説明

OFDMシステム用のレート選択

OFDMシステムにおけるデータ伝送のレートを決定する技術である。OFDMシステムにより所定のマルチパス(非フラット)チャンネルで高い信頼性により伝送されることのできる最大データレートは、等価(フラット)チャンネルに対する計量に基づいて決定される。所定のマルチパスチャンネルおよび特定のレート(特定のデータレート、変調方式、およびコード化レートを示すことができる)に対して、その計量は最初に等価データレートおよび特定の変調方式から得られる。その後、特定の変調方式およびコード化レートを使用して特定のデータレートを高い信頼性により伝送することを必要とされるしきい値SNRが決定される。特定のレートは、計量がしきい値SNR以上である場合にはマルチパスチャンネルによってサポートされると考えられる。決定されたデータレート中のエラーを考慮するために増分伝送が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にデータ通信に関し、とくに、無線(たとえば、OFDM)通信システムに対するレートを選択するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、現在本出願人にその権利が譲渡されている本出願の別出願第09/991,039号明細書(2001年11月21日出願、“RATE SELECTION FOR AN OFDM SYSTEM”)の部分的継続出願である。
【0003】
無線通信システムは、音声、データ等の種々のタイプの通信を提供するために広く配置されている。これらのシステムは、いくつかのチャンネル環境に対して高い性能を与えることができる可能性のある直交周波数分割多重(OFDM)変調を行うことができる。OFDMシステムにおいて、システム帯域幅はいくつかの(NF)周波数サブチャンネル(サブバンドまたは周波数ビンと呼ばれることができる)に効率的に分割される。各周波数サブチャンネルは、データが変調されることのできる各副搬送波(または周波数トーン)と関連付けられる。典型的に、伝送されるべきデータ(すなわち、情報ビット)は、コード化されたビットを発生するように特定のコード化方式により符号化され、コード化されたビットはさらにマルチビットシンボルにグループ化されてもよく、このマルチビットシンボルはその後、特定の変調方式(たとえば、M−PSKまたはM−QAM)に基づいて変調シンボルにマップされる。各周波数サブチャンネルの帯域幅に依存している可能性のあるインターバルごとに、ある1つの変調シンボルがNF周波数サブチャンネルのそれぞれで伝送されてもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OFDMシステムの周波数サブチャンネルは種々のチャンネル条件(種々のフェーディングおよびマルチパス効果)を受ける可能性があり、種々の信号対雑音および妨害比(SNR)を達成する可能性がある。送信された各変調シンボルは、そのシンボルが送信された特定の周波数サブチャンネルにおける通信チャンネルの周波数応答特性の影響を受ける。通信チャンネルのマルチパスプロフィールに応じて、周波数応答特性はシステム帯域幅にわたって広く変化する可能性がある。したがって、特定のデータパケットを集合的に形成する変調シンボルは、NF周波数サブチャンネルによって広範囲のSNRで個々に受取られる可能性があり、それ故SNRは対応的にパケット全体において異なる。
【0005】
フラットまたは一定でない周波数応答特性を有するマルチパスチャンネルについて、各周波数サブチャンネルで高い信頼性により伝送されることのできる変調シンボル当りの情報ビットの数(すなわち、データレートまたは情報レート)はサブチャンネルごとに異なっている可能性がある。さらに、チャンネル条件は典型的に時間的に変化する。結果的に、周波数サブチャンネルに対してサポートされるデータレートもまた時間的に変化する。
【0006】
所定の受信機が経験するチャンネル条件は典型的に演繹的に知られないため、全ての受信機に同じ伝送パワーおよび、またはデータレートでデータを伝送することは実際的ではない。これらの伝送パラメータを固定した結果、おそらく、伝送パワーは無駄使いされ、いくつかの受信機に対して使用されるデータレートは部分最適なものとなり、別のいくつかの受信機に対する通信は信頼できないものとなり、これら全てがシステム容量の望ましくない低下を発生させる。異なった受信機に対する通信チャンネルの異なった伝送能力プラスこれらのチャンネルの時間可変性およびマルチパス性質は、OFDMシステムにおいて伝送のためにデータを実効的にコード化および変調することを困難なものにする。
【0007】
したがって、上述したチャンネル特性を有する無線(たとえば、OFDM)通信システムにおけるデータ伝送に対して適当なレートを選択する技術がこの分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この明細書に記載されているデータ伝送に対するレートを決定および選択する技術は、たとえば多入力多出力(MIMO)システム等の、1以上の独立した伝送チャンネルを含む種々の無線通信システムに対して使用されることができる。簡明化のために、本発明の種々の特徴および実施形態は、とくに直交周波数分割多重(OFDM)システムについて記載されており、ここで、独立した伝送チャンネルは全システム帯域幅を分割することにより形成された周波数サブチャンネルまたはビンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の特徴、性質および利点は、以下の詳細な説明および添付図面から明らかになるであろう。なお、図面においては同じ参照文字による一貫した対応的な表示がなされる。
図1AはOFDM通信システムの簡単なモデルの概略図である。送信機110においては、トラフィックデータは特定のデータレートでデータソース112からエンコーダ/変調装置114に供給され、このエンコーダ/変調装置114が1以上の変調方式にしたがってデータをコード化する。変調は、マルチビットシンボルを形成するようにコード化されたビットのセットをグループ化し、各マルチビットシンボルを、そのシンボルを送信するために使用された各周波数サブチャンネルに対して選択された特定の変調方式(たとえば、QPSK、M−PSK、またはM−QAM)にマップすることにより行われることができる。マップされた各信号ポイントは変調シンボルに対応する。
【0010】
1実施形態において、データレートはデータレート制御により決定され、コード化方式はコード化制御により決定され、変調方式は変調制御により決定され、これらは全て受信機150から受取られたフィードバック情報に基づいて制御装置130により行われる。
【0011】
パイロットはまた、受信機がチャンネル評価、獲得、周波数およびタイミング同期、コヒーレントなデータ復調等のいくつかの機能を行うのを支援するためにその受信機に送信されることができる。この場合、パイロットデータはエンコーダ/変調装置114に供給され、その後、エンコーダ/変調装置114はトラフィックデータと共にパイロットデータを多重化し、処理する。
【0012】
OFDMに関して、変調されたデータ(すなわち、変調シンボル)は、その後、OFDMシンボルを提供するように逆高速フーリエ変換器(IFFT)116によって時間ドメインに変換され、各OFDMシンボルは、伝送シンボル周期においてNF周波数サブチャンネルにより伝送されるNF変調シンボルのベクトルの時間表現に対応している。単一搬送波“時間コード化された”システムとは対照的に、OFDMシステムは、トラフィックデータを表す変調シンボルのIFFTを時間ドメインで送ることにより変調シンボルを実効的に“周波数ドメインで”伝送する。OFDMシンボルはさらに処理されて(図1Aには簡単化のために示されていない)、変調された信号を発生し、この変調された信号は、その後に無線通信チャンネルよって受信機に伝送される。図1Aに示されているように、通信チャンネルはH(f)の周波数応答特性を有しており、n(t)の付加的ホワイトガウス雑音(AWGN)により変調された信号をさらに劣化させる。
【0013】
受信機150において、伝送された変調された信号が受信され、調整されてデジタル化され、データサンプルを提供する。その後、高速フーリエ変換器(FFT)160はデータサンプルを受信して周波数ドメインに変換し、復元されたOFDMシンボルは復調装置/デコーダ162およびチャンネル評価装置164に供給される。復調装置/デコーダ162は復元されたOFDMシンボルを処理し(復調および復号し)て、復号されたデータを供給し、受信された各パケットの状態をさらに提供する。チャンネル評価装置164は復元されたOFDMシンボルを処理して、チャンネル周波数応答特性、チャンネル雑音分散、受信されたシンボルの信号対雑音および妨害比(SNR)のような通信チャンネルの1以上の特性の評価を提供する。
【0014】
レート選択装置166はチャンネル評価装置164から評価を受取り、データ伝送に利用可能な周波数サブチャンネルの全てまたは一部に対して使用されることのできる適切な“レート”を決定する。このレートは、パラメータのセットに対する特定の値のセットを示す。たとえば、レートはデータ伝送に使用される特定のデータレート、特定のコード化方式および、またはコード化レート、特定の変調方式等を示してもよい(あるいは関連付けられてもよい)。
【0015】
制御装置170はレートをレート選択装置166から受取り、パケット状態を復調装置/デコーダ162から受取って、送信機110に返送される適切なフィードバック情報を供給する。このフィードバック情報はレート、チャンネル評価装置164によって与えられたチャンネル評価、受取られた各パケットに対する肯定応答(ACK)または否定応答(NACK)、ある別の情報、あるいはその任意の組合せを含んでいてもよい。フィードバック情報は、データ伝送が通信チャンネルによってサポートされることのできるパワーおよびレートの最良の既知の設定で行われるように送信機においてデータ処理を調節することによりシステムの効率を増加するために使用される。その後、フィードバック情報は送信機110に返送され、受信機150へのデータ伝送の処理(たとえば、データレート、コード化および変調)を調節するために使用される。
【0016】
図1Aに示されている実施形態において、レート選択は受信機150によって行なわれ、選択されたレートは送信機110に提供される。別の実施形態においては、レート選択は、受信機により提供されたフィードバック情報に基づいて送信機によって行われてもよいし、あるいは送信機および受信機の両者によって共同して行われてもよい。
【0017】
適切な条件下において、FFT160の出力で復元されたOFDMシンボルは次のように表されることができる:
【数1】

【0018】
ここで、kはOFDMシステムの周波数サブチャンネルのインデックス、すなわち、k=0,1,・・・,NF−1であり、NFは周波数サブチャンネルの数である。
Y(k)はk番目の周波数サブチャンネルで伝送された変調シンボルであり、それらはそのk番目の周波数サブチャンネルに対して使用された特定の変調方式に基づいて得られる。
H(k)は、各周波数サブチャンネルに対して“量子化された”形態で表された通信チャンネルの周波数応答特性である。
N(k)は、時間ドメイン雑音のNFサンプルのシーケンスのFFT、すなわち、k=0,1,・・・,NF−1に対してFFT{n(kT)}を表し、Tはサンプリング周期である。
【0019】
単一搬送波システムにおいて、伝送されたシンボルは全て、受信機においてほぼ同じSNRで受信されることができる。“一定のSNR”パケットのSNRとそのパケットに対するエラーの確率との間の関係は技術的によく知られている。近似として、単一搬送波システムによって達成された特定のSNRでサポートされた最大データレートは、AWGNチャンネルによりその同じSNRでサポートされる最大データレートとして評価されてもよい。AWGNチャンネルの主な特徴は、その周波数応答特性がシステム帯域幅全体にわたってフラットまたは一定であることである。
【0020】
しかしながら、OFDMシステムにおいては、パケットを形成する変調シンボルは、多くの周波数サブチャンネルを横切って伝送される。パケットを伝送するために使用された周波数サブチャンネルの周波数応答特性に応じて、SNRはパケット全体にわたって変化する可能性がある。この“変化するSNR”パケットの問題は、システム帯域幅が増加するにしたがって、およびマルチパス環境に対して悪化する。
【0021】
したがって、OFDMシステムに対する主要な問題は、特定のパケットエラーレート(PER)、フレームエラーレート(FER)、ビットエラーレート(BER)、または別のある基準により量を示されることのできる特定のレベルの性能を達成しながら、データ伝送のために使用されることのできる最大データレートを決定することである。たとえば、所望のレベルの性能は、特定の公称値(たとえば、Pe=1%)付近の小さいウインドウ内にPERを維持することによって達成されることができる。
【0022】
典型的な通信システムにおいて、特定のディスクリートなデータレートのセットが規定されてもよく、これらのデータレートだけが使用のために利用可能であってもよい。各データレートD(r)は、特定の変調方式またはコンステレーションM(r)および特定のコード化レートC(r)と関連付けられることができる。各データレートはさらに、最小SNRである特定のSNR(r)を必要とし、この最小SNRでは、そのデータレートでのデータ伝送に対して結果的に得られたPERは所望のPER,Pe以下である。このSNR(r)は、通信チャンネルがAWGNである(すなわち、システム帯域幅全体にわたってフラットな周波数応答特性を有している、あるいは全てのkに対してH(k)=Hである)ことを仮定している。典型的に、送信機と受信機との間の通信チャンネルはAWGNではなく、代りに分散性または周波数選択性である(すなわち、システム帯域幅の種々のサブバンドでの減衰量は様々である)。このようなマルチパスチャンネルについて、データ伝送に使用される特定のデータレートは、マルチパスまたはチャンネルの周波数選択性質を説明するために選択されることができる。
【0023】
したがって、各データレートD(r)は、それを特徴付けるパラメータのセットと関連付けられることができる。これらのパラメータは、以下のように変調方式M(r)、コード化レートC(r)、必要とされるSNR(r)を含んでいてもよい:
【数2】

【0024】
ここで、rはデータレートに対するインデックス、すなわち、r=0,1,・・・,NR−1であり、NRは使用のために利用可能なデータレートの合計数である。式2では、データレートD(r)が変調方式M(r)およびコード化レートC(r)を使用して伝送されることができ、所望の公称PER Peを達成するためにAWGNチャンネルにおいてSNR(r)をさらに必要とすることが述べられている。NRデータレートは、D(0)<D(1)<D(2)・・・<D(NR−1)となるように並べられることができる。
【0025】
本発明の特徴によると、OFDMシステムにおいて所定のマルチパスチャンネルによって高い信頼性により伝送されることのできる最大データレートは、等価AWGNチャンネルに対する計量に基づいて決定される。高い信頼性による伝送は、そのデータ伝送に対してPeの所望のPERが維持されている場合に達成される。以下、この特徴の詳細を説明する。
【0026】
図1Bは、等価チャンネルを使用するマルチパスチャンネルに対するレート選択をグラフィックに示す概略図である。H(k)のチャンネル応答特性およびN0の雑音分散により規定されたマルチパスチャンネルについて、OFDMシステムは、変調方式M(k)を使用してDequivの等価データレートを達成することができる可能性があり、ここでM(k)は異なった周波数サブチャンネルに対して異なっていてもよい。このDequivは、以下に説明するように、特定のチャンネル容量関数f[H(k),N0,M(k)]に基づいて評価されてもよい。個々の周波数サブチャンネルのそれぞれの帯域は1に正規化されているため、それは関数f[・]のアーギュメントとして現れない。変調方式M(k)をPeの所望のPERで使用してDequivの等価データレートで伝送するために等価AWGNチャンネルにより必要とされるSNRの評価である計量SNRequivは、m(k)を使用して、およびさらに関数g(Dequiv,M(k))に基づいてDequivから得られることができ、これもまた以下に説明する。
【0027】
データレートD(k)、変調方式M(k)およびコード化レートC(k)に関して、AWGNチャンネルはPeの所望のPERを達成するためにSNRthまたはそれより良好なSNRを必要とする。このしきい値SNRthは、コンピュータシミュレーションまたはある別の手段によって決定されることができる。それ故、データレートD(k)は、計量(またはSNRequiv)がSNRth以上である場合にマルチパスチャンネルに対してOFDMシステムによってサポートされていると考えられることができる。データレートD(k)が増加するにしたがって、しきい値SNRthは、H(k)およびN0により規定される所定のチャンネル条件に対して増加する。したがって、OFDMシステムによりサポートされることのできる最大データレートは、チャンネル条件により制限される。ここでは、所定のマルチパスチャンネルに対してOFDMシステムによりサポートされることのできる最大データレートを決定するために種々の方式が適用される。以下、これらの方式のいくつかを説明する。
【0028】
第1のレート選択方式において、計量Ψは、OFDMシステムにおける所定のマルチパスチャンネルでのデータ伝送のためのパラメータのセットを受取り、受取られたパラメータに基づいて、そのマルチパスチャンネルと等価AWGNチャンネルにSNR評価を提供する。計量Ψへのこれらの入力パラメータは、データ伝送の処理に関連した1以上のパラメータ(たとえば、変調方式M(k))および通信チャンネルに関連した1以上のパラメータ(たとえば、チャンネル応答特性H(k)および雑音分散N0)を含んでいてもよい。上述したように、変調方式M(k)は、特定のデータレートD(k)と関連付けられることができる。計量Ψは等価AWGNチャンネルのSNRの評価である(すなわち、ΨはSNRequivにほぼ等しい)。それ故、マルチパスチャンネルによりサポートされた最大データレートは、データレートに関連付けられたコード化および変調方式を使用してPeの所望のPERを達成するためにAWGNチャンネル上で必要とされるしきい値SNR,SNRth以上である等価SNRに関連付けられた最高データレートとして決定されてもよい。
【0029】
計量Ψに対して種々の関数が使用されることができ、それらのいくつかを以下に示す。1実施形態において、計量Ψは次のように規定される:
【数3】

【0030】
式(3)において、f[H(k),N0,M]の関数は、周波数応答H(k)および雑音分散N0により変調方式Mがk番目の周波数サブチャンネルで伝送することのできる最大データレートを決定する。この関数f[H(k),N0,M]は、以下に説明するように、種々のチャンネル容量関数に基づいて規定されてもよい。
【0031】
パラメータH(k)およびN0は、SNR(k)にマップされることができる。システムに対する合計伝送パワーPtotalが固定されており、NF周波数サブチャンネルに対する伝送パワーの割当てが均一で、固定されている場合、各周波数サブチャンネルに対するSNRは次のように表されることができる:
【数4】

【0032】
式(4)に示されているように、SNR(k)は、関数f[H(k),N0,M]のパラメータの2つであるチャンネル応答特性H(k)と雑音分散N0の関数である。
【0033】
式(3)の中の合計は、AWGNチャンネルで伝送されることのできる等価データレートDequivを提供するために全てのNF周波数サブチャンネルにわたってf[・]に対して行われる。その後、関数g(Dequiv,M)は、変調方式Mを使用して等価データレートDequivで高い信頼性により伝送するためにAWGNチャンネルにおいて必要とされるSNRを決定する。
【0034】
式(3)は、OFDMシステムにおける全てのNF周波数サブチャンネルに対して同じ変調方式Mが使用されることを仮定している。この制限の結果、OFDMシステム内の送信機および受信機における処理は簡単なものになるが、しかし性能が犠牲になる可能性がある。
【0035】
別の周波数サブチャンネルに対して別の変調方式が使用された場合、計量Ψは次のように規定されることができる:
【数5】

【0036】
式(5)に示されているように、変調方式M(k)は周波数サブチャンネルのインデックスkの関数である。異なる周波数サブチャンネルに対する異なる変調方式および、またはコード化レートの使用は“ビットローディング”とも呼ばれる。
【0037】
関数f[x]は、xとして集合的に表されたパラメータのセットに対してAWGNチャンネルにより高い信頼性で伝送されることができるデータレートを決定し、ここで、xは周波数の関数(すなわち、x(k))であってよい。式(5)において、x(k)={H(k),N0,M(k)}である関数f[H(k),N0,M(k)]は、チャンネル応答特性H(k)および雑音分散N0によりk番目の周波数サブチャンネルで変調方式M(k)が伝送することのできるデータレートを決定する。その後、関数g(f[x(k)],M(k))は、f[x(k)]より決定されたデータレートを伝送するために等価AWGNチャンネルにおいて必要とされるSNRを決定する。その後、等価AWGNチャンネルに対するSNR評価SNRequivを提供するために、g(f[x(k)],M(k))に対して式(5)における合計が全てのNF周波数サブチャンネルに対して行われる。
【0038】
関数f[x]は、種々のチャンネル容量関数またはある別の関数あるいは技術に基づいて規定されてもよい。システムの絶対容量は典型的に、チャンネル応答特性H(k)および雑音分散N0に対して高い信頼性により伝送されることのできる理論上の最大データレートとして与えられる。システムの“制約される”容量は、データ伝送に使用される特定の変調方式またはコンステレーションM(k)に依存し、絶対容量より低い。
【0039】
1実施形態において、関数f[H(k),N0,M(k)]は制約付きチャンネル容量関数に基づいて規定され、次のように表されることができる:
【数6】

【0040】
ここで、Mkは、変調方式M(k)に関連している。すなわち、変調方式M(k)は、
【数7】

【0041】
に関するコンステレーション(たとえば、
【数8】

【0042】
に関するQAM)に対応している。ここで、コンステレーション中の
【数9】

【0043】
ポイントのそれぞれがMkビットにより識別されることができる;
iおよびajは、
【数10】

【0044】
に関するコンステレーション中のポイントである;
xはゼロ平均および1/SNR(k)の分散を有する複素ガウス確率変数である;
E[・]は、式(6)中の変数xに関してとられる期待動作である。
【0045】
式(6)に示されている制約付きチャンネル容量関数は、閉じた形態の解を有しない。したがって、この関数は種々の変調方式およびSNR値に対して数的に得られてもよく、また、その結果は1以上のテーブルに記憶されてもよい。その後、関数f[x]は、特定の変調方式およびSNRを有する適当なテーブルにアクセスすることによって評価されることができる。
【0046】
別の実施形態において、関数f[x]はシャノン(理論上の)チャンネル容量関数に基づいて規定され、以下のように表されることができる:
f(k)=log2[1+SNR(k)], 式(7)
ここで、Wはシステム帯域幅である。式(7)に示されているように、シャノンチャンネル容量は、所定の変調方式のどれからも制約を受けない(すなわち、M(k)は式(7)中のパラメータではない)。
【0047】
f[x]に対して使用するための関数の特定の選択は、OFDMシステム設計のような種々のファクタに依存することができる。1以上の特定の変調方式を使用する典型的なシステムに対して、式(6)に示されている関数f[x]に対して制約付きチャンネル容量と共に使用されたときに式(3)に示されているように規定されたマトリックスΨは、AWGNチャンネルおよびマルチパスチャンネルに対する、OFDMシステムに対してサポートされる最大データレートの正確な評価であることが認められている。
【0048】
関数g(f[x],M(k))は、変調方式M(k)を使用して関数f[x]により決定された等価データレートをサポートするためにAWGNチャンネルにおいて必要とされるSNRを決定する。1実施形態において、関数g(f[x],M(k))は以下のように規定される:
g(f[x],M(k))=f[x]-1 式(8)
関数f[x]は変調方式M(k)に依存しているため、関数g(f[x],M(k))もまたその変調方式に依存する。1実施形態において、関数f[x]-1は、使用のために選択されることができ、各テーブルに記憶されることができる各変調方式に対して得られてもよい。その後、関数g(f[x],M(k))は、変調方式M(k)に対する特定のテーブルにアクセスすることによってf[x]の所定の値に対して評価されることができる。関数g(f[x],M(k))はまた別の関数を使用して規定されるか、あるいは別の手段によって得られることができ、これは本発明の技術的範囲内である。
【0049】
図2は、OFDMシステムにおいて使用されるデータレートを計量Ψに基づいて選択するプロセス200の1実施形態のフロー図である。最初に、利用可能なデータレート(すなわち、OFDMシステムによりサポートされているもの)が、D(0)<D(1)<・・・<D(NR−1)となるように並べられる。その後、ステップ212において、利用可能な最高のデータレートが選択される(たとえば、最高データレートに対するインデックスにレート変数を設定する、またはレート=NR−1を設定することによって)。その後、ステップ214において、変調方式M(rate)のような、選択されたデータレートD(rate)に関連付けられた種々のパラメータが決定される。OFDMシステムの設計に応じて、各データレートは1つまたは多数の変調方式と関連付けられてもよい。その後、選択されたデータレートの各変調方式が後続するステップに基づいて評価されてもよい。簡明化のために、以下、各データレートに対して1つの変調方式だけが関連付けられると仮定する。
【0050】
その後、ステップ216において、選択されたデータレートD(rate)に関連付けられた特定の変調方式M(rate)に対して計量Ψが評価される。これは、以下のように式(3)に示されている計量Ψに対する関数を評価することにより行われてもよい:
【数11】

【0051】
計量Ψは、変調方式M(rate)を使用して等価データレートを高い信頼性により伝送するために等価AWGNチャンネルにおいて必要とされるSNRの評価を表している。
【0052】
その後、ステップ218において、AWGNチャンネルにおいてPeの所望のPERで選択されたデータレートD(rate)を伝送するために必要とされるしきい値SNR、SNRth(rate)が決定される。しきい値SNRth(rate)は、選択されたデータレートに関連付けられた変調方式M(rate)およびコード化レートC(rate)の関数である。しきい値SNRはコンピュータシミュレーションによって、あるいは別のある手段によって可能なデータレートのそれぞれに対して決定されてもよく、また、後で使用するために記憶されてもよい。
【0053】
その後、ステップ220において、計量Ψは選択されたデータレートに関連付けられたしきい値SNRth(rate)以上であるか否かが決定される。計量ΨがSNRth(rate)以上であり、マルチパスチャンネルにおいてデータレートD(rate)に対してOFDMシステムにより得られたSNRがPeの所望のPERを達成するのに十分であることを示した場合、ステップ224において、そのデータレートが使用のために選択される。そうでない場合、ステップ222において、次に低い利用可能なデータレートが評価のために選択される(たとえば、レート変数を1だけデクリメントすること、すなわち、レート=レート−1により)。その後、ステップ214に戻ることによって次に低いデータレートが評価される。ステップ214乃至222は、ステップ222においてサポートされる最大データレートが識別されて提供されるまで、必要とされる回数繰返されることができる。
【0054】
計量Ψはデータレートの単調関数であり、データレートの増加と共に増加する。しきい値SNRはまた、データレートの増加と共に増加するデータレートの単調関数である。図2に示されている実施形態においては、利用可能なデータレートが利用可能な最大データレートから利用可能な最小データレートまで一時に1つ評価される。計量Ψ以下であるしきい値SNR,SNRth(rate)に関連付けられた最高データレートが使用のために選択される。
【0055】
別の実施形態において、計量Ψは、等価AWGNチャンネルに対するSNRの評価SNRequiv(r)を得るために特定の変調方式M(r)に対して評価されることができる。その後、変調方式M(r)を使用してこの等価SNRで所望のPERに対してAWGNチャンネルによりサポートされる最大データレートDmax(r)が決定される(たとえば、ルックアップテーブルによって)。その後、マルチパスチャンネルに対してOFDMシステムにおいて使用される実際のデータレートは、AWGNチャンネルによりサポートされる最大データレートDmax(r)以下であるように選択されることができる。
【0056】
第2のレート選択方式において、計量Ψは、等化後に単一搬送波システムによってマルチパスチャンネルに対して得られた事後検出SNRとして規定される。事後検出SNRは、受信機における等化後の雑音プラス妨害に対する合計信号パワーの比率を表している。等化により単一搬送波システムにおいて得られた事後検出SNRの理論上の値は、OFDMシステムの性能を示すことができ、したがってOFDMシステムによりサポートされる最大デ―タレートを決定するために使用されることができる。単一搬送波システムにおいて受信された信号を処理し、受信された信号中におけるマルチパスチャンネルにより導入された歪を補償するために、種々のタイプの等化装置が使用されることができる。このような等化装置は、たとえば、最小2乗平均エラー線形等化装置(MMSE−LE)、決定フィードバック等化装置(DFE)およびその他を含んでいてもよい。
【0057】
(無限長)MMSE−LEに対する事後検出SNRは以下のように表されることができる:
【数12】

【0058】
ここで、Jminは次式によって与えられる:
【数13】

【0059】
ここで、X(ejωT)はチャンネル伝達関数H(f)の折返しスペクトルである。
【0060】
(無限長)DFEに対する事後検出SNRは次のように表されることができる:
【数14】

【0061】
式(9)および(10)に示されているMMSE−LEおよびDFEに対する事後検出SNRはそれぞれ、理論上のしきい値を表す。MMSE−LEおよびDFEに対する事後検出SNRはまた、この明細書において参考文献とされているJ.G.Proakis氏による文献(“Digital Communications”,3rd Edition,1995,McGraw Hill,sections 10-2-2 and 10-3-2)にさらに詳細に記載されている。
【0062】
MMSE−LEおよびDFEに対する事後検出SNRはまた、それらの権利が全て本出願人に譲渡され、この明細書において参考文献とされている2001年3月23日および2001年9月18日にそれぞれ出願された米国特許出願第09/826,481号明細書および第09/956,449号明細書(表題は共に“Method and Apparatus for Utilizing Channel State Information in a Wireless Communication System”)ならびに2001年5月11日に出願された米国特許出願第09/854,235号明細書(“Method and Apparatus for Processing Data in a Multiple-Input Multiple-Output (MIMO)Communication System Utilizing Channel State Information”)に記載されているように、受信された信号に基づいて受信機において評価されることができる。
【0063】
式(10)および(11)に示されている解析式により説明されるもののような事後検出SNRは、マルチパスチャンネルに対して決定され、計量Ψ(すなわち、ΨはSNRmmse-leにほぼ近い、あるいはΨはSNRdfeにほぼ近い)の評価として使用されることができる。等価AWGNチャンネルに対する事後検出SNR(たとえば、SNRmmse-leまたはSNRdfe)は、マルチパスチャンネルに対してOFDMシステムにおいて使用されることのできるデータレートを決定するために特定のパラメータセットD(r)、M(r)、C(r)、Peに対して得られたしきい値SNR,SNRthと比較されることができる。
【0064】
計量Ψはまた、ある別の関数に基づいて規定されてもよく、等価データレートはまたある別の技術に基づいて評価されてもよく、これは本発明の技術的範囲内である。
【0065】
OFDMシステムにおける使用のために計量Ψに基づいて選択されたデータレートは、Peの所望のPERに対してマルチパスチャンネルによりサポートされることのできるデータレートの予測を表す。任意のレート予測方式に関するように、予測エラーが生じることは避けられない。所望のPERが確実に得られるようにするために、マルチパスチャンネルによりサポートされることのできるデータレートを決定するときに、予測エラーが評価され、バックオフファクタが使用されてもよい。このバックオフはOFDMシステムのスループットを低下させる。したがって、所望のPERを依然として達成しながら、このバックオフを可能な限り小さく維持することが望ましい。
【0066】
本発明の別の特徴によると、増分伝送(IT)方式が提供され、バックオフの量を減少させると共にシステムスループットを改善するために第1の特徴のレート選択と共同して有効に使用されることができる。IT方式は、1以上のディスクリートな伝送を一時に1つづつ特定の限界まで使用して所定のパケットを伝送する。パケットに対する第1の伝送は、受信機において期待されたチャンネル条件に基づいてパケットがエラーなしで復元されることができるように十分な量のデータを含んでいる。しかしながら、第1の伝送が通信チャンネルによって過度に劣化され、その結果パケットのエラーのない復元が行われない場合、そのパケットに対するデータの量が追加される増分伝送が行われる。その後、受信機は、増分伝送中の追加データおよびそのパケットに対する前に受信された全てのデータに基づいてパケットの復元を試みる。そのパケットがエラーなしで復元されるか、あるいは増分伝送の最大数に達するまで、送信機による増分伝送および受信機による復号が1度以上試みられてもよい。
【0067】
IT方式の1実施形態は、以下のように行われてもよい。最初に、あるパケットに対するデータがそのパケットに対して増分伝送なしで使用されることのできるコード化レートより低いコード化レートを使用してコード化される(順方向エラー補正コードに対して)。次に、そのパケットに対するコード化されたビットのあるものがパンクチャ(puncture)され、全てのコード化されたビットの一部だけがそのパケットの第1の伝送として伝送される。パケットが正しく受信された場合、受信機は、そのパケットがエラーなしで受信されたことを示す肯定応答(ACK)を返送することができる。その代り、受信機は、それがエラーのあるパケットを受信した場合には否定応答(NACK)を返送することができる。
【0068】
いずれの場合も、そのパケットについて送信機により肯定応答が受信されないか、あるいは否定応答が受信された場合、送信機は受信機に増分パケットを送る。この増分パケットは、第1の伝送で送られなかった元のパンクチャされたコード化されたビットの一部を含んでいてもよい。その後、受信機は、第1の伝送および第2の伝送の両方で送られたコード化されたビットを使用することによってパケットの復号を試みる。第2の伝送からの付加的なコード化されたビットは、さらに多くのエネルギを提供し、エラー補正能力を改善する。1以上の増分伝送が典型的に一時に1つづつ、肯定応答が受信されるか、あるいは否定応答が受信されなくなるまで、行われることができる。
【0069】
増分伝送がシステムによって使用された場合、さらに小さいバックオフがレート予測エラーを考慮するために使用されてもよく、さらに積極的な(aggressive)レート選択が行われてもよい。この結果、システムスループットが改善される可能性がある。
【0070】
上述したレート選択と組合せられた増分伝送はまた、固定されたまたはゆっくり変化する通信チャンネルによりサポートされる最大データレートを決定する効率的なメカニズムを提供する。チャンネルのマルチパスプロフィールがゆっくり変化する固定されたアクセス適用を考慮されたい。この場合、最初のデータレートは、上述された技術に基づいて選択され、データ伝送のために使用されてもよい。最初のデータレートが、チャンネルがサポートすることのできるものより高い場合、そのパケットが受信機において正しく復号されることが可能になるまで、IT方式が追加のコード化されたビットを伝送することができる。それ故、チャンネルがサポートすることのできる最大データレートは、第1の伝送および任意の後続する増分伝送で送られたコード化されたビットの合計数に基づいて決定されることができる。チャンネルがゆっくり変化する場合、決定されたデータレートは、そのチャンネルが変化するまで使用されることができ、そのチャンネルが変化した時点で新しいデータレートが決定されることができる。
【0071】
したがって、増分伝送は多くの利点を提供する。第1に、増分伝送の使用により、システムスループットを増加させる積極的なデータレート選択が可能になる。第2に、増分伝送により、どのレート予測方式でも発生することが避けられない予測エラー(予測エラーの周波数および大きさは使用されるバックオフの量に依存する)を改善する手段が提供される。また、第3に、増分伝送は、固定されたまたはゆっくり変化するチャンネルに対してサポートされる最大データレートをさらに正確に決定するメカニズムを提供する。
【0072】
図3は、本発明の種々の特徴および実施形態を行うことのできる送信システム110aおよび受信システム150aの1実施形態のブロック図である。
【0073】
送信システム110aにおいて、トラフィックデータが特定のデータレートでデータソース308から送信(TX)データプロセッサ310にトラフィックデータが供給され、このTXデータプロセッサ310は、コード化されたデータを供給するために特定のコード化方式に基づいてこのトラフィックデータをフォーマット化し、インターリーブし、コード化してコード化されたデータを出力する。データレートおよびコード化は、制御装置330により与えられるデータレート制御およびコード化制御によってそれぞれ決定されることができる。
【0074】
その後、コード化されたデータは変調装置320に供給され、この変調装置320はまたパイロットデータ(たとえば、既知のパターンのデータおよび既知の方法で処理されたものがあるならば、そのようなデータ)を受取る。パイロットデータは、トラフィックデータを伝送するために使用される周波数サブチャンネルの全てまたは一部において、たとえば、時分割多重化(TDM)または符号分割多重化(CDM)等を使用して、コード化されたトラフィックデータで多重化されることができる。特定の実施形態においては、OFDMに関して、変調装置320による処理には、(1)1以上の変調方式で受信されたデータを変調し、(2)変調されたデータを変換してOFDMシンボルを形成し、(3)各OFDMシンボルにサイクリックプレフィックスを付加して対応した伝送シンボルを形成することが含まれる。変調は、制御装置330によって与えられた変調制御に基づいて行われる。その後、変調されたデータ(すなわち、伝送シンボル)は送信機(TMTR)322に供給される。
【0075】
送信機322は、変調されたデータを1以上のアナログ信号に変換し、そのアナログ信号をさらに調整し(たとえば、増幅し、濾波して直交変調し)、通信チャンネルによる伝送に適した変調された信号を発生する。その後、この変調された信号はアンテナ324によって受信システムに伝送される。
【0076】
受信システム150aにおいて、伝送された変調された信号はアンテナ325により受信され、受信機(RCVR)354に供給される。この受信機354は受信された信号を調整し(たとえば、濾波し、増幅器して下方変換し)、この調整された信号をデジタル化してデータサンプルを提供する。その後、復調装置(Demod)360はデータサンプルを処理して復調されたデータを提供する。OFDMに対する復調装置360による処理には、(1)各OFDMシンボルに前に付加されたサイクリックプレフィックスを除去し、(2)復元された各OFDMシンボルを変換し、(3)復元された変調シンボルを、送信システムにおいて使用された1以上の変調方式と相補的な1以上の復調方式にしたがって復調することが含まれることができる。
【0077】
その後、受信(RX)データプロセッサ362は、送信されたトラフィックデータを復元するために復調されたデータを復号する。復調装置360およびRXデータプロセッサ362による処理は、送信システム110aにおいて変調装置320およびTXデータプロセッサ310によってそれぞれ行われるものと相補的である。
【0078】
図3に示されているように、復調装置360はチャンネル応答特性の評価:
【数15】

【0079】
を獲得してこれらの評価を制御装置370に提供することができる。RXデータプロセッサ362はまた、受信された各パケットの状態を獲得して提供することができ、さらに、復号された結果を示す1以上の別の性能計量を提供することができる。復調装置360およびRXデータプロセッサ362から受取られた種々のタイプの情報に基づいて、制御装置370は上述された技術に基づいてデータ伝送に対する特定のデータレートを決定または選択することができる。選択されたレートの形態のフィードバック情報、チャンネル応答特性評価、受信されたパケットに対するACK/NACK等が制御装置370により供給され、TXデータプロセッサ378により処理され、変調装置380により変調され、送信機354により調整されて送信システム110aに返送されることができる。
【0080】
送信システム110aにおいて、受信システム150aからの変調された信号はアンテナ324によって受信され、受信機322によって調整され、受信システムにより送信されたフィードバック情報を復元するために復調装置340によって復調される。その後、このフィードバック情報は制御装置330に提供され、受信システムへのデータ伝送の処理を制御するために使用される。たとえば、データ伝送のデータレートは、受信システムにより与えられた選択されたレートに基づいて決定されてもよいし、あるいは受信システムからのチャンネル応答特性評価に基づいて決定されてもよい。選択されたレートに関連付けられた特定のコード化および変調方式が決定され、TXデータプロセッサ310および変調装置320に与えられるコード化および変調制御において反映される。受信されたACK/NACKは増分伝送を開始するために使用されルことができる(図3では簡明化のために示されていない)。
【0081】
制御装置330および370は、送信システムおよび受信システムにおける動作をそれぞれ指示する。メモリ332および372は、制御装置330および370によって使用されたプログラムコードおよびデータの記憶をそれぞれ行う。
【0082】
図4は、送信システム110aの送信部分の1実施形態である送信装置400のブロック図である。送信装置400は、(1)トラフィックデータを受取って処理し、コード化されたデータを供給するTXデータプロセッサ310aと、および(2)コード化されたデータを供給される変調されたデータに変調する変調装置320aとを備えている。TXデータプロセッサ310aおよび変調装置320aは、図3中のTXデータプロセッサ310および変調装置320のそれぞれの1実施形態である。
【0083】
図4に示されている特定の実施形態において、TXデータプロセッサ310aはエンコーダ412、チャンネルインターリーバ414およびパンクチュアラ(puncturer)416を備えている。エンコーダ412はトラフィックデータを受取って、1以上のコード化方式にしたがってコード化し、コード化されたビットを出力する。コード化はデータ伝送の信頼性を高める。各コード化方式は、CRCコード化、コンボリューショナルコード化、ターボコード化、ブロックコード化、およびその他のコード化の任意の組合せを含んでいてもよいし、あるいはコード化を全く含んでいなくてもよい。トラフィックデータはパケット(またはフレーム)に分割されることができ、各パケットは個々に処理され、伝送されることができる。1実施形態において、各パケットに対して、パケット内のデータはCRCビットのセットを発生するために使用され、このCRCビットのセットはデータに付加され、その後このデータおよびCRCビットがコンボリューショナルコードまたはターボコードによりコード化され、その結果パケットに対するコード化されたデータが発生される。
【0084】
その後、チャンネルインターリーバ414はコード化されたビットを特定のインターリーブ方式に基づいてインターリーブして、ダイバーシティを行う。このインターリーブにより、コード化されたビットは時間ダイバーシティを実施され、それによって、データ伝送に使用される周波数サブチャンネルに対する平均SNRに基づいてデータが伝送されることが可能になり、フェーディングが抑えられ、さらに各変調シンボルを形成するために使用されたコード化されたビットの間の相関が除去される。さらに、コード化されたビットが多数の周波数サブチャンネルによって伝送される場合には、このインターリーブにより周波数ダイバーシティが行われてもよい。
【0085】
その後、パンクチュアラ416はインターリーブされたコード化されたビットのゼロまたはもっと多くのものをパンクチャ(すなわち、削除)し、必要とされる数のパンクチャされないコード化されたビットを変調装置320aに提供する。パンクチュアラ416はさらにパンクチャされたコード化されたビットをバッファ418に提供し、このバッファ418は、上述したようにこれらのコード化されたビットが後で増分伝送に必要とされる場合に備えて、それらを記億する。
【0086】
図4に示されている特定の実施形態において、変調装置320aはシンボルマップエレメント422、FFT424およびサイクリックプレフィックス発生装置426を備えている。シンボルマップエレメント422は、多重化されたパイロットデータおよびコード化されたトラフィックデータを、データ伝送に使用される1以上の周波数サブチャンネルに対する変調シンボルにマップする。変調制御により示されているように、1以上の変調方式が周波数サブチャンネルに対して使用されてもよい。使用のために選択された各変調方式に関して、その変調は、マルチビットシンボルを形成するように受取られたビットのセットをグループ化し、各マルチビットシンボルを、選択された変調方式(たとえば、QPSK、M−PSK、M−QAM、または別の他の方式)に対応した信号コンステレーション中のある1つのポイントにマップすることによって行われてもよい。マップされた各信号ポイントは、ある1つの変調シンボルに対応する。その後、シンボルマップエレメント422は、各伝送シンボル周期に(NFまでの)変調シンボルのベクトルを与え、各ベクトル中の変調シンボルの数は、伝送シンボル周期に対する使用のために選択された(NFまでの)周波数サブチャンネルの数に対応している。
【0087】
IFFT424は、逆高速フーリエ変換を使用して各変調シンボルベクトルをその時間ドメイン表現(OFDMシンボルと呼ばれる)に変換する。IFFT424は、任意の数(たとえば、8,16,32,・・・,NF,・・・)の周波数サブチャンネルに関して逆変換を行うように設計されてもよい。1実施形態において、各OFDMシンボルについて、サイクリックプレフィックス発生装置426はOFDMシンボルの一部を反復して対応した伝送シンボルを形成する。サイクリックプレフィックスは、マルチパス遅延拡散が存在するときに伝送シンボルがその直交特性を保存することを保証し、それによって有害な通路効果に逆らって性能を改善する。その後、サイクリックプレフィックス発生装置426からの伝送シンボルは送信機322に供給されて(図3参照)、処理され、変調された信号を発生し、その後、この変調された信号はアンテナ324から送信される。
【0088】
送信装置に対する別の設計もまた実施されることが可能であり、本発明の技術的範囲内である。エンコーダ412、チャンネルインターリーバ414、パンクチュアラ416、シンボルマップエレメント422、IFFT424、サイクリックプレフィックス発生装置426の構成は技術的に知られているため、詳細な説明は行わない。
【0089】
OFDMおよびその他のシステムに対するコード化および変調は、それらの権利が全て本出願人に譲渡され、この明細書において参考文献とされている上述された米国特許出願第09/826,481号明細書、第09/956,449号明細書および第09/854,235号明細書、ならびに2001年2月1日に出願された米国特許出願第09/776,075号明細書(“Coding Scheme for a Wireless Communication System”)および2001年11月6日に出願された米国特許出願第09/993,076号明細書(“Multiple-Access Multiple-Input Multiple-Output (MIMO)Communication System”)にさらに詳細に記載されている。
【0090】
1つの例示的なOFDMシステムは、その権利が全て本出願人に譲渡され、この明細書において参考文献とされている2000年3月30日に出願された米国特許出願第09/532,492号明細書(“High Performance Communication System Employing Multi-Carrier Modulation”)に記載されている。OFDMはまた この明細書において参考文献とされている John A.C.Binghamによる文献(“Multicarrier Modulation for Data Transmission : An Idea Whose Time Has Come,”IEEE Communications Magagine,May,1990)に記載されている。
【0091】
図5は、図3の受信システム150aの受信部分の1実施形態である受信装置500の1実施形態のブロック図である。送信システムから伝送された信号はアンテナ352(図3)によって受信され、受信機354(フロントエンドプロセッサと呼ばれることもある)に供給される。受信機354は、受信された信号を調整し(たとえば、濾波し、増幅し)、調整された信号を中間周波数またはベースバンドに下方変換し、下方変換された信号をデジタル化してデータサンプルを提供し、その後、このデータサンプルは復調装置360aに供給される。
【0092】
復調装置360a(図5)内において、データサンプルは、各伝送シンボル中に含まれているサイクリックプレフィックスを除去して対応した復元されたOFDMシンボルを提供するサイクリックプレフィックス除去エレメント510に供給される。その後、FFT512は高速フーリエ変換を使用して各復元されたOFDMシンボルを変換し、各伝送シンボル周期に対するデータ伝送に使用された(NFまでの)周波数サブチャンネルに対して(NFまでの)復元された変調シンボルのベクトルを供給する。FFT512からの復元された変調シンボルは、復調エレメント514に供給され、送信システムにおいて使用された1以上の変調方式と相補的である1以上の復調方式にしたがって復調される。その後、復調エレメント514からの復調されたデータは、RXデータプロセッサ362aに供給される。
【0093】
RXデータプロセッサ362a内において、復調されたデータは、送信システムにおいて行われたものと相補的な方式でデインターリーバ522によってデインターリーブされ、このデインターリーブされたデータはさらに送信システムにおいて行われたものと相補的な方式でデコーダ524によって復号される。たとえば、ターボデコーダまたはビタビデコーダはそれぞれ、ターボまたはコンボリューショナルコード化が送信装置において行われる場合に、デコーダ524として使用されることができる。デコーダ524からの復号されたデータは伝送されたデータの評価を表す。デコーダ524は受信された各パケットの状態(たとえば、正しく受信されたか、あるいはエラーにより受信されたか)を提供することができる。デコーダ524はさらに、正しく復号されないパケットに対する復調されたデータが後続する増分伝送からのデータと組合せられ、復号されるように、このデータを記憶することができる。
【0094】
図5に示されているように、チャンネル評価装置516は、チャンネル周波数応答特性:
【数16】

【0095】
および雑音分散:
【数17】

【0096】
を評価し、これらの評価を制御装置370に提供するように設計されることもできる。チャンネル周波数応答特性および雑音分散は、パイロットシンボルに対する受信されたデータサンプルに基づいて(たとえば、パイロットシンボルに対するFFT512からのFFT係数に基づいて)評価されてもよい。
【0097】
制御装置370は、増分伝送のためにレート選択およびシグナリングの種々の特徴および実施形態を実施するように設計されることができる。レート選択に関して、制御装置370は、上述したように計量Ψに基づいて所定のチャンネル条件に対して使用されることのできる最大データレートを決定することができる。増分伝送に関して、制御装置370はある所定のパケットに対する受信された各伝送に対してACKまたはNACKを与えることができ、これは、受信システムにおいてそのパケットが正しく復元されることができなかった場合に、送信システムにおいてそのパケットの付加的な部分を送信するために使用されてもよい。
【0098】
図1Aおよび3は、受信機がデータ伝送に対するレートを返送する簡単な設計を示している。別の設計もまた実施されることができ、それらは本発明の技術的範囲内である。たとえば、チャンネル評価(レートの代りに)が送信機に送られることができ、この送信機はその後、受信されたチャンネル評価に基づいてそのデータ伝送に対するレートを決定することができる。
【0099】
この明細書に記載されているレート選択および増分伝送技術は、種々の設計を使用して実施されることができる。たとえば、チャンネル評価を獲得して供給するために使用される図5中のチャンネル評価装置516は受信システム内の種々のエレメントによって構成されることができる。レートを決定するための処理の一部または全ては、制御装置370によって(たとえば、メモリ372中に記憶されている1以上のルックアップテーブルと共に)行われてもよい。レート選択および増分伝送を行なうための別の設計もまた考えられ、それらは本発明の技術的範囲内である。
【0100】
この明細書に記載されているレート選択および増分伝送技術は、種々の手段を使用して実施されることができる。たとえば、これらの技術はハードウェア、ソフトウェア、またはその組合せで実施されることができる。ハードウェア実施形態について、レート選択および、または増分伝送を実施するために使用されるエレメントのいくつかは、1以上の特定用と向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラム可能な論理デバイス(PLD)、フィールドプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、制御装置、マイクロ制御装置、マイクロプロセッサ、ここに記載されている機能を行うように設計された他の電子装置、またはそれらを組合せたもので構成されてもよい。
【0101】
ソフトウェア実施形態について、レート選択および、または増分伝送のいくつかの部分は、ここに記載されている機能を行うモジュール(たとえば、処理手順、関数等)により実施されてもよい。ソフトウェアコードはメモリ装置(たとえば、図3中のメモリ332または372)中に記憶され、プロセッサ(たとえば、制御装置330または370)によって実行されてもよい。メモリ装置はプロセッサ内に構成されてもよいし、あるいはプロセッサの外部に構成されてもよく、どちらの場合も、技術的に知られている種々の手段によってプロセッサと通信可能に接続されることができる。
【0102】
制約付き容量レート適応(CCRA)アルゴリズム
別の実施形態において、上記の直交周波数分割多重化(OFDM)システムに対するレート適応方式が実際の環境に適合され、そのアルゴリズムはこのシステムの既知の実際の構成を反映するように理想的な場合を調節する。このような拡張には、実用的な実施のための方式を提供するバックオフ修正が含まれる可能性がある。バックオフメカニズムの使用は、システム構成およびその他のシステム考慮事項が調節を必要とする場合に、とくに重要である。換言すると、1つのシステム内において、ある条件はバックオフ修正を招く可能性があるが、他のものは招かない。バックオフメカニズムは、チャンネルモデルを特定の適用に調整することを意図されている。バックオフが望ましい可能性がある状況には、(1)チャンネルコード化技術;(2)不完全なチャンネル評価;および、または(3)周波数および、または位相オフセット不整(irregularities)が含まれるが、それらに限定されない。
【0103】
マルチパスフェーディングチャンネル中にNの副搬送波を有する上述された1実施形態によるOFDMシステムについて検討する。アルゴリズムは、全ての副搬送波を横切るチャンネル応答特性の知識{h(k),k=1,2,Λ,N}、および受信機における雑音分散N0を仮定する。それぞれが変調方式CpおよびコードレートRcpによって規定された、送信機によりサポートされるデータレートのセットR={rp,p=1,2,Λ,P}が与えられる。予め定められたPERレベル(たとえば、1%)のために必要とされるSNRの対応したセットS={sp,p=1,2,Λ,P}もまた与えられる。目的は、所定の現実に対するチャンネルによってサポートされることのできる達成可能な最大レートrmax∈Rを見出すことである。最初のアルゴリズムは図6に示されているように規定され、これは制約付き容量レートと適応(CCRA)アルゴリズムと呼ばれる。
【0104】
例示的な実施形態によるCCRAアルゴリズムはプロセス600により規定され、ステップ602においてインデックスpが初期化される。このインデックスpは所定の通信送信機において利用可能な符号化レートに対応し、p=1,2,・・・,Pとして与えられ、ここで、Pは利用可能な異なるレートの合計数である。ステップ602において、インデックスpはPに等しく設定され、ここで、PはデータレートのセットRにおける最高のレートに対応している。ステップ604において、プロセスは、以下のように与えられる制約付き容量xを計算する:
【数18】

【0105】
ここで、fは制約付き容量関数であり、C(rp)はレートrpにおけるコンステレーションサイズ(変調)である。制約付き容量xに対する計算プロセス650は図7Bに示されており、ここで、制約付き容量を評価する関数fはステップ652で決定される。その後、ステップ654において、式(12)にしたがって制約付き容量xが計算される。xの値は、チャンネル状態の平均に基づいている。
【0106】
図7Aを参照すると、ステップ606において、プロセスは、以下のように与えられるΨとして示されたAWGNチャンネルにおける等価SNRを計算する:
Ψ=g(x)=f-1(x) 式(13)
ここで、g(x)はf(x)の逆関数である。式(13)は式(9)と一致していることに注意されたい。決定ダイヤモンド608において、Ψ>spである場合、利用可能な最大データレートは現在のデータレート、すなわち、pに対応したレートに等しく設定される(rmax=rp)。その他の場合には、インデックスpはデクリメントされ、すなわち、p=p−1にデクリメントされ、処理はステップ612でpをデクリメントし、ステップ604に戻る。
【0107】
CCRAアルゴリズムの性能の評価は、最適レート選択プロセスとの比較を必然的に伴なう。最適の選択は、基本的にあらゆる可能なレート(所定のチャンネル実現に対する)をテストし、たとえば、PER<1%等の、所定のPERに対して最高レート選択する非実際的なシステムである。アルゴリズムは、それが指定されたPERを犯すことなく高いスループットをサポートすることを期待されていないので、それは最適モデルに勝る(beat)ことはないと予想される。実際の最良のアルゴリズムは、1%のPERにより最適スループットより少し低いスループットをサポートするものである。
【0108】
CCRAの結果は、それ自身そのサポートされたレートの過大評価である容量公式に基づいているので、典型的に実際は達成不可能である完全なコードを使用する完全なシステムによってサポートされるレートをその容量公式が提供するときには、バックオフが必要になる可能性が高い。換言すると、容量はチャンネルによって達成可能なレートの上限である。したがって、CCRAにより生成された結果的に生じたレートの根拠のある(educated)調節、すなわち、バックオフが所望されてもよい。同様に、システムが種々のデータレートをサポートし、動作中に欠点が生じる可能性があるときに、バックオフが望ましいことがある。
【0109】
修正された制約付き容量レート適応(M−CCRA)アルゴリズム
Sは、実際のシステムにおいて利用可能な各レートに対する1%のPERに対応したSNRのセットであることに注意されたい。SNRに対する理論上の理想値を容量公式に基づいて評価することも可能である。理想的なSNRのセットをScap={Scap,p ,p=1,2,Λ,P}とする。Scap,pは理想的なシステムに対して要求されるSNRであり、一方spは実際のシステムに対して要求されるSNRであるため、
【数19】

【0110】
であることに注意されたい。セットΩ={Δp=sp−scap,p ,p=1,2,Λ,P}を定義する。Δpは、実際のシステム中の欠点を克服するためにそのシステムに対して要求される付加的なSNRである。
【0111】
式(13)における制約付き容量xが、たとえば、rpおよびrp+1等の2つの連続したレートの間にあるとき、SNRにおける対応した調節はΔpおよびΔp+1の2つのレベルをそれぞれ使用して行われることができる。Ψに対する調節を決定するために、以下の式が適用されることができる:
【数20】

【0112】
その後、ΨをΨ−ΔΨで置換するために、CCRAアルゴリズムに対して式(14)または式(15)のいずれの計算がステップ606に加えて適用されることができる。図2を参照として換言すると、ステップ220におけるSNRに対するΨの比較がSNRに対するΨ−ΔΨの比較により置換される。修正されたCCRAアルゴリズムは、図7Aに示されている。プロセス700は、ステップ702におけるインデックスpの初期化からスタートする。その後、ステップ704において、式(6)または式(12)で与えられた計算を使用して制約付き容量が決定される。ステップ706において、式(9)または式(13)におけるように、SNRΨが計算される。ステップ708においてΨ’を発生するために式(14)または式(15)の修正が適用される。決定ダイヤモンド710において、修正されたSNRΨ’はspと比較され、ここで、Ψ’がspより大きい場合、最大レートは、インデックスpの現在の値により識別されたレートに設定される。その他の場合には、ステップ714においてインデックスpはデクリメントされ、処理はステップ704に戻る。
【0113】
図8は、最適または理想的なレート選択と比較されたCCRAアルゴリズムの性能の比較を示している。CCRAアルゴリズムは理想的な解に近いスループットを有する解を提供し、その一方で例示的な実施形態では1%のPERである所望のPERレベルを達成することに注意されたい。
【0114】
当業者は、種々の異なったテクノロジーおよび技術の任意のどれかを使用して情報および信号を表すことができることを認識するであろう。たとえば、上記の説明において一貫して参照とされることのできるデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボルおよびチップは、電圧、電流、電磁波、磁界または磁気粒子、光学フィールドまたは粒子、あるいはその任意の組合せによって表されてもよい。
【0115】
当業者はさらに、この明細書に開示されている実施形態との関連で示された種々の論理ブロック、モジュール、回路およびアルゴリズムステップが電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、または両者の組合せとして構成されてもよいことを認識するであろう。ハードウェアとソフトウェアのこの互換性を明瞭に説明するために、上記に示された種々のコンポーネント、ブロック、モジュール、回路およびステップをそれらの機能性に関して一般的に説明してきた。このような機能性がハードウェアまたはソフトウェアのどちらとして構成されるかは、特定の用途およびシステムム全体に課される設計制約に依存する。当業者は、特定の用途のそれぞれに対してさまざまな方法で記載された機能性を実施することができるが、しかし、このような実施決定は本発明の技術的範囲からの逸脱を生じさせるものとして解釈されてはならない。
【0116】
ここに開示されている実施形態との関連で説明された例証的な種々の論理ブロック、モジュール、および回路は、汎用プロセッ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向き集積回路(ASIC)、フィールドプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)または別のプログラム可能な論理デバイス、ディスクリートなゲートまたはトランジスタ論理装置、ディスクリートなハードウェアコンポーネント、あるいはこの明細書に記載されている機能を行うために設計されたそれらの任意の組合せにより構成され、あるいは行われてもよい。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよいが、しかし別の実施形態では、そのプロセッサは任意の通常のプロセッサ、制御装置、マイクロ制御装置、または状態マシンであることができる。プロセッサはまた、たとえば、デジタル信号プロセッサ(DSP)とマイクロプロセッサの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと共同する1以上のマイクロプロセッサ、あるいは任意の他のこのような構成等の、計算装置の組合せとして構成されることができる。
【0117】
ここに開示されている実施形態との関連で説明された方法またはアルゴリズムのステップは、ハードウェア、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール、あるいは両者の組合せの中に直接埋込まれてもよい。ソフトウェアモジュールはランダムアクセスメモリ(RAM)、FLASHメモリ、読出し専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラム可能なROM(EPROM)、電気的EPROM(EEPROM)、レジスタ、ハードディスク、取出し可能なディスク、CD−ROM、または技術的に知られている任意の別の形態の記憶媒体中に存在していてもよい。例示的な記憶媒体は、プロセッサが情報の記憶媒体からの読出および情報の記憶媒体への書込みを行うことができるようにプロセッサに接続されている。別の実施形態において、記憶媒体はプロセッサと一体であることができる。プロセッサおよび記憶媒体は、特定用途向き修正回路(ASIC)中に配置させることができる。ASICはユーザ端末内に配置してもよい。別の実施形態においては、プロセッサおよび記憶媒体はユーザ端末内においてディスクリートなコンポーネントとして存在することができる。
【0118】
上記において開示されている実施形態は、当業者による本発明の形成または使用を可能にするために説明されたものである。当業者はこれらの実施形態に対する種々の修正を容易に認識し、この明細書において規定されている一般原理は本発明の技術的範囲を逸脱することなく別の実施形態に適用されることが可能である。したがって、本発明はここに示されている実施形態に限定されるものではなく、この明細書において開示されている原理および新しい特徴に一致した広い適用範囲を与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1A】OFDM通信システムの簡単なモデルの概略図。
【図1B】等価チャンネルを使用するマルチパスチャンネルに対するレート選択をグラフィックに示す概略図。
【図2】OFDMシステムにおいて使用されるデータレートを計量Ψに基づいて選択するプロセスの1実施形態のフロー図。
【図3】本発明の種々の特徴および実施形態を実施することのできる送信システムおよび受信システムの1実施形態のブロック図。
【図4】送信装置の1実施形態のブロック図。
【図5】受信装置の1実施形態のブロック図。
【図6】制約付き容量レート適応(CCRA)アルゴリズムのフロー図。
【図7A】修正されたCCRA(M−CCRA)アルゴリズムのフロー図。
【図7B】修正されたCCRA(M−CCRA)アルゴリズムのフロー図。
【図7C】修正されたCCRA(M−CCRA)アルゴリズムのフロー図。
【図7D】修正されたCCRA(M−CCRA)アルゴリズムのフロー図。
【図8】理想的なレート選択とCCRAアルゴリズムとの性能の比較を表すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて通信チャンネルによりデータ伝送するためのデータレートを決定する方法において、
データ伝送のためのパラメータのセットを識別し、
通信チャンネルの1以上の特性を評価し、
パラメータのセットおよび評価された1以上のチャンネル特性に基づいて等価チャンネルに対する計量を導出し、
調節された計量を形成するために計量を調節し、調節はバックオフファクタにしたがって行われ、このバックオフファクタはパケットエラーレート(PER)を最小にするように設定され、
特定のデータレートをサポートするために等価チャンネルに対して要求されるしきい値信号品質を決定し、
調節された計量をしきい値信号品質と比較し、
しきい値信号品質を調節し、
データレートを応答的に選択し、
計量およびしきい値信号品質に基づいて特定のデータレートがその通信チャンネルによりサポートされるか否かを示すステップを含んでいる方法。
【請求項2】
計量は信号対雑音比(SNR)の関数である請求項1記載の方法。
【請求項3】
計量を調節するステップは、
バックオフファクタがその計量に適用されるか否かを決定し、
バックオフファクタがその計量に適用される場合、この計量を調節し、
バックオフファクタがその計量に適用されない場合、この計量を保存するステップをさらに含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項4】
計量を導出するステップは、
第1の関数、パラメータのセット、および1以上の評価されたチャンネル特性に基づいて等価チャンネルに対する等価データレートを決定するステップをさらに含んでおり、
計量は第2の関数、等価データレート、および特定の変調方式に基づいて導出される請求項1記載の方法。
【請求項5】
データ伝送のために使用される通信チャンネルの1以上の特性の評価を導出するように動作するチャンネル評価装置と、
チャンネル評価装置からのチャンネル評価およびデータ伝送に対する特定のレートを示すパラメータのセットを受取り、ある等価チャンネルに対する計量を導出し、特定のレートをサポートするために等価チャンネルに対して要求されるしきい値信号品質を決定し、計量およびしきい値信号品質に基づいてその特定のレートが通信チャンネルによりサポートされるか否かを示すように動作するレート選択装置と、
予め定められたバックオフファクタを使用して計量を調節するように動作する計量調節装置とを具備している無線通信システムにおける受信装置。
【請求項6】
さらに、ある特定のデータパケットに関して受取られた各伝送の状態を提供するように動作するデコーダと、
特定のレートとパケット状態の指示から成るフィードバック情報を提供するように動作する制御装置とを備えている請求項5記載の受信装置。
【請求項7】
データ伝送のためのパラメータのセットを識別する手段と、
通信チャンネルの1以上の特性を評価する手段と、
パラメータのセットおよび評価された1以上のチャンネル特性に基づいて等価チャンネルに対する計量を導出する手段と、
調節された計量を形成するために計量を調節する手段とを具備しており、調節はバックオフファクタにしたがって行われ、このバックオフファクタはパケットエラーレート(PER)を最小にするように設定され、
さらに、特定のデータレートをサポートするために等価チャンネルに対して要求されるしきい値信号品質を決定する手段と、
調節された計量をしきい値信号品質と比較する手段と、
しきい値信号品質を調節する手段と、
データレートを応答的に選択する手段と、
計量およびしきい値信号品質に基づいて特定のデータレートがその通信チャンネルによりサポートされるか否かを示す手段とを具備している無線通信システムにおける装置。
【請求項8】
さらに、第1の関数、パラメータのセット、およびチャンネル評価に基づいて等価チャンネルに対する等価データレートを決定する手段を備えており、
計量は第2の関数、等価データレート、および特定のレートと関連する特定の変調方式に基づいて導出される請求項7記載の装置。
【請求項9】
第1の関数に対する1以上のテーブルを記憶する手段を備えている請求項8記載の装置。
【請求項10】
無線通信システムにおいて通信チャンネルによりデータ伝送するためのデータレートを決定する方法において、
通信チャンネルの1以上の特性を評価し、
パラメータのセットおよび評価された1以上のチャンネル特性に基づいて等価チャンネルに対する計量を導出し、
調節された計量を形成するために計量を調節し、その調節はバックオフファクタにしたがって行われ、このバックオフファクタはパケットエラーレート(PER)を最小にするように設定され、
特定のデータレートをサポートするために等価チャンネルに対して要求されるしきい値信号品質を決定し、
調節された計量をしきい値信号品質と比較し、
調節された計量をしきい値信号品質と比較した結果に応答してデータレートを選択するステップを含んでいる方法。
【請求項11】
計量は信号対雑音比である請求項10記載の方法。
【請求項12】
計量を調節するステップは、
バックオフファクタがその計量に適用されるか否かを決定し、
バックオフファクタがその計量に適用されるか否かの決定にしたがってバックオフファクタを適用するステップを含んでいる請求項10記載の方法。
【請求項13】
無線通信システムにおいて通信チャンネルによりデータ伝送するためのデータレートを決定するための装置において、
通信チャンネルの1以上の特性を評価する手段と、
パラメータのセットおよび評価された1以上のチャンネル特性に基づいて等価チャンネルに対する計量を導出する手段と、
調節された計量を形成するために計量を調節する手段とを具備し、その調節はバックオフファクタにしたがって行われ、このバックオフファクタはパケットエラーレート(PER)を最小にするように設定され、
さらに、特定のデータレートをサポートするために等価チャンネルに対して要求されるしきい値信号品質を決定する手段と、
調節された計量をしきい値信号品質と比較する手段と、
調節された計量をしきい値信号品質と比較した結果に応答してデータレートを選択する手段とを具備している装置。
【請求項14】
無線通信システムにおいて通信チャンネルによるデータ伝送するためのデータレートを決定するためのコンピュータプログラムにおいて、
通信チャンネルの1以上の特性を評価する第1の命令セットと、
パラメータのセットおよび評価された1以上のチャンネル特性に基づいて等価チャンネルに対する計量を導出する第2の命令セットと、
調節された計量を形成するために計量を調節する第3の命令セットとを含んでおり、その調節はバックオフファクタにしたがって行われ、このバックオフファクタはパケットエラーレート(PER)を最小にするように設定され、
さらに、特定のデータレートをサポートするために等価チャンネルに対して要求されるしきい値信号品質を決定する第4の命令セットと、
調節された計量をしきい値信号品質と比較する第5の命令セットと、
調節された計量をしきい値信号品質と比較した結果に応答してデータレートを選択する第6の命令セットとを含んでいるコンピュータプログラム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−501695(P2006−501695A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−548489(P2003−548489)
【出願日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2002/037409
【国際公開番号】WO2003/047198
【国際公開日】平成15年6月5日(2003.6.5)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】