Nesfatin−1特異的抗体およびその用途、ならびにNesfatin特異的抗体およびその用途
Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinおよび/またはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、ならびにその抗体を用いるNesfatin-1の免疫学的検出方法および検出キットを提供すること。また、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、ならびにその抗体を用いるNesfatinの免疫学的検出方法および検出キットを提供すること。
Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinおよび/またはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、ならびにNesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinおよび/またはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、ならびにNesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、本発明により初めて見出された新規Nesfatin-1特異的抗体およびその用途、ならびに新規Nesfatin特異的抗体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肥満とは、体重(特に白色脂肪組織)が過剰にある状態であり、一般的にBody Mass Index(BMI)が≧25kg/m2であることによって分類され、また体脂肪率では成人男性で25%以上・成人女性で30%以上であることでも分類される。高脂肪食を中心とした食生活や運動不足は現代において、肥満に分類される人の割合は増加の傾向にある。2000年の厚生労働省による国民栄養調査の結果では、男性においてはこの10年および20年での比較で肥満に分類される人は確実に増えており、40歳から69歳においては約30%の人が肥満に分類される。また女性においても60歳から69歳における約30%が肥満に分類される。
【0003】
現在、肥満そのものよりもそれに随伴する(随伴し得る)健康障害は、臨床上の大きな問題となっており、肥満の予防や治療の医学的根拠となっている。日本肥満学会では、肥満症を「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、臨床的にその合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態」と定義し、疾患として取り扱うことを提唱している。ここで言う健康障害には、2型糖尿病や耐糖能異常のほかに、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、脂肪肝、心・脳血管疾患、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症などの整形外科的疾患、月経異常などが含まれる(松澤佑次 日本臨牀 株式会社日本臨牀社発行 2003年7月28日 61巻 増刊号6「肥満症」 p5−8)。また肥満に起因する疾患としては悪性腫瘍が挙げられ、特に乳ガン、子宮ガン、結腸ガン、腎臓ガン、食道ガン、膵臓ガン、肝臓ガン、胆嚢ガンの発症に関して肥満がリスクファクターとなることが報告されている(松澤佑次 日本臨牀 株式会社日本臨牀社発行 2003年7月28日 61巻 増刊号6「肥満症」 p5−8、アブーアビッド(Abu-Abid)等 ジャーナル・オブ・メディシン(Journal of medicine)(ΜSA)2002年1月1日 33巻1−4号 p73−86、ナイアー(Nair)等 ヘパトロジー(Hepatology)(ΜSA) 2002年7月1日 36巻1号 p150−155)。さらに近年、メタボリックシンドロームと呼ばれる動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳梗塞など)の危険性を高める複合型リスク症候群が提唱されており、日本における脳血管障害・心血管障害は全死亡率の30%を占めることからも注目されている。そのため、日本肥満学会・日本動脈硬化学会・日本糖尿病学会・日本高血圧学会・日本循環器学会・日本腎臓学会・日本血栓止血学会・日本内科学会は合同でその診断基準をまとめ、2005年4月8日の日本内科学会での記者会見でその基準を公表した。それによると、内臓肥満(内臓脂肪蓄積)をリスクの中心にすえ、ウエストの周囲径が男性では85cm以上、女性では90cm以上あることに加えて、血清脂質異常(トリグリセリド値が150mg/dL以上、HDLコレステロール値が40mg/dL未満の何れかまたは両方)、血圧高値(収縮期血圧が130mmHg以上、拡張期血圧が85mmHgの何れかまたは両方)、高血糖(空腹時血糖値が110mg/dL以上)のうちの2つ以上のリスクを持つ場合をメタボリックシンドロームと診断することとなった(日本内科学会雑誌 メタボリックシンドローム診断基準検討委員会 2005年4月号 94巻 p794−809)。この基準を用いた場合、人間ドックを受診した290名の成人男子のうち、肥満症と診断された人が61名(21%)であったのに対して、メタボリックシンドロームと診断された人は27名(9%)であり、肥満症に含まれずにメタボリックシンドロームと診断された人も9名(3%)存在したという報告もある(医学の歩み 高橋和男、齋藤 康 2005年 213巻6号 p549−554)。
【0004】
肥満に対して、過度の体重の低下(いわゆる「やせ」)や摂食の低下(いわゆる「食欲不振」)は、生体防御(免疫)反応の低下による易感染、造血系障害、無月経または月経不順、不妊症、精神的障害、末梢神経麻痺、低血圧、骨粗訴訟症などを引き起こす原因として問題になる。一般的にBMIが<18.5Kg/m2の場合、もしくは体脂肪率が男性では10%以下、女性では15%以下の場合をやせに分類する。2000年の厚生労働省による国民栄養調査では、女性においてはBMI<18.5Kg/m2の人の割合は20歳から39歳でこの10年および20年の間で確実に増えており、20〜29歳の人においては約24%が「やせ」に分類される。これは若年の女性において体型を気にするための意図的な摂食量の調節による可能性もある。しかしながら、この年代層で多発する中枢性摂食異常症の中の神経性食欲不振症(拒食症)などにおいては食欲自体が極度に低下して、栄養状態が悪化して全身衰弱で死亡する場合もある。また、従来胃下垂・胃アトニー・神経性胃炎と言われていた概念を含む食欲が低下する疾患として、Functional dyspepsiaと呼ばれる疾患があり、この疾患は、食後早期の満腹感、食欲低下などの症状を示すと言われている(タリィ(Talley )等 ガット(Gut)(England) 1999年 45巻 Suppl 2: p1137-1142)。さらに、食欲不振を起こす原因としては癌、炎症性疾患、下垂体・甲状腺・副腎などの機能低下、手術後、過度のストレスなどが挙げられ、このような状態で長期間食欲不振が持続することは身体の衰弱を引き起こす。
【0005】
このような状況において、近年摂食を調節する生体内因子の研究が盛んに行われており、レプチン・アディポネクチン・グレリンなどの因子と摂食調節との関連についても研究がされている。近年では、摂食や肥満に関係する物質としてNesfatin-1が報告されており(Oh-I S. et al. Nature, 443(7112):709-12, 2006)、摂食調節および/または体重調節に関与する新規因子として期待されている。
【0006】
Nesfatin-1は既知のNucleobindin 2(NucB2)と呼ばれる420個のアミノ酸からなるタンパク質から切り出される82個のアミノ酸からなるペプチドであり、検討の結果、摂食調節の作用を有しないNucB2からNesfatin-1が生成されることによって、摂食調節の作用を示すペプチドである(国際公開第WO2006/137597号パンフレット)。このように、Nesfatin-1はNucB2の一部分の配列であることから、NucB2と共通のアミノ酸組成および配列を持つため、NucB2には結合せず、Nesfatin-1にのみ結合する抗体を取得することは常識的には非常に困難と考えられていた。そのため、生体内での活性分子であるNesfatin-1を検出する方法としては、国際公開第WO2006/137597号パンフレットに記載のように、他の物理的な手段を用いてNucB2とNesfatin-1を分離してから抗体で検出する必要があった。この方法は、検出操作の煩雑さ、分離過程における抽出精製効率の制御の困難性などの点で、実際の臨床での診断などに実用的なNesfatin-1の測定系と言えるものはなかった。また、NucB2は、同じファミリーに属するNucB1との相同性が高いため、NucB1とも交差反応しないことが望ましい。
【0007】
また、NucB2とNesfatin-1の両者に結合する抗体は、ラットの脳内に投与することで摂食を亢進する作用を持つことが示されているが、実際の治療薬として用いるには脳内に直接治療薬を投与することは実用的ではなく、血管などから投与する形態の薬剤が望ましい。その際に血液中などにNucB1が大量に存在する場合には、NucB1と交差反応を示す抗体を投与しても実際にNesfatin-1が存在している部位に到達する前にNucB1に横取りされて、その抗体の効果を十分に発揮できない可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明が解決しようとする課題は、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatin(Nucleobindin 2(NucB2))もしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、または、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を提供することである。さらには、その抗体を用いる、Nesfatin-1の免疫学的検出方法および検出キットを提供することである。
【0009】
また、本発明が解決しようとするもう1つの課題は、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を提供することである。さらには、その抗体を用いる、Nesfatinの免疫学的検出方法および検出キットを提供することである。
【0010】
本発明者らは、Nesfatin-1内の各種ペプチドを免疫原として用いて得られた抗体を検討することにより、Nesfatin-1内の特定の配列からなるペプチドを免疫原とすることにより、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinもしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を取得できることを見出した。さらに、Nesfatinと高感度に抗原抗体反応を示す抗体を取得し、その抗体とNesfatin-1特異的抗体を組合すことによって、高感度にNesfatin-1を免疫学的に検出する方法を見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は以下のものに関する。
(1)Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体(抗体No.4998、NAP40−2、NAF7)。
(2)以下のアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原として用いることにより得られる、(1)記載の抗体(抗体No.4998)。
NSF1-C18:-Gly-Cys-Ser-Lys-Glu-Leu-Asp-Leu-Val-Ser-His-His-Val-Arg-Thr-Lys-Leu -Asp-Glu-Leu
(3)Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体(抗体No.4994、5223、6151、6152、NAP40−2、NAE1、NAE3、NAF11)。
(4)受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマにより産生される、(3)記載のモノクローナル抗体(抗体No.NAE1、NAF7、NAF11、NAP40−2、)。
(5)Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
(6)受領番号FERM ABP−10882、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマにより産生される、(5)記載のモノクローナル抗体(抗体No.NAF7、NAP40−2)。
(7)Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体(4994、NAD15)。
(8)受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマ。
(9)検体を、(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体に接触させる工程、
検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む、Nesfatin-1の免疫学的検出方法。
(10)検体を、(7)記載の抗体に接触させる工程、
検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む、Nesfatinの免疫学的検出方法。
(11)検体中のNesfatin-1の免疫学的検出方法であって、
(1)〜(6)記載の抗体のうちから選択された2種類の抗体を用いる、免疫学的検出方法。
(12)検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、
一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで
検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体のうち他方が、(3)、(4)、(5)または(6)のいずれかに記載の抗体である、(11)記載の免疫学的検出方法。
(13)一次抗体が、(1)または(2)記載の抗体(抗体No.4998)であって、
二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881、またはFERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体(抗体No.NAE1、または抗体No.NAF11)である、(12)記載の免疫学的検出方法。
(14)一次抗体が、受領番号FERM ABP−10884、またはFERM ABP−10882として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体(抗体No.NAP40−2、または抗体No.NAF7)であって、
二次抗体が、(1)または(2)記載の抗体(抗体No.4998)である、(12)記載の免疫学的検出方法。
(15)Nesfatin-1の濃度が30pM未満である検体と、Nesfatin-1の濃度が0pMである対照検体とを弁別可能である感度を有する、(11)〜(14)のいずれかに記載の記載の免疫学的検出方法。
(16)検体中のNesfatinの免疫学的検出方法であって、
検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、
一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで
検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、(7)記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である、Nesfatinの免疫学的検出方法。
(17)Nesfatinの濃度が30pM未満である検体と、Nesfatinの濃度が0pMである対照検体とを弁別可能である感度を有する、(16)記載の免疫学的検出方法。
(18)一次抗体が、(7)記載の抗体(抗体No.4994、NAD15)であり、
二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881、またはFERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体(抗体No.NAE1、NAF11)である(16)または(17)記載の免疫学的検出方法。
(19)(12)〜(15)のいずれかに記載の検出方法に用いられるNesfatin-1の検出キットであって、
一次抗体が固定された固相、および標識された二次抗体を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、(3)、(4)、(5)または(6)のいずれかに記載の抗体である、Nesfatin-1の検出キット。
(20)(16)〜(18)のいずれかに記載の検出方法に用いられるNesfatinの検出キットであって、
一次抗体が固定された固相、および標識された二次抗体を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、(7)記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である、Nesfatinの検出キット。
(21)検体に、標識されたNesfatin-1標準物質を混和する工程、
標識化Nesfatin-1標準物質が混和された検体に、(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体を接触させる工程、
抗体と抗原抗体反応した標識化Nesfatin-1標準物質を検出する工程を含む、Nesfatin-1の免疫学的検出方法。
(22)抗体が、(5)または(6)記載の抗体である、(21)記載の免疫学的検出方法。
(23)検体に、標識されたNesfatin標準物質を混和する工程、
標識化Nesfatin標準物質が混和された検体に、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を接触させる工程、
抗体と抗原抗体反応した標識化Nesfatin標準物質を検出する工程を含む、Nesfatinの免疫学的検出方法。
(24)抗体が、(7)記載の抗体である、(23)記載の免疫学的検出方法。
(25)(21)または(22)記載の検出方法に用いられるNesfatin-1の検出キットであって、
標識化されたNesfatin-1標準物質、およびNesfatin-1と抗原抗体反応する抗体を含み、
該抗体が、(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体である、Nesfatin-1の検出キット。
(26)(23)または(24)記載の検出方法に用いられるNesfatinの検出キットであって、
標識化されたNesfatin標準物質、およびNesfatinと抗原抗体反応する抗体を含み、
該抗体が、(7)記載の抗体である、Nesfatinの検出キット。
(27)(1)〜(7)のいずれかに記載の抗体を含有する食欲亢進および/または体重増加亢進のための医薬組成物。
【0012】
本発明により、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinもしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、ならびにNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、さらには、その抗体を用いる、Nesfatin-1の免疫学的検出方法および検出キットを提供することができる。
また、本発明により、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、さらには、その抗体を用いる、Nesfatinの免疫学的検出方法および検出キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、抗原として使用したペプチド(hNSF-N19、hNSF1-C18、hNSF-C18、hNSF1-M15)のNesfatinまたはNesfatin-1内の位置を示す模式図である。なお、図1に示されるポリペプチド全長が、Nesfatinに相当し、SPはシグナルペプチド、NAP1はNesfatin-1、NAP2はNesfatin-2、NAP3はNesfatin-3を表す。
【図2】図2は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.4994、6151、6152、6153)を使用する測定系の、ヒトNesfatin(F−NAP)との反応性を示すグラフである。
【図3】図3は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.6151、6152)を使用する測定系の、ラットNesfatinとの交差反応性を示すグラフである。
【図4】図4は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.6151、6152)を使用する測定系の、ラットまたはマウスNesfatinとの交差反応性を示すグラフである。
【図5】図5は、抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6151)固定化プレートと、ビオチン化IgG(抗体No.4998、抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトまたはラットのNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図6】図6は、抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6152)固定化プレートと、ビオチン化IgG(抗体No.4998、抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトまたはラットのNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図7】図7は、抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6152)固定化プレートと、ビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77との交差反応性を示すグラフである。
【図8】図8は、抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトNesfatin、ヒトNesfatin-1、ヒトNucB1-N77との反応性を示すグラフである。
【図9】図9は、抗Nesfatin-1IgG(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.6152)を使用する測定系の、ラットまたはマウスNesfatin-1との交差反応性を示すグラフである。
【図10】図10は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2, NAP37, NAP39)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.6151)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図11】図11は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2, NAP37, NAP39)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図12】図12は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.4998、ビオチン化抗体No.6151、ビオチン化抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図13】図13は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.4998、ビオチン化抗体No.5036、ビオチン化抗体No.5037)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図14】図14は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化抗体No.4998を使用する測定系の、ラットNesfatin-1との交差反応性を示すグラフである。
【図15】図15は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化抗体No.4998を使用する測定系の、Nesfatin(Full分子)との交差反応性を示すグラフである。
【図16】図16は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図17】図17は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化NAE1、ビオチン化NAE3)を使用する測定系の、ラットNesfatin-1との交差反応性を示すグラフである。
【図18】図18は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用する測定系の、NucB1-N77との交差反応性を示すグラフである。
【図19】図19は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用する測定系の、Nesfatinとの交差反応性を示すグラフである。
【図20】図20は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定プレートと、ビオチン化抗体(NAE1, NAE3, NAD15)を使用する測定系の、ヒトNesfatinに対する反応性を示すグラフである。
【図21】図21は、ヒトNesfatin C末端ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(抗体NAD15)固定プレートと、ビオチン化抗体(NAE1, NAE3)を使用する測定系の、ラットNesfatinとの交差反応性を示すグラフである。
【図22】図22は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定プレートと、ビオチン化抗体(NAE1)を使用する測定系の、ヒトNucB1との交差反応性を示すグラフである。
【図23】図23は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化IgG(NAF11)を使用する測定系の、ラットまたはマウスNesfatin-1との交差反応性を示すグラフである。
【図24】図24は、抗Nesfatin -1C末端ペプチドPAb(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体NAF11)を使用する測定系の、マウスまたはラットNesfatinに対する交差反応性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinおよび/もしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体>
本発明は、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatin(Nucleobindin 2(NucB2))もしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、またはNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体に関する。
【0015】
本発明において、「Nesfatin-1」とは、配列番号5〜7に示される、摂食抑制および/または体重増加抑制活性を有するポリペプチドである。Nesfatin-1は、Nesfatinから、生体内のプロホルモン・コンバターゼ等の切断酵素で切り出されることにより、摂食抑制および/または体重増加抑制活性を示すものである。また、本発明におけるNesfatn-1とは、配列番号5〜7のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が置換・欠損・挿入され、かつ摂食抑制および/または体重増加抑制活性を有するポリペプチドも含まれる。かかるポリペプチドとしては、具体的には、Nesfatinの消化に際して、切断酵素認識部位が末端に残存したポリペプチド、またはNesfatin-1の標識化の際に、1〜数個のアミノ酸が置換・欠損・挿入されたポリペプチドであって、かつ摂食抑制および/または体重増加抑制活性を有するポリペプチドなどがあげられる。
【0016】
かかるNesfatin-1は、配列番号8〜13のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するNESFATINポリペプチドをプロホルモン・コンバターゼで切断したのち、逆相クロマトグラフィー等で精製することにより、またはNesfatin-1ポリペプチドに対する抗体に対する結合と遊離の工程を行なうことにより取得することができる。また、実施例1のようにして組換えNesfatin-1を取得することもできる。
【0017】
本発明における抗体の一つの様態は、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体である。ここでNesfatinとは、配列番号8〜13に示されるポリペプチドをいう。「Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない」とは、Nesfatin-1およびNesfatinをほぼ同じ分子数を固相に固定して、そこに各抗体を抗原抗体反応させたときの結合量が、Nesfatin-1を固定化した固相への結合量に対して、Nesfatinを固定化した固相への結合量が1/5未満の値であるものをいう。このようなNesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体は、以下のアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原として用いることにより得ることができる。ここで、該ペプチドを免疫する動物としては、家兎が好ましい。
NSF1-C18:-Gly-Cys-Ser-Lys-Glu-Leu-Asp-Leu-Val-Ser-His-His-Val-Arg-Thr-Lys-Leu -Asp-Glu-Leu(配列番号1)
【0018】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体については実施例5に、前述のNSF1-C18ペプチドをウサギに免疫することによって、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体が再現良く得られることが示されている。またモノクローナル抗体の例としては、受領番号FERM ABP−10882(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領日 2007年7月27日)として寄託されているハイブリドーマ(NAF7)により産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。また、本発明は、かかるハイブリドーマにも関する。
【0019】
本発明における抗体の別の様態としては、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である。ここでNucB1とは配列番号14〜16に示されるポリペプチドである。また、本件明細書において、特に一次構造的にNesfatin-1との相同性の高い部分はこの発明においてはNucB1-N77と呼び、配列番号17〜19にその構造が示されている。なお、リコンビナントNucB1-N77は、N末端にGly-Serが残存する構造となる。また、本発明において「NucB1」といった場合には「NucB1-N77」も含まれる場合がある。「NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」とは、Nesfatin-1およびNucB1(NucB1-N77)をほぼ同じ分子数を固相に固定して、そこに各抗体を抗原抗体反応させたときの結合量が、Nesfatin-1を固定化した固相への結合量に対して、NucB1を固定化した固相への結合量が1/5未満の値であるものをいう。
【0020】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体の例としては、受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領日 2007年7月27日)として寄託されているハイブリドーマ(それぞれ、NAE1、NAF7、NAF11、またはNAP40−2)により産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。また、本発明は、かかるハイブリドーマにも関する。
【0021】
本発明における抗体のさらに好ましい様態としては、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体が挙げられる。「NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」とは、前述の「Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない」における要件と、「NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」という要件を兼ね備えていることをいう。
【0022】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。後述の実施例に示されるように、受領番号FERM ABP−10882、またはFERM ABP−10884(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領日 2007年7月27日)として寄託されているハイブリドーマ(それぞれ、NAF7、またはNAP40−2)により産生されるモノクローナル抗体は、Nesfatin-1との抗原抗体反応の感度、およびNesfatinおよびNucB1との交差反応性の低さの点で、特に優れている。また、本発明は、かかるハイブリドーマにも関する。
【0023】
さらに、本発明の抗体は、NucB1-N77とも実質的に抗原抗体反応しないことが好ましい。このような抗体としては、受領番号FERM ABP−10882(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領日 2007年7月27日)として寄託されているハイブリドーマ(NAF7)により産生されるモノクローナル抗体があげられる。
【0024】
また、前述のモノクローナル抗体を取得する方法としては、それぞれ取得したい抗体を産生するハイブリドーマを培養し、得られた培養上清から常法によって抗体を精製して取得することができる。また、別の方法としては、取得したい抗体を産生するハイブリドーマから抗体をコードする遺伝子、より詳細には免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を取得して、該遺伝子を発現するためのベクターを作成し、宿主細胞(哺乳類細胞、昆虫細胞、微生物等)に導入して、該抗体を産生させることも可能である。このとき、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードする遺伝子について、望む形質を導入するための遺伝子改変を行ったり、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域を用いて抗体キメラタンパク質、低分子抗体やスキャフォールド抗体を作成することは、公知の技術を用いることで、当業者であれば実施することができる。
【0025】
<Nesfatin-1の免疫学的検出方法>
前述の「Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinもしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、またはNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体」を用いることによって、Nesfatin-1を特異的に検出しうる免疫学的検出方法を構築できる。例えば、該Nesfatin-1の免疫学的検出方法は、(I)検体を、該Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinおよび/またはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体に接触させる工程、(II)検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む。なお、抗原抗体反応を利用した免疫学的検出方法は、当技術分野において周知であり、本発明において、従来のいずれの方法をも採用することができる。
【0026】
そのような免疫学的検出方法の一つの形態は、Nesfatin-1と抗原抗体反応する抗体の量を測定することである。またその形態の中での一つとしては、前述の抗体の内、2つの抗体を用いる方法である。この場合、用いる抗体の望ましい組合せは、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体と、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体との組合せ、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体と、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体との組合せ、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体と、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体との組合せ、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体2種類の組合せである。ここで、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体と、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体との組合せにおいては、前者はNucB1との抗原抗体反応を否定できず、後者はNesfatinとの抗原抗体反応を否定できない性状を持つが、その組合せによってNesfatin-1を特異的に検出し、NesfatinおよびNucB1を実質的に検出しないようにできる。
【0027】
この2種類の抗体を用いた免疫学的測定法においては、少なくとも一種類の抗体を固相に固定する方法と、固定しない方法が挙げられる。
【0028】
少なくとも1種類の抗体を固相に固定化する測定方法としては、(I)検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、(II)一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで(III)検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含む、サンドイッチ法による測定方法が例示される。この測定方法での二次抗体の標識は、Nesfatin-1に抗原抗体反応した抗体の量が定量するために用いられ、一般的には酵素、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質が使用される。ここで、酵素で標識した二次抗体を用いる場合には、酵素による反応で発色、発光、蛍光を発するような物質を酵素の基質として反応させて、結果として生じた発色(吸光度として測定)、発光、蛍光を定量的に測定することで、Nesfatin-1と抗体抗原反応した二次抗体の量を測定する。また同時に、Nesfatin-1を含まない対照検体における測定値(バックグランド)、Nesfatin-1の標準ペプチドを用いていくつかの異なる濃度で該ペプチドを含む標準検体についても同時に測定を行って量依存的な結合状態を示す標準検量曲線を作成し、それによって得られた結果を用いて検体中に含まれるNesfatin-1を算定することが可能である。また、この測定方法によって検出できるNesfatn-1の最低濃度はその測定系の感度を規定する。つまりNesfatin-1を含まない対照検体における測定値に対して、有意に弁別できる測定値を示すNesfatin-1の標準ペプチドを含む標準検体におけるNesafatin-1濃度として、感度を表すことができる。本発明においては、30pMという低い濃度のNesfatin-1を含む標準検体においても、Nesfatin-1を含まない対照検体との弁別が可能であったことから、この測定系は30pM未満まで測定可能な検出感度を有するといえる。また、本発明の好ましい態様によれば、5pM未満の濃度のNesfatin-1を含む標準検体においても、Nesfatin-1を含まない対照検体との弁別が可能である。
【0029】
このような測定系の実例としては、実施例14に示す、一次抗体が、NSF1-C18をウサギに免疫して作成したポリクローナル抗体(抗体No.4998)であり、二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881として寄託されているハイブリドーマ(NAE1)により産生される抗体である測定系が挙げられる。かかる系では、ヒトのNesfatin-1について数pMであってもNesfatin-1を含まない対照検体との弁別が可能であり、30pM以下の感度、さらに数pM程度の感度を有していることが示された。同様に、一次抗体として抗体No.4998を用い、二次抗体として受領番号FERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマ(NAF11)により産生される抗体を用いる測定系も、検体中のNesfatin-1を高感度に検出することができる。
【0030】
また、一次抗体として、受領番号FERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマ(NAP40−2)により産生される、Nesfatin-1と高感度に抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を使用し、二次抗体として、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない本発明の抗体(抗体No.4998)を使用することによっても、検体中のNesfatin-1を高感度に検出することができる。同様に、一次抗体として受領番号FERM ABP−10882として寄託されているハイブリドーマ(NAF7)により産生される抗体を用い、二次抗体として抗体No.4998、No.6151、またはNo.6152を用いる測定系も、検体中のヒトNesfatin-1を高感度に検出することができる。
【0031】
2種類の抗体とも固相に固定しない方法としては、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)法やBRET (Bioluminescence Resonance Energy Transfer)法が挙げられる。これらの方法は、Nesfatin-1と抗原抗体反応する2種類の抗体を用い、一方の抗体に蛍光物質または発光タンパク質を結合させておき、その蛍光や発光の特定波長での光のエネルギーを吸収する蛍光物質で他方の抗体を標識しておくことで実施できる。この光エネルギーの吸収(Energy Transfer)は光を発する蛍光物質または発光タンパク質とそのエネルギーを吸収する蛍光物質がごく近傍に存在する必要があるため、2種類の抗体が一つの抗原に抗原抗体反応をしたときのみ、第一の抗体の蛍光物質や発光タンパク質の光の消光や第二の抗体に結合している蛍光物質が発する波長の蛍光を検出することによって、抗原であるNesfatin-1に抗体が抗原抗体反応している状態を定量的に検出できる。
【0032】
また、別の測定方法の様式としては、検体に、あらかじめ濃度を調整した標識化されたNesfatin-1の標準ペプチドを混和し、Nesfatin-1と抗原抗体反応する抗体に競合的に反応させることによって行う、競合的抗原抗体反応による測定方法も挙げられる。この場合、Nesfatin−1における標識は、抗体に結合した標準ペプチドを定量するために用いられ、一般的には放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、酵素が使用される。ここで、酵素で標識した標準ペプチドを用いる場合には、酵素による反応で発色、発光、蛍光を発するような物質を酵素の基質として反応させて、結果として生じた発色(吸光度として測定)、発光、蛍光を定量的に測定することで、抗体と抗原抗体反応した標準ペプチドの量を測定する。ここで、用いる抗体は、標識化されたNesfatin-1の標準ペプチドと検体中に含まれるNesfatin-1との両方と抗原抗体反応するものであればよいが、好ましくはNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体が用いられ、さらに好ましくは、受領番号FERM ABP−10882、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマ(NAF7、NAP40−2)により産生されるモノクローナル抗体を用いることが望まれる。また同時に、Nesfatin-1を含まない対照検体における測定値(バックグランド)、標識化されていないNesfatin-1の標準ペプチドを用いていくつかの異なる濃度で該ペプチドを含む標準検体についても同時に測定を行って量依存的な結合状態を示す標準検量曲線を作成し、それによって得られた結果を用いて、検体中に含まれるNesfatin-1を算定することが可能である。
【0033】
本発明の免疫学的検出方法に適用できる検体は、Nesfatin-1の検出が望まれるいずれのものであってもよく、例えば、患者の血液、血清、髄液、尿、腹水、胸水、唾液、涙液、喀痰、バイオプシーで取得した組織等を挙げることができる。
【0034】
<Nesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキット>
本発明は、前述のNesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキットにも関する。例えば上記のサンドイッチ法による測定方法におけるキットには、前述の一次抗体が固定された固相、および前述の二次抗体が標識されたものが含まれる。二次抗体の標識に使用される試薬は、当技術分野において周知であり、例えば、ビオチン、蛍光物質、発光物質、酵素(パーオキシダーゼ、ホスファターゼ、グルコシターゼ、ルシフェラーゼ等)が挙げられる。ここで、酵素で標識した二次抗体を用いる場合には、酵素による反応で発色、発光、蛍光を発するような酵素の基質もキットに含まれることがある。
【0035】
本発明のNesfatin-1のサンドイッチ法による免疫学的検出方法に用いられるキットは、さらに標準ペプチドを含んでいても良い。本発明のキットに含まれる標準ペプチドとは、前記抗体の、Nesfatin-1との量依存的な結合力を示す標準検量曲線を作成するために使用されるものである。このような標準ポリペプチドとして、Nesfatin-1を使用することができる。
【0036】
これらを含む本発明のキットは、例えば、(1)固定化した一次抗体に標準ペプチドを添加して反応後、さらに標識された二次抗体を添加することにより標準検量曲線を作成し、(2)同様に固定化した一次抗体に検体を添加して反応後、標識された二次抗体を添加し、(3)検体での反応における二次抗体の結合量を標準検量曲線によって測定することによって、検体中に含まれるNesfatin-1の含有量を検出することができる。
その他のキットの様態としては、前述のFRET法やBRET法などの測定方法に用いられるキットが挙げられ、該キットには蛍光物質または発光タンパク質で標識化された第一の抗体と、該蛍光物質または発光物質の発する特定の波長の光エネルギーを吸収しうる蛍光物質で標識化された第二の抗体が含まれる。また、本発明のFRET法またはBRET法によるNesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキットには、さらに、前記抗体の、Nesfatin-1との量依存的な結合力を示す標準検量曲線を作成するための標準ペプチドを含んでいても良い。このような標準ポリペプチドとして、Nesfatin-1を使用することができる。
【0037】
さらに他のキットの様態としては、競合的抗原抗体反応による測定方法におけるキットが挙げられ、該キットには標識化されたNesfatin-1標準ペプチド、およびNesfatin-1と抗原抗体反応する抗体が含まれる。標準ペプチドの標識に使用される試薬は、当技術分野において周知であり、例えば、ビオチン、蛍光物質、発光物質、酵素(パーオキシダーゼ、ホスファターゼ、グルコシターゼ、ルシフェラーゼ等)が挙げられる。ここで、酵素で標識した標準ペプチドを用いる場合には、酵素による反応で発色、発光、蛍光を発するような酵素の基質もキットに含まれることがある。また、本発明の競合的抗原抗体反応法によるNesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキットには、さらに、前記抗体の、Nesfatin-1との量依存的な結合力を示す標準検量曲線を作成するための標準ペプチドを含んでいても良い。このような標準ポリペプチドとして、Nesfatin-1を使用することができる。
【0038】
そのほか、本発明のキットには、付加的な要素として、試薬や生体試料を希釈するための緩衝液、陽性対照、陰性対照、標識を測定するための基質、反応容器、アッセイプロトコルを記載した指示書などを含めることができる。これらの要素は必要に応じて予め混合しておくこともできる。また、必要に応じて、保存剤や防腐剤を各要素に加えることができる。
【0039】
<Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体>
本発明は、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体に関する。「NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」とは、NesfatinおよびNucB1をほぼ同じ分子数を固相に固定して、そこに各抗体を抗原抗体反応させたときの結合量が、Nesfatinを固定化した固相への結合量に対して、NucB1を固定化した固相への結合量が1/5未満の値であるものをいう。
【0040】
本発明のNesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体は、特に高感度にNesfatinと抗原抗体反応をし、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない特定の抗体をいう。すなわち、本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよいが、中でも、受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマ(NAE1、NAF11)により産生されるモノクローナル抗体が特に好ましい。また、本発明は、かかるハイブリドーマにも関する。
【0041】
さらに別の態様としては、Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体が挙げられる。「Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」とは、前述の「NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」という要件に加え、NesfatinおよびNesfatin-1をほぼ同じ分子数を固相に固定して、そこに各抗体を抗原抗体反応させたときの結合量が、Nesfatinを固定化した固相への結合量に対して、Nesfatin-1を固定化した固相への結合量が1/5未満の値であるものをいう。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。
【0042】
<Nesfatinの免疫学的検出方法>
前述の「Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体」、または「Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体」を用いることによって、Nesfatinを特異的に検出しうる免疫学的検出方法を構築できる。例えば、該Nesfatinの免疫学的検出方法は、(I)検体を、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない本発明の抗体に接触させる工程、(II)検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む。なお、抗原抗体反応を利用した免疫学的検出方法は、当技術分野において周知であり、本発明において、従来のいずれの方法をも採用することができる。
【0043】
そのような免疫学的検出方法の一つの形態は、Nesfatinと抗原抗体反応する抗体の量を測定することである。またその形態の中での一つとしては、前述の抗体の内、2つの抗体を用いる方法である。この場合、望ましく用いる抗体の組合せは、2種類の抗体のうち、少なくとも1つは、Nesfatinと抗原抗体反応するがNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を用いることである。
【0044】
この2種類の抗体を用いた免疫学的測定法においては、少なくとも1種類の抗体を固相に固定する方法と、固定しない方法が挙げられる。
【0045】
少なくとも1種類の抗体を固相に固定化する測定方法としては、(I)検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、(II)一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで(III)検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含む、サンドイッチ法による測定方法が例示される。かかるサンドイッチ法による測定方法における二次抗体の標識、測定手法等は、前述の<Nesfatin-1の免疫学的検出方法>におけるサンドイッチ法による測定方法と同様にして行うことができる。また、この測定方法によって検出できるNesfatinの最低濃度はその測定系の感度を規定する。つまりNesfatinを含まない対照検体における測定値に対して、有意に弁別できる測定値を示すNesfatinの標準ペプチドを含む標準検体におけるNesafatin濃度として、感度を表すことができる。本発明においては、30pMという低い濃度のNesfatinを含む標準検体においても、Nesfatinを含まない対照検体との弁別が可能であったことから、この測定系は30pM未満まで測定可能な検出感度を有するといえる。また、本発明の好ましい態様によれば、5pM未満の濃度のNesfatinを含む標準検体においても、Nesfatin-1を含まない対照検体との弁別が可能である。
【0046】
中でも、一次抗体として、前述のNesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない本発明の抗体(抗体No.4994、NAD15)を使用し、二次抗体として、受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマ(NAE1、NAF11)により産生される、Nesfatinを高感度に検出する抗体を使用することにより、検体中のNesfatinを高感度に検出することができる。またこの際、一次抗体として、ハイブリドーマ(NAD15)により産生される、Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を使用することにより、より高感度に検出することができる。
【0047】
2種類の抗体とも固相に固定しない方法としては、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)法やBRET (Bioluminescence Resonance Energy Transfer)法が挙げられる。
【0048】
また、別の測定方法の様式としては、検体にあらかじめ濃度を調整した標識化されたNesfatinの標準ペプチドを混和し、Nesfatinと抗原抗体反応する抗体に対する結合を競争的に反応させることによって行う、競合的抗原抗体反応による測定方法も挙げられる。競合的抗原抗体反応による測定方法に関しても、前述の<Nesfatin-1の免疫学的検出方法>における競合的抗原抗体反応による測定方法と同様にして行うことができる。
【0049】
本発明の免疫学的検出方法に適用できる検体は、Nesfatinの検出が望まれるいずれのものであってもよく、例えば、患者の血液、血清、髄液、尿、腹水、胸水、唾液、涙液、喀痰、バイオプシーで取得した組織等を挙げることができる。
【0050】
<Nesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキット>
本発明は、前述のNesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキットにも関する。例えば上記のサンドイッチ法による測定方法におけるキットには、前述の一次抗体が固定された固相、および前述の二次抗体が標識されたものが含まれる。また、本発明のNesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキットは、<Nesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキット>と同様、さらに標準ペプチドや、酵素の基質等を含んでいても良く、同様にして使用することができる。
【0051】
その他のキットの様態として、前述のFRET法やBRET法などの測定方法に用いられるキットには、蛍光物質または発光タンパク質で標識化された第一の抗体と、該蛍光物質または発光物質の発する特定の波長の光エネルギーを吸収しうる蛍光物質で標識化された第二の抗体が含まれる。また、本発明のFRET法またはBRET法によるNesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキットも、<Nesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキット>と同様、さらに標準ペプチド等を含んでいても良い。
【0052】
さらに他のキットの様態としては、競合的抗原抗体反応による測定方法におけるキットが挙げられ、該キットには標識化されたNesfatin標準ペプチド、およびNesfatinと抗原抗体反応する抗体が含まれる。また、本発明の競合的抗原抗体反応法によるNesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキットには、さらに標準ペプチドや酵素の基質等を含んでいても良い。
【0053】
<食欲亢進および/または体重増加亢進のための医薬組成物>
前述の本発明の抗体は、製薬学的に許容される担体および/または希釈剤とともに、医薬組成物とすることができる。該医薬組成物は、摂食や体重増加が抑制されていることが問題となる疾患や症状に対して使用することができる。摂食や体重増加が抑制されていることが問題となる疾患や症状としては、たとえば拒食症、機能性胃腸症(Functional dyspepsia)、または癌、炎症性疾患、下垂体・甲状腺・副腎などの機能低下、手術後もしくは過度のストレスなどによる摂食抑制および/もしくは体重増加抑制状態などがあげられる。この医薬組成物は種々の剤形に成形して、経口的または非経口的に投与することができる。非経口投与としては、例えば、静脈、皮下、筋肉、経皮、または直腸内への投与が挙げられる。
【0054】
本発明の抗体を有効成分として含有する製剤は、通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。製剤用の担体や賦形剤としては、固体又は液体いずれでも良く、例えば乳糖、ステアリン酸マグネシウム、スターチ、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコール等やその他常用のものが挙げられる。投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0055】
本発明の抗体は、疾患の種類、投与経路、患者の症状、年齢、性別、体重等により異なるが、通常成人1人あたり、1回につき0.1〜500mgの範囲で、好ましくは0.5〜20mgの範囲で投与することができる。しかし、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量よりも少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を超える投与量が必要な場合もある。
【0056】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0057】
実施例1
<組換え体によるリコンビナントNESFATIN-1の製造>
NESFATIN-1をより大量に調製するため、組換え体を用いてリコンビナントNESFATIN-1を製造した。具体的には、ヒトNESFATIN-1をコードする遺伝子を取得し、そのN末端にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)とヒスチジンタグの遺伝子を結合し、翻訳後のタンパク質においてヒスチジンタグのアミノ酸配列とヒトNESFATIN-1のアミノ酸配列の間にトロンビンによる切断部位(-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-)が介在する形となるように、発現ベクターを構築した。詳細は以下のとおりである。
【0058】
ヒトNesfatin-1の遺伝子の取得は、human Hypothalamus mRNA(Clontech社)からSuper Script III (Invitrogen社)を使用して合成したcDNAを鋳型として2回のPCR(Nested PCR)を行うことで実施した。
【0059】
1回目のPCRは以下のForward(hNucB2-F0191:配列番号20)およびReverse(hNucB2-R1549:配列番号21)を各100pMの濃度で、Pyrobest DNA polymerase(タカラバイオ(株)R005A)、添付の反応バッファーおよびdNTPを使用し、添付のプロトコールに従って反応を行った。PCR反応は90℃1分の反応の後、98℃10秒・68℃1分30秒の温度サイクルを30サイクル、その後68℃で2分間反応させる温度条件で行った。
Forward Primer (hNucB2-F0191):
5’- GGAGATAAAAATTATTTACCTGCCTGAACA -3’(配列番号20)
Reverse Primer (hNucB2-R1549):
5’- AAATATTTATTGAGCAGAGAAAAGGGAAGG -3(配列番号21)
【0060】
得られたPCR産物0.5μLを鋳型として用いて、2回目のPCRを実施した。以下のForward(hNucB2-F292[Sac2-Thr])およびReverse(hNucB2-R514[NotI])プライマー100pMを用いて、1回目のPCRと同様に、Pyrobest DNA polymeraseを用いてPCR反応を行った。PCR反応は90℃1分の反応に続いて、98℃10秒・60℃30秒・68℃1分の温度サイクルを20サイクル行った後、68℃で2分間反応させる温度条件で行った。
Forward Primer (hNucB2-F292[Sac2-Thr]):
5’-GGTTCCGCGGGTCTGGTTCCGCGTGGTTCTGTGCCTATTGATATAGACAAGACAAAAGT-3’
(配列番号22)
Reverse Primer (hNucB2-R514[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCTTACAGTTCATCAAGTTTTGTCCTCAC -3’(配列番号23)
【0061】
2回目のPCRを行ったPCR反応サンプルは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製した後、制限酵素SacIIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って、約300bpの長さに相当するバンドを切り出し、QIAEX-IIキット(QIAGEN社)によって精製した。精製された約300bpのPCR産物は、制限酵素SacIIおよびNotIで切断されたpET41a(+)プラスミドベクター(Novagen社)に、Quick DNA ligase kit(New England Bio Lab社)を用いてライゲーションを行った。ライゲーションを行ったベクターを大腸菌JM109株に導入し、得られた形質転換体2個について小スケールでのプラスミド抽出を行い、得られたプラスミドを用いて組み込まれたNESFATIN-1遺伝子の配列をベックマンコールター社の自動シーケンサー装置CEQ8000を用いて、CEQ DTCS Quick Start Kitを使用し、塩基配列の確認を行った。その結果、正しいNESFATIN-1の配列を持つ遺伝子が組み込まれている発現ベクターが得られたことを確認した。これをpET41a(+)GST-His-LVPRGS- hNSF1と命名した。
【0062】
得られたpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNSF1を大腸菌BL21(DE3)Codon Plus RIPLに導入して発現させることで、GST・ヒスチジンタグ・トロンビン切断配列・NESFATIN-1の融合タンパク質(GST-His-LVPRGS- hNSF1)の発現を行った。pET41a(+)GST-His-LVPRGS- hNSF1を大腸菌BL21(DE3)Codon Plus RIPLに導入してカナマイシンを含むLB培地で選択して得たクローンを、10mLのカナマイシンを含むLB倍地で37℃において培養した。培養は、その培養液の600nmの波長による吸光度が約1.0になった時点で停止した。その培養液3mLを100mLのカナマイシンを含むLB培地に植え継ぎ、さらに37℃で培養してその培養液の600 nmの波長による吸光度が0.8になった時点で100mMのIPTGを1mL加えてタンパク質の発現を誘導した。IPTG添加後、さらに37℃で3時間振盪培養を行った。その培養液を8000rpmで20分間(4℃)で遠心分離して、大腸菌の菌体を回収した。
【0063】
得られた大腸菌の菌体を超音波破砕し遠心分離することにより、GST-His-LVPRGS-hNSF1融合タンパク質を含む細胞ライセートを抽出して、ニッケルキレートカラム(Ni-NTA agarose)を用いて精製を行った。菌体を20mlの1倍濃度のComplete−EDTA free(ロッシュ・ダイアグノスティックス社)および0.5倍濃度のBug Buster(メルク社Novagen Cat.No.70584)を含むSonication Buffer(50mM KH2PO4, 50mM NaCl, 2mM DTT, pH7.5)に懸濁し、氷水中で10分間超音波による破砕を行った。超音波処理後のサンプルは15,000rpmで20分間遠心分離して、その上清を回収した。得られた上清10mlを、Lysis Buffer(50mM NaH2PO4, 300mM NaCl, 10mM imidazole, pH8.0)で平衡化した1mlのNi-NTA agaroseカラムにアプライし、さらに10mlのWash Buffer(50mM NaH2PO4, 300mM NaCl, 20mM imidazole, pH8.0)で2回洗浄を行った。洗浄後のカラムを2.5mlのElution Buffer(50mM NaH2PO4, 300mM NaCl, 250mM imidazole, pH8.0)で2回溶出を行い、溶出されたGST-His-LVPRGS- hNSF1融合タンパク質を含む画分を回収した。残りの菌体からの抽出上清も同様に処理して、GST-His-LVPRGS- hNSF1融合タンパク質を含む画分を回収した。
【0064】
GST-His-LVPRGS- hNSF1融合タンパク質からGSTおよびヒスチジンタグの部分を除去してさらに精製すると共に、炎症性物質として作用する大腸菌由来のリポポリサッカライド(LPS)を除去するため、GST-His-LVPRGS-hNSF1融合タンパク質がGSTレジンに結合した状態でのトロンビン処理および逆相クロマトグラフィーによる精製を行った。なお、これ以降の処理におけるBufferは、LPSを含まないことを確認したものを使用した。Ni-NTA agaroseカラムでの精製で得られたGST-His-LVPRGS-hNSF1融合タンパク質を含む画分7.2mlを1倍濃度のGST Bind/Wash Buffer(メルク社Novagen Cat.No.70571)で洗浄して、最終的に3mlGST Bind/Wash Bufferで懸濁したGSTレジン(メルク社Novagen Cat.No.70541)(7.2ml相当)に添加して、20℃で1時間弱く攪拌した。遠心分離によってレジンを回収した後、該レジンを36mlのGST Bind/Wash Bufferで2回洗浄した。洗浄後のレジンに20units/mlのトロンビンをPBSに溶解したもの3.6mlを加えて懸濁し、20℃で弱い攪拌状態において20時間反応を行った。反応後のレジンはポアサイズ0.22μmのフィルター付カップ(Millipore)に1.8mlずつ分注して、3,000rpmで2分間遠心して、ろ過されたトロンビン処理後サンプルを回収した。得られたトロンビン処理後サンプル450μlに対して50μlの酢酸を加え、C18逆相クロマトグラフィーのサンプルとした。逆相クロマトグラフィーは0.1%トリフルオロ酢酸存在下でアセトニトリルのグラジエントによる溶出法を用い、そのグラジエントは10%アセトニトリル:10分、10〜20%アセトニトリル勾配:60分、30〜50%アセトニトリル勾配:80分、50〜60%アセトニトリル勾配:5分に設定して行った。カラムから溶出されたタンパク質は、波長230nm、280nmの吸光度を測定することでモニタリングした。アセトニトリルのグラジエントで溶出を行った画分についてSDS-PAGE法およびウエスタンブロッティング法で調べたところ、NESFATIN-1はアセトニトリル濃度約40%の所で溶出されることが判明した。そのため、この画分を回収し、凍結乾燥を行った後、注射用蒸留水に再度溶解したものを用いて、吸光度によるタンパク質濃度およびエンドスペーシー(生化学工業)によるLPSの含有量の測定を行った。
【0065】
なお、マウスおよびラットのリコンビナントNESFATIN-1も同様にして調製した。使用した鋳型およびプライマーは以下の通りである。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例2
<組換え体によるリコンビナントNESFATIN関連タンパクの製造>
NESFATINおよびNESFATIN関連タンパク質(NESFATIN-N27K、NESFATIN-C21K)を大量に調製するため、組換え体を用いてリコンビナントNESFATIN、NESFATIN関連タンパク質を製造した。具体的には、ヒトNESFATINをコードする遺伝子を取得し、そのN末端にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)とヒスチジンタグの遺伝子を結合し、翻訳後のタンパク質においてヒスチジンタグのアミノ酸配列とヒトNESFATINのアミノ酸配列の間にトロンビンによる切断部位(-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-)が介在する形となるように、発現ベクターを構築した。詳細は以下のとおりである。
【0068】
実施例1の1回目のPCRにより得られたPCR産物0.5μlを鋳型として用い、以下のForward(hNucB2-F292[Sac2-Thr])およびReverse(hNucB2-R1461[NotI])プライマーを用いる以外は、実施例1の2回目のPCRと同一の条件で、同一の試薬を用いることによって行った。
Forward Primer (hNucB2-F292[Sac2-Thr]):
5’-GGTTCCGCGGGTCTGGTTCCGCGTGGTTCTGTGCCTATTGATATAGACAAGACAAAAGT-3’(配列番号22)
Reverse Primer (hNucB2-R1461[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCGACTTTAAATGTGTGGCTCAAACTTC -3’(配列番号24)
【0069】
2回目のPCRを行ったPCR反応サンプルは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製した後、制限酵素SacIIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って、約1.2Kbpの長さに相当するバンドを切り出し、QIAEX-IIキット(QIAGEN社)によって精製した。精製された約1.2KbpのPCR産物は、制限酵素SacIIおよびNotIで切断されたpET41a(+)プラスミドベクター(Novagen社)に、Quick DNA ligase kit(New England Bio Lab社)を用いてライゲーションを行った。ライゲーションを行ったベクターを大腸菌JM109株に導入し、得られた形質転換体2個について小スケールでのプラスミド抽出を行った。得られたプラスミドを用いて、組み込まれたヒトNESFATIN遺伝子の配列を、実施例1と同様にして塩基配列の確認を行い、正しいヒトNESFATINの配列を持つ遺伝子が組み込まれている発現ベクターが得られたことを確認した。これをpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNSF fullと命名した。
【0070】
得られたpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNSF fullを用いて、実施例1と同様にして、GST・ヒスチジンタグ・トロンビン切断配列・NESFATINの融合タンパク質(GST-His-LVPRGS-hNSF full)の発現、回収を行った。さらに実施例1と同様にして、GST-His-LVPRGS-hNSF full融合タンパク質から、GSTおよびヒスチジンタグの部分の除去、トロンビン処理ならびに逆相クロマトグラフィーによる精製により、NESFATINを得た。アセトニトリルのグラジエントは、実施例1と同じ設定とした。なお、NESFATIN中にも1箇所トロンビン切断配列が存在するため、トロンビン処理によりNESFATINは分断され得る。そこで、トロンビン処理により生じ得る、NESFATINのN末端側をNESFATIN-N27K、C末端側をNESFATIN-C21Kとした。また、アセトニトリルのグラジエントで溶出を行った画分についてSDS-PAGE法およびウエスタンブロッティング法で調べたところ、NESFATINは、アセトニトリル濃度約40%の所で溶出されることが判明した。さらにNESFATIN-N27K、NESFATIN-C21KはそれぞれNESFATINの後と前にピークが現れることが判明した。そのため、これらの画分を回収し、NESFATIN、NESFATIN-N27K、NESFATIN-C21Kを得た。
【0071】
なお、マウスおよびラットの、リコンビナントNESFATIN、およびNESFATIN関連タンパク質も同様にして調製した。ただし、マウスおよびラットにおいては、PCRは3回行った。3回目のPCRの条件は、2回目のPCRの条件と同じである。また、使用した鋳型およびプライマーは以下の通りである。
【0072】
【表2】
【0073】
実施例3
<組換え体によるリコンビナントNucB1-N77の製造>
NucB2と高いホモロジーを有するNucB1のNesfatin-1に相当する部分(NucB1-N77)を大量に調製するため、組換え体を用いてリコンビナントヒトNucB1-N77を製造した。マウスおよびラットのリコンビナントNucB1-N77も同様にして調製した。具体的には、ヒトNucB1-N77をコードする遺伝子を取得し、そのN末端にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)とヒスチジンタグの遺伝子を結合し、翻訳後のタンパク質においてヒスチジンタグのアミノ酸配列とヒトNucB1-N77のアミノ酸配列の間にトロンビンによる切断部位(-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-)が介在する形となるように、発現ベクターを構築した。詳細は以下のとおりである。
【0074】
ヒトNucB1-N77の遺伝子の取得は、human Hypothalamus mRNA(Clontech社)からSuper Script III (Invitrogen社)を使用して合成したcDNAを鋳型として2回のPCR(Nested PCR)を行うことで実施した。
【0075】
1回目のPCRは、以下のForward(hNucB1-F061:配列番号25)およびReverse(hNucB1-R1376[NotI]:配列番号26)を用いる以外は、実施例1と同一の条件で、同一の試薬を用いることによって行った。
Forward Primer (hNucB1-F061):
5’- TGCTGCTGCTGCTCCTGCTT-3’(配列番号25)
Reverse Primer (hNucB1-R1376[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCTCACAGATGCTGGGGCACCTCAACCTCA-3’(配列番号26)
【0076】
得られたPCR産物0.5μLを鋳型として用いて、以下のForward(hNucB1-F096[Sac2Thr])およびReverse(hNucB1-R303[NotI])プライマーを用いる以外は、実施例1の2回目のPCRと同一の条件で、同一の試薬を用いることによって、2回目のPCRを行った。
Forward Primer (hNucB1-F096[Sac2Thr]):
5’- GGTTCCGCGGGTCTGGTTCCGCGTGGTTCTGTCCCCCTGGAGCGAGGGGCGCCCAAC -3’
(配列番号27)
Reverse Primer (hNucB1-R303[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCTCAGAGCTCATCCAGCTTGGTGCGGAC-3’(配列番号28)
【0077】
2回目のPCRを行ったPCR反応サンプルは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製した後、制限酵素SacIIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って、約300bpの長さに相当するバンドを切り出し、QIAEX-IIキット(QIAGEN社)によって精製した。精製された約300bpのPCR産物は、制限酵素SacIIおよびNotIで切断されたpET41a(+)プラスミドベクター(Novagen社)に、Quick DNA ligase kit(New England Bio Lab社)を用いてライゲーションを行った。ライゲーションを行ったベクターを大腸菌JM109株に導入し、得られた形質転換体2個について小スケールでのプラスミド抽出を行った。得られたプラスミドを用いて、組み込まれたヒトNucB1-N77遺伝子の配列を、実施例1と同様にして塩基配列の確認を行い、正しいヒトNucB1-N77の配列を持つ遺伝子が組み込まれている発現ベクターが得られたことを確認した。これをpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNucB1-N77と命名した。
【0078】
得られたpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNucB1-N77を用いて、実施例1と同様にして、GST・ヒスチジンタグ・トロンビン切断配列・ヒトNucB1-N77の融合タンパク質(GST-His-LVPRGS-hNucB1-N77)の発現、回収を行った。さらに実施例1と同様にして、GST-His-LVPRGS-hNucB1-N77融合タンパク質からGSTおよびヒスチジンタグの部分の除去、トロンビン処理、ならびに逆相クロマトグラフィーによる精製を行った。なお、逆相クロマトグラフィーは、実施例1と同様0.1%トリフルオロ酢酸存在下でアセトニトリルのグラジエントによる溶出法を用いた。なお、アセトニトリルのグラジエントを、10%アセトニトリル:10分/10〜20%アセトニトリル勾配:60分/30〜40%アセトニトリル勾配:40分/40〜60%アセトニトリル勾配:5分に設定して行い、カラムからの溶出タンパク質は、波長280nmの吸光度を測定することでモニタリングした。アセトニトリルのグラジエントで溶出を行った画分についてSDS-PAGE法およびウエスタンブロッティング法で調べたところ、NucB1-N77はアセトニトリル濃度37%の所で溶出されることが判明した。そのため、この画分を回収し、NucB1-N77を得た。
【0079】
ヒト・マウス・ラット由来のNucB1-N77を、配列番号17〜19に示す。なお、リコンビナントNucB1-N77は、それぞれ、N末端にGly-Serが残存する構造となる。
【0080】
なお、マウスおよびラットのリコンビナントNucB1-N77も同様にして調製した。使用した鋳型およびプライマーは以下の通りである。
【0081】
【表3】
【0082】
実施例4
<組換え体によるリコンビナントNucB1の製造>
NucB2と高いホモロジーを有するNucB1を大量に調製するため、組換え体を用いてリコンビナントヒトNucB1を製造した。ラットおよびマウスのリコンビナントNucB1も同様にして調製した。具体的には、ヒトNucB1をコードする遺伝子を取得し、そのN末端にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)とヒスチジンタグの遺伝子を結合し、翻訳後のタンパク質においてヒスチジンタグのアミノ酸配列とヒトNucB1のアミノ酸配列の間にトロンビンによる切断部位(-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-)が介在する形となるように、発現ベクターを構築した。詳細は以下のとおりである。
【0083】
ヒトNucB1の遺伝子の取得は、human Hypothalamus mRNA(Clontech社)からSuper Script III (Invitrogen社)を使用して合成したcDNAを鋳型として2回のPCR(Nested PCR)を行うことで実施した。
【0084】
実施例3の1回目のPCRにより得られたPCR産物0.5μLを鋳型として用い、以下のForward(hNucB1-F096[Sac2Thr])およびReverse(hNucB1-R1376[NotI])プライマーを用いる以外は、実施例1の2回目のPCRと同一の条件で、同一の試薬を用いることによって行った。
Forward Primer (hNucB1-F096[Sac2Thr]):
5’-GGTTCCGCGGGTCTGGTTCCGCGTGGTTCTGTCCCCCTGGAGCGAGGGGCGCCCAAC -3’
(配列番号27)
Reverse Primer (hNucB1-R1376[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCTCACAGATGCTGGGGCACCTCAACCTCA-3’(配列番号26)
【0085】
2回目のPCRを行ったPCR反応サンプルは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製した後、制限酵素SacIIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って、約1.2Kbpの長さに相当するバンドを切り出し、QIAEX-IIキット(QIAGEN社)によって精製した。精製された約1.2KbpのPCR産物は、制限酵素SacIIおよびNotIで切断されたpET41a(+)プラスミドベクター(Novagen社)に、Quick DNA ligase kit(New England Bio Lab社)を用いてライゲーションを行った。ライゲーションを行ったベクターを大腸菌JM109株に導入し、得られた形質転換体2個について小スケールでのプラスミド抽出を行った。得られたプラスミドを用いて、組み込まれたヒトNucB1遺伝子の配列を、実施例1と同様にして塩基配列の確認を行い、正しいヒトNucB1の配列を持つ遺伝子が組み込まれている発現ベクターが得られたことを確認した。これをpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNucB1 fullと命名した。
【0086】
得られたpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNucB1 fullを用いて、実施例1と同様にして、GST・ヒスチジンタグ・トロンビン切断配列・ヒトNucB1の融合タンパク質(GST-His-LVPRGS-hNucB1 full)の発現、回収を行った。さらに実施例1と同様にして、GST-His-LVPRGS-hNucB1 full融合タンパク質からGSTおよびヒスチジンタグの部分の除去、トロンビン処理、ならびに逆相クロマトグラフィーによる精製により、hNucB1 fullを得た。アセトニトリルのグラジエントは、実施例1と同じ設定とした。なお、アセトニトリルのグラジエントで溶出を行った画分についてSDS-PAGE法およびウエスタンブロッティング法で調べたところ、hNucB1 fullはアセトニトリル濃度約45%の所で溶出されることが判明した。そのため、この画分を回収し、hNucB1 fullを得た。
【0087】
なお、マウスおよびラットのリコンビナントNucB1も同様にして調製した。使用した鋳型およびプライマーは以下の通りである。
【0088】
【表4】
【0089】
実施例5
<NESFATIN部分ペプチドに対するウサギポリクローナル抗体の作製>
(1)抗体の作製
NESFATINに対する抗体の作製のために、抗原として、ヒトNESFATINポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号9)のN末端およびC末端、ならびにヒトNESFATIN-1のC末端および内部アミノ酸配列部分の4種の合成ペプチド(配列番号1〜4:株式会社SIGMA genosysで合成)を用いた(以下、該ペプチドを総称してNAPペプチドとする)。
Nesfatin-1 C末端ペプチド(NSF1-C18):N末-GCSKELDLVSHHVRTKLDEL-C末(配列番号1)
Nesfatin-1 Middleペプチド(NSF1-M15):N末-PDTGLYYDEYLKQVIC-C末(配列番号2)
Nesfatin C末端ペプチド(NSF-C18):N末-GCQGIPPSGPAGELKFEPHI-C末(配列番号3)
Nesfatin N末端ペプチド(NSF-N19):N末-VPIDIDKTKVQNIHPVESAC-C末(配列番号4)
【0090】
図1に抗原ペプチド部分を図示する。
【0091】
該合成NAPペプチドはPIERCE社Imject(登録商標) Maleimide Activated Mariculture Keyhole Limpet Hemocyaninを用いて添付のプロトコールに従って、ペプチドをKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)にコンジュゲートした。得られたコンジュゲートはウサギ1羽に対して0.2mgを1回分の免疫に用いた。免疫はコンジュゲート溶液0.25ml(コンジュゲート濃度1mg/ml)と等量のフロイントのコンプリートアジュバント H-37 Ra (和光純薬−Difco社 Cat. No.528-00031)を混合し、毛剃りしたニュージーランドホワイト系のウサギ(今井実験動物試験場より購入)の背部に、50μlづつ8箇所に皮内注射することで行った。同様の免疫を2週間おきにさらに4回行った後、最後の免疫から1週間後に血液を一部採取して、その血清中の抗体価を免疫したペプチドコンジュゲートを用いたELISA法で確認し、その翌日に動物を屠殺して全血を採取した。得られた血液から血清を作製し、その血清からDEAESepharoseFF(Amersham Bioscience社 Cat. No.17-0709-10)を用いて定法によってウサギIgGを精製した。精製されたウサギIgGは、1mgのNAPペプチドを用いてSulfoLink kit(PIERCE社 Cat. No.44895)により作製したペプチド固定化カラムを用いて、該キット添付のプロトコールに従ってアフィニティー精製した。免疫原としてhNSF−C18、hNSF−N19、hNSF1−C18、hNSF1−M15を使用することによって、それぞれ、抗体No.4993および4994、抗体No.4995および4996、抗体No.4997および4998、抗体No.5036および5037が作製された。
【0092】
(2)抗原ELISAによる抗体の反応性評価
取得した抗血清あるいは抗原アフィニティー精製抗体を用いて、抗原ELISAにより、各抗体の、ヒトNesfatin-1 (human NSF1)、ヒトNesfatin (human NSF full)、ヒトNucB1-N77、ヒトNucB1、ラットNesfatin-1(rat NSF1)、ラットNesfatin (rat NSF full)、ラットNucB1-N77、ラットNucB1 (rat NucB1 full)に対する反応性評価を行った。
【0093】
96ウェルELISAプレート(MaxiSorp:Nunc社)に、PBS(pH7)で1μg/mlに希釈したGST融合組換えヒトNesfatin-1、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77、ヒトNucB1、ラットNesfatin-1、ラットNesfatin、ラットNucB1-N77、ラットNucB1を、それぞれ50μl加え、4℃で一晩反応させた。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで37℃で1時間ブロッキングを行った。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、抗血清希釈液(抗血清濃度を400倍希釈から2倍ずつ段階希釈して作製した希釈系列)、または抗原アフィニティー精製抗体の希釈液(3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで、抗体濃度を1μg/mLから2倍ずつ段階希釈して作製した希釈系列)を50μl加え、室温で1時間反応させた。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、3%BSAを含むPBSで2000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(BioSource社)を50μl加え、室温で1時間反応させた。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、0.1Mのジエタノールアミン(pH10.0)に溶かした1mg/mlPNPP(p−Nitrophenylphosphate、和光純薬 Cat.No.149−02342)溶液を100μL加え、室温で1時間反応させ、405nmにおける吸光度を測定した。
【0094】
各抗体の各ヒト組換えタンパク質に対する反応性評価結果を表5に示す。反応性は、4段階に分けて評価した。
◎(Excellent):OD405nmが2.4以上
○(Good) :OD405nmが1.0以上2.4未満
△(Fair) :OD405nmが0.4以上1.0未満
×(Poor) :OD405nmが0.4未満
【0095】
【表5】
【0096】
各抗体の各ラット組換えタンパク質に対する反応性評価結果を表6に示す。反応性は、4段階に分けて評価した。
◎(Excellent):OD405nmが1.5以上
○(Good) :OD405nmが1.0以上1.5未満
△(Fair) :OD405nmが0.2以上1.0未満
×(Poor) :OD405nmが0.2未満
【0097】
【表6】
【0098】
(3)ウエスタンブロティングによる抗体の反応性の確認
組換えNesfatin-1またはNesfatinを使用して取得した抗Nesfatinポリクローナル抗体の、ヒトおよびラットの組換えNesfatin-1またはNesfatinに対する反応性を確認した。各組換えタンパク質水溶液をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)用の5%のβ-mercaptoethanolを含むLaemmliサンプルバッファー(BIO-RAD社 Cat. No.161-0737)と等量混合してサンプル調製し、5pmole/laneでポリアクリルアミドゲル(BIO-RAD社 レディーゲル10〜20% Cat. No.161-J390V)でTris-glycine/SDSバッファー(25mM Tris、192mM glycine、0.1% SDS、pH8.3)を用いて100Vで1時間電気泳動し、ニトロセルロース膜に転写した。この膜を3%ゼラチン/TBSで室温で1時間ブロッキングし、TBS−0.05%Tweenで3回、TBSで1回洗浄した。その後、抗Nesfatinポリクローナル抗体1μg/mlを含む1%ゼラチン/TBS溶液中、室温で終夜反応させた。翌日、TBS−0.05%Tweenで3回、TBSで1回洗浄し、約1μg/mlの濃度で1%ゼラチン/TBS溶液に希釈した抗ウサギIgGヤギポリクローナル抗体パーオキシダーゼコンジュゲート(Cappel社 Cat. No.674371)を室温1時間反応させた。次にTBS−0.05%Tweenで3回、TBSで2回洗浄し、HRP発色キット(BIO-RAD社 Cat. No.170-64631)で5分間、室温にて発色させてバンドを検出した。その結果、組換えNesfatinまたはNesfatin-1に対する反応性を確認した。
【0099】
実施例6
<組換えNESFATIN、またはNesfatin-1に対するウサギポリクローナル抗体の作製>
(1)抗組換えNESFATIN抗体の取得
実施例1、2で調製した組換えNesfatin、Nesfatin-1、およびNesfatin-C21K(各40μg/1回)をフロインドのコンプリートアジュバント(BACTO社製、1:1)とともに、2週間毎にそれぞれ2羽の家兎に皮内投与した(抗原組換えタンパク質領域を図1に図示する)。皮内投与を4回行った後、全採血をして抗血清を得た。この血清から常法に従い、プロテインAセファロース4Bカラム(Pharmacia社製)にてIgGを精製し、精製されたウサギIgGは、1mgの組換えNesfatinまたはNesfatin-1を用いてSulfoLink kit(PIERCE社 Cat. No.44895)により作製した組換えNesfatinあるいはNesfatin-1固定化カラムを用いて、該キット添付のプロトコールに従ってアフィニティー精製した。このようにして抗Nesfatinポリクローナル抗体(anti-Nesfatin PAb)、抗Nesfatin-1ポリクローナル抗体(anti-Nesfatin-1 PAb)を得た。具体的には免疫原としてrNSF1、rNSF full、rNSF C21Kを使用することによって、それぞれ、抗体No.6151および6152、抗体No.6153および6154、抗体No.6155および6156が作製された。
【0100】
(2)抗原ELISAによる抗体の反応性評価
取得した抗原アフィニティー精製抗体を用いて、抗原ELISAにより、各抗体の、ヒトNesfatin-1 (human NSF1)、ヒトNesfatin (human NSF full)、ヒトNucB1-N77、ヒトNucB1 (human NucB1-full)、ラットNesfatin-1(rat NSF1)、ラットNesfatin (rat NSF full)、ラットNucB1-N77、ラットNucB1 (rat NucB1-full)に対する反応性評価を、実施例5(2)と同様にして行った。抗原アフィニティー精製抗体は、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで、抗体濃度を1μg/mLから2倍ずつ段階希釈して希釈系列を作製して、反応性を評価した。
【0101】
各抗体の各組換えタンパク質に対する反応性評価結果を表7に示す。反応性は、4段階に分けて評価した。
◎(Excellent):OD405nmが2.0以上
○(Good) :OD405nmが1.0以上2.0未満
△(Fair) :OD405nmが0.15以上1.0未満
×(Poor) :OD405nmが0.15未満
【0102】
【表7】
【0103】
(3)ウエスタンブロティングによる反応性の確認
組換えNesfatin-1またはNesfatinを使用して取得した抗Nesfatinポリクローナル抗体の反応性を、実施例5(3)と同様にして確認した。使用する抗体を実施例6(1)で取得した抗体を使用する以外は、実施例5(3)と同様にして行った。その結果、組換えNesfatinまたはNesfatin-1に対する反応性を確認した。
【0104】
実施例7
<Nesfatinに対するウサギポリクローナル抗体を使用したNesfatin測定系の作製>
(1)Nesfatin測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例6で得られた抗原アフィニティー精製抗組換えヒトNesfatin-1ウサギポリクローナル抗体(抗体No.4994、6151、6152、6153)(IgG)のビオチン化を、以下のように行った。1〜3mg/mlのIgG溶液(PBS溶液)に対し200倍のモル当量のビオチン化試薬を加え、室温で1時間反応した。ビオチン化試薬はSulfo−NHS−LC−Biotin(PIERCE社製#21335:分子量556)をジメチルホルムアミドで50mMに溶解して使用した。その後、終濃度10mMになるようにモノエタノールアミン、(pH8.0)を加え、さらに室温で1時間反応した。この反応液を、SephadxG−25ゲル濾過カラムにアプライし、PBS(−)で流出させてビオチン化IgGを回収した。さらに、終濃度1%のBSAと終濃度0.1%のNaN3を加えて保存した。
【0105】
(B)抗体固定化プレートの調製
96ウェルプレート(MaxiSorp:Nunc社)に、実施例5で作製した抗体(抗原アフィニティー精製抗Nesfatin C末端ペプチドウサギポリクローナル抗体(抗体No.4994))を2μg/ml含有するPBS溶液を50μlずつ各ウェルに加え、4℃の温度で一晩インキュベートした。これをTBS−0.05%Tween20で洗浄し、3%牛血清アルブミン(BSA)のPBS溶液を250μl各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートして抗体No.4994が固定化された抗体固定化プレートを得た。
【0106】
(C)測定系の構築
実施例7(1)(B)で調製した抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、実施例7(1)(A)で作製したビオチン化抗体を使用する測定系を検討した。
上記実施例7(1)(B)で調製した抗NESFATINIgG固定化プレートに、精製した組換えヒトNesfatin(F−NAP)(標準物質)を0〜2nM(=0〜100pg/mL)の範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液(検体希釈液)50μLを加え室温で1時間インキュベートし、TBS−0.05%Tween20で3回洗浄後、上記実施例7(1)(A)で作製したビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液を50μl添加し、室温で1時間インキュベートした。次にTBS−0.05%Tween20で洗浄した後、50μl/ウェルでストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼ(BioSource社製、#SNN1004)を1万倍希釈した3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液を加え、室温で1時間インキュベートした。その後TBS−0.05%Tween20で洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩、0.02%H2O2 2.5mMを含有する0.1M リン酸/クエン酸緩衝液(pH4.3)(Bio-Rad 社、TMB Peroxidase EIA Substrate Kit)50μlずつ各ウェルに加え、室温で5分間反応させた後、反応停止剤として1M 硫酸水溶液を50μlずつ加えて酵素反応を停止させた。次いで、分光光度計を用いて450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、これを標準物質濃度0〜2nM(=0〜100pg/mL)に対応してブロットした。結果を図2に示す。
【0107】
(2)Nesfatin測定系の種差に対する測定感度評価
実施例7(1)(B)で調製した抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、実施例7(1)(A)で作製したビオチン化抗体(抗体No.6151、6152)を使用して、ラットまたはマウスNesfatinとの交差反応性を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin(F−NAP)(標準物質)、組換えラットNesfatin、またはマウスNesfatinは、0〜2nM(=0〜100pg/mL)の範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化抗体は、ビオチン化抗体を2μg/ml含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各種Nesfatin濃度0〜2nM(=0〜100pg/mL)の検体について、分光光度計を用いて450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、これをブロットした。結果を図3および図4に示す。
その結果、固定化に使用する抗体:抗体NO.4994;検出に使用するビオチン化抗体:抗体No.6152の組合せにおいて種差が少なく、感度良く各種Nesfatinを測定できることがわかった。一方、固定化に使用する抗体:抗体No.4994、検出に使用するビオチン化抗体:抗体No.6151の組合せはヒトに対する反応性が高く、ヒトNesfatin測定に適していることがわかった。
【0108】
実施例8
<Nesfatin-1に対するウサギポリクローナル抗体を使用したNesfatin-1測定系の作製>
(1)Nesfatin-1測定系の構築−1
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例5または6で得られた抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1ポリクローナル抗体(抗体No.4998、抗体No.6151、または抗体No.6152)(IgG)ののビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0109】
(B)抗体固定化プレートの調製
実施例6で作製した抗体(抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1 C末端ペプチドウサギポリクローナル抗体(抗体No.6151または抗体No.6152))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.6151または抗体No.6152が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0110】
(C)測定系の構築検討―1
上記実施例8(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)固定化プレートと、上記実施例8(1)(A)で作製したビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系を検討した。
【0111】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または組換えラットNesfatin-1を0〜10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜10nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、これをブロットした。結果を図5および6に示す。
この結果から、抗体No.6151はラットNesfatin-1に対する交差反応性が低く、抗体No.6152はラットNesfatin-1に対する交差反応性が高いことがわかった。また、これにより固相抗体としては抗体No.6152が適していることがわかった。
【0112】
(D)測定系構築検討―2
実施例8(1)(C)の結果から、上記実施例8(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6152)固定化プレートと、上記実施例8(1)(A)で作製したビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用して、ヒトNucB1-N77との交差反応性を検討した。
【0113】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(HuNAP1)(標準物質)、組換えヒトNesfatin(HuF-NAP)、または組換えヒトNucB1-N77(GST融合タンパク)を0−20nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜20nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図7に示す。
この結果から、固相抗体No.6152、検出抗体ビオチン化抗体No.6152または抗体No.6151を使用した系は、いずれもNucB1-N77に対しての交差反応性は観察されなかったが、Nesfatinに若干交差反応性を示し、Nesfatin-1特異的測定系としては使用できないことが判明した。
【0114】
(2)Nesfatin-1測定系の構築−2
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例7(1)(A)と同様にして、抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1ポリクローナル抗体(抗体No.6151、または抗体No.6152)(IgG)のビオチン化を行った。
【0115】
(B)抗体固定化プレートの調製
実施例5で作製した抗体(抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1 C末端ペプチドウサギポリクローナル抗体(抗体No.4998))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4998が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0116】
(C)測定系の構築
上記実施例8(2)(B)で調製した抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例8(2)(A)で作製したビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または組換えヒトNucB1-N77を0〜10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列、あるいは組換えヒトNesfatinを0〜100nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化抗体は、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液賭して使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜100nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図8に示す。
この結果から、固相抗体No.4998、検出抗体ビオチン化抗体No.6151または抗体No.6152を使用した系は、NucB1-N77やNesfatinに対する交差反応性はほとんど無く、Nesfatin-1特異的測定系となりうることが示された。
【0117】
(3)Nesfatin-1測定系(4998 &B-6152系)の種差に対する測定感度評価およびNesfatinに対する交差反応性評価
これまでの検討で、抗体No.6152はラットに対する交差反応性が高かったため、抗Nesfatin-1IgG(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.6152)を使用して、ラットNesfatin-1、およびマウスNesfatin-1に対する交差反応性を検討した。
【0118】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、組換えラットNesfatin-1、マウスNesfatin-1、組換えヒトNesfatin、組換えラットNesfatin、またはマウスNesfatinを0−2nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgG(B−6152)は、ビオチン化抗体を2μg/ml含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各種Nesfatin濃度0〜2nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図9に示す。
【0119】
その結果、固定化に使用する抗体:抗体No.4998;検出に使用するビオチン化抗体:抗体No.6152の組合せを使用することで、ヒトNesfatin-1だけでなくマウス、ラットNesfatin-1に関しても感度良く測定できることがわかった。またヒト、マウス、ラットNesfatinに対する交差反応性もほとんど無いことがわかった。これらのことから、固定化抗体:抗体No.4998;検出用ビオチン化抗体:抗体No.6152の組合せの測定系がマウス、ラットNesfatin-1特異的測定系として使用できる可能性が示された。
【0120】
一方、固定化抗体:抗体No.4998;検出用ビオチン化抗体:抗体No.6151の組合せの測定系に関しては、実施例8(2)(C)の結果から、ヒトNesfatin-1特異的測定系として使用できると判断された。
【0121】
実施例9
<NESFATIN-1に対するマウスモノクローナル抗体作製>
(1)組換えNesfatinによるマウスの免疫
実施例1、2で調製した組換えhuman Nesfatin-1、組換えhuman Nesfatin、Nesfatin−N27K、またはNesfatin−C21Kを10〜20μg/回/headでフロインドのコンプリートアジュバント(BACTO社製、1:1)とともに、2週間毎にBalb/cマウス(7週齢、オス)に腹腔内投与した。これを4回行った後、5回目は細胞融合の3日前に組換えhuman Nesfatin-1、組換えhuman Nesfatin、Nesfatin−N27K、またはNesfatin−C21KのPBS溶液を50μg/headで静脈内投与した。
【0122】
マウス血清中の抗Nesfatin-1抗体価測定に関しては、マウスの尾静脈より採血し、37℃で30分間インキュベートした後、3000rpmで10分間遠心して血清を回収し、マウス血清中の抗Nesfatin-1抗体価を抗原ELISAにより測定した。以下にその方法を述べる。
【0123】
96ウェルELISAプレート(Falcon3912、Becton Dickinson社)にPBSで1μg/mlに希釈した組換えhuman Nesfatin-1を50μl加え、4℃で一晩反応させた。0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄後、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで室温で1時間処理した。0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄後、検体を50μl加え、室温で1時間反応させた。0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄後、3%BSAを含むPBSで2000倍に希釈したアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG抗体(BIOSOURCE社、AMI3705)を50μL加え、室温で1時間反応させた。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、PNPP(p−Nitrophenylphosphate、和光純薬)の0.1M Diethanolamine Buffer,pH10.0溶液を室温で1時間反応させ、405nmにおける吸光度を測定した。
【0124】
(2)細胞融合によるハイブリドーマの作製
細胞融合の直前にマウスを殺し、脾細胞をPBS中でホモジナイズし、残渣をナイロンメッシュで濾過後、PBSで遠心洗浄を1回行った。この脾細胞とマウスミエローマ(P3X63Ag8U.1)とを常法(Kohler, Milstein; Nature, 256, 495−497 (1975))に従って細胞融合した。
【0125】
すなわち、脾細胞5×107個とマウスミエローマ細胞P3×63Ag8U.1(P3U1)5×106個をRPMI 1640培地で洗浄後、1500rpmで5分間遠心し、細胞ペレットにした。35%ポリエチレングリコール液(RPMI 1640培地5.75ml+ポリエチレングリコール3.5ml+ジメチルスルホキシド0.75ml)を2分間で1ml加え、細胞をゆるやかに浮遊させた。RPMI 1640培地を2分間で1ml加えた後、さらに2分間で2ml加えた。次にGIT−HAT培地(95μM ヒポキサンチン、0.4μM アミノプテリン、1.6μM チミジン、および5%FCSを含むGIT培地)を2分間で4ml加えた後、さらに2分間で8ml加えた。37℃で30分間インキュベート後、各ウェルあたり約104 個のマウス腹腔浸出細胞を播きこんだ96ウェル平底プレート1枚に分注し、5%CO2存在下で37℃で培養した。
【0126】
1週間後にGIT−HT培地(GIT−HAT培地よりアミノプテリンを除いた培地)で培地を半量交換し、さらに5%CO2存在下、37℃で約1週間培養することにより、各ウェルあたり数個のハイブリドーマのコロニーが得られた。
【0127】
(3)ハイブリドーマのスクリーニング
2週間後に組換えhuman Nesfatin-1または組換えhuman Nesfatinをコートしたプレートによるスクリーニングを行った。組換えhuman Nesfatin-1または組換えhuman NesfatinのPBS溶液(1μg/ml)を、96ウェルプレート(Falcon社、PVC製)に各ウェル当り50μlづつ分注し、4℃で一晩放置した。洗浄後、3%BSA/PBSを各ウェル当り200μl加えて37℃で1時間ブロッキングした。再度洗浄後、各ウェル当り50μlの培養上清を加え、室温で1時間放置し、0.05%Tween/PBSで3回洗浄した。
【0128】
次に、3%BSA/PBSで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG−アルカリホスファターゼコンジュゲートをウェル当り50μl加え、室温で1時間放置した。再度洗浄し、0.25mMの塩化マグネシウムを含む1M ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)に溶解したp−ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム塩(和光純薬)の1mg/ml溶液をウェル当り100μl加え、室温で30分間反応させた。この405nmにおける吸光度を、96ウェルプレート用のELISAリーダー測定器(Molecular Davice社 Vmax)を用いて調べ、組換えhuman Nesfatin-1あるいは組換えhuman Nesfatinと結合するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを選択した。
【0129】
(4)ハイブリドーマのクローニング
このように選択したハイブリドーマについて、限界希釈法によるクローニングを2回行い、株化した。具体的にはマウス腹腔浸出細胞をHT培地中106個/mlの割合に調製したものを各ウェルに分注し、これにウェル当り0.5個の割合でHT培地に懸濁したハイブリドーマ細胞を播き込んだ。5%CO2インキュベーター内で、37℃で2週間培養し、その培養上清について上記ELISA法でスクリーニングし、単一コロニーをピックアップすることで株化を行った。
【0130】
最終的に、human Nesfatin-1を免疫して得られたハイブリドーマからのみ、組換えhuman Nesfatin-1または組換えhuman Nesfatinに反応性を有するIgGを産生するハイブリドーマをクローニングすることができた。
【0131】
実施例10
<NESFATIN-1に対するマウスモノクローナル抗体の反応性評価>
ハイブリドーマ産生抗体の各種抗原(ヒトNesfatin-1、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77、ラットNesfatin-1、またはラットNesfatin)に対する反応性を評価するため、実施例1、2、3または4で作製された組換えGST融合タンパク質をプレートに固定して反応性を抗原ELISA法にて評価した。
【0132】
ヒトNesfatin-1、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77、ラットNesfatin-1、またはラットNesfatinのGST融合タンパクのPBS溶液(1μg/mL)を96ウェルプレート(Falcon社、PVC製)に各ウェル当り50μLづつ分注し、4℃で一晩放置した。洗浄後、3%BSA/PBSを各ウェル当り200μL加えて37℃で1時間ブロッキングした。再度洗浄後、各ウェル当り50μLのハイブリドーマ培養上清を加え、室温で1時間放置し、0.05%Tween/PBSで3回洗浄した。
【0133】
次に、3%BSAを含むPBSで1000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG−ペルオキシダーゼをウェル当り50μL加え、室温で1時間放置した。再度洗浄し、0.25mMの塩化マグネシウムを含む1M ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)に溶解したp−ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム塩(和光純薬)の1mg/mL溶液をウェル当り100μL加え、室温で30分間反応させた。この405nmにおける吸光度を、96ウェルプレート用のELISAリーダー測定器(Molecular Davice社 Vmax)を用いて調べ、組換えNesfatin-1と特異的に結合するモノクローナルIgG抗体を分泌するハイブリドーマ21クローンを選択した。Igタイピングは、PIARCE社のIsotyping Kitを使用して実施した。ハイブリドーマ21クローンのうち9クローンについて、各モノクローナル抗体の各組換えタンパク質に対する反応性評価結果を表8に示す。反応性は、3段階に分けて評価した。
◎(Excellent):OD405nmが0.3以上
○(Good) :OD405nmが0.06以上〜0.3未満
×(Poor) :OD405nmが0.06未満
【0134】
【表8】
【0135】
これらの結果から、抗Nesfatin-1抗体を産生するハイブリドーマ21クローンのうち、NAP37、NAP39、NAP40−2の3クローンを選択して、大量培養し、培養上清を回収した。培養上清中の抗体をプロテインGカラムで常法により精製した。
【0136】
実施例11
<Nesfatin-1に対するマウスモノクローナル抗体を使用したNesfatin-1測定系の作製>
(1)Nesfatin-1測定系の構成
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例5または6で得られた抗Nesfatin、Nesfatin-1ウサギポリクローナル抗体(抗体No.4998、抗体No.5036、抗体No.5037、抗体No.6151、抗体No.6152)のIgGのビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0137】
(B)抗体固定化プレートの調製
実施例10で得られた抗体(抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2, NAP37, NAP39))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、NAP40-2、NAP37、またはNAP39が固定化された抗体固定化プレートを得た。
【0138】
(C)測定系の構築−(1)
上記実施例11(1)(B)で調製した抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2, NAP37, NAP39)固定化プレートと、上記実施例11(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.6151、ビオチン化抗体No.6152)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)を0−10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0−10nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図10および11に示す。
その結果、NAP40-2固定プレートが最も感度良くヒトNesfatin-1を測定できることがわかった。NAP40-2については、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した(受領番号FERM ABP−10884 受領日 2007年7月27日)。
【0139】
(C)測定系の構築−(2)
上記実施例11(1)(B)で調製した抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、実施例11(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.6151、ビオチン化抗体No.6152、ビオチン化抗体No.4998、ビオチン化抗体No.5036、またはビオチン化抗体No.5037)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)を0〜10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜10nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図12および図13に示す。
その結果、ビオチン化抗体No.4998が最も感度良くヒトNesfatin-1を測定できることがわかった。
【0140】
(2)測定系の種差に対する測定感度評価
上記実施例11(1)で検出感度の最も良かった測定系(抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化抗体No.4998を使用する系)を使用して、ラットNesfatin-1との交差反応性を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、組換えラットNesfatin-1(標準物質)を0〜100nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜100nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図14に示す。
【0141】
(3)測定系のNesfatinに対する交差反応性評価
上記実施例11(1)でNesfatin-1の検出感度の最も良かった測定系(抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化抗体No.4998を使用する系)を使用して、Nesfatin(Full分子)との交差反応性を検討した。
【0142】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、組換えラットNesfatin-1(標準物質)、または組換えマウスNesfatin-1(標準物質)を0〜50nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。また、交差反応性を検証するための検体として、精製した組換えヒトNesfatin(標準物質)、組換えラットNesfatin(標準物質)、または組換えマウスNesfatin(標準物質)を0〜25nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈液を作製使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜50nMの検体ついて、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図15に示す。
結果から、NAP40−2抗体固定およびビオチン化抗体No.4998を用いる系では、ラット、マウスのNesfatinに対する反応性は検出されず、ラット、マウスNesfatin-1特異的に測定できることがわかった。また、ヒトNesfatinに対しては、25nMで若干反応性が観察されるものの1000倍近い感度でヒトNesfatin-1を検出できるので、それ以下の比でNesfatin-1とNesfatinが存在するなら問題にならないと判断された。
【0143】
実施例12
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体作製>
(1)Nesfatin部分ペプチドによるマウスの免疫
実施例5で作製したNesfatin部分ペプチド(配列番号1〜4)を10〜20μg/回/headをフロインドのコンプリートアジュバント(BACTO社製、1:1)とともに、2週間毎にBalb/cマウス(7週齢、オス)に腹腔内投与した。これを4回行った後、5回目は細胞融合の3日前に組換えhuman Nesfatin-1あるいは組換えhuman Nesfatin溶液50μgを静脈内投与した。
【0144】
マウスの尾静脈より採血し、37℃で30分間インキュベートした後、3000rpmで10分間遠心して血清を回収し、マウス血清中の抗Nesfatin抗体価をELISAにより測定した。得られた血清を用い、およびアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG抗体として、ZYMED社製のものに変える以外は、実施例9(1)と同様にして行った。
【0145】
(2)細胞融合によるハイブリドーマの作製
実施例11(1)で免疫されたマウスの脾細胞を用いて、実施例9(2)と同様にしてハイブリドーマを作製した。
【0146】
(3)ハイブリドーマのスクリーニング
得られたハイブリドーマに対して、実施例9(2)と同様のスクリーニングを行った。なお、3%BSA/PBSで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG−アルカリホスファターゼコンジュゲートの代わりに、3%BSAおよび0.2%スキムミルクを含むPBSで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG−アルカリホスファターゼコンジュゲート(Tago社)を使用した。結果を表9に示す。表中、D、E、FおよびGは、それぞれ、D:NesfatinのC末端ペプチド(NSF-C18)、E:NesfatinのN末端ペプチド(NSF-N19)、F:Nesfatin-1のC末端ペプチド(NSF1-C18)、またはG:Nesfatin-1の中央部分のペプチド(NSF1-M15)による免疫マウスより得られたハイブリドーマのクローンを表す。また、表中の数値は、405nmにおける吸光度を表す。
【0147】
【表9】
【0148】
(4)ハイブリドーマのクローニング
実施例9(4)と同様にして、選択したハイブリドーマについてクローニングを行った。
【0149】
(5)ハイブリドーマの培養および抗体精製
以上の操作で得られた抗Nesfatin-1抗体を産生するハイブリドーマ20クローンのうち、11クローンを大量培養し、培養上清を回収した。培養上清中の抗体をプロテインGカラムで常法により精製した。
【0150】
実施例13
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体の反応性評価>
(1)抗原ELISAによる抗体の反応性評価
実施例12により取得した精製IgGを用いて、抗原ELISAによる各抗体の反応性評価を実施例5(2)と同様にして行った。そのほか、反応性評価対象として、96ウェルELISAプレート(MaxiSorp:Nunc社)にPBS(pH7)で1μg/mlに希釈したGST融合組換えヒトNesfatin-1、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77、ラットNesfatin、またはラットNesfatin-1が固定されたものを使用する以外は、実施例5(2)と同様にして行った。結果を表10および表11に示す。表中の数値は、405nmにおける吸光度を表す。なお、表中表されるクローンは、例えば、NAE−3を例にあげると、NAE−3は、表9におけるE:NesfatinのN末端ペプチド(NSF-N19)による免疫マウスより得られたハイブリドーマのクローン番号3と同一のものを表す。
【0151】
【表10】
【0152】
【表11】
【0153】
表10の結果から、NAE1がヒトNesfatin、ヒトNesfatin-1、ラットNesfatinのいずれにも高い反応性を示し、一方、NAE3はヒトNesfatin、ヒトNesfatin-1に高い反応性を示したがラットとの交差反応性は無いことがわかった。またNAD15はヒトNesfatin、ラットNesfatinのいずれにも高い反応性をしめし、ヒトNesfatin-1には反応しないことがわかった。いずれの抗体もNucB1-N77には反応性を全く示さなかった。
【0154】
表11の結果から、NAF11がヒトNesfatin、ヒトNesfatin-1、ラットNesfatin-1のいずれにも高い反応性を有し、ヒトNucB1-N77に対する交差反応性は無いことがわかった。
【0155】
NAE-1、NAF-7、NAF-11およびについては、それぞれ、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した(受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、およびFERM ABP−10883 受領日 2007年7月27日)。
【0156】
実施例14
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(NAE1)を使用したNesfatin-1測定系の作製>
(1)測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例12で得られた抗Nesfatin-1C末端ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAE1、NAE3)(IgG)のビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0157】
(B)抗体固定化プレートの調製
実施例5で作製した抗体(抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1 C末端ペプチドウサギポリクローナル抗体(抗体No.4998))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4998が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0158】
(C)測定系の構築
上記実施例14(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)を0−200pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化抗体は、ビオチン化抗体を2μg/ml含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜200pMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図16に示す。
【0159】
(2)測定系の種差に対する測定評価
上記実施例14(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1、ビオチン化NAE3)を使用して、ラットNesfatin-1との交差反応性を検討した。
【0160】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または組換えラットNesfatin-1(標準物質)を0−2nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜2nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図17に示す。
その結果、ビオチン化NAE1、およびビオチン化NAE3は共に、ヒトNesfatin-1のみを検出し、ラットNesfatin-1には交差反応性を示さないことがわかった。
【0161】
(3)NucB1-N77交差反応性評価
上記実施例14(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用して、NucB1-N77との交差反応性を検討した。
【0162】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または精製組換えヒトNucB1-N77を0〜200pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜2nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図18に示す。
その結果、本測定系はヒトNesfatin-1のみを検出し、ヒトNucB1-N77には交差反応性を示さないことがわかった。
【0163】
(4)Nesfatin交差反応性評価
上記実施例14(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用して、精製した組換えヒトNesfatinとの交差反応性を検討した。
【0164】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または組換えヒトNesfatinを0〜200pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜200pMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図19に示す。
その結果、本測定系はヒトNesfatin-1のみを検出し、ヒトNesfatinには交差反応性を示さないことがわかった。
【0165】
実施例15
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(NAE1)を使用したNesfatin測定系の作製>
(1)測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例12で得られた抗Nesfatin-1C末ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAE1, NAE3, NAD15)(IgG)のビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0166】
(B)抗体固定化プレートの調製
抗体(抗原ペプチドアフィニティー精製 抗Nesfatin C末端ペプチドPAb;抗体No.4994、または抗Nesfatin-1C末ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAD15))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4994またはNAD15が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0167】
(C)測定系の構築
抗体No.4994固定プレートと、ビオチン化NAE1, NAE3, NAD15を使用して、ヒトNesfatinに対する反応性を検討した。
検体として、精製した組換えNesfatin(標準物質)を0〜1nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0−1nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図20に示す。
【0168】
(2)ビオチン化抗体の種差に対する反応性評価
抗体NAD15(ヒトNesfatin C末端ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体)固定プレートと、ビオチン化NAE1, NAE3を使用して、組換えヒトNesfatinまたは組換えラットNesfatinとの交差反応性を検討した。
【0169】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin(標準物質)、またはラットNesfatinを0〜10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜10nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図21に示す。
この結果から、NAE1, NAE3共にラットNesfatinに対する反応性が無いことが示された。
【0170】
(3)NucB1に対する交差反応性評価
実施例15(1)より、抗体No.4994固定プレートと、ビオチン化NAE1(検出抗体)を使用する測定系がヒトNesfatinを最も高感度に検出しうることが示されたため、この測定系に関して、ヒトNucB1との交差反応性を検討した。
【0171】
検体として、精製した組換えヒトNucB1(GST融合タンパク)を0〜800pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列、および精製した組換えヒトNesfatinを0−200pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜1nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図22に示す。
この結果からNucB1に対する交差反応性は全く認められなかった。このことから本測定系はNesfatin特異的な測定系であると考えられる。
【0172】
実施例16
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(NAF11)を使用したNesfatin-1測定系の作製>
(1)測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例12で得られたマウスモノクローナル抗体のうち、ヒトとラットのNesfatin-1に反応し、ヒトNucB1との交差反応性が認められなかった抗Nesfatin-1C末ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAF11)を用いて、そのIgGのビオチン化を実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0173】
(B)抗体固定化プレートの調製
抗体(抗原ペプチドアフィニティー精製 抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4998が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0174】
(C)測定系の構築
上記実施例16(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例16(1)(A)で作製したビオチン化IgG(NAF11)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えNesfatin-1(標準物質)を0〜1nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜1nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、これをブロットした。結果を図23に示す。
【0175】
実施例17
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(NAF11)を使用したNesfatin測定系の作製>
(1)測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例12で得られたマウスモノクローナル抗体のうち、ヒトとラットのNesfatin-1に反応し、ヒトNucB1との交差反応性が認められなかった抗Nesfatin-1C末ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAF11)を用いて、IgGのビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0176】
(B)抗体固定化プレートの調製
抗体(抗原ペプチドアフィニティー精製 抗Nesfatin C末端ペプチドPAb;抗体No.4994)を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4994が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0177】
(C)測定系の構築
上記実施例17(B)で調製した抗Nesfatin -1C末端ペプチドPAb(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体NAF11)を使用して、ヒト、マウス、ラットに対する交差反応性を検討した。
【0178】
検体として、精製した組換えヒト、ラット、マウスNesfatin(標準物質)を0〜1nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈液を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜1nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図24に示す。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明により、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinもしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、ならびにNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、さらには、その抗体を用いる、Nesfatin-1の免疫学的検出方法および検出キットを提供することができる。
また、本発明により、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、さらには、その抗体を用いる、Nesfatinの免疫学的検出方法および検出キットを提供することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0180】
配列表の説明
(1)配列番号1 NSF1−C18のアミノ酸配列
(2)配列番号2 NSF1−M15のアミノ酸配列
(3)配列番号3 NSF−C18のアミノ酸配列
(4)配列番号4 NSF−N19のアミノ酸配列
(5)配列番号5 ヒト由来Nesfatin-1のアミノ酸配列
(6)配列番号6 マウス由来Nesfatin-1のアミノ酸配列
(7)配列番号7 ラット由来Nesfatin-1のアミノ酸配列
(8)配列番号8 ヒト由来NESFATINのアミノ酸配列
(9)配列番号9 ヒト由来NESFATIN(Mature)のアミノ酸配列
(10)配列番号10 マウス由来NESFATINのアミノ酸配列
(11)配列番号11 マウス由来NESFATIN(Mature)のアミノ酸配列
(12)配列番号12 ラット由来NESFATINのアミノ酸配列
(13)配列番号13 ラット由来NESFATIN(Mature)のアミノ酸配列
(14)配列番号14 ヒト由来NucB1(Mature)のアミノ酸配列
(15)配列番号15 マウス由来NucB1(Mature)のアミノ酸配列
(16)配列番号16 ラット由来NucB1(Mature)のアミノ酸配列
(17)配列番号17 ヒト由来NucB1−N77のアミノ酸配列
(18)配列番号18 マウス由来NucB1−N77のアミノ酸配列
(19)配列番号19 ラット由来NucB1−N77のアミノ酸配列
(20)配列番号20 Human NESFATIN & Human NESFATIN-1 1st PCR Primer hNucB2-F0191
(21)配列番号21 Human NESFATIN & Human NESFATIN-1 1st PCR Primer hNucB2-R1549
(22)配列番号22 Human NESFATIN & Human NESFATIN-1 2nd PCR Primer hNucB2-F292
(23)配列番号23 Human NESFATIN-1 2nd PCR Primer hNucB2-R514
(24)配列番号24 Human NESFATIN 2nd PCR Primer hNucB2 R1461
(25)配列番号25 Human NucB1 & Human NucB1-N77 1st PCR Primer hNucB1-F061
(26)配列番号26 Human NucB1 & Human NucB1-N77 1st PCR Primer hNucB1-R1376
(27)配列番号27 Human NucB1 & Human NucB1-N77 2nd PCR Primer hNucB1-F096
(28)配列番号28 Human NucB1-N77 2nd PCR Primer hNucB1-R303
(29)配列番号29 トロンビン認識部位
(30)配列番号30 mouse NESFATIN & mouse NESFATIN-1 1st PCR Primer mNucB2-F337
(31)配列番号31 mouse NESFATIN & mouse NESFATIN-1 1st PCR Primer mNucB2-R1613
(32)配列番号32 mouse NESFATIN & mouse NESFATIN-1 2nd PCR Primer mNucB2-F360
(33)配列番号33 mouse NESFATIN-1 2nd PCR Primer mNucB2-R582
(34)配列番号34 mouse NESFATIN 2nd & 3rd PCR Primer mNucB2-R1527
(35)配列番号35 mouse NESFATIN 3rd PCR Primer His-Thr-For
(36)配列番号36 mouse NucB1 & mouse NucB1-N77 1st PCR Primer mNucB1-F009
(37)配列番号37 mouse NucB1 & mouse NucB1-N77 1st PCR Primer mNucB1-R1406
(38)配列番号38 mouse NucB1 & mouse NucB1-N77 2nd PCR Primer mNucB1-F094
(39)配列番号39 mouse NucB1-N77 2nd PCR Primer mNucB1-R301
(40)配列番号40 mouse NucB1 2nd PCR Primer mNucB1-R1360
(41)配列番号41 rat NESFATIN & rat NESFATIN-1 1st PCR Primer rNucB2-F204
(42)配列番号42 rat NESFATIN & rat NESFATIN-1 1st PCR Primer rNucB2-R1540
(43)配列番号43 rat NESFATIN & rat NESFATIN-1 2nd PCR Primer ratNucB2-F286
(44)配列番号44 rat NESFATIN-1 2nd PCR Primer ratNucB2-R507
(45)配列番号45 rat NESFATIN 2nd & 3rd PCR Primer ratNucB2-R1531
(46)配列番号46 rat NucB1 & rat NucB1-N77 1st PCR Primer ratNucB1-F001
(47)配列番号47 rat NucB1 & rat NucB1-N77 1st PCR Primer ratNucB1-R1402
(48)配列番号48 rat NucB1 & rat NucB1-N77 2nd PCR Primer rNucB1-F078
(49)配列番号49 rat NucB1-N77 2nd PCR Primer rNucB1-R285
(50)配列番号50 rat NucB1 2nd PCR Primer rNucB1-R1357
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、本発明により初めて見出された新規Nesfatin-1特異的抗体およびその用途、ならびに新規Nesfatin特異的抗体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肥満とは、体重(特に白色脂肪組織)が過剰にある状態であり、一般的にBody Mass Index(BMI)が≧25kg/m2であることによって分類され、また体脂肪率では成人男性で25%以上・成人女性で30%以上であることでも分類される。高脂肪食を中心とした食生活や運動不足は現代において、肥満に分類される人の割合は増加の傾向にある。2000年の厚生労働省による国民栄養調査の結果では、男性においてはこの10年および20年での比較で肥満に分類される人は確実に増えており、40歳から69歳においては約30%の人が肥満に分類される。また女性においても60歳から69歳における約30%が肥満に分類される。
【0003】
現在、肥満そのものよりもそれに随伴する(随伴し得る)健康障害は、臨床上の大きな問題となっており、肥満の予防や治療の医学的根拠となっている。日本肥満学会では、肥満症を「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、臨床的にその合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態」と定義し、疾患として取り扱うことを提唱している。ここで言う健康障害には、2型糖尿病や耐糖能異常のほかに、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、脂肪肝、心・脳血管疾患、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症などの整形外科的疾患、月経異常などが含まれる(松澤佑次 日本臨牀 株式会社日本臨牀社発行 2003年7月28日 61巻 増刊号6「肥満症」 p5−8)。また肥満に起因する疾患としては悪性腫瘍が挙げられ、特に乳ガン、子宮ガン、結腸ガン、腎臓ガン、食道ガン、膵臓ガン、肝臓ガン、胆嚢ガンの発症に関して肥満がリスクファクターとなることが報告されている(松澤佑次 日本臨牀 株式会社日本臨牀社発行 2003年7月28日 61巻 増刊号6「肥満症」 p5−8、アブーアビッド(Abu-Abid)等 ジャーナル・オブ・メディシン(Journal of medicine)(ΜSA)2002年1月1日 33巻1−4号 p73−86、ナイアー(Nair)等 ヘパトロジー(Hepatology)(ΜSA) 2002年7月1日 36巻1号 p150−155)。さらに近年、メタボリックシンドロームと呼ばれる動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳梗塞など)の危険性を高める複合型リスク症候群が提唱されており、日本における脳血管障害・心血管障害は全死亡率の30%を占めることからも注目されている。そのため、日本肥満学会・日本動脈硬化学会・日本糖尿病学会・日本高血圧学会・日本循環器学会・日本腎臓学会・日本血栓止血学会・日本内科学会は合同でその診断基準をまとめ、2005年4月8日の日本内科学会での記者会見でその基準を公表した。それによると、内臓肥満(内臓脂肪蓄積)をリスクの中心にすえ、ウエストの周囲径が男性では85cm以上、女性では90cm以上あることに加えて、血清脂質異常(トリグリセリド値が150mg/dL以上、HDLコレステロール値が40mg/dL未満の何れかまたは両方)、血圧高値(収縮期血圧が130mmHg以上、拡張期血圧が85mmHgの何れかまたは両方)、高血糖(空腹時血糖値が110mg/dL以上)のうちの2つ以上のリスクを持つ場合をメタボリックシンドロームと診断することとなった(日本内科学会雑誌 メタボリックシンドローム診断基準検討委員会 2005年4月号 94巻 p794−809)。この基準を用いた場合、人間ドックを受診した290名の成人男子のうち、肥満症と診断された人が61名(21%)であったのに対して、メタボリックシンドロームと診断された人は27名(9%)であり、肥満症に含まれずにメタボリックシンドロームと診断された人も9名(3%)存在したという報告もある(医学の歩み 高橋和男、齋藤 康 2005年 213巻6号 p549−554)。
【0004】
肥満に対して、過度の体重の低下(いわゆる「やせ」)や摂食の低下(いわゆる「食欲不振」)は、生体防御(免疫)反応の低下による易感染、造血系障害、無月経または月経不順、不妊症、精神的障害、末梢神経麻痺、低血圧、骨粗訴訟症などを引き起こす原因として問題になる。一般的にBMIが<18.5Kg/m2の場合、もしくは体脂肪率が男性では10%以下、女性では15%以下の場合をやせに分類する。2000年の厚生労働省による国民栄養調査では、女性においてはBMI<18.5Kg/m2の人の割合は20歳から39歳でこの10年および20年の間で確実に増えており、20〜29歳の人においては約24%が「やせ」に分類される。これは若年の女性において体型を気にするための意図的な摂食量の調節による可能性もある。しかしながら、この年代層で多発する中枢性摂食異常症の中の神経性食欲不振症(拒食症)などにおいては食欲自体が極度に低下して、栄養状態が悪化して全身衰弱で死亡する場合もある。また、従来胃下垂・胃アトニー・神経性胃炎と言われていた概念を含む食欲が低下する疾患として、Functional dyspepsiaと呼ばれる疾患があり、この疾患は、食後早期の満腹感、食欲低下などの症状を示すと言われている(タリィ(Talley )等 ガット(Gut)(England) 1999年 45巻 Suppl 2: p1137-1142)。さらに、食欲不振を起こす原因としては癌、炎症性疾患、下垂体・甲状腺・副腎などの機能低下、手術後、過度のストレスなどが挙げられ、このような状態で長期間食欲不振が持続することは身体の衰弱を引き起こす。
【0005】
このような状況において、近年摂食を調節する生体内因子の研究が盛んに行われており、レプチン・アディポネクチン・グレリンなどの因子と摂食調節との関連についても研究がされている。近年では、摂食や肥満に関係する物質としてNesfatin-1が報告されており(Oh-I S. et al. Nature, 443(7112):709-12, 2006)、摂食調節および/または体重調節に関与する新規因子として期待されている。
【0006】
Nesfatin-1は既知のNucleobindin 2(NucB2)と呼ばれる420個のアミノ酸からなるタンパク質から切り出される82個のアミノ酸からなるペプチドであり、検討の結果、摂食調節の作用を有しないNucB2からNesfatin-1が生成されることによって、摂食調節の作用を示すペプチドである(国際公開第WO2006/137597号パンフレット)。このように、Nesfatin-1はNucB2の一部分の配列であることから、NucB2と共通のアミノ酸組成および配列を持つため、NucB2には結合せず、Nesfatin-1にのみ結合する抗体を取得することは常識的には非常に困難と考えられていた。そのため、生体内での活性分子であるNesfatin-1を検出する方法としては、国際公開第WO2006/137597号パンフレットに記載のように、他の物理的な手段を用いてNucB2とNesfatin-1を分離してから抗体で検出する必要があった。この方法は、検出操作の煩雑さ、分離過程における抽出精製効率の制御の困難性などの点で、実際の臨床での診断などに実用的なNesfatin-1の測定系と言えるものはなかった。また、NucB2は、同じファミリーに属するNucB1との相同性が高いため、NucB1とも交差反応しないことが望ましい。
【0007】
また、NucB2とNesfatin-1の両者に結合する抗体は、ラットの脳内に投与することで摂食を亢進する作用を持つことが示されているが、実際の治療薬として用いるには脳内に直接治療薬を投与することは実用的ではなく、血管などから投与する形態の薬剤が望ましい。その際に血液中などにNucB1が大量に存在する場合には、NucB1と交差反応を示す抗体を投与しても実際にNesfatin-1が存在している部位に到達する前にNucB1に横取りされて、その抗体の効果を十分に発揮できない可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明が解決しようとする課題は、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatin(Nucleobindin 2(NucB2))もしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、または、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を提供することである。さらには、その抗体を用いる、Nesfatin-1の免疫学的検出方法および検出キットを提供することである。
【0009】
また、本発明が解決しようとするもう1つの課題は、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を提供することである。さらには、その抗体を用いる、Nesfatinの免疫学的検出方法および検出キットを提供することである。
【0010】
本発明者らは、Nesfatin-1内の各種ペプチドを免疫原として用いて得られた抗体を検討することにより、Nesfatin-1内の特定の配列からなるペプチドを免疫原とすることにより、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinもしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を取得できることを見出した。さらに、Nesfatinと高感度に抗原抗体反応を示す抗体を取得し、その抗体とNesfatin-1特異的抗体を組合すことによって、高感度にNesfatin-1を免疫学的に検出する方法を見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は以下のものに関する。
(1)Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体(抗体No.4998、NAP40−2、NAF7)。
(2)以下のアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原として用いることにより得られる、(1)記載の抗体(抗体No.4998)。
NSF1-C18:-Gly-Cys-Ser-Lys-Glu-Leu-Asp-Leu-Val-Ser-His-His-Val-Arg-Thr-Lys-Leu -Asp-Glu-Leu
(3)Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体(抗体No.4994、5223、6151、6152、NAP40−2、NAE1、NAE3、NAF11)。
(4)受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマにより産生される、(3)記載のモノクローナル抗体(抗体No.NAE1、NAF7、NAF11、NAP40−2、)。
(5)Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
(6)受領番号FERM ABP−10882、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマにより産生される、(5)記載のモノクローナル抗体(抗体No.NAF7、NAP40−2)。
(7)Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体(4994、NAD15)。
(8)受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマ。
(9)検体を、(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体に接触させる工程、
検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む、Nesfatin-1の免疫学的検出方法。
(10)検体を、(7)記載の抗体に接触させる工程、
検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む、Nesfatinの免疫学的検出方法。
(11)検体中のNesfatin-1の免疫学的検出方法であって、
(1)〜(6)記載の抗体のうちから選択された2種類の抗体を用いる、免疫学的検出方法。
(12)検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、
一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで
検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体のうち他方が、(3)、(4)、(5)または(6)のいずれかに記載の抗体である、(11)記載の免疫学的検出方法。
(13)一次抗体が、(1)または(2)記載の抗体(抗体No.4998)であって、
二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881、またはFERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体(抗体No.NAE1、または抗体No.NAF11)である、(12)記載の免疫学的検出方法。
(14)一次抗体が、受領番号FERM ABP−10884、またはFERM ABP−10882として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体(抗体No.NAP40−2、または抗体No.NAF7)であって、
二次抗体が、(1)または(2)記載の抗体(抗体No.4998)である、(12)記載の免疫学的検出方法。
(15)Nesfatin-1の濃度が30pM未満である検体と、Nesfatin-1の濃度が0pMである対照検体とを弁別可能である感度を有する、(11)〜(14)のいずれかに記載の記載の免疫学的検出方法。
(16)検体中のNesfatinの免疫学的検出方法であって、
検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、
一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで
検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、(7)記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である、Nesfatinの免疫学的検出方法。
(17)Nesfatinの濃度が30pM未満である検体と、Nesfatinの濃度が0pMである対照検体とを弁別可能である感度を有する、(16)記載の免疫学的検出方法。
(18)一次抗体が、(7)記載の抗体(抗体No.4994、NAD15)であり、
二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881、またはFERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体(抗体No.NAE1、NAF11)である(16)または(17)記載の免疫学的検出方法。
(19)(12)〜(15)のいずれかに記載の検出方法に用いられるNesfatin-1の検出キットであって、
一次抗体が固定された固相、および標識された二次抗体を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、(1)、(2)、(5)または(6)のいずれかに記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、(3)、(4)、(5)または(6)のいずれかに記載の抗体である、Nesfatin-1の検出キット。
(20)(16)〜(18)のいずれかに記載の検出方法に用いられるNesfatinの検出キットであって、
一次抗体が固定された固相、および標識された二次抗体を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、(7)記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である、Nesfatinの検出キット。
(21)検体に、標識されたNesfatin-1標準物質を混和する工程、
標識化Nesfatin-1標準物質が混和された検体に、(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体を接触させる工程、
抗体と抗原抗体反応した標識化Nesfatin-1標準物質を検出する工程を含む、Nesfatin-1の免疫学的検出方法。
(22)抗体が、(5)または(6)記載の抗体である、(21)記載の免疫学的検出方法。
(23)検体に、標識されたNesfatin標準物質を混和する工程、
標識化Nesfatin標準物質が混和された検体に、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を接触させる工程、
抗体と抗原抗体反応した標識化Nesfatin標準物質を検出する工程を含む、Nesfatinの免疫学的検出方法。
(24)抗体が、(7)記載の抗体である、(23)記載の免疫学的検出方法。
(25)(21)または(22)記載の検出方法に用いられるNesfatin-1の検出キットであって、
標識化されたNesfatin-1標準物質、およびNesfatin-1と抗原抗体反応する抗体を含み、
該抗体が、(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体である、Nesfatin-1の検出キット。
(26)(23)または(24)記載の検出方法に用いられるNesfatinの検出キットであって、
標識化されたNesfatin標準物質、およびNesfatinと抗原抗体反応する抗体を含み、
該抗体が、(7)記載の抗体である、Nesfatinの検出キット。
(27)(1)〜(7)のいずれかに記載の抗体を含有する食欲亢進および/または体重増加亢進のための医薬組成物。
【0012】
本発明により、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinもしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、ならびにNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、さらには、その抗体を用いる、Nesfatin-1の免疫学的検出方法および検出キットを提供することができる。
また、本発明により、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、さらには、その抗体を用いる、Nesfatinの免疫学的検出方法および検出キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、抗原として使用したペプチド(hNSF-N19、hNSF1-C18、hNSF-C18、hNSF1-M15)のNesfatinまたはNesfatin-1内の位置を示す模式図である。なお、図1に示されるポリペプチド全長が、Nesfatinに相当し、SPはシグナルペプチド、NAP1はNesfatin-1、NAP2はNesfatin-2、NAP3はNesfatin-3を表す。
【図2】図2は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.4994、6151、6152、6153)を使用する測定系の、ヒトNesfatin(F−NAP)との反応性を示すグラフである。
【図3】図3は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.6151、6152)を使用する測定系の、ラットNesfatinとの交差反応性を示すグラフである。
【図4】図4は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.6151、6152)を使用する測定系の、ラットまたはマウスNesfatinとの交差反応性を示すグラフである。
【図5】図5は、抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6151)固定化プレートと、ビオチン化IgG(抗体No.4998、抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトまたはラットのNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図6】図6は、抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6152)固定化プレートと、ビオチン化IgG(抗体No.4998、抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトまたはラットのNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図7】図7は、抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6152)固定化プレートと、ビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77との交差反応性を示すグラフである。
【図8】図8は、抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトNesfatin、ヒトNesfatin-1、ヒトNucB1-N77との反応性を示すグラフである。
【図9】図9は、抗Nesfatin-1IgG(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.6152)を使用する測定系の、ラットまたはマウスNesfatin-1との交差反応性を示すグラフである。
【図10】図10は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2, NAP37, NAP39)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.6151)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図11】図11は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2, NAP37, NAP39)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図12】図12は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.4998、ビオチン化抗体No.6151、ビオチン化抗体No.6152)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図13】図13は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.4998、ビオチン化抗体No.5036、ビオチン化抗体No.5037)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図14】図14は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化抗体No.4998を使用する測定系の、ラットNesfatin-1との交差反応性を示すグラフである。
【図15】図15は、抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化抗体No.4998を使用する測定系の、Nesfatin(Full分子)との交差反応性を示すグラフである。
【図16】図16は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用する測定系の、ヒトNesfatin-1との反応性を示すグラフである。
【図17】図17は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化IgG(ビオチン化NAE1、ビオチン化NAE3)を使用する測定系の、ラットNesfatin-1との交差反応性を示すグラフである。
【図18】図18は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用する測定系の、NucB1-N77との交差反応性を示すグラフである。
【図19】図19は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用する測定系の、Nesfatinとの交差反応性を示すグラフである。
【図20】図20は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定プレートと、ビオチン化抗体(NAE1, NAE3, NAD15)を使用する測定系の、ヒトNesfatinに対する反応性を示すグラフである。
【図21】図21は、ヒトNesfatin C末端ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(抗体NAD15)固定プレートと、ビオチン化抗体(NAE1, NAE3)を使用する測定系の、ラットNesfatinとの交差反応性を示すグラフである。
【図22】図22は、抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定プレートと、ビオチン化抗体(NAE1)を使用する測定系の、ヒトNucB1との交差反応性を示すグラフである。
【図23】図23は、抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化IgG(NAF11)を使用する測定系の、ラットまたはマウスNesfatin-1との交差反応性を示すグラフである。
【図24】図24は、抗Nesfatin -1C末端ペプチドPAb(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体NAF11)を使用する測定系の、マウスまたはラットNesfatinに対する交差反応性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinおよび/もしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体>
本発明は、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatin(Nucleobindin 2(NucB2))もしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、またはNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体に関する。
【0015】
本発明において、「Nesfatin-1」とは、配列番号5〜7に示される、摂食抑制および/または体重増加抑制活性を有するポリペプチドである。Nesfatin-1は、Nesfatinから、生体内のプロホルモン・コンバターゼ等の切断酵素で切り出されることにより、摂食抑制および/または体重増加抑制活性を示すものである。また、本発明におけるNesfatn-1とは、配列番号5〜7のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が置換・欠損・挿入され、かつ摂食抑制および/または体重増加抑制活性を有するポリペプチドも含まれる。かかるポリペプチドとしては、具体的には、Nesfatinの消化に際して、切断酵素認識部位が末端に残存したポリペプチド、またはNesfatin-1の標識化の際に、1〜数個のアミノ酸が置換・欠損・挿入されたポリペプチドであって、かつ摂食抑制および/または体重増加抑制活性を有するポリペプチドなどがあげられる。
【0016】
かかるNesfatin-1は、配列番号8〜13のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するNESFATINポリペプチドをプロホルモン・コンバターゼで切断したのち、逆相クロマトグラフィー等で精製することにより、またはNesfatin-1ポリペプチドに対する抗体に対する結合と遊離の工程を行なうことにより取得することができる。また、実施例1のようにして組換えNesfatin-1を取得することもできる。
【0017】
本発明における抗体の一つの様態は、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体である。ここでNesfatinとは、配列番号8〜13に示されるポリペプチドをいう。「Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない」とは、Nesfatin-1およびNesfatinをほぼ同じ分子数を固相に固定して、そこに各抗体を抗原抗体反応させたときの結合量が、Nesfatin-1を固定化した固相への結合量に対して、Nesfatinを固定化した固相への結合量が1/5未満の値であるものをいう。このようなNesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体は、以下のアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原として用いることにより得ることができる。ここで、該ペプチドを免疫する動物としては、家兎が好ましい。
NSF1-C18:-Gly-Cys-Ser-Lys-Glu-Leu-Asp-Leu-Val-Ser-His-His-Val-Arg-Thr-Lys-Leu -Asp-Glu-Leu(配列番号1)
【0018】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体については実施例5に、前述のNSF1-C18ペプチドをウサギに免疫することによって、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体が再現良く得られることが示されている。またモノクローナル抗体の例としては、受領番号FERM ABP−10882(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領日 2007年7月27日)として寄託されているハイブリドーマ(NAF7)により産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。また、本発明は、かかるハイブリドーマにも関する。
【0019】
本発明における抗体の別の様態としては、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である。ここでNucB1とは配列番号14〜16に示されるポリペプチドである。また、本件明細書において、特に一次構造的にNesfatin-1との相同性の高い部分はこの発明においてはNucB1-N77と呼び、配列番号17〜19にその構造が示されている。なお、リコンビナントNucB1-N77は、N末端にGly-Serが残存する構造となる。また、本発明において「NucB1」といった場合には「NucB1-N77」も含まれる場合がある。「NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」とは、Nesfatin-1およびNucB1(NucB1-N77)をほぼ同じ分子数を固相に固定して、そこに各抗体を抗原抗体反応させたときの結合量が、Nesfatin-1を固定化した固相への結合量に対して、NucB1を固定化した固相への結合量が1/5未満の値であるものをいう。
【0020】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体の例としては、受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領日 2007年7月27日)として寄託されているハイブリドーマ(それぞれ、NAE1、NAF7、NAF11、またはNAP40−2)により産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。また、本発明は、かかるハイブリドーマにも関する。
【0021】
本発明における抗体のさらに好ましい様態としては、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体が挙げられる。「NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」とは、前述の「Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない」における要件と、「NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」という要件を兼ね備えていることをいう。
【0022】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。後述の実施例に示されるように、受領番号FERM ABP−10882、またはFERM ABP−10884(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領日 2007年7月27日)として寄託されているハイブリドーマ(それぞれ、NAF7、またはNAP40−2)により産生されるモノクローナル抗体は、Nesfatin-1との抗原抗体反応の感度、およびNesfatinおよびNucB1との交差反応性の低さの点で、特に優れている。また、本発明は、かかるハイブリドーマにも関する。
【0023】
さらに、本発明の抗体は、NucB1-N77とも実質的に抗原抗体反応しないことが好ましい。このような抗体としては、受領番号FERM ABP−10882(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領日 2007年7月27日)として寄託されているハイブリドーマ(NAF7)により産生されるモノクローナル抗体があげられる。
【0024】
また、前述のモノクローナル抗体を取得する方法としては、それぞれ取得したい抗体を産生するハイブリドーマを培養し、得られた培養上清から常法によって抗体を精製して取得することができる。また、別の方法としては、取得したい抗体を産生するハイブリドーマから抗体をコードする遺伝子、より詳細には免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を取得して、該遺伝子を発現するためのベクターを作成し、宿主細胞(哺乳類細胞、昆虫細胞、微生物等)に導入して、該抗体を産生させることも可能である。このとき、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードする遺伝子について、望む形質を導入するための遺伝子改変を行ったり、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域を用いて抗体キメラタンパク質、低分子抗体やスキャフォールド抗体を作成することは、公知の技術を用いることで、当業者であれば実施することができる。
【0025】
<Nesfatin-1の免疫学的検出方法>
前述の「Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinもしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、またはNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体」を用いることによって、Nesfatin-1を特異的に検出しうる免疫学的検出方法を構築できる。例えば、該Nesfatin-1の免疫学的検出方法は、(I)検体を、該Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinおよび/またはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体に接触させる工程、(II)検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む。なお、抗原抗体反応を利用した免疫学的検出方法は、当技術分野において周知であり、本発明において、従来のいずれの方法をも採用することができる。
【0026】
そのような免疫学的検出方法の一つの形態は、Nesfatin-1と抗原抗体反応する抗体の量を測定することである。またその形態の中での一つとしては、前述の抗体の内、2つの抗体を用いる方法である。この場合、用いる抗体の望ましい組合せは、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体と、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体との組合せ、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体と、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体との組合せ、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体と、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体との組合せ、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体2種類の組合せである。ここで、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体と、Nesfatin-1と抗原抗体反応するがNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体との組合せにおいては、前者はNucB1との抗原抗体反応を否定できず、後者はNesfatinとの抗原抗体反応を否定できない性状を持つが、その組合せによってNesfatin-1を特異的に検出し、NesfatinおよびNucB1を実質的に検出しないようにできる。
【0027】
この2種類の抗体を用いた免疫学的測定法においては、少なくとも一種類の抗体を固相に固定する方法と、固定しない方法が挙げられる。
【0028】
少なくとも1種類の抗体を固相に固定化する測定方法としては、(I)検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、(II)一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで(III)検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含む、サンドイッチ法による測定方法が例示される。この測定方法での二次抗体の標識は、Nesfatin-1に抗原抗体反応した抗体の量が定量するために用いられ、一般的には酵素、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質が使用される。ここで、酵素で標識した二次抗体を用いる場合には、酵素による反応で発色、発光、蛍光を発するような物質を酵素の基質として反応させて、結果として生じた発色(吸光度として測定)、発光、蛍光を定量的に測定することで、Nesfatin-1と抗体抗原反応した二次抗体の量を測定する。また同時に、Nesfatin-1を含まない対照検体における測定値(バックグランド)、Nesfatin-1の標準ペプチドを用いていくつかの異なる濃度で該ペプチドを含む標準検体についても同時に測定を行って量依存的な結合状態を示す標準検量曲線を作成し、それによって得られた結果を用いて検体中に含まれるNesfatin-1を算定することが可能である。また、この測定方法によって検出できるNesfatn-1の最低濃度はその測定系の感度を規定する。つまりNesfatin-1を含まない対照検体における測定値に対して、有意に弁別できる測定値を示すNesfatin-1の標準ペプチドを含む標準検体におけるNesafatin-1濃度として、感度を表すことができる。本発明においては、30pMという低い濃度のNesfatin-1を含む標準検体においても、Nesfatin-1を含まない対照検体との弁別が可能であったことから、この測定系は30pM未満まで測定可能な検出感度を有するといえる。また、本発明の好ましい態様によれば、5pM未満の濃度のNesfatin-1を含む標準検体においても、Nesfatin-1を含まない対照検体との弁別が可能である。
【0029】
このような測定系の実例としては、実施例14に示す、一次抗体が、NSF1-C18をウサギに免疫して作成したポリクローナル抗体(抗体No.4998)であり、二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881として寄託されているハイブリドーマ(NAE1)により産生される抗体である測定系が挙げられる。かかる系では、ヒトのNesfatin-1について数pMであってもNesfatin-1を含まない対照検体との弁別が可能であり、30pM以下の感度、さらに数pM程度の感度を有していることが示された。同様に、一次抗体として抗体No.4998を用い、二次抗体として受領番号FERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマ(NAF11)により産生される抗体を用いる測定系も、検体中のNesfatin-1を高感度に検出することができる。
【0030】
また、一次抗体として、受領番号FERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマ(NAP40−2)により産生される、Nesfatin-1と高感度に抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を使用し、二次抗体として、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない本発明の抗体(抗体No.4998)を使用することによっても、検体中のNesfatin-1を高感度に検出することができる。同様に、一次抗体として受領番号FERM ABP−10882として寄託されているハイブリドーマ(NAF7)により産生される抗体を用い、二次抗体として抗体No.4998、No.6151、またはNo.6152を用いる測定系も、検体中のヒトNesfatin-1を高感度に検出することができる。
【0031】
2種類の抗体とも固相に固定しない方法としては、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)法やBRET (Bioluminescence Resonance Energy Transfer)法が挙げられる。これらの方法は、Nesfatin-1と抗原抗体反応する2種類の抗体を用い、一方の抗体に蛍光物質または発光タンパク質を結合させておき、その蛍光や発光の特定波長での光のエネルギーを吸収する蛍光物質で他方の抗体を標識しておくことで実施できる。この光エネルギーの吸収(Energy Transfer)は光を発する蛍光物質または発光タンパク質とそのエネルギーを吸収する蛍光物質がごく近傍に存在する必要があるため、2種類の抗体が一つの抗原に抗原抗体反応をしたときのみ、第一の抗体の蛍光物質や発光タンパク質の光の消光や第二の抗体に結合している蛍光物質が発する波長の蛍光を検出することによって、抗原であるNesfatin-1に抗体が抗原抗体反応している状態を定量的に検出できる。
【0032】
また、別の測定方法の様式としては、検体に、あらかじめ濃度を調整した標識化されたNesfatin-1の標準ペプチドを混和し、Nesfatin-1と抗原抗体反応する抗体に競合的に反応させることによって行う、競合的抗原抗体反応による測定方法も挙げられる。この場合、Nesfatin−1における標識は、抗体に結合した標準ペプチドを定量するために用いられ、一般的には放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、酵素が使用される。ここで、酵素で標識した標準ペプチドを用いる場合には、酵素による反応で発色、発光、蛍光を発するような物質を酵素の基質として反応させて、結果として生じた発色(吸光度として測定)、発光、蛍光を定量的に測定することで、抗体と抗原抗体反応した標準ペプチドの量を測定する。ここで、用いる抗体は、標識化されたNesfatin-1の標準ペプチドと検体中に含まれるNesfatin-1との両方と抗原抗体反応するものであればよいが、好ましくはNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体が用いられ、さらに好ましくは、受領番号FERM ABP−10882、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマ(NAF7、NAP40−2)により産生されるモノクローナル抗体を用いることが望まれる。また同時に、Nesfatin-1を含まない対照検体における測定値(バックグランド)、標識化されていないNesfatin-1の標準ペプチドを用いていくつかの異なる濃度で該ペプチドを含む標準検体についても同時に測定を行って量依存的な結合状態を示す標準検量曲線を作成し、それによって得られた結果を用いて、検体中に含まれるNesfatin-1を算定することが可能である。
【0033】
本発明の免疫学的検出方法に適用できる検体は、Nesfatin-1の検出が望まれるいずれのものであってもよく、例えば、患者の血液、血清、髄液、尿、腹水、胸水、唾液、涙液、喀痰、バイオプシーで取得した組織等を挙げることができる。
【0034】
<Nesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキット>
本発明は、前述のNesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキットにも関する。例えば上記のサンドイッチ法による測定方法におけるキットには、前述の一次抗体が固定された固相、および前述の二次抗体が標識されたものが含まれる。二次抗体の標識に使用される試薬は、当技術分野において周知であり、例えば、ビオチン、蛍光物質、発光物質、酵素(パーオキシダーゼ、ホスファターゼ、グルコシターゼ、ルシフェラーゼ等)が挙げられる。ここで、酵素で標識した二次抗体を用いる場合には、酵素による反応で発色、発光、蛍光を発するような酵素の基質もキットに含まれることがある。
【0035】
本発明のNesfatin-1のサンドイッチ法による免疫学的検出方法に用いられるキットは、さらに標準ペプチドを含んでいても良い。本発明のキットに含まれる標準ペプチドとは、前記抗体の、Nesfatin-1との量依存的な結合力を示す標準検量曲線を作成するために使用されるものである。このような標準ポリペプチドとして、Nesfatin-1を使用することができる。
【0036】
これらを含む本発明のキットは、例えば、(1)固定化した一次抗体に標準ペプチドを添加して反応後、さらに標識された二次抗体を添加することにより標準検量曲線を作成し、(2)同様に固定化した一次抗体に検体を添加して反応後、標識された二次抗体を添加し、(3)検体での反応における二次抗体の結合量を標準検量曲線によって測定することによって、検体中に含まれるNesfatin-1の含有量を検出することができる。
その他のキットの様態としては、前述のFRET法やBRET法などの測定方法に用いられるキットが挙げられ、該キットには蛍光物質または発光タンパク質で標識化された第一の抗体と、該蛍光物質または発光物質の発する特定の波長の光エネルギーを吸収しうる蛍光物質で標識化された第二の抗体が含まれる。また、本発明のFRET法またはBRET法によるNesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキットには、さらに、前記抗体の、Nesfatin-1との量依存的な結合力を示す標準検量曲線を作成するための標準ペプチドを含んでいても良い。このような標準ポリペプチドとして、Nesfatin-1を使用することができる。
【0037】
さらに他のキットの様態としては、競合的抗原抗体反応による測定方法におけるキットが挙げられ、該キットには標識化されたNesfatin-1標準ペプチド、およびNesfatin-1と抗原抗体反応する抗体が含まれる。標準ペプチドの標識に使用される試薬は、当技術分野において周知であり、例えば、ビオチン、蛍光物質、発光物質、酵素(パーオキシダーゼ、ホスファターゼ、グルコシターゼ、ルシフェラーゼ等)が挙げられる。ここで、酵素で標識した標準ペプチドを用いる場合には、酵素による反応で発色、発光、蛍光を発するような酵素の基質もキットに含まれることがある。また、本発明の競合的抗原抗体反応法によるNesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキットには、さらに、前記抗体の、Nesfatin-1との量依存的な結合力を示す標準検量曲線を作成するための標準ペプチドを含んでいても良い。このような標準ポリペプチドとして、Nesfatin-1を使用することができる。
【0038】
そのほか、本発明のキットには、付加的な要素として、試薬や生体試料を希釈するための緩衝液、陽性対照、陰性対照、標識を測定するための基質、反応容器、アッセイプロトコルを記載した指示書などを含めることができる。これらの要素は必要に応じて予め混合しておくこともできる。また、必要に応じて、保存剤や防腐剤を各要素に加えることができる。
【0039】
<Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体>
本発明は、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体に関する。「NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」とは、NesfatinおよびNucB1をほぼ同じ分子数を固相に固定して、そこに各抗体を抗原抗体反応させたときの結合量が、Nesfatinを固定化した固相への結合量に対して、NucB1を固定化した固相への結合量が1/5未満の値であるものをいう。
【0040】
本発明のNesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体は、特に高感度にNesfatinと抗原抗体反応をし、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない特定の抗体をいう。すなわち、本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよいが、中でも、受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマ(NAE1、NAF11)により産生されるモノクローナル抗体が特に好ましい。また、本発明は、かかるハイブリドーマにも関する。
【0041】
さらに別の態様としては、Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体が挙げられる。「Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」とは、前述の「NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない」という要件に加え、NesfatinおよびNesfatin-1をほぼ同じ分子数を固相に固定して、そこに各抗体を抗原抗体反応させたときの結合量が、Nesfatinを固定化した固相への結合量に対して、Nesfatin-1を固定化した固相への結合量が1/5未満の値であるものをいう。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。
【0042】
<Nesfatinの免疫学的検出方法>
前述の「Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体」、または「Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体」を用いることによって、Nesfatinを特異的に検出しうる免疫学的検出方法を構築できる。例えば、該Nesfatinの免疫学的検出方法は、(I)検体を、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない本発明の抗体に接触させる工程、(II)検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む。なお、抗原抗体反応を利用した免疫学的検出方法は、当技術分野において周知であり、本発明において、従来のいずれの方法をも採用することができる。
【0043】
そのような免疫学的検出方法の一つの形態は、Nesfatinと抗原抗体反応する抗体の量を測定することである。またその形態の中での一つとしては、前述の抗体の内、2つの抗体を用いる方法である。この場合、望ましく用いる抗体の組合せは、2種類の抗体のうち、少なくとも1つは、Nesfatinと抗原抗体反応するがNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を用いることである。
【0044】
この2種類の抗体を用いた免疫学的測定法においては、少なくとも1種類の抗体を固相に固定する方法と、固定しない方法が挙げられる。
【0045】
少なくとも1種類の抗体を固相に固定化する測定方法としては、(I)検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、(II)一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで(III)検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含む、サンドイッチ法による測定方法が例示される。かかるサンドイッチ法による測定方法における二次抗体の標識、測定手法等は、前述の<Nesfatin-1の免疫学的検出方法>におけるサンドイッチ法による測定方法と同様にして行うことができる。また、この測定方法によって検出できるNesfatinの最低濃度はその測定系の感度を規定する。つまりNesfatinを含まない対照検体における測定値に対して、有意に弁別できる測定値を示すNesfatinの標準ペプチドを含む標準検体におけるNesafatin濃度として、感度を表すことができる。本発明においては、30pMという低い濃度のNesfatinを含む標準検体においても、Nesfatinを含まない対照検体との弁別が可能であったことから、この測定系は30pM未満まで測定可能な検出感度を有するといえる。また、本発明の好ましい態様によれば、5pM未満の濃度のNesfatinを含む標準検体においても、Nesfatin-1を含まない対照検体との弁別が可能である。
【0046】
中でも、一次抗体として、前述のNesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない本発明の抗体(抗体No.4994、NAD15)を使用し、二次抗体として、受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマ(NAE1、NAF11)により産生される、Nesfatinを高感度に検出する抗体を使用することにより、検体中のNesfatinを高感度に検出することができる。またこの際、一次抗体として、ハイブリドーマ(NAD15)により産生される、Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を使用することにより、より高感度に検出することができる。
【0047】
2種類の抗体とも固相に固定しない方法としては、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)法やBRET (Bioluminescence Resonance Energy Transfer)法が挙げられる。
【0048】
また、別の測定方法の様式としては、検体にあらかじめ濃度を調整した標識化されたNesfatinの標準ペプチドを混和し、Nesfatinと抗原抗体反応する抗体に対する結合を競争的に反応させることによって行う、競合的抗原抗体反応による測定方法も挙げられる。競合的抗原抗体反応による測定方法に関しても、前述の<Nesfatin-1の免疫学的検出方法>における競合的抗原抗体反応による測定方法と同様にして行うことができる。
【0049】
本発明の免疫学的検出方法に適用できる検体は、Nesfatinの検出が望まれるいずれのものであってもよく、例えば、患者の血液、血清、髄液、尿、腹水、胸水、唾液、涙液、喀痰、バイオプシーで取得した組織等を挙げることができる。
【0050】
<Nesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキット>
本発明は、前述のNesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキットにも関する。例えば上記のサンドイッチ法による測定方法におけるキットには、前述の一次抗体が固定された固相、および前述の二次抗体が標識されたものが含まれる。また、本発明のNesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキットは、<Nesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキット>と同様、さらに標準ペプチドや、酵素の基質等を含んでいても良く、同様にして使用することができる。
【0051】
その他のキットの様態として、前述のFRET法やBRET法などの測定方法に用いられるキットには、蛍光物質または発光タンパク質で標識化された第一の抗体と、該蛍光物質または発光物質の発する特定の波長の光エネルギーを吸収しうる蛍光物質で標識化された第二の抗体が含まれる。また、本発明のFRET法またはBRET法によるNesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキットも、<Nesfatin-1の免疫学的検出方法に用いられるキット>と同様、さらに標準ペプチド等を含んでいても良い。
【0052】
さらに他のキットの様態としては、競合的抗原抗体反応による測定方法におけるキットが挙げられ、該キットには標識化されたNesfatin標準ペプチド、およびNesfatinと抗原抗体反応する抗体が含まれる。また、本発明の競合的抗原抗体反応法によるNesfatinの免疫学的検出方法に用いられるキットには、さらに標準ペプチドや酵素の基質等を含んでいても良い。
【0053】
<食欲亢進および/または体重増加亢進のための医薬組成物>
前述の本発明の抗体は、製薬学的に許容される担体および/または希釈剤とともに、医薬組成物とすることができる。該医薬組成物は、摂食や体重増加が抑制されていることが問題となる疾患や症状に対して使用することができる。摂食や体重増加が抑制されていることが問題となる疾患や症状としては、たとえば拒食症、機能性胃腸症(Functional dyspepsia)、または癌、炎症性疾患、下垂体・甲状腺・副腎などの機能低下、手術後もしくは過度のストレスなどによる摂食抑制および/もしくは体重増加抑制状態などがあげられる。この医薬組成物は種々の剤形に成形して、経口的または非経口的に投与することができる。非経口投与としては、例えば、静脈、皮下、筋肉、経皮、または直腸内への投与が挙げられる。
【0054】
本発明の抗体を有効成分として含有する製剤は、通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。製剤用の担体や賦形剤としては、固体又は液体いずれでも良く、例えば乳糖、ステアリン酸マグネシウム、スターチ、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコール等やその他常用のものが挙げられる。投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0055】
本発明の抗体は、疾患の種類、投与経路、患者の症状、年齢、性別、体重等により異なるが、通常成人1人あたり、1回につき0.1〜500mgの範囲で、好ましくは0.5〜20mgの範囲で投与することができる。しかし、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量よりも少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を超える投与量が必要な場合もある。
【0056】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0057】
実施例1
<組換え体によるリコンビナントNESFATIN-1の製造>
NESFATIN-1をより大量に調製するため、組換え体を用いてリコンビナントNESFATIN-1を製造した。具体的には、ヒトNESFATIN-1をコードする遺伝子を取得し、そのN末端にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)とヒスチジンタグの遺伝子を結合し、翻訳後のタンパク質においてヒスチジンタグのアミノ酸配列とヒトNESFATIN-1のアミノ酸配列の間にトロンビンによる切断部位(-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-)が介在する形となるように、発現ベクターを構築した。詳細は以下のとおりである。
【0058】
ヒトNesfatin-1の遺伝子の取得は、human Hypothalamus mRNA(Clontech社)からSuper Script III (Invitrogen社)を使用して合成したcDNAを鋳型として2回のPCR(Nested PCR)を行うことで実施した。
【0059】
1回目のPCRは以下のForward(hNucB2-F0191:配列番号20)およびReverse(hNucB2-R1549:配列番号21)を各100pMの濃度で、Pyrobest DNA polymerase(タカラバイオ(株)R005A)、添付の反応バッファーおよびdNTPを使用し、添付のプロトコールに従って反応を行った。PCR反応は90℃1分の反応の後、98℃10秒・68℃1分30秒の温度サイクルを30サイクル、その後68℃で2分間反応させる温度条件で行った。
Forward Primer (hNucB2-F0191):
5’- GGAGATAAAAATTATTTACCTGCCTGAACA -3’(配列番号20)
Reverse Primer (hNucB2-R1549):
5’- AAATATTTATTGAGCAGAGAAAAGGGAAGG -3(配列番号21)
【0060】
得られたPCR産物0.5μLを鋳型として用いて、2回目のPCRを実施した。以下のForward(hNucB2-F292[Sac2-Thr])およびReverse(hNucB2-R514[NotI])プライマー100pMを用いて、1回目のPCRと同様に、Pyrobest DNA polymeraseを用いてPCR反応を行った。PCR反応は90℃1分の反応に続いて、98℃10秒・60℃30秒・68℃1分の温度サイクルを20サイクル行った後、68℃で2分間反応させる温度条件で行った。
Forward Primer (hNucB2-F292[Sac2-Thr]):
5’-GGTTCCGCGGGTCTGGTTCCGCGTGGTTCTGTGCCTATTGATATAGACAAGACAAAAGT-3’
(配列番号22)
Reverse Primer (hNucB2-R514[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCTTACAGTTCATCAAGTTTTGTCCTCAC -3’(配列番号23)
【0061】
2回目のPCRを行ったPCR反応サンプルは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製した後、制限酵素SacIIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って、約300bpの長さに相当するバンドを切り出し、QIAEX-IIキット(QIAGEN社)によって精製した。精製された約300bpのPCR産物は、制限酵素SacIIおよびNotIで切断されたpET41a(+)プラスミドベクター(Novagen社)に、Quick DNA ligase kit(New England Bio Lab社)を用いてライゲーションを行った。ライゲーションを行ったベクターを大腸菌JM109株に導入し、得られた形質転換体2個について小スケールでのプラスミド抽出を行い、得られたプラスミドを用いて組み込まれたNESFATIN-1遺伝子の配列をベックマンコールター社の自動シーケンサー装置CEQ8000を用いて、CEQ DTCS Quick Start Kitを使用し、塩基配列の確認を行った。その結果、正しいNESFATIN-1の配列を持つ遺伝子が組み込まれている発現ベクターが得られたことを確認した。これをpET41a(+)GST-His-LVPRGS- hNSF1と命名した。
【0062】
得られたpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNSF1を大腸菌BL21(DE3)Codon Plus RIPLに導入して発現させることで、GST・ヒスチジンタグ・トロンビン切断配列・NESFATIN-1の融合タンパク質(GST-His-LVPRGS- hNSF1)の発現を行った。pET41a(+)GST-His-LVPRGS- hNSF1を大腸菌BL21(DE3)Codon Plus RIPLに導入してカナマイシンを含むLB培地で選択して得たクローンを、10mLのカナマイシンを含むLB倍地で37℃において培養した。培養は、その培養液の600nmの波長による吸光度が約1.0になった時点で停止した。その培養液3mLを100mLのカナマイシンを含むLB培地に植え継ぎ、さらに37℃で培養してその培養液の600 nmの波長による吸光度が0.8になった時点で100mMのIPTGを1mL加えてタンパク質の発現を誘導した。IPTG添加後、さらに37℃で3時間振盪培養を行った。その培養液を8000rpmで20分間(4℃)で遠心分離して、大腸菌の菌体を回収した。
【0063】
得られた大腸菌の菌体を超音波破砕し遠心分離することにより、GST-His-LVPRGS-hNSF1融合タンパク質を含む細胞ライセートを抽出して、ニッケルキレートカラム(Ni-NTA agarose)を用いて精製を行った。菌体を20mlの1倍濃度のComplete−EDTA free(ロッシュ・ダイアグノスティックス社)および0.5倍濃度のBug Buster(メルク社Novagen Cat.No.70584)を含むSonication Buffer(50mM KH2PO4, 50mM NaCl, 2mM DTT, pH7.5)に懸濁し、氷水中で10分間超音波による破砕を行った。超音波処理後のサンプルは15,000rpmで20分間遠心分離して、その上清を回収した。得られた上清10mlを、Lysis Buffer(50mM NaH2PO4, 300mM NaCl, 10mM imidazole, pH8.0)で平衡化した1mlのNi-NTA agaroseカラムにアプライし、さらに10mlのWash Buffer(50mM NaH2PO4, 300mM NaCl, 20mM imidazole, pH8.0)で2回洗浄を行った。洗浄後のカラムを2.5mlのElution Buffer(50mM NaH2PO4, 300mM NaCl, 250mM imidazole, pH8.0)で2回溶出を行い、溶出されたGST-His-LVPRGS- hNSF1融合タンパク質を含む画分を回収した。残りの菌体からの抽出上清も同様に処理して、GST-His-LVPRGS- hNSF1融合タンパク質を含む画分を回収した。
【0064】
GST-His-LVPRGS- hNSF1融合タンパク質からGSTおよびヒスチジンタグの部分を除去してさらに精製すると共に、炎症性物質として作用する大腸菌由来のリポポリサッカライド(LPS)を除去するため、GST-His-LVPRGS-hNSF1融合タンパク質がGSTレジンに結合した状態でのトロンビン処理および逆相クロマトグラフィーによる精製を行った。なお、これ以降の処理におけるBufferは、LPSを含まないことを確認したものを使用した。Ni-NTA agaroseカラムでの精製で得られたGST-His-LVPRGS-hNSF1融合タンパク質を含む画分7.2mlを1倍濃度のGST Bind/Wash Buffer(メルク社Novagen Cat.No.70571)で洗浄して、最終的に3mlGST Bind/Wash Bufferで懸濁したGSTレジン(メルク社Novagen Cat.No.70541)(7.2ml相当)に添加して、20℃で1時間弱く攪拌した。遠心分離によってレジンを回収した後、該レジンを36mlのGST Bind/Wash Bufferで2回洗浄した。洗浄後のレジンに20units/mlのトロンビンをPBSに溶解したもの3.6mlを加えて懸濁し、20℃で弱い攪拌状態において20時間反応を行った。反応後のレジンはポアサイズ0.22μmのフィルター付カップ(Millipore)に1.8mlずつ分注して、3,000rpmで2分間遠心して、ろ過されたトロンビン処理後サンプルを回収した。得られたトロンビン処理後サンプル450μlに対して50μlの酢酸を加え、C18逆相クロマトグラフィーのサンプルとした。逆相クロマトグラフィーは0.1%トリフルオロ酢酸存在下でアセトニトリルのグラジエントによる溶出法を用い、そのグラジエントは10%アセトニトリル:10分、10〜20%アセトニトリル勾配:60分、30〜50%アセトニトリル勾配:80分、50〜60%アセトニトリル勾配:5分に設定して行った。カラムから溶出されたタンパク質は、波長230nm、280nmの吸光度を測定することでモニタリングした。アセトニトリルのグラジエントで溶出を行った画分についてSDS-PAGE法およびウエスタンブロッティング法で調べたところ、NESFATIN-1はアセトニトリル濃度約40%の所で溶出されることが判明した。そのため、この画分を回収し、凍結乾燥を行った後、注射用蒸留水に再度溶解したものを用いて、吸光度によるタンパク質濃度およびエンドスペーシー(生化学工業)によるLPSの含有量の測定を行った。
【0065】
なお、マウスおよびラットのリコンビナントNESFATIN-1も同様にして調製した。使用した鋳型およびプライマーは以下の通りである。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例2
<組換え体によるリコンビナントNESFATIN関連タンパクの製造>
NESFATINおよびNESFATIN関連タンパク質(NESFATIN-N27K、NESFATIN-C21K)を大量に調製するため、組換え体を用いてリコンビナントNESFATIN、NESFATIN関連タンパク質を製造した。具体的には、ヒトNESFATINをコードする遺伝子を取得し、そのN末端にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)とヒスチジンタグの遺伝子を結合し、翻訳後のタンパク質においてヒスチジンタグのアミノ酸配列とヒトNESFATINのアミノ酸配列の間にトロンビンによる切断部位(-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-)が介在する形となるように、発現ベクターを構築した。詳細は以下のとおりである。
【0068】
実施例1の1回目のPCRにより得られたPCR産物0.5μlを鋳型として用い、以下のForward(hNucB2-F292[Sac2-Thr])およびReverse(hNucB2-R1461[NotI])プライマーを用いる以外は、実施例1の2回目のPCRと同一の条件で、同一の試薬を用いることによって行った。
Forward Primer (hNucB2-F292[Sac2-Thr]):
5’-GGTTCCGCGGGTCTGGTTCCGCGTGGTTCTGTGCCTATTGATATAGACAAGACAAAAGT-3’(配列番号22)
Reverse Primer (hNucB2-R1461[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCGACTTTAAATGTGTGGCTCAAACTTC -3’(配列番号24)
【0069】
2回目のPCRを行ったPCR反応サンプルは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製した後、制限酵素SacIIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って、約1.2Kbpの長さに相当するバンドを切り出し、QIAEX-IIキット(QIAGEN社)によって精製した。精製された約1.2KbpのPCR産物は、制限酵素SacIIおよびNotIで切断されたpET41a(+)プラスミドベクター(Novagen社)に、Quick DNA ligase kit(New England Bio Lab社)を用いてライゲーションを行った。ライゲーションを行ったベクターを大腸菌JM109株に導入し、得られた形質転換体2個について小スケールでのプラスミド抽出を行った。得られたプラスミドを用いて、組み込まれたヒトNESFATIN遺伝子の配列を、実施例1と同様にして塩基配列の確認を行い、正しいヒトNESFATINの配列を持つ遺伝子が組み込まれている発現ベクターが得られたことを確認した。これをpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNSF fullと命名した。
【0070】
得られたpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNSF fullを用いて、実施例1と同様にして、GST・ヒスチジンタグ・トロンビン切断配列・NESFATINの融合タンパク質(GST-His-LVPRGS-hNSF full)の発現、回収を行った。さらに実施例1と同様にして、GST-His-LVPRGS-hNSF full融合タンパク質から、GSTおよびヒスチジンタグの部分の除去、トロンビン処理ならびに逆相クロマトグラフィーによる精製により、NESFATINを得た。アセトニトリルのグラジエントは、実施例1と同じ設定とした。なお、NESFATIN中にも1箇所トロンビン切断配列が存在するため、トロンビン処理によりNESFATINは分断され得る。そこで、トロンビン処理により生じ得る、NESFATINのN末端側をNESFATIN-N27K、C末端側をNESFATIN-C21Kとした。また、アセトニトリルのグラジエントで溶出を行った画分についてSDS-PAGE法およびウエスタンブロッティング法で調べたところ、NESFATINは、アセトニトリル濃度約40%の所で溶出されることが判明した。さらにNESFATIN-N27K、NESFATIN-C21KはそれぞれNESFATINの後と前にピークが現れることが判明した。そのため、これらの画分を回収し、NESFATIN、NESFATIN-N27K、NESFATIN-C21Kを得た。
【0071】
なお、マウスおよびラットの、リコンビナントNESFATIN、およびNESFATIN関連タンパク質も同様にして調製した。ただし、マウスおよびラットにおいては、PCRは3回行った。3回目のPCRの条件は、2回目のPCRの条件と同じである。また、使用した鋳型およびプライマーは以下の通りである。
【0072】
【表2】
【0073】
実施例3
<組換え体によるリコンビナントNucB1-N77の製造>
NucB2と高いホモロジーを有するNucB1のNesfatin-1に相当する部分(NucB1-N77)を大量に調製するため、組換え体を用いてリコンビナントヒトNucB1-N77を製造した。マウスおよびラットのリコンビナントNucB1-N77も同様にして調製した。具体的には、ヒトNucB1-N77をコードする遺伝子を取得し、そのN末端にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)とヒスチジンタグの遺伝子を結合し、翻訳後のタンパク質においてヒスチジンタグのアミノ酸配列とヒトNucB1-N77のアミノ酸配列の間にトロンビンによる切断部位(-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-)が介在する形となるように、発現ベクターを構築した。詳細は以下のとおりである。
【0074】
ヒトNucB1-N77の遺伝子の取得は、human Hypothalamus mRNA(Clontech社)からSuper Script III (Invitrogen社)を使用して合成したcDNAを鋳型として2回のPCR(Nested PCR)を行うことで実施した。
【0075】
1回目のPCRは、以下のForward(hNucB1-F061:配列番号25)およびReverse(hNucB1-R1376[NotI]:配列番号26)を用いる以外は、実施例1と同一の条件で、同一の試薬を用いることによって行った。
Forward Primer (hNucB1-F061):
5’- TGCTGCTGCTGCTCCTGCTT-3’(配列番号25)
Reverse Primer (hNucB1-R1376[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCTCACAGATGCTGGGGCACCTCAACCTCA-3’(配列番号26)
【0076】
得られたPCR産物0.5μLを鋳型として用いて、以下のForward(hNucB1-F096[Sac2Thr])およびReverse(hNucB1-R303[NotI])プライマーを用いる以外は、実施例1の2回目のPCRと同一の条件で、同一の試薬を用いることによって、2回目のPCRを行った。
Forward Primer (hNucB1-F096[Sac2Thr]):
5’- GGTTCCGCGGGTCTGGTTCCGCGTGGTTCTGTCCCCCTGGAGCGAGGGGCGCCCAAC -3’
(配列番号27)
Reverse Primer (hNucB1-R303[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCTCAGAGCTCATCCAGCTTGGTGCGGAC-3’(配列番号28)
【0077】
2回目のPCRを行ったPCR反応サンプルは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製した後、制限酵素SacIIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って、約300bpの長さに相当するバンドを切り出し、QIAEX-IIキット(QIAGEN社)によって精製した。精製された約300bpのPCR産物は、制限酵素SacIIおよびNotIで切断されたpET41a(+)プラスミドベクター(Novagen社)に、Quick DNA ligase kit(New England Bio Lab社)を用いてライゲーションを行った。ライゲーションを行ったベクターを大腸菌JM109株に導入し、得られた形質転換体2個について小スケールでのプラスミド抽出を行った。得られたプラスミドを用いて、組み込まれたヒトNucB1-N77遺伝子の配列を、実施例1と同様にして塩基配列の確認を行い、正しいヒトNucB1-N77の配列を持つ遺伝子が組み込まれている発現ベクターが得られたことを確認した。これをpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNucB1-N77と命名した。
【0078】
得られたpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNucB1-N77を用いて、実施例1と同様にして、GST・ヒスチジンタグ・トロンビン切断配列・ヒトNucB1-N77の融合タンパク質(GST-His-LVPRGS-hNucB1-N77)の発現、回収を行った。さらに実施例1と同様にして、GST-His-LVPRGS-hNucB1-N77融合タンパク質からGSTおよびヒスチジンタグの部分の除去、トロンビン処理、ならびに逆相クロマトグラフィーによる精製を行った。なお、逆相クロマトグラフィーは、実施例1と同様0.1%トリフルオロ酢酸存在下でアセトニトリルのグラジエントによる溶出法を用いた。なお、アセトニトリルのグラジエントを、10%アセトニトリル:10分/10〜20%アセトニトリル勾配:60分/30〜40%アセトニトリル勾配:40分/40〜60%アセトニトリル勾配:5分に設定して行い、カラムからの溶出タンパク質は、波長280nmの吸光度を測定することでモニタリングした。アセトニトリルのグラジエントで溶出を行った画分についてSDS-PAGE法およびウエスタンブロッティング法で調べたところ、NucB1-N77はアセトニトリル濃度37%の所で溶出されることが判明した。そのため、この画分を回収し、NucB1-N77を得た。
【0079】
ヒト・マウス・ラット由来のNucB1-N77を、配列番号17〜19に示す。なお、リコンビナントNucB1-N77は、それぞれ、N末端にGly-Serが残存する構造となる。
【0080】
なお、マウスおよびラットのリコンビナントNucB1-N77も同様にして調製した。使用した鋳型およびプライマーは以下の通りである。
【0081】
【表3】
【0082】
実施例4
<組換え体によるリコンビナントNucB1の製造>
NucB2と高いホモロジーを有するNucB1を大量に調製するため、組換え体を用いてリコンビナントヒトNucB1を製造した。ラットおよびマウスのリコンビナントNucB1も同様にして調製した。具体的には、ヒトNucB1をコードする遺伝子を取得し、そのN末端にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)とヒスチジンタグの遺伝子を結合し、翻訳後のタンパク質においてヒスチジンタグのアミノ酸配列とヒトNucB1のアミノ酸配列の間にトロンビンによる切断部位(-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-)が介在する形となるように、発現ベクターを構築した。詳細は以下のとおりである。
【0083】
ヒトNucB1の遺伝子の取得は、human Hypothalamus mRNA(Clontech社)からSuper Script III (Invitrogen社)を使用して合成したcDNAを鋳型として2回のPCR(Nested PCR)を行うことで実施した。
【0084】
実施例3の1回目のPCRにより得られたPCR産物0.5μLを鋳型として用い、以下のForward(hNucB1-F096[Sac2Thr])およびReverse(hNucB1-R1376[NotI])プライマーを用いる以外は、実施例1の2回目のPCRと同一の条件で、同一の試薬を用いることによって行った。
Forward Primer (hNucB1-F096[Sac2Thr]):
5’-GGTTCCGCGGGTCTGGTTCCGCGTGGTTCTGTCCCCCTGGAGCGAGGGGCGCCCAAC -3’
(配列番号27)
Reverse Primer (hNucB1-R1376[NotI]):
5’- GGTTGCGGCCGCTCACAGATGCTGGGGCACCTCAACCTCA-3’(配列番号26)
【0085】
2回目のPCRを行ったPCR反応サンプルは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製した後、制限酵素SacIIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って、約1.2Kbpの長さに相当するバンドを切り出し、QIAEX-IIキット(QIAGEN社)によって精製した。精製された約1.2KbpのPCR産物は、制限酵素SacIIおよびNotIで切断されたpET41a(+)プラスミドベクター(Novagen社)に、Quick DNA ligase kit(New England Bio Lab社)を用いてライゲーションを行った。ライゲーションを行ったベクターを大腸菌JM109株に導入し、得られた形質転換体2個について小スケールでのプラスミド抽出を行った。得られたプラスミドを用いて、組み込まれたヒトNucB1遺伝子の配列を、実施例1と同様にして塩基配列の確認を行い、正しいヒトNucB1の配列を持つ遺伝子が組み込まれている発現ベクターが得られたことを確認した。これをpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNucB1 fullと命名した。
【0086】
得られたpET41a(+)GST-His-LVPRGS-hNucB1 fullを用いて、実施例1と同様にして、GST・ヒスチジンタグ・トロンビン切断配列・ヒトNucB1の融合タンパク質(GST-His-LVPRGS-hNucB1 full)の発現、回収を行った。さらに実施例1と同様にして、GST-His-LVPRGS-hNucB1 full融合タンパク質からGSTおよびヒスチジンタグの部分の除去、トロンビン処理、ならびに逆相クロマトグラフィーによる精製により、hNucB1 fullを得た。アセトニトリルのグラジエントは、実施例1と同じ設定とした。なお、アセトニトリルのグラジエントで溶出を行った画分についてSDS-PAGE法およびウエスタンブロッティング法で調べたところ、hNucB1 fullはアセトニトリル濃度約45%の所で溶出されることが判明した。そのため、この画分を回収し、hNucB1 fullを得た。
【0087】
なお、マウスおよびラットのリコンビナントNucB1も同様にして調製した。使用した鋳型およびプライマーは以下の通りである。
【0088】
【表4】
【0089】
実施例5
<NESFATIN部分ペプチドに対するウサギポリクローナル抗体の作製>
(1)抗体の作製
NESFATINに対する抗体の作製のために、抗原として、ヒトNESFATINポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号9)のN末端およびC末端、ならびにヒトNESFATIN-1のC末端および内部アミノ酸配列部分の4種の合成ペプチド(配列番号1〜4:株式会社SIGMA genosysで合成)を用いた(以下、該ペプチドを総称してNAPペプチドとする)。
Nesfatin-1 C末端ペプチド(NSF1-C18):N末-GCSKELDLVSHHVRTKLDEL-C末(配列番号1)
Nesfatin-1 Middleペプチド(NSF1-M15):N末-PDTGLYYDEYLKQVIC-C末(配列番号2)
Nesfatin C末端ペプチド(NSF-C18):N末-GCQGIPPSGPAGELKFEPHI-C末(配列番号3)
Nesfatin N末端ペプチド(NSF-N19):N末-VPIDIDKTKVQNIHPVESAC-C末(配列番号4)
【0090】
図1に抗原ペプチド部分を図示する。
【0091】
該合成NAPペプチドはPIERCE社Imject(登録商標) Maleimide Activated Mariculture Keyhole Limpet Hemocyaninを用いて添付のプロトコールに従って、ペプチドをKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)にコンジュゲートした。得られたコンジュゲートはウサギ1羽に対して0.2mgを1回分の免疫に用いた。免疫はコンジュゲート溶液0.25ml(コンジュゲート濃度1mg/ml)と等量のフロイントのコンプリートアジュバント H-37 Ra (和光純薬−Difco社 Cat. No.528-00031)を混合し、毛剃りしたニュージーランドホワイト系のウサギ(今井実験動物試験場より購入)の背部に、50μlづつ8箇所に皮内注射することで行った。同様の免疫を2週間おきにさらに4回行った後、最後の免疫から1週間後に血液を一部採取して、その血清中の抗体価を免疫したペプチドコンジュゲートを用いたELISA法で確認し、その翌日に動物を屠殺して全血を採取した。得られた血液から血清を作製し、その血清からDEAESepharoseFF(Amersham Bioscience社 Cat. No.17-0709-10)を用いて定法によってウサギIgGを精製した。精製されたウサギIgGは、1mgのNAPペプチドを用いてSulfoLink kit(PIERCE社 Cat. No.44895)により作製したペプチド固定化カラムを用いて、該キット添付のプロトコールに従ってアフィニティー精製した。免疫原としてhNSF−C18、hNSF−N19、hNSF1−C18、hNSF1−M15を使用することによって、それぞれ、抗体No.4993および4994、抗体No.4995および4996、抗体No.4997および4998、抗体No.5036および5037が作製された。
【0092】
(2)抗原ELISAによる抗体の反応性評価
取得した抗血清あるいは抗原アフィニティー精製抗体を用いて、抗原ELISAにより、各抗体の、ヒトNesfatin-1 (human NSF1)、ヒトNesfatin (human NSF full)、ヒトNucB1-N77、ヒトNucB1、ラットNesfatin-1(rat NSF1)、ラットNesfatin (rat NSF full)、ラットNucB1-N77、ラットNucB1 (rat NucB1 full)に対する反応性評価を行った。
【0093】
96ウェルELISAプレート(MaxiSorp:Nunc社)に、PBS(pH7)で1μg/mlに希釈したGST融合組換えヒトNesfatin-1、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77、ヒトNucB1、ラットNesfatin-1、ラットNesfatin、ラットNucB1-N77、ラットNucB1を、それぞれ50μl加え、4℃で一晩反応させた。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで37℃で1時間ブロッキングを行った。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、抗血清希釈液(抗血清濃度を400倍希釈から2倍ずつ段階希釈して作製した希釈系列)、または抗原アフィニティー精製抗体の希釈液(3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで、抗体濃度を1μg/mLから2倍ずつ段階希釈して作製した希釈系列)を50μl加え、室温で1時間反応させた。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、3%BSAを含むPBSで2000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(BioSource社)を50μl加え、室温で1時間反応させた。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、0.1Mのジエタノールアミン(pH10.0)に溶かした1mg/mlPNPP(p−Nitrophenylphosphate、和光純薬 Cat.No.149−02342)溶液を100μL加え、室温で1時間反応させ、405nmにおける吸光度を測定した。
【0094】
各抗体の各ヒト組換えタンパク質に対する反応性評価結果を表5に示す。反応性は、4段階に分けて評価した。
◎(Excellent):OD405nmが2.4以上
○(Good) :OD405nmが1.0以上2.4未満
△(Fair) :OD405nmが0.4以上1.0未満
×(Poor) :OD405nmが0.4未満
【0095】
【表5】
【0096】
各抗体の各ラット組換えタンパク質に対する反応性評価結果を表6に示す。反応性は、4段階に分けて評価した。
◎(Excellent):OD405nmが1.5以上
○(Good) :OD405nmが1.0以上1.5未満
△(Fair) :OD405nmが0.2以上1.0未満
×(Poor) :OD405nmが0.2未満
【0097】
【表6】
【0098】
(3)ウエスタンブロティングによる抗体の反応性の確認
組換えNesfatin-1またはNesfatinを使用して取得した抗Nesfatinポリクローナル抗体の、ヒトおよびラットの組換えNesfatin-1またはNesfatinに対する反応性を確認した。各組換えタンパク質水溶液をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)用の5%のβ-mercaptoethanolを含むLaemmliサンプルバッファー(BIO-RAD社 Cat. No.161-0737)と等量混合してサンプル調製し、5pmole/laneでポリアクリルアミドゲル(BIO-RAD社 レディーゲル10〜20% Cat. No.161-J390V)でTris-glycine/SDSバッファー(25mM Tris、192mM glycine、0.1% SDS、pH8.3)を用いて100Vで1時間電気泳動し、ニトロセルロース膜に転写した。この膜を3%ゼラチン/TBSで室温で1時間ブロッキングし、TBS−0.05%Tweenで3回、TBSで1回洗浄した。その後、抗Nesfatinポリクローナル抗体1μg/mlを含む1%ゼラチン/TBS溶液中、室温で終夜反応させた。翌日、TBS−0.05%Tweenで3回、TBSで1回洗浄し、約1μg/mlの濃度で1%ゼラチン/TBS溶液に希釈した抗ウサギIgGヤギポリクローナル抗体パーオキシダーゼコンジュゲート(Cappel社 Cat. No.674371)を室温1時間反応させた。次にTBS−0.05%Tweenで3回、TBSで2回洗浄し、HRP発色キット(BIO-RAD社 Cat. No.170-64631)で5分間、室温にて発色させてバンドを検出した。その結果、組換えNesfatinまたはNesfatin-1に対する反応性を確認した。
【0099】
実施例6
<組換えNESFATIN、またはNesfatin-1に対するウサギポリクローナル抗体の作製>
(1)抗組換えNESFATIN抗体の取得
実施例1、2で調製した組換えNesfatin、Nesfatin-1、およびNesfatin-C21K(各40μg/1回)をフロインドのコンプリートアジュバント(BACTO社製、1:1)とともに、2週間毎にそれぞれ2羽の家兎に皮内投与した(抗原組換えタンパク質領域を図1に図示する)。皮内投与を4回行った後、全採血をして抗血清を得た。この血清から常法に従い、プロテインAセファロース4Bカラム(Pharmacia社製)にてIgGを精製し、精製されたウサギIgGは、1mgの組換えNesfatinまたはNesfatin-1を用いてSulfoLink kit(PIERCE社 Cat. No.44895)により作製した組換えNesfatinあるいはNesfatin-1固定化カラムを用いて、該キット添付のプロトコールに従ってアフィニティー精製した。このようにして抗Nesfatinポリクローナル抗体(anti-Nesfatin PAb)、抗Nesfatin-1ポリクローナル抗体(anti-Nesfatin-1 PAb)を得た。具体的には免疫原としてrNSF1、rNSF full、rNSF C21Kを使用することによって、それぞれ、抗体No.6151および6152、抗体No.6153および6154、抗体No.6155および6156が作製された。
【0100】
(2)抗原ELISAによる抗体の反応性評価
取得した抗原アフィニティー精製抗体を用いて、抗原ELISAにより、各抗体の、ヒトNesfatin-1 (human NSF1)、ヒトNesfatin (human NSF full)、ヒトNucB1-N77、ヒトNucB1 (human NucB1-full)、ラットNesfatin-1(rat NSF1)、ラットNesfatin (rat NSF full)、ラットNucB1-N77、ラットNucB1 (rat NucB1-full)に対する反応性評価を、実施例5(2)と同様にして行った。抗原アフィニティー精製抗体は、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで、抗体濃度を1μg/mLから2倍ずつ段階希釈して希釈系列を作製して、反応性を評価した。
【0101】
各抗体の各組換えタンパク質に対する反応性評価結果を表7に示す。反応性は、4段階に分けて評価した。
◎(Excellent):OD405nmが2.0以上
○(Good) :OD405nmが1.0以上2.0未満
△(Fair) :OD405nmが0.15以上1.0未満
×(Poor) :OD405nmが0.15未満
【0102】
【表7】
【0103】
(3)ウエスタンブロティングによる反応性の確認
組換えNesfatin-1またはNesfatinを使用して取得した抗Nesfatinポリクローナル抗体の反応性を、実施例5(3)と同様にして確認した。使用する抗体を実施例6(1)で取得した抗体を使用する以外は、実施例5(3)と同様にして行った。その結果、組換えNesfatinまたはNesfatin-1に対する反応性を確認した。
【0104】
実施例7
<Nesfatinに対するウサギポリクローナル抗体を使用したNesfatin測定系の作製>
(1)Nesfatin測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例6で得られた抗原アフィニティー精製抗組換えヒトNesfatin-1ウサギポリクローナル抗体(抗体No.4994、6151、6152、6153)(IgG)のビオチン化を、以下のように行った。1〜3mg/mlのIgG溶液(PBS溶液)に対し200倍のモル当量のビオチン化試薬を加え、室温で1時間反応した。ビオチン化試薬はSulfo−NHS−LC−Biotin(PIERCE社製#21335:分子量556)をジメチルホルムアミドで50mMに溶解して使用した。その後、終濃度10mMになるようにモノエタノールアミン、(pH8.0)を加え、さらに室温で1時間反応した。この反応液を、SephadxG−25ゲル濾過カラムにアプライし、PBS(−)で流出させてビオチン化IgGを回収した。さらに、終濃度1%のBSAと終濃度0.1%のNaN3を加えて保存した。
【0105】
(B)抗体固定化プレートの調製
96ウェルプレート(MaxiSorp:Nunc社)に、実施例5で作製した抗体(抗原アフィニティー精製抗Nesfatin C末端ペプチドウサギポリクローナル抗体(抗体No.4994))を2μg/ml含有するPBS溶液を50μlずつ各ウェルに加え、4℃の温度で一晩インキュベートした。これをTBS−0.05%Tween20で洗浄し、3%牛血清アルブミン(BSA)のPBS溶液を250μl各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートして抗体No.4994が固定化された抗体固定化プレートを得た。
【0106】
(C)測定系の構築
実施例7(1)(B)で調製した抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、実施例7(1)(A)で作製したビオチン化抗体を使用する測定系を検討した。
上記実施例7(1)(B)で調製した抗NESFATINIgG固定化プレートに、精製した組換えヒトNesfatin(F−NAP)(標準物質)を0〜2nM(=0〜100pg/mL)の範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液(検体希釈液)50μLを加え室温で1時間インキュベートし、TBS−0.05%Tween20で3回洗浄後、上記実施例7(1)(A)で作製したビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液を50μl添加し、室温で1時間インキュベートした。次にTBS−0.05%Tween20で洗浄した後、50μl/ウェルでストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼ(BioSource社製、#SNN1004)を1万倍希釈した3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液を加え、室温で1時間インキュベートした。その後TBS−0.05%Tween20で洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩、0.02%H2O2 2.5mMを含有する0.1M リン酸/クエン酸緩衝液(pH4.3)(Bio-Rad 社、TMB Peroxidase EIA Substrate Kit)50μlずつ各ウェルに加え、室温で5分間反応させた後、反応停止剤として1M 硫酸水溶液を50μlずつ加えて酵素反応を停止させた。次いで、分光光度計を用いて450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、これを標準物質濃度0〜2nM(=0〜100pg/mL)に対応してブロットした。結果を図2に示す。
【0107】
(2)Nesfatin測定系の種差に対する測定感度評価
実施例7(1)(B)で調製した抗NesfatinIgG(抗体No.4994)固定化プレートと、実施例7(1)(A)で作製したビオチン化抗体(抗体No.6151、6152)を使用して、ラットまたはマウスNesfatinとの交差反応性を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin(F−NAP)(標準物質)、組換えラットNesfatin、またはマウスNesfatinは、0〜2nM(=0〜100pg/mL)の範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化抗体は、ビオチン化抗体を2μg/ml含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各種Nesfatin濃度0〜2nM(=0〜100pg/mL)の検体について、分光光度計を用いて450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、これをブロットした。結果を図3および図4に示す。
その結果、固定化に使用する抗体:抗体NO.4994;検出に使用するビオチン化抗体:抗体No.6152の組合せにおいて種差が少なく、感度良く各種Nesfatinを測定できることがわかった。一方、固定化に使用する抗体:抗体No.4994、検出に使用するビオチン化抗体:抗体No.6151の組合せはヒトに対する反応性が高く、ヒトNesfatin測定に適していることがわかった。
【0108】
実施例8
<Nesfatin-1に対するウサギポリクローナル抗体を使用したNesfatin-1測定系の作製>
(1)Nesfatin-1測定系の構築−1
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例5または6で得られた抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1ポリクローナル抗体(抗体No.4998、抗体No.6151、または抗体No.6152)(IgG)ののビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0109】
(B)抗体固定化プレートの調製
実施例6で作製した抗体(抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1 C末端ペプチドウサギポリクローナル抗体(抗体No.6151または抗体No.6152))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.6151または抗体No.6152が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0110】
(C)測定系の構築検討―1
上記実施例8(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)固定化プレートと、上記実施例8(1)(A)で作製したビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系を検討した。
【0111】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または組換えラットNesfatin-1を0〜10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜10nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、これをブロットした。結果を図5および6に示す。
この結果から、抗体No.6151はラットNesfatin-1に対する交差反応性が低く、抗体No.6152はラットNesfatin-1に対する交差反応性が高いことがわかった。また、これにより固相抗体としては抗体No.6152が適していることがわかった。
【0112】
(D)測定系構築検討―2
実施例8(1)(C)の結果から、上記実施例8(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.6152)固定化プレートと、上記実施例8(1)(A)で作製したビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用して、ヒトNucB1-N77との交差反応性を検討した。
【0113】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(HuNAP1)(標準物質)、組換えヒトNesfatin(HuF-NAP)、または組換えヒトNucB1-N77(GST融合タンパク)を0−20nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜20nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図7に示す。
この結果から、固相抗体No.6152、検出抗体ビオチン化抗体No.6152または抗体No.6151を使用した系は、いずれもNucB1-N77に対しての交差反応性は観察されなかったが、Nesfatinに若干交差反応性を示し、Nesfatin-1特異的測定系としては使用できないことが判明した。
【0114】
(2)Nesfatin-1測定系の構築−2
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例7(1)(A)と同様にして、抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1ポリクローナル抗体(抗体No.6151、または抗体No.6152)(IgG)のビオチン化を行った。
【0115】
(B)抗体固定化プレートの調製
実施例5で作製した抗体(抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1 C末端ペプチドウサギポリクローナル抗体(抗体No.4998))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4998が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0116】
(C)測定系の構築
上記実施例8(2)(B)で調製した抗Nesfatin-1 IgG(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例8(2)(A)で作製したビオチン化IgG(抗体No.6151または抗体No.6152)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または組換えヒトNucB1-N77を0〜10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列、あるいは組換えヒトNesfatinを0〜100nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化抗体は、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液賭して使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜100nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図8に示す。
この結果から、固相抗体No.4998、検出抗体ビオチン化抗体No.6151または抗体No.6152を使用した系は、NucB1-N77やNesfatinに対する交差反応性はほとんど無く、Nesfatin-1特異的測定系となりうることが示された。
【0117】
(3)Nesfatin-1測定系(4998 &B-6152系)の種差に対する測定感度評価およびNesfatinに対する交差反応性評価
これまでの検討で、抗体No.6152はラットに対する交差反応性が高かったため、抗Nesfatin-1IgG(抗体No.4998)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体No.6152)を使用して、ラットNesfatin-1、およびマウスNesfatin-1に対する交差反応性を検討した。
【0118】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、組換えラットNesfatin-1、マウスNesfatin-1、組換えヒトNesfatin、組換えラットNesfatin、またはマウスNesfatinを0−2nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgG(B−6152)は、ビオチン化抗体を2μg/ml含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各種Nesfatin濃度0〜2nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図9に示す。
【0119】
その結果、固定化に使用する抗体:抗体No.4998;検出に使用するビオチン化抗体:抗体No.6152の組合せを使用することで、ヒトNesfatin-1だけでなくマウス、ラットNesfatin-1に関しても感度良く測定できることがわかった。またヒト、マウス、ラットNesfatinに対する交差反応性もほとんど無いことがわかった。これらのことから、固定化抗体:抗体No.4998;検出用ビオチン化抗体:抗体No.6152の組合せの測定系がマウス、ラットNesfatin-1特異的測定系として使用できる可能性が示された。
【0120】
一方、固定化抗体:抗体No.4998;検出用ビオチン化抗体:抗体No.6151の組合せの測定系に関しては、実施例8(2)(C)の結果から、ヒトNesfatin-1特異的測定系として使用できると判断された。
【0121】
実施例9
<NESFATIN-1に対するマウスモノクローナル抗体作製>
(1)組換えNesfatinによるマウスの免疫
実施例1、2で調製した組換えhuman Nesfatin-1、組換えhuman Nesfatin、Nesfatin−N27K、またはNesfatin−C21Kを10〜20μg/回/headでフロインドのコンプリートアジュバント(BACTO社製、1:1)とともに、2週間毎にBalb/cマウス(7週齢、オス)に腹腔内投与した。これを4回行った後、5回目は細胞融合の3日前に組換えhuman Nesfatin-1、組換えhuman Nesfatin、Nesfatin−N27K、またはNesfatin−C21KのPBS溶液を50μg/headで静脈内投与した。
【0122】
マウス血清中の抗Nesfatin-1抗体価測定に関しては、マウスの尾静脈より採血し、37℃で30分間インキュベートした後、3000rpmで10分間遠心して血清を回収し、マウス血清中の抗Nesfatin-1抗体価を抗原ELISAにより測定した。以下にその方法を述べる。
【0123】
96ウェルELISAプレート(Falcon3912、Becton Dickinson社)にPBSで1μg/mlに希釈した組換えhuman Nesfatin-1を50μl加え、4℃で一晩反応させた。0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄後、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで室温で1時間処理した。0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄後、検体を50μl加え、室温で1時間反応させた。0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄後、3%BSAを含むPBSで2000倍に希釈したアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG抗体(BIOSOURCE社、AMI3705)を50μL加え、室温で1時間反応させた。0.05%Tween20を含むTBSで3回洗浄後、PNPP(p−Nitrophenylphosphate、和光純薬)の0.1M Diethanolamine Buffer,pH10.0溶液を室温で1時間反応させ、405nmにおける吸光度を測定した。
【0124】
(2)細胞融合によるハイブリドーマの作製
細胞融合の直前にマウスを殺し、脾細胞をPBS中でホモジナイズし、残渣をナイロンメッシュで濾過後、PBSで遠心洗浄を1回行った。この脾細胞とマウスミエローマ(P3X63Ag8U.1)とを常法(Kohler, Milstein; Nature, 256, 495−497 (1975))に従って細胞融合した。
【0125】
すなわち、脾細胞5×107個とマウスミエローマ細胞P3×63Ag8U.1(P3U1)5×106個をRPMI 1640培地で洗浄後、1500rpmで5分間遠心し、細胞ペレットにした。35%ポリエチレングリコール液(RPMI 1640培地5.75ml+ポリエチレングリコール3.5ml+ジメチルスルホキシド0.75ml)を2分間で1ml加え、細胞をゆるやかに浮遊させた。RPMI 1640培地を2分間で1ml加えた後、さらに2分間で2ml加えた。次にGIT−HAT培地(95μM ヒポキサンチン、0.4μM アミノプテリン、1.6μM チミジン、および5%FCSを含むGIT培地)を2分間で4ml加えた後、さらに2分間で8ml加えた。37℃で30分間インキュベート後、各ウェルあたり約104 個のマウス腹腔浸出細胞を播きこんだ96ウェル平底プレート1枚に分注し、5%CO2存在下で37℃で培養した。
【0126】
1週間後にGIT−HT培地(GIT−HAT培地よりアミノプテリンを除いた培地)で培地を半量交換し、さらに5%CO2存在下、37℃で約1週間培養することにより、各ウェルあたり数個のハイブリドーマのコロニーが得られた。
【0127】
(3)ハイブリドーマのスクリーニング
2週間後に組換えhuman Nesfatin-1または組換えhuman Nesfatinをコートしたプレートによるスクリーニングを行った。組換えhuman Nesfatin-1または組換えhuman NesfatinのPBS溶液(1μg/ml)を、96ウェルプレート(Falcon社、PVC製)に各ウェル当り50μlづつ分注し、4℃で一晩放置した。洗浄後、3%BSA/PBSを各ウェル当り200μl加えて37℃で1時間ブロッキングした。再度洗浄後、各ウェル当り50μlの培養上清を加え、室温で1時間放置し、0.05%Tween/PBSで3回洗浄した。
【0128】
次に、3%BSA/PBSで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG−アルカリホスファターゼコンジュゲートをウェル当り50μl加え、室温で1時間放置した。再度洗浄し、0.25mMの塩化マグネシウムを含む1M ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)に溶解したp−ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム塩(和光純薬)の1mg/ml溶液をウェル当り100μl加え、室温で30分間反応させた。この405nmにおける吸光度を、96ウェルプレート用のELISAリーダー測定器(Molecular Davice社 Vmax)を用いて調べ、組換えhuman Nesfatin-1あるいは組換えhuman Nesfatinと結合するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを選択した。
【0129】
(4)ハイブリドーマのクローニング
このように選択したハイブリドーマについて、限界希釈法によるクローニングを2回行い、株化した。具体的にはマウス腹腔浸出細胞をHT培地中106個/mlの割合に調製したものを各ウェルに分注し、これにウェル当り0.5個の割合でHT培地に懸濁したハイブリドーマ細胞を播き込んだ。5%CO2インキュベーター内で、37℃で2週間培養し、その培養上清について上記ELISA法でスクリーニングし、単一コロニーをピックアップすることで株化を行った。
【0130】
最終的に、human Nesfatin-1を免疫して得られたハイブリドーマからのみ、組換えhuman Nesfatin-1または組換えhuman Nesfatinに反応性を有するIgGを産生するハイブリドーマをクローニングすることができた。
【0131】
実施例10
<NESFATIN-1に対するマウスモノクローナル抗体の反応性評価>
ハイブリドーマ産生抗体の各種抗原(ヒトNesfatin-1、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77、ラットNesfatin-1、またはラットNesfatin)に対する反応性を評価するため、実施例1、2、3または4で作製された組換えGST融合タンパク質をプレートに固定して反応性を抗原ELISA法にて評価した。
【0132】
ヒトNesfatin-1、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77、ラットNesfatin-1、またはラットNesfatinのGST融合タンパクのPBS溶液(1μg/mL)を96ウェルプレート(Falcon社、PVC製)に各ウェル当り50μLづつ分注し、4℃で一晩放置した。洗浄後、3%BSA/PBSを各ウェル当り200μL加えて37℃で1時間ブロッキングした。再度洗浄後、各ウェル当り50μLのハイブリドーマ培養上清を加え、室温で1時間放置し、0.05%Tween/PBSで3回洗浄した。
【0133】
次に、3%BSAを含むPBSで1000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG−ペルオキシダーゼをウェル当り50μL加え、室温で1時間放置した。再度洗浄し、0.25mMの塩化マグネシウムを含む1M ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)に溶解したp−ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム塩(和光純薬)の1mg/mL溶液をウェル当り100μL加え、室温で30分間反応させた。この405nmにおける吸光度を、96ウェルプレート用のELISAリーダー測定器(Molecular Davice社 Vmax)を用いて調べ、組換えNesfatin-1と特異的に結合するモノクローナルIgG抗体を分泌するハイブリドーマ21クローンを選択した。Igタイピングは、PIARCE社のIsotyping Kitを使用して実施した。ハイブリドーマ21クローンのうち9クローンについて、各モノクローナル抗体の各組換えタンパク質に対する反応性評価結果を表8に示す。反応性は、3段階に分けて評価した。
◎(Excellent):OD405nmが0.3以上
○(Good) :OD405nmが0.06以上〜0.3未満
×(Poor) :OD405nmが0.06未満
【0134】
【表8】
【0135】
これらの結果から、抗Nesfatin-1抗体を産生するハイブリドーマ21クローンのうち、NAP37、NAP39、NAP40−2の3クローンを選択して、大量培養し、培養上清を回収した。培養上清中の抗体をプロテインGカラムで常法により精製した。
【0136】
実施例11
<Nesfatin-1に対するマウスモノクローナル抗体を使用したNesfatin-1測定系の作製>
(1)Nesfatin-1測定系の構成
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例5または6で得られた抗Nesfatin、Nesfatin-1ウサギポリクローナル抗体(抗体No.4998、抗体No.5036、抗体No.5037、抗体No.6151、抗体No.6152)のIgGのビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0137】
(B)抗体固定化プレートの調製
実施例10で得られた抗体(抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2, NAP37, NAP39))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、NAP40-2、NAP37、またはNAP39が固定化された抗体固定化プレートを得た。
【0138】
(C)測定系の構築−(1)
上記実施例11(1)(B)で調製した抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2, NAP37, NAP39)固定化プレートと、上記実施例11(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.6151、ビオチン化抗体No.6152)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)を0−10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0−10nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図10および11に示す。
その結果、NAP40-2固定プレートが最も感度良くヒトNesfatin-1を測定できることがわかった。NAP40-2については、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した(受領番号FERM ABP−10884 受領日 2007年7月27日)。
【0139】
(C)測定系の構築−(2)
上記実施例11(1)(B)で調製した抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、実施例11(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化抗体No.6151、ビオチン化抗体No.6152、ビオチン化抗体No.4998、ビオチン化抗体No.5036、またはビオチン化抗体No.5037)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)を0〜10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜10nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図12および図13に示す。
その結果、ビオチン化抗体No.4998が最も感度良くヒトNesfatin-1を測定できることがわかった。
【0140】
(2)測定系の種差に対する測定感度評価
上記実施例11(1)で検出感度の最も良かった測定系(抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化抗体No.4998を使用する系)を使用して、ラットNesfatin-1との交差反応性を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、組換えラットNesfatin-1(標準物質)を0〜100nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜100nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図14に示す。
【0141】
(3)測定系のNesfatinに対する交差反応性評価
上記実施例11(1)でNesfatin-1の検出感度の最も良かった測定系(抗組換えヒトNesfatin-1マウスモノクローナル抗体(NAP40-2)固定化プレートと、ビオチン化抗体No.4998を使用する系)を使用して、Nesfatin(Full分子)との交差反応性を検討した。
【0142】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、組換えラットNesfatin-1(標準物質)、または組換えマウスNesfatin-1(標準物質)を0〜50nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。また、交差反応性を検証するための検体として、精製した組換えヒトNesfatin(標準物質)、組換えラットNesfatin(標準物質)、または組換えマウスNesfatin(標準物質)を0〜25nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈液を作製使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜50nMの検体ついて、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図15に示す。
結果から、NAP40−2抗体固定およびビオチン化抗体No.4998を用いる系では、ラット、マウスのNesfatinに対する反応性は検出されず、ラット、マウスNesfatin-1特異的に測定できることがわかった。また、ヒトNesfatinに対しては、25nMで若干反応性が観察されるものの1000倍近い感度でヒトNesfatin-1を検出できるので、それ以下の比でNesfatin-1とNesfatinが存在するなら問題にならないと判断された。
【0143】
実施例12
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体作製>
(1)Nesfatin部分ペプチドによるマウスの免疫
実施例5で作製したNesfatin部分ペプチド(配列番号1〜4)を10〜20μg/回/headをフロインドのコンプリートアジュバント(BACTO社製、1:1)とともに、2週間毎にBalb/cマウス(7週齢、オス)に腹腔内投与した。これを4回行った後、5回目は細胞融合の3日前に組換えhuman Nesfatin-1あるいは組換えhuman Nesfatin溶液50μgを静脈内投与した。
【0144】
マウスの尾静脈より採血し、37℃で30分間インキュベートした後、3000rpmで10分間遠心して血清を回収し、マウス血清中の抗Nesfatin抗体価をELISAにより測定した。得られた血清を用い、およびアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG抗体として、ZYMED社製のものに変える以外は、実施例9(1)と同様にして行った。
【0145】
(2)細胞融合によるハイブリドーマの作製
実施例11(1)で免疫されたマウスの脾細胞を用いて、実施例9(2)と同様にしてハイブリドーマを作製した。
【0146】
(3)ハイブリドーマのスクリーニング
得られたハイブリドーマに対して、実施例9(2)と同様のスクリーニングを行った。なお、3%BSA/PBSで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG−アルカリホスファターゼコンジュゲートの代わりに、3%BSAおよび0.2%スキムミルクを含むPBSで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG−アルカリホスファターゼコンジュゲート(Tago社)を使用した。結果を表9に示す。表中、D、E、FおよびGは、それぞれ、D:NesfatinのC末端ペプチド(NSF-C18)、E:NesfatinのN末端ペプチド(NSF-N19)、F:Nesfatin-1のC末端ペプチド(NSF1-C18)、またはG:Nesfatin-1の中央部分のペプチド(NSF1-M15)による免疫マウスより得られたハイブリドーマのクローンを表す。また、表中の数値は、405nmにおける吸光度を表す。
【0147】
【表9】
【0148】
(4)ハイブリドーマのクローニング
実施例9(4)と同様にして、選択したハイブリドーマについてクローニングを行った。
【0149】
(5)ハイブリドーマの培養および抗体精製
以上の操作で得られた抗Nesfatin-1抗体を産生するハイブリドーマ20クローンのうち、11クローンを大量培養し、培養上清を回収した。培養上清中の抗体をプロテインGカラムで常法により精製した。
【0150】
実施例13
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体の反応性評価>
(1)抗原ELISAによる抗体の反応性評価
実施例12により取得した精製IgGを用いて、抗原ELISAによる各抗体の反応性評価を実施例5(2)と同様にして行った。そのほか、反応性評価対象として、96ウェルELISAプレート(MaxiSorp:Nunc社)にPBS(pH7)で1μg/mlに希釈したGST融合組換えヒトNesfatin-1、ヒトNesfatin、ヒトNucB1-N77、ラットNesfatin、またはラットNesfatin-1が固定されたものを使用する以外は、実施例5(2)と同様にして行った。結果を表10および表11に示す。表中の数値は、405nmにおける吸光度を表す。なお、表中表されるクローンは、例えば、NAE−3を例にあげると、NAE−3は、表9におけるE:NesfatinのN末端ペプチド(NSF-N19)による免疫マウスより得られたハイブリドーマのクローン番号3と同一のものを表す。
【0151】
【表10】
【0152】
【表11】
【0153】
表10の結果から、NAE1がヒトNesfatin、ヒトNesfatin-1、ラットNesfatinのいずれにも高い反応性を示し、一方、NAE3はヒトNesfatin、ヒトNesfatin-1に高い反応性を示したがラットとの交差反応性は無いことがわかった。またNAD15はヒトNesfatin、ラットNesfatinのいずれにも高い反応性をしめし、ヒトNesfatin-1には反応しないことがわかった。いずれの抗体もNucB1-N77には反応性を全く示さなかった。
【0154】
表11の結果から、NAF11がヒトNesfatin、ヒトNesfatin-1、ラットNesfatin-1のいずれにも高い反応性を有し、ヒトNucB1-N77に対する交差反応性は無いことがわかった。
【0155】
NAE-1、NAF-7、NAF-11およびについては、それぞれ、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した(受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、およびFERM ABP−10883 受領日 2007年7月27日)。
【0156】
実施例14
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(NAE1)を使用したNesfatin-1測定系の作製>
(1)測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例12で得られた抗Nesfatin-1C末端ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAE1、NAE3)(IgG)のビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0157】
(B)抗体固定化プレートの調製
実施例5で作製した抗体(抗原アフィニティー精製抗Nesfatin-1 C末端ペプチドウサギポリクローナル抗体(抗体No.4998))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4998が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0158】
(C)測定系の構築
上記実施例14(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)を0−200pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化抗体は、ビオチン化抗体を2μg/ml含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜200pMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図16に示す。
【0159】
(2)測定系の種差に対する測定評価
上記実施例14(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1、ビオチン化NAE3)を使用して、ラットNesfatin-1との交差反応性を検討した。
【0160】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または組換えラットNesfatin-1(標準物質)を0−2nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜2nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図17に示す。
その結果、ビオチン化NAE1、およびビオチン化NAE3は共に、ヒトNesfatin-1のみを検出し、ラットNesfatin-1には交差反応性を示さないことがわかった。
【0161】
(3)NucB1-N77交差反応性評価
上記実施例14(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用して、NucB1-N77との交差反応性を検討した。
【0162】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または精製組換えヒトNucB1-N77を0〜200pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜2nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図18に示す。
その結果、本測定系はヒトNesfatin-1のみを検出し、ヒトNucB1-N77には交差反応性を示さないことがわかった。
【0163】
(4)Nesfatin交差反応性評価
上記実施例14(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例14(1)(A)で作製したビオチン化IgG(ビオチン化NAE1)を使用して、精製した組換えヒトNesfatinとの交差反応性を検討した。
【0164】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin-1(標準物質)、または組換えヒトNesfatinを0〜200pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/mL含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜200pMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図19に示す。
その結果、本測定系はヒトNesfatin-1のみを検出し、ヒトNesfatinには交差反応性を示さないことがわかった。
【0165】
実施例15
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(NAE1)を使用したNesfatin測定系の作製>
(1)測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例12で得られた抗Nesfatin-1C末ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAE1, NAE3, NAD15)(IgG)のビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0166】
(B)抗体固定化プレートの調製
抗体(抗原ペプチドアフィニティー精製 抗Nesfatin C末端ペプチドPAb;抗体No.4994、または抗Nesfatin-1C末ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAD15))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4994またはNAD15が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0167】
(C)測定系の構築
抗体No.4994固定プレートと、ビオチン化NAE1, NAE3, NAD15を使用して、ヒトNesfatinに対する反応性を検討した。
検体として、精製した組換えNesfatin(標準物質)を0〜1nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0−1nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図20に示す。
【0168】
(2)ビオチン化抗体の種差に対する反応性評価
抗体NAD15(ヒトNesfatin C末端ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体)固定プレートと、ビオチン化NAE1, NAE3を使用して、組換えヒトNesfatinまたは組換えラットNesfatinとの交差反応性を検討した。
【0169】
検体として、精製した組換えヒトNesfatin(標準物質)、またはラットNesfatinを0〜10nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜10nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図21に示す。
この結果から、NAE1, NAE3共にラットNesfatinに対する反応性が無いことが示された。
【0170】
(3)NucB1に対する交差反応性評価
実施例15(1)より、抗体No.4994固定プレートと、ビオチン化NAE1(検出抗体)を使用する測定系がヒトNesfatinを最も高感度に検出しうることが示されたため、この測定系に関して、ヒトNucB1との交差反応性を検討した。
【0171】
検体として、精製した組換えヒトNucB1(GST融合タンパク)を0〜800pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列、および精製した組換えヒトNesfatinを0−200pMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜1nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図22に示す。
この結果からNucB1に対する交差反応性は全く認められなかった。このことから本測定系はNesfatin特異的な測定系であると考えられる。
【0172】
実施例16
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(NAF11)を使用したNesfatin-1測定系の作製>
(1)測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例12で得られたマウスモノクローナル抗体のうち、ヒトとラットのNesfatin-1に反応し、ヒトNucB1との交差反応性が認められなかった抗Nesfatin-1C末ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAF11)を用いて、そのIgGのビオチン化を実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0173】
(B)抗体固定化プレートの調製
抗体(抗原ペプチドアフィニティー精製 抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998))を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4998が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0174】
(C)測定系の構築
上記実施例16(1)(B)で調製した抗Nesfatin-1C末端ペプチドPAb(抗体No.4998)固定化プレートと、上記実施例16(1)(A)で作製したビオチン化IgG(NAF11)を使用する測定系を検討した。
検体として、精製した組換えNesfatin-1(標準物質)を0〜1nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈系列を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜1nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、これをブロットした。結果を図23に示す。
【0175】
実施例17
<NESFATIN部分ペプチドに対するマウスモノクローナル抗体(NAF11)を使用したNesfatin測定系の作製>
(1)測定系の構築
(A)ビオチン化抗体の作製
実施例12で得られたマウスモノクローナル抗体のうち、ヒトとラットのNesfatin-1に反応し、ヒトNucB1との交差反応性が認められなかった抗Nesfatin-1C末ペプチドマウスモノクローナル抗体(NAF11)を用いて、IgGのビオチン化を、実施例7(1)(A)と同様にして行った。
【0176】
(B)抗体固定化プレートの調製
抗体(抗原ペプチドアフィニティー精製 抗Nesfatin C末端ペプチドPAb;抗体No.4994)を使用して、実施例7(1)(B)と同様にして、抗体No.4994が固定化された抗体固定化プレートを作製した。
【0177】
(C)測定系の構築
上記実施例17(B)で調製した抗Nesfatin -1C末端ペプチドPAb(抗体No.4994)固定化プレートと、ビオチン化抗体(抗体NAF11)を使用して、ヒト、マウス、ラットに対する交差反応性を検討した。
【0178】
検体として、精製した組換えヒト、ラット、マウスNesfatin(標準物質)を0〜1nMの範囲で含有する3%BSA含有10mM PBS(pH7.2)溶液の検体希釈液を作製し使用した。ビオチン化IgGは、ビオチン化IgGを2μg/ml含有する3%BSA含有PBS(pH7.2)溶液として使用した。それ以外は、実施例7(1)(C)と同様にして行った。各濃度0〜1nMの検体について、450nmの波長におけるこの溶液の吸収強度を測定し、ブロットした。結果を図24に示す。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明により、Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinもしくはNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、ならびにNesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、さらには、その抗体を用いる、Nesfatin-1の免疫学的検出方法および検出キットを提供することができる。
また、本発明により、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体、さらには、その抗体を用いる、Nesfatinの免疫学的検出方法および検出キットを提供することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0180】
配列表の説明
(1)配列番号1 NSF1−C18のアミノ酸配列
(2)配列番号2 NSF1−M15のアミノ酸配列
(3)配列番号3 NSF−C18のアミノ酸配列
(4)配列番号4 NSF−N19のアミノ酸配列
(5)配列番号5 ヒト由来Nesfatin-1のアミノ酸配列
(6)配列番号6 マウス由来Nesfatin-1のアミノ酸配列
(7)配列番号7 ラット由来Nesfatin-1のアミノ酸配列
(8)配列番号8 ヒト由来NESFATINのアミノ酸配列
(9)配列番号9 ヒト由来NESFATIN(Mature)のアミノ酸配列
(10)配列番号10 マウス由来NESFATINのアミノ酸配列
(11)配列番号11 マウス由来NESFATIN(Mature)のアミノ酸配列
(12)配列番号12 ラット由来NESFATINのアミノ酸配列
(13)配列番号13 ラット由来NESFATIN(Mature)のアミノ酸配列
(14)配列番号14 ヒト由来NucB1(Mature)のアミノ酸配列
(15)配列番号15 マウス由来NucB1(Mature)のアミノ酸配列
(16)配列番号16 ラット由来NucB1(Mature)のアミノ酸配列
(17)配列番号17 ヒト由来NucB1−N77のアミノ酸配列
(18)配列番号18 マウス由来NucB1−N77のアミノ酸配列
(19)配列番号19 ラット由来NucB1−N77のアミノ酸配列
(20)配列番号20 Human NESFATIN & Human NESFATIN-1 1st PCR Primer hNucB2-F0191
(21)配列番号21 Human NESFATIN & Human NESFATIN-1 1st PCR Primer hNucB2-R1549
(22)配列番号22 Human NESFATIN & Human NESFATIN-1 2nd PCR Primer hNucB2-F292
(23)配列番号23 Human NESFATIN-1 2nd PCR Primer hNucB2-R514
(24)配列番号24 Human NESFATIN 2nd PCR Primer hNucB2 R1461
(25)配列番号25 Human NucB1 & Human NucB1-N77 1st PCR Primer hNucB1-F061
(26)配列番号26 Human NucB1 & Human NucB1-N77 1st PCR Primer hNucB1-R1376
(27)配列番号27 Human NucB1 & Human NucB1-N77 2nd PCR Primer hNucB1-F096
(28)配列番号28 Human NucB1-N77 2nd PCR Primer hNucB1-R303
(29)配列番号29 トロンビン認識部位
(30)配列番号30 mouse NESFATIN & mouse NESFATIN-1 1st PCR Primer mNucB2-F337
(31)配列番号31 mouse NESFATIN & mouse NESFATIN-1 1st PCR Primer mNucB2-R1613
(32)配列番号32 mouse NESFATIN & mouse NESFATIN-1 2nd PCR Primer mNucB2-F360
(33)配列番号33 mouse NESFATIN-1 2nd PCR Primer mNucB2-R582
(34)配列番号34 mouse NESFATIN 2nd & 3rd PCR Primer mNucB2-R1527
(35)配列番号35 mouse NESFATIN 3rd PCR Primer His-Thr-For
(36)配列番号36 mouse NucB1 & mouse NucB1-N77 1st PCR Primer mNucB1-F009
(37)配列番号37 mouse NucB1 & mouse NucB1-N77 1st PCR Primer mNucB1-R1406
(38)配列番号38 mouse NucB1 & mouse NucB1-N77 2nd PCR Primer mNucB1-F094
(39)配列番号39 mouse NucB1-N77 2nd PCR Primer mNucB1-R301
(40)配列番号40 mouse NucB1 2nd PCR Primer mNucB1-R1360
(41)配列番号41 rat NESFATIN & rat NESFATIN-1 1st PCR Primer rNucB2-F204
(42)配列番号42 rat NESFATIN & rat NESFATIN-1 1st PCR Primer rNucB2-R1540
(43)配列番号43 rat NESFATIN & rat NESFATIN-1 2nd PCR Primer ratNucB2-F286
(44)配列番号44 rat NESFATIN-1 2nd PCR Primer ratNucB2-R507
(45)配列番号45 rat NESFATIN 2nd & 3rd PCR Primer ratNucB2-R1531
(46)配列番号46 rat NucB1 & rat NucB1-N77 1st PCR Primer ratNucB1-F001
(47)配列番号47 rat NucB1 & rat NucB1-N77 1st PCR Primer ratNucB1-R1402
(48)配列番号48 rat NucB1 & rat NucB1-N77 2nd PCR Primer rNucB1-F078
(49)配列番号49 rat NucB1-N77 2nd PCR Primer rNucB1-R285
(50)配列番号50 rat NucB1 2nd PCR Primer rNucB1-R1357
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
【請求項2】
以下のアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原として用いることにより得られる、請求項1記載の抗体。
NSF1-C18:-Gly-Cys-Ser-Lys-Glu-Leu-Asp-Leu-Val-Ser-His-His-Val-Arg-Thr-Lys-Leu -Asp-Glu-Leu
【請求項3】
Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
【請求項4】
受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマにより産生される、請求項3記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
【請求項6】
受領番号FERM ABP−10882、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマにより産生される、請求項5記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
【請求項8】
受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマ。
【請求項9】
検体を、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体に接触させる工程、
検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む、Nesfatin-1の免疫学的検出方法。
【請求項10】
検体を、請求項7記載の抗体に接触させる工程、
検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む、Nesfatinの免疫学的検出方法。
【請求項11】
検体中のNesfatin-1の免疫学的検出方法であって、
請求項1〜6記載の抗体のうちから選択された2種類の抗体を用いる、免疫学的検出方法。
【請求項12】
検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、
一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで
検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、請求項1、2、5または6のいずれかに記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体のうち他方が、請求項3、4、5または6のいずれかに記載の抗体である、請求項11記載の免疫学的検出方法。
【請求項13】
一次抗体が、請求項1または2記載の抗体であって、
二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881、またはFERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体である、請求項12記載の免疫学的検出方法。
【請求項14】
一次抗体が、受領番号FERM ABP−10884、またはFERM ABP−10882として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体であって、
二次抗体が、請求項1または2記載の抗体である、請求項12記載の免疫学的検出方法。
【請求項15】
Nesfatin-1の濃度が30pM未満である検体と、Nesfatin-1の濃度が0pMである対照検体とを弁別可能である感度を有する、請求項11〜14のいずれかに記載の記載の免疫学的検出方法。
【請求項16】
検体中のNesfatinの免疫学的検出方法であって、
検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、
一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで
検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、請求項7記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である、Nesfatinの免疫学的検出方法。
【請求項17】
Nesfatinの濃度が30pM未満である検体と、Nesfatinの濃度が0pMである対照検体とを弁別可能である感度を有する、請求項16記載の免疫学的検出方法。
【請求項18】
一次抗体が、請求項7記載の抗体であり、
二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881、またはFERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体である請求項16または17記載の免疫学的検出方法。
【請求項19】
請求項12〜15のいずれかに記載の検出方法に用いられるNesfatin-1の検出キットであって、
一次抗体が固定された固相、および標識された二次抗体を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、請求項1、2、5または6のいずれかに記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、請求項3、4、5または6のいずれかに記載の抗体である、Nesfatin-1の検出キット。
【請求項20】
請求項16〜18のいずれかに記載の検出方法に用いられるNesfatinの検出キットであって、
一次抗体が固定された固相、および標識された二次抗体を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、請求項7記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である、Nesfatinの検出キット。
【請求項21】
検体に、標識されたNesfatin-1標準物質を混和する工程、
標識化Nesfatin-1標準物質が混和された検体に、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体を接触させる工程、
抗体と抗原抗体反応した標識化Nesfatin-1標準物質を検出する工程を含む、Nesfatin-1の免疫学的検出方法。
【請求項22】
抗体が、請求項5または6記載の抗体である、請求項21記載の免疫学的検出方法。
【請求項23】
検体に、標識されたNesfatin標準物質を混和する工程、
標識化Nesfatin標準物質が混和された検体に、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を接触させる工程、
抗体と抗原抗体反応した標識化Nesfatin標準物質を検出する工程を含む、Nesfatinの免疫学的検出方法。
【請求項24】
抗体が、請求項7記載の抗体である、請求項23記載の免疫学的検出方法。
【請求項25】
請求項21または22記載の検出方法に用いられるNesfatin-1の検出キットであって、
標識化されたNesfatin-1標準物質、およびNesfatin-1と抗原抗体反応する抗体を含み、
該抗体が、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体である、Nesfatin-1の検出キット。
【請求項26】
請求項23または24記載の検出方法に用いられるNesfatinの検出キットであって、
標識化されたNesfatin標準物質、およびNesfatinと抗原抗体反応する抗体を含み、
該抗体が、請求項7記載の抗体である、Nesfatinの検出キット。
【請求項27】
請求項1〜7のいずれかに記載の抗体を含有する食欲亢進および/または体重増加亢進のための医薬組成物。
【請求項1】
Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、Nesfatinとは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
【請求項2】
以下のアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原として用いることにより得られる、請求項1記載の抗体。
NSF1-C18:-Gly-Cys-Ser-Lys-Glu-Leu-Asp-Leu-Val-Ser-His-His-Val-Arg-Thr-Lys-Leu -Asp-Glu-Leu
【請求項3】
Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
【請求項4】
受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマにより産生される、請求項3記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
Nesfatin-1と抗原抗体反応するが、NesfatinおよびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
【請求項6】
受領番号FERM ABP−10882、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマにより産生される、請求項5記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
Nesfatinと抗原抗体反応するが、Nesfatin-1およびNucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体。
【請求項8】
受領番号FERM ABP−10881、FERM ABP−10882、FERM ABP−10883、またはFERM ABP−10884として寄託されているハイブリドーマ。
【請求項9】
検体を、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体に接触させる工程、
検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む、Nesfatin-1の免疫学的検出方法。
【請求項10】
検体を、請求項7記載の抗体に接触させる工程、
検体と抗原抗体反応した抗体を検出する工程を含む、Nesfatinの免疫学的検出方法。
【請求項11】
検体中のNesfatin-1の免疫学的検出方法であって、
請求項1〜6記載の抗体のうちから選択された2種類の抗体を用いる、免疫学的検出方法。
【請求項12】
検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、
一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで
検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、請求項1、2、5または6のいずれかに記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体のうち他方が、請求項3、4、5または6のいずれかに記載の抗体である、請求項11記載の免疫学的検出方法。
【請求項13】
一次抗体が、請求項1または2記載の抗体であって、
二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881、またはFERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体である、請求項12記載の免疫学的検出方法。
【請求項14】
一次抗体が、受領番号FERM ABP−10884、またはFERM ABP−10882として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体であって、
二次抗体が、請求項1または2記載の抗体である、請求項12記載の免疫学的検出方法。
【請求項15】
Nesfatin-1の濃度が30pM未満である検体と、Nesfatin-1の濃度が0pMである対照検体とを弁別可能である感度を有する、請求項11〜14のいずれかに記載の記載の免疫学的検出方法。
【請求項16】
検体中のNesfatinの免疫学的検出方法であって、
検体を、固相に固定された一次抗体に接触させる工程、
一次抗体が結合した検体に、標識された二次抗体を接触させる工程、ついで
検体と抗原抗体反応した二次抗体を検出する工程を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、請求項7記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である、Nesfatinの免疫学的検出方法。
【請求項17】
Nesfatinの濃度が30pM未満である検体と、Nesfatinの濃度が0pMである対照検体とを弁別可能である感度を有する、請求項16記載の免疫学的検出方法。
【請求項18】
一次抗体が、請求項7記載の抗体であり、
二次抗体が、受領番号FERM ABP−10881、またはFERM ABP−10883として寄託されているハイブリドーマにより産生される抗体である請求項16または17記載の免疫学的検出方法。
【請求項19】
請求項12〜15のいずれかに記載の検出方法に用いられるNesfatin-1の検出キットであって、
一次抗体が固定された固相、および標識された二次抗体を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、請求項1、2、5または6のいずれかに記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、請求項3、4、5または6のいずれかに記載の抗体である、Nesfatin-1の検出キット。
【請求項20】
請求項16〜18のいずれかに記載の検出方法に用いられるNesfatinの検出キットであって、
一次抗体が固定された固相、および標識された二次抗体を含み、
一次抗体または二次抗体のうち一方が、請求項7記載の抗体であって、
一次抗体または二次抗体の他方が、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体である、Nesfatinの検出キット。
【請求項21】
検体に、標識されたNesfatin-1標準物質を混和する工程、
標識化Nesfatin-1標準物質が混和された検体に、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体を接触させる工程、
抗体と抗原抗体反応した標識化Nesfatin-1標準物質を検出する工程を含む、Nesfatin-1の免疫学的検出方法。
【請求項22】
抗体が、請求項5または6記載の抗体である、請求項21記載の免疫学的検出方法。
【請求項23】
検体に、標識されたNesfatin標準物質を混和する工程、
標識化Nesfatin標準物質が混和された検体に、Nesfatinと抗原抗体反応するが、NucB1とは実質的に抗原抗体反応しない抗体を接触させる工程、
抗体と抗原抗体反応した標識化Nesfatin標準物質を検出する工程を含む、Nesfatinの免疫学的検出方法。
【請求項24】
抗体が、請求項7記載の抗体である、請求項23記載の免疫学的検出方法。
【請求項25】
請求項21または22記載の検出方法に用いられるNesfatin-1の検出キットであって、
標識化されたNesfatin-1標準物質、およびNesfatin-1と抗原抗体反応する抗体を含み、
該抗体が、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体である、Nesfatin-1の検出キット。
【請求項26】
請求項23または24記載の検出方法に用いられるNesfatinの検出キットであって、
標識化されたNesfatin標準物質、およびNesfatinと抗原抗体反応する抗体を含み、
該抗体が、請求項7記載の抗体である、Nesfatinの検出キット。
【請求項27】
請求項1〜7のいずれかに記載の抗体を含有する食欲亢進および/または体重増加亢進のための医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2010−536715(P2010−536715A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507741(P2010−507741)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/JP2008/065622
【国際公開番号】WO2009/025401
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/JP2008/065622
【国際公開番号】WO2009/025401
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】
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