Pt−Al−Hf/Zrコーティング及びコーティング方法
【解決手段】 TBCのボンドコートとして用いられることができ、高温使用温度でTBC破砕寿命を向上させるPt-Al-Hf/Zrアルミナイドコーティングを提供する。アルミナイドコーティングは、三元以上の準安定X-Pt/Pd-Ni相を含むことができ、合金系中の相及び他の元素はコーティングのNiAlβ相に存在する。準安定相は、成膜された状態のボンドコーティング、例えば、CVD蒸着された状態のボンドコーティングの中に存在し、観察されることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月20日に出願された米国仮出願第61/216,649号の利益と優先権を享受し、その開示全体は引用を以って本明細書に組み込まれる。
【0002】
<発明の分野>
本発明は、ガスタービンエンジン翼及び部品に対するPt-Al-Hf/Zrアルミナイドコーティング、及び合金の表面領域へ合金化元素を導入する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
<発明の背景>
タービンエンジン性能の向上は、タービン合金、冷却スキーム、及びコーティングの改良を通じて成し遂げられてきた。コーティングの最大の改良は、冷却されたタービン部品に熱遮へいコーティング(Thermal Barrier Coating;TBC)を施すことによってなされた。タービン翼の場合、最も効果的なTBCは、電子ビーム物理気相成長法(Physical Vapor Deposition;PVD)によって施される。従来の技術として、NiCoCrAlY、アルミナイド及び白金−アルミナイドのボンドコートがある。これらボンドコートに対する進化的な改良は、表面仕上げを改良するための最適な処理、又はS(硫黄)等の混入による重大な影響を低減するための清浄化処理を行うことで実現されてきた。しかしながら、タービンの設計者達の予測寿命は、高温のタービン温度における部品の設計寿命に適合しないか、又は既存の温度におけるTBC寿命に信頼性がないため、TBCを十分に利用していない。そのため、信頼性がより多く、より長寿命のTBCに対する必要性が存在する。
【0004】
合金にHfを添加することは比較的容易であり、高Hf合金(鋳造性を改良するためにHfを多く含有する単結晶合金(SXL)仕様又は方向性凝固(DS)合金よりもHfの含有量が多い)を、現在の外向き型(outward type)Pt-Alアルミナイドボンドコートでコートしたとき、TBC破砕寿命に有意の影響がみられる。SXL合金は、3倍〜5倍寿命が延びること、DSMarM247は、基準のSXLのTBC寿命に対して、寿命が10倍延びることが報告されている。SXLの場合、Hfを多く添加すると、SXL合金の微細組織と機械的特性に対して消極的影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
<発明の要旨>
本発明は、Pt-Al-Xアルミナイドコーティング(Xは、Hf及び/又はZrである)を提供するもので、TBCの下に用いられることができ、高温でのTBC破砕寿命を向上させる。本発明の一実施例において、Pt-Al-Xアルミナイドコーティングは、準安定(遷移)X-Pt/Pd-Ni相を含み、XはHf 及び/又はZrであり、Pt/PdはPt又はPd又はその両方が相に存在することを意味し、Niは、コーティングのβ(Ni,Pt)Alの外側相に単独で、又は他の合金化元素と共に存在する。簡潔化のために、三元又は四元以上のX-Pt/Pd-Ni相を、"μ相"と称する。準安定μ相は、コーティング発達の初期形成段階に存在することが観察されることができる。μ相は、成膜された状態のコーティング、例えば、用いられるパラメータに応じてCVD蒸着された状態のコーティングの中に観察されることができる。
【0006】
本発明の例示的実施例において、Pt-Al-Hfアルミナイドボンドコーティングは、Hf2Pt3NiXμ相の一方の側から他方の側にわたるコーティング厚さ領域に約18原子%濃度のPtを含む。ボンドコートは、Hf2Pt3NiXμ相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域でのAl濃度は、約31〜約40原子%であり、幾つかの実施例では約35%〜約40原子%である。ボンドコートは、Hf2Pt3NiXμ相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域でのHf濃度は、約0.25〜1.0原子%である。ボンドコートの全体厚さは、約25〜約40ミクロンであり、典型的には、約30〜約40ミクロンである。
【0007】
本発明は、Pt-Al-Xボンドコートを提供するものであり、Xは、Hf及び/又はZrであり、TBCの下に用いられることができ、高温使用中でのTBC破砕寿命を向上させることができる。本発明の一実施例において、Pt-Al-Xアルミナイドボンドコートは、外側コーティング面を含み、Pt含有量は約2〜約16原子%(幾つかの実施例では約10〜約16原子%)であり、Al含有量は約31〜約40原子%(幾つかの実施例では約35〜約40原子%)であり、コーティングの全体厚さは約25〜約45ミクロン、典型的には約30〜約40ミクロンであって、コーティングの全体厚さには拡散ゾーンと外側追加領域を含む。この実施例は、コーティングが、所定時間/温度のアルミナイジングが施されるか、又はその後の熱曝露により準安定相が分解する場合、コーティング微細組織内に上述したμ相を有さなくてもよい。
【0008】
本発明は、中間元素(例えば、Pt及び/又はPd)を、他の合金化元素(例えばHf 及び/又はZr)に対する溶解性が低い合金基材の表面領域上又は表面領域内に導入した後、前記中間元素及び前記他の元素が富化された表面領域を基材に形成できる成膜条件下で、前記他の合金化元素を中間元素(例えばPt及び/又はPd) 内に導入することと、を含む方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1(a)】図1(a)は、Pd-Hf相図である。
【図1(b)】図1(b)は、Pt-Zr相図である。
【図2】図2は、Hf-Pt系の部分的相図情報である。
【図3(a)】図3(a)は、PtめっきされたNi系超合金にCVDで形成されたHfのSEM後方散乱画像である。
【図3(b)】図3(b)は、PtめっきされたNi系超合金にCVDで形成されたHfの組成プロファイルを示している。
【図4(a)】図4(a)は、PtめっきされたNi系超合金にCVDで形成されたHf及びAlのSEM後方散乱画像と、コートされた表面領域の対応する組成プロファイルである。
【図4(b)】図4(b)は、CVDで形成されたHf及びPtについて、HfとPtの比率が20%:30%のみの組成プロファイルを示す。
【図5】図5は、実験3において、Ptめっきされた試料にμ相が形成された試料とPtめっきなしでμ相が形成されている試料の結果を示す。
【図6】図6は、実験3よりもAlCl3を多く含有する実験4の試料のSEM画像である。
【図7】図7は、実験3及び4の試料について、2050°Fで2時間真空熱処理される前と後の実験3と実験4のSEM画像を含んでいる。
【図8】図8は、実験5の試料のSEM画像で、μ相が存在していないことを示している。
【図9】図9は、実験3において、(Ni,Pt)Alβ相に実質的なHfを有する試料のスポット解析を示す。
【図10】図10は、基準とする商業用の外向き型Pt-Alコーティング(MDC-150L)と実験6の変形例についてWellbullプロットしたものである。
【図11】図11は、方法の実施例に基づいて作製されたボンドコートを有するTBC試料について繰り返し酸化試験(1135℃にて)を行ったときの破砕寿命を示す棒グラフであり、試料に電気めっきされたPt層の表面量を変えたもので、試料は、ボンドコートのアルミナイジング及びハフナイジングの前のPt層が、無し、2mg/cm2、4mg/cm2、6mg/cm2、及び8mg/cm2である。これら試料は、ボンドコーティングのアルミナイジング及びハフナイジング前に電気めっきされたPt層が10mg/cm2の同じ試料と比較した。 これら試料は、TBCコートされたMDC-150Lの基準試料と比較した。基準試料は、アルミナイジングを標準の処理時間で行い、Pt層が10mg/cm2であり、商業的に製造されるコーディングの代表例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示を目的として、Pt-Al-Xコーティング(Xは、Hf及び/又はZr)について、化学蒸着(Chemical vapor deposition;CVD)によるアルミナイド拡散コーティングにおける従来のCVDコーティングパラメータ(米国特許第5,788,823号)を変更又は修正し、外向きに成長した(outwardly grown)アルミナイド拡散コートが形成されることを以下に説明する。第1及び第2の変更は、相互に関係があり、肉厚が薄く、Al含有量が少ないアルミナイドボンドコーティングを作製することを含む。例えば、コーティングの厚さは、約30〜約40ミクロンとすることができ、コーティングの厚さには、コーティング変質ゾーン、拡散ゾーン及び追加領域を含む。Al含有量が少ないNiAlでは、Niは、Alよりも約3〜5倍速く拡散する。これは、外向き型タイプのアルミナイジングプロセスの基礎となる。この現象は、コーティングプロセスが完了した後の温度で、更なる時間継続する。どちらの場合も、Niの外向き拡散量が多くなると、NiAlを膨張させ、拡散に関連して歪みを発生する。この歪みは、多くのアルミナイドコーティング上で観察されるランプリング現象に寄与する(ランプリングに寄与する最も大きな歪みは、γ/γ'合金とβNiAlとの間の熱膨張係数の不一致から生じる。しかし、膨張現象も、ランプリングに寄与する)。Al含有量が多くなるほど、基材がAl含有量の定常状態である30〜32原子%に達するのに、より多くのNiが必要となり、NiAlの膨張は大きくなる。薄肉で低Alのボンドコーティングは、コーティングを形成する間及び高温に曝露されている間、合金からのNi拡散は少なくてすむ。本発明では薄肉で低Alのコーティングで開始するので、コーティング系は、30〜32%Al濃度(ガンマプライム(γ')を有する定常状態のAl含有量)に達することができ、Niの移動が少なく、TBCの早期破砕に至るランプリング現象に寄与する歪みが少ない。
【0011】
本発明のボンドコーティングの第3の変更は、表面のPt含有量を多くしたことである。また、表面のPt含有量は、コーティング時間によって変えることができる。Ptは、米国特許第5,788,823号に記載されているアルミナイジングを行う前に、合金基材表面にめっきされる。Ptは、Ni-Al系のγ,γ'及びβ相のNiと置換される。商業的製品であるMDC-150LコーティングにおけるPtの拡散は、ベル形状であり、Ptの拡散の約1/2はNiとコーティングの添加層を形成し、約1/2は、拡散ゾーンから合金の中に拡散する。
【0012】
Ptめっきが10mg/cm2のとき、商業的製品のコーティング時間では、外表面のPt含有量が4〜8原子%のコーティングを形成する。本発明は薄肉のコーティングであるので、短時間(例えば、540分以下)のコーティングにより、ボンドコーティングの外表面でのPt含有量は多くなる。TBC破砕が最良の結果(例えば、TBC破砕寿命の増大)を得るには、本発明のボンドコーティングの外表面でのPt含有量は、約10〜約16原子%であり、これは、基材からのNi拡散によって希釈されるので、Ptに対するコーティング時間が短い(例えば、210分以下のコーティング時間)ことによる。さらに、所望により、CVDアルミナイジングの前に、基材により多くの量のPtをめっきすることにより、外表面におけるPt含有量を多くすることができる。
【0013】
最後に、Hf(及び/又はZr)とAlとを同時蒸着、又は逐次蒸着を施すことにより、Hf(及び/又はZr)がβ(Ni,Pt)Alの外側コーティング相の中に取り込まれることができる。HfがTBC破砕寿命に及ぼす効果に加えて、反応性元素(Hf,Y,La,Ce,Er)がNi系材料の酸化に及ぼす有効な効果について様々な説明が報告されている。しかし、β(Ni,Pt)Al相に有意量の添加を行うことは、CVD、アバブザパック(Above the Pack)又はパックコーティング環境において実現することが難しい。それ故、この発明の実施例は、改変されたCVDプロセスとして、Hf2Pt3NiX準安定(遷移) μ相の生成により、β(Ni,Pt)Alの外側コーティング相内へ実質的なHf(及び/又はZr)の取込みを実現するものである。この場合において、NiXは、ニッケルと合金系において可能な他の元素との組合せであって、β(Ni,Pt)Al相において存在する三元、四元、又は、更なる多元合金が提供される。例えば、NiXについて、Niだけのとき、xは5であり、準安定相(metastable phase)が合金系のβ(Ni,Pt)Alコーティング相内に他の合金化元素を含むときは、xは5未満である(例えば、Ni5-Xで、xは、相の中に存在する他の合金化元素(原子%)である)。Ptめっきの代わりにPdめっきが行われるとき、他の実施例では、改変されたCVDプロセスを提供し、HfPdNixの準安定な三元以上のμ相を生成することにより、β(Ni,Pd)Alコーティング相の中へ、実質的なHf(及び/又はZr)の取込みを実現するものである。ここで、Niだけのとき、xは4であり、3元以上の相が、β(Ni,Pd)Alコーティング相の中に他の合金化元素を含むとき、xは4未満である(例えば、Ni4-yで、yは相の中に存在する他の合金化元素(原子%)である)。
【0014】
本発明のPt-Al-Xのボンドコートの一実施例が特徴とするのは、ボンドコートが外側コーティング面を含み、該コーティング面は、Pt含有量が約2〜約16原子%、好ましくは、約10〜16原子%であり、Al含有量が、約31〜40原子%、好ましくは35〜40原子%であり、コーティングの全体厚さが、約25〜約45ミクロン、典型的には、約30〜約40ミクロンであって、コーティング変質ゾーン、拡散ゾーン及び追加のβ(Ni,Pt)Al領域を含むことである。この実施例では、コーティングが、その後に、長時間のアルミナイジングサイクル(例えば、120分より長時間)を受ける場合、又はアルミナイジング後の熱曝露により準安定相が分解する場合、コーティングの微細組織中に上記したμ相が存在しなくてもよい。
【0015】
本発明のPt-Al-Xボンドコートの他の実施例が特徴とするのは、ボンドコートが、CVDアルミナイジング/ハフナイジングを行う前に、Ptめっき位置と考えられるコーティングの中間領域(形成されたコーティング厚さ中央の40%〜60%の範囲)の中にμ相を含むという点である。Ptの存在は、CVDコーティングガス環境からのHf/Zrの取込みと、固溶体内でHf及び/又はZrを有意なレベルに保持するためのβ(Ni,Pt)Al相の能力において重要である。本発明のボンドコートは、TBC破砕寿命が商業的製品であるMDC-150Lコーティング(米国特許第5,788,823号参照)よりも、2倍以上、潜在的には3倍以上長くすることができる。この発明は、例えば、商業的製品であるMDC-150Lコーティング(米国特許第6,793,966号、気体入口予熱器52を有しない)と同様の基本的処理装置を用いて実施されることができるが、これに限定されるものではない。本発明の方法の実施例は、Alの前にHfを成膜し、Al蒸着前にPtリッチ表面にHfを充填するものであるが、この実施例を実施することによりHf成膜の均一性を改良し、他のコーティングガス分配管の使用が可能になる。さらに、本発明の他の方法の実施例において、CVDによるHfコーティングガス発生器を使用することと、コート温度をアバブザパックのアクチベータ反応温度以下に設定することで、Pt-リッチ面にHfを充填することと、次にコート温度をアクチベータ反応温度より高い温度に昇温させてアルミナイジングを開始する、ことを含んでいる。
【0016】
一連の相図(phase diagram)を調べることは、この発明の概念の洞察を提供する。図1(a)及び図1(b)は、Pd-Hf及びPt-Zr二元合金系の公開された相図を示している[参照;Binary Alloy Phase Diagram 2nd Edition, ASM International, 1990]。図2は、Pt-Hf二元合金系の公開された情報を示している。元素周期表の配置における夫々の縦列では、PdはPtの上にあり、ZrはHfの上にあり、それら夫々の元素対は類似の特性を有している。図1(a)は、1080℃で、Pdが、固溶体の中にHfを20原子%より多く含むことができることを示している。同様に、図1(b)は、Ptが、固溶体の中に、Zrを20原子%より多く含むことができることを示している。Pt-Hfに関する限定データは、Ptが、HfPt4相が存在する固溶体内に、10原子%まで存在できることを示唆している。図1の相図は、HfPd4又はHfZr4相を示していない。従って、Ptの中でHfの固溶体最大溶解性に関しては、相安定性情報の間で完全な一致は得られていない。それにも関わらず、このデータは、ボンドコートの形成とTBCの作製において、ボンドコート表面のHf/Zrのドーピングを提供するのに十分な量よりも多い10原子%以上の固溶体溶解性があることを示唆している。Hfを、(Ni,Pt)Alボンドコート内で、0.05%〜1%までドーピングすることは、TBC破砕寿命を改良するには、十分であり得る。
【0017】
本発明は、Pt内における高いHf/Zr溶解性を利用して、合金表面(基材)に、Hf/Zrを充填するものである。Ni系合金基材にPtめっきすることにより、基材表面はPtが非常にリッチとなり、Hf/Zrが高いドーパント濃度で、Ptリッチ表面に取り込まれることが可能となる。この点を立証するために、実施した化学蒸着実験では、HfCl4コーティングガスのみを用いた。
【0018】
この実験では、10mg/cm2 のPt(米国特許第5,788,823号)を、商業的に入手可能な単結晶のNi系超合金(CMSX-4(登録商標))の直径1インチ×厚さ0.125インチの試験片の表面に施した。試験片は、CVDリアクタ(米国特許第6,793,966号でガス入口予熱器52なしのものと同様である)内に吊した。CVDリアクタは、200トール(torr)で、H2/12.7体積%、残Arの気体混合物の下で、1080℃まで昇温した。昇温する間、PtめっきとNi超合金が相互拡散を開始する。リアクタが、一旦、1080℃に達すると、HClガスが、Hf発生器に供給され、コーティングレトルト内で、H2/12.6体積%、Ar/0.14体積%、残HfCl4のコーティングガス混合物が生成される(米国特許第6,291,014号、第6,793,966号、及び第6,689,422号)。コーティングサイクル中でのHf蒸着部のコーティングサイクルは、25分間一定に保持した。次に、レトルトを冷却し、試料を取り出して試験を行った。
【0019】
図3(a)は、走査型電子顕微鏡の後方散乱画像を示しており、図3(b)は、得られたコーティングの組成プロファイルを示している。高原子番号のリッチ層が形成されていることは、近傍表面の明るが強いことから、明白である。図3(b)の組成プロファイルを参照すると、表面はHfが富化されており、どのアルミナイジングプロセスの前にも、Hf2Pt3Nixμ相が存在することを裏付けている。この場合において、NiXは、ニッケルと、可能な他の基質元素である。この場合において、μ相にある他の基質元素は、Co, Ta, Cr, 及びAlである。それらが全て含まれるとき、それらは、相の約6.5原子%を占める。
【0020】
第2の実験は、上記と同じプロセスを用いて実施したが、そのプロセスと異なる点は、Hfだけの部分を45分に延ばしたこと、HfCl4を0.16体積%に増加したこと、Arを15.0体積%に増加したこと、また45分後にAlCl3部分を加えたことである。210分の全コーティングサイクルのうち165分以上の間、HfCl4とAlCl3のガス混合物を流した。コーティングガス混合物は、H2/13.6体積%、Ar/0.15体積%、0.8体積%AlCl3、残HfCl4を含む。図4(a)及び4(b)は、このプロセスで作製されたコーティングと、Hf及びPtの組成プロファイルとを示している。外向き型拡散アルミナイドプロセスで追加層が更に形成されると、β(Ni,Pt)Alコーティング相がμ相上に形成される。NiとPtは、μ相を通じて移動することができ、AlCl3と反応してβ相が形成される。また、μ相は形状を変化させる。図3(a)におけるμ相(Niめっき部に隣接する)の不規則な外表面は、図4(a)では滑らかである。図3(a)における滑らかな内表面は、図4(a)では不規則である。図3(a)の連続したμ相は、図4(a)では、ギャップを有している。これらの変化は、Ni, Pt, 及びHfが、図3(a)のμ相から拡散していることを示唆している。外表面は分解し、追加層が形成されると滑らかになる。内表面は、拡散ゾーンに向けて不均一な形状で成長する。もし、局所化学的条件が正しければ、μ相は分解して、ギャップを形成する。
【0021】
実験3及び4は、実験2と同じプロセスで実施したが、そのプロセスと異なる点は、レトルトが一旦1080℃に達すると、Hf及びAlコーティングガスが同時に活性化されることと、コーティングガスが、実験3では、H2/12.6体積%、Ar/0.2体積%、A1C13/0.14体積%、残HfCl4に変更され、実験4では、H2/12.6体積%、Ar/0.4体積%、A1C13/0.14体積%、残HfCl4に変更されていることである。全コーティング時間は、両実験とも210分のままである。このプロセスにおける表面でのPtめっき重要性を理解するために、Ptめっきされた試験片に加え、Ptめっきされていない試験片も実験4に加えた。図5及び6は、これらのプロセスで作製されたコーティングを示している。Ptめっきされたサンプルは、実験2と同様な特性を有するが、Ptめっきされていないサンプルではμ相が存在しない。
【0022】
コーティングガスのAlCl3含有量が増加するにつれて、μ相の減少が観察されるという一般的な傾向に注目される。実験2において、初めはHfだけが用いられており、μ相が微細組織中に直ちに観察される。実験3及び4では、Alの含有量が増加するにつれて、AlはHfと拮抗するので、Ptで改質された表面と反応し、μ相の減少が観察される。
【0023】
実験3と4の残り試料は、2050°Fの真空中で2時間熱処理される。図7は、この熱処理によって、初期μ相がどのように変化するかを示しており、μ相は準安定であり、この温度では時間とともに分解していくことを示している。実験3の明るいμ相は消滅し、熱処理後は、μ相の量が少ないゴーストイメージとなる。実験4のμ相が最も少ない試料は完全に分解される。
【0024】
μ相の準安定性を示すための第5の実験は、実験4と同様のパラメータを用いて行なったが、実験4のパラメータと異なる点は、AlCl3が、0.8体積%に増加し、コーティング時間を420分に長くしたことである。図8に示されるように、コーティングガスは、AlCl3含有量が多くなる程、またコーティング時間が長くなる程、μ相の量は、区別できない程度にまで減少する。
【0025】
本発明の目的は、Hf(及び/又はZr)を(Ni,Pt)-Alボンドコートへ添加する方法を提供することである。特に、ボンドコートの追加層をHfリッチにすることにより、熱成長酸化物を形成し、該酸化物に熱遮へいコーティングが固定される。三元Ni-Al-Hf系の作用は、Ni-Alβ相内でのHfに対する溶解性が非常に低いことを示唆している。しかしながら、Ni超合金上に形成されるコーティングは、超合金中の他の元素とともに生成し、わずかな溶解性の変更を許容する。さらに、Al含有量が少ないβ-NiAlは、欠陥の多い結晶組織で他の元素の高い溶解性を許容する。図9は、実験3で作製された試料のスポット分析結果を示している。スポットは、3つのグループに分けられる。外側スポットはμ相より上のβ(Ni,Pt)Alコーティング領域にあり、内側スポットはμ相より下のβ(Ni,Pt)Alコーティング領域にある。内側及び外側のβ(Ni,Pt)Alコーティング領域のHf含有量は、約0.5〜約1.0原子%の範囲である。
【0026】
上記の通り、Ptリッチ表面にμ相を介してHfを含有させる能力を有するので、本発明の最大の利点は、TBCの破砕寿命を長くできることである。これを示すために、基準のコーティングプロセス(MDC-150L)と実験6の3バージョンにおいて、ボンドコートされた破砕試験の試験片を156個作製した。実験6の3バージョンは、コーティングガス時間以外は、実験5と同じコーティングサイクルパラメータを用いた。実験6Aでは120分間、実験6Bでは210分間、及び実験6Cでは実験5と同じ420分間で行なった。PtめっきのHf充填に対する重要性を示すために、実験6A、6B及び6Cの4つの試験片にはPtめっきが施されていない。テストでのTBC成膜プロセスからの偏りを最小にするために、一連の試験では、4つの全てのボンドコートプロセスの試験片にTBCコーティングサイクルの各サイクルを実施し、試験片にTBCコーティングを施した。イットリア安定化ジルコニアを含むTBC(熱遮へいコーティング)には、米国特許第5,716,720号に記載されたプロセスを用いた。
【0027】
後述する表3は、6つの実験に用いた実験プロセスパラメータの概要を示している。
【0028】
サイクル試験は、リンドバーグ製の垂直型チューブ炉の中で行い、試料を炉内のサンプルツリーに吊して所定時間曝露した後、次に試料を取り上げて室温近傍温度まで冷却した。試験サイクルは、炉内で50分、冷却10分である。試験温度は、2075°Fである。各試験装置は、試験の実施中、自動制御を行なった。試験の開始前及び炉の運転中、炉内は2075°F±10°Fに維持した。
【0029】
各試験は20サイクル行ない、カウンタを更なる20サイクルを再設定する前に冷却した。4時間保持する間、試料の破損の有無を検査した。100サイクル後、試料を試験装置から取り外し、4時間保持した後、破損の有無を検査した。何れの場合も、試験片の表面の20パーセントがTBC破砕するときを破損と定義する。
【0030】
上述の説明では、4台の試験装置を用いている。各試料ツリーは40個の試験片を保持することができる。一度に40個の試験片をテストすることができるので、破損した試験片を試験から取り除いたとき、追加の試験片を加えた。
【0031】
図10には、4つのボンドコートのTBC破砕試験の結果が示されている。このグラフは、ワイブルプロット(Weibull plot)であり、y軸は、次の式に基づく累積破損%である。
破損= (R-0.3)/(N+0.4)* 100
R = 破損ランク (1, 2, 3, 4, ... )
N =破損の総数
X軸は、破損の対応するランクに対する破損時の破砕サイクル数である。
【0032】
各データ群は、累積破損%が63.2%での特性寿命と、データ群の傾きである形状パラメータとを有している。TBC破砕寿命に対しては、特性寿命が延びること及び/又は傾きが大きくなることは望ましい特性である。
【0033】
図10及び後掲の表2は、実験6の3種類の全てが、商業製品MDC-150Lの基準(901サイクル)を超える大幅な向上を示している。実験時間が長い実験6Cでは、特性寿命は2035サイクルで向上はほとんど認められないが、実験時間が短い実験6A及び6Bでの特性寿命は、それぞれ2643サイクル及び2674サイクルの特性寿命を示した。実験6の傾きは、基準のMDC-150Lほど急ではなく、実験時間の長い実験6Cの傾斜は最も小さい。TBC破砕寿命に及ぼすボンドコーティング時間の影響は、Hfの超合金への拡散が増加してTBC/TGO界面のHfが減少することによると考えられるが、出願人は、この点について、いかなる理論又は説明に拘束されることを意図するものでもなく、また希望するものでもない。最長のTBC破砕寿命を達成するときが、最適なコーティング時間である。
【0034】
表2は、実験6A、6B及び6Cのデータを含んでおり、一部の試料にはPtめっきが施されていない。このデータによれば、Ptめっきが施されていない試料の特性寿命は、基準のMDC-150Lよりも短いことをはっきりと示しており、ボンドコート内でHfを溶解し保持するために、Ptリッチの表面が必要であることを裏付けるものである。
【0035】
上記実験例は、CVDの処理パラメータの操作が、ボンドコーティング内におけるHfの濃度と分布、ひいてはTBC破砕寿命にどのように影響するかを示している。CVDの処理手順では、全ての構成成分をコーティング環境内に同時に導入しなければならないパック又はアバブザパックコーティング処理よりも自由度が大きい。CVD処理では、各ガス種をコーティング環境内に存在させる時期および時間を制御することができる。上記実験例は、これら可能性のサンプリング例を示すもので、本発明を、これら記載にのみ限定するものではない。
【0036】
本発明の他の実施例は、アルミナイジング前に形成されるPt(又はPd)電気めっき層の量を少なくしてボンドコートを形成することを含む。例えば、本発明の上述した実施例で使用したPt電気めっき層は、試料面上での初期Pt電気めっき層のPtが10mg/cm2のPtである。次の実験では、Pt層の量が少ない例、即ち、Pt層が、無し、2mg/cm2、4mg/cm2 、6mg/cm2、及び8mg/cm2の例である。これらの試料と、前記基準の10mg/cm2の試料について、上記実験6Bに基づくアルミナイジングを行い、Ptめっきされた基材上にボンドコートを形成した。
【0037】
図11を参照すると、棒グラフは、上記TBC試料の繰返し酸化試験(1135℃)での破砕寿命を示しており、TBC試料のボンドコートは、ボンドコーティング(アルミナイゼーション+ハフナイゼーション)を行う前に、試料に電気めっきしたPt層の表面量を変えて作製した。Pt層が、0Pt、2Pt、4Pt、6 Pt及び8 Ptの試料を、10Pt及び10Pt MDC-150Lの試料と比較した。グレイ色の棒線は、実験6Bのパラメータ(アルミナイゼーション+ハフナイゼーション)を用いてボンドコートされたものであり、一方、黒色の棒線は、基準のMDC-150Lコーティングであり、従来の要領でアルミナイジングされたものである。3つの試料は、試験段階では破損しなかった。
【0038】
図11は、試料表面上のPt電気めっき層の量が、0mg/cm2 Pt から10mg/cm2 Ptに増加するにつれて、TBC-コートされた基準のMDC-150L試料の平均破砕寿命と比較して、平均破砕寿命が大幅に向上することを示している。さらに、図11は、Pt電気めっき層の量が少なくても、TBCがコートされた商業的製品のコーティングの代表例であるMDC-150Lにおける破砕寿命と同等又はそれより長い破砕寿命がもたらされることを示している。この実施例では、コーティング内に有効量のHf及び/又はZrが存在することにより、Pt(又はPd)の量を減少させることができ、商業的なMDC-150Lコーティングと略同程度の酸化抵抗性が得られる。Pt層の量が少ないこの実施例をボンドコートの作製に用いることにより、ボンドコートを作製する材料コストの大幅な低減を達成し、ボンドコートは、サイクル酸化試料において商業的なMDC-150Lコーティングと同等又はそれ以上のTBC破砕寿命を有する。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
幾つかの例示的な実施例について本明細書を説明したが、当業者であれば、添付した特許請求の範囲に規定される発明の範囲内で変更や変形をなし得ることは理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月20日に出願された米国仮出願第61/216,649号の利益と優先権を享受し、その開示全体は引用を以って本明細書に組み込まれる。
【0002】
<発明の分野>
本発明は、ガスタービンエンジン翼及び部品に対するPt-Al-Hf/Zrアルミナイドコーティング、及び合金の表面領域へ合金化元素を導入する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
<発明の背景>
タービンエンジン性能の向上は、タービン合金、冷却スキーム、及びコーティングの改良を通じて成し遂げられてきた。コーティングの最大の改良は、冷却されたタービン部品に熱遮へいコーティング(Thermal Barrier Coating;TBC)を施すことによってなされた。タービン翼の場合、最も効果的なTBCは、電子ビーム物理気相成長法(Physical Vapor Deposition;PVD)によって施される。従来の技術として、NiCoCrAlY、アルミナイド及び白金−アルミナイドのボンドコートがある。これらボンドコートに対する進化的な改良は、表面仕上げを改良するための最適な処理、又はS(硫黄)等の混入による重大な影響を低減するための清浄化処理を行うことで実現されてきた。しかしながら、タービンの設計者達の予測寿命は、高温のタービン温度における部品の設計寿命に適合しないか、又は既存の温度におけるTBC寿命に信頼性がないため、TBCを十分に利用していない。そのため、信頼性がより多く、より長寿命のTBCに対する必要性が存在する。
【0004】
合金にHfを添加することは比較的容易であり、高Hf合金(鋳造性を改良するためにHfを多く含有する単結晶合金(SXL)仕様又は方向性凝固(DS)合金よりもHfの含有量が多い)を、現在の外向き型(outward type)Pt-Alアルミナイドボンドコートでコートしたとき、TBC破砕寿命に有意の影響がみられる。SXL合金は、3倍〜5倍寿命が延びること、DSMarM247は、基準のSXLのTBC寿命に対して、寿命が10倍延びることが報告されている。SXLの場合、Hfを多く添加すると、SXL合金の微細組織と機械的特性に対して消極的影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
<発明の要旨>
本発明は、Pt-Al-Xアルミナイドコーティング(Xは、Hf及び/又はZrである)を提供するもので、TBCの下に用いられることができ、高温でのTBC破砕寿命を向上させる。本発明の一実施例において、Pt-Al-Xアルミナイドコーティングは、準安定(遷移)X-Pt/Pd-Ni相を含み、XはHf 及び/又はZrであり、Pt/PdはPt又はPd又はその両方が相に存在することを意味し、Niは、コーティングのβ(Ni,Pt)Alの外側相に単独で、又は他の合金化元素と共に存在する。簡潔化のために、三元又は四元以上のX-Pt/Pd-Ni相を、"μ相"と称する。準安定μ相は、コーティング発達の初期形成段階に存在することが観察されることができる。μ相は、成膜された状態のコーティング、例えば、用いられるパラメータに応じてCVD蒸着された状態のコーティングの中に観察されることができる。
【0006】
本発明の例示的実施例において、Pt-Al-Hfアルミナイドボンドコーティングは、Hf2Pt3NiXμ相の一方の側から他方の側にわたるコーティング厚さ領域に約18原子%濃度のPtを含む。ボンドコートは、Hf2Pt3NiXμ相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域でのAl濃度は、約31〜約40原子%であり、幾つかの実施例では約35%〜約40原子%である。ボンドコートは、Hf2Pt3NiXμ相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域でのHf濃度は、約0.25〜1.0原子%である。ボンドコートの全体厚さは、約25〜約40ミクロンであり、典型的には、約30〜約40ミクロンである。
【0007】
本発明は、Pt-Al-Xボンドコートを提供するものであり、Xは、Hf及び/又はZrであり、TBCの下に用いられることができ、高温使用中でのTBC破砕寿命を向上させることができる。本発明の一実施例において、Pt-Al-Xアルミナイドボンドコートは、外側コーティング面を含み、Pt含有量は約2〜約16原子%(幾つかの実施例では約10〜約16原子%)であり、Al含有量は約31〜約40原子%(幾つかの実施例では約35〜約40原子%)であり、コーティングの全体厚さは約25〜約45ミクロン、典型的には約30〜約40ミクロンであって、コーティングの全体厚さには拡散ゾーンと外側追加領域を含む。この実施例は、コーティングが、所定時間/温度のアルミナイジングが施されるか、又はその後の熱曝露により準安定相が分解する場合、コーティング微細組織内に上述したμ相を有さなくてもよい。
【0008】
本発明は、中間元素(例えば、Pt及び/又はPd)を、他の合金化元素(例えばHf 及び/又はZr)に対する溶解性が低い合金基材の表面領域上又は表面領域内に導入した後、前記中間元素及び前記他の元素が富化された表面領域を基材に形成できる成膜条件下で、前記他の合金化元素を中間元素(例えばPt及び/又はPd) 内に導入することと、を含む方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1(a)】図1(a)は、Pd-Hf相図である。
【図1(b)】図1(b)は、Pt-Zr相図である。
【図2】図2は、Hf-Pt系の部分的相図情報である。
【図3(a)】図3(a)は、PtめっきされたNi系超合金にCVDで形成されたHfのSEM後方散乱画像である。
【図3(b)】図3(b)は、PtめっきされたNi系超合金にCVDで形成されたHfの組成プロファイルを示している。
【図4(a)】図4(a)は、PtめっきされたNi系超合金にCVDで形成されたHf及びAlのSEM後方散乱画像と、コートされた表面領域の対応する組成プロファイルである。
【図4(b)】図4(b)は、CVDで形成されたHf及びPtについて、HfとPtの比率が20%:30%のみの組成プロファイルを示す。
【図5】図5は、実験3において、Ptめっきされた試料にμ相が形成された試料とPtめっきなしでμ相が形成されている試料の結果を示す。
【図6】図6は、実験3よりもAlCl3を多く含有する実験4の試料のSEM画像である。
【図7】図7は、実験3及び4の試料について、2050°Fで2時間真空熱処理される前と後の実験3と実験4のSEM画像を含んでいる。
【図8】図8は、実験5の試料のSEM画像で、μ相が存在していないことを示している。
【図9】図9は、実験3において、(Ni,Pt)Alβ相に実質的なHfを有する試料のスポット解析を示す。
【図10】図10は、基準とする商業用の外向き型Pt-Alコーティング(MDC-150L)と実験6の変形例についてWellbullプロットしたものである。
【図11】図11は、方法の実施例に基づいて作製されたボンドコートを有するTBC試料について繰り返し酸化試験(1135℃にて)を行ったときの破砕寿命を示す棒グラフであり、試料に電気めっきされたPt層の表面量を変えたもので、試料は、ボンドコートのアルミナイジング及びハフナイジングの前のPt層が、無し、2mg/cm2、4mg/cm2、6mg/cm2、及び8mg/cm2である。これら試料は、ボンドコーティングのアルミナイジング及びハフナイジング前に電気めっきされたPt層が10mg/cm2の同じ試料と比較した。 これら試料は、TBCコートされたMDC-150Lの基準試料と比較した。基準試料は、アルミナイジングを標準の処理時間で行い、Pt層が10mg/cm2であり、商業的に製造されるコーディングの代表例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示を目的として、Pt-Al-Xコーティング(Xは、Hf及び/又はZr)について、化学蒸着(Chemical vapor deposition;CVD)によるアルミナイド拡散コーティングにおける従来のCVDコーティングパラメータ(米国特許第5,788,823号)を変更又は修正し、外向きに成長した(outwardly grown)アルミナイド拡散コートが形成されることを以下に説明する。第1及び第2の変更は、相互に関係があり、肉厚が薄く、Al含有量が少ないアルミナイドボンドコーティングを作製することを含む。例えば、コーティングの厚さは、約30〜約40ミクロンとすることができ、コーティングの厚さには、コーティング変質ゾーン、拡散ゾーン及び追加領域を含む。Al含有量が少ないNiAlでは、Niは、Alよりも約3〜5倍速く拡散する。これは、外向き型タイプのアルミナイジングプロセスの基礎となる。この現象は、コーティングプロセスが完了した後の温度で、更なる時間継続する。どちらの場合も、Niの外向き拡散量が多くなると、NiAlを膨張させ、拡散に関連して歪みを発生する。この歪みは、多くのアルミナイドコーティング上で観察されるランプリング現象に寄与する(ランプリングに寄与する最も大きな歪みは、γ/γ'合金とβNiAlとの間の熱膨張係数の不一致から生じる。しかし、膨張現象も、ランプリングに寄与する)。Al含有量が多くなるほど、基材がAl含有量の定常状態である30〜32原子%に達するのに、より多くのNiが必要となり、NiAlの膨張は大きくなる。薄肉で低Alのボンドコーティングは、コーティングを形成する間及び高温に曝露されている間、合金からのNi拡散は少なくてすむ。本発明では薄肉で低Alのコーティングで開始するので、コーティング系は、30〜32%Al濃度(ガンマプライム(γ')を有する定常状態のAl含有量)に達することができ、Niの移動が少なく、TBCの早期破砕に至るランプリング現象に寄与する歪みが少ない。
【0011】
本発明のボンドコーティングの第3の変更は、表面のPt含有量を多くしたことである。また、表面のPt含有量は、コーティング時間によって変えることができる。Ptは、米国特許第5,788,823号に記載されているアルミナイジングを行う前に、合金基材表面にめっきされる。Ptは、Ni-Al系のγ,γ'及びβ相のNiと置換される。商業的製品であるMDC-150LコーティングにおけるPtの拡散は、ベル形状であり、Ptの拡散の約1/2はNiとコーティングの添加層を形成し、約1/2は、拡散ゾーンから合金の中に拡散する。
【0012】
Ptめっきが10mg/cm2のとき、商業的製品のコーティング時間では、外表面のPt含有量が4〜8原子%のコーティングを形成する。本発明は薄肉のコーティングであるので、短時間(例えば、540分以下)のコーティングにより、ボンドコーティングの外表面でのPt含有量は多くなる。TBC破砕が最良の結果(例えば、TBC破砕寿命の増大)を得るには、本発明のボンドコーティングの外表面でのPt含有量は、約10〜約16原子%であり、これは、基材からのNi拡散によって希釈されるので、Ptに対するコーティング時間が短い(例えば、210分以下のコーティング時間)ことによる。さらに、所望により、CVDアルミナイジングの前に、基材により多くの量のPtをめっきすることにより、外表面におけるPt含有量を多くすることができる。
【0013】
最後に、Hf(及び/又はZr)とAlとを同時蒸着、又は逐次蒸着を施すことにより、Hf(及び/又はZr)がβ(Ni,Pt)Alの外側コーティング相の中に取り込まれることができる。HfがTBC破砕寿命に及ぼす効果に加えて、反応性元素(Hf,Y,La,Ce,Er)がNi系材料の酸化に及ぼす有効な効果について様々な説明が報告されている。しかし、β(Ni,Pt)Al相に有意量の添加を行うことは、CVD、アバブザパック(Above the Pack)又はパックコーティング環境において実現することが難しい。それ故、この発明の実施例は、改変されたCVDプロセスとして、Hf2Pt3NiX準安定(遷移) μ相の生成により、β(Ni,Pt)Alの外側コーティング相内へ実質的なHf(及び/又はZr)の取込みを実現するものである。この場合において、NiXは、ニッケルと合金系において可能な他の元素との組合せであって、β(Ni,Pt)Al相において存在する三元、四元、又は、更なる多元合金が提供される。例えば、NiXについて、Niだけのとき、xは5であり、準安定相(metastable phase)が合金系のβ(Ni,Pt)Alコーティング相内に他の合金化元素を含むときは、xは5未満である(例えば、Ni5-Xで、xは、相の中に存在する他の合金化元素(原子%)である)。Ptめっきの代わりにPdめっきが行われるとき、他の実施例では、改変されたCVDプロセスを提供し、HfPdNixの準安定な三元以上のμ相を生成することにより、β(Ni,Pd)Alコーティング相の中へ、実質的なHf(及び/又はZr)の取込みを実現するものである。ここで、Niだけのとき、xは4であり、3元以上の相が、β(Ni,Pd)Alコーティング相の中に他の合金化元素を含むとき、xは4未満である(例えば、Ni4-yで、yは相の中に存在する他の合金化元素(原子%)である)。
【0014】
本発明のPt-Al-Xのボンドコートの一実施例が特徴とするのは、ボンドコートが外側コーティング面を含み、該コーティング面は、Pt含有量が約2〜約16原子%、好ましくは、約10〜16原子%であり、Al含有量が、約31〜40原子%、好ましくは35〜40原子%であり、コーティングの全体厚さが、約25〜約45ミクロン、典型的には、約30〜約40ミクロンであって、コーティング変質ゾーン、拡散ゾーン及び追加のβ(Ni,Pt)Al領域を含むことである。この実施例では、コーティングが、その後に、長時間のアルミナイジングサイクル(例えば、120分より長時間)を受ける場合、又はアルミナイジング後の熱曝露により準安定相が分解する場合、コーティングの微細組織中に上記したμ相が存在しなくてもよい。
【0015】
本発明のPt-Al-Xボンドコートの他の実施例が特徴とするのは、ボンドコートが、CVDアルミナイジング/ハフナイジングを行う前に、Ptめっき位置と考えられるコーティングの中間領域(形成されたコーティング厚さ中央の40%〜60%の範囲)の中にμ相を含むという点である。Ptの存在は、CVDコーティングガス環境からのHf/Zrの取込みと、固溶体内でHf及び/又はZrを有意なレベルに保持するためのβ(Ni,Pt)Al相の能力において重要である。本発明のボンドコートは、TBC破砕寿命が商業的製品であるMDC-150Lコーティング(米国特許第5,788,823号参照)よりも、2倍以上、潜在的には3倍以上長くすることができる。この発明は、例えば、商業的製品であるMDC-150Lコーティング(米国特許第6,793,966号、気体入口予熱器52を有しない)と同様の基本的処理装置を用いて実施されることができるが、これに限定されるものではない。本発明の方法の実施例は、Alの前にHfを成膜し、Al蒸着前にPtリッチ表面にHfを充填するものであるが、この実施例を実施することによりHf成膜の均一性を改良し、他のコーティングガス分配管の使用が可能になる。さらに、本発明の他の方法の実施例において、CVDによるHfコーティングガス発生器を使用することと、コート温度をアバブザパックのアクチベータ反応温度以下に設定することで、Pt-リッチ面にHfを充填することと、次にコート温度をアクチベータ反応温度より高い温度に昇温させてアルミナイジングを開始する、ことを含んでいる。
【0016】
一連の相図(phase diagram)を調べることは、この発明の概念の洞察を提供する。図1(a)及び図1(b)は、Pd-Hf及びPt-Zr二元合金系の公開された相図を示している[参照;Binary Alloy Phase Diagram 2nd Edition, ASM International, 1990]。図2は、Pt-Hf二元合金系の公開された情報を示している。元素周期表の配置における夫々の縦列では、PdはPtの上にあり、ZrはHfの上にあり、それら夫々の元素対は類似の特性を有している。図1(a)は、1080℃で、Pdが、固溶体の中にHfを20原子%より多く含むことができることを示している。同様に、図1(b)は、Ptが、固溶体の中に、Zrを20原子%より多く含むことができることを示している。Pt-Hfに関する限定データは、Ptが、HfPt4相が存在する固溶体内に、10原子%まで存在できることを示唆している。図1の相図は、HfPd4又はHfZr4相を示していない。従って、Ptの中でHfの固溶体最大溶解性に関しては、相安定性情報の間で完全な一致は得られていない。それにも関わらず、このデータは、ボンドコートの形成とTBCの作製において、ボンドコート表面のHf/Zrのドーピングを提供するのに十分な量よりも多い10原子%以上の固溶体溶解性があることを示唆している。Hfを、(Ni,Pt)Alボンドコート内で、0.05%〜1%までドーピングすることは、TBC破砕寿命を改良するには、十分であり得る。
【0017】
本発明は、Pt内における高いHf/Zr溶解性を利用して、合金表面(基材)に、Hf/Zrを充填するものである。Ni系合金基材にPtめっきすることにより、基材表面はPtが非常にリッチとなり、Hf/Zrが高いドーパント濃度で、Ptリッチ表面に取り込まれることが可能となる。この点を立証するために、実施した化学蒸着実験では、HfCl4コーティングガスのみを用いた。
【0018】
この実験では、10mg/cm2 のPt(米国特許第5,788,823号)を、商業的に入手可能な単結晶のNi系超合金(CMSX-4(登録商標))の直径1インチ×厚さ0.125インチの試験片の表面に施した。試験片は、CVDリアクタ(米国特許第6,793,966号でガス入口予熱器52なしのものと同様である)内に吊した。CVDリアクタは、200トール(torr)で、H2/12.7体積%、残Arの気体混合物の下で、1080℃まで昇温した。昇温する間、PtめっきとNi超合金が相互拡散を開始する。リアクタが、一旦、1080℃に達すると、HClガスが、Hf発生器に供給され、コーティングレトルト内で、H2/12.6体積%、Ar/0.14体積%、残HfCl4のコーティングガス混合物が生成される(米国特許第6,291,014号、第6,793,966号、及び第6,689,422号)。コーティングサイクル中でのHf蒸着部のコーティングサイクルは、25分間一定に保持した。次に、レトルトを冷却し、試料を取り出して試験を行った。
【0019】
図3(a)は、走査型電子顕微鏡の後方散乱画像を示しており、図3(b)は、得られたコーティングの組成プロファイルを示している。高原子番号のリッチ層が形成されていることは、近傍表面の明るが強いことから、明白である。図3(b)の組成プロファイルを参照すると、表面はHfが富化されており、どのアルミナイジングプロセスの前にも、Hf2Pt3Nixμ相が存在することを裏付けている。この場合において、NiXは、ニッケルと、可能な他の基質元素である。この場合において、μ相にある他の基質元素は、Co, Ta, Cr, 及びAlである。それらが全て含まれるとき、それらは、相の約6.5原子%を占める。
【0020】
第2の実験は、上記と同じプロセスを用いて実施したが、そのプロセスと異なる点は、Hfだけの部分を45分に延ばしたこと、HfCl4を0.16体積%に増加したこと、Arを15.0体積%に増加したこと、また45分後にAlCl3部分を加えたことである。210分の全コーティングサイクルのうち165分以上の間、HfCl4とAlCl3のガス混合物を流した。コーティングガス混合物は、H2/13.6体積%、Ar/0.15体積%、0.8体積%AlCl3、残HfCl4を含む。図4(a)及び4(b)は、このプロセスで作製されたコーティングと、Hf及びPtの組成プロファイルとを示している。外向き型拡散アルミナイドプロセスで追加層が更に形成されると、β(Ni,Pt)Alコーティング相がμ相上に形成される。NiとPtは、μ相を通じて移動することができ、AlCl3と反応してβ相が形成される。また、μ相は形状を変化させる。図3(a)におけるμ相(Niめっき部に隣接する)の不規則な外表面は、図4(a)では滑らかである。図3(a)における滑らかな内表面は、図4(a)では不規則である。図3(a)の連続したμ相は、図4(a)では、ギャップを有している。これらの変化は、Ni, Pt, 及びHfが、図3(a)のμ相から拡散していることを示唆している。外表面は分解し、追加層が形成されると滑らかになる。内表面は、拡散ゾーンに向けて不均一な形状で成長する。もし、局所化学的条件が正しければ、μ相は分解して、ギャップを形成する。
【0021】
実験3及び4は、実験2と同じプロセスで実施したが、そのプロセスと異なる点は、レトルトが一旦1080℃に達すると、Hf及びAlコーティングガスが同時に活性化されることと、コーティングガスが、実験3では、H2/12.6体積%、Ar/0.2体積%、A1C13/0.14体積%、残HfCl4に変更され、実験4では、H2/12.6体積%、Ar/0.4体積%、A1C13/0.14体積%、残HfCl4に変更されていることである。全コーティング時間は、両実験とも210分のままである。このプロセスにおける表面でのPtめっき重要性を理解するために、Ptめっきされた試験片に加え、Ptめっきされていない試験片も実験4に加えた。図5及び6は、これらのプロセスで作製されたコーティングを示している。Ptめっきされたサンプルは、実験2と同様な特性を有するが、Ptめっきされていないサンプルではμ相が存在しない。
【0022】
コーティングガスのAlCl3含有量が増加するにつれて、μ相の減少が観察されるという一般的な傾向に注目される。実験2において、初めはHfだけが用いられており、μ相が微細組織中に直ちに観察される。実験3及び4では、Alの含有量が増加するにつれて、AlはHfと拮抗するので、Ptで改質された表面と反応し、μ相の減少が観察される。
【0023】
実験3と4の残り試料は、2050°Fの真空中で2時間熱処理される。図7は、この熱処理によって、初期μ相がどのように変化するかを示しており、μ相は準安定であり、この温度では時間とともに分解していくことを示している。実験3の明るいμ相は消滅し、熱処理後は、μ相の量が少ないゴーストイメージとなる。実験4のμ相が最も少ない試料は完全に分解される。
【0024】
μ相の準安定性を示すための第5の実験は、実験4と同様のパラメータを用いて行なったが、実験4のパラメータと異なる点は、AlCl3が、0.8体積%に増加し、コーティング時間を420分に長くしたことである。図8に示されるように、コーティングガスは、AlCl3含有量が多くなる程、またコーティング時間が長くなる程、μ相の量は、区別できない程度にまで減少する。
【0025】
本発明の目的は、Hf(及び/又はZr)を(Ni,Pt)-Alボンドコートへ添加する方法を提供することである。特に、ボンドコートの追加層をHfリッチにすることにより、熱成長酸化物を形成し、該酸化物に熱遮へいコーティングが固定される。三元Ni-Al-Hf系の作用は、Ni-Alβ相内でのHfに対する溶解性が非常に低いことを示唆している。しかしながら、Ni超合金上に形成されるコーティングは、超合金中の他の元素とともに生成し、わずかな溶解性の変更を許容する。さらに、Al含有量が少ないβ-NiAlは、欠陥の多い結晶組織で他の元素の高い溶解性を許容する。図9は、実験3で作製された試料のスポット分析結果を示している。スポットは、3つのグループに分けられる。外側スポットはμ相より上のβ(Ni,Pt)Alコーティング領域にあり、内側スポットはμ相より下のβ(Ni,Pt)Alコーティング領域にある。内側及び外側のβ(Ni,Pt)Alコーティング領域のHf含有量は、約0.5〜約1.0原子%の範囲である。
【0026】
上記の通り、Ptリッチ表面にμ相を介してHfを含有させる能力を有するので、本発明の最大の利点は、TBCの破砕寿命を長くできることである。これを示すために、基準のコーティングプロセス(MDC-150L)と実験6の3バージョンにおいて、ボンドコートされた破砕試験の試験片を156個作製した。実験6の3バージョンは、コーティングガス時間以外は、実験5と同じコーティングサイクルパラメータを用いた。実験6Aでは120分間、実験6Bでは210分間、及び実験6Cでは実験5と同じ420分間で行なった。PtめっきのHf充填に対する重要性を示すために、実験6A、6B及び6Cの4つの試験片にはPtめっきが施されていない。テストでのTBC成膜プロセスからの偏りを最小にするために、一連の試験では、4つの全てのボンドコートプロセスの試験片にTBCコーティングサイクルの各サイクルを実施し、試験片にTBCコーティングを施した。イットリア安定化ジルコニアを含むTBC(熱遮へいコーティング)には、米国特許第5,716,720号に記載されたプロセスを用いた。
【0027】
後述する表3は、6つの実験に用いた実験プロセスパラメータの概要を示している。
【0028】
サイクル試験は、リンドバーグ製の垂直型チューブ炉の中で行い、試料を炉内のサンプルツリーに吊して所定時間曝露した後、次に試料を取り上げて室温近傍温度まで冷却した。試験サイクルは、炉内で50分、冷却10分である。試験温度は、2075°Fである。各試験装置は、試験の実施中、自動制御を行なった。試験の開始前及び炉の運転中、炉内は2075°F±10°Fに維持した。
【0029】
各試験は20サイクル行ない、カウンタを更なる20サイクルを再設定する前に冷却した。4時間保持する間、試料の破損の有無を検査した。100サイクル後、試料を試験装置から取り外し、4時間保持した後、破損の有無を検査した。何れの場合も、試験片の表面の20パーセントがTBC破砕するときを破損と定義する。
【0030】
上述の説明では、4台の試験装置を用いている。各試料ツリーは40個の試験片を保持することができる。一度に40個の試験片をテストすることができるので、破損した試験片を試験から取り除いたとき、追加の試験片を加えた。
【0031】
図10には、4つのボンドコートのTBC破砕試験の結果が示されている。このグラフは、ワイブルプロット(Weibull plot)であり、y軸は、次の式に基づく累積破損%である。
破損= (R-0.3)/(N+0.4)* 100
R = 破損ランク (1, 2, 3, 4, ... )
N =破損の総数
X軸は、破損の対応するランクに対する破損時の破砕サイクル数である。
【0032】
各データ群は、累積破損%が63.2%での特性寿命と、データ群の傾きである形状パラメータとを有している。TBC破砕寿命に対しては、特性寿命が延びること及び/又は傾きが大きくなることは望ましい特性である。
【0033】
図10及び後掲の表2は、実験6の3種類の全てが、商業製品MDC-150Lの基準(901サイクル)を超える大幅な向上を示している。実験時間が長い実験6Cでは、特性寿命は2035サイクルで向上はほとんど認められないが、実験時間が短い実験6A及び6Bでの特性寿命は、それぞれ2643サイクル及び2674サイクルの特性寿命を示した。実験6の傾きは、基準のMDC-150Lほど急ではなく、実験時間の長い実験6Cの傾斜は最も小さい。TBC破砕寿命に及ぼすボンドコーティング時間の影響は、Hfの超合金への拡散が増加してTBC/TGO界面のHfが減少することによると考えられるが、出願人は、この点について、いかなる理論又は説明に拘束されることを意図するものでもなく、また希望するものでもない。最長のTBC破砕寿命を達成するときが、最適なコーティング時間である。
【0034】
表2は、実験6A、6B及び6Cのデータを含んでおり、一部の試料にはPtめっきが施されていない。このデータによれば、Ptめっきが施されていない試料の特性寿命は、基準のMDC-150Lよりも短いことをはっきりと示しており、ボンドコート内でHfを溶解し保持するために、Ptリッチの表面が必要であることを裏付けるものである。
【0035】
上記実験例は、CVDの処理パラメータの操作が、ボンドコーティング内におけるHfの濃度と分布、ひいてはTBC破砕寿命にどのように影響するかを示している。CVDの処理手順では、全ての構成成分をコーティング環境内に同時に導入しなければならないパック又はアバブザパックコーティング処理よりも自由度が大きい。CVD処理では、各ガス種をコーティング環境内に存在させる時期および時間を制御することができる。上記実験例は、これら可能性のサンプリング例を示すもので、本発明を、これら記載にのみ限定するものではない。
【0036】
本発明の他の実施例は、アルミナイジング前に形成されるPt(又はPd)電気めっき層の量を少なくしてボンドコートを形成することを含む。例えば、本発明の上述した実施例で使用したPt電気めっき層は、試料面上での初期Pt電気めっき層のPtが10mg/cm2のPtである。次の実験では、Pt層の量が少ない例、即ち、Pt層が、無し、2mg/cm2、4mg/cm2 、6mg/cm2、及び8mg/cm2の例である。これらの試料と、前記基準の10mg/cm2の試料について、上記実験6Bに基づくアルミナイジングを行い、Ptめっきされた基材上にボンドコートを形成した。
【0037】
図11を参照すると、棒グラフは、上記TBC試料の繰返し酸化試験(1135℃)での破砕寿命を示しており、TBC試料のボンドコートは、ボンドコーティング(アルミナイゼーション+ハフナイゼーション)を行う前に、試料に電気めっきしたPt層の表面量を変えて作製した。Pt層が、0Pt、2Pt、4Pt、6 Pt及び8 Ptの試料を、10Pt及び10Pt MDC-150Lの試料と比較した。グレイ色の棒線は、実験6Bのパラメータ(アルミナイゼーション+ハフナイゼーション)を用いてボンドコートされたものであり、一方、黒色の棒線は、基準のMDC-150Lコーティングであり、従来の要領でアルミナイジングされたものである。3つの試料は、試験段階では破損しなかった。
【0038】
図11は、試料表面上のPt電気めっき層の量が、0mg/cm2 Pt から10mg/cm2 Ptに増加するにつれて、TBC-コートされた基準のMDC-150L試料の平均破砕寿命と比較して、平均破砕寿命が大幅に向上することを示している。さらに、図11は、Pt電気めっき層の量が少なくても、TBCがコートされた商業的製品のコーティングの代表例であるMDC-150Lにおける破砕寿命と同等又はそれより長い破砕寿命がもたらされることを示している。この実施例では、コーティング内に有効量のHf及び/又はZrが存在することにより、Pt(又はPd)の量を減少させることができ、商業的なMDC-150Lコーティングと略同程度の酸化抵抗性が得られる。Pt層の量が少ないこの実施例をボンドコートの作製に用いることにより、ボンドコートを作製する材料コストの大幅な低減を達成し、ボンドコートは、サイクル酸化試料において商業的なMDC-150Lコーティングと同等又はそれ以上のTBC破砕寿命を有する。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
幾つかの例示的な実施例について本明細書を説明したが、当業者であれば、添付した特許請求の範囲に規定される発明の範囲内で変更や変形をなし得ることは理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X-Pt/Pd-Ni相を含むアルミナイドコーティングであって、
前記相は、Hf及び/又はZrであるXと、Pt/Pdの内の一方又は両方と、Niとを含み、
X-Pt/Pd-Ni相は、前記コーティングのβ(Ni,Pt)Al相に存在する、アルミナイドコーティング。
【請求項2】
X-Pt/Pd-Ni相は、成膜された状態のコーティングに存在し観察されることができる、請求項1のコーティング。
【請求項3】
前記相は、CVDで蒸着された状態のボンドコーティングに存在し観察されることができる、請求項1のコーティング。
【請求項4】
前記相はX2Pt3Nix を含み、xは5以下である、請求項1のコーティング。
【請求項5】
前記相はXPdNix を含み、xは4以下である、請求項1のコーティング。
【請求項6】
X2Pt3NiX相の一方の側から他方の側にわたるコーティング厚さ領域におけるPt濃度は約18原子%である、請求項4のコーティング。
【請求項7】
X2Pt3NiX相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域におけるAl濃度は約31〜約40原子%である、請求項6のコーティング。
【請求項8】
X2Pt3NiX相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域におけるAl濃度は約35〜約40原子%である、請求項7のコーティング。
【請求項9】
Hf2Pt3NiX相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域におけるHf濃度は約0.25〜約1.0原子%である、請求項4のコーティング。
【請求項10】
Hfは、約0.5〜約1.0原子%である、請求項9のコーティング。
【請求項11】
Pt-Al-X(XはHf及び/又はZr)アルミナイドコーティングであって、
外側コーティング面を含み、該コーティング面は、Pt含有量が約2〜約16原子%、Al含有量が約31〜約40原子%であって、Hf及び/又はZrを有しており、
コーティング厚さは、約25〜約45ミクロンであり、
コーティングの全体厚さは、拡散ゾーンと追加領域とを含んでいる、アルミナイドコーティング。
【請求項12】
全体厚さは、約30ミクロン〜約40ミクロンである、請求項11のコーティング。
【請求項13】
Pt含有量は約10〜約16原子%である、請求項11のコーティング。
【請求項14】
Al含有量は約35〜約40原子%である、請求項11のコーティング。
【請求項15】
外側コーティング面の近傍にHf及び/又はZrを0.25原子%〜1.0原子%含んでいる、請求項11のコーティング。
【請求項16】
Hfは約0.5〜1.0原子%である、請求項15のコーティング。
【請求項17】
中間元素を、他の合金化元素に対して溶解性の低い合金基材の表面領域上又は表面領域内に導入した後、前記中間元素及び前記他の元素が富化された表面領域を基材に形成できる成膜条件下で、前記他の合金化元素を中間元素内に導入することを含んでいる、方法。
【請求項18】
中間元素は、Pt又はPd又はその両方を含む、請求項17の方法。
【請求項19】
Ptが供給される量は、約2mg/cm2 〜約8mg/cm2 である、請求項17の方法。
【請求項20】
前記他の合金化元素は、Hf又はZr又はその両方を含む、請求項17の方法。
【請求項21】
前記他の合金化元素は、化学蒸着法を用いて中間元素に導入される、請求項17の方法。
【請求項22】
基材の表面領域上にアルミナイドコーティングを生成する方法であって、
中間元素を、他の合金化元素に対して溶解性の低い基材の表面領域上又は表面領域内に層として成膜すること、
前記中間元素及び前記他の元素を含む表面領域に相を形成できる成膜条件下で、前記他の合金化元素を前記層に成膜すること、及び
拡散アルミナイドコーティングを形成できる条件下で基材をアルミナイジングすることを含んでいる、方法。
【請求項23】
中間元素は、表面領域上の層として、Pt又はPd又はその両方を含む、請求項22の方法。
【請求項24】
Ptが成膜される量は、約2mg/cm2〜約8mg/cm2である、請求項23の方法。
【請求項25】
前記他の合金化元素は、Hf又はZr又はその両方を含む、請求項22の方法。
【請求項26】
前記他の合金化元素は、アルミニウムと共に表面領域上に成膜される、請求項22の方法。
【請求項27】
前記他の合金化元素を前記表面領域に成膜し、次いでアルミニウムを単独又は前記他の合金化元素と共に成膜する、請求項22の方法。
【請求項28】
前記他の合金化元素は、化学蒸着法を用いて前記層に蒸着され、前記相が形成される、請求項22の方法。
【請求項29】
前記相は、Pt及び/又はPdと、Hf及び/又はZrと、Niとを含む、請求項22の方法。
【請求項30】
前記相は、X2Pt3Nixを含み、xは5以下である、請求項29の方法。
【請求項31】
Ptが表面領域に成膜される量は、約2mg/cm2〜約8mg/cm2である、請求項22の方法。
【請求項32】
Ptが表面領域に成膜される量は、約4mg/cm2〜約6mg/cm2である、請求項31の方法。
【請求項33】
コーティングの微細組織内で相を維持する時間の経過後、アルミナイジングを中止することを含む、請求項22の方法。
【請求項34】
前記相がコーティングの微細組織から消滅する間、アルミナイジングを継続することを含む、請求項22の方法。
【請求項35】
アルミナイドコーティングを基材表面領域上に施す方法であって、
Pt及び/又はPdを基材の表面領域上に層として成膜すること、
Pt及び/又はPdと、Hf及び/又はZrと、Niとを含む相を形成できる条件下で、Hf及び/又はZrを、前記層上又は前記層内に成膜すること、及び
化学蒸着法によるアルミナイジングによりアルミナイドコーティングを形成することを含んでいる、方法。
【請求項36】
Ptが表面領域に蒸着される量は、約2mg/cm2〜約8mg/cm2である、請求項35の方法。
【請求項37】
Ptが表面領域に成膜される量は、約4mg/cm2〜約6mg/cm2である、請求項36の方法。
【請求項38】
コーティングの微細組織内で相を維持する時間の経過後、アルミナイジングを中止することを含む、請求項35の方法。
【請求項39】
前記相がコーティングの微細組織から消滅する間、アルミナイジングを継続することを含む、請求項35の方法。
【請求項1】
X-Pt/Pd-Ni相を含むアルミナイドコーティングであって、
前記相は、Hf及び/又はZrであるXと、Pt/Pdの内の一方又は両方と、Niとを含み、
X-Pt/Pd-Ni相は、前記コーティングのβ(Ni,Pt)Al相に存在する、アルミナイドコーティング。
【請求項2】
X-Pt/Pd-Ni相は、成膜された状態のコーティングに存在し観察されることができる、請求項1のコーティング。
【請求項3】
前記相は、CVDで蒸着された状態のボンドコーティングに存在し観察されることができる、請求項1のコーティング。
【請求項4】
前記相はX2Pt3Nix を含み、xは5以下である、請求項1のコーティング。
【請求項5】
前記相はXPdNix を含み、xは4以下である、請求項1のコーティング。
【請求項6】
X2Pt3NiX相の一方の側から他方の側にわたるコーティング厚さ領域におけるPt濃度は約18原子%である、請求項4のコーティング。
【請求項7】
X2Pt3NiX相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域におけるAl濃度は約31〜約40原子%である、請求項6のコーティング。
【請求項8】
X2Pt3NiX相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域におけるAl濃度は約35〜約40原子%である、請求項7のコーティング。
【請求項9】
Hf2Pt3NiX相の一方の側から他方の側にわたる同じ厚さ領域におけるHf濃度は約0.25〜約1.0原子%である、請求項4のコーティング。
【請求項10】
Hfは、約0.5〜約1.0原子%である、請求項9のコーティング。
【請求項11】
Pt-Al-X(XはHf及び/又はZr)アルミナイドコーティングであって、
外側コーティング面を含み、該コーティング面は、Pt含有量が約2〜約16原子%、Al含有量が約31〜約40原子%であって、Hf及び/又はZrを有しており、
コーティング厚さは、約25〜約45ミクロンであり、
コーティングの全体厚さは、拡散ゾーンと追加領域とを含んでいる、アルミナイドコーティング。
【請求項12】
全体厚さは、約30ミクロン〜約40ミクロンである、請求項11のコーティング。
【請求項13】
Pt含有量は約10〜約16原子%である、請求項11のコーティング。
【請求項14】
Al含有量は約35〜約40原子%である、請求項11のコーティング。
【請求項15】
外側コーティング面の近傍にHf及び/又はZrを0.25原子%〜1.0原子%含んでいる、請求項11のコーティング。
【請求項16】
Hfは約0.5〜1.0原子%である、請求項15のコーティング。
【請求項17】
中間元素を、他の合金化元素に対して溶解性の低い合金基材の表面領域上又は表面領域内に導入した後、前記中間元素及び前記他の元素が富化された表面領域を基材に形成できる成膜条件下で、前記他の合金化元素を中間元素内に導入することを含んでいる、方法。
【請求項18】
中間元素は、Pt又はPd又はその両方を含む、請求項17の方法。
【請求項19】
Ptが供給される量は、約2mg/cm2 〜約8mg/cm2 である、請求項17の方法。
【請求項20】
前記他の合金化元素は、Hf又はZr又はその両方を含む、請求項17の方法。
【請求項21】
前記他の合金化元素は、化学蒸着法を用いて中間元素に導入される、請求項17の方法。
【請求項22】
基材の表面領域上にアルミナイドコーティングを生成する方法であって、
中間元素を、他の合金化元素に対して溶解性の低い基材の表面領域上又は表面領域内に層として成膜すること、
前記中間元素及び前記他の元素を含む表面領域に相を形成できる成膜条件下で、前記他の合金化元素を前記層に成膜すること、及び
拡散アルミナイドコーティングを形成できる条件下で基材をアルミナイジングすることを含んでいる、方法。
【請求項23】
中間元素は、表面領域上の層として、Pt又はPd又はその両方を含む、請求項22の方法。
【請求項24】
Ptが成膜される量は、約2mg/cm2〜約8mg/cm2である、請求項23の方法。
【請求項25】
前記他の合金化元素は、Hf又はZr又はその両方を含む、請求項22の方法。
【請求項26】
前記他の合金化元素は、アルミニウムと共に表面領域上に成膜される、請求項22の方法。
【請求項27】
前記他の合金化元素を前記表面領域に成膜し、次いでアルミニウムを単独又は前記他の合金化元素と共に成膜する、請求項22の方法。
【請求項28】
前記他の合金化元素は、化学蒸着法を用いて前記層に蒸着され、前記相が形成される、請求項22の方法。
【請求項29】
前記相は、Pt及び/又はPdと、Hf及び/又はZrと、Niとを含む、請求項22の方法。
【請求項30】
前記相は、X2Pt3Nixを含み、xは5以下である、請求項29の方法。
【請求項31】
Ptが表面領域に成膜される量は、約2mg/cm2〜約8mg/cm2である、請求項22の方法。
【請求項32】
Ptが表面領域に成膜される量は、約4mg/cm2〜約6mg/cm2である、請求項31の方法。
【請求項33】
コーティングの微細組織内で相を維持する時間の経過後、アルミナイジングを中止することを含む、請求項22の方法。
【請求項34】
前記相がコーティングの微細組織から消滅する間、アルミナイジングを継続することを含む、請求項22の方法。
【請求項35】
アルミナイドコーティングを基材表面領域上に施す方法であって、
Pt及び/又はPdを基材の表面領域上に層として成膜すること、
Pt及び/又はPdと、Hf及び/又はZrと、Niとを含む相を形成できる条件下で、Hf及び/又はZrを、前記層上又は前記層内に成膜すること、及び
化学蒸着法によるアルミナイジングによりアルミナイドコーティングを形成することを含んでいる、方法。
【請求項36】
Ptが表面領域に蒸着される量は、約2mg/cm2〜約8mg/cm2である、請求項35の方法。
【請求項37】
Ptが表面領域に成膜される量は、約4mg/cm2〜約6mg/cm2である、請求項36の方法。
【請求項38】
コーティングの微細組織内で相を維持する時間の経過後、アルミナイジングを中止することを含む、請求項35の方法。
【請求項39】
前記相がコーティングの微細組織から消滅する間、アルミナイジングを継続することを含む、請求項35の方法。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1(b)】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−527538(P2012−527538A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511818(P2012−511818)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/001464
【国際公開番号】WO2010/134976
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511008942)ハウメット コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/001464
【国際公開番号】WO2010/134976
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511008942)ハウメット コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
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