対してNTSCの存在を識別する。
【0019】
本発明の特徴によると、表1の各エントリ(または同様の各エントリ)を受信機15のメモリ(図示せず)に推測的に(a priori)格納して、特定のDCオフセットに対する対応するD/U比の推定値を供給することができる。図9には、そのような具体的実施形態が示されている。図9は、比較器140がルックアップ・テーブル(LUT)143を含み出力信号142を供給することを除いて、図3に示されている実施形態と同様である。後者(出力信号)は、信号136により与えられるDCオフセットの特定の値に対する対応するD/U比の推定値であり、NTSC干渉がどのくらい悪いかまたは大きいかを示す指標(indication)である。具体的には、比較器140のLUT143は、例えば図8の表1の“D/U(dB)”および“DCオフセット”の各列に対応する表を格納する。比較器140は、信号136によって表されるDCオフセットを、表1の予め定められた複数のDCオフセットの中の1つに量子化し、対応するD/U比エントリを信号142上のD/U比の推定値として供給する。
【0020】
上述のように、NTSC同一チャネル干渉検出器は、NTSCビデオ・キャリアのキャリア・トラッキングに基づくものである。このような同一チャネル干渉検出器は、非常に高いD/U比である最大約20dBまでの同一チャネルNTSC信号を効率的に検出することができる。この同じ検出器を同様に用いて、NTSCオーディオまたはクロマ・キャリア(色搬送波)をトラッキング(追従)することができることに留意すべきである。但し、それらのキャリアの電力はビデオ・キャリアと比較して小さいので、効率的でないと予期される。しかし、これらの別の形態の検出器は、地上波チャネルでマルチパス伝播によってNTSCビデオ・キャリア周波数上でスペクトル・ナル(null、ゼロ)が生じて検出に影響を与えたが、他のキャリアがそのまま残っているときのような、特別な場合に対して有用であろう。
【0021】
以上、本発明の技術的思想をテレビジョン受信機とNTSC同一チャネル干渉の文脈で説明したが、本発明の技術的思想はこれに限定されるものではなく、1つ以上の同一チャネル干渉信号の存在において動作する任意の受信機にも適用される。次に、図10には、本発明の原理による別の実施形態が示されている。同一チャネル干渉検出器40は、干渉キャリア・トラッキンング要素50と判断装置55とを含んでいる。受信信号49は干渉キャリア・トラッキンング要素50に供給され、干渉キャリア・トラッキンング要素50が供給する出力信号51は、受信信号49中に存在する干渉信号の少なくとも1つのキャリア(干渉キャリア)の可能性ある存在に比例する(応じた)。判断装置55は、出力信号51を受信し、さらに、例えば電圧レベル、周波数、位相、等の出力信号51のパラメータの関数の形式でその干渉信号が存在するかどうかを判定する。干渉信号が存在するかどうかを判定する前に、判断装置55は、さらに出力信号51を処理してもよい。例えば、図3について説明したように、判断装置55は、出力信号51の平均化を最初に実行してもよい。代替構成または追加的構成として、判断装置55は、例えば標準偏差等のようなその他の統計的パラメータを計算してもよい。具体的には、キャリア・トラッキング要素50および判断装置55は、図3および4に関して図示し説明した要素と同様の要素を含んでいてもよいが、これに限定されるものではない。ここで説明し図示した特定の要素のコンポーネントのグループ化は単なる例示に過ぎないことに留意すべきである。例えば、図3はキャリア・トラッキング・ループの外部にあるヒルベルト・フィルタを示しているが、このような構成は必要な構成ではなく、例えば、ヒルベルト・フィルタはキャリア・トラッキング・ループの一部として図示し説明することもできたであろう。
【0022】
このように、以上、本発明の原理を具体例で説明した。この分野の専門家であれば、明示しなかったが本発明の原理を実施形態化しその精神および範囲内にある多数の代替構成を考案することができることが分かるであろう。例えば、個別の複数の機能要素の文脈で例示したが、これらの機能要素は1つ以上の集積回路(IC)上で実施形態化してもよい。同様に、個別の各要素として示したが、その要素の何れかまたは全てを、例えばディジタル信号プロセッサのような蓄積プログラム制御(SPC)プロセッサの形態で実現してもよい。さらに、テレビジョン装置10内にまとめられた複数の要素として示したが、それらの要素は任意の組合せで相異なるユニットに分散配置してもよい。例えば、受信機15は、装置の一部であっても、またはその装置から物理的に分離したボックス、またはディスプレイ20を組み込んだボックス、等であってもよい。従って、例示した実施形態に多数の変形を行ってもよく、特許請求の範囲によって定まる本発明の精神および範囲から逸脱することなくその他の構成を創案してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、NTSC信号スペクトルとATSC信号スペクトルの比較を示している。
【図2】図2は、本発明の原理を実施形態化したテレビジョン装置の高いレベルの具体例のブロック図を示している。
【図3】図3は、本発明の原理を実施形態化した受信機の一部分を示している。
【図4】図4は、図3の受信機に用いられる具体例のキャリア・トラッキング・ループを示している。
【図5】図5は、本発明の原理に従う具体例の方法を示している。
【図6】図6は、具体例のシミュレータ構成を示している。
【図7】図7は、具体例のシミュレーション結果を示している。
【図8】図8は、具体例のシミュレーション結果を示している。
【図9】図9は、本発明の原理に従うその他の実施形態を示している。
【図10】図10は、本発明の原理に従うその他の実施形態を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉信号を検出するのに使用する装置であって、
受信信号を処理して、干渉信号の少なくとも1つのキャリアの可能性ある存在を示すトラッキング信号を供給するキャリア・トラッキング・ループ(115、120、125)と、
前記干渉信号が前記トラッキング信号の関数の形式で存在するかどうかを判定する判断装置(135、140)と、
を具える装置。
【請求項2】
前記判断装置は、さらに、
前記トラッキング信号を平均化するフィルタ(135)と、
前記平均化したトラッキング信号を、前記干渉信号が存在するかどうかを判定するための所定の閾値と比較する比較器(140)と、
を具える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
さらに、前記平均化したトラッキング信号からD/U(所望対不所望)信号電力比を与えるルップアップ・テーブル(143)を具える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記D/U信号電力比は、平均のディジタル残留側波帯ATSC信号電力を平均のNTSCピーク信号電力で除した値として定義される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記干渉信号がNTSC信号であり、前記少なくとも1つのキャリアがNTSCビデオ・キャリアである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記干渉信号がNTSC信号であり、前記少なくとも1つのキャリアがNTSCクロマ・キャリアである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記干渉信号がNTSC信号であり、前記少なくとも1つのキャリアがNTSCオーディオ・キャリアである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記キャリア・トラッキング・ループは、
前記少なくとも1つのキャリアを中心周波数とし、前記受信信号を濾波して、帯域通過濾波済み信号を供給する帯域通過フィルタ(115)と、
前記帯域通過濾波済み信号を濾波して複素信号を供給する遅延/ヒルベルト・フィルタ(120)と、
前記複素信号に対して動作して前記トラッキング信号を供給するキャリア・トラッキング・ループ(125)と、を具える、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記キャリア・トラッキング・ループは、
さらに、前記トラッキング信号を処理して、前記トラッキング信号における位相オフセットを表す位相オフセット信号を供給する位相検波器(155)と、
前記位相オフセット信号を濾波するループ・フィルタ(160)と、
前記ループ濾波済み位相オフセット信号と、前記少なくとも1つのキャリア信号の周波数に等しい周波数オフセット信号とを合成して、合成信号を供給する合成器(165)と、
前記合成信号に応答して位相角信号を供給する数値制御発振器(170)と、
前記位相角信号を受信し、対応するサイン/コサイン値を与えるサイン/コサイン・テーブル(175)と、
前記サイン/コサイン・テーブルによって与えられたサイン/コサイン値を前記複素信号に乗じて、前記トラッキング信号を供給する複素乗算器(150)と、
を具える、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
ビデオ・コンテンツを含む放送ATSCコンパチブル信号を受信するテレビジョン装置であって、NTSC信号の少なくとも1つのキャリアのキャリア・トラッキングに基づくNTSC同一チャネル干渉検出器を具える受信機(15)と、
前記ビデオ・コンテンツを表示するディスプレイ(20)と、
を具える、テレビジョン装置(10)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのキャリアがNTSCビデオ・キャリアである、請求項10に記載のテレビジョン装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのキャリアがNTSCクロマ・キャリアである、請求項10に記載のテレビジョン装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのキャリアがNTSCオーディオ・キャリアである、請求項10に記載のテレビジョン装置。
【請求項14】
干渉信号を検出するのに使用する方法であって、
受信信号(305)を処理して、干渉信号の少なくとも1つのキャリアの可能性ある存在を示すトラッキング信号を供給する処理ステップと、
前記干渉信号が前記トラッキング信号の関数の形式で存在するかどうかを判定するステップ(310、315、320)と、
を含む、前記方法。
【請求項15】
前記判定するステップは、
前記トラッキング信号を平均化するステップ(305)と、
前記平均化したトラッキング信号を、前記干渉信号が存在するかどうかを判定するための所定の閾値と比較するステップ(310)と、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、前記平均化したトラッキング信号からD/U(所望対不所望)信号電力比を供給するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記D/U信号電力比は、平均のディジタル残留側波帯ATSC信号電力を平均のNTSCピーク信号電力で除した値として定義される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記干渉信号がNTSC信号であり、前記少なくとも1つのキャリアがNTSCビデオ・キャリアである、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記干渉信号がNTSC信号であり、前記少なくとも1つのキャリアがNTSCクロマ・キャリアである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記干渉信号がNTSC信号であり、前記少なくとも1つのキャリアがNTSCオーディオ・キャリアである、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記処理ステップは、
前記受信信号を濾波して、前記少なくとも1つのキャリアを中心周波数とする帯域幅を有する帯域通過濾波済み信号を供給するステップと、
前記帯域通過濾波済み信号を濾波して複素信号を供給するステップと、
キャリア・トラッキング・ループを用いて前記複素信号を処理して前記トラッキング信号を供給するステップと、を含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記複素信号を処理するステップは、
前記トラッキング信号を処理して、前記トラッキング信号における位相オフセットを表す位相オフセット信号を供給するステップと、
前記位相オフセット信号を濾波して、濾波済み位相オフセット信号を供給するステップと、
前記ループ濾波済み位相オフセット信号と、前記少なくとも1つのキャリア信号の周波数に等しい周波数オフセット信号とを合成して、合成信号を供給するステップと、
前記合成信号を処理して、前記合成信号の周波数に比例する位相角信号を供給するステップと、
前記供給された位相角に対応するサインおよびコサイン値を与えるステップと、
前記複素信号に前記与えられたサインおよびコサイン値を乗じて前記トラッキング信号を供給するステップと、
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらに、前記干渉信号が存在すると判定されたときに、前記干渉信号を除去するよう前記受信信号を処理する除去フィルタを可動化するステップを含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−507760(P2006−507760A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555413(P2004−555413)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/035921
【国際公開番号】WO2004/049699
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【Fターム(参考)】