SPARC結合ペプチド及びその使用
本発明は、腫瘍等の疾患部位を標的とするためのSPARC及びアルブミン結合ペプチドを治療及び診断剤と合わせて提供する。特に、SPARC結合ペプチド-抗体Fcドメイン融合タンパク質とを含む組成物及びその使用方法が開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2008年12月5日に出願された米国仮出願番号61/120,228号の利益を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
酸性でありシステインに富んだ分泌タンパク質(Secreted Protein, Acidic, Rich in Cysteines (SPARC))は、オステオネクチンとしても知られており、ヒトの体内で発現している303アミノ酸の糖タンパク質である。SPARCの発現は発生学的に制御されており、正常な発生の過程で又は傷害に応答して再構築を受けている組織において主に発現している。例えば、Lane et al., FASEB J., 8, 163-173 (1994)を参照のこと。例えば、高レベルのSPARCタンパク質が、発生中の骨及び歯、主に、マウス、ウシ、及びヒトの胚における骨芽細胞、象牙芽細胞、軟骨周囲の線維芽細胞、及び分化軟骨細胞に発現している。SPARCはまた、組織再構築、創傷治癒、形態形成、細胞分化、細胞移動、及び血管形成の過程において、これらの過程が疾患の状態に関与する場合を含め、細胞−マトリックスの相互作用にも重要な役割を果たしている。例えば、SPARCは間質性腎線維症で発現しており、ブレオマイシン誘発性肺線維症等の肺損傷に対する宿主応答において役割を果たしている。
【0003】
SPARCは、様々な癌における腫瘍及びその周囲の間質で正常の組織と比較して異なった発現をしており、そのパターンは癌の種類に依存している。従って、その機能並びに癌の発生及び進行への寄与の面を全て説明する統一的なモデルが存在しない。一つのパターンにおいて、SPARCの発現は、乳癌(Bellahcene and Castronovo, 1995; Jones et al., 2004; Lien et al., 2007; Porter et al., 1995)、メラノーマ(Ledda et al., 1997a)、及び神経膠芽腫(Rempel et al., 1998)において上昇することが報告されている。SPARCの発現上昇は、これらの癌の腫瘍促進又は進行において役割を果たしている。
【0004】
従って、炎症及びいくつかの癌におけるSPARCの過剰発現により、SPARCは診断及び治療を行うための潜在的な標的となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の要旨
本発明は、哺乳動物において治療又は診断剤を疾患部位に送達するための組成物であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合ペプチド(「SBP」)に結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有し、該SBPが配列番号:1〜117の一つ又はそれ以上を含む、組成物(「本発明の組成物」)を提供する。
【0006】
特に好ましい実施態様としては、例えば、哺乳動物において疾患部位に治療剤を送達するための本発明の組成物であって、一以上のSBPを含有し、該治療剤が機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントであり、例えば、該機能的抗体Fcドメインが配列番号:118を含む、組成物が挙げられる。
【0007】
さらに好ましい実施態様としては、哺乳動物において疾患部位に治療又は診断剤を送達するための本発明の組成物であって、例えば、SBPが、配列番号:1〜112及び117のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、組成物が挙げられる。好ましくは、SBPは、配列番号:1〜112及び117のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸で構成されることができる。他の実施態様としては、例えば、二以上の別々のSBPが存在し、それぞれの個々のSBPが、配列番号:1〜112及び117のいずれか一つ、好ましくは配列番号:1〜5のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、組成物が挙げられる。実施態様としては、例えば、二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPが配列番号:1〜117の一つ又はそれ以上で構成される、組成物が挙げられる。
【0008】
本発明はまた、哺乳動物において疾患部位に治療又は診断剤を送達するための組成物であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SBPに結合した治療又は診断剤、薬学的に許容される担体、及び薬学的に許容される担体を含有し、さらにアルブミン結合ペプチド(「ABP」)を含有し、該ABPが配列番号:119若しくは配列番号:120、又は配列番号:119及び配列番号:120の両方を含む、組成物も提供する。そのような組成物には、SBP及びABPが同一のポリペプチド中にあるもの、並びにSBPとABPとが異なるポリペプチド中にあるものが包含される。
【0009】
本発明はさらに、哺乳動物において疾患部位に治療又は診断剤を送達するための方法であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合タンパク質に結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有し、該SBPが配列番号:1〜117を含む、方法(「本発明の方法」)を提供する。好ましい実施態様としては、組成物が、例えばSBPが、配列番号:1〜112及び117のいずれか一つ又はそれ以上、より好ましくは配列番号:1〜5及び117のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む本発明の方法が挙げられる。
【0010】
他の好ましい実施態様としては、本発明の方法において、例えば二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPが配列番号:1〜117の一以上で構成されることが挙げられる。本発明はまた、少なくとも一つのSBPでそれぞれが構成される二以上の別々のポリペプチドが存在し、該SBPが配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、本発明の方法も提供する。
【0011】
特に好ましい本発明の方法としては、組成物において、例えば、治療剤が、機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントであって、例えば該抗体フラグメントが配列番号:118を含むこと等が挙げられる。本発明によるこのような方法としては、例えば、治療剤が、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシス誘発、細胞死誘発、及びオプソニン作用(opsinization)の一以上を媒介する抗体フラグメントであること等が挙げられる。
【0012】
本発明により提供される本発明の方法には、配列番号:119若しくは120、又は配列番号:119及び120の両方を含む血清アルブミン結合ペプチド(「ABP」)も含まれる。本発明による方法としてはさらに、例えば、SBP及びABPが同一のポリペプチド中にあること、並びにSBPとABPとが異なるポリペプチド中にあることが挙げられる。しかしながら、SBPはまた、配列番号:1〜112のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸でも構成され得る。
【0013】
提供される本発明の組成物及び本発明の方法は、疾患部位が腫瘍である場合、及び哺乳動物がヒト患者である場合において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、結合ペプチドの治療又は診断剤への融合の一般概念を示す。本図面において示されている例では、治療剤は抗体Fcドメインである。
【図2】図2は、ファージディスプレイライブラリーの反復スクリーニングの一般的な戦略を示す。
【図3】図3は、SPARCへの結合についてペプチドファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした後に同定された配列を、配列が単離された回数により示す。
【図4】図4は、SPARCへの結合についてペプチドファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした後に同定された配列を、(ODで示されるような)SPARCへの結合活性により示す。
【図5】図5は、ペプチドPD15又はPD21のいずれかのペプチドをpFUSE-hIgG1-Fc2ベクターにクローニングして、PD15又はPD21とFcとの融合タンパク質を得たことを示す。
【図6】図6は、ペプチド15及びペプチド21をコードする配列をpFUSE-hIgG1-Fc2ベクターにクローニングして、ペプチド-Fc融合タンパク質をコードさせることにより得られたDNA配列を示す。
【図7】図7は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動におけるPD15-Fc及びPD21-Fc融合タンパク質の発現及び精製を示す。
【図8】図8は、PD15及びPD21の標的結合を明らかにするために用いたProtoarrayを示す。
【図9】図9は、PD15及びPD21によるSPARC結合の結合活性を抗SPARC抗体のものと比較したELISA結合分析のグラフである。
【図10】図10は、ヒト腫瘍の切片上で行われた免疫組織的(immunohistolgic)試験の顕微鏡写真を示し、腫瘍でのSPARCの発現が抗SPARC抗体(R&D Anti SPARC)を用いて示されている。陰性コントロールの抗ハーセプチン抗体(Fcフラグメントのみ)及びスタビリン(Stablin)結合ペプチド-Fc融合タンパク質(stab-Fc)は腫瘍を染色していない。
【図11】図11は、SPARCを発現する腫瘍の組織的染色を示し、SPARCを発現している腫瘍細胞にPD15及びPD21が結合することを示している。
【図12】図12は、エラスチンにおける潜在的SPARC結合部位を示す。
【図13】図13は、ヒト前立腺癌/ヌードマウスモデルの系におけるPD15及びPD21の抗腫瘍活性を示す。
【図14】図14は、ヒト乳癌/ヌードマウスモデルの系におけるPD15及びPD21の抗腫瘍活性を示す。
【図15】図15は、SPARC結合活性を有する二つのsvFcポリペプチド、ScFv3-1及びScFv3-2、を示す。
【図16】図16は、SPARC結合活性を有する二つのsvFcポリペプチド、ScFv2-1及びScFv2-2、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
SBP及びABPは「ペプチドリガンドドメイン」である。用語「ペプチドリガンドドメイン」は、それ自体で、及び/又はより大きなポリペプチド配列の中に存在することができ、他の生体分子に特異的に結合するアミノ酸配列を意味する。例えば、脂肪酸、ビリルビン、トリプトファン、カルシウム、ステロイドホルモン及び他の生理学的に重要な化合物の主な血液輸送システムでは、これらの生体分子が血清アルブミンに結合することが関与している。これらの生体分子の結合は、アルブミンのアミノ酸配列における個々の部位で、即ち、血清アルブミンにおけるペプチドリガンドドメインで発生している。
【0016】
本発明は、哺乳動物において治療又は診断剤を疾患部位に送達するための組成物であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合ペプチド(「SBP」)に結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有する、組成物を提供する(「本発明の組成物」及び「本発明の方法」)。本発明には、組成物及び方法において、SBPが、配列番号:1〜117のいずれか一つ若しくはそれ以上、最も好ましくは配列番号:1〜5のいずれか一つ若しくはそれ以上の配列のペプチド、又は配列番号:1〜117のいずれか一つの一以上のホモログを含むことが包含される。
【0017】
用語「ホモログ」は、原型の配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、原型の配列により示される性質と実質的に類似する、関連性のある性質を示すポリペプチドを意味する。その性質の一例を反映したものとして活性薬剤の組織分布を調節する能力があり、配列番号:1〜117のホモログは、配列番号:1〜117により提供されるものと実質的に同様なレベルの調節を提供することができる。これに関して、例として及び望ましくは、そのような実質的に同様な調節を示す配列番号:1〜117のホモログは、配列番号:1〜117により提供されるものと比較して少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは約95%の活性薬剤の血中濃度を提供し得る。あるいは、用語「ホモログ」はまた、例えば、配列番号:1〜112のいずれか一つ、最も好ましくは配列番号:1〜5のいずれか一つ以上の、少なくとも6連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも7連続するアミノ酸、より好ましくは少なくとも8連続するアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも9連続するアミノ酸、最も好ましくは少なくとも10連続するアミノ酸のペプチド配列をもいう。
【0018】
本発明により提供される組成物及び方法にはまた、配列番号:119若しくは120、又は配列番号:119及び120の両方を含むABP、並びにそれらのホモログも包含される。本発明による方法にはさらに、例えば、SBP及びABPが同一のポリペプチドにあること、並びにSBPとABPとが異なるポリペプチドにあることが包含される。
【0019】
原型の配列に対する変化に関して、原型の配列のホモログは、望ましくは原型の配列と少なくとも約80%同一、好ましくは原型の配列と少なくとも約90%同一、さらにより好ましくは原型の配列と少なくとも約95%同一、最も好ましくは原型の配列と少なくとも約99%同一である。
【0020】
本明細書において使用される場合、「配列同一性の割合」は、比較ウィンドウ(comparison window)にわたって最適な状態で整列された二つの配列を比較することにより決定される値を意味する。また、比較ウィンドウにおけるポリペプチド配列の一部は、(付加も欠失も含まない)基準配列(reference sequence)と比較して、最適な状態で二つの配列を整列させるため、付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。該割合は、両配列においてアミノ酸残基が同一である位置の数を調べて一致した位置の数を求め、その一致した位置の数を、比較されたウィンドウ(window)中の位置の総数で除し、その結果に100を掛けて配列同一性の割合を求めることにより算出される。好ましくは、最適な状態での整列はNeedleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443 453のホモロジー整列アルゴリズムを用いて行われる。
【0021】
また、ホモログが同一のアミノ酸を含まないところでは、変異が保存的アミノ酸変化のみを生じることも望ましい。従って、同一でない残基の位置は、アミノ酸残基が化学特性(例えば、電荷又は疎水性)の類似した他のアミノ酸残基に置換され、それゆえ分子の機能的性質を変化させないよう相違している。配列が保存的置換において相違する場合は、配列同一性の割合は上方に調整されて、該置換の保存的性質を補正することができる。そのような保存的置換により相違する配列は「配列類似性」又は「類似性」を有すると称される。この調整を行う方法は当業者に周知である。
【0022】
本発明に関して「保存的」なアミノ酸の置換又は変換が意味するところをさらに例示するため、グループA〜Fを以下に列挙する。以下のグループの一つのメンバーを同一グループの他のメンバーによって置換することは保存的置換であるとみなされる。
【0023】
グループAには、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、システイン(cysteinee)、トレオニン、並びに以下の側鎖:エチル、イソ-ブチル、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CHOHCH3及びCH2SCH3を有する修飾アミノ酸が含まれる。
【0024】
グループBには、グリシン、アラニン、バリン、セリン、システイン(cysteinee)、トレオニン、及びエチル側鎖を有する修飾アミノ酸が含まれる。
【0025】
グループCには、フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシン、トリプトファン、シクロヘキシルメチル、及び置換ベンジル又はフェニル側鎖を有する修飾アミノ残基が含まれる。
【0026】
グループDには、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸又はアスパラギン酸の置換又は非置換の脂肪族、芳香族又はベンジルエステル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、シクロヘキシル、ベンジル、又は置換ベンジル)、グルタミン、アスパラギン、CO-NH-アルキル化グルタミン又はアスパラギン(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、及びイソ-プロピル)、及び側鎖-(CH2)3COOHを有する修飾アミノ酸、それらのエステル(置換又は非置換の脂肪族、芳香族又はベンジルエステル)、それらのアミド、及びそれらの置換又は非置換のN-アルキル化アミドが含まれる。
【0027】
グループEには、ヒスチジン、リジン、アルギニン、N-ニトロアルギニン、p-シクロアルギニン、g-ヒドロキシアルギニン、N-アミジノシトルリン、2-アミノ(arnino)グアニジノブタン酸、リジンの同族体、アルギニンの同族体、及びオルニチンが含まれる。
【0028】
グループFには、セリン、トレオニン、システイン(cysteinee)、及び-OH又は-SHで置換されたC1〜C5の直鎖又は分岐鎖のアルキル側鎖を有する修飾アミノ酸が含まれる。
【0029】
本発明はさらに、コンジュゲート分子を含有する組成物であって、該コンジュゲート分子は活性薬剤にコンジュゲートしたペプチドリガンドドメインを含み、該ペプチドリガンドドメインは、アミノ末端若しくはカルボキシル末端又は両末端に付加された、最大でさらに約50アミノ酸、好ましくは最大でさらに約25アミノ酸、より好ましくは最大でさらに約15アミノ酸、最も好ましくは最大でさらに約10アミノ酸を含む、組成物を提供する。本発明による、結果として得られるポリペプチドには、全長が50未満、40未満、30未満、25未満又は20未満のアミノ酸であるポリペプチドが包含される。
【0030】
本発明はさらに、コンジュゲート分子を含有する組成物であって、該コンジュゲート分子は活性薬剤にコンジュゲートしたSBPを含み、配列番号:1〜137、141〜143のいずれか一つ、最も好ましくは配列番号:1、2、及び135〜137、141〜143のいずれか一つ又はそれ以上を含むSBPが一つ又は複数存在している、組成物を提供する。
【0031】
本発明はさらに、上述の更なるアミノ酸がアミノ末端及び/又はカルボキシル末端に付加されているものを含むペプチドリガンド結合ドメインのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドも提供する。
【0032】
II. 本発明によるペプチドの製造方法
【0033】
本発明により提供されるペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、公知の技術を用いて合成、検出、定量及び精製することができる。例えば、強力なプロモーター/翻訳開始の制御下にcDNAを配置し、好適な原核又は真核細胞にベクターを形質移入又は形質転換することにより外因性のペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現する細胞を作製して、当業者に周知の方法によりペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現させることができる。あるいは、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、当業者に周知の方法により化学的に作製することができる。
【0034】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、標準的な固相合成法により調製することができる。一般に知られているように、市販にて入手可能な装置及び試薬を製造業者の指示書に従いながら使用し、干渉性官能基(interfering group)のブロッキング、反応させるアミノ酸の保護、カップリング、脱保護、及び未反応残基のキャッピングを行うことにより、必要な長さのペプチドを調製することができる。好適な装置は、例えば、Applied BioSystems, Foster City, CA、又はBiosearch Corporation in San Raphael, CAより入手することができる。
【0035】
例えば、適切な側鎖保護が行われているt-ブトキシカルボニル-α-アミノ酸を採用する標準的な自動化固相合成プロトコールを用いてペプチドが合成される。完成されたペプチドは、標準的なフッ化水素法を用いて側鎖の脱保護と同時に固相から脱離される。粗製ペプチドはさらに、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル勾配を用いたセミ分取用逆相HPLC(Vydac C18)により精製される。ペプチドは真空乾燥されてアセトニトリルが除去され、0.1% TFA水溶液から凍結乾燥される。純度は分析用RP-HPLCにより確認される。ペプチドは凍結乾燥され、その後、1〜2mg/mLの重量濃度で水又は0.01M酢酸に溶解させることができる。
【0036】
上記合成法の使用は、ペプチドにおいて非コードアミノ酸又はD型アミノ酸が存在する場合に必要とされる。しかしながら、遺伝子がコードするペプチドにおいては、供給源は、市販にて入手可能な発現系で容易に合成されるDNA配列を用いた組換え技術によって得ることもできる。
【0037】
従って本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現を制御するエレメントを含む組換えベクターを提供する。また、本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする核酸を含有する細胞(該細胞は原核細胞又は真核細胞である)を提供する。細菌及び組織の培養方法は当業者に周知である(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 16.1-16.54を参照のこと)。従って本発明は、(a)請求項1のポリペプチドをコードする核酸で細胞を形質転換すること;(b)形質転換された細胞によるポリペプチドの発現を誘導すること;及び(c)ポリペプチドを精製すること、を含む、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの製造方法を提供する。
【0038】
タンパク質の発現はRNAの転写レベルに依存し、これは次にDNAシグナルにより制御される。同様に、mRNAの翻訳では、通常はメッセージ5'末端の10から100ヌクレオチド以内に位置しているAUG開始コドンが少なくとも必要とされる。AUG開始コドンに隣接する配列は、その認識に影響を及ぼすことが示されている。例えば、真核生物のリボソームによる認識においては、完全な「コザックコンセンサス」配列と一致する配列中にあるAUG開始コドンにより、最適な翻訳がもたらされる(例えば、Kozak, J. Molec. Biol. 196: 947-950 (1987)を参照のこと)。また、細胞内における外因性核酸の発現の達成には、得られたタンパク質の翻訳後修飾も必要とされ得る。
【0039】
本明細書において記載された核酸分子は、例えば真核細胞において機能的なプロモーター等の、好適なプロモーターに動作可能に結合されたコード領域を含むことが好ましい。本発明においては、特に限定されないが、例えばRSVプロモーター及びアデノウイルス主要後期プロモーター等のウイルスプロモーターを用いることができる。好適な非ウイルスプロモーターとしては、特に限定されないが、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター及び伸長因子(elongation factor)1αプロモーター等が挙げられる。非ウイルスプロモーターは望ましくはヒトのプロモーターである。更なる好適な遺伝因子は、多くが当該技術において公知であり、本発明の核酸及びコンストラクトに付加又は挿入させて更なる機能、発現レベル、又は発現パターンを提供することもできる。
【0040】
また、本明細書において記載された核酸分子はエンハンサーに動作可能に結合され、転写が促進され得る。エンハンサーは、隣接遺伝子の転写を刺激するDNAのシス作用エレメントである。多くの種に由来する多数の異なる細胞型において結合した遺伝子に対して高い転写レベルを与えるエンハンサーの例としては、特に限定されないが、SV40及びRSV-LTR由来のエンハンサーが挙げられる。かかるエンハンサーは、細胞型特異的な効果を有する他のエンハンサーと組み合わせることが可能であり、又はいずれのエンハンサーも単独で使用され得る。
【0041】
真核細胞においてタンパク質合成を最適化させるため、本発明の核酸分子はさらに、該核酸分子のコード領域に続けてポリアデニル化部位を含むことができる。また、好ましくは、外因性の核酸が導入細胞内で適切に発現できるよう、全ての適切な転写シグナル(及び、必要に応じて翻訳シグナル)は正確に配置される。必要に応じて、外因性核酸はまたスプライス部位(即ち、スプライス受容部位及びスプライス供与部位)も組み込むことができ、インフレームの全長転写物を維持しながらmRNA合成を促進することができる。さらに、本発明の核酸分子は、プロセッシング、分泌、細胞内局在等のために適切な配列をさらに含むこともできる。
【0042】
核酸分子は、あらゆる好適なベクターに挿入することができる。好適なベクターとしては、特に限定されないが、ウイルスベクターが挙げられる。好適なウイルスベクターとしては、特に限定されないが、レトロウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及び鶏痘ウイルスベクターが挙げられる。ベクターは、好ましくは、真核細胞(例えば、CHO-K1細胞)を形質転換する、天然の能力又は操作された能力を有する。また、本発明に関して有用なベクターは、プラスミド若しくはエピソーム等の「裸の(naked)」核酸ベクター(即ち、ベクターを封入するタンパク質、糖、及び/又は脂質をほとんど又は全く有さないベクター)とすることができ、又はベクターは他の分子と複合体化することができる。本発明の核酸と好適に組み合わせることのできる他の分子としては、特に限定されないが、ウイルス被膜、陽イオン性脂質、リポソーム、ポリアミン、金粒子、及び細胞分子を標的化するリガンド、受容体又は抗体等の標的化部分が挙げられる。
【0043】
本明細書において記載された核酸分子は、あらゆる好適な細胞(典型的には真核細胞(例えば、CHO、HEK293、又はBHK等))中に形質転換することができ、望ましくはペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド(例えば、配列番号:1〜120で構成されるポリペプチド又は本明細書において記載されたようなそれらのホモログ等)の発現をもたらす。細胞は培養して、核酸分子の発現と、それにより、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド(例えば、配列番号:1〜120のアミノ酸配列を含むポリペプチド又は本明細書において記載されたようなそれらのホモログ等)の産生とを提供できる。
【0044】
従って、本発明は、本明細書において記載された本発明の核酸分子で形質転換又は形質移入された細胞を提供する。外因性DNA分子で細胞を形質転換又は形質移入する方法は当業者に周知である。例えば、特に限定されないが、リン酸カルシウム又はDEAE-デキストラン媒介形質移入、プロトプラスト(protoblast)融合、エレクトロポレーション、リポソーム及び直接的マイクロインジェクション等の当業者に周知の標準的な形質転換又は形質移入技術を用いて、DNA分子が細胞内に導入される(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 1.1-1.162, 15.1-15.53, 16.1-16.54を参照のこと)。
【0045】
形質転換方法の別の例はプロトプラスト融合法であり、高コピー数の目的のプラスミドを保有する細菌に由来するプロトプラストが、培養された哺乳動物細胞と直接混合される。(通常ポリエチレングリコールで行われる)細胞膜の融合の後、細菌の内容物が哺乳動物細胞の細胞質中に送達され、プラスミドDNAが核へ移行する。
【0046】
種々の哺乳動物及び植物細胞に短時間で高電圧の電気パルスを適用するエレクトロポレーションは、原形質膜にナノメートルサイズの孔を形成させる。DNAはこれらの孔を通じて、或いは孔の閉鎖に伴う膜成分の再分布の結果として、細胞の細胞質中に直接取り込まれる。エレクトロポレーションは極めて効果的であり得、クローン化した遺伝子(clones genes)を一過的に発現させるため、及び組み込まれた目的遺伝子のコピーを保有する細胞株を樹立するための両方に使用することができる。
【0047】
かかる技術は、真核細胞の安定的及び一過的な形質転換の両方を行うために使用することができる。安定的に形質転換された細胞の単離には、目的遺伝子での形質転換と併せて選択マーカーの導入が必要である。かかる選択マーカーとしては、ネオマイシンへの耐性を付与する遺伝子、及びHPRT陰性細胞におけるHPRT遺伝子が挙げられる。選択を行うには、少なくとも約2〜7日間、好ましくは少なくとも約1〜5週間にわたる、選択培地での長期培養が必要とされ得る(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 16.1-16.54を参照のこと)。
【0048】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、組換え宿主細胞から発現及び精製され得る。組換え宿主細胞は原核又は真核であり得、E.coli等の細菌、酵母等の真菌細胞、昆虫細胞(ショウジョウバエ及びカイコ由来の細胞株を含むが、これらに限定されない)、並びに哺乳動物細胞及び細胞株を含むが、これらに限定されない。in vitro又はin vivoのいずれにしても、細胞(例えば、ヒト細胞)内でペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現させる場合には、該ペプチドをコードするこのようなポリヌクレオチドのために選択されるコドンは所定の細胞型(即ち、種)について最適化することができる。コドンの最適化のための技術の多くは当該分野において公知である(例えば、Jayaraj et al, Nucleic Acids Res. 33(9):3011-6 (2005); Fuglsang et al., Protein Expr. Purif. 31(2):247-9 (2003); Wu et al., "The Synthetic Gene Designer: a Flexible Web Platform to Explore Sequence Space of Synthetic Genes for Heterologous Expression," csbw, 2005 IEEE Computational Systems Bioinformatics Conference - Workshops (CSBW'05), pp. 258-259 (2005)を参照のこと)。
【0049】
原核生物における最適なポリペプチドの発現のために考慮されなければならない問題としては、使用される発現系、宿主株の選択、mRNAの安定性、コドンバイアス、封入体の形成及び防止、融合タンパク質及び部位特異的タンパク質分解、コンパートメント指向分泌が挙げられる。(Sorensen et al., Journal of Biotechnology 115 (2005) 113-128(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。)
【0050】
発現は、通常、遺伝的背景に適合する系によって保持されたプラスミドから誘導される。発現プラスミドの遺伝因子としては、複製起点(ori)、抗生物質耐性マーカー、転写プロモーター、翻訳開始領域(TIRs)、並びに転写及び翻訳ターミネーターが挙げられる。
【0051】
任意の適切な発現系を使用することが可能であり、例えば、Escherichia coliは、その相対的な単純性、高密度での培養、周知の遺伝的性質及び多数の適合的ツール(ポリペプチド発現に利用可能である種々の入手可能なプラスミド、遺伝子組換え融合パートナー及び変異株を含む)によりタンパク質発現を容易にする。E coli株、又は組換え体発現のための遺伝的背景は、極めて重要である。発現株は、ほとんどの有害な天然のプロテアーゼを欠損し、発現プラスミドを安定に保持し、そして発現系に関連する遺伝因子(例えば、DE3)を与えるべきである。
【0052】
プラスミドコピー数は、好ましくは緩やかな様式で複製する複製起点により制御される(Baneyx, 1999)。現代の発現プラスミド中に存在するColE1レプリコンはpBR322(コピー数15〜20)又はpUC(コピー数500〜700)ファミリーのプラスミドに由来し、一方p15AレプリコンはpACYC184(コピー数10〜12)に由来する。組換え発現プラスミドにおける最も一般的な薬物耐性マーカーは、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリンへの耐性を与える。
【0053】
E coli発現系としては、T7に基づくpET発現系(Novagenにより商品化されている)、ラムダPLプロモーター/cIリプレッサー(例えば、Invitrogen pLEX)、Trcプロモーター(例えば、Amersham Biosciences pTrc)、Tacプロモーター(例えば、Amersham Biosciences pGEX)及びハイブリッドlac/T5(例えば、Qiagen pQE)及びBADプロモーター(例えば、Invitrogen pBAD)が挙げられる。
【0054】
転写されたメッセンジャーRNAの翻訳開始領域(TIR)からの翻訳開始は、シャイン−ダルガーノ(SD)配列及び翻訳開始コドンを含むリボソーム結合部位(RBS)を必要とする。シャイン−ダルガーノ配列は、効率的な組換え発現系において標準的なAUGの開始コドンから7±2ヌクレオチド上流に位置する。最適な翻訳開始は、SD配列UAAGGAGGを有するmRNAから得られる。
【0055】
E. coliにおけるコドンの使用頻度は、細胞質内で利用可能な同族のアミノアシル化tRNAのレベルにより反映される。主要なコドンは、高発現する遺伝子中に存在する一方で、マイナー又はレアコドンは、低いレベルで発現する遺伝子内にある傾向がある。E. coliにおけるレアコドンは、多くの場合、真核生物、古細菌(archaeabacteria)及び異なるコドン頻度優先性(codon frequency preferencies)を有する他の遠縁の生物等供給源由来の異種遺伝子に多く存在する(Kane, 1995)。レアコドンを含む遺伝子の発現は、マイナーコドンtRNAに結合したアミノ酸の取り込みを必要とする位置でのリボソーム停止の結果として、翻訳のエラーにつながり得る(McNulty et al., 2003)。コドンバイアスの問題は、ダブレット(doublet)及びトリプレット(triplet)等のクラスターでレアコドンを含む転写産物が大量に集積する場合に、組換え発現系において高頻度になる。
【0056】
タンパク質の活性は、正確な三次元構造へのフォールディングを必要とする。熱ショック等のストレス状況ではin vivoでのフォールディングが障害を受け、フォールディングの中間体は、会合して、封入体と呼ばれる不定形のタンパク質顆粒となる傾向がある。
【0057】
封入体は、高い割合で組換えタンパク質が発現する場合にストレス応答として発生することがよく知られている、構造的に複雑な一連の凝集体である。E. coliの細胞質中のタンパク質濃度200〜300mg/mlにおける高分子クラウディングは、特に組換え体発現が高レベルで行われている間における極めて好ましくないタンパク質フォールディング環境を示唆する(van den Berg et al., 1999)。封入体は、折り畳まれていない鎖において露出しているパッチ間の疎水性相互作用により生じる受動的な事象を通じて形成するのか、或いは特異的なクラスター化のメカニズムによるのか否かは不明である(Villaverde and Carrio, 2003)。精製された凝集体は、尿素及びグアニジン(guadinium)塩酸塩のような界面活性剤を用いて可溶化することができる。未変性のタンパク質は、希釈、透析又はオンカラムリフォールディング(on-column refolding)法のいずれかによって、可溶化された封入体からin vitroでリフォールディングすることにより調製することができる(Middelberg, 2002; Sorensen et al., 2003a)。
【0058】
リフォールディングの戦略は、分子シャペロンを含めることによって改善され得る(Mogk et al., 2002)。しかしながら、所定のタンパク質についてリフォールディングの手順を最適化することは、時間の消費を伴う労力を要し、また常に高い産物収率が得られるわけではない。封入体の形成を抑制するための可能性のある戦略としては、分子シャペロンを共過剰発現させることである。
【0059】
組換えタンパク質の精製及び発現を簡易にするために、広範なタンパク質融合パートナーが開発されている(Stevens, 2000)。融合タンパク質又はキメラタンパク質は、通常、特異的プロテアーゼの認識部位によりパッセンジャータンパク質又は標的タンパク質に結合されたパートナー又は「タグ」を含む。多くの融合パートナーは、特異的なアフィニティー精製の戦略のために開発されている。融合パートナーはin vivoにおいても有利であり、細胞内のタンパク質分解からパッセンジャーを保護し(Jacquet et al., 1999; Martinez et al., 1995)、溶解性を促進し(Davis et al., 1999; Kapust and Waugh, 1999; Sorensen et al., 2003b)、又は特異的な発現レポーターとして使用され得る(Waldo et al., 1999)。ほぼ確実にmRNAの安定化の結果として、多くの場合、N末端の融合パートナーから低発現パッセンジャーに高発現レベルが移され得る(Arechaga et al., 2003)。一般的なアフィニティータグは、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に適合するポリヒスチジンタグ(His-タグ)、及びグルタチオンに基づく樹脂上での精製のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグである。いくつかの他のアフィニティータグが存在し、広く総説されている(Terpe, 2003)。
【0060】
組換えにより発現されたタンパク質は、原則として3つの異なる場所、即ち細胞質、ペリプラズム又は培養培地に向けられる。種々の利点及び欠点が、特定の細胞内コンパートメントへの組換えタンパク質の方向付けに関与している。産生収率が高いことから、細胞質における発現が通常好ましい。ジスルフィド結合形成はE. coliにおいて隔離されており、Dsbシステムによりペリプラズムにおいて活発に触媒されている(Rietsch and Beckwith, 1998)。細胞質におけるシステインの還元はチオレドキシン及びグルタレドキシンによって達成される。チオレドキシンはチオレドキシンレダクターゼにより還元状態で維持され、グルタレドキシンはグルタチオンにより還元状態で維持される。低分子量のグルタチオン分子はグルタチオンレダクターゼによって還元される。2つのレダクターゼをコードするtrxB及びgor遺伝子の破壊により、E. coliの細胞質におけるジスルフィド結合の形成が可能となる。
【0061】
細胞に基づいた発現系は、産生されるタンパク質の質及び量に関して欠点を有し、必ずしもハイスループットの産生に好適というわけではない。これらの欠点の多くは、無細胞翻訳系を使用することによって回避することができる。
【0062】
in vitroの遺伝子発現及びタンパク質合成のための無細胞系は、多くの異なる原核生物及び真核生物の系について記載されている(Endo & Sawasaki Current Opinion in Biotechnology 2006, 17:373-380を参照のこと。ウサギ網状赤血球溶血液及び小麦胚芽抽出物等の真核生物の無細胞系は、in vitroで転写されたRNA鋳型の翻訳に必要とされる全ての構成要素を含む粗抽出物から調製される。真核生物の無細胞系は、翻訳反応のために、in vivo又はin vitroで合成された単離RNAを鋳型として使用する(例えば、ウサギ網状赤血球溶血液系又は小麦胚芽抽出物系)。共役した真核生物の無細胞系は、原核生物のファージRNAポリメラーゼを真核生物の抽出物と組み合わせ、in vitroタンパク質合成のために、ファージプロモーターを有する外因性DNA又はPCRにより生成された鋳型を利用する(例えば、TNT(登録商標)共役網状赤血球溶血液
【0063】
TNT(登録商標)共役系を使用して翻訳されたタンパク質は、多くの種類の機能的研究に使用することができる。TNT(登録商標)共役転写/翻訳反応は、オープンリーディングフレームを確認し、タンパク質の変異を研究し、タンパク質-DNA結合の研究、タンパク質活性の分析、又はタンパク質-タンパク質相互作用の研究用にin vitroでタンパク質を作製するために以前より使用されている。近年では、TNT(登録商標)共役系を使用して発現させたタンパク質は、酵母ツーハイブリッド相互作用を確認し、in vitro発現クローニング(IVEC)を実施し、また酵素活性又はタンパク質修飾の分析用タンパク質基質を作製するための分析においても使用されている。種々の適用においてTNT(登録商標)共役系を使用する近年の引用文献のリストについては、www.promega.com/citations/を利用して下さい。
【0064】
原核生物の系において、転写及び翻訳は典型的には共役している;即ち、それらは内因性又はファージRNAポリメラーゼを含み、これが外因性DNAの鋳型からmRNAを転写する。次いでこのRNAは、翻訳のために鋳型として使用される。DNAの鋳型は、プラスミドベクター内にクローニングされた遺伝子(cDNA)又はPCR(a)により生成された鋳型のいずれかであり得る。リボソーム結合部位(RBS)は、原核生物の系において鋳型が翻訳されるのに必要である。転写が行われる間、mRNAの5’末端がリボソーム結合及び翻訳開始に利用可能となり、転写及び翻訳が同時に起こることが可能となる。原核生物の系としては、いずれかの原核生物プロモーターを含むDNA鋳型を使用するものが利用可能である(例えば、lac又はtac;環状及び直鎖状DNA用のE. coli S30抽出物系、又はファージRNAポリメラーゼプロモーター;環状DNA用のE. coli T7 S30抽出物系 精製されたペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの溶解性は、当該分野で公知の方法によって改善することができる。例えば、発現したタンパク質の溶解性を増大させるために(例えば、E. coliにおいて)、Georgiou & Valax(Current Opinion Biotechnol. 7: 190-197 (1996))に記載されているように、増殖温度を低下させ、より弱いプロモーターを使用し、より低いコピー数のプラスミドを使用し、誘導因子濃度を低下させ、増殖培地を変化させることによって、タンパク質の合成速度を低下させることができる。これによりタンパク質の合成速度は低下し、通常はより溶解性の高いタンパク質が得られる。また、適切なフォールディング又はタンパク質の安定性に必須な補欠分子族又は補因子を添加するか、増殖中の培地のpH変化を制御するためにバッファーを添加するか、或いはラクトースによるlacプロモーターの誘導を抑制するために1%グルコース(ほとんどの富栄養培地(例えばLB、2×YT等)中に存在する)を添加することもできる。ポリオール(例えば、ソルビトール)及びスクロースもまた、これらの添加により誘発される浸透圧上昇が細胞内で浸透圧保護剤を蓄積させ、未変性のタンパク質構造を安定化するので、培地に添加され得る。エタノール、低分子量チオール及びジスルフィド、並びにNaClが添加され得る。また、シャペロン及び/又はフォールダーゼ(foldase)が所望のポリペプチドと共発現され得る。分子シャペロンは、フォールディング中間体と一過的に相互作用することにより適切な異性化及び細胞の標的化を促進する。E. coliのシャペロン系としては、特に限定されないが、以下が挙げられる:GroES-GroEL、DnaK-DnaJ-GrpE、CIpB。
【0065】
フォールダーゼは、フォールディング経路に沿った律速段階を促進する。3つの型のフォールダーゼが重要な役割を果たしている:ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPI's)、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbA)及びジスルフィドイソメラーゼ(DsbC)、タンパク質のシステインの酸化及びジスルフィド結合の異性化の両方を触媒する真核生物のタンパク質であるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)。これらのタンパク質の1以上を標的タンパク質と共発現させることによって、より高いレベルの可溶性の標的タンパク質を生じさせることができる。
【0066】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、その溶解性及び産生量を改善するために融合タンパク質として産生され得る。該融合タンパク質は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドとインフレームで共に融合された第2のポリペプチドとを含む。第2のポリペプチドは、それが融合されたポリペプチドの溶解性を改善するための当該分野における公知の融合パートナーであり得る(例えば、NusA、バクテリオフェリチン(BFR)、GrpE、チオレドキシン(TRX)及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST))。Novagen Inc.(Madison, WI)は、NusA-標的融合物の形成を可能にするpET43.1ベクターシリーズを提供している。DsbA及びDsbCも、融合パートナーとして使用される場合に発現レベルに対して正の効果を示しており、それゆえ、より高い溶解性を達成するためにペプチドリガンドドメインとの融合に使用することができる。
【0067】
かかる融合タンパク質の一態様において、発現したペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、プロテアーゼにより加水分解可能なペプチド結合を含むプロテアーゼ切断部位を含有しているリンカーポリペプチドを含む。結果として、ポリペプチド中のペプチドリガンドドメインは、発現した後でタンパク質分解によりポリペプチドの残部から分離され得る。リンカーは、プロテアーゼの触媒部位も結合する該結合のいずれかの側に、一以上の更なるアミノ酸を含み得る(例えば、Schecter & Berger, Biochem. Biophys. Res. Commun. 27,157-62 (1967)を参照のこと)。或いは、リンカーの切断部位はプロテアーゼの認識部位と離れていてもよく、2つの切断部位及び認識部位は一以上(例えば、2から4)のアミノ酸により分離され得る。一態様において、リンカーは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、約10、約20、約30、約40、約50又はそれ以上のアミノ酸を含む。より好ましくは、リンカーは、約5から約25アミノ酸長であり、最も好ましくは、リンカーは約8から約15アミノ酸長である。
【0068】
本発明による有用ないくつかのプロテアーゼは、以下の参考文献において考察される:Hooper et al., Biochem. J. 321 : 265-279 (1997); Werb, Cell 91: 439-442 (1997); Wolfsberg et al. ,J. Cell Biol. 131: 275-278 (1995); Murakami & Etlinger, Biochem. Biophys. Res. Comm. 146: 1249-1259 (1987); Berg et al., Biochem. J. 307: 313-326 (1995); Smyth and Trapani, Immunology Today 16: 202-206 (1995); Talanian et al., J. Biol. Chem. 272: 9677-9682 (1997); 及びThornberry et al., J. Biol. Chem. 272: 17907-17911 (1997)。細胞表面プロテアーゼも、本発明による切断可能なリンカーと共に使用されることができ、特に限定されないが:アミノペプチダーゼN;ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ;アンジオテンシン変換酵素;ピログルタミルペプチダーゼII;ジペプチジルペプチダーゼIV;N-アルギニン二塩基性転換酵素;エンドペプチダーゼ24.15;エンドペプチダーゼ24.16;アミロイド前駆体タンパク質セクレターゼα、β及びγ;アンジオテンシン変換酵素セクレターゼ;TGFαセクレターゼ;TNFαセクレターゼ;FASリガンドセクレターゼ;TNF受容体-I及び-IIセクレターゼ;CD30セクレターゼ;KL1及びKL2セクレターゼ;IL6受容体セクレターゼ;CD43、CD44セクレターゼ;CD16-I及びCD16-IIセクレターゼ;L-セレクチンセクレターゼ;葉酸受容体セクレターゼ;MMP 1、2、3、7、8、9、10、11、12、13、14、及び15;ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子;組織プラスミノーゲン活性化因子;プラスミン;トロンビン;BMP-1(プロコラーゲンC-ペプチダーゼ);ADAM 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11;並びにグランザイムA、B、C、D、E、F、G、及びHが挙げられる。
【0069】
細胞結合型プロテアーゼに依存することの代替手段は、自己切断リンカーを使用することである。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aプロテアーゼがリンカーとして使用され得る。これは、2A/2B接合部においてFMDVのポリタンパク質を切断する17アミノ酸の短いポリペプチドである。FMDV 2Aプロペプチドの配列は、NFDLLKLAGDVESNPGPである。切断は、ペプチドのC末端において、最後のグリシン−プロリンアミノ酸対において起こり、他のFMDV配列の存在には依存せず、異種配列の存在下であっても切断する。
【0070】
アフィニティークロマトグラフィーは、単独で、又は、イオン交換、分子サイジング、若しくはHPLCクロマトグラフィー技術と組み合わせて、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの精製に使用することができる。かかるクロマトグラフィーアプローチは、カラムを使用して、又はバッチ形式で実施され得る。このようなクロマトグラフィー精製方法は当該分野において周知である。
【0071】
また、本発明は、配列番号1〜117の配列において、一以上のアミノ酸置換、及び約1から約5アミノ酸、好ましくは約1から約3アミノ酸、より好ましくは1アミノ酸の挿入又は欠失を有するペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードし、本来の配列により示される特性と実質的に類似している関連特性を有する単離核酸を提供する。
【0072】
変異誘発は、当該分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって実施することができる。一般に、変異誘発は、核酸配列を、配列の操作を容易にするためにプラスミド又はいくつかの他のベクター中にクローニングすることにより達成することができる。次いで、核酸配列中に更なる核酸を付加できる独特の制限部位が同定され、又は核酸配列中に挿入される。二本鎖合成オリゴヌクレオチドは一般に、標的配列に隣接する制限部位を二本鎖オリゴヌクレオチドが組み込むように、例えば交換用DNAの組み込みに使用できるように、オーバーラップする合成一本鎖のセンス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから作成される。プラスミド又は他のベクターは制限酵素で切断され、適合する付着末端を有するオリゴヌクレオチド配列がプラスミド又は他のベクター中にライゲーションされて元のDNAを置換する。
【0073】
in vitro部位特異的変異誘発の他の手段は当業者に公知であり、(特に、オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して(例えば、Parikh & Guengerich, Biotechniques 24:428-431 (1998)を参照のこと))成し遂げることができる。変化部位にオーバーラップする相補的プライマーを使用して、500mM dNTP、2単位のPfuポリメラーゼ、各250ngのセンスプライマー及びアンチセンスプライマー、並びにペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする配列を含む200ngのプラスミドDNAを含有する混合物中で、プラスミド全体をPCR増幅することができる。PCRは望ましくは、1KbのDNAにつき2.5分間の伸長時間で、18サイクル行うことを含む。PCR産物は、DpnI(これは、アデニンメチル化プラスミドDNAのみを消化する)で処理され、Escherichia coli DH5α細胞中に形質転換することができる。形質転換体は、制限酵素消化することにより変化の組込みをスクリーニングすることができ、次いでDNA配列分析により確認することができる。
【0074】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドのタンパク質検出及び定量の好適な方法としては、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着分析(ELISA)、銀染色、BCA分析(例えば、Smith et al., Anal. Biochem., 150,76-85 (1985)を参照のこと)、タンパク質−銅錯体に基づく比色分析であるローリータンパク質分析(例えば、Lowry et al., J. Biol. Chem., 193, 265-275 (1951)に記載されている)、及びタンパク質結合によるクマシーブルーG-250の吸光度変化に依存するブラッドフォードタンパク質分析(例えば、Bradford et al., Anal. Biochem., 72, 248 (1976)に記載されている)が挙げられる。ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、ひとたび発現すれば、イオン交換、サイズ排除、又はC18クロマトグラフィー等の慣習的な精製方法により精製することができる。
【0075】
III. ペプチドリガンドドメインを結合する方法
【0076】
例えば、治療剤、化学療法剤、放射性核種、ポリペプチド等の好適な活性薬剤をペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドに「結合」(又は「コンジュゲート化」又は「架橋」)させる方法は、当該技術分野において十分に記載されている。本明細書中に提供されるコンジュゲートの調製において、活性薬剤は、ペプチドリガンドドメインへのコンジュゲート化又は結合部分の取り付けが実質的にペプチドリガンドドメインのその機能を阻害しないか、或いは実質的に活性薬剤の機能を阻害しない限り、2つの部分を結合させるための当該技術分野で現在公知の任意の方法によって直接的又は間接的にペプチドリガンドドメインに連結される。結合は、任意の好適な手段によることが可能であり、該手段としては、特に限定されないが、イオン結合及び共有結合、並びに任意の他の十分に安定な会合が挙げられ、それにより標的薬剤の分布が調節される。
【0077】
アミノ基とチオール基との間の共有結合を形成し、チオール基をタンパク質に導入するために用いられる多数のヘテロ二官能性架橋試薬が当業者に公知である(例えば、Cumber et al. (1992) Bioconjugate Chem. 3':397 401; Thorpe et al. (1987) Cancer Res. 47:5924 5931; Gordon et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. 84:308 312; Walden et al. (1986) J. MoI. Cell Immunol. 2:191 197; Carlsson et al. (1978) Biochem. J. 173: 723 737; Mahan et al. (1987) Anal. Biochem. 162:163 170; Wawryznaczak et al. (1992) Br. J. Cancer 66:361 366; Fattom et al. (1992) Infection & Immun. 60:584 589を参照のこと)。これらの試薬は、ペプチドリガンドドメイン又はペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドと本明細書中に開示される活性薬剤のいずれかとの間の共有結合を形成するために使用され得る。これらの試薬としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる:N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ(pyridyidithio))プロピオネート(SPDP;ジスルフィドリンカー);スルホスクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(sulfo-LC-SPDP);スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチルベンジルチオサルフェート(SMBT、ヒンダードジサルフェートリンカー);スクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC-SPDP);スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(sulfo-SMCC);スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB;ヒンダードジスルフィド結合リンカー);スルホスクシンイミジル2-(7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセトアミド)エチル-1,3-ジチオプロピオネート(SAED);スルホ-スクシンイミジル7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセテート(SAMCA);スルホスクシンイミジル6-[α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(sulfo-LC-SMPT);1,4-ジ-[3'-(2'-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン(DPDPB);4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルチオ)トルエン(SMPT、ヒンダードジスルフェートリンカー);スルホスクシンイミジル6[α.-メチル-α.-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサ-ノエート(sulfo-LC-SMPT);m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS);m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(sulfo-MBS);N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸(SIAB;チオエーテルリンカー);スルホスクシンイミジル-(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸(sulfo-SIAB);スクシンイミジル4(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB);スルホスクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(sulfo-SMPB);アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)。
【0078】
他のヘテロ二官能性の切断可能な結合剤としては、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸;スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸;4-スクシンイミジル-オキシカルボニル-a-(2-ピリジルジチオ)-トルエン;スルホスクシンイミジル-6-[a-メチル-a-(ピリジルジチオール)-トルアミド]ヘキサノエート;N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ(pyridyidithio))-プロピオネート(proprionate);スクシンイミジル6[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド(proprionamido)]ヘキサノエート;スルホスクシンイミジル6[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド)ヘキサノエート;3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸(dichlorotriazinic acid)、S-(2-チオピリジル)-L-システインが挙げられる。更なる代表的な二官能性連結化合物は、米国特許第5,349,066号、第5,618,528号、第4,569,789号、第4,952,394号、及び第5,137,877号に開示されている。
【0079】
或いは、例えば、ポリペプチドのスルフヒドリル(suflhydryl)基をコンジュゲート化のために使用することができる。また、糖タンパク質(例えば、抗体)にコンジュゲートされた糖部分は酸化されて、当該技術分野において公知の多くの結合手順に有用であるアルデヒド基を形成することができる。本発明に従って形成されるコンジュゲートはin vivoにおいて安定であるか、或いは酵素により分解可能なテトラペプチド結合又は酸不安定性のシス-アコニチル又はヒドラゾン結合等のように不安定であり得る。
【0080】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは任意に、一以上のリンカーを介して活性薬剤に連結される。リンカー部分は、所望の特性に応じて選択される。例えば、リンカー部分の長さは、標的受容体へのリガンドの結合により引き起こされるあらゆる立体構造変化を含めて、リガンド結合の動態及び特異性を最適化するために選別することができる。リンカー部分は、ポリペプチドリガンド部分及び標的細胞受容体が自由に相互作用できるよう十分に長く、且つ十分に柔軟であるべきである。リンカーが短すぎる、又は硬すぎる場合は、ポリペプチドリガンド部分と細胞毒素との間に立体障害が存在し得る。リンカーが長すぎる場合は、活性薬剤が製造過程において分解され得、或いはその所望の効果を標的細胞に効率よく送達しない可能性がある。
【0081】
当業者に公知の任意の好適なリンカーを本明細書において使用することができる。一般に、化学的に製造されたコンジュゲートにおけるリンカーとは異なるセットのリンカーが、融合タンパク質であるコンジュゲートにおいて使用され得る。化学的に連結されたコンジュゲートに好適なリンカー及び結合としては、特に限定されないが、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダードジスルフィド結合、並びにアミン及びチオール基等の遊離反応性基間の共有結合が挙げられる。これらの結合は、ヘテロ二官能性試薬を用いてポリペプチドの一方又は両方に反応性チオール基を生成させ、次いで一方のポリペプチド上のチオール基を、反応性マレイミド基又はチオール基が結合することのできる他方のポリペプチド上の反応性チオール基又はアミン基と反応させることにより生成される。他のリンカーとしては、ビスマレイミドエトキシ(bismaleimideothoxy)プロパン、酸不安定性のトランスフェリンコンジュゲート及びアジピン酸ジヒドラジド等の酸で切断可能なリンカーで、より酸性の細胞内コンパートメント内で切断され得るもの;UV又は可視光に曝されると切断される架橋剤及びリンカーが挙げられる。いくつかの実施形態において、各リンカーの所望の特性を利用するために、いくつかのリンカーが含まれ得る。化学的リンカー及びペプチドリンカーは、リンカーをペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド及び標的薬剤に共有結合することによって挿入され得る。下記のヘテロ二官能性薬剤が、かかる共有結合を生じさせるために使用され得る。ペプチドリンカーは、融合タンパク質としてリンカー及びペプチドリガンドドメイン、リンカー及び活性薬剤、又はペプチドリガンドドメイン、リンカー及び活性薬剤をコードするDNAを発現させることによっても連結され得る。柔軟なリンカー及びコンジュゲートの溶解性を増大させるリンカーが使用のために考慮され、本明細書では単独での使用、或いは他のリンカーとの併用のいずれもが考慮される。
【0082】
従って、リンカーとしては、特に限定されないが、典型的には1から約30アミノ酸、より好ましくは約10から30アミノ酸を含む、ペプチド性結合、アミノ酸及びペプチド結合を挙げることができる。或いは、ヘテロ二官能性の切断可能な架橋剤等の化学的リンカーとして、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-a-(2-ピリジルジチオ(pyridyidithio))トルエン、スルホスクシンイミジル6-a-メチル-a-(ピリジルジチオール)-トルアミド)ヘキサノエート、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(proprionate)、スクシンイミジル6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド(proprionamido))ヘキサノエート、スルホスクシンイミジル6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノエート、3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS-(2-チオピリジル)-L-システインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
他のリンカーとしては、トリチルリンカー、特に、種々の程度の酸性度又はアルカリ性度において治療剤の放出をもたらすコンジュゲート類を生成するための誘導体化トリチル基が挙げられる。従って、治療剤が放出されるpH範囲を予め選択する能力によって得られる柔軟性によって、治療剤の送達を必要とする組織間の公知の生理学的差異に基づくリンカーの選択が可能となる(例えば、米国特許第5,612,474を参照のこと)。例えば、腫瘍組織の酸性度は、正常な組織よりも低いように見られている。
【0084】
酸で切断可能なリンカー、光で切断可能なリンカー及び熱感受性のリンカーもまた、特に、より容易に反応に利用しやすくさせるために標的薬剤を切断することが必要であり得る場合に使用され得る。酸で切断可能なリンカーとしては、特に限定されないが、ビスマレイミドエトキシ(bismaleimideothoxy)プロパン;及びアジピン酸ジヒドラジドリンカー(例えば、Fattom et al. (1992) Infection & Immun. 60:584 589を参照のこと)及び細胞内トランスフェリン循環経路内に進入させるのに十分なトランスフェリン部分を含む酸不安定性のトランスフェリンコンジュゲート(例えば、Welhoner et al. (1991) J. Biol. Chem. 266:4309 4314を参照のこと)が挙げられる。
【0085】
光で切断可能なリンカーは、光に曝されると切断されるリンカーであり(例えば、Goldmacher et al. (1992) Bioconj. Chem. 3:104 107を参照とし、そのリンカーは参照により本明細書中に組み込まれる)、それによって、光に曝されると標的薬剤を放出する。光に曝されると切断される、光で切断可能なリンカーは公知であり(例えば、システインのための光で切断可能な保護基としてニトロベンジル基を使用することを記載するHazum et al. (1981) in Pept., Proc. Eur. Pept. Symp., 16th, Brunfeldt, K (Ed), pp. 105 110;ヒドロキシプロピルメタクリルアミドコポリマー、グリシンコポリマー、フルオレセインコポリマー及びメチルローダミンコポリマーを含む、光で切断可能な水溶性コポリマーを記載するYen et al. (1989) Makromol. Chem 190:69 82;近UV光(350nm)に曝されると光分解を受ける架橋剤及び試薬を記載するGoldmacher et al. (1992) Bioconj. Chem. 3:104 107;光で切断可能な結合を生成するニトロベンジルオキシカルボニルクロライド架橋試薬を記載するSenter et al. (1985) Photochem. Photobiol 42:231 237を参照のこと)、それによって、光に曝されると標的薬剤を放出する。かかるリンカーは、光に曝され得る皮膚又は眼の症状を、光ファイバーを使用して治療するのに特に使用され得る。コンジュゲートを投与した後、眼又は皮膚又は他の体の部分は光に曝されることができ、その結果、コンジュゲートから標的化された部分が放出される。このような光で切断可能なリンカーは、標的化薬剤の除去が望ましい診断プロトコールに関して有用であり、動物の体から迅速に排除することを可能とする。
【0086】
IV. 本発明は複数の活性薬剤を提供する
【0087】
本発明の種々の態様は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドが活性薬剤、即ち治療剤又は診断剤に結合されることを企図する。
【0088】
本明細書中で使用される場合、用語「治療剤」は、化合物、生体高分子、又は細菌、植物、真菌、若しくは動物(特に哺乳動物)の細胞若しくは組織等の生体材料から得られる抽出物であって、治療的特性を有すると思われるものをいう(例えば、化学療法剤又は放射線療法剤)。本明細書中で使用される場合、用語「治療的」は、対象哺乳動物を苦しめている疾患又は関連する症状の治療又は予防(標的疾患(例えば、癌又は他の増殖性疾患)の可能性を抑制又は減少することにより示される)の効果を改善することをいう。治癒的療法は、哺乳動物における既存の疾患又は症状を、全部又は一部において、軽減することをいう。
【0089】
薬剤は、精製され、実質的に精製され、又は部分的に精製され得る。更に、かかる治療剤は、リポソーム若しくは免疫リポソーム中に存在し、又はそれと会合することができ、コンジュゲート化は、薬剤に、又はリポソーム/免疫リポソームに直接的に行うことができる。「リポソーム」は、薬物(例えば、薬物、抗体、毒素)の送達に有用な様々な種類の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤から構成される小胞である。リポソームの構成成分は、通常、生体膜の脂質の配置に類似している二重層形態に配置される。
【0090】
本発明により企図される様式でペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドに結合され得る治療剤の例としては、特に限定されないが、化学療法剤(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン及びプラチナ化合物)、葉酸代謝拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、抗血管新生薬、抗生物質、ホルモン、ペプチド、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン系抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランス白金、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲニステイン)、及び他の化学療法剤が挙げられる。
【0091】
本明細書中で使用される場合、用語「化学療法剤」は、癌、腫瘍性、及び/又は増殖性疾患に対する活性を有する薬剤をいう。好ましい化学療法剤としては、アルブミンを含む粒子としてのドセタキセル及びパクリタキセルが挙げられ、50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態をしている。最も好ましくは、化学療法剤は、アルブミン結合パクリタキセル(例えば、アブラキサン(登録商標))の粒子を含む。
【0092】
好適な治療剤としては、例えば、生物活性剤(TNF、又は(of)tTF)、放射性核種(131I、90Y、111In、211At、32P及び他の公知の治療用放射性核種)、抗血管新生薬(血管新生阻害剤(例えば、INF-α、フマギリン、アンジオスタチン、エンドスタチン、サリドマイド等))、他の生物活性ポリペプチド、治療増感剤、抗体、レクチン、及び毒素も挙げられる。
【0093】
本発明の適用に好適な疾患としては、悪性状態及び善悪性状態、並びに増殖性疾患が挙げられ、特に限定されないが、該増殖性疾患としては、例えば、良性前立腺過形成、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、免疫増殖(immunologic proliferation)又は増殖性腎糸球体症が挙げられる。
【0094】
用語「治療上有効量」とは、疾患又は症状と関連するか、又はその原因となる生理学的又は生化学的なパラメータを、部分的又は完全に、正常に回復させる量を意味する。当該分野における臨床医は、特定の疾患又は症状に対して、治療上有効であろう医薬組成物の量を決定することができるはずである。例として、治療剤がパクリタキセルであるという好ましい実施形態に従うと、投与されるパクリタキセルの用量は、約3週間の投与サイクル(即ち、約3週間毎に1回のパクリタキセル用量を投与すること)で約30mg/m2から約1000mg/m2の範囲、望ましくは、約3週間の投与サイクル、好ましくは約2週間のサイクル、より好ましくは週に1回のサイクルで、約50mg/m2から約800mg/m2、好ましくは約80mg/m2から約700mg/m2、最も好ましくは約250mg/m2から約300mg/m2の範囲とすることができる。
【0095】
本発明はまた、診断の態様も有する。例えば、診断剤は、トレーサー又は標識とすることができ、特に限定されないが、放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤が挙げられる。治療剤に関連して記載されているこれらの剤の結合もまた、本発明のこの態様により企図される。さらに、用語「診断上有効量」は、関連する臨床状況において、組織及び器官における異常な増殖活性、過形成活性、再構築活性、炎症活性の存在及び/又は程度についての合理的に正確な判断を可能にする医薬組成物の量である。例えば、本発明によって「診断される」症状は、良性又は悪性腫瘍であり得る。
【0096】
本明細書において教示される診断剤としては、抗体等のポリペプチドが挙げられ、該ポリペプチドは、共有又は非共有のいずれかで、検出可能なシグナルを提供する物質と結合することにより標識され得る。幅広い種類の標識及びコンジュゲート化技術が公知であり、科学文献及び特許文献の両方において広く報告されている。好適な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、インヒビター、蛍光部分、化学発光部分、磁性粒子等が挙げられる。このような標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;及び第4,366,241号が挙げられる。また、組換え免疫グロブリンが生成され得る(Cabilly、米国特許第4,816,567号;Moore, et al., 米国特許第4,642,334号;及びQueen, et al. (1989) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033を参照のこと)。
【0097】
本発明の組成物及び方法による、腫瘍又は他の疾患部位への治療剤又は診断剤の送達は、任意の好適な方法により観察及び測定することができ、該方法としては、例えば、放射性標識又は放射線不透過性標識を組成物に添加すること、及び必要に応じて画像化することが挙げられ、当業者に周知である。血漿コンパートメントにおける組成物の隔離(sequesteration)は任意の好適な方法により観察することができ、該方法としては、例えば、静脈穿刺(venupuncture)が挙げられる。
【0098】
さらに、関連する態様において、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は判断する方法、並びに化学療法剤への増殖性疾患の応答を予測又は判断する方法、又は増殖性疾患を治療する方法を提供し、該増殖性疾患としては、特に限定されないが、例えば、良性前立腺過形成、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、免疫増殖(immunologic proliferation)又は増殖性腎糸球体症が挙げられる。
【0099】
V. 本発明はペプチドリガンドドメインをポリペプチド活性薬剤に結合する融合タンパク質を提供する
【0100】
本発明はさらに、融合タンパク質における、ポリペプチド活性薬剤へのペプチドリガンドドメインの結合を企図する。例えば、特に限定されないが、ペプチドリガンドドメイン配列は、診断上有用なタンパク質ドメイン(例えば、ハプテン、GFP)、治療増感剤、活性タンパク質ドメイン(例えば、特に限定されないが、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL-2)又は毒素(例えば、特に限定されないが、リシン、PAP、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素)の上流又は下流に融合することができる。
【0101】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」とは、共に共有結合した少なくとも2つの部分を有するポリペプチドをいい、各部分はそれぞれ異なる特性を有するポリペプチドである。該特性はin vitro又はin vivoの活性等の生物学的特性であり得る。該特性はまた、標的分子への結合、反応の触媒等の単純な化学的又は物理的特性でもあり得る。これらの部分は、単一のペプチド結合によって直接的に、又は一以上のアミノ酸残基を含むペプチドリンカーを介して連結することができる。一般に、該部分及びリンカーは互いにリーディングフレームが合っている。
【0102】
VI. 抗体又は抗体フラグメント活性薬剤
【0103】
本発明の特定の態様において、治療剤は、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシス誘発、壊死性細胞死、及びオプソニン作用(opsinization)の一以上を媒介する抗体又は抗体フラグメントであり得る。
【0104】
本明細書中の用語「抗体」としては、特に限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイマー、マルチマー、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)が挙げられる。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ、又は他の種由来であり得る。抗体は、免疫系によって生成されるタンパク質であり、特異的抗原を認識して結合することができる。標的抗原は一般に、多くの抗体上のCDRにより認識される多数の結合部位(エピトープとも呼ばれる)を有する。異なるエピトープに特異的に結合する各抗体は、異なる構造を有している。従って、一つの抗原は、それに対応している抗体を一よりも多く有し得る。抗体としては、全長の免疫グロブリン分子又は、全長の免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、免疫特異的に(immunospecifically)目的の標的抗原又はその一部を結合する抗原結合部位を含む分子が挙げられ、かかる標的としては、特に限定されないが、癌細胞又は、自己免疫疾患に関連する自己免疫性抗体を産生する細胞が挙げられる。本明細書中に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のものであり得る。免疫グロブリンは、任意の種由来であり得る。
【0105】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部(所望の生物活性を保持している)を含む。「抗体フラグメント」は多くの場合、抗原結合領域又はその可変領域である。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖状抗体;Fab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、及び癌細胞抗原、ウイルス抗原又は微生物抗原に免疫特異的に結合する上記のいずれかのエピトープ結合フラグメント、単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。しかしながら、抗体の他の非抗原結合部分は本明細書中で意味するような「抗体フラグメント」であり得、例えば、特に限定されないが、抗体フラグメントは完全又は部分的なFcドメインであり得る。
【0106】
本明細書におけるモノクローナル抗体は具体的に、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応している配列と同一又は相同である一方で、その鎖の残部は、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくサブクラスに属する抗体における対応している配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びにかかる抗体のフラグメントを、それらが所望の生物活性を示している限り、含む(米国特許第4,816,567号)。本明細書における目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル又は類人猿)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む、「霊長類化(primatized)」抗体が挙げられる。
【0107】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解を引き起こす細胞介在性反応をいう。ADCCを媒介する一次細胞、NK細胞は、Fc.γ.RIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。目的とする分子のADCC活性を評価するには、in vitro ADCC分析を行うことができる(米国特許第55,003,621号;米国特許第5,821,337号)。かかる分析に有用なエフェクター細胞としては、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。或いは、又は更に、目的とする分子のADCC活性は、in vivo、例えばClynes et al. PNAS (USA), 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価することができる。
【0108】
「細胞死を誘導する」抗体は、生細胞を生存不能にする抗体である。in vitroの細胞死は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)又は補体依存性細胞傷害(CDC)により誘導される細胞死と区別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の非存在下で判断することができる。従って、細胞死についての分析は、加熱不活化血清を使用し(即ち、補体の非存在下)、及び免疫エフェクター細胞の非存在下で実施することができる。抗体が細胞死を誘導することができるか否かを判断するには、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー又は7AADの取り込みにより評価されるような膜完全性の消失を、非処理細胞と比較して評価することができる。細胞死誘導性抗体は、BT474細胞内のPI取り込み分析においてPIの取り込みを誘導する抗体である。
【0109】
「アポトーシスを誘導する」抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成により判断されるプログラム細胞死を誘導する抗体である。
【0110】
VII. 活性薬剤の分布を調節する方法
【0111】
本発明の別の態様は、本明細書中に開示されるペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートの特性を利用して動物の組織内での活性薬剤の分布を調節する方法であって、コンジュゲート分子を含有する組成物を該動物に投与する工程を含み、該コンジュゲート分子が活性薬剤にコンジュゲート化されたペプチドリガンドドメインを含む方法を提供するものであり、該ペプチドリガンドドメインは、配列番号1〜137、139若しくは140、若しくは141〜143のペプチド又はそのホモログを含んでおり、そして該組成物を動物に投与することにより、活性薬剤単独を投与して得られる組織分布とは異なる活性薬剤の組織分布が結果としてもたらされる。
【0112】
本発明の組成物及び方法は、望ましくは、疾患部位への活性薬剤の組織分布の調節を提供する。これは、望ましくは、疾患部位での活性薬剤の濃度、及び/又は増大若しくは(半減期が)延長された活性薬剤の血中レベルをもたらすことにおいて現れ、それは、活性薬剤が(コンジュゲート化されていない形態で)動物に投与された場合にもたらされ得るものよりも大きい。この調節は、コンジュゲート化したペプチド分子の組織取込み速度を促進すること、その標的部位、即ち、腫瘍での分子の保持を増強させること、コンジュゲート化したペプチド分子の組織内での拡散速度を促進すること、及び/又はコンジュゲート化したペプチド分子の組織を通じての分布を増強すること、及びコンジュゲート化したペプチド分子の組織取込み速度を一以上の組織受容体の内在化の速度に合わせることによっても現れ得る。このような増強は当該分野において公知の任意の好適な方法により測定することができ、該方法としては、特に限定されないが、適切に標識された活性薬剤の検出、局在及び相対的な定量(quantization)が挙げられ、例えば、X線撮影の、顕微鏡の、化学的な、免疫学的な、又はMRIの技術が使用される。
【0113】
「速度を促進すること」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい速度を意味する。「疾患部位でのより高い濃度」とは、比較可能な疾患部位でのコンジュゲート化していない活性薬剤の濃度よりも、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい、疾患部位でのコンジュゲート中の活性薬剤の濃度を意味する。
【0114】
好適な疾患部位としては、特に限定されないが、任意の身体組織(軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等を含む)における、増殖の異常状態、組織再構築、過形成、創傷治癒の過剰の部位が挙げられる。かかる疾患のより具体的な例としては、癌、糖尿病性又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置等における再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗鬆症及び他の骨疾患、アテローム性動脈硬化症、並びに石灰化が高頻度に観察される他の疾患が挙げられる。
【0115】
好ましい態様において、本発明は腫瘍を診断及び/又は治療する方法を提供し、該腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、メラノーマ、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選択される。また、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は判断する方法、腫瘍の治療方法、及び化学療法剤への哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、該腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、オンコサイトーマ(oncytoma)、又はそれらの組み合わせである。
【0116】
別の態様において、本発明は、組成物及び該組成物の使用方法を提供し、該組成物の動物への投与は、活性薬剤単独の投与により得られる血中レベルよりも大きい活性薬剤の血中レベルをもたらす。活性薬剤の血中レベルの任意の好適な基準を使用することができ、特に限定されないが、Cmax、Cmin、及びAUCが挙げられる。「活性薬剤単独の投与により得られる血中レベルよりも大きい」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい血中レベルを意味する。
【0117】
さらに別の態様において、本発明は、組成物及び該組成物の使用方法を提供し、該組成物の動物への投与は、活性薬剤単独の投与により得られる血中レベル半減期よりも長い、活性薬剤の血中レベル半減期をもたらす。「活性薬剤単独の投与により得られる血中半減期よりも長い」とは、少なくとも約33%長い、好ましくは少なくとも約25%長い、より好ましくは少なくとも約15%長い、最も好ましくは少なくとも約10%長い半減期を意味する。
【0118】
VIII. 製剤及び投与
【0119】
in vivoの使用のために、配列番号1〜117及びそれらのホモログ等のペプチドリガンドドメインが結合された活性薬剤は、望ましくは、生理学的に許容される担体を含む医薬組成物に製剤化される。任意の好適な生理学的に許容される担体が、投与経路に応じて本発明の中で使用することができる。当業者は、所望の投与方法に好適な医薬組成物を提供するために使用可能であるそれらの担体を認識するであろう。
【0120】
本発明の医薬組成物の投与は、任意の好適な経路を通じて達成することができ、該経路としては、特に限定されないが、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、腫瘍内、経口、直腸、膣内、膀胱内、及び吸入による投与が挙げられ、静脈内及び腫瘍内投与が最も好ましい。組成物は、特に組成物の安定性の促進及び/又はその最終用途のために、任意の他の好適な構成成分をさらに含有することができる。従って、本発明の組成物の好適な製剤が幅広い種類で存在する。以下の製剤及び方法は、単なる例示であって限定ではない。
【0121】
医薬組成物はまた、所望であれば、更なる治療剤又は生物活性剤も含有することができる。例えば、特定の適応症の治療に有用な治療因子が存在し得る。イブプロフェン又はステロイド等の炎症を制御する因子は、組成物の一部とすることができ、医薬組成物のin vivoでの投与に関連する腫張及び炎症並びに生理的苦痛を低減することができる。
【0122】
担体は典型的には液体であり得るが、固体、又は液体及び固体の成分の組み合わせとすることもできる。担体は、望ましくは、生理学的に許容される(例えば、医薬上又は薬理学的に許容される)担体(例えば、賦形剤又は希釈剤)である。生理学的に許容される担体は周知であり、容易に入手可能である。担体の選択は、少なくとも一部は、標的組織及び/又は細胞の位置、並びに組成物の投与に用いられる特定の方法により決定されるであろう。
【0123】
典型的には、このような組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製することができる;注射の前の液体添加により溶液又は懸濁液を調製するために使用するのに適した固体形態もまた、調製され得る;これらの調製物は乳化もされ得る。注射剤での使用に適した医薬製剤としては、無菌の水溶液又は分散物;公知のタンパク質安定剤及び凍結保護剤を含有する製剤、ゴマ油、ピーナッツ油又は水性プロピレングリコールを含有する製剤、及び無菌の注射可能な溶液又は分散物の即時調製のための無菌粉体が挙げられる。あらゆる場合において製剤は無菌でなければならず、容易に注射することが可能な程度まで流動性を有さなければならない。製剤は、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシセルロース等の界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物中、並びに油中でも調製することができる。保存及び使用における通常の条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防止する保存剤を含有する。
【0124】
ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートは、中性又は塩の形態において組成物に製剤化すること等ができる。医薬上許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が挙げられ、それは、例えば、塩酸又はリン酸等の無機酸、又は、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸等と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄等の無機塩基、及び、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基等から誘導され得る。
【0125】
非経口投与に適した製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び該製剤を対象レシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性無菌注射溶液、並びに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤及び保存剤を含有し得る水性及び非水性の無菌懸濁液が挙げられる。該製剤は、単回用量又は複数用量の密封容器(アンプル及びバイアル等)内に提供することができ、使用直前に注射用無菌液体賦形剤(例えば、水)の添加のみを必要とするフリーズドライの(凍結乾燥された)状態で保存することができる。即席の注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。本発明の好ましい実施形態において、ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートは注射(例えば、非経口投与)用に製剤化される。これに関して、製剤は望ましくは腫瘍内投与に好適であるが、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射等のためにも製剤化することができる。
【0126】
本発明はまた、所望であれば、ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート(即ち、活性薬剤にコンジュゲート化されたペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド)が、さらにポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲート化される実施形態も提供する。PEGのコンジュゲート化は、これらのポリペプチドの循環半減期を増大させ、ポリペプチドの免疫原性及び抗原性を低下させ、並びにそれらの生物活性を改善することができる。使用される場合、PEGコンジュゲート化のあらゆる好適な方法が使用可能であり、特に限定されないが、ペプチドの利用可能なアミノ基、又は、例えばヒスチジン又はシステイン等の他の反応性部位とメトキシ-PEGを反応させることが挙げられる。また、PEG反応性基を有するアミノ酸をペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートに付加するために、組換えDNAアプローチを使用することができる。さらに、放出可能且つハイブリッドのPEG化戦略(ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート分子内の特定の部位に付加されたPEG分子がin vivoで放出されるようなポリペプチドのPEG化等)が、本発明の態様に従って用いられ得る。PEGのコンジュゲート化方法の例は、当該分野において公知である。例えば、Greenwald et al., Adv. Drug Delivery Rev. 55:217-250 (2003)を参照のこと。
【0127】
吸入による投与に好適な製剤としてはエアロゾル製剤が挙げられる。エアロゾル製剤は、加圧された適切な、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の噴霧剤の中に置くことができる。それらはまた、ネブライザー又はアトマイザーからの送達のために非加圧調製物としても製剤化することができる。
【0128】
肛門投与に好適な製剤は、活性成分を、乳化基剤又は水溶性基剤等の種々の基剤と混合することにより坐剤として調製することができる。膣投与に好適な製剤は、膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提供することができ、これらは、活性成分に加えて、適切であることが当該分野において公知である担体等を含有する。
【0129】
また、本発明の組成物は、更なる治療剤又は生物活性剤を含有することができる。例えば、特定の適応症の治療に有用な治療因子が存在し得る。炎症を制御する、イブプロフェン又はステロイド等の因子は、組成物の一部となって、医薬組成物のin vivo投与に関連する腫張及び炎症並びに生理学的苦痛を低減させることができる。
【0130】
吸入治療の場合において、本発明の医薬組成物は望ましくはエアロゾルの形態である。薬剤を投与するためのエアロゾル及びスプレー発生器が、固体形状の場合に利用可能である。これらの発生器は、呼吸可能又は吸入可能な粒子を提供し、所定の計量された用量の薬剤を含有するエアロゾル体積をヒトへの投与に好適な速度で発生させる。かかるエアロゾル及びスプレー発生器の例としては、当該分野で公知の定量吸入器及び通気器が挙げられる。液体形状であれば、本発明の医薬組成物は任意の適切な装置によりエアロゾル化することができる。
【0131】
静脈内、腹腔内又は腫瘍内投与に関して使用される場合、本発明の医薬組成物は、活性化合物の無菌の水性及び非水性の注射溶液、懸濁液又は乳剤を含有することができ、該調製物は、好ましくは対象レシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、一以上の酸化防止剤、緩衝剤、界面活性剤、共溶媒、静菌剤、該組成物を対象レシピエントの血液と等張にする溶質、及び当該分野で公知の他の製剤成分を含有することができる。水性及び非水性の無菌懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含有することができる。組成物は、単回用量又は複数用量の容器(例えば、密封アンプル及びバイアル)内に提供されることができる。
【0132】
本発明の方法は、併用療法の一部でもあり得る。フレーズ「併用療法」とは、本発明による治療剤を別の治療組成物と共に、この組み合わせの有益な効果が治療を受けている哺乳動物において実現されるように連続的又は同時的な様式で投与することをいう。
【0133】
XI. 本発明は多数の症状に適用可能である
【0134】
本発明の組成物及び方法は、様々な疾患の診断又は治療での使用に好適であり、該疾患としては、特に限定されないが、疾患部位が、任意の身体組織における異常な増殖状態、組織再構築、過形成、過剰な創傷治癒であるものが挙げられ、該組織としては、軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等が挙げられる。かかる疾患のより具体的な例としては、癌、糖尿病性又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置等における再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗鬆症及び他の骨疾患、アテローム性動脈硬化症、並びに石灰化が高頻度に観察される他の疾患が挙げられる。
【0135】
好ましい態様において、本発明は腫瘍を診断及び/又は治療する方法を提供し、該腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、メラノーマ、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選択される。また、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は決定する方法、腫瘍の治療方法、及び化学療法剤への哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、該腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、オンコサイトーマ(oncytoma)、又はそれらの組み合わせである。
【0136】
本発明は、疾患が哺乳動物中にある場合の実施態様を提供し、該哺乳動物としては、特に限定されないが、ヒトが挙げられる。
【0137】
X. キット
【0138】
本発明は、医薬製剤及び腫瘍の治療における該製剤の使用説明書、及び該キットの使用説明書(例えば、FDA認可の添付文書)を含む腫瘍の治療用キットを提供するものであり、該医薬製剤は、活性薬剤にコンジュゲート化されたペチドリガンドドメインを含むコンジュゲート分子を含有し、該ペプチドリガンドドメインは、配列番号1〜137、139若しくは140、若しくは141〜143のペプチド又はそのホモログを含んでおり、該ペプチドリガンドドメインは、約700μM以下の平衡解離定数(Kd)によって特徴付けられるヒト血清アルブミン親和性を有し、そして随意に、該コンジュゲート分子はさらに、第二のペプチドリガンドドメインを含む。
【0139】
以下の実施例はさらに本発明を説明するが、当然のことながら、いかなる意味においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0140】
実施例1
本実施例は、ファージディスプレイ技術を用いたSPARC結合ペプチドの同定、及びそのようなSPARC結合ペプチドの腫瘍治療用分子への組み込みを実証する。
【0141】
具体的には、治療又は診断剤にコンジュゲートしたSPARC結合ペプチドを有する分子を作製することを主な目的とした。特に、抗体Fcドメインが、例えば抗体依存性細胞傷害(ADC)又は細胞依存性細胞傷害(CDC)のような、免疫機能を活性化することにより治療剤として作用する、SPARC結合ペプチド−Fc融合タンパク質(図1)を作製することを目的とした。
【0142】
ディスプレイ方法論の一般原理は、リガンド(ペプチド、タンパク質)を、このリガンドをコードする遺伝子に関連付けることである(図2を参照)。これは、ファージディスプレイ技術では、繊維状ファージのコートタンパク質をコードする遺伝子にリガンド遺伝子を融合させることによって行われる。次いで、組換えファージゲノムがEscherichia coliの中に導入され、そこでハイブリッドタンパク質が全ての他のファージタンパク質と共に発現する。その後、融合タンパク質は(リガンド遺伝子を含む)ファージゲノムを含有するファージのコートに組み込まれる。リガンドを提示する分泌されたファージ粒子は固定化された標的上で選別されることができるのに対し、非結合ファージは全て洗浄除去される。溶出工程の後、回収されたファージはE. coliへの感染に用いられ、新たな選別の場のために、また最終的には結合分析を行うために、このファージの増幅が行われる。
【0143】
従って、市販のペプチドファージディスプレイライブラリー(M13における12-merペプチド)を、SPARCに結合するペプチドについてスクリーニングした。標的であるSPARCは、PIが4.6の酸性糖タンパク質である。pH9.6のコーティングバッファーを有する96-ウェルプレート上に固相化することにより、Ph.D.-12ペプチドライブラリーを4回スクリーニングし、ファージディスプレイ技術を用いてペプチド結合体を選別した。具体的には、1回目のスクリーニングにおいて、結合したファージを酸性溶出液で溶出した。その後、標的タンパク質の濃度を減少させ、洗浄バッファー中のTween-20の割合を増加することにより、スクリーニングの厳密性を徐々に高めた。同時に、過剰量の標的を用いて競合的溶出を採用して、スクリーニングの特異性を改善した。最終的に、4回のスクリーニングの後、選別されたクローンのssDNAをDNAシークエンシングに供した。同時に、ファージELISAを用いて陽性ファージの標的タンパク質への結合を確認した。
【0144】
SPARC結合ペプチドについてのペプチドファージディスプレイライブラリーのスクリーニングの結果は、図3及び4に示される。SPARCの結合は、同一配列のペプチドをコードする単離されたファージクローンの数によって(図3)、或いはSPARCで被覆したマイクロタータープレートのウェルへのペプチド発現ファージの結合により測定されたSPARC結合の結合活性によって(図4)、定量することができる。ファージディスプレイにより同定された二つのペプチド、PD15(配列番号:1)及びPD21(配列番号:2)をさらに特徴付けた。
【0145】
その後、PD15及びPD21を発現ベクターpFUSE-hIgl-Fc2にクローニングし(図5)、PD15-Fc及びPD21-Fc融合タンパク質をコードするプラスミドを作製した(図6)。これらの融合タンパク質を発現させ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により示されるように精製に成功した(図7)。
【0146】
PD15及びPD21のタンパク質マイクロアレイ分析(図8を参照)では、分析したアレイ(Invitrogen、ProtoArray v.3)上の5,000のタンパク質において、非SPARCタンパク質との交差反応性はごくわずかしか見られなかった。
【0147】
濃度依存的な結合を調べるELISAアッセイでは、SPARCに対するPD15及びPD21の結合は抗SPARC抗体よりもわずかに弱いだけであることが示された(図9)。PD15のSPARC結合におけるKdは4.1±0.6×10-8Mであり、PD21については1.0±0.7×10-7Mである。(試験した抗SPARC抗体のSPARC結合におけるKdは6.2±3.4×10-9Mであり、言い換えれば、該抗体はわずかにより強くSPARCに結合するに過ぎない。)
【0148】
図10及び11は、(抗SPARC抗体を用いた免疫組織化学的(IHC)染色により示されるような)SPARCの共局在と、ヒト脳腫瘍の切片における(IHC染色のためにエピトープタグ化されている)PD15及びPD21の結合とを示す。図10に示されるように、stab-Fcは腫瘍組織に結合しなかったことから、文献報告にあるスタビリン1のSPARCへの結合は確認されなかったのに対し、PD15及びPD21は結合した(図11)。
【0149】
ファージディスプレイにより単離されたSPARC結合ペプチドの配列相同性解析では、単離された多くのSPARC結合ペプチドの配列は、図12に示されるようにエラスチンの一領域と配列同一性を有することが示された。
【0150】
従って、本実施例は、ファージディスプレイによってSPARC結合ペプチドが同定できることと、その同定されたペプチドをさらに特徴付ける方法とを示す。調べた二つのクローンPD15及びPD21のうち、ELISA及びIHC実験ではPD15の方がPD21よりもSPARCに対して高い親和性を示した。
実施例2
【0151】
PD15-Fc融合タンパク質及びPD21-Fc融合タンパク質について、ヒトPC3前立腺癌異種移植モデルマウスにおける抗腫瘍活性の分析を行った。PD15-Fc融合タンパク質及びPD21-Fc融合タンパク質はいずれも、統計学的に有意な腫瘍成長阻害を示した(図13)。PD15は、PC3異種移植片に対してPD21よりも良好な抗腫瘍活性を示した。ヒトHT29結腸異種移植片モデルマウスでは、PD21の方がPD15よりも良好な抗腫瘍活性を示し、アブラキサンとほぼ同等の活性であった(図14)。
実施例3
【0152】
本実施例は、SPARC結合ペプチドの潜在的な免疫原性(immungenicity)を示す。
【0153】
ProPredは、抗原タンパク質配列中のMHCクラスII結合領域を予測するグラフィカルなウェブツールである(Singh et al.: ProPred: prediction of HLA-DR binding sites. Bioinformatics 2001, 17(12): 1236-7を参照)。サーバーは、文献から推測されるアミノ酸/位置の係数表を採用する、マトリックスに基づく予測アルゴリズムを実行する。予測された結合部分は、グラフィカルインターフェイスではピークとして、或いはHTMLインターフェイスでは色付けされた残基として可視化され得る。このサーバーは、いくつかのHLA-DR対立遺伝子に結合することのできる乱雑な結合領域の位置を突き止めるのに有用なツールとなり得る。
【0154】
PD21及びPD15を含む、ファージディスプレイで同定されたSPARC結合ペプチドのProPred解析の結果より、わずかなHLA-DR分子のみがこれらのペプチドを提示するであろうことが示され、該ペプチドは免疫原性がさほど高くないことが示唆される。
【0155】
本明細書において開示されたペプチドは、例えば配列番号:1〜112又は117を挙げることができ、高い親和性を示しているが、いずれも免疫原生が低いか、或いは免疫原生を有さないことが同様に分析され得る。
実施例4
【0156】
抗体フラグメントはまた、異なる形式を用いてファージ上に提示することもできる。単鎖可変領域フラグメント(scFv)は、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域が融合したものであり、短い(通常セリン、グリシン)リンカーと共に結合されている。このキメラ分子は、定常領域を取り除き、リンカーペプチドを導入しているにもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を維持している。抗体ファージディスプレイの最も一般的な形式としてはscFvライブラリーの利用が挙げられる。従って、抗体バリアントの大きなコレクションを、抗原結合クローンの存在についてスクリーニングすることができる。
【0157】
全体的な戦略は、まず、抗原としてSPARCを用いたELISAによりヒト抗体ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることであった。
【0158】
最初は、HuScL-3(登録商標)を4回スクリーニングし(酸性溶出で3回、競合溶出で1回)、ファージELISAにより17個の陽性クローンを選別した。これらのクローンのDNAシークエンシングから二つの特有の抗体配列が明らかにされ、第1の配列は15個の陽性クローンにより共有され、第2のものは残り2個の陽性クローンで共有された。その後、二つの特有の抗体の結合特異性を可溶性scFv ELISAにより確認した。
【0159】
次に、HuScL-2(登録商標)を3回スクリーニングした(トリプシン消化溶出で2回、競合溶出で1回)。最終的に、ファージELISAにより30個の陽性クローンを選別した。シークエンシングの結果によれば、29個のクローンが一つの抗体配列を共有し、残り1個のクローンが別の特有の抗体をコードしていた。その後、これら二つの抗体の結合特異性を、可溶性scFv ELISAにより同様に確認した。
【0160】
SPARCに対する4個の特有のscFvとして、ScFv3-1、ScFv3-2、ScFv2-1、及びScFv2-2(配列番号:113〜116)を同定した。
【0161】
刊行物、特許出願、及び特許を含む本明細書中に引用された全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、またその全体が本明細書中で説明されたのと同程度まで、参照により組み込まれる。
【0162】
本発明(特に、添付の特許請求の範囲に関して)を記載することに関して、用語「a」及び「an」及び「the」並びに類似の指示対象の使用は、本明細書中に異なって示されるか、文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方をカバーすると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、異なって示されない限り、オープンエンドの用語(即ち、「含むがそれに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で異なって示されない限り、この範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として機能することを意図するに過ぎず、各個別の値は、それが本明細書中に個々に列挙されるのかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に異なって示されるか、さもなければ文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例または例示的語句(例えば、「等」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図するものであり、異なって特許請求されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中の語句はいずれも、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須なものとして示していると解釈すべきではない。
【0163】
本発明者らが知る発明を実施するための最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書中に記載している。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上記の記載を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がこのようなバリエーションを必要に応じて使用することを予測しており、また本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法により許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変物及び均等物を包含する。さらに、全ての可能なそれらのバリエーションにおける上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に異なって示されるか、さもなければ文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2008年12月5日に出願された米国仮出願番号61/120,228号の利益を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
酸性でありシステインに富んだ分泌タンパク質(Secreted Protein, Acidic, Rich in Cysteines (SPARC))は、オステオネクチンとしても知られており、ヒトの体内で発現している303アミノ酸の糖タンパク質である。SPARCの発現は発生学的に制御されており、正常な発生の過程で又は傷害に応答して再構築を受けている組織において主に発現している。例えば、Lane et al., FASEB J., 8, 163-173 (1994)を参照のこと。例えば、高レベルのSPARCタンパク質が、発生中の骨及び歯、主に、マウス、ウシ、及びヒトの胚における骨芽細胞、象牙芽細胞、軟骨周囲の線維芽細胞、及び分化軟骨細胞に発現している。SPARCはまた、組織再構築、創傷治癒、形態形成、細胞分化、細胞移動、及び血管形成の過程において、これらの過程が疾患の状態に関与する場合を含め、細胞−マトリックスの相互作用にも重要な役割を果たしている。例えば、SPARCは間質性腎線維症で発現しており、ブレオマイシン誘発性肺線維症等の肺損傷に対する宿主応答において役割を果たしている。
【0003】
SPARCは、様々な癌における腫瘍及びその周囲の間質で正常の組織と比較して異なった発現をしており、そのパターンは癌の種類に依存している。従って、その機能並びに癌の発生及び進行への寄与の面を全て説明する統一的なモデルが存在しない。一つのパターンにおいて、SPARCの発現は、乳癌(Bellahcene and Castronovo, 1995; Jones et al., 2004; Lien et al., 2007; Porter et al., 1995)、メラノーマ(Ledda et al., 1997a)、及び神経膠芽腫(Rempel et al., 1998)において上昇することが報告されている。SPARCの発現上昇は、これらの癌の腫瘍促進又は進行において役割を果たしている。
【0004】
従って、炎症及びいくつかの癌におけるSPARCの過剰発現により、SPARCは診断及び治療を行うための潜在的な標的となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の要旨
本発明は、哺乳動物において治療又は診断剤を疾患部位に送達するための組成物であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合ペプチド(「SBP」)に結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有し、該SBPが配列番号:1〜117の一つ又はそれ以上を含む、組成物(「本発明の組成物」)を提供する。
【0006】
特に好ましい実施態様としては、例えば、哺乳動物において疾患部位に治療剤を送達するための本発明の組成物であって、一以上のSBPを含有し、該治療剤が機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントであり、例えば、該機能的抗体Fcドメインが配列番号:118を含む、組成物が挙げられる。
【0007】
さらに好ましい実施態様としては、哺乳動物において疾患部位に治療又は診断剤を送達するための本発明の組成物であって、例えば、SBPが、配列番号:1〜112及び117のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、組成物が挙げられる。好ましくは、SBPは、配列番号:1〜112及び117のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸で構成されることができる。他の実施態様としては、例えば、二以上の別々のSBPが存在し、それぞれの個々のSBPが、配列番号:1〜112及び117のいずれか一つ、好ましくは配列番号:1〜5のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、組成物が挙げられる。実施態様としては、例えば、二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPが配列番号:1〜117の一つ又はそれ以上で構成される、組成物が挙げられる。
【0008】
本発明はまた、哺乳動物において疾患部位に治療又は診断剤を送達するための組成物であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SBPに結合した治療又は診断剤、薬学的に許容される担体、及び薬学的に許容される担体を含有し、さらにアルブミン結合ペプチド(「ABP」)を含有し、該ABPが配列番号:119若しくは配列番号:120、又は配列番号:119及び配列番号:120の両方を含む、組成物も提供する。そのような組成物には、SBP及びABPが同一のポリペプチド中にあるもの、並びにSBPとABPとが異なるポリペプチド中にあるものが包含される。
【0009】
本発明はさらに、哺乳動物において疾患部位に治療又は診断剤を送達するための方法であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合タンパク質に結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有し、該SBPが配列番号:1〜117を含む、方法(「本発明の方法」)を提供する。好ましい実施態様としては、組成物が、例えばSBPが、配列番号:1〜112及び117のいずれか一つ又はそれ以上、より好ましくは配列番号:1〜5及び117のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む本発明の方法が挙げられる。
【0010】
他の好ましい実施態様としては、本発明の方法において、例えば二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPが配列番号:1〜117の一以上で構成されることが挙げられる。本発明はまた、少なくとも一つのSBPでそれぞれが構成される二以上の別々のポリペプチドが存在し、該SBPが配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、本発明の方法も提供する。
【0011】
特に好ましい本発明の方法としては、組成物において、例えば、治療剤が、機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントであって、例えば該抗体フラグメントが配列番号:118を含むこと等が挙げられる。本発明によるこのような方法としては、例えば、治療剤が、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシス誘発、細胞死誘発、及びオプソニン作用(opsinization)の一以上を媒介する抗体フラグメントであること等が挙げられる。
【0012】
本発明により提供される本発明の方法には、配列番号:119若しくは120、又は配列番号:119及び120の両方を含む血清アルブミン結合ペプチド(「ABP」)も含まれる。本発明による方法としてはさらに、例えば、SBP及びABPが同一のポリペプチド中にあること、並びにSBPとABPとが異なるポリペプチド中にあることが挙げられる。しかしながら、SBPはまた、配列番号:1〜112のいずれか一つ又はそれ以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸でも構成され得る。
【0013】
提供される本発明の組成物及び本発明の方法は、疾患部位が腫瘍である場合、及び哺乳動物がヒト患者である場合において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、結合ペプチドの治療又は診断剤への融合の一般概念を示す。本図面において示されている例では、治療剤は抗体Fcドメインである。
【図2】図2は、ファージディスプレイライブラリーの反復スクリーニングの一般的な戦略を示す。
【図3】図3は、SPARCへの結合についてペプチドファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした後に同定された配列を、配列が単離された回数により示す。
【図4】図4は、SPARCへの結合についてペプチドファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした後に同定された配列を、(ODで示されるような)SPARCへの結合活性により示す。
【図5】図5は、ペプチドPD15又はPD21のいずれかのペプチドをpFUSE-hIgG1-Fc2ベクターにクローニングして、PD15又はPD21とFcとの融合タンパク質を得たことを示す。
【図6】図6は、ペプチド15及びペプチド21をコードする配列をpFUSE-hIgG1-Fc2ベクターにクローニングして、ペプチド-Fc融合タンパク質をコードさせることにより得られたDNA配列を示す。
【図7】図7は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動におけるPD15-Fc及びPD21-Fc融合タンパク質の発現及び精製を示す。
【図8】図8は、PD15及びPD21の標的結合を明らかにするために用いたProtoarrayを示す。
【図9】図9は、PD15及びPD21によるSPARC結合の結合活性を抗SPARC抗体のものと比較したELISA結合分析のグラフである。
【図10】図10は、ヒト腫瘍の切片上で行われた免疫組織的(immunohistolgic)試験の顕微鏡写真を示し、腫瘍でのSPARCの発現が抗SPARC抗体(R&D Anti SPARC)を用いて示されている。陰性コントロールの抗ハーセプチン抗体(Fcフラグメントのみ)及びスタビリン(Stablin)結合ペプチド-Fc融合タンパク質(stab-Fc)は腫瘍を染色していない。
【図11】図11は、SPARCを発現する腫瘍の組織的染色を示し、SPARCを発現している腫瘍細胞にPD15及びPD21が結合することを示している。
【図12】図12は、エラスチンにおける潜在的SPARC結合部位を示す。
【図13】図13は、ヒト前立腺癌/ヌードマウスモデルの系におけるPD15及びPD21の抗腫瘍活性を示す。
【図14】図14は、ヒト乳癌/ヌードマウスモデルの系におけるPD15及びPD21の抗腫瘍活性を示す。
【図15】図15は、SPARC結合活性を有する二つのsvFcポリペプチド、ScFv3-1及びScFv3-2、を示す。
【図16】図16は、SPARC結合活性を有する二つのsvFcポリペプチド、ScFv2-1及びScFv2-2、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
SBP及びABPは「ペプチドリガンドドメイン」である。用語「ペプチドリガンドドメイン」は、それ自体で、及び/又はより大きなポリペプチド配列の中に存在することができ、他の生体分子に特異的に結合するアミノ酸配列を意味する。例えば、脂肪酸、ビリルビン、トリプトファン、カルシウム、ステロイドホルモン及び他の生理学的に重要な化合物の主な血液輸送システムでは、これらの生体分子が血清アルブミンに結合することが関与している。これらの生体分子の結合は、アルブミンのアミノ酸配列における個々の部位で、即ち、血清アルブミンにおけるペプチドリガンドドメインで発生している。
【0016】
本発明は、哺乳動物において治療又は診断剤を疾患部位に送達するための組成物であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合ペプチド(「SBP」)に結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有する、組成物を提供する(「本発明の組成物」及び「本発明の方法」)。本発明には、組成物及び方法において、SBPが、配列番号:1〜117のいずれか一つ若しくはそれ以上、最も好ましくは配列番号:1〜5のいずれか一つ若しくはそれ以上の配列のペプチド、又は配列番号:1〜117のいずれか一つの一以上のホモログを含むことが包含される。
【0017】
用語「ホモログ」は、原型の配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、原型の配列により示される性質と実質的に類似する、関連性のある性質を示すポリペプチドを意味する。その性質の一例を反映したものとして活性薬剤の組織分布を調節する能力があり、配列番号:1〜117のホモログは、配列番号:1〜117により提供されるものと実質的に同様なレベルの調節を提供することができる。これに関して、例として及び望ましくは、そのような実質的に同様な調節を示す配列番号:1〜117のホモログは、配列番号:1〜117により提供されるものと比較して少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは約95%の活性薬剤の血中濃度を提供し得る。あるいは、用語「ホモログ」はまた、例えば、配列番号:1〜112のいずれか一つ、最も好ましくは配列番号:1〜5のいずれか一つ以上の、少なくとも6連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも7連続するアミノ酸、より好ましくは少なくとも8連続するアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも9連続するアミノ酸、最も好ましくは少なくとも10連続するアミノ酸のペプチド配列をもいう。
【0018】
本発明により提供される組成物及び方法にはまた、配列番号:119若しくは120、又は配列番号:119及び120の両方を含むABP、並びにそれらのホモログも包含される。本発明による方法にはさらに、例えば、SBP及びABPが同一のポリペプチドにあること、並びにSBPとABPとが異なるポリペプチドにあることが包含される。
【0019】
原型の配列に対する変化に関して、原型の配列のホモログは、望ましくは原型の配列と少なくとも約80%同一、好ましくは原型の配列と少なくとも約90%同一、さらにより好ましくは原型の配列と少なくとも約95%同一、最も好ましくは原型の配列と少なくとも約99%同一である。
【0020】
本明細書において使用される場合、「配列同一性の割合」は、比較ウィンドウ(comparison window)にわたって最適な状態で整列された二つの配列を比較することにより決定される値を意味する。また、比較ウィンドウにおけるポリペプチド配列の一部は、(付加も欠失も含まない)基準配列(reference sequence)と比較して、最適な状態で二つの配列を整列させるため、付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。該割合は、両配列においてアミノ酸残基が同一である位置の数を調べて一致した位置の数を求め、その一致した位置の数を、比較されたウィンドウ(window)中の位置の総数で除し、その結果に100を掛けて配列同一性の割合を求めることにより算出される。好ましくは、最適な状態での整列はNeedleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443 453のホモロジー整列アルゴリズムを用いて行われる。
【0021】
また、ホモログが同一のアミノ酸を含まないところでは、変異が保存的アミノ酸変化のみを生じることも望ましい。従って、同一でない残基の位置は、アミノ酸残基が化学特性(例えば、電荷又は疎水性)の類似した他のアミノ酸残基に置換され、それゆえ分子の機能的性質を変化させないよう相違している。配列が保存的置換において相違する場合は、配列同一性の割合は上方に調整されて、該置換の保存的性質を補正することができる。そのような保存的置換により相違する配列は「配列類似性」又は「類似性」を有すると称される。この調整を行う方法は当業者に周知である。
【0022】
本発明に関して「保存的」なアミノ酸の置換又は変換が意味するところをさらに例示するため、グループA〜Fを以下に列挙する。以下のグループの一つのメンバーを同一グループの他のメンバーによって置換することは保存的置換であるとみなされる。
【0023】
グループAには、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、システイン(cysteinee)、トレオニン、並びに以下の側鎖:エチル、イソ-ブチル、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CHOHCH3及びCH2SCH3を有する修飾アミノ酸が含まれる。
【0024】
グループBには、グリシン、アラニン、バリン、セリン、システイン(cysteinee)、トレオニン、及びエチル側鎖を有する修飾アミノ酸が含まれる。
【0025】
グループCには、フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシン、トリプトファン、シクロヘキシルメチル、及び置換ベンジル又はフェニル側鎖を有する修飾アミノ残基が含まれる。
【0026】
グループDには、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸又はアスパラギン酸の置換又は非置換の脂肪族、芳香族又はベンジルエステル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、シクロヘキシル、ベンジル、又は置換ベンジル)、グルタミン、アスパラギン、CO-NH-アルキル化グルタミン又はアスパラギン(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、及びイソ-プロピル)、及び側鎖-(CH2)3COOHを有する修飾アミノ酸、それらのエステル(置換又は非置換の脂肪族、芳香族又はベンジルエステル)、それらのアミド、及びそれらの置換又は非置換のN-アルキル化アミドが含まれる。
【0027】
グループEには、ヒスチジン、リジン、アルギニン、N-ニトロアルギニン、p-シクロアルギニン、g-ヒドロキシアルギニン、N-アミジノシトルリン、2-アミノ(arnino)グアニジノブタン酸、リジンの同族体、アルギニンの同族体、及びオルニチンが含まれる。
【0028】
グループFには、セリン、トレオニン、システイン(cysteinee)、及び-OH又は-SHで置換されたC1〜C5の直鎖又は分岐鎖のアルキル側鎖を有する修飾アミノ酸が含まれる。
【0029】
本発明はさらに、コンジュゲート分子を含有する組成物であって、該コンジュゲート分子は活性薬剤にコンジュゲートしたペプチドリガンドドメインを含み、該ペプチドリガンドドメインは、アミノ末端若しくはカルボキシル末端又は両末端に付加された、最大でさらに約50アミノ酸、好ましくは最大でさらに約25アミノ酸、より好ましくは最大でさらに約15アミノ酸、最も好ましくは最大でさらに約10アミノ酸を含む、組成物を提供する。本発明による、結果として得られるポリペプチドには、全長が50未満、40未満、30未満、25未満又は20未満のアミノ酸であるポリペプチドが包含される。
【0030】
本発明はさらに、コンジュゲート分子を含有する組成物であって、該コンジュゲート分子は活性薬剤にコンジュゲートしたSBPを含み、配列番号:1〜137、141〜143のいずれか一つ、最も好ましくは配列番号:1、2、及び135〜137、141〜143のいずれか一つ又はそれ以上を含むSBPが一つ又は複数存在している、組成物を提供する。
【0031】
本発明はさらに、上述の更なるアミノ酸がアミノ末端及び/又はカルボキシル末端に付加されているものを含むペプチドリガンド結合ドメインのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドも提供する。
【0032】
II. 本発明によるペプチドの製造方法
【0033】
本発明により提供されるペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、公知の技術を用いて合成、検出、定量及び精製することができる。例えば、強力なプロモーター/翻訳開始の制御下にcDNAを配置し、好適な原核又は真核細胞にベクターを形質移入又は形質転換することにより外因性のペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現する細胞を作製して、当業者に周知の方法によりペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現させることができる。あるいは、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、当業者に周知の方法により化学的に作製することができる。
【0034】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、標準的な固相合成法により調製することができる。一般に知られているように、市販にて入手可能な装置及び試薬を製造業者の指示書に従いながら使用し、干渉性官能基(interfering group)のブロッキング、反応させるアミノ酸の保護、カップリング、脱保護、及び未反応残基のキャッピングを行うことにより、必要な長さのペプチドを調製することができる。好適な装置は、例えば、Applied BioSystems, Foster City, CA、又はBiosearch Corporation in San Raphael, CAより入手することができる。
【0035】
例えば、適切な側鎖保護が行われているt-ブトキシカルボニル-α-アミノ酸を採用する標準的な自動化固相合成プロトコールを用いてペプチドが合成される。完成されたペプチドは、標準的なフッ化水素法を用いて側鎖の脱保護と同時に固相から脱離される。粗製ペプチドはさらに、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル勾配を用いたセミ分取用逆相HPLC(Vydac C18)により精製される。ペプチドは真空乾燥されてアセトニトリルが除去され、0.1% TFA水溶液から凍結乾燥される。純度は分析用RP-HPLCにより確認される。ペプチドは凍結乾燥され、その後、1〜2mg/mLの重量濃度で水又は0.01M酢酸に溶解させることができる。
【0036】
上記合成法の使用は、ペプチドにおいて非コードアミノ酸又はD型アミノ酸が存在する場合に必要とされる。しかしながら、遺伝子がコードするペプチドにおいては、供給源は、市販にて入手可能な発現系で容易に合成されるDNA配列を用いた組換え技術によって得ることもできる。
【0037】
従って本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現を制御するエレメントを含む組換えベクターを提供する。また、本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする核酸を含有する細胞(該細胞は原核細胞又は真核細胞である)を提供する。細菌及び組織の培養方法は当業者に周知である(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 16.1-16.54を参照のこと)。従って本発明は、(a)請求項1のポリペプチドをコードする核酸で細胞を形質転換すること;(b)形質転換された細胞によるポリペプチドの発現を誘導すること;及び(c)ポリペプチドを精製すること、を含む、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの製造方法を提供する。
【0038】
タンパク質の発現はRNAの転写レベルに依存し、これは次にDNAシグナルにより制御される。同様に、mRNAの翻訳では、通常はメッセージ5'末端の10から100ヌクレオチド以内に位置しているAUG開始コドンが少なくとも必要とされる。AUG開始コドンに隣接する配列は、その認識に影響を及ぼすことが示されている。例えば、真核生物のリボソームによる認識においては、完全な「コザックコンセンサス」配列と一致する配列中にあるAUG開始コドンにより、最適な翻訳がもたらされる(例えば、Kozak, J. Molec. Biol. 196: 947-950 (1987)を参照のこと)。また、細胞内における外因性核酸の発現の達成には、得られたタンパク質の翻訳後修飾も必要とされ得る。
【0039】
本明細書において記載された核酸分子は、例えば真核細胞において機能的なプロモーター等の、好適なプロモーターに動作可能に結合されたコード領域を含むことが好ましい。本発明においては、特に限定されないが、例えばRSVプロモーター及びアデノウイルス主要後期プロモーター等のウイルスプロモーターを用いることができる。好適な非ウイルスプロモーターとしては、特に限定されないが、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター及び伸長因子(elongation factor)1αプロモーター等が挙げられる。非ウイルスプロモーターは望ましくはヒトのプロモーターである。更なる好適な遺伝因子は、多くが当該技術において公知であり、本発明の核酸及びコンストラクトに付加又は挿入させて更なる機能、発現レベル、又は発現パターンを提供することもできる。
【0040】
また、本明細書において記載された核酸分子はエンハンサーに動作可能に結合され、転写が促進され得る。エンハンサーは、隣接遺伝子の転写を刺激するDNAのシス作用エレメントである。多くの種に由来する多数の異なる細胞型において結合した遺伝子に対して高い転写レベルを与えるエンハンサーの例としては、特に限定されないが、SV40及びRSV-LTR由来のエンハンサーが挙げられる。かかるエンハンサーは、細胞型特異的な効果を有する他のエンハンサーと組み合わせることが可能であり、又はいずれのエンハンサーも単独で使用され得る。
【0041】
真核細胞においてタンパク質合成を最適化させるため、本発明の核酸分子はさらに、該核酸分子のコード領域に続けてポリアデニル化部位を含むことができる。また、好ましくは、外因性の核酸が導入細胞内で適切に発現できるよう、全ての適切な転写シグナル(及び、必要に応じて翻訳シグナル)は正確に配置される。必要に応じて、外因性核酸はまたスプライス部位(即ち、スプライス受容部位及びスプライス供与部位)も組み込むことができ、インフレームの全長転写物を維持しながらmRNA合成を促進することができる。さらに、本発明の核酸分子は、プロセッシング、分泌、細胞内局在等のために適切な配列をさらに含むこともできる。
【0042】
核酸分子は、あらゆる好適なベクターに挿入することができる。好適なベクターとしては、特に限定されないが、ウイルスベクターが挙げられる。好適なウイルスベクターとしては、特に限定されないが、レトロウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及び鶏痘ウイルスベクターが挙げられる。ベクターは、好ましくは、真核細胞(例えば、CHO-K1細胞)を形質転換する、天然の能力又は操作された能力を有する。また、本発明に関して有用なベクターは、プラスミド若しくはエピソーム等の「裸の(naked)」核酸ベクター(即ち、ベクターを封入するタンパク質、糖、及び/又は脂質をほとんど又は全く有さないベクター)とすることができ、又はベクターは他の分子と複合体化することができる。本発明の核酸と好適に組み合わせることのできる他の分子としては、特に限定されないが、ウイルス被膜、陽イオン性脂質、リポソーム、ポリアミン、金粒子、及び細胞分子を標的化するリガンド、受容体又は抗体等の標的化部分が挙げられる。
【0043】
本明細書において記載された核酸分子は、あらゆる好適な細胞(典型的には真核細胞(例えば、CHO、HEK293、又はBHK等))中に形質転換することができ、望ましくはペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド(例えば、配列番号:1〜120で構成されるポリペプチド又は本明細書において記載されたようなそれらのホモログ等)の発現をもたらす。細胞は培養して、核酸分子の発現と、それにより、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド(例えば、配列番号:1〜120のアミノ酸配列を含むポリペプチド又は本明細書において記載されたようなそれらのホモログ等)の産生とを提供できる。
【0044】
従って、本発明は、本明細書において記載された本発明の核酸分子で形質転換又は形質移入された細胞を提供する。外因性DNA分子で細胞を形質転換又は形質移入する方法は当業者に周知である。例えば、特に限定されないが、リン酸カルシウム又はDEAE-デキストラン媒介形質移入、プロトプラスト(protoblast)融合、エレクトロポレーション、リポソーム及び直接的マイクロインジェクション等の当業者に周知の標準的な形質転換又は形質移入技術を用いて、DNA分子が細胞内に導入される(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 1.1-1.162, 15.1-15.53, 16.1-16.54を参照のこと)。
【0045】
形質転換方法の別の例はプロトプラスト融合法であり、高コピー数の目的のプラスミドを保有する細菌に由来するプロトプラストが、培養された哺乳動物細胞と直接混合される。(通常ポリエチレングリコールで行われる)細胞膜の融合の後、細菌の内容物が哺乳動物細胞の細胞質中に送達され、プラスミドDNAが核へ移行する。
【0046】
種々の哺乳動物及び植物細胞に短時間で高電圧の電気パルスを適用するエレクトロポレーションは、原形質膜にナノメートルサイズの孔を形成させる。DNAはこれらの孔を通じて、或いは孔の閉鎖に伴う膜成分の再分布の結果として、細胞の細胞質中に直接取り込まれる。エレクトロポレーションは極めて効果的であり得、クローン化した遺伝子(clones genes)を一過的に発現させるため、及び組み込まれた目的遺伝子のコピーを保有する細胞株を樹立するための両方に使用することができる。
【0047】
かかる技術は、真核細胞の安定的及び一過的な形質転換の両方を行うために使用することができる。安定的に形質転換された細胞の単離には、目的遺伝子での形質転換と併せて選択マーカーの導入が必要である。かかる選択マーカーとしては、ネオマイシンへの耐性を付与する遺伝子、及びHPRT陰性細胞におけるHPRT遺伝子が挙げられる。選択を行うには、少なくとも約2〜7日間、好ましくは少なくとも約1〜5週間にわたる、選択培地での長期培養が必要とされ得る(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 16.1-16.54を参照のこと)。
【0048】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、組換え宿主細胞から発現及び精製され得る。組換え宿主細胞は原核又は真核であり得、E.coli等の細菌、酵母等の真菌細胞、昆虫細胞(ショウジョウバエ及びカイコ由来の細胞株を含むが、これらに限定されない)、並びに哺乳動物細胞及び細胞株を含むが、これらに限定されない。in vitro又はin vivoのいずれにしても、細胞(例えば、ヒト細胞)内でペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現させる場合には、該ペプチドをコードするこのようなポリヌクレオチドのために選択されるコドンは所定の細胞型(即ち、種)について最適化することができる。コドンの最適化のための技術の多くは当該分野において公知である(例えば、Jayaraj et al, Nucleic Acids Res. 33(9):3011-6 (2005); Fuglsang et al., Protein Expr. Purif. 31(2):247-9 (2003); Wu et al., "The Synthetic Gene Designer: a Flexible Web Platform to Explore Sequence Space of Synthetic Genes for Heterologous Expression," csbw, 2005 IEEE Computational Systems Bioinformatics Conference - Workshops (CSBW'05), pp. 258-259 (2005)を参照のこと)。
【0049】
原核生物における最適なポリペプチドの発現のために考慮されなければならない問題としては、使用される発現系、宿主株の選択、mRNAの安定性、コドンバイアス、封入体の形成及び防止、融合タンパク質及び部位特異的タンパク質分解、コンパートメント指向分泌が挙げられる。(Sorensen et al., Journal of Biotechnology 115 (2005) 113-128(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。)
【0050】
発現は、通常、遺伝的背景に適合する系によって保持されたプラスミドから誘導される。発現プラスミドの遺伝因子としては、複製起点(ori)、抗生物質耐性マーカー、転写プロモーター、翻訳開始領域(TIRs)、並びに転写及び翻訳ターミネーターが挙げられる。
【0051】
任意の適切な発現系を使用することが可能であり、例えば、Escherichia coliは、その相対的な単純性、高密度での培養、周知の遺伝的性質及び多数の適合的ツール(ポリペプチド発現に利用可能である種々の入手可能なプラスミド、遺伝子組換え融合パートナー及び変異株を含む)によりタンパク質発現を容易にする。E coli株、又は組換え体発現のための遺伝的背景は、極めて重要である。発現株は、ほとんどの有害な天然のプロテアーゼを欠損し、発現プラスミドを安定に保持し、そして発現系に関連する遺伝因子(例えば、DE3)を与えるべきである。
【0052】
プラスミドコピー数は、好ましくは緩やかな様式で複製する複製起点により制御される(Baneyx, 1999)。現代の発現プラスミド中に存在するColE1レプリコンはpBR322(コピー数15〜20)又はpUC(コピー数500〜700)ファミリーのプラスミドに由来し、一方p15AレプリコンはpACYC184(コピー数10〜12)に由来する。組換え発現プラスミドにおける最も一般的な薬物耐性マーカーは、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリンへの耐性を与える。
【0053】
E coli発現系としては、T7に基づくpET発現系(Novagenにより商品化されている)、ラムダPLプロモーター/cIリプレッサー(例えば、Invitrogen pLEX)、Trcプロモーター(例えば、Amersham Biosciences pTrc)、Tacプロモーター(例えば、Amersham Biosciences pGEX)及びハイブリッドlac/T5(例えば、Qiagen pQE)及びBADプロモーター(例えば、Invitrogen pBAD)が挙げられる。
【0054】
転写されたメッセンジャーRNAの翻訳開始領域(TIR)からの翻訳開始は、シャイン−ダルガーノ(SD)配列及び翻訳開始コドンを含むリボソーム結合部位(RBS)を必要とする。シャイン−ダルガーノ配列は、効率的な組換え発現系において標準的なAUGの開始コドンから7±2ヌクレオチド上流に位置する。最適な翻訳開始は、SD配列UAAGGAGGを有するmRNAから得られる。
【0055】
E. coliにおけるコドンの使用頻度は、細胞質内で利用可能な同族のアミノアシル化tRNAのレベルにより反映される。主要なコドンは、高発現する遺伝子中に存在する一方で、マイナー又はレアコドンは、低いレベルで発現する遺伝子内にある傾向がある。E. coliにおけるレアコドンは、多くの場合、真核生物、古細菌(archaeabacteria)及び異なるコドン頻度優先性(codon frequency preferencies)を有する他の遠縁の生物等供給源由来の異種遺伝子に多く存在する(Kane, 1995)。レアコドンを含む遺伝子の発現は、マイナーコドンtRNAに結合したアミノ酸の取り込みを必要とする位置でのリボソーム停止の結果として、翻訳のエラーにつながり得る(McNulty et al., 2003)。コドンバイアスの問題は、ダブレット(doublet)及びトリプレット(triplet)等のクラスターでレアコドンを含む転写産物が大量に集積する場合に、組換え発現系において高頻度になる。
【0056】
タンパク質の活性は、正確な三次元構造へのフォールディングを必要とする。熱ショック等のストレス状況ではin vivoでのフォールディングが障害を受け、フォールディングの中間体は、会合して、封入体と呼ばれる不定形のタンパク質顆粒となる傾向がある。
【0057】
封入体は、高い割合で組換えタンパク質が発現する場合にストレス応答として発生することがよく知られている、構造的に複雑な一連の凝集体である。E. coliの細胞質中のタンパク質濃度200〜300mg/mlにおける高分子クラウディングは、特に組換え体発現が高レベルで行われている間における極めて好ましくないタンパク質フォールディング環境を示唆する(van den Berg et al., 1999)。封入体は、折り畳まれていない鎖において露出しているパッチ間の疎水性相互作用により生じる受動的な事象を通じて形成するのか、或いは特異的なクラスター化のメカニズムによるのか否かは不明である(Villaverde and Carrio, 2003)。精製された凝集体は、尿素及びグアニジン(guadinium)塩酸塩のような界面活性剤を用いて可溶化することができる。未変性のタンパク質は、希釈、透析又はオンカラムリフォールディング(on-column refolding)法のいずれかによって、可溶化された封入体からin vitroでリフォールディングすることにより調製することができる(Middelberg, 2002; Sorensen et al., 2003a)。
【0058】
リフォールディングの戦略は、分子シャペロンを含めることによって改善され得る(Mogk et al., 2002)。しかしながら、所定のタンパク質についてリフォールディングの手順を最適化することは、時間の消費を伴う労力を要し、また常に高い産物収率が得られるわけではない。封入体の形成を抑制するための可能性のある戦略としては、分子シャペロンを共過剰発現させることである。
【0059】
組換えタンパク質の精製及び発現を簡易にするために、広範なタンパク質融合パートナーが開発されている(Stevens, 2000)。融合タンパク質又はキメラタンパク質は、通常、特異的プロテアーゼの認識部位によりパッセンジャータンパク質又は標的タンパク質に結合されたパートナー又は「タグ」を含む。多くの融合パートナーは、特異的なアフィニティー精製の戦略のために開発されている。融合パートナーはin vivoにおいても有利であり、細胞内のタンパク質分解からパッセンジャーを保護し(Jacquet et al., 1999; Martinez et al., 1995)、溶解性を促進し(Davis et al., 1999; Kapust and Waugh, 1999; Sorensen et al., 2003b)、又は特異的な発現レポーターとして使用され得る(Waldo et al., 1999)。ほぼ確実にmRNAの安定化の結果として、多くの場合、N末端の融合パートナーから低発現パッセンジャーに高発現レベルが移され得る(Arechaga et al., 2003)。一般的なアフィニティータグは、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に適合するポリヒスチジンタグ(His-タグ)、及びグルタチオンに基づく樹脂上での精製のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグである。いくつかの他のアフィニティータグが存在し、広く総説されている(Terpe, 2003)。
【0060】
組換えにより発現されたタンパク質は、原則として3つの異なる場所、即ち細胞質、ペリプラズム又は培養培地に向けられる。種々の利点及び欠点が、特定の細胞内コンパートメントへの組換えタンパク質の方向付けに関与している。産生収率が高いことから、細胞質における発現が通常好ましい。ジスルフィド結合形成はE. coliにおいて隔離されており、Dsbシステムによりペリプラズムにおいて活発に触媒されている(Rietsch and Beckwith, 1998)。細胞質におけるシステインの還元はチオレドキシン及びグルタレドキシンによって達成される。チオレドキシンはチオレドキシンレダクターゼにより還元状態で維持され、グルタレドキシンはグルタチオンにより還元状態で維持される。低分子量のグルタチオン分子はグルタチオンレダクターゼによって還元される。2つのレダクターゼをコードするtrxB及びgor遺伝子の破壊により、E. coliの細胞質におけるジスルフィド結合の形成が可能となる。
【0061】
細胞に基づいた発現系は、産生されるタンパク質の質及び量に関して欠点を有し、必ずしもハイスループットの産生に好適というわけではない。これらの欠点の多くは、無細胞翻訳系を使用することによって回避することができる。
【0062】
in vitroの遺伝子発現及びタンパク質合成のための無細胞系は、多くの異なる原核生物及び真核生物の系について記載されている(Endo & Sawasaki Current Opinion in Biotechnology 2006, 17:373-380を参照のこと。ウサギ網状赤血球溶血液及び小麦胚芽抽出物等の真核生物の無細胞系は、in vitroで転写されたRNA鋳型の翻訳に必要とされる全ての構成要素を含む粗抽出物から調製される。真核生物の無細胞系は、翻訳反応のために、in vivo又はin vitroで合成された単離RNAを鋳型として使用する(例えば、ウサギ網状赤血球溶血液系又は小麦胚芽抽出物系)。共役した真核生物の無細胞系は、原核生物のファージRNAポリメラーゼを真核生物の抽出物と組み合わせ、in vitroタンパク質合成のために、ファージプロモーターを有する外因性DNA又はPCRにより生成された鋳型を利用する(例えば、TNT(登録商標)共役網状赤血球溶血液
【0063】
TNT(登録商標)共役系を使用して翻訳されたタンパク質は、多くの種類の機能的研究に使用することができる。TNT(登録商標)共役転写/翻訳反応は、オープンリーディングフレームを確認し、タンパク質の変異を研究し、タンパク質-DNA結合の研究、タンパク質活性の分析、又はタンパク質-タンパク質相互作用の研究用にin vitroでタンパク質を作製するために以前より使用されている。近年では、TNT(登録商標)共役系を使用して発現させたタンパク質は、酵母ツーハイブリッド相互作用を確認し、in vitro発現クローニング(IVEC)を実施し、また酵素活性又はタンパク質修飾の分析用タンパク質基質を作製するための分析においても使用されている。種々の適用においてTNT(登録商標)共役系を使用する近年の引用文献のリストについては、www.promega.com/citations/を利用して下さい。
【0064】
原核生物の系において、転写及び翻訳は典型的には共役している;即ち、それらは内因性又はファージRNAポリメラーゼを含み、これが外因性DNAの鋳型からmRNAを転写する。次いでこのRNAは、翻訳のために鋳型として使用される。DNAの鋳型は、プラスミドベクター内にクローニングされた遺伝子(cDNA)又はPCR(a)により生成された鋳型のいずれかであり得る。リボソーム結合部位(RBS)は、原核生物の系において鋳型が翻訳されるのに必要である。転写が行われる間、mRNAの5’末端がリボソーム結合及び翻訳開始に利用可能となり、転写及び翻訳が同時に起こることが可能となる。原核生物の系としては、いずれかの原核生物プロモーターを含むDNA鋳型を使用するものが利用可能である(例えば、lac又はtac;環状及び直鎖状DNA用のE. coli S30抽出物系、又はファージRNAポリメラーゼプロモーター;環状DNA用のE. coli T7 S30抽出物系 精製されたペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの溶解性は、当該分野で公知の方法によって改善することができる。例えば、発現したタンパク質の溶解性を増大させるために(例えば、E. coliにおいて)、Georgiou & Valax(Current Opinion Biotechnol. 7: 190-197 (1996))に記載されているように、増殖温度を低下させ、より弱いプロモーターを使用し、より低いコピー数のプラスミドを使用し、誘導因子濃度を低下させ、増殖培地を変化させることによって、タンパク質の合成速度を低下させることができる。これによりタンパク質の合成速度は低下し、通常はより溶解性の高いタンパク質が得られる。また、適切なフォールディング又はタンパク質の安定性に必須な補欠分子族又は補因子を添加するか、増殖中の培地のpH変化を制御するためにバッファーを添加するか、或いはラクトースによるlacプロモーターの誘導を抑制するために1%グルコース(ほとんどの富栄養培地(例えばLB、2×YT等)中に存在する)を添加することもできる。ポリオール(例えば、ソルビトール)及びスクロースもまた、これらの添加により誘発される浸透圧上昇が細胞内で浸透圧保護剤を蓄積させ、未変性のタンパク質構造を安定化するので、培地に添加され得る。エタノール、低分子量チオール及びジスルフィド、並びにNaClが添加され得る。また、シャペロン及び/又はフォールダーゼ(foldase)が所望のポリペプチドと共発現され得る。分子シャペロンは、フォールディング中間体と一過的に相互作用することにより適切な異性化及び細胞の標的化を促進する。E. coliのシャペロン系としては、特に限定されないが、以下が挙げられる:GroES-GroEL、DnaK-DnaJ-GrpE、CIpB。
【0065】
フォールダーゼは、フォールディング経路に沿った律速段階を促進する。3つの型のフォールダーゼが重要な役割を果たしている:ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPI's)、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbA)及びジスルフィドイソメラーゼ(DsbC)、タンパク質のシステインの酸化及びジスルフィド結合の異性化の両方を触媒する真核生物のタンパク質であるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)。これらのタンパク質の1以上を標的タンパク質と共発現させることによって、より高いレベルの可溶性の標的タンパク質を生じさせることができる。
【0066】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、その溶解性及び産生量を改善するために融合タンパク質として産生され得る。該融合タンパク質は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドとインフレームで共に融合された第2のポリペプチドとを含む。第2のポリペプチドは、それが融合されたポリペプチドの溶解性を改善するための当該分野における公知の融合パートナーであり得る(例えば、NusA、バクテリオフェリチン(BFR)、GrpE、チオレドキシン(TRX)及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST))。Novagen Inc.(Madison, WI)は、NusA-標的融合物の形成を可能にするpET43.1ベクターシリーズを提供している。DsbA及びDsbCも、融合パートナーとして使用される場合に発現レベルに対して正の効果を示しており、それゆえ、より高い溶解性を達成するためにペプチドリガンドドメインとの融合に使用することができる。
【0067】
かかる融合タンパク質の一態様において、発現したペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、プロテアーゼにより加水分解可能なペプチド結合を含むプロテアーゼ切断部位を含有しているリンカーポリペプチドを含む。結果として、ポリペプチド中のペプチドリガンドドメインは、発現した後でタンパク質分解によりポリペプチドの残部から分離され得る。リンカーは、プロテアーゼの触媒部位も結合する該結合のいずれかの側に、一以上の更なるアミノ酸を含み得る(例えば、Schecter & Berger, Biochem. Biophys. Res. Commun. 27,157-62 (1967)を参照のこと)。或いは、リンカーの切断部位はプロテアーゼの認識部位と離れていてもよく、2つの切断部位及び認識部位は一以上(例えば、2から4)のアミノ酸により分離され得る。一態様において、リンカーは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、約10、約20、約30、約40、約50又はそれ以上のアミノ酸を含む。より好ましくは、リンカーは、約5から約25アミノ酸長であり、最も好ましくは、リンカーは約8から約15アミノ酸長である。
【0068】
本発明による有用ないくつかのプロテアーゼは、以下の参考文献において考察される:Hooper et al., Biochem. J. 321 : 265-279 (1997); Werb, Cell 91: 439-442 (1997); Wolfsberg et al. ,J. Cell Biol. 131: 275-278 (1995); Murakami & Etlinger, Biochem. Biophys. Res. Comm. 146: 1249-1259 (1987); Berg et al., Biochem. J. 307: 313-326 (1995); Smyth and Trapani, Immunology Today 16: 202-206 (1995); Talanian et al., J. Biol. Chem. 272: 9677-9682 (1997); 及びThornberry et al., J. Biol. Chem. 272: 17907-17911 (1997)。細胞表面プロテアーゼも、本発明による切断可能なリンカーと共に使用されることができ、特に限定されないが:アミノペプチダーゼN;ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ;アンジオテンシン変換酵素;ピログルタミルペプチダーゼII;ジペプチジルペプチダーゼIV;N-アルギニン二塩基性転換酵素;エンドペプチダーゼ24.15;エンドペプチダーゼ24.16;アミロイド前駆体タンパク質セクレターゼα、β及びγ;アンジオテンシン変換酵素セクレターゼ;TGFαセクレターゼ;TNFαセクレターゼ;FASリガンドセクレターゼ;TNF受容体-I及び-IIセクレターゼ;CD30セクレターゼ;KL1及びKL2セクレターゼ;IL6受容体セクレターゼ;CD43、CD44セクレターゼ;CD16-I及びCD16-IIセクレターゼ;L-セレクチンセクレターゼ;葉酸受容体セクレターゼ;MMP 1、2、3、7、8、9、10、11、12、13、14、及び15;ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子;組織プラスミノーゲン活性化因子;プラスミン;トロンビン;BMP-1(プロコラーゲンC-ペプチダーゼ);ADAM 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11;並びにグランザイムA、B、C、D、E、F、G、及びHが挙げられる。
【0069】
細胞結合型プロテアーゼに依存することの代替手段は、自己切断リンカーを使用することである。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aプロテアーゼがリンカーとして使用され得る。これは、2A/2B接合部においてFMDVのポリタンパク質を切断する17アミノ酸の短いポリペプチドである。FMDV 2Aプロペプチドの配列は、NFDLLKLAGDVESNPGPである。切断は、ペプチドのC末端において、最後のグリシン−プロリンアミノ酸対において起こり、他のFMDV配列の存在には依存せず、異種配列の存在下であっても切断する。
【0070】
アフィニティークロマトグラフィーは、単独で、又は、イオン交換、分子サイジング、若しくはHPLCクロマトグラフィー技術と組み合わせて、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの精製に使用することができる。かかるクロマトグラフィーアプローチは、カラムを使用して、又はバッチ形式で実施され得る。このようなクロマトグラフィー精製方法は当該分野において周知である。
【0071】
また、本発明は、配列番号1〜117の配列において、一以上のアミノ酸置換、及び約1から約5アミノ酸、好ましくは約1から約3アミノ酸、より好ましくは1アミノ酸の挿入又は欠失を有するペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードし、本来の配列により示される特性と実質的に類似している関連特性を有する単離核酸を提供する。
【0072】
変異誘発は、当該分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって実施することができる。一般に、変異誘発は、核酸配列を、配列の操作を容易にするためにプラスミド又はいくつかの他のベクター中にクローニングすることにより達成することができる。次いで、核酸配列中に更なる核酸を付加できる独特の制限部位が同定され、又は核酸配列中に挿入される。二本鎖合成オリゴヌクレオチドは一般に、標的配列に隣接する制限部位を二本鎖オリゴヌクレオチドが組み込むように、例えば交換用DNAの組み込みに使用できるように、オーバーラップする合成一本鎖のセンス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから作成される。プラスミド又は他のベクターは制限酵素で切断され、適合する付着末端を有するオリゴヌクレオチド配列がプラスミド又は他のベクター中にライゲーションされて元のDNAを置換する。
【0073】
in vitro部位特異的変異誘発の他の手段は当業者に公知であり、(特に、オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して(例えば、Parikh & Guengerich, Biotechniques 24:428-431 (1998)を参照のこと))成し遂げることができる。変化部位にオーバーラップする相補的プライマーを使用して、500mM dNTP、2単位のPfuポリメラーゼ、各250ngのセンスプライマー及びアンチセンスプライマー、並びにペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする配列を含む200ngのプラスミドDNAを含有する混合物中で、プラスミド全体をPCR増幅することができる。PCRは望ましくは、1KbのDNAにつき2.5分間の伸長時間で、18サイクル行うことを含む。PCR産物は、DpnI(これは、アデニンメチル化プラスミドDNAのみを消化する)で処理され、Escherichia coli DH5α細胞中に形質転換することができる。形質転換体は、制限酵素消化することにより変化の組込みをスクリーニングすることができ、次いでDNA配列分析により確認することができる。
【0074】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドのタンパク質検出及び定量の好適な方法としては、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着分析(ELISA)、銀染色、BCA分析(例えば、Smith et al., Anal. Biochem., 150,76-85 (1985)を参照のこと)、タンパク質−銅錯体に基づく比色分析であるローリータンパク質分析(例えば、Lowry et al., J. Biol. Chem., 193, 265-275 (1951)に記載されている)、及びタンパク質結合によるクマシーブルーG-250の吸光度変化に依存するブラッドフォードタンパク質分析(例えば、Bradford et al., Anal. Biochem., 72, 248 (1976)に記載されている)が挙げられる。ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、ひとたび発現すれば、イオン交換、サイズ排除、又はC18クロマトグラフィー等の慣習的な精製方法により精製することができる。
【0075】
III. ペプチドリガンドドメインを結合する方法
【0076】
例えば、治療剤、化学療法剤、放射性核種、ポリペプチド等の好適な活性薬剤をペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドに「結合」(又は「コンジュゲート化」又は「架橋」)させる方法は、当該技術分野において十分に記載されている。本明細書中に提供されるコンジュゲートの調製において、活性薬剤は、ペプチドリガンドドメインへのコンジュゲート化又は結合部分の取り付けが実質的にペプチドリガンドドメインのその機能を阻害しないか、或いは実質的に活性薬剤の機能を阻害しない限り、2つの部分を結合させるための当該技術分野で現在公知の任意の方法によって直接的又は間接的にペプチドリガンドドメインに連結される。結合は、任意の好適な手段によることが可能であり、該手段としては、特に限定されないが、イオン結合及び共有結合、並びに任意の他の十分に安定な会合が挙げられ、それにより標的薬剤の分布が調節される。
【0077】
アミノ基とチオール基との間の共有結合を形成し、チオール基をタンパク質に導入するために用いられる多数のヘテロ二官能性架橋試薬が当業者に公知である(例えば、Cumber et al. (1992) Bioconjugate Chem. 3':397 401; Thorpe et al. (1987) Cancer Res. 47:5924 5931; Gordon et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. 84:308 312; Walden et al. (1986) J. MoI. Cell Immunol. 2:191 197; Carlsson et al. (1978) Biochem. J. 173: 723 737; Mahan et al. (1987) Anal. Biochem. 162:163 170; Wawryznaczak et al. (1992) Br. J. Cancer 66:361 366; Fattom et al. (1992) Infection & Immun. 60:584 589を参照のこと)。これらの試薬は、ペプチドリガンドドメイン又はペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドと本明細書中に開示される活性薬剤のいずれかとの間の共有結合を形成するために使用され得る。これらの試薬としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる:N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ(pyridyidithio))プロピオネート(SPDP;ジスルフィドリンカー);スルホスクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(sulfo-LC-SPDP);スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチルベンジルチオサルフェート(SMBT、ヒンダードジサルフェートリンカー);スクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC-SPDP);スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(sulfo-SMCC);スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB;ヒンダードジスルフィド結合リンカー);スルホスクシンイミジル2-(7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセトアミド)エチル-1,3-ジチオプロピオネート(SAED);スルホ-スクシンイミジル7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセテート(SAMCA);スルホスクシンイミジル6-[α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(sulfo-LC-SMPT);1,4-ジ-[3'-(2'-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン(DPDPB);4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルチオ)トルエン(SMPT、ヒンダードジスルフェートリンカー);スルホスクシンイミジル6[α.-メチル-α.-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサ-ノエート(sulfo-LC-SMPT);m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS);m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(sulfo-MBS);N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸(SIAB;チオエーテルリンカー);スルホスクシンイミジル-(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸(sulfo-SIAB);スクシンイミジル4(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB);スルホスクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(sulfo-SMPB);アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)。
【0078】
他のヘテロ二官能性の切断可能な結合剤としては、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸;スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸;4-スクシンイミジル-オキシカルボニル-a-(2-ピリジルジチオ)-トルエン;スルホスクシンイミジル-6-[a-メチル-a-(ピリジルジチオール)-トルアミド]ヘキサノエート;N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ(pyridyidithio))-プロピオネート(proprionate);スクシンイミジル6[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド(proprionamido)]ヘキサノエート;スルホスクシンイミジル6[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド)ヘキサノエート;3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸(dichlorotriazinic acid)、S-(2-チオピリジル)-L-システインが挙げられる。更なる代表的な二官能性連結化合物は、米国特許第5,349,066号、第5,618,528号、第4,569,789号、第4,952,394号、及び第5,137,877号に開示されている。
【0079】
或いは、例えば、ポリペプチドのスルフヒドリル(suflhydryl)基をコンジュゲート化のために使用することができる。また、糖タンパク質(例えば、抗体)にコンジュゲートされた糖部分は酸化されて、当該技術分野において公知の多くの結合手順に有用であるアルデヒド基を形成することができる。本発明に従って形成されるコンジュゲートはin vivoにおいて安定であるか、或いは酵素により分解可能なテトラペプチド結合又は酸不安定性のシス-アコニチル又はヒドラゾン結合等のように不安定であり得る。
【0080】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは任意に、一以上のリンカーを介して活性薬剤に連結される。リンカー部分は、所望の特性に応じて選択される。例えば、リンカー部分の長さは、標的受容体へのリガンドの結合により引き起こされるあらゆる立体構造変化を含めて、リガンド結合の動態及び特異性を最適化するために選別することができる。リンカー部分は、ポリペプチドリガンド部分及び標的細胞受容体が自由に相互作用できるよう十分に長く、且つ十分に柔軟であるべきである。リンカーが短すぎる、又は硬すぎる場合は、ポリペプチドリガンド部分と細胞毒素との間に立体障害が存在し得る。リンカーが長すぎる場合は、活性薬剤が製造過程において分解され得、或いはその所望の効果を標的細胞に効率よく送達しない可能性がある。
【0081】
当業者に公知の任意の好適なリンカーを本明細書において使用することができる。一般に、化学的に製造されたコンジュゲートにおけるリンカーとは異なるセットのリンカーが、融合タンパク質であるコンジュゲートにおいて使用され得る。化学的に連結されたコンジュゲートに好適なリンカー及び結合としては、特に限定されないが、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダードジスルフィド結合、並びにアミン及びチオール基等の遊離反応性基間の共有結合が挙げられる。これらの結合は、ヘテロ二官能性試薬を用いてポリペプチドの一方又は両方に反応性チオール基を生成させ、次いで一方のポリペプチド上のチオール基を、反応性マレイミド基又はチオール基が結合することのできる他方のポリペプチド上の反応性チオール基又はアミン基と反応させることにより生成される。他のリンカーとしては、ビスマレイミドエトキシ(bismaleimideothoxy)プロパン、酸不安定性のトランスフェリンコンジュゲート及びアジピン酸ジヒドラジド等の酸で切断可能なリンカーで、より酸性の細胞内コンパートメント内で切断され得るもの;UV又は可視光に曝されると切断される架橋剤及びリンカーが挙げられる。いくつかの実施形態において、各リンカーの所望の特性を利用するために、いくつかのリンカーが含まれ得る。化学的リンカー及びペプチドリンカーは、リンカーをペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド及び標的薬剤に共有結合することによって挿入され得る。下記のヘテロ二官能性薬剤が、かかる共有結合を生じさせるために使用され得る。ペプチドリンカーは、融合タンパク質としてリンカー及びペプチドリガンドドメイン、リンカー及び活性薬剤、又はペプチドリガンドドメイン、リンカー及び活性薬剤をコードするDNAを発現させることによっても連結され得る。柔軟なリンカー及びコンジュゲートの溶解性を増大させるリンカーが使用のために考慮され、本明細書では単独での使用、或いは他のリンカーとの併用のいずれもが考慮される。
【0082】
従って、リンカーとしては、特に限定されないが、典型的には1から約30アミノ酸、より好ましくは約10から30アミノ酸を含む、ペプチド性結合、アミノ酸及びペプチド結合を挙げることができる。或いは、ヘテロ二官能性の切断可能な架橋剤等の化学的リンカーとして、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-a-(2-ピリジルジチオ(pyridyidithio))トルエン、スルホスクシンイミジル6-a-メチル-a-(ピリジルジチオール)-トルアミド)ヘキサノエート、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(proprionate)、スクシンイミジル6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド(proprionamido))ヘキサノエート、スルホスクシンイミジル6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノエート、3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS-(2-チオピリジル)-L-システインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
他のリンカーとしては、トリチルリンカー、特に、種々の程度の酸性度又はアルカリ性度において治療剤の放出をもたらすコンジュゲート類を生成するための誘導体化トリチル基が挙げられる。従って、治療剤が放出されるpH範囲を予め選択する能力によって得られる柔軟性によって、治療剤の送達を必要とする組織間の公知の生理学的差異に基づくリンカーの選択が可能となる(例えば、米国特許第5,612,474を参照のこと)。例えば、腫瘍組織の酸性度は、正常な組織よりも低いように見られている。
【0084】
酸で切断可能なリンカー、光で切断可能なリンカー及び熱感受性のリンカーもまた、特に、より容易に反応に利用しやすくさせるために標的薬剤を切断することが必要であり得る場合に使用され得る。酸で切断可能なリンカーとしては、特に限定されないが、ビスマレイミドエトキシ(bismaleimideothoxy)プロパン;及びアジピン酸ジヒドラジドリンカー(例えば、Fattom et al. (1992) Infection & Immun. 60:584 589を参照のこと)及び細胞内トランスフェリン循環経路内に進入させるのに十分なトランスフェリン部分を含む酸不安定性のトランスフェリンコンジュゲート(例えば、Welhoner et al. (1991) J. Biol. Chem. 266:4309 4314を参照のこと)が挙げられる。
【0085】
光で切断可能なリンカーは、光に曝されると切断されるリンカーであり(例えば、Goldmacher et al. (1992) Bioconj. Chem. 3:104 107を参照とし、そのリンカーは参照により本明細書中に組み込まれる)、それによって、光に曝されると標的薬剤を放出する。光に曝されると切断される、光で切断可能なリンカーは公知であり(例えば、システインのための光で切断可能な保護基としてニトロベンジル基を使用することを記載するHazum et al. (1981) in Pept., Proc. Eur. Pept. Symp., 16th, Brunfeldt, K (Ed), pp. 105 110;ヒドロキシプロピルメタクリルアミドコポリマー、グリシンコポリマー、フルオレセインコポリマー及びメチルローダミンコポリマーを含む、光で切断可能な水溶性コポリマーを記載するYen et al. (1989) Makromol. Chem 190:69 82;近UV光(350nm)に曝されると光分解を受ける架橋剤及び試薬を記載するGoldmacher et al. (1992) Bioconj. Chem. 3:104 107;光で切断可能な結合を生成するニトロベンジルオキシカルボニルクロライド架橋試薬を記載するSenter et al. (1985) Photochem. Photobiol 42:231 237を参照のこと)、それによって、光に曝されると標的薬剤を放出する。かかるリンカーは、光に曝され得る皮膚又は眼の症状を、光ファイバーを使用して治療するのに特に使用され得る。コンジュゲートを投与した後、眼又は皮膚又は他の体の部分は光に曝されることができ、その結果、コンジュゲートから標的化された部分が放出される。このような光で切断可能なリンカーは、標的化薬剤の除去が望ましい診断プロトコールに関して有用であり、動物の体から迅速に排除することを可能とする。
【0086】
IV. 本発明は複数の活性薬剤を提供する
【0087】
本発明の種々の態様は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドが活性薬剤、即ち治療剤又は診断剤に結合されることを企図する。
【0088】
本明細書中で使用される場合、用語「治療剤」は、化合物、生体高分子、又は細菌、植物、真菌、若しくは動物(特に哺乳動物)の細胞若しくは組織等の生体材料から得られる抽出物であって、治療的特性を有すると思われるものをいう(例えば、化学療法剤又は放射線療法剤)。本明細書中で使用される場合、用語「治療的」は、対象哺乳動物を苦しめている疾患又は関連する症状の治療又は予防(標的疾患(例えば、癌又は他の増殖性疾患)の可能性を抑制又は減少することにより示される)の効果を改善することをいう。治癒的療法は、哺乳動物における既存の疾患又は症状を、全部又は一部において、軽減することをいう。
【0089】
薬剤は、精製され、実質的に精製され、又は部分的に精製され得る。更に、かかる治療剤は、リポソーム若しくは免疫リポソーム中に存在し、又はそれと会合することができ、コンジュゲート化は、薬剤に、又はリポソーム/免疫リポソームに直接的に行うことができる。「リポソーム」は、薬物(例えば、薬物、抗体、毒素)の送達に有用な様々な種類の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤から構成される小胞である。リポソームの構成成分は、通常、生体膜の脂質の配置に類似している二重層形態に配置される。
【0090】
本発明により企図される様式でペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドに結合され得る治療剤の例としては、特に限定されないが、化学療法剤(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン及びプラチナ化合物)、葉酸代謝拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、抗血管新生薬、抗生物質、ホルモン、ペプチド、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン系抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランス白金、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲニステイン)、及び他の化学療法剤が挙げられる。
【0091】
本明細書中で使用される場合、用語「化学療法剤」は、癌、腫瘍性、及び/又は増殖性疾患に対する活性を有する薬剤をいう。好ましい化学療法剤としては、アルブミンを含む粒子としてのドセタキセル及びパクリタキセルが挙げられ、50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態をしている。最も好ましくは、化学療法剤は、アルブミン結合パクリタキセル(例えば、アブラキサン(登録商標))の粒子を含む。
【0092】
好適な治療剤としては、例えば、生物活性剤(TNF、又は(of)tTF)、放射性核種(131I、90Y、111In、211At、32P及び他の公知の治療用放射性核種)、抗血管新生薬(血管新生阻害剤(例えば、INF-α、フマギリン、アンジオスタチン、エンドスタチン、サリドマイド等))、他の生物活性ポリペプチド、治療増感剤、抗体、レクチン、及び毒素も挙げられる。
【0093】
本発明の適用に好適な疾患としては、悪性状態及び善悪性状態、並びに増殖性疾患が挙げられ、特に限定されないが、該増殖性疾患としては、例えば、良性前立腺過形成、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、免疫増殖(immunologic proliferation)又は増殖性腎糸球体症が挙げられる。
【0094】
用語「治療上有効量」とは、疾患又は症状と関連するか、又はその原因となる生理学的又は生化学的なパラメータを、部分的又は完全に、正常に回復させる量を意味する。当該分野における臨床医は、特定の疾患又は症状に対して、治療上有効であろう医薬組成物の量を決定することができるはずである。例として、治療剤がパクリタキセルであるという好ましい実施形態に従うと、投与されるパクリタキセルの用量は、約3週間の投与サイクル(即ち、約3週間毎に1回のパクリタキセル用量を投与すること)で約30mg/m2から約1000mg/m2の範囲、望ましくは、約3週間の投与サイクル、好ましくは約2週間のサイクル、より好ましくは週に1回のサイクルで、約50mg/m2から約800mg/m2、好ましくは約80mg/m2から約700mg/m2、最も好ましくは約250mg/m2から約300mg/m2の範囲とすることができる。
【0095】
本発明はまた、診断の態様も有する。例えば、診断剤は、トレーサー又は標識とすることができ、特に限定されないが、放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤が挙げられる。治療剤に関連して記載されているこれらの剤の結合もまた、本発明のこの態様により企図される。さらに、用語「診断上有効量」は、関連する臨床状況において、組織及び器官における異常な増殖活性、過形成活性、再構築活性、炎症活性の存在及び/又は程度についての合理的に正確な判断を可能にする医薬組成物の量である。例えば、本発明によって「診断される」症状は、良性又は悪性腫瘍であり得る。
【0096】
本明細書において教示される診断剤としては、抗体等のポリペプチドが挙げられ、該ポリペプチドは、共有又は非共有のいずれかで、検出可能なシグナルを提供する物質と結合することにより標識され得る。幅広い種類の標識及びコンジュゲート化技術が公知であり、科学文献及び特許文献の両方において広く報告されている。好適な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、インヒビター、蛍光部分、化学発光部分、磁性粒子等が挙げられる。このような標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;及び第4,366,241号が挙げられる。また、組換え免疫グロブリンが生成され得る(Cabilly、米国特許第4,816,567号;Moore, et al., 米国特許第4,642,334号;及びQueen, et al. (1989) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033を参照のこと)。
【0097】
本発明の組成物及び方法による、腫瘍又は他の疾患部位への治療剤又は診断剤の送達は、任意の好適な方法により観察及び測定することができ、該方法としては、例えば、放射性標識又は放射線不透過性標識を組成物に添加すること、及び必要に応じて画像化することが挙げられ、当業者に周知である。血漿コンパートメントにおける組成物の隔離(sequesteration)は任意の好適な方法により観察することができ、該方法としては、例えば、静脈穿刺(venupuncture)が挙げられる。
【0098】
さらに、関連する態様において、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は判断する方法、並びに化学療法剤への増殖性疾患の応答を予測又は判断する方法、又は増殖性疾患を治療する方法を提供し、該増殖性疾患としては、特に限定されないが、例えば、良性前立腺過形成、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、免疫増殖(immunologic proliferation)又は増殖性腎糸球体症が挙げられる。
【0099】
V. 本発明はペプチドリガンドドメインをポリペプチド活性薬剤に結合する融合タンパク質を提供する
【0100】
本発明はさらに、融合タンパク質における、ポリペプチド活性薬剤へのペプチドリガンドドメインの結合を企図する。例えば、特に限定されないが、ペプチドリガンドドメイン配列は、診断上有用なタンパク質ドメイン(例えば、ハプテン、GFP)、治療増感剤、活性タンパク質ドメイン(例えば、特に限定されないが、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL-2)又は毒素(例えば、特に限定されないが、リシン、PAP、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素)の上流又は下流に融合することができる。
【0101】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」とは、共に共有結合した少なくとも2つの部分を有するポリペプチドをいい、各部分はそれぞれ異なる特性を有するポリペプチドである。該特性はin vitro又はin vivoの活性等の生物学的特性であり得る。該特性はまた、標的分子への結合、反応の触媒等の単純な化学的又は物理的特性でもあり得る。これらの部分は、単一のペプチド結合によって直接的に、又は一以上のアミノ酸残基を含むペプチドリンカーを介して連結することができる。一般に、該部分及びリンカーは互いにリーディングフレームが合っている。
【0102】
VI. 抗体又は抗体フラグメント活性薬剤
【0103】
本発明の特定の態様において、治療剤は、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシス誘発、壊死性細胞死、及びオプソニン作用(opsinization)の一以上を媒介する抗体又は抗体フラグメントであり得る。
【0104】
本明細書中の用語「抗体」としては、特に限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイマー、マルチマー、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)が挙げられる。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ、又は他の種由来であり得る。抗体は、免疫系によって生成されるタンパク質であり、特異的抗原を認識して結合することができる。標的抗原は一般に、多くの抗体上のCDRにより認識される多数の結合部位(エピトープとも呼ばれる)を有する。異なるエピトープに特異的に結合する各抗体は、異なる構造を有している。従って、一つの抗原は、それに対応している抗体を一よりも多く有し得る。抗体としては、全長の免疫グロブリン分子又は、全長の免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、免疫特異的に(immunospecifically)目的の標的抗原又はその一部を結合する抗原結合部位を含む分子が挙げられ、かかる標的としては、特に限定されないが、癌細胞又は、自己免疫疾患に関連する自己免疫性抗体を産生する細胞が挙げられる。本明細書中に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のものであり得る。免疫グロブリンは、任意の種由来であり得る。
【0105】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部(所望の生物活性を保持している)を含む。「抗体フラグメント」は多くの場合、抗原結合領域又はその可変領域である。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖状抗体;Fab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、及び癌細胞抗原、ウイルス抗原又は微生物抗原に免疫特異的に結合する上記のいずれかのエピトープ結合フラグメント、単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。しかしながら、抗体の他の非抗原結合部分は本明細書中で意味するような「抗体フラグメント」であり得、例えば、特に限定されないが、抗体フラグメントは完全又は部分的なFcドメインであり得る。
【0106】
本明細書におけるモノクローナル抗体は具体的に、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応している配列と同一又は相同である一方で、その鎖の残部は、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくサブクラスに属する抗体における対応している配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びにかかる抗体のフラグメントを、それらが所望の生物活性を示している限り、含む(米国特許第4,816,567号)。本明細書における目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル又は類人猿)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む、「霊長類化(primatized)」抗体が挙げられる。
【0107】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解を引き起こす細胞介在性反応をいう。ADCCを媒介する一次細胞、NK細胞は、Fc.γ.RIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。目的とする分子のADCC活性を評価するには、in vitro ADCC分析を行うことができる(米国特許第55,003,621号;米国特許第5,821,337号)。かかる分析に有用なエフェクター細胞としては、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。或いは、又は更に、目的とする分子のADCC活性は、in vivo、例えばClynes et al. PNAS (USA), 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価することができる。
【0108】
「細胞死を誘導する」抗体は、生細胞を生存不能にする抗体である。in vitroの細胞死は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)又は補体依存性細胞傷害(CDC)により誘導される細胞死と区別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の非存在下で判断することができる。従って、細胞死についての分析は、加熱不活化血清を使用し(即ち、補体の非存在下)、及び免疫エフェクター細胞の非存在下で実施することができる。抗体が細胞死を誘導することができるか否かを判断するには、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー又は7AADの取り込みにより評価されるような膜完全性の消失を、非処理細胞と比較して評価することができる。細胞死誘導性抗体は、BT474細胞内のPI取り込み分析においてPIの取り込みを誘導する抗体である。
【0109】
「アポトーシスを誘導する」抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成により判断されるプログラム細胞死を誘導する抗体である。
【0110】
VII. 活性薬剤の分布を調節する方法
【0111】
本発明の別の態様は、本明細書中に開示されるペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートの特性を利用して動物の組織内での活性薬剤の分布を調節する方法であって、コンジュゲート分子を含有する組成物を該動物に投与する工程を含み、該コンジュゲート分子が活性薬剤にコンジュゲート化されたペプチドリガンドドメインを含む方法を提供するものであり、該ペプチドリガンドドメインは、配列番号1〜137、139若しくは140、若しくは141〜143のペプチド又はそのホモログを含んでおり、そして該組成物を動物に投与することにより、活性薬剤単独を投与して得られる組織分布とは異なる活性薬剤の組織分布が結果としてもたらされる。
【0112】
本発明の組成物及び方法は、望ましくは、疾患部位への活性薬剤の組織分布の調節を提供する。これは、望ましくは、疾患部位での活性薬剤の濃度、及び/又は増大若しくは(半減期が)延長された活性薬剤の血中レベルをもたらすことにおいて現れ、それは、活性薬剤が(コンジュゲート化されていない形態で)動物に投与された場合にもたらされ得るものよりも大きい。この調節は、コンジュゲート化したペプチド分子の組織取込み速度を促進すること、その標的部位、即ち、腫瘍での分子の保持を増強させること、コンジュゲート化したペプチド分子の組織内での拡散速度を促進すること、及び/又はコンジュゲート化したペプチド分子の組織を通じての分布を増強すること、及びコンジュゲート化したペプチド分子の組織取込み速度を一以上の組織受容体の内在化の速度に合わせることによっても現れ得る。このような増強は当該分野において公知の任意の好適な方法により測定することができ、該方法としては、特に限定されないが、適切に標識された活性薬剤の検出、局在及び相対的な定量(quantization)が挙げられ、例えば、X線撮影の、顕微鏡の、化学的な、免疫学的な、又はMRIの技術が使用される。
【0113】
「速度を促進すること」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい速度を意味する。「疾患部位でのより高い濃度」とは、比較可能な疾患部位でのコンジュゲート化していない活性薬剤の濃度よりも、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい、疾患部位でのコンジュゲート中の活性薬剤の濃度を意味する。
【0114】
好適な疾患部位としては、特に限定されないが、任意の身体組織(軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等を含む)における、増殖の異常状態、組織再構築、過形成、創傷治癒の過剰の部位が挙げられる。かかる疾患のより具体的な例としては、癌、糖尿病性又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置等における再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗鬆症及び他の骨疾患、アテローム性動脈硬化症、並びに石灰化が高頻度に観察される他の疾患が挙げられる。
【0115】
好ましい態様において、本発明は腫瘍を診断及び/又は治療する方法を提供し、該腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、メラノーマ、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選択される。また、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は判断する方法、腫瘍の治療方法、及び化学療法剤への哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、該腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、オンコサイトーマ(oncytoma)、又はそれらの組み合わせである。
【0116】
別の態様において、本発明は、組成物及び該組成物の使用方法を提供し、該組成物の動物への投与は、活性薬剤単独の投与により得られる血中レベルよりも大きい活性薬剤の血中レベルをもたらす。活性薬剤の血中レベルの任意の好適な基準を使用することができ、特に限定されないが、Cmax、Cmin、及びAUCが挙げられる。「活性薬剤単独の投与により得られる血中レベルよりも大きい」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい血中レベルを意味する。
【0117】
さらに別の態様において、本発明は、組成物及び該組成物の使用方法を提供し、該組成物の動物への投与は、活性薬剤単独の投与により得られる血中レベル半減期よりも長い、活性薬剤の血中レベル半減期をもたらす。「活性薬剤単独の投与により得られる血中半減期よりも長い」とは、少なくとも約33%長い、好ましくは少なくとも約25%長い、より好ましくは少なくとも約15%長い、最も好ましくは少なくとも約10%長い半減期を意味する。
【0118】
VIII. 製剤及び投与
【0119】
in vivoの使用のために、配列番号1〜117及びそれらのホモログ等のペプチドリガンドドメインが結合された活性薬剤は、望ましくは、生理学的に許容される担体を含む医薬組成物に製剤化される。任意の好適な生理学的に許容される担体が、投与経路に応じて本発明の中で使用することができる。当業者は、所望の投与方法に好適な医薬組成物を提供するために使用可能であるそれらの担体を認識するであろう。
【0120】
本発明の医薬組成物の投与は、任意の好適な経路を通じて達成することができ、該経路としては、特に限定されないが、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、腫瘍内、経口、直腸、膣内、膀胱内、及び吸入による投与が挙げられ、静脈内及び腫瘍内投与が最も好ましい。組成物は、特に組成物の安定性の促進及び/又はその最終用途のために、任意の他の好適な構成成分をさらに含有することができる。従って、本発明の組成物の好適な製剤が幅広い種類で存在する。以下の製剤及び方法は、単なる例示であって限定ではない。
【0121】
医薬組成物はまた、所望であれば、更なる治療剤又は生物活性剤も含有することができる。例えば、特定の適応症の治療に有用な治療因子が存在し得る。イブプロフェン又はステロイド等の炎症を制御する因子は、組成物の一部とすることができ、医薬組成物のin vivoでの投与に関連する腫張及び炎症並びに生理的苦痛を低減することができる。
【0122】
担体は典型的には液体であり得るが、固体、又は液体及び固体の成分の組み合わせとすることもできる。担体は、望ましくは、生理学的に許容される(例えば、医薬上又は薬理学的に許容される)担体(例えば、賦形剤又は希釈剤)である。生理学的に許容される担体は周知であり、容易に入手可能である。担体の選択は、少なくとも一部は、標的組織及び/又は細胞の位置、並びに組成物の投与に用いられる特定の方法により決定されるであろう。
【0123】
典型的には、このような組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製することができる;注射の前の液体添加により溶液又は懸濁液を調製するために使用するのに適した固体形態もまた、調製され得る;これらの調製物は乳化もされ得る。注射剤での使用に適した医薬製剤としては、無菌の水溶液又は分散物;公知のタンパク質安定剤及び凍結保護剤を含有する製剤、ゴマ油、ピーナッツ油又は水性プロピレングリコールを含有する製剤、及び無菌の注射可能な溶液又は分散物の即時調製のための無菌粉体が挙げられる。あらゆる場合において製剤は無菌でなければならず、容易に注射することが可能な程度まで流動性を有さなければならない。製剤は、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシセルロース等の界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物中、並びに油中でも調製することができる。保存及び使用における通常の条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防止する保存剤を含有する。
【0124】
ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートは、中性又は塩の形態において組成物に製剤化すること等ができる。医薬上許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が挙げられ、それは、例えば、塩酸又はリン酸等の無機酸、又は、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸等と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄等の無機塩基、及び、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基等から誘導され得る。
【0125】
非経口投与に適した製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び該製剤を対象レシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性無菌注射溶液、並びに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤及び保存剤を含有し得る水性及び非水性の無菌懸濁液が挙げられる。該製剤は、単回用量又は複数用量の密封容器(アンプル及びバイアル等)内に提供することができ、使用直前に注射用無菌液体賦形剤(例えば、水)の添加のみを必要とするフリーズドライの(凍結乾燥された)状態で保存することができる。即席の注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。本発明の好ましい実施形態において、ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートは注射(例えば、非経口投与)用に製剤化される。これに関して、製剤は望ましくは腫瘍内投与に好適であるが、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射等のためにも製剤化することができる。
【0126】
本発明はまた、所望であれば、ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート(即ち、活性薬剤にコンジュゲート化されたペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド)が、さらにポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲート化される実施形態も提供する。PEGのコンジュゲート化は、これらのポリペプチドの循環半減期を増大させ、ポリペプチドの免疫原性及び抗原性を低下させ、並びにそれらの生物活性を改善することができる。使用される場合、PEGコンジュゲート化のあらゆる好適な方法が使用可能であり、特に限定されないが、ペプチドの利用可能なアミノ基、又は、例えばヒスチジン又はシステイン等の他の反応性部位とメトキシ-PEGを反応させることが挙げられる。また、PEG反応性基を有するアミノ酸をペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートに付加するために、組換えDNAアプローチを使用することができる。さらに、放出可能且つハイブリッドのPEG化戦略(ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート分子内の特定の部位に付加されたPEG分子がin vivoで放出されるようなポリペプチドのPEG化等)が、本発明の態様に従って用いられ得る。PEGのコンジュゲート化方法の例は、当該分野において公知である。例えば、Greenwald et al., Adv. Drug Delivery Rev. 55:217-250 (2003)を参照のこと。
【0127】
吸入による投与に好適な製剤としてはエアロゾル製剤が挙げられる。エアロゾル製剤は、加圧された適切な、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の噴霧剤の中に置くことができる。それらはまた、ネブライザー又はアトマイザーからの送達のために非加圧調製物としても製剤化することができる。
【0128】
肛門投与に好適な製剤は、活性成分を、乳化基剤又は水溶性基剤等の種々の基剤と混合することにより坐剤として調製することができる。膣投与に好適な製剤は、膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提供することができ、これらは、活性成分に加えて、適切であることが当該分野において公知である担体等を含有する。
【0129】
また、本発明の組成物は、更なる治療剤又は生物活性剤を含有することができる。例えば、特定の適応症の治療に有用な治療因子が存在し得る。炎症を制御する、イブプロフェン又はステロイド等の因子は、組成物の一部となって、医薬組成物のin vivo投与に関連する腫張及び炎症並びに生理学的苦痛を低減させることができる。
【0130】
吸入治療の場合において、本発明の医薬組成物は望ましくはエアロゾルの形態である。薬剤を投与するためのエアロゾル及びスプレー発生器が、固体形状の場合に利用可能である。これらの発生器は、呼吸可能又は吸入可能な粒子を提供し、所定の計量された用量の薬剤を含有するエアロゾル体積をヒトへの投与に好適な速度で発生させる。かかるエアロゾル及びスプレー発生器の例としては、当該分野で公知の定量吸入器及び通気器が挙げられる。液体形状であれば、本発明の医薬組成物は任意の適切な装置によりエアロゾル化することができる。
【0131】
静脈内、腹腔内又は腫瘍内投与に関して使用される場合、本発明の医薬組成物は、活性化合物の無菌の水性及び非水性の注射溶液、懸濁液又は乳剤を含有することができ、該調製物は、好ましくは対象レシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、一以上の酸化防止剤、緩衝剤、界面活性剤、共溶媒、静菌剤、該組成物を対象レシピエントの血液と等張にする溶質、及び当該分野で公知の他の製剤成分を含有することができる。水性及び非水性の無菌懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含有することができる。組成物は、単回用量又は複数用量の容器(例えば、密封アンプル及びバイアル)内に提供されることができる。
【0132】
本発明の方法は、併用療法の一部でもあり得る。フレーズ「併用療法」とは、本発明による治療剤を別の治療組成物と共に、この組み合わせの有益な効果が治療を受けている哺乳動物において実現されるように連続的又は同時的な様式で投与することをいう。
【0133】
XI. 本発明は多数の症状に適用可能である
【0134】
本発明の組成物及び方法は、様々な疾患の診断又は治療での使用に好適であり、該疾患としては、特に限定されないが、疾患部位が、任意の身体組織における異常な増殖状態、組織再構築、過形成、過剰な創傷治癒であるものが挙げられ、該組織としては、軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等が挙げられる。かかる疾患のより具体的な例としては、癌、糖尿病性又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置等における再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗鬆症及び他の骨疾患、アテローム性動脈硬化症、並びに石灰化が高頻度に観察される他の疾患が挙げられる。
【0135】
好ましい態様において、本発明は腫瘍を診断及び/又は治療する方法を提供し、該腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、メラノーマ、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選択される。また、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は決定する方法、腫瘍の治療方法、及び化学療法剤への哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、該腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、オンコサイトーマ(oncytoma)、又はそれらの組み合わせである。
【0136】
本発明は、疾患が哺乳動物中にある場合の実施態様を提供し、該哺乳動物としては、特に限定されないが、ヒトが挙げられる。
【0137】
X. キット
【0138】
本発明は、医薬製剤及び腫瘍の治療における該製剤の使用説明書、及び該キットの使用説明書(例えば、FDA認可の添付文書)を含む腫瘍の治療用キットを提供するものであり、該医薬製剤は、活性薬剤にコンジュゲート化されたペチドリガンドドメインを含むコンジュゲート分子を含有し、該ペプチドリガンドドメインは、配列番号1〜137、139若しくは140、若しくは141〜143のペプチド又はそのホモログを含んでおり、該ペプチドリガンドドメインは、約700μM以下の平衡解離定数(Kd)によって特徴付けられるヒト血清アルブミン親和性を有し、そして随意に、該コンジュゲート分子はさらに、第二のペプチドリガンドドメインを含む。
【0139】
以下の実施例はさらに本発明を説明するが、当然のことながら、いかなる意味においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0140】
実施例1
本実施例は、ファージディスプレイ技術を用いたSPARC結合ペプチドの同定、及びそのようなSPARC結合ペプチドの腫瘍治療用分子への組み込みを実証する。
【0141】
具体的には、治療又は診断剤にコンジュゲートしたSPARC結合ペプチドを有する分子を作製することを主な目的とした。特に、抗体Fcドメインが、例えば抗体依存性細胞傷害(ADC)又は細胞依存性細胞傷害(CDC)のような、免疫機能を活性化することにより治療剤として作用する、SPARC結合ペプチド−Fc融合タンパク質(図1)を作製することを目的とした。
【0142】
ディスプレイ方法論の一般原理は、リガンド(ペプチド、タンパク質)を、このリガンドをコードする遺伝子に関連付けることである(図2を参照)。これは、ファージディスプレイ技術では、繊維状ファージのコートタンパク質をコードする遺伝子にリガンド遺伝子を融合させることによって行われる。次いで、組換えファージゲノムがEscherichia coliの中に導入され、そこでハイブリッドタンパク質が全ての他のファージタンパク質と共に発現する。その後、融合タンパク質は(リガンド遺伝子を含む)ファージゲノムを含有するファージのコートに組み込まれる。リガンドを提示する分泌されたファージ粒子は固定化された標的上で選別されることができるのに対し、非結合ファージは全て洗浄除去される。溶出工程の後、回収されたファージはE. coliへの感染に用いられ、新たな選別の場のために、また最終的には結合分析を行うために、このファージの増幅が行われる。
【0143】
従って、市販のペプチドファージディスプレイライブラリー(M13における12-merペプチド)を、SPARCに結合するペプチドについてスクリーニングした。標的であるSPARCは、PIが4.6の酸性糖タンパク質である。pH9.6のコーティングバッファーを有する96-ウェルプレート上に固相化することにより、Ph.D.-12ペプチドライブラリーを4回スクリーニングし、ファージディスプレイ技術を用いてペプチド結合体を選別した。具体的には、1回目のスクリーニングにおいて、結合したファージを酸性溶出液で溶出した。その後、標的タンパク質の濃度を減少させ、洗浄バッファー中のTween-20の割合を増加することにより、スクリーニングの厳密性を徐々に高めた。同時に、過剰量の標的を用いて競合的溶出を採用して、スクリーニングの特異性を改善した。最終的に、4回のスクリーニングの後、選別されたクローンのssDNAをDNAシークエンシングに供した。同時に、ファージELISAを用いて陽性ファージの標的タンパク質への結合を確認した。
【0144】
SPARC結合ペプチドについてのペプチドファージディスプレイライブラリーのスクリーニングの結果は、図3及び4に示される。SPARCの結合は、同一配列のペプチドをコードする単離されたファージクローンの数によって(図3)、或いはSPARCで被覆したマイクロタータープレートのウェルへのペプチド発現ファージの結合により測定されたSPARC結合の結合活性によって(図4)、定量することができる。ファージディスプレイにより同定された二つのペプチド、PD15(配列番号:1)及びPD21(配列番号:2)をさらに特徴付けた。
【0145】
その後、PD15及びPD21を発現ベクターpFUSE-hIgl-Fc2にクローニングし(図5)、PD15-Fc及びPD21-Fc融合タンパク質をコードするプラスミドを作製した(図6)。これらの融合タンパク質を発現させ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により示されるように精製に成功した(図7)。
【0146】
PD15及びPD21のタンパク質マイクロアレイ分析(図8を参照)では、分析したアレイ(Invitrogen、ProtoArray v.3)上の5,000のタンパク質において、非SPARCタンパク質との交差反応性はごくわずかしか見られなかった。
【0147】
濃度依存的な結合を調べるELISAアッセイでは、SPARCに対するPD15及びPD21の結合は抗SPARC抗体よりもわずかに弱いだけであることが示された(図9)。PD15のSPARC結合におけるKdは4.1±0.6×10-8Mであり、PD21については1.0±0.7×10-7Mである。(試験した抗SPARC抗体のSPARC結合におけるKdは6.2±3.4×10-9Mであり、言い換えれば、該抗体はわずかにより強くSPARCに結合するに過ぎない。)
【0148】
図10及び11は、(抗SPARC抗体を用いた免疫組織化学的(IHC)染色により示されるような)SPARCの共局在と、ヒト脳腫瘍の切片における(IHC染色のためにエピトープタグ化されている)PD15及びPD21の結合とを示す。図10に示されるように、stab-Fcは腫瘍組織に結合しなかったことから、文献報告にあるスタビリン1のSPARCへの結合は確認されなかったのに対し、PD15及びPD21は結合した(図11)。
【0149】
ファージディスプレイにより単離されたSPARC結合ペプチドの配列相同性解析では、単離された多くのSPARC結合ペプチドの配列は、図12に示されるようにエラスチンの一領域と配列同一性を有することが示された。
【0150】
従って、本実施例は、ファージディスプレイによってSPARC結合ペプチドが同定できることと、その同定されたペプチドをさらに特徴付ける方法とを示す。調べた二つのクローンPD15及びPD21のうち、ELISA及びIHC実験ではPD15の方がPD21よりもSPARCに対して高い親和性を示した。
実施例2
【0151】
PD15-Fc融合タンパク質及びPD21-Fc融合タンパク質について、ヒトPC3前立腺癌異種移植モデルマウスにおける抗腫瘍活性の分析を行った。PD15-Fc融合タンパク質及びPD21-Fc融合タンパク質はいずれも、統計学的に有意な腫瘍成長阻害を示した(図13)。PD15は、PC3異種移植片に対してPD21よりも良好な抗腫瘍活性を示した。ヒトHT29結腸異種移植片モデルマウスでは、PD21の方がPD15よりも良好な抗腫瘍活性を示し、アブラキサンとほぼ同等の活性であった(図14)。
実施例3
【0152】
本実施例は、SPARC結合ペプチドの潜在的な免疫原性(immungenicity)を示す。
【0153】
ProPredは、抗原タンパク質配列中のMHCクラスII結合領域を予測するグラフィカルなウェブツールである(Singh et al.: ProPred: prediction of HLA-DR binding sites. Bioinformatics 2001, 17(12): 1236-7を参照)。サーバーは、文献から推測されるアミノ酸/位置の係数表を採用する、マトリックスに基づく予測アルゴリズムを実行する。予測された結合部分は、グラフィカルインターフェイスではピークとして、或いはHTMLインターフェイスでは色付けされた残基として可視化され得る。このサーバーは、いくつかのHLA-DR対立遺伝子に結合することのできる乱雑な結合領域の位置を突き止めるのに有用なツールとなり得る。
【0154】
PD21及びPD15を含む、ファージディスプレイで同定されたSPARC結合ペプチドのProPred解析の結果より、わずかなHLA-DR分子のみがこれらのペプチドを提示するであろうことが示され、該ペプチドは免疫原性がさほど高くないことが示唆される。
【0155】
本明細書において開示されたペプチドは、例えば配列番号:1〜112又は117を挙げることができ、高い親和性を示しているが、いずれも免疫原生が低いか、或いは免疫原生を有さないことが同様に分析され得る。
実施例4
【0156】
抗体フラグメントはまた、異なる形式を用いてファージ上に提示することもできる。単鎖可変領域フラグメント(scFv)は、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域が融合したものであり、短い(通常セリン、グリシン)リンカーと共に結合されている。このキメラ分子は、定常領域を取り除き、リンカーペプチドを導入しているにもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を維持している。抗体ファージディスプレイの最も一般的な形式としてはscFvライブラリーの利用が挙げられる。従って、抗体バリアントの大きなコレクションを、抗原結合クローンの存在についてスクリーニングすることができる。
【0157】
全体的な戦略は、まず、抗原としてSPARCを用いたELISAによりヒト抗体ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることであった。
【0158】
最初は、HuScL-3(登録商標)を4回スクリーニングし(酸性溶出で3回、競合溶出で1回)、ファージELISAにより17個の陽性クローンを選別した。これらのクローンのDNAシークエンシングから二つの特有の抗体配列が明らかにされ、第1の配列は15個の陽性クローンにより共有され、第2のものは残り2個の陽性クローンで共有された。その後、二つの特有の抗体の結合特異性を可溶性scFv ELISAにより確認した。
【0159】
次に、HuScL-2(登録商標)を3回スクリーニングした(トリプシン消化溶出で2回、競合溶出で1回)。最終的に、ファージELISAにより30個の陽性クローンを選別した。シークエンシングの結果によれば、29個のクローンが一つの抗体配列を共有し、残り1個のクローンが別の特有の抗体をコードしていた。その後、これら二つの抗体の結合特異性を、可溶性scFv ELISAにより同様に確認した。
【0160】
SPARCに対する4個の特有のscFvとして、ScFv3-1、ScFv3-2、ScFv2-1、及びScFv2-2(配列番号:113〜116)を同定した。
【0161】
刊行物、特許出願、及び特許を含む本明細書中に引用された全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、またその全体が本明細書中で説明されたのと同程度まで、参照により組み込まれる。
【0162】
本発明(特に、添付の特許請求の範囲に関して)を記載することに関して、用語「a」及び「an」及び「the」並びに類似の指示対象の使用は、本明細書中に異なって示されるか、文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方をカバーすると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、異なって示されない限り、オープンエンドの用語(即ち、「含むがそれに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で異なって示されない限り、この範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として機能することを意図するに過ぎず、各個別の値は、それが本明細書中に個々に列挙されるのかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に異なって示されるか、さもなければ文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例または例示的語句(例えば、「等」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図するものであり、異なって特許請求されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中の語句はいずれも、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須なものとして示していると解釈すべきではない。
【0163】
本発明者らが知る発明を実施するための最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書中に記載している。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上記の記載を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がこのようなバリエーションを必要に応じて使用することを予測しており、また本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法により許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変物及び均等物を包含する。さらに、全ての可能なそれらのバリエーションにおける上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に異なって示されるか、さもなければ文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において治療又は診断剤を疾患部位に送達するための組成物であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合ポリペプチド(polyeptide)(SBP)に結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有し、該SBPが配列番号:1〜112及び117を含む、組成物。
【請求項2】
SBPが、
a.配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸、又は
b.配列番号:1〜112の二以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
SBPが、配列番号:1〜5の一以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
SBPが二以上の別々のポリペプチド上にあり、且つSBPが、
a.配列番号:1〜5のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸、又は
b.配列番号:1〜5の二以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸、
からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
SBPが、配列番号:117由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPがそれぞれ、配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPが、配列番号:1〜5又は117の一以上からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
治療又は診断剤が、プラチナ化合物、葉酸代謝拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、抗血管新生剤、抗生物質、チロシンキナーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、ホルモン、ペプチド、抗体、抗体フラグメント及びこれらの組み合わせからなる群より選択される治療剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
治療剤が機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
機能的抗体Fcドメインが配列番号:118を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
治療剤が、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン系抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキセート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランス白金、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン類、5−フルオロウラシル、抗血管内皮細胞増殖因子化合物(「抗VEGF」)、抗上皮成長因子受容体化合物(「抗EGFR」)、ゲニステイン、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL-2、非Fcドメイン抗体フラグメント、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
治療又は診断剤が、放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤からなる群より選択される診断剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
さらにアルブミン結合ペプチド(ABP)を含有し、該ABPが、配列番号:119若しくは配列番号:120、又は配列番号:119及び配列番号:120の両方を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
SBP及びABPが、同一のポリペプチド中にある、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
SBPとABPとが、異なるポリペプチド中にある、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
哺乳動物において治療又は診断剤を疾患部位に送達するための方法であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合ペプチドに結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有し、該SBPが配列番号:1〜117のいずれか一つを含む、方法。
【請求項17】
SBPが、
a.配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸、又は
b.配列番号:1〜112の二以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPが、配列番号:1〜5及び117の一以上からなる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
それぞれが少なくとも一つのSBPからなる、二以上の別々のポリペプチドが存在し、該SBPが配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
治療又は診断剤が、プラチナ化合物、葉酸代謝拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、抗血管新生薬、抗生物質、チロシンキナーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、ホルモン、ペプチド、抗体、抗体フラグメント及びこれらの組み合わせからなる群より選択される治療剤である、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
治療剤が機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
治療剤が、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシス誘発、細胞死誘発、及びオプソニン作用(opsinization)の一以上を媒介する抗体フラグメントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗体フラグメントが配列番号:118を含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
治療剤が、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン系抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキセート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランス白金、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン類、5−フルオロウラシル、抗血管内皮細胞増殖因子化合物(「抗VEGF」)、抗上皮成長因子受容体化合物(「抗EGFR」)、ゲニステイン、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL-2、非Fcドメイン抗体フラグメント、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
治療又は診断剤が、放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤からなる群より選択される診断剤である、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
配列番号:119若しくは配列番号:120、又は配列番号:119及び配列番号:120の両方を含むABPをさらに含有する、請求項16〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
SBP及びABPが、同一のポリペプチド中にある、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
SBPとABPとが、異なるポリペプチド中にある、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
疾患部位が腫瘍である、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
疾患部位が、細胞増殖の異常状態、組織再構築、過形成、軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等を含む任意の身体組織における、肥大した創傷治癒の部位である、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
疾患部位が、糖尿病又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管又は人工血管移植組織又は血管内装置等における再狭窄、白内障及び黄斑変性症、骨粗鬆症、骨疾患、アテローム性動脈硬化及び石灰化が高頻度に観察される他の疾患の部位である、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物がヒト患者である、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物において治療又は診断剤を疾患部位に送達するための組成物であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合ポリペプチド(polyeptide)(SBP)に結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有し、該SBPが配列番号:1〜112及び117を含む、組成物。
【請求項2】
SBPが、
a.配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸、又は
b.配列番号:1〜112の二以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
SBPが、配列番号:1〜5の一以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
SBPが二以上の別々のポリペプチド上にあり、且つSBPが、
a.配列番号:1〜5のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸、又は
b.配列番号:1〜5の二以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸、
からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
SBPが、配列番号:117由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPがそれぞれ、配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPが、配列番号:1〜5又は117の一以上からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
治療又は診断剤が、プラチナ化合物、葉酸代謝拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、抗血管新生剤、抗生物質、チロシンキナーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、ホルモン、ペプチド、抗体、抗体フラグメント及びこれらの組み合わせからなる群より選択される治療剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
治療剤が機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
機能的抗体Fcドメインが配列番号:118を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
治療剤が、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン系抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキセート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランス白金、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン類、5−フルオロウラシル、抗血管内皮細胞増殖因子化合物(「抗VEGF」)、抗上皮成長因子受容体化合物(「抗EGFR」)、ゲニステイン、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL-2、非Fcドメイン抗体フラグメント、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
治療又は診断剤が、放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤からなる群より選択される診断剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
さらにアルブミン結合ペプチド(ABP)を含有し、該ABPが、配列番号:119若しくは配列番号:120、又は配列番号:119及び配列番号:120の両方を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
SBP及びABPが、同一のポリペプチド中にある、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
SBPとABPとが、異なるポリペプチド中にある、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
哺乳動物において治療又は診断剤を疾患部位に送達するための方法であって、治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含有し、該医薬組成物が、SPARC結合ペプチドに結合した治療又は診断剤と薬学的に許容される担体とを含有し、該SBPが配列番号:1〜117のいずれか一つを含む、方法。
【請求項17】
SBPが、
a.配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸、又は
b.配列番号:1〜112の二以上由来の少なくとも10連続するアミノ酸、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
二以上の別々のSBPが存在し、個々のSBPが、配列番号:1〜5及び117の一以上からなる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
それぞれが少なくとも一つのSBPからなる、二以上の別々のポリペプチドが存在し、該SBPが配列番号:1〜112のいずれか一つ由来の少なくとも10連続するアミノ酸を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
治療又は診断剤が、プラチナ化合物、葉酸代謝拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、抗血管新生薬、抗生物質、チロシンキナーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、ホルモン、ペプチド、抗体、抗体フラグメント及びこれらの組み合わせからなる群より選択される治療剤である、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
治療剤が機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
治療剤が、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシス誘発、細胞死誘発、及びオプソニン作用(opsinization)の一以上を媒介する抗体フラグメントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗体フラグメントが配列番号:118を含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
治療剤が、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン系抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキセート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランス白金、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン類、5−フルオロウラシル、抗血管内皮細胞増殖因子化合物(「抗VEGF」)、抗上皮成長因子受容体化合物(「抗EGFR」)、ゲニステイン、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL-2、非Fcドメイン抗体フラグメント、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
治療又は診断剤が、放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤からなる群より選択される診断剤である、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
配列番号:119若しくは配列番号:120、又は配列番号:119及び配列番号:120の両方を含むABPをさらに含有する、請求項16〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
SBP及びABPが、同一のポリペプチド中にある、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
SBPとABPとが、異なるポリペプチド中にある、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
疾患部位が腫瘍である、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
疾患部位が、細胞増殖の異常状態、組織再構築、過形成、軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等を含む任意の身体組織における、肥大した創傷治癒の部位である、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
疾患部位が、糖尿病又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管又は人工血管移植組織又は血管内装置等における再狭窄、白内障及び黄斑変性症、骨粗鬆症、骨疾患、アテローム性動脈硬化及び石灰化が高頻度に観察される他の疾患の部位である、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物がヒト患者である、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−511030(P2012−511030A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539774(P2011−539774)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/066986
【国際公開番号】WO2010/065954
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/066986
【国際公開番号】WO2010/065954
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】
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