説明

Nb3Sn系超電導線材の製造方法

【課題】 優れた超電導特性を示すNb3Sn系超電導線材の製造方法であって、Nb3Sn系超電導相生成のための熱処理時間を比較的短時間とすることが可能なNb3Sn系超電導線材の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のNb3Sn系超電導線材10の製造方法は、銅(Cu)−スズ(Sn)系合金材(ブロンズ材2)に複数本のニオブ(Nb)又はニオブ合金フィラメント3を配設してなるサブマルチ線1を備えた熱処理前Nb3Sn系超電導線材10’に熱処理を施してNb3Sn系超電導物質4を生成させるための熱処理工程において、0.5〜10℃/時間の温度上昇率にて30〜200℃の温度幅で温度上昇させる熱処理工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Nb3Sn系超電導線材の製造方法に関し、特に、優れた超電導特性を示すNb3Sn系超電導線材の製造方法であって、Nb3Sn系超電導相生成のための熱処理条件を改良したNb3Sn系超電導線材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル状の超電導線材を用いて高磁界を発生させる超電導マグネットは、核磁気共鳴(NMR)装置、核融合装置などへの応用が進められている。超電導マグネットに用いられる代表的な超電導線材としては、Nb3Sn系超電導線材が知られている。
【0003】
Nb3Sn系超電導線材の製法としては、内部拡散法、チューブ法、in-situ法、粉末法、ブロンズ法などが知られており、中でもブロンズ法が最も汎用されている。
【0004】
ブロンズ法によってNb3Sn系超電導線材を製造する方法においては、Nb3Sn系超電導相を生成させるための拡散熱処理が必須の工程となるが、その熱処理工程においては一般的に650〜700℃×90〜200hの熱処理条件が適用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、Nb3Sn系超電導線材の臨界電流密度を高めるために、熱処理工程において、15℃/h及び25℃/hという温度上昇率、及び570℃/185h+625℃/175hという熱処理条件を適用してNb3Sn系超電導線材を製造する方法も開示されている(非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−35940号公報
【非特許文献1】H. Sakamoto et al.: “Very High Critical Current Density of Bronze-Processed (Nb,Ti)3Sn Superconducting Wire”, IEEE Trans. Appl. Supercond. 10 (2000) pp. 971-974.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1等に記載の従来のNb3Sn系超電導線材の製造方法によると、Nb3Sn系超電導相生成のための熱処理時間を短時間とすることができるが、使用する材料の制約(例えば、ブロンズ中のSn濃度の制約)から超電導特性(臨界電流密度特性)の向上が阻害されたり、優れた超電導特性を得るための工程が極めて複雑化したりするという問題がある。
【0007】
一方、非特許文献1記載の方法によれば、上記の問題が解決できたとしても、Nb3Sn系超電導相を生成させるための熱処理時間が大幅に長くなってしまうため、製造コストが高くなってしまうという問題がある。
【0008】
発明者らは、従来技術の問題点を鑑み、Nb3Sn系超電導相を効果的に生成させる熱処理方法を詳細に研究した結果、本発明を完成させた。従って、本発明の目的は、優れた超電導特性(特に臨界電流密度特性)を示すNb3Sn系超電導線材の製造方法であって、Nb3Sn系超電導相生成のための熱処理時間を比較的短時間とすることが可能なNb3Sn系超電導線材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、銅(Cu)−スズ(Sn)系合金材(ブロンズ材)に複数本のニオブ(Nb)又はニオブ合金フィラメントを配設してなるサブマルチ線を備えたNb3Sn系超電導線材の製造方法であって、Nb3Sn系超電導相生成前の前記Nb3Sn系超電導線材に熱処理を施して前記Nb3Sn系超電導相を生成させるための熱処理工程において、0.5〜10℃/時間の温度上昇率にて30〜200℃の温度幅で温度上昇させる熱処理工程を有することを特徴とするNb3Sn系超電導線材の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の好ましい形態においては、以下の特徴を有する。
(1)前記Nb3Sn系超電導線材は、ブロンズ法により製造されるものである。
(2)前記0.5〜10℃/時間の温度上昇率にて30〜200℃の温度幅で温度上昇させる熱処理工程は、加熱時間が10〜140時間である。
(3)前記0.5〜10℃/時間の温度上昇率にて30〜200℃の温度幅で温度上昇させる熱処理工程は、該熱処理開始温度(或いは該熱処理工程中の最低温度)が500〜610℃の範囲内であり、該熱処理終結温度(或いは該熱処理工程中の最高温度)が620〜720℃の範囲内である。
(4)前記0.5〜10℃/時間の温度上昇率にて30〜200℃の温度幅で温度上昇させる熱処理工程は、縦軸温度(K,絶対温度)と横軸時間(h)で囲まれる面積が10,000(K・h)以上、100,000(K・h)以下となる。
【0011】
また、本発明は、上記目的を達成するため、銅(Cu)−スズ(Sn)系合金材(ブロンズ材)に複数本のニオブ(Nb)又はニオブ合金フィラメントを配設してなるサブマルチ線を備えたNb3Sn系超電導線材の製造方法であって、Nb3Sn系超電導相生成前の前記Nb3Sn系超電導線材に熱処理を施して前記Nb3Sn系超電導相を生成させるための熱処理工程において、0.5〜10℃/時間の温度上昇率で、かつ、縦軸温度(K,絶対温度)と横軸時間(h)で囲まれる面積が10,000(K・h)以上、100,000(K・h)以下となる熱処理工程を有することを特徴とするNb3Sn系超電導線材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のNb3Sn系超電導線材の製造方法によれば、優れた超電導特性(特に臨界電流密度特性)を示すNb3Sn系超電導線材を得ることができ、かつNb3Sn系超電導相生成のための熱処理時間を比較的短時間とすることができるため、結果として製造コストの低減が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導線材の製造方法)
図1は、本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導線材の製造方法を示すフローチャートである。以下に図1を参照して該製造方法を詳細に説明する。
【0014】
図1に示される製造方法は、ブロンズ法によるNb3Sn系超電導線材の製造方法であり、Nb3Sn系超電導相生成のための熱処理工程以外は、従来のブロンズ法と同様の方法により行うことができる。なお、以下において単にNb3Snと記述した場合も、(Nb, Ti)3Snや(Nb, Ti, Ta)3Sn等の全てのNb3Sn系超電導体を含むものとする。
【0015】
具体的に一例を挙げれば、ガンドリル穿孔により19本の孔を開けたブロンズインゴット2(Cu−Sn系マトリックス合金、例えば、Cu-14Sn-0.3Ti)とニオブ又はニオブ合金バー3(例えば、Nb-1.0Ta)を準備し、ブロンズインゴット2の孔にニオブ又はニオブ合金バー3を挿入して埋め込みサブマルチビレット1’を形成した後、押出、伸線及び焼鈍加工を施すことによりサブマルチ線1を作製する。サブマルチ線1は断面円形線材であっても断面矩形線材等であってもよい。
【0016】
作製したサブマルチ線1を複数本束ねた線材群を、ニオブ等の拡散バリア層12内へ挿入した後、その外側を安定化銅13で被包してマルチビレット10''とする。マルチビレット10''に対して、押出、伸線及び焼鈍、ツイスト、探傷検査の各工程における処理を施し、ガラス繊維又はセラミック繊維等からなる絶縁層を被覆することにより、熱処理前Nb3Sn系超電導線材10’を得る。
【0017】
Nb3Sn系超電導線材を用いた超電導マグネットの製造には、通常、いわゆるWind & React法が用いられる。即ち、得られた熱処理前Nb3Sn系超電導線材10’をマグネット等にコイル状に巻線した後に、Nb3Sn系超電導相を生成するための熱処理工程を経ることにより、Nb3Sn系超電導コイル100(Nb3Sn系超電導線材10を用いた超電導マグネット)を得ることができる。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導線材の断面図である。
【0019】
マルチビレット10''は、ブロンズ2(Cu-14Sn-0.3Ti)とNbフィラメント3(Nb-1.0Ta)からなるサブマルチ線1を複数本束ねたサブマルチ線材群11と、線材群の周囲を被覆するNbバリア材12と、Nbバリア材12の周囲を被覆するCu管13とから構成されている。
【0020】
Nbバリア材12は、拡散バリア層としての機能を有するものである。Nbバリア材12を配置する理由は、Nb3Sn系超電導相を生成させるための熱処理時にブロンズ2中のSn成分が外方へ拡散して安定化材として機能するCuを汚染し、安定化材の抵抗率が増加することが懸念されるためである。Nbバリア材12は、Sn成分の拡散(Cuの抵抗率増加)を抑制する作用を発揮するものであり、Nbの他、Ta等を用いることもできる。
【0021】
Cu管13は、安定化材としての機能を有し、Nb3Sn系超電導線材全体を熱的、電磁気的に安定化させるためのもので、通常は無酸素銅が使用される。Cuの他に、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金などを用いることもできる。また、図2ではCu管12を外周部に配置した例を示したが、Cuを中心部に配置、あるいは分散して配置することもできる。
【0022】
熱処理前のNb3Sn超電導線材に熱処理を施すことにより、ブロンズ2(Cu-14Sn-0.3Ti)に含まれるSn、或いはSn及びTiをNbフィラメント3(Nb-1.0Ta)の方向へ拡散移行させてNbと反応させることで、図2に示されるように、Nbフィラメント3の界面近傍(即ち、ブロンズ2とNb-1.0Taの境界部近傍)から、更にはその内部にまでにNb3Sn系超電導物質4(例えば、(Nb, Ti, Ta)3Sn)を生成させる。この時、ブロンズ2(Cu-14Sn-0.3Ti)は、Sn、或いはSn及びTiの割合を減少させて、ブロンズ2’(Cu-xSn-yTi)となる。
【0023】
以下に、Nb3Sn系超電導物質を生成するための熱処理工程を詳述する。
図3は、本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導物質を生成するための熱処理工程を示すフローチャートである。該熱処理工程は、熱処理工程Bと、熱処理工程Aと、熱処理工程Cとを含んで構成される。
【0024】
Nb3Sn系超電導物質を生成させるための熱処理は、真空又はアルゴンガス等の不活性ガス中で施され、その処理条件としては、0.5〜10℃/hの温度上昇率にて30〜200℃の温度幅で温度上昇させる熱処理工程Aを有することを特徴とする。ここで、「30〜200℃の温度幅で温度上昇させる」とは、熱処理工程A中の最低温度と最高温度の差が30〜200℃の範囲内であることを意味する。優れたNb3Sn系超電導線材を製造するためには、0.6〜9℃/hの温度上昇率にて70〜150℃の温度幅で温度上昇させることが好ましく、0.8〜8℃/hの温度上昇率にて90〜140℃の温度幅で温度上昇させることがより好ましく、1〜6℃/hの温度上昇率にて110〜130℃の温度幅で温度上昇させることがさらに好ましい。
【0025】
上記熱処理工程Aにおける加熱処理時間は140時間以内であることが好ましく、100時間以内、75時間以内、さらには50時間以内であることが好ましい。また、該加熱処理時間は10時間以上であることが好ましく、15時間以上、20時間以上、さらには25時間以上であることが好ましい。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導物質を生成するための熱処理工程の具体例を示す図である。熱処理工程Aは、上記温度上昇率の範囲内で一定の上昇率を適用する(図4(a))場合の他、0.5〜10℃/hの温度上昇率の範囲内であれば、途中で温度上昇率を適宜変化させてもよい(図4(b))。また、途中で、いったん温度を低下させる工程を含ませてもよい(図4(c))。
【0027】
上記熱処理工程Aの開始温度(或いは熱処理工程A中の最低温度)は、500〜610℃の範囲内であり、終結温度(或いは熱処理工程A中の最高温度)は、620〜720℃の範囲内である。好ましくは、前者が530〜570℃の範囲内であり、後者が640〜700℃の範囲内である。
【0028】
熱処理工程Bでは、特に限定されるものではないが、室温から上記の開始温度までなるべく短時間で、例えば、1〜10時間で温度上昇させる。或いは、あらかじめ上記の開始温度にしておいた炉内に熱処理前のNb3Sn系超電導線材10を設置することで、熱処理工程Bを省略することもできる。
【0029】
熱処理工程Cでは、特に限定されるものではないが、例えば、上記の終結温度にて90〜110時間程度、熱処理を行う。
【0030】
以上の熱処理工程によれば、優れた超電導特性を有するNb3Sn系超電導線材を比較的短時間の熱処理(Nb3Sn系超電導相生成のための熱処理)にて得ることができる。これにより、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0031】
また、本発明の特徴は、以下に示す通り規定することもできる。すなわち、上記の温度上昇率による熱処理工程Aにおいて、同工程における縦軸温度(K,絶対温度)と横軸時間(h)で囲まれる面積が10,000(K・h)以上、100,000(K・h)以下となることを特徴とする。より好ましくは、同面積が20,000(K・h)以上、90,000(K・h)以下となることを特徴とする。
【0032】
図5は、熱処理工程Aにおける縦軸温度(K,絶対温度)と横軸時間(h)で囲まれる面積の具体例を示す図である。同図中の斜線部(台形:(Temp1+Temp2)×Δt/2)が求める面積である。
【0033】
なお、上記の製造方法によって優れた超電導特性を有するNb3Sn系超電導相が生成されるメカニズムは、現時点で完全に解明されていないが、Nb3Sn系超電導相の核生成頻度および超電導相成長速度(拡散反応速度)が本発明の要素に関係していると考えられ、両者の複合的作用により本発明の効果が奏されているものと考えられる。
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
(Nb3Sn系超電導線材の製造)
上述した本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導線材の製造方法にしたがって、Nb3Sn系超電導線材を製造した(実施例1〜5)。また、比較として従来のNb3Sn系超電導線材の製造方法にしたがって、Nb3Sn系超電導線材を製造した(比較例1)。
【0036】
実施例1〜5及び比較例1にて製造したNb3Sn系超電導線材は、厚さ1.0mm、幅1.6mm、コーナー半径0.3mmの平角線材であり、その中に、超電導部(ブロンズ+Nbフィラメント)が体積率48%で複合された線材である。ブロンズにはCu-14.3wt%Sn-0.3wt%Ti合金、NbフィラメントにはNb-1wt%Ta合金を用いている。この平角ブロンズ法Nb3Sn系超電導線材におけるNb-Ta合金フィラメント径は、4.4μmである。また、超電導部は、体積率5%のNb拡散バリア材により外周部安定化銅と隔絶されている。
【0037】
実施例1〜5及び比較例1におけるNb3Sn超電導を生成するための各々の熱処理条件を表1及び表2に示す。表中、熱処理条件に表記の(AAA℃-BBB℃)/XXXhは、AAA℃からBBB℃までをXXX時間(h)で一定速度により昇温あるいは降温させるという意味であり、本発明の実施の形態における熱処理工程B或いは熱処理工程Aに相当する。熱処理工程Aに続く熱処理工程Cでは、一般的な670℃×96hを適用した。比較例1では、熱処理工程Aの無い一般的な熱処理条件(熱処理工程B及び熱処理工程C)により行った。
【0038】
(臨界電流特性の測定)
本発明の効果を検証するために、実施例1〜5及び比較例1における臨界電流特性を測定した。臨界電流は、外部磁界16Tを印加して測定した値で、0.1μV/cmをしきい値として求めた値である。結果を表1及び表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
実施例1〜3は、(550℃-670℃)における昇温速度を変えて、その効果を検証したものである。表1より、昇温速度により効果に若干の差が生じているが、いずれの場合も、表2の比較例1に比較して、臨界電流の有意な向上が確認できた。
【0042】
実施例4〜5は、(550℃-670℃)において昇温(降温)速度を変化させて、その効果を検証したものである。表2より、効果に若干の差が生じているが、いずれの場合も、比較例1に比較して、臨界電流の有意な向上が確認できた。
【0043】
また、実施例1〜5について、熱処理工程Aにおける縦軸温度(K,絶対温度)と横軸時間(h)で囲まれる面積を求めると以下のようになる
実施例1:((550+273)+(670+273))×25/2=22075
実施例2:((550+273)+(670+273))×50/2=44150
実施例3:((550+273)+(670+273))×100/2=88300
実施例4:(((550+273)+(670+273))×25/2)+(((670+273)+(550+273))×3/2)+(((550+273)+(670+273))×25/2)=46799
実施例5:(((550+273)+(600+273))×10/2)+(((600+273)+(650+273))×25/2)+(((650+273)+(670+273))×15/2)=44925
【0044】
これより、熱処理工程Aにおける縦軸温度(K,絶対温度)と横軸時間(h)で囲まれる面積がおよそ22000〜89000(K・h)の範囲内において良好な結果が得られていることが分かる。
【0045】
上記実施例は、ブロンズ、Nbフィラメント組成がそれぞれCu-14.3wt%Sn-0.3wt%Ti、Nb-1wt%Taの線材について実施した結果であるが、これに限定されるものではなく、いかなる組成の組み合わせで製作されるブロンズ法によるNb3Sn系超電導線材に対しても効果がある。
【0046】
また、本発明は、ブロンズ法Nb3Sn系超電導線材以外の、例えば内部Sn拡散法(Internal Tin process)Nb3Sn系超電導線材のように、製作過程で構成材の軟化を目的とした焼鈍熱処理を施さない製法で製作されたNb3Sn系超電導線材の熱処理方法としても有効な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導線材の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導線材の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導物質を生成するための熱処理工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係るNb3Sn系超電導物質を生成するための熱処理工程の具体例を示す図である。
【図5】熱処理工程Aにおける縦軸温度(K,絶対温度)と横軸時間(h)で囲まれる面積の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 サブマルチ線
1’ サブマルチビレット
2 ブロンズ(例えばCu-14Sn-0.3Ti)
2’ ブロンズ(例えばCu-xSn-yTi)
3 Nbフィラメント(例えばNb-Ta)
4 Nb3Sn系超電導物質(例えば(Nb, Ti, Ta)3Sn)
10 Nb3Sn系超電導線材(熱処理後)
10’ Nb3Sn系超電導線材(熱処理前)
10'' マルチビレット(押出加工前)
11 サブマルチ線材群
12 Nbバリア材
13 Cu管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅(Cu)−スズ(Sn)系合金材(ブロンズ材)に複数本のニオブ(Nb)又はニオブ合金フィラメントを配設してなるサブマルチ線を備えたNb3Sn系超電導線材の製造方法であって、
Nb3Sn系超電導相生成前の前記Nb3Sn系超電導線材に熱処理を施して前記Nb3Sn系超電導相を生成させるための熱処理工程において、0.5〜10℃/時間の温度上昇率にて30〜200℃の温度幅で温度上昇させる熱処理工程を有することを特徴とするNb3Sn系超電導線材の製造方法。
【請求項2】
前記Nb3Sn系超電導線材は、ブロンズ法により製造されるものであることを特徴とする請求項1記載のNb3Sn系超電導線材の製造方法。
【請求項3】
前記0.5〜10℃/時間の温度上昇率にて30〜200℃の温度幅で温度上昇させる熱処理工程は、加熱時間が10〜140時間であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のNb3Sn系超電導線材の製造方法。
【請求項4】
前記0.5〜10℃/時間の温度上昇率にて30〜200℃の温度幅で温度上昇させる熱処理工程は、該熱処理開始温度(或いは該熱処理工程中の最低温度)が500〜610℃の範囲内であり、該熱処理終結温度(或いは該熱処理工程中の最高温度)が620〜720℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のNb3Sn系超電導線材の製造方法。
【請求項5】
銅(Cu)−スズ(Sn)系合金材(ブロンズ材)に複数本のニオブ(Nb)又はニオブ合金フィラメントを配設してなるサブマルチ線を備えたNb3Sn系超電導線材の製造方法であって、
Nb3Sn系超電導相生成前の前記Nb3Sn系超電導線材に熱処理を施して前記Nb3Sn系超電導相を生成させるための熱処理工程において、0.5〜10℃/時間の温度上昇率で、かつ、縦軸温度(K,絶対温度)と横軸時間(h)で囲まれる面積が10,000(K・h)以上、100,000(K・h)以下となる熱処理工程を有することを特徴とするNb3Sn系超電導線材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−244724(P2006−244724A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54638(P2005−54638)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】