説明

RM1抗原の治療目的使用方法

RM1抗体によって認識される抗原は治療、診断、および画像化に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
新規のタンパク質発現パターンが異常な細胞増殖(特に、癌)と関連付けられている。ある種の過剰発現タンパク質が腫瘍関連抗原(TAA)として知られている。
【0002】
これらのTAAの一部は、ある特定の腫瘍において、まれにしか発現されない。組織学的に類似した腫瘍に共通してあるTAAもあれば、組織学的に異なる多種多様な癌ならびに胎児組織において発現しているTAAもある。
【0003】
前者の種類のTAAは、自家治療法の考案において用いられる以外はほとんど用いられない。対照的に、広範囲の腫瘍(組織学的に類似した腫瘍、さらには組織学的に異なる腫瘍)に共通してあるTAAには、多様な悪性腫瘍にまたがる患者の免疫診断、免疫予後(immunoprognosis)、および治療の潜在的な用途がある。
【0004】
最も重要な種類のTAAの一例がB細胞リンパ腫のイディオタイプタンパク質である。さらに一般的なTAAの一例は、黒色腫細胞から単離されたMAGEタンパク質である。
【0005】
腫瘍に関連する別の種類の過剰発現タンパク質または異常発現タンパク質は癌遺伝子の発現産物である。癌遺伝子活性の阻害は有用な治療手段であることが証明されている。
【0006】
ヒトの成長新生物に対する免疫の惹起は、TAAまたは癌遺伝子発現産物を用いた能動免疫によって増強できることを示唆する例がある。このような特異的能動免疫の目的は、成長新生物により自然に誘発される以上に、腫瘍の成長または転移に関連する抗原に対する免疫応答を誘発することである。成長新生物は、宿主において、高いレベルまたは異常なレベルで発現しているタンパク質に対して最大免疫応答を誘発しないと考えられている。
【0007】
TAAによる免疫は病院において有効であることが分かりつつある。動物モデルでも、トランスフォーメーションに関連する遺伝子に対する免疫応答を惹起する効力が証明されている。
【0008】
従って、これらの異常発現タンパク質に関連する抗原に対する応答を増強する手段が提供できれば、癌治療において有用であることが分かるだろう。さらに、特異的抗原を同定することも、癌の診断、画像化、および病期分類において有用であることが分かるだろう。
【0009】
特に、肺癌は、米国において最もよく見られる致死性の癌である。1992年において、肺癌の新規症例は168,000件、肺癌による死亡は146,000人と見積もられた。新たに診断された非小細胞肺癌(NSCLC)症例の全5年生存率は10〜15%しかない。従って、肺癌を治療する新規の手段、ならびに肺癌を検出または画像化する手段は非常に有用であることが分かるだろう。
【0010】
結腸癌は、米国において2番目によく診断される悪性腫瘍である。結腸癌は腸に限定される場合、切除によって根治可能な場合が多いが、それにもかかわらず、米国における2番目に大きな癌死因である。従って、結腸癌を治療、診断、または画像化する新規の手段が有用であると分かるだろう。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
1つの局面において、本発明は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する、単離されたヒストンH2Aポリペプチドを特徴とする。この抗体および細胞株は、その全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第5,744,585号(記名された発明者:Rajko D. MedenicaおよびSonjoy Mukerjee)において以前に説明されている。この局面の1つの態様において、本発明は、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端に欠失を有するH2Aヒストンを特徴とする。ある特定の態様であるが、限定しない態様において、本発明の単離されたヒストンH2Aポリペプチドは、アミノ末端配列AAVLGYLTAEILELAから始まる。別の限定しない態様において、本発明の単離されたヒストンH2Aポリペプチドはアミノ末端配列MAAVLEYLTAEILELAから始まり、わずかに異なる限定しない態様において、本発明の単離されたヒストンH2AポリペプチドはAAVLEYLTAEILELAから始まる。
【0012】
この局面の特定の態様において、本発明は、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも10アミノ酸;完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも20アミノ酸;完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも30アミノ酸;完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも40アミノ酸;完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも50アミノ酸;完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも51アミノ酸;完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも60アミノ酸;完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも70アミノ酸;または完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも80アミノ酸の欠失を有するH2Aヒストンを特徴とする。
【0013】
この局面のさらなる態様において、本発明は、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から40〜60アミノ酸;または完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から45〜55アミノ酸の欠失を有するH2Aヒストンを特徴とする。
【0014】
この局面のなおさらなる態様において、本発明は、長さが128アミノ酸以下のH2Aポリペプチド;長さが約90〜約100アミノ酸以下のH2Aポリペプチド;長さが約70〜約90アミノ酸以下のポリペプチド;または長さが約50〜約70アミノ酸以下のポリペプチドを特徴とする。
【0015】
他の局面において、本発明は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するH2Aポリペプチドのカルボキシル末端部分を含む単離されたポリペプチドを特徴とする。ここで、このH2A配列は長さが128アミノ酸以下である;このH2A配列は長さが約100アミノ酸以下である;このH2A配列は長さが約90アミノ酸以下である;このH2A配列は長さが約80アミノ酸以下である;このH2A配列は長さが約70アミノ酸以下である;このH2A配列は長さが約60アミノ酸以下である;このH2A配列は長さが約52アミノ酸以下である;または、このH2A配列は長さが約50アミノ酸以下である。
【0016】
前記の局面のある態様では、H2Aポリペプチド配列は哺乳動物である。前記の局面の他の態様では、H2Aポリペプチド配列はヒトである。
【0017】
前記の局面のさらなる態様において、H2Aポリペプチド配列は、図1に示した配列である。前記の局面のなおさらなる態様において、H2Aポリペプチド配列はH2A変異体である。このH2A変異体は、GenBankアクセッション番号AF058445;AF058446;AF044286;AF058444;NM138609;NM138609;BC013331;AF054174;AF041483;NM138610.1;およびNM004893.2によって表される群より選択されてもよい。ヒストン変異体はまた、アミノ酸配列のアクセッション番号として表1に示した群のメンバーより選択されてもよい。
【0018】
【表1】

【0019】
別の局面において、本発明は、前記のポリペプチドのいずれか1つをコードする核酸を特徴とする。この核酸は、さらなる核酸配列を含んでもよく、本明細書に記載のポリペプチドのいずれか1つをコードする核酸配列から本質的になってもよい。関連する局面において、本発明は、本発明のH2Aヒストンポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを特徴とする。
【0020】
さらに別の局面において、本発明は、本明細書に記載のいずれか1つのポリペプチドを含む形質転換細胞を特徴とする。また、関連する局面において、本発明は、本発明の任意のH2Aヒストンポリペプチドをコードする核酸を含む形質転換細胞を特徴とする。本発明の態様において、形質転換細胞は原核細胞または真核細胞である。本発明のある態様では、細胞は、細菌、真菌細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞である。
【0021】
1つの局面において、本発明は、本発明の任意のH2Aポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を特徴とする。さらなる局面において、本発明は、本発明の任意のH2Aポリペプチドを含むキット、または本発明の任意のH2Aポリペプチドを含む薬学的組成物を含むキットを特徴とする。
【0022】
さらなる局面において、本発明は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドを発現する細胞を同定する方法を特徴とする。この方法は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドの発現があるかどうか、細胞をスクリーニングする工程を含む。この局面の1つの態様において、本発明は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドを、細胞表面上で発現する細胞を同定する方法を特徴とする。この方法は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドの発現があるかどうか、細胞をスクリーニングする工程を含む。
【0023】
この局面の別の態様において、スクリーニングは、本発明のヒストンH2Aポリペプチドの存在を検出する工程を含む。この局面の別の態様では、スクリーニングは、本発明のヒストンH2Aポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列の存在を検出する工程を含む。
【0024】
この局面の1つの態様において、細胞は被験体または患者に存在する。被験体または患者は哺乳動物でもよい。被験体または患者はヒトでもよい。
【0025】
さらなる局面において、本発明は、細胞増殖疾患の存在をスクリーニングする方法を特徴とする。ここで、この方法は、ATCCにアクセッション番号CRL-12142で寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドが存在するかどうか、生物学的試料を分析する工程を含む。
【0026】
この局面の方法は、本発明のヒストンH2Aポリペプチドの存在を検出する工程を含んでもよく、本発明のヒストンH2Aポリペプチドをコードする核酸の存在を検出する工程を含んでもよい。この局面において、本発明のヒストンH2Aポリペプチドまたは本発明のヒストンH2Aポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸の存在は、インビボまたはインビトロで検出されてもよい。
【0027】
本発明の局面の態様において、検出される細胞増殖疾患は全部または一部が、良性過形成または腫瘍である。検出される腫瘍は転移性でもよい。腫瘍は、ステージI、II、III、IV、またはVの腫瘍として分類されてもよい。腫瘍は固形腫瘍でもよく、液体腫瘍(liquid tumor)でもよい。検出される腫瘍は造血性でもよい。検出される腫瘍は、肉腫、癌腫、黒色腫、骨髄腫、芽腫、神経膠腫、リンパ腫、または白血病でもよい。検出される細胞増殖疾患は、乳房細胞、結腸細胞、消化管細胞、肺細胞、脳細胞、皮膚細胞、もしくは膵臓細胞より選択される細胞、または乳房細胞、結腸細胞、消化管細胞、肺細胞、脳細胞、皮膚細胞、もしくは膵臓細胞に由来する細胞を含んでもよい。
【0028】
さらなる局面において、本発明は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドに対する免疫応答を誘導または増大する方法を含む。ここで、この方法は、被験体または患者におけるヒストンH2Aポリペプチドに対する免疫応答を誘発するために、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する治療的有効量の本発明のヒストンH2Aポリペプチド配列を、被験体または患者に投与する工程を含む。被験体においてヒストンH2Aポリペプチドに対する免疫応答を誘発するための、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する、このような治療的有効量の本発明のヒストンH2Aポリペプチドは、本発明のヒストンH2Aポリペプチドを含む免疫原と呼ばれることがある。誘導される免疫応答は細胞性免疫応答または体液性免疫応答を含んでもよい。
【0029】
さらなる局面において、本発明は細胞増殖疾患を治療する方法を特徴とする。この方法は、細胞増殖疾患を治療するために、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する治療的有効量の本発明のヒストンH2Aポリペプチドを、被験体または患者に投与する工程を含む。治療される細胞増殖疾患は、乳房細胞、結腸細胞、消化管細胞、肺細胞、脳細胞、皮膚細胞、もしくは膵臓細胞より選択される細胞、または乳房細胞、結腸細胞、消化管細胞、肺細胞、脳細胞、皮膚細胞、もしくは膵臓細胞に由来する細胞を含んでもよい。
【0030】
さらなる局面において、本発明は、腫瘍を有する被験体または腫瘍を有するリスクのある被験体を治療する方法を特徴とする。この方法は、被験体または患者を治療するために、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する治療的有効量の本発明のヒストンH2Aポリペプチドを、被験体または患者に投与する工程を含む。
【0031】
この局面の1つの態様において、治療は、腫瘍体積を減少させる;腫瘍体積の増加を阻害する;腫瘍の進行もしくは転移を阻害する;腫瘍細胞の溶解、壊死、もしくはアポトーシスを刺激する;または腫瘍転移を減少させる。この局面の別の態様において、治療は、腫瘍に関連する1つまたは複数の有害な症状を減少させる。この局面のさらなる態様において、治療は死亡率を減少させる。この局面の一部の態様において、被験体または患者は、抗腫瘍療法もしくは免疫系増強療法の候補であるか、抗腫瘍療法もしくは免疫系増強療法を受けているか、または抗腫瘍療法もしくは免疫系増強療法を受けたことがある。この局面のなおさらなる態様において、前記の方法は、抗腫瘍剤もしくは免疫系増強剤または抗腫瘍治療もしくは免疫系増強治療を投与する工程をさらに含む。
【0032】
このさらなる、抗腫瘍剤もしくは免疫系増強剤または抗腫瘍治療もしくは免疫系増強治療を投与する工程は、抗体、放射性同位体、放射線、毒物、免疫療法剤もしくは化学療法剤、免疫療法、またはハイパーサーミアの投与を含んでもよく、切除を行うための手術の実施を含んでもよい。投与される化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、植物抽出物、植物アルカロイド、ニトロソ尿素、ホルモン、ヌクレオシド、ヌクレオチド類似体、シクロホスファミド、コルチヒン、コルセミド、アザチオプリン、シクロスポリンA、プレドニゾロン、メルファラン、クロラムブシル、メクロレタミン、ブスルファン、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、チオグアニン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、AZT、5-アザシチジン(5-AZC)および5-アザシチジン、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、ミスラマイシン、マイトマイシンC、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン、ヒドロキシウレア、シスプラチン、ミトタン、プロカルバジン、ダカルバジン、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、またはジブロモマンニトールを含んでもよい。他の化学療法剤は米国特許第6,608,096号に列挙されている。
【0033】
さらなる局面において、本発明は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドの発現の阻害剤または刺激剤を特定する方法を特徴とする。この方法は、1)ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドを発現する細胞、またはATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドを発現することができる細胞と、試験化合物を接触させる工程;および2)前記のATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドの発現を検出する工程であって、発現が変化すると、試験化合物が、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドの発現の阻害剤または刺激剤であることが分かる、工程を含む。
【0034】
この局面において、細胞を接触させる工程は、溶液、固相、インビボ、またはインビトロにおいて行われてもよい。
【0035】
最後の局面において、本発明は、細胞増殖疾患を有する被験体または細胞増殖疾患を有するリスクのある被験体をスクリーニングする方法を特徴とする。ここで、細胞増殖疾患は、乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、または膵臓より選択される組織に由来する。ここで、この方法は、変性ゲル電気泳動において約19kDaに移動し、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドの発現を分析する工程であって、変性ゲル電気泳動において約19kDaに移動し、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する本発明のヒストンH2Aポリペプチドが組織に存在すると、被験体が細胞増殖疾患を有する、または細胞増殖疾患を有するリスクがあることが確かめられる、工程を含む。
【0036】
本発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも一部は、転移性腫瘍および非転移性腫瘍などの細胞増殖疾患に関連する抗原であるAgRM1の単離および特徴付けに基づいている。AgRM1はヒストンH2Aの部分配列(subsequence)として同定された。AgRM1は約19kDaである(変性ゲル電気泳動によって求められた)。AgRM1は、少なくとも一部は、細胞表面上で発現している。AgRM1は、非増殖性細胞より増殖性細胞において多く発現している。例えば、AgRM1は、腫瘍(例えば、乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、および膵臓を含む)と関連していることがある。AgRM1は、結腸癌および肺癌に由来する細胞株の細胞膜と結合している。従って、AgRM1は、細胞増殖疾患の診断、予後、および治療に有用である。
【0037】
従って、本発明によれば、単離および精製されたヒストンH2A部分配列、ならびに単離および精製されたヒストンH2A部分配列をコードする核酸が提供される。1つの態様において、単離および精製されたヒストンH2Aポリペプチドは、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する。様々な局面において、ヒストンH2Aポリペプチド配列は、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端に欠失を有する(例えば、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から少なくとも約10個、20個、30個、40個、45個、50個、51個、55個、60個、70個、80個のアミノ酸の欠失を有する)。さらなる様々な局面において、ヒストンH2Aポリペプチドは、長さが約50〜70アミノ酸以下の、約70〜90アミノ酸以下の、約90〜100アミノ酸以下の、および約128アミノ酸以下のポリペプチドからなる。本発明のH2Aポリペプチド配列は、ヒトを含む哺乳動物の配列(図1に示した配列を含む)、その多型変異体(例えば、Genbankアクセッション番号AF058445;AF058446;AF044286;AF058444;NM138609;NM138609;BC013331;AF054174;AF041483;NM138610.1;およびNM004893.2からなる群より選択される配列によってコードされるポリペプチド)、ならびにこれらの配列または類似する配列の変異体を含む。これらの変異体の限定しない他の例を上記の表1に示した。
【0038】
定義
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、アミド結合または均等物によって共有結合した2個以上のアミノ酸または「残基」を言うために、本明細書において同義に用いられる。ポリペプチドは無制限の長さのポリペプチドである。アミノ酸は、非天然化学結合および非アミド化学結合(例えば、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、二官能性マレイミド、またはN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いて形成される化学結合)によって結合されてもよい。非アミド結合として、例えば、ケトメチレン、アミノメチレン、オレフィン、エーテル、チオエーテルなどが挙げられる(例えば、Spatola (1983) Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins. Vol. 7, pp 267-357,「Peptide and Backbone Modifications」, Marcel Decker, NY参照)。
【0039】
タンパク質の分子量は、変性ゲル電気泳動(すなわち、SDS-PAGE)において既知分子量のマーカーと比較して概算されることが多い。例えば、Laemmliおよび共同研究者によって最初に発表され、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001);およびAusubel et al, Current Protocols in Molecular Biology. Greene Publishing Assoc, and Wiley Interscience, N. Y., 1989に記載されている、標準的なSDS-PAGE法を参照。
【0040】
本明細書で使用する用語「単離された」は、本発明の組成物(例えば、ポリペプチドおよび核酸、その改変された形態、部分配列、細胞、およびベクター)の修飾語として用いられる場合、組成物が人の手によって作成されたか、またはインビボ環境で天然に生じるものとは分離されていることを意味する。一般的に、このように分離された組成物は、天然で通常関連している1種類またはそれ以上の材料(例えば、1種類またはそれ以上のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜)を実質的に含まない。従って、単離されたタンパク質は、一般的に、天然で通常関連していることがある1種類またはそれ以上の材料を実質的に含まない。用語「単離された」は、ポリペプチド多量体、翻訳後修飾(例えば、リン酸化、グリコシル化)、または誘導体化形態などの別の物理的形態を排除しない。
【0041】
「単離された」タンパク質はまた「精製」されていてもよい(この時、天然で通常関連している物質の大部分または全てを含まない)。従って、実質的に純粋な単離された分子は、何百万もの他の配列の中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば、ポリペプチドライブラリーのポリペプチドまたはゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーの核酸)を含まない。もちろん、「精製された」分子は1種類またはそれ以上の他の分子と組み合わされてもよい。従って、用語「精製された」は、人の手によって作成された、組み合わされた組成物を排除しない。
【0042】
質量で、分子の少なくとも約60%またはそれ以上を精製することができる。純度もまた約70%もしくは80%またはそれ以上でもよく、さらに高くてもよい(例えば、約90%またはそれ以上)。純度は、例えば、UV分光法、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、気相)、ゲル電気泳動(例えば、銀染色またはクーマシー染色)、および配列分析(核酸およびペプチド)を含む、任意の適切な方法によって求めることができる。
【0043】
用語「抗体」は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を介して、他の分子(抗原)に結合するタンパク質を意味する。抗体として、IgG、IgD、IgA、IgM、およびIgE、そのサブタイプおよび混合物が挙げられる。抗体は、モノクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体、インタクトな免疫グロブリン分子、ジスルフィド結合によって2本の完全長軽鎖に結合した2本の完全長重鎖、または抗原エピトープに結合するその部分配列(すなわち、断片)(定常領域を有する、もしくは有さない)、およびその混合物でもよい。抗体は、重鎖可変領域(VH)または軽鎖可変領域(VL)を個々に含んでもよく、任意の組み合わせで含んでもよい。抗体は、1本の鎖に抗原結合部位を(VH領域およびVL領域を両方とも)含むように操作することができる。
【0044】
本発明のポリペプチドおよび核酸は、改変された形態または変異体を含む。用語「改変する」およびその文法上の変形は、ポリペプチドまたは核酸などの組成物に関して用いられる場合、改変された組成物が参照組成物から逸脱していることを意味する。ポリペプチドの改変として、アミノ酸の置換、付加、および欠失(部分配列および断片)が挙げられ、これもまた「変異体」と呼ばれる。ポリペプチドの改変として、L-アミノ酸(およびその混合物)から1つまたは複数のD-アミノ酸への置換、構造類似体および機能類似体(例えば、合成アミノ酸もしくは非天然アミノ酸、またはアミノ酸類似体および誘導体化形態を有するペプチドミメティック)も挙げられる。
【0045】
さらに、ポリペプチドの改変として、融合(キメラ)ポリペプチド配列(参照天然(野生型)配列に天然に存在しない1つまたは複数の分子が配列に共有結合しているアミノ酸配列)(例えば、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドに取り付けられた、非ヒストンH2Aの1つまたは複数のアミノ酸)が挙げられる。このようなキメラポリペプチドは、アポトーシス因子、分化因子(differentiative factor)、毒物、ケモカイン、およびサイトカイン(インターロイキン、インターフェロン)を含んでもよい。
【0046】
改変は、環式構造(例えば、分子のアミノ末端とカルボキシ末端との端と端を付けた(end-to-end)アミド結合、または分子内もしくは分子間ジスルフィド結合)を含む。ポリペプチドはインビトロで改変されてもよく、インビボで改変されてもよい(例えば、糖残基、リン酸基、ユビキチン、SUMA、脂肪酸、アセチル基、または脂質を含むように翻訳後修飾されてもよい)。
【0047】
改変は、参照組成物の活性または機能(例えば、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体への結合)を含む。改変されたタンパク質は、アミノ酸の置換、付加、または欠失(例えば、1〜3、3〜5、5〜10またはそれ以上)を有してもよい。特定の限定しない例では、置換は保存的アミノ酸置換である。
【0048】
「保存的置換」は、あるアミノ酸が、生物学的、化学的、または構造的に類似する残基で置換されることを意味する。「生物学的に類似する」は、置換が生物学的活性(例えば、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体への結合)と適合することを意味する。「構造的に類似する」は、アミノ酸が、長さが似た側鎖を有する(例えば、アラニン、グリシン、およびセリン)、または大きさが似た側鎖を有することを意味する。化学的類似性は、残基が同じ電荷を有するか、両方とも親水性または疎水性であることを意味する。特定の例として、ある疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、もしくはメチオニン)を別の疎水性残基で置換すること、またはある極性残基を別の極性残基で置換すること(例えば、アルギニンをリジンで置換、グルタミン酸をアスパラギン酸で置換する、グルタミンをアスパラギンで置換する、セリンをスレオニンで置換するなど)が挙げられる。
【0049】
改変されたポリペプチドとして、図1に示したH2A配列と約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、またはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を挙げることができる。同一性は、タンパク質の規定された領域(例えば、50、60、75、76、77、78、79、80、85、90、またはそれ以上のアミノ酸)にわたるものでもよい。
【0050】
用語「同一性」およびその文法上の変形は、2つ以上の参照された物が同じであることを意味する。従って、2つのタンパク質配列が同一である場合、同じアミノ酸配列を有する。「同一性の領域」は、2つ以上の参照された物の一部が同じであることを意味する。従って、2つのタンパク質配列が1つまたは複数の配列領域にわたって同一である場合、これらの領域において同一性を共有する。用語「実質的な同一性」は、同一性が構造的または機能的に有意であることを意味する。すなわち、同一性は、分子が構造的に同一であるようなものであるか、または分子が異なっていても同じ機能(例えば、生物学的機能)の少なくとも1つを有するようなものである。
【0051】
構造的および機能的に関連するタンパク質間で配列保存性の量にばらつきがあるために、実質的な同一性のための配列同一性の量は、タンパク質の種類、領域、および任意の機能に左右される。タンパク質が実質的な同一性を有するために配列同一性は30%と少ないこともあるが、一般的に、参照配列との同一性はそれより高い(例えば、約50%、60%、75%、85%、90%、95%、96%、97%、98%)。核酸配列の場合、一般的に、50%の配列同一性またはそれ以上が実質的な相同性を構成するが、これもまた、比較領域およびその機能がもしあれば、それに応じて変化することがある。
【0052】
2つの配列間の同一性の程度は、当技術分野において公知のコンピュータプログラムおよび数学アルゴリズムを用いて確かめることができる。パーセント配列同一性(ホモロジー)を計算する、このようなアルゴリズムは、一般的に、比較領域にわたる配列ギャップおよびミスマッチを明らかにする。例えば、BLAST(例えば、BLAST 2.0)検索アルゴリズム(例えば、Altschul et al(1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10参照,NCBIにより公的に入手可能)は、以下のような例示的な検索パラメータ:ミスマッチ-2;ギャップオープン(gap open)5;ギャップエクステンション(gap extension)2を有する。ポリペプチド配列比較の場合、一般的に、BLASTPアルゴリズムは、PAM100、PAM250、およびBLOSUM 62などのスコア行列(scoring matrix)と併用される。
【0053】
本明細書で使用する用語「部分配列」または「断片」は完全長分子の一部を意味する。例えば、H2Aの部分配列は、長さが完全長H2Aより少なくとも1アミノ酸短い(例えば、アミノ末端またはカルボキシ末端から1つまたは複数の内部アミノ酸または末端アミノ酸が欠失される)。従って、部分配列は、完全長分子までの任意の長さであり得るが、完全長分子を含まない。
【0054】
部分配列は、完全長配列の機能または活性の少なくとも一部を保持している部分を含む。部分配列はまた、完全長配列に存在しない機能または活性を獲得してもよい。例えば、タンパク質部分配列は、完全長配列に存在しない、または完全長配列において隠されているエピトープを示してもよい。特に、本発明の単離または精製されたH2Aポリペプチドは、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に結合するが、完全長野生型H2Aは、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるモノクローナル抗体への検出可能な特異的結合を示さない。
【0055】
改変されたポリペプチドおよび核酸は1つまたは複数の非天然(non-native)(非野生型)機能を含んでもよく、「多機能性」でもよい(これは、言及された組成物が、1つまたは複数の異なるまたはさらなる活性または機能を有することを意味する)。特定の限定しない例として、例えば、酵素活性、リガンド結合または受容体結合(基質、アゴニスト、およびアンタゴニスト)、検出、精製、ならびに毒性が挙げられる。
【0056】
さらなる機能の特定の例は「検出可能な標識」である。「検出可能な標識」は、結合した分子の検出を可能にする分子を意味する。検出可能な標識の例として、キレーター、光活性化剤(photoactive agent)、放射性同位体および放射性核種(α、β、およびγ放射体)、蛍光剤、ならびに常磁性イオンが挙げられる。放射性標識として、例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125I、131Iが挙げられ、非放射性部分は、金粒子、着色したガラスもしくはプラスチックポリスチレン、ポリプロピレン、またはラテックスビーズなどがあり、アミノ酸配列は、本明細書に記載のようなタグなどがある。検出可能な標識として、酵素活性(例えば、緑色蛍光タンパク質、アセチルトランスフェラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ウレアーゼ、およびアルカリホスファターゼ)が挙げられる。検出可能な蛍光化合物として、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリテリン(phycoerytherin)、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタアルデヒド(o-phthaldehyde)、フルオレサミン、および市販のフルオロフォア(例えば、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 647、およびBODIPY色素(例えば、BODIPY 493/503、 BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY 530/550、BODIPY TMR、BODIPY 558/568、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY TR、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、カスケードブルー(Cascade Blue)、カスケードイエロー(Cascade Yellow)、ダンシル(Dansyl)、リサミン(lissamine)ローダミンB、マリナブルー(Marina Blue)、オレゴングリーン(Oregon Green)488、オレゴングリーン(Oregon Green)514、パシフィックブルー(Pacific Blue)、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、およびテキサスレッド(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR))、コロイド金属、量子ドット、化学発光化合物(例えば、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステル)、生物発光化合物(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリン)、常磁性標識(例えば、クロム(III)、マンガン(II)、マンガン(III)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、およびイッテルビウム(III))(これらはMRIによって検出可能)、ならびに接着タンパク質(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、および他のレクチン)が挙げられる。
【0057】
さらなる機能の別の特定の例は「タグ」である。「タグ」は、検出、単離(iolation)、または精製を可能にする、別の分子と結合される分子を意味する。タグの特定の例として、免疫グロブリン、T7、ポリヒスチジンタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、キチン結合タグ、カルモジュリン結合タグ、mycタグ、ビオチンタグ、アビジンタグ、およびXpressエピトープ(抗Xpress抗体によって検出可能; Invitrogen, Carlsbad, Calif., USA)が挙げられる。
【0058】
さらなる改変された形態の候補として、細胞傷害性機能(例えば、細菌コレラ毒素、百日咳毒素、炭疽菌毒素致死因子、シュードモナス(Pseudomonas)エキソトキシンA、ジフテリア毒素、植物毒素リシン、放射性核種(例えば、47Sc、67Cu、72Se、88Y、90Sr、90Y、97Ru、99Tc、105Rh、111In、125I、131I、149Tb、153Sm、186Re、I88Re、194Os、203Pb、211At、212Bi、213Bi、212Pb、223Ra、225Ac、227Ac、228Th)、および細胞傷害性薬物)の付加が挙げられる。従って、改変されたポリペプチドおよび核酸はまた、本発明のポリペプチドおよび核酸に共有結合または非共有結合される機能的実体の付加を含む。
【0059】
置換、付加、および欠失などの改変された形態(例えば、部分配列および断片)を含むポリペプチドは、ポリペプチドコード核酸の組換え技術を用いて、細胞発現またはインビトロ翻訳によって生成することができる。抗体を含むポリペプチドはまた化学的合成装置によって生成することもできる(例えば、Applied Biosystems, Foster City, CA参照)。組換えにより生成された抗体コード核酸から、抗体を発現することもできる(例えば、Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1999; Fitzgerald et al, J.A.C.S. 117:11075 (1995); Gram et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 3576(1992)参照)。プロテアーゼ(例えば、ペプシンおよびパパイン)などの酵素を用いて、部分配列および断片を作成することができる。
【0060】
本発明は、本発明のポリペプチド(H2Aの改変された形態を含む)をコードする核酸および本発明のポリペプチドを含むベクターを提供する。本発明のH2Aポリペプチドを含む形質転換細胞も提供される。さらに、本発明のH2Aポリペプチドをコードする核酸を含む形質転換細胞が提供される。形質転換細胞として、培養された状態の、エクスビボ、またはインビボにおける原核細胞および真核細胞(例えば、細菌、真菌細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞)が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用する「核酸」は、ホスホエステル結合または均等物を介して結合された、少なくとも2個またはそれ以上のリボ核酸またはデオキシリボ核酸塩基対(ヌクレオチド)を意味する。核酸はポリヌクレオチドおよびポリヌクレオシドを含む。核酸として、環状および線状、一本鎖(single)、二本鎖(double)、および三本鎖(triplex)の分子が挙げられる。核酸分子は、RNA、DNA、cDNA、ゲノム核酸、非ゲノム核酸、天然核酸および非天然核酸、ならびに合成核酸だけに属してもよく、混合物中にあってもよいが、これらに限定されない。
【0062】
核酸は任意の長さのものでよく、一般的に、長さが約20ヌクレオチド〜約10Kb、約10ヌクレオチド〜約5,000、約1Kb〜約5Kbまたはそれ以下、約1000〜約500ヌクレオチドまたはそれ以下である。核酸はそれより短くてもよい(例えば、長さが約100〜約500ヌクレオチド、または約12〜約25、約25〜約50、約50〜約100、約100〜約250、もしくは約250〜約500ヌクレオチド)
【0063】
さらに、核酸は、改変(例えば、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの置換、付加、および欠失)を含み、誘導体化形態および融合配列(例えば、キメラH2Aポリペプチドをコードする配列)も含む。例えば、遺伝暗号の縮重のために、核酸は、図1に示したH2Aコード核酸に対する縮重である配列および部分配列を含む。他の例は、図1に示したH2Aコード核酸に相補的な核酸である。核酸欠失(部分配列)は、約10〜約25個、約25〜約50個、約50〜約100個、約100〜約200個、約200〜約300個、約300〜約500個、約500〜約1000個のヌクレオチドまたはそれ以上を有する。このような核酸は、遺伝子操作の場合、H2Aポリペプチド断片を発現させるのに(PCR増幅用のプライマーおよびテンプレートとして)有用であり、本発明のH2Aヒストンポリペプチドをコードする配列の存在または量を、インビトロで細胞、培地、生物学的試料(例えば、組織、器官、血液、もしくは血清)において、またはインビボで被験体もしくは患者において検出するためのプローブとして有用である。
【0064】
H2Aポリペプチドをコードする核酸、その部分配列、およびコード核酸に相補的な核酸配列と高ストリンジェンシーでハイブリダイズする核酸が提供される。ハイブリダイズ核酸は、本発明のH2Aヒストンポリペプチドをコードする配列の存在または量を、インビトロで細胞、培地、生物学的試料(例えば、組織、器官、血液、もしくは血清)において、またはインビボで被験体もしくは患者において検出するのに有用である。
【0065】
用語「ハイブリダイズする」は核酸配列間の結合を意味する。ハイブリダイズ核酸は、一般的に、RM4のアミノ酸配列をコードする核酸との相同性が約50%を超える。ハイブリダイズ核酸間のハイブリダイゼーション領域は、少なくとも約10〜約15ヌクレオチド、約15〜約20ヌクレオチド、約20〜約30ヌクレオチド、約30〜約50ヌクレオチド、約50〜約100ヌクレオチド、もしくは約100〜約200ヌクレオチドまたはそれ以上にわたってもよい。
【0066】
当業者に理解されるように、TM(融解温度)は、2つの核酸配列間の結合がもはや安定でない温度である。2つの配列が結合するためには、ハイブリダイゼーション反応温度は、ハイブリダイゼーション条件下の配列の計算TMより低くなければならない。TMは、配列相補性の量、長さ、組成(%GC)、核酸の種類(RNA対DNA)、および反応物中の塩、界面活性剤、および他の成分(例えば、ホルムアミド)の量の影響を受ける。適切なハイブリダイゼーション条件の確立では、これらの要因の全てが考慮される(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に記載の、ハイブリダイゼーション法およびTM計算式を参照)。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc, and Wiley Interscience, N.Y., 1989も参照。
【0067】
典型的に、望ましい程度のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを得るために、洗浄条件が調整される。従って、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、例えば、特定の条件(例えば、低ストリンジェンシー条件または高ストリンジェンシー条件)の下で洗浄を行うことによって、経験的に求めることができる。選択的ハイブリダイゼーションに最適な条件は、関与する特定のハイブリダイゼーション反応に応じて異なる。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の一例は以下の通りである:2XSSC/0.1%SDS,約37℃または42℃(ハイブリダイゼーション条件);0.5XSSC/0.1%SDS,ほぼ室温(低ストリンジェンシー洗浄);0.5XSSC/0.1%SDS,約42℃(中程度のストリンジェンシー洗浄);および0.1XSSC/0.1%SDS,約65℃(高ストリンジェンシー洗浄)。
【0068】
核酸は、様々な標準的なクローニング法および化学合成法を用いて生成することができる。このような技法として、ゲノムDNAまたはcDNA標的と、H2Aコード配列にアニールすることができるプライマー(例えば、縮重プライマー混合物)を用いた核酸増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))、および核酸配列の化学合成が挙げられる。次いで、生成された配列をインビトロで翻訳することができる、またはプラスミドにクローニングし、増殖させ、次いで、細胞(例えば、酵母もしくは細菌などの微生物、動物細胞もしくは哺乳動物細胞などの真核生物、または植物)において発現させることができる。
【0069】
さらに、本発明は、発現制御エレメントと機能的に結合された、本発明のH2Aヒストンポリペプチドをコードする核酸を含む発現カセットを提供する。用語「機能的に結合された」は、意図されたやり方で、言及されたエレメントが作動するのを可能にする、言及されたエレメント間の物理的または機能的な関係を意味する。従って、核酸と「機能的に結合された」発現制御エレメントは、制御エレメントが核酸転写(適宜、転写物の翻訳)を調節することを意味する。
【0070】
エレメントが機能的に結合するために、物理的な連結は必要ない。例えば、本発明のH2Aヒストンポリペプチドをコードする核酸と最小エレメントを連結することができる。最小エレメントに結合するように「トランスで」機能するタンパク質をコードする機能的に結合された核酸の発現を制御する第2のエレメントが、H2Aポリペプチドの発現に影響を及ぼすことができる。第2のエレメントはH2Aポリペプチドの発現を調節するので、物理的に連結していなくても、H2Aポリペプチドをコードする核酸に機能的に結合されている。
【0071】
用語「発現制御エレメント」は、機能的に結合された核酸の発現に影響を及ぼす核酸を意味する。プロモーターおよびエンハンサーが発現制御エレメントの特定の限定しない例である。「プロモーター配列」は、下流(3'方向)コード配列の転写を開始することができる調節領域である。プロモーター配列は、転写開始を容易にするヌクレオチドを含む。エンハンサーもまた遺伝子発現を調節するが、機能的に結合している遺伝子の転写開始点から離れて(例えば、遺伝子の5'末端または3'末端で、ならびに遺伝子内で)機能することができる。さらなる発現制御エレメントとして、リーダー配列および融合パートナー配列、多重遺伝子またはポリシストロニックメッセージを生じるための内部リボソーム結合部位(IRES)エレメント、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にする遺伝子の正しい読み枠の維持、関心対象の遺伝子の転写物の適切なポリアデニル化をもたらすためのポリアデニル化シグナル、ならびに停止コドンが挙げられる。
【0072】
発現制御エレメンは、機能的に結合された核酸がシグナルも刺激もなく転写されるような「構成」エレメントを含む。機能的に結合された核酸の発現を増大または減少させる、シグナルまたは刺激に応答して発現をもたらす発現制御エレメントは、「調節可能な」エレメントである。シグナルまたは刺激に応答して、機能的に結合された核酸の発現を増大させる調節可能なエレメントは、「誘導エレメント」と呼ばれる。シグナルまたは刺激に応答して、機能的に結合された核酸の発現を減少させる調節可能なエレメントは、「抑制エレメント」と呼ばれる(すなわち、シグナルが発現を減少させる;シグナルが取り除かれるか、無くなると、発現が増大する)。
【0073】
発現制御エレメントは、特定の組織タイプまたは細胞タイプにおいて活性なエレメントを含み、「組織特異的」発現制御エレメントと呼ばれる。一般的に、組織特異的発現制御エレメントは、特定の細胞タイプまたは組織タイプに特有の転写活性化因子タンパク質または他の転写調節因子によって認識されるので、特定の組織タイプまたは細胞タイプにおいて活性がある。
【0074】
発現制御エレメントは、完全長核酸配列(例えば、天然のプロモーターおよびエンハンサーエレメント)、ならびに完全長制御エレメントまたは非変異体制御エレメントの機能の全てまたは一部を保持している(調節をもたらす、例えば、シグナルまたは刺激に応答した、ある程度の量の誘導性を保持している)その部分配列またはヌクレオチド変異体(例えば、置換/変異された形態、または天然配列とは異なる他の形態)を含む。
【0075】
細菌発現の場合、構成プロモーターとしてT7が挙げられ、誘導プロモーターとして、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)が挙げられる。昆虫細胞系では、構成プロモーターまたは誘導プロモーター(例えば、エクジソン)を使用することができる。昆虫細胞プロモーターの他の例として、p10プロモーター(promter)およびポリヘドリンプロモーターが挙げられる。酵母では、構成プロモーターとして、例えば、ADHまたはLEU2が挙げられ、誘導プロモーターとしてGALが挙げられる(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 2, Ch. 13, ed., Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience, 1988; Grant et al, (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544, eds. Wu & Grossman, 1987, Acad. Press, N. Y.; Glover, DNA Cloning, Vol. II, Ch. 3, IRL Press, Wash., D.C., 1986; Bitter (1987) Methods in Enzymology, 152:673-684, eds. Berger & Kimmel, Acad. Press, N.Y.; Strathern et al., The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces (1982) eds. Cold Spring Harbor Press, Vols. I and II;およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001参照)。
【0076】
哺乳動物発現の場合、ウイルスまたは他の由来の構成プロモーターを使用することができる。例えば、SV40もしくはウイルス長末端反復配列(LTRs)など、または哺乳動物細胞ゲノム由来の誘導プロモーター(例えば、メタロチオネインIIAプロモーター;熱ショックプロモーター、ステロイド/甲状腺ホルモン/レチノイン酸応答エレメント)、もしくは哺乳動物ウイルス由来の誘導プロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;誘導性マウス乳癌ウイルスLTR)が用いられる。
【0077】
本発明はまた、安定に形質転換された細胞および一過的に形質転換された細胞ならびにその子孫を提供する。ここで、子孫は、組換えDNA法によって、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで、本発明のH2Aヒストンポリペプチドをコードする核酸分子が導入されている全ての子孫細胞を含む。形質転換細胞を増殖させることができる、導入された核酸を転写させることができる、またはコードされているタンパク質を発現させることができる。形質転換細胞として、原核細胞および真核細胞(例えば、細菌、菌類、植物、昆虫、および動物(例えば、ヒトを含む哺乳動物)の細胞)が挙げられるが、これに限定されない。細胞は、培養された状態で存在してもよく、エクスビボで組織または器官に存在してもよく、被験体または患者に存在してもよい。親細胞の複製中に変異が起こることがあるので、子孫細胞は親細胞と同一でなくてもよい。
【0078】
用語「形質転換された」は、細胞に対して外因性の核酸(例えば、トランスジーン)またはタンパク質が取り込まれた後の、細胞の変化を意味する。従って、「形質転換細胞」は、組換えDNA技法によって核酸またはポリペプチドが導入されている細胞またはその子孫を含む。このような細胞を生成するための細胞形質転換は、本明細書に記載のように、または当技術分野において公知の技法を用いて実施することができる。従って、本発明の核酸およびポリペプチドを含む細胞を生成する方法も提供される。
【0079】
典型的に、核酸を用いた細胞の形質転換では「ベクター」が用いられる。「ベクター」は、プラスミド、ウイルス(例えば、ウイルスベクター)、または核酸配列の挿入または組み込みによって操作することができる当技術分野において公知の他のビヒクルを意味する。遺伝子操作のために、「クローニングベクター」を使用することができ、挿入されたポリヌクレオチドを転写または翻訳するために、「発現ベクター」を使用することができる。このようなベクターは、核酸(発現制御エレメントと機能的に結合された、H2Aポリペプチドをコードする核酸を含む)を導入するのに有用であり、インビトロで(例えば、溶液中もしくは固相において)、細胞内で、またはインビボで被験体もしくは患者において、H2Aポリペプチドを発現させるのに有用である。
【0080】
ベクターは、一般的に、細胞内で増殖するための複製起点を含む。転写および翻訳を容易にするために、ベクターに存在する制御エレメント(本明細書に記載の発現制御エレメントを含む)を含めることができる。
【0081】
ベクターは、遺伝子を含む細胞の選択を可能にする遺伝子である選択マーカーを含んでもよい。「正の選択」は、選択マーカーを含む細胞だけが選択されるプロセスを意味する。薬物耐性は正の選択マーカーの一例であり、このマーカーを含む細胞は、選択薬物を含有する培地において生存し、このマーカーを含まない細胞は死滅する。選択マーカーとして、薬物耐性遺伝子(例えば、neo(G418耐性を付与する);hygr(ハイグロマイシン耐性を付与する);およびpuro(ピューロマイシン耐性を付与する))が挙げられる。他の正の選択マーカー遺伝子として、マーカーを含む細胞の同定またはスクリーニングを可能にする遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子として、特に、蛍光タンパク質(GFPおよびGFP様発色団、ルシフェラーゼ)の遺伝子、lacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子、ならびに表面マーカー(例えば、CD8)が挙げられる。「負の選択」は、負の選択マーカーを含む細胞が(例えば、適切な負の選択薬剤に暴露されたために)選択されないプロセスを意味する。例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子(Wigler et al., Cell 11: 223 (1977))を含む細胞は、薬物ガンシクロビル(gancyclovir)(GANC)感受性である。同様に、gpt遺伝子は細胞を6-チオキサンチン感受性にする。ベクターはまた、増幅マーカー(例えば、メトトレキセート耐性をもたらす遺伝子(例えば、米国特許第5,179,017号参照)、またはCAD遺伝子(例えば、Wahl et al., Somat. Cell Mol. Genet. 12: 339 (1986)参照))を含んでもよい。
【0082】
含まれるウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レオウイルス、レンチウイルス、ロタウイルスゲノム、シミアンウイルス40(SV40)またはウシパピローマウイルスに基づくウイルスベクターである(Cone et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 : 6349 (1984); Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman ed., 1982; Sarver et al., Mol. Cell. Biol. 1: 486 (1981))。発現に有用なさらなるウイルスベクターとして、パルボウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルスおよびラブドウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルス)、ならびに水疱性口内炎ウイルス(VSV)が挙げられる。
【0083】
哺乳動物発現ベクターとして、インビボ発現用またはエクスビボ発現用に設計された哺乳動物発現ベクター(例えば、AAV(米国特許第5,604,090号))が挙げられる。AAVベクターは、ヒトおよびマウスにおいて、治療上の利益を得るのに十分なレベルで第IX因子を発現させることが以前に示されている(Kay et al., Nat. Genet. 24: 257(2000); Nakai et al., Blood 91: 4600(1998))。アデノウイルスベクター(米国特許第5,700,470号、同第5,731,172号、および同第5,928,944号)、単純ヘルペスウイルスベクター(米国特許第5,501,979号)、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターは分裂性細胞および非分裂性細胞への感染に有用である)ならびにフォーミーウイルスベクター(米国特許第5,624,820号、同第5,693,508号、同第5,665,577号、同第6,013,516号、および同第5,674,703号、ならびにWIPO公報W092/05266およびW092/14829)、ならびにパピローマウイルスベクター(例えば、ヒトおよびウシパピローマウイルス)は全て遺伝子療法(米国特許第5,719,054号)に用いられている。ベクターはまた、サイトメガロウイルス(CMV)に基づくベクター(米国特許第5,561,063号)も含む。腸管細胞に遺伝子を効率的に送達するベクターが開発されている(例えば、米国特許第5,821,235号、同第5,786,340号、および同第6,110,456号参照)。
【0084】
標的細胞へのポリペプチドおよび核酸の導入はまた、浸透圧衝撃(例えば、リン酸カルシウム)、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合などの当技術分野において公知の方法によっても実施することができる。インビトロ、エクスビボ、およびインビボでのポリペプチドおよび核酸の導入はまた他の技法を用いて実施することができる。例えば、高分子物質(ポリエステル、ポリアミン酸(polyamine acid)、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、エチレン-酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、またはラクチド/グリコリドコポリマー、ポリラクチド/グリコリドコポリマー、もしくはエチレン酢酸ビニルコポリマー)。ポリペプチドおよび核酸は、コアセルベーション法または界面重合によって調製されたマイクロカプセルに(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルもしくはゼラチンマイクロカプセル、またはポリ(メチルメタクロレート)(poly(methylmethacrolate))マイクロカプセルを用いて) 封入することができる、あるいはコロイド薬物送達系に封入することができる。コロイド分散系として、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および脂質に基づく系(水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む)が挙げられる。
【0085】
ポリペプチドおよび核酸を含む様々な組成物を細胞に導入するためのリポソームは当業者に公知であり、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リポフェクチン、およびDOTAPを含む(例えば、米国特許第4,844,904号、同第5,000,959号、同第4,863,740号、同第4,975,282号, GIBCO-BRL, Gaithersburg, Md参照)。遺伝子療法に有用なピペラジンに基づく両親媒性(amphilic)カチオン性脂質もまた公知である(例えば、米国特許第5,861,397号参照)。カチオン性脂質系も公知である(例えば、米国特許第5,459,127号参照)。従って、インビトロ、インビボ、およびエクスビボで、細胞または組織に送達するウイルスベクター手段および非ウイルスベクター手段が含まれる。
【0086】
本発明のH2Aヒストンポリペプチドおよび核酸は、大きな治療上の利益または相乗的な治療上の利益をもたらす他の任意の化合物または薬剤と組み合わせることができる。従って、本発明はまた、本発明のH2Aヒストンポリペプチドまたは本発明のH2Aヒストンをコードする核酸と、1種類またはそれ以上のさらなる化合物または薬剤を含む組み合わせ組成物、およびこの組み合わせを使用する方法を提供する。例えば、本発明のH2Aヒストンポリペプチドは、抗細胞増殖(例えば、抗腫瘍)活性または免疫系増強活性を有する化合物または薬剤と組み合わせることができる。
【0087】
本明細書で使用する「抗細胞増殖活性」は、化合物、薬剤、療法、または治療に関して用いられる場合、化合物、薬剤、療法、または治療が、細胞の増殖または成長を低減または阻害する、細胞のアポトーシス、溶解、壊死、または分化を刺激または促進することを意味する。用語「免疫系を増強する」は、化合物、薬剤、療法、または治療に関して用いられる場合、化合物、薬剤、療法、または治療が、体液性免疫応答または細胞性免疫応答の増大、刺激、誘導、または促進をもたらすことを意味する。免疫応答を増強する薬剤または組成物は「ワクチン」または「免疫原」といろいろな呼び方で呼ばれる。このような抗細胞増殖療法および抗細胞増殖治療ならびに免疫系増強療法および免疫系増強治療は細胞増殖を低減もしくは阻害することができる、または免疫応答を増強することができる、あるいは、一般的には、細胞増殖疾患(例えば、腫瘍)などの特定の標的の細胞増殖を低減もしくは阻害することができる、または特定の標的に対する免疫応答を増強することができる。
【0088】
抗細胞増殖剤および免疫系増強剤の特定の限定しない例として、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびその混合物が挙げられる。抗体として、腫瘍関連抗原(TAA)に結合する抗体が挙げられる。「腫瘍関連抗原」または「TAA」は、腫瘍細胞によって発現される抗原を意味する。腫瘍細胞において発現するTAAの量は、対応する正常な非腫瘍細胞より多くてもよく、ほぼ同じレベルでもよく、対応する正常細胞より少なくてもよい。
【0089】
標的化することができるTAAおよびTAA結合抗体の特定の限定しない例として、例えば、上皮細胞表面H抗原に結合するヒトIBD12モノクローナル抗体(米国特許第4,814,275号);白血病細胞CD33抗原に結合するM195抗体(米国特許第6,599,505号);卵巣癌CA6腫瘍関連抗原に結合するモノクローナル抗体DS6(米国特許第6,596,503号);結腸癌、乳癌、卵巣癌、および肺癌において発現するLeX炭水化物エピトープに結合するBR96抗体が挙げられる。使用することができる、抗腫瘍活性を有するさらなる抗体として、例えば、リツキサン(Rituxan)(登録商標)、ハーセプチン(抗Her-2 neu抗体)、ベバシズマブ(Bevacizumab)(アバスチン(Avastin))、ゼバリン(Zevalin)、ベキサール(Bexxar)、オンコリム(Oncolym)、17-1A(エドレコロマブ(Edrecolomab))、3F8(抗神経芽細胞腫抗体)、MDX-CTLA4、カムパス(Campath)(登録商標)、ミロタルグ(Mylotarg)、およびIMC-C225(セツキシマブ)が挙げられる。
【0090】
標的化することができるTAAの他の限定しない例として、MUC-1、HER-2/neu、MAGE、p53、T/TnおよびCEA(乳癌);MUSC-2およびMUC-4、CEA、p53、およびMAGE(結腸癌);MAGE、MART-1およびgp100(黒色腫);GM2、Tn、sTn、Thompson-Friedenreich抗原(TF)、MUSC1、MUC2、絨毛性ゴナドトロピンβ鎖(hCGβ)、HER2/neu、PSMA、およびPSA(前立腺癌);絨毛性ゴナドトロピン(精巣癌);ならびにαフェトプロテイン(肝細胞癌)、ならびにEGFが挙げられる。
【0091】
免疫系増強薬剤のさらなる例として、免疫細胞(例えば、リンパ球、プラズマ細胞、マクロファージ、NK細胞、および腫瘍に対する抗体を発現するB-細胞)が挙げられる。腫瘍に対する免疫原性を増強または刺激するサイトカイン(例えば、IL-2、IL-1α、IL-1β、IL-3、IL-6、IL-7、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、IFN-γ、IL-12、TNF-α、およびTNF-β)もまた、免疫系増強薬剤の限定しない例である。ケモカイン(MIP-1α、MIP-1β、RANTES、SDF-1、MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4、エオタキシン、エオタキシン-2、I-309/TCA3、ATAC、HCC-1、HCC-2、HCC-3、LARC/MIP-3α、PARC、TARC、CKβ、CKβ6、CKβ7、CKβ8、CKβ9、CKβ11、CKβ12、C10、IL-8、GROα、GROβ、ENA-78、GCP-2、PBP/CTAPIIIβ-TG/NAP-2、Mig、PBSF/SDF-1、およびリンホタクチンを含む)は、免疫系増強薬剤のさらなる限定しない例である。
【0092】
「抗腫瘍」、「抗癌」、または「抗新生物」治療、療法、活性、または効果は、過形成性、腫瘍、癌、または新生物の成長、転移、増殖、または生存を阻害する、減少させる、遅らせる、低減させる、または予防する、任意の化合物、薬剤、療法、または治療レジメもしくはプロトコールを意味する。抗腫瘍性の化合物、薬剤、療法、または治療は、細胞周期進行または細胞増殖を乱す、阻害する、または遅らせることによって;アポトーシス、溶解、または細胞死もしくは壊死を刺激または増強することによって;細胞分化を刺激または増強することによって;核酸またはタンパク質の合成または代謝を阻害することによって;および細胞分裂を阻害することによって、あるいは細胞生存を減少させる、低減させる、もしくは阻害することによって、または必要な細胞生存因子、増殖因子、もしくはシグナル伝達経路(細胞外または細胞内)の生成もしくは利用を減少させる、低減させる、もしくは阻害することによって作用することができる。抗腫瘍療法の例として、化学療法、免疫療法、放射線療法(イオン化または化学的)、局所温熱(ハイパーサーミア)療法、および外科的切除が挙げられる。
【0093】
抗細胞増殖活性および抗腫瘍活性を有する薬剤クラスの特定の限定しない例として、アルキル化剤、代謝拮抗物質、植物抽出物、植物アルカロイド、ニトロソ尿素、ホルモン、ヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体が挙げられる。抗細胞増殖活性および抗腫瘍活性を有する薬物の特定の例として、シクロホスファミド、コルヒチン、コルセミド、アザチオプリン、シクロスポリンA、プレドニゾロン、メルファラン、クロランブシル、メクロレタミン、ブスルファン、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、チオグアニン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、AZT、5-アザシチジン(5-AZC)および5-アザシチジン関連化合物、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、マイトマイシンC、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン、ヒドロキシウレア、シスプラチン、ミトタン、プロカルバジン、ダカルバジン、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびジブロモマンニトールが挙げられる。他の化学療法剤の例は米国特許第6,608,096号に列挙されている。
【0094】
用語「治療する」は、異常な状態(abnormal condition)(例えば、細胞増殖疾患)にかかっている生物に組成物を投与することを意味する。ここで、組成物の投与は治療効果を有し、異常な状態を少なくとも部分的に緩和または抑止する。治療は完治をもたらす必要はなく、治療は、少なくとも1つの症状が改善または根絶した場合に有効であるとみなされることに留意のこと。治療によって死亡率が低下してもよい。さらに、治療は、医学的状態(medical condition)または他の異常な状態(例えば、細胞増殖疾患)の恒久的な改善をもたらす必要はないが、恒久的な改善が好ましい。治療は、癌細胞を死滅させることによって、癌細胞の死滅を促進することによって、癌細胞の増殖を阻害することによって、および/または癌転移のプロセスを阻害することによって作用してもよい。治療はまた、腫瘍体積を小さくすることによって、腫瘍体積の増加を阻害することによって、腫瘍の進行を阻害することによって、腫瘍細胞溶解を刺激することによって、腫瘍細胞溶解壊死を刺激することによって、または腫瘍細胞溶解アポトーシスを刺激することによって作用してもよい。
【0095】
用語「患者」は、治療剤による治療の必要性を示唆する、ある特定の1つまたは複数の症状を臨床の場で示したことのある生物を意味する。治療は、医学界において一般に認められたものでもよく、実験的なものでもよい。ある態様では、患者は、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、およびマウスなどの動物を含む)である。好ましい態様において、患者はヒトである。患者の診断は、疾患の進行中に(自然に、または治療レジメもしくは治療の間に)変わることがある。
【0096】
本明細書で使用する用語「接触する」は、試験化合物を含む溶液または組成物と、本発明のH2Aヒストンポリペプチドまたは本発明のポリペプチドを含む細胞を浸漬する液体培地を一緒に加えることを意味する。化合物を含む溶液はまた、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの別の成分を含んでもよい。DMSOがあると、前記の方法の細胞への試験化合物または化合物の取り込みが促進される。試験化合物を含む溶液は、送達装置(delivery apparatus)(例えば、ピペットをベースとする装置または注射器をベースとする装置)を用いて、細胞を浸漬する培地に添加されてもよい。
【0097】
さらに、本発明は、適切な包装材料に包装された、本発明の1つまたは複数のH2Aポリペプチドおよび核酸(薬学的処方物を含む)を含むキットを提供する。1つの態様において、キットはH2Aポリペプチドを含む。
【0098】
本明細書で使用する用語「包装材料」は、キットの成分を収容する物理的構造を意味する。包装材料は成分を無菌的に維持することができ、このような目的で一般に用いられている材料(例えば、紙、段ボール(corrugated fiber)、ガラス、プラスチック、箔、アンプルなど)で作ることができる。ラベルまたは包装挿入物として、例えば、本発明の方法を実施するための(例えば、細胞増殖疾患を診断するための、細胞増殖疾患を検出するための、細胞増殖疾患を治療するための等)適切な書面による説明書を挙げることができる。従って、本発明のキットは、方法においてキット成分を使用するための説明書をさらに含んでもよい。
【0099】
従って、さらなる態様において、キットは、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで、細胞において本発明のH2Aヒストンポリペプチドまたは本発明のH2Aヒストンポリペプチドをコードする核酸を発現させるための説明書を含む、ラベルまたは包装挿入物を備える。なおさらなる態様において、キットは、インビボまたはエクスビボで、本発明のH2Aヒストンポリペプチドまたは本発明のH2Aヒストンポリペプチドをコードする核酸を用いて、被験体または患者(例えば、腫瘍などの細胞増殖疾患を有する、または細胞増殖疾患を有するリスクのある被験体または患者)を治療するための説明書を含む、ラベルまたは包装挿入物を備える。さらなる態様において、キットは、(例えば、細胞増殖疾患を有する、もしくは細胞増殖疾患を有するリスクのある被験体もしくは患者を示すもしくは診断するために、または細胞増殖疾患を有する、もしくは細胞増殖疾患を有するリスクのある被験体もしくは患者の予後を提供するために)、インビトロまたはインビボでAgRM1の存在または発現レベルを検出するための説明書を含む、ラベルまたは包装挿入物を備える。
【0100】
従って、説明書は、本明細書に記載の本発明の任意の方法を実施するための説明書を含んでもよい。例えば、被験体または患者への投与のための説明書と一緒に、本発明の薬学的組成物を、容器、パック、またはディスペンサーに入れてもよい。さらに、説明書は、満足の行く臨床エンドポイントもしくは起こり得る任意の有害な症状の表示、またはヒト被験者に使用するための規制機関(例えば、米食品医薬品局)により求められている追加情報を含んでもよい。
【0101】
説明書は、「印刷物」(例えば、キットの中の紙もしくはボール紙、キットもしくは包装材料に貼られたラベル、またはキットの成分を含むバイアルもしくはチューブに付けられたラベル)にあるものでもよい。説明書は音声またはビデオテープを含んでもよく、さらに、コンピュータ可読媒体(例えば、ディスク(フロッピーディスケットまたはハードディスク)、光学CD(例えば、CD-またはDVD-ROM/RAM)、磁気テープ、電気的記憶媒体(例えば、RAMおよびROM)、ならびにこれらのハイブリッド(磁気/光学記憶媒体)に入れられてもよい。
【0102】
本発明のキットは、緩衝剤、防腐剤、またはタンパク質/核酸安定化剤をさらに含んでもよい。キットはまた、活性をアッセイするための対照成分(例えば、対照試料または標準)を含んでもよい。キットの各成分は個々の容器に入れられてもよく、混合物の状態で入れられてもよく、様々な容器が全て1個または複数の包装容器の中にあってもよい。
【0103】
本発明のH2Aポリペプチドおよび核酸(改変された形態を含む)は薬学的組成物に組み込むことができる。このような薬学的組成物は、インビボまたはエクスビボでの被験体または患者への投与に有用であり、本発明のH2Aヒストンポリペプチドまたは核酸で治療可能な生理学的な疾患または状態(例えば、乳房、結腸、消化管、脳、肺、皮膚、または膵臓の細胞増殖疾患(腫瘍))の療法を提供するのに有用である。
【0104】
薬学的組成物として、「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」担体、希釈剤、または賦形剤が挙げられる。本明細書で使用する用語「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」は、薬学的投与と適合する、溶媒(水性または非水性)、溶液、エマルジョン、分散媒、コーティング、等張剤および吸収促進剤または吸収遅延剤を含む。このような処方物を、液体;エマルジョン、懸濁液、シロップ、もしくはエリキシル剤、または固体;錠剤(コーティングもしくは非コーティング)、カプセル(硬もしくは軟)、散剤、顆粒、結晶、またはマイクロビーズに含めることができる。補助的な化合物(例えば、防腐剤、抗菌剤、抗ウイルス剤および抗真菌剤)も組成物に組み込むことができる。
【0105】
薬学的組成物は、特定の局所投与経路または全身投与経路に適合するように処方することができる。従って、薬学的組成物は、特定の経路による投与に適した担体、希釈剤、または賦形剤を含む。本発明の組成物のための投与経路の特定の限定しない例は、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与)、経口投与、経皮投与(局所投与)、経粘膜投与、および直腸投与である。
【0106】
非経口適用、皮内適用、または皮下適用に用いられる溶液または懸濁液として、滅菌希釈剤(例えば、注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン); 抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(例えば、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、またはリン酸緩衝液)、および張性を調節するための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)を挙げることができる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて調節することができる。
【0107】
注射用薬学的組成物として、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液を即時に調製するための滅菌散剤が挙げられる。静脈内投与の場合、適切な担体として、生理食塩水、静菌水(bacteriostatic water)、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその適切な混合物を含む、溶媒または分散媒でもよい。流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合、必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。抗菌剤および抗真菌剤として、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールが挙げられる。組成物に、等張剤(例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウム)を含めることができる。吸収を遅延する薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウおよびゼラチン)を含めると、注射用組成物の吸収を延ばすことができる。
【0108】
滅菌注射液は、必要とされる量の1種類またはそれ以上の活性化合物を、前記成分の1つまたはその組み合わせを含む適切な溶媒に組み込み、その後に、濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、前記の基本分散媒および他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法として、例えば、真空乾燥および凍結乾燥が挙げられる。真空乾燥および凍結乾燥によって、予め滅菌濾過された溶液から、活性成分と任意のさらなる所望の成分からなる散剤が得られる。
【0109】
経粘膜投与または経皮投与の場合、透過しようとする障壁に適した浸透剤が処方物に用いられる。このような浸透剤は当技術分野において一般に知られており、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻薬、吸入装置(例えば、吸引器)、または坐剤を使用することによって行うことができる。経皮投与の場合、活性化合物は、軟膏、膏薬、ゲル、クリーム、またはパッチに処方される。
【0110】
本発明のH2Aヒストンポリペプチドおよび本発明のH2Aヒストンポリペプチドをコードする核酸(改変された形態を含む)は、身体からの急速な排泄を防ぐ担体(例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはステアリン酸グリセリルなどの徐放処方物または時間遅延材料)を用いて調製することができる。組成物はまた、局所または全身への持続性送達または徐放を実現するために、移植片およびマイクロカプセル化送達系を用いて送達することができる。
【0111】
エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性(biocompatable)ポリマーを使用することができる。このような処方物を調製する方法は当業者に公知である。これらの材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Incから商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液(抗体またはウイルスコートタンパク質を用いて細胞または組織に標的化されたリポソームを含む)もまた薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って(例えば、米国特許第4,522,811号に記載のように)調製することができる。
【0112】
投与に適したさらなる薬学的処方物は当技術分野において公知である(例えば、Gennaro (ed.), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins (2000); Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th ed., Lippincott Williams & Wilkins Publishers (1999); Kibbe (ed.), Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association. 3rd ed. (2000);およびPharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms, Technonic Publishing Co., Inc., Lancaster, Pa., (1993)参照)。
【0113】
薬学的処方物は、投与を容易にするために、および投与量を均一にするために、単位剤形で包装することができる。本明細書で使用する「単位剤形」は、単位投与治療として適切な物理的に別個の単位を意味する。それぞれの単位は、薬学的担体または賦形剤と共同して、望ましい治療効果を生じるように計算された所定量の1種類または複数の活性化合物を含む。
【0114】
本発明はまた、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドを検出する方法、ならびにATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドを発現する細胞を同定する方法を提供する。1つの態様において、方法は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドが存在するかどうか、試料または細胞をスクリーニングする工程を含む。様々な局面において、スクリーニングは、ヒストンH2AポリペプチドまたはヒストンH2Aポリペプチドをコードする核酸の存在を検出することによって行われる。細胞はインビトロでもよく、被験体または患者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)にあってもよい。
【0115】
さらに、本発明は、細胞増殖疾患が存在するかどうかスクリーニングする方法を提供する。1つの態様において、方法は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドが存在するかどうか、生物学的試料を分析する工程を含む。ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドが存在すると、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドが被験体または患者に存在することが分かる。様々な局面において、スクリーニングは、ヒストンH2AポリペプチドまたはヒストンH2Aポリペプチドをコードする核酸の存在を検出することによって行われる。細胞はインビトロでもよく、被験体または患者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)にあってもよく、どの組織または器官にあってもよい。AgRM1を測定することができるので、本発明は、AgRM1のレベルまたは量を検出する方法をさらに提供する。
【0116】
スクリーニングまたは同定される細胞増殖疾患として、本明細書において示され、かつ当技術分野において公知の良性過形成および腫瘍が挙げられる。腫瘍は非転移性でもよく、転移性でもよく、任意のステージ(例えば、ステージI、II、III、IV、またはVの腫瘍)にあってもよく、固形腫瘍(例えば、肉腫、癌腫、黒色腫、骨髄腫、芽腫、神経膠腫、リンパ腫、もしくは白血病)でもよく、液体腫瘍(例えば、細網内皮腫瘍もしくは造血腫瘍)でもよい。細胞増殖疾患の特定の例として、乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、もしくは膵臓より選択される細胞、または乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、もしくは膵臓に由来する細胞を挙げることができる。
【0117】
さらに、本発明は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドに対する免疫応答を誘導または増大する方法を提供する。1つの態様において、方法は、被験体または患者においてヒストンH2Aポリペプチドに対する免疫応答を誘発するために、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する、治療的有効量のヒストンH2Aポリペプチドを被験体または患者に投与する工程を含む。免疫応答は細胞性免疫応答を含んでもよく、体液性免疫応答を含んでもよい。
【0118】
細胞は、被験体または患者(例えば、細胞増殖疾患を有する、または細胞増殖疾患を有するリスクのある哺乳動物(例えば、ヒト被検者))に存在してもよい。従って、本発明はまた、被験体または患者における細胞増殖性細胞疾患を治療する方法を提供する。ここで、細胞の少なくとも一部はAgRM1を発現する。1つの態様において、方法は、細胞増殖疾患を治療するために、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する治療的有効量のヒストンH2Aポリペプチドを被験体または患者に投与する工程を含む。例示的な細胞増殖疾患は、乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、もしくは膵臓より選択される細胞、または乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、もしくは膵臓に由来する細胞を含む。
【0119】
本明細書で使用する用語「増殖する」およびその文法上の変形は、細胞、組織、または器官に関して用いられる場合、細胞、組織、または器官の望ましくない、過剰な、または異常な増殖、分化、または生存を意味する。細胞増殖疾患および細胞分化疾患として、被験体における望ましくない、過剰な、または異常な細胞数、細胞増殖、または細胞生存を特徴とする疾患および生理学的状態(良性および新生物性)が挙げられる。このような疾患の特定の例として、転移性および非転移性の腫瘍および癌が挙げられる。
【0120】
さらに、腫瘍を有する、または腫瘍を有するリスクのある被験体を治療する方法が提供される。1つの態様において、方法は、被験体を治療するために、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する治療的有効量のヒストンH2Aポリペプチドを被験体または患者に投与する工程を含む。さらなる態様において、方法は、本明細書に示され、かつ当業者に公知の抗細胞増殖治療もしくは療法または免疫系増強治療もしくは療法(例えば、抗体、放射性同位体、放射線、毒物、免疫療法剤もしくは化学療法剤、免疫療法、外科的切除、またはハイパーサーミア、ワクチンもしくは免疫原)を投与する工程を含む。
【0121】
用語「腫瘍」、「癌」、「悪性腫瘍」、および「新形成」は本明細書において同義に用いられ、成長、増殖、または生存が対応する正常細胞の成長、増殖、または生存より大きい、任意の細胞または組織に由来する細胞または細胞集団(例えば、細胞増殖疾患または細胞分化疾患)を意味する。このような疾患として、例えば、肉腫、癌腫、黒色腫、骨髄腫、芽腫、神経新生物疾患(例えば、神経膠腫)、および細網内皮性新生物疾患または造血性新生物疾患(例えば、骨髄腫、リンパ腫、または白血病)が挙げられる。腫瘍は、多くの種類の原発腫瘍タイプ(乳房、肺、甲状腺、頭部および頸部、脳、リンパ、消化管または胃腸(口、食道、胃、小腸、結腸、直腸)、泌尿生殖路(子宮、卵巣、子宮頸、膀胱、精巣、陰茎、前立腺)、腎臓、膵臓、肝臓、骨、筋肉、皮膚を含むが、これに限定されない)から生じてもよく、二次部位に転移してもよい。腫瘍は非転移性でもよく転移性でもよく、任意のステージ(例えば、ステージI、II、III、IV、またはVの腫瘍)にあってもよく、寛解期にあってもよい。
【0122】
「固形腫瘍」は、一般的に、凝集し、塊を形成する新形成または転移を意味する。特定の例として、内蔵腫瘍(例えば、黒色腫、乳癌、膵臓癌、子宮癌および卵巣癌、精巣癌(セミノーマを含む)、胃癌または結腸癌、ヘパトーム、副腎癌、腎臓癌および膀胱癌、肺癌、頭頚部癌、ならびに脳腫瘍/癌)が挙げられる。
【0123】
癌腫は、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍を意味し、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、泌尿生殖器系癌腫、睾丸癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌腫、および黒色腫を含む。この用語はまた、癌肉腫(例えば、癌組織と肉腫組織からなる悪性腫瘍を含む)を含む。腺癌は、腺組織の癌腫、または腫瘍が腺様構造を形成するいる癌腫を含む。
【0124】
黒色腫は、メラノサイト、および皮膚、眼(網膜を含む)、または身体の他の領域において生じ得る色素細胞に由来する他の細胞(メラノサイト系列も生じる神経堤に由来する細胞を含む)の悪性腫瘍を意味する。さらなる癌腫は、子宮/子宮頸、肺、頭部/頸部、結腸、膵臓、精巣、副腎、腎臓、食道、胃、肝臓、および卵巣から形成することがある。
【0125】
肉腫は、間葉系細胞由来の悪性腫瘍を意味する。例示的な肉腫として、例えば、リンパ肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、および線維肉腫が挙げられる。
【0126】
神経新形成として、神経膠腫、グリア芽細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、乏突起膠細胞腫が挙げられる。
【0127】
「液体腫瘍」は、細網内皮系または造血系の新形成(例えば、リンパ腫、骨髄腫、もしくは白血病、または自然分散する新形成)を意味する。白血病の特定の例として、急性および慢性のリンパ芽球性、骨髄芽球性(myeolblastic)、および多発性骨髄腫が挙げられる。一般的に、このような疾患は、低分化急性白血病(例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病)から生じる。
【0128】
特定の骨髄性疾患として、急性前骨髄球性白血病(acute promyeloid leukemia)(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられるが、これに限定されない。リンパ性悪性腫瘍として、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(B細胞性ALLおよびT細胞性ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛様細胞性白血病(HLL)、ならびにヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)が挙げられるが、これに限定されない。特定の悪性リンパ腫として、非ホジキンリンパ腫および異型、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病、およびリード-シュテルンベルク病が挙げられる。
【0129】
本発明の方法は、被験体の状態の検出可能なまたは測定可能な改善(すなわち、治療上の利益)をもたらすことを含む。治療上の利益は、一過的な、一時的な、またはそれより長い期間の、任意の客観的または主観的な状態改善、または状態の重篤度もしくは有害な症状の軽減である。従って、1つまたは複数の関連する有害な症状もしくは合併症の重篤度、期間、もしくは頻度の漸増的な軽減もしくは部分的な軽減、または状態の生理学的、生化学的、もしくは細胞的な発現もしくは特徴の1つまたは複数の阻害もしくは反転がある時に、満足の行く臨床エンドポイントに達する。従って、治療上の利益または改善(「寛解する」が同義に用いられる)は、全ての標的細胞(例えば、腫瘍)の破壊、あるいは疾患に関連する任意の特定の症状もしくは合併症または全ての有害な症状もしくは合併症の消失である必要はない。例えば、腫瘍細胞量(tumor cell mass)の増加の阻害(腫瘍の安定化)は、数日、数週間、または数ヶ月でも、腫瘍の一部または大半が残っていても、寿命を延ばすことができる。さらに、安定化によって、平均余命を延ばすことなく症状の軽減または安定化において利益が得られることがある。
【0130】
治療上の利益の特定の限定しない例として、腫瘍体積(大きさまたは細胞量)の減少、腫瘍体積の増加の阻害、腫瘍の進行または転移の遅延または阻害、腫瘍細胞の溶解、壊死、またはアポトーシスの刺激、および腫瘍転移の減少が挙げられる。腫瘍を含む生検試料(例えば、血液または組織試料)を検査することによって、腫瘍細胞数の減少または腫瘍細胞増殖の阻害が生じたかどうかを確かめることができる。または、固形腫瘍の場合、侵襲的画像化法および非侵襲的画像化法によって、腫瘍の大きさの減少を確かめることができる、または腫瘍の大きさの増加の阻害を確かめることができる。
【0131】
軽減または減少することができる、腫瘍、新形成、および癌に関連する有害な症状および合併症として、例えば、悪心、食欲欠乏、嗜眠、疼痛および不快感が挙げられる。従って、重篤度、有害な症状の期間または頻度の軽減、被験者の主観的な感覚の軽減(例えば、気力、食欲、および精神的な幸福の増大)が治療上の利益の全例である。
【0132】
治療上の利益または改善を実現するための治療の用量または「十分な量」は、状態の1つの、いくつかの、または全ての有害な症状または合併症を、測定可能な程度または検出可能な程度まで寛解するのに有効な量である。疾患、状態、または有害な症状の進行または悪化の阻止または阻害は満足の行くアウトカムでもある。従って、細胞増殖性の状態または疾患の場合、量は、被験体に治療上の利益をもたらすのに十分な量、または状態もしくは症状を寛解するのに十分な量である。治療されている疾患の状態または治療の副作用により指示されるように、用量を比例して増やす、または減らすことができる。これは、本明細書において「治療的有効量」とも呼ばれる。
【0133】
同様に有効とみなされる用量は、別の治療レジメまたは治療プロトコールの使用を減らす用量である。例えば、本発明のH2Aヒストンポリペプチドを投与することによって、腫瘍治療に必要とされている化学療法薬、放射線、または免疫療法が少なくなれば、本発明のH2Aヒストンポリペプチドを用いて治療上の利益が得られる。
【0134】
もちろん、治療プロトコールによくあるように、被験体によって、治療に対する応答が大きかったり、小さかったりする。例えば、適量は、治療される状態(例えば、腫瘍の種類または腫瘍のステージ)、望ましい治療効果、ならびに被験者個人(例えば、被験体内でのバイオアベイラビリティ、性別、年齢など)に左右される。
【0135】
本発明のH2Aヒストンポリペプチドおよび核酸は、他の任意の治療レジメまたは治療プロトコールと共同で投与することができる。他の治療プロトコールとして、本明細書において示され、かつ当技術分野において公知の、薬物治療(化学療法)、外科的切除、ハイパーサーミア、放射線療法、および免疫療法が挙げられる。従って、本発明は、本発明のH2Aポリペプチドおよび核酸が、任意の抗細胞増殖治療レジメまたは治療プロトコール(例えば、本明細書において示される、または当技術分野において公知の抗細胞増殖治療レジメまたは治療プロトコール)と併用される方法を提供する。
【0136】
放射線療法として、被験体への内部送達または外部送達が挙げられる。例えば、被験体が放射性同位体を内部に取り込むことなく、または別の方法で物理的に放射性同位体と接触することなく、α線、β線、γ線、およびX線を被験体の外部に投与することができる。投与されるX線線量の特定の例は、長期間で一日量50〜200レントゲン(3〜5回/週)、一回線量2000〜6000レントゲンである。線量は多種多様であり、暴露期間、同位体の半減期、発せられる放射線の種類、治療される細胞タイプおよび位置、ならびに疾患の進行ステージに左右される。
【0137】
用語「被験体」は、動物、一般的に、哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類(ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、マカク、ギボン)、家畜(domestic animal)(イヌおよびネコ)、家畜(farm animal)(ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)、およびヒト)を意味する。被験体として、本発明のH2Aポリペプチドおよび核酸のインビボ効力を試験するための疾患モデル動物(例えば、マウスおよび非ヒト霊長類)(例えば、腫瘍動物モデル)が挙げられる。ヒト被検者として成人および小児(例えば、新生児およびそれより年上の1歳〜5歳、5歳〜10歳、10歳〜18歳の小児)が挙げられる。
【0138】
被験体として、細胞増殖疾患を有するヒトまたは細胞増殖疾患を有するリスクのあるヒト(例えば、AgRM1を発現する細胞もしくは組織を有する被験者、または過剰増殖疾患の病歴を有する被験者、過剰増殖疾患の遺伝的な素因がある被験者、もしくは過剰増殖疾患に以前に罹患したことがある被験者)が挙げられる。従って、癌を発症するリスクのある被験者は、腫瘍関連遺伝子、遺伝子欠失、または遺伝子変異の遺伝学的スクリーニングを用いて特定することができる。乳癌を発症するリスクのある被験者には、例えば、BRCA1が無い。結腸癌を発症するリスクのある被験者は、例えば、腫瘍抑制遺伝子(adenomatous polyposis coli(APC))が欠失または変異していた。被験者として、抗腫瘍療法もしくは免疫系増強療法の候補、あるいは抗細胞増殖療法もしくは免疫系増強療法を受けている被験者または抗細胞増殖療法もしくは免疫系増強療法を受けたことのある被験者(例えば、寛解期の被験者)が挙げられる。
【0139】
さらに、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドの発現の阻害剤または刺激剤をスクリーニングまたは特定する方法が提供される。1つの態様において、方法は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドを発現する細胞、またはATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドを発現することができる細胞と、試験化合物を接触させる工程、およびATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドの発現を検出する工程を含む。発現が変化すると、試験化合物が、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチドの発現の阻害剤または刺激剤であることが分かる。様々な局面において、接触は、溶液中、固相、インビボまたはインビボにおいて行われる。
【0140】
さらに、細胞増殖疾患(例えば、乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、または膵臓より選択される組織における細胞増殖疾患)を有する被験体、または細胞増殖疾患を有するリスクのある被験体をスクリーニングまたは特定する方法が提供される。1つの態様において、方法は、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する、約19kDaのヒストンH2Aポリペプチドの発現を分析する工程を含む。ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する、約19kDaのヒストンH2Aポリペプチドが組織に存在すると、被験体は細胞増殖疾患を有する、または細胞増殖疾患を有するリスクがあることが確かめられる。
【0141】
特別の定めのない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が関する当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法および材料を使用することができるが、適切な方法および材料が本明細書において説明される。
【0142】
本明細書において例示的に説明された本発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定が欠けた状態で、適切に実施することができる。従って、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などは、包括的に、かつ限定なしで解釈されるものとする。さらに、本明細書において用いられる用語および表現は説明の用語として用いられ、限定の用語として用いられず、このような用語および表現の使用において、示された本発明の任意の均等物またはその一部を排除する意図はないが、様々な変更が、クレームされた本発明の範囲内で可能であることが認められる。従って、本発明は好ましい態様および任意の特徴によって具体的に開示されたが、本明細書において具体化される本発明の変更および変化は当業者によって容易に加えることができ、このような変更および変化は本明細書に開示される本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるはずである。本発明は、本明細書において広範囲かつ包括的に説明された。包括的な開示の範囲内にある、より狭い種および亜属のグループもそれぞれ、これらの発明の一部をなしている。これは、除外される材料が具体的に説明されたかどうかにかかわらず、本発明のそれぞれの包括的な説明の範囲内で、属から任意の主題(subject matter)を除外することを可能にする条件または消極的な限定を含む。さらに、本発明の特徴または局面がマーカッシュグループで説明されている場合、当業者であれば、本発明がマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループでも説明されることを理解するだろう。さらに、本発明の一局面への言及が、個々のメンバーの範囲(例えば、配列番号:1〜配列番号:100)を列挙している場合、このリストの全てのメンバーを個々に列挙していることに等しいことが意図される。さらに、特許請求の範囲においてメンバーを個々に除外してもよく、含めてもよいことが理解されるはずである。
【0143】
本明細書の方法において図示および/または使用される工程は、図示および/または説明されたものとは異なる順序で実施することができる。これらの工程は、工程が行われ得る順序の単なる例示である。工程は、クレームされた本発明の目的をなお果たすような、望ましい任意の順序で行われ得る。
【0144】
本明細書における本発明の説明から、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の概念を実施するために様々な均等物を使用できることは明らかである。さらに、本発明は、ある特定の態様に特に言及して説明されたが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形式および細部に変更を加えることができることを理解するだろう。説明された態様は、全ての点において例示であるとみなされ、制限するものとみなされない。本発明は本明細書に記載の特定の態様に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの均等物、再編、変更、および代用が可能なことも理解されるはずである。従って、さらなる態様は本発明の範囲内であり、以下の特許請求の範囲内である。
【0145】
本明細書で使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、特に文脈によってはっきりと規定されていない限り複数の指示物を含む。従って、例えば、「H2Aポリペプチド」についての言及は複数のH2Aポリペプチドを含み、「配列」についての言及は1つまたは複数の配列の全てまたは一部への言及を含むことがある。
【0146】
さらに、本明細書において述べられた全ての刊行物および特許は、それぞれ個々の特許または刊行物が参照として組み入れられるように具体的にかつ個々に示されるのと同じ程度に、任意の図、図面または表を含めて、参照として本明細書に組み入れられる。
【0147】
本発明の多くの態様が説明された。それでも、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることが理解されるだろう。従って、以下の実施例は例示を目的とし、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定することを目的としない。
【0148】
実施例
実施例1
AgRM1を、この抗原に結合する抗体を用いてウエスタンブロットにおいて同定した。バンドを切り出し、タンパク質を配列決定した。AgRM1ポリペプチドは切断型ヒストンH2Aである(図1)。AgRM1の最初のアミノ末端残基は、正常H2Aの残基番号52であることが確かめられた。NCI-H661細胞株(ATCCから入手可能)から単離されたmRNAから遺伝子配列を特定し、標準的な方法によって配列決定した。配列を図1に示した。他の形態のAgRM1は、AgRM1ポリペプチドのアミノ末端に、またはアミノ末端の近くに、配列AAVLEYLTAEILELAを有することが示された。
【0149】
実施例2
マウスモノクローナル抗体の作成
モノクローナル抗体は当技術分野において公知の標準的な手段によって作成される。1つの態様において、AgRM1を部分精製する。標準的な技法によってマウスを免疫する。最後の免疫の後に、マウスの脾臓を摘出する。Oi and Herzenberg (Oi and Herzenberg, In Selective Matters in Cell Immunology, Ed. D. B. Mishell and S. M. Shiji, p. 351-372, (1980))に記載のように、脾臓摘出された脾細胞をマウスミエローマ細胞(例えば、SP2/0細胞(American Type Culture Collection, Rockville,Md.))と混合し、例えば、ポリエチレングリコール1500を用いて融合する。
【0150】
融合細胞を96ウェルマイクロカルチャープレートに移し、リンパ球-ミエローマハイブリッド細胞を得るために選択培地中で2週間培養する。
【0151】
部分精製された抗原調製物に対する抗体が存在するかどうか、ハイブリドーマをスクリーニングする。部分精製された抗原調製物に対する抗体の存在について陽性のハイブリドーマをクローニングする。抗体サブタイプを当技術分野において公知の手段によって決定する。
【0152】
実施例3
異種移植研究に使用した方法は以下の通りである。0日目に、15匹の雌胸腺欠損マウス(nu/nu; 4〜6週齢)の1匹1匹に、5x106 (10e6)〜1x107 (10e7)の標的細胞を注射し(左側腹部に注射)、5匹のマウスからなる3つの群に分けた。7日目に、群1に、PBSの100μl(マイクロリットル)注射を与え、群2に、対照(非関連)IgG 100μg(マイクログラム)の100μl(マイクロリットル)注射を与え、群3に、試験RM抗体 100μg(マイクログラム)の100μl(マイクロリットル)注射を与えた。10日目に、各群に、各処置の2回目の注射を与えた。14日目に、各群に3回目の注射を与え、21日目に、各群に最後の注射を与えた。1週間に1回、同じ日に、各マウスを評価し、腫瘍を測定した。
【0153】
結果を図2に示した。
【0154】
実施例4
異種移植研究に使用した方法は以下の通りである。0日目に、25匹の雌胸腺欠損マウス(nu/nu; 4〜6週齢)の1匹1匹に、5x106 (10e6)〜1x107 (10e7)の標的細胞を注射し(左側腹部に注射)、5匹のマウスからなる5つの群に分けた。7日目に、群1に、PBSの100μl(マイクロリットル)注射を与え、群2に、対照(非関連)IgG 100μg(マイクログラム)の100μl(マイクロリットル)注射を与え、群3に、試験RM抗体100μg(マイクログラム)の100μl(マイクロリットル)注射を与え、群3、群4、および群5に、それぞれの試験RM抗体100μg(マイクログラム)の100μl(マイクロリットル)注射を与えた。10日目に、各群に、各処置の2回目の注射を与えた。14日目に、各群に3回目の注射を与え、21日目に、各群に最後の注射を与えた。1週間に1回、同じ日に、各マウスを評価し、腫瘍を測定した。
【0155】
結果を図3に示した。
【0156】
実施例5
抗RM1抗体を用いて、標準的な細胞株染色法:EIAおよびFACSによって、細胞株を染色した。
【0157】
EIA法
対数期増殖細胞を収集し、PBSで洗浄し、再懸濁し、2x105 (10e5)細胞/ウェルで、平底Immulon 96ウェルプレートに分注し、37℃の乾燥炉(drying oven)に一晩入れた。これらの細胞に、抗体上清を添加し、インキュベートし、洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgGを用いて発色させた。全試験を三通り行い、マイクロプレートEIAリーダーで測定した。
【0158】
FACS法
標的細胞を、対数増殖期の中間部にある間に、EDTAを用いて採取し、1x105 (10e5)細胞を各アッセイチューブに入れた。5〜10ug/ml(マイクログラム/ml)の試験抗体100μl(マイクロリットル)を各チューブに添加し、4℃で一晩インキュベートし、RPMI 1640+10%FCSで3回洗浄した。FITC結合ヤギ抗ヒトIgG(American Qualex)を各チューブに添加し、30分間インキュベートし、3回洗浄し、EIAリーダーで測定した。
【0159】
結果を図4に示した。抗RM1抗体によって、以下の細胞株:Colo205細胞、HT-29細胞、Caco-2細胞、NCI-H661細胞、SK-LU-1細胞、およびA549細胞の細胞膜が染色される。従って、RM1抗原は、結腸癌細胞株および肺癌細胞株の細胞表面に検出される。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】AgRM1(すなわち、切断型H2Aタンパク質)の可能性のあるDNA配列およびタンパク質配列を示す。AgRM1は78個のアミノ酸を含むと推定され、MWは19kDaである(変性ゲル電気泳動における移動度によって概算された)。最初に図示したAgRM1をコードするDNAコード配列はGCGから始まる。このGCGは、このインタクトなH2Aヒストン分子の位置52にあるアラニンをコードする。
【図2】抗RM1抗体を用いて、異種移植モデルにおける腫瘍成長を阻害した異種移植研究の結果を示す。抗RM1抗体は、マウスモデルにおいて腫瘍細胞の増殖を阻害する。
【図3】抗RM1抗体および抗RM2抗体を用いて、異種移植モデルにおける腫瘍成長を阻害した異種移植研究の結果を示す。表中の値は腫瘍体積を表している。
【図4】AgRM1を認識する抗体で1パネルの細胞株を染色した結果を示す。細胞は染色陽性(+)または染色陰性(-)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するH2Aポリペプチド配列のカルボキシ末端部分を含む単離されたポリペプチドであって、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から少なくとも45個のアミノ酸の欠失を有する、単離されたポリペプチド。
【請求項2】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から45個〜55個のアミノ酸である、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項3】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から50個のアミノ酸である、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項4】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から51個のアミノ酸である、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項5】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から50個のアミノ酸である、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項6】
H2Aポリペプチド配列が哺乳動物である、請求項1〜5のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
H2Aポリペプチド配列がヒトである、請求項1〜5のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
H2Aポリペプチド配列がH2A変異体である、請求項1〜5のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項9】
H2A変異体が、Genbankアクセッション番号AF058445;AF058446;AF044286;AF058444;NM138609;NM138609;BC013331;AF054174;AF041483;NM138610.1;およびNM004893.2より選択される配列によってコードされるポリペプチドを含む、請求項8記載のポリペプチド。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載のポリペプチドをコードするDNA配列から本質的になる、核酸。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項記載のポリペプチドをコードするDNA配列から本質的になる核酸を含む、ベクター。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする核酸を含む、形質転換細胞。
【請求項13】
細胞が原核細胞である、請求項12記載の形質転換細胞。
【請求項14】
細胞が真核細胞である、請求項12記載の形質転換細胞。
【請求項15】
細胞が真菌細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞である、請求項14記載の形質転換細胞。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか一項記載のポリペプチドを含む、キット。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか一項記載のポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
請求項17記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項19】
ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチド配列に対する免疫応答を誘導または増大する方法であって、以下の工程を含む方法:
患者におけるヒストンH2Aポリペプチド配列に対する免疫応答を誘発するために、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する治療的有効量のヒストンH2Aポリペプチド配列を患者に投与する工程。
【請求項20】
患者に投与されるヒストンH2Aポリペプチドが、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも45個のアミノ酸のアミノ末端欠失を有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から45個〜55個のアミノ酸である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から50個のアミノ酸である、請求項19記載の方法。
【請求項23】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から51個のアミノ酸である、請求項19記載の方法。
【請求項24】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から50個のアミノ酸である、請求項19記載の方法。
【請求項25】
H2Aポリペプチド配列が哺乳動物である、請求項19〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
H2Aポリペプチド配列がヒトである、請求項19〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
H2Aポリペプチド配列がH2A変異体である、請求項19〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
H2A変異体が、Genbankアクセッション番号AF058445;AF058446;AF044286;AF058444;NM138609;NM138609;BC013331;AF054174;AF041483;NM138610.1;およびNM004893.2より選択される配列によってコードされるポリペプチドを含む、請求項27記載のポリペプチド。
【請求項29】
免疫応答が体液性免疫応答を含む、請求項19記載の方法。
【請求項30】
免疫応答が細胞性免疫応答を含む、請求項19記載の方法。
【請求項31】
以下の工程を含む、細胞増殖疾患を治療する方法:
細胞増殖疾患を治療するために、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する治療的有効量のヒストンH2Aポリペプチド配列を患者に投与する工程。
【請求項32】
細胞増殖疾患が、乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、および膵臓より選択される細胞を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
以下の工程を含む、腫瘍を有する患者または腫瘍を有するリスクのある患者を治療する方法:
該患者を治療するために、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合する治療的有効量のヒストンH2Aポリペプチド配列を該患者に投与する工程。
【請求項34】
患者に投与されるヒストンH2Aポリペプチドが、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にして、アミノ末端から少なくとも45個のアミノ酸のアミノ末端欠失を有する、請求項33記載の方法。
【請求項35】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から45個〜55個のアミノ酸である、請求項33記載の方法。
【請求項36】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から50個のアミノ酸である、請求項33記載の方法。
【請求項37】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から51個のアミノ酸である、請求項33記載の方法。
【請求項38】
アミノ末端からの欠失が、完全長天然ヒトヒストンH2Aを基準にしてアミノ末端から50個のアミノ酸である、請求項33記載の方法。
【請求項39】
H2Aポリペプチド配列が哺乳動物である、請求項33〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
H2Aポリペプチド配列がヒトである、請求項33〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
H2Aポリペプチド配列がH2A変異体である、請求項33〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
H2A変異体が、Genbankアクセッション番号AF058445;AF058446;AF044286;AF058444;NM138609;NM138609;BC013331;AF054174;AF041483;NM138610.1;およびNM004893.2より選択される配列によってコードされるポリペプチドを含む、請求項41記載のポリペプチド。
【請求項43】
腫瘍が転移性である、請求項33記載の方法。
【請求項44】
腫瘍がステージI、II、III、IV、もしくはVの腫瘍または癌を含む、請求項33記載の方法。
【請求項45】
腫瘍が固形腫瘍を含む、請求項33記載の方法。
【請求項46】
腫瘍が、肉腫、癌腫、黒色腫、骨髄腫、芽腫、神経膠腫、リンパ腫、または白血病を含む、請求項33記載の方法。
【請求項47】
腫瘍が、乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、または膵臓より選択される細胞を含む、請求項45記載の方法。
【請求項48】
腫瘍が、肺より選択される細胞を含む、請求項45記載の方法。
【請求項49】
腫瘍が、結腸より選択される細胞を含む、請求項45記載の方法。
【請求項50】
被験体が、抗腫瘍療法もしくは免疫系増強療法の候補であるか、抗腫瘍療法もしくは免疫系増強療法を受けているか、または抗腫瘍療法もしくは免疫系増強療法を受けたことがある、請求項33記載の方法。
【請求項51】
抗腫瘍剤もしくは免疫系増強剤または抗腫瘍治療もしくは免疫系増強治療を投与する工程をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項52】
抗体、放射性同位体、放射線、毒物、免疫療法剤もしくは化学療法剤、免疫療法、外科的切除、またはハイパーサーミアを投与する工程をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項53】
化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗物質、植物抽出物、植物アルカロイド、ニトロソ尿素、ホルモン、ヌクレオシド、またはヌクレオチド類似体を含む、請求項52記載の方法。
【請求項54】
化学療法剤が、シクロホスファミド、コルヒチン、コルセミド、アザチオプリン、シクロスポリンA、プレドニゾロン、メルファラン、クロランブシル、メクロレタミン、ブスルファン、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、チオグアニン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、AZT、5-アザシチジン(5-AZC)および5-アザシチジン、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、マイトマイシンC、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン、ヒドロキシウレア、シスプラチン、ミトタン、プロカルバジン、ダカルバジン、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、またはジブロモマンニトールを含む、請求項52記載の方法。
【請求項55】
ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチド配列の発現の阻害剤または刺激剤を特定する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチド配列を発現する細胞、または発現する能力のある細胞と、試験化合物を接触させる工程;
b)ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチド配列の発現を検出する工程であって、発現の変化が、試験化合物がATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチド配列の発現の阻害剤または刺激剤であることを示す、工程;および
c)結合の阻害または刺激と、ヒストンH2Aカルボキシ末端断片の存在下での抗体結合の阻害を比較する工程。
【請求項56】
接触が、溶液中、固相中、インビボ、またはインビトロにおける、請求項55記載の方法。
【請求項57】
乳房、結腸、消化管、肺、脳、皮膚、もしくは膵臓より選択される組織における細胞増殖疾患を有する被験体、またはそのリスクのある被験体をスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法:
変性電気泳動の条件下で約19kDaに移動し、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチド配列の発現を分析する工程であって、変性電気泳動の条件下で約19kDaに移動し、ATCCアクセッション番号CRL-12142として寄託された細胞株により産生されるヒトモノクローナル抗体に特異的に結合するヒストンH2Aポリペプチド配列が組織に存在すると、被験体が細胞増殖疾患を有する、またはそのリスクがあることが確かめられる、工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−529201(P2007−529201A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503070(P2007−503070)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008264
【国際公開番号】WO2005/086967
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(506307924)シャーンタ ウェスト インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】