PDPディスプレイの効率を改善する駆動方法
【課題】光出力と入力電力の比である効率を高め、寿命も改善する。
【解決手段】表示セルの背面と前面に設けた駆動電極線を直交させ、それぞれの電極線に囲まれた領域を1画素とし、それぞれの電極に交互の向きの差動高周波電流を流し、上面電極線に流れる差動電流の周波数と背面電極線に流れる差動電流の周波数を一致させ、その間の位相差は+90度または−90度とし、1画素の領域に円偏波駆動された渦電流が流れ、電離(ポンピング)と放射(再結合)の遷移を繰り返して蛍光体を紫外線励起して発光させる。
【効果】無電極円運動とすることでPDPの効率が0.3%から1%以上に改善され、またPDPの寿命が5万時間から20万時間になった。
【解決手段】表示セルの背面と前面に設けた駆動電極線を直交させ、それぞれの電極線に囲まれた領域を1画素とし、それぞれの電極に交互の向きの差動高周波電流を流し、上面電極線に流れる差動電流の周波数と背面電極線に流れる差動電流の周波数を一致させ、その間の位相差は+90度または−90度とし、1画素の領域に円偏波駆動された渦電流が流れ、電離(ポンピング)と放射(再結合)の遷移を繰り返して蛍光体を紫外線励起して発光させる。
【効果】無電極円運動とすることでPDPの効率が0.3%から1%以上に改善され、またPDPの寿命が5万時間から20万時間になった。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPDPの駆動方法に関連した技術分野に属する。PDPの光出力と入力電力の比を表す表示効率は、0.3%程度であり、熱陰極FL管の15%と比べるとその0.02程度でしかない。この0.3%の表示効率を1%程度以上に高め、同時にPDPの寿命も2倍程度以上にするのが、本発明の目的である。
【背景技術】
【0002】
PDPディスプレイとLCDディスプレイの2009年時点での出荷数は1:10の程度である。PDPの技術の維持は世界で数社に限定され、それが落ち着く先は、やがてLCDディスプレイに統一されるか、薄さを追及した有機ELディスプレイに自発光型として置き換えられるかも知れない。そのPDPもかつてはDC方式でずっと効率が悪く寿命も短かったものが、AC方式の発明で驚異的な改善がなされた。同じ追求のベクトルで、今一度驚異的な改善があるかも知れない。その改善とは、蛍光灯の改善そのものである。
【特許文献1】特開2003−16938
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PDPディスプレイの寿命を、バックライトを含めたLCDディスプレイより長いものにし、また消費電力も少なくし、また製造コストも安くし、また製造の設備投資も少なくすること。
【課題を解決するための手段】
【0004】
<無伝電極FL>
従来最良であったAC方式PDPセルの正負表示電極間のプラズマ移動は、ガスの封入気圧・印加電圧・AC駆動繰り返し周波数に関係なく、表示電極に向かってピストン運動をし、壁面や電極に電離イオン・電子が衝突して熱損失になる成分を持っている。この損失成分は、蛍光灯で言えば、HCFL(熱陰極蛍光灯)、CCFL(冷陰極蛍光灯)、EEFL(外部電極蛍光灯)の順に発光効率がよくなる。その極限は無電極で連続運動を行わせることであり、プラズマが、図1に示す構造で、コイルの交番磁界によって単純円運動(Eddyカレント)をすれば、無駄な衝突がなくなり、陽光円盤で消費される損失は全てが紫外線の放出に寄与し、熱の発生も最小限になる。
従来一般的であったAC方式では、1画素列当たり前面には2本の透明電極の差動電極があり、背面には1本の不透明電極が配されていた。本発明では、1画素列当たり前面には1本の不透明電極の差動電極があり、背面には1画素列当たり1本の不透明電極が配されている。
【0005】
<プラズマ陽光円盤のON−OFF制御>
プラズマ円盤の高周波誘導運動電離放射・発光サイクルをON−OFF制御するのは、図2に示すように、背面又は前面に制御電極を設けて静電的な電位を与えることによって行われる。プラズマ層を挟んだ駆動電極と制御電極の間の静電位差がないON状態では、プラズマは電離されたイオンと電子が互いに反対方向に回転して高周波誘導放射・発光サイクルを持続する。
2つの電極間に静電位差があるOFF状態では、図3に示すように、プラズマ層の電離されたイオンと電子は反対方向に別れ、高周波誘導で回転しても衝突をしないので高周波誘導放射・発光サイクルを持続しない。この動作は電界効果トランジスタで、ソース/ドレインが無限軌道として存在していないものに類似している
制御電極を前面に設ける場合には、半透明にする必要があるが、背面に設ける場合には必要がない。また従来の主流は蛍光体を背面に塗装しているが、本発明では表示効率が従来の3倍以上よいので、蛍光体を前面に塗布してもよい。
本発明では、差動の駆動電極はプラズマ円盤画素を囲むリブ壁の真上にあり、そのため不透明電極が使用され、また前方からの外光の電極での反射を抑えて外光下でのコントラスト比を高めているが、制御電極を差動の駆動電極のコモンモード電圧として与えることが出来、透明な制御電極を必ずしも使わなくてよい。その場合は、従来のAC方式が画素列あたり裏表で3本の割合で電極を必要としていたのに対して、本発明では2本を使用することになる。
新PDPの画素セルでは、制御電極と反対側差動電極がコモンモードとして電圧が印加されて選ばれ、両隣の反対側差動電極は選ばれないようにそれを打ち消す電圧が印加され、その列と交差する制御電圧にON抵抗変化に相当する変化分を書き込んで行く。このメモリー機能は主として質量の重いイオンによって保持される。
この、FLのプラズマ駆動は水平面内の電磁誘導で行い、ON抵抗の制御は垂直な静電誘導で行うやり方は、従来のAC方式の輝度制御/駆動と比べて遥かに簡明でまた精度が高く、色むらの発生が少ない。
【0006】
<円偏波駆動>
直交する差動の駆動電極は同じ周波数で、図4に示したように、90度の位相差で駆動される。
このためプラズマ円盤は時計回りか反時計回りの単純な円運動をする。それを利用し本発明の方式では、図5に示したように、AサイクルとBサイクルに分かれて駆動される。
PDP板の面駆動としては、図6に示したように、AサイクルとBサイクルを交互に繰り返して、市松様にインターリーブして、RGB列が駆動される。
【0007】
<正弦波スイッチング駆動>
差動電極間のインピーダンスは、表示電極側とアドレス電極側の間の静電位差によってOFF状態にあるときは、図7に示すように、単純な容量であり、ON状態では容量に直列に紫外線放射抵抗が加わる。
従来のAC方式では、負荷は差動電極間容量と直列の紫外線放射抵抗であった。これを駆動するための回路の損失は大きなものであった。本発明では、図8に示すように、容量の総和を装荷インダクタンスで打ち消した共振回路をHigh−Q正弦波スイッチング駆動するので、回路の損失は殆どなく、また低電圧しか発生せず、また単一周波数駆動の高調波は極めて少ない。
正弦波駆動が停止し、電子とイオンが回転運動をしていることは、駆動電極で回生ブレーキとして回収され、無駄なエネルギーとはならず、その分の発熱も抑えられる。
【0008】
<APL補正回路>
新PDPの1920x1200(黄金分割比)のRGB画素セルは、全並列で単一周波数純粋正弦波駆動される。各画素の輝度の総和であるON抵抗の全並列値に対して、純粋な定電流駆動が出来ない場合は、信号のAPL(平均輝度)値によってLCR共振回路駆動に於いて、各画素の輝度の絶対値が変動しないように制御される。
【0009】
<表示の電力−視聴光効率>
蛍光灯を電界で駆動する考えしか浮かばなかったのは、照明技術史の中の単純な、しかし重大な見落としである。この錯誤は、実はファラデーが電磁誘導現象を説明した時の錯誤を受け継いでいる。電磁誘導とは磁気的な関係ではなく、放射抵抗の関係であることが、無線電力伝送や進んだアンテナ設計ですでに明らかになっている。通常の熱陰極蛍光灯と無電極誘導蛍光灯の効率は倍以上の開きがある。
これまでのPDPはHCFLからCCFLになり、更にEEFLの発展したものを画素としてアレー状に並べたものである。EEFLとUFOL(無電極誘導蛍光灯)の効率はもともと倍程度の開きがあるので、その点で従来のPDPと本発明のPDPはこの点で倍の効率の開きを基本的に持っている。
そのほか、PDPは全並列に接続された高いQを持つLCR共振回路であり、これを低電圧PMOS/NMOSのスイッチトランジスターでD級動作させたときのIC側の損失は殆どない。図9に、従来のPDPと新PDPの効率の違いを示す。
EEFLやUFOLでは始動を紫外線照射で行い、それをフラッシュオーバーで画面全体に広げて初期状態のプラズマを作り出さなければならない。以前は封入ガスの絶縁破壊から始まり、また電圧降下の大部分がレシプロ動作の両端の不連続で起こっていたが、渦電流動作では電子軌道遷移の紫外線放出/吸収のバンドギャップ電圧が現れる電圧のうち最大のものとなる。これは従来のPDPとは全く別の世界を構成する。
【0010】
<PDPの寿命>
従来のAC方式のPDPは、それ以前のDC方式PDPの寿命を倍程度に延ばした。それは効率とともに、HCFLとEEFLの差であると言える。しかしEEFLとUFOLを比較すると、EEFLは極めて不完全なものであることが分かる。この差はAC方式のPDPと本発明のPDPの差になってそのまま現れる。
従来のAC方式のPDPはその寿命として5万時間を得たいと考えた。その理由は、CCFLを使うLCDパネルがCCFLバックライトの寿命は短くても、交換して新しいものにすることが出来、LCD部分の寿命は十分に長いのに対して、平均的な使用状態でPDPの寿命が5万時間あれば、LCDパネルより寿命が短いとは非難されないと考えたのである。
しかしLCDパネルに無電極円筒状蛍光灯であるSPFLを使用した場合は、図10示すように、その寿命は10万時間を越え、そして交換は消費者が行うことが出来る。従って蛍光灯そのものであるPDPの寿命は、20万時間でなければならない。そのためには電離イオンや電子が壁面電極と衝突を起さない誘導蛍光灯を使う本発明の方式しか可能性がないことが論理的に理解できる。
【0011】
<PDPの製造工程>
PDPはLCDパネルと比べて特に大きな利点がある訳ではない。自発光だから白の輝度が高いといっても、PDPの効率が0.3%であるのに比べて、CCFLの効率20%とLCDの透過率7%を掛けたLCDパネルの1.4%の方が4倍も大きいので、言い訳にしか過ぎない。PDPがLCDパネルより製造投資額が少なく、また製造コストが安くなければ生き残ることはない。
本発明の適用がPDP1台当たりの製造コストの低減に方法の差として直接寄与するのは10%程度である。
これに比べて、本発明がPDPの省電力化を与えるのは、約0.1KWの差であり、平均使用時間を寿命の半分の10万時間とすれば、全体で1万KWHの電力をセーブし、電気代を20円/KWHとすれば、20万円の電気代をセーブすることになる。これが最大の貢献である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の目的である表示効率の改善は、従来の0.3%から1%以上へと改善された。本発明の第2の目的であるPDPパネルの寿命を改善することは、5万時間から20万時間になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図11に、無電極発光PDPの最良の駆動形態を示す。
【実施例】
【0014】
本発明の製品としての3つの実施例を図12に示す。
1)50〜100インチのPDPテレビ
現状のLCDテレビと比べて、製造設備投資が少なく、100インチまでの大画面化がより容易で、LCDパネルの効率およそ1%に対して2%が得られ、10万時間〜20万時間の寿命が得られる本発明の新PDPによって、2009年現在この分野で、LCD:PDPの出荷量がおよそ10:1であるのを、2:1程度にすることをバランスの取れた地球規模の社会的意義とする。
2)PDPスクリーンのノートパソコン
2009年現在、ノートパソコンの画面はほぼ全てLCDパネルである。新PDPによって、LCDパネルより寿命が2〜4倍、消費電力が1/2、若干軽量・薄型、製造コストが若干少ないことで、1/3程度を新PDPとするのがよい。
3)PDPプロジェクター
効率が高い新PDPは、光源ランプと冷却Fanの不要なプロジェクターとして機能する。透過型LCDプロジェクター、反射型LCOSプロジェクター、DLPプロジェクターと比べて、殆ど全ての点で優れている。
【産業上の利用可能性】
【0015】
PDPがディスプレイとして存続するならば、本発明がその最良形態であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】は新PDPの無電極誘導駆動 である。
【図2】は輝度電界効果制御電極 である。
【図3】は電子軌道遷移サイクルのON−OFF である。
【図4】は円偏波駆動のA/Bサイクル である。
【図5】はA/Bサイクルによるプラズマの運動 である。
【図6】は円偏波駆動のA/Bサイクルの誘導電流 である。
【図7】はプラズマの円偏波駆動の負荷変化 である。
【図8】は装荷インダクタンスと究極効率スイッチング駆動 である。
【図9】は表示の電力−光効率 を示す。
【図10】はディスプレイ/光源の寿命比較を示す。
【図11】は最良の形態(書き込み方式例)である。
【図12】は新PDPの3つの実施例である。
【技術分野】
【0001】
本発明はPDPの駆動方法に関連した技術分野に属する。PDPの光出力と入力電力の比を表す表示効率は、0.3%程度であり、熱陰極FL管の15%と比べるとその0.02程度でしかない。この0.3%の表示効率を1%程度以上に高め、同時にPDPの寿命も2倍程度以上にするのが、本発明の目的である。
【背景技術】
【0002】
PDPディスプレイとLCDディスプレイの2009年時点での出荷数は1:10の程度である。PDPの技術の維持は世界で数社に限定され、それが落ち着く先は、やがてLCDディスプレイに統一されるか、薄さを追及した有機ELディスプレイに自発光型として置き換えられるかも知れない。そのPDPもかつてはDC方式でずっと効率が悪く寿命も短かったものが、AC方式の発明で驚異的な改善がなされた。同じ追求のベクトルで、今一度驚異的な改善があるかも知れない。その改善とは、蛍光灯の改善そのものである。
【特許文献1】特開2003−16938
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PDPディスプレイの寿命を、バックライトを含めたLCDディスプレイより長いものにし、また消費電力も少なくし、また製造コストも安くし、また製造の設備投資も少なくすること。
【課題を解決するための手段】
【0004】
<無伝電極FL>
従来最良であったAC方式PDPセルの正負表示電極間のプラズマ移動は、ガスの封入気圧・印加電圧・AC駆動繰り返し周波数に関係なく、表示電極に向かってピストン運動をし、壁面や電極に電離イオン・電子が衝突して熱損失になる成分を持っている。この損失成分は、蛍光灯で言えば、HCFL(熱陰極蛍光灯)、CCFL(冷陰極蛍光灯)、EEFL(外部電極蛍光灯)の順に発光効率がよくなる。その極限は無電極で連続運動を行わせることであり、プラズマが、図1に示す構造で、コイルの交番磁界によって単純円運動(Eddyカレント)をすれば、無駄な衝突がなくなり、陽光円盤で消費される損失は全てが紫外線の放出に寄与し、熱の発生も最小限になる。
従来一般的であったAC方式では、1画素列当たり前面には2本の透明電極の差動電極があり、背面には1本の不透明電極が配されていた。本発明では、1画素列当たり前面には1本の不透明電極の差動電極があり、背面には1画素列当たり1本の不透明電極が配されている。
【0005】
<プラズマ陽光円盤のON−OFF制御>
プラズマ円盤の高周波誘導運動電離放射・発光サイクルをON−OFF制御するのは、図2に示すように、背面又は前面に制御電極を設けて静電的な電位を与えることによって行われる。プラズマ層を挟んだ駆動電極と制御電極の間の静電位差がないON状態では、プラズマは電離されたイオンと電子が互いに反対方向に回転して高周波誘導放射・発光サイクルを持続する。
2つの電極間に静電位差があるOFF状態では、図3に示すように、プラズマ層の電離されたイオンと電子は反対方向に別れ、高周波誘導で回転しても衝突をしないので高周波誘導放射・発光サイクルを持続しない。この動作は電界効果トランジスタで、ソース/ドレインが無限軌道として存在していないものに類似している
制御電極を前面に設ける場合には、半透明にする必要があるが、背面に設ける場合には必要がない。また従来の主流は蛍光体を背面に塗装しているが、本発明では表示効率が従来の3倍以上よいので、蛍光体を前面に塗布してもよい。
本発明では、差動の駆動電極はプラズマ円盤画素を囲むリブ壁の真上にあり、そのため不透明電極が使用され、また前方からの外光の電極での反射を抑えて外光下でのコントラスト比を高めているが、制御電極を差動の駆動電極のコモンモード電圧として与えることが出来、透明な制御電極を必ずしも使わなくてよい。その場合は、従来のAC方式が画素列あたり裏表で3本の割合で電極を必要としていたのに対して、本発明では2本を使用することになる。
新PDPの画素セルでは、制御電極と反対側差動電極がコモンモードとして電圧が印加されて選ばれ、両隣の反対側差動電極は選ばれないようにそれを打ち消す電圧が印加され、その列と交差する制御電圧にON抵抗変化に相当する変化分を書き込んで行く。このメモリー機能は主として質量の重いイオンによって保持される。
この、FLのプラズマ駆動は水平面内の電磁誘導で行い、ON抵抗の制御は垂直な静電誘導で行うやり方は、従来のAC方式の輝度制御/駆動と比べて遥かに簡明でまた精度が高く、色むらの発生が少ない。
【0006】
<円偏波駆動>
直交する差動の駆動電極は同じ周波数で、図4に示したように、90度の位相差で駆動される。
このためプラズマ円盤は時計回りか反時計回りの単純な円運動をする。それを利用し本発明の方式では、図5に示したように、AサイクルとBサイクルに分かれて駆動される。
PDP板の面駆動としては、図6に示したように、AサイクルとBサイクルを交互に繰り返して、市松様にインターリーブして、RGB列が駆動される。
【0007】
<正弦波スイッチング駆動>
差動電極間のインピーダンスは、表示電極側とアドレス電極側の間の静電位差によってOFF状態にあるときは、図7に示すように、単純な容量であり、ON状態では容量に直列に紫外線放射抵抗が加わる。
従来のAC方式では、負荷は差動電極間容量と直列の紫外線放射抵抗であった。これを駆動するための回路の損失は大きなものであった。本発明では、図8に示すように、容量の総和を装荷インダクタンスで打ち消した共振回路をHigh−Q正弦波スイッチング駆動するので、回路の損失は殆どなく、また低電圧しか発生せず、また単一周波数駆動の高調波は極めて少ない。
正弦波駆動が停止し、電子とイオンが回転運動をしていることは、駆動電極で回生ブレーキとして回収され、無駄なエネルギーとはならず、その分の発熱も抑えられる。
【0008】
<APL補正回路>
新PDPの1920x1200(黄金分割比)のRGB画素セルは、全並列で単一周波数純粋正弦波駆動される。各画素の輝度の総和であるON抵抗の全並列値に対して、純粋な定電流駆動が出来ない場合は、信号のAPL(平均輝度)値によってLCR共振回路駆動に於いて、各画素の輝度の絶対値が変動しないように制御される。
【0009】
<表示の電力−視聴光効率>
蛍光灯を電界で駆動する考えしか浮かばなかったのは、照明技術史の中の単純な、しかし重大な見落としである。この錯誤は、実はファラデーが電磁誘導現象を説明した時の錯誤を受け継いでいる。電磁誘導とは磁気的な関係ではなく、放射抵抗の関係であることが、無線電力伝送や進んだアンテナ設計ですでに明らかになっている。通常の熱陰極蛍光灯と無電極誘導蛍光灯の効率は倍以上の開きがある。
これまでのPDPはHCFLからCCFLになり、更にEEFLの発展したものを画素としてアレー状に並べたものである。EEFLとUFOL(無電極誘導蛍光灯)の効率はもともと倍程度の開きがあるので、その点で従来のPDPと本発明のPDPはこの点で倍の効率の開きを基本的に持っている。
そのほか、PDPは全並列に接続された高いQを持つLCR共振回路であり、これを低電圧PMOS/NMOSのスイッチトランジスターでD級動作させたときのIC側の損失は殆どない。図9に、従来のPDPと新PDPの効率の違いを示す。
EEFLやUFOLでは始動を紫外線照射で行い、それをフラッシュオーバーで画面全体に広げて初期状態のプラズマを作り出さなければならない。以前は封入ガスの絶縁破壊から始まり、また電圧降下の大部分がレシプロ動作の両端の不連続で起こっていたが、渦電流動作では電子軌道遷移の紫外線放出/吸収のバンドギャップ電圧が現れる電圧のうち最大のものとなる。これは従来のPDPとは全く別の世界を構成する。
【0010】
<PDPの寿命>
従来のAC方式のPDPは、それ以前のDC方式PDPの寿命を倍程度に延ばした。それは効率とともに、HCFLとEEFLの差であると言える。しかしEEFLとUFOLを比較すると、EEFLは極めて不完全なものであることが分かる。この差はAC方式のPDPと本発明のPDPの差になってそのまま現れる。
従来のAC方式のPDPはその寿命として5万時間を得たいと考えた。その理由は、CCFLを使うLCDパネルがCCFLバックライトの寿命は短くても、交換して新しいものにすることが出来、LCD部分の寿命は十分に長いのに対して、平均的な使用状態でPDPの寿命が5万時間あれば、LCDパネルより寿命が短いとは非難されないと考えたのである。
しかしLCDパネルに無電極円筒状蛍光灯であるSPFLを使用した場合は、図10示すように、その寿命は10万時間を越え、そして交換は消費者が行うことが出来る。従って蛍光灯そのものであるPDPの寿命は、20万時間でなければならない。そのためには電離イオンや電子が壁面電極と衝突を起さない誘導蛍光灯を使う本発明の方式しか可能性がないことが論理的に理解できる。
【0011】
<PDPの製造工程>
PDPはLCDパネルと比べて特に大きな利点がある訳ではない。自発光だから白の輝度が高いといっても、PDPの効率が0.3%であるのに比べて、CCFLの効率20%とLCDの透過率7%を掛けたLCDパネルの1.4%の方が4倍も大きいので、言い訳にしか過ぎない。PDPがLCDパネルより製造投資額が少なく、また製造コストが安くなければ生き残ることはない。
本発明の適用がPDP1台当たりの製造コストの低減に方法の差として直接寄与するのは10%程度である。
これに比べて、本発明がPDPの省電力化を与えるのは、約0.1KWの差であり、平均使用時間を寿命の半分の10万時間とすれば、全体で1万KWHの電力をセーブし、電気代を20円/KWHとすれば、20万円の電気代をセーブすることになる。これが最大の貢献である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の目的である表示効率の改善は、従来の0.3%から1%以上へと改善された。本発明の第2の目的であるPDPパネルの寿命を改善することは、5万時間から20万時間になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図11に、無電極発光PDPの最良の駆動形態を示す。
【実施例】
【0014】
本発明の製品としての3つの実施例を図12に示す。
1)50〜100インチのPDPテレビ
現状のLCDテレビと比べて、製造設備投資が少なく、100インチまでの大画面化がより容易で、LCDパネルの効率およそ1%に対して2%が得られ、10万時間〜20万時間の寿命が得られる本発明の新PDPによって、2009年現在この分野で、LCD:PDPの出荷量がおよそ10:1であるのを、2:1程度にすることをバランスの取れた地球規模の社会的意義とする。
2)PDPスクリーンのノートパソコン
2009年現在、ノートパソコンの画面はほぼ全てLCDパネルである。新PDPによって、LCDパネルより寿命が2〜4倍、消費電力が1/2、若干軽量・薄型、製造コストが若干少ないことで、1/3程度を新PDPとするのがよい。
3)PDPプロジェクター
効率が高い新PDPは、光源ランプと冷却Fanの不要なプロジェクターとして機能する。透過型LCDプロジェクター、反射型LCOSプロジェクター、DLPプロジェクターと比べて、殆ど全ての点で優れている。
【産業上の利用可能性】
【0015】
PDPがディスプレイとして存続するならば、本発明がその最良形態であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】は新PDPの無電極誘導駆動 である。
【図2】は輝度電界効果制御電極 である。
【図3】は電子軌道遷移サイクルのON−OFF である。
【図4】は円偏波駆動のA/Bサイクル である。
【図5】はA/Bサイクルによるプラズマの運動 である。
【図6】は円偏波駆動のA/Bサイクルの誘導電流 である。
【図7】はプラズマの円偏波駆動の負荷変化 である。
【図8】は装荷インダクタンスと究極効率スイッチング駆動 である。
【図9】は表示の電力−光効率 を示す。
【図10】はディスプレイ/光源の寿命比較を示す。
【図11】は最良の形態(書き込み方式例)である。
【図12】は新PDPの3つの実施例である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
<無電極駆動>
PDP表示セルの背面と前面に設けた駆動電極線を直交させ、それぞれの電極線に囲まれた領域をRGBいずれかの1画素とし、それぞれの電極に交互の向きの差動高周波電流を流し、上面電極線に流れる差動電流の周波数と背面電極に流れる差動電流の周波数を一致させた高調波の少ない単一周波数とし、その間の位相差は+90度または−90度として、1画素のプラズマ領域に円偏波駆動された渦電流が流れ、電離(ポンピング)と放射(再結合)の軌道遷移を繰り返してRGBの蛍光体を紫外線励起してRGB発光させる形とすることにより、従来のAC方式ではプラズマが表示電極に向かうピストン運動によって壁面や電極に衝突して熱になる損失と損傷を無くす渦電流駆動方式とすること。また直交する差動電極線間の位相差を+90度と−90度を交互に繰り返してAサイクルとBサイクルとし、市松様の画素領域全体をカバーすること。
【請求項2】
<輝度制御の方法>
渦電流駆動方式の新PDPに於いて、透明または不透明の輝度制御電極(ゲート)を設け、対面駆動電極との電位差を無くしてON状態とし、正または負の静電位差を与えて電子とイオンを両面に分離してOFF状態とすること。また輝度制御電極の役割を画素領域両側の駆動電極のコモンモードで行うこと。またONとOFFの間をゲートで制御された電界効果無限円運動チャンネルとしてゲートに加える電圧により連続的な輝度階調とすること。
【請求項3】
<輝度情報の書き込み・保持の方法>
渦電流駆動方式の新PDPに於いて、ゲート電極線と直交する対向差動電極を一組選択し、他の差動対は選択されないように電圧を印加して、この対向電極線と直交する画素数だけのゲート電極線に、輝度に対応する電圧を印加して追加情報分を書き込み、対向電極に印加した電圧を元に戻してプラズマセルに記憶させること。またこの動作に於いて、ゲート電極の代わりに円偏波駆動用の差動対電極を使用すること。
【請求項4】
<装荷インダクタンス>
差動の駆動電極を見込むインピーダンスはOFF状態では電極間静電容量の総和であり、ON状態ではその静電容量に回転プラズマの損失抵抗が直列に挿入されるが、この静電容量の総和を装荷インダクタンスで打ち消すことによって、正弦波駆動を一層推し進めて、駆動回路の損失をD級スイッチング駆動でほぼ無視できる程度とし、また単一周波数正弦波の高調波の不要輻射を大幅に減らすこと。
【請求項5】
<APL制御>
LCR共振回路のスイッチング駆動に等価回路として置き換えられる渦電流駆動方式の新PDPに於いて、全並列の定電流駆動から外れて映像信号のAPL(平均輝度レベル)の変化によって、画素の絶対輝度が変動するのを避けるために、APLによって駆動回路を制御し、定電流駆動が理想的に行われるようにすること。
【請求項1】
<無電極駆動>
PDP表示セルの背面と前面に設けた駆動電極線を直交させ、それぞれの電極線に囲まれた領域をRGBいずれかの1画素とし、それぞれの電極に交互の向きの差動高周波電流を流し、上面電極線に流れる差動電流の周波数と背面電極に流れる差動電流の周波数を一致させた高調波の少ない単一周波数とし、その間の位相差は+90度または−90度として、1画素のプラズマ領域に円偏波駆動された渦電流が流れ、電離(ポンピング)と放射(再結合)の軌道遷移を繰り返してRGBの蛍光体を紫外線励起してRGB発光させる形とすることにより、従来のAC方式ではプラズマが表示電極に向かうピストン運動によって壁面や電極に衝突して熱になる損失と損傷を無くす渦電流駆動方式とすること。また直交する差動電極線間の位相差を+90度と−90度を交互に繰り返してAサイクルとBサイクルとし、市松様の画素領域全体をカバーすること。
【請求項2】
<輝度制御の方法>
渦電流駆動方式の新PDPに於いて、透明または不透明の輝度制御電極(ゲート)を設け、対面駆動電極との電位差を無くしてON状態とし、正または負の静電位差を与えて電子とイオンを両面に分離してOFF状態とすること。また輝度制御電極の役割を画素領域両側の駆動電極のコモンモードで行うこと。またONとOFFの間をゲートで制御された電界効果無限円運動チャンネルとしてゲートに加える電圧により連続的な輝度階調とすること。
【請求項3】
<輝度情報の書き込み・保持の方法>
渦電流駆動方式の新PDPに於いて、ゲート電極線と直交する対向差動電極を一組選択し、他の差動対は選択されないように電圧を印加して、この対向電極線と直交する画素数だけのゲート電極線に、輝度に対応する電圧を印加して追加情報分を書き込み、対向電極に印加した電圧を元に戻してプラズマセルに記憶させること。またこの動作に於いて、ゲート電極の代わりに円偏波駆動用の差動対電極を使用すること。
【請求項4】
<装荷インダクタンス>
差動の駆動電極を見込むインピーダンスはOFF状態では電極間静電容量の総和であり、ON状態ではその静電容量に回転プラズマの損失抵抗が直列に挿入されるが、この静電容量の総和を装荷インダクタンスで打ち消すことによって、正弦波駆動を一層推し進めて、駆動回路の損失をD級スイッチング駆動でほぼ無視できる程度とし、また単一周波数正弦波の高調波の不要輻射を大幅に減らすこと。
【請求項5】
<APL制御>
LCR共振回路のスイッチング駆動に等価回路として置き換えられる渦電流駆動方式の新PDPに於いて、全並列の定電流駆動から外れて映像信号のAPL(平均輝度レベル)の変化によって、画素の絶対輝度が変動するのを避けるために、APLによって駆動回路を制御し、定電流駆動が理想的に行われるようにすること。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−276833(P2010−276833A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128903(P2009−128903)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(708002676)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(708002676)
【Fターム(参考)】
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