説明

OFDM方式における自動利得制御回路及び自動利得制御方法

【課題】OFDM方式で変調された信号の利得制御において、A/D変喚器のダイナミックレンジを超過しない範囲で可変利得増幅器を効率よく制御する。
【解決手段】本発明にかかる自動利得制御回路における、利得制御回路110は、第一の比較器111による比較の結果、IF固定利得増幅器106により増幅された前記中間周波数信号の信号レベルが前記第一の閾値以下の場合、RF可変利得増幅器102の利得を上げ、第二の比較器112及び前記第三の比較器113による比較の結果、IF固定利得増幅器106により増幅された前記中間周波数信号の信号レベルが第二の閾値を超過する頻度が所定値以下の場合でかつ第三の閾値以下の場合、IF可変利得増幅器107の利得を上げ、第三の比較器113による比較の結果、IF固定利得増幅器106により増幅された前記中間周波数信号の信号レベルが第三の閾値を超過する場合、IF可変利得増幅器107の利得を下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM方式における自動利得制御回路及び自動利得制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動体通信機器等に組み込まれた受信機においては、通信に使用される信号の電力(以下、「信号レベル」という。)が変動しやすく、変動する信号レベルのまま復調回路に受信信号を入力すると、正しく信号の復調ができない場合が生じる。そこで変動する受信信号レベルに対応するため、自動利得制御回路(AGC)を使用して、復調回路への受信信号入力レベルを一定にして信号の復調を行う方式が用いられている。(例えば特許文献1)。
【0003】
図6は従来の受信機の回路構成図である。従来の受信機500では、無線信号がアンテナ501により受信され、RF可変利得増幅器502により無線信号の信号レベルが増幅される。続いて増幅された無線信号と、局部発振器503が出力した周波数信号とがミキサ回路504により混合され中間周波数信号に変換される。中間周波数信号は、バンドパスフィルタ(BPF)505を通過した後にIF可変利得増幅器506で増幅される。増幅された中間周波数信号はA/D変換器507によりデジタル信号に変換され、復調回路508がデジタル信号の復調を行う。利得制御回路509は、A/D変換器507が出力するデジタル信号レベルを一定時間平均した信号レベルと参照値を比較し、RF可変利得増幅器502及びIF可変利得増幅器506の利得制御を行うことによりミキサ回路504及びA/D変換器507に入力される信号の信号レベルを一定に保つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-183675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の受信機を用いて、OFDM方式で変調された信号の復調しようとした場合、信号の復調が適切にできない場合がある。OFDM方式で変調された信号は、独立した位相を持つ複数のサブキャリアを組合せたものであるので、各サブキャリアの位相の組合せによっては一時的に高い信号レベルを持つことがあり、ピーク電力対平均電力比(PAPR:Peak to Average Power Ratio)が大きい。従来技術ではA/D変換器507の出力を一定時間平均した信号レベルと参照値を比較してIF可変利得増幅器506の利得を制御するため、OFDM方式で変調された信号を復調する際に、増幅された中間周波数信号の信号レベルが一時的にA/D変換器のダイナミックレンジを超過してしまい、受信信号の復調ができなくなるという問題があった。
【0006】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、OFDM方式で変調された信号の利得制御において、A/D変喚器のダイナミックレンジを超過しない範囲で効率よく利得制御を行うことができる自動利得制御回路及び自動利得制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る自動利得制御回路は、OFDM方式で変調された無線受信信号の信号レベルを増減するRF可変利得増幅器と、RF可変利得増幅器が出力した前記無線受信信号を中間周波数信号に変換するミキサ回路と、前記中間周波数信号の信号レベルを増幅するIF固定利得増幅器と、前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号の信号レベルを増減するIF可変利得増幅器と、前記IF可変利得増幅器が出力した前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記デジタル信号の平均信号レベルを算出し、前記平均信号レベルに基づき前記RF可変利得増幅器と前記IF可変利得増幅器の利得を制御する利得制御回路と、を有する自動利得制御回路であって、前記自動利得制御回路は、第一の閾値と前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号のIF信号レベルとを比較する第一の比較器と、前記A/D変換器のダイナミックレンジ及び前記IF可変利得増幅器の利得に応じて定められ、前記第一の閾値よりも高い第二の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第二の比較器と、前記A/D変換器のダイナミックレンジと略同一であり、前記第二の閾値よりも高い第三の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第三の比較器と、を有し、前記利得制御回路は、前記第一の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第一の閾値以下の場合、前記RF可変利得増幅器の利得を上げ、前記第二の比較器及び前記第三の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第二の閾値を超過する頻度が所定値以下の場合で、かつ前記IF信号レベルが前記第三の閾値以下の場合、前記IF可変利得増幅器の利得を上げ、前記第三の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第三の閾値を超過する場合、前記IF可変利得増幅器の利得を下げることを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る自動利得制御回路は、OFDM方式で変調された無線受信信号の信号レベルを増減するRF可変利得増幅器と、RF可変利得増幅器が出力した前記無線受信信号を中間周波数信号に変換するミキサ回路と、前記中間周波数信号の信号レベルを増幅するIF固定利得増幅器と、前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号の信号レベルを増減するIF可変利得増幅器と、前記IF可変利得増幅器が出力した前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記デジタル信号の平均信号レベルを算出し、前記平均信号レベルに基づき前記RF可変利得増幅器と前記IF可変利得増幅器の利得を制御する利得制御回路と、を有する自動利得制御回路であって、前記自動利得制御回路は、前記A/D変換器のダイナミックレンジ及び前記IF可変利得増幅器の利得に応じて定められる第二の閾値と前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号のIF信号レベルとを比較する第一の比較器と、前記A/D変換器のダイナミックレンジと略同一であり、前記第二の閾値よりも高い第三の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第二の比較器と、を有し、前記利得制御回路は、前記第一の比較器及び前記第二の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第二の閾値を超過する頻度が所定値以下の場合で、かつ前記IF信号レベルが前記第三の閾値以下の場合、前記IF可変利得増幅器の利得を上げ、前記第二の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第三の閾値を超過する場合、前記IF可変利得増幅器の利得を下げることを特徴とする。
【0009】
また本発明に係る自動利得制御回路は、さらに前記デジタル信号をFFT処理するFFT処理部と、前記FFT処理されたデジタル信号に基づき、DCオフセット量を推定するDCオフセット推定部と、前記DCオフセット量をアナログ信号に変換するD/A変換器と、を備え、前記自動利得制御回路は前記アナログ信号に基づき前記中間周波数信号からDCオフセットを除去することを特徴とする。
【0010】
また本発明に係る自動利得制御方法は、OFDM方式で変調された無線受信信号の信号レベルを増減するRF可変利得増幅器と、RF可変利得増幅器が出力した前記無線受信信号を中間周波数信号に変換するミキサ回路と、前記中間周波数信号の信号レベルを増幅するIF固定利得増幅器と、前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号の信号レベルを増減するIF可変利得増幅器と、前記IF可変利得増幅器が出力した前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記デジタル信号の平均信号レベルを算出し、前記平均信号レベルに基づき前記RF可変利得増幅器と前記IF可変利得増幅器の利得を制御する利得制御回路と、を有する自動利得制御回路の自動利得制御方法であって、第一の閾値と前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号のIF信号レベルとを比較する第一の比較ステップと、前記A/D変換器のダイナミックレンジ及び前記IF可変利得増幅器の利得に応じて定められ、前記第一の閾値よりも高い第二の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第二の比較ステップと、前記A/D変換器のダイナミックレンジと略同一であり、前記第二の閾値よりも高い第三の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第三の比較ステップと、を有し、前記第一の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第一の閾値以下の場合、前記RF可変利得増幅器の利得を上げるステップと、前記第二の比較ステップ及び前記第三の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第二の閾値を超過する頻度が所定値以下の場合で、かつ前記IF信号レベルが前記第三の閾値以下の場合、前記IF可変利得増幅器の利得を上げるステップと、前記第三の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第三の閾値を超過する場合、前記IF可変利得増幅器の利得を下げるステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る自動利得制御方法は、OFDM方式で変調された無線受信信号の信号レベルを増減するRF可変利得増幅器と、RF可変利得増幅器が出力した前記無線受信信号を中間周波数信号に変換するミキサ回路と、前記中間周波数信号の信号レベルを増幅するIF固定利得増幅器と、前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号の信号レベルを増減するIF可変利得増幅器と、前記IF可変利得増幅器が出力した前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記デジタル信号の平均信号レベルを算出し、前記平均信号レベルに基づき前記RF可変利得増幅器と前記IF可変利得増幅器の利得を制御する利得制御回路と、を有する自動利得制御回路の自動利得制御方法であって、前記A/D変換器のダイナミックレンジ及び前記IF可変利得増幅器の利得に応じて定められる第二の閾値と前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号のIF信号レベルとを比較する第一の比較ステップと、前記A/D変換器のダイナミックレンジと略同一であり、前記第二の閾値よりも高い第三の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第二の比較ステップと、を有し、前記第一の比較ステップ及び前記第二の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第二の閾値を超過する頻度が所定値以下の場合で、かつ前記IF信号レベルが前記第三の閾値以下の場合、前記IF可変利得増幅器の利得を上げるステップと、前記第二の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第三の閾値を超過する場合、前記IF可変利得増幅器の利得を下げるステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る自動利得制御方法は、前記自動利得制御回路がさらにFFT処理部と、DCオフセット推定部と、D/A変換器とを備え、前記FFT処理部が、前記デジタル信号をFFT処理するステップと、前記DCオフセット推定部が、前記FFT処理されたデジタル信号に基づき、DCオフセット量を推定するステップと、前記D/A変換器が前記DCオフセット量をアナログ信号に変換するステップと、を有し、前記自動利得制御回路が、前記アナログ信号に基づき前記中間周波数信号からDCオフセットを除去するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による自動利得制御回路及び自動利得制御方法は、OFDM方式で変調された信号の利得制御において、A/D変喚器のダイナミックレンジを超過しない範囲で効率よく利得制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係るOFDM方式で変調された信号を受信する受信機の構成を表す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る自動利得制御回路の動作を表すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1の変形例に係るOFDM方式で変調された信号を受信する受信機の構成を表す回路図である。
【図4】本発明の実施の形態1の変形例に係るOFDM方式における自動利得制御回路の動作を表すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係るOFDM方式で変調された信号を受信する受信機の構成を表す回路図である。
【図6】従来の自動利得制御回路を備える受信機の回路構成の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るOFDM方式で変調された信号を受信する受信機の構成を表す回路図である。本受信機は好ましくは携帯電話、タブレット端末等の通信端末に組み込まれる。本発明の実施の形態1に係る受信機100は、OFDM方式により変調された無線信号を受信するアンテナ101と、アンテナ101と接続されアンテナ101が受信した無線信号の信号レベルを可変利得で増幅するRF可変利得増幅器102と、所定の周波数信号を出力する局部発振器103と、RF可変利得増幅器102と局部発振器103とに接続され、RF可変利得増幅器102により増幅された無線信号と局部発振器103が出力した所定の周波数信号を混合し、中間周波数信号(以下、「IF信号」という)を出力するミキサ回路104と、ミキサ回路104に接続され、ミキサ回路104が出力したIF信号のうち一方のIF信号を選択するためのバンドパスフィルタ(BPF)105と、BPF105により選択されたIF信号の信号レベルを固定利得で増幅するIF固定利得増幅器106と、IF固定利得増幅器106から出力されたIF信号の信号レベルを増減するIF可変利得増幅器107と、IF可変利得増幅器107から出力されたIF信号をデジタル信号に変換するA/D変換器108と、A/D変換器108から出力されたデジタル信号を復調する復調回路109とを備える。
【0017】
また受信機100は、RF可変利得増幅器102とIF可変利得増幅器107と、A/D変換器108とに接続された利得制御回路110を備える。利得制御回路110は、A/D変換器108が出力するデジタル信号の信号レベルを一定時間平均した信号レベルと、一定の電力値で定められる参照値を比較し、RF可変利得増幅器102及びIF可変利得増幅器107の利得制御を行うことによりミキサ回路104及びA/D変換器108に入力される信号レベルを一定に保つ。
【0018】
さらに受信機100は、IF固定利得増幅器106と利得制御回路110とに接続される第一の比較器111と、IF固定利得増幅器106と利得制御回路110とに接続される第二の比較器112と、IF固定利得増幅器106と利得制御回路110とに接続される第三の比較器113と、利得制御回路110に接続される記憶部114とを備える。
【0019】
第一の比較器111は、IF固定利得増幅器106が出力した増幅されたIF信号の信号レベル(以下、「IF信号レベル」という。)と、所定の電力値で規定される第一の閾値(Vref1)とを比較し、IF信号レベルが第一の閾値を超過しているか否かの比較結果を利得制御回路110に出力する。第一の閾値はRF可変利得増幅器102における利得の調整に用いられる値として適宜定められる電力値である。
【0020】
第二の比較器112は、IF信号レベルと、所定の電力値で規定される第二の閾値(Vref2)とを比較し、IF信号レベルが第二の閾値を超過しているか否かの比較結果を利得制御回路110に出力する。第二の閾値は、A/D変換器108のダイナミックレンジとIF可変利得増幅器107の利得に応じて適宜定められる所定の電力値であり、また第一の閾値よりも高い値として定められる。
【0021】
第三の比較器113は、IF信号レベルと、所定の電力値で規定される第三の閾値(Vref3)とを比較し、IF信号レベルが第三の閾値を超過しているか否かの比較結果を利得制御回路110に出力する。第三の閾値は、A/D変換器108のダイナミックレンジと略同一で、第二の閾値よりも高い電力値として定められる。
【0022】
記憶部114は、IF信号レベルが第二の閾値を超える頻度を算出するために設けられている。記憶部114は第二の比較器の比較結果が第二の閾値を超えた回数を示す変数Over_Vref2と、第一の比較器112が比較した総回数を示す変数Countを格納する。利得制御回路110はOver_Vref2をCountで除算することにより、IF信号レベルが第二の閾値を超える頻度を算出することができる。
【0023】
利得制御回路110は、前述の利得制御に加え、第一の比較器111、第二の比較器112、及び第三の比較器113のそれぞれの比較結果と、第二の閾値を超える頻度とに基づき、RF可変利得増幅器102及びIF可変利得増幅器107の利得を制御する。具体的には、利得制御回路110は、IF信号レベルが第一の閾値以下の場合、RF可変利得増幅器102の利得を上げる。一方利得制御回路110は、IF信号レベルが第二の閾値を超える頻度が所定値以下であり、かつIF信号レベルが第三の閾値を超えない場合にIF可変利得増幅器107の利得を上げる。さらに利得制御回路110は、IF信号レベルが第三の閾値を超過している場合、IF可変利得増幅器107の利得を下げる。
【0024】
このようにRF可変利得増幅器102及びIF可変利得増幅器107の利得を制御することにより、本発明による自動利得制御回路は、OFDM方式で変調された信号の利得制御において、A/D変喚器のダイナミックレンジを超過しない範囲で可変利得増幅器を効率よく制御することができる。
【0025】
次に、本発明の実施の形態1に係る自動利得制御回路について、図2によりその動作を説明する。
【0026】
まずステップS201において、利得制御回路110は、第一の比較器111による比較結果に基づき、現在の時刻tにおけるIF信号レベル(IF信号レベル(t))が第一の閾値を超過しているかを判定する。超過している場合ステップS202に進む。超過していない場合ステップS207に進む。
【0027】
ステップS202において、利得制御回路110は、第二の比較器112による比較結果に基づき、IF信号レベル(t)が第二の閾値を超過しているかを判定する。超過している場合ステップS203に進み、超過していない場合ステップS208に進む。
【0028】
ステップS203において、利得制御回路110は、記憶部114に格納されたOver_Vref2の値を1回分増加させ、ステップS204に進む。
【0029】
ステップS204において、利得制御回路110は、第三の比較器113による比較結果に基づき、IF信号レベル(t)が第三の閾値を超過しているかを判定する。超過している場合ステップS205に進み、超過していない場合ステップS208に進む。
【0030】
ステップS205において利得制御回路110は、IF可変利得増幅器107の利得を下げるように制御する。このように制御することにより、IF固定利得増幅器106の出力側で一時的にIF信号レベルがA/D変換器108のダイナミックレンジを超過する場合でもIF可変利得増幅器107の利得を下げることでA/D変換器108に入力するIF信号の信号レベルをA/D変換器108のダイナミックレンジの範囲内にすることができる。本利得制御の後、ステップS206に進む。
【0031】
ステップS206において利得制御回路110は、記憶部114に格納されたCountの値を1回分増加させ、ステップS201に戻り、同様の動作が繰り返される。すなわち、時刻t+Δtにおける信号レベルであるIF信号強度(t+Δt)に関し、同様のフローにて処理され、以下同様に繰り返される。
【0032】
ステップS201においてIF信号レベル(t)が第一の閾値を超過していない場合、ステップS207において、利得制御回路110は、RF可変利得増幅器102の利得を上げるように制御する。このように制御することでIF信号レベルが一時的に小さすぎる場合に受信機が受信する信号レベルを高めることができる。その後ステップS206に進む。
【0033】
ステップS202においてIF信号レベル(t)が第二の閾値を超過していない場合、及びステップS204においてIF信号レベル(t)が第三の閾値を超過していない場合、ステップS208において、利得制御回路110はIF信号レベルが第二の閾値を超過する頻度を判定する。具体的には利得制御回路110は、記憶部114に格納されたOver_Vref2の値をCountの値で除算して当該頻度を算出する。そして利得制御回路110は当該頻度があらかじめ定められた所定値より大きいか否かを判定する。当該頻度が所定値より大きい場合にはステップS206に進む。頻度が所定値以下の場合にはステップS209に進む。
【0034】
ステップS209において、利得制御回路110は、IF可変利得増幅器107の利得を下げるように制御する。その後ステップS206に進む。
【0035】
このことにより、本発明による自動利得制御回路は、OFDM方式で変調された信号の利得制御において、A/D変喚器のダイナミックレンジを超過しない範囲で可変利得増幅器を効率よく制御することができる。
【0036】
なお、本実施例では比較器を3つ備える構成として説明したがこれに限らず、第一の比較器111を含まない構成としてもよい。図3に本発明の実施の形態1の変形例に係るOFDM方式で変調された信号を受信する受信機300の構成を表す回路図を示す。変形例は図1に示す実施の形態1の受信機100の構成を示す回路図と比較し、第一の比較器111を有さない点が異なる。また変数Countは第二の比較器112が比較した回数を示す点が異なる。その他の構成は図1に示す回路構成と同一である。図3のように構成した受信機300における自動利得制御の動作について図4に示す。図4は図2におけるステップS201及びステップS207を含まない点が異なる。その他の動作は同一である。
【0037】
変形例の自動利得制御回路についても、OFDM方式で変調された信号の利得制御において、A/D変喚器のダイナミックレンジを超過しない範囲で可変利得増幅器を効率よく制御することができる。
【0038】
(実施の形態2)
以下に、本発明の実施の形態2について説明をする。図5は本発明の実施の形態2に係る、OFDM方式で変調された信号を受信する受信機400の構成を表す回路図である。実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。実施の形態2に係る受信機400は、実施の形態1にかかる構成と比較して、復調回路109の構成が異なり、また、D/A変換器115と、演算回路116とを備える点が異なる。そして実施の形態2に係る受信機400は、概略として、DCオフセットに係る受信性能悪化を改善することを特徴とする。なおDCオフセットとは、局部発振器103の信号レベルが大きい場合に、当該信号がRF可変利得増幅器102に漏れ出し、RF可変利得増幅器102で当該漏れ出した信号が反射した場合等に生じる。
【0039】
実施の形態2に係る受信機400の復調回路109は、FFT処理部1091と、DCオフセット推定処理部1092と、復調処理部1093と、D/A変換器115を備える。
【0040】
FFT処理部1091は、A/D変換器108から出力されたデジタル信号に対し、FFT処理をして、周波数領域の信号をDCオフセット推定処理部1092に出力する。
【0041】
DCオフセット推定処理部1092は、FFT処理部1091が出力した周波数領域の信号を復調処理部1093に渡し、また、当該信号からDCオフセットを推定する。そしてDCオフセット推定処理部1092は、推定したDCオフセット値を、D/A変換器115に出力する。
【0042】
D/A変換器115は、DCオフセット推定処理部1092が出力したDCオフセット値を、デジタル信号からアナログ信号に変換し、該アナログ信号を演算回路116に出力する。
【0043】
演算回路116は、D/A変換器115が出力したアナログ信号と、ミキサ回路104が出力したIF信号とを合成する。具体的には演算回路116は、ミキサ回路104が出力したIF信号から、D/A変換器115が出力したアナログ信号に基づきDCオフセットを除去する。そして演算回路116は、DCオフセットを除去したIF信号を、BPF105に渡す。
【0044】
復調処理部1093は、DCオフセット推定処理部1092から受けた周波数領域の信号に基づき、復調処理を行う。
【0045】
このように、実施の形態2に係る受信機400は、復調回路109のDCオフセット推定処理部1092がDCオフセット値を推定し、当該DCオフセット値に基づきミキサ回路104が出力したIF信号からDCオフセットを除去するため、DCオフセットによる受信性能の悪化を防止し、受信性能を向上させることができる。
【0046】
なお、本実施例では比較器を3つ備える構成として説明したがこれに限らず、第一の比較器111を含まない構成としてもよい。
【0047】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 受信機
101 アンテナ
102 RF可変利得増幅器
103 局部発振器
104 ミキサ回路
105 BPF
106 IF固定利得増幅器
107 IF可変利得増幅器
108 A/D変換器
109 復調回路
110 利得制御回路
111 第一の比較器
112 第二の比較器
113 第三の比較器
114 記憶部
115 D/A変換器
116 演算回路
300 受信機
400 受信機
500 従来の受信機
501 アンテナ
502 RF可変利得増幅器
503 局部発振器
504 ミキサ回路
505 BPF
506 IF可変利得増幅器
507 A/D変換器
508 復調回路
509 利得制御回路
1091 FFT処理部
1092 DCオフセット推定処理部
1093 復調処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM方式で変調された無線受信信号の信号レベルを増減するRF可変利得増幅器と、
RF可変利得増幅器が出力した前記無線受信信号を中間周波数信号に変換するミキサ回路と、
前記中間周波数信号の信号レベルを増幅するIF固定利得増幅器と、
前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号の信号レベルを増減するIF可変利得増幅器と、
前記IF可変利得増幅器が出力した前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記デジタル信号の平均信号レベルを算出し、前記平均信号レベルに基づき前記RF可変利得増幅器と前記IF可変利得増幅器の利得を制御する利得制御回路と、
を有する自動利得制御回路であって、
前記自動利得制御回路は、
第一の閾値と前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号のIF信号レベルとを比較する第一の比較器と、
前記A/D変換器のダイナミックレンジ及び前記IF可変利得増幅器の利得に応じて定められ、前記第一の閾値よりも高い第二の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第二の比較器と、
前記A/D変換器のダイナミックレンジと略同一であり、前記第二の閾値よりも高い第三の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第三の比較器と、
を有し、
前記利得制御回路は、
前記第一の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第一の閾値以下の場合、前記RF可変利得増幅器の利得を上げ、
前記第二の比較器及び前記第三の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第二の閾値を超過する頻度が所定値以下の場合で、かつ前記IF信号レベルが前記第三の閾値以下の場合、前記IF可変利得増幅器の利得を上げ、
前記第三の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第三の閾値を超過する場合、前記IF可変利得増幅器の利得を下げることを特徴とする自動利得制御回路。
【請求項2】
OFDM方式で変調された無線受信信号の信号レベルを増減するRF可変利得増幅器と、
RF可変利得増幅器が出力した前記無線受信信号を中間周波数信号に変換するミキサ回路と、
前記中間周波数信号の信号レベルを増幅するIF固定利得増幅器と、
前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号の信号レベルを増減するIF可変利得増幅器と、
前記IF可変利得増幅器が出力した前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記デジタル信号の平均信号レベルを算出し、前記平均信号レベルに基づき前記RF可変利得増幅器と前記IF可変利得増幅器の利得を制御する利得制御回路と、
を有する自動利得制御回路であって、
前記自動利得制御回路は、
前記A/D変換器のダイナミックレンジ及び前記IF可変利得増幅器の利得に応じて定められる第二の閾値と前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号のIF信号レベルとを比較する第一の比較器と、
前記A/D変換器のダイナミックレンジと略同一であり、前記第二の閾値よりも高い第三の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第二の比較器と、
を有し、
前記利得制御回路は、
前記第一の比較器及び前記第二の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第二の閾値を超過する頻度が所定値以下の場合で、かつ前記IF信号レベルが前記第三の閾値以下の場合、前記IF可変利得増幅器の利得を上げ、
前記第二の比較器による比較の結果、前記IF信号レベルが前記第三の閾値を超過する場合、前記IF可変利得増幅器の利得を下げることを特徴とする自動利得制御回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動利得制御回路であって、
さらに前記デジタル信号をFFT処理するFFT処理部と、
前記FFT処理されたデジタル信号に基づき、DCオフセット量を推定するDCオフセット推定部と、
前記DCオフセット量をアナログ信号に変換するD/A変換器と、を備え、
前記自動利得制御回路は前記アナログ信号に基づき前記中間周波数信号からDCオフセットを除去することを特徴とする自動利得制御回路。
【請求項4】
OFDM方式で変調された無線受信信号の信号レベルを増減するRF可変利得増幅器と、
RF可変利得増幅器が出力した前記無線受信信号を中間周波数信号に変換するミキサ回路と、
前記中間周波数信号の信号レベルを増幅するIF固定利得増幅器と、
前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号の信号レベルを増減するIF可変利得増幅器と、
前記IF可変利得増幅器が出力した前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記デジタル信号の平均信号レベルを算出し、前記平均信号レベルに基づき前記RF可変利得増幅器と前記IF可変利得増幅器の利得を制御する利得制御回路と、
を有する自動利得制御回路の自動利得制御方法であって、
第一の閾値と前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号のIF信号レベルとを比較する第一の比較ステップと、
前記A/D変換器のダイナミックレンジ及び前記IF可変利得増幅器の利得に応じて定められ、前記第一の閾値よりも高い第二の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第二の比較ステップと、
前記A/D変換器のダイナミックレンジと略同一であり、前記第二の閾値よりも高い第三の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第三の比較ステップと、
を有し、
前記第一の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第一の閾値以下の場合、前記RF可変利得増幅器の利得を上げるステップと、
前記第二の比較ステップ及び前記第三の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第二の閾値を超過する頻度が所定値以下の場合で、かつ前記IF信号レベルが前記第三の閾値以下の場合、前記IF可変利得増幅器の利得を上げるステップと、
前記第三の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第三の閾値を超過する場合、前記IF可変利得増幅器の利得を下げるステップと、を有することを特徴とする自動利得制御方法。
【請求項5】
OFDM方式で変調された無線受信信号の信号レベルを増減するRF可変利得増幅器と、
RF可変利得増幅器が出力した前記無線受信信号を中間周波数信号に変換するミキサ回路と、
前記中間周波数信号の信号レベルを増幅するIF固定利得増幅器と、
前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号の信号レベルを増減するIF可変利得増幅器と、
前記IF可変利得増幅器が出力した前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記デジタル信号の平均信号レベルを算出し、前記平均信号レベルに基づき前記RF可変利得増幅器と前記IF可変利得増幅器の利得を制御する利得制御回路と、
を有する自動利得制御回路の自動利得制御方法であって、
前記A/D変換器のダイナミックレンジ及び前記IF可変利得増幅器の利得に応じて定められる第二の閾値と前記IF固定利得増幅器が出力した前記中間周波数信号のIF信号レベルとを比較する第一の比較ステップと、
前記A/D変換器のダイナミックレンジと略同一であり、前記第二の閾値よりも高い第三の閾値と前記IF信号レベルとを比較する第二の比較ステップと、
を有し、
前記第一の比較ステップ及び前記第二の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第二の閾値を超過する頻度が所定値以下の場合で、かつ前記IF信号レベルが前記第三の閾値以下の場合、前記IF可変利得増幅器の利得を上げるステップと、
前記第二の比較ステップの結果、前記IF信号レベルが前記第三の閾値を超過する場
合、前記IF可変利得増幅器の利得を下げるステップと、
を有することを特徴とする自動利得制御方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の自動利得制御方法であって、
前記自動利得制御回路がさらにFFT処理部と、DCオフセット推定部と、D/A変換器とを備え、
前記FFT処理部が、前記デジタル信号をFFT処理するステップと、
前記DCオフセット推定部が、前記FFT処理されたデジタル信号に基づき、DCオフセット量を推定するステップと、
前記D/A変換器が前記DCオフセット量をアナログ信号に変換するステップと、を有し、
前記自動利得制御回路が、前記アナログ信号に基づき前記中間周波数信号からDCオフセットを除去するステップを有することを特徴とする自動利得制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動利得制御回路を含む通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−31158(P2013−31158A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130677(P2012−130677)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】