説明

SDR用回転表面

本発明は、実質的に、外側の反応表面、少なくとも1つの反応体を前記反応表面に供給するための供給手段、ならびに前記反応表面を温度調節するための内在する構造体を備えている、水平方向に回転するディスク状の温度調節可能な支持体要素を有する回転ディスク反応器に関する。更に、この反応器は、反応生成物を反応表面から捕集および導出するための少なくとも1つの沈殿装置とを備えている。支持体要素は、特に、本質的に同一の面積の広さを有する2つの水平方向に重なり合って配置された構造部材a)およびb)からなることによって特徴付けられる。前記の2つの構造部材は、運転時間中に互いにインターロック形式で緊密に結合されており、この下部の構造部材a)は、支持体要素の内側領域に対向した上側に少なくとも1つの拡大された領域に亘ってフライス加工されかつ実質的に中断されていない、伝熱流体を収容、輸送および排出するための溝を備えている。更に、前記構造部材は、伝熱流体を供給および排出するための少なくとも2つの穿孔を備え、この場合、構造部材a)と構造部材b)との間には、外側の面領域を円形に包囲する少なくとも1つの異形成形シールが配置されている。これら2つの構造部材a)およびb)は、全体的に可逆的に互いに結合されている。前記の特殊な特徴は、好ましいメインテナンスおよび幅広い適用可能性を有し、ひいては反応器の回転表面上での化学反応の意図的な制御を可能にする簡単に設計された反応器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、いわゆる回転ディスク反応器("SDR")およびその使用である。
【0002】
本質的に垂直方向の軸線を中心に回転可能に配置された、ディスク状の温度調節可能な支持体要素からなり、こうして化学反応の実施を可能にする回転ディスク反応器は、公知技術水準から十分に公知である。
【0003】
即ち、WO 00/48728A1には、軸線を中心に回転可能である支持体要素を備えた反応器が記載されており、この場合この支持体要素は、1つの表面およびそれと結合した、少なくとも1つの反応体を表面上にもたらすことができる供給手段を備えている。この反応器は、回転羽根車または熱風ブロワーを装備し、これらの双方は、支持体要素の表面を覆い、この表面を包囲する周辺の領域から気相成分を表面の中へ吸引するように取り付けられている。
【0004】
欧州特許第1156875号明細書B1には、軸線を中心に回転可能に取り付けられた支持体要素を備えた反応器が記載されており、この場合この支持体要素は、少なくとも1つの反応体を支持体要素の表面へ供給するための供給手段と支持体要素の表面の生成物を捕集するための捕集手段とを備えている。この支持体要素の表面は、アンダーカットノッチを含み、このアンダーカットノッチには、少なくとも1つの反応体が反応器の使用中に供給手段から直接供給され;支持体要素の回転時に、少なくとも1つの反応体は、本質的にリング状の被膜を少なくとも1つのアンダーカットノッチ内に形成し、そこから支持体要素の表面を経て表面縁部に流れる。
【0005】
同様に、軸線を中心に回転可能に形成された支持体要素を備えた反応器装置は、欧州特許第1169125号明細書に記載されている。この場合、支持体要素は、円周を有する面および少なくとも1つの反応体を前記面に供給するための供給手段を備えている。前記面が回転する場合には、遠心分離力が形成され、その結果、反応体は、薄手の被膜として自由に前記面上を流れ、前記面の円周から遠心分離される。この場合、この面は、本質的に平面状であり、さらに、ドームまたはキャップの円周方向の基礎面として、または円筒状または管状の部材として構成されている剪断部材が設けられており、この場合この剪断部材は、前記面に直接に隣接して配置されているが、しかし、前記面に取り付けられてはいない。こうして、使用中には、薄手の被膜だけが円周方向の基礎面と前記面との間を貫流する位置に接触し、反応表面の別の位置には接触しない。
【0006】
米国特許第7247202号明細書B1には、基質、または断片またはその誘導体を本質的に固体相中で薬剤と不均一に接触させることによって、基質を本質的に液相中で変換する方法が記載されている。この場合、固体相試薬は、支持体要素の表面として存在し、この場合この支持体要素は、固体相薬剤が回転表面またはその一部分を提供するように支持体要素が軸線を中心に回転するように形成されており、およびこの基質は、実質的に半径方向に軸線から外向きに薬剤と動的に接触して流れる被膜を提供する。付加的に、基質には、特に超音波である振動エネルギーが供給される。
【0007】
欧州特許第1152824号明細書B2には、中空支持体要素を有する反応器装置が設けられている。この反応器装置は、軸線を中心に回転可能であり、この場合この支持体要素は、反応のための第1の外側面、熱伝達のための第2の内側面およびこの第2の面を伝熱流体で処理するための装置を備えている。第1の面と第2の面は、動的に互いに結合し、支持体要素は、片側で第2の面によって制限されている内側空間を備えている。更に、支持体要素は、第1の外側反応表面を液相、ガス状相または固体相中の反応体で処理するための供給装置を有し、この場合には、板または膜が中空空間支持体要素の内部に設けられており、これらの板または膜は、本質的に全内部空間に亘って延在している。こうして、第2の面と板または膜の片側との間の第1の空間、ならびに板または膜の対向する側と第2の面から離れた、支持体要素の内面との間の第2の空間が形成される。しかし、この場合、板または膜の周面には、強制的に間隙が残らなければならず、したがって、伝熱流体は、第1の空間と第2の空間との間を流れることができ、この場合対向する板または膜は、網状物、織物またはフォーム材料を備えており、こうして伝熱流体中での自由渦動の形成は、阻止される。
【0008】
この種の回転ディスク反応器の使用は、例えば刊行物WO 03/008083A1およびWO 03/008460A1に記載されている。第1の場合には、粒子の製造方法が記載されており、この場合には、最初に少なくとも1つの予め定められた物質を有する溶液が回転反応器の回転面に供給される。引続き、この溶液は、中断された流れの薄手の被膜の形で回転面上に分配され、引続きマイクロ混合および均質な核形成により溶液から粒子は、沈殿されるかまたは晶出される。最終的に、沈殿したかまたは晶出した粒子は、回転面の周辺に捕集される。
【0009】
第2の場合には、回転面反応器は、重合反応における生体分子停止反応の制御に使用される。この場合、化学成分は、この化学成分が薄手の被膜中で、回転軸を中心を回転する表面により移動することによって重合され、その際この薄手の被膜は、内側領域から前記表面の外側領域へ流れ、この外側領域から取り出される。こうして、この薄手の被膜中で重合体鎖が形成され、刺激されて成長する。この場合、この表面は、重合体鎖が半径方向に回転軸から離れる方向に表面上への巻出および/または拡張を引き起こさせるように回転され、それによって活性重合体鎖の並進拡散および/またはセグメント形式による拡散が減少され、それによって生体分子停止反応が減少される。
【0010】
この種の回転ディスク反応器は、殊に物質移動反応および熱移動反応に適しているので、勿論、この種の反応になおいっそう好適である回転ディスク反応器を製作する仕方も存在した。この場合、本質的な視点は、反応エネルギーを反応表面上に伝達すること、殊に伝熱流体を使用することに向けられた。即ち、例えばWO 2006/008500A1には、支持体要素を含む反応器が記載されており、この場合この支持体要素は、さらに軸線を中心に回転可能に配置されており、および一般に軸線に同心配置されている第1の表面を有する。第1の表面は、液体有色反応体の薄手の被膜の外向きの半径方向の流れに適合しており、この流れは、支持体要素が回転する場合に、この支持体要素上への施与後に支持体要素上に亘って流出する。更に、第1の表面と対向して配置されかつ第1の表面と熱交換する第2の表面が構成されている。この場合、第2の表面は、一般に軸線に同心配置されている、螺旋状の通路を備えている。第2の表面は、伝熱流体を螺旋状の通路に供給するための装置を備えている。類似した反応器は、WO 2004/004888A1に記載されている。この少なくとも1つの支持体要素は、内面および外面を備えた螺旋状の配置を有する。また、支持体要素は、軸線を中心に回転可能に、内面が回転軸に対向するように配置されている。更に、支持体要素は、内面へ熱移動するかまたは内面から熱移動する手段を装備すべきである。
【0011】
更に、支持体要素の内面と外面との間で交換するための変法は、WO 2006/040566A1に記載の対象である。そこに記載された回転ディスク反応器は、同心配置された表面と露出した外面と反対の内面とを備えた支持体要素を有している。この場合、この露出した面は、液相の薄手の被膜が回転面上に施こされる場合に、この液相の薄手の被膜が前記面の外縁に移動するように設計されている。この場合、支持体要素の少なくとも1つの一部分は、透過性または半透過性または多孔質であるべきであり、こうして液相または気相は、外面と内面との間で通過することができるが、しかし、μm範囲の粒子の通過は、阻止される。
【0012】
最終的に、回転ディスク反応器の全ての中空支持体要素は、WO 2006/018622A1の記載によれば、熱交換のために第2の内面を備えている。付加的に、この中空支持体要素は、その内部に、実質的に内部空間に亘って延在しかつ貫流間隙を形成する板または膜を備え、伝熱流体が異なる空間の間を貫流することを可能にする。第2の面の板または膜の少なくとも1つは、板または膜の片側の1つと第2の面との距離が半径に沿って軸線から出発して変動するように形成されているかまたは異形成形されている。
【0013】
公知技術水準の全ての回転ディスク反応器および殊によりいっそう詳細に記載された変形は、製造し、運転し、かつメインテナンスをするのに費用が掛かるという欠点を有する。更に、伝熱流体の供給、輸送および除去のための特殊な装置は、複雑であり、故障に対して敏感である。
【0014】
この理由から、本発明には、公知技術水準により、中心に配置された、本質的に垂直方向の軸線を中心に回転可能に配置されたディスク状の温度調節可能な支持体要素を備えた反応器を開発するという課題が課された。この支持体要素は、外側の反応表面、少なくとも1つの反応体を前記反応表面に供給するための供給手段、ならびに前記反応表面を温度調節するための内在する構造体を備えている。更に、この反応器は、反応生成物を反応表面から捕集および導出するための少なくとも1つの分離装置を備えている。更に、こうして設計された反応器の開発は、伝熱流体の使用を簡易化し、殊に回転ディスク反応器の簡単な製造を可能にすべきであった。この場合には、殊に、前記反応器が伝熱流体に対して運転時間中に完全な緊密さを有し、反応表面が均一に反応時間中に持続するようにそれぞれ望ましい反応時間を保証するように、伝熱流体が導かれることに注目すべきであった。勿論、反応器の製造、運転およびメインテナンスの場合には、経済的な視点を考慮に入れるべきであった。
【0015】
この課題は、支持体要素が本質的に同一の面積の広さを有する2つの水平方向に重なり合って配置された構造部材a)およびb)からなるような反応器を用いて解決された。2つの構造部材a)およびb)は、反応器の運転時間中に互いにインターロック形式で緊密に結合されており、この場合この下部の構造部材a)は、支持体要素の内側領域に対向した上側(1)に少なくとも1つの拡大された領域に亘ってフライス加工されかつ実質的に中断されていない、伝熱流体を収容、輸送および排出するための溝(2)、ならびに伝熱流体を供給および排出するための少なくとも2つの穿孔(3)を備え、この場合には、構造部材a)と構造部材b)との間には、外側の面領域を円形に包囲する少なくとも1つの異形成形シール(4)が配置されており、これら2つの構造部材a)およびb)は、可逆的に互いに結合されている。
【0016】
意外なことに、本発明による回転ディスク反応器を使用する場合に、この回転ディスク反応器で課題を完全に達成することができる状態にあるだけでなく、殊に伝熱流体の簡単な輸送に基づき、熱伝達の微細な調整を必要とする化学反応を実施することができることが見い出された。また、この利点は、反応生成物の影響に関連して、および反応生成物の物理的性質に関連して、殊に粒子の製造の際に明らかになる。公知技術水準、殊にWO 2006/008500A1に記載の装置とは異なり、本発明による反応器は、特に簡単な構造形式を示す。即ち、本発明に最も近い公知技術水準によれば、支持体要素は、2つの互いに堅固に結合された、重なり合って配置された部材からなり、これらの部材間に空隙を備えている。下側部材は、既述したように、その下面にディスクの中心点から縁領域へ案内されている、2つの均一に配置された、螺旋状のウェブを備えている。ディスクの中心には、回転子の軸線方向に向きかつ液体を空隙中に導入することができ、および液体を空隙から導出することができる2つの穿孔が存在する。ディスクの上側部材の下面は、補助的に配置された螺旋装置を備え、したがって、ディスクの上側部材の螺旋と下側部材の螺旋の双方は、互いに係合している。こうして生じる、前記の双方の二重螺旋の中間空間によって、伝熱流体は、ディスクの中心点からディスクの縁へ通過し、および再び返送され、したがって、ディスクを冷却または加熱することが可能である。この公知技術水準により記載されたディスクの幾何学的形状は、支持体要素が唯一の構造部材からなることを生じる。更に、前記構造部材を別の反応プログラムに適合させなければならないとしたら、例えば、このことは、表面の変更された材料、形状および被覆によって必要となるが、全ての支持体要素は、新たに構成させなければならない。その上、公知技術水準により記載された構成は、極めて複雑に形成されている。それというのも、下側部材および上側部材は、それらの内部に複雑にされた構造を有しているからである。
【0017】
これとは異なり、本発明による反応器は、意外に簡単な構成の特徴のために、必要とされる材料、反応表面、材料の形状に関連して融通の利く適合を可能にするが、できるだけ有用な被覆も可能にする。こうして、多大な費用を掛けることなしに、それぞれの化学反応および物理反応によって必要とされる多種多様の要件に適合させることができ、それというのも、通常そのつど、構造部材b)、即ち上側部材は、反応表面である外面に適合させなければならないからである。更に、運転障害の場合には、支持体要素は、多大な費用なしにメインテナンスをすることができる。この改善の利点は、規模の点で予想することができなかった。
【0018】
既に指摘したように、本発明による反応器は、殊に融通性を以てそれぞれの要件に適合させることができることを示す。この理由から、本発明は、下部の構造部材a)が金属、プラスチックまたはセラミックから完成されているという変法も提供する。特に、下部の構造部材は、金属からなり、この場合には、勿論、記載された材料の全ての混合物もこれに該当する。類似した範囲の変法は、上部の構造部材b)に関連する。この構造部材b)は、同様に金属、プラスチックまたはセラミックから完成されていてよく、この場合には、ガラスもこれに該当する。しかし、この場合も、金属は、構成材料として有利であると見なすことができる。提案された反応器の使用は、特殊な分野に限定されるものではない。それというのも、実際の本発明は、支持体要素の内部における伝熱流体の改善された収容、輸送および排出に関連するからである。本発明の本質的な構成の特徴は、支持体要素の外側の反応表面に依存しないことであり、したがって、この支持体要素は、上部の構造部材b)の本質的な構成成分として、平滑に、溝付きに、波形に、および/または凹面形もしくは凸面形に構成されていてよい。こうして、反応プログラムは、意図的に制御することができ、反応表面に添加された反応体の反応挙動は、影響を及ぼされうる。勿論、異なる構造が混ざるかまたは交互に現れることにより、同一の反応表面でも区別されうる、それぞれの表面構造によって、ディスクの縁に向かう表面上に亘っての異なる移行速度に基づく、異なる滞留時間が反応表面上で明らかになる。勿論、反応表面の異なる設計要素は、反応被膜中の反応体の均一な混合にも使用される。
【0019】
しかし、付加的に反応表面のそれぞれの構造の構成とは無関係に、本発明は、外側の反応表面が少なくとも部分的に被覆されていることを保証する。特に、この被覆は、熱伝導性および/または不活性の温度安定性の材料、殊に重合体、例えば高分子量のハロゲン化された不飽和炭化水素、有利に高分子量のテトラフルオロエチレンからなる。こうして、反応表面上での使用された反応体の付加的に改善された反応挙動が明らかとなり、反応表面上での構成上のずれならびに構造的なずれは、こうして補正されうる。勿論、反応表面は、全体的にではあるが、特殊な領域または区間のみでも、付加的に、付加的な被覆とは無関係に、他の成分、即ち、例えば触媒能を有する成分を備えていてよい。
【実施例】
【0020】
既に幾度か示したように、本発明にとって本質的な、本発明の主要な視点は、支持体要素の内部の構成にある。これに関連して、本発明は、互いに対向する、構造部材a)とb)の2つの面、即ち、支持体要素の内部での2つの面は、主に平滑な移行領域を備え、この場合には、特に溝領域(2)を除いて、全体的に互いに表面接触している。
【0021】
溝(2)に関連して、本発明は、溝が螺旋形、リング形および/または蛇行形で下部の構造部材の上側(1)に延在するか、または同心的に配置された、少なくとも2つの溝の形で存在するような実施態様の変形を考慮に入れている。更に、最後に記載された場合には、溝は、少なくとも1つの半径方向に延在する溝によって互いに結合されている。それぞれの場合に、多数の溝または複数の溝は、伝熱流体が構造部材b)の反応表面を均一に加熱するかまたは冷却するように配置することができる。
【0022】
従って、本発明は、本質的には、上部の構造部材b)の反応表面から離反した、同時に支持体要素の内部の上側部材を形成する面が、平滑面を備え、および同時に支持体要素の内部空間の下側部材を形成する、下部の構造部材a)の上側(1)がこの上側にフリース加工された少なくとも1つの溝(2)を備えていることにある。更に、上部の構造部材b)が下部の構造部材a)上に載置されている場合には、溝領域を除いて、それぞれの内側表面の間での平滑な転位部での接触が結果として生じる。こうして残存する、単数の溝または複数の溝の空隙内で、伝熱流体は、供給され、輸送され、および排出されうる。
【0023】
1つの本質的な視点は、伝熱流体の供給および排出に使用される、下部の構造部材a)の少なくとも2つの穿孔(3)の形にある。好ましくは、この少なくとも2つの穿孔(3)は、同心的に軸線に対して隣接して配置されているべきである。こうして、伝熱流体は、簡単に、回転軸と結合している装置を介して支持体要素の内部に供給されかつこの内部から導出されることができる。
【0024】
しかし、伝熱流体を供給および排出するための少なくとも2つの穿孔の少なくとも1つが同心的に軸線に対して隣接して配置され、他の少なくとも1つの穿孔が支持体要素の表面端部の周辺に配置されていることも可能である。従って、中心領域内の穿孔と周辺領域内の穿孔との間の最小の距離は、一般に支持体要素の半径に相当する。支持体要素は、水平方向に前記面内で回転するように配置されているので、この場合には、伝熱流体は、常に中心領域に供給され、周辺領域で排出される。伝熱流体の輸送および流れ方向は、常に支持体要素の回転速度および内部で生じる遠心力に依存する。この場合、支持体要素の垂直方向の軸線は、必要な場合には、垂直方向からずれてもよいし、軸線それ自体は、回転中に円錐の側面を描くことができ、その結果、支持体要素のタンブリング運動が生じる。
【0025】
また、本発明は、2つの構造部材a)とb)とを少なくとも運転時間中にクリップ、締付け金具、差込ネジ、ねじ込み棒または磁石によって互いに堅固に結合する方法を網羅している。勿論、支持体要素の上部の構造部材と下部の構造部材とを互いにインターロック形式で緊密に結合するために、全ての他の方法が考慮されてもよい。この場合には、例えばバイオネット継手またはフリース加工されたネジを考えることができる。差込ネジ(5)は、特に好適である。
【0026】
更に、本発明の本質的な特徴は、上部の構造部材と下部の構造部材との緊密な結合にあり、このことは、殊に支持体要素の回転中に、即ち実際の反応時間中に重要である。このシーリングを保証するかまたは付加的にシーリングを向上させるために、本発明は、少なくとも1つの異形成形シール(4)を備えている。このシールは、リング状の溝中に構造部材a)および/またはb)の周辺領域内で延在すべきである。この溝は、伝熱流体を導くための溝と同様にフリース加工されていてよいか、または下部の構造部材および/または上部の構造部材とそれぞれの構造部材の周辺領域を取り巻く凹所とを組み合わせることによって保証されてもよい。議論された、異形成形シールは、任意の可能な構成を有することができる。従って、このシールの横断面は、円形、多角形または卵形であってもよいし、全体的に平らであってもよい。しかし、最も多い場合には、典型的な圧縮性シールであり、こうして望ましいシール効果が最大に保証される。勿論、複数の十分に異なる形状の構成されたリング状シールは、互いに組み合わされてもよい。
【0027】
伝熱流体として、ガスならびに液体がこれに該当するが、しかし、粒子が巨視的に流動性を有する場合には、固体が使用されてもよい。典型的には、水または水蒸気が使用されるが、しかし、油が使用されてもよい。一般には、特に有利な凝固点および沸点、および相応する比熱を有する液体が適している。
【0028】
支持体要素の回転する表面によって、この回転する表面上に反応被膜の形成を実現させる遠心力が生じる。出発反応体ならびに反応生成物の回転速度および粘度に依存して、被膜は、表面の外側に移動し、この外側でこの被膜は、表面から遠心分離される。生じる反応生成物を反応表面から捕集しかつ導出するために、特許保護が請求された反応器は、相応する装置を備え、この場合この装置は、最も簡単な場合には、垂直方向の壁からなり、この壁は、支持体要素を円形の配置で一定の距離をもって完全に取り囲んでいる。この壁は、温度の点でそれぞれの方法に適合させることができ、したがって、この壁は、加熱されてもよいし、冷却されてもよい。回転する表面上で反応温度を上昇させる最も多くの場合には、捕集壁は、冷却され、したがって遠心分離された反応生成物は、垂直方向の壁で凝縮され、この反応生成物の粘度に相応して重力下で流出し、例えば溝の形の捕集容器中に捕集されうる。最終的に、この溝から反応生成物は、取り出されうる。勿論、垂直方向の壁は、この壁に付着する反応生成物が急速に、残留物の形成なしに捕集装置に供給されるように影響を及ぼされることも可能である。殊に、例えば機械的に有効であることができるが、しかし、超音波によっても有効であることができる、衝撃壁の温和で連続的な振動は、この目的のために適している。中心の反応軸線を取り囲む水平方向の支持体要素と支持体要素を円形で取り囲む捕集装置との中心の反応軸線によって、回転ディスク反応器のために実質的にコンパクトな有用な構成が結果として生じる。即ち、前記構成の下側領域内での排出装置(排出溝)は、反応器の底面を形成することができ、形状および材料がそれぞれの要件に適合しうるカバーは、環状で取り付けられた垂直方向の壁上に取り付けることができる。
【0029】
本発明は、反応器それ自体と共に反応器の使用を含む。これは、全体的に何らの特殊な制限を受けていない。それというのも、特許保護が請求された回転ディスク反応器は、本質的に公知技術水準の設計の変更に従っており、支持体要素の内側領域に関連してのみこの設計の変更と徹底的に区別されるからである。従って、本発明による反応器は、優先的に関与する物質移動および/または熱伝達プロセスを有する反応の実施に使用される。この場合には、特に少なくとも2つの反応体が支持体要素の反応表面上にもたらされる。これらの反応体は、好ましくはそれぞれ液状の形で存在すべきである。勿論、この場合には、関与する反応体のそれぞれの粘度は、変動してもよい。それぞれの反応体は、互いに反応し、望ましい生成物を生じうる。しかし、反応体の1つは、不純物を別の反応体から除去するために使用されてもよい。
【0030】
また、反応温度は、本質的に制限を受けない。しかし、伝熱流体により、本発明によれば、支持体要素の反応表面上の反応温度は、−50℃〜250℃の温度に調節されるべきである。好ましい範囲は、−20℃〜220℃、殊に0〜200℃である。10℃〜150℃の範囲は、大抵の反応に適していると思われ、したがって、この範囲も特に有利であると見なすことができる。
【0031】
提案された反応器は、同様に幅広い範囲の回転速度に適している。即ち、支持体要素は、少なくとも反応時間中に毎分50〜2500rpm回転の速度で回転すべきである。好ましい回転数は、毎分200〜2000回転、殊に400〜1700回転、特に有利に800〜1500回転である。記載された範囲内で、多種多様の化学反応が実施されてよいが、しかし、例えば粒径に関連する物理的性質の変更が実施されてもよい。即ち、特許保護が請求された反応器は、なかんずくポリウレタンの製造に適しているが、しかし、ポリウレタンの誘導ならびに出発化合物および生成物の精製にも適している。
【0032】
図1および図2には、例示的に2つの構造部材a)およびb)を備えた本発明による支持体要素の実施態様が図示されている。この場合、2つの穿孔(3)は、同心的に配置されており;構造部材a)およびb)は、リング状の包囲する異形成形シール(4)により密閉される。構造部材a)およびb)は、差込ネジ(5)により結合されており、この場合この差込ネジ(5)は、包囲する開口によって構造部材a)およびb)の少なくとも1つを通過し、および外側に対して取り付けられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側の反応表面、少なくとも1つの反応体を前記反応表面に供給するための供給手段、ならびに前記反応表面を温度調節するための内在する構造体を備えている、同心的に配置された、本質的に垂直方向の軸線を中心に回転可能に配置されたディスク状の温度調節可能な支持体要素と、反応生成物を反応表面から捕集および導出するための少なくとも1つの分離装置とを備えている反応器において、前記支持体要素が本質的に同一の面積の広さを有する2つの水平方向に重なり合って配置された構造部材a)およびb)からなり、これらの構造部材a)およびb)が、運転時間中に互いにインターロック形式で緊密に結合されており、この場合この下部の構造部材a)は、支持体要素の内側領域に対向した上側(1)に少なくとも1つの拡大された領域に亘ってフライス加工されかつ実質的に中断されていない、伝熱流体を収容、輸送および排出するための溝、ならびに伝熱流体を供給および排出するための少なくとも2つの穿孔を備え、この場合、構造部材a)と構造部材b)との間には、外側の面領域を円形に包囲する少なくとも1つの異形成形シール(4)が配置されており、これら2つの構造部材a)およびb)は、可逆的に互いに結合されていることを特徴とする、上記反応器。
【請求項2】
下部の構造部材a)が金属、プラスチックまたはセラミックからなり、好ましくは、金属からなる、請求項1記載の反応器。
【請求項3】
上部の構造部材b)が金属、ガラス、プラスチックまたはセラミックからなり、好ましくは、金属からなる、請求項1または2記載の反応器。
【請求項4】
上部の構造部材b)の外側の反応表面が、平滑に、溝付きに、波形に、および/または凹面形もしくは凸面形に構成されているか、またはこのように形成された領域またはこれらからなる混合形を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項5】
外側の反応表面が、特に熱伝導性および/または不活性の温度安定性の重合体、例えば高分子量のハロゲン化された不飽和炭化水素、殊に高分子量のテトラフルオロエチレンで少なくとも部分的に被覆されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項6】
互いに対向する、構造部材a)とb)の2つの面が、少なくとも1つの平滑な移行領域を備え、好ましくは溝領域を除いて、全体的に互いに表面接触している、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項7】
少なくとも1つの溝が螺旋形、リング形または蛇行形で構造部材a)の上側にフリース加工されているか、または同心的に配置された2つの溝の形で存在し、これらの溝は、さらに半径方向に延在する少なくとも1つの溝によって結合されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項8】
伝熱流体を供給および排出するための構造部材a)の少なくとも2つの穿孔が同心的に軸線に対して隣接して配置されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項9】
伝熱流体を供給および排出するための少なくとも2つの穿孔の少なくとも1つが同心的に軸線に対して隣接して配置され、他の少なくとも1つの穿孔が表面端部の周辺に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項10】
構造部材a)とb)とが運転時間中にクリップ、締付け金具、差込ネジ、ねじ込み棒または磁石によって互いに堅固に結合されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項11】
少なくとも1つの異形成形シールが構造部材a)および/またはb)のリング状の溝中に延在している、請求項1から10までのいずれか1項に記載の反応器。
【請求項12】
関与する物質移動および/または熱伝達プロセスを有する反応を実施するための請求項1から11までのいずれか1項に記載の反応器の使用。
【請求項13】
支持体要素の反応表面上に少なくとも2つの反応体を、好ましくはそれぞれ液状の形でもたらす、請求項12記載の使用。
【請求項14】
支持体要素の反応表面上の反応温度を伝熱流体により−50℃〜250℃、特に−20℃〜220℃、有利に0〜200℃、特に有利に10〜150℃の温度に調節する、請求項12または13記載の使用。
【請求項15】
支持体要素は、少なくとも反応時間中に毎分50〜2500rpm回転、特に毎分200〜2000回転、有利に毎分400〜1700回転、特に有利に毎分800〜1500回転の速度で回転する、請求項12から14までのいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2012−515076(P2012−515076A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545656(P2011−545656)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066944
【国際公開番号】WO2010/081600
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】