説明

O6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼと反応するピリミジン

本発明は、O6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)の基質として適切である、式(I)[式中、R1は、水素、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチルまたはアジドであり;R2は、リンカーであり;Lは、標識、または同じであるか、もしくは異なる複数の標識である]で示されるピリミジンに関する。本発明は、更に、標識を、式(I)のピリミジンからO6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)およびAGT融合タンパク質に移転する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標識を基質からO6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)およびO6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ融合タンパク質へと移転させる方法、およびそのような方法における基質として適切であるピリミジンに関するものである。
【0002】
背景技術
N−メチル−N−ニトロソ尿素のような求電子物質の突然変異誘発および発癌効果は、主として、DNA中のグアニンのO6−アルキル化に起因する。それらをDNAアルキル化から防護するために、哺乳動物および細菌は、これらの病変を修復するタンパク質、すなわちO6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)を保有している。AGTは、アルキル基を、アルキル化されたグアニンおよびグアニン誘導体のO6位から自分自身のシステインの一つのメルカプト基へと移転して、不可逆的にアルキル化されたAGTをもたらす。これを裏付ける機序は、SN2型の求核性反応であって、これにより、メチル基ばかりでなく、ベンジル基も容易に転移される理由が説明される。腫瘍細胞におけるAGTの過剰発現が、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド(temozolomide)およびビス−2−クロロエチル−N−ニトロソ尿素のようなアルキル化剤に対する耐性の主な理由であることから、AGTのインヒビターを、化学療法における増感剤として用いるよう提唱されている[Pegg et al., Progr. Nucleic Acid Res. Mol. Biol., 51: 167-223, 1995]。国際公開第97/20843号公報(WO 97/20843)は、AGT枯渇化合物として作用する4−ヘテロアリールメトキシピリミジン、および腫瘍細胞内のAGTレベルを枯渇させ、それによってアルキル化抗腫瘍剤に対する応答性を増大させるためのその使用を記載している。
【0003】
国際公開第02/083937号公報(WO 02/083937)は、問題のタンパク質を検出かつ/または操作する方法を開示しているが、ここでは、タンパク質をAGTと融合させ、AGT融合タンパク質を、標識を有するAGTの基質と接触させ、この標識を用いてAGT融合タンパク質を検出し、場合により更に操作する。用いるべきいくつかのAGT融合タンパク質、AGTの基質の一般的な構造原理、ならびにこの方法に役立つ非常に多様な標識、および標識を検出する方法が記載されている。
【0004】
国際公開第2004/031404号公報(WO 2004/031404)は、問題のタンパク質を検出かつ/または操作するための記述された方法に用いるべき特定のAGT融合タンパク質、この方法によって得られる標識化融合タンパク質、および特定のAGT融合タンパク質を用いる方法を記載しており、関連する国際公開第2004/031405号公報(WO 2004/031405)は、問題のタンパク質を検出かつ/または操作するための記述された方法に適切な特定の標識を有する、更なるAGT基質、およびそのような特定の標識化された基質の適用を開示している。
【0005】
未公開のPCT/EP2005/050899は、この方法に適切であるAGT突然変異種を記載している。関連する未公開のPCT/EP2005/050900は、問題のタンパク質を検出かつ/または操作するための記述された方法に特に適切である標識を有する、グアニン(プリン)、アザプリンまたはピリミジン核を有する更なるAGT基質、およびそのような特定の標識化された基質の適用を開示している。
【0006】
発明の要約
本発明は、式(I):
【0007】
【化2】

【0008】
[式中、R1は、水素、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチルまたはアジドであり;R2は、リンカーであり;Lは、標識、または同じであるか、もしくは異なる複数の標識である]
で示されるピリミジンに関するものである。
【0009】
式(I)のこれらの化合物は、O6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)の基質として適切である。本発明は、更に、標識を式(I)のピリミジンからO6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)およびAGT融合タンパク質に移転する方法に関するものである。
【0010】
発明の詳細な説明
AGT基質として適切な特定のピリミジンは、式(I):
【0011】
【化3】

【0012】
[式中、R1は、水素、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチルまたはアジドであり;R2は、リンカーであり;Lは、標識、または同じであるか、もしくは異なる複数の標識である]
で示される化合物である。
【0013】
低級アルキルは、好ましくは、1〜7個、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキルで、直鎖または分枝鎖状であり;好ましくは、低級アルキルは、ブチル、たとえばn−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、プロピル、たとえばn−プロピルまたはイソプロピル、エチルまたはメチルである。最も好ましくは、低級アルキルはメチルである。
【0014】
ハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、特にクロロまたはブロモ、好ましくはクロロである。
【0015】
好適なのは、R1が水素、メチルまたはクロロ、特にメチルである化合物である。同様に、好適なのは、R1がトリフルオロメチルである化合物である。
【0016】
リンカー基R2は、好ましくは、標識L、または同じであるか、もしくは異なる複数の標識を本発明のピリミジンのベンジル基に結合する、柔軟性に富むリンカーである。リンカー単位は、予想される適用との関係で、すなわち、AGTを含む融合タンパク質への基質の転移について選ばれる。それはまた、適切な溶媒への基質の溶解度を上昇させる。用いられるリンカーは、実際に適用される条件下で化学的に安定である。リンカーは、AGTとの反応にも、標識Lの検出にも干渉しないが、式(I)の化合物とAGTを含む融合タンパク質との反応後の何らかの時点で切断されるように構築してもよい。
【0017】
リンカーR2は、1〜300個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキレン基であって、場合により、
(a)1つ以上の炭素原子が酸素で置き換えられていて、特に3番目ごとの炭素原子が酸素で置き換えられた、たとえば1〜100個のエチレンオキシ単位を有するポリエチレンオキシ基であり;
(b)1つ以上の炭素原子が、水素原子を担持する窒素で置き換えられ、隣接する炭素原子がオキソで置換されて、アミド基−NH−CO−を表し;
(c)1つ以上の炭素原子が酸素で置き換えられ、隣接する炭素原子がオキソで置換されて、エステル基−O−CO−を表し;
(d)隣接する2つの炭素原子間の結合が二重結合または三重結合であって、基−CH=CH−または−C≡C−を表し;
(e)1つ以上の炭素原子がフェニレン、飽和もしくは不飽和シクロアルキレン、飽和もしくは不飽和ビシクロアルキレン、架橋複素芳香族、または架橋飽和もしくは不飽和ヘテロシクリル基で置き換えられ;
(f)隣接する2つの炭素原子が、ジスルフィド結合−S−S−で置き換えられているか;
あるいは場合により置換基を有する、2つ以上、特に2つまたは3つの、(a)ないし(f)でこれまでに定義されたアルキレンおよび/もしくは修飾アルキレン基の組合せである。
【0018】
考慮される置換基は、たとえば、低級アルキル、たとえばメチル、低級アルコキシ、たとえばメトキシ、低級アシルオキシ、たとえばアセトキシ、またはハロゲニル、たとえばクロロである。
【0019】
考慮される更なる置換基は、たとえば、α−アミノ酸、特に天然由来のα−アミノ酸をリンカーR2に組み込んだときに得られるものである(ここで、炭素原子は、(b)に定義されたアミド基−NH−CO−で置き換えられている)。そのようなリンカーでは、アルキレン基R2の炭素鎖の一部は、基−(NH−CHR−CO)n−(ここで、nは、1〜100であり、Rは、α−アミノ酸の様々な残基を表す)で置き換えられている。
【0020】
更なる置換基は、光切断性リンカーR2をもたらすもの、たとえばo−ニトロフェニル基である。特に、この置換基o−ニトロフェニル基は、アミド結合に隣接する炭素原子に位置し、たとえば基−NH−CO−CH2−CH(o−ニトロフェニル)−NH−CO−中に位置するか、ポリエチレングリコール鎖中の置換基として、たとえば基−O−CH2−CH(o−ニトロフェニル)−O−中に位置する。考慮されるその他の光切断性リンカーは、たとえばフェナシル、アルコキシベンゾイン、ベンジルチオエーテルおよびピバロイルグリコール誘導体である。
【0021】
(e)でこれまでに定義されたような、炭素原子と置き換わるフェニレン基は、たとえば1,2−、1,3−、または好ましくは1,4−フェニレンである。特定の実施態様では、フェニレン基は、ニトロ基で更に置換され、(a)、(b)、(c)、(d)および(f)に上記されたようなその他の置換と組み合わされ、光切断性の基を表し、たとえば、4−ニトロ−1,3−フェニレン(たとえば−CO−NH−CH2−(4−ニトロ−)1,3−フェニレン−CH(CH3)−O−CO−の)、または2−メトキシ−5−ニトロ−1,4−フェニレン(たとえば−CH2−O−(2−メトキシ−5−ニトロ−)1,4−フェニレン−CH(CH3)−O−の)、または2−ニトロ−1,4−フェニレン(たとえば−CO−O−CH2−(2−ニトロ−)1,4−フェニレン−CO−NH−の)である。光切断性リンカーを表すその他の特定の実施態様は、たとえば、−1,4−フェニレン−CO−CH2−O−CO−CH2−(フェナシル基)、−1,4−フェニレン−CH(OR)−CO−1,4−フェニレン−(アルコキシベンゾイン)、または−3,5−ジメトキシ−1,4−フェニレン−CH2−O−(ジメトキシベンジル部分)である。(e)にこれまで定義されたような、炭素原子と置き換わる飽和または不飽和シクロアルキレン基は、3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル、好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシルから誘導され、たとえば1,2−もしくは1,3−シクロペンチレン、1,2−、1,3−または好ましくは1,4−シクロヘキシレン、あるいはたとえば1もしくは2位が不飽和である1,4−シクロヘキシレンである。(e)にこれまで定義されたような、炭素原子と置き換わる飽和または不飽和ビシクロアルキレン基は、7〜8個の炭素原子を有するビシクロアルキルから誘導され、たとえば、ビシクロ[2.2.1]ヘプチレンまたはビシクロ[2.2.2]オクチレン、好ましくは場合により2位が不飽和であるか、または2および5位が二重に不飽和である、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレンである。(e)にこれまで定義されたような、炭素原子と置き換わる架橋複素芳香族基は、たとえば、トリアゾリデン、好ましくは1,4−トリアゾリデン、またはイソオキサゾリデン、好ましくは3,5−イソオキサゾリデンである。(e)にこれまで定義されたような、炭素原子と置き換わる架橋飽和または不飽和ヘテロシクリル基は、たとえば、上のR3に定義されたような不飽和ヘテロシクリル基、たとえばイソオキサゾリジネン、好ましくは3,5−イソオキサゾリジネンから誘導されるか、または3〜12個の炭素原子を有する(うち1〜3個は、窒素、酸素および硫黄から選ばれるヘテロ原子である)完全に飽和されたヘテロシクリル基、たとえばピロリジンジイル、ピペリジンジイル、テトラヒドロフランジイル、ジオキサンジイル、モルホリンジイルまたはテトラヒドロチオフェンジイル、好ましくは2,5−テトラヒドロフランジイルまたは2,5−ジオキサンジイルから誘導される。考慮される特定のヘテロシクリル基は、糖部分、たとえばα−もしくはβ−フラノシル、またはα−もしくはβ−ピラノシル部分である。
【0022】
リンカーR2内の環状の部分構造は、R2内の回転できる結合の数で測定される限りでの分子の柔軟性を低下させて、それが、in vivo細胞培養での標識化の用途のすべてに重要な、より充分な膜透過率へと導く。
【0023】
リンカーR2は、好ましくは、1〜25個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、または基AもしくはR3に、それぞれ、−CH=CH−もしくは−C≡C−基によって場合により結合された、4〜100個のエチレンオキシ単位を有する直鎖ポリエチレングリコール基である。好適なのは、更に、炭素原子がアミド基−NH−CO−で場合により置き換えられ、光切断性サブユニット、たとえばo−ニトロフェニルを場合により有する、1〜25個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である。好適なのは、更に、3〜6個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール基、および炭素原子がアミド結合で置き換えられ、更に置換アミノおよびヒドロキシル基を担持するアルキレン基を含む、分枝鎖リンカーである。その他の好適な分枝鎖リンカーは、アルキレン基の炭素原子をアミン、カルボキサミドおよび/またはエーテル基に置き換えた、樹枝状(樹木のような)構造を有する。
【0024】
特に好適なリンカーR2は、1つまたは2つの炭素原子が窒素で置き換えられ、0〜12個の炭素原子が酸素で置き換えられた、場合によりオキソで置換された、2〜40個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である。
【0025】
最も好適なリンカーR2は、1つまたは2つの炭素原子が窒素で置き換えられ、1つまたは2つの隣接する炭素原子がオキソで置換された、2〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、たとえばリンカー−CH2−NH(C=O)−または−CH2−NH(C=O)−(CH25−NH−である。
【0026】
リンカーR2は、1つ以上の同じであるか、もしくは異なる標識、たとえば1〜100個の同じであるか、または異なる標識、特に1〜5個、好ましくは1、2または3個、特に1つまたは2つの同じであるか、または異なる標識を担持し得る。
【0027】
標識Lは、融合タンパク質が意図される用途に応じて、当業者が選ぶことができる。標識は、たとえば、標識Lを担持する標識化された融合タンパク質が、その環境から容易に検出または分離されるようなものであり得る。考慮されるその他の標識は、標識化融合タンパク質および/もしくは基質の環境における変化を感知かつ誘導することができるもの、または基質の物理的および/もしくは化学的特性による融合タンパク質の操作を助け、特異的に融合タンパク質に導入された標識である。
【0028】
標識Lの例は、発蛍光団もしくは発色団のような分光学的プローブ、磁性プローブ、または造影剤;放射能で標識化された分子;結合相手と特異的に結合できる、特異的結合対の一方である分子;他の生体分子と相互作用すると疑われる分子;他の生体分子と相互作用すると疑われる分子のライブラリー;他の分子と架橋結合できる分子;H22およびアスコルビン酸と接触すると、ヒドロキシルラジカルを生成できる分子、たとえば束縛された金属キレート;光を照射すると、反応性ラジカルを生成できる分子、たとえばマラカイトグリーン;固体の支持体に共有結合する分子(支持体は、スライドグラス、微量滴定プレート、または当業者に公知のいかなる重合体でもあり得る);その相補鎖と塩基対を形成できる核酸またはその誘導体;膜挿入特性を有する脂質その他の疎水性分子;望ましい酵素的、化学的または物理的特性を有する生体分子;あるいは上に列挙された特性のいずれかの組合せを有する分子を包含する。
【0029】
更なる標識Lは、結合した分子を生細胞の原形質膜を越えての移転を促進することが知られている、正に荷電した直鎖または分枝鎖重合体である。これは、さもなければ低い細胞膜透過性を有するか、または生細胞の細胞膜に対して実質的に不透性である物質については特に重要である。細胞透過性でないAGT基質は、そのような基Lと結合すると、細胞膜透過性になるであろう。そのような細胞膜輸送エンハンサーである基Lは、たとえば、6〜15個のアルギニン残基を有するD−および/もしくはL−アルギニンからなる直鎖ポリアルギニン、グアニジニウム基をそれぞれ有する6〜15サブユニットからなる直鎖重合体、その一部がグアニジニウム基に結合した、6ないし50サブユニット以下からなるオリゴマーもしくは短鎖重合体、ならびに/またはHIV−tatタンパク質の配列の一部、特にサブユニットTat49〜Tat57(一文字アミノ酸コードではRKKRRQRRR)を含む。式(I)のピリミジンは、この基Lに、上記に定義されたとおりのリンカーR2を介して共有結合しているが、好ましくは、生細胞の内部では不安定であり、たとえば細胞内エステラーゼによるエステル基R2の切断によって分解して、直接にか、またはエステル基の切断によって誘発された更なる反応で、AGT基質の分離、および細胞膜透過性を高める単位Lへと導き得る。
【0030】
標識Lとして最も好適なのは、分光学的プローブ、および結合相手と特異的に結合できる、特異的結合対の一方である分子、いわゆる親和性標識である。
【0031】
標識Lが、発蛍光団、発色団、磁性標識、放射性標識などであるとき、検出は、その標識に適合させた標準的手段により、またその方法が、細胞培養もしくは組織サンプル内でのin vitroもしくはin vivoで用いられるかによる。Lが発蛍光団であるならば、方法は、緑色蛍光タンパク質(GFP)の適用であって、それを、問題のタンパク質に遺伝学的に融合させ、生細胞内でのタンパク質検査を可能にする。また、標識Lの特別な例は、非線形の光学的特性を示すホウ素化合物である。
【0032】
標識Lの特性によっては、問題のタンパク質およびAGTを含む融合タンパク質を、基質との反応の際に固体の支持体に結合してもよい。AGTを含む融合タンパク質と反応する基質の標識Lは、AGTとの反応に至ったときに、既に固体支持体に結合させておいてもよいか、またはその後、すなわちAGTへの移転後に、標識化されたAGT融合タンパク質を固体支持体に結合させるのに用いてもよい。標識が特異的な結合対の一方の成員であって、その他方の成員は、共有結合でか、もしくは他の何らかの手段によって固体支持体に結合させるか、または結合性であってもよい。考慮される特異的結合対は、たとえばビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジンである。結合対のいずれの成員が基質の標識Lであってもよく、他方を固体支持体に結合させる。固体支持体への好都合な結合を可能にする標識の更なる例は、たとえば、マルトース結合タンパク質、糖タンパク質、FLAGタグ、または固体支持体表面での相補的な官能基とそのような置換基との化学選択的反応を可能にする、反応性置換基である。反応性置換基および相補的官能基のそのような対の例は、たとえば、アミドを形成するアミンと活性化されたカルボキシル基、1,3−双極性付加環化反応を受けるアジ化物とプロピオル酸誘導体、二つのアミド結合を生じるアミンと活性化ビスジカルボン酸誘導体形式の付加二官能性リンカー試薬と反応する別のアミン官能基、または当技術に公知のその他の組合せである。
【0033】
好都合な固体支持体の例は、たとえば、スライドガラスのようなガラス表面、マイクロタイタープレート、および適切なセンサー要素、特に官能化された重合体(たとえばビーズ形態のもの)、化学的に修飾された酸化物の表面、たとえば二酸化ケイ素、五酸化タンタルもしくは二酸化チタン、または化学的に修飾された金属表面、たとえば金または銀表面のような貴金属表面である。そうして、AGT基質への不可逆的な結合および/または染着を用いて、AGT融合タンパク質を、空間的に分割されるようにして、特に染着を通じて、タンパク質のマイクロアレー、DNAのマイクロアレーまたは小分子のアレーを示す固体支持体に結合させ得る。
【0034】
標識Lが、外部刺激に接触すると、反応性ラジカル、たとえばヒドロキシルラジカルを生成できるときは、生成されたラジカルは、AGT融合タンパク質はもとより、AGT融合タンパク質にごく近いタンパク質も不活性化することができ、これらのタンパク質の役割を研究することを可能にする。そのような標識の例は、H22およびアスコルビン酸塩と接触するとヒドロキシルラジカルを生成する、テザー型金属キレート錯体(tethered metal-chelate complex)、ならびにレーザー照射されるとヒドロキシルラジカルを生成する、マラカイトグリーンのような発色団である。発色団およびレーザーを用いてヒドロキシルラジカルを生成することは、発色団支援レーザー励起不活性化(CALI)として当技術にも公知である。本発明では、標識L1としての発色団、たとえばマラカイトグリーンを担持する基質でAGT融合タンパク質を標識化すること、および続くレーザー照射が、標識化されたAGT融合タンパク質はもとより、AGT融合タンパク質と、時間的に制御され、空間的に分割された方式で相互作用するタンパク質も不活性化する。この方法は、細胞培養のin vivoでか、またはin vitroの双方に適用することができる。更に、AGT融合タンパク質にごく近いタンパク質は、特異的な抗体によるそのタンパク質のフラグメントの検出、高解像度二次元電気泳動ゲル上でのこれらのタンパク質の消失、または切断されたタンパク質フラグメントの分離、および質量分析もしくはN末端分解によるタンパク質配列決定のような配列決定手法による同定のいずれによっても、そのようなものとして同定することができる。
【0035】
標識Lが、他のタンパク質と架橋結合することができる分子、たとえばマレイミド、活性エステルまたはアジ化物、およびその他当技術に公知のもののような官能基を有する分子であるときは、そのような標識化AGT基質と、他のタンパク質と(in vivoまたはin vitroで)相互作用するAGT融合タンパク質との接触は、その相互作用するタンパク質とのAGT融合タンパク質の標識を介しての共有結合による架橋結合へと導く。これはAGT融合タンパク質と相互作用するタンパク質の同定を可能にする。光架橋結合のための標識Lは、たとえばベンゾフェノンである。架橋結合という特別な態様では、標識Lは、それ自身がAGT基質であって、AGT融合タンパク質の二量体化をもたらす分子である。そのような二量体の化学構造は、対称的(単独二量体)または非対称的(ヘテロ二量体)のいずれであってもよい。
【0036】
考慮されるその他の標識Lは、たとえば、フラーレン、中性子捕獲処理のためのボラン、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(たとえば自己対処型チップ向けの)、ペプチド核酸、金属キレート、たとえばDNAに特異的に結合する白金キレートである。
【0037】
望ましい酵素的、化学的もしくは物理的特性を有する特定の生体分子は、メトトレキサートである。メトトレキサートは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)なる酵素の強結合型インヒビターである。Lがメトトレキサートである式(I)の化合物は、いわゆる「二量体化の化学的誘導物質(CID)」という周知の群に属する。DNA結合ドメインLexAとのhAGTの融合タンパク質を用い、転写活性化ドメインB42を有するDHFRを、Lがメトトレキサートである式(I)の化合物とのhAGT融合タンパク質のin vivo細胞培養標識化に加えることは、hAGT−LexA融合タンパク質およびDHFR−B42融合タンパク質のカップリング(二量体化)を誘導して、LexAおよびB42の空間的近接性、ならびにその後の転写の刺激へと導く。
【0038】
基質が二つまたはそれ以上の標識を有するならば、これらの標識は、同一であるか、または異なっていてもよい。特定の好適な組合せは、異なる二つの親和性標識、または一親和性標識および一発色団標識、特に一親和性標識および一発蛍光団標識、または分光学的に相互に作用する一対の標識L1/L2、たとえばFRET対である。
【0039】
好適なのは、Lが、分光学的プローブ、特異的結合対の一方を表す分子、固体支持体に共有結合した分子、およびLが細胞膜輸送エンハンサーの基である化合物である。
【0040】
特に好適なのは、Lが、発蛍光団、たとえばフルオレセイン、テトラメチルローダミンまたはローダミングリーンである化合物である。同様に好適なのは、Lがビオチンである化合物である。
【0041】
最も好適なのは、実施例の化合物である。
【0042】
本発明は、更に、問題のタンパク質を検出かつ/または操作する方法であって、問題のタンパク質をAGT融合タンパク質に組み込み、AGT融合タンパク質を、上記の標識を有する特定のAGT基質に接触させ、標識を、該標識を認識し、かつ/または取り扱うために設定されたシステム内で用いて、AGT融合タンパク質を検出し、かつ場合により更に操作する工程を含む方法に関するものである。
【0043】
本発明の方法では、問題のタンパク質またはペプチドを、O6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)に融合させる。問題のタンパク質またはペプチドは、いかなる長さのものでも、また二次、三次または四次構造があるもの、およびないものの双方であってもよく、好ましくは、12以上のアミノ酸および2,000以下のアミノ酸からなる。そのような問題のタンパク質またはペプチドの例は、たとえば、酵素、DNA結合タンパク質、転写調節タンパク質、膜タンパク質、核レセプタータンパク質、核局在化シグナルタンパク質、タンパク質補因子、小単量体のGTPアーゼ、ATP結合カセットタンパク質、細胞内構造タンパク質、特定の細胞区画をタンパク質の標的とする原因になる配列を有するタンパク質、標識または親和性タグとして一般的に用いられるタンパク質、および上記タンパク質のドメインまたはサブドメインである。問題のタンパク質またはペプチドは、好ましくは、酵素によって切断され得るリンカーを用いることによって、たとえばDNA段階で適切な制限酵素によって、かつ/またはタンパク質の段階で適切な酵素によって切断できるリンカーによって、AGTに融合させる。
【0044】
6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)は、基質に存在する標識を、融合タンパク質の一部を形成するAGTのシステイン残基の一つに移転する特性を有する。好適実施態様では、AGTは、野生型のヒトO6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ、すなわちhAGT、またはその突然変異種、たとえばJuillerat et al., Chem. Biol., 10: 313-317, 2003、またはPCT/EP2005/050899に記載されたような突然変異種である。本発明に用いようとする突然変異種AGTは、1以上、たとえば10以下のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加のために野生型hAGTとは異なり得るが、基質に存在する標識を融合タンパク質のAGT部分に移転する特性をなおも保持している。突然変異種AGTは、好ましくは、当業者に公知のタンパク質加工手法、たとえば、飽和突然変異誘発、配列中のいかなる個所にも変異を導入するための変異性PCR、または飽和突然変異誘発および/もしくは変異性PCRの後に用いられるDNAシャッフリングを用いて生成し得る。
【0045】
問題のタンパク質およびO6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)を含む融合タンパク質を、標識を有する特定の基質と接触させる。反応条件は、AGTが、基質と反応し、基質の標識を移転するように選ぶ。通常の条件は、室温、たとえば25℃前後のpH7前後の緩衝液である。しかし、AGTは、その他様々な条件下でも反応することが理解され、ここに列挙したような条件は、本発明の対象範囲を限定するものではない。
【0046】
AGTは、アルキル基を、その天然の基質、すなわちO6−アルキルグアニン−DNAから、そのシステイン残基の一つに不可逆的に移転する。同様に、AGTは、式(I)のピリミジン核のO4(またはO6のそれぞれ)に結合した置換ベンジル基を、そのシステイン残基の一つに移転する。AGTのこの特性を本発明の方法に用いて、式(I)の化合物の残基−CH2−C64−R2−Lとしての標識Lを、AGTに移転するのである。
【0047】
基質のこの標識Lは、融合タンパク質が意図される用途に応じて、当業者が選ぶことができる。AGTを含む融合タンパク質を基質に接触させた後、標識Lを融合タンパク質に共有結合させる。次いで、標識化されたAGT融合タンパク質を、移転された標識に基づいて更に操作かつ/または検出する。標識Lは、複数の同じであるか、または異なる標識からなってもよい。基質が二つ以上の標識を有するならば、対応する標識化AGT融合タンパク質も、二つ以上の標識を含んでいて、それらが、標識化融合タンパク質を更に操作かつ/または検出するための選択肢を与えることになる。
【0048】
in vitroでは、本発明の基質とのAGT融合タンパク質の反応は、一般に、細胞抽出物中でか、またはAGT融合タンパク質の精製もしくは富化された形態でかのいずれで実施することもできる。
【0049】
本発明の基質による実験を、細胞培養においてin vivoでか、または細胞抽出物中で実施するならば、宿主の内在AGTの反応を斟酌するのが好都合である。宿主の内在AGTが式(I)のピリミジンを基質として受け入れないならば、(外来)AGT融合タンパク質の反応は、特異的である。哺乳動物細胞、たとえばヒト、マウスまたはラット細胞では、内在AGTとの非特異的反応が生じる可能性がある。内在AGTと並ぶ(外来)AGT融合タンパク質の同時反応が問題を投じるような実験では、公知のAGT欠乏細胞系を用いることができる。
【0050】
実験は、好ましくは、ヒトまたは動物の体外で達成する。特に、in vitroでか、または細胞培養におけるin vivoで実施する。
【0051】
製造方法
本発明のピリミジンは、一般的には、当技術に公知の標準的な方法によって製造する。本発明は、上記のとおりの新規な方法、および用いられ、かつ得られた新規中間体にも関するものである。
【0052】
とりわけ、式(I)の化合物は、
(A)式(II):
【0053】
【化4】

【0054】
[式中、R1は、式(I)で定義されたとおりの意味を有し、R3は、式(I)で反応性官能基を更に有するR2について定義されたとおりのリンカー基である]
で示される化合物と、式(I)で定義されたとおりの標識、もしくはその反応性誘導体との反応、または
(B)式(III):
【0055】
【化5】

【0056】
[式中、R1は、式(I)で定義されたとおりの意味を有し、R4は、反応性官能基である]
で示される化合物と、式(IV):
【0057】
【化6】

【0058】
で示されるアルコラートとの反応によって製造され、所望ならば、得られる式(I)の化合物を、式(I)の別の化合物に転換し、遊離形態の式(I)の化合物を、塩に転換し、得られる式(I)の化合物の塩を、遊離形態の化合物または別の塩に転換し、かつ/または式(I)の異性体化合物の混合物を、個々の異性体へと分離する。
【0059】
工程(A)では、置換基R3中の更なる反応性官能基は、たとえば、Lのカルボキシル基と反応し得るアミノ、ヒドロキシルもしくはチオ基、または標識Lのアミノ、ヒドロキシルもしくはチオ基と反応し得るカルボキシル基である。反応条件は、対応する反応性基に従って選んでよく、たとえば、アミノ基を(活性化された)カルボキシル基と結合するためのタンパク質化学に公知のそれである。活性化されたカルボキシル基は、たとえばN−スクシンイミジルエステルである。この反応は、通常、適切な溶媒の存在下、冷却または加熱しつつ、たとえば約−30〜約+150℃の温度範囲、特に約0℃前後ないし室温で実施する。
【0060】
工程(B)では、反応性基R4は、ハロゲン、たとえばクロロまたはブロモ、またはアンモニウム基、たとえばトリメチルアンモニウムまたはメチルピロリジニウムであって、SN2型の反応で容易に置換可能である。反応性基として好適なのは、クロロである。反応条件は、対応する反応性基に従って選んでよく、たとえば、SN2型置換反応に適切なことが公知のそれである。この反応は、それ自体は公知である方式で、通常は塩基の存在下、通常は適切な溶媒の存在下、冷却または加熱しつつ、たとえば約−30〜約+150℃の温度範囲、特に約0℃前後ないし室温で実施する。化合物(IV)のアルコラートは、好ましくは、適切な塩基、たとえばトリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジンもしくはジエチルイソプロピルアミンのような三置換アミンによってか、または好ましくは水素化ナトリウムとの反応によって、対応するベンジル性アルコールから、そのままの位置で形成される。
【0061】
適切な溶媒は、極性不活性溶媒、たとえばテトラヒドロフランのようなエーテル、またはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、また好ましくはジメチルアセトアミドのような、双極性非プロトン性溶媒である。
【0062】
1つ以上のその他の官能基、たとえばカルボキシル、ヒドロキシルまたはアミノは、反応に関与してはならないため、式(II)、(III)、(IV)の化合物または標識L中で保護するか、もしくは保護しなければならないならば、これらは、アミド、特にペプチド化合物、セファロスポリン、ペニシリン、核酸誘導体および糖類の合成に通常適用されるような保護基である。保護基は、前駆体中に既に存在してもよく、望ましくない二次反応、たとえばアシル化、エーテル化、エステル化、酸化、加溶媒分解および類似の反応から問題の官能基を保護しなければならない。代表的には、たとえば生理学的条件に類似する条件下での、加溶媒分解、還元、光分解または酵素活性によって、自身が容易に、すなわち望ましくない二次反応なしに、除去するのに役立つこと、および最終生成物中に存在しないことが保護基の特徴である。専門家は、上記および以下に述べる反応では、いかなる保護基が適切であるかを、知っているか、または容易に確立することができる。
【0063】
そのような保護基、保護基自体、およびその除去反応による、そのような官能基の保護は、たとえば、ペプチド合成のための標準的参考書籍、およびT.W. Greene & P.G.M. Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis", Wiley, 3rd ed., 1999のような、保護基に関する特別の書籍に記載されている。
【0064】
塩形成基を有する式(I)の化合物の塩は、それ自体は公知である方式で製造し得る。したがって、式(I)の化合物の酸付加塩は、酸によるか、または適切な陰イオン交換試薬による処理によって入手し得る。
【0065】
塩は、通常、たとえば、適切な塩基性薬剤、たとえばアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩またはアルカリ金属水酸化物、代表的には炭酸カリウムまたは水酸化ナトリウムによる処理によって、遊離化合物に転換することができる。
【0066】
ここに記載された方法の工程は、すべて、公知の反応条件下で、好ましくは具体的に列挙された条件下で、反応および/または反応物質の種類に応じて、溶媒または希釈剤、好ましくは用いられる試薬に対して不活性であり、これらを溶解しうるようなものの不在下、もしくは通常は存在下で、触媒、縮合剤または中和剤、たとえばイオン交換剤、代表的には陽イオン交換剤、たとえばH+形態のものの不在もしくは存在下で、低温、常温または高温、たとえば−100〜約190℃、好ましくは約−80〜約150℃の温度範囲内、たとえば−80〜+60℃、−20〜+40℃、室温、または用いられる溶媒の沸点で、大気圧下でか、または適切な場合は圧力下の密閉容器内で、かつ/または不活性雰囲気、たとえばアルゴンまたは窒素下で実施することができる。
【0067】
塩は、すべての出発化合物および過渡的物質中に、これらが塩形成基を有するならば存在し得る。塩は、反応がそれによって妨害されない限りは、そのような化合物の反応の際にも存在し得る。
【0068】
すべての反応段階で、生じる異性体混合物は、その個々の異性体、たとえばジアステレオ異性体、位置異性体もしくは鏡像異性体にか、または異性体のいかなる混合物、たとえばラセミ化合物もしくはジアステレオ異性体混合物にも分離することができる。
【0069】
好適実施態様では、式(I)の化合物は、実施例中に定義された方法および方法の工程に従ってか、またはそれと同様にして製造される。
【0070】
新規な出発材料および/または中間体はもとより、その製造方法も、同様に、本発明の主題である。好適実施態様では、そのような出発材料が用いられ、反応条件は、好適な化合物を得るのを可能にするよう選ばれる。
【0071】
式(II)の出発材料は、公知であるか、商業的に入手可能であるであるか、または当技術に公知である方法と同様にしてか、もしくはそれに従って、たとえば(B)と同様にして合成することができる。対応する式(III)および(IV)の化合物も、同様に、公知であるか、商業的に入手可能であるであるか、または当技術に公知である方法と同様にしてか、もしくはそれに従って製造することができる。
【0072】
実施例
実施例1:2−アミノ−4−クロロピリミジン(2)および4−アミノ−2−クロロピリミジン(3)
水酸化アンモニウム(25%、125ml)中の2,4−ジクロロピリミジン(7.45g、50.0mmol)の懸濁液を、室温で5時間撹拌した。不溶性材料の外見は、「塩状」から「雪状」へと変化した。沈澱を、濾過によって回収し、減圧下で乾燥した。この未精製材料を、MeOH:CH2Cl2(1:1)に再溶解し、SiO2に吸収させ、カラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル=5:1〜1:1の勾配)によって精製して、1.48g(23%)の2、および1.73g(26%)の3を得た(TLC、シクロヘキサン:酢酸エチル=3:1、Rf(2)=0.45、Rf(3)=0.32)、ESI−MS:m/z=129.8[M+H]+
【0073】
実施例2:N−[4−(2−アミノピリミジン−4−イルオキシメチル)ベンジル]−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(5)
2,2,2−トリフルオロ−N−(4−ヒドロキシメチルベンジル)アセトアミド252mg(1.15mmol)を、乾ジメチルアセトアミド2mlにアルゴン雰囲気下で溶解し、NaH56mg(2.31mmol)を加えた。2−アミノ−4−クロロピリミジン(2)100mg(0.77mmol)を加え、溶液を室温で一晩撹拌した。水1mlを注意深く加えて、すべての過剰なNaHをクエンチさせ、混合物を0.5NHCl 50ml中に注いだ。粗生成物を、酢酸エチルで抽出し、併せた有機相を、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン=1:1)によって精製した。収率:160mg(63%)、ESI−MS:m/z=327.4[M+H]+
【0074】
実施例3:4−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノピリミジン(6)
N−[4−(2−アミノピリミジン−4−イルオキシメチル)ベンジル]−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(5)50mg(1.53mmol)を、メタノール1mlに溶解し、メチルアミン(エタノール中33%)2mlで処理した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、すべての揮発性物質を減圧下で除去した。生成物は、更に精製せずに次の工程で用いた。ESI−MS:m/z=231.4[M+H]+
【0075】
実施例4:N−[4−(2−アミノピリミジン−4−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−6−カルボキサミド(7)およびN−[4−(2−アミノピリミジン−4−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−5−カルボキサミド(8)
【0076】
【化7】

【0077】
4−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノピリミジン(6)8mg(0.03mmol)および5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン スクシンイミジルエステル(Molecular Probes、7.47mg、0.014mmol)を、TEA20μlを含むDMF850μlに溶解し、室温で24時間放置した。生成物を精製し、水:アセトニトリルの線形勾配(20分間に95:5〜20:80、TFA0.08%)を用いたC18カラムでの逆相MPLC(中圧液体クロマトグラフィー)によって、5−および6−異性体を分離した。(MS)ESI:m/z=658.8[M−Cl]+
【0078】
実施例5:N−[4−(2−アミノ−4−メチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(10)
2,2,2−トリフルオロ−N−(4−ヒドロキシメチルベンジル)アセトアミド812mg(3.48mmol)を、乾ジメチルアセトアミド3mlにアルゴン雰囲気下で溶解し、NaH167mg(6.96mmol)を5分間にわたって加えた。次いで、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン500mg(3.48mmol)を加え、溶液を、90℃で一晩撹拌した。水1mlを注意深く加えて、すべての過剰なNaHをクエンチさせ、混合物を0.5NHCl 50ml中に注いだ。粗生成物を、酢酸エチルで抽出し、併せた有機相を、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン=1:1〜3:1の勾配)によって精製した。収率:350mg(29%)、ESI−MS:m/z=341.7[M+H]+
【0079】
実施例6:6−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノ−4−メチルピリミジン(11)
N−[4−(2−アミノ−4−メチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(15mg、0.061mmol)を、メタノール1mlに溶解し、メチルアミン(エタノール中33%)2mlで処理した。反応混合物を、室温で一晩撹拌し、すべての揮発性物質を、減圧下で除去した。生成物は、更に精製せずに、次の工程で用いた。ESI−MS:m/z=245.1[M+H]+
【0080】
実施例7:N−[4−(2−アミノ−4−メチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−6−カルボキサミド(12)およびN−[4−(2−アミノ−4−メチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−5−カルボキサミド(13)
【0081】
【化8】

【0082】
6−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノ−4−メチルピリミジン(11)8mg(0.03mmol)および5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン スクシンイミジルエステル(Molecular Probes、7.47mg、0.014mmol)を、TEA20μlを含むDMF850μlに溶解し、室温で24時間放置した。生成物を精製し、水:アセトニトリルの線形勾配(20分間に95:5〜20:80、TFA0.08%)を用いたC18カラムでの逆相MPLCによって、5−および6−異性体を分離した。(MS)ESI:m/z=658.8[M−Cl]+
【0083】
実施例8:N−[4−(2−アミノ−4−クロロピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(15)
2,2,2−トリフルオロ−N−(4−ヒドロキシメチルベンジル)アセトアミド356mg(1.52mmol)を、乾ジメチルアセトアミド3mlにアルゴン雰囲気下で溶解し、NaH73.1mg(3.1mmol)を加えた。次いで、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン250mg(1.54mmol)を加え、溶液を、90℃で一晩撹拌した。水1mlを注意深く加えて、すべての過剰なNaHをクエンチさせ、混合物を0.5NHCl 50ml中に注いだ。粗生成物を、酢酸エチルで抽出し、併せた有機相を、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン=1:1〜3:1の勾配)によって精製した。収率:254mg(46%)、ESI−MS:m/z=361.1[M+H]+
【0084】
実施例9:6−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノ−4−クロロピリミジン(16)
N−[4−(2−アミノ−4−クロロピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(15)65mg(0.18mmol)を、メタノール1mlに溶解し、メチルアミン(エタノール中33%)2mlで処理した。反応混合物を、室温で一晩撹拌し、すべての揮発性物質を、減圧下で除去した。生成物は、更に精製せずに、次の工程で用いた。ESI−MS:m/z=265.3[M+H]+
【0085】
実施例10:N−[4−(2−アミノ−4−クロロピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−6−カルボキサミド(17)およびN−[4−(2−アミノ−4−クロロピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−5−カルボキサミド(18)
【0086】
【化9】

【0087】
6−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノ−4−クロロピリミジン(16)8mg、(0.03mmol)および5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン スクシンイミジルエステル(7.47mg、0.014mmol)を、TEA20μlを含有するDMF850μlに溶解し、室温で24時間放置した。生成物を精製し、水:アセトニトリルの線形勾配(20分間に95:5〜20:80、TFA0.08%)を用いたC18カラムでの逆相MPLCによって、5−および6−異性体を分離した。(MS)ESI:m/z=714.7[M−Cl]+
【0088】
実施例11:N−[4−(2−アミノ−4−メチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]ローダミングリーン−6−カルボキサミド(19)
【0089】
【化10】

【0090】
6−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノ−4−メチルピリミジン(11)8mg(0.03mmol)および5(6)−カルボキシローダミングリーン スクシンイミジルエステル(Molecular Probes、7.10mg、0.014mmol)を、TEA20μlを含むDMF850μlに溶解し、室温で24時間放置した。生成物を、水:アセトニトリルの線形勾配(20分間に95:5〜20:80、TFA0.08%)を用いたC18カラムでの逆相MPLCによって精製した。(MS)ESI:m/z=602.5[M−Cl]+
【0091】
実施例12:N−[4−(2−アミノピリミジン−4−イルオキシメチル)ベンジル]−6−ビチニルアミノヘキサノイルカルボキサミド(21)
【0092】
【化11】

【0093】
4−(4−アミノメチルベンジル)−2−アミノピリミジン(6)3.5mg(0.015mmol)およびN−(+)−ビオチニルアミノカプロン酸スクシンイミジルエステル(3.5mg、0.007mmol)を、TEA4μlを含むDMF300μlに溶解し、室温で24時間放置した。生成物を、水:アセトニトリルの線形勾配(20分間に95:5〜20:80、TFA0.08%)を用いたC18カラムでの逆相MPLCによって精製した。(MS)ESI:m/z=570.8[M+H]+
【0094】
実施例13:N−[4−(2−アミノ−4−メチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]−6−ビチニルアミノヘキサノイルカルボキサミド(22)
【0095】
【化12】

【0096】
6−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノ−4−メチルピリミジン(11)3.5mg(0.015mmol)およびN−(+)−ビオチニルアミノカプロン酸スクシンイミジルエステル(3.5mg、0.007mmol)を、TEA4μlを含むDMF300μlにTEA4μlとともに溶解し、室温で24時間放置した。生成物を、水:アセトニトリルの線形勾配(20分間に95:5〜20:80、TFA0.08%)を用いたC18カラムでの逆相MPLCによって精製した。(MS)ESI:m/z=584.8[M+H]+
【0097】
実施例14:N−[4−(2−アミノ−4−クロロピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]−6−ビチニルアミノヘキサノイルカルボキサミド(23)
【0098】
【化13】

【0099】
6−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノ−4−クロロピリミジン(16)3.5mg(0.015mmol)およびN−(+)−ビオチニルアミノカプロン酸スクシンイミジルエステル(3.5mg、0.007mmol)を、TEA4μlを含むDMF300μlに溶解し、室温で24時間放置した。生成物を、水:アセトニトリルの線形勾配(20分間に95:5〜20:80、TFA0.08%)を用いたC18カラムでの逆相MPLCによって精製した。(MS)ESI:m/z=604.2[M+H]+
【0100】
実施例15:4−クロロ−6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−アミン(24)
2−アミノ−6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−4−オール(200mg、1.1mmol)をPOCl3(3当量、0.3ml、3.3mmol)に溶解し、ジメチルアニリン(0.28ml、2当量)を加えた。反応混合物を70℃に4時間加熱した。得られた混合物を氷水混合物中に注ぎ、得られた沈澱を回収して、所望の化合物24を59%の収率で得た。ESI−MS:m/z=198[M+H]+
【0101】
実施例16:N−[4−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(25)
2,2,2−トリフルオロ−N−(4−ヒドロキシメチルベンジル)アセトアミド322mg(1.38mmol)を、乾ジメチルアセトアミド2mlにアルゴン雰囲気下で溶解し、NaH50mg(2.1mmol)を加えた。次いで、4−クロロ−6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−アミン(24)136mg(0.69mmol)を加え、溶液を90℃で一晩撹拌した。水1mlを注意深く加えて、すべての過剰なNaHをクエンチさせ、混合物を0.5NHCl 50ml中に注いだ。粗生成物を、酢酸エチルで抽出し、併せた有機相を、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン=1:1〜3:1の勾配)によって精製した。
【0102】
実施例17:6−(4−アミノメチル−ベンジルオキシ)−2−アミノ−4−トリフルオロピリミジン(26)
N−[4−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(25)50mg(0.15mmol)を、メタノール1mlに溶解し、メチルアミン(エタノール中33%)2mlで処理した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、すべての揮発性物質を減圧下で除去した。生成物は、更に精製せずに次の工程で用いた。
【0103】
実施例18:N−[4−(2−アミノ−4−トリフルオロピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−6−カルボキサミド(27)およびN−[4−(2−アミノ−4−トリフルオロピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−5−カルボキサミド(28)
【0104】
【化14】

【0105】
6−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノ−4−トリフルオロピリミジン(26)4.5mg(0.015mmol)および5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン スクシンイミジルエステル(2mg、0.0038mmol)を、TEA1μlを含むDMF420μlに溶解し、室温で24時間放置した。生成物を精製し、5−および6−異性体を、水:アセトニトリルの線形勾配(20分間に95:5〜20:80、TFA0.08%)を用いたC18カラムでの逆相MPLCによって分離した。(MS)ESI:m/z=711.1[M−Cl]+
【0106】
実施例19:N−[4−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]ローダミングリーン−6−カルボキサミド(29)
【0107】
【化15】

【0108】
6−(4−アミノメチルベンジルオキシ)−2−アミノ−4−メチルピリミジン(26)5.4mg(0.018mmol)および5(6)−カルボキシローダミングリーン スクシンイミジルエステル(Molecular Probes、2.2mg、0.00433mmol)を、TEA1μlを含むDMF500μlに溶解し、室温で24時間放置した。生成物を、水:アセトニトリルの線形勾配(20分間に95:5〜20:80、TFA0.08%)を用いたC18カラムでの逆相MPLCによって精製した。(MS)ESI:m/z=655.6[M−Cl]+
【0109】
実施例20:AGT融合タンパク質のための標識化プロトコル
hAGTを欠くCHO細胞内に安定的なトランスフェクションを生じさせるために、hAGTの以下の修飾の融合を用いた:Cys62Ala、Lys125Ala、Lys127Thr、Arg128Ala、Gly131Lys、Gly132Thr、Met134Leu、Arg135Ser、Cys150Ser、Asn157Gly、Ser159Glu、182におけるトランケーション[SNAP26、この突然変異種hAGTをAGTと命名する、PCT/EP2005/050900を参照されたい]。
【0110】
SNAP26を、SV40ウイルス核局在配列の3繰返し単位と融合させて、SNAP26−NLS3を得るか、さもなければSNAP26を、ファルネシル化配列と融合させて、SNAP26−Fを得た。生細胞内では、SNAP26−Fは、ファルネシル化され、その後細胞膜へと動員されることになる。両遺伝子の安定的なトランスフェクションを用いて、Lが発蛍光団である式(I)のピリミジン化合物の標識化性能を試験した。細胞を、24穴組織培養プレートに播種し、一晩放置して、再付着させた。組織培養液を、10%ウシ胎児血清で強化したF12培養液中に5μMの式(I)の化合物を含有する標識化溶液と交換した。細胞を、CO2インキュベーター内で37℃で30分間温置した。10%ウシ胎児血清を含有するF12培養液500μlによる2回の洗浄の後、細胞を30分間温置して、結合しなかった式(I)の化合物が細胞から漏出するにまかせた。細胞をもう一度洗浄してから、Lがテトラメチルローダミンである式(I)の化合物に対して取り付けた標準的なローダミンフィルター、またはLがローダミングリーンである場合に取り付けた標準的な蛍光フィルターを用いた、Zeiss社のAxiovert 40 CFLなる表面蛍光顕微鏡下で画像化した。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】BG−TMRならびに化合物17および18で標識化したCHO−SNAP26−NLS3細胞を示す画像である(実施例20を参照されたい、露出時間:3秒、倍率:40x)。(A)O6−[(5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン)−アミドメチル]ベンジルグアニジン、BG−TMR、(B)N−[4−(2−アミノ−4−クロロピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−6−カルボキサミド(17)、(C)N−[4−(2−アミノ−4−クロロピリミジン−5−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−6−カルボキサミド(18)。
【図2】BG−TMRならびに化合物17および18で標識化したCHO−SNAP26−F細胞を示す画像である(実施例20を参照されたい、露出時間:3秒、倍率:40x)。(A)BG−TMR、(B)17、(C)18。
【図3】BG−TMRならびに化合物7および8で標識化したCHO−SNAP26−NLS3細胞を示す画像である(実施例20を参照されたい、露出時間:3秒、倍率:40x)。(A)BG−TMR、(B)N−[4−(2−アミノピリミジン−4−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−6−カルボキサミド(7)、(C)N−[4−(2−アミノピリミジン−4−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−5−カルボキサミド(8)。
【図4】BG−TMRならびに化合物7および8で標識化したCHO−SNAP26−F細胞を示す画像である(実施例20を参照されたい、露出時間:3秒、倍率:40x)。(A)BG−TMR、(B)7、(C)8。
【図5】BG−TMRならびに化合物12および13で標識化したCHO−SNAP26−NLS3細胞を示す画像である(実施例20を参照されたい、露出時間:3秒、倍率:40x)。(A)BG−TMR、(B)N−[4−(2−アミノ−4−メチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−6−カルボキサミド(12)、(C)N−[4−(2−アミノ−4−メチルピリミジン−6−イルオキシメチル)ベンジル]テトラメチルローダミン−5−カルボキサミド(13)。
【図6】BG−TMRならびに化合物12および13で標識化したCHO−SNAP26−F細胞を示す画像である(実施例20を参照されたい、露出時間:3秒、倍率:40x)。(A)BG−TMR、(B)12、(C)13。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


[式中、R1は、水素、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチルまたはアジドであり;R2は、リンカーであり;Lは、標識、または同じであるか、もしくは異なる複数の標識である]
で示される化合物。
【請求項2】
2が、1〜300個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキレン基であって、場合により、
(a)1つ以上の炭素原子が酸素で置き換えられていて、特に3番目ごとの炭素原子が酸素で置き換えられた、たとえば1〜100個のエチレンオキシ単位を有するポリエチレンオキシ基であり;
(b)1つ以上の炭素原子が、水素原子を担持する窒素で置き換えられ、隣接する炭素原子がオキソで置換されて、アミド基−NH−CO−を表し;
(c)1つ以上の炭素原子が酸素で置き換えられ、隣接する炭素原子がオキソで置換されて、エステル基−O−CO−を表し;
(d)隣接する2つの炭素原子間の結合が二重結合または三重結合であって、基−CH=CH−または−C≡C−を表し;
(e)1つ以上の炭素原子がフェニレン、飽和もしくは不飽和シクロアルキレン、飽和もしくは不飽和ビシクロアルキレン、架橋複素芳香族、または架橋飽和もしくは不飽和ヘテロシクリル基で置き換えられ;
(f)隣接する2つの炭素原子が、ジスルフィド結合−S−S−で置き換えられているか;
あるいは場合により置換基を有する、2つ以上、特に2つまたは3つの、(a)ないし(f)でこれまでに定義されたアルキレンおよび/もしくは修飾アルキレン基の組合せであり;
Lが、分光学的プローブ、磁性プローブ、造影剤、結合相手と特異的に結合できる、特異的結合対の一方である分子、他の生体分子と相互作用すると疑われる分子、他の生体分子と相互作用すると疑われる分子のライブラリー、他の分子と架橋結合できる分子、H22およびアスコルビン酸塩と接触するとヒドロキシルラジカルを生成できる分子、光を照射すると、反応性ラジカルを生成できる分子、固体の支持体に共有結合した分子、膜挿入特性を有する脂質その他の疎水性分子、ならびに望ましい酵素的、化学的もしくは物理的特性を有する生体分子から選ばれる、1つのか、または同じであるか、もしくは異なる複数の標識である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
2が、1つまたは2つの炭素原子が窒素で置き換えられ、0〜12個の炭素原子が酸素で置き換えられた、場合によりオキソで置換された、2〜40個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
Lが、分光学的プローブ、特異的結合対の一方を表す分子、固体の支持体に共有結合した分子、および細胞膜輸送エンハンサー基である、式(I)で示される請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
2が、1つまたは2つの炭素原子が窒素で置き換えられ、1つまたは2つの隣接する炭素原子がオキソで置き換えられた、2〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である、式(I)で示される請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Lが、発蛍光団、または特異的結合対の一方を表す分子である、式(I)で示される請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
1が水素、メチルまたはクロロである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
1がメチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
1がトリフルオロメチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
2がリンカー−CH2−NH(C=O)−または−CH2−NH(C=O)−(CH25−NH−であり、Lが発蛍光団またはビオチンである、式(I)で示される請求項7〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
2がリンカー−CH2−NH(C=O)−であり、Lがテトラメチルローダミンまたはローダミングリーンである、式(I)で示される請求項7〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
2がリンカー−CH2−NH(C=O)−(CH25−NH−であり、Lがビオチンである、式(I)で示される請求項7〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
問題のタンパク質を検出かつ/または操作する方法であって、問題のタンパク質をAGT融合タンパク質に組み込み、AGT融合タンパク質を、請求項1〜12のいずれか一項に記載の式(I)の化合物に接触させ、標識Lを、該標識を認識し、かつ/または取り扱うために設定されたシステム内で用いて、AGT融合タンパク質を検出し、かつ場合により更に操作する工程を含む方法。
【請求項14】
AGT融合タンパク質を、in vitroで式(I)の化合物に接触させる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
AGT融合タンパク質を、細胞培養のin vivoで式(I)の化合物に接触させる、請求項13記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−539198(P2008−539198A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508208(P2008−508208)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061798
【国際公開番号】WO2006/114409
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507354068)コヴァリス・バイオサイエンシス・アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】COVALYS BIOSCIENCES AG
【Fターム(参考)】