説明

OLED表示装置

【課題】動画モード、標準モード、モノクロモードの3つの表示モードを、消費電力が大幅に増加することなく簡単な方法で切り替え可能なOLED表示装置を得る。
【解決手段】発光素子として有機発光ダイオードを用いたOLED表示装置において、表示パネルを駆動する駆動IC10に、標準モードから動画モードに移行させる動画モード信号及びモロクロモード信号の入力に基づいて標準モード、動画モード、モノクロモードのモード切り替えを行うモード切り替え手段として、動画モード信号の入力に基づいてビデオデータの算出係数の変更を行うためのビデオデータ調整計数回路12及びガンマ調整計数回路13と、1フレーム内で消灯駆動を行い駆動制御の変更を行うための消灯開始信号発生器15とを備えると共に、モノクロモード信号を駆動回路内の構成及び前記表示パネルに供給するモノクロモード信号供給線を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子として有機発光ダイオードを用いたOLED(Organic light-emitting diode)表示装置に関し、特に、ボケのない動画表示と長寿命化を実現すると共に低消費電力化を実現するOLED表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、動きボケを防止すると共に、消費電力の増大及び短寿命化を抑制する表示装置として、入力データが動画か静止画かを識別する識別信号の値によって、動画の場合に黒挿入駆動を行い、静止画の場合に黒挿入を行わないようにして、黒挿入の際は、1フレームを前後のサブフィールドに分割し、前フィールドで映像を表示し、後フィールドで黒挿入するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、OLED表示装置は、自発光型であるので、背景部分を白表示、文字部分を黒表示すれば、背景部分を黒表示、文字部分を白表示とする場合より低消費電力となるので、テキストデータについて、白黒反転して表示することで低消費電力化を図るものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−114286号公報
【特許文献2】特開2003−108076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、OLEDは、LCDと同様のデータホールド型駆動であるため、動画ボケが生じ易く、滑らかな動画表示に欠点があった。これに対応するため、駆動周波数を増加させ、黒データの挿入を行っていたが、駆動周波数の増加は、消費電力の増加や電流密度の増加によるOLED材料の劣化加速などを助長し、問題となっていた。
【0006】
また、動画ボケ防止のため、消灯時間が存在するので、輝度を一定に保つには、消灯時間に反比例して輝度を高くする必要がある。このため、OLEDに流れる電流密度が増加し、OLED材料の劣化速度が増すという問題が発生する。
【0007】
さらに、携帯機器は、その殆どがバッテリー駆動であり、低消費電力化は必須である。使用者はバッテリー残量に気を使いながら使用しているが、バッテリー残量が少なくなっても使い続けなければならない状況が生じることがある。そのため、携帯機器の使用時間を延命できる有効な機能があれば、使用者にとって非常に有効なものとなり、表示装置の消費電力を極力小さくすることが望まれている。
【0008】
この発明は上述した点に鑑みてなされたもので、動画を楽しめる動画モード、OLED材料の短寿命化を抑制する標準モード、自発光型表示装置に適したモノクロモードの3つの表示モードを、消費電力が大幅に増加することなく簡単な方法で切り替え可能な機能を実現するOLED表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るOLED表示装置は、発光素子として有機発光ダイオードを用いたOLED表示装置において、表示パネルを駆動する駆動回路に、標準モードから動画モードに移行させる動画モード信号及びモロクロモード信号の入力に基づいて標準モード、動画モード、モノクロモードのモード切り替えを行うモード切り替え手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、用途に応じて、動画モード、標準モード、モノクロモードを使い分けることで、ボケのない動画表示と長寿命化および低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係るOLED表示装置として適用される3モード表示装置の概要を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態に係るOLED表示装置を説明するもので、駆動ICの機能を示すブロック図である。
【図3】駆動電流の増加と黒挿入率の関係を示す図である。
【図4】1フレームの画像を常にある割合だけ発光させる発光領域スクロール法による表示を示す図である。
【図5】消灯方法と駆動波形を説明する図である。
【図6】標準モード(Standard Mode)から動画モード(Moving Picture Mode)に移行する時の動作波形を示す図である。
【図7】この発明におけるOLED表示装置のものモノクロモードの表示方法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、具体的な実施の形態を説明する前に、この発明の要旨ついて説明すると、次のとおりである。
1.駆動周波数を変えないで駆動できるよう、動画モードでは、1フレームの中で発光と消灯を行う。
2.標準モードから動画モードへの変換は、消灯率の設定とビデオデータの調整係数(α、β)の設定を行った後、
a.動画モード信号MPM(Moving Picture Mode)、
b.動画用のビデオデータ、
c.画素消灯開始信号OFFST
を発生させ、発光と消灯を制御することで行う。
3.標準モードからモノクロモードへの変換は、モノクロモード信号MCM(MonoChrome Mode)を発生させ、自発光型材料の中で最も電流−光変換効率の良い材料のビデオ信号を表示させることで行う。
4.動画モードでは、標準モードでの輝度を消灯率に反比例した値に制御する。
5.MPM信号とモノクロモード信号MCMが発生しない場合を標準モードとする。
6.各モードへの切り替えは、直接ユーザーが制御できるように開放する。
【0013】
ここで、この発明では、新しい機能として、動画モード、標準モード、そして、モノクロモードを切り替えられる機能を有する3モード表示装置を提供する。図1は、この発明に係るOLED表示装置として適用される3モード表示装置の概要を示す図である。この発明に係るOLED表示装置は、図1に示すように、動画モード、標準モード、モノクロモードを切り替えられる機能を有する。
【0014】
さらに、この発明に係るOLED表示装置の概要について以下に述べる。
(1)データホールド型のOLED駆動法では、動画ボケが生じ易く、滑らかな動画表示に欠点があった。これに対応するため、駆動周波数を増加させ、黒データの挿入を行っていたが、駆動周波数の増加は、消費電力の増加や電流密度の増加によるOLED材料の劣化加速などを助長し、問題となっていた。そこで、1フレームの中で、発光と消灯を行い、その消灯率に見合った電流を流すことで、輝度を変えずに、つまり、消費電力を増加させることなく、動画ボケが軽減できる動画表示を可能にする(これをEmission Scroll法と称する)。このため、標準モードでの駆動周波数を変える必要はない。
(2)しかし、駆動周波数を変えないとは言え、消灯時間が存在するので、輝度を一定に保つには、消灯時間に反比例して、輝度を高くする必要がある。このため、OLEDに流れる電流密度が増加し、OLED材料の劣化速度が増すという問題が発生する。これを、軽減するため、必要なときだけ動画モードを使用するという、選択できる機能を、標準モードに対し追加する。
(3)また、携帯機器は、その殆どがバッテリー駆動であり、低消費電力化は必須である。使用者はバッテリー残量に気を使いながら使用しているが、バッテリー残量が少なくなっても使い続けなければならない状況が生じる。そこで、携帯機器の使用時間を延命できる有効な機能があれば、使用者にとって非常に有効であり、表示装置の消費電力を極力小さくすることが望まれている。表示装置は、RGBの3原色を元に各色を所望の輝度で発光させることで、所望の色表現している。バッテリー残量がない場合、携帯機器を操作する上では、最低限の情報が分かれば良いので、3原色を1色にしても問題ないと考えられる。表示色を1色に絞る際、OLEDのような自己発光型デバイスでは、電流−光変換効率がも最も大きな色を選択する方が、低消費電力化にはさらに有効である。視認性の観点も含めて、緑Gが最適である。さらに、モノクロモードは、駆動ICから黒データを入力するのではなく、パネル内に用意された電源からデータ線に供給することで、駆動ICの余分な消費電力を除くことができ、さらに低消費電力化ができる。また、常にモノクロモードで使用することで、エネルギーセービングとバッテリー充電機会の低減ができ、有効性が増す。
このような動画モード、標準モード、モノクロモードの選択可能な3モードを提供することで、ユーザーにこれまでにない使用上のメリットを提供できる。
【0015】
次に、この発明の具体的な実施の形態について説明する。図2は、この発明の実施の形態に係るOLED表示装置を説明するもので、表示パネルを駆動する駆動回路としての駆動ICの機能を示すブロック図である。図2に示すOLED表示装置は、滑らかな動画を楽しめる動画モードと、OLED材料の短寿命化を抑制することができる標準モードと、低消費電力モードであるモノクロモードとの3つの駆動モードのモード切り替え手段を備えた3モードOLED表示装置を示すもので、駆動IC10と、消灯率設定回路20及び表示パネル30とで構成されている。なお、標準モードとは、画質が4.6Mbps前後のビットレートに設定されているモードを言う。
【0016】
駆動IC10は、従来と同様な構成としての論理回路11、ビデオデータRGBを格納するメモリ14、ビデオ信号RGBを直並列変換するDAC16及びドライバ17の他に、モード切り替え手段の構成として、ビデオデータの算出係数の変更を行うためのビデオデータ調整係数回路12及びガンマ調整係数回路13、1フレーム内で消灯駆動を行い駆動制御の変更を行うための消灯開始信号発生器15を備えると共に、モノクロモード信号MCMを、論理回路11、メモリ14、DAC16、ドライバ17及び表示パネル30に供給して論理回路11、メモリ14、DAC16、ドライバ17及び表示パネル30をモノクロモードで動作させるためのモノクロモード信号供給線を備えている。
【0017】
図2に示すOLED表示装置において、標準モードから動画モードへの移行は、動画モード信号(MPM信号、MPM:Moving Picture Mode)の発生によって起動されるもので、MPM信号は、ユーザーからの指示、表示データの種類(動画、静止画、テキストなど)、あるいはアプリケーションの種類に起因する信号に基づいて発生する。MPM信号が活性化されると、ビデオデータ調整係数回路12において、ビデオデータ調整係数が、標準仕様の値(Standard)から動画モードの値αに変更される。同様に、ガンマ調整係数回路13において、ガンマ係数が、標準仕様の値(Standard)から動画モードの値βに変更される。そして、論理回路11において、ビデオデータ調整係数回路12からの調整係数α及びガンマ調整係数回路13からの調整係数βに基づいてビデオデータが計算される。
【0018】
また、消灯率設定回路20は、消灯率δに基づいて消灯時間設定信号(TOFF信号)を生成し、消灯開始信号発生器15は、消灯時間設定信号(TOFF信号)に基づいて消灯開始信号(OFFST信号)の生成を行うようになされ、消灯開始信号(OFFST信号)は、画素を順々に消灯させる回路を活性化させる機能を有する。消灯率設定回路20及び消灯開始信号発生器15は、駆動IC10外で作成しても良いし、駆動IC10内の論理回路11内で生成しても良い。また、調整係数α、βは、消灯率δが確定されることで決まる係数である。
【0019】
次に、モノクロモードへの移行は、モノクロモード信号MCM(MonoChrome Mode)信号の発生によって起動される。モノクロモード信号MCMは、ユーザーの指示、あるいはバッテリー残量監視システムからの信号などによって発生する。モノクロモード信号MCMが活性化されると、選択されたモノカラーのみの演算が論理回路11とメモリ14との間で行われた後、ドライバ17やDAC16から、モノクロモードに必要な駆動信号(CLK、X,Y駆動信号、Mux信号, モノクロモード信号MCM)やビデオデータがパネル30に入力される。
【0020】
論理回路11では、通常、ビデオデータRGBが各種補正のための演算処理が行われる。モノクロモードでは、選択された1つの色についてのみ演算がなされる。演算量は3分の1以下に減少し、メモリ14間のデータのやり取りも減少する。ドライバ17では、通常、3色のビデオデータを書き込むための信号が出力される。しかし、モノクロモードでは、選択された1つの色が書き込むのに必要な信号のみが出力される。また、DAC16では、通常、3色のビデオデータが出力されるが、モノクロモードでは、選択された1つの色のみが出力される。
【0021】
次に、パネル30内及び入力信号への対応として、以下に詳細を示す。
動画モード(Moving Picture Mode)
(a)動画ボケ対策
駆動周波数は変化させることなく、1フレーム内の黒挿入時間を制御することで、動画ボケ対策を行う。
図3は、駆動電流の増加と黒挿入率の関係を示す図で、(a)は輝度と黒挿入率の関係を示し、(b)は駆動電流の数倍したときの動作点の動きを示している。設定輝度を一定に保持するとすれば、駆動電流を大きくすると、発光時間は短くなる。例えば、図3に示すように、
黒挿入50%の場合(点A→点B): 輝度2倍、発光時間50%。
黒挿入75%の場合(点A→点C): 輝度4倍、発光時間25%。
となり、発光時間が短くなるに従い、入力ビデオ電圧はVgsがより大きくなる方向に移動する。
【0022】
ここで、例えば、黒挿入50%は、消灯率δ=50%と同じ意味である。すなわち、動画モードでの輝度を、下式にしたがって、
動画モードでの輝度=標準モードでの輝度×(100/消灯率)
標準モードでの輝度を消灯率に反比例した値に制御することで、駆動周波数は変化させることなく、1フレーム内の黒挿入時間を制御することで、動画ボケ対策を行うことができる。
【0023】
(b)標準モードから動画モードへ移行する時のビデオデータ
飽和領域での駆動トランジスタTrの駆動電流は、以下の式で示される。
DS=W/L・μ・Cox・1/2・(VGS−Vth (1)
ここで、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、μは移動度、
oxは単位面積当たりのゲート容量、
GSはゲート・ソース間電圧、Vthは閾値電圧をそれぞれ示す。
この発明では、黒挿入を行うため、発光時間が短くなり、輝度が低下する。標準モード時のピーク輝度と動画モード時の輝度を一定に保持しようとすると、駆動電流を大きくしてピーク輝度を大きくする必要がある。式(1)から、ソフトウエア的に可変可能なパラメータは、ゲート・ソース間電圧VGSである。このゲート・ソース間電圧をより大きくするために、ビデオデータVsigやGammaに下記のように調整係数α、βを掛ける。
・Vsig=Vsig×α ・Gamma=Gamma×β
α、βは、標準モードの変換係数とは異なり、動画モード時の表示(輝度、階調など)を正常に行うための調整係数であり、消灯率に影響される定数である。
【0024】
(c)黒データ挿入方法と表示方法(Emission Scroll法)
従来の黒データ挿入方法では、駆動周波数が大きくなる。これは、駆動の高速化により、消費電力が増加することを示しており、良い方法ではない。図4は、1フレームの画像を常にある割合だけ発光させる方式である、発光領域スクロール法による表示を示している。図4に示すように、1フレームを5画面に分けて、各画面内の黒挿入率を50%とした場合を示し、50%の発光領域が上から下に順次スクロールされるようにして表示される。このようにすると、駆動周波数を増加させることなく、動画ボケを抑制することができる。
【0025】
(d)黒データの作成方法(Emission Scroll法)
黒データの作成方法として、発光を停止し、消灯させる方法を選択する。
図5は、消灯方法と駆動波形を説明するもので、(a)は表示パネル30内の消灯用画素回路を示し、(b)は駆動線波形を示す。消灯方法は、1Vの期間内の1ショットパルスで、画素内の駆動トランジスタTr 2をオフさせることで行う。
この方法では、図5(a)に示すように、発光素子として有機発光ダイオードに電流を供給する駆動トランジスタTr 2を停止させる停止用トランジスタTr off、停止用トランジスタTr offのゲートに接続された停止用駆動信号線OFF Line、及び停止用駆動信号線OFF Lineを駆動する信号線用駆動回路としてOFF シフトレジスタが必要である。
【0026】
(e)動画モード(Moving Picture Mode:MPM)時の動作波形
図6は、標準モード(Standard Mode)から動画モード(Moving Picture Mode)に移行する時の動作波形を示している。動画モードに入ったことを意味する認識信号MPMが活性化(図中、“L”)することで、OFFシフトレジスタが活性化する。なお、図6において、VSTは垂直期間開始信号、VOUT1は垂直期間終了信号、VOUT2は消灯期間終了信号を示す。
【0027】
モノクロモード(Monochrome Mode)
(1)モノクロモードの特徴
モノクロモードについてのこの発明のポイントは以下のとおりである。
a.モノクロモード表示を指示するモノクロモード信号MCMを発生させること。
b.モノクロモード信号MCMによって、データ線に黒データを書き込むこと。
c.モノクロモード信号MCMによって、駆動IC10内の動作不要回路の動作を停止させること。
d.モノクロモードは、メーカー側の選択、顧客の指示、あるいは、バッテリー残量監視システムからの信号などで動作可能なモードであり、選択可能な機能である。
e.データ線に黒データを書き込む方法には、以下がある。
・通常通り、駆動IC10から黒データを書き込む方法
・パネル30内部に存在する黒電位をデータ線に書き込む方法
f.モノクロモードのカラーは、RGBの場合、変換効率が最も大きな色が効果的であり、RGBの場合W(白)色である。
g.モノクロモードによる低消費電力化は、LCDには不可能なモードであり、また、RGBW画素であればさらに効果を発揮できるモードである。
h.モノクロモードでは、パネル30部分のみならず駆動IC10の消費電力も低減可能である。
i.パネル30部分での消費電力の90%以上はOLEDでの消費電力であり、この発明により3分の1以下にできる。
j.モノクロモードがあることで、バッテリー残量低下時に延命措置を施すことができ、緊急事態に対応できる。
【0028】
(2)具体的回路例
黒データをパネル30内部の電源から導入する方法を示す。画素におけるOLED駆動TFTをp−ch Trとした場合である。
図7は、この発明におけるOLED表示装置のものモノクロモードの表示方法に関する説明図であり、(a)はデータラインの駆動回路、(b)はモノクロモード時の駆動波形をそれぞれ示している。図7に示すOLED表示装置は、RGBの3原色のうち適当な1色としてGサブ画素をモノクロモードの色とした場合を例示している。
【0029】
図7に示す構成では、パネル30側の内部で、モノクロモード信号MCMを利用して黒データを生成している。より具体的には、RGBそれぞれのデータラインとVDDラインとの間に、モノクロモードに切り換えるためのスイッチとして、モノクロスイッチトランジスタMSW(Monochrome SW)が設けられている。
【0030】
そして、モノクロモード信号MCMが「L」の場合(すなわち、モノカラー表示を行わせたい場合)には、以下の動作を行う。
1)RとBに対応するMux信号を「H」固定として駆動IC10から受信し、動作するのはGサブ画素の1つに減る。
2)RとBのデータラインは、モノクロスイッチトランジスタMSWがONすることで、VDDラインから「H」データが入力され、以後、モノクロモードが続く限り、データの変化はない。
3)結果として、RとBのビデオデータは、「Don't care」となり、駆動IC10で駆動する必要はない。
この結果、選択されなかったサブ画素に対応したデータラインに、黒データをパネル30側で書き込むことができるとともに、駆動IC10側の演算負荷を軽減することができる。
同様に、RGBWの場合、Wのみのビデオデータを処理すればよく、消費電力は4分の1以下になる。
【0031】
次に、先の図1を用いて、駆動IC10側の動作について説明する。モノクロモード信号MCMが発生すると、選択されたモノカラーのみの演算が論理回路11とメモリ14との間で行われた後、ドライバ17およびDAC16から、モノクロモードに必要な駆動信号(CLK、X、Y駆動信号、Mux信号、モノクロモード信号MCM)やビデオデータがパネル30に入力される。
【0032】
論理回路11は、通常、R、G、Bの各ビデオデータについて、各種補正のための演算処理を行う。これに対して、モノクロモードでは、選択された1つの色についてのみ、演算がなされる。従って、演算量は3分の1以下に減少し、メモリ14とのデータのやり取りも減少する。
【0033】
また、ドライバ17からは、通常、3色(R、G、B)のビデオデータを書き込むためのMux信号が出力される。しかし、モノクロモードでは、選択された1つの色を書き込むのに必要なMux信号のみが出力され、他の2色は「H」状態として出力されることとなる。
【0034】
また、DAC16からは、通常、3色のビデオデータが出力されるが、モノクロモードでは、選択された1つの色のみが出力され、データラインに反映されることとなる。一方、他の色は、Mux信号が「H」状態となり、RおよびBのデータラインドライバがOFF状態となるため(図7(a)(b)参照)、ビデオデータとしてはどのようなデータが出ていても関係ないこととなる。この結果、駆動IC10側の演算負荷を軽減することができる。
【0035】
従って、モノクロモードへの選択切り替えが可能な構成を備え、必要に応じて表示モードをモノクロモードに切り換えることで、低消費電力化および電池の長寿命化を図ることができるOLED表示装置を得ることができる。
【0036】
さらに、駆動IC側だけでなく、パネル側にもモノクロモードへの選択切り替えが可能な構成を備えることで、モノカラー表示を行わないサブ画素に対応するデータラインを強制的に黒データ(すなわち、OLEDが発光しないデータ)に変更することができ、駆動IC側の演算処理を軽減させることができる。すなわち、駆動IC側においても、ビデオデータの転送(入出力)を1種類のみにできるとともに、ビデオデータの演算を1つのみにすることができ、駆動IC側の消費電力をさらに低減できる。
【0037】
以上のように、上記実施の形態によれば、1つの表示装置で、3つの駆動方法を提供することで、以下の機能を提供できる。
・ボケのない動画映像を鑑賞する使い方
・OLEDの長寿命化に良い使い方
・低消費電力での使い方
【0038】
また、各駆動モード間で、駆動周波数を変えないので、以下が期待できる。
・大きな消費電力の増加がなく、低消費電力駆動を実現できる。
・設計負担が軽く、開発コスト低減と製品開発が容易である。
【0039】
さらに、各モードの切り替えをユーザ(あるいはセットメーカー)に開放することで、以下が期待できる。
・バッテリー残量や駆動モード、さらにはアプリケーションなどに応じて、電力消費をユーザ(あるいはセットメーカー)がきめ細かく管理できる。
・パネルを使う側に、多彩な選択肢を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子として有機発光ダイオードを用いたOLED表示装置において、
表示パネルを駆動する駆動回路に、標準モードから動画モードに移行させる動画モード信号及びモロクロモード信号の入力に基づいて標準モード、動画モード、モノクロモードのモード切り替えを行うモード切り替え手段を備えた
ことを特徴とするOLED表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のOLED表示装置において、
前記モード切り替え手段は、動画モード信号の入力に基づいてビデオデータの算出係数の変更を行うためのビデオデータ調整計数回路及びガンマ調整計数回路と、1フレーム内で消灯駆動を行い駆動制御の変更を行うための消灯開始信号発生器とを備えると共に、モノクロモード信号を駆動回路内の構成回路及び前記表示パネルに供給するモノクロモード信号供給線を備え、
前記動画モードは、前記動画モード信号が前記駆動回路に入力され、かつ前記消灯開始信号発生器からの画素消灯開始信号が前記表示パネルに入力されることで起動され、
前記モノクロモードは、前記モノクロモード信号が前記駆動回路及び前記表示パネルに入力されることで起動され、
前記標準モードは、前記動画モード信号及び前記モノクロモード信号が発生しない状態で起動される
ことを特徴とするOLED表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載のOLED表示装置において、
前記表示パネルは、発光素子に電流を供給する駆動トランジスタを停止させる停止用トランジスタと、当該停止用トランジスタのゲートに接続される停止用駆動信号線と、当該停止用駆動信号線を駆動する信号線用駆動回路と、前記モノクロモード信号が入力され、データ線に黒データを転送するスイッチ回路とを搭載する
ことを特徴とするOLED表示装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のOLED表示装置において、
前記標準モード、前記動画モード、前記モノクロモードの駆動は、ユーザーからの指示、表示データの種類、表示装置が使用するアプリケーションの種類に起因する信号に基づいて切り替えられる
ことを特徴とするOLED表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−75636(P2011−75636A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224357(P2009−224357)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】