説明

T1R味覚受容体及びそれをコードする遺伝子

【課題】味覚シグナリングに作用するT1R Gタンパク共役受容体、さらに哺乳動物における味覚感覚を刺激または阻害する方法を提供する。
【解決手段】新規に同定された哺乳動物味覚細胞特異Gタンパク共役受容体、及び該受容体をコードする遺伝子及びcDNAを取得し、特に、味覚シグナリングに作用するT1R Gタンパク共役受容体、及び該受容体をコードする遺伝子及びcDNA、並びにその遺伝子の単離方法及びその受容体の単離及び発現の用法を開発し、哺乳動物において予定した味覚感覚を生じる新規分子または分子の組み合わせを作製する方法及び1以上の味覚を模倣する方法として、哺乳動物における個別の味覚刺激の味覚感覚を表示する方法、さらに、哺乳動物における味覚感覚を刺激または阻害する方法も合わせ開発した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2001年1月3日提出の米国出願番号 60/259,227、及び2001年4月19日提出の米国出願番号 60/284,547の優先権を主張し、この両出願の全体を、本願明細書中に、引用により取り込む。
【0002】
本発明は、新規に同定された哺乳類の化学感覚Gタンパク共役受容体、そのような受容体のファミリー、並びに該受容体をコードする遺伝子及びcDNAに関するものである。より具体的には、本発明は、味覚シグナル伝達において作用する、新規に同定された哺乳動物化学感覚Gタンパク共役受容体、そのような受容体のファミリー、該受容体をコードする遺伝子及びcDNA、並びにそのような受容体、遺伝子、及びcDNAを、味覚調整物質の分析及び発見に使用する方法に関係する。特に、本発明はT1R2として以下に特定する新規ヒト味覚受容体をコードするDNA配列、及びその対応受容体ポリペプチドを提供する。
【背景技術】
【0003】
味覚システムは、外界の化学成分に関する感覚情報を提供する。哺乳動物は少なくとも五つの基本的味覚の種類、即ち、甘味、苦味、酸味、塩辛味、及び旨味を持つと考えられている(Kawamura et al., Introduction to Umami: A Basic Taste (1987); Kinnamon et al., Ann. Rev. Physiol., 54: 715-31 (1992); Lindemann, Physiol. Rev., 76: 718-66 (1996); Stewart et al., Am. J. Physiol., 272: 1-26 (1997)を参照)。味覚の様式は、舌の表面にある味覚受容体細胞で発現する特有のタンパク受容体によって仲介されると考えられている(Lindemann, Physiol. Rev.76: 718-716 (1996))。苦味、甘味、及び旨味刺激を認識する味覚受容体は、Gタンパク共役受容体(GPCR)スーパーファミリーに属する(Hoon et al., Cell 96:451 (1999); Adler et al., Cell 100: 693 (2000))(他の味の様式は、イオンチャネルを介すると考えられている)。
【0004】
Gタンパク共役受容体は、例えば、内分泌機能、外分泌機能、心拍数、脂肪分解、及び炭水化物代謝等、その他の多くの生理機能を仲介している。そのような受容体の多くについて、生化学的分析や分子クローニングがなされたことにより、それら受容体の機能に関する基本原理が明らかにされている。例えば、米国特許No. 5,691,188には、GPCRにリガンドが結合した際、受容体が、どのような立体構造変化を受けて、Gaサブユニット表面にあるGTPの結合GDPとの置換、及びそれに続いて起こるGaサブユニットのGb及びGgサブユニットからの解離を促進することによる異種3量体Gタンパクの活性化を行なうのかが記述されている。遊離Gaサブユニット及びGbg複合体は、多様なシグナル伝達経路の下流メッセンジャー要素を活性化する。
【0005】
多くのヒト及び他の真核生物の化学感覚受容体の完全または部分配列が現在知られている。例えば、Pilpel, Y. and Lancet, D., Protein Science, 8: 969-977 (1999); Mombaerts, P., Annu. Rev. Neurosci., 22: 487-50 (1999)を参照。また、EP0867508A2, US 5874243, WO 92/17585, WO 95/18140, WO 97/17444, WO 99/67282も参照。リガンド−受容体相互作用、特に味覚刺激−受容体相互作用の複雑さの故に、リガンド−受容体認識に関する情報は乏しい。
【0006】
甘味受容体及び旨味受容体として機能するGPCRを同定しそして分析することは、新規の味覚刺激物質を発見する方法に繋がると考えられる。例えば、受容体を使用することにより受容体調節物質をスクリーニングすることができる。そのような化合物は味覚を調節し、種々の商品の味を改善するために食品産業において有用と思われる。例えば、新規な人工甘味料の開発により、低カロリー飲料を好ましい味に改良することができる。
【0007】
本発明は、一部、化学感覚受容体と化学刺激との間の相互作用についての、更なる理解に対する要求に応じるものである。本発明は、特に、新規な化学感覚受容体、及びその受容体の利用方法、並びにその受容体をコードする遺伝子及びcDNAを提供し、味覚のような化学感覚伝達を調節することができる分子を同定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許No. 5,691,188
【特許文献2】EP0867508A2
【特許文献3】US 5874243
【特許文献4】WO 92/17585
【特許文献5】WO 95/18140
【特許文献6】WO 97/17444
【特許文献7】WO 99/67282
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kawamura et al., Introduction to Umami: A Basic Taste (1987)
【非特許文献2】Kinnamon et al., Ann. Rev. Physiol., 54: 715-31 (1992)
【非特許文献3】Lindemann, Physiol. Rev., 76: 718-66 (1996)
【非特許文献4】Stewart et al., Am. J. Physiol., 272: 1-26 (1997)
【非特許文献5】Hoon et al., Cell 96:451 (1999)
【非特許文献6】Adler et al., Cell 100: 693 (2000)
【非特許文献7】Pilpel, Y. and Lancet, D., Protein Science, 8: 969-977 (1999)
【非特許文献8】Mombaerts, P., Annu. Rev. Neurosci., 22: 487-50 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本発明は、Gタンパク共役受容体の新規ファミリー、並びにその受容体をコードする遺伝子及びcDNAに関係する。受容体は、主に甘味伝達に関与すると考えられるが、他の味覚におけるシグナル伝達にも関与することができる。
【0011】
本発明は、味の認知を表現する方法、及び/またはヒトを含む哺乳動物における味の認知を予測する方法を提供する。そのような方法は、好ましくは、ここで開示する受容体及びその受容体をコードする遺伝子を使用して行なうことができる。
【0012】
本発明の目的は、最終的に、味の知覚に作用するT1Rとここで呼ばれる哺乳動物のGタンパク共役受容体の新規なファミリーを提供することにある。本発明のその他の目的は、味覚刺激物質−結合作用を保持しているT1R断片及び変異体を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、T1R、その断片、若しくは変異体をコードする核酸配列または分子を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、プロモーター、エンハンサー、または正若しくは負の遺伝子転写及び/若しくは遺伝子翻訳に必要なその他の配列の少なくとも一つに、作動可能に結合する、T1R、またはその断片若しくは変異体をコードする核酸配列を含む発現ベクターを提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、T1R、その断片、または変異体の少なくとも一つを機能的に発現するヒトまたは非ヒト細胞を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、少なくとも、そのT1Rの少なくとも一の断片を含むT1R融合タンパクまたはポリペプチドを提供することである。
【0017】
本発明のその他の目的は、SEQ ID NO: 1, 2, 3, 9, 11, 13, 15, 16, 20,及び保存的に修飾されたこれらの変異体からなる群から選択された核酸配列に対して少なくとも50%、望ましくは75%,85%,90%,95%,96%,97%,98%,または99%相同である核酸配列を含む、T1Rポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供することである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、SEQ ID NO: 4, 10, 12, 14, 17, 21,及び保存的に修飾されたこれらの変異体、からなる群から選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも35から50%、望ましくは60%,75%,85%,90%,95%,96%,97%,98%,または99%相同であるアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離された核酸分子であって、その断片が、少なくとも20、望ましくは40,60,80,100,150,200,または250アミノ酸長のポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離核酸分子を提供することである。任意に、その断片は、抗T1R抗体に結合する抗原断片とすることができる。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、変異が最大10、望ましくは5,4,3,2,または1アミノ酸残基にある該断片の変異体を含む単離されたポリペプチドを提供することである。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、そのようなT1R、またはその断片若しくは変異体のアゴニストまたはアンタゴニストを提供することである。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、ヒトを含む哺乳動物における味の認知を表現する方法及び/または味の認知を予測する方法を提供することである。望ましくは、その方法は、ここに開示したT1R、またはその断片若しくは変異体、及びそのようなT1R、またはその断片若しくは変異体をコードする遺伝子を使用して行なうことができる。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、哺乳動物において予定した味覚を生じさせる新規分子または分子の組合せを提供することである。そのような分子または組成物は、既知分子または分子の組合せに対する哺乳動物の味覚値を測定し、1またはそれ以上の未知分子または分子の組合せに対する哺乳動物における味覚値を測定し、1またはそれ以上の未知組成物に対する味覚値を1以上の既知組成物に対する哺乳動物における味覚値と比較し、哺乳動物における予定した味覚を生じる分子または分子の組み合わせを選択し、2またはそれ以上の未知分子または分子の組み合わせを組合わせて哺乳動物における予定した味覚を生じる分子または分子の組み合わせを形成することにより、作製することができる。この組み合わせステップにより、哺乳動物における予定した味覚を生じる単一分子または分子の組み合わせが得られる。
【0023】
本発明のさらにその他の目的は、1またはそれ以上の化合物と、開示したT1R、その断片またはその変異体の少なくとも一つを接触させるステップを含む、哺乳動物、望ましくはヒトにより感知される味を持つ1またはそれ以上の化合物をスクリーニングする方法を提供することである。
【0024】
本発明のその他の目的は、ここに開示した複数のT1R、またはそれらの断片若しくは変異体、望ましくはヒトT1Rについて、T1Rが味刺激物質と相互作用する程度を確認し;それぞれが既に1またはそれ以上のT1Rと相互作用することが確認されている複数の化合物を、味特性に類似する受容体-刺激プロフィールを示すような量で組合せるステップを含む味を模倣する方法を提供することである。味刺激物質とT1Rの相互作用は、本明細書に記述した結合検定またはレポーターアッセイのいずれかを使用して測定することができる。その際、複数の化合物は組合わせて混合物にすることができる。必要に応じ、1またはそれ以上の複数の化合物を共有結合で結合することもできる。組合わせた化合物は、味覚刺激物質により実質的に刺激される受容体の少なくとも50%,60%,70%,75%,80%若しくは90%または全てを実質的に刺激する。
【0025】
本発明のさらに他の態様において、複数の標準化合物を、複数のT1R、またはその断片若しくは変異体に対して試験して、各T1Rが各標準化合物と相互作用する程度を確認し、それにより各標準化合物についての受容体刺激プロフィールを作製する方法が提供される。その際、これらの受容体刺激プロフィールは、データ保存媒体の関連データベースに保存すればよい。この方法はさらに、味についての所望の受容体−刺激プロフィールを与え、その所望の受容体−刺激プロフィールを関連データベースと比較し、所望の受容体−刺激プロフィールと最も良く一致する標準化合物の1またはそれ以上の組合せを確認することを含んでいる。この方法は、さらに味覚を刺激する確認された1またはそれ以上の組合せで、化合物を組合わせることを含むことができる。
【0026】
本発明のこの他の目的は、該哺乳動物の各nT1Rの定量的刺激を示す値X1〜Xnを求め(ここでnは2以上である。)、この値から味覚感覚の定量的表示を作製するステップを含む、哺乳動物における特別な味覚刺激の味覚を表示する方法を提供することである。T1Rは、ここに開示した味覚受容体、またはその断片若しくは変異体とすることができる。そして、その表示は、n次元空間の点または容積で示し、グラフまたはスペクトルで示し、更には定量的表示のマトリックスで示すことができる。また、提示のステップは、複数の組換えT1Rまたはその断片若しくは変異体と被検組成物とを接触させ、該組成物と該受容体の相互作用を定量的に測定することを含んでいる。
【0027】
本発明のさらに他の目的は、哺乳動物において未知の味覚を生じさせる1またはそれ以上の分子または分子の組合せにより発生する哺乳動物における味覚を予測する方法を提供することであり、この方法は、以下のステップを含む:
哺乳動物における既知味覚を生じさせる1またはそれ以上の分子または分子の組合せについて、哺乳動物の各nT1Rの定量的刺激を表す値X1〜Xnを定め(ここで、nは2以上である。)、この値から哺乳動物における既知の味覚を生じさせる1またはそれ以上の分子または分子の組合せについて哺乳動物における味覚の定量的表示を作製し、次いで哺乳動物における未知味覚を生じさせる1またはそれ以上の分子または分子の組合せについて、該哺乳動物の各nT1Rの定量的刺激を表す値X1からXnを定め(ここで、nは2以上である。)、この値から哺乳動物における未知味覚感覚を生じる1またはそれ以上の分子または分子の組合せに対する哺乳動物における味知覚の定量的表示を作製し、次いで哺乳動物における未知味覚を生じさせる1またはそれ以上の分子または分子の組合せについての哺乳動物における味覚の定量的表示を、哺乳動物における既知味覚を生じさせる1またはそれ以上の分子または分子の組合せについての哺乳動物における味覚の定量的表示と比較することにより哺乳動物における未知味覚を生じる1またはそれ以上の分子または分子の組合せで発生する哺乳動物における味覚感覚を予測する。
この方法に使用するT1Rは、ここに開示した味覚受容体、またはその断片若しくは変異体を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1a−1cは、ヒトT1R2/T1R3受容体の機能的データを示す。ヒトT1R2,T1R3及びT1R2/T1R3を一過性に遺伝子導入されGα15を安定的に発現するHEK細胞の種々のスクロース濃度に対する細胞内カルシウム反応を図1aに示す。各パネルは約1000コンフルエント、遺伝子導入、そしてカルシウム色素負荷細胞に相当する。T1R2/T1R3活性の甘味阻害物質グルマリンによる阻害を図1bに示す。4種の甘味剤に対するT1R2/T1R3の容量反応及び対応する精神生理学的検出閾値(X軸の丸印)を図1cに示す。
【図2】図2は、ラットT1R2/T1R3受容体の機能データを示す。ヒトT1R2/T1R3及びラットT1R2/T1R3(並びに混合ラット/ヒト受容体)の350 mMスクロース、25 mMトリプトファン、15mMアスパルテーム、及び0.05%モネリンに対する反応を示す。ラットT1R2/T1R3はげっ歯類には美味でないアスパルテームまたはモネリンには反応しない。
【図3】図3a−3cは、ヒトT1R2/T1R3受容体の機能的データを示す。ヒトT1R1,T1R3及びT1R1/T1R3を一過性に遺伝子導入されGα15を安定的に発現するHEK細胞の種々のL-グルタメート濃度に対する細胞内カルシウム反応を図3aに示す。T1R1/T1R3受容体のIMPによる反応を図3bに示す。L-グルタメート及びL-グルタメートプラス0.2 mM IMPに対するT1R1/T1R3の容量反応及び対応する精神生理学的検出閾値(X軸の丸印)を図3cに示す。
【図4】図4a−4bは、ヒトT1R2にPDZIPペプチド(SEQ ID NO: 1)を融合することによりHEK細胞表面における発現を促進することを示す免疫蛍光及びFACS実験を示す。
【図5】図5は、安定的にGα15及びヒトT1R1/T1R3を発現する細胞系の自動化蛍光画像データを示す。L-グルタメート容量反応は0.5 mM IMPの存在下に測定した。
【図6】図6は、安定的にGα15及びヒトT1R2/T1R3を発現する細胞系の自動化蛍光画像データを示す。安定した細胞系におけるスクロース、D-トリプトファン、サッカリン及びアスパルテーム容量反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
この様に本発明は、味覚細胞特異Gタンパク共役受容体(「GPCR」)をコードする単離された核酸分子、及びそれらがコードするポリペプチドを提供する。これらの核酸分子及びそれらがコードするポリペプチドは、味覚細胞特異GPCRのT1Rファミリーのメンバーである。味覚細胞特異GPCRのT1Rファミリーのメンバーは、Hoon et al., Cell, 96: 541-551 (1999), WO 00/06592, 及びWO 00/06593のなかで同定されている(ここに、これら文献の全体を引用により本明細書に取り込む)。より具体的には、本発明は、味覚細胞特異GPCRの新規なファミリーをコードする核酸を提供する。これら核酸及びそれらがコードする受容体は、味覚細胞特異GPCRの「T1R」ファミリーと呼ばれる。本発明の特定の態様において、T1Rファミリーのメンバーは、ヒトT1R1,T1R2及びT1R3を含む。上述したように、異なるT1Rの組合せは、おそらく、甘味及び旨味を仲介する。さらに、T1Rファミリーメンバーは、他のT1Rファミリーメンバー、他の味覚細胞特異GPCR、またはそれらの組合せと共同して化学感覚味覚伝達を行なっていると考えられている。例えば、T1R1及びT1R3は、おそらく、同じ味覚受容体細胞種の中で一緒に発現しており、この二つの受容体が物理的に相互作用して異種2量体味覚受容体を形成していると考えられている。また、T1R1及びT1R3はいずれも、独立して同じタイプのリガンドと結合することができ、それらの組み合わせによる結合が、特定の味覚を認知させることができる。
【0030】
これらの核酸は、味覚細胞で特異的に発現するので、味覚細胞を同定するために有効なプローブを提供する。例えば、T1Rポリペプチド及びタンパクのプローブは、葉状乳頭、輪郭乳頭、及び菌状乳頭に存在する味覚細胞、並びに味覚帯、口腔、消化管上皮、及び喉頭蓋に存在する味覚細胞を同定するために使用することができる。それらはまた、舌の味覚細胞と脳における味覚中枢に至る味覚神経との関係を解明する味覚分布図を作製する手段として用いることができる。特に、T1Rを検出する方法は、甘味刺激またはその他の特別な味刺激に感受性の味覚細胞を同定するために使用することができる。さらに、その核酸及びその核酸がコードするタンパクは、味覚誘導作用を分析するためのプローブとして使用することができる。また、ヒトT1Rをコードする遺伝子における染色体中の局在性は、T1Rファミリーメンバーによる疾患、突然変異、及び形質を同定するために使用することができる。
【0031】
本発明のT1Rタンパク及びポリペプチドをコードする核酸は、遺伝的に操作され、増幅され、合成され、及び/またはWO 00/035374に開示の方法で組換えにより発現された(ここに、その全体を引用により本明細書中に取り込む。)各種資源から単離することができる。
【0032】
本発明はまた、これら新規な味覚細胞特異GPCRの、活性化物質、阻害物質、促進物質、増強物質、アゴニスト、及びアンタゴニスト等の調節物質を、スリーニングする方法を提供する。そのような味覚伝達の調節物質は、味覚シグナル伝達経路における、薬理的調節、化学的調節、及び遺伝的調節に有用である。このスクリーニング方法は、味覚細胞作用における高親和性アゴニスト及びアンタゴニストを同定するために使用することができる。その上、これら調節化合物は、食品産業及び医薬品産業において、例えば、食品または医薬品の甘味を調節するため等、ニーズに合った味付けをするために、使用することができる。
【0033】
この様に本発明は、T1Rファミリーメンバーが、味覚伝達に関する調節物質の作用についての直接的または間接的レポーター分子として働く、味覚調節を検出して特徴付ける検定法を提供する。GPCRは、例えば、インビトロ、インビボ及びエクスビボにおいて、リガンド結合、イオン濃度、膜電位、電流、イオン流出、転写、シグナル伝達、受容体−リガンド相互作用、第2メッセンジャー濃度等の変化を測定する検定において、使用することができる。一の態様において、T1Rファミリーのメンバーは、緑色蛍光タンパクのような第二レポーター分子に結び付けることにより、間接的レポーターとして使用することができる(例えば、Mistili & Spector, Nature Biotechnology, 15: 961-964 (1997)を参照)。他の態様において、T1Rファミリーメンバーは、細胞中で、組換えにより発現させることができ、GPCR作用による味覚伝達の調節は、Ca+2レベルや、cAMP,cGMP,若しくはIP3のような他の細胞内メッセンジャーの変化を測定することにより検定することができる。
【0034】
ある態様において、例えば、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、または細胞内ドメイン等のT1Rポリペプチドからなるドメインを、異種ポリペプチドと融合し、それによって、例えば、GPCR作用を有するキメラポリペプチド等のキメラポリペプチドを形成する。そのようなキメラポリペプチドは、例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、またはその他のT1Rポリペプチド調節物質を同定するための検定において有用である。加えて、そのようなキメラポリペプチドは、新規なリガンド結合特異性、調節方法、シグナル伝達経路、またはその他の関連特性を持つ新規な味覚受容体を創り出すために、或いはリガンド結合特異性、調節方法、シグナル伝達経路などの新規な組合せを持つ新規な味覚受容体を創り出すために有用である。
【0035】
一の態様において、T1Rポリペプチドは、細胞膜輸送、或いは分泌経路を通じて起こる成熟及びターゲティング、を促進する異種のシャペロン配列を持つキメラ受容体として真核細胞内で発現する。その異種配列は、任意に、ロドプシンのN-末端断片のようなロドプシン配列とすることができる。そのようなキメラT1R受容体は、HEK-293のような真核細胞で発現させることができる。望ましくは、その細胞は、例えば、Gα15若しくはGα16、または細胞内シグナル伝達経路若しくはホスフォリパーゼCのようなシグナルタンパクに、広範囲の化学感覚GPCRを組合せることができる他のプロミスカスGタンパク等のGタンパクを含むものである。また、その細胞は、機能的T1R味覚受容体を作製するために、T1Rと共役する能力に基づいて選択されたキメラGタンパクまたは変異Gタンパクを発現することができる。特に望ましい変異Gタンパクの例としては、2001年10月29日出願の米国出願番号09/984,292(その全体を引用によりここに取り込む)に開示されたGタンパク変異体、及び米国仮出願番号60/ 、代理人事件番号078003-0280737292(その全体を引用によりここに取り込む)に開示されているキメラGα15変異体がある。これらの出願は、良く知られたプロミスカスGタンパクであるGα15より、T1Rとより共役することが示されているGタンパク変異体を開示している。そのような細胞におけるそのようなキメラ受容体の活性化は、例えば、細胞内でのFURA-2による蛍光を検出することにより、細胞内カルシウムの変化を検出するような、標準的方法を使用して検出することができる。もし所望の宿主細胞が、適当なGタンパクを発現しない場合には、米国出願番号60/243,770(ここに、その全体を引用により取り込む)に記述されているようなプロミスカスGタンパクをコードする遺伝子を細胞に移入するとよい。
【0036】
味覚伝達の調節物質を検定する方法は、
T1Rポリペプチド、その部分、すなわち、細胞外ドメイン、膜貫通領域、またはそれらの組合せ、或いはT1Rファミリーメンバーの1またはそれ以上のドメインを含むキメラタンパク;
T1Rポリペプチド、断片または融合タンパクを発現する卵母細胞または組織培養細胞;
T1Rファミリーメンバーのリン酸化及び脱リン酸化;
GPCRへのGタンパク結合;
リガンド結合検定;
電圧、膜電位及び伝導度の変化;
イオン流出検定;
cGMP、cAMP及びイノシトール三リン酸のような細胞内第2メッセンジャーの変化;
細胞内カルシウムレベルの変化;及び
神経伝達物質の放出;
を使用するリガンド結合検定を含む。
【0037】
さらに本発明は、味覚伝導調節の研究及び味覚受容体細胞の特異的な同定を可能とする、T1R核酸及びタンパク発現を検出する方法を提供する。T1Rファミリーメンバーは、実父確認及び法医学調査に有用な核酸プローブも提供する。T1R遺伝子は、葉状乳頭、菌状乳頭、輪郭乳頭、味覚帯、及び喉頭蓋味覚受容体細胞のような味覚受容体細胞を同定するための核酸プローブとしても有用である。T1R受容体は、味覚受容体の同定に有用なモノクロナール抗体及びポリクロナール抗体を作製するために使用することもできる。味覚受容体細胞は、例えば逆転写及びmRNAの増幅、総RNAまたはポリA+RNAの単離、ノーザンブロット、ドットブロット、インシツハイブリダイゼーション、RNA分解酵素保護、S1消化、プローブ化DNAマイクロチップアレイ、ウエスタンブロットなどの技術を使用して同定することができる。
【0038】
機能的には、T1Rポリペプチドは、味覚伝達に関与し、味覚シグナル伝達を仲介するためにGタンパクと相互作用すると考えられている、関連の7回膜貫通Gタンパク共役受容体のファミリーを含んでいる(例えば、Fong, Cell Signal, 8: 217 (1996); Baldwin, Curr. Opin. Cell Biol., 6: 180 (1994)を参照)。構造的には、T1Rファミリーメンバーのヌクレオチド配列は、細胞外ドメイン、7回膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含む関連ポリペプチドをコードしていると思われる。他の種の関連T1Rファミリー遺伝子は、SEQ ID NO: 1, 2, 3, 9, 11, 13, 15, 16, 20,またはその保存的修飾変異体に対し、少なくとも約50ヌクレオチド長、さらに100,200,500、若しくはそれ以上のヌクレオチド長の領域で、少なくとも約50%、及びさらに60%,70%,80%,若しくは90%のヌクレオチド配列相同性を有し、或いはSEQ ID NO: 4, 10, 12, 14, 17, 21, またはその保存的修飾変異体に対して、少なくとも約25アミノ酸長、さらに50から100アミノ酸長の領域で、少なくとも35から50%、さらに60%,70%,80%,若しくは90%のアミノ酸相同性を有する、ポリペプチドをコードしている。
【0039】
T1Rファミリーメンバーの特徴であるいくつかの共通アミノ酸配列またはドメインが同定されている。例えば、T1Rファミリーメンバーは、典型的に、T1R共通配列1及び2(それぞれSEQ ID NO 18及び 19)に対して、少なくとも約50%、さらに55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%,90%,95-99%,またはそれ以上の相同性を持つ配列を含んでいる。従って、これらの保存ドメインは、相同性、特異的なハイブリッド形成若しくは増幅、またはドメインに対する抗体による特異的結合により、T1Rファミリーメンバーの同定に使用することができる。そのようなT1R共通配列は次のアミノ酸配列を持っている。
T1Rファミリー共通配列1:(SEQ ID NO: 18)
(TR)C(FL)(RQP)R(RT)(SPV)(VERKT)FL(AE)(WL)(RHG)E
T1Rファミリー共通配列2:(SEQ ID NO: 19)
(LQ)P(EGT)(NRC)YN(RE)A(RK)(CGF)(VLI)T(FL)(AS)(ML)
【0040】
これらの共通配列は、本明細書に記述したT1Rポリペプチドに見られる配列を含んでいるが、他の生物のT1Rファミリーメンバーは、ここに特定した共通配列に対して約75%またはそれ以上の相同性を持つ共通配列を含むことが予想される。
【0041】
T1Rヌクレオチド及びT1Rアミノ酸配列の特異的領域は、T1Rファミリーメンバーの多型変異体、種間類似性、及び対立遺伝子を同定するために使用することができる。この同定は、インビトロにおいて、例えば、厳密なハイブリッド形成条件またはPCR(例えば、上述のT1R共通配列をコードするプライマーを使用して)、または他のヌクレオチド配列と比較するためのコンピューターシステムにおける配列情報を使用して、行なうことができる。単一種の集団内におけるT1R遺伝子の異なる対立遺伝子は、対立遺伝子配列の相違が集団のメンバー間の味覚の相違に関係するか否かを検討するのにも有用であろう。古典的なPCR型増幅及びクローニング技術は、例えば、縮重プライマーが、単一種内のT1Rファミリーメンバーのパラログメンバーよりも、相対的に高いレベルの相同性を典型的に持つ総ての種の関連遺伝子を検出するのに充分であれば、オーソログ遺伝子を単離するのに有用である。
【0042】
例えば、縮重プライマーSAP077(SEQ ID NO: 5)及びSAP0079(SEQ ID NO: 6)は、異なる哺乳動物の遺伝子からT1R3遺伝子を増幅及びクローン化するために使用することができる。これに対して、T1R3に関連する単一種内の遺伝子は、最も、関連配列を探索するために、配列パターン認識ソフトウエアを使用して同定される。典型的には、T1Rファミリーメンバーの多形変異体及び対立遺伝子の同定は、約25アミノ酸、または50-100等のそれ以上のアミノ酸の、アミノ酸配列を比較することにより行なうことができる。少なくとも約35から50%、及びさらに60%,70%,75%,80%,85%,90%,95-99%,またはそれ以上のアミノ酸相同性は、典型的に、タンパクがT1Rファミリーメンバーの多型変異体、種間同族体、または対立遺伝子であることを示している。配列比較は、後に検討する配列比較アルゴリスムのいずれかを使用して実施することができる。T1Rポリペプチドまたはその保存領域に特異的に結合する抗体も、対立遺伝子、種間同族体、及び多型変異体を同定するために使用することができる。
【0043】
T1R遺伝子の多型変異体、種間同族体、及び対立遺伝子は、推定されたT1Rポリペプチドの味覚細胞特異発現を調べることにより確認することができる。典型的には、本明細書に開示したアミノ酸配列を持つT1Rポリペプチドは、T1Rファミリーメンバーの多型変異体または対立遺伝子であることを立証するために、推定T1Rポリペプチドと比較する陽性対照として使用することができる。多型変異体、対立遺伝子、及び種間同族体は、Gタンパク共役受容体の7回膜貫通構造を保持していることが予想される。さらなる詳細は、関連T1RファミリーメンバーであるGPCR-B3を開示しているWO 00/06592に記載されている(その内容は、本明細書の開示と一致するように、引用によりここに取り込む)。GPCR-B3受容体は、本明細書において、rT1R1及びmT1R1と呼ぶ。加えて、関連T1RファミリーメンバーであるGPCR-B4が、WO 00/06593に開示されている(その内容は、本明細書の開示と一致するように、引用によりここに取り込む)。GPCR-B4受容体は、本明細書において、rT1R2及びmT1R2と呼ぶ。
【0044】
T1Rファミリーメンバーに関するヌクレオチド配列情報及びアミノ酸配列情報は、コンピュータシステム内の味覚細胞特異ポリペプチドのモデルを構築するために使用することができる。これらのモデルは、後に、T1R受容体タンパクを活性化または抑制する化合物を同定するために使用することができる。その上、T1Rファミリーメンバーの作用を調節する化合物は、味覚伝達におけるT1R遺伝子及び受容体の役割を研究するために使用することができる。
【0045】
本発明はまた、T1Rポリペプチドと相互作用する及び/またはT1Rポリペプチドを調節する分子を同定するための検定、望ましくは高効率の検定を提供する。多数の検定において、例えば、細胞外ドメイン若しくは領域、膜貫通ドメイン若しくは領域、または細胞内ドメイン若しくは領域といったT1Rファミリーメンバーの特定のドメイン等が使用される。多数の態様において、細胞外ドメイン、膜貫通領域、またはそれらの組合せは、固相基質に結合させて、T1Rポリペプチドに結合、及び/またはT1Rポリペプチドの作用を調節できる、リガンド、アゴニスト、アンタゴニストまたはその他の分子を単離するために使用することができる。
【0046】
本発明の一の態様において、hT1R3と呼ばれるT1Rファミリーの新規ヒトGPCR遺伝子が提供される。hT1R3遺伝子は、GenBankのHTGS区分を含むヒトゲノム配列データベースから同定した。hT1R3のヌクレオチド配列及び理論的に翻訳されたアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1-4に示されている。hT1R3受容体は、候補ラット味覚受容体rT1R1(登録番号AF127389)との配列類似性に基づき、部分的に配列決定されたBACゲノムクローンRP5-890O3(データベース登録番号AL139287)で、同定された。照合により、予想されたhT1R3及びrT1R1タンパク配列間の相互の相同性は約34%であった。GPCRファミリーC(カルシウム感受性受容体、推定V2Rフェロモン受容体、GABA-B受容体、魚味覚受容体、及び代謝型グルタミン受容体を含む)を、追加的メンバーと配列比較した結果、hT1R3は、T1R1及び第二ラット候補味覚受容体(rT1R2、登録番号AF127390)によって規定されるファミリーC亜群に属することが示された。
【0047】
本発明はまた、rT1R1と命名されたラット味覚受容体の、hT1R1と呼ばれるヒトオーソログを提供する。rT1R1及びhT1R1遺伝子産物は、約74%相同である。mT1R1マウス遺伝子が報告されており(Hoon et al., Cell, 96: 541-551 (2000)参照)、hT1R1を含む区間に類似の染色体区間に位置している。そのヌクレオチド及び理論的に翻訳したhT1R1配列は、本明細書中では、それぞれSEQ ID NO: 15及び16として記述されている。
【0048】
特定の理論に結び付けるつもりはないが、受容体のT1Rファミリーは、甘味に影響を及ぼす第四染色体の遠位末端にある遺伝子座である、Sac遺伝子座にmT1R3が結合することによって、甘味味覚伝達に関与すると予想されている。ヒトT1R3は、Sac及びT1R1を含むマウスの区間とともに、保存シンテニーを示す領域である、1p36.2-1p36.33に局在することも報告されている。しかし、T1R型受容体は、苦味、旨味、酸味及び塩味のような他の味の種類を仲介することもできる。
【0049】
種々の保存的突然変異及び置換は、本発明の範囲内にあると考えられる。例えば、当業者の熟練度の範囲内でPCR、遺伝子クローニング、cDNAの部位指定突然変異誘起、宿主細胞の遺伝子導入、及びインビトロ転写を含む既知組換え遺伝子技術を使用してアミノ酸置換を実施できるであろう。次いでその変異体について味覚細胞特異GPCR機能活性をスクリーニングする。
【0050】
A. T1Rポリペプチドの同定と分析
本発明のT1Rタンパク及びポリペプチドのアミノ酸配列は、コードする核酸配列の理論的翻訳により同定することができる。これら各種アミノ酸配列及びコード核酸配列は、多くの方法によって互いに他の配列と比較することができる。
【0051】
例えば、配列比較において、典型的に一つの配列は、被検配列が比較される対照配列として働く。配列比較アルゴリスムを使用する場合には、被検配列と対照配列が、コンピューターに入力され、必要があれば部分配列座標を指定し、更に配列アルゴリスムプログラムパラメータを指定する。BLASTN及びBLASTPについて以下に記述するように、デフォルトプログラムパラメータを使用することもできるし、あるいは他のパラメータを指定することもできる。次いで、配列比較アルゴリスムは、プログラムパラメータに基づいて、対照配列に対する被検配列のパーセント配列相同性を計算する。
【0052】
本明細書中で使用される「比較枠」は、二つの配列を最適に整列した後に、同数の連続配座の対照配列と比較される配列の20から600、通常は約50から約200、さらに良く使用されるのは約100から約150、からなる群から選択された連続位置数のいずれか一つの部分を含んでいる。比較のために配列を整列する方法は当業者には既知である。比較のための最適な配列の整列は、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981)の局所相同性アルゴリスムによって、Needlemann & Wunsch, J Mol. Biol. 48: 443 (1970)の相同性整列アルゴリスムによって、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)の類似性探索法によって、これらのアルゴリスムのコンピュータによる使用(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)によって、または手で整列して視覚的に調べること(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)参照)によって行なうことができる。
【0053】
パーセント配列同一性及び配列類似性を測定するために適したアルゴリスムの望ましい例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリスムであり、それらはAltschul et al., Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402(1977)及びAltschul et al., J Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)にそれぞれ記述されている。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して誰でも入手することができる。このアルゴリスムは、データベース配列の同じ長さの文字列と整列した時にある正の閾値スコアーTと一致するかまたは充たす問題配列中の長さWの短い文字列を同定することにより最初にハイスコアー配列対(HSP)を同定することを含んでいる。Tは隣接文字列スコアー閾値と呼ばれている(Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402 (1977) and Altschul et al., J Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))。この最初の隣接文字列発見が、それを含む長いHSPを発見するための探索開始の種として働く。この文字列発見を各配列に沿って両方向に累積整列スコアが増加する限り延長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列に対してはパラメータM(一致した残基対に対する報奨スコア;常に>0)、及びN(ミスマッチ残基に対するペナルティースコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列に対しては、累積スコアの計算にスコアマトリックスが使用される。この文字列発見の両方向への延長は次の場合に停止する:累積整列スコアが最高到達値から数値X低下する;1またはそれ以上の負スコア残基配列の蓄積のために累積スコアが零かそれ以下になる;またはいずれかの配列の末端に達する。BLASTアルゴリスムパラメータW, T,及びXは整列の感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)はデフォルトとして文字列長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に対しては、BLASTPプログラムはデフォルトとして文字列長3、及び期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad Sci. USA 89: 10915 (1989)を参照)、整列(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。
【0054】
有用なアルゴリスムの他の例はPILEUPである。PILEUPは段階的、対毎の整列を使用して関連配列の群の複数配列整列を創り、相関関係及びパーセント配列同一性を示す。整列を創るために使用される集団関係を示す所謂「木」または「樹状図」を描く(例えば、図2を参照)。PILEUPはFeng & Doolittle, J Mol. Evol. 35: 351-360 (1987)の段階的整列方法の簡略法を使用している。使用されている方法はHiggins & Sharp, CABIOS 5: 151-153 (1989)。このプログラムは最大長5,000ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列を300まで整列することができる。多数整列手順は二つの最も類似する配列の対毎の整列で始まり、二つの整列配列の房を作る。次いでこの房を次に最も関係のある配列または整列した房と整列する。配列の二つの房は二つの個別の配列の対毎の整列を単純に拡大することにより整列される。最終的な整列は一連の段階的、対毎の整列により達成される。プログラムは特定の配列を指定するか、配列比較の領域に対するアミノ酸またはヌクレオチド座標を指定するか、プログラムパラメータを指定することにより実行される。PILEUPを使用して、対照配列と他の被検配列のパーセント配列同一性を以下のパラメータを使用して計算するために比較する:デフォルトギャップウエイト(3.00)、デフォルトギャップ長ウエイト(0.10)、重み付き末端ギャップ。PILEUPは遺伝子によりエンコードされ対応するオープンリーディングフレームの概念的翻訳により誘導されるGCG配列分析ソフトウエアパッケージ、例えば、バージョン7.0から得ることができる(Devereaux et al., Nuc. Acids Res. 12: 387-395(1984))。これらのタンパク配列を公開配列データベースの全て既知のタンパクとBLASTPアルゴリスムを使用して比較した結果、T1Rファミリーのメンバーに対して強い相同性を示し、T1Rファミリー配列の各々はこのファミリーの少なくとも一つの既知メンバーに対して、少なくとも35から50%、及び望ましくは少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、そして最も望ましくは少なくとも70%のアミノ酸同一性を持っている。
【0055】
B. 定義
ここに使用されている以下の用語は特記しない限りその本来の意味を有している。
【0056】
「味覚細胞」は、舌の味蕾を形成する群に組織された神経上皮細胞、例えば、葉状細胞、菌状細胞、輪郭細胞を含む(例えば、Roper et al., Ann. Rev. Neurosci. 12: 329-353 (1989)を参照)。味覚細胞はまた、口蓋、並びに食道及び胃のようなその他の組織にも認められる。
【0057】
「T1R」は、葉状細胞、菌状細胞、輪郭細胞並びに口蓋及び食道の細胞のような味覚細胞で発現するGタンパク共役受容体のファミリーの1またはそれ以上のメンバーのことである(例えば、Hoon et al., Cell, 96: 541-551 (1999)を参照、その全体を引用して取り入れた)。このファミリーのメンバーはまた、WO 00/06592においてGPCR-B3及びTR1と呼ばれ、WO 00/06593においてGPCR-B4及びTR2と呼ばれている。GPCR-B3は、本明細書ではrT1R1と呼び、GPCR-B4はrT1R2と呼ぶ。味覚受容体細胞は、形態に基づいて(例えば、前述したRoper参照)、あるいは味覚細胞に特異的に発現するタンパクの発現により、同定することができる。T1Rファミリーメンバーは、甘味伝達の受容体として働く能力、または種々の他の味覚を区別する能力を持っている。
【0058】
「T1R」核酸は、例えば、細胞外刺激に応答してGタンパクに結合し、ホスフォリパーゼCやアデニレートシクラーゼのような酵素の活性化により、IP3,cAMP,cGMP,及びCa2+のような第2メッセンジャーの生産を促進する「Gタンパク共役受容体作用」を持つ7回膜貫通領域を有するGPCRのファミリーをコードしている。(GPCRの構造及び機能の記述については、例えば、前述したFong、及びBaldwinを参照)。一つの味覚細胞は、多数の異なるT1Rポリペプチドを含むことがある。
【0059】
したがって、「T1R」ファミリーと言う用語は、
(1)約25アミノ酸、さらに50-100アミノ酸の枠で、SEQ ID NO:4, 10, 12, 14, 17, または21に対して、少なくとも約35-50%アミノ酸配列同等性、さらに約60,75,80,85,90,95,96,97,98,または99%アミノ酸配列同等性を持つ;
(2)SEQ ID NO:4, 10, 12, 14, 17, 21及びそれらの保存的に修飾された変異体からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む免疫原に対して得られる抗体に特異的に結合する;
(3)SEQ ID NO:1, 2, 3, 9, 11, 13, 15, 16, 20,及びその保存的に修飾された変異体からなる群から選択される配列に厳密なハイブリッド形成条件の下に(少なくとも約100、さらに少なくとも約500-1000ヌクレオチドと)、特異的にハイブリッド形成する核酸分子によってコードされる;
(4)SEQ ID NO:4, 10, 12, 14, 17, 及び21からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約35から50%同一の配列を含む;或いは
(5)SEQ ID NO: 7,8またはそれらの保存的修飾がされた変異体をコードする縮重プライマーセットと同じ配列に厳密な条件下に特異的にハイブリッド形成するプライマーにより増幅される;
多型変異体、対立遺伝子、突然変異、及び種間同族体のことである。
【0060】
立体構造的には、ある特定の化学感覚GPCRは、「N-末端ドメイン」と、「細胞外ドメイン」と、7回膜貫通領域、並びに対応する細胞質ループ及び対応する細胞外ループを有する「膜貫通ドメイン」と、「細胞質ドメイン」と、「C-末端ドメイン」とを持っている(例えば、Hoon et al., Cell, 96: 541-551 (1999); Buck & Axel, Cell, 65; 175-187 (1991)を参照)。これらのドメインは、疎水性ドメイン及び親水性ドメインを同定する配列分析プログラムのような当業者の既知方法を使用して構造的に同定することができる(例えば、Stryer, Biochemistry, (3rd ed. 1988)を参照;またdot.imgen.bcm.tmc.eduに見られるようなインターネットに基づく多数の配列分析プログラムのいずれかも参照)。そのドメインは、キメラタンパクの作製及び本発明のインビトロ検定、例えば、リガンド結合検定に有用である。
【0061】
「細胞外ドメイン」は、したがって、細胞の膜から突き出ており、細胞の細胞外表面に曝露されているT1Rポリペプチドのドメインのことである。そのドメインは、一般的に「N-末端ドメイン」を含んでおり、それは細胞の細胞外表面に曝露され、さらに細胞の細胞外表面に曝露されている膜貫通ドメインの細胞外ループの部分、すなわち、膜貫通領域2及び3の間、膜貫通領域4及び5の間、及び膜貫通領域6及び7の間のループを含むことができる。
【0062】
「N-末端ドメイン」領域は、N-末端に始まり、膜貫通ドメインの始点に近い領域へ伸びている。より詳細には、本発明の一態様において、このドメインは、ほぼ、N-末端に始まりアミノ酸位置563±約20アミノ酸にある保存グルタミン酸で終わる。これらの細胞外ドメインは、溶液及び固相のいずれにおいても、インビトロリガンド結合検定に有用である。さらに、下記膜貫通領域も細胞外ドメインと組合わせてリガンドと結合することができるので、インビトロリガンド結合検定に有用である。
【0063】
7回「膜貫通領域」を含む「膜貫通ドメイン」とは、形質膜内にあり、対応する細胞質(細胞内)ループ及び細胞外ループをも含むことがあるT1Rポリペプチドのドメインのことである。一の態様において、この領域は、アミノ酸位置563±約20アミノ酸にある保存グルタミン酸からほぼ始まり、アミノ酸位置812±約10アミノ酸にある保存チロシンアミノ酸残基でほぼ終わるT1Rファミリーメンバーのドメインに相当する。7回膜貫通領域並びに細胞外ループ及び細胞質ループは、前述した、Kyte & Doolittle, J. Mol. Biol., 157: 105-32 (1982)、またはStryerに記述されているように、標準的方法を使用して同定することができる。
【0064】
「細胞質ドメイン」とは、細胞の内側にあるT1Rポリペプチドのドメイン、例えば、「C末端ドメイン」、並びに膜貫通領域1及び2の間の細胞内ループ、膜貫通領域3及び4の間の細胞内ループ、及び膜貫通領域5及び6の間の細胞内ループ等の膜貫通ドメインの細胞内ループのことである。「C末端ドメイン」とは、最後の膜貫通ドメインの終わりからタンパクのC-末端に至る領域のことであり、通常、細胞質内に局在する。一の態様において、この領域は、位置812±約10アミノ酸にある保存チロシンアミノ酸残基から始まりポリペプチドのC-末端まで続く。
【0065】
用語「リガンド結合領域」または「リガンド結合ドメイン」とは、化学感覚受容体、特に味覚受容体から誘導された配列のことであり、それは実質的に受容体の少なくとも細胞外ドメインに組込まれている。一の態様において、リガンド結合領域の細胞外ドメインは、N-末端ドメイン、及び、随意的に膜貫通ドメインの細胞外ループのような膜貫通ドメインの部分を含んでいる。リガンド結合領域は、リガンド、特に味覚刺激物質と結合することができる。
【0066】
味覚伝達を仲介するT1Rファミリーメンバーを調節する被検化合物を検定に関する文脈中、「機能的効果」という語は、機能的、物理的及び化学的効果等の、間接的にまたは直接的にこの受容体の影響を受ける総てのパラメーターの測定を含む。それには、リガンド結合、インビトロ、インビボ及びエクスビボにおけるイオン流出、膜電位、電流、転写、Gタンパク結合、GPCRリン酸化及び脱リン酸化、シグナル伝達、受容体リガンド相互作用、第2メッセンジャー濃度(例えば、cAMP,cGMP,IP3または細胞内Ca2+)の変化、並びに神経伝達物質またはホルモン放出の増減のような生理的効果が含まれる。
【0067】
検定に関する文脈中、「機能的効果の測定」は、間接的または直接的にT1Rファミリーメンバーの影響を受けるパラメータ、例えば、機能的、物理的及び化学的効果、を増減する化合物を検定することを意味する。その機能的効果は、当業者には既知のいずれかの方法、例えば、分光学的特性(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的特性(例えば、形)、クロマトグラフィー吸着特性、溶解特性、パッチクランプ、電位感受性色素、ホールセル電流、放射性同位元素、誘導マーカー、卵母細胞T1R遺伝子発現;組織培養細胞T1R発現;T1R遺伝子の転写活性化;リガンド結合検定;電圧、膜電位及び伝導度の変化;イオン流出検定;cAMP,cGMP,及びイノシトール三リン酸(IP3)のような細胞内第2メッセンジャーの変化;細胞内カルシウムレベルの変化;神経伝達物質放出、などによって測定することができる。
【0068】
T1R遺伝子またはタンパクの「阻害物質」「活性化物質」及び「調節物質」は味覚伝達のインビトロ及びインビボ検定を使用して同定される、阻害分子、活性化分子、または調節分子を示すものとして互換的に使用されるものであり、阻害分子、活性化分子、または調節分子としては、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、並びにその同族体及び類似体がある。阻害物質とは、例えば、結合して刺激を部分的にまたは完全に阻止し、味覚伝達を減少し、阻止し、活性化を遅延し、不活化し、脱感作し、または下方調節する化合物のことであり、例えば、アンタゴニストが該当する。活性化物質とは、例えば、結合し、刺激し、味覚伝達を増加し、開き、活性化し、促進し、活性化を増強し、感受性にし、または上方調節する化合物のことであり、例えば、アゴニストが該当する。
調節物質には、例えば、下記化合物と受容体との相互作用を変化させる化合物が含まれる:
活性化物質または阻害物質を結合させる細胞外タンパク(例えば、エブネリン及び疎水性キャリアーファミリーのその他のメンバー);
Gタンパク;
キナーゼ類(例えば、ロドプシンキナーゼの同族体及び受容体の脱活性化及び脱感受性に必要なベータ交感神経受容体キナーゼ);及び
受容体を脱活性化及び脱感作するアレスチン。
調節物質には、T1Rファミリーメンバーの遺伝子修飾体であって、例えば、改変された作用を持つもの、並びに天然に存在するリガンド及び合成リガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、小型化学分子等が含まれる。阻害物質及び活性化物質の検定は、例えば、細胞内または細胞膜でのT1Rファミリーメンバーの発現を含んでおり、推定調節化合物を味覚刺激、例えば、甘味刺激、の存在下または非存在下で適用し、次いで上記のように、味覚伝達における機能効果を測定する。候補活性化物質、阻害物質、または調節物質で処理されたT1Rファミリーメンバーを含む検体または検定を、調節の程度を調べるために、阻害物質、活性化物質、または調節物質を加えない対照検体と比較する。対照検体(調節物質で処理しない)を相対的なT1R活性値100%とする。対照に対する相対的なT1R活性値が約80%、さらに50%または25-0%であれば、T1Rの阻害は達成される。対照に対する相対的なT1R活性値が110%、さらに150%、さらに200-500%、または1000-3000%高いならば、T1Rの活性化は達成される。
【0069】
本明細書中で使用される用語「精製された」、「実質的に精製された」及び「単離された」とは、本発明の化合物が自然の状態において正常に共存している他の異なった化合物から分離されている状態のことであり、「精製され」、「実質的に精製され」、そして「単離された」物質は、重量で、その集合物の少なくとも0.5%,1%,5%,10%,または20%、そして最も望ましくは少なくとも50%または75%を構成する。望ましい一の態様において、この用語は、重量で、その集合物の少なくとも95%を構成する本発明の化合物を示す。本明細書中で使用される用語「精製された」、「実質的に精製された」及び「単離された」は、核酸またはタンパクに関する場合には、哺乳動物、特にヒト体内に自然に存在する状態とは異なる精製または濃度の状態のことである。哺乳動物、特にヒト体内中に自然に存在するよりも高い精製の程度または濃度は、(1)他の共存構造または化合物からの精製または(2)哺乳動物、特にヒト体内において正常では共存しない構造または化合物と共存を含み、「単離された」の意味の範囲に入る。本明細書中に記述された核酸またはタンパク或いは核酸またはタンパクのクラスは、当業者既知の種々の方法及び操作により、単離することができ、さもなければは正常では自然に共存しない構造または化合物と共存することができる。
【0070】
ここに使用した用語「単離された」は、核酸またはタンパクに関する場合には、哺乳動物、特にヒト体内に自然に存在する状態とは異なる精製または濃度の状態のことである。(1)他の自然に存在する共存構造または化合物から精製または(2)哺乳動物、特にヒト体内において正常では共存しない構造または化合物と共存を含む、体内中に自然に存在するよりも高い精製の程度または濃度は「単離された」の意味の範囲に入る。ここに記述した核酸またはポリペプチドは、当業者既知の種々の方法及び操作により、単離することができるか、または正常では自然に共存しない構造または化合物と共存することができる。
【0071】
ここに使用した用語「増幅する」及び「増幅」とは、以下に詳細に記述するように組換えまたは自然に発現する核酸を作製または検出するための適当な増幅方法のいずれかを使用することである。例えば、本発明は、本発明(例えば、本発明の味覚刺激物質結合配列)の自然発現核酸(例えば、ゲノムまたはmRNA)または組換え核酸(例えば、cDNA)をインビボまたはインビトロで増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により)するための方法及び試薬(例えば、特異的縮重オリゴヌクレオチドプライマー対)を提供する。
【0072】
用語「7回膜貫通受容体」は、形質膜を7回横切る7個のドメインを持つ膜貫通タンパクのスーパーファミリーに属するポリペプチドを意味する(したがって、7個のドメインは「膜貫通」または「TM」ドメインTM IからTMV IIと呼ばれている)。嗅覚受容体及びある味覚受容体のファミリーはこのスーパーファミリーに属している。7回膜貫通受容体ポリペプチドは、以下にさらに詳しく検討するように、類似のそして特徴的1次、2次及び3次構造を持っている。
【0073】
用語「ライブラリー」は、異なる核酸またはポリペプチド分子の混合物である調製品を意味し、例えば、縮重プライマー対を使用した核酸の増幅により作製した組換え化学感受性、特に味覚受容体リガンド結合ドメイン、または増幅リガンド結合ドメインを組込んだベクターの単離集合体、または味覚受容体をコードする少なくとも1つのベクターで無作為に遺伝子導入した細胞の混合物が該当する。
【0074】
用語「核酸」または「核酸配列」とは、1本鎖または2本鎖いずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのことである。この用語は天然ヌクレオチドの既知同族体を含む核酸、すなわち、オリゴヌクレオチドを包含する。この用語はまた合成骨格を有する核酸様構造も包含する(例えば、Oligonucleotides and Analogues, a Practical Approach, ed. F. Eckstein, Oxford Univ. Press (1991); Antisense Strategies, Annals of the N.Y. Academy of Sciences, Vol. 600, Eds. Baserga et al., (NYAS 1992); Milligan J. Med. Chem. 36: 1923-1937 (1993); Antisense Research and Applications (1993, CRC Press), WO 97/03211; WO 96/39154; Mata, Toxicol. Appl. Pharmacol. 144: 189-197 (1997); Strauss-Soukup, Biochemistry 36: 8692-8698 (1997); Samstag, Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 6: 153-156 (1996))。
【0075】
特別に示さない限り、個別の核酸配列は、その保存的修飾変異体(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列、並びに明示した配列もまた暗黙のうちに包含する。特に、縮重コドン置換は、例えば、1またはそれ以上の選択したコドンの第3番目を混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基で置換した配列を創ることにより行なうことができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res., 19: 5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem., 260: 2605-2608 (1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes, 8: 91-98 (1994))。用語核酸は遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドと互換的に使用される。
【0076】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク」は、アミノ酸残基の重合体を示すために、本明細書中では互換的に使用される。この用語を、1またはそれ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的類似物であるアミノ酸重合体並びに天然に存在するアミノ酸重合体及び天然に存在しないアミノ酸重合体に適用する。
【0077】
用語「形質膜トランスロケーションドメイン」または単に「トランスロケーションドメイン」は、ポリペプチドコード配列のアミノ末端に組込まれた時に、このハイブリッド(「融合」)タンパクを細胞の形質膜へ効率よく「シャペロン」するまたは「転移」することができるポリペプチドドメインを意味する。例えば、「トランスロケーションドメイン」はウシロドプシン受容体ポリペプチド、7回膜貫通受容体、のアミノ末端から誘導することができる。しかし、他の転移促進配列と同様、いずれの哺乳動物のロドプシンも使用することができる。このように、トランスロケーションドメインは7回膜貫通融合タンパクを形質膜へ移動させるのに特に有効であり、そしてアミノ末端トランスロケーションドメインを含むタンパク(例えば、味覚受容体ポリペプチド)はそのドメインの無い場合よりも有効に形質膜へ転移される。しかし、もしポリペプチドのN-末端ドメインが結合活性であるなら、他のトランスロケーションドメインを使用することが望ましいであろう。
【0078】
ここに記述した「トランスロケーションドメイン」、「リガンド結合ドメイン」及びキメラ受容体組成物は、実質的に代表的な配列に相当する構造及び作用を持つ「同族体」または「保存的変異体」及び「類似体」(「ペプチド類似体」)も含んでいる。このように、用語「保存的変異体」または「同族体」または「類似体」とは、その変化が、実質的に本明細書中で定義されたポリペプチドの(保存的変異体の)構造及び/または作用を変えないように、修飾されたアミノ酸を持つポリペプチドのことである。これには、アミノ酸配列の保存的修飾、すなわち、タンパクの作用に重要でない残基のアミノ酸置換、追加または削除、または重要なアミノ酸の置換であっても実質的に構造及び/または作用を変えないような同じ性質を持つ残基によるアミノ酸の置換が含まれる。
【0079】
さらに詳しく述べると、「保存的修飾変異体」は、アミノ酸配列にもそして核酸配列にも適用する。特定の核酸配列に関して、保存的修飾変異体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同じ配列の核酸のことである。遺伝子コードの縮重のために、非常に多数の機能的に同じ核酸が、ある特定のタンパクをコードしている。
【0080】
例えば、コドンGCA,GCC,GCG及びGCUは、すべてアミノ酸アラニンをコードしている。このように、アラニンがコドンによって特定されている位置毎に、コードしたポリペプチドを変化させること無く記述した対応コドンのいずれかにコドンを変えることができる。
【0081】
そのような核酸変異体は、一種の保存修飾変異体である「サイレント変異体」である。ポリペプチドをコードする核酸配列は、いずれも核酸の可能なサイレント変異体全てを記述している。当業者は、核酸の各コドンを(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、及び通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除いて)機能的に同一の分子を生じるように修飾することができることを認識している。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異体は記述された各配列の中に含まれている。
【0082】
機能的に同じアミノ酸を与える保存置換表は当業者に既知である。例えば、保存的置換を選択するための代表的ガイドラインとしては次記がある(元の残基次いで代表的な置換):ala/glyまたはser; arg/lys; asn/glnまたは his; asp/glu; cys/ser; gln/asn; gly/asp; gly/alaまたは pro; his/asnまたは gln; ile/leuまたは val; leu/ileまたは val; lys/argまたはglnまたは glu; met/leuまたはtyrまたは ile; phe/metまたはleuまたは tyr; ser/thr; thr/ser; trp/tyr; tyr/trpまたは phe; val/ileまたはleu。その他の代表的ガイドラインは次の6群を使用する、各群は相互に保存的置換であるアミノ酸を含んでいる;1)アラニン(A)、セリン(S),スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);(例えば、Creighton, Proteins, W.H. Freeman and Company (1984); Schultz and Schimer, Principles of Protein Structure, Springer-Vrlag (1979) も参照)。当業者は上記置換が唯一可能な保存置換でないことは理解しているであろう。例えば、ある目的では、全ての荷電アミノ酸をそれが正であるか負であるかによって、保存置換と見なすこともできる。さらに、コードする配列中の一つのまたはわずかのパーセントのアミノ酸の変更、追加または削除をする個別の置換、削除または追加は「保存的修飾変異体」とも考えられる。
【0083】
用語「類似体」及び「ペプチド類似体」とは、ポリペプチド、例えば、本発明のトランスロケーションドメイン、リガンド結合ドメインまたはキメラ受容体、と実質的に同じ構造及び/または機能的性質を持つ合成化合物のことである。類似体は、アミノ酸の合成的、非天然同族体から完全に構成することができるし、または部分的に天然ペプチド゛アミノ酸及び部分的にアミノ酸の非天然同族体のキメラ分子であっても良い。類似体は、その構造及び/または作用を実質的に変えない限り、天然アミノ酸保存置換をどれ程でも組込むことができる。
【0084】
保存的変異体である本発明のポリペプチドについて、日常的な実験により類似体が本発明の範囲に入るか否か、すなわち、その構造及び/または機能が実質的に変わっていないこと、が決定されるであろう。ポリペプチド類似組成物は、典型的に3つの構造群:a)天然アミド結合(「ペプチド結合」)以外の残基結合群;b)天然に存在するアミノ酸残基の代わる非天然残基;またはc)二次構造類似性、すなわち、安定な二次構造、例えば、ベータターン、ガンマターン、ベータシート、アルファへリックス立体構造を誘導する残基である非天然構造成分の組み合わせを含むことができる。残基の全てまたは一部が天然のペプチド結合以外の化学的方法で結合している場合には、ポリペプチドは類似体に分類することができる。個別のペプチド類似残基はペプチド結合、その他の化学結合またはカップリング方法、例えば、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル、二官能性マレイミド、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはN,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)により結合することができる。古典的アミド結合(「ペプチド結合」)に代わり得る結合の種類には、例えば、ケトメチレン(例えば、-C (=O)-NH-の代わりに-C (=O)-CH2-)、アミノメチレン(CH2-NH-)、エチレン、オレフィン(CH=CH)、エーテル(CH2-O)、チオエーテル(CH2-S)、テトラゾール(CN4),チアゾール、レトロアミド、チオアミドまたはエステルが含まれる(例えば、Spatola, Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, Vol. 7. pp 267-357, "Peptide Backbone Modifications", Marcell Dekker, NY (1983)を参照)。天然に存在するアミノ酸残基の代わりに全部または一部非天然残基を含むことによりポリペプチドは類似体に分類することができる;非天然残基は化学文献及び特許に良く記述されている。
【0085】
「標識」または「検出基」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段によって検出し得る成分である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAに良く使用されるような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または、例えば、放射標識をペプチドに組込んだ、またはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用した、ハプテン及び検出し易くしたタンパク、が含まれる。
【0086】
「標識核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、リンカーまたは化学結合を介して共役的に、またはイオン的、ファンデルワールス、静電的、または水素結合を介して非共役的に標識に結合し、そしてプローブに結合した標識の存在を検出することによりプローブの存在が検出される。
【0087】
本明細書中で使用された、「核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、1またはそれ以上の型の化学結合、通常は相補的塩基対、通常は水素結合形成により相補的配列の標的核酸と結合することができる核酸と定義される。本発明で使用さるプローブは、天然塩基(すなわち、A, G, C,またはT)または修飾塩基(7-デアザグアノシン、イノシン、など)を含むことができる。さらに、ハイブリッド形成を妨害しない限り、リン酸ジエステル結合以外の結合でプローブ中の塩基を結合することができる。このように、プローブが、例えば、構成塩基をリン酸ジエステル結合でなくペプチド結合で連結したペプチド核酸であることもある。ハイブリッド形成条件の厳密性によってはプローブ配列と完全な相補性が無い標的配列とプローブが結合し得ることは、当業者には理解されるであろう。プローブはさらに同位元素、発色団、蛍光団、染色団で直接標識されるか、あるいはストレプトアビジンが後に結合するビオチンで間接的に標識される。プローブが存在するか否かを検定することにより、選択した配列または部分配列が存在するか否かを検出することができる。
【0088】
用語「異種」が核酸の部分に関して使用された場合には、自然界において相互に同じ類縁関係中で見出すことができない2以上の部分配列を含むことを示す。例えば、核酸は典型的に組換えで作製され、新しい機能の核酸を作るために用意した関係の無い遺伝子の配列を2以上持っている、例えば、ある資源からのプロモーター及び他の資源からのコード配列。同様に、異種タンパクは、自然界において相互に同じ類縁関係中で相互に見出すことができない2以上の部分配列を含むタンパクを示す(例えば、融合タンパク)。
【0089】
「プロモーター」は核酸の転写を指令する核酸配列の配置と定義される。ここに使用されているプロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合におけるTATA配列のような、転写開始部位の近くに必要な核酸配列を含む。プロモーターはまたさらに転写開始部位から数千塩基対離れて存在するエンハンサーまたはリプレッサー配列を含んでいる。「構成的」プロモーターは殆どの環境及び発生段階において作用するプロモーターである。「誘導」プロモーターは環境または発生を調節した時に作用するプロモーターである。「作動的に結合した」とは、核酸発現調節配列(例えば、プロモーター、または転写因子結合部位の配置)及び第二の核酸配列を機能的に結合して、発現調節配列が第二配列に対応する核酸の転写を指令することである。
【0090】
本明細書中で使用される「組換え」とは、ポリヌクレオチド合成またはその他のインビトロ操作(例えば、「組換えポリヌクレオチド」)のこと、細胞中またはその他の生物学的システム中に遺伝子産物を作るために組換えポリヌクレオチドを使用する方法のこと、または組換えポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド(「組換えタンパク」)のこと、である。「組換え手段」は、異なる資源からの種々の領域、またはドメインまたはプロモーター配列を持つ核酸を、例えば、本発明のトランスロケーションドメイン及び本発明のプライマーを使用して増幅した核酸配列を含む、融合タンパクを誘導的または構成的に発現するための発現カセットまたはベクター中に結合することも包含している。
【0091】
語句「と選択的に(特異的に)ハイブリッド形成する」とは、配列が複雑な混合物(例えば、総細胞のまたはライブラリーのDNAまたはRNA)中に存在した時に、厳密なハイブリッド形成条件の下に特別なヌクレオチド配列のみと分子の結合、二重化またはハイブリッド形成をすることである。
【0092】
語句「厳密なハイブリッド形成条件」とは、プローブが典型的に核酸の複雑な混合物中において標的配列とハイブリッド形成し、他の配列とはハイブリッド形成しない条件のことである。厳密な条件は配列依存的であり、そして異なる環境では異なるであろう。核酸のハイブリッド形成に関する詳細な説明はTijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridisation with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)に見られる。一般的に、厳密な条件として規定するイオン強度、pHにおいて特別な配列の熱融点(Tm)より約5-10℃低く設定される。Tmは、平衡において標的に相補的なプローブの50%が標的配列とハイブリッド形成する温度(規定されたイオン強度、pH、及び核酸濃度において)である(標的配列が過剰に存在した時に、Tmにおいて、50%のプローブが平衡で占有される)。厳密な条件として、塩濃度は約1.0 Mナトリウムイオン以下、典型的には約0.01から1.0 Mナトリウムイオン濃度(またはその他の塩)、pH 7.0から8.3及び温度は短いプローブ(例えば、10から50ヌクレオチド)に対して少なくとも約30℃そして長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド以上)に対しては少なくとも60℃である。厳密な条件はフォルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成されることがある。選択的または特異的ハイブリッド形成としては、陽性信号は少なくともバックグランドの2倍、さらにバックグランドハイブリッド形成の10倍である。代表的なストリンジェントハイブリッド形成条件は次のようなものである:50%フォルムアミド、Sx SSC、及び1%SDS、42℃でインキュベーション、またはSx SSC、1% SDS、65℃でインキュベーション、0.2x SSC及び0.1%SDS中 65℃で洗浄。そのハイブリッド形成及び洗浄ステップは、例えば1,2,5,10,15,30,60分間またはそれ以上行なうことができる。
【0093】
相互に厳密な条件でハイブリッド形成しない核酸であっても、もしそれがコードするポリペプチドが実質的に関係があればまだ関係がある。これは、例えば、遺伝子コードで許容される最大のコドン縮重を使用して核酸のコピーが作られている場合に生じる。そのような場合に、核酸は典型的に緩和なハイブリッド形成条件においてハイブリッドを形成する。代表的な「緩和なハイブリッド条件」は、40%フォルムアミド、1 M NaCl, 1% SDSの緩衝液中37℃でハイブリッド形成し、そして1x SSC 45℃で洗浄する。そのハイブリッド形成及び洗浄ステップは、例えば1,2,5,10,15,30,60分間またはそれ以上行なうことができる。ハイブリッド形成陽性は少なくともバックグランドの2倍である。当業者はその他のハイブリッド形成及び洗浄条件を類似の厳密性の条件を作るために使用できることは容易に理解するであろう。
【0094】
「抗体」とは、抗原を特異的に結合及び認識する免疫グロブリンの骨格領域またはその断片を含むポリペプチドである。認識される免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、及びミュー定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はカッパまたはラムダに分類される。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、これらは逆に免疫グロブリンクラス、IgG,IgM,IgA,IgD及びIgEをそれぞれ規定する。
【0095】
代表的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は4量体を含む。各4量体は、二つの同じ対のポリペプチド鎖、各対は一つの「軽鎖」(約25 kDa)及び一つの「重鎖」(約50-70 kDa)から構成されている。各鎖のN-末端は抗原認識に本質的に必要な100から110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域とされている。用語可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)とはそれぞれ軽鎖及び重鎖のことである。
【0096】
「キメラ抗体」は、(a)定常領域またはその部分が変化し、置換されまたは交換されている抗体分子であり、そのため抗原結合部位(可変領域)は異なるまたは変更されたクラス、エフェクター機能及び/または(b)種の定常領域、またはキメラ抗体に新しい性質、例えば、酵素、トキシン、ホルモン、成長因子、薬物などを付与する全く異なる分子と結合している;または可変領域またはその部分が変更され、置換されまたは異なるまたは変更された抗原特異性を持つ可変領域に交換されている。
【0097】
「抗-T1R」抗体はT1R遺伝子、cDNA、またはその部分配列によりコードされたポリペプチドと特異的に結合する抗体または抗体断片である。
【0098】
用語「免疫検定」は抗原に特異的に結合する抗体を使用する検定である。免疫検定は抗原を単離、標的としそして/または定量するために特別な抗体の特異的結合性を使用することに特徴がある。
【0099】
語句抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」または「特異的に(または選択的に)免疫反応をする」は、タンパクまたはペプチドに関する場合は、タンパク及びその他の生体物質の不均一な集団の中にそのタンパクが存在することを決定する結合反応である。したがって、指定した免疫検定条件下に、特定した抗体は少なくともバックグランドの2倍特別なタンパクと結合し、そして検体中に存在するかなりの量の他のタンパクとは実質的に結合しない。そのような条件下に抗体に特異的に結合するには特別なタンパクに対する特異性により抗体を選択する必要がある。例えば、ラット、マウス、またはヒトのような特別な動物種のT1Rファミリーメンバーに対して作製したポリクロナール抗体はT1Rポリペプチドまたはその免疫原性部分と特異的に免疫反応をし、そしてT1Rポリペプチドのオーソログまたは多型変異体及び対立遺伝子を除くその他のタンパクとは反応しないポリクロナール抗体のみを得るために選別することができる。この選別は他の動物種のT1R分子またはその他のT1R分子と交差反応する抗体を取り去ることにより行われる。またT1R GPCRファミリーメンバーのみを認識し、他のファミリーのGPCRを認識しない抗体も選別される。種々の免疫検定方法を特別のタンパクと特異的に免疫反応する抗体を選別するために使用することができる。例えば、固相ELISA免疫検定はタンパクと特異的に免疫反応する抗体を選別するために定型的に使用されている(例えば、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, (1988), 特異的免疫反応性を測定するために使用できる免疫検定方法及び条件の記述を参照)。典型的に特異的または選択的反応はバックグランド信号またはノイズの少なくとも2倍であろう、そしてより典型的にはバックグランドの10または100倍以上であろう。
【0100】
語句「選択的に会合する」とは上記に定義したように他の核酸と「選択的にハイブリッド形成する」核酸の能力、または上記に定義したようにタンパクと選択的に(または特異的に)結合する」抗体の能力のことである。
【0101】
用語「発現ベクター」とは、本発明の核酸配列をインビトロまたはインビボで、構成的にまたは誘導的に、原核的、イースト、菌、植物、昆虫細胞または哺乳動物細胞を含むいずれの細胞においても、発現する目的の組換え発現システムのことである。この用語には線状または環状発現システムが含まれる。この用語にはエピソームに止まっているかまたは宿主細胞ゲノムに組み込まれた発現システムが含まれる。発現システムは自己複製能力を持つことがあるし、持たないこともある、すなわち、細胞内に一過性にのみ発現する。この用語には、組換え核酸の転写に必要な最低配列のみを含む組換え発現「カセット」が含まれる。
【0102】
「宿主細胞」は発現ベクター及び発現ベクターの複製または発現を支持するものを含む細胞を意味する。宿主細胞はE. coliのような原核細胞、またはイースト、昆虫、両生類、または哺乳動物細胞のような真核細胞、例えば、CHO,HeLa,HEK-293,など、例えば、培養細胞、エクスプラント、及びインビボ細胞である。
【0103】
A. T1Rポリペプチドの単離及び発現
本発明のT1Rまたはその断片若しくは変異体の単離及び発現は、下記のように実施することができる。PCRプライマーを、味覚受容体リガンド結合領域をコードする核酸の増幅に使用することができ、更にこれらの核酸のライブラリーを作製することができる。次いで、個々の発現ベクターまたは発現ベクターのライブラリーを、これらの核酸またはライブラリーを機能的に発現するための宿主細胞に、感染または移入させるために使用することができる。これらの遺伝子及びベクターは、インビトロまたはインビボで作製させて発現させることができる。核酸発現を変更または調節するための所望の表現型は、本発明のベクター内の遺伝子及び核酸(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)の発現または作用を修飾することにより得られることは、当業者によって理解されるであろう。発現または作用を増加または減少するために記述された既知方法は、いずれも使用することができる。本発明は、科学及び特許文献に記述されている、当業者既知の方法またはプロトコールのいずれも併用して実施することができる。
【0104】
本発明の核酸配列及び本発明を実施するために使用されるその他の核酸は、RNA,cDNA,ゲノムDNA,ベクター,ウイルスまたはそれらの雑種のいずれかであリ、遺伝子操作され、増幅され、及び/または組換えにより発現された種々の資源から単離することができる。哺乳動物細胞に加えて、例えば、細菌、イースト、昆虫、または植物系を含む、如何なる組換え発現系も、使用することができる。
【0105】
また、これらの核酸配列は、例えば、Carruthers, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47: 411-418 (1982); Adams, Am. Chem. Soc. 105: 661 (1983); Belousov, Nucleic Acids Res. 25: 3440-3444 (1997); Frenkel, Free Radic. Biol. Med. 19: 373-380 (1995); Blommers, Biochemistry 33: 7886-7896 (1994); Narang, Meth. Enzymol. 68: 90 (1979); Brown, Meth. Enzymol. 68: 109(1979); Beaucage, Tetra. Lett. 22: 1859 (1981); U.S. Patent No.4,458,066,に記述されているように、既知化学合成技術により、インビトロで合成することができる。二本鎖DNA断片は、次いで相補的鎖を合成して、適当な条件下に両鎖をアニーリングすることによるか、または適当なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを使用して相補的鎖を追加することにより得ることができる。
【0106】
核酸を操作する技術、例えば、配列中の突然変異の生成、再クローニング、プローブの標識、配列決定、ハイブリッド形成などは、科学及び特許文献に詳細に記述されている。例えば、Sambrook, ed., Molecular Cloning: a Laboratory manual (2nded.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory (1989); Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, ed. John Wiley & Sons, Inc., New York (1997); Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I, Theory and Nucleic Acid Preparation, Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993)を参照。
【0107】
核酸、ベクター、キャプシド、ポリペプチドなどは、当業者既知の多数の一般的方法により分析及び定量化することができる。それには、例えば、NMR、分光分析、ラジオグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、及び高拡散クロマトグラフィー、種々の免疫学的方法、例えば、液体またはゲル沈降反応、免疫拡散、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相酵素免疫検定法(ELISA)、免疫蛍光検定、サザン分析、ノーザン分析、ドットブロット分析、ゲル電気泳動(例えば、SDS-PAGE)、RT-PCR、定量的PCR、その他の核酸または標的またはシグナル増幅法、放射性標識、シンチレーション計測、及びアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。
【0108】
味覚受容体リガンド結合領域をコードする核酸を増幅するためにオリゴヌクレオチドプライマーを使用することができる。本明細書で記述される核酸は、増幅技術を使用してクローン化することもできるし、あるいは定量的に測定することもできる。増幅方法は当業者には既知であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、PCR(PCR Protocols, a Guide to Methods and Applications, ed. Innis. Academic Press, N.Y. (1990) and PCR Strategies, ed. Innis, Academic Press, Inc., N.Y. (1995))、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、Wu, Genomics 4: 560 (1989); Landegren, Science 241: 1077 (1988); Barringer, Gene 89: 117 (1990)参照);転写増幅(例えば、Kwoh, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173 (1989)参照);及び自己維持配列増幅(例えば、Guatelli, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874 (1990)参照)、Qベータレプリカーゼ増幅(例えば、Smith, J. Clin. Microbiol. 35: 1477-1491 (1997)参照);自動化Qベータレプリカーゼ増幅検定(例えば、Burg, Mol. Cell. Probes 10: 257-271 (1996)参照)及びその他のRNAポリメラーゼを使用する技術(例えば、NASBA, Cangene, Mississauga, Ontario);Berger, Methods Enzymol. 152: 307-316 (1987); Sambrook; Ausubel; U.S. Patent No. 4,683,195 and 4,683,202;Sooknanan, Biotechnology 13: 563-564 (1995)も参照。プライマーは、「ドナー」における7回膜貫通受容体の元の配列を維持するように設計することができる。また、プライマーは、保存置換(例えば、疎水性残基に代わる疎水性残基、上記議論を参照)であるアミノ酸残基をコードすることができ、あるいは機能的に害の無い置換(例えば、形質膜への侵入を阻害しない、ペプチダーゼによる切断を生じない、受容体の異常な折り畳みを生じないなど)であるアミノ酸残基をコードすることができる。増幅された核酸は、個別的またはライブラリーとしての何れであれ、当業者既知の方法に従って、日常的な分子生化学的方法を使用して種々のベクターのいずれの中にもクローン化することができる。増幅核酸をインビトロでクローン化する方法は記述されている、例えば、U.S.Pat. No. 5,426,039。
【0109】
T1Rファミリーメンバーのリガンド結合領域を選択的に増幅するためにプライマー対を設計することができる。この領域は、異なるリガンドまたは味覚刺激に対して変化することがある。したがって、一つの味覚刺激に対する最小の結合領域であると別の味覚刺激に対して非常に制限的となることがある。従って、異なる細胞外ドメイン構造を含む異なるサイズのリガンド結合領域を増幅するとよい。
【0110】
縮重プライマー対を設計するためのパラダイムは、当業者には既知である。例えば、COnsensus-DEgenerate Hybrid Oligonucleotide Primer (CODEHOP)ストラテジーコンピュータープログラムはhttp://blocks.fhcrc.org/codehop.htmlとしてアクセスすることができ、そして既知味覚受容体リガンド結合領域として、関係タンパク配列のセットで開始する雑種プライマー予想のためのBlockMaker多重配列整列サイトから直接リンクしている(例えば、Rose, Nucleic Acids Res. 26: 1628-1635 (1998); Singh, Biotechniques 24: 318-319 (1998)参照)。
【0111】
オリゴヌクレオチドプライマー対を合成する方法は当業者既知である。「天然」塩基対または合成塩基対を使用することができる。例えば、人工的核塩基の使用によりプライマー配列を操作する多様な方法が提供され、そしてより複雑な増幅生成物を生じる。人工的核塩基の種々のファミリーは、縮重分子認識の手段となる内部結合回転による多様な水素結合方向を推定することことができる。このような同族体をPCRプライマーの一つの位置に導入することにより増幅生成物の複雑なライブラリーを発生することができる。例えば、Hoops, Nucleic Acids Res. 25: 4866-4871 (1997)を参照。非極性分子を天然DNA塩基の形を模倣するために使用することができる。アデニンに代わって水素結合をしない形状類似体はチミンに代わる非極性形状類似体に対して有効にそして選択的に複製することができる(例えば、Morales, Nat. Struct. Biol. 5: 950-954 (1998)参照)。例えば、二つの縮重塩基はピリミジン塩基6H,8H-3,4-ジヒドロピリミド[4,5-C][1,2]オキアジン-7-オンまたはプリン塩基N6-メトキシ-2,6-ジアミノプリンである(例えば、Hill, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 4258-4263 (1998)参照)。本発明の代表的縮重プライマーは核塩基同族体5'-ジメトキシトリチル-N-ベンゾイル-2'-デオキシ-シチヂン,3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスフォラミダイト(配列中の文字「P」、上記参照)を組込んでいる。このピリミジン同族体は、A及びG残基を含む、プリンと水素結合する。
【0112】
ここに開示した味覚受容体と実質的に同じである多型変異体、対立遺伝子、及び種間同族体は上記の核酸プローブを使用して単離することができる。その他には、発現同族体を抗血清またはT1R同族体を認識しそして選択的に結合するT1Rポリペプチドに対して作製された精製抗体で免疫学的に検出することにより、発現ライブラリーをT1Rポリペプチド及びその多型変異体、対立遺伝子、及び種間同族体をクローン化するために使用することができる。
【0113】
味覚受容体のリガンド結合領域をコードする核酸は縮重プライマー対を使用して適当な核酸配列の増幅(例えば、PCR)により作製することができる。増幅した核酸はいずれかの細胞または組織のゲノムDNAまたは味覚受容体発現細胞から由来したmRNAまたはcDNAである。
【0114】
一の態様において、トランスロケーション配列に融合したT1Rをコードする核酸を含む雑種タンパクコード配列を構築することができる。またトランスロケーションモチーフ及び化学感覚受容体、特に味覚受容体、の別のファミリーの味覚刺激結合ドメインを含む雑種T1Rが提供される。これらの核酸配列は作動的に転写または翻訳調節配列、例えば、転写及び翻訳開始配列、ポリアデニル化配列、及びDNAをRNAに転写するのに有用な配列、に結合することができる。組換え発現カセットの構築おいて、ベクター及び導入遺伝子、プロモーター断片を全ての望む細胞または組織において望む核酸の発現を指令するために使用することができる。
【0115】
他の一態様において、融合タンパクはC-末端またはN-末端トランスロケーション配列を含むことがある。さらに、融合タンパクは追加の配列、例えば、タンパク検出、精製、またはその他の適用のための配列を含むことができる。検出及び精製促進ドメインには、例えば、ポリヒスチジン領域、ヒスチジン‐トリプトファン単位、またはその他の金属を固定して精製を可能にするような、金属キレートペプチド;マルトース結合タンパク;固相免疫グロブリン上で精製することができるタンパクAドメイン;またはFLAGS延長/アフィニティー精製システム(Immunex Corp, Seattle WA)に使用するドメインが含まれる。
【0116】
(有効な形質膜発現のための)トランスロケーションドメイン及び残余の新規翻訳ポリペプチドの間に、切断可能なリンカー配列、例えば、因子Xa(例えば、Ottavi, Biochimie 80: 289-293 (1998)参照)、サブチリシンタンパク分解素酵素認識モチーフ(例えば、Polyak, Protein Eng. 10: 615-619 (1997)参照);エンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CA)などを包含することは精製を促進するのに有用であろう。例えば、一構築は、チオレドキシン、エンテロキナーゼ切断部位(例えば、Williams, Biochemistry 34: 1787-1797 (1995)参照)、が続く6ヒスチジン残基に結合したポリペプチドをコードする核酸配列及びC-末端トランスロケーションドメインを含むことができる。ヒスチジン残基は検出及び精製を容易にする、一方エンテロキナーゼ切断部位は融合タンパクの残余部分から求めるタンパクを精製する手段を提供する。融合タンパクをコードするベクターに関する技術及び融合タンパクの応用は科学及び特許文献に詳細に記述されている、例えば、Kroll, DNA Cell. Biol. 12: 441-53 (1993)参照。
【0117】
リガンド結合ドメインコード配列を含む発現ベクターは、個別の発現ベクターとしてもまたは発現ベクターのライブラリーとしても、細胞のゲノム中または細胞質中または核中に導入し、科学及び特許文献に詳細に記述されている種々の通常の技術により発現することができる、例えば、Roberts, Nature 328: 731 (1987); Berger前出;Schneider, Protein Expr. Purif. 6435: 10 (1995); Sambrook; Tijssen; Ausubel. 生物学的試薬及び実験装置のメーカーの製品説明書も既知生物学的方法に関する情報を提供する。ベクターは天然資源から抽出できるし、ATCCまたはGenBankライブラリーのような所から入手できるし、あるいは合成または組換え方法により調製することができる。
【0118】
核酸は、細胞中(例えば、エピソーム発現システム)に安定的にまたは一過性に発現される発現カセット、ベクターまたはウイルス中に発現される。形質転換細胞及び配列に選別表現型を付与するために、選別マーカーを発現カセット及びベクターに組込むことができる。例えば、選別マーカーはエピソームに維持しそして複製するようにコードすることができるので、宿主ゲノムに組込む必要はない。例えば、マーカーは、望むDNA配列で形質転換した細胞を選別できるように、抗生物質耐性(例えば、クロラムフェニコール、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、ヒグロマイシン)または除草剤耐性(例えば、クロロスルフロンまたはBasta)をコードすることができる(例えば、Bolndelet-Rouault, Gene 190: 315-317 (1997); Aubrecht, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281: 992-997 (1997)参照)。ネオマイシンまたはヒグロマイシンのような基質に対する耐性を付与する選別マーカー遺伝子は組織培養にのみ使用できるので、化学耐性遺伝子もまたインビトロ及びインビボにおける選別マーカーとして使用される。
【0119】
キメラ核酸配列はいずれの7回膜貫通ポリペプチドの中にT1Rリガンド結合ドメインをコードすることができる。7回膜貫通受容体ポリペプチドは類似の一次配列及び二次及び三次構造を有しているので、構造ドメイン(例えば、細胞外ドメイン、TMドメイン、細胞質ドメイン、など)は配列分析により容易に同定することができる。例えば、相同性モデル、フーリエ解析及び螺旋周期検出などにより7回膜貫通受容体配列を持つ7個のドメインを同定及び分類することができる。迅速フーリエ転換(FFT)アルゴリズムを分析配列の疎水性及び変動性のプロフィールを分類する支配的周期を評価するために使用することができる。周期性検出促進及びアルファ螺旋周期性指数は、例えば、Donnelly, Protein Sci. 2: 55-70 (1993)、によって行なうことができる。その他の整列及びモデル化アルゴリズムは当業者既知である、例えば、Peitsch, Receptors Channels 4: 161-164 (1996); Kyte & Doolittle, J. Md. Bio., 157: 105-132 (1982); Cronet, Protein Eng. 6: 59-64 (1993)(相同性及び「発見モデル」);http://bioinfo.weizmann.ac.il/。
【0120】
本発明はまた、特定した核酸及びアミノ酸の配列を持つDNA及びタンパクのみならず、DNA断片、特に、例えば、40,60,80,100,150,200または250ヌクレオチドまたはそれ以上の断片、並びに10,20,30,50,70,100または150アミノ酸、またはそれ以上のタンパク断片を含んでいる。さらに、核酸断片は、T1Rファミリーメンバーに対して作製された抗体に結合することができる抗原ポリペプチドをコードすることができる。さらに、本発明のタンパク断片はT1Rファミリーメンバーに対して作製された抗体に結合することができる抗原ポリペプチドでもあり得る。
【0121】
本明細書中に記述したT1Rポリペプチドの中の少なくとも一つのポリペプチドの少なくとも10,20,30,50,70,100または150アミノ酸、またはそれ以上を含み、他のGPCR、望ましくは7回膜貫通スーパーファミリーのメンバー、の全てまたは部分である追加のアミノ酸と結合したキメラタンパクも包含される。これらのキメラは一時的な受容体及び他のGPCRから作ることができるし、または二つ以上の現存する受容体を組合わせることにより作ることができる。一態様において、キメラの一部は本発明のT1Rポリペプチドの細胞外ドメインに相当するかまたはから誘導される。他の態様において、キメラの一部は、細胞外ドメイン及び1つ以上のここに記述したT1Rポリペプチドの膜貫通ドメインに相当するかまたはから誘導され、そして残余の部分は他のGPCRから由来することが可能である。キメラ受容体は当業者既知であり、それを創製する技術及びそれに組込むGタンパク共役受容体のドメインまたは断片の選別及び区分はやはり既知である。このように、そのようなキメラ受容体を創製するために当業者の知識を容易に使用することができる。そのようなキメラ受容体を使用して、例えば、先行技術検定システムに使用されている既知受容体のような他の受容体のシグナル伝達特性と共役した、ここに特定開示した一つの受容体の味覚選択性特性を提供することができる。
【0122】
例えば、リガンド結合ドメインのようなドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、N-末端ドメイン、C-末端ドメイン、またはそれらのドメインのいずれかの組合せ、は共有結合して異種タンパクにすることができる。例えば、T1R細胞外ドメインを異種GPCR膜貫通ドメインと結合することができるし、あるいは異種GPCR細胞外ドメインをT1R膜貫通ドメインに結合することができる。その他選択される異種タンパクには、例えば、緑色蛍光タンパク、β-gal、グルタメート受容体、及びロドプシンプレ配列が含まれる。
【0123】
本発明のT1R、断片または変異体を発現する宿主細胞も本発明の範囲に入る。本発明のT1R、断片または変異体をコードするcDNAのようなクローン化遺伝子または核酸の発現を高レベルで行なうために、当業者は典型的に目的の核酸配列を、転写、転写/翻訳ターミネーター、及びもし核酸がタンパクをコードしているなら翻訳開始のリボソーム結合部位に指令する強力なプロモーターを含む発現ベクター中に再クローン化する。適当な細菌プロモーターは当業者既知であり、そして、例えば、Sambrook et al.に記述されている。しかし、細菌または真核発現システムを使用することができる。
【0124】
外来ヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための既知方法のいずれかを使用することができる。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム、マイクロインジェクション、プラズマベクター、ウイルスベクター、及びクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたはその他の遺伝性物質を宿主細胞に導入するためのその他の方法のいずれかが含まれる(例えば、Sambrook et al.参照)。使用される特別な遺伝子操作法は少なくとも一つの核酸分子を、目的とするT1R、断片または変異体を発現することができる宿主細胞にうまく導入することができることのみが必要である。
【0125】
発現ベクターを細胞に導入した後、遺伝子導入細胞を目的の受容体、断片または変異体の発現に好ましい条件下に培養し、次いでそれを標準的な技術を使用して培養から回収する。その技術の例は当業者既知である。例えば、WO 00/06593、これをこの開示と調和する方法で引用して取り入れる。
【0126】
B. T1Rポリペプチドの検出
核酸ハイブリッド形成技術を使用するT1R遺伝子及び遺伝子発現の検出に加えて、T1Rを検出する、例えば、味覚受容体細胞、及びT1Rファミリーメンバーを同定するために、免疫検定を使用することができる。免疫検定はT1Rを定性的にまたは定量的に分析するために使用することができる。適用し得る技術の総説はHarlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (1988)。
【0127】
1.T1Rファミリーメンバーに対する抗体
T1Rファミリーメンバーと特異的に反応するポリクロナール及びモノクロナール抗体を作製する方法は当業者に既知である(例えば、Coligan, Current Protocols in Immunology (1991); Harlow & Lane,前出;Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice (2nd ed. 1986); and Kohler & Milstein, Nature, 256: 495-497 (1975)参照)。その技術は、ファージまたはベクター中の組換え抗体のライブラリーから抗体の選別によって調製された抗体、並びにウサギまたはマウスを免疫してポリクロナール及びモノクロナール抗体を調製することを含んでいる(例えば、Huse et al., Science, 246: 1275-1281 (1989); Ward et al., Nature, 341: 544-546 (1989)参照)。
【0128】
多数のT1R含有免疫原をT1Rファミリーメンバーと特異的に反応する抗体を作製するために使用することができる。例えば、組換えT1Rポリペプチド、またはその抗原断片、をここに記述したように単離することができる。適当な抗原領域は、例えば、T1Rファミリーのメンバーを同定するために使用される共通配列を含む。組換えタンパクは真核細胞または原核細胞において上記のように発現することができ、そして上に一般的に記述したように精製することができる。組換えタンパクはモノクロナールまたはポリクロナール抗体を作製するために望ましい免疫原である。その他には、ここに開示した配列から誘導されそしてキャリアータンパクに融合した合成ペプチドは免疫原として使用することができる。天然に存在するタンパクも純粋な形または不純な形のいずれかで使用することができる。その生成物は次いで抗体を生成することができる動物に注射する。モノクロナールまたはポリクロナール抗体が作製され、その後タンパクを測定するための免疫検定に使用される。
【0129】
ポリクロナール抗体の作成法は当業者に既知である。例えば、純系マウス(例えば、BALB/Cマウス)またはウサギを、フロイントアジュバントのような標準的アジュバント及び標準的免疫プロトコールを使用してタンパクで免疫する。検査血液を採取しT1Rに対する反応力価を測定することにより動物の免疫原標品に対する免疫反応を監視する。免疫原に対する抗体の力価が適当な高さになった時に、動物から血液を採取し、抗血清を調製する。必要があれば、タンパクに反応する抗体を濃縮するために抗血清の分画を行なうことができる(Harlow & Lane,前出、参照)。
【0130】
モノクロナール抗体は、当業者にはありふれた種々の技術により得ることができる。簡単に記述すると、望む抗原で免疫した動物から得た脾臓細胞を、通常は骨髄腫細胞と融合することにより、不死化することができる(Kohler & Milstein, Eur. J. Immunol., 6: 511-519 (1976)参照)。その他の不死化の方法には、Epstein Barrウイルス、癌遺伝子、またはレトロウイルスによる形質転換、または当業者既知のその他の方法が含まれる。一不死化細胞から生じたコロニーを抗原に対する望ましい特異性及び親和性についてスクリーンニングし、そしてその細胞によって生産されるモノクロナール抗体の収量を、脊椎動物宿主の腹腔に注射することを含めて、種々の方法により増加させることができる。その他には、Huse et al., Science, 246: 1275-1281 (1989)により概説されている一般的なプロトコールに従って、ヒトB細胞のDNAライブラリーをスクリーニングすることによりモノクロナール抗体またはその結合断片をコードするDNA配列を単離することができる。
【0131】
モノクロナール抗体及びポリクロナール抗血清を採取し、そして免疫検定、例えば、固相支持体上に固定化した免疫原による固相免疫検定において免疫原タンパクに対する力価を測定する。典型的に、力価104またはそれ以上のポリクロナール抗血清を選び、そして非T1Rポリペプチド、またはその他のT1Rファミリーメンバーまたは他の生物の関連タンパクに対する交差反応性を、競合結合免疫検体により、試験する。特異的ポリクロナール抗血清及びノモクロナール抗体は通常Kd少なくとも約0.1 mM、さらに少なくとも1pM、より良いのは約0.1pM以下、そしてさらにより良いのは0.01pM以下で結合するであろう。
【0132】
一度T1Rファミリーメンバー特異的抗体が使用できるようになれば、個別のT1Rタンパク及びタンパク断片を種々の免疫検定方法により検出することが可能である。免疫学的及び免疫検定の方法に関する総説については、Basic and Clinical Immunology (Stites & Terr eds., 7thed. 1991) を参照。さらに、本発明の免疫検定は、Enzyme Immunoassay (Maggio, ed., 1980); 及びHarlow & Lane、前出、に詳細に概説されている形態のいずれかにより実施することができる。
【0133】
2.免疫学的結合検定
T1Rタンパク、断片、及び変異体は熟知されている多数の免疫学的結合検定のいずれかにより検出及び/または定量することが可能である(例えば、U.S. Patents 4,366,241; 4,376,110; 4,517,288; and 4,837,168を参照)。一般的な免疫検定の総説については、Methods in Cell Biology: Antibodies in Cell Biology, volume 37 (Asai, ed. 1993); Basic and Clinical Immunology ( Stites & Terr, eds., 7thed. 1991)も参照。免疫学的結合検定(または免疫検定)は典型的に目的のタンパクまたは抗原(この場合にはT1Rファミリーメンバーまたはその抗原配列)に特異的に結合する抗体を使用する。抗体(例えば、抗-T1R)は当業者既知の多数の方法のいずれかにより上記のように作製することができる。
【0134】
免疫検定は、しばしば抗体及び抗原によって形成される複合体に特異的に結合して、それを示す標識試薬を使用する。標識試薬自身が抗体/抗原複合体を含む分子の一つである。このように、標識試薬は標識T1Rポリペプチドまたは標識抗-T1R抗体であり得る。その他に、標識試薬は第二抗体のような第三の分子の場合もあり、それは抗体/T1R複合体と特異的に結合する(第二抗体は典型的に第一抗体が由来した動物種の抗体に対して特異的である)。免疫グロブリン定常領域、例えばタンパクAまたはタンパクG、に特異的に結合することができるその他のタンパクも標識試薬として使用することができる。これらのタンパクは種々の動物種の免疫グロブリン定常領域と強い非免疫原性反応を示す(例えば、Kronval et al., J. Immunol., 111: 1401-1406 (1973); Akerstrom et al., J. Immunol., 135: 2589-2542(1985)参照)。標識試薬は、他の分子、例えばストレプトアビジン、が特異的に結合することができる検出基、例えばビオチン、で修飾することができる。種々の検出基は当業者既知である。
【0135】
検定を通して、各試薬との組み合わせの後にインキュベーション及び/または洗浄操作が必要である。インキュベーション操作は5秒から数時間まで変動し、さらに5分から約24時間である。しかし、インキュベーション時間は検定様式、抗原、溶液容量、濃度、などに依存する。検定は例えば10℃から40℃の温度範囲で行なうことができるが、通常、検定は任意の温度で行なわれるであろう。
【0136】
a. 非競合検定方式
検体中のT1Rポリペプチドを検出する免疫検定は競合か非競合かのいずれかである。非競合免疫検定は抗原の量が直接的に測定される検定である。例えば、一つの望ましい方法である「サンドイッチ」検定では、抗-T1R抗体を固定する固相基質に直接結合することができる。この固定化抗体は次いで検体中に存在するT1Rポリペプチドを捕捉する。こうして固定化されたT1Rポリペプチドは、標識された第二T1R抗体のような標識試薬と結合する。その他には、第二抗体は標識されていないが、逆に第二抗体が由来した動物種の抗体に特異的な標識第三抗体と結合する。第二または第三抗体は典型的に、例えばストレプトアビジンが特異的に結合することができるビオチンのような検出分子で修飾され、検出基を提供する。
【0137】
b. 競合検定法式
競合検定においては、検体中に存在する未知T1Rポリペプチドによって抗-T1R抗体から置換された(追い出された)(外部から)添加した既知T1Rポリペプチドの量を測定して、検体中に存在するT1Rポリペプチドの量を間接的に測定する。一競合検定において、T1Rポリペプチドの既知量を検体に加え、次いで検体をT1Rに特異的に結合する抗体と接触させる。抗体と結合した外部から加えたT1Rポリペプチドの量は検体中に存在するT1Rポリペプチドの濃度と反比例する。特に望ましい態様においては、抗体は固相に固定化されている。抗体に結合したT1Rポリペプチドの量は、T1R/抗体複合体に存在するT1Rポリペプチドの量を測定するか、あるいは複合体形成せずに残っているタンパクの量を測定することにより測定することができる。T1Rポリペプチドの量は標識T1R分子を用意することにより検出することができる。
【0138】
ハプテン阻害検定は、もう一つの望ましい競合検定である。この検定では既知T1Rポリペプチドを固相に固定化する。抗-T1R抗体の既知量を検体に加え、次いで検体を固定化T1Rと接触させる。既知固定化T1Rポリペプチドに結合した抗-T1R抗体の量は検体中に存在するT1Rポリペプチドの量に反比例する。再度、固定化抗体の量は、抗体の固定化された部分を測定するかまたは溶液中に残っている抗体の部分を測定するかして、測定することができる。検出は抗体が標識されている場合には直接に、または上記のように抗体に特異的に結合する標識分子を後から加えることによる間接的方法によりおこなわれる。
【0139】
c. 交差反応性分析
競合結合方式の免疫検定は、交差反応性分析にも使用することができる。例えば、ここに開示した核酸配列により少なくとも部分的にコードされているタンパクを固相に固定化することができる。固定化抗原に対する抗血清の結合に競合するタンパク(例えば、T1Rポリペプチド及び同族体)を検定に加える。固定化タンパクに対する抗血清の結合に競合する添加タンパクの能力を、ここに開示した核酸配列によってコードされるT1Rポリペプチドの自身との競合能力と比較する。上記タンパクに対する交差反応性を標準的計算式を使用して計算する。上記の添加したタンパクのそれぞれとの交差反応性10%以下の抗血清を選別して、保存する。交差反応性抗体をさらに保存抗血清から考慮タンパク、例えば、関係の薄い同族体、を加えた免疫吸着により除去する。さらに、T1Rファミリーのメンバーであることを同定するために使用される保存モチーフを示すアミノ酸配列を含むペプチドは交差反応性分析に使用することができる。
【0140】
免疫吸着を行ない保存している抗血清は、次いで上記のように競合結合検疫検定に使用して、多分T1Rファミリーメンバーの対立遺伝子または多型変異体、免疫原タンパク(すなわち、ここに開示した核酸配列によりコードされるT1Rポリペプチド)と考えられる第二タンパクを比較する。この比較を行なうために、二つのタンパクはそれぞれ幅広い濃度範囲において検定され、そして固定化タンパクに対する抗血清の結合を50%阻害するのに必要なタンパク量を測定する。もし結合の50%阻害に必要な第二タンパクの量が、結合の50%阻害に必要なここに開示した核酸配列にコードされるタンパクの量の10倍以下であるならば、第二タンパクはT1R免疫原に対して作製されたポリクロナール抗体に特異的に結合すると言われる。
【0141】
T1R保存モチーフに対して作製した抗体もT1RファミリーのGPCRに対してのみ特異的に結合するが、他のファミリーのGPCRには結合しない抗体を調製するために使用することができる。
【0142】
T1Rファミリーの特別なメンバーに特異的に結合するポリクロナール抗体は他のT1Rファミリーメンバーを使用して交差反応性抗体を除去することにより作製することができる。種特異的ポリクロナール抗体を同様にして作製することができる。例えば、ヒトT1R1に特異的な抗体はオルソログ配列、例えば、ラットT1R1またはマウスT1R1、と交差反応する抗体を除去することにより作製することができる。
【0143】
d. その他の検定方式
ウエスタンブロット(イムノブロット)分析は検体中のT1Rポリペプチドの存在を検出及び定量するために使用される。この技術は一般的に、分子量に基づいてゲル電気泳動により検体タンパクを分離し、分離したタンパクを適当な固体支持体(例えば、ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、または改良ナイロンフィルター)に転移し、そして検体をT1Rポリペプチドと特異的に結合する抗体とインキュベートすることを含んでいる。抗-T1Rポリペプチド抗体は固相上のT1Rポリペプチドに特異的に結合する。この抗体は直接標識することができるし、あるいは次いで抗-T1R抗体に特異的に結合する標識抗体(例えば、標識ヒツジ抗-マウス抗体)を使用して検出する。
【0144】
その他の検定方式には、特異的な分子(例えば、抗体)に結合して、内包していた試薬またはマーカーを放出するように結成したリポソームを使用するリポソーム免疫検定(LIA)が含まれる。次いで放出された化学物質を標準的方法にしたがって検出する(Monroe et al., Amer. Clin. Prod. Rev.,5: 34-41 (1986)参照)。
【0145】
e. 非特異的結合の減少
免疫検定において非特異的結合を減少させるのは望ましいことであることは当業者は理解しているであろう。特に、検定が固相基質に固定化した抗原または抗体を必要とする場合には、基質への非特異的結合の量を減らすことは望ましいことである。その非特異的結合を減らす方法は当業者には既知である。典型的に、この技術は、タンパク性成分で基質をコーティングすることを含んでいる。特に、ウシ血清アルブミン(BSA)、脱脂粉乳、及びゼラチンのようなタンパク成分は最も望ましい粉乳と共に広く使用されている。
【0146】
f. 標識
検定に使用される個別の標識または検出基は、この検定に使用する抗体の特異的結合を著しく妨害しない限り、本発明の重要な態様ではない。検出基は検出し得る物理学的または化学的性質を持ついずれかの物質である。そのような検出標識は免疫検定の分野では充分に開発されており、そして一般的に、そのような方法に有用な標識はほとんどどれでも本発明に適用することができる。このように、標識は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出し得るいずれかの成分である。本発明において有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADSTM)、蛍光色素(例えば、蛍光イソチオシアネート、テキサス赤、ローダミン、など)、放射標識(例えば、3H,125I,35S,14C,または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、及びその他一般的にELISAに使用されるもの)、及びコロイド金または着色ガラスまたはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス、など)のような比色分析標識が含まれる。
【0147】
標識を当業者既知の方法に従って検定の望む成分に直接的ににまたは間接的に結合することができる。上記のように、要求する感受性、化合物との結合の容易さ、安定性の基準、使用する装置、及び廃棄設備に依存して標識を選択して、非常に広範囲の標識を使用することができる。
【0148】
非放射性標識は、しばしば間接的な方法で結合する。一般的に、リガンド分子(例えば、ビオチン)は分子に共有結合で結合する。このリガンドは次いで、本来的に検出し得るかまたはシグナルシステム、例えば、検出し得る酵素、蛍光化合物、または化学発光化合物、であるもう一つ他の分子(例えば、ストレプトアビジン)と結合する。リガンド及びその標的は、T1Rポリぺプチドまたは抗-T1Rを認識する第二抗体を認識す抗体といずれかの適当な組み合わせで使用することができる。
【0149】
分子はまた、例えば、酵素または蛍光団と結合することにより、シグナル発生化合物と直接結合することができる。標識として関心のある酵素は、主に加水分解酵素、特にホスファターゼ、エステラーゼ、及びグリコシダーゼ、またはオキシダーゼ、特にぺルオキシダーゼであろう。蛍光化合物にはフルオレッセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、などが含まれる。化学発光化合物にはルシフェリン、及び2,3-ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが含まれる。使用することができる種々な標識またはシグナル発生システムの総説については、U.S. Patent No. 4,391,904を参照。
【0150】
標識の検出手段は、当業者には既知である。例えば、標識が放射標識であれば、検出手段にはシンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーに使用する写真フィルムが含まれる。標識が蛍光標識であれば、適当な波長の光で蛍光発色団を励起しそしてその結果発生する蛍光を検出することにより測定することができる。蛍光は写真フィルムにより、電荷共役検出器(CCD)のような電子検出器を使用して、または光増幅装置などにより可視的に検出することができる。同様に、酵素標識は適当な酵素基質を使用して、生成する反応産物を検出して測定することができる。最後に単純な分光分析的標識は標識による色を観察することにより単純に検出することができる。この様に、種々の探深棒検定において、結合した金はしばしばピンクに現われ、一方種々の共役ビーズはそのビーズの色を表す。
【0151】
一部の検定方式では、標識成分の使用を必要としない。例えば、凝集検定は標的抗体の存在を検出するために使用することができる。この場合に、抗原をコーティングした微粒子は標的抗体を含む検体により凝集する。この方式では、いずれの成分も標識される必要はなく、標的抗体の存在は単純に肉眼検査により検出される。
【0152】
C. 調節物質の検出
被検化合物が、インビトロ及びインビボにいずれにおいても本発明の化学感覚受容体に特異的に結合するか否かを決定するための構成と方法を以下に記述する。細胞生理学の多くの局面を本発明のT1Rポリペプチドに対するリガンド結合の影響を評価するために監視することができる。これらの検定は化学感覚受容体を発現する完全細胞において、透過性細胞において、または標準的方法により作製された膜フラクションにおいて実施することができる。
【0153】
味覚受容体は、味覚刺激に結合し、そして化学的刺激の電気信号への伝達を開始する。Gタンパクの活性化または阻害は翻って標的酵素、チャネル、及びその他の効果タンパクの性質を変化させる。その例の一部は、視覚システムにおける伝達によるcGMPホスフォジエステラーゼ、刺激性Gタンパクによるアデニレートシクラーゼ、Gq及びその他の同族GタンパクによるホスフォリパーゼCの活性化、及びGi及びその他のGタンパクによる種々のチャネルの変化である。ホスフォリパーゼCによるジアシルグリセロール及びIP3の生成、そして逆にIP3によるカルシウムの動員のような、下流における成り行きもまた調べることができる。
【0154】
検定のT1Rタンパクまたはポリペプチドは、典型的にSEQ ID NO: 4, 10, 12, 14, 17, 21の配列を持つポリペプチドまたはその断片または保存的に修飾された変異体から選択される。さらに、その断片及び変異体は抗-T1R抗体に結合する抗原性断片及び変異体であり得る。
【0155】
その他には、検定のT1Rタンパクまたはポリペプチドは、真核宿主細胞から誘導され、そしてSEQ ID NO: 4, 10, 12, 14, 17, 21と相同アミノ酸配列を持つアミノ酸配列またはその断片または保存的に修飾された変異体を含んでいる。一般的に、アミノ酸相同性は少なくとも35から50%、またはさらに75%,85%,90%,95%,96%,97%,98%,または99%であろう。さらに、検定のT1RタンパクまたはポリペプチドはT1Rタンパクのドメインを含むことができる、例えば、細胞外ドメイン、膜貫通領域、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、リガンド結合ドメイン、など。さらに、上記のように、T1Rタンパクまたはそのドメインは異種タンパクに共有結合して、ここに記述した検定に使用されるキメラタンパクを創ることができる。
【0156】
T1R受容体作用の調節は、組換えまたは天然に存在する、上記のT1Rタンパクまたはポリペプチドを使用して試験する。組換えまたは天然に存在する、T1Rタンパクまたはポリペプチドは単離し、細胞中に発現し、細胞から由来する膜に発現し、組織中にまたは動物中に発現することができる。例えば、舌スライス、舌からの分離細胞、または膜が使用できる。調節はここに記述したインビトロまたはインビボ検定の一つを使用して試験することができる。
【0157】
1.インビトロ結合検定
味覚伝達は、本発明のT1Rポリペプチドを使用して、インビトロにおいて溶液または固相反応により試験することができる。特別な態様において、T1Rリガンド結合ドメインをインビトロにおいてリガンド結合を検定するための溶液または固相反応に使用することができる。
【0158】
例えば、T1R N-末端ドメインは、リガンド結合に必要であると予想されている。さらに詳細には、T1Rは、大きな、約600アミノ酸の細胞外N-末端部分が特徴であるGPCR亜ファミリーに属している。これらのN-末端部分は少なくとも一部はリガンド結合ドメインを形成するので、T1Rアゴニスト及びアンタゴニストを同定するための生化学検定に有用であると考えられている。リガンド結合ドメインはまた、膜貫通ドメインの細胞外ループのような、細胞外ドメインの追加の部分を含むことができる。類似の検定では代謝型グルタミン酸受容体のようなT1Rに関係する他のGPCRを使用している(例えば、Han and Hampson, J. Biol. Chem. 274: 10008-10013 (1999)参照)。これらの検定は、放射活性または蛍光標識リガンドの置換、内在性蛍光の変化またはタンパク分解酵素感受性の変化の測定、などを含んでいる。
【0159】
本発明のT1Rポリペプチドに対するリガンド結合は溶液中で、二層膜中で、さらに固相に接着して、脂質単層中で、または粒子中で試験することができる。調節物質の結合は、例えば、分光学的性質の変化(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、水力学的(例えば、形状)、クロマトグラフィー、または溶解度の性質の変化を使用して試験することができる。本発明の望ましい結合検定は組換え可溶性N-末端T1Rドメインを使用する生化学的結合検定である。
【0160】
受容体-Gタンパク相互作用も試験することができる。例えば、受容体に対するGタンパクの結合、または受容体からの解離を試験することができる。より詳細には、GTPの非存在下に、活性化物質は受容体とGタンパク(全3サブユニット)の強固な複合体を形成するであろう。この複合体は上記のように種々の手段で検出することができる。その検定は阻害物質を探索するために変更することができる、例えば、GTPの非存在下に受容体及びGタンパクに活性化物質を加えて強固な複合体を形成し、次いで受容体-Gタンパク複合体の解離を観察することにより阻害物質をスクリーニングする。GTPの存在下に、Gタンパクサブユニットの他の2つからGタンパクのアルファサブユニットが解離するのでこれが活性化の基準となる。活性化されたまたは阻害されたGタンパクは、翻って標的酵素、チャネル、及びその他の効果タンパクの性質を変えるであろう。
【0161】
本発明のその他の態様において、GTPγS検定を使用することができる。上記のように、GPCRの活性化に際して、Gタンパク複合体のGαサブユニットは刺激されてGDPをGTPに交換する。リガンド仲介Gタンパク交換反応促進は、推定リガンドの存在下に、放射標識GTPγ35Sを添加したGタンパクの結合を測定する生化学的検定において測定することができる。典型的に、関心の化学感覚受容体を含む膜をGタンパクの複合体と混合する。潜在的阻害物質及び/または活性化物質及びGTPγSを検定に加え、そしてGタンパクへのGTPγSの結合を測定する。結合は液体シンチレーションカウンターによるか、またはシンチレーションプロキシミティー検定(SPA)を含むその他の既知方法により測定することができる。その他の検定方式において、蛍光標識GTPγSを使用することができる。
【0162】
2.蛍光偏光検定
その他の態様において、蛍光偏光(「FP」)に基づく検定をリガンド結合を検出及び監視するために使用することができる。蛍光偏光は結合平衡、核酸ハイブリッド形成、及び酵素活性を測定するための多様な実験技術の一つである。蛍光偏光は、遠心分離、濾過、クロマトグラフィー、沈殿、または電気泳動のような分離ステップを必要としない均質系である。この検定は溶液中でリアルタイムに直接行われ、固相を必要としない。偏光の測定は迅速でありそして検体を分解しないので、偏光値は試薬の添加後繰り返し測定することができる。一般的に、この技術はピコモルからマイクロモルの低レベルの蛍光発色団の偏光値を測定するために使用することができる。このセクションでは、本発明のT1Rポリペプチドに対するリガンドの結合を測定する簡単でしかも定量的な方法に蛍光偏光がどのように使用されか記述する。
【0163】
蛍光標識分子が面偏光光線で励起されると、分子回転に反比例する偏光の程度で光線を放射する。大きな蛍光標識分子は励起状態の間(フルオレッセインの場合に4ナノ秒)比較的静的に保たれ、そして励起と放射の間光線の偏光は比較的一定に保たれる。小さな蛍光標識分子は励起状態の間に速かに回転し、そして偏光は励起と放射の間に著しく変化する。したがって、小分子は低い偏光値を示し、大分子は高い偏光値を示す。例えば、1本鎖蛍光標識オリゴヌクレオチドは比較的低い偏光値を持つが、それが相補的鎖とハイブリッド形成すると高い偏光値を示す。本発明の化学感覚受容体を活性化または阻害する味覚刺激結合を検出または監視するためにFPを使用する場合には、蛍光標識味覚刺激または自己蛍光味覚刺激を使用することができる。
【0164】
蛍光偏光(P)は次式で定義される:


式中Πは励起光面に平行な放射光の強さ、及びInt⊥は励起光面に直交する放射光の強さである。P、光の強さの比、は次元のない数値である。例えば、BeaconTM及びBeacon 2000TMシステムをこの検定に関して使用することができる。このシステムは典型的にミリ偏光単位(1偏光単位=1000 mP単位)で偏光を示す。
【0165】
分子回転及びサイズの関係は、Perrinの式で記述されるが、読者はJolley, M. E. (1991) in Journal of Analytical Toxicology, pp.236-240を参照するとこの式の詳細な説明がされている。要約すると、Perrin式は、偏光は回転緩和時間、分子が約68.5°回転するのに要する時間、に直接比例することを示している。回転緩和時間は粘度(η)、絶対温度(T)、分子容積(V)、及びガス定数(R)の関数として次式で示される:

【0166】
回転緩和時間は、小分子(例えば、フルオレッセイン)に対しては小さく(約1ナノ秒)、大分子(例えば、イムノグロブリン)に対しては大きい(約100ナノ秒)。もし粘度及び温度を一定に保つならば、回転緩和時間、したがって偏光、は直接分子容量に比例する。分子容量の変化は他の分子との相互作用、解離、重合、分解、ハイブリッド形成、または蛍光標識分子の立体構造変化によるであろう。例えば、蛍光偏光は大きな蛍光標識重合体のタンパク分解酵素による酵素的分解を測定するために使用されている。またタンパク/タンパク相互作用、抗体/抗原結合、及びタンパク/DNA結合の平衡結合を測定するために使用されている。
【0167】
3.固相及び溶液高速処理検定
さらに他の態様において、本発明はT1Rポリペプチド;またはT1Rポリペプチドを発現する細胞または組織を使用する溶液検定を提供する。他の態様において、本発明は高速処理方式の固相インビトロ検定を提供する、この方式ではT1Rポリペプチド、またはT1Rポリぺプチドを発現する細胞または組織が固相基質に接着している。
【0168】
本発明の高速処理検定において、1日で数千個の異なる調節物質またはリガンドをスクリーニングすることが可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウエルを選択した潜在的調節物質に対して異なる検定を行なうために使用することができ、あるいはもし濃度またはインキュベーション時間の影響を調べるならば、一つの調節物質について5-10ウエルを使用することができる。このように、一つの標準マイクロタイタープレートで約100(例えば、96)調節物質を検定することができる。もし1536ウエルプレートを使用するならば、一つのプレートで約1000から約1500の異なる化合物を容易に検定することができる。各プレートウエル中で複数の化合物を検定することも可能である。1日に数枚のプレートを検定することが可能であり;本発明の集積システムを使用して約6,000-20,000化合物をスクリーニングすることが可能である。さらに最近、試薬操作のマイクロ流動方法が開発された。
【0169】
関心の分子を固相成分に、直接または間接的に、共有結合によりまたは非共有結合により、例えば、タグを介して、結合することができる。タグは種々の化合物のいずれかである。一般的に、タグに結合する分子(タグバインダー)は固相支持体に固定され、そして関心のタグ付き分子(例えば、関心の味覚伝達分子)はタグ及びタグバインダーの相互作用により固相支持体に接着する。
【0170】
文献に記述されている既知の分子間相互作用に基づいて、多数のタグ及びタグバインダーを使用することができる。例えば、タグが天然のバインダー、例えば、ビオチン、タンパクA、またはタンパクG、を持っている場合には、適当なタグバインダー(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン、免疫グロブリンFc領域、など)と組合わせて使用することができる。ビオチンのような天然バインダーを持つ分子に対する抗体も広く使用されそして適当なタグバインダーである(SIGMA Immunochemicals 1998 catalogue SIGMA, St. Louis MO参照)。
【0171】
同様に、ハプテン性または抗原性化合物は適当な抗体と組合わせて使用することができ、タグ/タグバインダー対を形成する。数千の特異的抗体は市販され入手可能であり、そして多くのその他の抗体が文献に記述されている。例えば、ある通常の形態では、タグは第一抗体であり、そしてタグバインダーは第一抗体を認識する第二抗体である。抗体-抗原相互作用に加えて、受容体-リガンド相互作用もタグ及びタグバインダー対として適当である。例えば、細胞膜受容体のアゴニスト及びアンタゴニスト(例えば、細胞受容体-リガンド相互作用、例えばトランスフェリン、c-kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体及び抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリー、など;例えば、Pigott & Power, The Adhesion Molecule Facts Book I(1993)参照)。同様に、トキシン及び毒、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、オピエート、ステロイド、など)、細胞内受容体(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイド及びビタミンDを含む種々の小型リガンドの効果を仲介するもの;ペプチド)、薬物、レクチン、糖、核酸(線状及び環状重合立体構造のいずれも)、オリゴ糖、タンパク、リン脂質及び抗体はすべて種々の細胞受容体と相互作用することができる。
【0172】
合成重合体、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、及びポリアセテートも適当なタグまたはタグバインダーとなることができる。この開示を総合して当業者には明らかであるように、その他の多数のタグ/タグバインダー対もここに記述した検定システムに有用である。
【0173】
ペプチド、ポリエーテルなどのような通常のリンカーもタグとなることができ、そして約5から200アミノ酸のポリgly配列のようなポリペプチド配列も含まれる。そのような柔軟なリンカーは当業者には既知である。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーはShearwater Polymers, Inc. Huntsville, Alabama殻入手することができる。これらのリンカーはさらにアミド結合、スルフヒドリル結合または異種機能結合を有する。
【0174】
タグバインダーは現在使用し得る種々の方法のいずれかを使用して固相基質に固定される。固相基質は通常基質の全てまたは部分を、タグバインダーの部分と反応する化学基を表面に固定する化学試薬に曝露することにより誘導体化または機能化される。例えば、長い鎖の部分と結合するのに適した基としては、アミン、水酸、チオール、及びカルボキシル基であろう。アミノアルキルシラン及びヒドロキシアルキルシランを種々の表面、例えばガラス表面、を機能化するために使用することができる。固相バイオポリマー配置の構築は文献に記述されている。例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85: 2149-2154 (1963)(例えば、ペプチドの固相合成を記述);Geysen et al., J. Immun. Meth., 102: 259-274 (1987)(ピン上での固相成分の合成を記述);Frank & Doring, Tetrahedron, 44: 60316040 (1988)(セルロース円盤上における種々のペプチド配列の合成を記述);Fodor et al., Science, 251: 767-777 (1991); Sheldon et al., Clinical Chemistry, 39(4): 718-719 (1993); and Kozal et al., Nature Medicine, 2(7): 753759 (1996)(全て固相基質に固定したバイオポリマーの配置を記述)を参照。タグバインダーを基質に固定するための非化学的な方法には、熱、UV照射による交差結合、などのような通常の方法が含まれる。
【0175】
4.コンピューターによる検定
T1Rポリペプチドを調節する化合物のその他の検定にはコンピュータ支援化合物設計が含まれ、その方法ではアミノ酸配列により規定される構造情報に基づいてT1Rポリペプチドの3次元構造を作製するためにコンピューターシステムを使用する。入力したアミノ酸配列はコンピュータープログラム中に予め確立したアルゴリズムで直接活発に処理され、タンパクの2次、3次及び4次構造モデルを生じる。次いでこのタンパクの構造モデルを、例えば、リガンドと結合する能力を有する構造の領域との相同性を調べる。この領域を次いでタンパクに結合するリガンドを同定するために使用する。
【0176】
タンパクの3次元構造モデルは少なくとも10アミノ酸残基のタンパクアミノ酸配列または対応するT1Rポリペプチドをコードする核酸配列を、コンピューターシステムに入力することにより発生する。T1Rポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、またはそのアミノ酸配列はここに記述した配列のいずれか、及びその保存的修飾変異体である。
【0177】
アミノ酸配列は、タンパクの構造情報を含む一次配列またはタンパクの部分配列を示す。少なくとも10残基のアミノ酸配列(または10アミノ酸をコードするヌクレオチド配列)をコンピューターキーボード、コンピューターが読み取れる媒体、これに限定するものではないが、電子保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、及びチップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)、インターネットサイトから配布される情報、及びRAMからコンピューターシステムに入力する。次いでアミノ酸配列を当業者既知のソフトウエアを使用するコンピュータシステムにより処理してタンパクの3次元構造モデルを発生させる。
【0178】
アミノ酸配列は関心のタンパクの2次、3次及び4次構造を形成するのに必要な情報を含む1次構造を示す。ソフトウエアは1次配列に含まれるあるパラメータを探して構造モデルを発生する。これらのパラメータは「エネルギー項」と呼ばれ、第一に静電ポテンシャル、疎水性ポテンシャル、溶媒接近表面、及び水素結合を含んでいる。第二エネルギー項はファンデルワールスポテンシャルを含む。生物学的分子は累積的にエネルギー項を最小にする構造をとる。したがってコンピュータプログラムは1次構造またはアミノ酸配列に含まれるこれらの項を使用して2次構造モデルを創る。
【0179】
2次構造に規定されるタンパクの3次構造は次いで2次構造のエネルギー項に基づいて形成される。使用者はこの時点で追加の変数を入力することができる、例えば、タンパクは膜結合かまたは可溶性、身体の中の局在場所、及び細胞内の局在場所、例えば、細胞質、表面、または核。2次構造のエネルギー項と共にこれらの変数を使用して3次構造のモデルを形成する。3次構造のモデル作製において、コンピュータープログラムは2次構造の疎水性面同士、及び2次構造の親水性面同士をマッチさせる。
【0180】
構造が作製されると、潜在的なリガンド結合領域がコンピューターシステムにより同定される。潜在的リガンドに対する3次元構造は上記のように化合物のアミノ酸またはヌクレオチド配列または化学式を入力することにより作製される。潜在的リガンドの3次元構造を次いでタンパクに結合するリガンドを同定するためのT1Rポリペプチドの構造と比較する。タンパクとリガンドの結合親和性をエネルギー項を使用して計算して、リガンドがタンパクに結合する高い確率を持つことを決定する。
【0181】
コンピューターシステムはまた突然変異、多型変異体、対立遺伝子、及びT1R遺伝子の種間同族体をスクリーニングするために使用される。そのような突然変異は病気の状態または遺伝的性質に関係している。上記のように、GeneChipTM及び関連技術も突然変異、多型変異体、対立遺伝子、及び種間同族体のスクリーニングに使用できる。一度変異体が同定されると、診断検定を使用して、その変異遺伝子を持つ患者を同定することができる。変異T1R遺伝子の同定には、T1R遺伝子の第一核酸またはアミノ酸配列、またはその保存的修飾変異体の入力を不要とする。その配列は上記のようにコンピューターシステムに入力される。第一核酸またはアミノ酸配列は次いで第一配列と実質的に相同性を持つ第二核酸またはアミノ酸配列と比較する。第二配列は上記の方法でコンピューターシステムに入力される。一度第一及び第二配列が比較されると、配列間のヌクレオチドまたはアミノ酸の相違が同定される。そのような配列は種々のT1R遺伝子における対立遺伝子の相違及び病気の状態及び遺伝的性質に関係する突然変異を示していることがある。
【0182】
5.細胞を使用する結合検定
一態様において、T1Rタンパクまたはポリペプチドは、分泌経路を介して成熟及びターゲティングを促進する異種シャペロン配列として、真核細胞中に発現する。そのキメラT1RポリペプチドはHEK-293のような真核細胞のいずれにも発現し得る。望ましくは、細胞は、キメラ受容体が細胞内シグナル伝達経路またはホスフォリパーゼCのようなシグナル伝達タンパクと共役することができる機能的Gタンパク、例えば、Gα15、を含んでいる。そのような細胞内におけるそのキメラ受容体の活性化は標準的方法のいずれかを使用して検出することができる、例えば、細胞内におけるFURA-2を検出することにより細胞内カルシウムの変化を検出する。
【0183】
活性化GPCR受容体は受容体のC-末端尾(及び多分その他の部位も同様)をリン酸化するキナーゼの基質となる。こうして、活性化物質はガンマ標識GTPから受容体へ32Pの転移を促進するであろう、そしてそれはシンチレーションカウンターにより測定することができる。C-末端尾のリン酸化はアレスチン様タンパクの結合を促進するであろう、そしてGタンパクの結合を妨害するであろう。キナーゼ/アレスチン経路は多くのGPCR受容体の脱感作に重要な役割を演じている。例えば、味覚受容体が活性を持続する時間を調節する化合物は、望ましい味を持続させる、または不快な味を断ち切る手段として有用であろう。GPCRシグナル伝達及びシグナル伝達を検定する方法の一般的総説については、例えば、Methods in Enzymology, vols. 237 and 238 (1994) and volume 96 (1983); Bourne et al., Nature, 10: 349: 117-27 (1991); Bourne et al., Nature, 348: 125-32 (1990); Pitcher et al., Annu. Rev. Biochem., 67: 653-92 (1998)を参照。
【0184】
T1R調節は、推定T1R調節物質で処理したT1Rポリペプチドの反応を、非処理対照検体の反応と比較することにより検定することができる。その推定T1R調節物質はT1Rポリぺプチド作用を阻害または活性化する味覚刺激を含んでいる。一態様において、対照検体(活性化物質または阻害物質で処理されていない)を相対T1R活性値100と定める。T1R活性値が対照に対して約90%、さらに50%、さらに25-0%であれば、T1Rポリペプチドの阻害は達成される。T1R活性値が対照に対して110%、さらに150%、200-500%、または1000-2000%であれば、T1Rポリペプチドの活性化は達成される。
【0185】
イオン流出の変化は、T1Rポリペプチドを発現する細胞または膜のイオン分極(すなわち、電気分極)の変化を測定することにより評価することができる。細胞の分極の変化を測定する一つの方法は電圧クランプ及びパッチクランプ技術により電流の変化(それによって分極の変化を測定)を測定することによる(例えば、「セルアッタチド」モード、「インサイド-アウト」モード及び「ホールセル」モード、例えば、Ackerman et al., New Engl. J Med., 336: 1575-1595 (1997)参照)。ホールセル電流は標準的方法を使用して容易に測定される。その他の既知検定は以下を含む:放射標識イオン流出検定及び電圧感受性色素を使用する蛍光検定(例えば、Vestergarrd-Bogind et al., J. Membrane Biol., 88: 67-75 (1988); Gonzales & Tsien, Chem. Biol., 4: 269-277 (1997); Daniel et al., J. Pharmacol. Meth., 25: 185-193 (1991); Holevinsky et al., J. Membrane Biology, 137: 59-70 (1994)参照)。一般的に、試験される化合物は1 pMから100 mMの範囲内で存在する。
【0186】
ポリペプチドの機能に対する被検化合物の効果は、上記のパラメータのいずれかを試験することにより測定することができる。GPCR活性に影響する適当な生理学的変化はいずれも、本発明のポリペプチドに対する化合物の影響を評価するために使用することができる。機能的経過が完全細胞または動物を使用して測定される場合には、伝達物質放出、ホルモン放出、既知及び未知遺伝子マーカーへの転写の変化(例えば、ノーザンブロット)、細胞増殖またはpH変化のような細胞代謝の変化、及びCa2+,IP3,cGMP,またはcAMPのような細胞内第2メッセンジャーの変化、のような種々の影響を測定することができる。
【0187】
GPCRに対する望ましい検定は、レポーター作用を報告するためにイオンまたは電圧感受性色素を負荷した細胞を含んでいる。その受容体の作用を測定するための検定は、被検化合物の活性を評価するための陰性または陽性対照としてGタンパク共役受容体に対する既知アゴニスト及びアンタゴニストも使用することができる。調節化合物(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト)を同定するための検定において、イオン感受性または膜電圧蛍光指示薬をそれぞれ使用して細胞質のイオンレベルまたは膜電位の変化を監視できるであろう。使用されるであろうイオン感受性指示薬及び電圧プローブの中にMolecular Probes 1997 Catalogに開示されたものがある。Gタンパク共役受容体に対して、Gα15及びGα16のようなプロミスカスGタンパクを選択した検定に使用することができる(Wilkie et al., Proc. Nat'1 Acad. Sci., 88: 10049-10053 (1991))。そのプロミスカスGタンパクは広範囲の受容体と共役することができる。
【0188】
受容体活性化は、典型的に続く細胞内事象、例えば、細胞内貯蔵からカルシウムイオンを放出させるIP3のような第2メッセンジャーの増加、を開始する。あるGタンパク共役受容体の活性化は、ホスファチジルイノシトールのホスフォリパーゼC仲介加水分解によりイノシトール三リン酸(IP3)の生成を促進する(Berridge & Irvine, Nature, 312: 315-21 (1984))。IP3は今度は細胞内カルシウムイオン貯蔵の放出を促進する。このように、細胞質カルシウムイオンレベルの変化、またはIP3のような第2メッセンジャーレベルの変化はGタンパク共役受容体機能を評価するために使用することができる。そのようなGタンパク受容体を発現する細胞は細胞内貯蔵及びイオンチャネルの活性化の両者の寄与の結果として細胞質カルシウムレベルの増加を示すが、その場合に、内部貯蔵からのカルシウム放出による蛍光反応と区別するために、カルシウムを含まない緩衝液中、さらにEGTAのようなキレート剤を添加してその検定を実施することが、必要ではないが、望ましい。
【0189】
その他の検定も、受容体が活性化されている時は、アデニレートシクラーゼのような酵素を活性化または阻害することにより、細胞内サイクリックヌクレオチド、例えば、cAMPまたはcGMP、のレベルを変化させることになる受容体の作用を測定することができる。サイクリックヌクレオチド依存性イオンチャネルがある、例えば、ロッド光受容体細胞チャネル及び嗅覚神経チャネルはcAMPまたはcGMPの結合による活性化でカチオンに対して透過性になる(例えば、Altenhofen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci., 88: 9868-9872 (1991) and Dhallan et al., Nature, 347: 184-187 (1990)参照)。受容体の活性化によりサイクリックヌクレオチドレベルの低下を生じる場合には、検定において細胞に受容体活性化化合物を加える前に、細胞をフォルスコリンのような細胞内サイクリックヌクレオチドレベルを上昇させる試薬に曝露することが望ましい。このタイプの検定に使用するための細胞は、宿主細胞をサイクリックヌクレオチド依存性イオンチャネル、GPCRホスファターゼをコードするDNA及び活性化された時に、細胞質中のサイクリックヌクレオチドレベルの変化を生じる受容体(例えば、あるグルタメート受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、ドパミン受容体、セロトニン受容体、など)をコードするDNAで共遺伝子導入して作製することができる。
【0190】
望ましい態様において、T1Rポリペプチド作用は、受容体をホスフォリパーセCシグナル伝達経路に連結するプロミスカスGタンパクを持つ異種細胞におけるT1R遺伝子の発現により測定される(Offermanns & Simon, J. Biol. Chem., 270: 15175-15180 (1995)参照)。さらに細胞系はHEK-293(自然にはT1R遺伝子を発現しない)及びプロミスカスGタンパクはGα15(Offermanns & Simon, 前出)である。味覚伝達の調節は細胞内Ca2+レベルの変化を測定することにより検定される、そのレベルはT1Rポリペプチドに関係のある分子の投与によるT1Rシグナル伝達経路の調節に反応して変化する。Ca2+レベルの変化はさらに蛍光Ca2+指示色素及び蛍光画像を使用して測定される。
【0191】
一の態様において、細胞内cAMPまたはcGMPの変化は免疫検定を使用して測定することができる。Offermanns & Simon, J. Bio. Chem., 270: 15175-15180 (1995)に記述されている方法はcAMPのレベルの測定に使用し得る。また、Felley-Bosco et al., Am. J. Resp. Cell and Mol. Biol., 11: 159-164 (1994)に記述されている方法はcGMPのレベルの測定に使用し得る。さらに、cAMP及び/またはcGMPを測定するための検定キットがU.S. Patent 4,115,538、ここに引用して取り入れた、に記述されている。
【0192】
その他の態様において、ホスファチジルイノシトール(PI)加水分解をU.S. Patent 5,436,128、ここに引用して取り入れた、に従って分析することができる。簡単に述べると、この検定は3H-ミオイノシトールで48時間以上細胞を標識する必要がある。標識細胞を被検化合物で1時間処理する。処理細胞を分解し、クロロフォルム-メタノール-水に抽出し、その後イノシトールリン酸をイオン交換クロマトグラフィーにより分離し、そしてシンチレーションカウンターで定量化した。緩衝液対照におけるcpmに対する、アゴニスト存在下のcpmの比を計算して促進倍数を決定した。同様に、(アゴニストを含むか含まない)緩衝液対照におけるcpmに対する、アンタゴニスト存在下のcpmの比を計算して阻害倍数を決定した。
【0193】
その他の態様において、転写レベルを、シグナル伝達に対する化合物の影響を評価するために測定することができる。関心のT1Rポリペプチドを含む宿主細胞を被検化合物と相互作用するのに充分な時間接触させ、次いで遺伝子発現レベルを測定する。その相互作用を行なう時間の長さは経験的に決められる、例えば、経時的に経過を調べることにより、あるいは時間の関数として転写のレベルを測定することにより。転写の量は当業者が既知の適当な方法のいずれかにより測定することができる。例えば、関心のタンパクのmRNA発現はノーザンブロットを使用して検出することができ、あるいはそのポリペプチド産物は免疫検定を使用して同定することができる。その他に、レポーター遺伝子を使用する転写に基づく検定をU.S. Patent 5,436,128、ここに引用して取り入れた、に記述されているように使用することができる。このレポーター遺伝子は、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、3'-ガラクトシダーゼ及びアルカリ性ホスファターゼであり得る。さらに、関心のタンパクを緑色蛍光タンパクのような第二レポーターと結合することにより間接的レポーターとして使用することができる(例えば、Mistili & Spector, Nature Biotechnology, 15: 961-964 (1997)参照)。
【0194】
次いで転写の量を、被検化合物が存在しない同じ細胞における転写の量と比較するか、または関心のT1Rポリペプチドを持っていない実質的に同じ細胞における転写の量と比較することができる。実質的に同じ細胞は、組換え細胞が作製されたのと同じ細胞で異種DNAの導入による修飾を受けていない細胞から誘導することができる。転写の量における相違は、何らかの形で関心のT1Rポリペプチドの作用を変化させたことを示している。
【0195】
6.遺伝子導入非ヒト動物発現化学感覚受容体
本発明の1またはそれ以上の化学感覚受容体配列を発現する非ヒト動物も受容体検定に使用することができる。その発現を、化学感覚受容体またはそのリガンド結合領域をコードする核酸を安定的にまたは一過性に遺伝子導入した非ヒト動物を被検化合物と接触させ、そして受容体ポリペプチドに特異的に結合することにより被検化合物に動物が反応するか否かを調べることにより、インビボにおいて被検化合物が哺乳動物味覚膜貫通受容体ポリペプチドに特異的に結合するか否かを調べるために使用することができる。
【0196】
本発明のベクターで遺伝子導入したまたはそれに感染した動物は特に、特異的な受容体にまたは受容体のセットに結合することができる味覚刺激/リガンドを同定及び分析するための検定に有用である。そのようなヒト化学感覚受容体配列を発現するベクター感染動物は、味覚刺激及び、例えば、細胞生理学(例えば、味覚神経)、CNS、または行動に対するその効果をインビボでスクリーニングするために使用することができる。
【0197】
核酸及びベクターを感染/発現させる方法は、個別にあるいはライブラリーとしていずれも、当業者既知である。種々の個別細胞、器官、または全動物のパラメーターは種々の方法で測定することができる。本発明のT1R配列は例えば感染物質、例えば、アデノウイルス発現ベクター、により運ばれて動物味覚組織に発現することができる。
【0198】
内在性化学感覚受容体遺伝子は、機能を保持することができ、そして野生型(元来の)作用は存在し得る。その他の、全ての化学感覚受容体が外来性雑種受容体を導入によることが望ましい状態においては、ノックアウト系を使用することが望ましい。非ヒト遺伝子導入動物、特に遺伝子導入マウス、の作製及び形質転換細胞を作製するための組換え構築物の選別及び調製の方法は当業者既知である。
【0199】
「ノックアウト」細胞及び動物の作製は、抑制する遺伝子のDNA配列のある一部を中断する新規DNA配列の導入により哺乳動物細胞中の特別な遺伝子の発現のレベルを減少または完全に止めることができると言う前提に基づいている。「遺伝子トラップ挿入」もまた宿主遺伝子を破壊するために使用することができ、そしてマウス胚性幹(ES)細胞をノックアウト遺伝子導入動物を作製するために使用することができる(例えば、Holzschu, Transgenic Res 6: 97-106 (1997)参照)。外来性核酸配列の挿入は典型的に相補的核酸配列間の相同組換えによる。外来性配列は、修飾する標的遺伝子のある一部である、例えば、エクソン、イントロン、または転写調節配列、または標的遺伝子の発現のレベルに影響し得るゲノム配列;またはその組み合わせ。多能性胚性幹細胞において相同組換えによる遺伝子ターゲティングにより、正確に関心のゲノム配列を修飾することができる。ノックアウト動物を創製し、スクリーニングし、繁殖するためにいずれかの技術を使用することができる、例えば、Bijvoet, Hum. Mol. Genet. 7: 53-62 (1998); Moreadith, J. Mol. Med. 75: 208-216 (1997); Tojo, Cytotechnology 19: 161-165 (1995); Mudgett, Methods Mol. Biol. 48: 167-184 (1995); Longo, Transgenic Res. 6: 321-328 (1997); U.S. Patents No. 5,616,491; 5,4,64,764; 5,631,153; 5,487,992; 5,627,059; 5,272,071; WO 91/09955; WO 93/09222; WO 96/29411; WO 95/31560; WO 91/12650を参照。
【0200】
本発明の核酸を「ノックアウト」ヒト細胞及びその子孫を作製するための試薬として使用することもできる。同様に、本発明の核酸をマウスにおいて「ノックイン」を作製するための試薬として使用することもできる。ヒトまたはラットT1R遺伝子配列をマウスゲノム中のオルソログT1Rと置き換えることができる。このようにして、ヒトまたはラットT1Rを発現するマウスが作製される。このマウスは次いでヒトまたはラットT1Rを分析するために、そしてそのT1Rのリガンドを同定するために使用することができる。
【0201】
D. 調節物質
T1Rファミリーメンバーの調節化合物として試験される化合物は、小化合物またはタンパク、糖、核酸または脂質のような生物学的実体であり得る。その他、調節物質はT1R遺伝子の遺伝子を改変したものであり得る。典型的に被検化合物は小化学分子及びタンパクであろう。ほとんどの化合物は水に溶解することができ、あるいは有機溶液(特にDMSO)が使用されるが、本質的に全ての化合物を本発明の検定において潜在的な調節物質またはリガンドとして使用し得る。検定は検定操作を自動化することにより大きな化学ライブラリーをスクリーニングするように設計され、典型的に平行して実施する(例えば、ロボット検定におけるマイクロタイタープレートを上で行なう方式の)検定に適した資源の化合物を準備する。Sigma (St. Louis, MO), Aldrich (St. Louis, MO),Sigma-Aldrich (St. Louis, MO), Fluka Chemika-Biochemica Analytika (Buchs, Switzerland)などを含めて多くの化合物供給業者が存在することは承知しているであろう。
【0202】
望ましい一の態様において、高効率スクリーニング方法は非常に多数の潜在的治療用化合物(潜在的調節物質またはリガンド化合物)を含むコンビナトリアル化学ライブラリーまたはペプチドライブラリーを準備することを含んでいる。その「コンビナトリアル化学ライブラリー」または「リガンドライブラリー」は、次いで望ましい特性の作用を示すライブラリーメンバー(特に化学種またはサブクラス)を同定するために、ここに記述したように1またはそれ以上の検定によりスクリーニングされる。このように同定された化合物は便宜的に「リード化合物」として使用することができ、あるいはそれ自体を治療薬の候補あるいは実際の治療薬として使用することができる。
【0203】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、試薬のような多数の化学的「建築ブロック」の組合せにより、化学合成または生物合成により作製された多様な化合物の集合である。例えば、ポリペプチドライブラリーのような線状コンビナトリアル化学ライブラリーは指定された化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)まで可能な方法で化学的建築ブロック(アミノ酸)のセットを組みあわせて形成される。そのような化学的建築ブロックの順列組合せ混合により数百万の化合物を合成することができる。
【0204】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製及びスクリーニングは当業者は熟知している。そのようなコンビナトリアル化学ライブラリーには、これに限定するものではないが、ペプチドライブラリーが含まれる(例えば、U.S. Patent 5,010,175, Furka, Int. J.Pept. Prot. Res., 37: 487-493 (1991) and Houghton et al., Nature, 354: 84-88 (1991)参照)。化学的多様なライブラリーを作製するその他の化学も使用することができる。そのような化学としては、限定するものではないが:ペプトイド(例えば、PCT Publication No. WO 91/19735)、コードされたペプチド(例えば、PCT Publication WO 93/20242)、ランダムバイオ-オリゴマー(例えば、(PCT Publication No. WO 92/00091)、ベンゾジアゼピン類(例えば、U.S. Pat. No. 5,288,514)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン及びジペプチドのようなダイバーソマー(Hobbs et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 90: 6909-6913 (1993))、ビニローグポリペプチド(Hagihara et al., J. Amer. Chem. Soc., 114: 6568 (1992))、グルコーススカフォールドを持つ非ペプチド性ペプチド類似体(Hirschmann et al., J. Amer. Chem. Soc., 114: 9217-9218 (1992))、小化合物ライブラリーの同族体有機合成(Chen et al., J. Amer. Chem. Soc., 116:2661(1994))、オリゴカルバメート(Cho et al., Science, 261: 1303 (1993))、ペプチジルホスフォネート(Campbell et al., J. Org. Chem., 59: 658 (1994))、核酸ライブラリー(Ausubel, Berger and Sambrook, 全て前出)、ペプチド核酸ライブラリー(U.S. Patent 5,539,083)、抗体ライブラリー(Vaughn et al., Nature Biotechnology, 14(3): 309-314 (1996) and PCT/US96/10287)、炭水化物ライブラリー(Liang et al., Science, 274: 1520-1522 (1996) and U.S. Patent 5,593,853)、小有機分子ライブラリー(ベンゾジアゼピン、Baum, C&EN, Jan 18, page 33 (1993); チアゾリジノン及びメタチアザノン、U.S. Patent 5,549,974; ピロリジン、U.S. Patent 5,525,735 and 5,519,134; モルフォリノ化合物、U.S. Patent 5,506,337; ベンゾジアゼピン、5,288,514,など)。
【0205】
コンビナトリアルライブラリーを作製する装置は市販されている(例えば、357 MPS, 390 MPS(Advanced Chem Tech, Louisville KY), Symphony (Rainin, Woburn, MA), 433A (Applied Biosystems, Foster City, CA), 9050 Plus (Millipore, Bedford, MA)参照)。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリーそれ自体が市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, NJ; Tripos, Inc., St. Louis, MO; 3D Pharmaceuticals, Exton, PA; Martek Biosciences; Columbia, MD;など参照)。
【0206】
本発明の一態様において、T1R調節物質は、望ましい方法で製品、組成物、またはその成分の味を調節するために、食品、菓子、医薬組成物またはその成分中に使用することができる。例えば、甘味感覚を増強するT1R調節物質を製品または組成物を甘くするために添加することができる、他方好ましくない味覚感覚を抑制するT1R調節物質は製品または組成物の味を改善するために添加することができる。
【0207】
E. 味の感覚を表現する方法及び予測する方法
本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物における味の感覚を表現する方法及び/または味の感覚を予測する方法を提供する。望ましくは、その方法はここに開示した受容体及び該T1Rポリペプチドをコードする遺伝子を使用することにより実施される。
【0208】
哺乳動物により検出される味の存在について1またはそれ以上の化合物をスクリーニングする方法も本発明に包含され、これは該1またはそれ以上の化合物と開示した受容体を接触させることを含んでおり、哺乳動物はヒトであることが望ましい。また哺乳動物における特別な味の味覚感覚を表示するための方法も本発明に包含され、これは以下のステップを含む:該脊椎動物の各n化学感覚受容体の定量的刺激を示す値X1からXnを与える、このnは2以上である;そして該値から味覚感覚の定量的表示を作製する。この化学感覚受容体はここに開示した化学感覚受容体であり、表示はn次元空間における点または容積を構成し、グラフまたはスペクトルを構成し、そして定量的表示のマトリックスを構成し得る。また、提供するステップは複数の組換えにより作製した化学感覚受容体と被検成分を接触させそして該成分と該受容体の相互作用を定量的に測定することを含んでいる。
【0209】
哺乳動物において未知味覚感覚を生じる1以上の分子または分子の組合せにより発生する哺乳動物における味覚感覚を予測する方法も本発明に包含され、以下のステップを含む:哺乳動物において既知味覚感覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対して該脊椎動物の各n化学感覚受容体の定量的刺激を示す値X1からXnを与える、このnは2以上である;そして該値から哺乳動物において既知味覚感覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対する既知味覚感覚の定量的表示を作製し、哺乳動物において未知味覚感覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対して該脊椎動物の各n化学感覚受容体の定量的刺激を示す値X1からXnを与える、このnは2以上である;そして該値から哺乳動物において未知味覚感覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対する味覚感覚の定量的表示を作製し、そして哺乳動物において未知味覚感覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対する味覚感覚の定量的表示を哺乳動物において既知味覚感覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対する既知味覚感覚の定量的表示と比較することにより哺乳動物において未知味覚感覚を生じる1以上の分子または分子の組合せから生じる哺乳動物における味覚感覚を予測する。この方法に使用される化学感覚受容体はここに開示した化学感覚受容体を含むことができる。
【0210】
その他の態様において、上記のように既知分子または分子の組合せに対する哺乳動物における味覚感覚の値を測定することにより哺乳動物において予め定めた味覚感覚を発生する新規分子または分子の組合せが作成される;上記のように1以上の未知分子または分子の組合せに対する哺乳動物における味覚感覚の値を測定する;1以上の未知成分に対する哺乳動物における味覚感覚の値を1以上の既知成分に対する哺乳動物における味覚感覚の値と比較する;哺乳動物において予め定めた味覚感覚を発生する分子または分子の組合せを選択する;そして2以上の未知分子または分子を組合せて哺乳動物において予定した味覚感覚を発生する分子または分子の組み合わせを形成する。この組み合わせステップにより哺乳動物において予定した味覚感覚を発生する1個の分子または分子の組合せが得られる。
【0211】
本発明のその他の態様において、味覚を増強する方法が提供されるが、これは以下のステップを含む:複数のクローン化化学感覚受容体、望ましくはヒト受容体、のそれぞれに対して受容体が味覚刺激と相互作用する程度を確認する;そして味覚刺激に対するプロフィールに類似する受容体-刺激プロフィールを示す量で、それぞれが1以上の受容体との相互作用が予め確認されている複数の化合物を組合わせる。味覚刺激と化学感覚受容体の相互作用はここに記述した結合または受容体検定法のいずれかを使用して測定することができる。複数の化合物は次いで組合わせて混合物とする。もし望むならば、複数の化合物を共有結合で結合することができる。組合わせた化合物は実質的に味覚刺激により刺激される受容体の少なくとも75%、80%または90%を刺激する。
【0212】
本発明のその他の態様において、複数の標準化合物を複数の化学感覚受容体に対して試験を行ない、受容体それぞれが各標準化合物と相互作用する程度を確認し、それにより各標準化合物に対する受容体刺激プロフィールを作製する。これらの受容体刺激プロフィールは次いでデータ保存媒体のリレーショナルデータベースに保存することができる。この方法はさらに味に対する求める受容体刺激プロフィールを提供することを含んでいる:求める受容体刺激プロフィールをリレーショナルデータベースと比較する;そして求める受容体刺激プロフィールと最も良く一致する1以上の標準化合物の組合せを確認する。さらにこの方法は味覚を刺激するために1以上の確定している組み合わせに標準化合物を組合わせることを含んでいる。
【0213】
F. キット
T1R遺伝子及びその同族体は、化学感覚受容体細胞の同定、法医学および父子確認、及び味覚伝達試験のために有用な道具である。T1Rプローブ及びプライマーのようなT1Rと特異的にハイブリッド形成するT1Rファミリーメンバー特異的試薬、及びT1Rポリペプチドに特異的に結合するT1R特異的試薬、例えば、T1R抗体は味覚細胞発現及び味覚伝達調節を調べるために使用される。
【0214】
検体中のT1RファミリーメンバーのDNA及びRNA存在を調べる核酸検定には、当業者既知の多数の技術が含まれる、例えば、サザン分析、ノーザン分析、ドットブロット、RNアーゼ保護、S1分析、PCRのような増幅技術、及びインザイツハイブリッド形成。インザイツハイブリッド形成において、例えば、標的核酸は、その後の解析及び分析に必要な細胞形態を維持しつつ細胞内においてハイブリッド形成できるように細胞性環境から遊離される。以下の論文はインザイツハイブリッド形成の総説を提供している:Singer et al., Biotechniques, 4: 230250 (1986); Haase et al., Methods in Virology, vol. VII, pp. 189-226 (1984); and Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach (Names et al., eds. 1987)。さらに、T1Rポリペプチドは上記の種々の免疫検定技術により検出することができる。被検検体は典型的に陽性対照(例えば、組換えT1Rポリペプチドを発現する検体)及び陰性対照と比較される。
【0215】
本発明はまた、T1Rファミリーメンバーの調節物質をスクリーニングするキットを提供する。そのキットは容易に入手できる物質及び試薬から作製される。例えば、そのキットは次の物質のいずれか一つ以上を含んでいる:T1R核酸またはタンパク、試験管、及びT1R作用を試験するための説明書。さらに、キットは生物学的に活性なT1R受容体を含んでいる。このキットを使用するユーザーの意向及び特別なニーズに従って、多様なキット及び成分を本発明に従って調製することができる。
【実施例】
【0216】
ここに示すタンパク配列において、一文字コードXまたはXaaは20個の通常のアミノ酸残基のいずれかを示す。ここに示したDNA配列では、一文字コードNまたはnは4個の通常のヌクレオチド塩基、A,T,C,またはGのいずれかを示す。
【0217】
例1−hT1R3
hT1R3ゲノムDNAは、太字で示される推定コード配列(cds)を持つSEQ ID NO 1及びSEQ ID NO 2として以下示す。5'及び3'コンティグの間の空白は、点線(………)として示した。hT1R3推定cdsは、SEQ ID NO 3に記述されている。最後に、望ましい、推定hT1R3アミノ酸配列は、アミノ酸に対する一文字コードを使用して、SEQ ID NO 4として与えられている。













【0218】
例2−rT1R3及びmT1R3
ラット及びマウスT1R3遺伝子の部分は、ヒトT1R3配列に基づく縮重プライマーを使用してPCR増幅によりゲノムDNAから単離した。縮重プライマーSAP077(5'-CGNTTYYTNGCNTGGGGNGARCC-3'; SEQ ID NO 5)及びSAP079 (5'-CGNGCNCGRTTRTARCANCCNGG-3'; SEQ ID NO 6)は、ヒトT1R3残基RFLAWGEPA (SEQ ID NO 7に対応)及びPGCYNRAR (SEQ ID NO 8に対応)に対してそれぞれ相補性であった。PCR産物はクローン化し、配列分析した。プラスミドSAV115は、マウスT1R3遺伝子のクローン化部分を持ち、SAV118は、ラットT1R3遺伝子のクローン化部分を持っていた。マウスのクローン化部分は、対応するヒトT1R3の部分と74%相同であり、ラットのクローン化部分は、対応するヒトT1R3の部分と80%相同であるので、以下に示すこれらの配列は、ヒトT1R3に相当する受容体のげっ歯類遺伝子を明らかに示している。マウスとラットの部分は、88%相同である。データベース配列でこれらのT1R3配列と40%以上の相同性を持つものはなかった。



【0219】
例3−rT1R3のクローニング
上記SEQ ID NO 9及び11として同定されたmT1R3及びrT1R3遺伝子の断片を、ラット味覚組織由来cDNAライブラリーをスクリーニングするために使用した。一つの陽性クローンを配列分析し、下記にSEQ ID NO 13として示す全長rT1R3を含むことが判明した。mT1R3及びrT1R3部分配列及び全長hT1R3配列との配列比較によりこのcDNAはhT1R3のラット同族体であることが確認された。例えば、rT1R3及びhT1R3間のアミノ酸同一性は約72%であり、一方公共DNA配列データバンク中でもっとも関係があるとされた配列はrT1R3に対してわずかに約33%同一であった。





【0220】
例4−mT1R3の発現
SAV115に含まれる上記マウスT1R3断片をM13前進及びM13逆プライマーを使用してPCR増幅し、次いでゲル精製した。T1R3 DNA鋳型をジゴキシゲニン標識UTPがアンチセンスcRNAプローブ中に組込まれる、インビトロ転写標識反応にかけた。このプローブで輪郭乳頭を含む成長マウス味覚組織とハイブリッド形成した。T1R3インザイツハイブリッド形成及び検出はSchaeren-Wiemers et al., Histochemistry, 100: 431-400 (1993)のプロトコールに従って実施した。簡単に記すと、新鮮凍結マウス舌を14μmに細切し、ハイブリッド形成用に調製した。アンチセンスジゴキシゲニンT1R3プローブの200 ng/mLと14時間72℃でハイブリッド形成処理した。ハイブリッド形成処理後72℃で0.2xSSC洗浄した。ジゴキシゲニン検出は抗-DIGアルカリ性ホスファターゼ抗体の1:5000希釈で培養し次いでNBT/BCIP中でホスファターゼ反応を12時間行なうことにより実施した。
【0221】
例5−hT1R1
ラット味覚受容体、rT1R1と命名、のヒトオルソログ(データベース登録番号AL159177)をSEQ ID NO 15として下記に示す。推定cdsを太字で示し、一部のイントロン配列間隔をNの連続として示す。ヌクレオチド及び理論的翻訳hT1R1配列もSEQ ID NO 16及び17としてそれぞれここに記述する。















【0222】
例6−hT1R2
ラット味覚受容体、rT1R2と命名、のヒトオルソログの推定cdsをSEQ ID NO 20として下記に示す。理論的に翻訳したhT1R2配列もここにSEQ ID NO 21としてここに記述する。本発明に従って、hT1R2の最初の2個のコードエクソンはサザンブロットによりPAC内に同定された。エクソン1はBamHI/BgIII断片内に単離され、サザン実験で同定され、そしてエクソン2はエクソン1からエクソン3にわたるPCR産物内に単離された。2個のコードエクソンをrT1R2配列と比較して、この2個のエクソンはrT1R2のヒト対応遺伝子のN-末端をコードすることを確認した。例えば、2個のエクソンによりコードされているhT1R2 N-末端配列及びrT1R2の対応する領域間のアミノ酸同一性は約72%であり、一方公共DNA配列データベース中の最も関連するとされる配列はhT1R2に対してわずか約48%の同一性であった。





【0223】
例7
異種細胞におけるT1Rの異種発現の方法
Gα15を安定的に発現するHEK-293誘導体(Chandrashekar et al., Cell 100(6): 703-11 (2000))を増殖し、そして10% FBS, MEM非必須アミノ酸(Gibco BRL),及び3μg/mlブラスチシジンを添加したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM, Gibco BRL)中37℃に維持した。カルシウム画像実験の場合には、最初24ウエル組織培養プレート上に接種し(約ウエル当たり10万細胞)、Mirus Transit-293 (PanVera)でのリポフェクションによりトランスフェクションした。グルタミン酸誘導及びグルコース誘導脱感作を最小限にするために、トランスフェクション後約24時間添加DMEMを低グルコースDMEM/GlutaMAX(Gibco BRL)に置換した。24時間後、ダルベッコPBS緩衝液(DPBS, GibcoBRL)中細胞にカルシウム色素Fluo-4(Molecular Probes)3μMを室温で1.5時間負荷した。250μl DPBSで置換し、味覚刺激を添加した200μl DPBSを室温で加えることにより刺激を行なった。カルシウム移動をImaging Workbench 4.0ソフトウエア(Axon)を使用してAxiovert S100 TV顕微鏡(Zeiss)で監視した。T1R1/T1R3及びT1R2/T1R3は極めて一過性に反応し−カルシウム増加は15秒以上は持続しなかった−そして非同期性であった。多数の反応細胞は経時的に比較的一定していた;したがって、細胞反応は一定時間において、典型的には刺激を加えた後30秒で反応細胞の数を数えて定量化した。
【0224】
例8
甘味味覚受容体としてのヒトT1R2/T1R3
Gα15を安定的に発現するHEK細胞を一過性にヒトT1R2、T1R3及びT1R2/T1R3でトランスフェクションし、そして増加するスクロースの濃度に反応する細胞内カルシウムの増加を検定した(図1(a))。また、T1R2/T1R3用量反応をいくつかの甘味刺激について測定した(図1(b))。反応細胞の最大パーセントは異なる甘味剤に対して異なり、10−30%の範囲であった。明瞭にするために、用量反応は反応細胞の最大パーセントに対して正規化した。図1の値は4独立試験の平均±s.e.を示す。X軸の丸印は味覚検査により測定された精神生理学的検出閾値である。グルマリン(10g/l Gymnema sylvestre水抽出液濾液の50-全希釈)は250 mMスクロースに対するT1R2/T1R3の反応を阻害したが、20μMイソプロテレノールに対する内在性β2-交感神経受容体の反応は阻害しなかった(図1(b))。図1(c)は異なる甘味剤(スクロース、アスパルテーム、トリプトファン及びサッカリン)に対するT1R2/T1R3共発現細胞系の正規化した反応を含む。
【0225】
例9
ラットT1R2/T1R3も甘味味覚受容体として機能する
Gα15を安定的に発現するHEK細胞をhT1R2/hT1R3,rT1R2/rT1R3,hT1R2/rT1R3,及びrT1R2/hT1R3で一過性にトランスフェクションした。これらの遺伝子導入細胞を350 mMスクロース、25 mMトリプトファン、15 mMアスパルテーム、及びモネリンの0.05に対する細胞内カルシウムの増加を検定した。スクロース及びアスパルテームの結果は図2に含まれており、そしてrT1R2/rT1R3も甘味味覚受容体として機能することを示している。また、これらの結果はT1R2がT1R2/T1R3リガンド特異性を支配していることを示唆している。
【0226】
例10
ヒトT1R1/T1R3は旨味味覚受容体として機能する
Gα15を安定的に発現するHEK細胞をT1R1,T1R3及びT1R1/T1R3で一過性にトランスフェクションし、増加する濃度のグルタメート(図3(a)及び0.5 mMグルタメート)、0.2 mM IMP、及び0.5 mMグルタメートプラス0.2 mM IMP(図3(b))に反応して増加する細胞内カルシウムを検定した。ヒトT1R1/T1R3用量反応を0.2 mM IMPの存在下及び非存在下にグルタメートに対して測定した(図3(c))。反応細胞の最大パーセントはグルタメートに対して約5%そしてグルタメートプラスIMPに対しては約10%であった。明瞭にするために、用量反応は反応細胞の最大パーセントに対して正規化した。値は4独立試験の平均±s.e.を示す。X軸の丸印は味覚検査により測定された検出閾値である。
【0227】
例11
エクスポート配列としてのPDZIP
6残基PDZIP配列(SVSTVV(SEQ ID NO: 22))をhT1R2のC-末端に融合した、そしてこのキメラ受容体(すなわち、hT1R2-PDZIP)をHEK-293宿主細胞に遺伝子導入した。次いでhT1R2の表面発現を免疫蛍光及びFACSスキャンニングデータを使用して監視した。図6A及び6Bに示すように、PDZIP配列の導入によりhT1R2-PDZIPの表面発現はhT1R2に比較して増加した。
PKZIP配列
SVSTVV(SEQ ID NO: 22)
【0228】
特に、図4Aは、形質膜上のhT1R2タンパクの量をPDZIPが有意に増加することを示すmyc-タグ付きhT1R2の免疫蛍光染色を示している。図4Bは同じ結果を示すFACS分析データを示す。myc-タグ付きhT1R2を発現する細胞は点線で示されており、myc-タグ付きhT1R2-PDZIPを発現する細胞は実線で示されている。
【0229】
例12
T1R1/T1R3またはT1R2/T1R3を安定的に共発現する細胞系の作製
ヒトT1R2/T1R3またはヒトT1R1/T1R3を安定的に共発現するヒト細胞系はそれぞれhT1R1またはhT1R2発現構築(T1R1に対するプラスミドSAV2485、T1R2に対するSAV2486)及びhT1R3(T1R3に対するプラスミドSXV550)を含むpCDNA 3.1/ZEO由来(Invitrogen)ベクターを含む線状化PEAK 10由来(Edge Biosystems)ベクターをGα15発現細胞系にトランスフェクションすることによって作製した。特に、T1R2/T1R3安定細胞系はGα15を安定的に発現するAurora BioscienceのHEK-293細胞系に線状化SAV2486及びSXV550を共トランスフェクションして作製した。T1R1/T1R3安定細胞系はGα15を安定的に発現するHEK-293細胞系に線状化SAV2485及びSXV550を共トランスフェクションして作製した。SAV2485/SCV550及び SAV2486/SXV550のトランスフェクションに続いて、ピューロマイシン耐性及びゼオシン耐性のコロニーを選別し、増殖し、そしてカルシウム画像により甘味または旨味味覚刺激に対する反応を試験した。細胞を0.0005 mg/mlピューロマイシン(CALBIOCHEM)及び0.1 mg/mlゼオシン(Invitrogen)でGlutaMAX、10%透析FBS、及び0.003 mg/mlブラスチシジンを添加した低グルコースDMEM中37℃で選別した。耐性コロニーを増殖し、甘味味覚刺激に対する反応を蛍光顕微鏡により評価した。VIPR-II装置(Aurora Biosciences)による自動化蛍光画像用に、T1R2/T1R3安定細胞を最初96ウエルプレート上に接種した(ウエル当たり約15,000細胞)。24時間後、細胞にPBS中室温1時間0.005 mMのカルシウム色素fluo-3-AM (Molecular Probes)を負荷した。70 ml PBSで置換した後、味覚刺激を添加した70 ml PBSを室温で加えることにより刺激を行なった。化合物添加後20から30秒の蛍光(480 nm励起及び535 nm発光)反応を平均し、化合物添加前に測定したバックグランド蛍光で補正し、そして0.001 mMイオノマイシン(CALBIOCHEM)、カルシウムイオノフォア、の反応に対して正規化した。
【0230】
その結果これらの細胞系は甘味または旨味と接触した時に、活性クローンの典型的に80-100%の細胞が味覚刺激に反応したことを認めた。予想に反して、個々の細胞の反応の程度は一過性にトランスフェクションした細胞より著しく大きかった。
【0231】
この観察に基づいて、本発明者等は上記のようにAurora BioscienceのVIPRを使用する自動化蛍光画像によりT1R安定細胞系の活性を試験した。2個のT1R1/T1R3及び1個のT1R2/T1R3細胞系を図5及び図6にそれぞれ示す。
【0232】
明らかに、反応細胞数の増加と反応強度の増加の両方が、一過性トランスフェクション細胞に比較して10倍の活性増加であった(比較のために、一過性にT1R2/T1R3でトランスフェクションした細胞のパーセントイオノマイシン反応は最適条件下において約5%であった)。さらに、安定的に発現したヒトT1R2/T1R3及びT1R1/T1R3に対して得られた用量反応はヒト味覚検出閾値と相関した。これらの安定細胞系の強健なT1R活性は、この細胞が化合物、例えば、甘味または旨味味覚受容体を調節する、したがって甘味または旨味を調節し、増強し、阻害または類似する小型分子、を同定するための化学ライブラリーのハイスループットスクリーニングに使用するのに適していることを示している。
【0233】
本発明のいくつかの態様を上に詳細に記述したが、上記はただ説明のためのみに記述したものであり、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。本発明は請求項によってのみ限定される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 本質的に、味覚シグナリングにおいて作用するT1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列からなり、該核酸配列が、本質的にSEQ ID NO 15及び20からなる群から選択された核酸配列からなる、ゲノムDNA配列;
(ii) SEQ ID NO 4,14,17,及び21からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つT1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列から本質的になる、ゲノムDNA配列;
(iii) T1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列と少なくとも約50%の相同性を持ち、該核酸配列がSEQ ID NO 15及び20からなる群から選択された核酸配列から本質的になる、ゲノムDNA配列;
(iv) SEQ ID NO 4,14,17,及び21からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約40%相同であるアミノ酸配列を持つT1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列から本質的になるゲノムDNA配列;
(v) SEQ ID NO 18及び19並びにSEQ ID NO 18又は19と少なくとも約75%相同性を持つ配列からなる群から選択される共通配列を含むT1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列から本質的になる、ゲノムDNA配列;
(vi) SEQ ID NO 15及び20からなる群から選択されるゲノムDNA配列中のT1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする領域と同じ核酸配列を持つcDNA配列;
(vii) SEQ ID NO 4,14,17,及び21からなる群から選択されたアミノ酸配列を持つT1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードするcDNA配列;
(viii) SEQ ID NO 18及び19並びにSEQ ID NO 18又は19に少なくとも約75%相同性を持つ配列からなる群から選択される共通配列を含むT1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードするcDNA配列;
(ix) SEQ ID NO 3,13,16及び20からなる群から選択されるcDNA配列;
(x) SEQ ID NO 15及び20からなる群から選択されたゲノムDNA配列中のT1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする領域と少なくとも約50%の配列相同性を持つcDNA配列;
(xi) SEQ ID NO 4,14,17,及び21からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つT1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする領域と少なくとも約50%の配列相同性を持つcDNA配列;
(xii) SEQ ID NO 3,13,16及び20からなる群から選択される配列と少なくとも約50%の相同性を持つcDNA配列;
(xiii) 味覚シグナリングにおいて作用するT1R Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする領域中に、少なくとも一つの保存的置換を含む、SEQ ID NO 3,13,15, 16及び20からなる群から選択されるヌクレオチド配列の変異体;
(xiv) T1R Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする領域中に少なくとも一つの保存的置換を含む、SEQ ID NO 4,14,17,及び21からなる群から選択されるアミノ酸配列を持つT1R Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の変異体;
(xv) 少なくとも一つの保存的置換を含む、SEQ ID NO 3,13,16及び20からなる群から選択されるcDNA配列の変異体;
からなる群から選択される単離核酸。
【請求項2】
本質的に、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列からなり、該核酸配列が、本質的にSEQ ID NO 15または20からなる、単離ゲノムDNA分子。
【請求項3】
請求項2に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項4】
請求項2に記載のDNA分子と厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項5】
請求項2に記載のDNA分子と緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項6】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項2に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項7】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項2に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により、単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項8】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項7に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項9】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項7に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項10】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項9に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項11】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項7に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項12】
SEQ ID NO 4,14,17,及び21からなる群から選択されたアミノ酸配列を持つ哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列から本質的になる単離ゲノムDNA分子。
【請求項13】
請求項12に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項14】
請求項12に記載のDNA分子に、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項15】
請求項12に記載のDNA分子に、緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項16】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項12に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項17】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項12に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項18】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項17に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項19】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項17に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項20】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項19に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項21】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項17に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項22】
本質的に、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸分子と少なくとも約50%相同性を持つ核酸配列からなり、該核酸配列は、本質的にSEQ ID NO 15及び20からなる群から選択された核酸配列からなる、単離ゲノムDNA分子。
【請求項23】
請求項22に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項24】
請求項22に記載のDNA分子に、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項25】
請求項22に記載のDNA分子に、緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項26】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項22に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項27】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項22に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項28】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項27に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項29】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項27に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項30】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項29に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項31】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項27に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項32】
SEQ ID NO 4,14,17及び21からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約40%相同であるアミノ酸配列をもつ哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列から本質的になる単離ゲノムDNA分子。
【請求項33】
請求項32に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項34】
請求項32に記載のDNA分子に、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項35】
請求項32に記載のDNA分子に、緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項36】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項32に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項37】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項32に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項38】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項37に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項39】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項37に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項40】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項39に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項41】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項37に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項42】
SEQ ID NO 15及び20からなる群から選択された核酸配列から本質的になるゲノムDNAに含まれる哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドコード領域と同じ配列を持つ核酸配列を含む単離cDNA分子。
【請求項43】
請求項42に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項44】
請求項42に記載のDNA分子に、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項45】
請求項42に記載のDNA分子に、緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項46】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項42に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項47】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項42に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項48】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する請求項47に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項49】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である請求項47に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項50】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である請求項49に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項51】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項47に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項52】
調節可能または構成的のいずれかである異種プロモーターに作動可能に結合した請求項42に記載の単離cDNAを含む核酸分子。
【請求項53】
該調節可能なプロモーターが、特異的な環境条件または発生条件の下に誘導される請求項52に記載の核酸分子。
【請求項54】
SEQ ID NO 4,14,17及び21からなる群から選択されるアミノ酸配列をもつ哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離cDNA分子。
【請求項55】
請求項54に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項56】
請求項54に記載のDNA分子に、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項57】
請求項54に記載のDNA分子に、緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項58】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項54に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項59】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項54に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項60】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する請求項59に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項61】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項59に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項62】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項61に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項63】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項59に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項64】
調節可能または構成的のいずれかである異種プロモーターに作動可能に結合した請求項54に記載の単離cDNAを含む核酸分子。
【請求項65】
該調節可能なプロモーターが、特異的な環境条件または発生条件の下に誘導される、請求項64に記載の核酸分子。
【請求項66】
SEQ ID NO 15及び20からなる群から選択された核酸配列から本質的になるゲノムDNA配列中のGタンパク共役受容体ポリペプチドコード領域と少なくとも約50%相同性を持つ核酸配列を含む単離cDNA分子。
【請求項67】
請求項66に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項68】
請求項66に記載のDNA分子に、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項69】
請求項66に記載のDNA分子に、緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項70】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項66に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項71】
該キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項66に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項72】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項71に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項73】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である請求項71に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項74】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である請求項73に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項75】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である請求項71に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項76】
調節可能または構成的のいずれかである異種プロモーターに作動可能に結合した請求項66に記載の単離cDNAを含む核酸分子。
【請求項77】
該調節可能なプロモーターが、特異的な環境条件または発生条件の下に誘導される請求項76に記載の核酸分子。
【請求項78】
SEQ ID NO 4,10,12,14,及び17からなる群から選択されたアミノ酸配列含む哺乳動物TIR Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列と少なくとも約40%相同性を持つ核酸配列を含む単離cDNA分子。
【請求項79】
請求項78に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項80】
請求項78に記載のDNA分子に、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項81】
請求項78に記載のDNA分子に、緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項82】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項78に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項83】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項78に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項84】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項83に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項85】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項83に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項86】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項85に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項87】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項83に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項88】
調節可能または構成的のいずれかである異種プロモーターに作動可能に結合した請求項78に記載の単離cDNAを含む核酸分子。
【請求項89】
該調節可能なプロモーターが、特異的な環境条件または発生条件の下に誘導される請求項88に記載の核酸分子。
【請求項90】
SEQ ID NO 15及び20からなる群から選択された核酸配列から本質的になるヌクレオチド配列を含み、味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ペプチドをコードする領域に少なくとも一つの保存的置換を含む、単離変異DNA分子。
【請求項91】
請求項90に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項92】
請求項90に記載のDNA分子に、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項93】
請求項90に記載のDNA分子に、緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項94】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である請求項90に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項95】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項90に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項96】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項95に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項97】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項95に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項98】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項97に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項99】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項95に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項100】
請求項90に記載の変異DNA分子のコード領域と同じ核酸配列を持つcDNA分子。
【請求項101】
調節可能または構成的のいずれかである異種プロモーターに作動可能に結合した請求項100に記載の単離cDNAを含む核酸分子。
【請求項102】
該調節可能なプロモーターが、特異的な環境条件または発生条件の下に誘導される請求項101に記載の核酸分子。
【請求項103】
SEQ ID NO 4,14,17及び21からなる群から選択されたアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする核酸配列を含み、コード領域に少なくとも一つの保存的置換を含む、単離変異分子。
【請求項104】
請求項103に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項105】
請求項103に記載のDNA分子に厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項106】
請求項103に記載のDNA分子に緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項107】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である請求項103に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項108】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項103に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項109】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項108に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項110】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項108に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項111】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項110に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項112】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項108に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項113】
請求項103に記載の変異DNA分子のコード領域と同じ核酸配列を持つcDNA分子。
【請求項114】
調節可能または構成的のいずれかである異種プロモーターに作動可能に結合した請求項113に記載の単離cDNAを含む核酸分子。
【請求項115】
該調節可能なプロモーターが、特異的な環境条件または発生条件の下に誘導される請求項114に記載の核酸分子。
【請求項116】
該核酸が、ラット、マウスまたはヒトにおける味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項117】
ベクターが、哺乳動物ベクター、細菌プラスミド、細菌ファージミド、哺乳動物ウイルス及びレトロウイルス、バクテリオファージベクター、並びに宿主細胞ゲノムに組み込むことができる線状または環状DNAから選択される、請求項1に記載の単離核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項118】
該宿主細胞が、該宿主細胞の表面にコードされたGタンパク共役受容体を発現する請求項117の発現ベクターの少なくとも一つを移入された宿主細胞。
【請求項119】
請求項1に記載の単離核酸分子の少なくとも一つの約20から30ヌクレオチドを少なくとも含み、少なくとも一つの核酸分子が、固相支持体に共有的にまたは非共有的に結合している、核酸アレイ。
【請求項120】
(i) 請求項118に記載の宿主細胞を、推定味覚作用化合物と接触させ、
(ii) 細胞表面に発現したGタンパク共役受容体ポリペプチドの活性を測定する、
ことを含む味覚シグナリングに作用する化合物をスクリーニングする方法。
【請求項121】
該Gタンパク共役受容体ポリペプチド作用が、細胞内Ca2+レベル,cAMP,cGMP及びIP3,或いはGTPγSのGタンパク結合の変化を測定する検定により測定される、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
該宿主細胞が、味覚シグナリングに関与する核酸構造をコードする少なくとも一つの付加的な遺伝子を移入されている請求項120に記載の方法。
【請求項123】
該少なくとも一つの付加的遺伝子が、味覚シグナル伝達に関与するGタンパクをコードする、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
該Gタンパクが、プロミスカスGタンパクである、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
(i) 請求項118に記載の宿主細胞と、既知味覚作用化合物及び味覚伝達調節に関係すると推定される化合物とを接触させ、
(ii) 請求項118記載の宿主細胞と、既知味覚作用物質のみを接触させ、
(iii) 宿主細胞の表面に発現した該Gタンパク共役受容体ポリペプチドのステップ(i)の活性と、宿主細胞の表面に発現した該Gタンパク共役受容体ポリペプチドのステップ(ii)の活性を比較して、味覚伝達の調節を同定する、
ことを含む味覚シグナリングを調節する化合物をスクリーニングする方法。
【請求項126】
該調節化合物が、活性化物質、阻害物質、促進物質、増強物質、アゴニスト及びアンタゴニストからなる群から選択される、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
該Gタンパク共役受容体ポリペプチド作用が、細胞内Ca2+レベル,cAMP,cGMP及びIP3,或いはGTPγSのGタンパク結合の変化を測定する検定により測定される、請求項125に記載の方法。
【請求項128】
該宿主細胞が、味覚シグナリングに関与する核酸構造をコードする少なくとも一つの付加的な遺伝子を移入されている、請求項125に記載の方法。
【請求項129】
該少なくとも一つの付加的遺伝子が、味覚シグナル伝達に関与するGタンパクをコードする、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
該Gタンパクが、プロミスカスGタンパクである、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
細胞中におけるGタンパク共役受容体ポリペプチド遺伝子の発現を検出方法であって、
(i) 該細胞を、厳密な条件下で請求項1に記載の単離核酸分子とハイブリッド形成する核酸分子と接触させ、
(ii) 該Gタンパク共役受容体ポリペプチド遺伝子の発現を検出するために、ハイブリッド形成を検出する、
ことを含む、上記検出方法。
【請求項132】
SEQ ID NO 1のヌクレオチド配列を持つ、味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸配列。
【請求項133】
SEQ ID NO 2のヌクレオチド配列を持つ、味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸配列。
【請求項134】
SEQ ID NO 9のヌクレオチド配列を持つ、味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸配列。
【請求項135】
SEQ ID NO 11のヌクレオチド配列を持つ、味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸配列。
【請求項136】
SEQ ID NO 3のヌクレオチド配列を持つ単離核酸分子。
【請求項137】
SEQ ID NO 13のヌクレオチド配列を持つ単離核酸分子。
【請求項138】
SEQ ID NO 15のヌクレオチド配列を持つ単離核酸分子。
【請求項139】
SEQ ID NO 16のヌクレオチド配列を持つ単離核酸分子。
【請求項140】
SEQ ID NO 4のアミノ酸配列をコードする単離核酸分子。
【請求項141】
SEQ ID NO 10のアミノ酸配列を持つ味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸分子。
【請求項142】
SEQ ID NO 12のアミノ酸配列を持つ味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸分子。
【請求項143】
SEQ ID NO 14のアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする単離核酸分子。
【請求項144】
SEQ ID NO 17のアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする単離核酸分子。
【請求項145】
SEQ ID NO 18の共通酸配列、またはSEQ ID NO 18の配列に少なくとも75%相同性を持つ共通配列を含む味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸分子。
【請求項146】
SEQ ID NO 19の共通酸配列、またはSEQ ID NO 19 の配列に少なくとも75%相同性を持つ共通配列を含む味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸分子。
【請求項147】
SEQ ID NO 5または6の配列を持つか、或いはSEQ ID NO 18または19の共通配列をコードする核酸配列から本質的になる、少なくとも一つの縮重プライマーでPCR反応により増幅されたゲノムDNAであって、
味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸分子を含む、該増幅されたDNA。
【請求項148】
味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする単離核酸分子のコード配列を含むゲノム配列を単離する方法であって、
哺乳動物ゲノムを、SEQ ID NO 5または6の核酸配列を持つか、或いはSEQ ID NO 18または19の共通配列をコードする核酸配列から本質的になる、少なくとも一つの縮重プライマーと接触させ、
ポリメラーゼ、遊離ヌクレオチド及び補因子の存在下で、該プライマー配列を含む該ゲノム配列を増幅する、
ことを含む、上記方法。
【請求項149】
味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドに対するコード配列について哺乳動物ゲノムをスクリーニングする方法であって、
(i) 該哺乳動物ゲノムを、SEQ ID NO 5または6の核酸配列を持つか、或いはSEQ ID NO 18または19の共通配列をコードする核酸配列から本質的になる、少なくとも一つの縮重プライマーと接触させ、
(ii) ポリメラーゼ、遊離ヌクレオチド及び補因子の存在下で、該少なくとも一つのプライマー配列を含む該ゲノム配列を増幅し、
(iii) Gタンパク共役受容体ポリペプチド遺伝子を含む増幅配列の存在を検出する、
ことを含む、上記方法。
【請求項150】
マウスT1R3遺伝子を含むプラスミドSAV115。
【請求項151】
ラットT1R3遺伝子を含むプラスミドSAV118。
【請求項152】
(i) SEQ ID NO 9及び11からなる群から選択される核酸配列、並びにSEQ ID NO 1及び2から本質的になるゲノム配列、を含む核酸分子によりコードされる味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチド;
(ii) SEQ ID NO 3,13,16,及び20からなる群から選択される核酸配列、並びにSEQ ID NO 15及び20からなる群から選択される核酸配列から本質的になるゲノム配列、を含む核酸分子によりコードされるGタンパク共役受容体ポリペプチド;
(iii) SEQ ID NO 10及び12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチド;
(iv) SEQ ID NO 4,14,17及び21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むGタンパク共役受容体ポリペプチド;
(v) SEQ ID NO 9及び11からなる群から選択される核酸配列と少なくとも約50%相同性を持つ核酸配列、並びにSEQ ID NO 1及び2から本質的になるゲノム配列、を含む核酸分子によりコードされる味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチド;
(vi) SEQ ID NO 3,13,16及び20からなる群から選択される核酸配列と少なくとも約50%相同性を持つ核酸配列、並びにSEQ ID NO 15及び20からなる群から選択された核酸配列から本質的になるゲノム配列、を含む核酸分子によりコードされる味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチド;
(vii) SEQ ID NO 10及び12からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約40%同一であるアミノ酸配列を含む、味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体ポリペプチド;
(viii) SEQ ID NO 4,14,17及び21からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約40%同一であるアミノ酸配列を含む、味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体ポリペプチド;
(ix) SEQ ID NO 9及び11からなる群から選択された核酸配列、並びにSEQ ID NO 1及び2から本質的になるゲノム配列、を含む核酸分子によりコードされる味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチドの変異体であって、
該ヌクレオチド配列によってコードされるGタンパク共役受容体に関係する少なくとも1つの保存置換を含んでいる、該変異タンパク。
(x) SEQ ID NO 3,13,16及び20からなる群から選択された核酸配列、並びにSEQ ID NO 15及び20からなる群から選択された核酸配列から本質的になるゲノム配列、を含む核酸分子によりコードされるGタンパク共役受容体ポリペプチド変異体であって、
該ヌクレオチド配列によってコードされるGタンパク共役受容体に関係する少なくとも1つの保存置換を含んでいる、該変異タンパク。
(xi) SEQ ID NO 10及び12からなる群から選択されたアミノ酸配列を含み、少なくとも一つの保存置換を含む、味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体ポリペプチド変異体;並びに
(xii) SEQ ID NO 4,14,17及び21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含み、少なくとも一つの保存置換を含む、味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体ポリペプチド変異体;
からなる群から選択される単離ポリペプチド。
【請求項153】
断片が、少なくとも約5から7アミノ酸を含む、請求項152に記載のポリペプチドの断片。
【請求項154】
該断片が、T1R哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞外ドメインを含む、請求項153に記載の断片。
【請求項155】
該細胞外ドメインが、味覚活性化または調節に関係する化合物と相互作用する、請求項154に記載の断片。
【請求項156】
該細胞外ドメインが、味覚シグナル伝達に関与するタンパクと相互作用する、請求項154に記載の断片。
【請求項157】
味覚シグナル伝達に関係する該タンパクが、Gタンパクサブユニットである、請求項156に記載の断片。
【請求項158】
該Gタンパクサブユニットが、プロミスカスGタンパクである、請求項157に記載の断片。
【請求項159】
請求項152に記載のポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも一部及び異種アミノ酸配列の少なくとも一部を含む、キメラポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
【請求項160】
該異種配列が、異なるGタンパク共役受容体から由来する配列である、請求項159に記載のキメラポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
【請求項161】
異種配列が、緑色蛍光タンパクから由来する配列である、請求項159に記載のキメラポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
【請求項162】
味覚シグナリングに作用またはを調節する化合物の存在について1以上の化合物をスクリーニングする方法であって、
該1以上の化合物と、請求項152に記載の1以上のポリペプチドの1以上の断片とを接触させることを含み、
該1以上の断片が、少なくとも約5から7アミノ酸の長さを有する、上記方法。
【請求項163】
味覚シグナリングに作用またはを調節するGタンパクの存在について1以上のタンパクをスクリーニングする方法であって、
該1以上のタンパクと、請求項152に記載の1以上のポリペプチドの1以上の断片とを接触させることを含み、
該1以上の断片が、少なくとも約5から7アミノ酸の長さを有する、上記方法。
【請求項164】
該1以上のポリペプチド部分が、固相支持体に共有的にまたは非共有的に結合している請求項152に記載の1以上のポリペプチドの少なくとも約5から7アミノ酸部分を含む、ポリペプチドアレイ。
【請求項165】
請求項152に記載のポリペプチドに特異的に結合する、単離抗体または単離抗体断片。
【請求項166】
SEQ ID NO 4のアミノ酸配列を持つ単離ポリペプチド。
【請求項167】
SEQ ID NO 10のアミノ酸配列を持つ単離ポリペプチド。
【請求項168】
SEQ ID NO 12のアミノ酸配列を持つ単離ポリペプチド。
【請求項169】
SEQ ID NO 14のアミノ酸配列を持つ単離ポリペプチド。
【請求項170】
SEQ ID NO 17のアミノ酸配列を持つ単離ポリペプチド。
【請求項171】
1以上の哺乳動物における1以上の味の感覚を表す方法であって、
(i) 該哺乳動物のn味覚受容体のそれぞれの定量的刺激を示す値X1〜Xnを与え、
(ii) 該値から、味覚感覚の定量的表示を作製する、
ステップを含み、
該味覚受容体の少なくとも一つは、SEQ ID NO 4,10,12,14及び17からなる群から選択された配列と少なくとも約40%同一である配列を持つ味覚受容体ポリペプチドである、上記方法。
【請求項172】
該表示が、n次元空間の点または容積を構成する請求項171に記載の方法。
【請求項173】
該表示が、グラフまたはスペクトルを構成する請求項171に記載の方法。
【請求項174】
該表示が、定量的表示のマトリックスを構成する請求項171に記載の方法。
【請求項175】
該数値を与えるステップが、複数の組換えで作製された味覚受容体と被検組成物と接触させ、該組成物及び該受容体の相互作用を測定することを含む、請求項171に記載の方法。
【請求項176】
1以上の分子または分子の組合せにより発生する哺乳動物における味覚を予測する方法であって、
(i) ある哺乳動物における既知の味覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対して、該哺乳動物のn味覚受容体のそれぞれの定量的刺激を示す値X1〜Xnを与え、
(ii) 該値から、ある哺乳動物における既知の味覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対する哺乳動物における味覚感覚の定量的表示を作製し、
(iii) ある哺乳動物における未知の味覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対して、該哺乳動物のn味覚受容体のそれぞれの定量的刺激を示す値X1〜Xnを与え、
(iv) 該値から、ある哺乳動物における未知の味覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対する哺乳動物における味覚感覚の定量的表示を作製し、
(v) 哺乳動物における未知の味覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対する哺乳動物における味覚の定量的表示を、哺乳動物における既知の味覚を生じる1以上の分子または分子の組合せに対する哺乳動物における味覚の定量的表示と比較することにより、哺乳動物における未知の味覚を生じる1以上の分子または分子の組合せにより発生する哺乳動物における味覚を予測する、
ことを含み、
該味覚受容体の少なくとも一つは、SEQ ID NO 4,10,12,14及び17からなる群から選択された配列と少なくとも約40%同一である配列を持つ味覚受容体ポリペプチドである、前記方法。
【請求項177】
SEQ ID NO 18及び19、並びにSEQ ID NO 18または19と少なくとも約75%相同性を持つ配列からなる群から選択される共通配列を含む、味覚シグナリングにおいて作用する哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードする核酸配列から本質的になる、ゲノムDNA。
【請求項178】
請求項177に記載の単離DNA分子から転写された、単離RNA分子。
【請求項179】
請求項177に記載のDNA分子に厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項180】
請求項177に記載のDNA分子に緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項181】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項177に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項182】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項177に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じる、キメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項183】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項182に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項184】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項182に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項185】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項184に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項186】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項182に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項187】
SEQ ID NO 18及び19、並びにSEQ ID NO 18または19と少なくとも約75%相同性を持つ配列からなる群から選択される共通配列を含む、味覚シグナリングにおいて作用する哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドをコードするcDNA配列。
【請求項188】
請求項187に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項189】
請求項187に記載のDNA分子に、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項190】
請求項187に記載のDNA分子に、緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項191】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項187に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項192】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項187に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項193】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項192に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項194】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項192に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項195】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項194に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項196】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項192に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項197】
調節可能または構成的のいずれかである異種プロモーターに作動可能に結合した請求項187に記載の単離cDNAを含む核酸分子。
【請求項198】
該調節可能なプロモーターが、特異的な環境条件または発生条件の下で誘導される、請求項197に記載の核酸分子。
【請求項199】
SEQ ID NO 3,13,16及び20からなる群から選択された核酸配列を含むcDNA分子。
【請求項200】
請求項199に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項201】
請求項199に記載のDNA分子に厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項202】
請求項199に記載のDNA分子に緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項203】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項199に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項204】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項199に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項205】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項204に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項206】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である請求項204に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項207】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項206に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項208】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項204に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項209】
調節可能または構成的のいずれかである異種プロモーターに作動可能に結合した請求項199に記載の単離cDNAを含む核酸分子。
【請求項210】
該調節可能なプロモーターが、特異的な環境条件または発生条件の下に誘導される、請求項209に記載の核酸分子。
【請求項211】
SEQ ID NO 3,13,16及び20からなる群から選択された配列と少なくとも約50%相同性を持つ核酸配列を含むcDNA分子。
【請求項212】
請求項211に記載の単離DNA分子から転写された単離RNA分子。
【請求項213】
請求項211に記載のDNA分子に厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項214】
請求項211に記載のDNA分子に緩和なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する単離核酸分子。
【請求項215】
長さが少なくとも20から30ヌクレオチド塩基である、請求項211に記載のゲノムDNA分子の単離断片。
【請求項216】
キメラ核酸分子または融合核酸分子が、請求項211に記載のDNA分子に含まれるコード配列の少なくとも一部及び異種コード配列の少なくとも一部を含み、該キメラ核酸分子または該融合核酸分子の転写により単一のキメラ核酸転写物を生じるキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項217】
該異種コード配列が、異なるGタンパク共役受容体をコードする配列から由来する、請求項216に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項218】
該異種コード配列が、哺乳動物Gタンパク共役受容体ポリペプチドの細胞表面上における発現を促進する配列である、請求項216に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項219】
該異種コード配列が、哺乳動物ロドプシン遺伝子由来である、請求項218に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項220】
該異種コード配列が、緑色蛍光タンパクまたはその他の検出マーカー遺伝子由来である、請求項216に記載のキメラ核酸分子または融合核酸分子。
【請求項221】
調節可能または構成的のいずれかである異種プロモーターに作動可能に結合した請求項211に記載の単離cDNAを含む核酸分子。
【請求項222】
該調節可能なプロモーターが、特異的な環境条件または発生条件の下に誘導される請求項221に記載の核酸分子。
【請求項223】
該断片が少なくともGタンパク共役受容体のN-末端断片を含む請求項153に記載の断片。
【請求項224】
該N-末端断片が、リガンド結合に関与する、請求項223に記載の断片。
【請求項225】
該断片が、少なくとも約100アミノ酸の長さを有する、請求項224に記載のポリペプチド断片。
【請求項226】
該断片が、少なくとも約600アミノ酸の長さを有する、請求項224に記載のペプチド断片。
【請求項227】
味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体に対する結合特異性を持つ味覚刺激リガンドを同定するための生化学検定であって、
(i) 1以上の請求項224に記載の断片と、1以上の推定味覚刺激リガンドまたは1以上の推定味覚刺激リガンドを含む組成物とを接触させ、
(ii) 味覚シグナリングにおいて作用する該Gタンパク共役受容体に対する結合特異性を持つ味覚刺激リガンドの結合を検出する、
ことを含む、上記検定。
【請求項228】
該結合が、放射標識既知結合リガンドの置換により検出される、請求項227に記載の検定。
【請求項229】
該既知結合リガンドが、該Gタンパク共役受容体に対する結合特異性をもつ抗体または抗体断片である、請求項228に記載の検定。
【請求項230】
SEQ ID NO 20の核酸配列を持つ単離核酸配列。
【請求項231】
少なくとも、請求項152に記載の少なくとも一のポリペプチドの細胞外ドメインと、少なくとも、異種アミノ酸配列の一部とを含むキメラポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
【請求項232】
該異種アミノ酸配列が、異なるGタンパク共役受容体由来の配列である、請求項231に記載のキメラポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
【請求項233】
該異なるGタンパク共役受容体が、T1R哺乳動物Gタンパク共役受容体であり、該異種アミノ酸配列が、該T1R哺乳動物Gタンパク共役受容体の細胞外ドメインを少なくとも含む、請求項232に記載のキメラポリペプチドまたは融合ポリペプチド。
【請求項234】
(i) 1以上の請求項224に記載の断片を、Gタンパク及びGTPγSの調製剤、並びに1以上の推定味覚刺激リガンドまたは1以上の推定味覚刺激リガンドを含む組成物と接触させ、
(ii) 該Gタンパクに対するGTPγSの結合を測定することにより、味覚シグナリングにおいて作用するGタンパク共役受容体に対する結合特異性を持つ味覚刺激リガンドの結合を検出する、
ことを含む、味覚シグナリングに作用するGタンパク共役受容体に対する結合特異性を持つ味覚刺激リガンドを同定するための生化学検定。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−225805(P2009−225805A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133371(P2009−133371)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【分割の表示】特願2002−564960(P2002−564960)の分割
【原出願日】平成14年1月3日(2002.1.3)
【出願人】(502362806)セノミックス、インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】