PWM通信システム
【課題】高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供する。
【解決手段】センサユニット21は、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信に先立って、100%デューティおよび0%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する。ECU11のインプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従い、送信信号SGのデューティ時間およびPWM周期を計測する。ECU11の信号処理回路14は、回路12が計測した基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいてデューティ補正係数kを生成し、回路12が計測した送信信号SGのデューティ時間およびPWM周期とデューティ補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを圧力センサ24のセンサ値と温度センサ25のセンサ値に分離する。
【解決手段】センサユニット21は、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信に先立って、100%デューティおよび0%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する。ECU11のインプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従い、送信信号SGのデューティ時間およびPWM周期を計測する。ECU11の信号処理回路14は、回路12が計測した基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいてデューティ補正係数kを生成し、回路12が計測した送信信号SGのデューティ時間およびPWM周期とデューティ補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを圧力センサ24のセンサ値と温度センサ25のセンサ値に分離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM(Pulse Width Modulation)通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物理量の値に関係づけられたパルス幅をもつPWM出力を当該物理量に関する情報として出力するPWM出力型センサ回路が開示されている。
【0003】
特許文献2の請求項1には、伝送すべき複数本のアナログ信号をそれぞれパルス幅変調して時分割多重化し、多重化されたパルス幅変調信号を単一の伝送路により伝送し、伝送路から信号を受信して同期情報を検出し、検出した同期情報に基づき、受信した信号から複数本のパルス幅変調信号を多重分離する多重通信方法において、パルス幅変調信号の伝送路上への送出タイミングを伝送すべきアナログ信号の本数より多い個数のタイミングで循環させつつ、立上りタイミングが一定制御された複数本のパルス幅変調信号を対応する送出タイミングにおいて伝送路上に送出し、パルス幅変調信号が送出されていない期間を同期情報として検出する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3の請求項1には、送信部においては、複数のデジタル信号を第1のパルス幅変調器で第1のパルス幅変調信号列に順番に多重し、他の複数のデジタル信号を第2のパルス幅変調器で前記第1のパルス幅変調信号列とは逆極性を有する第2のパルス幅変調信号列に順番に多重し、前記第1のパルス幅変調信号列と前記第2のパルス幅変調信号列をさらに多重器で多重し、受信部においては、前記送信部において多重された多重パルス信号を受信し、交流結合型増幅器で所定の振幅を有するパルス信号に増幅した後、減算器と第1のパルス幅復調器及び第2のパルス幅復調器で元の複数のデジタル信号を順番に分離・再生するパルス多重伝送方法が開示されている。
【0005】
非特許文献1には、センサの出力が4ビット分ずつ複数のパルス出力に分割され、補正の基準となるパルスは先頭に送信され、最後尾のパルスでの補正量が推定によるものとなるため、多データを通信する場合にはメッセージID(Identification)を割り付けて別データとすることで、1回の通信パルス数を削減するSENT通信技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-180596号公報
【特許文献2】特開平6−284100号公報
【特許文献3】特開平7−7490号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】SAE(Society of Automotive Engineers) International SURFACE VHICLE INFORMATION REPORT J2716 Revised FEB2008 SENT−Signal Edge Nibble Transmission for Automotive Application
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、車両に搭載される各種センサ(例えば、圧力センサ、温度センサ、光センサ、傾斜センサなど)と車載ECU(Electronic Control Unit)との通信では、個々のセンサ毎に信号線を設けていた。
しかし、近年、複数のセンサを統合化すると共に、複数のセンサのセンサ値(検出信号)を多重化通信することにより、信号線の本数を減らしてコストダウンを図ることが要求されている。
【0009】
例えば、圧力センサが検出した圧力センサ値をECUへ送信する場合、気体の状態方程式により、圧力の変化時には温度変化が伴う。
そのため、圧力センサと温度センサを統合化し、圧力センサを用いて圧力センサ値を検出するのと同時に、温度センサを用いて温度センサ値を検出し、その圧力センサ値と温度センサ値とをECUへ多重化通信し、ECUにて温度センサ値に基づいて圧力センサ値を補正することにより、正確な圧力センサ値に基づいて車両の各種制御を高精度に行うことが求められている。
【0010】
従来は、センサ値のアナログ信号を通信するためのアナログ信号線のワイヤハーネスに加えて、プラス側電源線のワイヤハーネスと、グランド線のワイヤハーネスとの合計3本のワイヤハーネスを用いて、センサとECUを接続していた。
そして、ECU内ではセンサ値のアナログ信号をAD(Analog-to-Digital)変換していたが、グランド線に重畳されたノイズの影響により、AD変換によって生成されたデジタル信号の精度が悪化するおそれがあるため、ECU内ではAD変換後にデジタルフィルタをかけることによりノイズを除去していた。
しかし、ECUにおけるデジタルフィルタのノイズ除去性能を向上させる為にデータサンプリング数を増やすと、センサ値の応答性が悪化するという問題があった。
【0011】
そこで、センサ値をデジタル信号に変換した後にECUへ送信すれば、前記ノイズの影響を回避することが可能であるが、高速通信を実現するには高いタイマ精度が必要となる。
例えば、CAN(Controller Area Network)通信を利用して多重化通信を行う場合には、タイマ精度の補正を行う仕組みがあるが、タイマ精度の補正を行うための専用回路を設けなければならず、その専用回路を設ける分だけコストアップになるという問題がある。
【0012】
特許文献1には、PWM出力の波高値を、ある物理量(バッテリ電流値)とは異なる他の物理量の値(温度情報)に関係づけて設定することにより、他の物理量の値に関する情報をPWM出力に重畳する技術が開示されている(請求項6、段落[0065]参照)。
この技術では、PWM出力の波高値を検出するための専用回路をECU内に設けなければならず、その専用回路を設ける分だけコストアップになるという問題がある。
【0013】
また、センサとECUのPWM通信では、通常、センサ側にアウトプットコンペア回路を備えると共に、ECU側にインプットキャプチャ回路を備え、アウトプットコンペア回路とインプットキャプチャ回路のそれぞれに別個のタイマ回路からタイマクロックを与えるようにしている。
そのため、インプットキャプチャ回路のタイマ分解能が優れていても、インプットキャプチャ回路のタイマ分解能とアウトプットコンペア回路のタイマ分解能とのバラツキにより、センサ値のパルス幅の精度にもバラツキが生じ、通信可能なデータ量に制約が発生することから、多重化通信には不向きである。
【0014】
尚、インプットキャプチャ回路のタイマ分解能は、インプットキャプチャ回路が備えるタイマ回路のタイマクロックの周期である。
また、アウトプットコンペア回路のタイマ分解能は、アウトプットコンペア回路が備えるタイマ回路のタイマクロックの周期である。
そして、インプットキャプチャ回路とアウトプットコンペア回路が備えるそれぞれのタイマ回路が生成したタイマクロックのパルス幅の精度(タイマ精度)のバラツキが、インプットキャプチャ回路とアウトプットコンペア回路のタイマ分解能のバラツキになるため、そのタイマ分解能のバラツキがタイマ精度差になる。
【0015】
特許文献2の技術では、パルス幅変調信号の伝送路上への送出タイミングを伝送すべきアナログ信号の本数より多い個数のタイミングで循環させるのに要する時間と、立上りタイミングが一定制御された複数本のパルス幅変調信号を対応する送出タイミングにおいて伝送路上に送出するのに要する時間と、同期情報を送る時間とを合わせた時間分だけ、通信時間が長くなり高速通信が困難であるという問題がある。
【0016】
特許文献3の技術では、デジタル信号の1ビット分の送受信にPWM信号の1パルスを用いるため、全データ分を通信するには多数のパルスが必要となることから、通信時間が長くなり高速通信が困難であるという問題がある。
また、特許文献3の技術では、パルス幅変調器およびパルス幅復調器を用いた変復調処理を行うため、その変復調処理に伴う誤差が生じるという問題がある。
加えて、特許文献3の技術では、パルス幅変調器、パルス幅復調器、交流結合型増幅器といった特別な回路を設けなければならず、その特別な回路を設ける分だけコストアップになるという問題がある。
【0017】
非特許文献1の技術では、全データ分を通信するには多数のパルスが必要となるため、通信時間が長くなり高速通信が困難であるという問題がある。
加えて、非特許文献1の技術では、ECUではパルス毎に割込み処理を行うため、高速通信の場合には頻繁に割込み処理を行わねばならず、ECUにおける通信以外の処理が遅れるという問題がある。
【0018】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の発明は、
送信信号を送信する送信装置と、
前記送信信号を伝送する信号線と、
前記信号線を介して伝送されてくる前記送信信号を受信する受信装置と
を備えたPWM通信システムにおいて、
前記送信装置は、
複数のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する送信側信号処理回路と、
送信側タイマクロックを生成する送信側タイマ回路と、
前記送信側タイマ回路が生成した送信側タイマクロックに従い、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づいて、前記送信信号を生成して送信する送信回路と
を備え、
前記送信信号は、PWM周期が所定周期に固定されると共に、デューティ時間が可変値のPWM信号であることと、
前記送信装置は、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づく前記送信信号の送信に先立って、100%デューティおよび0%デューティの前記送信信号を基準パルスとして生成して送信することを特徴とし、
前記受信装置は、
受信側タイマクロックを生成する受信側タイマ回路と、
前記受信側タイマ回路が生成した受信側タイマクロックに従い、前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期を計測する計測回路と、
前記計測回路が計測した前記基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいてデューティ補正係数を生成し、前記計測回路が計測した前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期と前記デューティ補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを前記送信側信号処理回路が多重化する以前の前記複数のデジタル信号に分離する受信側信号処理回路と
を備えたことを技術的特徴とする。
【0020】
請求項2に記載の発明は、
送信信号を送信する送信装置と、
前記送信信号を伝送する信号線と、
前記信号線を介して伝送されてくる前記送信信号を受信する受信装置と
を備えたPWM通信システムにおいて、
前記送信装置は、
複数のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する送信側信号処理回路と、
送信側タイマクロックを生成する送信側タイマ回路と、
前記送信側タイマ回路が生成した送信側タイマクロックに従い、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づいて、前記送信信号を生成して送信する送信回路と
を備え、
前記送信信号は、デューティ時間が所定時間に固定されると共に、PWM周期が可変値のPWM信号であることと、
前記送信装置は、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づく前記送信信号の送信に先立って、100%周期および0%周期の前記送信信号を基準パルスとして生成して送信することを特徴とし、
前記受信装置は、
受信側タイマクロックを生成する受信側タイマ回路と、
前記受信側タイマ回路が生成した受信側タイマクロックに従い、前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期を計測する計測回路と、
前記計測回路が計測した前記基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいて周期補正係数を生成し、前記計測回路が計測した前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期と前記周期補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを前記送信側信号処理回路が多重化する以前の前記複数のデジタル信号に分離する受信側信号処理回路と
を備えたことを技術的特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明は、
請求項1または請求項2に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信側信号処理回路は、前記複数のデジタル信号の最下位ビット側の各ビットを、データ圧縮して生成した圧縮データの最下位ビット側に集めて配置することを技術的特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信側信号処理回路は、前記複数のデジタル信号のうち、データ圧縮して生成した圧縮データの最下位ビットに該当するデジタル信号に対してディザを追加した上で、前記複数のデジタル信号を多重化し、
前記受信側信号処理回路は、分離した前記複数のデジタル信号のうち、前記ディザが追加されているデジタル信号に対して、デジタルフィルタによるローパスフィルタをかけることにより、当該デジタル信号の下位ビットを確定することを技術的特徴とする。
【0023】
請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信信号の信号レベルを階段状に時間変位させ、その信号レベルの階段状の時間変位に前記デューティ時間またはPWM周期を対応させることにより、複数の前記デューティ時間またはPWM周期を1つの前記送信信号に重畳させることを技術的特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信信号は電流信号であり、前記送信装置と前記受信装置は電流通信を行うことを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
<請求項1:第1実施形態に該当>
請求項1では、送信側信号処理回路がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号の送信毎に、送信信号のPWM周期を所定周期に固定し、その固定値からの変化分を受信側信号処理回路にてデューティ補正係数を用いて補正することにより、送信装置と受信装置の間のタイマ分解能の補正を行い、送信信号の送信毎にデューティ時間の精度を補償する。
【0026】
受信側タイマ回路と送信側タイマ回路とは、仕様公差内でタイマ分解能にバラツキを持っているが、各タイマ回路の1LSBに相当する時間の比率は、送信信号のデューティ時間だけでなく、PWM周期にも同じ比率で反映される。
そこで、受信装置では、PWM周期を所定周期に固定し、デューティ時間を送信信号の受信毎に補正する。
【0027】
これにより、送信回路が送信信号を生成する元となる送信側タイマ回路のタイマクロックが設計値から変化しても、受信装置にて正しい送信信号のデューティ時間を取得することができる。
そのため、送信側タイマ回路のタイマ精度が低くてもよいことから、送信側タイマ回路を安価な回路にして低コスト化を図ることができる。
そして、受信装置および送信装置は特別な回路を用いていない。
従って、請求項1によれば、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供できる。
【0028】
<請求項2:第4実施形態に該当>
請求項2では、送信側信号処理回路がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号の送信毎に、送信信号のデューティ時間を所定時間に固定し、その固定値からの変化分を受信側信号処理回路にて周期補正係数を用いて補正することにより、送信装置と受信装置の間のタイマ分解能の補正を行い、送信信号の送信毎にPWM周期の精度を補償する。
【0029】
受信側タイマ回路と送信側タイマ回路とは、仕様公差内でタイマ分解能にバラツキを持っているが、各タイマ回路の1LSBに相当する時間の比率は、送信信号のPWM周期だけでなく、デューティ時間にも同じ比率で反映される。
そこで、受信装置では、デューティ時間を所定周期に固定し、PWM周期を送信信号の受信毎に補正する。
【0030】
これにより、送信回路が送信信号を生成する元となる送信側タイマ回路のタイマクロックが設計値から変化しても、受信装置にて正しい送信信号のPWM周期を取得することができる。
そのため、送信側タイマ回路のタイマ精度が低くてもよいことから、送信側タイマ回路を安価な回路にして低コスト化を図ることができる。
そして、受信装置および送信装置は特別な回路を用いていない。
従って、請求項2によれば、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供できる。
【0031】
<請求項3>
請求項3では、圧縮データの重要な上位ビットはノイズの影響を受けないことに加え、圧力センサ値または温度センサ値の片方が大きく変化しても、その変化が圧縮データの各ビットに分散されることから、正確な圧縮データが得られる。
【0032】
<請求項4>
請求項4では、ディザ法を用いることにより、送信装置の送信回路のタイマ分解能を、受信装置の計測回路のタイマ分解能以上にし、受信装置の計測回路のタイマ分解能以上のPWM通信精度を達成できる。
【0033】
<請求項5:第2実施形態および第3実施形態に該当>
請求項5では、送信信号の信号レベルを階段状に時間変位させ、その信号レベルの階段状の時間変位に前記デューティ時間またはPWM周期を対応させることにより、複数の前記デューティ時間またはPWM周期を1つの送信信号に重畳させるため、前記階段状の段階の数に応じた複数のデジタル信号を、1つの送信信号を用いるだけでPWM通信することができる。
【0034】
<請求項6>
請求項6では、信号線を電力線と共用すれば、更なる信号線削減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を具体化した第1,第4実施形態のPWM通信システム10,300の概略構成を示すブロック回路図。
【図2】第1実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1のオンオフ動作と、センサユニット21の送信信号SGとの関係を示す波形図。
【図3】図3(A)は、第1実施形態において、送信信号SGが100%デューティの場合に、センサユニット21が送信した送信信号SGと、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図。図3(B)は、第1実施形態において、送信信号SGが0%デューティの場合に、センサユニット21が送信した送信信号SGと、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図。
【図4】第1実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャート。
【図5】第1実施形態におけるECU11のインプットキャプチャ(IPC)割込み処理動作を説明するためのフローチャート。
【図6】図4に示すS104の処理において、センサユニット21の信号処理回路26が行う動作を説明するための説明図。
【図7】図5に示すS208の処理において、ECU11の信号処理回路14が行う動作を説明するための説明図。
【図8】本発明を具体化した第2実施形態のPWM通信システム100の概略構成を示すブロック回路図。
【図9】第2実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1,Tr2のオンオフ動作と、ECU101のインプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートの入力電圧(td1用IPC電圧)と、インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートの入力電圧(td2用IPC電圧)との関係を示す波形図。
【図10】本発明を具体化した第3実施形態のPWM通信システム200の概略構成を示すブロック回路図。
【図11】第3実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1,Tr2のオンオフ動作と、ECU101のインプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートの入力電圧(td1用IPC電圧)と、インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートの入力電圧(td2用IPC電圧)との関係を示す波形図。
【図12】第4実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1のオンオフ動作と、センサユニット21の送信信号SGとの関係を示す波形図。
【図13】図13(A)は、第4実施形態において、送信信号SGが100%周期の場合に、センサユニット21が送信した送信信号SGと、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図。図13(B)は、第4実施形態において、送信信号SGが0%周期の場合に、センサユニット21が送信した送信信号SGと、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図。
【図14】第4実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャート。
【図15】第4実施形態におけるECU11のインプットキャプチャ(IPC)割込み処理動作を説明するためのフローチャート。
【図16】図15に示すS408の処理において、ECU11の信号処理回路14が行う動作を説明するための説明図。
【図17】本発明を具体化した第5実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャート。
【図18】本発明を具体化した第6実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、各実施形態において、同一の構成部材および構成要素については符号を等しくすると共に、同一内容の箇所については重複説明を省略してある。
【0037】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のPWM通信システム10の概略構成を示すブロック回路図である。
PWM通信システム10は、ECU11およびセンサユニット21と、ECU11とセンサユニット21を接続するワイヤハーネスW1〜W3とから構成され、車両に搭載されている。
【0038】
ECU11は、インプットキャプチャ(IPC:InPut Capture)回路12、タイマ回路13、信号処理回路14、コンデンサC、抵抗R1を備え、32ビット(bit)で動作するマイクロコンピュータ(図示略)によって構成されている。
センサユニット21は、アウトプットコンペア(OC:Output Compare)回路22、タイマ回路23、圧力センサ24、温度センサ25、信号処理回路26、NPNトランジスタTr1、抵抗R2を備え、圧力センサ24と温度センサ25が統合されている。
【0039】
プラス側電源線のワイヤハーネスW1は、車載バッテリ(図示略)のプラス側端子に接続されてプラス側電源Vccが印加され、ECU11およびセンサユニット21の内部回路にプラス側電源Vccを供給している。
グランド(アース)線のワイヤハーネスW2は、車載バッテリのマイナス側端子に接続され、ECU11およびセンサユニット21の内部回路のグランド側に接続されている。
【0040】
圧力センサ24は車両における検出箇所(図示略)の圧力を検出し、その圧力に応じたアナログ信号のセンサ値(検出信号)を生成する。
気体の状態方程式により、圧力の変化時には温度変化が伴う。また、タイマ回路23のタイマ精度(タイマクロックのパルス幅の精度)は温度特性で変化する場合がある。
そこで、温度センサ25は、圧力センサ24の検出箇所近傍の温度を検出し、その温度に応じたアナログ信号のセンサ値を生成する。
【0041】
信号処理回路26は、圧力センサ24のセンサ値(圧力センサ値)をデジタル信号(データ)にAD変換すると共に、温度センサ25のセンサ値(温度センサ値)をデジタル信号にAD変換し、圧力センサ値のデジタル信号と温度センサ値のデジタル信号とを多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する。
【0042】
アウトプットコンペア回路22は、タイマ回路23が生成したタイマクロックに従って動作し、信号処理回路26が生成したデジタル信号に基づいて、デューティ(Duty)時間(デューティパルス幅)td1のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr1のゲートに印加する。
トランジスタTr1のエミッタはグランドに接続され、トランジスタTr1のコレクタは抵抗R2を介してプラス側電源Vccに接続されている。
そのため、トランジスタTr1のコレクタからは、アウトプットコンペア回路22から出力されたPWM信号の論理レベルを反転したPWM信号が、センサユニット21の送信信号(出力信号)SGとして送信(出力)される。
【0043】
センサユニット21の送信信号SGは、デジタル信号線(PWM信号線)のワイヤハーネスW3を介してECU11へ伝送される。
ECU11のインプットキャプチャ回路12は、ワイヤハーネスW3を介して伝送されてくる送信信号SGを受信(入力)する。
そのため、センサユニット21の送信信号SGは、ECU11の受信信号となる。
【0044】
ECU11において、インプットキャプチャ回路12の入力ポートとグランドの間には、コンデンサCと抵抗R1が並列接続されている。
コンデンサCはローパスフィルタ回路を構成し、センサユニット21の送信信号SGに含まれる高い周波数のノイズを除去する。
各抵抗R1,R2は、センサユニット21の送信信号SGの電圧レベルを所定電圧値(4.41V)以下に規定するために設けられており、プラス側電源Vccの電圧が5Vの場合には、抵抗R1の抵抗値が180kΩ、抵抗R2の抵抗値が24kΩに設定されている。
【0045】
インプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従って動作し、センサユニット21の送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期(通信周期)tbを計測する。
ここで、インプットキャプチャ回路12は、センサユニット21の送信信号SGの電圧レベルが3V以上の場合は送信信号SGの論理レベルをハイレベル(Hi)と判定し、送信信号SGの電圧レベルが1V未満の場合は送信信号SGの論理レベルをローレベル(Lo)と判定する。
【0046】
ECU11のタイマ回路13のタイマクロックの周波数は16MHzに設定されており、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能はタイマクロックの周期(=1/16MHz)であるため0.0625μsになる。
尚、センサユニット21のタイマ回路23のタイマクロックの周波数は、ECU11のタイマ回路13のタイマクロックの周波数以上に設定されている。
アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能(パルス幅分解能)はタイマ回路23のタイマクロックの周期であるため、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能はインプットキャプチャ回路12のタイマ分解能以上に設定されている。
【0047】
信号処理回路14は、100%デューティおよび0%デューティの送信信号SG(基準パルス)について、インプットキャプチャ回路12が計測した100%デューティおよび0%デューティにおけるデューティ時間td1およびPWM周期tbに基づいて、デューティ補正係数kを生成する。
次に、信号処理回路14は、インプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbと、デューティ補正係数kとに基づいて、受信データD1を生成する。
続いて、信号処理回路14は、受信データD1を、圧力センサ24の圧力センサ値のデータと、温度センサ25の温度センサ値のデータとに分離する。
そして、ECU11は、温度センサ値のデータに基づいて圧力センサ値のデータを補正することにより、正確な圧力センサ値に基づいて車両の各種制御を高精度に行う。
【0048】
図2は、第1実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1のオンオフ動作と、センサユニット21の送信信号SG(ECU11のインプットキャプチャ回路12の入力電圧)との関係を示す波形図(タイミングチャート)である。
トランジスタTr1がオン(ON)状態のとき送信信号SGの論理レベルはローレベル(=0V)になり、トランジスタTr1がオフ(OFF)状態のとき送信信号SGの論理レベルはハイレベル(=4.41V)になる。
【0049】
送信信号SGのPWM周期tbは、トランジスタTr1がオン状態になった時点からオフ状態になり次にオン状態になった時点までの時間であり、1ms(所定周期)に固定されている。
送信信号SGのデューティ時間td1は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr1がオン状態になっている時間(送信信号SGがローレベルになっている時間)であり可変値になっている。
【0050】
送信信号SGにおいて、1つのPWM周期tbの先頭側と末尾側にはそれぞれ、0.1msの不感帯が設定されている。
そのため、送信信号SGのデューティ時間td1から先頭側の不感帯の時間を差し引いた時間が受信データD1となる。
送信信号SGに不感帯が設けられているため、ECU11のインプットキャプチャ回路12では、送信信号SGが100%デューティまたは0%デューティの場合に、送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbを速やかに計測できる。
尚、不感帯の時間は、PWM周期tbとECU11における演算負荷とのバランスに基づいて最適値を求め設計値として決定すればよい。
【0051】
図3(A)は、第1実施形態において、送信信号SGが100%デューティの場合に、センサユニット21が送信した送信信号SG(基準パルス)と、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図である。
ここで、ECU11の受信信号について、送信信号SGが100%デューティの場合には、デューティ時間td1を「t100d1」と表記し、PWM周期tbを「t100b」と表記する。
【0052】
図3(B)は、第1実施形態において、送信信号SGが0%デューティの場合に、センサユニット21が送信した送信信号SG(基準パルス)と、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図である。
ここで、ECU11の受信信号について、送信信号SGが0%デューティの場合には、デューティ時間td1を「t0d1」と表記し、PWM周期tbを「t0b」と表記する。
【0053】
図4は、第1実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャートである。
センサユニット21は、電源が投入されてプラス側電源Vccが供給されると、以下の各ステップ(以下、「S」と記載する)の処理を実行する。
【0054】
センサユニット21は、まず、図3(A)に示す100%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信し(S101)、次に、図3(B)に示す0%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する(S102)。
尚、S101の処理とS102の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0055】
続いて、センサユニット21は、圧力センサ24および温度センサ25の検出動作が安定化し、各センサ24,25のセンサ値が両方共に確定したかどうかを判定し(S103)、各センサ24,25のセンサ値がいずれか一方でも確定していない場合(確定待ちの場合)にはS101,S102の処理を繰り返し実行し、各センサ24,25のセンサ値が両方共に確定している場合(確定済みの場合)にはS104の処理へ移行する。
S104において、センサユニット21は、各センサ24,25のセンサ値に対応した送信信号SGをECU11へ送信する処理を繰り返し実行する。
【0056】
図5は、第1実施形態におけるECU11のインプットキャプチャ(IPC)割込み処理動作を説明するためのフローチャートである。
ECU11は、所定時間毎にインプットキャプチャ割込み処理動作を開始し、インプットキャプチャ回路12および信号処理回路14が以下の各ステップ(S)の処理を実行する。
尚、インプットキャプチャ割込み処理動作を行う前記所定時間は、ECU11における演算負荷に基づいて最適値を求め設計値として決定すればよい。
【0057】
まず、インプットキャプチャ回路12は、センサユニット21の送信信号SGを受信し、そのデューティ時間td1を計測して取得し(S201)、次に、送信信号SGのPWM周期tbを計測して取得する(S202)。
尚、S201の処理とS202の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0058】
続いて、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1が、図3(A)に示す100%デューティの送信信号SGのデューティ時間t100d1以上であるかどうかを判定し(S203)、デューティ時間td1がデューティ時間t100d1以上の場合(S203:Yes)にはS204の処理へ移行し、デューティ時間td1がデューティ時間t100d1未満の場合(S203:No)にはS205の処理へ移行する。
【0059】
尚、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキにより、デューティ時間td1の精度にもバラツキが生じるため、デューティ時間td1がデューティ時間t100d1以上になることもある。
そのため、デューティ時間td1がデューティ時間t100d1以上であれば、そのデューティ時間td1はデューティ時間t100d1であるといえる。
また、各回路12,22のタイマ分解能のバラツキにより、PWM周期tbの精度にもバラツキが生じるため、PWM周期tbが固定値の1msからズレることがある。
ここで、各タイマ回路13,23が生成したタイマクロックのパルス幅の精度(タイマ精度)のバラツキが、各回路12,22のタイマ分解能のバラツキになるため、そのタイマ分解能のバラツキがタイマ精度差になる。
【0060】
そこで、S204において、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1をデューティ時間t100d1として認定すると共に、S202の処理で得られたPWM周期tbを、図3(A)に示す100%デューティの送信信号SGのPWM周期t100bとして認定する。
ここで、センサユニット21が100%デューティの送信信号SGを繰り返し送信するため(図4に示すS101の処理)、その送信信号SGをECU11は確実に受信できる。
【0061】
また、S205において、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1が、図3(B)に示す0%デューティの送信信号SGのデューティ時間t0d1以下であるかどうかを判定し、デューティ時間td1がデューティ時間t0d1以下の場合(S205:Yes)にはS206の処理へ移行し、デューティ時間td1がデューティ時間t0d1を超える場合(S205:No)にはS208の処理へ移行する。
【0062】
尚、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキ(タイマ精度差)により、デューティ時間td1の精度にもバラツキが生じるため、デューティ時間td1がデューティ時間t0d1以下になることもある。
そのため、デューティ時間td1がデューティ時間t0d1以下であれば、そのデューティ時間td1はデューティ時間t0d1であるといえる。
【0063】
そこで、S206において、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1をデューティ時間t0d1として認定すると共に、S202の処理で得られたPWM周期tbを、図3(B)に示す0%デューティの送信信号SGのPWM周期t0bとして認定する。
ここで、センサユニット21が0%デューティの送信信号SGを繰り返し送信するため(図4に示すS102の処理)、その送信信号SGをECU11は確実に受信できる。
【0064】
続いて、信号処理回路14は、S204,S206の処理で認定したデューティ時間t100d1,t0d1およびPWM周期t100b,t0bに基づいて、数式1によりデューティ補正係数kを算出する(S207)。
ここで、数式1の「0.8」は、PWM周期tbの時間(=1ms)から先頭側と末尾側の不感帯の時間(=0.1ms)を差し引いた時間である。
尚、S203,S204の処理とS205,S206の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0065】
k=0.8/(t100d1×t100b−t0d1×t0b) ………(数式1)
【0066】
S208において、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1と、S202の処理で得られたPWM周期tbと、S207の処理で得られたデューティ補正係数kとに基づいて、数式2により受信データD1(ms)を算出する。
ここで、数式2の「0.1」は、PWM周期tbの先頭側の不感帯の時間である。
S208の処理を実行したら、ECU11はインプットキャプチャ割込み処理動作を終了する。
【0067】
D1=k×td1×tb−0.1 ………(数式2)
【0068】
図6は、図4に示すS104の処理において、センサユニット21の信号処理回路26が行う動作を説明するための説明図である。
尚、図6では、温度センサ値のデジタル信号(データ)のビットについては、太枠を用いて図示してある。
【0069】
図6(A)に示すように、信号処理回路26は、圧力センサ24の圧力センサ値をAD変換して10ビットのデータを生成すると共に、温度センサ25の温度センサ値をAD変換して6ビットのデータを生成する。
そして、信号処理回路26は、ディザ(Dither)法を用い、温度センサ値のデータの最下位ビット(6ビット目)にディザとして±1LSB(Least Significant Bit)を追加(加算)してディザリングすることにより、ディザ効果が得られるようにしている。
【0070】
ここで、ECU11のタイマ回路13のタイマクロックの周波数は16MHzに設定されており、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能はタイマクロックの周期(=1/16MHz)であるため0.0625μsになる。
すなわち、図2に示す受信データD1の1LSBのデータ長は0.0625μsになる。
そして、図2および図3に示すように、送信信号SGのPWM周期tbは1msに固定されている。
【0071】
そのため、ECU11のインプットキャプチャ回路12は、センサユニット21の送信信号SGが、14ビット分までなら確実に受信可能であり、その14ビットに加えて2ビット分は受信タイミング次第で受信できる可能性があることから、合計16ビット分までなら受信できる可能性がある。
そこで、センサユニット21の信号処理回路26は、送信信号SGが16ビットになるように、圧力センサ値を10ビットのデータにし、温度センサ値を6ビットのデータにしている。
【0072】
尚、このように温度センサ値と圧力センサ値のデータのビット数を設定している理由は、温度センサ値は圧力センサ値を補正するためのものであり、温度センサ値のデータが6ビット分あれば、圧力センサ値のデータの10ビットを確実に補正できるためである。
【0073】
そして、図6(B)に示すように、信号処理回路26は、圧力センサ値の10ビットのデータと、温度センサ値の6ビットのデータとを多重化して1データにデータ圧縮した圧縮データを生成する。
【0074】
ここで、各センサ24,25の特性として、圧力センサ24の圧力センサ値の変化度合いに比べ、温度センサ25の温度センサ値は急激に変化しない。
また、温度センサ値は圧力センサ値を補正するためのものであり、温度センサ値は圧力センサ値より重要度が低い。
そして、ECU11のインプットキャプチャ回路12が確実に受信可能な送信信号SGは14ビット分である。
さらに、ECU11のインプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、センサユニット21のアウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキ(タイマ精度差)により、インプットキャプチャ回路12が受信した送信信号SGに誤差が生じるおそれがあるため、タイマ精度差による影響を回避する必要がある。
【0075】
そこで、圧力センサ値および温度センサのデータのLSB(最下位ビット)側の各ビットを圧縮データのLSB側に集めて配置し、圧縮データのLSB付近に温度センサ値のデータのLSB付近を割り付けて配置する。
【0076】
具体的には、図6(B)に示すように、圧縮データの下位2ビット(15,16ビット目)に、温度センサ値のデータの下位2ビット分を配置している。
そして、圧縮データの上位7ビット(1〜7ビット目)に、圧力センサ値のデータの上位7ビット分を配置している。
また、圧縮データの8〜14ビット目に、温度センサ値のデータと圧力センサ値のデータとを1ビットずつ交互に配置している。
尚、温度センサ値のデータの最下位ビットにディザが追加されているため、圧縮データの最下位ビット(16ビット目)にディザが追加されることになる。
【0077】
図7は、図5に示すS208の処理において、ECU11の信号処理回路14が行う動作を説明するための説明図である。
尚、図7では、温度センサ値のデータのビットについては、太枠を用いて図示してある。
【0078】
図7(A)に示すように、信号処理回路14は、図5に示すS201の処理で得られたデューティ時間td1の14ビット分のデータに対して、0.5LSB相当である18ビット分のデータを付加して拡張することにより、32ビットのデータを生成する。
ここで、デューティ時間td1のデータが14ビットであるのは、ECU11のインプットキャプチャ回路12が14ビット分の送信信号SGまでなら確実に受信可能なことによる。
また、デューティ時間td1のデータを32ビットに拡張する理由は、ECU11を構成するマイクロコンピュータが32ビットで動作するためである。
【0079】
そして、図7(B)に示すように、信号処理回路14は、32ビットに拡張したデューティ時間td1と、図5に示すS202の処理で得られたPWM周期tbと、図5に示すS207の処理で得られたデューティ補正係数kとに基づいて、前記数式2により受信データD1を算出する。
尚、デューティ時間td1を32ビットに拡張しているため、受信データD1も32ビットになる。
【0080】
ここで、受信データD1は、図6(B)に示す圧縮データと各ビットの配置ルールがほぼ同じである16ビットのデータの末尾に、下位16ビットのデータが付加されたビット構成になっている。
そこで、図7(C)に示すように、圧縮データの各ビットの配置ルールに基づいて受信データD1を分離し、圧力センサ24の圧力センサ値のデータと、温度センサ25の温度センサ値のデータとを生成する。
受信データD1から分離された圧力センサ値のデータは、図6(A)に示す圧力センサ値のデータとほぼ同じビット構成で10ビットである。
【0081】
また、受信データD1から分離された温度センサ値のデータは、図6(A)に示す温度センサ値とほぼ同じビット構成の6ビットのデータの末尾に、下位16ビットのデータが付加された合計22ビット分のビット構成になっている。
そして、図6(A)に示すように、センサユニット21の信号処理回路26は、温度センサ値のデータの最下位ビット(6ビット目)にディザとして±1LSBを追加している。
そのため、受信データD1から分離された温度センサ値のデータの下位18ビットには、ディザ効果による変動が含まれている。
【0082】
そこで、図7(C)に示すように、信号処理回路14は、温度センサ値のデータに対して、デジタルフィルタによるローパスフィルタをかけるローパスフィルタ処理を施すことにより、温度センサ値のデータの下位18ビットから2ビットを抽出して確定する。
その結果、図7(D)に示すように、図6(A)に示す温度センサ値とほぼ同じビット構成の6ビットのデータが得られる。
【0083】
[第1実施形態の作用・効果]
第1実施形態のPWM通信システム10によれば、以下の作用・効果が得られる。
【0084】
[1]センサユニット21は、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信に先立って、100%デューティおよび0%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する。
ECU11のインプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従い、送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbを計測する。
【0085】
ECU11の信号処理回路14は、インプットキャプチャ回路12が計測した基準パルス(100%デューティおよび0%デューティの送信信号SG)のデューティ時間t100d1,t0d1およびPWM周期t100b,t0bに基づいてデューティ補正係数kを生成し、インプットキャプチャ回路12が計測した送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbとデューティ補正係数kとに基づいて受信データD1を生成し、その受信データD1を信号処理回路26が多重化する以前のデジタル信号である圧力センサ24のセンサ値と温度センサ25のセンサ値に分離する。
【0086】
つまり、第1実施形態では、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信毎に、送信信号SGのPWM周期tbを所定周期(=1ms)に固定し、その固定値からの変化分を信号処理回路14にてデューティ補正係数kを用いて補正することにより、センサユニット21とECU11の間のタイマ分解能の補正を行い、送信信号SGの送信毎にデューティ時間td1の精度を補償する。
【0087】
ECU11のタイマ回路13とセンサユニット21のタイマ回路23とは、仕様公差内でタイマ分解能にバラツキを持っているが、各タイマ回路13,23の1LSBに相当する時間の比率は、送信信号SGのデューティ時間td1だけでなく、PWM周期tbにも同じ比率で反映される。
そこで、ECU11では、PWM周期tbを所定周期(=1ms)に固定し、デューティ時間td1を送信信号SGの受信毎に補正する。
【0088】
これにより、アウトプットコンペア回路22が送信信号SGを生成する元となるタイマ回路23のタイマクロックが設計値から変化しても、ECU11にて正しい送信信号SGのデューティ時間td1を取得することができる。
そのため、タイマ回路23のタイマ精度が低くてもよいことから、タイマ回路23を安価な回路にして低コスト化を図ることができる。
そして、ECU11およびセンサユニット21は特別な回路を用いていない。
従って、第1実施形態によれば、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供できる。
【0089】
[2]センサユニット21の信号処理回路26は、圧力センサ値および温度センサのデータのLSB側の各ビットを圧縮データのLSB側に集めて配置し、圧縮データのLSB付近に温度センサ値のデータのLSB付近を割り付けて配置する(図6(B)参照)。
【0090】
そのため、第1実施形態では、圧縮データの重要な上位ビットはノイズの影響を受けないことに加え、圧力センサ値または温度センサ値の片方が大きく変化しても、その変化が圧縮データの各ビットに分散されることから、正確な圧縮データが得られる。
【0091】
[3]センサユニット21の信号処理回路26は、圧縮データの最下位ビットに該当する温度センサ値のデータ(デジタル信号)の最下位ビットにディザとして±1LSBを追加した上で、圧力センサ値と温度センサ値を多重化する(図6参照)。
ECU11の信号処理回路14は、分離した圧力センサ値と温度センサのデータのうち、ディザが追加されている温度センサ値のデータに対して、デジタルフィルタによるローパスフィルタをかけることにより、温度センサ値のデータの下位ビットを確定する(図7(C)(D)参照)。
【0092】
そのため、第1実施形態では、ディザ法を用いることにより、センサユニット21のアウトプットコンペア回路22のタイマ分解能を、ECU11のインプットキャプチャ回路12のタイマ分解能以上にし、ECU11のインプットキャプチャ回路12のタイマ分解能以上のPWM通信精度を達成できる。
【0093】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態のPWM通信システム100の概略構成を示すブロック回路図である。
PWM通信システム100は、ECU101およびセンサユニット102と、ECU101とセンサユニット102を接続するワイヤハーネスW1〜W3とから構成され、車両に搭載されている。
【0094】
センサユニット102は、アウトプットコンペア回路22、タイマ回路23、NPNトランジスタTr1,Tr2、抵抗R2,R5、圧力センサ24、温度センサ25、信号処理回路26、センサ103,104を備え、4個のセンサ24,25,103,104が統合されている。
【0095】
センサ103は車両の適宜な検出対象(例えば、照度、車両の傾斜など)を検出し、その検出結果に応じたアナログ信号のセンサ値を生成する。
センサ104は、センサ103のセンサ値を補正するための検出対象を検出し、その検出結果に応じたアナログ信号のセンサ値を生成する。
つまり、各センサ103,104の関係は、各センサ24,25の関係に相当する。
【0096】
信号処理回路26は、第1実施形態と同じく、各センサ24,25のセンサ値をデジタル信号にAD変換し、各センサ値をデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する。
また、信号処理回路26は、各センサ103,104のセンサ値をデジタル信号にAD変換し、各センサ値をデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する。
【0097】
アウトプットコンペア回路22は、第1実施形態と同じく、タイマ回路23が生成したタイマクロックに従って動作する。
そして、アウトプットコンペア回路22は、第1実施形態と同じく、信号処理回路26が生成した各センサ24,25のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td1のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr1のゲートに印加する。
また、アウトプットコンペア回路22は、信号処理回路26が生成した各センサ103,104のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td2のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr2のゲートに印加する。
【0098】
トランジスタTr2のエミッタは抵抗R5を介してグランドに接続され、トランジスタTr2のコレクタは抵抗R2を介してプラス側電源Vccに接続されている。つまり、トランジスタTr2のコレクタは、トランジスタTr1のコレクタに接続されている。
そのため、各トランジスタTr1,Tr2のコレクタからは、アウトプットコンペア回路22から出力されたPWM信号の論理レベルを反転したPWM信号が、センサユニット102の送信信号SGとして送信される。
【0099】
ECU101は、インプットキャプチャ回路12、タイマ回路13、信号処理回路14、コンデンサC、抵抗R3,R4を備えている。
【0100】
センサユニット102の送信信号SGは、ワイヤハーネスW3を介してECU101へ伝送される。
ECU101のインプットキャプチャ回路12は、ワイヤハーネスW3を介して伝送されてくる送信信号SGを受信する。
そのため、センサユニット102の送信信号SGは、ECU101の受信信号となる。
【0101】
インプットキャプチャ回路12は、td1用とtd2用の2個の入力ポートを備えている。
インプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートとグランドの間には、各抵抗R3,R4が直列接続されている。
インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートとグランドの間には、コンデンサCと抵抗R4が並列接続されている。
【0102】
ECU101が受信した送信信号SGは、インプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートに直接入力される。
ECU101が受信した送信信号SGは、抵抗R3を介してインプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートに入力される。
インプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従って動作し、センサユニット102の送信信号SGのデューティ時間td1,td2およびPWM周期tbを計測する。
【0103】
信号処理回路14は、100%デューティおよび0%デューティの送信信号SGについて、インプットキャプチャ回路12が計測した100%デューティおよび0%デューティにおけるデューティ時間td1,td2およびPWM周期tbに基づいて、デューティ補正係数kを生成する。
次に、信号処理回路14は、第1実施形態と同じく、デューティ時間td1とPWM周期tbとデューティ補正係数kとに基づいて、各センサ24,25のセンサ値の受信データD1を算出し、受信データD1を各センサ24,25のセンサ値のデータに分離する。
【0104】
また、信号処理回路14は、予め設定しておいたデューティ時間td1の関数f(td1)と、デューティ時間td2とに基づいて、各センサ103,104のセンサ値の受信データD2(ms)を算出する。
続いて、信号処理回路14は、受信データD2を各センサ103,104のセンサ値のデータに分離する。
そして、ECU101は、センサ104のセンサ値のデータに基づいてセンサ103のセンサ値のデータを補正することにより、正確なセンサ103のセンサ値に基づいて車両の各種制御を高精度に行う。
【0105】
図9は、第2実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1,Tr2のオンオフ動作と、ECU101のインプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートの入力電圧(以下、「td1用IPC電圧」と記載する)と、インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートの入力電圧(以下、「td2用IPC電圧」と記載する)との関係を示す波形図である。
【0106】
ここで、各抵抗R2〜R5は、td1用IPC電圧およびtd2用IPC電圧が図9に示す電圧値になるために設けられており、プラス側電源Vccの電圧が5Vの場合には、抵抗R2の抵抗値が24kΩ、抵抗R3の抵抗値が49kΩ、抵抗R4の抵抗値が133kΩ、抵抗R5の抵抗値が180kΩに設定されている。
【0107】
両トランジスタTr1,Tr2がオン状態になると、td1用IPC電圧およびtd2用IPC電圧は共に0Vになる。
トランジスタTr2がオン状態のまま、トランジスタTr1がオフ状態になると、td1用IPC電圧は3.95Vになり、td2用IPC電圧は2.89Vになる。
両トランジスタTr1,Tr2がオフ状態になると、td1用IPC電圧は4.42Vになり、td2用IPC電圧は3.23Vになる。
【0108】
送信信号SGのPWM周期tbは、両トランジスタTr1,Tr2がオン状態になった時点からオフ状態になり次にオン状態になった時点までの時間であり、1msに固定されている。
送信信号SGのデューティ時間td1は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr1がオン状態になっている時間であり可変値である。
送信信号SGのデューティ時間td2は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr2がオン状態になっている時間であり可変値である。
【0109】
ここで、各デューティ時間td1,td2は、1つのPWM周期tbの先頭側(開始側)の片エッジにタイミングを合わせて設定されると共に、デューティ時間td1がデューティ時間td2以下になるように設定されている(td1≦td2)。
そのため、数式3に示すように、デューティ時間td2を受信データD2と関数f(td1)で表すことができる。
換言すれば、デューティ時間td1の関数f(td1)をオフセット値として、デューティ時間td2を受信データD2と関数f(td1)の和で表すことが可能なように、関数f(td1)を設定しておく。
但し、関数f(td1)は、デューティ時間td1以下になるように設定する必要がある(f(td1)≦td1)。
【0110】
td2=D2+f(td1) ………(数式3)
【0111】
そこで、信号処理回路14は、デューティ時間td1の関数f(td1)と、デューティ時間td2とに基づいて、数式4により受信データD2を算出する。
【0112】
D2=td2−f(td1) ………(数式4)
【0113】
[第2実施形態の作用・効果]
第2実施形態のPWM通信システム100では、送信信号SGの信号レベルを2段階の階段状に時間変位させ、その信号レベルの階段状の時間変位にデューティ時間td1,td2を対応させることにより、2つのデューティ時間td1,td2を1つの送信信号SGに重畳できる。
【0114】
そのため、第2実施形態では、デューティ時間td1に基づいて各センサ24,25のセンサ値のデータを送受信すると共に、デューティ時間td2に基づいて各センサ103,104のセンサ値のデータを送受信することが可能になり、合計4つのセンサ値のデータを1つの送信信号SGを用いるだけでPWM通信することができる。
【0115】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態のPWM通信システム200の概略構成を示すブロック回路図である。
PWM通信システム200は、ECU101およびセンサユニット201と、ECU101とセンサユニット201を接続するワイヤハーネスW1〜W3とから構成され、車両に搭載されている。
【0116】
センサユニット201は、アウトプットコンペア回路22、タイマ回路23、NPNトランジスタTr1,Tr2,Tr3、抵抗R2,R5,R6、圧力センサ24、温度センサ25、信号処理回路26、センサ103,104を備え、4個のセンサ24,25,103,104が統合されている。
【0117】
アウトプットコンペア回路22は、第1実施形態と同じく、タイマ回路23が生成したタイマクロックに従って動作する。
そして、アウトプットコンペア回路22は、信号処理回路26が生成した各センサ24,25のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td1のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr1のゲートに印加する。
また、アウトプットコンペア回路22は、信号処理回路26が生成した各センサ103,104のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td2のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr2のゲートに印加する。
加えて、アウトプットコンペア回路22は、信号処理回路26が生成した各センサ24,25,103,104のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td3のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr3のゲートに印加する。
【0118】
トランジスタTr3のエミッタは抵抗R6を介してグランドに接続され、トランジスタTr3のコレクタは抵抗R2を介してプラス側電源Vccに接続されている。つまり、トランジスタTr3のコレクタは、各トランジスタTr1,Tr2のコレクタに接続されている。
そのため、各トランジスタTr1〜Tr3のコレクタからは、アウトプットコンペア回路22から出力されたPWM信号の論理レベルを反転したPWM信号が、センサユニット201の送信信号SGとして送信される。
【0119】
センサユニット201の送信信号SGは、ワイヤハーネスW3を介してECU101へ伝送される。
ECU101のインプットキャプチャ回路12は、ワイヤハーネスW3を介して伝送されてくる送信信号SGを受信する。
そのため、センサユニット201の送信信号SGは、ECU101の受信信号となる。
【0120】
ECU101は、第2実施形態と同様に、各センサ24,25のセンサ値の受信データD1を算出し、受信データD1を各センサ24,25のセンサ値のデータに分離すると共に、各センサ103,104のセンサ値の受信データD2を算出し、受信データD2を各センサ103,104のセンサ値のデータに分離する。
【0121】
図11は、第3実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1,Tr2のオンオフ動作と、ECU101のインプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートの入力電圧(td1用IPC電圧)と、インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートの入力電圧(td2用IPC電圧)との関係を示す波形図である。
【0122】
ここで、各抵抗R2〜R6は、td1用IPC電圧およびtd2用IPC電圧が図11に示す電圧値になるために設けられており、プラス側電源Vccの電圧が5Vの場合には、抵抗R2の抵抗値が24kΩ、抵抗R3の抵抗値が49kΩ、抵抗R4の抵抗値が133kΩ、抵抗R5の抵抗値が180kΩ、抵抗R6の抵抗値が16kΩに設定されている。
【0123】
トランジスタTr1がオフ状態で各トランジスタTr2,Tr3がオン状態になると、td1用IPC電圧は1.81Vになり、td2用IPC電圧は0.49Vになる。
トランジスタTr2がオン状態のまま、トランジスタTr1がオン状態でトランジスタTr3がオフ状態になると、td1用IPC電圧およびtd2用IPC電圧は共に0Vになる。
全トランジスタTr1〜Tr3がオフ状態になると、td1用IPC電圧は4.42Vになり、td2用IPC電圧は3.23Vになる。
【0124】
送信信号SGのPWM周期tbは、各トランジスタTr2,Tr3がオン状態になった時点からオフ状態になり次にオン状態になった時点までの時間であり、1msに固定されている。
送信信号SGのデューティ時間td1は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr1がオン状態になっている時間であり可変値である。
数式5に示すように、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr2がオン状態になっている時間Qは、デューティ時間td1,td2で表すことができる。
【0125】
Q=2×td1−td2 ………(数式5)
【0126】
そこで、信号処理回路14は、時間Qとデューティ時間td1とに基づいて、数式6によりデューティ時間td2を算出する。
【0127】
td2=2×td1−Q ………(数式6)
【0128】
[第3実施形態の作用・効果]
第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の作用・効果が得られる。
加えて、第3実施形態によれば、デューティ時間td1がデューティ時間td2を超える場合(td1>td2)にも対応できる。
【0129】
また、第3実施形態によれば、トランジスタTr3を設けることにより、トランジスタTr1がオフ状態で各トランジスタTr2,Tr3がオン状態のときのtd2用IPC電圧が0.49Vになり、そのtd2用IPC電圧を、インプットキャプチャ回路12が送信信号SGの論理レベルをローレベルと判定する閾値電圧(=1V)以下の電圧にできる。
【0130】
<第4実施形態>
第4実施形態のPWM通信システム300の構成は、図1に示した第1実施形態のPWM通信システム10と同じである。
【0131】
図12は、第4実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1のオンオフ動作と、センサユニット21の送信信号SG(ECU11のインプットキャプチャ回路12の入力電圧)との関係を示す波形図である。
トランジスタTr1がオン状態のとき送信信号SGの論理レベルはローレベル(=0V)になり、トランジスタTr1がオフ状態のとき送信信号SGの論理レベルはハイレベル(=4.41V)になる。
【0132】
送信信号SGのPWM周期tbは、トランジスタTr1がオン状態になった時点からオフ状態になり次にオン状態になった時点までの時間であり、1ms以下の可変値になっている。
送信信号SGのデューティ時間td1は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr1がオン状態になっている時間(送信信号SGがローレベルになっている時間)であり、0.1ms(所定時間)に固定されている。
【0133】
送信信号SGにおいて、1つのPWM周期tbの先頭側には、0.1msの不感帯が2つ連続するように設定されている。
そのため、送信信号SGのPWM周期tbから2つの不感帯の時間(=0.2ms)を差し引いた時間が受信データD1となる。
送信信号SGに不感帯が設けられているため、ECU11のインプットキャプチャ回路12では、送信信号SGが100%周期または0%周期の場合に、送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbを速やかに計測できる。
【0134】
図13(A)は、第4実施形態において、送信信号SGが100%周期の場合に、センサユニット21が送信した送信信号SG(基準パルス)と、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図である。
ここで、ECU11の受信信号について、送信信号SGが100%周期の場合には、デューティ時間td1を「t100d1」と表記し、PWM周期tbを「t100b」と表記する。
送信信号SGが100%周期の場合のPWM周期t100bは1msに設定されている。
【0135】
図13(B)は、第4実施形態において、送信信号SGが0%周期の場合に、センサユニット21が送信した送信信号SG(基準パルス)と、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図である。
ここで、ECU11の受信信号について、送信信号SGが0%周期の場合には、デューティ時間td1を「t0d1」と表記し、PWM周期tbを「t0b」と表記する。
送信信号SGが0%周期の場合のPWM周期t0bは0.2msに設定されている。
【0136】
図14は、第4実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャートである。
センサユニット21は、電源が投入されてプラス側電源Vccが供給されると、以下の各ステップ(S)の処理を実行する。
【0137】
センサユニット21は、まず、図13(A)に示す100%周期の送信信号SGを基準パルスとして生成して送信し(S301)、次に、図13(B)に示す0%周期の送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する(S302)。
尚、S301の処理とS302の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0138】
続いて、センサユニット21は、圧力センサ24および温度センサ25の検出動作が安定化し、各センサ24,25のセンサ値が両方共に確定したかどうかを判定し(S303)、各センサ24,25のセンサ値がいずれか一方でも確定していない場合(確定待ちの場合)にはS301,S302の処理を繰り返し実行し、各センサ24,25のセンサ値が両方共に確定している場合(確定済みの場合)にはS304の処理へ移行する。
S304において、センサユニット21は、各センサ24,25のセンサ値に対応した送信信号SGをECU11へ送信する処理を繰り返し実行する。
【0139】
図15は、第4実施形態におけるECU11のインプットキャプチャ(IPC)割込み処理動作を説明するためのフローチャートである。
ECU11は、所定時間毎にインプットキャプチャ割込み処理動作を開始し、インプットキャプチャ回路12および信号処理回路14が以下の各ステップ(S)の処理を実行する。
【0140】
まず、インプットキャプチャ回路12は、センサユニット21の送信信号SGを受信し、そのデューティ時間td1を計測して取得し(S401)、次に、送信信号SGのPWM周期tbを計測して取得する(S402)。
尚、S401の処理とS402の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0141】
続いて、信号処理回路14は、S401の処理で得られたPWM周期tbが、図13(A)に示す100%周期の送信信号SGのPWM周期t100b以上であるかどうかを判定し(S403)、PWM周期tbがPWM周期t100b以上の場合(S403:Yes)にはS404の処理へ移行し、PWM周期tbがPWM周期t100b未満の場合(S403:No)にはS405の処理へ移行する。
【0142】
尚、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキにより、PWM周期tbの精度にもバラツキが生じるため、PWM周期tbがPWM周期t100b以上になることもある。
そのため、PWM周期tbがPWM周期t100b以上であれば、そのPWM周期tbはPWM周期t100bであるといえる。
また、各回路12,22のタイマ分解能のバラツキにより、デューティ時間td1の精度にもバラツキが生じるため、デューティ時間td1が固定値の0.1msからズレることがある。
ここで、各タイマ回路13,23が生成したタイマクロックのパルス幅の精度(タイマ精度)のバラツキが、各回路12,22のタイマ分解能のバラツキになるため、そのタイマ分解能のバラツキがタイマ精度差になる。
【0143】
そこで、S404において、信号処理回路14は、S401の処理で得られたデューティ時間td1をデューティ時間t100d1として認定すると共に、S402の処理で得られたPWM周期tbを、図13(A)に示す100%周期の送信信号SGのPWM周期t100bとして認定する。
【0144】
また、S405において、信号処理回路14は、S401の処理で得られたPWM周期tbが、図13(B)に示す0%周期の送信信号SGのデューティ時間t0d1以下であるかどうかを判定し、PWM周期tbがデューティ時間t0d1以下の場合(S405:Yes)にはS406の処理へ移行し、PWM周期tbがデューティ時間t0d1を超える場合(S405:No)にはS408の処理へ移行する。
【0145】
尚、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキ(タイマ精度差)により、PWM周期tbの精度にもバラツキが生じるため、PWM周期tbがPWM周期t0b以下になることもある。
そのため、PWM周期tbがPWM周期t0b以下であれば、そのPWM周期tbはPWM周期t0bであるといえる。
【0146】
そこで、S406において、信号処理回路14は、S401の処理で得られたデューティ時間td1をデューティ時間t0d1として認定すると共に、S402の処理で得られたPWM周期tbを、図13(B)に示す0%周期の送信信号SGのPWM周期t0bとして認定する。
【0147】
続いて、信号処理回路14は、S404,S406の処理で認定したデューティ時間t100d1,t0d1およびPWM周期t100b,t0bに基づいて、数式7により周期補正係数kを算出する(S407)。
ここで、数式7の「0.8」は、PWM周期tbの時間から2つの不感帯の時間(=0.2ms)を差し引いた時間である。
尚、S403,S404の処理とS405,S406の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0148】
k=0.8/(t100d1×t100b−t0d1×t0b) ………(数式7)
【0149】
S408において、信号処理回路14は、S401の処理で得られたデューティ時間td1と、S402の処理で得られたPWM周期tbと、S407の処理で得られた周期補正係数kとに基づいて、数式8により受信データD1(ms)を算出する。
ここで、数式8の「0.2」は、PWM周期tbの2つの不感帯の時間である。
S408の処理を実行したら、ECU11はインプットキャプチャ割込み処理動作を終了する。
【0150】
D1=k×td1×tb−0.2 ………(数式8)
【0151】
図14に示すS304の処理において、センサユニット21の信号処理回路26は、第1実施形態と同じく(図6参照)、圧力センサ値の10ビットのデータと、温度センサ値の6ビットのデータとを多重化して1データにデータ圧縮した圧縮データを生成する。
【0152】
図16は、図15に示すS408の処理において、ECU11の信号処理回路14が行う動作を説明するための説明図である。
尚、図16では、温度センサ値のデータのビットについては、太枠を用いて図示してある。
【0153】
図16(A)に示すように、信号処理回路14は、図15に示すS401の処理で得られたPWM周期tbの14ビット分のデータに対して、0.5LSB相当である18ビット分のデータを付加して拡張することにより、32ビットのデータを生成する。
ここで、PWM周期tbのデータが14ビットであるのは、ECU11のインプットキャプチャ回路12が14ビット分の送信信号SGまでなら確実に受信可能なことによる。
また、PWM周期tbのデータを32ビットに拡張する理由は、ECU11を構成するマイクロコンピュータが32ビットで動作するためである。
【0154】
そして、図16(B)に示すように、信号処理回路14は、32ビットに拡張したPWM周期tbと、図15に示すS401の処理で得られたデューティ時間td1と、図15に示すS407の処理で得られた周期補正係数kとに基づいて、前記数式8により受信データD1を算出する。
尚、PWM周期tbを32ビットに拡張しているため、受信データD1も32ビットになる。
【0155】
その後、図16(C)(D)に示すように、信号処理回路14は、第1実施形態と同じく(図7(C)(D)参照)、受信データD1を、圧力センサ24の圧力センサ値のデータと、温度センサ25の温度センサ値のデータとに分離する。
【0156】
[第4実施形態の作用・効果]
センサユニット21は、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信に先立って、100%周期および0%周期の送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する。
ECU11のインプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従い、送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbを計測する。
【0157】
ECU11の信号処理回路14は、インプットキャプチャ回路12が計測した基準パルス(100%周期および0%周期の送信信号SG)のデューティ時間t100d1,t0d1およびPWM周期t100b,t0bに基づいて周期補正係数kを生成し、インプットキャプチャ回路12が計測した送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbと周期補正係数kとに基づいて受信データD1を生成し、その受信データD1を信号処理回路26が多重化する以前のデジタル信号である圧力センサ24のセンサ値と温度センサ25のセンサ値に分離する。
【0158】
つまり、第4実施形態では、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信毎に、送信信号SGのデューティ時間td1を所定時間(=0.1ms)に固定し、その固定値からの変化分を信号処理回路14にて周期補正係数kを用いて補正することにより、センサユニット21とECU11の間のタイマ分解能の補正を行い、送信信号SGの送信毎にPWM周期tbの精度を補償する。
【0159】
ECU11のタイマ回路13とセンサユニット21のタイマ回路23とは、仕様公差内でタイマ分解能にバラツキを持っているが、各タイマ回路13,23の1LSBに相当する時間の比率は、送信信号SGのPWM周期tbだけでなく、デューティ時間td1にも同じ比率で反映される。
そこで、ECU11では、デューティ時間td1を所定時間(=0.1ms)に固定し、PWM周期tbを送信信号SGの受信毎に補正する。
【0160】
これにより、アウトプットコンペア回路22が送信信号SGを生成する元となるタイマ回路23のタイマクロックが設計値から変化しても、ECU11にて正しい送信信号SGのPWM周期tbを取得することができる。
そのため、タイマ回路23のタイマ精度が低くてもよいことから、タイマ回路23を安価な回路にして低コスト化を図ることができる。
そして、ECU11およびセンサユニット21は特別な回路を用いていない。
従って、第4実施形態によれば、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供できる。
【0161】
加えて、第4実施形態では、各センサ24,25のセンサ値が小さい場合にはPWM周期tbが短くなるため、より敏感に感知したい部分をセンサ値として小さい値に設定することで、より敏感に感知したいセンサ値の場合には最速で0.2ms毎にPWM通信することが可能になり、鈍感でよいセンサ値の場合は遅くても1ms毎にPWM通信することが可能である。
従って、第4実施形態によれば、第1実施形態よりも高速通信が可能になる。
【0162】
<第5実施形態>
図17は、第5実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャートである。
第5実施形態において、第1実施形態におけるセンサユニット21の動作(図4参照)と異なるのは、S102の処理とS103の処理の間にS105の処理が追加されている点である。
【0163】
S105において、センサユニット21は、S101,S201の処理を繰り返す回数(以下、「ループ回数」と記載する)が設定回数未満かどうかを判定し(S105)、ループ回数が設定回数未満の場合(S105:Yes)にはS101,S201の処理を繰り返し実行し、ループ回数が設定回数になった場合(S105:No)にはS103の処理へ移行する。
S103において、センサユニット21は、圧力センサ24および温度センサ25のセンサ値が両方共に確定するまで待ってからS104の処理へ移行する。
【0164】
第5実施形態によれば、ループ回数の設定回数を実験的に求めた最適値に設定することにより、センサユニット21が送信した100%デューティおよび0%デューティの送信信号SG(基準パルス)を、ECU11が確実に受信することが可能になる。
【0165】
<第6実施形態>
図18は、第6実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャートである。
第6実施形態において、第1実施形態におけるセンサユニット21の動作(図4参照)と異なるのは、S102の処理とS103の処理の間にS106の処理が追加されている点である。
【0166】
S106において、センサユニット21は、S101,S201の処理を繰り返す時間(以下、「ループ時間」と記載する)が設定時間未満かどうかを判定し(S105)、ループ時間が設定時間未満の場合(S105:Yes)にはS101,S201の処理を繰り返し実行し、ループ時間が設定時間になった場合(S105:No)にはS103の処理へ移行する。
S103において、センサユニット21は、圧力センサ24および温度センサ25のセンサ値が両方共に確定するまで待ってからS104の処理へ移行する。
【0167】
第6実施形態によれば、ループ時間の設定時間を実験的に求めた最適値に設定することにより、センサユニット21が送信した100%デューティおよび0%デューティの送信信号SG(基準パルス)を、ECU11が確実に受信することが可能になる。
【0168】
<別の実施形態>
本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、前記各実施形態と同等もしくはそれ以上の作用・効果を得ることができる。
【0169】
[1]第1実施形態(図2参照),第2実施形態(図9参照),第3実施形態(図11参照)では、送信信号SGのPWM周期tbを1msの固定値にしているが、各センサ24,25,103,104の特性およびセンサ値に応じて、1ms以外の適宜な所定周期を固定値として設定してもよい。
【0170】
[2]第4実施形態(図12参照)では、送信信号SGのデューティ時間td1を0.1msの固定値にしているが、各センサ24,25の特性およびセンサ値に応じて、0.1ms以外の適宜な所定時間を固定値として設定してもよい。
また、第4実施形態では、送信信号SGが100%周期の場合のPWM周期t100bを1msに設定しているが、各センサ24,25のセンサ値に応じて、1ms以外の適宜な周期に設定してもよい。
【0171】
[3]第1実施形態および第4実施形態(図6参照)では、圧力センサ24の圧力センサ値を10ビットのデータにすると共に、温度センサ25の温度センサ値を6ビットのデータにしている。
しかし、各センサ24,25のセンサ値のビット数はそれぞれ、各センサ24,25の特性およびセンサ値に応じて、適宜なビット数に設定してもよい。
また、第1実施形態および第4実施形態において、3個以上のセンサを設け、その3個以上のセンサのセンサ値のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮してもよい。
【0172】
[4]第2実施形態(図9参照)および第3実施形態(図11参照)では、送信信号SGの信号レベルを2段階の階段状に時間変位させている。
しかし、送信信号SGの信号レベルを3段階以上の階段状に時間変位させてもよく、その場合には、段階の数に応じたデューティ時間を1つの送信信号SGに重畳できる。
【0173】
[5]第2実施形態(図8参照)および第3実施形態(図10参照)では、ECU101における1個のインプットキャプチャ回路12が、td1用とtd2用の2個の入力ポートを備えている。
しかし、td1用とtd2用の2個のインプットキャプチャ回路をECU101に設け、個々のインプットキャプチャ回路に1個ずつの入力ポートを備えるようにしてもよい。
【0174】
[6]第1実施形態(図4参照)では、センサユニット21が、電源投入時に100%デューティおよび0%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信している。
また、第4実施形態(図14参照)では、センサユニット21が、電源投入時に100%周期および0%周期の送信信号SGを基準パルスとして生成して送信している。
しかし、センサユニット21が基準パルスを送信するのは、電源投入時に限らず、各センサ24,25のセンサ値に対応した送信信号SGの送信に先立つならば、基準パルスを送信するタイミングは適宜設定すればよい。
【0175】
[7]前記各実施形態において、センサユニット21,102,201が送信するPWM信号である送信信号SGは、電圧値が変化する電圧信号である。
しかし、PWM信号である送信信号SGを、電流値が変化する電流信号にすることにより、センサユニット21,102,201とECU11,101との間の通信を電流通信にしてもよい。
【0176】
その場合には、送信信号SGを送信するためのデジタル信号線のワイヤハーネスW2を、電力線であるプラス側電源線のワイヤハーネスW1と共用すれば、更なる信号線削減を実現できる。
【0177】
[8]前記各実施形態を適宜組み合わせて実施してもよく、その場合には組み合わせた実施形態の作用・効果を合わせもたせたり、相乗効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0178】
10,100,200,300…PWM通信システム
11,101…ECU(受信装置)
12…インプットキャプチャ(IPC)回路(計測回路)
13…タイマ回路(受信側タイマ回路)
14…信号処理回路(受信側信号処理回路)
21,102,201…センサユニット(送信装置)
22…アウトプットコンペア(OC)回路(送信回路)
23…タイマ回路(送信側タイマ回路)
24…圧力センサ
25…温度センサ
26…信号処理回路(送信側信号処理回路)
103,104…センサ
W3…ワイヤハーネス(信号線)
SG…送信信号
td1,td2…デューティ時間
tb…PWM周期
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM(Pulse Width Modulation)通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物理量の値に関係づけられたパルス幅をもつPWM出力を当該物理量に関する情報として出力するPWM出力型センサ回路が開示されている。
【0003】
特許文献2の請求項1には、伝送すべき複数本のアナログ信号をそれぞれパルス幅変調して時分割多重化し、多重化されたパルス幅変調信号を単一の伝送路により伝送し、伝送路から信号を受信して同期情報を検出し、検出した同期情報に基づき、受信した信号から複数本のパルス幅変調信号を多重分離する多重通信方法において、パルス幅変調信号の伝送路上への送出タイミングを伝送すべきアナログ信号の本数より多い個数のタイミングで循環させつつ、立上りタイミングが一定制御された複数本のパルス幅変調信号を対応する送出タイミングにおいて伝送路上に送出し、パルス幅変調信号が送出されていない期間を同期情報として検出する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3の請求項1には、送信部においては、複数のデジタル信号を第1のパルス幅変調器で第1のパルス幅変調信号列に順番に多重し、他の複数のデジタル信号を第2のパルス幅変調器で前記第1のパルス幅変調信号列とは逆極性を有する第2のパルス幅変調信号列に順番に多重し、前記第1のパルス幅変調信号列と前記第2のパルス幅変調信号列をさらに多重器で多重し、受信部においては、前記送信部において多重された多重パルス信号を受信し、交流結合型増幅器で所定の振幅を有するパルス信号に増幅した後、減算器と第1のパルス幅復調器及び第2のパルス幅復調器で元の複数のデジタル信号を順番に分離・再生するパルス多重伝送方法が開示されている。
【0005】
非特許文献1には、センサの出力が4ビット分ずつ複数のパルス出力に分割され、補正の基準となるパルスは先頭に送信され、最後尾のパルスでの補正量が推定によるものとなるため、多データを通信する場合にはメッセージID(Identification)を割り付けて別データとすることで、1回の通信パルス数を削減するSENT通信技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-180596号公報
【特許文献2】特開平6−284100号公報
【特許文献3】特開平7−7490号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】SAE(Society of Automotive Engineers) International SURFACE VHICLE INFORMATION REPORT J2716 Revised FEB2008 SENT−Signal Edge Nibble Transmission for Automotive Application
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、車両に搭載される各種センサ(例えば、圧力センサ、温度センサ、光センサ、傾斜センサなど)と車載ECU(Electronic Control Unit)との通信では、個々のセンサ毎に信号線を設けていた。
しかし、近年、複数のセンサを統合化すると共に、複数のセンサのセンサ値(検出信号)を多重化通信することにより、信号線の本数を減らしてコストダウンを図ることが要求されている。
【0009】
例えば、圧力センサが検出した圧力センサ値をECUへ送信する場合、気体の状態方程式により、圧力の変化時には温度変化が伴う。
そのため、圧力センサと温度センサを統合化し、圧力センサを用いて圧力センサ値を検出するのと同時に、温度センサを用いて温度センサ値を検出し、その圧力センサ値と温度センサ値とをECUへ多重化通信し、ECUにて温度センサ値に基づいて圧力センサ値を補正することにより、正確な圧力センサ値に基づいて車両の各種制御を高精度に行うことが求められている。
【0010】
従来は、センサ値のアナログ信号を通信するためのアナログ信号線のワイヤハーネスに加えて、プラス側電源線のワイヤハーネスと、グランド線のワイヤハーネスとの合計3本のワイヤハーネスを用いて、センサとECUを接続していた。
そして、ECU内ではセンサ値のアナログ信号をAD(Analog-to-Digital)変換していたが、グランド線に重畳されたノイズの影響により、AD変換によって生成されたデジタル信号の精度が悪化するおそれがあるため、ECU内ではAD変換後にデジタルフィルタをかけることによりノイズを除去していた。
しかし、ECUにおけるデジタルフィルタのノイズ除去性能を向上させる為にデータサンプリング数を増やすと、センサ値の応答性が悪化するという問題があった。
【0011】
そこで、センサ値をデジタル信号に変換した後にECUへ送信すれば、前記ノイズの影響を回避することが可能であるが、高速通信を実現するには高いタイマ精度が必要となる。
例えば、CAN(Controller Area Network)通信を利用して多重化通信を行う場合には、タイマ精度の補正を行う仕組みがあるが、タイマ精度の補正を行うための専用回路を設けなければならず、その専用回路を設ける分だけコストアップになるという問題がある。
【0012】
特許文献1には、PWM出力の波高値を、ある物理量(バッテリ電流値)とは異なる他の物理量の値(温度情報)に関係づけて設定することにより、他の物理量の値に関する情報をPWM出力に重畳する技術が開示されている(請求項6、段落[0065]参照)。
この技術では、PWM出力の波高値を検出するための専用回路をECU内に設けなければならず、その専用回路を設ける分だけコストアップになるという問題がある。
【0013】
また、センサとECUのPWM通信では、通常、センサ側にアウトプットコンペア回路を備えると共に、ECU側にインプットキャプチャ回路を備え、アウトプットコンペア回路とインプットキャプチャ回路のそれぞれに別個のタイマ回路からタイマクロックを与えるようにしている。
そのため、インプットキャプチャ回路のタイマ分解能が優れていても、インプットキャプチャ回路のタイマ分解能とアウトプットコンペア回路のタイマ分解能とのバラツキにより、センサ値のパルス幅の精度にもバラツキが生じ、通信可能なデータ量に制約が発生することから、多重化通信には不向きである。
【0014】
尚、インプットキャプチャ回路のタイマ分解能は、インプットキャプチャ回路が備えるタイマ回路のタイマクロックの周期である。
また、アウトプットコンペア回路のタイマ分解能は、アウトプットコンペア回路が備えるタイマ回路のタイマクロックの周期である。
そして、インプットキャプチャ回路とアウトプットコンペア回路が備えるそれぞれのタイマ回路が生成したタイマクロックのパルス幅の精度(タイマ精度)のバラツキが、インプットキャプチャ回路とアウトプットコンペア回路のタイマ分解能のバラツキになるため、そのタイマ分解能のバラツキがタイマ精度差になる。
【0015】
特許文献2の技術では、パルス幅変調信号の伝送路上への送出タイミングを伝送すべきアナログ信号の本数より多い個数のタイミングで循環させるのに要する時間と、立上りタイミングが一定制御された複数本のパルス幅変調信号を対応する送出タイミングにおいて伝送路上に送出するのに要する時間と、同期情報を送る時間とを合わせた時間分だけ、通信時間が長くなり高速通信が困難であるという問題がある。
【0016】
特許文献3の技術では、デジタル信号の1ビット分の送受信にPWM信号の1パルスを用いるため、全データ分を通信するには多数のパルスが必要となることから、通信時間が長くなり高速通信が困難であるという問題がある。
また、特許文献3の技術では、パルス幅変調器およびパルス幅復調器を用いた変復調処理を行うため、その変復調処理に伴う誤差が生じるという問題がある。
加えて、特許文献3の技術では、パルス幅変調器、パルス幅復調器、交流結合型増幅器といった特別な回路を設けなければならず、その特別な回路を設ける分だけコストアップになるという問題がある。
【0017】
非特許文献1の技術では、全データ分を通信するには多数のパルスが必要となるため、通信時間が長くなり高速通信が困難であるという問題がある。
加えて、非特許文献1の技術では、ECUではパルス毎に割込み処理を行うため、高速通信の場合には頻繁に割込み処理を行わねばならず、ECUにおける通信以外の処理が遅れるという問題がある。
【0018】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の発明は、
送信信号を送信する送信装置と、
前記送信信号を伝送する信号線と、
前記信号線を介して伝送されてくる前記送信信号を受信する受信装置と
を備えたPWM通信システムにおいて、
前記送信装置は、
複数のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する送信側信号処理回路と、
送信側タイマクロックを生成する送信側タイマ回路と、
前記送信側タイマ回路が生成した送信側タイマクロックに従い、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づいて、前記送信信号を生成して送信する送信回路と
を備え、
前記送信信号は、PWM周期が所定周期に固定されると共に、デューティ時間が可変値のPWM信号であることと、
前記送信装置は、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づく前記送信信号の送信に先立って、100%デューティおよび0%デューティの前記送信信号を基準パルスとして生成して送信することを特徴とし、
前記受信装置は、
受信側タイマクロックを生成する受信側タイマ回路と、
前記受信側タイマ回路が生成した受信側タイマクロックに従い、前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期を計測する計測回路と、
前記計測回路が計測した前記基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいてデューティ補正係数を生成し、前記計測回路が計測した前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期と前記デューティ補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを前記送信側信号処理回路が多重化する以前の前記複数のデジタル信号に分離する受信側信号処理回路と
を備えたことを技術的特徴とする。
【0020】
請求項2に記載の発明は、
送信信号を送信する送信装置と、
前記送信信号を伝送する信号線と、
前記信号線を介して伝送されてくる前記送信信号を受信する受信装置と
を備えたPWM通信システムにおいて、
前記送信装置は、
複数のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する送信側信号処理回路と、
送信側タイマクロックを生成する送信側タイマ回路と、
前記送信側タイマ回路が生成した送信側タイマクロックに従い、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づいて、前記送信信号を生成して送信する送信回路と
を備え、
前記送信信号は、デューティ時間が所定時間に固定されると共に、PWM周期が可変値のPWM信号であることと、
前記送信装置は、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づく前記送信信号の送信に先立って、100%周期および0%周期の前記送信信号を基準パルスとして生成して送信することを特徴とし、
前記受信装置は、
受信側タイマクロックを生成する受信側タイマ回路と、
前記受信側タイマ回路が生成した受信側タイマクロックに従い、前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期を計測する計測回路と、
前記計測回路が計測した前記基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいて周期補正係数を生成し、前記計測回路が計測した前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期と前記周期補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを前記送信側信号処理回路が多重化する以前の前記複数のデジタル信号に分離する受信側信号処理回路と
を備えたことを技術的特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明は、
請求項1または請求項2に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信側信号処理回路は、前記複数のデジタル信号の最下位ビット側の各ビットを、データ圧縮して生成した圧縮データの最下位ビット側に集めて配置することを技術的特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信側信号処理回路は、前記複数のデジタル信号のうち、データ圧縮して生成した圧縮データの最下位ビットに該当するデジタル信号に対してディザを追加した上で、前記複数のデジタル信号を多重化し、
前記受信側信号処理回路は、分離した前記複数のデジタル信号のうち、前記ディザが追加されているデジタル信号に対して、デジタルフィルタによるローパスフィルタをかけることにより、当該デジタル信号の下位ビットを確定することを技術的特徴とする。
【0023】
請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信信号の信号レベルを階段状に時間変位させ、その信号レベルの階段状の時間変位に前記デューティ時間またはPWM周期を対応させることにより、複数の前記デューティ時間またはPWM周期を1つの前記送信信号に重畳させることを技術的特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信信号は電流信号であり、前記送信装置と前記受信装置は電流通信を行うことを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
<請求項1:第1実施形態に該当>
請求項1では、送信側信号処理回路がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号の送信毎に、送信信号のPWM周期を所定周期に固定し、その固定値からの変化分を受信側信号処理回路にてデューティ補正係数を用いて補正することにより、送信装置と受信装置の間のタイマ分解能の補正を行い、送信信号の送信毎にデューティ時間の精度を補償する。
【0026】
受信側タイマ回路と送信側タイマ回路とは、仕様公差内でタイマ分解能にバラツキを持っているが、各タイマ回路の1LSBに相当する時間の比率は、送信信号のデューティ時間だけでなく、PWM周期にも同じ比率で反映される。
そこで、受信装置では、PWM周期を所定周期に固定し、デューティ時間を送信信号の受信毎に補正する。
【0027】
これにより、送信回路が送信信号を生成する元となる送信側タイマ回路のタイマクロックが設計値から変化しても、受信装置にて正しい送信信号のデューティ時間を取得することができる。
そのため、送信側タイマ回路のタイマ精度が低くてもよいことから、送信側タイマ回路を安価な回路にして低コスト化を図ることができる。
そして、受信装置および送信装置は特別な回路を用いていない。
従って、請求項1によれば、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供できる。
【0028】
<請求項2:第4実施形態に該当>
請求項2では、送信側信号処理回路がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号の送信毎に、送信信号のデューティ時間を所定時間に固定し、その固定値からの変化分を受信側信号処理回路にて周期補正係数を用いて補正することにより、送信装置と受信装置の間のタイマ分解能の補正を行い、送信信号の送信毎にPWM周期の精度を補償する。
【0029】
受信側タイマ回路と送信側タイマ回路とは、仕様公差内でタイマ分解能にバラツキを持っているが、各タイマ回路の1LSBに相当する時間の比率は、送信信号のPWM周期だけでなく、デューティ時間にも同じ比率で反映される。
そこで、受信装置では、デューティ時間を所定周期に固定し、PWM周期を送信信号の受信毎に補正する。
【0030】
これにより、送信回路が送信信号を生成する元となる送信側タイマ回路のタイマクロックが設計値から変化しても、受信装置にて正しい送信信号のPWM周期を取得することができる。
そのため、送信側タイマ回路のタイマ精度が低くてもよいことから、送信側タイマ回路を安価な回路にして低コスト化を図ることができる。
そして、受信装置および送信装置は特別な回路を用いていない。
従って、請求項2によれば、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供できる。
【0031】
<請求項3>
請求項3では、圧縮データの重要な上位ビットはノイズの影響を受けないことに加え、圧力センサ値または温度センサ値の片方が大きく変化しても、その変化が圧縮データの各ビットに分散されることから、正確な圧縮データが得られる。
【0032】
<請求項4>
請求項4では、ディザ法を用いることにより、送信装置の送信回路のタイマ分解能を、受信装置の計測回路のタイマ分解能以上にし、受信装置の計測回路のタイマ分解能以上のPWM通信精度を達成できる。
【0033】
<請求項5:第2実施形態および第3実施形態に該当>
請求項5では、送信信号の信号レベルを階段状に時間変位させ、その信号レベルの階段状の時間変位に前記デューティ時間またはPWM周期を対応させることにより、複数の前記デューティ時間またはPWM周期を1つの送信信号に重畳させるため、前記階段状の段階の数に応じた複数のデジタル信号を、1つの送信信号を用いるだけでPWM通信することができる。
【0034】
<請求項6>
請求項6では、信号線を電力線と共用すれば、更なる信号線削減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を具体化した第1,第4実施形態のPWM通信システム10,300の概略構成を示すブロック回路図。
【図2】第1実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1のオンオフ動作と、センサユニット21の送信信号SGとの関係を示す波形図。
【図3】図3(A)は、第1実施形態において、送信信号SGが100%デューティの場合に、センサユニット21が送信した送信信号SGと、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図。図3(B)は、第1実施形態において、送信信号SGが0%デューティの場合に、センサユニット21が送信した送信信号SGと、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図。
【図4】第1実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャート。
【図5】第1実施形態におけるECU11のインプットキャプチャ(IPC)割込み処理動作を説明するためのフローチャート。
【図6】図4に示すS104の処理において、センサユニット21の信号処理回路26が行う動作を説明するための説明図。
【図7】図5に示すS208の処理において、ECU11の信号処理回路14が行う動作を説明するための説明図。
【図8】本発明を具体化した第2実施形態のPWM通信システム100の概略構成を示すブロック回路図。
【図9】第2実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1,Tr2のオンオフ動作と、ECU101のインプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートの入力電圧(td1用IPC電圧)と、インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートの入力電圧(td2用IPC電圧)との関係を示す波形図。
【図10】本発明を具体化した第3実施形態のPWM通信システム200の概略構成を示すブロック回路図。
【図11】第3実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1,Tr2のオンオフ動作と、ECU101のインプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートの入力電圧(td1用IPC電圧)と、インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートの入力電圧(td2用IPC電圧)との関係を示す波形図。
【図12】第4実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1のオンオフ動作と、センサユニット21の送信信号SGとの関係を示す波形図。
【図13】図13(A)は、第4実施形態において、送信信号SGが100%周期の場合に、センサユニット21が送信した送信信号SGと、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図。図13(B)は、第4実施形態において、送信信号SGが0%周期の場合に、センサユニット21が送信した送信信号SGと、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図。
【図14】第4実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャート。
【図15】第4実施形態におけるECU11のインプットキャプチャ(IPC)割込み処理動作を説明するためのフローチャート。
【図16】図15に示すS408の処理において、ECU11の信号処理回路14が行う動作を説明するための説明図。
【図17】本発明を具体化した第5実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャート。
【図18】本発明を具体化した第6実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、各実施形態において、同一の構成部材および構成要素については符号を等しくすると共に、同一内容の箇所については重複説明を省略してある。
【0037】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のPWM通信システム10の概略構成を示すブロック回路図である。
PWM通信システム10は、ECU11およびセンサユニット21と、ECU11とセンサユニット21を接続するワイヤハーネスW1〜W3とから構成され、車両に搭載されている。
【0038】
ECU11は、インプットキャプチャ(IPC:InPut Capture)回路12、タイマ回路13、信号処理回路14、コンデンサC、抵抗R1を備え、32ビット(bit)で動作するマイクロコンピュータ(図示略)によって構成されている。
センサユニット21は、アウトプットコンペア(OC:Output Compare)回路22、タイマ回路23、圧力センサ24、温度センサ25、信号処理回路26、NPNトランジスタTr1、抵抗R2を備え、圧力センサ24と温度センサ25が統合されている。
【0039】
プラス側電源線のワイヤハーネスW1は、車載バッテリ(図示略)のプラス側端子に接続されてプラス側電源Vccが印加され、ECU11およびセンサユニット21の内部回路にプラス側電源Vccを供給している。
グランド(アース)線のワイヤハーネスW2は、車載バッテリのマイナス側端子に接続され、ECU11およびセンサユニット21の内部回路のグランド側に接続されている。
【0040】
圧力センサ24は車両における検出箇所(図示略)の圧力を検出し、その圧力に応じたアナログ信号のセンサ値(検出信号)を生成する。
気体の状態方程式により、圧力の変化時には温度変化が伴う。また、タイマ回路23のタイマ精度(タイマクロックのパルス幅の精度)は温度特性で変化する場合がある。
そこで、温度センサ25は、圧力センサ24の検出箇所近傍の温度を検出し、その温度に応じたアナログ信号のセンサ値を生成する。
【0041】
信号処理回路26は、圧力センサ24のセンサ値(圧力センサ値)をデジタル信号(データ)にAD変換すると共に、温度センサ25のセンサ値(温度センサ値)をデジタル信号にAD変換し、圧力センサ値のデジタル信号と温度センサ値のデジタル信号とを多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する。
【0042】
アウトプットコンペア回路22は、タイマ回路23が生成したタイマクロックに従って動作し、信号処理回路26が生成したデジタル信号に基づいて、デューティ(Duty)時間(デューティパルス幅)td1のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr1のゲートに印加する。
トランジスタTr1のエミッタはグランドに接続され、トランジスタTr1のコレクタは抵抗R2を介してプラス側電源Vccに接続されている。
そのため、トランジスタTr1のコレクタからは、アウトプットコンペア回路22から出力されたPWM信号の論理レベルを反転したPWM信号が、センサユニット21の送信信号(出力信号)SGとして送信(出力)される。
【0043】
センサユニット21の送信信号SGは、デジタル信号線(PWM信号線)のワイヤハーネスW3を介してECU11へ伝送される。
ECU11のインプットキャプチャ回路12は、ワイヤハーネスW3を介して伝送されてくる送信信号SGを受信(入力)する。
そのため、センサユニット21の送信信号SGは、ECU11の受信信号となる。
【0044】
ECU11において、インプットキャプチャ回路12の入力ポートとグランドの間には、コンデンサCと抵抗R1が並列接続されている。
コンデンサCはローパスフィルタ回路を構成し、センサユニット21の送信信号SGに含まれる高い周波数のノイズを除去する。
各抵抗R1,R2は、センサユニット21の送信信号SGの電圧レベルを所定電圧値(4.41V)以下に規定するために設けられており、プラス側電源Vccの電圧が5Vの場合には、抵抗R1の抵抗値が180kΩ、抵抗R2の抵抗値が24kΩに設定されている。
【0045】
インプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従って動作し、センサユニット21の送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期(通信周期)tbを計測する。
ここで、インプットキャプチャ回路12は、センサユニット21の送信信号SGの電圧レベルが3V以上の場合は送信信号SGの論理レベルをハイレベル(Hi)と判定し、送信信号SGの電圧レベルが1V未満の場合は送信信号SGの論理レベルをローレベル(Lo)と判定する。
【0046】
ECU11のタイマ回路13のタイマクロックの周波数は16MHzに設定されており、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能はタイマクロックの周期(=1/16MHz)であるため0.0625μsになる。
尚、センサユニット21のタイマ回路23のタイマクロックの周波数は、ECU11のタイマ回路13のタイマクロックの周波数以上に設定されている。
アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能(パルス幅分解能)はタイマ回路23のタイマクロックの周期であるため、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能はインプットキャプチャ回路12のタイマ分解能以上に設定されている。
【0047】
信号処理回路14は、100%デューティおよび0%デューティの送信信号SG(基準パルス)について、インプットキャプチャ回路12が計測した100%デューティおよび0%デューティにおけるデューティ時間td1およびPWM周期tbに基づいて、デューティ補正係数kを生成する。
次に、信号処理回路14は、インプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbと、デューティ補正係数kとに基づいて、受信データD1を生成する。
続いて、信号処理回路14は、受信データD1を、圧力センサ24の圧力センサ値のデータと、温度センサ25の温度センサ値のデータとに分離する。
そして、ECU11は、温度センサ値のデータに基づいて圧力センサ値のデータを補正することにより、正確な圧力センサ値に基づいて車両の各種制御を高精度に行う。
【0048】
図2は、第1実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1のオンオフ動作と、センサユニット21の送信信号SG(ECU11のインプットキャプチャ回路12の入力電圧)との関係を示す波形図(タイミングチャート)である。
トランジスタTr1がオン(ON)状態のとき送信信号SGの論理レベルはローレベル(=0V)になり、トランジスタTr1がオフ(OFF)状態のとき送信信号SGの論理レベルはハイレベル(=4.41V)になる。
【0049】
送信信号SGのPWM周期tbは、トランジスタTr1がオン状態になった時点からオフ状態になり次にオン状態になった時点までの時間であり、1ms(所定周期)に固定されている。
送信信号SGのデューティ時間td1は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr1がオン状態になっている時間(送信信号SGがローレベルになっている時間)であり可変値になっている。
【0050】
送信信号SGにおいて、1つのPWM周期tbの先頭側と末尾側にはそれぞれ、0.1msの不感帯が設定されている。
そのため、送信信号SGのデューティ時間td1から先頭側の不感帯の時間を差し引いた時間が受信データD1となる。
送信信号SGに不感帯が設けられているため、ECU11のインプットキャプチャ回路12では、送信信号SGが100%デューティまたは0%デューティの場合に、送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbを速やかに計測できる。
尚、不感帯の時間は、PWM周期tbとECU11における演算負荷とのバランスに基づいて最適値を求め設計値として決定すればよい。
【0051】
図3(A)は、第1実施形態において、送信信号SGが100%デューティの場合に、センサユニット21が送信した送信信号SG(基準パルス)と、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図である。
ここで、ECU11の受信信号について、送信信号SGが100%デューティの場合には、デューティ時間td1を「t100d1」と表記し、PWM周期tbを「t100b」と表記する。
【0052】
図3(B)は、第1実施形態において、送信信号SGが0%デューティの場合に、センサユニット21が送信した送信信号SG(基準パルス)と、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図である。
ここで、ECU11の受信信号について、送信信号SGが0%デューティの場合には、デューティ時間td1を「t0d1」と表記し、PWM周期tbを「t0b」と表記する。
【0053】
図4は、第1実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャートである。
センサユニット21は、電源が投入されてプラス側電源Vccが供給されると、以下の各ステップ(以下、「S」と記載する)の処理を実行する。
【0054】
センサユニット21は、まず、図3(A)に示す100%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信し(S101)、次に、図3(B)に示す0%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する(S102)。
尚、S101の処理とS102の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0055】
続いて、センサユニット21は、圧力センサ24および温度センサ25の検出動作が安定化し、各センサ24,25のセンサ値が両方共に確定したかどうかを判定し(S103)、各センサ24,25のセンサ値がいずれか一方でも確定していない場合(確定待ちの場合)にはS101,S102の処理を繰り返し実行し、各センサ24,25のセンサ値が両方共に確定している場合(確定済みの場合)にはS104の処理へ移行する。
S104において、センサユニット21は、各センサ24,25のセンサ値に対応した送信信号SGをECU11へ送信する処理を繰り返し実行する。
【0056】
図5は、第1実施形態におけるECU11のインプットキャプチャ(IPC)割込み処理動作を説明するためのフローチャートである。
ECU11は、所定時間毎にインプットキャプチャ割込み処理動作を開始し、インプットキャプチャ回路12および信号処理回路14が以下の各ステップ(S)の処理を実行する。
尚、インプットキャプチャ割込み処理動作を行う前記所定時間は、ECU11における演算負荷に基づいて最適値を求め設計値として決定すればよい。
【0057】
まず、インプットキャプチャ回路12は、センサユニット21の送信信号SGを受信し、そのデューティ時間td1を計測して取得し(S201)、次に、送信信号SGのPWM周期tbを計測して取得する(S202)。
尚、S201の処理とS202の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0058】
続いて、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1が、図3(A)に示す100%デューティの送信信号SGのデューティ時間t100d1以上であるかどうかを判定し(S203)、デューティ時間td1がデューティ時間t100d1以上の場合(S203:Yes)にはS204の処理へ移行し、デューティ時間td1がデューティ時間t100d1未満の場合(S203:No)にはS205の処理へ移行する。
【0059】
尚、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキにより、デューティ時間td1の精度にもバラツキが生じるため、デューティ時間td1がデューティ時間t100d1以上になることもある。
そのため、デューティ時間td1がデューティ時間t100d1以上であれば、そのデューティ時間td1はデューティ時間t100d1であるといえる。
また、各回路12,22のタイマ分解能のバラツキにより、PWM周期tbの精度にもバラツキが生じるため、PWM周期tbが固定値の1msからズレることがある。
ここで、各タイマ回路13,23が生成したタイマクロックのパルス幅の精度(タイマ精度)のバラツキが、各回路12,22のタイマ分解能のバラツキになるため、そのタイマ分解能のバラツキがタイマ精度差になる。
【0060】
そこで、S204において、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1をデューティ時間t100d1として認定すると共に、S202の処理で得られたPWM周期tbを、図3(A)に示す100%デューティの送信信号SGのPWM周期t100bとして認定する。
ここで、センサユニット21が100%デューティの送信信号SGを繰り返し送信するため(図4に示すS101の処理)、その送信信号SGをECU11は確実に受信できる。
【0061】
また、S205において、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1が、図3(B)に示す0%デューティの送信信号SGのデューティ時間t0d1以下であるかどうかを判定し、デューティ時間td1がデューティ時間t0d1以下の場合(S205:Yes)にはS206の処理へ移行し、デューティ時間td1がデューティ時間t0d1を超える場合(S205:No)にはS208の処理へ移行する。
【0062】
尚、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキ(タイマ精度差)により、デューティ時間td1の精度にもバラツキが生じるため、デューティ時間td1がデューティ時間t0d1以下になることもある。
そのため、デューティ時間td1がデューティ時間t0d1以下であれば、そのデューティ時間td1はデューティ時間t0d1であるといえる。
【0063】
そこで、S206において、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1をデューティ時間t0d1として認定すると共に、S202の処理で得られたPWM周期tbを、図3(B)に示す0%デューティの送信信号SGのPWM周期t0bとして認定する。
ここで、センサユニット21が0%デューティの送信信号SGを繰り返し送信するため(図4に示すS102の処理)、その送信信号SGをECU11は確実に受信できる。
【0064】
続いて、信号処理回路14は、S204,S206の処理で認定したデューティ時間t100d1,t0d1およびPWM周期t100b,t0bに基づいて、数式1によりデューティ補正係数kを算出する(S207)。
ここで、数式1の「0.8」は、PWM周期tbの時間(=1ms)から先頭側と末尾側の不感帯の時間(=0.1ms)を差し引いた時間である。
尚、S203,S204の処理とS205,S206の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0065】
k=0.8/(t100d1×t100b−t0d1×t0b) ………(数式1)
【0066】
S208において、信号処理回路14は、S201の処理で得られたデューティ時間td1と、S202の処理で得られたPWM周期tbと、S207の処理で得られたデューティ補正係数kとに基づいて、数式2により受信データD1(ms)を算出する。
ここで、数式2の「0.1」は、PWM周期tbの先頭側の不感帯の時間である。
S208の処理を実行したら、ECU11はインプットキャプチャ割込み処理動作を終了する。
【0067】
D1=k×td1×tb−0.1 ………(数式2)
【0068】
図6は、図4に示すS104の処理において、センサユニット21の信号処理回路26が行う動作を説明するための説明図である。
尚、図6では、温度センサ値のデジタル信号(データ)のビットについては、太枠を用いて図示してある。
【0069】
図6(A)に示すように、信号処理回路26は、圧力センサ24の圧力センサ値をAD変換して10ビットのデータを生成すると共に、温度センサ25の温度センサ値をAD変換して6ビットのデータを生成する。
そして、信号処理回路26は、ディザ(Dither)法を用い、温度センサ値のデータの最下位ビット(6ビット目)にディザとして±1LSB(Least Significant Bit)を追加(加算)してディザリングすることにより、ディザ効果が得られるようにしている。
【0070】
ここで、ECU11のタイマ回路13のタイマクロックの周波数は16MHzに設定されており、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能はタイマクロックの周期(=1/16MHz)であるため0.0625μsになる。
すなわち、図2に示す受信データD1の1LSBのデータ長は0.0625μsになる。
そして、図2および図3に示すように、送信信号SGのPWM周期tbは1msに固定されている。
【0071】
そのため、ECU11のインプットキャプチャ回路12は、センサユニット21の送信信号SGが、14ビット分までなら確実に受信可能であり、その14ビットに加えて2ビット分は受信タイミング次第で受信できる可能性があることから、合計16ビット分までなら受信できる可能性がある。
そこで、センサユニット21の信号処理回路26は、送信信号SGが16ビットになるように、圧力センサ値を10ビットのデータにし、温度センサ値を6ビットのデータにしている。
【0072】
尚、このように温度センサ値と圧力センサ値のデータのビット数を設定している理由は、温度センサ値は圧力センサ値を補正するためのものであり、温度センサ値のデータが6ビット分あれば、圧力センサ値のデータの10ビットを確実に補正できるためである。
【0073】
そして、図6(B)に示すように、信号処理回路26は、圧力センサ値の10ビットのデータと、温度センサ値の6ビットのデータとを多重化して1データにデータ圧縮した圧縮データを生成する。
【0074】
ここで、各センサ24,25の特性として、圧力センサ24の圧力センサ値の変化度合いに比べ、温度センサ25の温度センサ値は急激に変化しない。
また、温度センサ値は圧力センサ値を補正するためのものであり、温度センサ値は圧力センサ値より重要度が低い。
そして、ECU11のインプットキャプチャ回路12が確実に受信可能な送信信号SGは14ビット分である。
さらに、ECU11のインプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、センサユニット21のアウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキ(タイマ精度差)により、インプットキャプチャ回路12が受信した送信信号SGに誤差が生じるおそれがあるため、タイマ精度差による影響を回避する必要がある。
【0075】
そこで、圧力センサ値および温度センサのデータのLSB(最下位ビット)側の各ビットを圧縮データのLSB側に集めて配置し、圧縮データのLSB付近に温度センサ値のデータのLSB付近を割り付けて配置する。
【0076】
具体的には、図6(B)に示すように、圧縮データの下位2ビット(15,16ビット目)に、温度センサ値のデータの下位2ビット分を配置している。
そして、圧縮データの上位7ビット(1〜7ビット目)に、圧力センサ値のデータの上位7ビット分を配置している。
また、圧縮データの8〜14ビット目に、温度センサ値のデータと圧力センサ値のデータとを1ビットずつ交互に配置している。
尚、温度センサ値のデータの最下位ビットにディザが追加されているため、圧縮データの最下位ビット(16ビット目)にディザが追加されることになる。
【0077】
図7は、図5に示すS208の処理において、ECU11の信号処理回路14が行う動作を説明するための説明図である。
尚、図7では、温度センサ値のデータのビットについては、太枠を用いて図示してある。
【0078】
図7(A)に示すように、信号処理回路14は、図5に示すS201の処理で得られたデューティ時間td1の14ビット分のデータに対して、0.5LSB相当である18ビット分のデータを付加して拡張することにより、32ビットのデータを生成する。
ここで、デューティ時間td1のデータが14ビットであるのは、ECU11のインプットキャプチャ回路12が14ビット分の送信信号SGまでなら確実に受信可能なことによる。
また、デューティ時間td1のデータを32ビットに拡張する理由は、ECU11を構成するマイクロコンピュータが32ビットで動作するためである。
【0079】
そして、図7(B)に示すように、信号処理回路14は、32ビットに拡張したデューティ時間td1と、図5に示すS202の処理で得られたPWM周期tbと、図5に示すS207の処理で得られたデューティ補正係数kとに基づいて、前記数式2により受信データD1を算出する。
尚、デューティ時間td1を32ビットに拡張しているため、受信データD1も32ビットになる。
【0080】
ここで、受信データD1は、図6(B)に示す圧縮データと各ビットの配置ルールがほぼ同じである16ビットのデータの末尾に、下位16ビットのデータが付加されたビット構成になっている。
そこで、図7(C)に示すように、圧縮データの各ビットの配置ルールに基づいて受信データD1を分離し、圧力センサ24の圧力センサ値のデータと、温度センサ25の温度センサ値のデータとを生成する。
受信データD1から分離された圧力センサ値のデータは、図6(A)に示す圧力センサ値のデータとほぼ同じビット構成で10ビットである。
【0081】
また、受信データD1から分離された温度センサ値のデータは、図6(A)に示す温度センサ値とほぼ同じビット構成の6ビットのデータの末尾に、下位16ビットのデータが付加された合計22ビット分のビット構成になっている。
そして、図6(A)に示すように、センサユニット21の信号処理回路26は、温度センサ値のデータの最下位ビット(6ビット目)にディザとして±1LSBを追加している。
そのため、受信データD1から分離された温度センサ値のデータの下位18ビットには、ディザ効果による変動が含まれている。
【0082】
そこで、図7(C)に示すように、信号処理回路14は、温度センサ値のデータに対して、デジタルフィルタによるローパスフィルタをかけるローパスフィルタ処理を施すことにより、温度センサ値のデータの下位18ビットから2ビットを抽出して確定する。
その結果、図7(D)に示すように、図6(A)に示す温度センサ値とほぼ同じビット構成の6ビットのデータが得られる。
【0083】
[第1実施形態の作用・効果]
第1実施形態のPWM通信システム10によれば、以下の作用・効果が得られる。
【0084】
[1]センサユニット21は、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信に先立って、100%デューティおよび0%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する。
ECU11のインプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従い、送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbを計測する。
【0085】
ECU11の信号処理回路14は、インプットキャプチャ回路12が計測した基準パルス(100%デューティおよび0%デューティの送信信号SG)のデューティ時間t100d1,t0d1およびPWM周期t100b,t0bに基づいてデューティ補正係数kを生成し、インプットキャプチャ回路12が計測した送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbとデューティ補正係数kとに基づいて受信データD1を生成し、その受信データD1を信号処理回路26が多重化する以前のデジタル信号である圧力センサ24のセンサ値と温度センサ25のセンサ値に分離する。
【0086】
つまり、第1実施形態では、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信毎に、送信信号SGのPWM周期tbを所定周期(=1ms)に固定し、その固定値からの変化分を信号処理回路14にてデューティ補正係数kを用いて補正することにより、センサユニット21とECU11の間のタイマ分解能の補正を行い、送信信号SGの送信毎にデューティ時間td1の精度を補償する。
【0087】
ECU11のタイマ回路13とセンサユニット21のタイマ回路23とは、仕様公差内でタイマ分解能にバラツキを持っているが、各タイマ回路13,23の1LSBに相当する時間の比率は、送信信号SGのデューティ時間td1だけでなく、PWM周期tbにも同じ比率で反映される。
そこで、ECU11では、PWM周期tbを所定周期(=1ms)に固定し、デューティ時間td1を送信信号SGの受信毎に補正する。
【0088】
これにより、アウトプットコンペア回路22が送信信号SGを生成する元となるタイマ回路23のタイマクロックが設計値から変化しても、ECU11にて正しい送信信号SGのデューティ時間td1を取得することができる。
そのため、タイマ回路23のタイマ精度が低くてもよいことから、タイマ回路23を安価な回路にして低コスト化を図ることができる。
そして、ECU11およびセンサユニット21は特別な回路を用いていない。
従って、第1実施形態によれば、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供できる。
【0089】
[2]センサユニット21の信号処理回路26は、圧力センサ値および温度センサのデータのLSB側の各ビットを圧縮データのLSB側に集めて配置し、圧縮データのLSB付近に温度センサ値のデータのLSB付近を割り付けて配置する(図6(B)参照)。
【0090】
そのため、第1実施形態では、圧縮データの重要な上位ビットはノイズの影響を受けないことに加え、圧力センサ値または温度センサ値の片方が大きく変化しても、その変化が圧縮データの各ビットに分散されることから、正確な圧縮データが得られる。
【0091】
[3]センサユニット21の信号処理回路26は、圧縮データの最下位ビットに該当する温度センサ値のデータ(デジタル信号)の最下位ビットにディザとして±1LSBを追加した上で、圧力センサ値と温度センサ値を多重化する(図6参照)。
ECU11の信号処理回路14は、分離した圧力センサ値と温度センサのデータのうち、ディザが追加されている温度センサ値のデータに対して、デジタルフィルタによるローパスフィルタをかけることにより、温度センサ値のデータの下位ビットを確定する(図7(C)(D)参照)。
【0092】
そのため、第1実施形態では、ディザ法を用いることにより、センサユニット21のアウトプットコンペア回路22のタイマ分解能を、ECU11のインプットキャプチャ回路12のタイマ分解能以上にし、ECU11のインプットキャプチャ回路12のタイマ分解能以上のPWM通信精度を達成できる。
【0093】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態のPWM通信システム100の概略構成を示すブロック回路図である。
PWM通信システム100は、ECU101およびセンサユニット102と、ECU101とセンサユニット102を接続するワイヤハーネスW1〜W3とから構成され、車両に搭載されている。
【0094】
センサユニット102は、アウトプットコンペア回路22、タイマ回路23、NPNトランジスタTr1,Tr2、抵抗R2,R5、圧力センサ24、温度センサ25、信号処理回路26、センサ103,104を備え、4個のセンサ24,25,103,104が統合されている。
【0095】
センサ103は車両の適宜な検出対象(例えば、照度、車両の傾斜など)を検出し、その検出結果に応じたアナログ信号のセンサ値を生成する。
センサ104は、センサ103のセンサ値を補正するための検出対象を検出し、その検出結果に応じたアナログ信号のセンサ値を生成する。
つまり、各センサ103,104の関係は、各センサ24,25の関係に相当する。
【0096】
信号処理回路26は、第1実施形態と同じく、各センサ24,25のセンサ値をデジタル信号にAD変換し、各センサ値をデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する。
また、信号処理回路26は、各センサ103,104のセンサ値をデジタル信号にAD変換し、各センサ値をデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する。
【0097】
アウトプットコンペア回路22は、第1実施形態と同じく、タイマ回路23が生成したタイマクロックに従って動作する。
そして、アウトプットコンペア回路22は、第1実施形態と同じく、信号処理回路26が生成した各センサ24,25のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td1のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr1のゲートに印加する。
また、アウトプットコンペア回路22は、信号処理回路26が生成した各センサ103,104のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td2のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr2のゲートに印加する。
【0098】
トランジスタTr2のエミッタは抵抗R5を介してグランドに接続され、トランジスタTr2のコレクタは抵抗R2を介してプラス側電源Vccに接続されている。つまり、トランジスタTr2のコレクタは、トランジスタTr1のコレクタに接続されている。
そのため、各トランジスタTr1,Tr2のコレクタからは、アウトプットコンペア回路22から出力されたPWM信号の論理レベルを反転したPWM信号が、センサユニット102の送信信号SGとして送信される。
【0099】
ECU101は、インプットキャプチャ回路12、タイマ回路13、信号処理回路14、コンデンサC、抵抗R3,R4を備えている。
【0100】
センサユニット102の送信信号SGは、ワイヤハーネスW3を介してECU101へ伝送される。
ECU101のインプットキャプチャ回路12は、ワイヤハーネスW3を介して伝送されてくる送信信号SGを受信する。
そのため、センサユニット102の送信信号SGは、ECU101の受信信号となる。
【0101】
インプットキャプチャ回路12は、td1用とtd2用の2個の入力ポートを備えている。
インプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートとグランドの間には、各抵抗R3,R4が直列接続されている。
インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートとグランドの間には、コンデンサCと抵抗R4が並列接続されている。
【0102】
ECU101が受信した送信信号SGは、インプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートに直接入力される。
ECU101が受信した送信信号SGは、抵抗R3を介してインプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートに入力される。
インプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従って動作し、センサユニット102の送信信号SGのデューティ時間td1,td2およびPWM周期tbを計測する。
【0103】
信号処理回路14は、100%デューティおよび0%デューティの送信信号SGについて、インプットキャプチャ回路12が計測した100%デューティおよび0%デューティにおけるデューティ時間td1,td2およびPWM周期tbに基づいて、デューティ補正係数kを生成する。
次に、信号処理回路14は、第1実施形態と同じく、デューティ時間td1とPWM周期tbとデューティ補正係数kとに基づいて、各センサ24,25のセンサ値の受信データD1を算出し、受信データD1を各センサ24,25のセンサ値のデータに分離する。
【0104】
また、信号処理回路14は、予め設定しておいたデューティ時間td1の関数f(td1)と、デューティ時間td2とに基づいて、各センサ103,104のセンサ値の受信データD2(ms)を算出する。
続いて、信号処理回路14は、受信データD2を各センサ103,104のセンサ値のデータに分離する。
そして、ECU101は、センサ104のセンサ値のデータに基づいてセンサ103のセンサ値のデータを補正することにより、正確なセンサ103のセンサ値に基づいて車両の各種制御を高精度に行う。
【0105】
図9は、第2実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1,Tr2のオンオフ動作と、ECU101のインプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートの入力電圧(以下、「td1用IPC電圧」と記載する)と、インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートの入力電圧(以下、「td2用IPC電圧」と記載する)との関係を示す波形図である。
【0106】
ここで、各抵抗R2〜R5は、td1用IPC電圧およびtd2用IPC電圧が図9に示す電圧値になるために設けられており、プラス側電源Vccの電圧が5Vの場合には、抵抗R2の抵抗値が24kΩ、抵抗R3の抵抗値が49kΩ、抵抗R4の抵抗値が133kΩ、抵抗R5の抵抗値が180kΩに設定されている。
【0107】
両トランジスタTr1,Tr2がオン状態になると、td1用IPC電圧およびtd2用IPC電圧は共に0Vになる。
トランジスタTr2がオン状態のまま、トランジスタTr1がオフ状態になると、td1用IPC電圧は3.95Vになり、td2用IPC電圧は2.89Vになる。
両トランジスタTr1,Tr2がオフ状態になると、td1用IPC電圧は4.42Vになり、td2用IPC電圧は3.23Vになる。
【0108】
送信信号SGのPWM周期tbは、両トランジスタTr1,Tr2がオン状態になった時点からオフ状態になり次にオン状態になった時点までの時間であり、1msに固定されている。
送信信号SGのデューティ時間td1は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr1がオン状態になっている時間であり可変値である。
送信信号SGのデューティ時間td2は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr2がオン状態になっている時間であり可変値である。
【0109】
ここで、各デューティ時間td1,td2は、1つのPWM周期tbの先頭側(開始側)の片エッジにタイミングを合わせて設定されると共に、デューティ時間td1がデューティ時間td2以下になるように設定されている(td1≦td2)。
そのため、数式3に示すように、デューティ時間td2を受信データD2と関数f(td1)で表すことができる。
換言すれば、デューティ時間td1の関数f(td1)をオフセット値として、デューティ時間td2を受信データD2と関数f(td1)の和で表すことが可能なように、関数f(td1)を設定しておく。
但し、関数f(td1)は、デューティ時間td1以下になるように設定する必要がある(f(td1)≦td1)。
【0110】
td2=D2+f(td1) ………(数式3)
【0111】
そこで、信号処理回路14は、デューティ時間td1の関数f(td1)と、デューティ時間td2とに基づいて、数式4により受信データD2を算出する。
【0112】
D2=td2−f(td1) ………(数式4)
【0113】
[第2実施形態の作用・効果]
第2実施形態のPWM通信システム100では、送信信号SGの信号レベルを2段階の階段状に時間変位させ、その信号レベルの階段状の時間変位にデューティ時間td1,td2を対応させることにより、2つのデューティ時間td1,td2を1つの送信信号SGに重畳できる。
【0114】
そのため、第2実施形態では、デューティ時間td1に基づいて各センサ24,25のセンサ値のデータを送受信すると共に、デューティ時間td2に基づいて各センサ103,104のセンサ値のデータを送受信することが可能になり、合計4つのセンサ値のデータを1つの送信信号SGを用いるだけでPWM通信することができる。
【0115】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態のPWM通信システム200の概略構成を示すブロック回路図である。
PWM通信システム200は、ECU101およびセンサユニット201と、ECU101とセンサユニット201を接続するワイヤハーネスW1〜W3とから構成され、車両に搭載されている。
【0116】
センサユニット201は、アウトプットコンペア回路22、タイマ回路23、NPNトランジスタTr1,Tr2,Tr3、抵抗R2,R5,R6、圧力センサ24、温度センサ25、信号処理回路26、センサ103,104を備え、4個のセンサ24,25,103,104が統合されている。
【0117】
アウトプットコンペア回路22は、第1実施形態と同じく、タイマ回路23が生成したタイマクロックに従って動作する。
そして、アウトプットコンペア回路22は、信号処理回路26が生成した各センサ24,25のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td1のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr1のゲートに印加する。
また、アウトプットコンペア回路22は、信号処理回路26が生成した各センサ103,104のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td2のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr2のゲートに印加する。
加えて、アウトプットコンペア回路22は、信号処理回路26が生成した各センサ24,25,103,104のセンサ値のデジタル信号に基づいて、デューティ時間td3のPWM信号を生成し、そのPWM信号をトランジスタTr3のゲートに印加する。
【0118】
トランジスタTr3のエミッタは抵抗R6を介してグランドに接続され、トランジスタTr3のコレクタは抵抗R2を介してプラス側電源Vccに接続されている。つまり、トランジスタTr3のコレクタは、各トランジスタTr1,Tr2のコレクタに接続されている。
そのため、各トランジスタTr1〜Tr3のコレクタからは、アウトプットコンペア回路22から出力されたPWM信号の論理レベルを反転したPWM信号が、センサユニット201の送信信号SGとして送信される。
【0119】
センサユニット201の送信信号SGは、ワイヤハーネスW3を介してECU101へ伝送される。
ECU101のインプットキャプチャ回路12は、ワイヤハーネスW3を介して伝送されてくる送信信号SGを受信する。
そのため、センサユニット201の送信信号SGは、ECU101の受信信号となる。
【0120】
ECU101は、第2実施形態と同様に、各センサ24,25のセンサ値の受信データD1を算出し、受信データD1を各センサ24,25のセンサ値のデータに分離すると共に、各センサ103,104のセンサ値の受信データD2を算出し、受信データD2を各センサ103,104のセンサ値のデータに分離する。
【0121】
図11は、第3実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1,Tr2のオンオフ動作と、ECU101のインプットキャプチャ回路12のtd1用入力ポートの入力電圧(td1用IPC電圧)と、インプットキャプチャ回路12のtd2用入力ポートの入力電圧(td2用IPC電圧)との関係を示す波形図である。
【0122】
ここで、各抵抗R2〜R6は、td1用IPC電圧およびtd2用IPC電圧が図11に示す電圧値になるために設けられており、プラス側電源Vccの電圧が5Vの場合には、抵抗R2の抵抗値が24kΩ、抵抗R3の抵抗値が49kΩ、抵抗R4の抵抗値が133kΩ、抵抗R5の抵抗値が180kΩ、抵抗R6の抵抗値が16kΩに設定されている。
【0123】
トランジスタTr1がオフ状態で各トランジスタTr2,Tr3がオン状態になると、td1用IPC電圧は1.81Vになり、td2用IPC電圧は0.49Vになる。
トランジスタTr2がオン状態のまま、トランジスタTr1がオン状態でトランジスタTr3がオフ状態になると、td1用IPC電圧およびtd2用IPC電圧は共に0Vになる。
全トランジスタTr1〜Tr3がオフ状態になると、td1用IPC電圧は4.42Vになり、td2用IPC電圧は3.23Vになる。
【0124】
送信信号SGのPWM周期tbは、各トランジスタTr2,Tr3がオン状態になった時点からオフ状態になり次にオン状態になった時点までの時間であり、1msに固定されている。
送信信号SGのデューティ時間td1は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr1がオン状態になっている時間であり可変値である。
数式5に示すように、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr2がオン状態になっている時間Qは、デューティ時間td1,td2で表すことができる。
【0125】
Q=2×td1−td2 ………(数式5)
【0126】
そこで、信号処理回路14は、時間Qとデューティ時間td1とに基づいて、数式6によりデューティ時間td2を算出する。
【0127】
td2=2×td1−Q ………(数式6)
【0128】
[第3実施形態の作用・効果]
第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の作用・効果が得られる。
加えて、第3実施形態によれば、デューティ時間td1がデューティ時間td2を超える場合(td1>td2)にも対応できる。
【0129】
また、第3実施形態によれば、トランジスタTr3を設けることにより、トランジスタTr1がオフ状態で各トランジスタTr2,Tr3がオン状態のときのtd2用IPC電圧が0.49Vになり、そのtd2用IPC電圧を、インプットキャプチャ回路12が送信信号SGの論理レベルをローレベルと判定する閾値電圧(=1V)以下の電圧にできる。
【0130】
<第4実施形態>
第4実施形態のPWM通信システム300の構成は、図1に示した第1実施形態のPWM通信システム10と同じである。
【0131】
図12は、第4実施形態において、アウトプットコンペア回路22のトランジスタTr1のオンオフ動作と、センサユニット21の送信信号SG(ECU11のインプットキャプチャ回路12の入力電圧)との関係を示す波形図である。
トランジスタTr1がオン状態のとき送信信号SGの論理レベルはローレベル(=0V)になり、トランジスタTr1がオフ状態のとき送信信号SGの論理レベルはハイレベル(=4.41V)になる。
【0132】
送信信号SGのPWM周期tbは、トランジスタTr1がオン状態になった時点からオフ状態になり次にオン状態になった時点までの時間であり、1ms以下の可変値になっている。
送信信号SGのデューティ時間td1は、1つのPWM周期tbにおいてトランジスタTr1がオン状態になっている時間(送信信号SGがローレベルになっている時間)であり、0.1ms(所定時間)に固定されている。
【0133】
送信信号SGにおいて、1つのPWM周期tbの先頭側には、0.1msの不感帯が2つ連続するように設定されている。
そのため、送信信号SGのPWM周期tbから2つの不感帯の時間(=0.2ms)を差し引いた時間が受信データD1となる。
送信信号SGに不感帯が設けられているため、ECU11のインプットキャプチャ回路12では、送信信号SGが100%周期または0%周期の場合に、送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbを速やかに計測できる。
【0134】
図13(A)は、第4実施形態において、送信信号SGが100%周期の場合に、センサユニット21が送信した送信信号SG(基準パルス)と、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図である。
ここで、ECU11の受信信号について、送信信号SGが100%周期の場合には、デューティ時間td1を「t100d1」と表記し、PWM周期tbを「t100b」と表記する。
送信信号SGが100%周期の場合のPWM周期t100bは1msに設定されている。
【0135】
図13(B)は、第4実施形態において、送信信号SGが0%周期の場合に、センサユニット21が送信した送信信号SG(基準パルス)と、ECU11が受信してインプットキャプチャ回路12が計測したデューティ時間td1およびPWM周期tbとの関係を示す波形図である。
ここで、ECU11の受信信号について、送信信号SGが0%周期の場合には、デューティ時間td1を「t0d1」と表記し、PWM周期tbを「t0b」と表記する。
送信信号SGが0%周期の場合のPWM周期t0bは0.2msに設定されている。
【0136】
図14は、第4実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャートである。
センサユニット21は、電源が投入されてプラス側電源Vccが供給されると、以下の各ステップ(S)の処理を実行する。
【0137】
センサユニット21は、まず、図13(A)に示す100%周期の送信信号SGを基準パルスとして生成して送信し(S301)、次に、図13(B)に示す0%周期の送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する(S302)。
尚、S301の処理とS302の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0138】
続いて、センサユニット21は、圧力センサ24および温度センサ25の検出動作が安定化し、各センサ24,25のセンサ値が両方共に確定したかどうかを判定し(S303)、各センサ24,25のセンサ値がいずれか一方でも確定していない場合(確定待ちの場合)にはS301,S302の処理を繰り返し実行し、各センサ24,25のセンサ値が両方共に確定している場合(確定済みの場合)にはS304の処理へ移行する。
S304において、センサユニット21は、各センサ24,25のセンサ値に対応した送信信号SGをECU11へ送信する処理を繰り返し実行する。
【0139】
図15は、第4実施形態におけるECU11のインプットキャプチャ(IPC)割込み処理動作を説明するためのフローチャートである。
ECU11は、所定時間毎にインプットキャプチャ割込み処理動作を開始し、インプットキャプチャ回路12および信号処理回路14が以下の各ステップ(S)の処理を実行する。
【0140】
まず、インプットキャプチャ回路12は、センサユニット21の送信信号SGを受信し、そのデューティ時間td1を計測して取得し(S401)、次に、送信信号SGのPWM周期tbを計測して取得する(S402)。
尚、S401の処理とS402の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0141】
続いて、信号処理回路14は、S401の処理で得られたPWM周期tbが、図13(A)に示す100%周期の送信信号SGのPWM周期t100b以上であるかどうかを判定し(S403)、PWM周期tbがPWM周期t100b以上の場合(S403:Yes)にはS404の処理へ移行し、PWM周期tbがPWM周期t100b未満の場合(S403:No)にはS405の処理へ移行する。
【0142】
尚、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキにより、PWM周期tbの精度にもバラツキが生じるため、PWM周期tbがPWM周期t100b以上になることもある。
そのため、PWM周期tbがPWM周期t100b以上であれば、そのPWM周期tbはPWM周期t100bであるといえる。
また、各回路12,22のタイマ分解能のバラツキにより、デューティ時間td1の精度にもバラツキが生じるため、デューティ時間td1が固定値の0.1msからズレることがある。
ここで、各タイマ回路13,23が生成したタイマクロックのパルス幅の精度(タイマ精度)のバラツキが、各回路12,22のタイマ分解能のバラツキになるため、そのタイマ分解能のバラツキがタイマ精度差になる。
【0143】
そこで、S404において、信号処理回路14は、S401の処理で得られたデューティ時間td1をデューティ時間t100d1として認定すると共に、S402の処理で得られたPWM周期tbを、図13(A)に示す100%周期の送信信号SGのPWM周期t100bとして認定する。
【0144】
また、S405において、信号処理回路14は、S401の処理で得られたPWM周期tbが、図13(B)に示す0%周期の送信信号SGのデューティ時間t0d1以下であるかどうかを判定し、PWM周期tbがデューティ時間t0d1以下の場合(S405:Yes)にはS406の処理へ移行し、PWM周期tbがデューティ時間t0d1を超える場合(S405:No)にはS408の処理へ移行する。
【0145】
尚、インプットキャプチャ回路12のタイマ分解能と、アウトプットコンペア回路22のタイマ分解能とのバラツキ(タイマ精度差)により、PWM周期tbの精度にもバラツキが生じるため、PWM周期tbがPWM周期t0b以下になることもある。
そのため、PWM周期tbがPWM周期t0b以下であれば、そのPWM周期tbはPWM周期t0bであるといえる。
【0146】
そこで、S406において、信号処理回路14は、S401の処理で得られたデューティ時間td1をデューティ時間t0d1として認定すると共に、S402の処理で得られたPWM周期tbを、図13(B)に示す0%周期の送信信号SGのPWM周期t0bとして認定する。
【0147】
続いて、信号処理回路14は、S404,S406の処理で認定したデューティ時間t100d1,t0d1およびPWM周期t100b,t0bに基づいて、数式7により周期補正係数kを算出する(S407)。
ここで、数式7の「0.8」は、PWM周期tbの時間から2つの不感帯の時間(=0.2ms)を差し引いた時間である。
尚、S403,S404の処理とS405,S406の処理を実行する順番を入れ替えてもよい。
【0148】
k=0.8/(t100d1×t100b−t0d1×t0b) ………(数式7)
【0149】
S408において、信号処理回路14は、S401の処理で得られたデューティ時間td1と、S402の処理で得られたPWM周期tbと、S407の処理で得られた周期補正係数kとに基づいて、数式8により受信データD1(ms)を算出する。
ここで、数式8の「0.2」は、PWM周期tbの2つの不感帯の時間である。
S408の処理を実行したら、ECU11はインプットキャプチャ割込み処理動作を終了する。
【0150】
D1=k×td1×tb−0.2 ………(数式8)
【0151】
図14に示すS304の処理において、センサユニット21の信号処理回路26は、第1実施形態と同じく(図6参照)、圧力センサ値の10ビットのデータと、温度センサ値の6ビットのデータとを多重化して1データにデータ圧縮した圧縮データを生成する。
【0152】
図16は、図15に示すS408の処理において、ECU11の信号処理回路14が行う動作を説明するための説明図である。
尚、図16では、温度センサ値のデータのビットについては、太枠を用いて図示してある。
【0153】
図16(A)に示すように、信号処理回路14は、図15に示すS401の処理で得られたPWM周期tbの14ビット分のデータに対して、0.5LSB相当である18ビット分のデータを付加して拡張することにより、32ビットのデータを生成する。
ここで、PWM周期tbのデータが14ビットであるのは、ECU11のインプットキャプチャ回路12が14ビット分の送信信号SGまでなら確実に受信可能なことによる。
また、PWM周期tbのデータを32ビットに拡張する理由は、ECU11を構成するマイクロコンピュータが32ビットで動作するためである。
【0154】
そして、図16(B)に示すように、信号処理回路14は、32ビットに拡張したPWM周期tbと、図15に示すS401の処理で得られたデューティ時間td1と、図15に示すS407の処理で得られた周期補正係数kとに基づいて、前記数式8により受信データD1を算出する。
尚、PWM周期tbを32ビットに拡張しているため、受信データD1も32ビットになる。
【0155】
その後、図16(C)(D)に示すように、信号処理回路14は、第1実施形態と同じく(図7(C)(D)参照)、受信データD1を、圧力センサ24の圧力センサ値のデータと、温度センサ25の温度センサ値のデータとに分離する。
【0156】
[第4実施形態の作用・効果]
センサユニット21は、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信に先立って、100%周期および0%周期の送信信号SGを基準パルスとして生成して送信する。
ECU11のインプットキャプチャ回路12は、タイマ回路13が生成したタイマクロックに従い、送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbを計測する。
【0157】
ECU11の信号処理回路14は、インプットキャプチャ回路12が計測した基準パルス(100%周期および0%周期の送信信号SG)のデューティ時間t100d1,t0d1およびPWM周期t100b,t0bに基づいて周期補正係数kを生成し、インプットキャプチャ回路12が計測した送信信号SGのデューティ時間td1およびPWM周期tbと周期補正係数kとに基づいて受信データD1を生成し、その受信データD1を信号処理回路26が多重化する以前のデジタル信号である圧力センサ24のセンサ値と温度センサ25のセンサ値に分離する。
【0158】
つまり、第4実施形態では、信号処理回路26がデータ圧縮したデジタル信号に基づく送信信号SGの送信毎に、送信信号SGのデューティ時間td1を所定時間(=0.1ms)に固定し、その固定値からの変化分を信号処理回路14にて周期補正係数kを用いて補正することにより、センサユニット21とECU11の間のタイマ分解能の補正を行い、送信信号SGの送信毎にPWM周期tbの精度を補償する。
【0159】
ECU11のタイマ回路13とセンサユニット21のタイマ回路23とは、仕様公差内でタイマ分解能にバラツキを持っているが、各タイマ回路13,23の1LSBに相当する時間の比率は、送信信号SGのPWM周期tbだけでなく、デューティ時間td1にも同じ比率で反映される。
そこで、ECU11では、デューティ時間td1を所定時間(=0.1ms)に固定し、PWM周期tbを送信信号SGの受信毎に補正する。
【0160】
これにより、アウトプットコンペア回路22が送信信号SGを生成する元となるタイマ回路23のタイマクロックが設計値から変化しても、ECU11にて正しい送信信号SGのPWM周期tbを取得することができる。
そのため、タイマ回路23のタイマ精度が低くてもよいことから、タイマ回路23を安価な回路にして低コスト化を図ることができる。
そして、ECU11およびセンサユニット21は特別な回路を用いていない。
従って、第4実施形態によれば、高精度な多重化通信を行うことが可能なPWM通信システムを低コストに提供できる。
【0161】
加えて、第4実施形態では、各センサ24,25のセンサ値が小さい場合にはPWM周期tbが短くなるため、より敏感に感知したい部分をセンサ値として小さい値に設定することで、より敏感に感知したいセンサ値の場合には最速で0.2ms毎にPWM通信することが可能になり、鈍感でよいセンサ値の場合は遅くても1ms毎にPWM通信することが可能である。
従って、第4実施形態によれば、第1実施形態よりも高速通信が可能になる。
【0162】
<第5実施形態>
図17は、第5実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャートである。
第5実施形態において、第1実施形態におけるセンサユニット21の動作(図4参照)と異なるのは、S102の処理とS103の処理の間にS105の処理が追加されている点である。
【0163】
S105において、センサユニット21は、S101,S201の処理を繰り返す回数(以下、「ループ回数」と記載する)が設定回数未満かどうかを判定し(S105)、ループ回数が設定回数未満の場合(S105:Yes)にはS101,S201の処理を繰り返し実行し、ループ回数が設定回数になった場合(S105:No)にはS103の処理へ移行する。
S103において、センサユニット21は、圧力センサ24および温度センサ25のセンサ値が両方共に確定するまで待ってからS104の処理へ移行する。
【0164】
第5実施形態によれば、ループ回数の設定回数を実験的に求めた最適値に設定することにより、センサユニット21が送信した100%デューティおよび0%デューティの送信信号SG(基準パルス)を、ECU11が確実に受信することが可能になる。
【0165】
<第6実施形態>
図18は、第6実施形態におけるセンサユニット21の動作を説明するためのフローチャートである。
第6実施形態において、第1実施形態におけるセンサユニット21の動作(図4参照)と異なるのは、S102の処理とS103の処理の間にS106の処理が追加されている点である。
【0166】
S106において、センサユニット21は、S101,S201の処理を繰り返す時間(以下、「ループ時間」と記載する)が設定時間未満かどうかを判定し(S105)、ループ時間が設定時間未満の場合(S105:Yes)にはS101,S201の処理を繰り返し実行し、ループ時間が設定時間になった場合(S105:No)にはS103の処理へ移行する。
S103において、センサユニット21は、圧力センサ24および温度センサ25のセンサ値が両方共に確定するまで待ってからS104の処理へ移行する。
【0167】
第6実施形態によれば、ループ時間の設定時間を実験的に求めた最適値に設定することにより、センサユニット21が送信した100%デューティおよび0%デューティの送信信号SG(基準パルス)を、ECU11が確実に受信することが可能になる。
【0168】
<別の実施形態>
本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、前記各実施形態と同等もしくはそれ以上の作用・効果を得ることができる。
【0169】
[1]第1実施形態(図2参照),第2実施形態(図9参照),第3実施形態(図11参照)では、送信信号SGのPWM周期tbを1msの固定値にしているが、各センサ24,25,103,104の特性およびセンサ値に応じて、1ms以外の適宜な所定周期を固定値として設定してもよい。
【0170】
[2]第4実施形態(図12参照)では、送信信号SGのデューティ時間td1を0.1msの固定値にしているが、各センサ24,25の特性およびセンサ値に応じて、0.1ms以外の適宜な所定時間を固定値として設定してもよい。
また、第4実施形態では、送信信号SGが100%周期の場合のPWM周期t100bを1msに設定しているが、各センサ24,25のセンサ値に応じて、1ms以外の適宜な周期に設定してもよい。
【0171】
[3]第1実施形態および第4実施形態(図6参照)では、圧力センサ24の圧力センサ値を10ビットのデータにすると共に、温度センサ25の温度センサ値を6ビットのデータにしている。
しかし、各センサ24,25のセンサ値のビット数はそれぞれ、各センサ24,25の特性およびセンサ値に応じて、適宜なビット数に設定してもよい。
また、第1実施形態および第4実施形態において、3個以上のセンサを設け、その3個以上のセンサのセンサ値のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮してもよい。
【0172】
[4]第2実施形態(図9参照)および第3実施形態(図11参照)では、送信信号SGの信号レベルを2段階の階段状に時間変位させている。
しかし、送信信号SGの信号レベルを3段階以上の階段状に時間変位させてもよく、その場合には、段階の数に応じたデューティ時間を1つの送信信号SGに重畳できる。
【0173】
[5]第2実施形態(図8参照)および第3実施形態(図10参照)では、ECU101における1個のインプットキャプチャ回路12が、td1用とtd2用の2個の入力ポートを備えている。
しかし、td1用とtd2用の2個のインプットキャプチャ回路をECU101に設け、個々のインプットキャプチャ回路に1個ずつの入力ポートを備えるようにしてもよい。
【0174】
[6]第1実施形態(図4参照)では、センサユニット21が、電源投入時に100%デューティおよび0%デューティの送信信号SGを基準パルスとして生成して送信している。
また、第4実施形態(図14参照)では、センサユニット21が、電源投入時に100%周期および0%周期の送信信号SGを基準パルスとして生成して送信している。
しかし、センサユニット21が基準パルスを送信するのは、電源投入時に限らず、各センサ24,25のセンサ値に対応した送信信号SGの送信に先立つならば、基準パルスを送信するタイミングは適宜設定すればよい。
【0175】
[7]前記各実施形態において、センサユニット21,102,201が送信するPWM信号である送信信号SGは、電圧値が変化する電圧信号である。
しかし、PWM信号である送信信号SGを、電流値が変化する電流信号にすることにより、センサユニット21,102,201とECU11,101との間の通信を電流通信にしてもよい。
【0176】
その場合には、送信信号SGを送信するためのデジタル信号線のワイヤハーネスW2を、電力線であるプラス側電源線のワイヤハーネスW1と共用すれば、更なる信号線削減を実現できる。
【0177】
[8]前記各実施形態を適宜組み合わせて実施してもよく、その場合には組み合わせた実施形態の作用・効果を合わせもたせたり、相乗効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0178】
10,100,200,300…PWM通信システム
11,101…ECU(受信装置)
12…インプットキャプチャ(IPC)回路(計測回路)
13…タイマ回路(受信側タイマ回路)
14…信号処理回路(受信側信号処理回路)
21,102,201…センサユニット(送信装置)
22…アウトプットコンペア(OC)回路(送信回路)
23…タイマ回路(送信側タイマ回路)
24…圧力センサ
25…温度センサ
26…信号処理回路(送信側信号処理回路)
103,104…センサ
W3…ワイヤハーネス(信号線)
SG…送信信号
td1,td2…デューティ時間
tb…PWM周期
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を送信する送信装置と、
前記送信信号を伝送する信号線と、
前記信号線を介して伝送されてくる前記送信信号を受信する受信装置と
を備えたPWM通信システムにおいて、
前記送信装置は、
複数のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する送信側信号処理回路と、
送信側タイマクロックを生成する送信側タイマ回路と、
前記送信側タイマ回路が生成した送信側タイマクロックに従い、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づいて、前記送信信号を生成して送信する送信回路と
を備え、
前記送信信号は、PWM周期が所定周期に固定されると共に、デューティ時間が可変値のPWM信号であることと、
前記送信装置は、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づく前記送信信号の送信に先立って、100%デューティおよび0%デューティの前記送信信号を基準パルスとして生成して送信することを特徴とし、
前記受信装置は、
受信側タイマクロックを生成する受信側タイマ回路と、
前記受信側タイマ回路が生成した受信側タイマクロックに従い、前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期を計測する計測回路と、
前記計測回路が計測した前記基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいてデューティ補正係数を生成し、前記計測回路が計測した前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期と前記デューティ補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを前記送信側信号処理回路が多重化する以前の前記複数のデジタル信号に分離する受信側信号処理回路と
を備えたことを特徴とするPWM通信システム。
【請求項2】
送信信号を送信する送信装置と、
前記送信信号を伝送する信号線と、
前記信号線を介して伝送されてくる前記送信信号を受信する受信装置と
を備えたPWM通信システムにおいて、
前記送信装置は、
複数のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する送信側信号処理回路と、
送信側タイマクロックを生成する送信側タイマ回路と、
前記送信側タイマ回路が生成した送信側タイマクロックに従い、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づいて、前記送信信号を生成して送信する送信回路と
を備え、
前記送信信号は、デューティ時間が所定時間に固定されると共に、PWM周期が可変値のPWM信号であることと、
前記送信装置は、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づく前記送信信号の送信に先立って、100%周期および0%周期の前記送信信号を基準パルスとして生成して送信することを特徴とし、
前記受信装置は、
受信側タイマクロックを生成する受信側タイマ回路と、
前記受信側タイマ回路が生成した受信側タイマクロックに従い、前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期を計測する計測回路と、
前記計測回路が計測した前記基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいて周期補正係数を生成し、前記計測回路が計測した前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期と前記周期補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを前記送信側信号処理回路が多重化する以前の前記複数のデジタル信号に分離する受信側信号処理回路と
を備えたことを特徴とするPWM通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信側信号処理回路は、前記複数のデジタル信号の最下位ビット側の各ビットを、データ圧縮して生成した圧縮データの最下位ビット側に集めて配置することを特徴とするPWM通信システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信側信号処理回路は、前記複数のデジタル信号のうち、データ圧縮して生成した圧縮データの最下位ビットに該当するデジタル信号に対してディザを追加した上で、前記複数のデジタル信号を多重化し、
前記受信側信号処理回路は、分離した前記複数のデジタル信号のうち、前記ディザが追加されているデジタル信号に対して、デジタルフィルタによるローパスフィルタをかけることにより、当該デジタル信号の下位ビットを確定することを特徴とするPWM通信システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信信号の信号レベルを階段状に時間変位させ、その信号レベルの階段状の時間変位に前記デューティ時間またはPWM周期を対応させることにより、複数の前記デューティ時間またはPWM周期を1つの前記送信信号に重畳させることを特徴とするPWM通信システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信信号は電流信号であり、前記送信装置と前記受信装置は電流通信を行うことを特徴とするPWM通信システム。
【請求項1】
送信信号を送信する送信装置と、
前記送信信号を伝送する信号線と、
前記信号線を介して伝送されてくる前記送信信号を受信する受信装置と
を備えたPWM通信システムにおいて、
前記送信装置は、
複数のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する送信側信号処理回路と、
送信側タイマクロックを生成する送信側タイマ回路と、
前記送信側タイマ回路が生成した送信側タイマクロックに従い、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づいて、前記送信信号を生成して送信する送信回路と
を備え、
前記送信信号は、PWM周期が所定周期に固定されると共に、デューティ時間が可変値のPWM信号であることと、
前記送信装置は、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づく前記送信信号の送信に先立って、100%デューティおよび0%デューティの前記送信信号を基準パルスとして生成して送信することを特徴とし、
前記受信装置は、
受信側タイマクロックを生成する受信側タイマ回路と、
前記受信側タイマ回路が生成した受信側タイマクロックに従い、前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期を計測する計測回路と、
前記計測回路が計測した前記基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいてデューティ補正係数を生成し、前記計測回路が計測した前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期と前記デューティ補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを前記送信側信号処理回路が多重化する以前の前記複数のデジタル信号に分離する受信側信号処理回路と
を備えたことを特徴とするPWM通信システム。
【請求項2】
送信信号を送信する送信装置と、
前記送信信号を伝送する信号線と、
前記信号線を介して伝送されてくる前記送信信号を受信する受信装置と
を備えたPWM通信システムにおいて、
前記送信装置は、
複数のデジタル信号を多重化して1データにデータ圧縮したデジタル信号を生成する送信側信号処理回路と、
送信側タイマクロックを生成する送信側タイマ回路と、
前記送信側タイマ回路が生成した送信側タイマクロックに従い、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づいて、前記送信信号を生成して送信する送信回路と
を備え、
前記送信信号は、デューティ時間が所定時間に固定されると共に、PWM周期が可変値のPWM信号であることと、
前記送信装置は、前記送信側信号処理回路がデータ圧縮した前記デジタル信号に基づく前記送信信号の送信に先立って、100%周期および0%周期の前記送信信号を基準パルスとして生成して送信することを特徴とし、
前記受信装置は、
受信側タイマクロックを生成する受信側タイマ回路と、
前記受信側タイマ回路が生成した受信側タイマクロックに従い、前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期を計測する計測回路と、
前記計測回路が計測した前記基準パルスのデューティ時間およびPWM周期に基づいて周期補正係数を生成し、前記計測回路が計測した前記送信信号のデューティ時間およびPWM周期と前記周期補正係数とに基づいて受信データを生成し、その受信データを前記送信側信号処理回路が多重化する以前の前記複数のデジタル信号に分離する受信側信号処理回路と
を備えたことを特徴とするPWM通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信側信号処理回路は、前記複数のデジタル信号の最下位ビット側の各ビットを、データ圧縮して生成した圧縮データの最下位ビット側に集めて配置することを特徴とするPWM通信システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信側信号処理回路は、前記複数のデジタル信号のうち、データ圧縮して生成した圧縮データの最下位ビットに該当するデジタル信号に対してディザを追加した上で、前記複数のデジタル信号を多重化し、
前記受信側信号処理回路は、分離した前記複数のデジタル信号のうち、前記ディザが追加されているデジタル信号に対して、デジタルフィルタによるローパスフィルタをかけることにより、当該デジタル信号の下位ビットを確定することを特徴とするPWM通信システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信信号の信号レベルを階段状に時間変位させ、その信号レベルの階段状の時間変位に前記デューティ時間またはPWM周期を対応させることにより、複数の前記デューティ時間またはPWM周期を1つの前記送信信号に重畳させることを特徴とするPWM通信システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のPWM通信システムにおいて、
前記送信信号は電流信号であり、前記送信装置と前記受信装置は電流通信を行うことを特徴とするPWM通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−4815(P2012−4815A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137495(P2010−137495)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]