説明

Niをベースとするろうからなる少なくとも1つの第1の層と活性な元素を含む少なくとも1つの第2の層とを備える複ろう部材、該複ろう部材を製造する方法及び該複ろう部材の使用

本発明は、セラミックの表面(2)を金属の表面(1)に素材結合式に結合するための複ろう部材(3a,4a)において、Si、B、Mn、Sn、Geからなる群より選択される融点を下げる少なくとも1つの成分を含む、少なくとも50質量%のNi含有量を有するNiをベースとするろうからなる少なくとも1つの第1の層(3a)と、合計で1〜15質量%のTi、Hf、Zr、Vからなる群より選択される活性な元素の含有量を有する活性ろう材料からなる少なくとも1つの第2の層(4a)とを備える、セラミックの表面(2)を金属の表面(1)に素材結合式に結合するための複ろう部材(3a,4a)に関する。さらに本発明は、このような複ろう部材を製造する方法及びこのような複ろう部材の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層の複ろう部材(Doppellotelement)、このような複ろう部材を製造する方法及び使用、並びに異種の材料からなる2つの部材間、特にセラミック材料及び金属材料との間の素材結合(stoffschluessige Verbindung)を、このような複ろう部材を用いて形成する方法に関する。
【0002】
従来技術
硬ろう付は、部材の素材結合のために用いられ、特に、セラミックの部材を金属の部材に結合するためにも使用される。特にガスタービン用途の分野において、このような結合との関連で問題となるのは、タービンの高温の燃焼ガスに曝される領域内で使用されるセラミックの表面上での慣用の硬ろうの濡れ挙動の悪さである。
【0003】
ろう接プロセスによる悪い素材結合の結果として生じる問題の可能な解決手段は、セラミックの表面を硬ろう付前にメタライジングすることにある。しかし、このことは、多大な技術的かつ経済的な欠点につながる。
【0004】
別の可能性は、いわゆる活性ろう(Aktivlot)を使用することにある。活性ろうは、しばしば、セラミックの構成部材を金属の構成部材に結合するために使用される。活性ろうの特徴は、高い酸素親和性の元素の所定の含有量にあり、これにより、初めて、セラミック体の表面の濡れ性の前提が形成される。その際に使用される合金は、活性な元素として一般に例えばTi、Hf、Zr及び/又はVを含有している。つまり、「活性」の概念は、この関連において、これらの元素が、ろう接プロセス中、セラミックの表面と反応して反応層を形成する(例えばTiはTiOからなる層を形成する。)ことを意味している。この反応層は、セラミックの部材と、溶融される硬ろうとの間に配置されている。この反応層は、セラミックとろうとの間の結合要素として働く。
【0005】
このような商用のろうは、典型的には、Ag、Au、Cu、Niをベースとしているか、あるいはAu/Ni及びAg/Cuからなる系の混合物をベースとしている。V又はTiは、通常、比較的少量だけ、活性な元素として添加されている。これらの材料は、一般に、シートとして、ペーストとして又は粉末形態で、セラミックのろう接箇所に被着される。
【0006】
このようなろう系において問題であるのは、このようなろう系の固有の低い融点Tmpである。このことは、高温領域、すなわち、例えばガスタービン用途での使用可能性を著しく制限してしまう。上述のろうの融点は、典型的には、Ag/Cu‐ろうでは、Tmp=780〜960℃の範囲にあり、Au/Ni‐ろうでは、Tmp=950〜1050℃の範囲にある。このような用途において、運転温度は、融点の範囲にあるか、又はそれどころか融点を上回り、これにより、ろう接箇所に不都合な影響を及ぼす可能性がある。ガスタービン用途にとって、ろう結合部は、この高い運転温度を長期間にわたって耐え、常に十分な機械的な(素材)結合を保証しなければならない。このことは、上述のろうではしばしば保証されていない。Cuを含有するろう及びNiを含有するろうは、燃焼ガス内において、燃焼ガスの例えばO、HO及びSOの成分により惹起される酸化又は腐食に対して長期間にわたって耐性を有さない。この関連で、活性ろうをワイヤ材料及びシート材料として複合材料の形で、例えばTiジャケットを備える共晶Ag/Cu‐コアとしてか、又はそれぞれAgあるいはZrからなる互いに重ねられた半製品として使用することが公知である。さらに、欧州特許出願公開第0038584号明細書において、このような材料をCu又は銅合金からなる面状の金属担体(テープ)の形態のろう帯材の両側に被着することが公知である。
【0007】
さらに、別の群の活性ろう、すなわち、Pt‐Cu‐Ti(Tmp=1080〜1770℃)及びPd‐Ni‐Ti(Tmp=1080〜1550℃)等の種々異なる系をベースとする活性ろうが存在する。しかし、これらの系における欠点は、その極めて高い融点にあって、この極めて高い融点は、結合したい金属の部材との問題を引き起こす。
【0008】
すなわち、ろう接時の高い温度は、特に超合金(ガスタービン設備内の構成部品のために使用される。)のミクロ構造の望ましくない変化を引き起こす。ミクロ構造のこの変化は、しばしば、機械的な弱化及び疲労に至らしめる。加えて、このようなろうは、通常、慣用のNiをベースとするろう合金と比べて、金属の構成部品の一般的なNi及び/又はCoをベースとする超合金に対して低い相容性もしくは両立性を有している。この低い相容性もしくは両立性は、例えば超合金のアルミニウムと相俟って、相互拡散域における脆性の金属間化合物相の形成、ひいては、結合部の低い強度、及び一般に、金属の部材とセラミックの部材と両者間に位置するろうとからなるハイブリッド系の低い機械的な結合性(Integritaet)に至らしめる。
【0009】
発明の概要
それゆえ本発明の課題は、とりわけ、金属の部材をセラミックの部材と素材結合式に結合するための改良されたろうを提供すること、及びこのようなろうの製造方法及び使用を提供することである。
【0010】
この課題の解決は、請求項1に係る複ろう部材、すなわち、セラミックの表面を金属の表面に素材結合式に結合するための複ろう部材において、Si、B、Mn、Sn、Geからなる群より選択される融点を下げる少なくとも1つの成分を含む、少なくとも50質量%のNi含有量を有するNiをベースとするろうからなる少なくとも1つの第1の層と、合計で1〜15質量%のTi、Hf、Zr、Vからなる群より選択される活性な元素の含有量を有する活性ろう材料からなる少なくとも1つの第2の層とを備えることを特徴とする、セラミックの表面を金属の表面に素材結合式に結合するための複ろう部材により達成される。好ましい形態において、複ろう部材は、前記第1の層及び前記第2の層のみを備え、前記第1の層が、前記金属の表面と接触するように設計されており、前記第2の層が、前記セラミックの表面と接触するように設計されており、有利には、前記第1の層の融点が、前記第2の層の融点より30〜200Kの範囲で高い。また、好ましい形態において、前記第1の層及び前記第2の層が、遅くともろう接プロセス時に接合される個別のシートとして形成されており、有利には、両層が少なくとも点状に互いに結合されている。また、好ましい形態において、前記第1の層が担体層として形成されており、前記第2の層が有利には片側のみのコーティングとして、特に有利には蒸着かつ/又はスパッタリングされたコーティングとして形成されている。また、好ましい形態において、前記第1の層の材料が、900〜1200℃の範囲の融点、有利には1050〜1150℃の範囲の融点を有している。また、好ましい形態において、前記第2の層の材料が、700〜1100℃の範囲、有利には900〜1000℃の範囲の融点を有している。また、好ましい形態において、前記第2の層が、3〜200μmの範囲、有利には20〜100μmの範囲の厚さを有しており、かつ/又は前記第1の層が、50〜1000μmの範囲、有利には300〜600μmの範囲の厚さを有している。また、好ましい形態において、前記第2の層が、合計で3〜10質量%のTi、Hf、Zr、Vからなる群より選択される活性な元素の含有量を有する有利にはNiをベースとするろうからなる。また、好ましい形態において、前記第2の層が、合計で1〜15質量%、有利には3〜10質量%のTi、Hf、Zr、Vからなる群より選択される活性な元素の含有量を有するAu、Ag又はPdをベースとするろうからなる。また、好ましい形態において、前記第1の層が、少なくとも50質量%のNi含有量を有するNiをベースとするろうであり、該ろうに、Al、Cr、Fe、Ta、Co、Y及びWからなる群より選択される別の元素と、前記融点を下げる成分としてSi、Mn、Sn、Ge及び/又はBとが混合されている。また、好ましい形態において、前記第1の層が、少なくとも50質量%のNi含有量を有するNiをベースとするろうからなる担体シートであり、該ろうに、Al、C、Cr、Ta、Co、Fe、Y及びWからなる群より選択される別の元素と、前記融点を下げる成分としてSi及び/又はBとが混合されており、前記担体シート上に前記第2の層が、片側のみのコーティングとして被着されている。さらに、本発明は、上述の複ろう部材を製造する方法において、Niをベースとするろうからなる担体シートの片側にコーティングを第2の層として被着し、被着に際して、該コーティングを有利には実質的に連続したプロセスにおいて蒸着かつ/又はスパッタリングし、かつ/又はNiをベースとするろうからなる担体シートの片側に第2の層を被着し、被着に際して、該コーティングを有利には粉末状に前記担体シート上に被着し、次に機械的に、有利にはロールがけ又はプレスがけにより、又は熱的に、有利にはレーザ、熱放射、誘導加熱により処理することを特徴とする、複ろう部材を製造する方法に関する。また、本発明は、上述の複ろう部材の、金属の表面をセラミックの表面にろう接プロセスで結合するための使用、特にガスタービンのコンポーネントを結合するための使用に関する。また、本発明は、金属の表面をセラミックの表面にろう接プロセスで結合する方法において、上述の複ろう部材を、前記第1の層が前記金属の表面に面し、かつ前記第2の層が前記セラミックの表面に面するように前記金属の表面と前記セラミックの表面との間に導入し、次に、熱エネルギを供給しながら、前記複ろう部材を溶融させ、前記金属の表面と前記セラミックの表面との間に素材結合を形成しながら冷却し、有利には、前記金属の表面が、有利にはNi及び/又はCoをベースとする耐高温性の超合金であり、かつ/又は有利には前記セラミックの表面が、セラミックの耐熱層、有利にはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)をベースとするセラミックであることを特徴とする、金属の表面をセラミックの表面にろう接プロセスで結合する方法に関する。また、本発明は、ガスタービンコンポーネントにおいて、少なくとも部分的に前記金属の表面にセラミックの部材が上述の方法を用いて固定されていることを特徴とするガスタービンコンポーネントに関する。
【0011】
具体的には本発明は、セラミックの表面を金属の表面に素材結合式に結合するための複ろう部材において、Si、B、Mn、Sn、Geからなる群より選択される融点を下げる少なくとも1つの成分を含む、少なくとも50質量%のNi含有量を有するNiをベースとするろうからなる少なくとも1つの第1の層(又はシート)と、この第1の層(又はシート)から物理的に、すなわち空間的に分離された配置で(例えば直接隣接した配置で)、合計で1〜15質量%、有利には3〜10質量%のTi、Hf、Zr、Vからなる群より選択される活性な元素の含有量を有する活性ろう材料からなるか、又はこの活性ろう材料をベースとする少なくとも1つの第2の層とを備える、セラミックの表面を金属の表面に素材結合式に結合するための複ろう部材に関する。
【0012】
すなわち、セラミックの表面との反応のための活性な元素を有する、上記超合金に関する相応に良好な相容性あるいは両立性を有するNiをベースとするろう合金を提供したいという欲求が存在する。その際に問題となるのは、単数又は複数の活性な元素の、このようなNiをベースとするろう合金への単純な添加では、所望の特性を示さないことが明らかであるという事実である。このような混合された系の不十分な有効性の問題は、活性な元素が、ろうの融点を下げる別の成分、例えばB又はSiと反応してしまうことにあることが判った。このようなろうの融点を下げる成分は、Niをベースとするろうの融点を典型的な900〜1100℃の妥当な範囲にもたらすために必要である。しかし、その際に問題となるのは、ろうの融点を下げる元素が、活性な元素とともに合金中に存在するとき、活性な元素と反応してしまうことである。つまり、ろう接プロセス中、反応性の活性な元素は、ろうの融点を下げる成分と反応して、この成分とともに、例えばTiB、Ti‐シリサイドその他の高温安定性の相を形成する。こうして、同時に、両成分の作用は減じられてしまう。すなわち、活性な元素の除去により、セラミックの表面の効率的な濡れは低減され、ろうの融点を下げる成分の除去により、ろうの融点は上昇する。
【0013】
これにより、本発明の核心は、Niをベースとするろう中の、ろうの融点を下げる成分が、物理的に活性な元素から分けられ、いわば別体のあるいは空間的かつ/又は時間的に部分的に又は完全に隔離された溶融が、成分同士の言及に値するほどの負の相互作用なしに可能とされることにより、上述の問題を解決することにある。つまり、物理的な分離、ひいては、その際に存在する離間によるいわば化学的な分離(活性な元素と融点を下げる成分との間の反応がないこと。)を、この問題を解決するために使用することが重要である。すなわち、複ろう部材は、融点を下げる成分を含むニッケルをベースとするろうが配置されている第1の領域(第1の層)に分割される。この第1の領域は、次に、金属の表面に向けられている。第1の領域から分けられた第2の領域(第2の層)において、担体材料中に、活性な元素が配置されている。この第2の領域は、次に、セラミックの表面に向けられている。
【0014】
つまり、第1の層は、通常、実質的に又は完全に活性な元素からフリーである。
【0015】
つまり、原則2つの形態が存在する。すなわち:
a)本来のろうが、シート又はブロックの形で置かれ(第1の層)、これから分離されて、活性な元素が、別体の層(シート)内に合金の形で提供される。
b)本来のろうからなる担体材料を活性な元素と合金化するか、又は本来のろうからなる担体材料に活性な元素をコーティングする。その際、コーティングは、専ら単数又は複数の活性な元素からなっていてもよい。
【0016】
活性な元素と融点を下げる元素とを分離する主な利点は、ろう接温度に加熱する間、まず、活性な元素を含む活性ろうの部分が溶融することにある。この活性な元素は、相応に、まず露出され、セラミックの表面を最適に濡らすことができる。
【0017】
このことは、直ちに、酸化物‐セラミックの表面上での適当なM‐酸化物‐タイプ(M=Ti、Hf、Zr、V)の形成に至る。次に、最終的な最大ろう接温度に加熱していくと、本来のろう(第1の層)が、完全に溶融して、金属の表面と反応するとともに、セラミックの表面上に形成された酸化物と反応する。
【0018】
次に、ろう接温度を低下させると、ろうからなる液状の層は、硬化する。このことは、層の内的な結合に至り、最終的に、金属の表面とセラミックの表面との間の強力な素材結合に至る。
【0019】
この挙動を概略的に図1に示す。aで示す領域は、活性な元素が配置されているろうの領域(第2の層)が溶融して、活性な元素がセラミックの表面上に放出される時間区分を示している。bは、残りのろう(第1の層)が溶融する本来のろう接温度における時間区分を示している。cは、ろう接結合部が硬化して、金属の表面をセラミックの表面に結合する冷却期間を示している。
【0020】
第1の有利な形態において、複ろう部材は、上述の第1の層及び上述の第2の層のみを備え、第1の層が、金属の表面と接触するように設計されており、第2の層が、セラミックの表面と接触するように設計されていることを特徴とする。その際、重要であるのは、第1の層が金属の表面と接触可能であり、第2の層がセラミックの表面と接触可能であることである。第1の層と第2の層との間には、別の中間層が配置されていてもよい。しかし、有利であるのは、別の中間層が配置されていない形態である。すなわち、複ろう部材は、これら2つの層のみからなる。
【0021】
第1の層及び第2の層は、遅くともろう接プロセス時に接合される個別のシートとして形成されていてよい。そして、第1のシートは、金属の表面の側に配置され、第2のシートは、セラミックの表面の側に配置され、いわば、両表面は間接的に、これらの両シートを介して結合される。シートは、いわばキット・オブ・パーツ(kit‐of‐parts)として存在していてよい。このことは、個々のシートが個別にいわば移動可能であるので、加工上の利点を有していることができる。しかし、個々のシートは、別の利点を達成するために、互いに結合、例えば少なくとも点状に(例えば点溶接により)結合されていてもよい。しかし、全面的な結合も可能である。
【0022】
択一的には、第1の層が担体層として形成され、第2の層が有利には片側のみのコーティングとして形成されていてもよい。このようなコーティングは、蒸着かつ/又はスパッタリングされたコーティングとして形成されていてよい。
【0023】
通常、第1の層の材料は、900〜1200℃の範囲の融点、有利には1050〜1150℃の範囲の融点を有している。
【0024】
さらに有利には、第2の層の材料が、700〜1100℃の範囲、有利には900〜1000℃の範囲の融点を有している。
【0025】
明らかに有利な構成は、(特に第1の層及び第2の層のための融点の上述の範囲との関連でも)第1の層の融点が第2の層の融点より高いことである。有利には、第1の層の融点は、第2の層の融点より30〜200Kの範囲で、有利には50〜100Kの範囲で高い。
【0026】
別の有利な形態では、第2の層が、3〜200μmの範囲、有利には20〜100μmの範囲の厚さを有している。
【0027】
別の有利な形態では、第1の層が、50〜1000μmの範囲、有利には300〜600μmの範囲の厚さを有している。
【0028】
素材結合、特にガスタービンのコンポーネントの分野における素材結合に関して、別の有利な形態では、第2の層が、合計で3〜10質量%のTi、Hf、Zr、Vからなる群より選択される活性な元素の含有量を有するNiをベースとするろうからなると、特に有利であることが判っている。
【0029】
同じ関連で、第1の層が、少なくとも50質量%のNi含有量を有するNiをベースとするろうであり、ろうに、Al、Cr、Ta、Co、Fe、Y及びWからなる群より選択される別の元素と、融点を下げる成分としてMn、Sn、Ge、Si及び/又はBとが混合されていると、特に有利、特に燃焼ガス中での耐酸化性及び耐食性に関して特に有利である。
【0030】
さらに本発明は、このような活性ろう部材を製造する方法に関する。有利には、この方法は、Niをベースとするろうからなる担体シートの片側にコーティングを第2の層として被着し、被着に際して、コーティングを有利には実質的に連続したプロセスにおいて蒸着かつ/又はスパッタリングすることを特徴とする。
【0031】
加えて本発明は、このような部材の特別な使用に関する。具体的には本発明は、上述のような複ろう部材の、金属の表面をセラミックの表面にろう接プロセスで結合するための使用、特にガスタービンのコンポーネントを結合するための使用に関する。
【0032】
しかし、特に本発明は、金属の表面をセラミックの表面に、このような複ろう部材を用いてろう接プロセスで結合する方法にも関する。このような方法は、有利には、このような複ろう部材を、第1の層が金属の表面に面し、かつ第2の層がセラミックの表面に面するように金属の表面とセラミックの表面との間に導入することを特徴とする。次に、熱エネルギを供給しながら、複ろう部材を溶融させる。そして、金属の表面とセラミックの表面との間に素材結合を形成しながら能動的又は受動的に冷却する。
【0033】
このような方法の有利な形態は、金属の表面が、有利にはNi及び/又はCoをベースとする耐高温性の超合金であることを特徴とする。
【0034】
方法の別の有利な形態は、セラミックの表面がセラミックの耐熱層、有利には酸化アルミニウム、酸化マグネシウム又は酸化ジルコニウムをベースとするセラミックであることを特徴とする。
【0035】
本発明には、ガスタービンコンポーネントにおいて、少なくとも部分的に金属の表面にセラミックの部材(例えばコーティング又はこれに類するもの)が上述の方法及び上述の複ろう部材を用いて固定されているガスタービンコンポーネントも含まれる。
【0036】
別の実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【0037】
以下に、本発明の有利な実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、図面は、説明のためだけに供され、限定するものと解すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による活性ろうを用いたろう接プロセス時の温度プロフィールの概略図である。
【図2】2つの実施の形態におけるセラミックの部材と金属の部材との結合を示す図であって、a図は、結合前の第1の実施の形態を示し、b図は、結合後の第1の実施の形態を示し、c図は、結合前の第2の実施の形態を示し、d図は、結合後の第2の実施の形態を示している。
【0039】
有利な実施の形態の説明
本明細書において提案する複ろう部材は、図2に記載の両実施の形態に示すように、金属の部材1をセラミックの部材2に結合するために使用される。その際、複ろう部材の、活性ろうを含み、融点が低い方の面は、セラミックに面しており、複ろう部材の、融点が高い方の面は、金属に面している。
【0040】
本明細書において意図される用途に関して、金属の表面は、典型的には、高温に曝されているガスタービンの金属製のコンポーネントである。このような金属製のコンポーネントは、典型的には、コバルト及び/又はニッケルをベースとする超合金からなる。超合金のミクロ構造が最適に形成されている場合にのみ、この種の超合金も、要求される熱安定性を提供することが可能である。相応に、加工時にも臨界温度を超過してはならない。
【0041】
セラミックの部材は、本明細書において意図される用途において、典型的なセラミック製の構成部品、例えばセラミック製の羽根先端である。セラミック製の羽根先端は、例えば金属製の羽根にろう接される。
【0042】
図2a及び図2bに示す第1の実施の形態の範囲内において、複ろう部材が2つの個別のシートから如何にしてなり得るかを示す。
【0043】
シートは、ニッケルをベースとするろうシート3a及び活性化されたろうシート4aである。これらのシートは、個別のシートとして存在し、図2aに示すように、両部材1及び2の結合前に、これらの両部材間、すなわち、これらの部材の表面間の間隙内に配置される。その際、ニッケルをベースとするろうシート3aは、金属の部材側に配置されており、金属の部材の表面と接触するようにされ、活性ろうシート4aは、セラミックの部材側に配置されており、セラミックの部材の表面と接触するようにされている。
【0044】
通常、両シートは、少なくとも点状又は帯状に結合されている。このことは、概略的に結合点6により図示されている。
【0045】
両シート3a,4a間には、理論上、さらに1つの別のシート又は例えば付着層が配置されていてもよい。しかし、これらは必須ではない。
【0046】
両シート3a,4aは、換言すると、まず互いに結合されてから、両部材の間隙内に挿入されてもよいし、択一的には、まずシート3aを金属の部材1に被着して、金属の部材1に仮固定し、次に又はこれと並行して、活性化されたろうシート4aをセラミック2に被着し、その後、両部材を互いに接近させて、熱影響下で互いに結合してもよい。しかし、個々のステップの順番は、異なっていてもよい。
【0047】
両部材1及び2を、図2aに示すように、概略的に図示した矢印のように互いに運動させ、次に、熱の作用下でろうを溶融させると、まず、上述のように、低融点の活性化されたろうシート4aが溶融し、セラミックの表面と最適に、活性元素と適当な酸化物を形成しつつ反応する。さらに高い温度に到達して初めて、ニッケルをベースとするろうシート3aも溶融し、最終的に、図2bに示すように、素材結合が生じる。ただし、図2bは、概略的な図示であって、典型的には、両層3a及び4aは、互いに融合し、必ずしも、図示のような、分離された領域を有する明確に分離された層構造を有しない。
【0048】
択一的には、いわばニッケルをベースとする層を担体層3bとして形成することが可能である。担体層3bは、片側にのみ、すなわち、最終的にセラミック製の構成部品2に面する側にのみ、活性ろうからなるコーティング4bを有している。
【0049】
このような実施の形態は、図2c及び図2dに示してある。
【0050】
このような非対称の部材は、次に、図2cに示すように、活性ろう層がセラミック製の構成部品に面しているように、両表面間に挿入される。次に、これらの構成部品を、上述の実施の形態と同様に、矢印に沿って互いに運動させ、熱の入力下でろうを溶融させると、やはり、まず、活性ろう層が溶融され、セラミックの表面を濡らし、かつ適当な酸化物を形成し、より高温になって初めて、ニッケルをベースとするろう層3bも溶融し、次に、冷却後、強力な素材結合を金属の部材1とセラミックの部材2との間に形成する。
【0051】
別の実施の形態において、例えば、上述したような、融点を下げる成分を含有する、ニッケルをベースとする材料の表面上に、活性な元素又は活性な元素と例えばニッケルとからなる組み合わせをコーティングする(例えば蒸着又はスパッタリングする)ことも可能である。このことは、ニッケルをベースとするろう層3bの表面上に設けられる、活性な元素と場合によっては別の成分とからなる所定の層(例えば所定のチタン‐ニッケル層)に至る。次に、活性な金属によりコーティングされた面は、図2c及び図2dに示すように、セラミックに向けられる。本実施の形態では、対応する層4bが支持機能を果たす必要がないので、図2aあるいは図2bに示した実施の形態より薄い活性元素/ニッケル層が使用可能である。それにもかかわらず、このような薄層は、セラミックの表面を濡らすという役割を効率的に果たすことができ、これにより、活性な元素の使用量をまさに必要な分量だけに低く維持することが可能である。
【0052】
択一的な形態は、ニッケルをベースとするろう層3bを表面的に機械的にチタン/ニッケル層と合金化することにある。
【符号の説明】
【0053】
1 金属の部材、 2 セラミックの部材、 3a ニッケルをベースとするろうシート、 3b ニッケルをベースとするろう層、 4a 活性ろうシート、 4b 活性ろう層、 5 複ろう部材、 6 結合箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックの表面(2)を金属の表面(1)に素材結合式に結合するための複ろう部材(3,4,5)において、Si、B、Mn、Sn、Geからなる群より選択される融点を下げる少なくとも1つの成分を含む、少なくとも50質量%のNi含有量を有するNiをベースとするろうからなる少なくとも1つの第1の層(3)と、合計で1〜15質量%のTi、Hf、Zr、Vからなる群より選択される活性な元素の含有量を有する活性ろう材料からなる少なくとも1つの第2の層(4)とを備えることを特徴とする、セラミックの表面を金属の表面に素材結合式に結合するための複ろう部材。
【請求項2】
前記第1の層(3)及び前記第2の層(4)のみを備え、前記第1の層(3)が、前記金属の表面(1)と接触するように設計されており、前記第2の層(4)が、前記セラミックの表面(2)と接触するように設計されており、有利には、前記第1の層(3)の融点が、前記第2の層(4)の融点より30〜200Kの範囲で高い、請求項1記載の複ろう部材。
【請求項3】
前記第1の層(3)及び前記第2の層(4)が、遅くともろう接プロセス時に接合される個別のシートとして形成されており、有利には、両層(3,4,5)が少なくとも点状に互いに結合されている、請求項1又は2記載の複ろう部材。
【請求項4】
前記第1の層(3)が担体層(3b)として形成されており、前記第2の層(4)が有利には片側のみのコーティング(4b)として、特に有利には蒸着かつ/又はスパッタリングされたコーティングとして形成されている、請求項1記載の複ろう部材。
【請求項5】
前記第1の層(3)の材料が、900〜1200℃の範囲の融点、有利には1050〜1150℃の範囲の融点を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の複ろう部材。
【請求項6】
前記第2の層(4)の材料が、700〜1100℃の範囲、有利には900〜1000℃の範囲の融点を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の複ろう部材。
【請求項7】
前記第2の層(4)が、3〜200μmの範囲、有利には20〜100μmの範囲の厚さを有しており、かつ/又は前記第1の層(3)が、50〜1000μmの範囲、有利には300〜600μmの範囲の厚さを有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の複ろう部材。
【請求項8】
前記第2の層(4)が、合計で3〜10質量%のTi、Hf、Zr、Vからなる群より選択される活性な元素の含有量を有する有利にはNiをベースとするろうからなる、請求項1から7までのいずれか1項記載の複ろう部材。
【請求項9】
前記第2の層(4)が、合計で1〜15質量%、有利には3〜10質量%のTi、Hf、Zr、Vからなる群より選択される活性な元素の含有量を有するAu、Ag又はPdをベースとするろうからなる、請求項1から8までのいずれか1項記載の複ろう部材。
【請求項10】
前記第1の層(3)が、少なくとも50質量%のNi含有量を有するNiをベースとするろうであり、該ろうに、Al、Cr、Fe、Ta、Co、Y及びWからなる群より選択される別の元素と、前記融点を下げる成分としてSi、Mn、Sn、Ge及び/又はBとが混合されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の複ろう部材。
【請求項11】
前記第1の層(3)が、少なくとも50質量%のNi含有量を有するNiをベースとするろうからなる担体シートであり、該ろうに、Al、C、Cr、Ta、Co、Fe、Y及びWからなる群より選択される別の元素と、前記融点を下げる成分としてSi及び/又はBとが混合されており、前記担体シート上に前記第2の層(4)が、片側のみのコーティングとして被着されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の複ろう部材。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の複ろう部材(3,4,5)を製造する方法において、Niをベースとするろうからなる担体シート(3)の片側にコーティングを第2の層(4)として被着し、被着に際して、該コーティングを有利には実質的に連続したプロセスにおいて蒸着かつ/又はスパッタリングし、かつ/又はNiをベースとするろうからなる担体シート(3)の片側に第2の層(4)を被着し、被着に際して、該コーティングを有利には粉末状に前記担体シート上に被着し、次に機械的に、有利にはロールがけ又はプレスがけにより、又は熱的に、有利にはレーザ、熱放射、誘導加熱により処理することを特徴とする、複ろう部材を製造する方法。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の複ろう部材(3,4,5)の、金属の表面(1)をセラミックの表面(2)にろう接プロセスで結合するための使用、特にガスタービンのコンポーネントを結合するための使用。
【請求項14】
金属の表面(1)をセラミックの表面(2)にろう接プロセスで結合する方法において、請求項1から10までのいずれか1項記載の複ろう部材(3,4,5)を、前記第1の層(3)が前記金属の表面(1)に面し、かつ前記第2の層(4)が前記セラミックの表面に面するように前記金属の表面(1)と前記セラミックの表面(2)との間に導入し、次に、熱エネルギを供給しながら、前記複ろう部材(3,4,5)を溶融させ、前記金属の表面(1)と前記セラミックの表面(2)との間に素材結合を形成しながら冷却し、有利には、前記金属の表面(1)が、有利にはNi及び/又はCoをベースとする耐高温性の超合金であり、かつ/又は有利には前記セラミックの表面が、セラミックの耐熱層、有利にはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)をベースとするセラミックであることを特徴とする、金属の表面をセラミックの表面にろう接プロセスで結合する方法。
【請求項15】
ガスタービンコンポーネントにおいて、少なくとも部分的に前記金属の表面(1)にセラミックの部材(2)が請求項12から14までのいずれか1項記載の方法を用いて固定されていることを特徴とするガスタービンコンポーネント。

【図1】
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【図2a)】
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【図2b)】
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【図2c)】
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【図2d)】
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【公表番号】特表2012−521951(P2012−521951A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502558(P2012−502558)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053498
【国際公開番号】WO2010/112342
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】