説明

RFIDラベル発行装置

【課題】実運用上充分な無線出力レベルを有するRFIDタグを備えたRFIDラベルを容易に得られるようにする。
【解決手段】RFIDリーダ・ライタと交信が成功したRFIDタグの無線出力レベルが基準レベル以上か否かを判定する。無線出力レベルが基準レベル以上と判定されたRFIDタグを有するRFIDラベルの印刷面に印刷部によりラベルデータを印刷させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)ラベルに設けられたRFIDタグに対してタグデータの書込み及び読込みを行うRFIDリーダ・ライタと、当該RFIDラベルの印刷面にラベルデータを印刷する印刷部とを備えたRFIDラベル発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップとアンテナとからなるRFIDタグをラベルシールに封入したRFIDラベルが注目されている。このRFIDラベルは、RFIDタグへのデータの書込みや読込みを、無線通信を利用して非接触で行うため、汚れ,埃などの影響を受け難いこと等の利点がある。そこで、例えば物流分野においては、各物品にそれぞれ付される物品管理用のラベルとして、上記RFIDラベルを適用することが考えられている。
【0003】
従来、帯状の台紙に多数枚のRFIDラベルを一列に整列させて剥離自在に貼り付けてなるRFIDラベル用紙を取扱可能なRFIDラベル発行装置は既に知られていた。この装置は、RFIDラベル用紙を搬送する搬送路に沿って、その先端側に印刷ヘッドが設けられており、それより搬送方向上流側にRFIDリーダ・ライタのアンテナが設けられている。そして、搬送路を順次搬送されるRFIDラベルのRFIDタグとRFIDリーダ・ライタがアンテナを介して交信を行ってタグデータを非接触で書き込む。また、このRFIDラベルの表面(印刷面)に印刷ヘッドにより可視情報を印刷する。このようなRFIDラベル発行装置を用いることによって、前述したような物品管理用ラベルを生成することができる。
【0004】
ところで、RFIDラベルに設けられるRFIDタグは、必ずしも全てが正常に機能するとは限らない。RFIDラベル用紙に設けられた多数のRFIDラベルの中には、RFIDタグが壊れてしまっているものもある。上述したようなRFIDラベル発行装置から発行されたRFIDラベルは、印刷データについては視覚により正誤を判断することができる。しかし、RFIDタグに対する書込みは電気的なものであるため、タグデータが正常に書込まれたか否かを視覚により判断することはできない。
【0005】
そこで従来、RFIDタグに対するデータの書込みに失敗した場合には、通常の印刷データでなく特殊パターンをRFIDラベルの表面に印刷することによって、異常ラベルを視覚により判断できるようにしたRFIDラベル発行装置が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、この種のRFIDラベル発行装置は、搬送路の搬送面から至近距離にRFIDリーダ・ライタのアンテナが取り付けられている。その理由は、搬送面からアンテナまでの距離を長くしようとすると、装置を大型にせざるを得ず、実用に供さないためである。一方、アンテナは、その直上の搬送面に向けて強い指向性を有している。その理由は、アンテナ上に順次搬送されてくるRFIDラベルに対して順番にタグデータを非接触で書込む必要があるためである。
【0007】
このため、従来のRFIDラベル発行装置においては、無線出力レベルが正常値よりも低く実運用上では支障を来たすような不良品のRFIDタグに対しても、アンテナとの距離が近いためタグデータを書込めてしまうことがあった。この場合、この不良品のRFIDラベルは正常なラベルとして発行されるので、実運用上充分な無線出力レベルを有するRFIDタグを備えたRFIDラベルと区別できないという問題があった。
【0008】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、実運用上充分な無線出力レベルを有するRFIDタグを備えたRFIDラベルを容易に得ることができるRFIDラベル発行装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、RFIDラベルに設けられたRFIDタグと無線通信を利用して非接触の交信を行うことによりRFIDタグに対してタグデータの書込み及び読込みを行うRFIDリーダ・ライタと、RFIDラベルの印刷面にラベルデータを印刷する印刷部とを備えたRFIDラベル発行装置において、RFIDリーダ・ライタと交信が成功したRFIDタグの無線出力レベルが基準レベル以上か否かを判定するレベル判定手段と、このレベル判定手段により無線出力レベルが基準レベル以上と判定されたRFIDタグを有するRFIDラベルの印刷面に印刷部によりラベルデータを印刷させる印刷制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
かかる手段を講じた本発明によれば、実運用上充分な無線出力レベルを有するRFIDタグを備えたRFIDラベルを容易に得ることができるRFIDラベル発行装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態において使用されるRFIDラベル用紙の要部を示す模式図。
【図2】図1のA−A矢視断面を拡大して示す模式図。
【図3】本発明の一実施の形態であるRFIDラベル発行装置の全体構成を示すブロック図。
【図4】同RFIDラベル発行装置が有するRFIDリーダ・ライタの要部構成を示すブロック図。
【図5】同RFIDラベル発行装置が有するプリンタ制御部が実行するRFIDラベル発行処理の要部手順を示す流れ図。
【図6】同RFIDラベル発行装置から発行される正常ラベルの一印刷例を示す模式図。
【図7】同RFIDラベル発行装置から発行される警告ラベルの一印刷例を示す模式図。
【図8】同RFIDラベル発行装置から発行される異常ラベルの一印刷例を示す模式図。
【図9】同RFIDラベル発行装置から発行される警告ラベルの他の印刷例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
はじめに、本実施の形態で使用されるRFIDラベル用紙1について、図1及び図2を用いて説明する。
【0013】
図1に示すように、RFIDラベル用紙1は、帯状の台紙2と、この台紙2の表面に、台紙2の長手方向に一列に整列させて剥離自在に貼り付けられた多数枚のRFIDラベル3とから構成されている。各RFIDラベル3は、図1のA−A矢視断面を拡大する図2に示すように、それぞれラベルシート4の裏面側(台紙2との接着面側)に、ICチップ5とアンテナ6とを薄いフィルムに内蔵してなるRFIDタグ(またはRFIDインレット)7を封入した構造となっている。そして、ラベルシート4の表面を情報の印刷面としている。なお、図2において、符号8は接着剤を示している。
【0014】
RFIDタグ7のICチップ5には、電源生成部,復調部,変調部,メモリ部及びこれらを制御する制御部等が設けられている。電源生成部は、アンテナ6で受信した電波に相当する信号の整流と安定化を行なうことによりICチップ5の各部に電源を供給する。復調部は、アンテナ6で受信した電波に相当する信号を復調して制御部へ送出する。変調部は、制御部から送出されたデータを変調してアンテナ6から発信させる。制御部は、復調部で復調されたデータのメモリ部への書込みや、メモリ部からデータを読み出して変調部へ送出する。
【0015】
メモリ部は、データを書換え不能に記憶保持する設定エリアと、任意のデータを書き込み可能なユーザエリアとから構成されている。そして、設定エリアには、予めIDコードが書き込まれている。IDコードは、各RFIDタグ7を個々に識別するために設定されるRFIDタグ固有のコードである。
【0016】
次に、前記RFIDラベル用紙1を使用し、順次搬送されるRFIDラベル3のRFIDタグ7に無線通信を利用して非接触でタグデータを書き込むとともに、そのRFIDラベル3におけるラベルシート4の表面(印刷面)にラベル印刷データを印刷するようにしたRFIDラベル発行装置について図3〜図5を用いて説明する。
【0017】
図3はRFIDラベル発行装置の全体構成を示すブロック図である。このRFIDラベル発行装置に対して前記RFIDラベル用紙1は、ロール状に巻回された状態で図示しないラベルホルダにセットされる。そして、その先端がラベルホルダから繰り出され、所定の搬送路に沿って図示しない剥離部に導かれる。剥離部では、台紙2からRFIDラベル3が剥離される。剥離部で剥離されたRFIDラベル3は、図示しないラベル発行口から排出される。RFIDラベル3が剥離された台紙2は、図示しない巻取ローラによって巻き取られる。
【0018】
さて、ラベルホルダから剥離部までの搬送路上には、RFIDラベル用紙1の搬送方向(図中矢印B方向)上流側であるラベルホルダ側から下流側である剥離部側に向けて順に、ラベルセンサ11、RFIDリーダ・ライタ12のアンテナ13及び印刷ヘッド14が設けられている。ラベルセンサ11及び印刷ヘッド14は、搬送路の上部に設けられている。これに対してアンテナ13は、搬送路の下部に設けられている。また、搬送路を挟んで印刷ヘッド14と対向する位置にプラテンローラ15が設けられている。なお、搬送路の上部にアンテナ13を設けてもよい。
【0019】
ラベルセンサ11は、ラベルホルダから繰り出されたRFIDラベル用紙1に設けられているRFIDラベル3の検出を行うもので、例えば、RFIDラベル3の先端エッジを光学的に検知することによって、RFIDラベル3を検出する。その検出信号は、I/Oポート16を介して後述するプリンタ制御部22に供給されるようになっている。
【0020】
アンテナ13は、RFIDリーダ・ライタ12の制御により電波(または電磁波)を発信し、この電波(または電磁波)を受信したRFIDタグ7から発信される応答波を受信するもので、搬送路の搬送面から至近距離に設けられている。そして、直上(アンテナ13が搬送路の上側に設けられている場合は直下)の搬送面に向けて強い指向性を有している。RFIDリーダ・ライタ12は、アンテナ13から発信される電波(または電磁波)の交信領域内に存在するRFIDタグ7に対してタグデータの書込み及び読込みを行うもので、詳細については後述する。
【0021】
印刷ヘッド14は、ヘッド駆動部17により駆動され、プラテンローラ15上に位置するRFIDラベル3の表面(ラベルシート4の印刷面)に種々の可視情報を印刷するもので、例えばサーマルヘッドが使用される。ここに、印刷ヘッド14及びヘッド駆動部17は、印刷部を構成する。なお、印刷ヘッド14とRFIDラベル3との間にインクリボンが介在してもよい。
【0022】
この他、RFIDラベル発行装置は、操作パネル18、搬送系駆動部19、通信インターフェイス20、メモリ21及びプリンタ制御部22等を備えている。
【0023】
操作パネル18には、各種キーや表示部等が設けられている。搬送系駆動部19は、プラテンローラ15や巻取ローラ等のRFIDラベル用紙搬送系の駆動源として機能する。この搬送系駆動部19の作用によりRFIDラベル用紙1が搬送路に沿って搬送される。通信インターフェイス20には、例えばパソコン等のホスト機器が通信回線を介して接続されている。そして、RFIDラベル3のRFIDタグ7に書込むタグデータと、そのRFIDラベル3の印刷面に印刷する文字等のラベル印刷データとを含むRFIDラベル発行ジョブがホスト機器から送られてくる。ホスト機器から受信したRFIDラベル発行ジョブは、そのジョブが完了するまでメモリ21に記憶保持される。また、メモリ21には、ホスト機器から受信したRFIDラベル発行ジョブに基づき編集されたタグデータを一時的に記憶するエリアや、ラベル印刷データのイメージが展開されるエリア等が形成されている。
【0024】
図4は前記RFIDリーダ・ライタ12の要部構成を示すブロック図である。RFIDリーダ・ライタ12は、前記プリンタ制御部22とのインターフェイス31、リーダ・ライタ制御部32、送信処理部33、受信処理部34、サーキュレータ35及びメモリ36等で構成されている。
【0025】
送信処理部33は、リーダ・ライタ制御部32から出力されるアナログの送信データ信号で所定の搬送波を変調する変調器41及びこの変調器41で変調された信号を増幅する増幅器42等で構成されている。増幅器42で増幅された信号は、サーキュレータ35を介してアンテナ13に供給され、アンテナ1から電波(または電磁波)として放射される。
【0026】
サーキュレータ35は、送信処理部33側から入力された信号をアンテナ13に出力し、アンテナ13側から入力された信号を受信処理部34側に出力する機能を有する。アンテナ13からは、その交信領域内に存在するRFIDタグ7から受信した電波(または電磁波)に相当する信号がサーキュレータ35に与えられる。
【0027】
受信処理部34は、サーキュレータ35を介して入力された信号を増幅する増幅器43、この増幅器43で増幅された信号から所定の搬送波成分を除去してアナログの受信データ信号を復調する復調器44、この復調器44で復調された受信データ信号のうち所定の低周波数帯の信号を通過させるLPF(Low Pass Filter)45及びこのLPF45を通過した受信データ信号の強度レベルが一定の適正レベルとなるように利得(増幅率)を調整するAGC(Automatic Gain Control)回路46等で構成されている。このAGC回路46で適正レベルに調整された受信データ信号がリーダ・ライタ制御部32に与えられる。
【0028】
リーダ・ライタ制御部32は、インターフェイス31を介して接続されたプリンタ制御部22からのコマンドに応じて送信データ信号を生成し、送信処理部33に与える機能と、受信処理部34から与えられた受信データ信号をプリンタ制御部22で認識可能なデータに変換し、インターフェイス31を介してプリンタ制御部22に与える機能とを有する。また、前記AGC回路46から入力される受信データ信号の強度レベルが適正レベルとなるように、AGC回路46の利得を可変するためのAGCパラメータpを生成して、AGC回路46に与える機能を有する。
【0029】
メモリ36は、読出し専用のROM領域と、読出し及び書込みが自在なRAM領域とを有する。そして、ROM領域には、前記リーダ・ライタ制御部32の動作を制御するプログラム等が格納されている。また、RAM領域には、特に、先入れ・先出し機能を有するレジスタ51と、基準値記憶部52とが形成されている。レジスタ51には、前記リーダ・ライタ制御部32からAGC回路46に与えられたAGCパラメータpが、その与えられた順番に書込まれる。
【0030】
図5は本実施の形態のRFIDラベル発行装置によって1枚のRFIDラベル3が発行されるまでのプリンタ制御部22の処理手順を示す流れ図である。すなわちプリンタ制御部22は、メモリ21に記憶されたRFIDラベル発行ジョブを起動する毎に、このRFIDラベル発行処理を開始する。
【0031】
先ず、プリンタ制御部22は、ST(ステップ)1としてラベルセンサ11がRFIDラベル3を検出したか否かを判断する。RFIDラベル3を検出していない場合には、プリンタ制御部22は、搬送系駆動部19を制御してRFIDラベル用紙1を一定のピッチで搬送させる。
【0032】
ラベルセンサ11によってRFIDラベル3が検出されたならば、プリンタ制御部22は、このRFIDラベル3を発行対象RFIDラベル3として認識する。そして、ST2としてこの発行対象RFIDラベル3のRFIDタグ7がアンテナ13の交信領域内に入るまで搬送されるのに要する時間を待機する。この時間は、ラベルセンサ11からアンテナ13までの距離と、RFIDラベル用紙1の搬送速度とによって定められる。この時間を経過したならば、プリンタ制御部22は、ST3として実行中のRFID発行ジョブに基づき編集されたタグデータの書込みを指令するタグ書込みコマンドを生成し、RFIDリーダ・ライタ12に与える。
【0033】
このタグ書込みコマンドを受信したRFIDリーダ・ライタ12は、以下の如く動作する。先ず、リーダ・ライタ制御部32がタグ書込みコマンドの送信データ信号を生成し、送信処理部33に与える。送信処理部33では、この送信データ信号が変調され、さらに増幅されて、アンテナ13から当該送信データ信号に相当する電波(または電磁波)が発信される。このとき、アンテナ13の交信領域内には、発行対象RFIDラベル3が搬送されている。そこで、この発行対象RFIDラベル3に封入されたRFIDタグ7が電波(または電磁波)の受信により活性化されると、このRFIDタグ7のメモリ部にタグデータが書込まれる。そして、RFIDタグ7から書込み成功応答を示す電波(または電磁波)が発信される。
【0034】
この書込み成功応答の電波(または電磁波)がアンテナ13で受信されると、アンテナ13から受信電波(または電磁波)に応じた信号が受信処理部34に与えられる。受信処理部34では、この信号が増幅され、書込み成功応答のデータ信号に復調される。さらに、このデータ信号から所定の低周波数帯の信号成分が抽出された後、AGC回路46を介してリーダ・ライタ制御部32に与えられる。
【0035】
この際、リーダ・ライタ制御部32は、AGC回路46から与えられるデータ信号の強度レベルが適正レベルになるように、AGC回路46の利得を可変するためのAGCパラメータpを生成する。そして、このAGCパラメータpをAGC回路46に与えるとともにレジスタ51に書込む。かくして、リーダ・ライタ制御部32には、AGC回路46によって適正レベルに調整された書込み成功応答のデータ信号が入力される。そして、このデータ信号がプリンタ制御部22で認識可能なデータに変換され、インターフェイス31を介してプリンタ制御部22に与えられる。
【0036】
そこでプリンタ制御部22は、ST3にてタグ書込みコマンドをRFIDリーダ・ライタ12に送信した後、ST4としてRFIDリーダ・ライタ12から書込み成功応答のデータが返信されるのを待機する。そして、所定時間内に書込み成功応答のデータを受信したならば、プリンタ制御部22は、ST5としてRFIDリーダ・ライタ12のレジスタ51から先頭のAGCパラメータpを読み出す。そして、ST5としてこのAGCパラメータpが予め設定された閾値以上か否かを判断する。
【0037】
ここで、RFIDリーダ・ライタ12から取得したAGCパラメータpは、ST3の処理で送信したタグ書込みコマンドに応じてタグデータが書込まれたRFIDタグ7からの書込み成功応答のデータ信号の強度レベルを適正レベルに調整するためにAGC回路46に与えられたパラメータである。
【0038】
一方、RFIDラベル発行装置は、RFIDラベル用紙1が搬送される搬送路の搬送面から至近距離にRFIDリーダ・ライタ12のアンテナ13が取り付けられている。また、アンテナ13は、その直上の搬送面に向けて強い指向性を有している。このため、無線出力レベルが正常なRFIDタグ7から受信した信号の強度レベルは大きくなり、歪が生じ易い。そこで、AGC回路46を介在させて受信信号の強度レベルを適正レベルまで低めることが行われている。その結果、無線出力レベルが正常なRFIDタグ7からの受信信号に対しては、AGC回路46に与えられるAGCパラメータpの値が大きくなる。これに対し、無線出力レベルが正常値よりも低いRFIDタグ7からの受信信号に対しては、元々その強度レベルが低いので、AGCパラメータpの値は無線出力レベルの低下に比例して小さくなる。
【0039】
そこで本実施の形態では、実運用上、支障を来たすおそれのない無線出力レベルを有するRFIDタグ7からの受信信号の強度レベルを適正レベルまで低めるためのAGCパラメータpの値を閾値として予め例えばメモリ21に設定している。ここに、ST5の処理は、RFIDリーダ・ライタ12と交信が成功したRFIDタグ7の無線出力レベルが基準レベル以上か否かを判定するレベル判定手段として機能する。
【0040】
プリンタ制御部22は、ST6にてAGCパラメータpを閾値と比較した結果、AGCパラメータpが閾値以上であった場合には、対応するRFIDタグ7の無線出力レベルは実用に充分耐え得る基準レベル以上なので、ST7として正常ラベル印刷データを作成する。すなわち、実行中のRFIDラベル発行ジョブに基づきラベル印刷データのイメージをメモリ21に展開する。そして、ST8として発行対象RFIDラベル3におけるラベルシート4の印刷面が印刷ヘッド14による印刷開始位置まで搬送されるのに要する時間を待機する。この時間は、ラベルセンサ11から印刷ヘッド14までの距離と、RFIDラベル用紙1の搬送速度とによって定められる。この時間を経過したならば、プリンタ制御部22は、ヘッド駆動部17を制御して、正常ラベル印刷データのイメージを発行対象RFIDラベル3の印刷面に印刷出力させる(印刷制御手段)。
【0041】
これに対し、ST6にてAGCパラメータpが閾値未満であった場合には、対応するRFIDタグ7の無線出力レベルは基準レベルに満たない不良品なので、ST10として警告ラベル印刷データを作成する。すなわち、実行中のRFIDラベル発行ジョブに基づきラベル印刷データのイメージとともに、予め設定された警告メッセージのイメージをメモリ21に展開する。また、ST11として操作パネル18に不良の警告ラベルが発行されることをユーザに知らせるための警告表示を行わせる(警報手段)。
【0042】
しかる後、前記ST8,ST9の処理を実行する。すなわち、発行対象RFIDラベル3の印刷面が印刷開始位置まで搬送されるのに要する時間を待機し、この時間を経過したならば、ヘッド駆動部17を制御して、警告ラベル印刷データのイメージを発行対象RFIDラベル3の印刷面に印刷出力させる(警告印刷制御手段)。
【0043】
一方、ST4にて所定時間内に書込み成功応答のデータを受信できなかった場合には、RFIDタグ7に対するタグデータの書込みに失敗したので、プリンタ制御部22は、ST12として異常ラベル印刷データを作成する。すなわち、予め設定された特殊パターンのイメージをメモリ21に展開する。また、ST13として操作パネル18にエラーとなった異常ラベルが発行されることをユーザに知らせるための警告表示を行わせる。
【0044】
しかる後、前記ST8,ST9の処理を実行する。すなわち、発行対象RFIDラベル3の印刷面が印刷開始位置まで搬送されるのに要する時間を待機し、この時間を経過したならば、ヘッド駆動部17を制御して、異常ラベル印刷データのイメージを発行対象RFIDラベル3の印刷面に印刷出力させる。
【0045】
こうして、正常,警告または異常のいずれかのラベル印刷データが印刷された発行対象RFIDラベル3が剥離部に導かれ、台紙2から剥離されてラベル発行口から排出されたならば、プリンタ制御部22は、今回のRFIDラベル発行処理を終了する。
【0046】
この際、次のRFIDラベル発行ジョブが起動されない場合には、搬送系駆動部19を制御してRFIDラベル用紙1の搬送を停止させる。また、起動したRFIDラベル発行ジョブが複数枚のラベル発行を指令するものであった場合には、その発行枚数に相当する回数だけRFIDラベル発行処理を繰返し実行する。
【0047】
このように本実施の形態のRFIDラベル発行装置においては、RFIDリーダ・ライタ12と交信が成功したRFIDタグ7の無線出力レベルが基準レベル以上か否かを判定している。そして、無線出力レベルが基準レベル以上と判定されたRFIDタグ7を有するRFIDラベル3の印刷面には、図6に示す印刷例のように通常のラベルデータが印刷されて、正常ラベル60として発行される。
【0048】
これに対し、無線出力レベルが基準レベルに満たないと判定されたRFIDタグ7を有するRFIDラベル3の印刷面には、図7に示す印刷例のように通常のラベルデータ以外に警告メッセージ71「TAG WARNING」が印刷されて、警告ラベル70として発行される。
【0049】
また、タグデータの書込みに失敗したRFIDタグ7を有するRFIDラベル3の印刷面には、図8に示す印刷例のように特殊パターンが印刷されて、異常ラベル80として発行される。
【0050】
したがって、正常ラベル60として発行されたRFIDラベル3は、全て無線出力レベルが基準レベル以上と判定されたRFIDタグ7を有するものであるので、実運用上充分な無線出力レベルを有するRFIDタグ7を備えたRFIDラベル3を容易に得ることができる。
【0051】
また、タグデータが正常に書込まれたものの、無線出力レベルが基準レベルに満たないRFIDタグ7を有するRFIDラベル3は、全て警告ラベル70として発行される。この警告ラベル70には、警告メッセージ71が印刷されているので、正常なRFIDラベル3と視覚的に区別することができる。ここで、警告ラベル70は、無線出力レベルが基準レベルに満たないRFIDタグ7を有するものであるので、RFIDリーダ・ライタのアンテナと近い環境下において使用される場合には、実用上問題がない。そこで、このような環境下で使用されることがわかっている場合には、警告ラベル70であっても破棄せずに使用することができるので、無駄を減らすことができる。
【0052】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0053】
例えば、前記実施の形態では、無線出力レベルが基準レベルに満たないRFIDタグ7を有するRFIDラベル3に対して、所定の警告メッセージ71を付加したデータを警告データとして印刷出力するようにしたが、異常ラベル80に印刷されるイメージのように特殊パターンのイメージを印刷出力することによって、正常ラベル60と視覚的に区別できるようにしてもよい。
【0054】
また、前記実施の形態では、レベル判定手段において、AGCパラメータと比較される閾値を固定としたが、例えば通信インターフェイス20を介して接続されたホスト機器からの指令や、操作パネル18のキー操作入力等によって閾値をユーザが任意に設定できるようにしてもよい。こうすることにより、RFIDラベル3の実際の使用環境が変化する都度、その使用環境に適合した閾値を設定することによって、適正な無線出力レベルを有するRFIDタグ7が封入されたRFIDラベル3を確実に得られるようになる。
【0055】
また、前記警告ラベル70に印刷される警告データは、図7に示すような警告メッセージ71に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、AGCパラメータの値をRFIDタグ7の無線出力レベルを示唆する参考数値として示す可視情報72を警告ラベル70に印刷してもよい。
【0056】
また、このAGCパラメータの値を示す可視情報72を印刷するラベルは警告ラベル70に限定されるものではなく、無線出力レベルが基準レベル以上と判定された正常ラベル60にも上記可視情報を印刷出力するようにして、そのRFIDラベル3に封入されたRFIDタグ7の性能をユーザに通知するようにしてもよい。
【0057】
また、警告ラベル70及び異常ラベル80が発行される際の警報は、表示に限定されるものではなく、ブザー音などの警報音を鳴らすようにしてもよい。また、警告ラベル70が発行されるときと異常ラベル80が発行されるときとで警報の内容を異ならせることで、ユーザが視覚または聴覚で区別できるようにしてもよい。
【0058】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…RFIDラベル用紙、2…台紙、3…RFIDラベル、7…RFIDタグ、11…ラベルセンサ、12…RFIDリーダ・ライタ、13…アンテナ、14…印刷ヘッド、15…プラテン、17…ヘッド駆動部、18…操作パネル、19…搬送系駆動部、20…通信インターフェイス、21…メモリ、22…プリンタ制御部、32…リーダ・ライタ制御部、33…送信処理部、34…受信処理部、46…AGC回路、51…レジスタ、60…正常ラベル、70…警告ラベル、80…異常ラベル。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2001−96814号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFID(Radio Frequency Identification)ラベルに設けられたRFIDタグと無線通信を利用して非接触の交信を行うことにより前記RFIDタグに対してタグデータの書込み及び読込みを行うRFIDリーダ・ライタと、前記RFIDラベルの印刷面にラベルデータを印刷する印刷部とを備えたRFIDラベル発行装置において、
前記RFIDリーダ・ライタと交信が成功した前記RFIDタグの無線出力レベルが基準レベル以上か否かを判定するレベル判定手段と、
このレベル判定手段により無線出力レベルが基準レベル以上と判定された前記RFIDタグを有する前記RFIDラベルの印刷面に前記印刷部により前記ラベルデータを印刷させる印刷制御手段と、
を具備したことを特徴とするRFIDラベル発行装置。
【請求項2】
RFID(Radio Frequency Identification)ラベルに設けられたRFIDタグと無線通信を利用して非接触の交信を行うことにより前記RFIDタグに対してタグデータの書込み及び読込みを行うRFIDリーダ・ライタと、前記RFIDラベルの印刷面にラベルデータを印刷する印刷部とを備えたRFIDラベル発行装置において、
前記RFIDリーダ・ライタと交信が成功した前記RFIDタグの無線出力レベルが基準レベル以上か否かを判定するレベル判定手段と、
このレベル判定手段により無線出力レベルが基準レベルに満たないと判定された前記RFIDタグを有する前記RFIDラベルの印刷面に前記印刷部により警告データを印刷させる警告印刷制御手段と、
を具備したことを特徴とするRFIDラベル発行装置。
【請求項3】
前記レベル判定手段により前記RFIDタグの無線出力レベルが基準レベルに満たないと判定されると警報を発する警報手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2記載のRFIDラベル発行装置。
【請求項4】
前記警告印刷制御手段は、前記ラベルデータに所定の警告メッセージを付加したデータを警告データとして前記RFIDラベルの印刷面に印刷させることを特徴とする請求項2記載のRFIDラベル発行装置。
【請求項5】
前記警告印刷制御手段は、前記ラベルデータとは異なる特殊パターンを前記RFIDラベルの印刷面に印刷させることを特徴とする請求項2記載のRFIDラベル発行装置。
【請求項6】
前記レベル判定手段は、前記RFIDタグから受信した信号の強度を適正レベルに自動的に調整する自動ゲインコントロールのパラメータに基づいて判定することを特徴とする請求項1または2記載のRFIDラベル発行装置。
【請求項7】
前記レベル判定手段は、前記RFIDタグから受信した信号の強度を適正レベルに自動的に調節する自動ゲインコントロールのパラメータに基づいて判定し、
前記警告印刷制御手段は、前記ラベルデータに前記自動ゲインコントロールのパラメータを付加したデータを警告データとして前記RFIDラベルの印刷面に印刷させることを特徴とする請求項2記載のRFIDラベル発行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−102735(P2010−102735A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4373(P2010−4373)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願2006−257530(P2006−257530)の分割
【原出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】