説明

T細胞亜集団に特異的なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の組成物および使用方法

【課題】T細胞亜集団に特異的なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の組成物およびその使用方法を提供する。
【解決手段】エキソビボまたはインビボにおけるNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+細胞の増殖、ならびにこれらの活性の調節のための、組成物および方法。これらの組成物および方法は診断および治療に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府資金による研究に関する記述
本発明は、国立衛生研究所の助成金番号AI42955による資金提供を受けた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫系を調節することは、自己免疫疾患、感染症、アレルギー、喘息、炎症性症状、自然流産、妊娠、移植片対宿主病、および癌を含むがこれらに限定されないさまざまな疾患および障害の治療に望ましい。
【0003】
T細胞は、感染細胞または癌性細胞の認識および破壊といった複数の細胞性免疫反応に関与するリンパ球である。サプレッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、およびヘルパーT細胞などのT細胞サブセットは、異なる免疫機能に関与する。サプレッサーT細胞は、感染解消後に免疫応答をオフとする際にはたらく。細胞傷害性T細胞、または「ナチュラルキラー」T細胞は、感染細胞または癌性細胞を破壊する。ヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞、および/または抗体産生B細胞の活性を調節するサイトカインを産生する。
【0004】
ヘルパーT細胞の一つのサブセットであるTh1細胞は、細胞傷害性T細胞活性などの細胞性反応を促進し、また可溶性抗体が関与するTh2 ヘルパーT細胞活性および液性免疫の両方を抑制するインターロイキン-1 (IL-1)、IL-2、ガンマインターフェロン(IFN-γ)、およびIL-2を分泌する。抗原提示細胞を死滅させる能力、およびサイトカインが関与するエフェクター活性をもつTh1細胞は激しい遅延型過敏反応に関連している。ヘルパーT細胞の別のサブセットであるTh2細胞は、細胞性反応を抑制して液性反応を促進すると考えられている。Th2細胞は、B細胞の発生および抗体産生を活性化するIL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、およびIL-13を分泌する。T細胞は、TGF-βまたはIL-10サイトカインの分泌がかかわる可能性がある持続的な免疫応答の抑制などの免疫偏向反応に関与する場合もある(Sonodaら、J. Ex. Med. 190:1215〜1255、1999(非特許文献1);Streileinら、Hum. Immunol. 52:138〜143、1997(非特許文献2);Hongら、J. Ex. Med. 190、1197〜1200、1999(非特許文献3);Streileinら、J. Immunol. 158:3557〜3560、1997(非特許文献4)).
【0005】
抗原提示細胞に結合した特定の抗原を認識するために、大半のT細胞は、高度に特異的なT細胞受容体(TCR)を細胞表面に発現している。大半の一般的なT細胞受容体の鎖はαおよびβと呼ばれる。少数のT細胞亜集団に見出される第2のT細胞受容体はγ鎖およびδ鎖からなる。T細胞受容体のα鎖、β鎖、γ鎖、およびδ鎖の遺伝子群の構成は抗体遺伝子の構成に似ている。つまりV領域、D領域、およびJ領域のライブラリーが存在し、各ライブラリーの個々の領域が連結されて遺伝子全体を形成する。
【0006】
TCR-α鎖のさまざまな配列をもつ大半のT細胞亜集団とは対照的に、インバリアントT細胞は、ヒトのVβ11またはマウスのVβ8と優先的に対をなす、高度に保存されたインバリアントなTCR-α鎖、Vα24-JαQをヒトで、またVα14-Jα281をマウスで有する。この細胞はCD4+CD8-またはCD4-CD8-である。インバリアントTCRの存在によって、インバリアントT細胞は、CD1ファミリーに属すると呼ばれる非多型性MHCクラスI様タンパク質によって提示された、内因性または病原体に由来する脂質抗原を認識できると考えられている。ヒトには4つのCD1タンパク質(CD1a、CD1b、CD1c、およびCD1d)があるが、マウスにはヒトCD1dに対する相同性が高い一つの重複したCD1d遺伝子しかない。ヒトのCD1dは胸腺細胞で高レベルで発現しており、B細胞および単球で低レベルで発現しており、またリンパ系および骨髄系外の一部の細胞でも発現している。
【0007】
多くのインバリアントT細胞は、通常は大半がヒトのCD161 (NKR-P1A)、およびマウスの細胞表面C型レクチン、NKR-P1C (NK1)を含むナチュラルキラー(NK)細胞にみられる数種の細胞表面タンパク質の発現によって区別される。本明細書では「インバリアントNK T細胞」と呼ぶ上記T細胞亜集団は、胸腺における成熟T細胞の大部分、マウスの肝臓における主要T細胞亜集団を、また一部のマウス系列の脾臓T細胞の最大5%を占める。
【0008】
マウスおよびヒトのインバリアントT細胞は、大量の免疫調節性サイトカインIL-4 (Th2エフェクター)およびIFN-γ(Th1エフェクター)を、抗CD3抗体またはCD1dに反応してインビボで産生する。これらのサイトカインにより、細胞はTh2応答およびTh1応答の両方に関与することができる。インバリアントT細胞が、一部の自己免疫疾患で防御的にはたらくと考えられるTh2応答の増強に果たす役割は、1型糖尿病を含むヒトおよびマウスの自己免疫疾患モデルにおける数にみられるインバリアントT細胞の存在の欠損によってさらに支持されている。したがって、インバリアントT細胞の誘導によってTh1応答とTh2応答のバランスが変わることは、自己免疫疾患の発症に影響する可能性がある。
【0009】
インバリアントT細胞は、速やかなTh1免疫応答および抗腫瘍反応も促進することができる。マウスの肝臓におけるT細胞の大部分を占めるインバリアントT細胞はIL-12によって刺激されて、活性のある細胞傷害性T細胞となって、腫瘍モデルにおける肝転移に防御的に作用する場合がある。このような結論は、インバリアントVα14-Jα281 TCRを発現しないJα281ノックアウトマウスの作製によって遺伝的に確認されている。このノックアウトマウスでは、インバリアントT細胞の数が著しく減少しており、IL-12による腫瘍拒絶に関与不能であった。また他の研究では、IL-12の投与が、インバリアントT細胞を欠くCD1dノックアウトマウスの脾臓および肝臓における初期IFN-γ応答を誘導しなかったことが報告されている。またヒト患者で得られたデータから、進行癌患者ではインバリアントNK T細胞がほとんど存在せず、Th1様の応答が低下することが判明している。活性化されたインバリアントT細胞の抗腫瘍反応には、CD1dに特異的な細胞傷害性およびNK/LAK細胞様毒性が部分的に関与すると考えられる。サイトカイン産生、または抗原提示細胞(APC)との相互作用を介すると考えられるインバリアントT細胞の他の調節性機能も、抗腫瘍性の免疫応答に重要な役割を担っている可能性がある。
【0010】
インバリアントT細胞は自然流産の原因にも影響する可能性がある。インバリアントT細胞に対するリガンドを投与してマウスの脱落膜のインバリアントT細胞を刺激すると妊娠マウスの流産が誘導された。このような流産の誘導には、インバリアントT細胞によるパーフォリン依存性の死滅およびIFN-γおよび腫瘍壊死因子-αの産生が必要であった。
【0011】
インバリアントT細胞が主要なCD1d反応性亜集団であるヒト末梢血とは対照的に、ヒトおよびマウスの骨髄、ならびにヒトの肝臓には大量のIL-4およびIFN-γも産生する、さまざまなTCRを用いるCD1d反応性の非インバリアントT細胞が大部分を占めるT細胞集団が存在する。このようなCD1d反応性の非インバリアントT細胞はNK T細胞または非NK T細胞であり、これらはCD1d反応性のインバリアントT細胞と同様に機能する。骨髄におけるCD1d反応性の非インバリアントT細胞は移植片対宿主病の抑制に影響すると考えられており、また両集団は移植片対白血病反応を促進すると考えられている。肝臓で上記T細胞はC型肝炎感染などの感染症に対して防御的にはたらく可能性があるが、そのTh1応答による損傷を引き起す可能性もある。また本発明者らは、CD1d反応性NK T細胞が、免疫的に隔絶された部位の一つである前眼房における抗原に対する免疫寛容に極めて重要なことを見出した(Sonodaら、前掲(非特許文献1))。このような機構は、末梢性免疫寛容の維持にも重要であると考えられる。
【0012】
プラスモジウム(Plasmodium)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、またはリーシュマニア(Leishmania)などの寄生虫に由来するグリコシル-ホスファチジルイノシトールは、マウスのCD1d反応性インバリアントVα14 NK T細胞を刺激することが最近報告された。また抗腫瘍活性のスクリーニングの過程で海綿から単離されたα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)脂質はCD1d提示抗原の1つである。α-GalCerは、抗Vα24 抗体を用いた精製によってT細胞用が最初に濃縮される臍帯試料または末梢血試料に由来するヒトのCD1d反応性インバリアントT細胞の増殖させるために使用可能な薬剤の一例である。濃縮後のVα24+細胞を、α-GalCerおよび精製抗原提示細胞(APC)の存在下で共に培養する。しかし臨床状況によっては、2段階の複雑なプロトコル、または条件によっては適切に作用しない可能性のある抗原提示細胞の使用を必要としないインバリアントT細胞を増殖させる改善された方法を用いることが望ましいと考えられる。
【0013】
自己免疫疾患、感染症、アレルギー、喘息、炎症性症状、自然流産、妊娠、移植片対宿主病、および癌などの疾患および障害を予防および治療するために、哺乳類を対象にT細胞の集団、より具体的にはT細胞の特定の亜集団を優先的にモニタリングして変化させることが求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Sonodaら、J. Ex. Med. 190:1215〜1255、1999
【非特許文献2】Streileinら、Hum. Immunol. 52:138〜143、1997
【非特許文献3】Hongら、J. Ex. Med. 190、1197〜1200、1999
【非特許文献4】Streileinら、J. Immunol. 158:3557〜3560、1997
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、特定のT細胞サブグループの選択的な同定および増殖、または活性化を可能とする抗体を作製する方法を発見して実用化した。特に本発明は、特定のTCR配列を有するT細胞を認識して増殖させる抗体を特徴とする。このような抗体は、癌および自己免疫疾患を含むさまざまな疾患の診断、予防、安定化、および治療に使用することができる。
【0016】
したがって一つの局面では、本発明は、T細胞抗原受容体(TCR)に優先的に結合する精製抗体を特徴とする。このような抗体は、TCRのCDR3ループまたはα-β接合に優先的に結合するか、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、またはその増殖もしくは活性化を調節する(例えば上昇もしくは低下させる)。関連する局面では、本発明は、ともに優先的にT細胞抗原受容体(TCR)に結合する精製抗体の組み合わせ(例えば2つ、3つ、4つ、または5つの抗体の混合物)を特徴とする。組み合わせることで、これらの抗体はTCRのCDR3ループまたはα-β接合に優先的に結合するか、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団の増殖または活性化を優先的に調節する。抗体の望ましい組み合わせでは以下の1組の抗体を混合する:(i)抗Vα24抗体と抗CD161抗体;(ii)抗Vα24抗体と抗CD94抗体;(iii)抗Vβ11抗体と抗CD161抗体;または(iv)抗Vβ11抗体と抗CD94抗体。望ましくは、これらの抗体の組み合わせは、CD1d反応性T細胞に優先的に結合するか、または優先的にその増殖もしくは活性化を調節する。
【0017】
望ましい態様では、抗体または抗体の組み合わせは、インバリアントT細胞に優先的に結合する。別の望ましい態様では、抗体または抗体の組み合わせと結合しているNK T細胞は、CD1d反応性T細胞、インバリアントT細胞、CD1d反応性非インバリアントT細胞、またはJαQ+ T細胞である。さらに別の望ましい態様では、抗体または抗体の組み合わせは、TCRの抗原結合部位に優先的に結合する。望ましくは、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞はインバリアントT細胞である。望ましくは、TCRのCDR3ループ、α-β接合、または抗原結合部位は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞上で発現されている。さらに別の望ましい態様では、抗体もしくは抗体の組み合わせは、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞上に発現されたTCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合し、また抗体もしくは抗体の組み合わせは、結合しているT細胞の増殖もしくは活性化を優先的に調節する。望ましくは、抗体または抗体の組み合わせに結合するTCRを発現するT細胞は、抗体の存在下で増殖される。別の望ましい態様では、T細胞上に発現されたTCRのCDR3ループ、α-β接合、または抗原結合部位の結合は、T細胞、CDR3ループ、α-β接合、もしくは抗原結合部位を定量するのに十分な量である。望ましい態様では、二次抗体を用いて、本発明の抗体と結合する異なるT細胞亜集団を区別する。一つの態様では、このような抗体は二機能性の抗体である。一つの態様では、このような抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。望ましい態様では、このような抗体は毒素、治療的に活性のある化合物、酵素、サイトカイン、放射標識、蛍光標識、磁気標識、または親和性タグに共有結合している。望ましい抗体には、マウス以外の哺乳類(ヒトなど)にみられる定常領域がある。望ましくは、このような抗体はヒト化されている。
【0018】
関連する局面では、本発明は、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか、あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、もしくはその増殖もしくは活性化を調節する抗体の断片または誘導体を提供する。望ましい断片には、ScFv、Fab、およびF(ab')2断片などがある。
【0019】
別の局面では、本発明は、(a)本発明の抗体もしくは同抗体の断片、および(b)TCRを発現するT細胞に結合する二次抗体もしくは抗体断片、または本発明の抗体または断片に結合するNK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞に結合する二次抗体もしくは抗体断片を含む、二機能性の抗体を提供する。望ましくは、このような二次抗体も本発明の抗体である。別の態様では、このような二次抗体は、抗CD3抗体、抗CD161抗体、抗CD28抗体、または抗CD94抗体である。関連する局面では、本発明はTCRのCDR3ループ、もしくはα-β接合に優先的に結合する二機能性抗体、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、またはその増殖もしくは活性化を調節する二機能性抗体を特徴とする。上記局面のさまざまな態様において、このような抗体は、二機能性の抗CD3抗体および抗CD161抗体、抗Vα24抗体および抗CD161抗体;抗Vα24抗体および抗CD94抗体;抗Vβ11抗体および抗CD161抗体;抗Vβ11抗体および抗CD94抗体;抗CD3抗体および抗CD94抗体、抗CD3抗体および抗CD28抗体;または抗Vα24抗体および抗Vβ11抗体である。特定の態様では、二機能性抗体はCD1d反応性T細胞を優先的に結合するか、該細胞を増殖させるか、または活性化する。
【0020】
さらに別の局面では、本発明は、本発明の抗体を産生する安定なハイブリドーマを提供する。
【0021】
本発明の抗体は、T細胞亜集団の精製に使用することもできる。したがって本発明は、精製されたT細胞亜集団も特徴とする。亜集団に含まれるT細胞は、本発明の抗体または抗体の組み合わせに特異的に結合する。望ましくは、このような抗体または抗体の組み合わせは、T細胞亜集団上に発現したTCRのCDR3ループ、α-β接合、または抗原結合部位に特異的に結合する。望ましい態様では、亜集団に含まれるT細胞はNK T細胞である。望ましいNK T細胞にはCD1d反応性T細胞、インバリアントT細胞、CD1d反応性非インバリアントT細胞、およびJαQ+ T細胞などがある。別の望ましい態様では、このようなT細胞はCD1d反応性T細胞である。さらに別の望ましい態様では、このようなT細胞はJαQ+ T細胞である。望ましくは、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞はインバリアントT細胞である。
【0022】
本発明はまた、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する本発明の抗体、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する、本発明の抗体を作製する方法も提供する。このような方法の一つには、(a)環状ペプチドと担体を結合する段階、(b)結合しているペプチドで動物を免疫化する段階、および(c)TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する抗体、あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を単離する段階が含まれる。望ましくは、段階(b)は繰り返し行う。別の望ましい態様では、動物はCD1またはインバリアントT細胞を欠く哺乳類もしくは鳥類である。
【0023】
関連する局面では、本発明は、本発明の抗体を作製する別の方法を提供する。この方法は、(a)動物(例えば哺乳類もしくは鳥類)をNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞で免疫化する段階、および(b)TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する抗体、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を単離する段階が含まれる。望ましくは段階(a)は繰り返し行う。一つの望ましい態様では、インバリアントT細胞は、CD1またはインバリアントT細胞を欠く動物に投与される。
【0024】
別の関連する局面では、本発明は、本発明の抗体を作製する方法を特徴とする。この方法は、(a)環状ペプチドと担体を結合する段階、(b)結合しているペプチドで動物(例えば哺乳類もしくは鳥類)を免疫化する段階、(c)NK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞で動物を免疫化する段階、および(d)TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する抗体、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を単離する段階を含む。望ましくは段階(b)または(c)は繰り返し行う。一つの望ましい態様では、インバリアントT細胞は、CD1またはインバリアントT細胞を欠く動物に投与される。
【0025】
さらに別の関連する局面では、本発明は、(a)NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞で動物(例えば哺乳類もしくは鳥類)を免疫化する段階、(b)環状ペプチドと担体を結合する段階、および(c)結合させたペプチドで動物を免疫化する段階、ならびに(d)TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する抗体、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を単離する段階による、本発明の抗体を作製する方法を提供する。望ましくは段階(a)または段階(c)は繰り返し行う。一つの望ましい態様では、インバリアントT細胞は、CD1またはインバリアントT細胞を欠く動物に投与される。
【0026】
抗体を作製する方法の望ましい態様では、動物(例えば哺乳類もしくは鳥類)は、CD1またはインバリアントT細胞を欠く動物、CD1dノックアウトマウス、インバリアントT細胞が除去された動物、TCR-α鎖の一部を欠く動物、またはTCR-β鎖の一部を欠く動物である。他の望ましい態様では、このような動物は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、JαQ+ T細胞、インバリアントT細胞、またはインバリアントTCRに寛容である。別の望ましい態様では、このような動物は、Vα14分子またはJα281分子の全体または一部を欠く。NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の量が低下したり、または欠いている別の動物が使用されることも意図される。
【0027】
本発明の抗体、二機能性抗体、抗体の断片、および抗体の誘導体は、診断、画像化、および治療上のさまざまな応用性を有する。
【0028】
このような一つの局面では、本発明はNK TCRの量、または試料に含まれるNK T細胞の量を、本発明の抗体もしくは抗体の組み合わせを試料に接触させることで測定する方法を提供する。望ましくは抗体もしくは抗体の組み合わせは、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する。別の態様では、このような抗体は、同じT細胞上に発現したCD3およびCD161の両方に結合する二機能性抗体である。
【0029】
関連する局面では、本発明は、CD1d反応性TCRの量、または試料に含まれるCD1d反応性T細胞の量を測定する方法を特徴とする。この方法には、本発明の抗体または抗体の組み合わせを試料に接触させる段階が含まれる。望ましくは抗体または抗体の組み合わせは、TCRのCDR3ループ、α-β接合、または抗原結合部位に優先的に結合する。さまざまな態様では、このような抗体は二機能性の抗Vα24抗体および抗CD161抗体;抗Vα24抗体および抗CD94抗体;抗Vβ11抗体および抗CD161抗体;抗Vβ11抗体および抗CD94抗体;抗CD3抗体および抗CD94抗体、抗CD3抗体および抗CD28抗体;または抗Vα24抗体および抗Vβ11抗体である。
【0030】
別の関連する局面では、本発明は、本発明の抗体または抗体の組み合わせを試料に接触させることで、JαQ+ TCRの量、または試料に含まれるJαQ+ T細胞の量を測定する方法を特徴とする。一つの望ましい態様では、このような抗体はTCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する。
【0031】
試料に含まれるNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の量を測定する望ましい方法では、試料は、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、 寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、および癌からなる群より選択される症状に対する治療法を検討する臨床試験に参加していたり、治療を受けている被験者に由来する。望ましくはTCRまたはT細胞の量を基に、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、および癌からなる群より選択される症状の、治療または予防に対する望ましい治療法が決定される。以上の局面の別の望ましい態様では、TCRまたはT細胞の量を基に、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、妊娠、および癌からなる群より選択される症状からの回復または寛解、または同症状に対する任意の治療法の有効性の判断を行う。
【0032】
別の局面では、本発明は、本発明の抗体または抗体の組み合わせを試料に接触させる段階段階を含む、試料に含まれるNK TCRまたはNK T細胞を視覚化する方法を提供する。望ましくは、このような抗体または抗体の組み合わせは、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する。別の態様では、このような抗体は、同じT細胞上に発現するCD3およびCD161の両方に結合する二機能性抗体である。
【0033】
関連する局面では、本発明は、本発明の抗体または抗体の組み合わせを試料に接触させることで、試料に含まれるCD1d反応性TCRまたはCD1d反応性T細胞を視覚化する方法を特徴とする。一つの望ましい態様では、このような抗体または抗体の組み合わせは、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する。望ましくは、このような抗体または抗体の組み合わせは、TCRのCDR3ループ、α-β接合、または抗原結合部位に優先的に結合する。さまざまな態様において、このような抗体は二機能性の抗Vα24抗体および抗CD161抗体;抗Vα24抗体および抗CD94抗体;抗Vβ11抗体および抗CD161抗体;抗Vβ11抗体および抗CD94抗体;抗CD3抗体および抗CD94抗体、抗CD3抗体および抗CD28;または抗Vα24抗体および抗Vβ11抗体である。
【0034】
別の関連する局面では、本発明は、試料に含まれるJαQ+ TCRまたはJαQ+ T細胞を視覚化する方法を提供する。このような方法は、本発明の抗体または抗体の組み合わせを試料に接触させる段階を含む。望ましくは、このような抗体または抗体の組み合わせは、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する。
【0035】
試料に含まれるNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞を測定または視覚化する望ましい態様では、試料はトランスジェニック動物に由来するか、または剖検組織である。望ましくは、このような抗体は、蛍光標識、放射標識、または磁気標識(例えば磁気ビーズ)と共有結合している。
【0036】
別の局面では、本発明は、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、および癌からなる群より選択される症状に関して、危険性のある被験者を同定する方法を提供する。この方法は、(a)被験者に由来する試料に含まれるT細胞亜集団の量を定量する段階、および(b)試料に含まれるT細胞の量を、その症状であると診断された被験者、またはその症状でないと診断された被験者におけるT細胞の量と比較する段階を含む。望ましくは試料に含まれるT細胞の量は、その症状であると診断された被験者、およびその症状でないと診断された被験者の両方におけるT細胞の量と比較される。一つの望ましい態様では、この方法は、試料に含まれる別のT細胞種の量を、対象症状であると診断された被験者、または対象症状でないと診断された被験者における別のT細胞種の量と比較する段階をさらに含む。望ましくは試料に含まれる別のT細胞種の量は、対象症状であると診断された被験者、および対象症状でないと診断された被験者の両方にみられる別のT細胞種の量と比較される。さまざまな態様では、試料に含まれるT細胞亜集団の量は、T細胞のCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する抗体もしくは抗体の組み合わせ、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞に優先的に結合する抗体もしくは抗体の組み合わせなどの、本発明の抗体もしくは抗体の組み合わせを試料に接触させることで決定される。
【0037】
関連する局面では、本発明は、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、および癌からなる群より選択される、症状を有する被験者を診断する方法または病期を決定する(staging)方法を提供する。この方法は、(a)被験者に由来する試料に含まれるT細胞亜集団の量を定量する段階、および(b)試料に含まれるT細胞の量を、症状を有すると診断された被験者、または症状がないと診断された被験者におけるT細胞の量と比較する段階を含む。望ましくは試料に含まれるT細胞の量は、対象症状であると診断された被験者、および対象症状でないと診断された被験者の両方におけるT細胞の量と比較される。一つの望ましい態様では、この方法は、試料に含まれる別のT細胞種の量を、対象症状であると診断された被験者、または対象症状でないと診断された被験者における他のT細胞種の量と比較する段階をさらに含む。望ましくは試料に含まれる別のT細胞種の量は、対象症状であると診断された被験者、および対象症状でないと診断された被験者の両方にみられる別のT細胞種の量と比較される。さまざまな態様では、試料に含まれるT細胞亜集団の量は、T細胞のCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合するか;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞に優先的に結合する、抗体もしくは抗体の組み合わせなどの、本発明の抗体もしくは抗体の組み合わせを試料に接触させることで決定される。
【0038】
上記の任意の局面の望ましい態様では、対象試料は末梢血、リンパ液、腹水、臍帯血、尿、便、骨髄、胆汁、または生検試料である。他の血液試料または組織試料などの、哺乳類に由来する他の任意の試料が使用されうることも意図される。
【0039】
別の局面では、本発明は、動物の自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、または癌を治療または予防する方法を特徴とする。この方法は、本発明の抗体または抗体の組み合わせを動物に投与する段階を含む。望ましくは、このような抗体もしくは抗体の組み合わせは、動物の動脈内、病巣内、経口、筋肉内、静脈内、皮下、または腹腔内に投与される。別の望ましい態様では、このような抗体または抗体の組み合わせは、薬学的に適切な担体とともに投与される。一つの望ましい態様では、サイトカインも動物に投与される。別の望ましい態様では、このような抗体と協調して作用する細胞種または他の薬剤も動物に投与される。
【0040】
さらに別の局面では、本発明は、本発明の抗体または抗体の組み合わせを動物に投与することで、動物におけるT細胞の病因を抑制する方法を提供する。このような抗体または抗体の組み合わせの投与は、抗体もしくは抗体の組み合わせが結合するTCRを発現するT細胞、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞を十分抑制する。望ましくは、このような抗体もしくは抗体の組み合わせは、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞のTCRのCDR3ループ、抗原結合部位、もしくはα-β接合に優先的に結合する。別の望ましい態様では、このような抗体もしくは抗体の組み合わせは、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団の増殖または活性化を抑制する。別の望ましい態様では、このような抗体もしくは抗体の組み合わせは、毒素、放射標識、または細胞に対する宿主の防御過程もしくは異化過程を標的とする分子に共有結合する。望ましくは、このような抗体もしくは抗体の組み合わせは、経口、筋肉内、静脈内、動脈内、病巣内、皮下、腹腔内、またはT細胞を抑制するのに適切な用量を提供する他の任意の経路により、動物に投与される。別の望ましい態様では、このような抗体または抗体の組み合わせは薬学的に適切な担体とともに投与される。一つの望ましい態様では、1つまたは複数のサイトカインも動物に投与される。別の態様では、T細胞の病因は、肝炎感染、ピコルナウイルス感染、ポリオ感染、またはコクサッキー感染などの、ウイルス感染に対するT細胞の反応である。
【0041】
別の局面では、本発明は、本発明の抗体または抗体の組み合わせを、T細胞を有する試料に接触させることで、T細胞亜集団のサイズを増大させる方法を提供する。
【0042】
関連する局面では、本発明は、T細胞亜集団のサイズを増大させる方法を特徴とする。この方法は、(a)T細胞と抗体または抗体の組み合わせとの複合体の形成が可能な条件下で、本発明の抗体または抗体の組み合わせにT細胞を含む試料を接触させる段階、(b)複合体を単離する段階、および(c)接触によりT細胞数を増やすことが可能な条件下で、本発明の抗体もしくは抗体の組み合わせに、複合体中のT細胞、もしくは複合体から回収されたT細胞を接触させる段階を含む。
【0043】
別の局面では、本発明は、T細胞亜集団のサイズを増大させる方法を提供する。この方法は、(a)T細胞と抗体もしくは抗体の組み合わせとの複合体の形成が可能な条件下で、本発明の抗体もしくは抗体の組み合わせに、T細胞を含む試料を接触させる段階、(b)複合体を単離する段階、ならびに(c)接触によりT細胞数を増やすことが可能な条件下で、抗原および抗原提示細胞に、複合体中のT細胞もしくは複合体から回収されたT細胞を接触させる段階を含む。望ましくは、このような抗原は、感染性病原体に由来するα-ガラクトシルセラミド、脂質、もしくはグリコシル-ホスファチジルイノシトール抗原、癌性細胞に由来する抗原、または内因性供給源もしくは非生理学的供給源に由来する、自己脂質もしくは他の任意の抗原である。
【0044】
さらに別の局面では、本発明は、T細胞亜集団のサイズを増大させる方法を特徴とする。この方法は、(a)T細胞を含む試料に由来するT細胞を精製する段階、および(b)接触によりT細胞数を増やすことが可能な条件下で、本発明の抗体または抗体の組み合わせに精製細胞を接触させる段階を含む。
【0045】
T細胞亜集団のサイズを増大させる方法の望ましい態様では、上記の方法は、1つもしくは複数のサイトカイン、または抗体もしくは抗体の組み合わせと協調して作用する、他の細胞を試料または複合体に接触させる段階をさらに含む。
【0046】
別の局面では、本発明は、動物のT細胞亜集団のサイズを増大させる方法を提供する。この方法は、(a)動物のT細胞を含む試料を得る段階、(b)接触によりT細胞数を増やすことが可能な条件下で、本発明の抗体または抗体の組み合わせにT細胞を接触させる段階、および(c)接触させたT細胞を動物に投与する段階を含む。
【0047】
関連する局面では、本発明は、動物のT細胞亜集団のサイズを増大させる方法を提供する。この発明は、(a)動物由来のT細胞を含む試料を得る段階、(b)T細胞を精製する段階、(c)接触によりT細胞数を増やすことが可能な条件下で、本発明の抗体または抗体の組み合わせにT細胞を接触させる段階、および(d)接触させたT細胞を動物に投与する段階を含む。望ましくはT細胞の精製は、本発明の抗体または抗体の組み合わせに試料を接触させる段階を含む。望ましい態様では、T細胞の精製は、抗Vα24抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD56抗体、抗CD161抗体、または抗Vβ11抗体に試料を接触させる段階を含む。T細胞に結合する別の抗体または抗体の組み合わせを用いても、細胞を精製しうることも意図される。
【0048】
さらに別の局面では、本発明は、動物のT細胞亜集団サイズを増大させる方法を提供する。この方法は、(a)動物のT細胞を含む試料を得る段階、(b)T細胞と抗体との複合体が形成可能な条件下で、本発明の抗体または抗体の組み合わせをT細胞に接触させる段階、(c)複合体を単離する段階、および(d)接触によりT細胞数を増やすことが可能な条件下で、本発明の抗体もしくは抗体の組み合わせを、複合体中のT細胞、もしくは複合体から回収されたT細胞に接触させる段階、ならびに(e)接触させたT細胞を動物に投与する段階を含む。
【0049】
さらに別の局面では、本発明は、動物のT細胞亜集団のサイズを増大させる方法を特徴とする。この方法は、(a)動物からT細胞を含む試料を得る段階、(b)T細胞と抗体もしくは抗体の組み合わせとの複合体の形成が可能な条件下で、本発明の抗体もしくは抗体の組み合わせをT細胞に接触させる段階、(c)複合体を単離する段階、および(d)接触によりT細胞数を増やすことが可能な条件下で、複合体中のT細胞、または複合体から回収されたT細胞を、抗原および抗原提示細胞に接触させる段階、ならびに(e)接触させたT細胞を動物に投与する段階を含む。望ましくは、このような抗原は、感染性病原体に由来するα-ガラクトシルセラミド、脂質、もしくはグリコシル-ホスファチジルイノシトール抗原、癌性細胞に由来する抗原、または内因性供給源もしくは非生理学的供給源に由来する自己脂質もしくは他の任意の抗原である。
【0050】
動物のT細胞亜集団のサイズを増大させる方法の望ましい態様では、この方法は、1つまたは複数のサイトカインを動物に投与する段階も含む。望ましくはサイトカインは、接触させたT細胞を動物に投与する前、投与中、または投与の後に動物に投与される。望ましい態様では、このようなサイトカインは、筋肉内、静脈内、動脈内、病巣内、皮下、またはT細胞の活性を調製するのに適切な用量を提供するのに十分な、他の任意の経路で投与される。望ましくは、1つまたは複数のサイトカインをこのような試料またはT細胞に接触させる。望ましくは以上の局面の方法は、動物の自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、または癌の治療または予防に用いられる。
【0051】
別の局面では、本発明は、本発明の抗体または抗体の組み合わせを試料に接触させることによって、T細胞亜集団を試料から精製する方法を提供する。
【0052】
関連する局面では、本発明は、試料からT細胞亜集団を精製する方法を提供する。この方法は、(a)T細胞と抗体との複合体の形成が可能な条件下で、本発明の抗体もしくは抗体の組み合わせを試料に接触させる段階、ならびに(b)複合体を単離する段階を含む。望ましくは、このような試料は、抗Vα24抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD56抗体、抗CD161抗体、または抗Vβ11抗体にも接触させる。別の態様では、このような試料は、関連したT細胞サブセットに結合する他の任意の抗体に接触させる。望ましくは、このような方法は、T細胞を複合体から回収する段階も含む。一つの望ましい態様では、このような抗体は蛍光標識に共有結合され、複合体は複合体の蛍光シグナルを基に単離される。別の望ましい態様では、このような抗体は磁気標識に共有結合され、複合体は複合体の磁性を基に単離される。
【0053】
本発明のあらゆる局面の望ましい態様では、試料、T細胞、もしくは複合体に接触させるサイトカイン、または動物に投与されるサイトカインは、IL-2、IL-4、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IFN-α/β、IFN-γ、およびGM-CSFからなる群より選択される。他の任意のサイトカインまたはサイトカインの組み合わせを使用しうることも意図される。望ましくは、このようなサイトカインは、接触させたT細胞によってTh1/Th2/免疫偏向反応の比を変化させる。望ましくは被験者または動物はヒトである。他の望ましい望ましい動物には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、およびシチメンチョウなどの、実験用または家畜用の哺乳類および鳥類などがある。望ましい態様では、本発明の方法に関連するウイルス感染は、肝炎感染、ピコルナウイルス感染、ポリオ感染、HIV感染、またはコクサッキー感染である。別の態様では、自己免疫疾患は1型糖尿病である。
【0054】
本発明の各方法の望ましい態様では、抗体または抗体の組み合わせはインバリアントT細胞に優先的に結合する。望ましくは、T細胞亜集団、T細胞、またはTCRを発現するT細胞は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞である。望ましいNK T細胞は、CD1d反応性T細胞、インバリアントT細胞、CD1d反応性非インバリアントT細胞、またはJαQ+ T細胞である。望ましいCD1d反応性T細胞またはJαQ+ T細胞は、インバリアントT細胞である。望ましいJαQ+ T細胞は、Vα24+JαQ+ T細胞である。望ましくは抗体もしくは抗体の組み合わせは、T細胞上に発現されたTCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合し、あるいは結合症状のT細胞に結合したり、またはその増殖もしくは活性化を優先的に調節する。望ましくは、このような抗体もしくは抗体の組み合わせは、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より唯一選択される1つのT細胞亜集団のみに優先的に結合するか、またはその増殖もしくは活性化を調節する。望ましくは、本発明の抗体もしくは抗体の組み合わせに結合したTCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、JαQ+ T細胞、またはインバリアントT細胞で発現される。他の望ましい態様では、関心対象のT細胞亜集団(例えばNK T細胞、CD1d反応性T細胞、JαQ+ T細胞、またはインバリアントT細胞)に結合するか、またはその増殖または活性化を調節する抗体は、関心対象のT細胞亜集団のTCRの抗原結合部位に優先的に結合する。本発明の任意の局面に関連するインバリアントT細胞が、CD1d反応性ではない可能性があることも意図される。望ましい標識抗体には、ビオチン、FITC、PE、または磁気ビーズに結合する抗体などがある。
【0055】
本発明の各局面は、本発明の抗体、二機能性抗体、抗体の断片、および抗体の誘導体に等しく適用されると理解される。本発明の各局面は、TCRのCDR3ループまたはα-β接合に優先的に結合する抗体の組み合わせにも等しく適用される。さまざまな態様では、本発明の抗体の組み合わせに含まれる抗体は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞を含む試料に、同時にまたは連続的に接触させる。別の態様では、本発明の抗体の組み合わせに含まれる抗体は、疾患または症状を治療または予防するために、動物に同時にまたは連続的に投与される。
【0056】
本発明の各局面は、任意の抗原感作に応じて、動物(例えばヒト、他の哺乳類、および鳥類)で生じる、任意の抗原特異的な、オリゴクローナン的に(oligoclonally)増殖したT細胞亜集団にも適用される。このような抗原特異的なオリゴクローナン的に増殖したT細胞亜集団は、複数の個体に含まれる抗原の免疫優性な成分に反応して、オリゴクローナン的に増殖したT細胞を含む。
【0057】
関心対象のT細胞に対する抗原の提示が、抗原提示細胞(APC)を必要としないことも重要である。例えば可溶性または固定化された状態の抗原提示分子を用いて、APCの非存在下でT細胞の活性化または増殖が可能な条件下で、抗原をT細胞、または関心対象のT細胞を含む試料に提示することができる。
【0058】
「CDR3ループ」とは、TCR-α鎖のVセグメントとJセグメント間における再編成により、またはTCR-β鎖のVセグメント、Dセグメント、およびJセグメント間における再編成により生じる、接合のアミノ酸を意味する。CDR3ループの同定は、Vセグメントの末端に保存されたシステインを配置することで単純化することができる。このシステインに続く最初のアミノ酸が、CDR3ループの最初の残基である。
【0059】
CDR3ループの配列は、関心対象のTCRのアミノ酸配列と、他のTCRの一つまたは複数の配列との配列アライメントを基に、容易に同定することができる。例えば多くのT細胞受容体のアミノ酸配列のアライメントを含むカバト(Kabat)表を用いることで、関心対象のTCR-α鎖またはTCR-β鎖に含まれるCDR3ループを同定することができる(JohnsonおよびWu、Nuc. Acid. Res. 29 (1):205〜206、2001;http://immuno.bme.nwu.edu)。CDR3ループはまた、CDR3ループがX線結晶構造を基に同定された、1つまたは複数のTCRとの配列アライメントを基に同定することもできる(Reinherzら、Science 286 (5446):1913〜1921、1999)。またCDR3ループは、関心対象のTCR鎖の3次元構造を決定することで同定することができる。
【0060】
「TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する抗体」は、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、もしくはα-β接合を認識して結合する抗体、またはT細胞上に発現されたTCRのCDR3ループ、抗原結合部位、もしくはα-β接合を認識して結合し、T細胞上で発現されたTCRのCDR3ループ、抗原結合部位、もしくはα-β接合を認識して結合するが、試料(例えば他のタンパク質もしくは細胞を天然の状態で含む生物試料)に含まれる他の分子を実質的に認識せず結合しない抗体を意味する。T細胞上に発現されたTCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に対する抗体の結合に関して、実施例1に記載されたELISAアッセイ法におけるシグナルは、T細胞ではない対照細胞、またはアミノ酸配列の同一性が、抗体に優先的に結合するCDR3ループ、α-β接合、または抗原結合部位の対応配列に対して、99%、95%、90%、85%、80%、70%、60%、50%、40%、または20%未満のCDR3ループ、α-β接合、および抗原結合部位をもつTCRを発現するT細胞に対する結合に比べて、望ましくは少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、または500倍大きい。ヒト化された抗体、または他の種の状態となった抗体は、標準的な手法で作製することができる。
【0061】
望ましくは、抗体は「精製される」。これは抗体が、天然の状態で共存する他の成分から分離されることを意味する。典型的には、抗体は、天然の状態で共存するタンパク質、抗体、および天然有機分子を重量換算で少なくとも50%含まない場合に実質的に純粋である。望ましくは抗体は少なくとも75%、より望ましくは少なくとも90%、また最も望ましくは少なくとも99%が、重量換算で純粋である。TCRのCDR3ループ、α-β接合、もしくは抗原結合部位に優先的に結合する実質的に純粋な抗体は、例えば抗体を産生するように哺乳類を免疫化する本発明の方法により、抗体を分泌するハイブリドーマを構築することにより、抗体を化学的に合成することにより、または抗体を天然供給源から分離することによって得られる。純度は、抗体の単離に関して後述する、任意の適切な方法で調べることができる。
【0062】
「TCRのα-β接合」とは、TCRのα鎖とβ鎖の境界を意味する。この境界は、α鎖とβ鎖の可変ドメイン間の非共有結合性の相互作用を含む。望ましくはα-β接合の3次元構造、もしくはα-β接合の3次元構造のモデルを用いて、哺乳類を免疫化してTCRのα-β接合に対する抗体を産生させるためのポリペプチドもしくは小分子を設計する。TCRのα鎖とβ鎖間の境界の複数の3次元構造が既に報告されており、当業者はこれを基に、NK細胞、CD1d反応性細胞、JαQ+ 細胞、またはインバリアントT細胞によって発現された、TCRのα鎖とβ鎖の境界をモデル化することができる。例えばα鎖とβ鎖の境界のモデル構造、または実際の構造を基に、3次元構造が境界の曝露された領域に似た小分子を設計することができる。また3次元構造がTCRのα-β接合の一部または全体に似たポリペプチドを設計することができる。例えば関心対象のTCRのモデル構造または実際の構造を用いて、設計されたポリペプチド(例えば約100アミノ酸のポリペプチド)に後に似せることのできるTCRのα-β接合のモデル構造または実際の構造が得られる。共有結合またはリンカーを、設計ポリペプチドのドメイン間に加えることで、1本鎖のポリペプチドを作製することができる。このようなモデル化の手順には、MolScriptなどの任意の標準的なモデル化プログラムを使用することができる。
【0063】
同様に、以上の方法で、対象TCRのγ-δ接合に優先的に結合する抗体を作製することができる。
【0064】
「TCRの抗原結合部位」は、抗原に結合するTCRの領域を意味する。この領域は、TCR可変領域の曝露表面の一部を含む。例えば、このような抗原結合部位は、α鎖のCDR3ループ、β鎖のCDR3ループ、CDR1ループの予測可能な部分、CDR2ループの予測可能な部分、およびある程度近傍の構造表面を含む。
【0065】
望ましくは、抗原結合部位の3次元構造、もしくは抗原結合部位の3次元構造のモデルを用いて、哺乳類を免疫化するためのポリペプチドもしくは小分子を設計し、TCRの抗原結合部位に対する抗体を作製する。TCRの抗原結合部位の複数の3次元構造が(抗原の存在下または非存在下で)既に報告されており、当業者は、これを用いて、NK細胞、CD1d反応性細胞、JαQ+ 細胞、またはインバリアントT細胞に発現されるTCRの抗原結合部位をモデル化することができる。またCD1dのモデル構造または実際の構造を用いて、他の成分がCD1d反応性T細胞と相互作用する機構を決定することができる。抗原結合部位のモデル構造、もしくは実際の構造を基に、小分子もしくはポリペプチドを、抗原結合部位の一部または全体に似た3次元構造をもつように設計することができる。例えば対象TCRのモデル構造または実際の構造を用いることで、TCRの抗原結合部位のモデル構造または実際の構造が得られる。これは後に、設計されたポリペプチド(例えば約100アミノ酸のポリペプチド)に似せることができる。共有結合またはリンカーを、設計されたポリペプチドのドメイン間に加えることで1本鎖のポリペプチドが得られる。このようなモデル作製の手順には、MolScriptなどの任意の標準的なモデル化プログラムを使用することができる。
【0066】
「インバリアントT細胞」とは、CD1d反応性のインバリアントT細胞抗原受容体を有するT細胞を意味する。「ヒトCD1d反応性インバリアントT細胞抗原受容体」とは、CD1dを認識し、N領域の多様性がほとんどないか全くなくなる、Vα24とJαQ間の再編成から生じる、α鎖を有するT細胞抗原受容体を意味する(Kentら、Human Immunology 60:1080〜1089、1999)。マウスでは、インバリアントTCR-α鎖は、N領域の多様性がほとんどないか全くない、Vα14とJα281間の再編成で生じる。このような等価の再編成は、他の哺乳類(例えばラット)および鳥類で生じることがある。ヒトのインバリアントTCR-α鎖は、Vβ11と優先的に対を形成するが、他のVβと対を形成することができる。ヒトのCD1d反応性インバリアントT細胞抗原受容体はCD1dを認識するが、CD1a、CD1b、またはCD1cファミリーの分子とはそれほど関連性は強くない(Exleyら、J. Exp. Med. 186 (1):109〜120、1997).
【0067】
「断片」とは、本発明の抗体の対応領域と同一な連続的なアミノ酸の領域を有するポリペプチドを意味する。断片は、本明細書に記載されたアッセイ法で決定すると、エキソビボまたはインビボでT細胞に結合し、それを活性化し、および/または増殖させることができる。望ましくは、増殖した細胞の数、活性、または純度は、本明細書に記載されたアッセイ法で測定すると、本発明の抗体の少なくとも20%、40%、60%、80%、または90%である。望ましくは、このような断片とTCRのCDR3ループ、α-β接合、または抗原結合部位との結合は、本発明の抗体との結合の少なくとも20%、40%、60%、80%、または90%である。
【0068】
「誘導体」とは、化学的に修飾されるか、または遺伝子融合もしくは化学合成により修飾された、毒素、治療的に活性のある化合物、酵素、サイトカイン、放射標識、蛍光標識、または親和性タグと共有結合される、本発明の抗体または断片を意味する。共有結合で連結された官能基を、抗体もしくは断片のアミノ末端、カルボキシ末端、アミノ末端とカルボキシ末端の間、またはアミノ酸の側鎖に結合させることができる。「親和性タグ」とは、別のペプチド、タンパク質、または化合物に結合するペプチド、タンパク質、または化合物を意味する。望ましい態様では、親和性タグは、誘導体の精製または固定化に使用される。別の望ましい態様では、親和性タグまたは毒素を用いて、抗体または断片を、インビボにおいて特定の細胞、組織、または器官系に標的化する。さらに別の望ましい態様では、蛍光標識または放射標識が誘導体の画像化に使用される。さらに別の望ましい態様では、治療的に活性のある化合物または放射標識が、疾患または障害の治療または予防に用いられる。別の態様では、本発明の抗体の誘導体または断片は、上記の抗体に比べて安定性を増強したり可溶性を上昇させる。本発明の抗体、断片、または誘導体が、毒素、治療的に活性のある化合物、酵素、サイトカイン、放射標識、蛍光標識、磁気標識、または親和性タグに共有結合で連結された別の抗体に、非共有結合的に結合されうることも意図される。
【0069】
「ヒト化」とは、抗体のアミノ酸配列を変更して、ヒトに投与された場合に、抗体および/または免疫応答が、そのヒト化抗体に対してほとんど生じなくなるようにすることを意味する。ヒト以外の哺乳類の抗体を用いる場合は、本発明の抗体を、関心対象の種のフォーマットに変換することができる。
【0070】
「二機能性抗体」とは、別の抗体、または抗体の別の断片に共有結合で連結された、抗体または抗体の断片を含む抗体を意味する。望ましくは抗体または断片の両方が、同じT細胞上に発現された異なるエピトープに結合する。望ましくは、二機能性抗体に含まれる少なくとも1つの抗体は、本発明の抗体である。望ましくは、このような抗体は、CD3、CD161、またはCD3およびCD161の両方に結合する。別の望ましい態様では、このような抗体は、Vα24、CD94、Vβ11、および抗CD28の1つまたは複数に結合する。
【0071】
「環状ペプチド」とは、TCRのCDR3ループの領域に少なくとも60%、望ましくは80%、より望ましくは90%、また最も望ましくは100%が同一なアミノ酸配列を有する、非線形ペプチドを意味する。一つの望ましい態様では、このペプチドのアミノ酸配列は、ヒトインバリアントTCR-αのCDR3ループに由来する

(配列番号:1)、または配列番号:1の少なくとも5個、8個、10個、もしくは15個の連続したアミノ酸領域を含む。別の望ましい態様では、このペプチドのアミノ酸配列は、配列番号:1と同一である。このペプチドは、ペプチドもしくは残基の側鎖のN末端のアミノ酸と、C末端のカルボキシル基もしくは残基の側鎖との間に共有結合を形成することで環状化する。例えばペプチドラクタムは、N末端のアミノ基もしくはアミノ酸側鎖のアミノ基と、C末端のカルボキシル基もしくはアミドを含む側鎖(グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、またはアスパラギンなど)との間で環状化することで形成する。他の起こりうる環状化には、システイン側鎖に含まれるチオール基と、N末端のアミノ基、C末端のカルボキシル基、または別のアミノ酸の側鎖との反応による、チオエーテルの形成が含まれる。ジスルフィドが2個のシステイン残基の間に形成されることもある。インバリアントTCRまたは別のTCRのα鎖もしくはβ鎖の別のループ、または曝露表面の領域に少なくとも60%、望ましくは80%、より望ましくは90%、また最も望ましくは100%同一なアミノ酸配列を有するペプチドが、別のTCRに対する抗体の作製に使用される場合がある。望ましいループには、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞のα鎖もしくはβ鎖のCDR3ループなどがある。
【0072】
「CD1dまたはインバリアントT細胞を欠く哺乳類」とは、同じ種の他の哺乳類と比較したときに、機能性のCD1d分子、インバリアントT細胞、TCR-α鎖、またはTCR-β鎖の量が減少しているか、または全く存在しない哺乳類を意味する。このような哺乳類の望ましい例には、CD1dノックアウトマウス(Sonodaら、1999、前掲)、インバリアントTCRに寛容性のない哺乳類、インバリアントT細胞が除去された哺乳類、TCR-α鎖の一部を欠く哺乳類(Cuiら、Science 278:1623、1997)、VB8分子の一部を欠く哺乳類、またはインバリアントNK T細胞、もしくは関連する亜集団が、抗体、サイトカイン、もしくは反復性抗原性刺激によって除かれた動物などがある。
【0073】
「免疫化する」とは、担体に結合させたペプチド、インバリアントT細胞のいずれか、または両方を標準的な手順で動物(例えば哺乳類もしくは鳥類)に投与する段階を意味する。望ましい投与経路には、腹腔内、筋肉内、皮内、および皮下への投与がある。投与の用量および頻度は、標準的な手順で決定することができる。
【0074】
「抗体を単離する」とは、抗血清、腹水、またはハイブリドーマ上清から抗体を精製する段階を意味する。抗体は、当業者であれば、オースベル(Ausubel)ら(「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、第2巻、p. 11.13.1〜11.13.3、John Wiley & Sons、1995)に記載された手法などの標準的な手法で精製することができる。抗体は、望ましくはポリアクリルアミド電気泳動、カラムクロマトグラフィー、光学密度、HPLC分析、またはウェスタン分析で測定して、混入タンパク質の減少を検出するか、またはELISAで、特定のT細胞亜集団に関して対マーカー結合の比活性の上昇を検出すると、出発材料の少なくとも2倍、5倍、または10倍純粋である。
【0075】
「接触させる」とは、試料を抗体またはサイトカインとインキュベートする段階を意味する。このような抗体またはサイトカインは、可溶性の状態であっても固定化された状態であってもよい。一つの態様では、固定化された抗体もしくはサイトカインは、ビーズもしくはプレートと緊密に結合した状態であるか、または共有結合で連結されている。望ましい態様では、接触はエキソビボまたはインビボで生じる。
【0076】
「測定する」とは、特定のT細胞亜集団に属する、試料中の細胞の割合(%)を決定する段階、または本明細書に記載されたように、特定のT細胞亜集団に属する、試料中の細胞数を決定する段階を意味する。望ましい態様では、このようなT細胞は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞である。
【0077】
「治療または予防する」とは、本発明の抗体、または抗体とインキュベートされたT細胞を、本明細書に記載されるように、哺乳類に投与する段階を意味する。
【0078】
「T細胞の病因」とは、サイトカイン産生もしくは細胞毒性などの、T細胞の活性によって生じたり悪化される疾患または障害を意味する。
【0079】
「自己免疫疾患」とは、自己エピトープに対して免疫系応答が生じる疾患を意味する。自己免疫疾患の例には、インスリン依存性糖尿病、慢性関節リウマチ、尋常性天疱瘡、多発性硬化症、および重症筋無力症などがある。
【0080】
「T細胞亜集団のサイズを増大させる」とは、T細胞亜集団を抗体とインキュベートすることにより、またはT細胞亜集団を抗原および抗原提示細胞とインキュベートすることにより、細胞の増殖を促進する段階を意味する。望ましくは、インキュベーション後に存在する、亜集団に属するT細胞の数は、抗体または抗原および抗原提示細胞の非存在下で、対応する対照のインキュベーション後に存在する、これらの細胞数より、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、70倍、90倍、150倍、または500倍多い。より望ましくは、インキュベーション後に存在する、亜集団に属するT細胞の数は、0.1〜2 μg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA)の存在下における、対応するインキュベーション後に存在する細胞数より、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、または50倍多い。T細胞の総数が増加した場合に、上記割合(%)が同じまま留まるが、関連するサブセットの実際の数が上昇しうることも意図される。望ましくは、T細胞亜集団に属する細胞の割合(%)の変化は、抗体とインキュベートされていない対照試料における、T細胞亜集団に属する細胞の割合(%)における、対応する変化より少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、または50倍大きい。別の望ましい態様では、このようなT細胞は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞である。
【0081】
「NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ 細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団の増殖または活性化を優先的に調節する」とは、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の増殖もしくは活性化を誘導する段階、または抑制する段階を意味する。このようなT細胞亜集団の増殖の誘導は、T細胞亜集団のサイズの拡大の判定に関して記載されたように、測定することができる。このようなT細胞亜集団の増殖の抑制は、抗体を含まない対象インキュベーションと比較される、本発明の抗体とのインキュベーション後における同亜集団に属するT細胞の数を比較することで決定することができる。望ましくは、抗体とのインキュベーション後に存在する、同亜集団に属するT細胞の数は、対応する対照のインキュベーション後に存在するT細胞数より2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、または100倍少ない。このようなT細胞増殖の抑制は、T細胞の病因の予防または治療に有用な場合がある。T細胞亜集団の活性化の誘導もしくは抑制は、T細胞亜集団のサイトカイン産生もしくは細胞毒性を測定する標準的な手順で調べることができる。望ましくは、サイトカインの産生もしくは細胞毒性の上昇または低下は、抗体の非存在下でインキュベートした対照T細胞亜集団の活性の、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、70%、90%、または100%である。望ましくは、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団のサイズまたは活性の変化は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞以外の細胞における、対応する変化より少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、70倍、90倍、150倍、または500倍大きい。望ましい態様では、このような抗体は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、唯一のT細胞亜集団に優先的に結合するか、またはその増殖もしくは活性化を調節する。
【0082】
「抗Vα24抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD56抗体、抗CD161抗体、抗CD94抗体、抗CD28抗体、または抗Vβ11抗体」とは、Vα24分子、CD4分子、CD8分子、CD56分子、CD161分子、CD94分子、CD28分子、もしくはVβ11分子、またはこれらの分子の1つを発現する細胞を認識して結合するが、他のタンパク質もしくは細胞を天然の状態で含む試料(例えば生物学的試料)に含まれる他の分子を実質的に認識せず結合しない抗体を意味する。
【0083】
「T細胞を含む試料を得る」とは、哺乳類に由来するT細胞を有する試料を除去する段階、またはこのような細胞を有し、かつ哺乳類によって産生される試料を得る段階を意味する。望ましい態様では、このような試料は末梢血である。別の態様では、このような試料は尿、胆汁、または体組織などの体液である。別の態様では、このような試料は骨髄、または臍帯試料である。
【0084】
「T細胞を精製する」とは、天然の状態で他の細胞を含む試料からT細胞を単離する段階を意味する。T細胞は、本発明の抗体、または抗Vα24抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD56抗体、抗CD161抗体、もしくは抗Vβ11抗体を用いて標準的な手順で精製することができる。望ましい精製法には、蛍光活性化細胞選別(FACS)、免疫沈殿、免疫親和性クロマトグラフィー、磁気ビーズ免疫親和性精製、およびプレートに結合している抗体を用いる細胞パニングなどがある。望ましくは、精製されたT細胞は、精製したT細胞と、それが属するT細胞亜集団用のマーカーとの結合を検出する、ELISA分析またはFACS解析で測定されると、元の試料の少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、または900倍純粋である。
【0085】
「精製されたT細胞亜集団」とは、天然の状態で他の細胞を含む試料から単離される、実質的に純粋なT細胞亜集団を意味する。精製されたT細胞亜集団は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の少なくとも1つについて濃縮される。望ましくは、このようなT細胞亜集団は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞のただ1つについて濃縮される。精製されたT細胞亜集団は、天然の状態で認められるT細胞亜集団の純度より純粋である。望ましくは、精製されたT細胞亜集団は、その数について少なくとも1%、5%、15%、30%、50%、75%、90%、または99%が、天然の状態で結合している細胞を含まない。通常、T細胞亜集団と結合するこのような他の細胞は、細胞表面細胞を発現しない点、リガンドと結合しない点、またはT細胞亜集団の活性をもたない点が、対象亜集団に属するT細胞とは異なる。
【0086】
「複合体」とは、T細胞に対する抗体の結合により、試料からの複合体の単離または分離が十分可能となる抗体に結合しているT細胞を意味する。
【0087】
「複合体から細胞を回収する」とは、標準的な手順でT細胞と抗体を分ける段階を意味する。
【0088】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】NK T細胞、CD1d反応性インバリアントT細胞、CD1d反応性非インバリアントT細胞、およびJαQ+ T細胞間の関係を示す略図である。
【図2】図2Aは、対照のT細胞クローンを、抗CDR3ループモノクローナル抗体(3A6もしくは6B11)、または6B11アイソタイプ(IgG1)の適合させた対照で染色した結果を示すヒストグラムである。図2Bは、インバリアントNK T細胞クローンの対応する染色を示すストグラムである。
【図3】6B11モノクローナル抗体によるVα24+ T細胞の認識のFACS解析を示すドットプロットである。FACSで精製したVα24+ T細胞をPHAで2週間エキソビボで増殖させ、Vα24-PEおよびVβ11-FITCモノクローナル抗体(図3A)またはVα24-PEおよび6B11-FITCモノクローナル抗体(図3B)を用いて分析した。
【図4】それぞれ、6B11抗CDR3ループモノクローナル抗体が結合したプレート、またはPHAと共に3週間培養したVα24で選別した細胞の増殖を示すグラフである。
【図5】それぞれIL-12の処置前または処置中における患者のインバリアントNK T細胞のFACS解析を示すグラフである。進行腎細胞癌患者の末梢血を、IL-12処置の直前、および最初の6週間後の時点でCD3+Vα24+細胞について分析した。処置後に有意な上昇のない、Vα24+細胞の同等の低い比率が、すべての場合(n=10)に認められた。
【図6】それぞれバルク末梢血単核球細胞、Vα24+ 細胞、およびポリクローナル(「ポリ」)インバリアントT細胞によるIL-4産生を示すグラフである。これらの細胞をα-GalCerで増殖させた後に、緩衝液、プレートに結合させた6B11抗体で刺激するか、Hela/CD1d形質移入体と共培養するか、またはPHAで刺激した。分泌されたIL-4の量を標準的なELISA分析で決定した。
【図7】同じ健康なドナーの試料に由来する、6B11およびα-GalCerによる、表現型的および機能的に同一なインバリアントNK T細胞の増殖が同等であることを示すグラフである。「MoFlo」で選別したVα24細胞を、α-GalCerをパルスした自家樹状細胞、6B11モノクローナル抗体、または分裂促進因子(PHA)で、約4週間IL-2のみで増殖させた。
【図8A】末梢血試料に由来するバルクT細胞が3A6抗体で認識されることを示すグラフである。
【図8B】インバリアントNK T細胞クローンおよび系列が、3A6抗体、6B11抗体、またはアイソタイプの対照抗体で認識されることを示すグラフである。以上のインバリアントNK T細胞のクローンおよび系列は、抗Vα24モノクローナル抗体を用いて精製後に、α-GalCerを用いて増殖させた。図8B〜8Iでは同じ「MT」細胞系を分析した。3A6抗体または6B11抗体、および抗mIg-FITCを用いた間接的(1色)FACS解析で、純粋なヒトインバリアントNK T細胞クローンおよび細胞系が、対照T細胞と比べて特異的に認識されることがわかる。
【図8C】インバリアントNK T細胞クローンおよび系列が、3A6抗体、6B11抗体、またはアイソタイプの対照抗体で認識されることを示すグラフである。以上のインバリアントNK T細胞のクローンおよび系列は、抗Vα24モノクローナル抗体を用いて精製後に、α-GalCerを用いて増殖させた。図8B〜8Iでは同じ「MT」細胞系を分析した。3A6抗体または6B11抗体、および抗mIg-FITCを用いた間接的(1色)FACS解析で、純粋なヒトインバリアントNK T細胞クローンおよび細胞系が、対照T細胞と比べて特異的に認識されることがわかる。
【図8D】6B11抗体、3A6抗体、または対照抗体で分析したリンパ球のゲーティングを示す細胞の前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)のグラフである。
【図8E】インバリアントNK T細胞クローンおよび系列が、3A6抗体、6B11抗体、またはアイソタイプの対照抗体で認識されることを示すグラフである。以上のインバリアントNK T細胞のクローンおよび系列は、抗Vα24モノクローナル抗体を用いて精製後に、α-GalCerを用いて増殖させた。図8B〜8Iでは同じ「MT」細胞系を分析した。3A6抗体または6B11抗体、および抗mIg-FITCを用いた間接的(1色)FACS解析で、純粋なヒトインバリアントNK T細胞クローンおよび細胞系が、対照T細胞と比べて特異的に認識されることがわかる。
【図8F】インバリアントNK T細胞クローンおよび系列が、3A6抗体、6B11抗体、またはアイソタイプの対照抗体で認識されることを示すグラフである。以上のインバリアントNK T細胞のクローンおよび系列は、抗Vα24モノクローナル抗体を用いて精製後に、α-GalCerを用いて増殖させた。図8B〜8Iでは同じ「MT」細胞系を分析した。3A6抗体または6B11抗体、および抗mIg-FITCを用いた間接的(1色)FACS解析で、純粋なヒトインバリアントNK T細胞クローンおよび細胞系が、対照T細胞と比べて特異的に認識されることがわかる。
【図8G】インバリアントNK T細胞クローンおよび系列が、3A6抗体、6B11抗体、またはアイソタイプの対照抗体で認識されることを示すグラフである。以上のインバリアントNK T細胞のクローンおよび系列は、抗Vα24モノクローナル抗体を用いて精製後に、α-GalCerを用いて増殖させた。図8B〜8Iでは同じ「MT」細胞系を分析した。3A6抗体または6B11抗体、および抗mIg-FITCを用いた間接的(1色)FACS解析で、純粋なヒトインバリアントNK T細胞クローンおよび細胞系が、対照T細胞と比べて特異的に認識されることがわかる。
【図8H】インバリアントNK T細胞クローンおよび系列が、3A6抗体、6B11抗体、またはアイソタイプの対照抗体で認識されることを示すグラフである。以上のインバリアントNK T細胞のクローンおよび系列は、抗Vα24モノクローナル抗体を用いて精製後に、α-GalCerを用いて増殖させた。図8B〜8Iでは同じ「MT」細胞系を分析した。3A6抗体または6B11抗体、および抗mIg-FITCを用いた間接的(1色)FACS解析で、純粋なヒトインバリアントNK T細胞クローンおよび細胞系が、対照T細胞と比べて特異的に認識されることがわかる。
【図8I】インバリアントNK T細胞クローンおよび系列が、3A6抗体、6B11抗体、またはアイソタイプの対照抗体で認識されることを示すグラフである。以上のインバリアントNK T細胞のクローンおよび系列は、抗Vα24モノクローナル抗体を用いて精製後に、α-GalCerを用いて増殖させた。図8B〜8Iでは同じ「MT」細胞系を分析した。3A6抗体または6B11抗体、および抗mIg-FITCを用いた間接的(1色)FACS解析で、純粋なヒトインバリアントNK T細胞クローンおよび細胞系が、対照T細胞と比べて特異的に認識されることがわかる。
【図9】健康なドナーの全末梢血単核球(PBMC)に由来するインバリアントNK T細胞系のFACS解析を示すグラフである。このような細胞をMoFlo FACSで6B11-FITCとともに選別し、約6週間増殖させた後に2色FACS解析を行った。増殖後、細胞の21%がVα24+であった(増殖前は〜0.1%)。以上の結果を図12〜17にまとめた。
【図10】6B11抗体磁気ビーズによる選別に由来する、インバリアントNK T細胞系のFACS解析を示すグラフである。健康なドナーの全PBMCに由来するインバリアントNK T細胞を、ダイナルまたはミルテニ磁気ビーズ免疫親和性精製により、6B11とともに全PBMCから選別し、約6週間の増殖後に2色FACS解析を行った。この結果を図12〜17にまとめた。
【図11】6B11抗体磁気ビーズ選別に由来する、インバリアントNK T細胞系のFACS解析を示すグラフである。健康なドナーの全PBMCに由来するインバリアントNK T細胞を、ダイナル磁気ビーズ免疫親和性精製により6B11とともに選別し、記載の手順で全PBMCから処理し、約6週間かけて増殖させた後に2色FACS解析を行った。この結果を図12〜17にまとめた。
【図12】T細胞用培地中における4〜8週間の1回の増殖の後に記載の抗体で染色されたT細胞の割合(%)を示す表である。「PBMC」カラムは、増殖前に選別されなかったPBMC細胞を意味する。「ダイナル@40」カラムは、増殖前に6B11-ダイナルビーズで精製されたPBMC細胞を意味する。「ミルテニ@20」カラムは、増殖前に6B11(20 μg/mL コーティング)-ミルテニビーズを用いて選別されたPBMC細胞を意味する。比較する目的で、選別されなかった全リューコパック(leukopak)21(LKP 21)細胞に関する、対応する結果を示す。図12〜17では、10% FBSおよび100 U/mLのヒト組換え型IL-2を添加した、RPMI-1640またはバイオウィタッカー(BioWhittaker)培地などの標準的なT細胞培地を使用した。
【図13】6B11-ダイナルビーズを用いた精製、およびT細胞用培地における4〜8週の1回の増殖の後に、記載の抗体で染色されたT細胞の割合(%)を示す表である。比較する目的で、選別されなかった全リューコパック 10 (LKP 10)細胞に関する対応する結果を示す。この表に示す通り、T細胞の増殖の一部は、IL-7 (10 ng/ml)、IL-5 (10 ng/ml)、デキサメタゾン(「Dex」)(1 μM)、および/または6B11 抗体(40 μg/mL)を含むT細胞用培地(「TCM」)の存在下で行った。表の右側に記した図の番号は、T細胞の増殖で得られた結果を示す図を意味する。
【図14】T細胞培地中における1回の4〜8週の増殖後に、指定抗体で染色されるT細胞の割合(%)を示す表である。比較する目的で、選別されなかった全リューコパック 14(LKP 14)細胞に関する対応する結果を示す。増殖前に6B11-ダイナルビーズとともに選別された細胞の結果は、選別されなかった対照細胞と同等である。表に示す通り、T細胞増殖の一部は、上述の6B11抗体、PHA (1 μg/mL)、および/または同数の自家APCの存在下で実施した。
【図15】T細胞培地中における1回の4〜8週の増殖後に、指定抗体で染色されるT細胞の割合(%)を示す表である。増殖前に6B11-ダイナルビーズとともに選別された細胞の結果は、選別されなかった対照細胞(LKP 13)と同等である。T細胞増殖の一部は、上述の通り、6B11抗体、PHA、同種APC、および/または自家APCの存在下で実施した。
【図16】選別されなかった対照細胞(LKP 2)と比較したときの、6B11-ミルテニ磁気ビーズ、およびT細胞培地中における1回の4〜8週の増殖を用いた精製後に、指定抗体で染色されるT細胞の割合(%)を示す表である。以上のT細胞の増殖は、上述の通り、自家APCの存在下で実施した。T細胞の増殖の1回では、10 ng/mlのIL-7およびIL-15も存在していた。
【図17】6B11-ミルテニ磁気ビーズ、およびT細胞培地中における1回の4〜8週の増殖を用いた精製後に、指定抗体で染色されるT細胞の割合(%)を示す別の表である。これらのT細胞の増殖は、自家APCおよびPHAの存在下で実施し、選別されなかった対照細胞(LKP 11、12)と比較した。T細胞の増殖中、6B11抗体、および/またはVα24抗体も上述の通り、また表に示す通りに存在していた。T細胞の増殖の1回では、10 ng/mlのIL-7およびIL-15も存在していた。表の左側に示した図の番号は、T細胞の増殖で得られた結果を示す図を意味する。
【図18】ビオチン化6B11抗体およびストレプトアビジンを結合させた磁気ビーズで精製した、T細胞系のFACS解析を示すグラフである。
【図19】Vα24-PE、およびVβ11-FITC (図19A〜19C)または6B11-FITC抗体(図19D〜19F)のいずれかを用いた2色フローサイトメトリーで解析した、健康なドナーの末梢血(図19Bおよび19E)、または前立腺癌患者の末梢血(図19Cおよび19F)、またはNK T細胞系(図19Aおよび19D)のフローサイトメトリー解析を示すグラフである。NK T細胞系は、健康なドナーに由来するVα24で精製した、細胞のα-GalCerによる増殖で生じた。
【図20】PHA(図20A)、もしくはα-GalCerおよび自家PBMCフィーダー(図20B)を用いた3週間の増殖後に、Vα24で選別した細胞の、Vα24-PEおよびVβ11-FITCモノクローナル抗体を使用した2色フローサイトメトリー解析を示すグラフである。図20Cおよび20Dは、抗CD1dモノクローナル抗体(51.1、10 μg/ml)、またはアイソタイプの対照抗体のいずれかの存在下において、PHAで刺激されたインバリアントNK T細胞系、または偽トランスフェクトした、もしくはCD1dをトランスフェクトしたC1RヒトEBV-形質転換B細胞で刺激された、それぞれIL-4およびIFN-γの産生を示す棒グラフである。図20A〜20Dの結果は、後述するように、複数の健康なドナーの代表である。
【図21】図21A〜Cは、健康なドナーに対して、前立腺癌患者に由来するインバリアントNK T細胞の増殖が低下したことを示すグラフである。健康なドナー(図21A)、進行性前立腺癌患者(図21B)、および寛解中の前立腺癌患者(図21C)に由来する、α-GalCerで増殖させたインバリアントNK T細胞を、Vα24-PEおよびVβ11-FITCによる染色で分析した。図21Dは、一連の(≧6)ドナーに由来する、α-GalCerによる増殖後におけるVα24+Vβ11+細胞(平均および標準偏差)の割合(%)を示す棒グラフである。この結果は、図12〜17でもまとめられている。
【図22】前立腺癌患者に由来するインバリアントNK T細胞によるIFN-γ反応がないことを示すグラフである。図22Aおよび22Bは、前立腺癌患者と健康なドナーに由来するインバリアントNK T細胞系にそれぞれ由来する、IL-4およびIFN-γの産生を示す。図22Cおよび22Dは、それぞれ一連の進行性前立腺癌患者(●)および健康なドナー(□)に由来する、CD1dで刺激したインバリアントNK T細胞、およびPHAで刺激したバルクT細胞によるサイトカイン産生の結果をまとめたグラフである。図22Eは、健康なドナーおよび進行性前立腺癌患者に由来する、インバリアントNK T細胞(上)、または典型的なバルクT細胞(下)のIFN-γ/IL-4比(平均および標準偏差)を示すグラフである。「癌+IL-12」は、インビトロにおいてIL-12で処理した進行性前立腺癌患者に由来する試料である。
【図23−1】HIV患者におけるCD1d拘束T細胞の出現頻度を決定する際の、6B11抗体の用途を示す表である。
【図23−2】HIV患者におけるCD1d拘束T細胞の出現頻度を決定する際の、6B11抗体の用途を示す表である。
【図23−3】HIV患者におけるCD1d拘束T細胞の出現頻度を決定する際の、6B11抗体の用途を示す表である。
【図23−4】HIV患者におけるCD1d拘束T細胞の出現頻度を決定する際の、6B11抗体の用途を示す表である。
【図24】糖尿病患者におけるCD1d拘束T細胞の出現頻度を決定する際の、6B11抗体および抗Vα24 抗体の用途を示す表である。
【図25A−1】NK T細胞クローンME10とGW4とで示差的に発現される遺伝子を示す表である。11個の遺伝子機能性カテゴリーに関する、6個の発現クラスターを構成する遺伝子を示す。個々の遺伝子は、GenBankアクセッション番号(またはHT表記についてはTIGR識別子)で示されており、それに続いて一般名および所属の特定のクラスターが示されている(行、列)。
【図25A−2】図25A-2は、図25A-1の続きを示す表である。。
【図25B】不調和な(discordant)発現が観察されている細胞表現型と一致している、同定された転写物のモデルの略図である。イラストで表した絵は、転写物が明瞭に規定された細胞内における役割を有し、GW4とME10とで不調和な発現が、確立された表現型上の差と相関する遺伝子を示す。これらの遺伝子は、PI-3キナーゼ、特に細胞生存を調節する複数の遺伝子の下流にあるか、またはカルシウムの流入およびカルシウムで調節される遺伝子転写に関して直接必要とされることで、関連している。GW4(休止、活性化)およびME10(休止、活性化)に対する抗CD3処置によって、有意に変化したmRNA分子/数百万個の遺伝子の平均コピー数は、それぞれItk、(49、115)および(25、19);GATA3、(13、26)および(8、11);Jun-B、(15、118)および(14、30);Jun-D、(107、291)および(68、130);NFAT4、(33、35)および(64、26);STAT4、(36、29)および(76、36);14-3-3、(24、45)および(83、41);Bcl-XL、(11、50)および(6、7);ならびにIAP、(14、211)および(10、41)であった。MW10に対するGW4(GW4、ME10)に関する発現が構成的であったが、不調和であった選択された遺伝子群は、NKR-P1A、(29、459);およびSTAT1、(27、79)であった。
【図26AB】活性型Vα24JαQ T細胞における転写の誘導、ならびにサイトカインおよび細胞融解性酵素の放出を示すグラフである。図26Aおよび26Bでは、Vα24JαQ T細胞クローンGW4 (IL-4+)クローンとME10 (IL-4-ヌル)クローン間における、サイトカインおよびケモカインの遺伝子の発現の変化を比較している。個々の転写物について、抗CD3で誘導されたハイブリダイゼーションの強度を示す。RNAを単離し、増幅し、かつ免疫学的関心対象の250個の遺伝子に対するプローブを並べたジーンチップ(Affymetrix、San Jose、CA)とハイブリッドを形成させた。このチップは、個々の特定の転写物を検出するためのアドレス特性の数を増やすことで、定量分析用に特別設計されている。IgG1対照による処置後の数百万個当たりの特定のmRNAのコピー数の数値を白丸(○)で示し、抗CD3処置による活性化後における対応コピー数を黒丸(●)で示す。遺伝子発現アルゴリズムで有意に異なると判定され、また少なくとも2倍変化した遺伝子を太字で表す。文字(A)は、転写物が検出されなかったことを意味し、MIP-1αおよびMIP-1βの転写物が、クローンME10において抗CD3刺激で抑制されたことに留意すべきである。
【図26C】活性型Vα24JαQ T細胞における転写の誘導、ならびにサイトカインおよび細胞融解性酵素の放出を示すグラフである。図26Cは、定量ELISA分析に基づく、複数のVα24JαQ T細胞クローンに由来する、上清から産生されたサイトカインの量を示すグラフである。
【図26D】活性型Vα24JαQ T細胞における転写の誘導、ならびにサイトカインおよび細胞融解性酵素の放出を示すグラフである。図26Dは、CD40Lの発現を示すグラフである。T細胞クローンBW5は、PMA/イオノマイシン刺激により4時間にわたって活性化され、フローサイトメトリーで解析された。
【図27】CD1dによるVα24JαQ T細胞の活性化の拘束を示す。図27Aは、サイトカインの放出および増殖の拘束を示す。T細胞クローンを、(CD1a、CD1b、CD1c、もしくはCD1dを発現する)C1R形質移入体、またはプレートに結合させた抗CD3と共培養した。分泌されたIL-4、IFN-γ、または増殖は、本発明に記載された手順で調べた。図27Bは、細胞溶解が制限されることを示す。C1R形質移入体のパネルは、標準的な4時間の51Cr-遊離アッセイ法で、Vα24JαQ T細胞クローンによる細胞溶解に関してスクリーニングを行った。
【図28】図28Aは、培養樹状細胞のフローサイトメトリー解析に基づく、骨髄系樹状細胞上におけるCD1d発現のグラフである。 図28Bは、樹状細胞と、(CD1aまたはCD1dを発現する)対照C1R形質移入細胞の免疫ブロット分析の写真である。 図28C〜28Jは、代表的な反応性リンパ節生検(計10回の生検)の一連の切片を免疫化学的に染色した写真である。図28Cは、低出力におけるヘマトキシリン-エオシン染色の写真であり、図28Dは、抗CD3染色の写真である。四角で囲んだ部分は、図28Eおよび28Fで高倍率で示した連続切片を、さまざまなマーカーによる染色用に採取した領域の境界を示す(図28E、S100;図28F、CD1d;図28G、CD1a;図28H、CD34)。リンパ洞組織球の染色(図28Iおよび28K)、ならびに傍濾胞領域(図28Lおよび28M):ヘマトキシリン-エオシン(図28Iおよび28L);CD68、マクロファージマーカー、(図28Jおよび28M);ならびにCD1d(図28Kおよび28N)を示す。
【図29】Vα24JαQ T細胞による骨髄系樹状細胞の細胞溶解の特徴を示すグラフである。図29は、クロム遊離アッセイ法におけるVα24JαQ T細胞クローンGW4による、未成熟樹状細胞および成熟樹状細胞の同種溶解を示すグラフである。ドナーのハプロタイプは、1)クローンGW4、A2、A24、B8、B38、Cw7、DR3、DQ2;2)DCドナーM、A2、A68、B7、B45、Cw6、Cw15;3)DCドナーO、A2、A24、B46、B60、DR14、DRw52、DQ1;5)ドナーB、A1、A3、B7、B8、DRB1*1501、DRB5*0101、DQB1*0601であった。図29Bと29Cは、Vα24JαQ T細胞クローンによる樹状細胞の自家および同種の細胞溶解のグラフである。図29Dは、細胞溶解のカルシウムキレートによる抑止、および抗CD1dモノクローナル抗体42.1の付加による抑制のグラフである。クローンBW3およびBW5を、EGTAおよびMgCl2 (各4 mM)、またはモノクローナル抗体42.1もしくは対照IgG (100 μg/ml)に由来するF(ab')2断片の存在下または非存在下で、被験者のBW DCと共培養した。図29Eは、Vα24JαQ T細胞クローンOY3およびBW5と自家DCとの共培養後における、IL-4およびIFN-γの分泌を示す棒グラフである。
【図30】CD1d拘束T細胞と骨髄系樹状細胞との相互作用を示すモデルの略図である。インバリアントVα24JαQ T細胞が活性化すると、骨髄系樹状細胞の動員および活性化に重要なサイトカインおよびケモカインが分泌される。また、重要な細胞表面補助刺激分子も発現される。骨髄系樹状細胞が成熟すると、CD1dの発現が促進され、CD1d拘束T細胞が活性化される。サイトカインおよびケモカインが分泌されることに加えて、活性化されたVα24JαQ T細胞は、パーフォリン、グランザイムB、およびグラニュリシン(Granulysin)の発現を促進する。これらの分子のCD1dに依存性の分泌により、骨髄系樹状細胞の溶解が起こる。
【発明を実施するための形態】
【0090】
詳細な説明
本発明者らは、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞のT細胞抗原受容体(TCR)に対する抗体を産生させる方法を開発した(図1)。本発明はまた、T細胞もしくは特定のT細胞亜集団の数、および/または活性の影響を受ける疾患もしくは症状の診断、画像化、および治療の応用に有用なNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞のTCRに対する精製抗体を提供する。このような疾患または症状の例には、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、および癌などがある。本発明の抗体を用いるエキソビボもしくはインビボにおけるNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の増殖は、単独で、またはサイトカインもしくは腫瘍ワクチンなどの他の治療的薬剤の投与とあわせて実施することができる。
【0091】
α-GalCerなどの抗原を使用するのではなく、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の増殖に用いる抗CDR3ループのモノクローナル抗体を使用することにより、自家APCに対する要件が排除され、それらを変動性の潜在的な原因として除き、臨床試験の手順を大いに単純化できると考えられる。またモノクローナル抗体を使用することで、複数の細胞種に由来する非特異的なポリクローナルT細胞の増殖に対する、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の特異的な増殖が可能になると考えられる。
【0092】
Bリンパ球およびTリンパ球のほぼすべての個々のクローンの抗原受容体は、固有のランダムな体細胞再編成の産物である。このような再編成は一卵性双生児でも起こり、相互に異なる数百万種の受容体が生じる。これとは対照的に、本発明で使用されるCD1d-選択的およびCD1d-反応性のインバリアントTCRは、固有に普遍的な標的となる。インバリアントTCR-αのCDR3ループの配列は、すべての個体で同一なので、同領域を用いて、ヒトのインバリアントTCR-α鎖を認識する新しいモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を作製することができる。このモノクローナル抗体は、正常なドナーに由来するインバリアントT細胞をエキソビボで優先的に同定し、それを増殖させることができる。本発明のモノクローナル抗体を用いた、本発明者らによる細胞を増殖させる方法により、バルク培養物に含まれる細胞集団サイズが約>108のインバリアントT細胞、および10〜20 mlの末梢血を出発材料とする>107の個々のクローンが得られる。わずか数万個のインバリアントT細胞が、マウスを対象に実施された細胞輸送実験で機能することが報告されている(Sonodaら、前掲)。したがって、ヒトの第1相臨床試験は、約106個の細胞から始め、109個の最大細胞量を標的とするような、用量増加群(a dose escalation arm)を組み入れることができる。この範囲の細胞の注入は耐容性が優れていると予測されている。例えばドナーの白血球の注入では、顕著な副作用がない1010の桁の未精製細胞を日常的に用いる。
【0093】
抗腫瘍効果に加えて、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞は、細胞内病原体に対するTh1防御性の免疫応答に寄与する可能性がある。例えば本発明者らは、急性の細胞変性ウイルス(脳心筋炎ウイルス、EMCV-D)に対する免疫応答が、CD1dノックアウトマウスではみられないことを見出している(Exleyら、J. Leuk Biol. 69:713、2001)。この結果は、本発明の抗体をウイルス、細菌、寄生虫、真菌、原虫、または他の真核性病原体を原因とする疾患を含む、感染症の予防または治療にも使用できることを示唆している。
【0094】
NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞は、刺激条件に依存して、Th1応答、Th2応答、または免疫偏向反応を増強することができるため、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞の反応は、エキソビボで増殖させたNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞の注入前、注入中、もしくは注入後におけるサイトカインのインビボにおける投与か、あるいはサイトカインの存在下におけるエキソビボにおける細胞の増殖の実施のいずれかにより、または2つの方法を組み合わせることによって調節することができる。Th1応答へT細胞を向けることが公知の、IL-12、IL-15、またはIL-18などのサイトカインを用いることで、癌、感染症、アレルギー、喘息、妊娠、および炎症の予防または治療における、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞の有効性が上昇すると予測されている。または、IL-2、IL-4、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IFN-α/β、IFN-γ、およびGM-CSFなどの他の任意のサイトカインを用いて、Th2応答が防御的に作用する自己免疫疾患および移植片対宿主病を予防または治療するために、T細胞をTh2応答方向に偏向させることができる。または、このようなサイトカインを用いることで、T細胞をTh1応答およびTh2応答から離して、妊娠維持に寄与する可能性のある免疫偏向反応に偏向させることができる。免疫偏向反応には、免疫的に隔絶された部位における応答などの、持続的な免疫応答の抑制が含まれる。TGF-βおよびIL-10は、免疫偏向反応に関与する可能性のあるサイトカインの例である(Sonodaら、前掲)。
【0095】
エキソビボにおけるNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の増殖における用途に加えて、本発明の抗体をヒトなどの哺乳類に投与して、自己免疫疾患、感染症、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、または癌の予防もしくは治療に用いるNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の数を、インビボで増やすことができる。例えばインバリアントNK T細胞などの特定のT細胞のレベルの低下は、前立腺癌、多発性硬化症、HIV、および1型糖尿病の患者で確認されている(実施例9、11、および12)。または、Vα24+CD161+ T細胞数の減少は黒色腫患者で過去に報告されている(Kawanoら、Cancer Res. 59:5102、1999)。したがってインバリアントNK T細胞の機能の喪失は、進行癌における一般的な結果となる可能性がある。または、サイトカイン産生または細胞毒性などの、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞に対する結合、およびその増殖または活性を抑制する抗体を用いて、哺乳類におけるT細胞の病因を抑制することができる。例えばアレルギーはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞のTh2応答により生じたり悪化させる場合があるので、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の増殖またはTh2応答を抑制することは、上記症状の予防または治療に有用な場合がある。同様にNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞のTh1応答を低下させることは、自己免疫疾患の改善、安定化、もしくは予防、または自然流産の予防につながる場合がある。肝炎ウイルスなどの感染源によって誘導されるTh1応答も、以上の細胞を抑制することで極めて小さくなる可能性のある損傷を生じる場合がある。上記細胞を抑制する抗体の例には、一価の分子もしくはFab分子、または抗体が細胞に結合することで細胞を損なう毒素もしくは放射標識を結合させた抗体などがある。このような抗体は、細胞上に発現したTCRに結合して、リガンドとTCRとの結合を妨げることがある。
【0096】
本発明の抗体は、画像化における応用にも使用できる。特に本発明の抗体を蛍光または放射標識に結合させることで、インビボにおける、または生検試料、血液、および他の身体材料、もしくは体液における、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の視覚化に使用することができる。本発明の抗体は、上記試料からNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞を精製する際にも使用することができる。本発明の抗体は、インバリアントT細胞ではなく、骨髄や肝臓などの複数の部位においてインバリアントT細胞より豊富に存在する他のNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞にも結合可能である。細胞の約0.1%がインバリアントT細胞である末梢血試料から、インバリアントT細胞を精製する際に本発明の抗体を用いて、90%〜95%がインバリアントT細胞である細胞を単離することができる。より高い純度も、複数回の精製を行うことで、または1回の精製段階に複数の抗体を用いることで達成することができる。
【0097】
さらに高い純度またはより多い細胞数は、抗原および抗原提示細胞(APC)をT細胞に接触させることでも達成することができる。関心対象のT細胞に対する任意の抗原(例えばタンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物、核酸、感染性物質、または小分子)を使用することができる。CD1d反応性T細胞に対して使用可能な抗原の例には、感染性病原体に由来する脂質またはグリコシル-ホスファチジルイノシトール抗原、およびα-GalCerなどがある。他の抗原には、クラスIまたはクラスIIのMHC分子によって提示されるペプチド抗原およびタンパク質抗原などがある。
【0098】
さらに抗原は、APCの非存在下で関心対象のT細胞に提示させることができる。例えばリポソームに結合させた可溶性の抗原提示分子、または固定化された状態の抗原提示分子(例えばCD1d、クラスI MHC、またはクラスII MHC)を用いて、APCの非存在下で関心対象のT細胞の活性化または増殖が可能な条件下で、抗原(例えば脂質もしくはペプチド)をT細胞または関心対象のT細胞を含む試料に提示させることができる。使用される抗原提示分子は天然分子の場合もあれば、化学的または遺伝学的に修飾された分子の場合もある。例えば、このような分子は、GST、マルトース結合タンパク質、ヘキサヒスチジン、またはFc領域融合タンパク質などの融合タンパク質として発現させることができる。膜結合ドメイン、膜貫通ドメイン、または疎水性領域を含む融合タンパク質として発現される抗原提示分子を脂質分子と混合することで、融合タンパク質を含むリポソームもしくはミセルを形成させることができる。表面に抗原提示細胞を有するリポソームまたはミセルは、APCが抗原をT細胞に提示する能力を模倣している。または抗原提示分子は、硬質表面または半硬質表面などの固相支持体上に固定化することができる。このような支持体は、膜、フィルター、チップ、スライド、ウエハー、ファイバー、磁気ビーズまたは非磁気ビーズ、ゲル、チュービング、ストリップ、プレート、ロッド、ポリマー、粒子、微粒子、およびキャピラリを含むがこれらに限定されない、任意の多孔性または非多孔性の水に不溶性の材料でありうる。望ましいならば、このような支持体には、タンパク質を結合させるためのウェル、トレンチ、ピン、チャンネル、および孔などの、さまざまな表面形状をもたせることができる。
【0099】
溶液、固相支持体に固定化された状態、またはリポソームもしくはミセル含まれる、いずれかの状態の抗原提示分子は、同分子が抗原と結合できる条件下で、関心対象のT細胞亜集団に対する抗原に接触させることができる。次にこのような抗原を関心対象のT細胞に相互作用させて、T細胞の増殖および/または活性化を誘導することができる。APCの非存在下で抗原によって、関心対象のT細胞を増殖させるかまたは活性化させる、これらの方法は、APCなどの余分な細胞の存在が望ましくない場合がある臨床状況で、望ましい可能性がある。
【0100】
フローサイトメトリーによるインバリアントT細胞の定量に本発明の抗体を用いることは、現行の方法に勝る多くの利点がある。現行の方法には、実施例6に記載されたように、それほど特異的でない抗体を用いるフローサイトメトリー、またはTCR-α鎖をコードするmRNAに対応するcDNAを合成および増幅する段階、ならびに増幅したcDNAを、インバリアントT細胞クローンから作られたcDNAおよび対照T細胞クローンから作られたcDNAと比較する段階を含む、PCRを利用した方法のいずれかが含まれる。フローサイトメトリー法にはインバリアントT細胞の総数を決定できるという利点がある。これに対しPCRを利用した方法では、試料に含まれるインバリアントT細胞の相対頻度しか決定できない。またフローサイトメトリーでは、インバリアントT細胞上でどのマーカーが発現されているかを決定することができる。フローサイトメトリー法はまた、約1日を要するPCR法に比べて単純かつ迅速な方法であり、約1時間で実施することが可能であり、分子生物学的技術における熟練を必要としない。したがって本発明の抗体を用いるフローサイトメトリー法は、臨床状況によってはさらに望ましい場合がある。同様の方法で、本発明の抗体を用いることで他のNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞を定量することもできる。
【0101】
また本発明の抗体を、疾患を有する被験者、または疾患の危険性のある被験者の診断に用いることができる。実施例6、9、および10に記載されたように、本発明の抗体を用いることで、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の数を定量して、このような細胞を、サイトカイン産生および細胞毒性活性の測定用に単離することができる。このようなパラメータを、被験者と、症状を有する被験者、および/または症状がない被験者との間で比較することで、症状に対する危険性、症状の存在、重症度、病期、回復度、寛解を診断することができる。
【0102】
以下の例は、本発明を説明するためのものである。これらは本発明をいかなる様式でも制限しないことを意味する。以下の実施例に記載された方法は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、JαQ+ T細胞、および/またはインバリアントT細胞に適用されうると理解すべきである。
【実施例】
【0103】
実施例1:ヒトNK T細胞の抗原受容体α鎖に対する抗体の作製
ヒトのすべてのインバリアントTCR+ T細胞には、CDR3ループ中に同じアミノ酸配列が存在するので、この領域を用いて抗CDR3ループ抗体を作製するためのペプチドを設計することができる。マウスおよびヒトのCDR3ループの配列はほぼ同一(

それぞれ配列番号:2および3)なので、ヒトCDR3ループ配列をもつペプチドをマウスに投与すると、マウスの免疫系により自己ペプチドとして認識され、そのため抗体産生を誘導しないと考えられる。
【0104】
このような潜在的な問題を克服するために、インバリアントTCR+ T細胞をもたないCD1dノックアウトマウス(Sonodaら、前掲)を、抗CDR3ループ抗体を産生させるための宿主として用いた。このようなマウスはインバリアントTCR-α鎖をもたないので、異物としてヒトCDR3ループの配列を含むペプチドを認識することが可能であり、そのため、このようなエピトープに対する抗体を産生する。
【0105】
抗体およびハイブリドーマの産生には、ヒトのインバリアントTCR-α鎖のCDR3ループの一部に対応するアミノ酸配列をもつペプチド

を使用した。このペプチドを、そのN末端のアミノ基とC末端のカルボキシル基を反応させることで環状化した。この環状ペプチドにキーホールリンペットヘモシニアン担体を結合させ、CD1dノックアウトマウスに標準的な手法で投与した。またウシ血清アルブミンに結合させた同ペプチドを、ブースター注射として投与した。次にインバリアントTCR+ T細胞を数匹のマウスに投与して免疫系をさらに刺激した。このマウスから採取した血清を対象に、卵白アルブミンに結合させたペプチドに結合する抗体の有無について、標準的なELISAアッセイ法で調べた。ハイブリドーマは、血清陽性マウスの脾臓から標準的な手法で作製した。ELISAで陽性を示したハイブリドーマのウェルをさらにFACSで調べ、Vα24JαQクローンに対する抗体の結合を陰性対照と比較した。Vα24JαQクローンには結合したが陰性対照には結合しなかった抗体を産生する細胞をクローン化し、標準的な手法で脾臓の免疫細胞と融合させた。対象ペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの集団を、次にELISAアッセイ法で同定した。続いて、無処置のNK T細胞上に発現されたインバリアントTCR-α鎖を認識するクローンを選択するスクリーニングでは、ハイブリドーマの反復クローニングを行い、インバリアントTCR-α鎖を発現する細胞には結合するが陰性対照には結合しない細胞をFACSで調べ、ペプチドに対する特異的な結合の有無をELISAで確認した。ハイブリドーマのクローンを分泌するこのような安定なモノクローナル抗体は、当業者によって、臨床試験レベルの質および量をもつモノクローナル抗体試薬の作製および精製に使用することができる。
【0106】
2つの抗体(3A6および6B11)が、ヒトのインバリアントT細胞を優先的に認識することが判明した(図2)。6B11はIgG1であり、3A6はIgMである。6B11が独占的にVα24モノクローナル抗体でないことを示すために、FACSで精製されたバルクVα24+ T細胞をPHAを用いて増幅した。この細胞を次にVα24、Vβ11および6B11の各モノクローナル抗体で分析した(図3)。得られた結果は、6B11が、Vβ11モノクローナル抗体に似て、Vα24+ T細胞の一部を認識することを示している。また複数のドナーを対象に単細胞選別を行い、6B11+ T細胞に由来するクローンを確立した。6B11は、CD1d+標的と同じサイトカイン応答を誘導することも判明した。
【0107】
CDR3ループに反応する抗体を産生させる上記の方法は、任意のTCRを対象として実施することもできる。関心対象のTCR-α鎖またはTCR-β鎖のCDR3ループの配列は、他のTCR-α鎖もしくはTCR-β鎖との配列アライメントを基に、または関心対象のTCR-α鎖もしくはTCR-β鎖の3次元構造モデル化、もしくは実験的に決定された3次元構造を基に決定することができる(JohnsonおよびWu、Nuc. Acid. Res. 29(1):205〜206、2001;http://immuno.bme.nwu.edu)。上述するように、このようなCDR3ループの配列を含む環状ペプチドを、CDR3ループに反応する抗体を産生させるための抗原ペプチドとして使用することができる。この環状ペプチドは、動物(例えば実験動物または獣医学的な関心がもたれる動物)に1回または複数回投与することができる。抗体の産生をさらに促進するために、関心対象のT細胞を動物に投与することもできる。抗体の産生に使用可能な哺乳類の例にはマウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、およびウシなどがある。使用可能な鳥類の例にはニワトリやシチメンチョウなどがある。このような宿主動物は野生型動物でも、抗体が産生されるT細胞亜集団の量が減少した動物、またはこれを欠く動物でもよい。使用可能な他の動物には、天然の動物、遺伝的修飾を受けた動物、またはT細胞を欠く動物の場合がある。抗体を産生させることのできる他の任意の動物も、本発明の抗体を産生させる際に使用することができる。
【0108】
結果として得られた抗体を、抗体産生用の宿主動物として、同じ属もしくは種の他の動物を対象とした診断または臨床における応用に用いることができる。また本発明の抗体は、宿主動物として異なる属の動物を対象とした応用に使用することができる。例えばニワトリで産生された抗体を、他のニワトリもしくは他の鳥における疾患の治療または予防に使用することができる。
【0109】
特定の疾患もしくは症状の治療、予防、または診断用の抗体を作製するために、疾患もしくは症状に関連するT細胞亜集団のCDR3ループを使用することができる(例えば表1を参照)。例えば、疾患もしくは症状のない対照被験者における、対応するT細胞亜集団に対して、疾患もしくは症状を有する被験者において、上昇したレベルもしくは低下したレベルで存在するか、または活性が増大もしく減少したT細胞亜集団を用いて、本発明の抗体を作製することができる。あるいはT細胞を、疾患もしくは症状を有する被験者から採取した試料(生検試料など)から単離することができる。試料に含まれるT細胞亜集団の特性は、さまざまなT細胞マーカーに反応する抗体を用いたFACS解析、またはTCR-α鎖もしくはTCR-β鎖の配列決定などの標準的な手法で決定することができる。単離されたT細胞亜集団に由来するCDR3ループは、抗体の作製に使用することができる。このような抗体を、疾患または症状を有する被験者(T細胞亜集団を単離した元の被験者、ならびに同じ症状を有する他の被験者を含む)に投与して、関連するT細胞の数および/または活性をインビボで調節することができる。このような抗体を用いて、関連するT細胞をエキソビボで増殖させた後に、増殖させたT細胞を被験者に再投与することもできる。
【0110】
本発明の抗体を、任意の抗原感作に反応して動物(例えばヒト、他の哺乳類、および鳥類)の体内で遭遇する任意の抗原に特異的な、オリゴクローナン的に増殖したT細胞亜集団に対するように作製することもできる。このようなT細胞サブセットには、複数の個体における抗原の免疫優性成分に反応してオリゴクローナン的に増殖したT細胞が含まれる。例えば対象抗原を動物に投与して、投与によって生じるオリゴクローナン的に増殖したT細胞サブセットを単離して、本明細書に記載された抗体の作製に使用することができる。
【0111】
(表1) 記載した疾患または症状が関与する臨床応用に用いる抗体の作製に使用可能なT細胞受容体

【0112】
実施例2:モノクローナル抗体によるヒトインバリアントT細胞の単離および増殖
図4は、プレートに結合させた6B11モノクローナル抗体を、インバリアントT細胞の選択的な増殖に使用できることを示す。このように、15人の健康なドナーに由来する20クローンおよび15系列を上回る、6B11を用いた分析では全体的に一貫した結果が得られた。すなわち100%がVα24+Vβ11+CD161+であり、CD1d反応性が高く、IL-4を多く産生し、またIFN-γを中程度に産生した(表2)。得られた結果から、このようなモノクローナル抗体に特異性があること、および臨床試験の状況次第では望ましくない場合がある自家APCを必要としない、より限定的かつ単色の代替法として使用できることがさらにわかる。
【0113】
(表2) 6B11抗体によるT細胞系またはT細胞クローンの増殖後に、インバリアントNK T細胞マーカーを発現し、サイトカインを産生する細胞の割合(%)

【0114】
モノクローナル抗体6B11+は単独でも使用され(2ドナー、10クローン)、または抗Vα24抗体と対として(9ドナー、87クローン)、追加的なインバリアントT細胞を単細胞選別でクローン化した。すべてのクローンは、インバリアントCD1d拘束T細胞であることが確認された。これらのクローンはいずれも、TCR-α鎖の配列分析の結果、インバリアントTCR-α鎖も含んでいた。またすべてのクローンがCD1dに拘束されていた(Exleyら、J. Exp. Med. 186:109、1997)。一部のドナーでは、6B11+ T細胞およびCD3+ T細胞の数は極めて少なかった。T細胞の精製に6B11抗体のみが使用された2人のドナーには上記集団は認められなかった。ドナーの1人は、末梢血に0.01%のVα24+Vβ11+細胞を含んでいた。このドナーの6/6 Vα24+Vβ11+CD1d拘束T細胞の産生は、6B11に特異性があることを意味する。偶然に6/6 Vα24+Vβ11+のクローンとなる確率は(10-4)6である。図6A〜6Cに示すように、6B11抗体は、CD1d拘束T細胞系のIL-4分泌も促進する。
【0115】
またFACS選別段階、または磁気ビーズを用いた免疫親和性精製段階のいずれかで6B11抗体を使用してから、分裂促進因子の存在下で増殖させるとインバリアントNK T細胞が単離された(例えば図8、9、10A〜10H、および11A〜11Fを参照)。PBMC中の約0.05%のリンパ球がインバリアントT細胞であるPBMCを出発材料とすると、精製および増幅された細胞の約5〜30%がインバリアントT細胞であった。
【0116】
6B11抗体は、さまざまな人種および年齢群の100人以上の被験者を含む、検討されたすべてのドナーに由来するインバリアントNK T細胞のクローンおよび系列を認識した(例えば図8B〜8Iを参照)。この抗体は、癌と診断された被験者、および癌と診断されていない被験者を含む男女被験者におけるインバリアントNK T細胞も認識した。以上の結果から、6B11抗体がインバリアントNK T細胞を認識する能力が、特定の患者集団に制限されないことがわかる。
【0117】
6B11抗体が、インバリアントNK T細胞を増殖させる能力は、α-GalCerをパルスした自家樹状細胞がもつ同能力と同等であった。比較目的で、「MoFlo」で選別したVα24細胞を、α-GalCerをパルスした自家樹状細胞、6B11モノクローナル抗体、または分裂促進因子(PHA)で、IL-2の存在下で約4週間の増幅で増殖させた。図7A〜7Cに示したように、6B11抗体を用いたときのインバリアントNK T細胞の増殖は、α-GalCerを用いて達成された増殖と同等であった。しかし6B11抗体を用いたときの増殖では、APCを必要としないという利点があった。
【0118】
実施例3:関心対象のT細胞の単離および増殖の例示的な方法
関心対象のT細胞亜集団の精製では、正および/または負の選択段階を行うことができる。正の選択段階に使用可能な抗体の例には6B11抗体、3A6抗体、抗Vα24抗体、抗Vβ11抗体、および抗CD161抗体などがある。
【0119】
関心対象のT細胞は、一部の望ましくないT細胞を除いたり、または試料に含まれる他の混入物を除いたりする負の選択段階で濃縮することができる。例えば抗CD8抗体、および/または抗CD4抗体を用いて、インバリアントNK T細胞に関して試料を濃縮することができる。負の選択段階は、正の選択段階の前に、正の選択段階と同時に、または正の選択段階の後に実施することができる。
【0120】
正および/または負の選択段階は、T細胞増殖段階の前もしくは後に実施することができる。一つの可能な方法では、関心対象のT細胞を最初に精製した後に優先的に増殖させる。別の可能な方法では、増殖させたT細胞を高容量カラムを用いて精製する(例えば1010個に増殖させた癌患者の末梢血単核球(PBMC)からは、大規模なMiltenyi(ミルテニ)または他のカラムを用いた精製段階後に、106個のインバリアントNK T細胞が得られる)。
【0121】
可能な正の精製段階の例には以下のような段階がある。これらの方法は、関心対象の任意のT細胞亜集団に反応する本発明の抗体とともに使用することができる。
【0122】
例示的なFACSの手順
PBMCまたは他の組織供給源を自家血清を用いて4℃でブロックする。インバリアントT細胞に反応する抗体(例えば6B11抗体または3A6抗体)を、約1〜10 μgの抗体/107〜8のPBMCの比になるように添加し、4℃で20分間インキュベートする。この方法で使用する抗体はFITCまたはビオチンなどの結合体(conjugate)で直接標識することができるほか、抗体を二次抗体で間接的に標識することができる(例えば抗IgG-Fluorochromeまたはストレプトアビジン-Fluorochrome)。異なるフルオロフォアで標識された1つまたは複数の他の抗体も添加することができる(図7A〜7Cおよび9)。次に細胞および抗体の溶液をPBSまたは他の任意の生理的緩衝液で洗浄し、未結合状態の抗体を除去する。
【0123】
望ましいならば、FACS細胞選別装置の設定は、正の対照抗体(例えば一般的な抗T細胞抗体)、または陰性対照抗体のいずれかを用いて調節することができる。関心対象の試料は、高速FACS選別装置(例えば「MoFlo」FACS選別装置)を用いることで、1時間あたり約1億個の細胞の速度で分析することができる。精製されたT細胞は、PHA、抗CD3抗体、6B11抗体、3A6抗体、および/またはα-GalCer抗原刺激CD3モノクローナル抗体などの分裂促進因子の存在下で、T細胞用培地[例えば緩衝液(例えばHepes)、グルタミン、および抗生物質(例えばゲンタマイシン)を添加したRPMI-1640または等価の培地を溶媒とする10% ウシ胎児血清、またはヒト自家血清もしくはABプール血清]中で増殖させることができる(Exleyら、1997および1998、前掲;Wilsonら、Nature 391:177、1998)。このような抗体は、溶液中に存在してもプレート状に結合した状態であってもよい。放射線を照射した自家フィーダーおよびIL-2 (10〜100 U/ml)を直ちに添加することもでき、または増殖中の任意の時点で添加することができる。IL-7 (〜1〜10 ng/ml)、および/またはIL-15 (〜1〜10 ng/ml)は、インバリアントNK T細胞の収量を増加させることができる(例えばWilsonら、1998、前掲;van der Vlietら、Journal of Immunological Methods 247:61〜72、2000)。デキサメタゾンまたは関連する選択的な免疫抑制剤(〜1 μM)は、典型的なT細胞の成長を抑制しつつインバリアントNK T細胞の成長を優先的に促進することができる(例えばMilnerら、J. Immunol. 163 (5):2522〜2529、1999)。培地は、1週間に2回程度の頻度で新鮮な培地と交換する。増殖中または増殖後(例えば増殖開始てから2〜4週後)に、T細胞の表現型をFACSで解析することができる。この分析は6B11抗体、抗Vα24抗体、抗Vβ11抗体、抗CD4抗体、抗CD8αβ抗体、または抗CD161抗体を染色することで実施可能である。
【0124】
磁気ビーズを用いる例示的な手順
PBMCまたは他の組織供給源を、PBSまたは他の生理的緩衝液と4℃で混合することで、1〜10%の自家血清でブロックする。インバリアントT細胞(例えば6B11抗体または3A6抗体)に反応する1つまたは複数の抗体を、約1〜10 μgのモノクローナル抗体/107〜8のPBMCの比になるように添加し、4℃で20分間インキュベーションする。この方法に使用される抗体は、FITCもしくはビオチンなどの結合体で直接標識することができるほか、二次抗体(例えば抗IgG-Fluorochromeまたはストレプトアビジン-Fluorochrome)で間接的に標識することができる。異なるフルオロフォアで標識した1つまたは複数の他の抗体も添加することができる(図7A〜7Cおよび9)。次に細胞および抗体の溶液をPBSまたは他の任意の生理的緩衝液で洗浄する。107〜8個のPBMCあたり10〜100 μlのミルテニ MACS Microbeads Anti-mouse IgG #484、またはMACS Steptavidin Microbeads #481/などの磁気ビーズ;107〜8個のPBMCあたり105〜7個のダイナル(Dynal)抗IgG #M450ビーズを添加し、溶液を4℃で混合する。磁石を用いてビーズを単離した後に、製造業者の推奨(例えば製品番号130-042-201などのミルテニ MS型分離カラム、およびMACSマルチスタンドまたはダイナルもしくは互換性のある磁石上のチューブ内のダイナルビーズ)にしたがって洗浄する。洗浄して精製した細胞を、マルチウェルにT細胞培地[緩衝液(例えばHepes)、グルタミン、および抗生物質(例えばゲンタマイシン)を添加したRPMI-1640または等価の培地を溶媒とする10% ウシ胎児血清、またはヒト自家血清もしくはABプール血清]とともにプレーティングする。この細胞は、ビーズに直接結合するモノクローナル抗体を用いて、または溶液中のモノクローナル抗体を用いて増殖させることができる。追加的に、もしくは代替的に上記細胞を、PHAなどの分裂促進因子、抗CD3抗体、6B11抗体、3A6抗体、またはα-GalCer抗原刺激性CD3モノクローナル抗体などを添加した培地を用いて増殖させることができる。この抗体は、溶液に含まれる状態か、またはプレート、ビーズ、もしくは他の固相表面に結合した状態とすることができる。上述の通り、IL-7、IL-15、およびデキサメタゾンなどの他のさまざまな試薬は、産物の収率および/または純度を改善することができる。増殖後のT細胞の表現型は上述の手順で分析することができる。
【0125】
実施例4:インバリアントT細胞の磁気ビーズによる精製
図10A〜17は、このような磁気ビーズを用いた精製法で、多数の精製インバリアントT細胞を調製可能なことを示す。具体的には6B11抗体を、(1)親和性精製したヤギ抗マウスIgGを表面に共有結合させたダイナル超常磁性ポリスチレンビーズ(Dynabeads(登録商標) M-450ヤギ抗マウス IgG、製品番号110.05)、または(2)ヤギ 抗マウスIgGを結合させたミルテニ MACSコロイド超常磁性マイクロビーズ(製品番号484-02、ミルテニ・バイオテック)のいずれかに、製造業者の指示書(Dynabeads(登録商標) M-450ヤギ抗マウスIgGの添付文書;MACSヤギ抗マウスIgGマイクロビーズの指示書)にしたがって結合させた。PBMC細胞は、6B11-ダイナルまたは6B11-ミルテニビーズを用いて精製することでインバリアントT細胞について濃縮した。次に精製細胞を、さまざまな条件で4〜8時間かけて増殖させた。例えば、このようなT細胞を、図12〜17に示すようにPHA、6B11抗体、IL-5、IL-7、同種APC、および自家APCの1つまたは複数の存在下で増殖させた。「PBMC」の列は増殖前に選別されなかったPBMC細胞を示す。「ダイナル@40」の列は、増殖前に6B11-ダイナルbeadsで精製されたPBMC細胞を示す。「ミルテニ@20」の列は、増殖前に6B11-ミルテニビーズで選別されたPBMC細胞を示す。
【0126】
図12〜17に記載された実験では、IL-7およびIL-15を添加するとインバリアントT細胞の収量が増加した。検討した濃度において、IL-7、IL-15、およびデキサメタゾンはインバリアントT細胞の純度を上昇させなかった。6B11を用いた増殖後にα-GalCerを用いたときの増殖ではインバリアントT細胞の純度は改善しなかったが、インバリアントT細胞の数は増加した。制限性(6B11+CD161)または(CD3+CD161)のいずれもインバリアントNK T細胞の収量を増加させなかった(図12〜17)。
【0127】
インバリアントT細胞はビオチン化6B11でも精製された。この手順では、フィコールで精製したPBLを6B11-ビオチンとインキュベートした。次に細胞を洗浄して未結合状態の抗体を除き、ミルテニ微粒子に結合させたストレプトアビジンとインキュベートした。6B11+細胞は製造業者の指示書にしたがって磁気ビーズ選択法で単離した。IL-2およびIL-7を併用して6B11抗体を用いることで計6系列が得られた。6系列のうち3系列が増殖し、表面の表現型はインバリアントVα24+ CD1d拘束T細胞と一致していた。この系列は、増殖後に76%〜99%がインバリアントとなった。純粋な系列のFACSプロファイルを図18に示す。インバリアントT細胞のクローニングおよび増殖が成功したことは、6B11をMACS(商標)テクノロジーとあわせて用いることで、FACSを利用したクローニングプロトコルおよび放射線を照射したフィーダーを必要とすることなく、CD1d拘束T細胞を血液から直接単離可能なことを意味する。
【0128】
実施例5:NK T細胞のTh1/Th2/免疫偏向反応の比を変化させるエキソビボまたはインビボにおけるサイトカイン療法
特定の理論に本発明を制限する意図はないが、一つの作業仮説は、高レベルのIL-4(他の「Th2」サイトカインを伴うと考えられる)を産生するNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞は、Th2免疫応答へ偏向する一方、IL-4に比べて高レベルのIL-12(活性化されたCD1d反応性T細胞によりAPCから誘導される)および/またはIFN-γ(T細胞そのものから産生される)が、腫瘍もしくは感染性病原体に対する免疫応答を誘導する(または少なくとも誘導性インバリアントT細胞のマーカーとなる)というものである。
【0129】
NK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞は、Th1-様のNK、またはリンフォカインで活性化されるキラー(LAK)様のインバリアントT細胞の細胞毒性、ならびにインビボにおける抗腫瘍活性もしくは抗病原体活性を増大させると考えられるIFN-γ産生に偏向する可能性がある。この方法の実行可能性は、初期のIL-4によるインバリアントT細胞の偏向が、IL-12のエキソビボにおける増殖によって変化して、IL-4に対して著しく高いレベルのIFN-γを生じるという所見により示されるため、これはTh1により偏向されたインバリアントT細胞を産生するための、有望で単純な方法となる(表3)。IL-12による培養が、インバリアントT細胞のIFN-γの産生を増強し、またNK/LAK様の細胞毒性を有意に増強させることを示す確証的な結果が最近報告されている(van der Vlietら、Immunology 98:557〜63、1999)。
【0130】
(表3) IL-12とインキュベートしたインバリアントNK T細胞によるIFN-γ産生の促進

CD1d反応性Vα24+Vβ11+ T細胞系は、IL-12の有無にかかわらず確立され、インバリアントNK T細胞を特異的に刺激する限定的なプレート結合性抗CD3抗体および過剰なCD161抗体で促進された。
【0131】
したがってインバリアントT細胞は、本発明の抗体とのエキソビボにおける増殖中に0.3 nMのIL-12中で培養することでTh1表現型に再極性化される(Exleyら、前掲(1998))。IL-15、IL-18、および1型INFは、ヒトT細胞のTh1極性化を促進することも知られている。NK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞をTh1応答、Th2応答、または免疫偏向反応に向かって偏向させる可能性のある、他のサイトカインもしくはサイトカインの組み合わせには、IL-2、IL-4、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IFN-α/β、IFN-γ、およびGM-CSFなどがある。Th2応答は、自己免疫疾患の予防または治療に望ましい場合がある。または妊娠維持に関して、サイトカインを用いてNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞をTh1応答もしくはTh2応答ではなく免疫偏向反応に向けさせる偏向させることができる。増殖中にT細胞が産生するサイトカインに結合する抗IL-4抗体または抗IL-12抗体も、上記のT細胞の免疫偏向またはTh2応答に有利に作用する。このようなサイトカインは、T細胞が増殖する期間を通して存在したり、T細胞増殖の最後の数日間といったT細胞増殖の期間の一部に対してのみ存在する可能性がある。
【0132】
1つまたは複数の上記サイトカインの存在下における増殖後に、T細胞の機能をIL-4、IL-10、GM-CSF、およびIFN-γの分泌に関して検討することができる。サイトカインの追加によるCD1d+ (CIR、CD1d)、「NK」標的(JY、K562、721.221、およびYAC-1)、またはLAK標的に対する細胞側性の制御を決定することもできる(Exleyら、前掲 (1997);Exleyら、前掲、(1998))。
【0133】
または1つまたは複数のサイトカインを、エキソビボで増殖させたNK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞の再導入前、再導入中、再導入後にインビボで患者に投与して、再導入細胞をTh1応答、Th2応答、もしくは免疫偏向反応に偏向させることができる。
【0134】
実施例6:疾患の治療法または予防法で誘導されたインバリアントT細胞の数または活性の変化の決定
本発明のモノクローナル抗体を高感度で特異的な方法に用いて、疾患の治療法または予防法が、インバリアントT細胞の数を増加させるか、および/またはインバリアントT細胞に優先的に結合したり、その機能を調節するか否かの判定を行うことができる。これとは対照的に、インビボにおけるIL-12抗癌療法がインバリアントに及ぼす作用を決定する従来の分析法が、インバリアントT細胞の増加が検出されてないVβ11モノクローナル抗体を併用する場合(n=10)において、Vα24モノクローナル抗体を使用する比較的感度の低いフローサイトメトリー法で実施されている(図5)。正常なドナーにおけるインバリアントT細胞の数が少なく、また進行癌タンパク質でみられる数がさらに少ないことを考えれば、後述する方法を用いることで、IL-12療法、または他の治療法がインバリアントT細胞に及ぼす作用をより正確に決定することができる。累積用量がインバリアントT細胞に及ぼす作用は、このような分析を各投与後に行うことで決定することができる。
【0135】
患者は、上記実験において自身の対照となることができる。約20 mlの末梢血を、治療開始前と治療中に患者から回収する。この細胞の少量のアリコート(約106個の細胞)を用いてTCR-α鎖をコードするmRNAに対応するcDNAを合成し、またVα24プライマーおよびCαプライマーを用いてPCR増幅を行うことで、インバリアントTCR-α鎖を発現する細胞の出現頻度を決定することができる。集団全体におけるインバリアントTCRの占める比率は、連続希釈したインバリアントT細胞クローンを対照T細胞クローンに較正することで決定することができる。
【0136】
上記のPCR分析に代わる方法として、フローサイトメトリーを用いて、インバリアントT細胞の出現頻度および数を決定することができる。特に癌患者でみられる数は少ないので、条件の最小数および分析回数(100,000回)の大きな数を各試料に使用する。標準的な方法でフルオレセインに良好に結合する抗CDR3ループモノクローナル抗体6B11、および/または3A6を簡単な1色または2色のFACS解析に使用することができる。また本発明の1つまたは複数のモノクローナル抗体、および他のインバリアントT細胞マーカー(Vα24、CD4、CD8、CD56、CD161、Vβ11)に対する抗体を用いたインバリアントTCR-α鎖の同時解析にはマルチカラーFACSを用いることができる。治療前後の患者試料を対象に得られた上記結果を比較することで、治療がインバリアントT細胞数に及ぼす作用の有無を決定することができる。サイトカインの産生および活性化細胞による細胞毒性は、実施例5に記載した手順で実施することができる。上記の結果をインバリアントT細胞の数に対して補正することで治療前後の患者を直接比較することができる。
【0137】
または、定量に1回の増殖が必要な場合がある。患者の試料はモノクローナル抗体による増殖に直接使用することができるほか、増殖前に標準的な手順で高速FACS選別、または磁気ビーズを用いた免疫親和性精製を行うことで、試料をインバリアントT細胞に関して濃縮することができる。FACS選別による濃縮に関しては、抗Vα24、6B11、もしくは3A6を用いた1色選別、または6B11または3A6、および抗Vα24、Vβ11、もしくはCD161を用いた2色選別を実施することができる。あるいは免疫親和性精製による濃縮では、1つまたは複数の負または正の選択を実施することができる。例えばネガティブディプリーション(negative depletion)を用いて、単球および/またはB細胞を除去することができる。続いてVα24モノクローナル抗体、および/または抗CDR3ループモノクローナル抗体を用いて正の選択を実施することができる。
【0138】
このような細胞は、プレートに結合させた抗CDR3ループモノクローナル抗体(6B11もしくは3A6)、または可溶性の同抗体とともに培養することができるほか、抗原をパルスした自家APCまたは同種APCとともに培養することができる。T細胞の1回の増殖は、初期の割合を広く表すが、このような細胞を増殖前に約1週間かけて培養することで、休止細胞と比べて増殖に対してほとんど反応しないように活性化細胞を休止状態にすることができる。
【0139】
初期刺激から約3〜4週後に、細胞の一部をVα24、Vβ11、および6B11の各モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーで解析し、インバリアントT細胞の占める比率を決定することができる。インバリアントT細胞数で補正したサイトカイン産生および細胞毒性は、治療前後の患者を対象に上述の通りに比較することができる。また初期刺激前の細胞を対象としたPCR分析またはFACS解析により、インバリアントT細胞の回収率(初期刺激後)の上昇が、エキソビボにおける刺激への反応の上昇に対する治療に起因する、インビボにおける増殖にどの程度影響するかを決定することができる。
【0140】
8〜10人の患者(治療後の2つの時点の平均)を対象に実施されたこの分析では、治療がインバリアントT細胞の数を増加させることができるか、または同細胞の活性を調節可能か否かを適切に決定すべきである。インバリアントT細胞に対する正の作用が明らかにされれば、用量、スケジュール、および他の免疫機能にインバリアントT細胞の反応を相関させる調査を行うことができる。例えばインバリアントT細胞の数、および/または反応の変化は、血清IFN-γ、TNF、およびIL-15;IL-12ならびに他のサイトカインおよびケモカイン受容体の発現;ならびにT細胞、骨髄系および他の細胞マーカー(Fas、FasL、Lymphotoxin-β、CD3、CD4、CD8、LFA-1、CD80、CD86、CD161)の変化を含む重要な免疫パラメータに相関する場合がある。
【0141】
インバリアントT細胞の数または活性の変化をみる上記の方法は、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞にも適用することができる。このようなT細胞の定量に事前の濃縮段階が必要であれば、本発明の抗体を含むこのような細胞に結合する任意の抗体を初期精製段階に使用するか、または負の選択により、T細胞でない細胞、またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞でない細胞を除去することができる。
【0142】
実施例7:エキソビボで増殖させたインバリアントT細胞の増殖および哺乳類への再導入
哺乳類の末梢血試料(20 ml、または白血球除去療法の産物に由来)に由来するインバリアントT細胞を、エキソビボにおける増殖前に、既に挙げた実施例で説明した通りにFACS選別または免疫親和性精製で濃縮することができるほか、本発明の抗体を用いて直接増殖させることができる。実施例5で説明したように、このような細胞をサイトカインの存在下で増殖させることで、Th1応答、Th2応答、または免疫偏向反応に向かって偏向させることができる。またIL-2、IL-7、または分裂促進因子を添加して細胞増殖を促進することができる。必要であれば、おそらく2回目の濃縮段階後における2回目のエキソビボ増殖を、初期増殖に用いられる条件で実施して、細胞の数および純度の両方を上昇させることができる。刺激後に、このような細胞を対象に、純度ならびにサイトカイン産生および細胞毒性を上述の通りに調べることができる。複数回の刺激により、正常なドナーに由来する、長期のヒトインバリアントT細胞の系列およびクローンを確立可能であり、そのために同様の結果が他の患者で予測されることに留意する必要がある。望ましくは少なくとも106個、より望ましくは少なくとも108個、また最も望ましくは少なくとも109個のインバリアントT細胞が増殖後に得られる。望ましくはインバリアントT細胞は、Vα24、Vβ11、およびCD161といったインバリアントT細胞マーカーの存在に基づき、少なくとも60%、80%、または90%純粋であり、IFNγおよびCD1d+および「NK」標的に対する細胞毒性の産生を維持している。
【0143】
2回目の刺激で適切な細胞数が得られない場合は、追加の刺激を行うことがある。あるいは大量の血液試料を用いることで、または白血球除去療法により最初の細胞数を増加させることができる。この場合、インバリアントT細胞の初回濃縮は、上述の通りにビーズに結合させたVα24または6B11モノクローナル抗体を用いた正の選択で実施することができる。純度を高めるために、インバリアントT細胞を再注入する前にFACSまたはビーズに結合させた抗体を用いて精製することもできる。また増殖させたポリクローナルのインバリアントT細胞系の細胞再注入による治療上の可能性を、増殖させたインバリアントT細胞のクローン、またはそのプールと比較することができる。
【0144】
エキソビボで増殖させたインバリアントT細胞の投与が、特定の投与様式、用量、もしくは投与の頻度に制限されることは意図されず、現行の様式は、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、宿主対移殖片疾患、自然流産、妊娠、または癌の予防もしくは治療に適切な用量を十分もたらす筋肉内、静脈内、動脈内、病巣内、皮下、または他の任意の経路を含むすべての投与様式を対象とする。望ましくは、このような細胞は、血液試料を採取した哺乳類に再注入される。この細胞が異なる哺乳類に投与されることも意図される。このような細胞は、単回または複数回、哺乳類に投与することもできる。複数回の投与を行うときは、例えば1週〜1か月に用量を分けることができる。実施例5で説明したように、1つまたは複数のサイトカインを、細胞の投与前、投与中、投与後に投与して、Th1応答、Th2応答、または免疫偏向反応に向かって偏向させることもできる。任意の特定の被験者については、特定の投与方法が、組成物の投与の施行もしくは管理を行う者の必要性および専門家の判断にしたがって時間的に調節されることが重要である。またT細胞を、適用に応じて休止細胞または活性化細胞として再注入することができる。休止細胞はインビボにおける活性化を必要とする場合がある。
【0145】
実施例8:エキソビボで増殖させたNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の増殖および哺乳類への再注入
他のNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞を、実施例7に説明された手順でエキソビボで増殖させることができる。この方法は、骨髄、肝臓、臍帯、または他の試料に由来するNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞を増殖させることで改変することができる。望ましくは試料は、末梢血と比べて多くの割合を占めるCD1d反応性非インバリアントT細胞を含む。また、(CD1d、脂質、他の抗原、もしくは抗体を用いる)共刺激、または共刺激の抑制を用いて所望のT細胞亜集団を増殖させることができる。例えばCD28の刺激は、インバリアントT細胞よりCD1d反応性非インバリアントT細胞の増殖に望ましい。CD161による刺激をブロックする可溶性の抗CD161抗体も、インバリアントT細胞と比べてCD161による刺激にそれほど依存しない非インバリアントT細胞の増殖に望ましい。プレートに結合させた抗体の量は、T細胞の増殖に対する共刺激への依存性を増大させるように減少させることもできる。
【0146】
また、異なるサイトカイン、またはサイトカインの組み合わせを存在させることで、所望のT細胞亜集団の増殖に有利な条件とすることができる。例えばNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の増殖中にIL-4、IL-7、またはIL-12とインキュベートすることができる。
【0147】
増殖させたNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞は、実施例7に記載した手順で哺乳類に再注入することができる。
【0148】
実施例9:癌患者におけるインバリアントNK T細胞数の減少
詳しく後述するように、前立腺癌患者では健康な患者と比べてインバリアントNK T細胞が少ない。したがって、インバリアントNK T細胞の数もしくは活性を上昇させる本発明の抗体は、前立腺癌の予防、安定化、または治療する方法として使用することができる。またエキソビボで増殖させたインバリアントNK T細胞を被験者に投与して、前立腺癌を予防、安定化、または治療することができる。インバリアントNK T細胞は他の癌患者でも低レベルで存在する。したがって、この方法を用いて他の種類の癌を治療することができる。
【0149】
本試験で分析された癌患者
本試験の対象癌患者は、アンドロゲン非依存性の進行性前立腺癌患者であった(Catalona、N. Engl. J. Med. 331:996、1994;BubleyおよびBalk、Hematol. Oncol. Clin. North Am. 10:713、1996)。すべての患者は、過去に睾丸摘出術によるアンドロゲン除去療法、または黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストの投与による治療を受けていた。試験時点において、すべての患者は骨髄スキャンの結果が陽性で、前立腺特異抗原(PSA)のレベルが高く(>50 ng/ml)、進行性の転移性癌を意味していた。1人を除く患者全員が細胞傷害性の化学療法を受けていなかった。寛解期にある前立腺癌患者は、アンドロゲン除去療法で同様に治療されたが骨スキャンの結果は陰性で、PSAのレベルは安定かつ低値であった(<10 ng/ml)。
【0150】
Vα24陽性T細胞のエキソビボにおける増殖に用いられる方法
試験参加に同意した健康なドナーおよび前立腺癌患者の末梢血(10〜20 ml)をヘパリンを含むチューブに採取した。PBMCはFicoll-Paque (Amersham Pharmacia、Uppsala、Sweden)を用いて単離した。Vα24陽性T細胞を抗Vα24モノクローナル抗体(C15)(Coulter、Miami、FL)で染色後に、ヤギ抗マウスIgG(H+L) FITC結合体(KPL、Gaithersburg、MD)で染色し、高速FACS (Modular Flow FACS、Cytomation、Boulder、CO)で選別した(Dellabonaら、J. Exp. Med. 180:1171、1994)。自家PBMCに放射線を照射し(5000 rads)、APCとして使用した。FACSで精製したVα24+細胞を最初に96ウェル平底プレート(1ウェルあたり約20,000個)内で、放射線を照射した同数の自家PBMCと、α-GalCer (50 ng/ml、KRN7000、Kirin Brewery Co.、Gunma、Japan)、および組換え型IL-2 (100 U/ml)(National Cancer Institute、Bethesda、MD)の存在下で共培養した。次に培養物を24ウェルプレート中に移して、同じ培地を用いて徐々に増殖させた。一部の培養物には、ヒト組換え型IL-12 (1 ng/ml)(Genetics Institute、Cambridge、MA)を培養の最終週に添加した。
【0151】
増殖させたT細胞のフローサイトメトリー解析に用いられる方法
α-GalCerで増殖させた細胞の表現型解析を、培養を開始してから3〜4週後に2色または3色のフローサイトメトリーで実施した。Vα24およびVβ11がバルクT細胞によって極めてまれにしか使用されないことから、過去の報告でVα24およびVβ11に対する二重染色がインバリアントNK T細胞のマーカーとなることが明らかにされている(Dellabonaら、J. Exp. Med. 180:1171、1994;Exleyら、J. Exp. Med. 186:109、1997;PrussinおよびFoster J. Immunol. 159:5862、1997)。抗体は、抗Vα24 PE抗体、抗Vβ11 FITC抗体、抗CD8β PE抗体(Immunotech)、抗CD3 Cychrome抗体、抗CD161 PE抗体、および抗CD4 Cychrome抗体(PharMingen、La Jolla、CA)を使用した。文献に記載されているように(Exleyら、J. Exp. Med. 186:109、1997;Exleyら、J. Exp. Med. 188:867、1998)、約1×106個の細胞を96ウェルプレートの1ウェルあたり50 μlのFACS緩衝液(リン酸緩衝液食塩水+1% ウシ胎児血清および0.1% NaN3)に懸濁した(Exleyら、J. Exp. Med. 186:109、1997;Exleyら、J. Exp. Med. 188:867、1998)。非特異的な抗体結合は、細胞を10% ヒト血清と共に15分間氷上でプレインキュベートすることでブロックした。次に抗体を細胞懸濁物に添加し、20分間氷上でインキュベートした。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、FACScan (Becton Dickinson)でCell Questソフトウェアを用いて分析を行った。
【0152】
健康なドナーおよび癌患者から単離直後のPBMCに含まれるインバリアントNK T細胞の分析でも、6B11モノクローナル抗体を使用した。この実験では、細胞を6B11-FITCおよび抗Vα24-PE(交差競合しない)で染色し、インバリアントTCRを発現するT細胞を検出した。癌患者ではこのような細胞の出現頻度は低いため、総細胞数105〜106を分析した。
【0153】
癌患者におけるインバリアントNK T細胞数の減少を示す結果
健康なドナーおよび癌患者の末梢血に含まれるインバリアントNK T細胞を、インバリアントVα24-JαQ TCRに対する、Vα24モノクローナル抗体およびVβ11モノクローナル抗体、または6B11モノクローナル抗体を用いた2色フローサイトメトリーで定量した。健康なドナーのVα24+ T細胞をα-GalCerで増殖させて得られたインバリアントNK T細胞系は、Vα24、Vβ11、および6B11の各モノクローナル抗体に反応した(図19Aおよび19D)。Vβ11が、この健康なドナー、また他の複数の健康なドナーに由来する、すべてのα-GalCer増殖Vα24+ T細胞で本質的に発現されたという結果は、このVβがα-GalCer反応性インバリアントNK T細胞の作製に必要であったことも意味している。
【0154】
Vα24+Vβ11+の二重陽性T細胞が健康なドナーの末梢血に認められた。その数はVα24+6B11+細胞と同等であり、インバリアントT細胞NK T細胞であるVα24+Vβ11+細胞の大半の比率に一致していた(図19Bおよび19E)。一連の健康なドナーにおけるVα24+6B11+細胞の平均比率は0.11%であった。少数のVα24+Vβ11+ T細胞が、進行性前立腺癌患者の末梢血中に認められた(表4および5)。また調査対象の6人中5人の患者にはα24+B11+細胞は検出されなかった(図19Cおよび19F)。以上の結果から、インバリアントNK T細胞が進行性前立腺癌の患者では少ないことが判明した。
【0155】
(表4) 6B11抗体および抗Vα24抗体による染色に基づく、PBMCに含まれるインバリアントNK T細胞の数

【0156】
(表5) Vα24抗体、および抗Vβ11または6B11抗体による染色に基づく、インバリアントT細胞であるVα24+細胞の割合(%)

【0157】
健康なドナーに由来するインバリアントNK T細胞の増殖の結果
末梢血に含まれるインバリアントNK T細胞の数は少ないため、1回のエキソビボにおける増殖を行って、細胞の出現頻度および機能の評価をさらに行った。健康なドナーおよび進行性前立腺癌患者に由来するインバリアントNK T細胞を、Vα24に特異的なモノクローナル抗体を用いた初期FACS精製と、それに続く、APCの供給源としてのα-GalCerおよび放射線を照射した自家PBMCを用いた3〜4週間に及ぶインビトロにおける選択的増殖によって末梢血から単離した。次にT細胞をVα24およびVβ11または6B11の各モノクローナル抗体による二重染色で分析した。
【0158】
FACSで精製したVα24+ T細胞を、T細胞分裂促進因子PHAによってインビトロで刺激したところ、異なるドナーでは数が変化するVα24+Vβ11+ T細胞の小集団のみが得られた(図20A)。これとは対照的に、健康なドナーに由来する精製されたVα24+ T細胞をα-GalCerおよび放射線を照射した自家PBMCで刺激したところ、Vα24+Vβ11+の大集団が得られた(図20B、全細胞の94.4%)。一連の健康なドナーに由来する、α-GalCerで増殖させたVα24+Vβ11+ T細胞の追加的な表現型分析で、主要なCD4+集団およびCD4-CD8-集団の存在が明らかになり、各ドナーの大多数(>70%)でCD161が発現されていることが判明した。
【0159】
健康なドナーに由来する、α-GalCerで増殖させたVα24+Vβ11+ T細胞の評価を、CD1d認識およびサイトカイン産生を対象に行った。CD1d反応性インバリアントNK T細胞である多くの細胞と一致して、このような細胞は、CD1dをトランスフェクトしたC1R細胞に反応して実質的な量のIL-4とIFN-γの両方を産生したが、疑似トランスフェクトしたC1R細胞では産生は認められなかった(図20C)。この認識にCD1d特異性があることは、抗CD1dモノクローナル抗体51.1によってブロッキングされるが、対照の抗体に対応するアイソタイプではブロッキングされないことによってさらに証明されている。CD1dに対するサイトカイン応答は、これらのT細胞のPHAによるポリクローナル刺激後に得られた応答と等価であり、大部分の細胞が実際にCD1d反応性T細胞であることが確認された。以上の応答はいずれも、健康なドナーに由来するインバリアントNK T細胞クローンについて過去に得られた結果(Exleyら、J. Exp. Med. 186:109、1997;Exleyら、J. Exp. Med. 188:867、1998)と同等であり、後者のインビトロで確立されたクローンが、インビボにおける細胞の機能状態を反映していることを示している。
【0160】
進行性前立腺癌患者に由来するインバリアントNK T細胞の増殖の低下
進行性のアンドロゲン非依存性の前立腺癌患者に由来するインバリアントNK T細胞を同様に調べた。健康なドナーに対して、アンドロゲンを除去した進行性のホルモン不応性前立腺癌の患者から回収された培養細胞の総数は減少しており、またVα24+Vβ11+インバリアントNK T細胞であった増殖細胞の比率に顕著な低下が認められた(図21Aおよび21B。健康なドナーとアンドロゲンを除去したホルモン不応性前立腺癌患者の各インバリアントNK T細胞は98.5%と13.6%)。α-GalCerが、アンドロゲン除去療法を受けた寛解期にある前立腺患者のVα24+ T細胞を増殖させたことも示され(インバリアントNK T細胞の比率は75%)、アンドロゲン除去療法が、インバリアントNK T細胞の増殖の低下を説明しないことが判明した(図21C)。
【0161】
いずれも転移性癌で、前立腺特異抗原(PSA)のレベルが高い進行性のアンドロゲン非依存性前立腺癌の一連の患者から得られたデータから、Vα24+Vβ11+インバリアントNK T細胞の回復が顕著に低下したことが確認された(平均値は前立腺癌患者の10%に対し、健康なドナーでは>80%)(図21D)。以上の結果は、進行性前立腺癌患者の末梢血のVα24およびVβ11または6B11染色で検出されるインバリアントNK T細胞数が減少することと矛盾していなかった。インビトロ刺激中における増殖の低下またはアポトーシスの増加を含む他の因子も回収率の低さに寄与する可能性があった。これとは対照的に、アンドロゲン除去療法を受けているが寛解期にある前立腺癌患者に由来するVα24+Vβ11+インバリアントNK T細胞の回収率は、健康なドナーで得られた値に近い値であった(図21D)。
【0162】
実施例10:癌患者におけるインバリアントNK T細胞の活性の低下
低レベルで存在することに加えて、前立腺癌患者におけるインバリアントNK T細胞の活性は低かった。特にこのようなインバリアントNK T細胞は、IFN-γをわずかにしか産生しなかった(Th1エフェクター)。後述するように、IL-12とインキュベートすると、このようなインバリアントNK T細胞の活性は上昇してIFN-γを産生した。この結果は、IL-12が癌の治療に望ましい細胞傷害活性などのTh1応答方向へと、インバリアントNK T細胞を偏向させる能力をもつことを支持する。
【0163】
サイトカイン産生およびCD1d反応性の測定に使用される方法
サイトカイン産生に関しては、文献に記載されているように、96ウェルプレートに1×105 個/ウェルの細胞を同数のCD1dと共培養するか、C1R細胞を、10% FBS、20 U/ml IL-2、および1 ng/ml PMAを添加したRPMI 1640培地中で疑似トランスフェクトした(Exleyら、J. Exp. Med. 186:109、1997)。CD1dに対する細胞応答は、抗CD1d抗体51.1(10 μg/ml)でブロックされた(Exleyら、J. Exp. Med. 186:109、1997;Exleyら、Immunology 100:37、2000)。上清は、IL-4の測定用およびIFN-γの測定用にそれぞれ48時間と72時間の時点で採取した。放出されたサイトカインの濃度は、サイトカイン標準に適合させた抗体ペアとの捕捉的ELISAにより3回にわたって決定した(Endogen、Inc. Cambridge、MA)。IFN-γおよびIL-4の両方に対する以上のアッセイ法の検出限界は10〜50 pg/mlであった。
【0164】
癌患者に由来するインバリアントNK T細胞によるIFN-γ産生の喪失を示す結果
前立腺癌患者に由来するインバリアントNK T細胞が増殖し、また同等のレベルのIL-4を、健康なドナーに由来するインバリアントNK T細胞として、CD1dをトランスフェクトした細胞に応じて産生した(図22A)。しかしIFN-γの産生は、健康なドナーに由来するインバリアントNK T細胞に比べて顕著に低下していた(図22B)。一連の進行性前立腺癌患者および健康なドナーに由来する、α-GalCerで増殖させたインバリアントNK T細胞によるIFN-γの産生に対するIL-4を分析した結果、前立腺癌患者に由来する細胞によるIFN-γ産生が顕著に減少することが確認された(図22C、IFN-γについては対数スケールを使用)。IL-4に対するIFN-γの喪失は、IFN-γ/IL-4産生比を比較したときに最も明らかであり、前立腺癌と健康なドナーに由来するNK T細胞系間の差は約50倍であった(図22E)。
【0165】
IFN-γ産生の以上のような喪失が他のT細胞集団で一般的にみられるか否かを決定するために、進行性のアンドロゲン非依存性の前立腺癌患者、および健康なドナーに由来するバルク末梢血のT細胞をインビトロでPHAで刺激した。その結果、前立腺癌患者に由来するバルクT細胞によるIFN-γの生産は損なわれておらず(図22D)、前立腺癌患者と健康なドナーの細胞でIFN-γ/IL-4比は同等であった(図22E)。以上をまとめると、得られたデータから、進行性の前立腺癌患者に由来するインバリアントNK T細胞集団においてIFN-γ生産が優先的に失われることが判明した。
【0166】
インバリアントNK T細胞は、IL-12の抗腫瘍効果に寄与することがあるので、次に、このような癌患者に由来する細胞がIL-12に反応するか否かを判定した。前立腺癌患者に由来するインバリアントNK T細胞を、培養の最終週にIL-12(1 ng/ml)で処理して、このサイトカインに反応するか否かを判定した。IL-12で処理した細胞では、IFN-γ産生の顕著な上昇が認められ、IFN-γ/IL-4産生比は健康なドナーにおける比と同等であった(図22E、癌+IL-12)。
【0167】
実施例11:多発性硬化症患者におけるNK T細胞のレベルの低下
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系(CNS)の炎症性脱髄疾患であり、自己ミエリン関連抗原に対する自己免疫応答が関与する可能性が高い。MS患者のNK T細胞が少ないか否かを判定するために、一次性進行型疾患のMS患者(6人)、または再発寛解型疾患のMS患者(8人)の末梢血試料に含まれるNK T細胞(Vα24JαQ+)の割合(%)を正常なドナー(6人)と比較した。正常なドナーのNK T細胞の割合(%)は、過去の報告(0.114±0.020)と同等であったが、一次性進行型疾患のMS患者のNK T細胞の割合(%)は(0.010±0.007)であるか、または再発寛解型疾患のNK T細胞の割合(%)(0.027±0.071)は有意に低値であった。MS患者のNK T細胞数が少ないことは、NK T細胞の数および/または活性の上昇が、再発寛解型のMS、一次性進行型のMS、または慢性進行型のMSなどのMSの治療または予防に有用な可能性があることを示唆している。またMS患者の試料を、さまざまな時点で採取することで、上記MS患者の末梢に含まれるNK T細胞の数が経時的に変動するか否か、また疾患症状の状態と相関するか否かを判定することができる。
【0168】
実施例12:臨床コホートを調べる診断ツールとしての6B11の用途
CD1d拘束T細胞は、複数の免疫疾患に免疫調節的な役割を果たす可能性がある。高リスクの前記糖尿病およびHIV感染患者の臨床状況をモニタリングする6B11抗体の診断上の有用性を検討するために、Vα24-PE抗体を併用した6B11-FITC抗体を用いて、診断日における糖尿病患者の循環性CD1d拘束T細胞、またUCLAメディカルセンターで追跡されたHIV MACSコホートの循環性CD1d拘束T細胞の出現頻度を決定した。上述の通りにPBLを染色し、FACSで解析した。また樹状細胞(DC)のサブタイプをHIV MACSコホートを対象に決定した。得られた結果を図23および24にまとめる。
【0169】
実施例13:1型糖尿病の有無が一致しない一卵性双生児に由来するインバリアントT細胞における遺伝子発現
特にT細胞型で活性化される遺伝子のパターンを同定できれば、T細胞亜集団の機能を予測する情報が得られると思われる。例えばサイトカイン/ケモカインファミリーにおける遺伝子発現パターンの変化は、サイトカインの分泌とインビボにおけるT細胞の機能が関連する場合に特に重要である。後述するように、このような細胞が自己免疫および1型糖尿病に果たす役割を詳しく理解するためにVα24JαQ T細胞の遺伝子発現パターンを決定した。この方法で、関心対象の他の任意のT細胞亜集団が、任意の疾患または症状の発生および/または進行に果たす役割を決定することもできる。
【0170】
ヒトVα24JαQ T細胞クローンにおけるT細胞受容体の活性化の転写の結果を調べるために、DNAマイクロアレイにより、1型糖尿病とIL-4の分泌が一致しない一卵性双生児に由来するクローンの抗CD3刺激によるmRNA量の変化の定量が行われた(Wilsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (13):7411〜7416、2000)。活性化により、IL-4分泌クローンにおける226個の転写物、およびIL-4ヌルクローンにおける86個の転写物が有意に調節された。これらの遺伝子の28個のみが共通であった。認められた差から、糖尿病患者のVα24JαQ T細胞の分化、ならびに骨髄系細胞の動員および活性化においてインバリアントT細胞が果す役割がいずれも有効でないことが示唆された。
【0171】
IL-4分泌の欠損は、複数の差異の結果である可能性が高いので、代表的なクローンの対を選択して、約6800個の遺伝子(Unigene collection)の発現をモニタリングするDNAマイクロアレイを用いて詳細な解析を行った。このDNAマイクロアレイは、遺伝子発現における複雑な差を調べる大規模研究に対する実用的で再現性の大きい方法である(Lockhartら、Nature Biotechnology 14、1675〜1680、1996;Holstegeら、Science 283、83〜87、1999;Choら、Molecular Cell 2、65〜73、1998)。発現プロファイルは、抗CD3または対照のIgGを用いた4時間の刺激によって決定した。この時間点が選択された理由は、この時間点が、1型糖尿病の有無が一致しない一卵性双生児の対に由来するクローンにおけるサイトカイン分泌を対象とした過去の分析で使用されていたためである。刺激前または刺激後の発現が検出可能な遺伝子の数は、IL-4ヌルクローンとIL-4分泌クローンでほぼ同じであった(それぞれ1523個と1558個)。予想された通り、大部分の転写物の頻度に変化は認められなかった。このセットの3分の2のみ(988個)が2個のクローンで共通であった。抗CD3刺激後における発現が、刺激されなかった場合に対して少なくとも2倍上昇または低下することが明らかとなった遺伝子の数は、IL-4ヌルクローンで86個(6%)、またIL-4+分泌クローンで226個(15%)であった。IL-4ヌルクローンとIL-4分泌クローン間の遺伝子発現の差をより詳しく分析するために、自己組織化マップ(Self-Organizing Map)アルゴリズムを用いて遺伝子群を6つの異なる発現パターンに分類されている(Tamayoら、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 96、2907〜2912、1999)。
【0172】
DNAマイクロアレイを調べたところ、抗CD3によるVα24JαQ T細胞クローンの活性化によって、サイトカイン/ケモカインファミリーの転写物に有意な変化が生じた。このカテゴリーに含まれる遺伝子の発現にみられる顕著な差は、IL-4+クローンとIL-4-ヌルクローンの比較時に認められた(図25A)。MIP-1α、MIP-1β、TNF-α、TNF-β、IL-5、IL-13、およびGM-CSFにみられる転写上の変化は、それぞれELISAによりタンパク質レベルで検証されている。疾患の有無について対称性がみられない双子に由来するクローンを比較すると、IL-4分泌クローンに一般的にみられる変化を含む、IL-4-ヌルクローンにおける複数の転写物に確固とした変化が認められた。また計1523個の転写物が有意なレベルで認められ、このうち535個はIL-4ヌルクローンに固有のものであった。また上記クローン対は、抗CD3に反応して同等量のIFN-γを分泌した。CD161+Vα24JαQ T細胞のエフェクター機能のかなりの部分がサイトカイン分泌を介して生じると仮定すると、IL-4ヌルクローンは、分化した機能のすべての範囲と結びつかないであろうということは重要である。最近になって、サイトカインの活性化に反応する能力と、それに続くサイトカインを分泌する能力の両方がNODマウスのNK T細胞でも損なわれていることが認められた(Falcone、J. of Experimental Medicine 190、963〜972、1999)。また、このようなサイトカイン/ケモカインの組み合わせは、CD161+ T細胞が未成熟な樹状細胞および単球を動員して調節している可能性があることを示唆している。
【0173】
IL-4+クローンとIL-4ヌルクローン比較すると、BCLxL、IAP、PLCγ1、およびtecファミリーキナーゼItkなどのPI 3キナーゼ情報伝達を介して部分的に活性化される細胞生存、サイトカイン分泌、およびカルシウム流入に重要な他の遺伝子の発現に有意な差が認められた。このような転写物はIL-4+クローンに有意に多量に見出された。差は、サイトカイン分泌およびTh表現型に影響する転写因子および情報伝達調節因子をコードするmRNAの発現にも認められた。これにはGATA3、STAT1、STAT4、JunB、JunD、およびNFAT4などがある。特にJunBおよびGATA3は、Th2 T細胞で優先的に発現されることが最近報告された。GATA3、JunB、ならびにJunDの転写活性化はIL-4+クローンで優先的に認められた。STAT1 (IFN-γ情報伝達)、STAT4 (IL-12情報伝達)、およびCD161 (Vα24JαQ T細胞の増殖およびIFN-γの分泌の補助活性化因子)の転写物は、IL-4+クローンに対してIL-4ヌルクローンで過剰に発現していた。重要な点は、部分的にIL-4の転写のサプレッサーとして作用すると考えられる転写因子NFAT4が、IL-4+クローンに対してIL-4ヌルクローンで過剰に発現していることであった。この概念を基に、転写因子などの他の遺伝子の調節の不一致が、Th表現型の制御に影響することが予想される。発現が複数の独立した生物学的観察に一致する、調節を受ける遺伝子のモデルを図25Bに示す。
【0174】
活性化されたVα24JαQ T細胞クローンの転写プロファイルから、(糖尿病でない一卵性双生児と比べて)糖尿病患者に由来するクローンにみられるIL-4分泌の欠損が、遺伝子発現にみられる多数の差異の一つであることが判明した。活性化がPI 3キナーゼで部分的に制御される遺伝子産物の発現に差がみられたことは重要であり、これが、完全に分化したVα24JαQ T細胞の産生に必要であると考えられる。
【0175】
実施例14:骨髄系樹状細胞上のCD1dは、Vα24JαQ T細胞のサイトカイン分泌を刺激し、同細胞の細胞溶解活性を促進する
DCは、T細胞応答の開始に重要な役割を果たす抗原提示細胞に由来する骨髄の特定の集団である。ヒトでは、3個のDC集団が極めて低出現頻度(0.03〜0.3%)で末梢血中に見出されている。ヒトのDCには2つの骨髄系集団がある。一つはランゲルハンス細胞前駆体(Lin-/CD11c+/CD1a+/Il-3R-)および組織DC (Lin-/CD11c+/CD1a-/IL-3R-)であり、もうひとつは「形質細胞様」DC(PDC)集団(Lin-/CD11c-/CD1a-/IL-3R+)である。PDC集団も、高内皮細静脈への回帰およびリンパ組織への移動を促進するCXCR3およびCD62Lを発現する。PDCはCD40の連結を介して、またはLPSに曝露されることでリンパ系で活性化され、さまざまなサイトカインを産生し、またT細胞の刺激能力を増強する。MDCはそれぞれ表皮または真皮、および他の組織部位のいずれかを占める。MDCは未成熟な状態にある末梢組織に存在し、抗原を容易に取り込む。そしてそれまでの間、感染または組織の損傷によってもたらされる情報を受ける。この時点で、活性化されて排出性リンパ節に移動し、同リンパ節でIL-12p70などのサイトカインを容易に産生し、未感作T細胞を活性化する。MDC集団とPDC集団には、Th1応答およびTh2応答の発生の誘導に関して異なる役割があることが最近の研究で支持されている。マウスおよびヒトを対象とした研究では、MDCの成熟および機能の欠損が、1型糖尿病の病因に影響する可能性があることも示唆されている。
【0176】
骨髄系樹状細胞がTh1細胞性免疫応答のプライミングにおいて重要な役割を果していることから、Vα24JαQ T細胞が、その免疫調節性の作用をこれらの細胞との相互作用を介して発揮している可能性がある。この仮説を検証するために、インビボおよびインビトロでDC上におけるCD1dの発現パターンを調べ、またVα24JαQ T細胞クローンとDC細胞との相互作用の帰結を調べた。
【0177】
本研究に使用したVα24JαQ T細胞クローン
Vα24JαQ T細胞クローンの由来については文献に記載されている(Wilsonら、Nature 391:177、1998)。簡単に説明すると、正常なドナーの末梢血単核球(PBMC)を、Vα24/Vβ11二重陽性細胞について単細胞選別し、次に10% 熱不活性化ウシ胎児血清、2 mM L-グルタミン、10 mM HEPES、100 U/ml ペニシリン、および10 μg/ml ストレプトマイシン(R10)を含むRPMI 1640 (Sigma)中で、放射線を照射したフィーダーPBMC (50,000 細胞/ウェル)、放射線を照射した721.221リンパ芽球細胞(500 細胞/ウェル)、PHA-P (1 μg/mL)、IL-2 (10 U/ml)、およびIL-7 (10 U/mL)とともに成長させた。次に、結果として得られたクローンを、放射線を照射したフィーダーPBMCおよび抗CD3抗体の存在下で、抗CD3 抗体によって定期的に再刺激して増殖させた。クローンがVα24およびNKR-P1Aに関して陽性であることをフローサイトメトリーで確認し、配列を決定してVα24JαQ CDR3 TCRを有することを確認した。
【0178】
T細胞の転写プロファイリングに使用した方法
Vα24JαQ T細胞クローンの転写解析を、アフィメトリックス(Affymetrix)社が開発した高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いて実施した。簡単に説明すると、細胞を10 μg/mLの可溶性の抗CD3または対照となるIgGで4時間かけて活性化し、その後に全RNAを単離して逆転写した。結果として得られたcDNAを、ビオチン化ヌクレオチドとともにインビトロ転写に用いて、標識されたアンチセンスRNAを作製し、DNAマイクロアレイチップ(Genechips 商標、Affymetrix、San Jose、CA)との間でハイブリッドを形成させた。PE-ストレプトアビジンで染色後、結合しているRNAの蛍光をGenechip Reader (改変型の共焦点顕微鏡)で定量した。
【0179】
サイトカイン分泌および増殖のアッセイ法
Vα24JαQ T細胞クローンを、プレートに結合している抗CD3抗体または対照となるアイソタイプ抗体と4時間、8時間、または24時間刺激した(25,000/ウェル)。上清を回収し、定量ELISA (Quantikine kits、R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)でIL-4、IFN-γ、マクロファージ炎症性タンパク質-1-α (MIP-1-α)、MIP-1-β、TNF-α、およびGM-CSFを定量した。24時間後に、1 μCi/ウェルとなるように[3H-]チミジン(Dupont NEN、Boston、MA)を添加し、取り込みを文献の方法で測定した(Wilsonら、Nature 391:177、1998)。制限実験も、トランスフェクトしたC1R細胞中のCD1のアイソフォーム(CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、およびpSR-α-neoベクターのみ)を用いて文献の方法で行った(Wilsonら、Nature 391:177、1998;Exleyら、The Journal of Experimental Medicine 186:1、1997)。
【0180】
骨髄系樹状細胞の調製
単球に由来する樹状細胞を、新鮮なPBMCから文献の方法(O'Dohertyら、Journal of Experimental Medicine 178:1067、1993)を応用して調製し、抗CD14微粒子による濃縮で正の選択を製造業者のプロトコルにしたがって実施した(ミルテニ・バイオテック、Auburn、CA、USA)。簡単に説明すると、同系のドナーから調製した単離直後のPBMCを、吸着および洗浄操作により単球について濃縮した。洗浄直後に、残りの単球を組換え型ヒトIL-4 (rhIL-4;Genzyme)およびrhGM-CSF (1000 U/ml)を添加したR10中でそれぞれさらに7日間培養し、少なくとも90%のCD1a+/DR+/CD3-/CD14-の非接着性の細胞集団をフローサイトメトリー解析で得た。
【0181】
細胞溶解アッセイ法
Vα24JαQ T細胞クローンによる細胞溶解活性を、51Crの特異的な放出を4時間かけて測定することで決定した。標的細胞を50 μCiのNa2 51Cr (New England Nuclear、North Billerica MA)で1時間かけて標識し、洗浄を2回行った。細胞溶解活性は、1ウェルあたり104個の標識された標的細胞を含むU底96ウェルマイクロタイタープレート中で標準的なクロム遊離アッセイ法で決定した(エフェクター細胞の比は記載値を使用)。37℃で4時間インキュベートした後に上清を回収し、γカウンター(Cobra、Packard、Downer's Grove IL)で計数した。特異的な溶解の割合(%)を以下の式で算出した:[(実験放出分−自然放出分)/(最大放出-自然放出]×100。実験によっては、細胞溶解の検証を、EGTAおよびMgCl2の存在下(各4 mM)でカルシウムキレート条件下で行った。
【0182】
本研究に使用した抗体
42.1抗CD1dモノクローナル抗体は、スティーブン・ポーチェリ(Steven Porcelli)博士(Brigham & Women's Hospital)より供与を受けた。42.1およびIgG1対照抗体のF(ab')2断片は、Immunopure F(ab')2キット(Pierce、Rockford、IL)で調製した。ヒト吸着(human adsorbed)ヤギF(ab')2抗マウスIgG-FITCは、カルタグ(Caltag)(Burlingham、CA、USA)から入手した。FcR-ブロッキング試薬(商標)のヒトIgGは、ミルテニ・バイオテック(Miltenyi Biotec)(Auburn、CA、USA)から入手した。NOR3.2は、バイオソース・インターナショナル(Biosource International)(Camarillo、CA、USA)から入手した。抗Vα24、抗Vβ11、抗αβTCR、および抗CD83は、イムノテック(Immunotech)(Coulter/Beckman、Fullerton、CA、USA)から入手した。抗CD1a、抗CD4、抗CD8、抗CD40L、抗CD80、抗CD86、およびHLA-DRは、ファーミンジェン(Pharmingen)(San Diego、CA、USA)から入手した。抗CD3、クローンUCHT1は、アンセル(Ancell)(Bayport、MN、USA)から、またIgG1対照はSigma (St. Louis、MO)から入手した。
【0183】
フローサイトメトリーの方法
染色した細胞は、FACScan細胞計数器(Becton Dickinson、Franklin Lakes、USA)を用いて解析し、単細胞選別は、MoFlo細胞計数器(Cytomation、Fort Collins、NJ、USA)を用いて実施した。CD40LのCD1dの発現については、T細胞クローンを文献の方法にしたがってPMAおよびイオノマイシンで活性化した(Wilsonら、Nature 391:177、1998;Exleyら、Journal of Biological Chemistry 269:15140、1994)。
【0184】
CD1dのウェスタンブロット分析
5×105個のC1R/CD1d細胞、4×107個の樹状細胞、および4×107個の対照C1R/neo細胞の溶解液に由来するCD1dの免疫沈殿を、モノクローナル抗体42.1に結合させたタンパク質Aビーズを用いて調製した。この免疫沈殿をSDS-PAGE (5%〜15%)で分離し、親和性精製したウサギ抗CD1d ポリクローナル抗体をプローブを用いて選び出した(Exleyら、Journal of Experimental Medicine 188:867、1998)。バンドは化学発光を基に視覚化した。
【0185】
免疫化学的な方法
NOR3.2 モノクローナル抗体を用いて、固定化してパラフィンに包埋した組織中のCD1d発現を、免疫ペルオキシダーゼ染色(Vectastain ABCエリートキット、視覚化にはNovaRed、Vector Laboratories、Burlingame、CAを使用)で決定した。染色は、NOR3.2を1:100の希釈率で用いて製造業者の指示書にしたがって行った。シグナルの特異性は、GST-CD1d融合タンパク質を用いたブロッキング実験で、GSTタンパク質単独の場合と比較することで確認した。
【0186】
抗CD3治療によるCD1d拘束Vα24JαQ T細胞の活性化を示す結果
Vα24JαQ T細胞の転写プロファイルの詳細な分析を、高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いて実施した。正常なドナーに由来するクローンが活性化すると、骨髄系樹状細胞の動員および分化に重要であると考えられている数多くのエフェクター分子が発現した(図26Aおよび26B)。調べた16個のケモカインのうち4個が、MIP-1αおよびMIP-1βを含んでおり、マクロファージおよび未成熟な樹状細胞をインビボで動員すると考えられる。GM-CSF、IL-4、およびTNF-α、骨髄系樹状細胞の分化および成熟、および後の成熟にかかわるサイトカインも産生された。活性化により、検討した26個のうち8個のサイトカインの発現も誘導された。これらのサイトカイン、ならびにCD40リガンドおよび4-1BBは、調べた個々のVα24JαQ T細胞クローンによって産生された(図26A〜26D、27A、および27B)。また、活性化されたVα24JαQ T細胞は、典型的な細胞傷害性T細胞に通常関与するタンパク質であるパーフォリンおよびグランザイムBを高レベルで発現した。したがって、この免疫調節機能はサイトカインの放出に制限されないが、細胞溶解活性にもかかわると考えられる。
【0187】
標的細胞上におけるCD1dの発現によるVα24JαQ T細胞のサイトカイン分泌および細胞溶解活性の両方の活性化
完全に自家系のVα24JαQ T細胞とDCの相互作用を調べるために、新しい一連のクローンを調製した。このようなクローンを、さまざまなCD1分子をトランスフェクトしたリンパ芽球C1R細胞のパネルに対するCD1d-特異的な反応に関して検討した。IL-4およびIFN-γに関して示されたサイトカインの放出、ならびにこれらのクローンの増殖は、CD1dで特異的に制限された(図27A)。活性化の誘導はCD1dではみられたが、CD1a、CD1b、またはCD1cではみられず、これは過去に報告された結果と一致した。またVα24JαQ T細胞クローンは、他のCD1ファミリーの分子ではなくCD1dを発現するC1R細胞を特異的に溶解することが判明した(図27B)。したがってインバリアントTCRのCD1d-制限性の誘導は、サイトカインの分泌、およびMHCクラスIおよびペプチドエピトープで誘導される細胞傷害性T細胞に関して観察される状況に似た状況である、同時に生じる細胞溶解反応を活性化する。
【0188】
CD1dは骨髄系樹状細胞で発現される
Vα24JαQ T細胞クローンによって産生されるサイトカインと細胞溶解タンパク質の組み合わせから、過去に提案されているようにIL-4分泌による、単純なTh2プライミング以外のエフェクターとしての役割の存在が示唆されている。以上の結果を考えれば、Vα24JαQ T細胞による免疫調節には、Th1様応答の誘導に重要な骨髄系樹状細胞との相互作用が関与する可能性がある。未成熟な樹状細胞は、IL-4およびGM-CSFによってインビトロで分化させた末梢血単球に由来し、後に単球の培養上清で成熟させた(O'Dohertyら、Journal of Experimental Medicine 178:1067、1993)。末梢血単球は、インビトロの培養物中で速やかに失われる低レベルのCD1dを発現することが知られている。末梢単球に由来する成熟した骨髄系樹状細胞(DC1)の分析から、細胞表面におけるCD1dの発現が再び獲得されることが判明した(図28Aおよび28B)。また、活性化されたBリンパ球およびT リンパ球はCD1dを発現しなかった。免疫組織化学的分析では、CD1dがインビボにおいて、リンパ節の傍皮質T細胞領域にある樹状細胞上に優先的に発現されることが確認された(図28C〜28P)。一連の切片を免疫的に染色したところ、CD1aおよびS100も発現している樹状細胞上でCd1dが発現されていることが確認された。CD1dは、濾胞性樹状細胞、または濾胞刺痛体(follicle tingle body)マクロファージでは発現されないことが既に判明しており、またリンパ洞の組織球にはほとんどみられなかった(CD1dの発現はT細胞依存性のリンパ領域を標的としていた)。他の状態の反応性リンパ節の他の組織球/単球集団の過程を調べたところ、結核菌(M. tuberculosis)感染の乾酪性肉芽腫と、他の非マイコバクテリア性肉芽腫の両方で類上皮細胞の組織球上に顕著なCD1d染色が認められた。マウスのVα14Jα281 T細胞は、結核菌の脂質抽出物による感作後の肉芽腫形成に必要なことが明らかとなっている。また樹状細胞に極めて似ていて、その新生カウンターパートと目される複数の腫瘍、例えばランゲルハンス細胞組織球増加症および組み合った樹状細胞の腫瘍も構成的にCD1dを発現する。したがってインビトロおよびインビボの両方において樹状細胞上でCD1dが発現されていることは、これがVα24JαQ T細胞の生理的標的である可能性を示唆する。
【0189】
Vα24JαQ T細胞による骨髄系樹状細胞のCD1d拘束性溶解
Vα24JαQ T細胞がもつ、樹状細胞との相互作用能力は、MHCハプロタイプが異なる複数の健康なドナーに由来するDCの細胞溶解に対する、複数のVα24JαQ T細胞クローンを検討することで確認された(図29Aおよび29B)。同種樹状細胞も自家樹状細胞も、このクローンにより溶解したことから、死滅がMHC拘束性でもアロ反応性でもないことがわかる。さらに細胞溶解は、カルシウムをキレート化すると完全に抑制され、抗CD1dモノクローナル抗体42.1で顕著に阻害された(図29C)。以上のデータは、死滅がパーフォリン/グランザイム経路を介し、CD1dを必要とすることを示唆している。未成熟な表現型の樹状細胞(CD83-)と成熟した表現型の樹状細胞(CD83+)の比較から、Vα24JαQ T細胞による認識に一貫した差がないことが判明した(図29A)。樹状細胞によってVα24JαQ T細胞が活性化されると、IL-4およびIFN-γの両方の分泌も誘導された(図29D)。したがってVα24JαQ T細胞を、CD1dを発現する樹状細胞に曝露させると、細胞溶解機能とサイトカイン放出の両方が誘導された。
【0190】
免疫調節のフィードバック機構
抗CD3による活性化後、Vα24JαQ T細胞は、IL-4およびGM-CSFを含む、骨髄系樹状細胞の動員および分化に重要な多様なサイトカイン、ケモカイン、および補助刺激タンパク質を分泌可能であることが明らかとなっている。以上の遺伝子産物の存在下で培養した骨髄系樹状細胞は、CD1dを発現し、Vα24JαQ T細胞によるCD1d拘束性の死滅に特異的な標的となった。さらにCD1dは、インビトロで得られた発現データを補強するように、リンパ節の傍皮質T細胞領域にある骨髄系樹状細胞上で優先的に発現されていた。
【0191】
ヒトの骨髄系に由来する樹状細胞(DC1)およびリンパ球系樹状細胞(DC2)は、CD4+ Tヘルパー細胞の応答を調節するため、Vα24JαQ T細胞によるDC1の特異的な溶解は、その免疫調節機能が、IL-4分泌によって誘導されるTh2の偏向に制限されないことを示唆している(Maldonado-Lopezら、J Exp Med 189:587、1999;Rissoanら、Science 283:1183、1999;Reidら、Curr Opin immunol 12:114、2000)。T細胞と共培養すると、DC1細胞は高レベルのIL-12を分泌し、Th1表現型をもつT細胞を誘導した。DC2細胞との共培養では、顕著なTh2応答が誘導された(Rissoanら、Science 283:1183、1999)。したがって、Vα24JαQ T細胞による骨髄系樹状細胞(DC1)の特異的な溶解は、Th1 T細胞応答を制限する負のフィードバック機構として働く可能性がある(図30)。
【0192】
過去の報告では、NK細胞に関する同様の溶解結果が示されている。活性化されたNK細胞が樹状細胞を溶解したことは、Vα24JαQ T細胞について提案されている機構に似た、負のフィードバック機構の存在を示唆している。またα-GalCerの投与によりCD1d拘束T細胞がインビボで活性化されると、マウスNK細胞は著しく活性化した(Carnaudら、J Immunol 163:4647、1999)。NK細胞の活性化の機構がインビボにおける樹状細胞の調節に影響する可能性がある一方、本明細書で示された、CD1d反応性T細胞とDCの直接的な相互作用により、上記の段階が不要になると考えられる。
【0193】
Vα24JαQ T細胞と樹状細胞との相互作用部位は現時点で不明である。典型的なリンパ節でVα24JαQ T細胞が少ないことは、上記相互作用がリンパ節外で生じている可能性と、リンパ節内に存在するCD1d陽性の樹状細胞が末梢における破壊を逃れたものであることを示唆している(Bendelacら、Annual Review of Immunology 15:535、1997;Porcelliら、Annu Rev Immunol 17:297、1999)。網内系におけるVα24JαQ T細胞の平行した組織分布と、CD1dのインビボにおける発現パターンは、これらの相互作用が細胞性免疫応答発生の調節に重要な役割を果していることの強力な証拠である。CD1d拘束T細胞は、肝臓、腸、脾臓、リンパ節、および胸腺(Bendelacら、Annual Review of Immunology 15:535、1997;Porcelliら、Annu Rev Immunol 17:297、1999)、活性抗原試料採取部位に分布しており、また専門的な抗原提示細胞によって提示されている。調節を受けていない樹状細胞は、組織特異的な自己抗原を提示することで自己免疫を開始して維持する能力をもつことが過去に報告されている。またDCは、II型自己免疫性リンパ球増殖性症候群(ALPS II)患者のカスパーゼ10遺伝子におけるミスセンス変異の結果として、リンパ節のT細胞領域に「残存(lingered)」していた。これは、この自己免疫疾患の主な所見である。CD1d拘束T細胞の機能不全は、げっ歯類とヒトにおけるT細胞を介した自己免疫疾患の発症に明らかに相関していた。またCD1d拘束T細胞の活性化または直接的な移動は、自己免疫のマウスモデルで自己免疫の発生を直接抑制することが報告されている。
【0194】
これまでのデータを要約すると、Vα24JαQ T細胞が骨髄系樹状細胞(DC1)上のCd1dにより活性化されて、樹状細胞の動員および分化に重要なケモカインおよびサイトカインを分泌することで、樹状細胞の機能調節に重要な役割を果すことを示唆している(図30)。このような相互作用はまた、Vα24JαQ T細胞の細胞溶解機能も活性化し、樹状細胞の細胞溶解を介したTh1細胞性免疫応答の負の調節を誘導する。この系は、Th2細胞性応答の制限を担う成熟T細胞によるリンパ系樹状細胞(CD2)の負の制御に相反的な可能性がある(Rissoanら、Science 283:1183、1999)。
【0195】
DCの成熟および機能が、1型糖尿病などの自己免疫疾患に寄与する可能性がある一つの可能な機構は、調節性細胞(Th2細胞、CD4+/CD25+ T細胞)の産生、またはエフェクターT細胞の細胞死の誘導に対する不十分な抗原提示細胞活性を含む。MDCの成熟における固有の異常は、NK T細胞の数または機能の異常に寄与する可能性がある。同様にNK T細胞の欠損は、DCの成熟を相反的に制限する可能性があり、このような抗原提示細胞の死滅を失敗に導くことで、持続的かつ好ましくない免疫応答が可能となる。
【0196】
実施例15:インビボにおいて標的となるT細胞亜集団に及ぼす抗体の影響を決定する方法
任意の本発明の抗体をインビボ動物モデルで検討し、抗体の薬理学的および薬物動態学的な性質を決定することができる。例えば抗体の半減期、体内分布、および有効性を決定することができる。
【0197】
一つの方法では、関心対象のヒトインバリアントT細胞もしくは他の任意のT細胞集団をSCIDマウス、または免疫不全動物(マウスなど)に投与し、抗インバリアントT細胞抗体もしくは本発明の他の任意の抗体を動物に投与して、対象抗体が投与T細胞の活性もしくは数をインビボで調節するか否かを判定する。
【0198】
具体的には、百万〜千万個の関心対象のT細胞を含むT細胞の集団(例えばインバリアントT細胞、または他の任意のT細胞亜集団)を静脈内、または任意の関心対象の部位に注射する。1つもしくは複数の抗体をT細胞の投与前、投与中、または投与後に投与する。例えば抗体は、宿主動物において投与T細胞の寿命があるうちの任意の時点で投与することができる。T細胞を投与する部位として、約1〜100 μgの抗体を同じ部位に投与するか、または別の部位に投与する。検出用の標識抗体を使用する場合は、投与抗体および/またはT細胞の位置および量を、蛍光もしくは放射活性を基にインビボでモニタリングすることができる。さらに、組織学的測定、免疫学的測定、および/または生化学的測定を、動物の組織を対象にエキソビボで行うことができる。抗体またはT細胞亜集団の生物学的活性は、血清または組織試料に含まれるサイトカインの量または活性を分析することで測定することができる。また投与されたT細胞亜集団による、他のT細胞などの他の細胞の活性化を測定することができる。例えばCD69+ T細胞の数は、抗CD69抗体を用いたFACS選別で測定することができる。
【0199】
実施例16:NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞のインビボにおける増殖用の抗体、またはこれらの細胞の画像化用の抗体の投与
本発明の抗体は、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、または癌の治療もしくは予防のために、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞インビボにおける増殖のためのサイトカインの投与に加えることで哺乳類に投与することができる。実施例7に記載されたように、すべての投与様式、用量、および頻度が意図される。
【0200】
1つまたは複数の本発明の抗体を含む薬学的組成物は、「レミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(E.W. Martin)に記載された手順で調製することができる。薬学的な安定化化合物、輸送用媒介物、または担体輸送体を使用することができる。例えばヒト血清アルブミン、または他のヒトもしくは動物のタンパク質を使用することができる。リン脂質小胞もしくはリポソーム懸濁物は、薬学的に許容される担体、または輸送用媒介物となりうる。このような組成物は当技術分野で周知の方法で調製することができる。
【0201】
蛍光標識または放射標識に共有結合で連結された本発明の抗体を用いて、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞のインビボにおける分布、量、または移動を視覚化することができる。NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞の画像化により、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、または癌の危険性のある被験者、またはこれらの症状のみられる被験者を同定することができる。あるいは、同様の方法で、上記疾患に対する治療がNK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞に及ぼす作用を決定することができる。
【0202】
他の態様
前述の記述から、さまざまな用途および条件に適合するように本明細書に記載された発明に変更および修正がなされることが明らかになる。このような態様も、特許請求の範囲内にある。
【0203】
本明細書で言及されたすべての刊行物は、個々の刊行物が、参照として組み入れられると特に個別に指定されたのと同じ程度に、参照として本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞抗原受容体(TCR)に優先的に結合する精製抗体であって、TCRのCDR3ループ、もしくはα-β接合(junction)に優先的に結合するか;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体。
【請求項2】
インバリアントT細胞に優先的に結合して優先的に増殖させる、請求項1記載の精製抗体。
【請求項3】
T細胞亜集団のTCRの抗原結合部位に優先的に結合する、請求項1記載の精製抗体。
【請求項4】
TCRに優先的に結合する精製抗体の組み合わせであって、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節し、かつ以下からなる群より選択される、抗体の組み合わせ:
(i)抗Vα24抗体および抗CD161抗体;
(ii)抗Vα24 抗体および抗CD94抗体;
(iii)抗Vβ11 抗体および抗CD161抗体;ならびに
(iv)抗Vβ11抗体および抗CD94抗体。
【請求項5】
TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか、;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体の、断片または誘導体。
【請求項6】
以下を含む二機能性抗体:
(a)TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節し;第1のエピトープに結合する、第1の抗体またはその断片;ならびに
(b)TCRを発現するT細胞上に発現されるか、または第1の抗体もしくはその断片が結合しているNK T細胞、CD1d反応性T細胞、もしくはJαQ+ T細胞上に発現される、第2のエピトープに結合する第2の抗体またはその断片。
【請求項7】
TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を産生する、安定なハイブリドーマ。
【請求項8】
T細胞が抗体もしくは抗体の組み合わせに特異的に結合しており、該抗体もしくは抗体の組み合わせが、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか;あるいは該抗体が、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する、精製されたT細胞亜集団。
【請求項9】
TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を作製する、以下の段階を含む方法:
(a)環状ペプチドを担体に結合させる段階;
(b)結合させたペプチドで哺乳類を免疫化する段階;および
(c)TCRのCDR3ループまたはα-β接合に優先的に結合するか;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を、単離する段階。
【請求項10】
TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか、あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団を優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を作製する、以下の段階を含む方法:
(a)インバリアントT細胞で、CD1またはインバリアントT細胞欠損哺乳類を免疫化する段階;および
(b)TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を、単離する段階。
【請求項11】
哺乳類がCD1dノックアウトマウス、NK T細胞に寛容な哺乳類、CD1d反応性T細胞に寛容な哺乳類、JαQ+ T細胞に寛容な哺乳類、インバリアントT細胞に寛容な哺乳類、インバリアントT細胞が除去されている哺乳類、TCR α鎖の一部を欠く哺乳類、またはTCRのβ鎖の一部を欠く哺乳類である、請求項9または10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
試料中のNK TCRの量またはNK T細胞の量を測定する方法であって、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する抗体を試料に接触させる段階を含む方法。
【請求項13】
試料中のCD1d反応性TCRの量またはCD1d反応性T細胞の量を測定する方法であって、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する抗体を、試料に接触させる段階を含む方法。
【請求項14】
試料中のJαQ+ TCRの量またはJαQ+ T細胞の量を測定する方法であって、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する抗体もしくは抗体の組み合わせを、試料に接触させる段階を含む方法。
【請求項15】
試料中のNK TCRまたはNK T細胞を視覚化する方法であって、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する抗体を試料に接触させる段階を含む方法。
【請求項16】
試料中のCD1d反応性TCRまたはCD1d反応性T細胞を視覚化する方法であって、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する抗体を、試料に接触させる段階を含む方法。
【請求項17】
試料中JαQ+ TCRまたはJαQ+ T細胞を視覚化する方法であって、TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、またはα-β接合に優先的に結合する抗体もしくは抗体の組み合わせを、試料に接触させる段階を含む方法。
【請求項18】
自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、および癌からなる群より選択される症状の被験者、または症状に対する危険性の高い被験者を診断する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する、抗体もしくは抗体の組み合わせ;あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を、被験者に由来する試料に接触させる段階;
(b)TCRまたはT細胞に結合している、抗体または抗体の組み合わせの量を定量し、試料中の関心対象のT細胞量を決定する段階;および
(c)試料中の関心対象のT細胞量を、症状を有すると診断された被験者、または症状がないと診断された被験者にみられる、関心対象のT細胞量と比較する段階。
【請求項19】
試料中の別のT細胞種の量を、症状を有すると診断された被験者、または症状がないと診断された被験者にみられる別のT細胞種の量と比較する段階をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
哺乳類の自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、もしくは癌を治療または予防する方法であって、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合するか、あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体もしくは抗体の組み合わせを、該哺乳類に投与する段階を含む方法。
【請求項21】
TCRのCDR3ループ、抗原結合部位、もしくはα-β接合に優先的に結合するか;またはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団の増殖を抑制する抗体もしくは抗体の組み合わせを哺乳類に投与する段階を含み、該投与はTCR、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、またはJαQ+ T細胞を発現するT細胞を抑制するのに十分である、哺乳類のT細胞の病因を抑制する方法。
【請求項22】
抗体が毒素または放射標識に共有結合で連結されている、請求項21記載の方法。
【請求項23】
T細胞亜集団のサイズを増大させる方法であって、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、JαQ+ T細胞、および抗体に優先的に結合しているTCRのCDR3ループもしくはα-β接合を発現するT細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体を、T細胞を含む試料に接触させる段階を含み、該接触はT細胞数の増加をもたらす条件下で起こる方法。
【請求項24】
接触によりT細胞数を増加させる条件下で、抗原および抗原提示細胞に試料を接触させる段階をさらに含む、請求項23記載の方法であって;ここで該抗原がα-ガラクトシルセラミドでない方法。
【請求項25】
抗原が、感染性病原体に由来する脂質またはグリコシル-ホスファチジルイノシトール抗原、癌性細胞に由来する抗原、または自己脂質(self-lipid)である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
接触によりT細胞数を増加させる条件下で、抗原および抗原提示細胞に試料を接触させる段階をさらに含む、請求項23記載の方法であって;ここで該抗原がα-ガラクトシルセラミドである方法。
【請求項27】
以下の段階を含む、T細胞亜集団のサイズを増大させる方法:
(a)T細胞と抗体もしくは抗体の組み合わせとの複合体の形成が可能な条件下で、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する抗体もしくは抗体の組み合わせ、あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体に、T細胞を含む試料を接触させる段階;
(b)複合体を単離する段階;ならびに
(c)T細胞数を増加させる条件下で、複合体に含まれるT細胞または複合体から回収されたT細胞を、抗原および抗原提示細胞に接触させる段階であって、ここで該抗原がα-ガラクトシルセラミドでない段階。
【請求項28】
抗原が、感染性病原体に由来する脂質またはグリコシル-ホスファチジルイノシトール抗原、癌性細胞に由来する抗原、または自己脂質である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
以下の段階を含む、T細胞の亜集団のサイズを増大させる方法:
(a)T細胞と抗体もしくは抗体の組み合わせとの複合体の形成が可能な条件下で、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する抗体もしくは抗体の組み合わせ、あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体に、T細胞を含む試料を接触させる段階;
(b)複合体を単離する段階;ならびに
(c)接触によりT細胞の数を増加させる条件下で、複合体に含まれるT細胞または複合体から回収されたT細胞を、抗原および抗原提示細胞に接触させる段階であって、ここで該抗原がα-ガラクトシルセラミドである段階。
【請求項30】
1つまたは複数のサイトカインに、試料または複合体を接触させる段階をさらに含む、請求項27または29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
以下の段階を含む、哺乳類のT細胞亜集団のサイズを増大させる方法:
(a)哺乳類に由来するT細胞を含む試料を得る段階;
(b)接触によりT細胞数を増加させる条件下で、NK T細胞、CD1d反応性T細胞、JαQ+ T細胞、および抗体もしくは抗体の組み合わせに優先的に結合している、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合を発現するT細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体もしくは抗体の組み合わせに、T細胞を接触させる段階;ならびに
(c)接触させたT細胞を哺乳類に投与する段階。
【請求項32】
接触段階の前または接触段階の後に、T細胞を精製する段階をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
以下の段階を含む、哺乳類のT細胞亜集団のサイズを増大させる方法:
(a)哺乳類に由来するT細胞を含む試料を得る段階;
(b)T細胞と抗体もしくは抗体の組み合わせとの複合体の形成が可能な条件下で、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する抗体もしくは抗体の組み合わせ、あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体に、T細胞を接触させる段階;
(c)複合体を単離する段階;および
(d)接触によりT細胞の数を増加させる条件下で、複合体中のT細胞または複合体から回収されたT細胞を、抗原および抗原提示細胞に接触させる段階であって、ここで該抗原がα-ガラクトシルセラミドでない段階;ならびに
(e)接触させたT細胞を哺乳類に投与する段階。
【請求項34】
抗原が、感染性病原体に由来する脂質またはグリコシル-ホスファチジルイノシトール抗原、癌性細胞に由来する抗原、または自己脂質である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
以下の段階を含む、哺乳類のT細胞亜集団のサイズを増大させる方法:
(a)哺乳類に由来するT細胞を含む試料を得る段階;
(b)T細胞と抗体もしくは抗体の組み合わせとの複合体の形成が可能な条件下で、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する抗体もしくは抗体の組み合わせ、あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体に、T細胞を接触させる段階;
(c)複合体を単離する段階;および
(d)接触によりT細胞数を増加させる条件下で、複合体中のT細胞または複合体から回収されたT細胞を、抗原および抗原提示細胞に接触させる段階であって、ここで該抗原がα-ガラクトシルセラミドである段階;ならびに
(e)接触させたT細胞を哺乳類に投与する段階。
【請求項36】
1つまたは複数のサイトカインを哺乳類に投与する段階をさらに含む、請求項33または35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
1つまたは複数のサイトカインに試料またはT細胞を接触させる段階であって、接触させたT細胞によりTh1/Th2/免疫偏向反応の比を変化させる段階をさらに含む、請求項33または35のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
哺乳類の自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、真核性病原体感染、アレルギー、喘息、炎症性症状、移植片対宿主病、移植拒絶、免疫不全症、自然流産、妊娠、または癌の治療または予防に用いられる、請求項33または35のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
試料に由来するT細胞亜集団を精製する方法であって、TCRのCDR3ループもしくはα-β接合に優先的に結合する抗体もしくは抗体の組み合わせ、あるいはNK T細胞、CD1d反応性T細胞、およびJαQ+ T細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのT細胞亜集団に優先的に結合するか、または該T細胞亜集団の増殖もしくは活性化を調節する抗体に、試料を接触させる段階を含む方法。
【請求項40】
抗Vα24抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD56抗体、抗CD161抗体、または抗Vβ11抗体に試料を接触させる段階をさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
抗体に蛍光標識が共有結合で連結されていて、複合体が該複合体の蛍光シグナルを基に単離される、請求項39記載の方法。
【請求項42】
抗体に磁気標識が共有結合で連結されていて、複合体が該複合体の磁性を基に単離される、請求項39記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図23−3】
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【図23−4】
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【図24】
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【図25A−1】
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【図25A−2】
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【図25B】
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【図26AB】
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【図26C】
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【図26D】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−14587(P2013−14587A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151382(P2012−151382)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【分割の表示】特願2002−504312(P2002−504312)の分割
【原出願日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【出願人】(507316413)ベス イスラエル デアコネス メディカル センター (4)
【出願人】(399052796)デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】