説明

TABテープ及びその製造方法

【課題】TABテープの位置決めを簡易かつ迅速に行うことが可能なTABテープ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性フィルム1と、絶縁性フィルム1上に所定のパターンで形成される配線2とを備えたTABテープ100において、絶縁性フィルム1には、TABテープ100の搬送方向に沿って2つの貫通穴3が形成され、2つの貫通穴3は、絶縁性フィルム1を真空吸着するための吸着板5の少なくとも1つの吸着穴6に対応させて設けられ、吸着穴6のTABテープ100の搬送方向の寸法よりも大きな距離を隔てて形成され、吸着穴6をその両側から挟むことができるように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TABテープ及びその製造方法に関し、特にTABテープの位置決めを容易に行うことが可能なTABテープ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TABテープ、特に配線のさらなるファイン化などに優れるCOF(Chip On Film)方式のTABテープは、例えば、液晶表示装置における駆動用半導体装置の実装に好適なものとして広く採用されている。
【0003】
COF(Chip On Film)方式のTABテープは、絶縁性フィルム上に、銅箔をエッチングによりパターニングして配線が形成され、配線には、その一部を被覆保護するソルダレジストが形成される。ソルダレジストの膜厚は均一であることが求められており、膜厚の均一なソルダレジストは、平坦な絶縁性フィルム上にソルダレジストを均一に塗布することにより形成できる。そのため、ソルダレジストを塗布する印刷装置(塗布装置)に吸着穴を有する吸着板を設け、絶縁性フィルムを吸着板で真空吸着することにより、絶縁性フィルムを平坦な状態にしてソルダレジストを塗布している。
【0004】
また、吸着板を用いた技術として、フィルムキャリアテープの反りを防止して配線パターンの不良を正確に検査するために、検査光を透過する透明吸着板を用いてフィルムキャリアテープを負圧で吸着して平坦な状態とし、配線パターンの不良を光学的に検査するフィルムキャリアテープの検査装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−179533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、TABテープの絶縁性フィルムには、ポリイミドテープ等からなる膜厚38μmの絶縁性フィルムが現在最も多く使用されているが、最近では、価格が安く耐屈曲性が優れているという点から、膜厚が25μm以下の薄い絶縁性フィルムが使用され始めている。
【0007】
ソルダレジスト塗布工程において、上記の吸着板を用いて絶縁性フィルムを真空吸着したときに、膜厚38μmの絶縁性フィルムであれば十分な強度を有するため、吸着板の真空吸着によって絶縁性フィルムが変形することはないが、膜厚が25μm以下の絶縁性フィルムでは、吸着板の真空吸着によって絶縁性フィルムに変形が生じ、この絶縁性フィルムの変形によってソルダレジストに厚みムラが発生することが判明した。次に、このソルダレジストに生じる厚みムラについて説明する。
【0008】
ソルダレジスト塗布工程では、図6(a)に示すように、絶縁性フィルム1上に配線2が形成されたTABテープを、搬送ラインの所定位置に設置された吸着板5上に真空吸着して平坦な状態に固定する。膜厚25μm以下の絶縁性フィルム1では、図6(a)のC−C’断面の部分断面である図6(b)に示すように、吸着板5の吸着穴6が真空吸着された絶縁性フィルム1の吸着部1aが吸引により変形して凹みが生じる。このように、吸着部1aに凹みが生じた状態でソルダレジスト10を塗布するため、塗布後に真空吸着を停止すると、絶縁性フィルム1の弾性により吸着部1aの凹みが復元されてフラットにな
るので、形成されたソルダレジスト10には、図6(c)に示すように、吸着部1aに相当する部分に、吸着部1aの凹みの厚み分だけソルダレジスト10の厚みが増して、吸着穴6と同形の円形の厚みムラ11が生じていた。図6(d)には、ソルダレジスト10が均一に塗布されて厚みムラがない理想的な状態のTABテープを示す。
【0009】
そこで、ソルダレジスト10の厚みムラ11を防止するために、図7(b)に示すように、ソルダレジスト形成領域4に位置することになる領域には吸着穴6を設けない吸着穴パターンの吸着板5を用い、図7(a)に示すように、絶縁性フィルム1上のソルダレジスト10の形成領域の直下には吸着穴6がない吸着板5で絶縁性フィルム1を真空吸着する方法が考えられる。
しかしながら、ソルダレジスト10の塗布作業の始めには吸着板5とTABテープとの正確な位置合わせを行っても、様々な原因による搬送ラインのわずかな変化によって、TABテープが所定の位置からずれ、TABテープと吸着板5との位置関係がずれてしまう。このため、ソルダレジスト形成領域の直下に吸着穴6がきてしまい、ソルダレジスト10の厚みムラ11が発生することが避けられず、TABテープの歩留まりが低下するといった問題がある。
【0010】
吸着板5はソルダレジスト印刷装置に固定されており、TABテープが吸着板5に対して位置ずれしたときに、その位置ずれ量に合わせてTABテープに追従するような自動アライメント機構が吸着板5には設けられていない。しかし、このような自動アライメント機構は高価であると共に、位置ずれを正確に認識する必要性があるためTABテープの生産性の低下や製造コストの増加を招くことになる。また、ソルダレジストを塗布する毎に、TABテープの位置を光学的に検査し、TABテープが位置ずれしているときにTABテープの位置を修正することも可能であるが、TABテープの位置検査に時間を要しTABテープの生産性が低下するなどの問題がある。
【0011】
本発明の目的は、TABテープの位置決めを簡易かつ迅速に行うことが可能な構造を有するTABテープを提供することにある。
また、本発明の目的は、TABテープの位置決めの良否を簡易かつ迅速に判別できると共に、ソルダレジストの厚みムラの少ないTABテープを製造できるTABテープの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施の態様によれば、絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルム上に所定のパターンで形成される配線とを備えたTABテープにおいて、前記絶縁性フィルムには、前記TABテープの搬送方向に沿って2つの貫通穴が形成され、前記2つの貫通穴は、前記絶縁性フィルムを真空吸着するための吸着板の少なくとも1つの吸着穴に対応させて設けられ、前記吸着穴の前記TABテープの搬送方向の寸法よりも大きな距離を隔てて形成され、前記吸着穴をその両側から挟むことができるように設けられるTABテープが提供される。
【0013】
前記TABテープにおいて、前記2つの貫通穴は、前記絶縁性フィルム上の前記配線の一部を被覆保護するソルダレジストの形成領域の外側に設けられることが好ましい。
【0014】
また、前記TABテープにおいて、前記絶縁性フィルムには、前記2つの貫通穴に加えて、前記TABテープの搬送方向に直交する方向に沿って2つの貫通穴が形成され、前記TABテープの搬送方向に直交する方向に沿って形成された前記2つの貫通穴は、前記吸着板の少なくとも1つの前記吸着穴に対応させて設けられ、前記吸着穴の前記TABテープの搬送方向に直交する方向の寸法よりも大きな距離を隔てて形成され、前記吸着穴をその両側から挟むことができるように設けられることが好ましい。
【0015】
また、前記TABテープにおいて、前記配線は、前記TABテープと前記吸着板との位置合わせに用いられる位置合わせ用配線を有することが好ましい。
【0016】
また、前記TABテープにおいて、前記貫通穴がプレス加工、レーザ加工、薬液によるエッチング加工のいずれか又はそれらの組み合わせにより形成されることが好ましい。
【0017】
また、前記TABテープにおいて、前記絶縁性フィルムの厚さが25μm以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の他の実施の態様によれば、絶縁性フィルム上に所定のパターンの配線を形成する配線形成工程と、前記絶縁性フィルムを吸着板の吸着穴で真空吸着する吸着工程と、前記吸着された絶縁性フィルム上の前記配線の一部にソルダレジストを被覆する被覆工程と、を有するTABテープの製造方法において、前記吸着工程よりも前に、前記TABテープの搬送方向に沿う2つの貫通穴であって、前記吸着板の少なくとも1つの吸着穴に対応し、かつ前記吸着穴の前記TABテープの搬送方向の寸法よりも大きな距離を隔てる前記2つの貫通穴を、前記ソルダレジストの形成領域の外側に形成し、前記吸着工程では、前記吸着板として複数の前記吸着穴が前記ソルダレジストの形成領域の外側に所定の配列で配置される吸着板を用い、前記吸着穴と前記貫通穴との連通の有無によって変化する前記絶縁性フィルムと前記吸着板との真空吸着状態に基づいて、前記絶縁性フィルムの位置決めの良否を判別するTABテープの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のTABテープによれば、TABテープの位置決めを簡易かつ迅速に行うことが可能な構造を有するTABテープを提供できる。
また、本発明のTABテープの製造方法によれば、TABテープの位置決めの良否を簡易かつ迅速に判別できると共に、ソルダレジストの厚みムラの少ないTABテープを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るTABテープを示すもので、(a)はTABテープの平面図、(b)は(a)のTABテープが吸着板上に配置された平面図、(c)は(b)の要部拡大図である。
【図2】図1のTABテープが吸着板上に配置される位置関係を説明するための斜視図である。
【図3】図1のTABテープが吸着板に対して適切な位置にあるときの状態を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)は(a)のA−A’断面図である。
【図4】図1のTABテープが吸着板に対する位置ずれが大きく適切でない位置にあるときの状態を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)は(a)のB−B’部分断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るTABテープの製造方法により、ソルダレジストが塗布されたTABテープを示す平面図である。
【図6】従来のTABテープのソルダレジストの厚みムラを説明するためのもので、(a)はTABテープの平面図、(b)は(a)のC−C’断面の一部を示す部分断面図、(c)はソルダレジストの厚みムラのある(a)のTABテープの断面図、(d)はソルダレジストの厚みムラのない理想的な状態のTABテープの断面図である。
【図7】ソルダレジスト形成領域に吸着穴がない吸着板を用いた比較例を説明するためのもので、(a)はこの吸着板上にTABテープを設置したときの平面図、(b)は(a)の吸着板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るTABテープ及びその製造方法の実施形態を説明する。
【0022】
[TABテープ]
図1(a)に本発明に係るTABテープ100の一実施形態の平面図を示す。図1(b)に図1(a)のTABテープ100を吸着板5上に配置したときの平面図を示す。図1(c)に図1(b)の要部拡大図を示す。なお、本実施形態のTABテープは、COF方式のTABテープである。また、本実施形態に係るTABテープ100は長尺のテープであるが、図1(a)、図1(b)ではその一部を示している。
図1(a)に示すように、TABテープ100には、基材としてポリイミドフィルム等からなる絶縁性フィルム1が用いられ、絶縁性フィルム1上には銅箔等を所定のパターンでパターニングして形成された配線2が設けられている。配線2には、腐食防止層として、錫めっきなどの金属めっきが施されている。さらに、図1、図2に示すように、配線2の一部を被覆保護するソルダレジストが形成される絶縁性フィルム1のソルダレジスト形成領域4の外側の領域には、TABテープ100の位置ずれを判別するための貫通穴3が絶縁性フィルム1を貫通して形成されると共に、TABテープ100と吸着板5との光学的な位置合わせに用いられる位置合わせ用配線8が形成されている。また、絶縁性フィルム1の幅方向の両端部には、TABテープ100の搬送方向に沿って等間隔にTABテープ搬送用のスプロケットホール9が形成されている。なお、図1、図2に示す吸着板5には、ソルダレジスト形成領域4に位置することになる領域には吸着穴6を設けていない。
【0023】
上記貫通穴3は、絶縁性フィルム1を真空吸着するための吸着板5に形成される複数の吸着穴6のうち、少なくとも一つの吸着穴6(図1中では6)に対応させて設けられており、当該吸着穴6をTABテープ搬送方向の近傍両側から挟むことができるように、吸着穴6のTABテープ搬送方向の寸法よりも大きな所定の距離を隔てて2つ(一対)の貫通穴3がTABテープ搬送方向に沿って並んで形成されている。2つの貫通穴3を並んで形成するのは、吸着板5に対するTABテープ100の搬送方向の順方向、逆方向の両方向への位置ずれを検知できるようにするためである。
2つの貫通穴3は、1回のソルダレジスト塗布工程でソルダレジストが塗布される領域(吸着板5内の領域)に少なくとも1箇所設けられるが、本実施形態では、図1、図2に示すように、2箇所のソルダレジスト形成領域4に対応させて2箇所に、2つの貫通穴3がそれぞれ設けられている。また、本実施形態では、貫通穴3は、吸着穴6と同形の円形に形成されているが、貫通穴3の形状は、貫通穴をプレス加工するプレス金型の価格の観点からは円形が望ましいが、貫通穴は矩形などでも良い。
【0024】
また、上記位置合わせ用配線8は、搬送方向に沿って並んで形成される2つの貫通穴3、3間の中央に設けられている。位置合わせ用配線8は、図1(c)に示すように、正方形の枠状であり、円形の吸着穴6の周囲を取り囲むことができる大きさを有している。絶縁性フィルム1には可視光等の検査光に対して半透明のものを用い(なお、通常用いられる絶縁性フィルムは可視光に対して半透明である)、位置合わせ用配線8と絶縁性フィルム1を透過して見える吸着穴6との相互の位置関係を光学系で観測することで、TABテープ100の位置ずれを検出できる。位置合わせ用配線8は、吸着穴6の周囲を取り囲む枠状であるので、TABテープ100の搬送方向に直交する方向、即ちTABテープ100の幅方向の位置ずれも検出できる。位置合わせ用配線8は、例えば、TABテープ100にソルダレジスト塗布形成を開始する前などに、TABテープ100の位置合わせを行う際に用いられる。なお、位置合わせ用配線8の形状は、枠状に限らず、例えば十字形などでもよい。
【0025】
貫通穴3は、吸着板5に対してTABテープ100が搬送方向に所定の許容量以上に位
置ずれしたことを判別するための穴であって、TABテープ搬送方向の位置ずれによって、一定位置にある吸着板5の吸着穴6(6)と貫通穴3とが少なくとの一部で重なり合って連通したときに、真空吸着エラーとして位置ずれを発見するために用いられる。すなわち、TABテープ100が搬送方向に所定の許容量以上に位置ずれすると、吸着板5上に設置された絶縁性フィルム1の貫通穴3と吸着穴6とが連通して吸着穴6が外部に開放された状態となるため、吸着板5を真空装置で真空吸引しても十分な負圧で絶縁性フィルム1を吸着できずに、真空吸着エラーとなる(なお、例えば、真空装置の吸気側の圧力(負圧)を圧力センサーなどで検知すれば容易に真空吸着エラーを認識することができる)。これにより、TABテープ100の搬送方向の位置ずれを簡単に且つ迅速に判別・検出することができる。
【0026】
2つの貫通穴3、3間の距離は、次のようにして定められる。図1(c)は、TABテープ100が所定の狙った通りの正確な位置に位置決めされた状態を示し、2つの貫通穴3、3間の中央に吸着穴6(6)が位置している。また、位置合わせ用配線8の中心と吸着穴6(6)の中心も一致している。2つの貫通穴3、3間の距離は、図1(c)における吸着穴6と貫通穴3との間の距離Dの2倍に、吸着穴6のTABテープ搬送方向の寸法、つまり吸着穴6の直径Xを加えた、2D+Xである。距離DをTABテープ搬送方向の位置ずれ量の許容量とする。こうすれば、TABテープ搬送方向の位置ずれがD以下では、貫通穴3と吸着穴6とが連通せず真空吸着エラーとならないが、Dを超えると、真空吸着エラーとしてTABテープ100の位置ずれが検出されることになる。
【0027】
また、ソルダレジストの厚さムラを防止するには、2つの貫通穴3、3間の距離は、次のようにして定められる。図1(b)は、TABテープ100が所定の正確な位置に位置決めされた状態を示し、図1(b)おけるソルダレジスト形成領域4の搬送方向の両側に最も近く位置する吸着穴6(図中、6)の絶縁性フィルム吸着部からソルダレジスト形成領域4までの距離をDとする(なお、ソルダレジスト形成領域4からその両側の吸着穴6、6までの距離が異なっている場合、例えば短い方の距離をDとする)。TABテープ100が搬送方向に距離Dの範囲で位置ずれしても、吸着穴6がソルダレジスト形成領域4の内側に配置されない。すなわち、距離Dは、TABテープ100が搬送方向に位置ずれしてもソルダレジスト形成領域4の直下に吸着穴6が位置せずに、ソルダレジストの厚さムラを防止できる位置ずれ量の上限値である。従って、上記の吸着穴6と貫通穴3との間の距離Dと、距離Dとの関係を、D≦Dを満たすように設定すれば、貫通穴3と吸着穴6との連通状態を吸着エラーとして判別することができ、ソルダレジストの厚さムラを防止できることになる。
【0028】
本実施形態のように、2つの貫通穴3,3をソルダレジスト形成領域4の外側に設けると、ソルダレジスト形成領域4に対応する領域に吸着穴6を形成しない吸着板5を用いることにより、膜厚が25μm以下の薄い絶縁性フィルムを用いたTABテープにおけるソルダレジストの厚みムラの発生を防止ないし抑制することが可能となる。
【0029】
また、搬送方向に沿って形成される2つの貫通穴3に加えて、さらに搬送方向と直交する方向、つまりTABテープの幅方向に沿って2つの貫通穴(図示せず)を、上記2つの貫通穴3と同様に形成すれば、TABテープの搬送方向への位置ずれだけでなく、搬送方向と直交する方向への位置ずれも判別することが可能となる。
【0030】
次に、上記実施形態に係るTABテープ100を製造するTABテープ100の製造方法の一実施形態について説明する。
【0031】
[貫通穴形成工程]
まず、絶縁性フィルム1としての半透明のポリイミドテープを用意する。この絶縁性フィルム1にプレス加工を行うことにより、ソルダレジスト形成領域4の外側に2つの貫通穴3を、そして絶縁性フィルム1の両側にスプロケットホール9を、それぞれ形成する。貫通穴3は、プレス加工に限らず、レーザ加工、薬液によるエッチング加工、ピナクル刃による押し切り等で形成してもよい。なお、絶縁性フィルム1の材料としては、ポリイミドに限らず、PET、PEN、PPS、PAI、LCP、アラミド等の樹脂を用いてもよい。
【0032】
[配線形成工程]
続いて、この絶縁性フィルム1上に、めっき法でクロム、ニッケル等を介して電気めっきにより銅めっき層を形成する。この銅めっき層をフォトエッチング法によりパターニングして、配線2を形成する。この配線2の形成と同時に、ソルダレジスト形成領域4の外側に位置合わせ用配線8も形成する。配線2および位置合わせ用配線8には、腐食防止層として錫めっき等の金属めっきを施すが、金属めっき以外に酸化銅または樹脂の腐食防止層でもよい。絶縁性フィルム1の膜厚は25μm以下、配線2の厚さは8μm以下とするのがよい。なお、配線2は電界銅箔ではなく、圧延銅箔でもよい。
【0033】
[吸着工程]
続いて、図2に示すように、絶縁性フィルム1のソルダレジスト形成領域4を除く領域に対して複数の吸着穴6が所定の配列で形成された吸着板5上に、ソルダレジストを塗布処理する部分の絶縁性フィルム1を搬送し、吸着板5上に絶縁性フィルム1を載置する。その後、ソルダレジスト印刷装置の真空吸引装置(図示せず)を用いて、吸着板5の吸着穴6を通じて真空吸着を行うことにより絶縁性フィルム1を吸着板5上に吸着固定する。
【0034】
ここで、絶縁性フィルム1の位置ずれの判別方法について説明する。図3(a)、図3(b)に示すように、絶縁性フィルム1が適切な位置、つまり、吸着板5の吸着穴6がソルダレジスト形成領域4の外側に配置されるように絶縁性フィルム1が位置すると、図3(c)に示すように貫通穴3と吸着穴6とは連通状態とはならないため、真空吸着を行うことにより絶縁性フィルム1は吸着板5上に吸着固定される。一方、図4(a)、図4(b)に示すように、絶縁性フィルム1が吸着板5上の適切でない位置、つまり位置ずれにより吸着板5の吸着穴6がソルダレジスト形成領域4の内側に配置されるように絶縁性フィルム1が位置すると、図4(c)に示すように、2つの貫通穴3、3うちのいずれかの貫通穴3と吸着穴6とが連通した状態となる。この状態で真空吸着を行っても、貫通穴3と連通した吸着穴6は、貫通穴3を通じて外部に開放されているため、絶縁性フィルム1は真空吸着されない。そして、真空吸引装置は吸着エラーを起こし運転が停止する。すなわち、吸着エラーの発生により、絶縁性フィルム1と吸着板5との位置関係のずれを判別することが可能となる。そして、吸着エラーを起こし位置ずれが確認された場合には、位置合わせ用配線8を用いて、位置合わせ用配線8と吸着穴6との位置関係を見て、絶縁性フィルム1を吸着板5上の正しい位置に移動させて位置合わせを行う。この位置合わせ用配線8を用いた位置合わせは、ソルダレジストの印刷作業を開始する前にも実施する。
【0035】
[被覆工程]
続いて、適切な位置に吸着固定された絶縁性フィルム1上のソルダレジスト形成領域4に、図5に示すように、スクリーン印刷によりソルダレジスト10を均一に塗布してTABテープ100を形成する。ソルダレジスト形成領域4の直下には吸着穴6が存在しないので、膜厚が25μm以下の絶縁性フィルム1上に厚みが均一なソルダレジスト10を形成できる。
【0036】
本発明の一実施形態に係るTABテープによれば、絶縁性フィルムを真空吸着するための吸着板の少なくとも1つの吸着穴に対応させて、TABテープの搬送方向に沿って2つ
の貫通穴が形成され、この2つの貫通穴は吸着穴の搬送方向の近傍両側に形成されている。この構成により、絶縁性フィルムの位置がずれて吸着固定された場合に、吸着穴と貫通穴とを連通状態にして、真空吸着エラーを故意に発生させることにより、絶縁性フィルムの位置決め状態の良否を簡易かつ迅速に判別することが可能となる。また、位置決め状態の良否を判別することが可能な構造のTABテープなので、厚さが25μm以下の絶縁性フィルムを用いても、ソルダレジストの厚みムラの少ないTABテープを容易且つ確実に得ることが可能である。
【0037】
本発明の一実施形態に係るTABテープの製造方法によれば、簡易かつ迅速に絶縁性フィルムの位置決めの良否を判別できる。しかも、絶縁性フィルムを平坦な状態に維持しつつソルダレジストを形成することができるため、厚みムラの少ないTABテープを得ることができ、TABテープの歩留まりの低下を低減することができる。
【符号の説明】
【0038】
100 TABテープ
1 絶縁性フィルム
1a 吸着部
2 配線
3 貫通穴
4 ソルダレジスト形成領域
5 吸着板
6、6、6 吸着穴
8 位置合わせ用配線
9 スプロケット孔
10 ソルダレジスト
11 厚みムラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルム上に所定のパターンで形成される配線とを備えたTABテープにおいて、
前記絶縁性フィルムには、前記TABテープの搬送方向に沿って2つの貫通穴が形成され、
前記2つの貫通穴は、前記絶縁性フィルムを真空吸着するための吸着板の少なくとも1つの吸着穴に対応させて設けられ、前記吸着穴の前記TABテープの搬送方向の寸法よりも大きな距離を隔てて形成され、前記吸着穴をその両側から挟むことができるように設けられることを特徴とするTABテープ。
【請求項2】
請求項1に記載のTABテープにおいて、前記2つの貫通穴は、前記絶縁性フィルム上の前記配線の一部を被覆保護するソルダレジストの形成領域の外側に設けられることを特徴とするTABテープ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のTABテープにおいて、前記絶縁性フィルムには、前記2つの貫通穴に加えて、前記TABテープの搬送方向に直交する方向に沿って2つの貫通穴が形成され、
前記TABテープの搬送方向に直交する方向に沿って形成された前記2つの貫通穴は、前記吸着板の少なくとも1つの前記吸着穴に対応させて設けられ、前記吸着穴の前記TABテープの搬送方向に直交する方向の寸法よりも大きな距離を隔てて形成され、前記吸着穴をその両側から挟むことができるように設けられる
ことを特徴とするTABテープ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のTABテープにおいて、前記配線は、前記TABテープと前記吸着板との位置合わせに用いられる位置合わせ用配線を有することを特徴とするTABテープ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のTABテープにおいて、前記貫通穴がプレス加工、レーザ加工、薬液によるエッチング加工のいずれか又はそれらの組み合わせにより形成されることを特徴とするTABテープ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のTABテープにおいて、前記絶縁性フィルムの厚さが25μm以下であることを特徴とするTABテープ。
【請求項7】
絶縁性フィルム上に所定のパターンの配線を形成する配線形成工程と、前記絶縁性フィルムを吸着板の吸着穴で真空吸着する吸着工程と、前記吸着された絶縁性フィルム上の前記配線の一部にソルダレジストを被覆する被覆工程と、を有するTABテープの製造方法において、
前記吸着工程よりも前に、前記TABテープの搬送方向に沿う2つの貫通穴であって、前記吸着板の少なくとも1つの吸着穴に対応し、かつ前記吸着穴の前記TABテープの搬送方向の寸法よりも大きな距離を隔てる前記2つの貫通穴を、前記ソルダレジストの形成領域の外側に形成し、
前記吸着工程では、前記吸着板として複数の前記吸着穴が前記ソルダレジストの形成領域の外側に所定の配列で配置される吸着板を用い、前記吸着穴と前記貫通穴との連通の有無によって変化する前記絶縁性フィルムと前記吸着板との真空吸着状態に基づいて、前記絶縁性フィルムの位置決めの良否を判別することを特徴とするTABテープの製造方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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