説明

QRコードを用いた複写禁止手段を持つ画像処理装置

【課題】QRコード(登録商標)を用いた複写防止機能を持つ画像処理装置において、QRコード(登録商標)の復号、比較を高速化する画像処理装置を提供する。
【解決手段】紙媒体に印刷されたQRコード(登録商標)をスキャナにより入力し、読み取ったQRコード(登録商標)を順次比較し、QRコード(登録商標)のデータの一部の画像と期待値を比較し、比較結果が一定以上の割合で一致したら、複写動作を中止し、そうでない場合は、次のQRコード(登録商標)の比較に移行することで、高速な複写防止機能を持つ画像処理装置を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙などの媒体に印刷された二進コードで表されるデータをセル化して、二次元のマトリックス上にパターンとして配置した二次元バーコード、特にQRコード(登録商標)、および、マイクロQRを読み取る際の画像処理技術、および、読み取ったデータに応じて印刷、または、表示、または、伝送を行なう画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二次元バーコードを読み取る画像処理技術が、例えば、特許文献1 に開示されている。
【0003】
図4は、非特許文献1に規定されたQRコードの構造を説明するための図である。図4において、10000はQRコードのシンボル、10001は位置検出パターン、10002は形式情報、10003はデータ及び誤り訂正コード語、10004は位置合わせパターン、10005はタイミングパターン、10006は型番情報である。
【0004】
従来の復号手順を説明する。図5は、非特許文献1に規定されたQRコードの復号手順を説明するためのフローチャートである。図5において、S10101は復号処理の開始、S10102は白・黒モジュールの認識の処理、S10103は形式情報の復号の処理、S10104は型番の決定の処理、S10105はマスク処理の解除の処理、S10106はデータ及び誤り訂正コード語の復元の処理、S10107は誤りがあるかどうかの抽出の判断、S10108はS10107が誤りありの場合に実行される誤り訂正処理、S10109はデータコード語の復号、S10110は出力処理、S10111は復号処理の終了である。次に、図5を用いて、QRコードの復号手順を簡単に説明する。S10102白・黒モジュールの認識において、画像内の最大反射値及び最小反射値の間の中間反射値をしきい値とする。このしきい値を使って、画像を暗及び明のピクセル集合に変換する。次にS10103形式情報の復号において、1:1:3:1:1の比率を持つ暗−明−暗−明−暗の位置検出パターンの中心位置を求め、位置検出パターンの延長線上を探すことで他の位置検出パターンを検出し、位置検出パターンの中心位置を分析することで、シンボルの向きを求め、左上、右上、左下に位置検出パターンが存在するよう画像を回転する。左上、右上、左下の位置検出パターン近傍の形式情報を復号して、形式を決定し、シンボルに適応された誤り訂正レベル及びマスクパターンを得る。次にS10104型番の決定において、右上及び左下の位置検出パターン近傍の型番情報を読み取り、拡張BCH誤り訂正に基づき、誤りがあれば訂正し、型番を決定する。次にS10105マスク処理の解除において、シンボルの符号化領域でマスクパターンをXOR演算することによって、マスク処理を解除し、データ及び誤り訂正を示すシンボルキャラクターを復元する。次にS10106データ及び誤り訂正コード語の復元において、シンボルキャラクターを2モジュール幅の左右交互配置コード語列とみなして、シンボルキャラクターの右下済から走査を開始し、シンボルキャラクターの右から左へ走査し、シンボルキャラクターの上及び下方向を交互に走査することで、単一ビット列のコード語列を抽出する。シンボル型番及び、誤り訂正レベルに応じて、インターリーブ過程を逆順に実行することで、コード語を並び替える。S10107誤りがあるかどうかの抽出において、リードソロモン符号を用いて、コード語の誤りを検出する。S10107において、誤りがある場合、S10108誤り訂正処理において、リードソロモン符号を用いて、誤りを訂正する。S10107において、誤りが無い場合、または、S10108誤り訂正処理の後、S10109データコード語の復号において、列におけるデータブロックを結合することで、元のメッセージを復号する。
【0005】
以上説明した特許文献1、及び、非特許文献1を応用した従来技術として、紙などの媒体に印刷されたQRコードをスキャナー等の画像入力装置で読み取り、QRコードに記憶されたメッセージを基に画像処理の動作を切り替える非図示の画像処理装置が考えられる。その画像処理装置の動作を説明するために、図6の紙媒体を例に挙げて説明する。図6において、10200は多数のQRコードが並べられた紙媒体、10201は10200上に印刷されたQRコード、10201’は10201の拡大図である。
【0006】
図8は、QRコード中に記憶された情報のフォーマットの例であり、QRコードの復号されたメッセージの1番目のバイトから5番目のバイトが識別情報、6番目のバイトが、複写禁止であるかどうかを示す複写禁止情報を表すとして説明する。画像処理装置は、10200中のQRコードを順次復号し、復号されたコード中の識別情報、複写禁止情報の比較を行う。識別情報がaaaaaを表す16進数0x43616e6f6eと一致する場合、複写禁止情報を比較する。識別情報がaaaaaを表す16進数0x43616e6f6eと一致しなかった場合、次のQRコードの復号、分析を行なう。識別情報がaaaaaを表す16進数0x43616e6f6eと一致し、かつ、複写禁止情報が複写禁止を表す1と一致する場合、画像処理装置QRコードが印刷された紙媒体に対して、複写動作を行なわない、または、複写動作を中止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2938338号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JIS規格 X0510(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1の復号手順では、QRコードの復号を行い、元の全てのメッセージを得た後、メッセージの一部を比較するため、処理に時間がかかるという課題がある。
【0010】
図8の情報フォーマットを期待した画像処理装置が、図6の紙媒体を読み込んだ場合の画像処理装置の動作を図7を用いて説明する。図7は、複写禁止機能を持つ画像処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。図7において、S10301はスキャナー等の画像入力装置によって紙媒体に印刷された画像を画像データとして読み取る処理、S10102〜S10109は図5と同様のQRコードの復号処理、S10302は復号されたメッセージ中の1番目のバイトから5番目に格納された識別情報を比較する処理である。識別情報が一致した場合、S10303に進む。識別情報が一致しない場合、S10304に進む。S10303は復号されたメッセージ中の6番目のバイトに格納された複写禁止情報を比較する処理である。S10303が複写禁止の場合S10306に進む。S10303が複写許可の場合S10304に進む。S10304は紙媒体の全てのQRコードを分析したかどうかの判断処理である。S10304において、紙媒体の全てのQRコードを分析した場合、S10305に進む。S10304において、分析されていないQRコードがある場合、S10102に進み、次のQRコードを分析する。S10305はS10301で読み取った画像データを印刷する処理である。S10305は複写禁止処理であり、例えば、画面に複写禁止の紙原稿を複写しようとしたことを表示する、または、複写禁止の紙原稿を複写しようとしたことを画像処理装置の管理者または紙原稿を作成した者に通知する、または、複写禁止の紙原稿を複写しようとしたことをログに記録するなどの処理を行なう。
【0011】
このように、従来のQRコードの復号手順では、QRコードに記憶された全てのメッセージを復号した後、メッセージ中の識別情報、複写禁止情報を比較するため、非常に時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
紙媒体から画像データを読み込むためのスキャナー等の画像入力装置、および、中央演算装置を含む画像処理装置において、
紙媒体に印刷されたQRコードを画像入力装置で読み取り、
読み取った画像の中のQRコードを順次比較し、
QRコードのデータ部分の一部の画像と期待値を比較し、
画像比較結果が一定上の割合で一致したら、複写動作を中止するなど、予め決められた処理を行い、
画像比較結果が一定上の割合で一致しなかったら、次の注目QRコードの比較に移行することを特徴とする画像処理装置。
【発明の効果】
【0013】
QRコードを全て復号する前に、画像データの状態で一部データを比較することで、QRコードの比較を高速化出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例の概念を説明するための図
【図2】本発明の第一の実施例を説明するためのフローチャート
【図3】本発明の第二の実施例を説明するためのフローチャート
【図4】QRコードの例
【図5】従来の復号手順を説明するためのフローチャート
【図6】QRコードが印刷された紙媒体の例
【図7】従来の複写禁止機能を持つ画像処理装置の動作を説明するためのフローチャート
【図8】QRコード中に記憶された情報のフォーマットの例
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の第一の実施例の概念を説明するための図である。
【0017】
図1において、100は紙媒体、101は紙媒体に印刷されたQRコード、101’はQRコードの拡大図、102は判別情報が格納されたエリア、103は複写禁止情報が格納されたエリアである。実際、非特許文献1で規定では、2モジュール幅の左右交互配置コード語列であるため、102、103は矩形ではないが、説明のため、矩形であるとして、以下説明する。図1において、実際に画像入力装置で読み取った判別情報が格納されたエリア102及び複写禁止情報が格納されたエリア103のQRコードの一部データと、判別情報及び複写禁止情報の期待値をそれぞれ比較し、一致するかどうかを画像の状態で判断する。
【0018】
図1の詳細動作を図2を用いて説明する。図2は本発明の第一の実施例の画像処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。図2において、S10101〜S10104及びS10301は、従来の図7のフローチャートと同様の動作である。S201は識別情報の格納位置及び期待値を生成する処理、S202は複写禁止情報の格納位置及び期待値を生成する処理、S203はS201で生成した識別情報の期待値を画像比較する処理、S204はS202で生成した複写禁止情報の期待値を画像比較する処理である。S10304〜S10306及びS10111は、従来の図7のフローチャートと同様の動作である。図2と図7を比較して分かるように、図2は誤り訂正及び復号の処理が不要であるので、従来例と比較して、高速化が可能である。
【0019】
非特許文献1に8種類のマスクが定義されている。図3は、図2のフローチャートに対して、8種類のマスクに対応する8つの期待値を生成・比較する処理を追加したフローチャートである。図2において、S10101〜S10104及びS10301は、従来の図7のフローチャートと同様の動作である。S301は識別情報の格納位置及び8つの期待値を生成する処理、S302は複写禁止情報の格納位置及び8つの期待値を生成する処理、S303はS201で生成した識別情報の期待値を画像比較する処理、S204はS202で生成した複写禁止情報の期待値を画像比較する処理である。S10304〜S10306及びS10111は、従来の図7のフローチャートと同様の動作である。このように予めマスクが分かっていない場合でも、マスクに対応する期待値を生成することで、画像比較による高速処理可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙媒体から画像データを読み込むための画像入力装置、および、中央演算装置を含む画像処理装置において、
紙媒体に印刷されたQRコードを画像入力装置で読み取り、
読み取った画像の中のQRコードに順次注目し、
QRコードのデータ部分の一部の画像と期待値を比較し、
画像比較結果が一定上の割合で一致したら、予め決められた処理を行い、
画像比較結果が一定上の割合で一致しなかったら、次の注目QRコードの比較に移行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
紙媒体から画像データを読み込むための画像入力装置、および、中央演算装置を含む画像処理装置において、
紙媒体に印刷されたQRコードを画像入力装置で読み取り、
読み取った画像の中のQRコードに順次注目し、
QRコードの形式情報、型式情報を元に、期待値の格納位置及び期待値を生成し、
QRコードのデータ部分の一部の画像と期待値を比較し、
画像比較結果が一定上の割合で一致したら、予め決められた処理を行い、
画像比較結果が一定上の割合で一致しなかったら、次の注目QRコードの比較に移行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
紙媒体から画像データを読み込むための画像入力装置、および、中央演算装置を含む画像処理装置において、
紙媒体に印刷されたQRコードを画像入力装置で読み取り、
読み取った画像の中のQRコードに順次注目し、
QRコードの形式情報、型式情報を元に、期待値の格納位置及びマスクに対応する複数の期待値を生成し、
QRコードのデータ部分の一部の画像と複数の期待値を比較し、
画像比較結果が一定上の割合で一致したら、
予め決められた処理を行い、
画像比較結果が一定上の割合で一致しなかったら、次の注目QRコードの比較に移行することを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−4110(P2011−4110A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144916(P2009−144916)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】