説明

TGF−β受容体遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法

本発明は、長さ30ヌクレオチド未満でありかつTGF-β受容体I型遺伝子の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖を含む、TGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)に関する。本発明はまた、前記dsRNAまたはこれをコードする核酸分子もしくはベクターを薬学的に許容される担体とともに含む薬学的組成物;前記薬学的組成物を用いて、TGF-β受容体I型遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を治療するための方法;および細胞においてTGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、およびRNA干渉を介した、TGF-β受容体遺伝子の発現の阻害、特に、TGF-β受容体I型発現の阻害におけるその使用に関する。さらに、線維性疾患/障害、炎症、および癌などの増殖性障害を治療するための前記dsRNAの使用が本発明の一部である。
【背景技術】
【0002】
トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β;AfCS ID A002271)は、40以上のメンバーを有するサイトカインTGF-βスーパーファミリーの一部である。TGF-βそれ自体には、TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3を含む少なくとも3種類のアイソフォームがある。各々はホモ二量体であるが、TGF-βアイソフォームとTGF-βスーパーファミリーの他のメンバーとの間でヘテロ二量体も形成することがある。TGF-βは、マクロファージを含む多くの細胞型によって、他の二つのポリペプチド、潜在型TGF-β結合タンパク質(LTBP)および潜在関連ペプチド(LAP)と複合体化した潜在型で分泌される。プラスミンなどの血清プロテイナーゼが、複合体からの活性型TGF-βの放出を触媒する。これは、多くの場合、潜在型TGF-β複合体が、そのリガンドであるトロンボスポンジン-1(TSP-1)を介してCD36に結合しているマクロファージ表面上で起こる。マクロファージを活性化する炎症刺激があると、プラスミンの活性化が促進されることで、活性型TGF-βの放出が増強される。マクロファージはまた、プラズマ細胞によって分泌されたIgG結合性潜在型TGF-β複合体を飲食し、次いで、活性型TGF-βを細胞外液に放出することもできる。
【0003】
I型およびII型TGF-β受容体(AfCS ID A002272/A002273)は両方ともTGF-βに対するシグナル伝達応答に関与している。両方とも、細胞質セリン-スレオニンキナーゼドメインを有するI型内在性膜タンパク質である。II型受容体はリガンドの非存在下でホモ二量体を形成し、互いに自己リン酸化することができる。II型受容体は、I型受容体とは独立してTGF-βに結合することができ、リガンド特異性の主要な決定要因である。I型受容体はリガンド無しでホモ二量体を形成することもできるが、II型受容体の非存在下では効率的にリガンドに結合しない。リガンドの存在下では、I型受容体およびII型受容体は高アビディティ受容体複合体を形成する。次いで、II型受容体はI型受容体をリン酸化して、I型受容体を活性化する。
【0004】
Smad転写因子の直接活性化に加えて(下記で詳述する)、TGF-β受容体が、Ras、RhoA、およびTGF-β活性化キナーゼ(TAK)を介してERK、JNK、およびp38 MAPキナーゼを活性化できるといういくつかの証拠がある。他の報告は、TGF-β受容体がPI3-キナーゼおよびタンパク質ホスファターゼ2Aを介してシグナル伝達できることを示唆している。TGF-β受容体が非Smadシグナル伝達経路を活性化する機構は十分に理解されていない。
【0005】
主に、TGF-β受容体は、Smadと呼ばれる潜在型細胞質転写因子を介してシグナル伝達を行う。Smadなる用語は、相同ショウジョウバエ(Drosophila)Madタンパク質(「mothers against decapentaplegic」の略)および線虫(C.elegans)Smaタンパク質(「small」の略)の名前に由来している。リガンドが結合すると、リン酸化I型TGF-β受容体は、受容体制御型Smad(R-Smad)であるSmad1、2、3、5、および8に結合し、これらをリン酸化する。R-SmadとTGF-β受容体複合体との結合は、SARAと呼ばれるFYVEドメイン含有アダプタータンパク質によって促進され、受容体がエンドソーム内部移行した後に起こりうる。R-Smadはリン酸化すると受容体複合体から解離し、ホモ三量体を形成し、共通メディエーターSmad(Co-Smad)であるSmad4に結合する。R-Smad/Smad4複合体は核に移動し、組織特異的転写コアクチベーターまたはコリプレッサーと相互作用することによって遺伝子転写を調節する。R-SmadおよびSmad4のMadホモロジー1(MH1)ドメインは5'-AGACC-3'Smad結合エレメント(SBE)に結合する。
【0006】
TGF-β受容体シグナル伝達は、抑制型Smad(I-Smad)であるSmad7によって負の調節を受ける。Smad7およびSmurf2 E3リガーゼの複合体は、TGF-β受容体との結合においてSARAと競合し、TGF-β受容体複合体のユビキチン結合および分解を促進する。Ras/ERK経路もまた核へのTGF-βシグナル伝達を弱める。ERKによるR-Smadのリン酸化は、これらの核蓄積を阻止する。
【0007】
TGF-βは、列挙するには多すぎる、広範囲の生物活性を有する。TGF-βは多くの細胞型の増殖を阻害するが、細胞の増殖および活性化を誘導することもできる。TGF-β受容体シグナル伝達を阻害すると、ラット頸動脈損傷モデルにおける狭窄の形成が阻止されうることが最近証明された(Fu et al., Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 2008, 28:665(非特許文献1))。さらに、TGF-β受容体II型の発現増大は、糖尿病性大血管障害の発症において重要な役割を果たしているように見られる(Hosomi et al., Atherosclerosis. 2002, 162:69-76(非特許文献2))。TGF-βは、一般に、線維組織の形成に結びつけられており、TGF-βとTGF-β受容体の結合を阻害することによって線維症を緩和できることが示された(Yata et al, Hepatology 2003, 35:1022-1030(非特許文献3))。
【0008】
二本鎖RNA分子(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として知られる高度に保存された調節機構において遺伝子発現を阻止することが示されている。WO99/32619(Fire et al.)(特許文献1)は、線虫においてTGF-β受容体遺伝子の発現を阻害するために、長さが少なくとも25ヌクレオチドのdsRNAの使用を開示している。
【0009】
肝臓において、通常、非実質性星状細胞によって産生されるTGF-βの主な機能は、DNA合成を阻害し、アポトーシスを誘導することによって、損傷に応答した肝細胞の再生増殖を制限することである。慢性肝炎によって引き起こされうる肝細胞癌(HCC)患者の肝臓では、高レベルのTGF-βが産生されている。TGF-βのレベルとHCC進行は良好な相関関係にある。しかしながら、TGF-β受容体IIは、TGF-β誘導性の増殖阻害に対して非感受性になるようにHCC細胞においてダウンレギュレートされている。従って、HCCにおけるTGF-β機能に関して、HCC細胞が免疫細胞攻撃を回避するのを、TGF-βが免疫系を抑制することによって助けるというのが現在の仮説である。HCC細胞は、増殖および侵入に有利な代わりのTGF-βシグナル伝達経路を使用できるのかもしれない。HCCに由来する肝臓線維症に対する前臨床試験において、TGF-β受容体I阻害剤が使用されている。
【0010】
RNAiの分野が大きく進歩し、線維症および癌などの増殖性障害の治療が進歩したにもかかわらず、TGF-β受容体遺伝子を選択的かつ効率的にサイレンシングする(silence)ことができる薬剤が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO99/32619
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Fu et al., Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 2008, 28:665
【非特許文献2】Hosomi et al., Atherosclerosis. 2002, 162:69-76
【非特許文献3】Yata et al, Hepatology 2003, 35:1022-1030
【発明の概要】
【0013】
RNAiの使用は、線維性疾患、例えば、肝線維症および肝硬変、腎線維症、脾臓線維症(fibrosis of the spleen)、膵臓および肺の嚢胞性線維症、注射線維症(injection fibrosis)、心内膜心筋線維症、肺の特発性肺線維症、縦隔線維症、骨髄線維症(myleofibrosis)、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(progressive massive fibrosis)、腎性全身性線維症、びまん性実質性肺疾患(diffuse parenchymal lung disease)、精管切除後疼痛症候群(post-vasectomy pain syndrome)、および関節リウマチを治療するための、治療上活性のある物質の開発において実行可能な道筋である。または、癌、例えば、肝癌、例えば、HCCの治療において、TGF-β受容体発現、具体的には、TGF-β受容体Iの発現の阻害剤と、本発明のdsRNA分子が用いられてもよい。
【0014】
本発明は、二本鎖リボ核酸分子(dsRNA)、ならびにそのようなdsRNAを用いて、細胞、組織、または哺乳動物において、TGF-β受容体遺伝子の発現、特に、TGF-β受容体I遺伝子の発現の発現を阻害するための組成物および方法を提供する。本発明はまた、TGF-β受容体遺伝子の発現、特に、TGF-β受容体I遺伝子の発現によって引き起こされる病理学的状態および疾患、例えば、線維症、炎症、および増殖性障害を治療するための組成物および方法を提供する。本発明の二本鎖リボ核酸分子は、TGF-β受容体I遺伝子の発現、特に、哺乳動物およびヒトのTGF-β受容体I遺伝子の発現をインビトロで少なくとも80%阻害できることを特徴とする。一つの好ましい態様において、本発明の二本鎖リボ核酸分子はセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、センス鎖に少なくとも部分的に相補的であり、センス鎖は、TGF-β受容体をコードするmRNAの少なくとも一部と少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、前記配列は、(i)前記センス鎖のうちの前記アンチセンス鎖との相補性領域に位置し、かつ(ii)長さ30ヌクレオチド未満である。
【0015】
本発明のdsRNAは、長さ30ヌクレオチド未満でありかつTGF-β受容体I型遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的な領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。これらのdsRNAを用いると、TGF-β受容体I型のmRNAの標的分解、とりわけ、哺乳動物における線維応答、炎症事象、ならびに増殖性障害、例えば、肝癌などの癌に結びつけられているTGF-β受容体I型のmRNAの標的分解が可能になる。本発明者らは、細胞をベースとするアッセイおよび動物アッセイを用いて、非常に少ない投与量のこれらのdsRNAがRNAiを特異的かつ効率的に仲介して、TGF-β受容体遺伝子の発現を大きく阻害できることを証明した。従って、これらのdsRNAを含む本発明の方法および組成物は、望ましくないTGF-β受容体I型発現が起こっている障害の治療に有用である。そのような障害は、線維障害、炎症、ならびに癌/腫瘍などの増殖性障害を含む。
【0016】
本発明に関して対応するdsRNA分子が提供され、最も好ましいdsRNA分子は下記の表1および表3に示され、とりわけかつ好ましくは、添付のSEQ ID NO/ペア:1/2、117/118、103/104、31/32、81/82、99/100、23/24、13/14、29/30および7/8に示される。本明細書において提供された特定のdsRNA分子に関して、SEQ ID NOのペアは、添付の表および記載の表にも記載したように、対応するセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列(5'-3')に関するものである。
【0017】
また、修飾dsRNA分子が本明細書において提供され、具体的には、本発明のそのような「修飾dsRNA分子」を例示した表3に開示される。これに関する好ましい分子は、とりわけ、SEQ ID NO/ペア:151/152、249/250、261/262、231/232、275/276、253/254、211/212、265/266、181/182、185/186、209/210、299/300、295/296、279/280および219/220によって表される。本発明のdsRNAのこれらの構成要素の例示的な修飾が、修飾の例として本明細書において提供される。これらのdsRNA(およびこれらの構成要素)のさらなる修飾もまた本発明の一つの態様として含まれる。対応する例を、本発明のさらに詳細な説明において示した。
【0018】
一つの態様において、本発明は、TGF-β受容体遺伝子の発現、特に、哺乳動物またはヒトのTGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。ヒトTGF-β受容体I型遺伝子のコード配列は関連データベースから入手することができる。例えば、Genebank/EMBL.NM_004612.2参照。本明細書において、TGF-β受容体I型遺伝子の参照配列としても役立つコード配列の一つを、添付のSEQ ID NO.326に示した。
【0019】
dsRNAは、互いに相補的な少なくとも二つの配列を含む。dsRNAは、第一の配列を含むセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は第二の配列を含んでもよい。添付の表1および表3には特定のdsRNAペアを示したことも参照されたい。アンチセンス鎖は、TGF-β受容体をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含んでもよく、相補性領域は、最も好ましくは、長さ30ヌクレオチド未満である。さらに、本明細書に記載の本発明のdsRNA分子の長さ(二重鎖の長さ)は約16〜30ヌクレオチドの範囲、特に、約18〜28ヌクレオチドの範囲であることが好ましい。約19、20、21、22、23、または24ヌクレオチドの二重鎖の長さが本発明に関して特に有用である。19、21または23ヌクレオチドの二重鎖配列が最も好ましい。dsRNAはTGF-β受容体発現細胞と接触すると、TGF-β受容体I遺伝子の発現をインビトロで少なくとも80%阻害する。
【0020】
インビトロ阻害を試験することができる非限定的なアッセイを添付の実施例に示した。ここでは、本発明のおよび本明細書に記載のsiRNA/dsRNAの活性を、HeLa、特に、HeLaS3細胞において試験した。これらのHeLa培養細胞は、TGFβ受容体特異的siRNAアッセイとインキュベートした細胞から単離された総mRNA中のTGFβ受容体I型mRNAを分枝DNAによって定量するために使用した。この阻害は、特に、インビトロで測定することができる。対応するアッセイは当業者によって容易に確立することができ、本明細書にも提供される。例えば、添付の実施例または本明細書において提供された表に示したように、本発明のdsRNAは、最も好ましくは、30nMの濃度で、ヒトTGF-β受容体I型の発現をインビトロで少なくとも約80%阻害する。本発明の特定のdsRNA分子は、さらに低い濃度(例えば、300pM)で、TGF-β受容体I型の発現をインビトロで少なくとも約80%まで阻害する。再度、対応する例を表1および表2に示す。これらの表では、評価された細胞における残存RNAの量によって阻害が示されている。
【0021】
一つの態様において、センス鎖は、TGF-β受容体I型をコードするmRNAの少なくとも一部と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。前記配列は、センス鎖のうちのアンチセンス鎖との相補性領域に、好ましくは、アンチセンス鎖の5'末端のヌクレオチド2〜7の中に位置する。一つの好ましい態様において、dsRNAは、特に、ヒトTGF-β受容体I型遺伝子を標的とし、さらに別の態様において、dsRNAは、マウス(Mus musculus)およびラット(Rattus norvegicus)TGF-β受容体I型遺伝を標的とする。
【0022】
一つの態様において、本発明のdsRNA分子はセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、両鎖の半減期は少なくとも5時間である。一つの好ましい態様において、本発明のdsRNA分子はセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ヒト血清中での両鎖の半減期は少なくとも5時間である。
【0023】
別の態様において、本発明のdsRNA分子は非免疫賦活性であり、例えば、インビトロでINF-αおよびTNF-αを刺激しない。
【0024】
本発明のdsRNA分子は、天然ヌクレオチドで構成されてもよく、または2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、5'-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチドなどの少なくとも一つの修飾ヌクレオチドで構成されてもよい。2'修飾ヌクレオチドには、本発明のdsRNA分子がインビボで、例えば、医療の場で用いられた時に、ある特定の免疫賦活因子またはサイトカインが抑制されるという、さらなる利点がありうる。またはおよび非限定的に、修飾ヌクレオチドは以下の群より選択されてもよい:2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド(locked nucleotide)、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ修飾ヌクレオチド、2'-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミダート、および非天然塩基を含むヌクレオチド。一つの好ましい態様において、dsRNA分子は、以下の修飾ヌクレオチドの少なくとも一つを含む:2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、5'-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびデオキシチミジン。別の好ましい態様において、センス鎖の全てのピリミジンは2'-O-メチル修飾ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖の全てのピリミジンは2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾ヌクレオチドである。一つの好ましい態様において、二つのデオキシチミジンヌクレオチドの一つは、dsRNA分子の両鎖の3'に見出される。別の態様において、dsRNA分子の両鎖の3'末端にある、これらのデオキシチミジンヌクレオチドの少なくとも一つは、5'-ホスホロチオエート基を含む。別の態様において、センス鎖においてシトシンの後にアデニンが続く時は全て、ウラシルの後にアデニン、グアニン、またはウラシル時は全て2'-O-メチル修飾ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖においてシトシンおよびウラシルの後にアデニンが続く時は全て2'-O-メチル修飾ヌクレオチドである。添付の表3において、例示的な修飾二本鎖RNA分子を示した。
【0025】
本発明のdsRNAは、一つまたは複数の一本鎖ヌクレオチド突出部をさらに含んでもよい。これも前記のように、これらの突出部は、特に、それぞれの個々の鎖の3'末端にある場合があり、5つのさらなるヌクレオチドのうち1つ、2つ、3つ、4つを含んでもよい。添付の実施例にも例示したように、特に関心があるものは、さらなるヌクレオチドの無い突出部であるか、1つまたは2つのさらなるヌクレオチドを有する突出部である。一部の態様において、さらなるヌクレオチドは各鎖の3'末端に「T」、好ましくは2つの「T」、すなわち、「TT」を有する突出部である。
【0026】
本発明のdsRNA分子は、表1または表3のセンス配列からなる群より選択されるdsRNAの第一の配列および表1または表3のアンチセンス配列からなる群より選択される第二の配列からなってもよい。これらの2つの配列の好ましいペアを表の1つの線/ランクの中に示した。
【0027】
好ましくは、dsRNAは2つのオリゴヌクレオチドを含む。一方のオリゴヌクレオチド(センス)を表1に記載し、他方のオリゴヌクレオチド(アンチセンス)を表1に記載した。または、一方の修飾オリゴヌクレオチド(センス)を表3に記載し、他方のオリゴヌクレオチド(アンチセンス)も表3に記載した。両表とも、個々の各ランクの中に、特に有用なセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を示しており、両方とも5'-3'方向で示される。個々の各ランクの中にある、これらの配列は、本発明の個々のdsRNAにおいて用いられる好ましい配列である。
【0028】
従って、本発明のdsRNAの第一の配列は、表1(または3)のセンス配列からなる群より選択されてもよく、第二の配列は、表1(または3)のアンチセンス配列からなる群より選択されてもよい。ここで、表3は、例示的な2'-O-メチル修飾配列を示す。
【0029】
本発明はまた、本発明のdsRNAの少なくとも一つを含む細胞を提供する。細胞は、好ましくは、ヒト細胞などの哺乳動物細胞である。さらに、本明細書において定義されたdsRNA分子を含む組織および/または非ヒト生物も本発明に含まれ、この非ヒト生物は、研究目的にまたは研究ツールとして、例えば、薬物試験においても特に有用である。
【0030】
本発明はまた、本発明のdsRNAを含む薬学的組成物に関する。これらの薬学的組成物は、細胞、組織、または生物におけるTGF-β受容体I型遺伝子の発現の阻害において特に有用である。本発明のdsRNAの一つまたは複数を含む薬学的組成物はまた、(a)薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤を含んでもよい。従って、本発明のある特定の局面は、本発明のdsRNAを含み、任意で薬学的に許容される担体も含む薬学的組成物、TGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するために前記組成物を使用する方法、およびTGF-β受容体遺伝子の発現、特に、TGF-β受容体I型遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を治療するために前記薬学的組成物を使用する方法を提供する。
【0031】
さらに、本発明は、細胞、組織、または生物において、TGF-β受容体遺伝子の発現、特に、哺乳動物またはヒトのTGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するための方法であって、以下の工程:
(a)本明細書において定義された二本鎖リボ核酸(dsRNA)を、細胞、組織、または生物に導入する工程;
(b)工程(a)で生成した細胞、組織、または生物を、TGF-β受容体I遺伝子のmRNA転写物を分解するのに十分な時間維持し、それにより、所定の細胞におけるTGF-β受容体I遺伝子の発現を阻害する工程
を含む。
【0032】
別の態様において、本発明は、線維性障害/疾患、炎症障害、または増殖性障害を治療、予防、または管理する方法であって、そのような治療、予防、または管理を必要としている対象に、治療的または予防的有効量の本発明のdsRNAの一つまたは複数を投与する工程を含む方法を提供する。好ましくは、前記対象は、哺乳動物、最も好ましくは、ヒト患者である。
【0033】
本発明はまた、本明細書において定義された二本鎖リボ核酸分子に含まれるセンス鎖および/またはアンチセンス鎖をコードする核酸配列を提供する。別の態様において、本発明は、本発明のdsRNAの1つの少なくとも一本の鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む、細胞においてTGF-β受容体遺伝子の発現、特にTGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するためのベクターを提供する。本発明のそのような核酸分子またはベクターは、細胞、組織、または非ヒト生物に含まれてもよい。そのような非ヒト生物は、トランスジェニック非ヒト動物でもよい。本発明の細胞、組織、ならびに非ヒトトランスジェニックは研究ツールとして有用でありうる。だが、細胞および組織は、医療介入において、および薬としても用いられうる。
【0034】
別の態様において、本発明は、細胞においてTGF-β受容体遺伝子の発現、特に、TGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するためのベクターを含む細胞を提供する。前記ベクターは、本発明のdsRNAの1つの少なくとも一本の鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む。だが、前記ベクターは、前記調節配列に加えて、本発明のdsRNAの少なくとも一つの「センス鎖」および前記dsRNAの少なくとも一つの「アンチセンス鎖」をコードする配列を含むことが好ましい。特許請求の範囲に記載した細胞は、前記調節配列に加えて、本発明のdsRNAの1つの少なくとも一本の鎖をコードする本明細書において定義された配列を含む、2種類またはそれ以上のベクターを含むことも予想される。
【0035】
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、ならびにdsRNAを用いて、細胞または哺乳動物におけるTGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法を提供する。本発明はまた、dsRNAを用いて、哺乳動物において、TGF-β受容体I遺伝子の発現によって引き起こされる病理学的状態および疾患を治療するための組成物および方法を提供する。dsRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られるプロセスを介してmRNAの配列特異的分解を誘導する。このプロセスは、哺乳動物および他の脊椎動物を含む多種多様な生物において起こる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
添付の表の説明
【0037】
【図1−1】表1-ヒトTGF-β受容体I遺伝子を標的とするdsRNA。縦列「mRNA中の位置」にある最初の数字は23mer配列の開始に対応する。灰色または太字で記した縦列の中の数字は、ホットスポット(灰色=ホットスポット1;太字=ホットスポット2)を示す。二重鎖の長さは、全ての配列について19ヌクレオチドである。
【図1−2】表1-ヒトTGF-β受容体I遺伝子を標的とするdsRNA。縦列「mRNA中の位置」にある最初の数字は23mer配列の開始に対応する。灰色または太字で記した縦列の中の数字は、ホットスポット(灰色=ホットスポット1;太字=ホットスポット2)を示す。二重鎖の長さは、全ての配列について19ヌクレオチドである。
【図1−3】表1-ヒトTGF-β受容体I遺伝子を標的とするdsRNA。縦列「mRNA中の位置」にある最初の数字は23mer配列の開始に対応する。灰色または太字で記した縦列の中の数字は、ホットスポット(灰色=ホットスポット1;太字=ホットスポット2)を示す。二重鎖の長さは、全ての配列について19ヌクレオチドである。
【図1−4】表1-ヒトTGF-β受容体I遺伝子を標的とするdsRNA。縦列「mRNA中の位置」にある最初の数字は23mer配列の開始に対応する。灰色または太字で記した縦列の中の数字は、ホットスポット(灰色=ホットスポット1;太字=ホットスポット2)を示す。二重鎖の長さは、全ての配列について19ヌクレオチドである。
【図1−5】表1-ヒトTGF-β受容体I遺伝子を標的とするdsRNA。縦列「mRNA中の位置」にある最初の数字は23mer配列の開始に対応する。灰色または太字で記した縦列の中の数字は、ホットスポット(灰色=ホットスポット1;太字=ホットスポット2)を示す。二重鎖の長さは、全ての配列について19ヌクレオチドである。
【図2−1】表2-ヒトTGF-β受容体Iを標的とするdsRNAの特徴付け:HeLaS3細胞における単一用量についての活性試験および用量反応、特異性、安定性、ならびにサイトカイン誘導。IC50:50%阻害濃度。t1/2:実施例において定義された鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核球。
【図2−2】表2-ヒトTGF-β受容体Iを標的とするdsRNAの特徴付け:HeLaS3細胞における単一用量についての活性試験および用量反応、特異性、安定性、ならびにサイトカイン誘導。IC50:50%阻害濃度。t1/2:実施例において定義された鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核球。
【図2−3】表2-ヒトTGF-β受容体Iを標的とするdsRNAの特徴付け:HeLaS3細胞における単一用量についての活性試験および用量反応、特異性、安定性、ならびにサイトカイン誘導。IC50:50%阻害濃度。t1/2:実施例において定義された鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核球。
【図2−4】表2-ヒトTGF-β受容体Iを標的とするdsRNAの特徴付け:HeLaS3細胞における単一用量についての活性試験および用量反応、特異性、安定性、ならびにサイトカイン誘導。IC50:50%阻害濃度。t1/2:実施例において定義された鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核球。
【図3−1】表3-ヌクレオチド修飾を含むヒトTGF-β受容体I遺伝子を標的とするdsRNA。灰色または太字で記した縦列「mRNA中の位置」にある数字は、ホットスポット(灰色=ホットスポット1;太字=ホットスポット2)を示す。大文字はRNAヌクレオチドを表し、小文字「c」、「g」、「a」および「u」は2'O-メチル修飾ヌクレオチドを表し、「s」はホスホロチオエートを表す。
【図3−2】表3-ヌクレオチド修飾を含むヒトTGF-β受容体I遺伝子を標的とするdsRNA。灰色または太字で記した縦列「mRNA中の位置」にある数字は、ホットスポット(灰色=ホットスポット1;太字=ホットスポット2)を示す。大文字はRNAヌクレオチドを表し、小文字「c」、「g」、「a」および「u」は2'O-メチル修飾ヌクレオチドを表し、「s」はホスホロチオエートを表す。
【図3−3】表3-ヌクレオチド修飾を含むヒトTGF-β受容体I遺伝子を標的とするdsRNA。灰色または太字で記した縦列「mRNA中の位置」にある数字は、ホットスポット(灰色=ホットスポット1;太字=ホットスポット2)を示す。大文字はRNAヌクレオチドを表し、小文字「c」、「g」、「a」および「u」は2'O-メチル修飾ヌクレオチドを表し、「s」はホスホロチオエートを表す。
【図4−1】表4-ヌクレオチド修飾を含むヒトTGF-β受容体Iを標的とするdsRNAの特徴付け:HeLaS3細胞における単一用量についての活性試験および用量反応、特異性、安定性、ならびにサイトカイン誘導。IC50:50%阻害濃度。t1/2:実施例において定義された鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核球。
【図4−2】表4-ヌクレオチド修飾を含むヒトTGF-β受容体Iを標的とするdsRNAの特徴付け:HeLaS3細胞における単一用量についての活性試験および用量反応、特異性、安定性、ならびにサイトカイン誘導。IC50:50%阻害濃度。t1/2:実施例において定義された鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核球。
【図4−3】表4-ヌクレオチド修飾を含むヒトTGF-β受容体Iを標的とするdsRNAの特徴付け:HeLaS3細胞における単一用量についての活性試験および用量反応、特異性、安定性、ならびにサイトカイン誘導。IC50:50%阻害濃度。t1/2:実施例において定義された鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核球。
【図4−4】表4-ヌクレオチド修飾を含むヒトTGF-β受容体Iを標的とするdsRNAの特徴付け:HeLaS3細胞における単一用量についての活性試験および用量反応、特異性、安定性、ならびにサイトカイン誘導。IC50:50%阻害濃度。t1/2:実施例において定義された鎖の半減期。PBMC:ヒト末梢血単核球。
【図5】表5-ヒトTGF-β受容体Iを確かめるためのbDNAプローブの配列。LE=ラベルエクステンダー(label extender)、CE=キャプチャーエクステンダー(capture extender)、BL=ブロッキングプローブ。
【図6】表6-ヒトGAPDHを確かめるためのbDNAプローブの配列。LE=ラベルエクステンダー、CE=キャプチャーエクステンダー、BL=ブロッキングプローブ。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の選択されたdsRNA分子を表1および表3に示した。表1は、TGFβ受容体(I型)遺伝子(Genebank/EMBL.NM_004612.2によっても表される)の中の標的部位ならびに関連するdsRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖を定義する。さらに、ある特定の特に好ましいdsRNA(センス配列およびアンチセンス配列を示した)については、生物学的および臨床的に関連する有利なパラメーターを示した。添付の表2および表4を参照されたい。
【0039】
表1はまた、本発明によるdsRNAとして用いられる好ましい分子にも関する。特に好ましいものは、列I(ランク1〜10)および列II(ランク11〜31)に示した、特定されたdsRNA分子である。しかしながら、列III(ランク32〜58)および列IV(ランク59〜75)にも、本発明による有用なdsRNA分子が含まれる。前記から明らかなように、好ましい部分的なdsRNA分子を、SEQ ID NO:1/2、117/118、103/104、31/32、81/82、99/100、23/24、13/14、29/30、および/または7/8によって定義されるセンスおよびアンチセンスペアに示した。表2は、表1に示した本発明の特定のdsRNA分子のある特定の生物学的および臨床的な特徴を示す。
【0040】
本発明に関して、驚いたことに、特に好ましいdsRNAは、TGF-β受容体I型遺伝子の対応するmRNAの特定の領域にある(ヒト)TGF-β受容体I型遺伝子クラスターの発現の阻害において有用なことが見出された。添付のSEQ ID NO.326に示された(Genebank/EMBL NM_004612.2にも示された)ヒトTGF-β受容体I型遺伝子に関して、前記クラスターは、ヒトTGF-β受容体I型遺伝子を表す添付のSEQ ID NO.326のヌクレオチド250〜350および1500〜1600、より好ましくはヌクレオチド220〜320および1520〜1580の領域に含まれ、より好ましくは、添付のSEQ ID NO.326のヌクレオチド298〜332および1522〜1569の領域に含まれる。
【0041】
表3および表4はまた、本発明に関して有用な、さらなるsiRNA分子/dsRNAを示す。表4は、表3に示した本発明の修飾siRNA分子/dsRNA分子の生物学的および/または臨床的に関連する、ある特定の驚くべき特徴を示す。特に有用な修飾分子は、列I(ランク1〜15)および列II(ランク16〜42)に示した配列(センス鎖およびアンチセンス鎖)を含む。また、列III(ランク43〜75)に定義されたdsRNA/siRNAは、TGFβ受容体I型遺伝子発現の阻害が実現する限り、本発明に関して使用することができる有用なdsRNA分子を含む。前記阻害はインビトロで測定され、少なくとも約80%の阻害である。修飾dsRNA/siRNAに関して好ましいものは、SEQ ID NO:151/152、249/250、261/262、231/232、275/276、253/254、211/212、265/266、181/182、185/186、209/210、299/300、295/296、279/280、および/または219/220に示した配列である。
【0042】
定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられる特定の用語および語句の意味を以下に示す。本明細書の他の部分における用語の用法とこの項に提供するその定義との間に明らかな矛盾がある場合、この項の定義が優先される。
【0043】
「G」、「C」、「A」、「U」、「T」、または「dT」はそれぞれ一般に、塩基としてグアニン、シトシン、アデニン、ウラシル、およびデオキシチミジンをそれぞれ含むヌクレオチドを表す。しかしながら、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」なる用語は、以下にさらに詳細に示すとおり、修飾ヌクレオチド、または代わりの置換部分も意味しうる。そのような置換部分を含む配列は本発明の態様である。下記で詳述するように、本明細書に記載のdsRNA分子はまた、「突出部」、すなわち、「センス鎖」および「アンチセンス鎖」からなる本明細書において定義されたペアによって通常形成されるRNA二重鎖構造に直接関与しない、対になっていない突出しているヌクレオチドも含んでよい。多くの場合、そのような突出配列はデオキシチミジンヌクレオチドを含み、ほとんどの態様において、3'末端に2個のデオキシチミジンを含む。そのような突出部は下記で説明および例示される。
【0044】
本明細書において用いられる「TGF-β受容体」または「トランスフォーミング増殖因子β受容体」は、特に、TGF-β受容体I型(TGF-β受容体I、アクチビンA受容体II型様キナーゼ)に関し、この用語は、対応する遺伝子、コードされるmRNA、コードされるタンパク質/ポリペプチド、ならびにこの機能断片に関する。本明細書において提供される断片は、とりわけ、本明細書において定義されたdsRNA分子が対象とする、標的配列内のクラスターからなる本明細書において定義された「ホットスポット」に関する。そのような断片は、とりわけ、添付のSEQ ID NO.326のヌクレオチド250〜350および1500〜1600である。「TGF-β受容体I型遺伝子/配列」なる用語は、野生型配列に関するだけでなく、この遺伝子/配列に含まれうる変異および変化にも関する。従って、本発明は、本明細書において提供された特定のdsRNA分子に限定されるわけではない。本発明はまた、そのような変異/変化を含むTGF-βI型受容体遺伝子のRNA転写物の対応するヌクレオチド配列と少なくとも85%相補的なアンチセンス鎖を含むdsRNA分子に関する。
【0045】
本明細書において用いられる「標的配列」とは、一次転写生成物のRNA処理生成物であるmRNAを含む、TGF-β受容体I型遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の連続部分を意味する。
【0046】
本明細書において用いられる「配列を含む鎖」なる用語は、標準のヌクレオチド命名法を用いて言及される配列によって記載される、ヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを意味する。しかしながら、本明細書において詳述するように、そのような「配列を含む鎖」はまた修飾ヌクレオチドのような修飾を含んでもよい。
【0047】
本明細書において用いられ、特に記載がないかぎり、「相補的」なる用語は、第一のヌクレオチド配列と第二のヌクレオチド配列が関係していることを記載するために用いる場合、第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと、特定の条件下でハイブリダイズして二重鎖構造を形成する能力を意味する。本明細書において用いられる「相補的」配列は、それらがハイブリダイズする能力に関する前述の条件が満たされているかぎり、非ワトソン-クリック塩基対ならびに/または非天然ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドから形成される塩基対を含んでいてもよく、または全てそれらから形成されていてもよい。
【0048】
「完全に相補的」と呼ばれる配列は、第一のヌクレオチド配列および第二のヌクレオチド配列の全長にわたる、第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの塩基対を含む。
【0049】
しかしながら、本明細書において、第一の配列が、第二の配列に対して「実質的に相補的」であると言及される場合、2つの配列は完全に相補的でもよく、ハイブリダイゼーションの際に、一つまたは複数のミスマッチ塩基対を形成してもよいが、好ましくは、13個を超えるミスマッチ塩基対を形成しない。
【0050】
本明細書における「相補的」、「完全に相補的」および「実質的に相補的」なる用語は、それらの使用の文脈から理解されるとおり、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との間、またはdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列との間で塩基が一致していることに関して用いられることがある。
【0051】
本明細書において用いられる「二本鎖RNA」、「dsRNA分子」、または「dsRNA」なる用語は、2つの逆平行で実質的に相補的な核酸鎖を含む二重鎖構造を有する、リボ核酸分子またはリボ核酸分子の複合体を意味する。二重鎖構造を形成する2本の鎖は、さらに大きな1つのRNA分子の異なる部分でもよく、別々のRNA分子でもよい。2本の鎖が、さらに大きな1つの分子の一部である場合、従って、二重鎖構造を形成している一方の鎖の3'末端と他方の鎖の5'末端との間にあるヌクレオチドの非分断鎖によって連結されている場合、連結しているRNA鎖は「ヘアピンループ」と呼ばれる。2本の鎖が、二重鎖構造を形成している一方の鎖の3'末端と他方の鎖の5'末端との間にあるヌクレオチドの非分断鎖以外の手段で共有結合している場合、連結している構造は「リンカー」と呼ばれる。RNA鎖は同じまたは異なる数のヌクレオチドを有していてもよい。二重鎖構造に加えて、dsRNAは1つまたは複数のヌクレオチド突出部を含んでいてもよい。前記「突出部」におけるヌクレオチドは、0〜5個のヌクレオチドを含んでもよい。ここで、「0」は、「突出部」を形成するさらなるヌクレオチドが無いことを意味するのに対して、「5」は、dsRNA二重鎖の個々の鎖に5つのさらなるヌクレオチドがあることを意味する。これらの任意の「突出部」は個々の鎖の3'末端に位置する。下記で詳述するように、2つの鎖の1つにのみ「突出部」を含むdsRNA分子もまた本発明に関して有用であり、有利でさえありうる。「突出部」は、好ましくは、0〜2つのヌクレオチドを含む。最も好ましくは、dsRNAの両鎖の3'末端に2つの「dT」(デオキシチミジン)ヌクレオチドが見出される。また、dsRNAの両鎖の3'末端に突出部として2つの「U」(ウラシル)ヌクレオチドを使用することができる。従って、「ヌクレオチド突出部」は、dsRNAの一方の鎖の3'末端が他方の鎖の5'末端を越えて延びている時に、dsRNAの二重鎖構造から突出している対になっていないヌクレオチドを意味し、逆もまた同じである。例えば、アンチセンス鎖は23のヌクレオチドを含み、センス鎖は21のヌクレオチドを含んでいると、アンチセンス鎖の3'末端に2ヌクレオチド突出部が形成される。好ましくは、2ヌクレオチド突出部は標的遺伝子のmRNAに完全に相補的である。「平滑」または「平滑末端」は、dsRNAの末端に、対になっていないヌクレオチドが無いこと、すなわち、ヌクレオチド突出部が無いことを意味する。「平滑末端」dsRNAは、完全長にわたって二本鎖である、分子の両端ともヌクレオチド突出部が無いdsRNAである。
【0052】
「アンチセンス鎖」なる用語は、標的配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を意味する。本明細書において用いられる「相補性領域」なる用語は、配列、例えば、標的配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖上の領域を意味する。相補性領域が標的配列に完全に相補的でない場合、ミスマッチは、アンチセンス鎖の5'末端のヌクレオチド2〜7の外側で最も許容される。
【0053】
本明細書において用いられる「センス鎖」なる用語は、アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を意味する。「実質的に相補的」とは、好ましくは、センス鎖およびアンチセンス鎖にある重複ヌクレオチドの少なくとも85%が相補的であることを意味する。
【0054】
dsRNAに言及する場合の「細胞に導入する」とは、当業者には理解されるとおり、細胞への取り込みまたは吸収を促進することを意味する。dsRNAの吸収または取り込みは、補助を受けない拡散もしくは能動的な細胞プロセスを通して、または補助物質もしくは装置によって起こりうる。この単語の意味はインビトロでの細胞に限定されるものではなく;細胞が生物の一部である場合にもdsRNAは「細胞に導入」されうる。そのような場合、細胞への導入は生物への送達も含むことになる。例えば、インビボでの送達のために、dsRNAを組織部位に注射することもでき、または全身投与することもできる。例えば、本発明のdsRNA分子は、医療介入を必要とする対象に投与されることが予想される。そのような投与は、前記対象の罹患側への、例えば、肝臓組織/細胞または肝癌組織などの癌性組織/細胞への、本発明のdsRNA、ベクター、または細胞の注射を含んでもよい。しかしながら、罹患組織の近くへの注射も予想される。インビトロでの細胞への導入には、電気穿孔法およびリポフェクションなどの当技術分野において公知の方法が含まれる。
【0055】
「サイレンシングする」、「発現を阻害する」、および「ノックダウン」なる用語は、それらがTGF-β受容体I型遺伝子を指しているかぎり、本明細書において、TGF-β受容体I型遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を意味する。TGF-β受容体I型遺伝子の抑制は、TGF-β受容体I型遺伝子が転写され、TGF-β受容体I型遺伝子の発現が阻害されるように処理された第一の細胞または細胞群から単離されうる、TGF-β受容体I型遺伝子から転写されたmRNAの量が、第一の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、そのように処理されていない第二の細胞または細胞群(対照細胞)と比較して減少していることによって明らかにされる。阻害の程度は、通常、

によって表される。
【0056】
または、阻害の程度は、TGF-β受容体I型遺伝子の転写に機能的に関連するパラメーターの減少、例えば、細胞により分泌された、TGF-β受容体I型遺伝子によりコードされるタンパク質の量、またはある特定の表現型を示す細胞の数の減少で示されてもよい。
【0057】
本明細書において提供された添付の実施例および添付の表に例示したように、本発明のdsRNA分子は、ヒトTGF-β受容体I型遺伝子の発現を、インビトロアッセイ、すなわち、インビトロで少なくとも約70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%阻害することができる。本明細書において用いられる「インビトロ」なる用語は細胞培養アッセイを含むが、それらに限定されるわけではない。別の態様において、本発明のdsRNA分子は、マウスまたはラットのTGF-β受容体I型遺伝子の発現を少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも90%阻害することができる。当業者であれば、そのような阻害率および関連する作用を、特に、本明細書において提供されたアッセイを考慮して容易に決定することができる。本明細書において記述したように、最も好ましい本発明のdsRNAは、単一用量濃度約30nMの前記dsRNA/siRNAが用いられた時に、ヒトTGF-β受容体I型遺伝子の発現をインビトロで少なくとも約80%阻害することができる。単一用量濃度約300pMで、ヒトTGF-β受容体I型の発現を阻害することができるdsRNA/siRNA分子も含まれる。さらに、本発明に関して、実際に役立つ対応する例を示し、これもまた添付の表に示した。特に好ましいdsRNAは、例えば、添付の表1の列I、特にランク1〜31、特にランク1〜10に示した(表中に示したセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列は5'-3'方向である)。
【0058】
本明細書において用いられる「オフターゲット」なる用語は、配列相補性に基づいて記載のdsRNAにハイブリダイズするとインシリコ法によって予測された、トランスクリプトームの全ての非標的mRNAを意味する。本発明のdsRNAは、好ましくは、TGF-β受容体I型遺伝子の発現を特異的に阻害する、すなわち、オフターゲットの発現を阻害しない。
【0059】
特に好ましいdsRNAを、例えば、添付の表1および表3に示した(表中に示したセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列は5'-3'方向である)。
【0060】
本明細書において用いられる「半減期」なる用語は、化合物または分子の安定性の尺度であり、当業者に公知の方法によって、特に、本明細書において提供されたアッセイを考慮して評価することができる。
【0061】
本明細書において用いられる「非免疫賦活性」なる用語は、本発明のdsRNA分子による免疫応答の誘導が全く無いことを意味する。免疫応答を測定する方法、例えば、実施例の項に記載のサイトカインの放出を評価することにより免疫応答を測定する方法は、当業者に周知である。
【0062】
「治療する」、「治療」などの用語は、本発明に関して、線維障害、炎症、または肝癌などの癌のような、TGF-β受容体I型遺伝子発現に関連する障害の軽減または緩和を意味する。本発明に関して、本明細書において以下に挙げる任意の他の状態(線維症、炎症、または癌以外)に関するかぎり、「治療する」、「治療」などの用語は、そのような状態に関連する少なくとも一つの症状を軽減もしくは緩和する、またはそのような状態の進行を遅延もしくは逆転させることを意味する。
【0063】
本明細書において用いられる「治療上有効な量」および「予防上有効な量」なる語句は、線維症または線維症の顕性症状の治療、予防、または管理において治療上の利益を提供する量を意味する。治療上有効である具体的な量は当業者であれば容易に求めることができ、例えば、線維症、炎症、または癌のタイプ、患者の既往歴および年齢、治療しようとする疾患の病期、ならびに抗炎症薬、抗線維症剤、または抗癌剤/抗腫瘍剤のような他の薬の投与などの、当技術分野において公知の因子に応じて変動しうる。
【0064】
本明細書において用いられる「薬学的組成物」は、薬理学的に有効な量のdsRNAおよび薬学的に許容される担体を含む。しかしながら、そのような「薬学的組成物」はまた、本発明のdsRNA/本発明のsiRNAに含まれるセンス鎖またはアンチセンス鎖のうちの少なくとも一本の鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む本明細書において記載のベクターを含んでもよい。本明細書において定義されたdsRNA/siRNAを発現する、または含む、細胞、組織、または単離された器官は、例えば、移植アプローチを含む医療介入において「薬学的組成物」として使用されうることも予想される。本明細書において用いられる「薬理学的に有効な量」、「治療上有効な量」または単に「有効量」とは、所期の薬理学的、治療的、または予防的結果を生ずるのに有効なRNAの量を意味する。例えば、疾患または障害に関連する測定可能なパラメーターにおいて少なくとも25%の低下がある時に、所与の臨床治療を有効と考える場合、その疾患または障害を治療するための薬物の治療上有効な量は、そのパラメーターにおいて少なくとも25%の低下を得るのに必要な量である。
【0065】
「薬学的に許容される担体」なる用語は、治療薬の投与のための担体を意味する。そのような担体には、食塩水、緩衝化食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。この用語は特に細胞培養培地を除外する。経口投与する薬物については、薬学的に許容される担体には、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、着香料、着色料、および保存剤などの薬学的に許容される賦形剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。適当な不活性希釈剤には、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、ならびに乳糖が含まれる一方で、トウモロコシデンプンおよびアルギン酸が適当な崩壊剤である。結合剤には、デンプンおよびゼラチンが含まれうる一方、滑沢剤は、存在する場合には、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。所望であれば、錠剤をモノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの材料でコーティングして、胃腸管での吸収を遅延させてもよい。しかしながら、本発明に関して用いられる薬学的に許容される担体があると、本発明のdsRNA、ベクター、または細胞の全身投与が可能になると特に予想される。腸投与も予想されるが、薬物の非経口投与および経皮投与または経粘膜投与(例えば、ガス注入、頬投与、腟投与、肛門投与)ならびに吸入もまた、医療介入を必要とする患者に本発明の化合物を投与する実行可能なやり方である。非経口投与が用いられる場合、これは、罹患組織への、または少なくとも近くでの本発明の化合物の直接注射を含んでもよい。しかしながら、本発明の化合物の静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮内投与、くも膜下腔内投与、および他の投与もまた、当業者、例えば、主治医の範囲内である。
【0066】
薬学的に許容される担体があると、本発明のdsRNA、ベクター、または細胞の全身投与が可能になると特に予想される。腸投与も予想されるが、薬物の非経口投与および経皮投与または経粘膜投与(例えば、ガス注入、頬投与、腟投与、肛門投与)ならびに吸入もまた、医療介入を必要とする患者に本発明の化合物を投与する実行可能なやり方である。非経口投与が用いられる場合、これは、罹患組織における、または少なくとも近くでの本発明の化合物の直接注射を含んでもよい。しかしながら、本発明の化合物の静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮内投与、くも膜下腔内投与、および他の投与もまた、当業者、例えば、主治医の範囲内である。
【0067】
筋肉内、皮下、および静脈内の使用について、本発明の薬学的組成物は、一般に、適切なpHおよび等張性に緩衝化された、滅菌した水溶液または懸濁液に溶解して提供されてもよい。好ましい態様において、担体は水性緩衝液のみからなる。この文脈において、「のみ」とは、TGF-β受容体I型遺伝子を発現する細胞におけるdsRNAの取り込みに影響を及ぼしうる、またはdsRNAの取り込みを仲介しうる補助剤またはカプセル化物質が存在しないことを意味する。本発明による水性懸濁液は、懸濁剤、例えば、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドンおよびトラガカントゴム、ならびに湿潤剤、例えば、レシチンを含んでもよい。水性懸濁液に適当な保存剤には、エチルp-ヒドロキシベンゾエートおよびn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートが含まれる。本発明によリ有用な薬学的組成物には、インプラントおよびマイクロカプセル送達系を含む、dsRNAが身体から急速に排泄されないように保護するカプセル化製剤、例えば、徐放製剤も含まれる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル(polyorthoester)、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製する方法は当業者に明らかであろう。リポソーム懸濁液も薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0068】
本明細書において用いられる「形質転換細胞」とは、dsRNA分子またはそのようなdsRNA分子の少なくとも一本の鎖が発現されうる少なくとも一つのベクターが導入されている細胞である。そのようなベクターは、好ましくは、本発明のdsRNAに含まれるセンス鎖またはアンチセンス鎖の少なくとも一つをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含むベクターである。
【0069】
当然、表1および表3の配列の一つを含み、一端または両端にごくわずかなヌクレオチドが無い、さらに短いdsRNAも、前記のdsRNAと比較して同じように効果がありうると予想することができる。前記で指摘したように、本発明のほんどの態様において、本明細書において提供されたdsRNA分子は、(すなわち、「突出部」の無い)約16〜約30ヌクレオチドの二重鎖長からなる。特に有用なdsRNA二重鎖長は約19〜約25ヌクレオチドである。最も好ましいものは、19ヌクレオチドの長さを有する二重鎖構造である。本発明のdsRNA分子において、アンチセンス鎖はセンス鎖に少なくとも部分的に相補的である。
【0070】
本発明のdsRNAは、標的配列と一つまたは複数のミスマッチを含有してもよい。好ましい態様において、本発明のdsRNAは、13個を超えるミスマッチを含有しない。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列とミスマッチを含有するのであれば、ミスマッチ領域はアンチセンス鎖の5'末端のヌクレオチド2〜7の中にないことが好ましい。別の態様において、ミスマッチ領域はアンチセンス鎖の5'末端のヌクレオチド2〜9の中に無いことが好ましい。TGF-β受容体遺伝子の発現の阻害において、ミスマッチを有するdsRNAの効力を考慮に入れることは重要であり、TGF-β受容体遺伝子、特に、TGF-β受容体I型遺伝子における特定の相補性領域が、集団内で多型配列変化を有すると知られている場合は特に重要である。
【0071】
前記のように、dsRNAの少なくとも一つの末端/鎖は、1〜5個、好ましくは、1個または2個のヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチド突出部を有してもよい。少なくとも一つのヌクレオチド突出部を有するdsRNAは、予想に反して、平滑末端対応物より優れた阻害特性を有する。さらに、本発明者らは、1ヌクレオチドだけの突出部が存在しても、dsRNAの安定性全体に影響を及ぼすことなく、dsRNAの干渉活性が強化されることを発見した。1ヌクレオチドだけの突出部を有するdsRNAは、インビボで、ならびに様々な細胞、細胞培地、血液、および血清において、特に安定かつ有効であると分かっている。好ましくは、一本鎖突出部はアンチセンス鎖の3'末端に位置するか、センス鎖の3'末端に位置する。dsRNAはまた平滑末端を有してもよく、好ましくは、アンチセンス鎖の5'末端に位置する平滑末端を有する。好ましくは、dsRNAのアンチセンス鎖は3'末端にヌクレオチド突出部を有し、5'末端は平滑末端である。別の態様において、突出部にあるヌクレオチドの一つまたは複数はヌクレオシドチオリン酸で置換される。
【0072】
本発明のdsRNAはまた安定性を高めるために化学修飾されてもよい。本発明の核酸は、当技術分野において十分に確立した方法、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、「Current protocols in nucleic acid chemistry」, Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載の方法によって合成および/または修飾することができる。化学修飾には、2'修飾、非天然塩基の導入、リガンドとの共有結合、およびリン酸結合からチオリン酸結合への交換が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。この態様において、二重鎖構造の完全性は、少なくとも一種類の、好ましくは二種類の化学結合によって強化される。化学連結は、様々な周知の任意の技法によって、例えば、共有結合、イオン結合、もしくは水素結合;疎水性相互作用、ファン・デル・ワールス、もしくはスタッキング相互作用を導入することによって;金属イオン配位によって、またはプリン類似体を用いて実現することができる。好ましくは、dsRNAを修飾するのに使用することができる化学基には、メチレンブルー;二官能基、好ましくは、bis-(2-クロロエチル)アミン;N-アセチル-N'-(p-グリオキシルベンゾイル)シスタミン;4-チオウラシル;およびソラレンが含まれるが、それに限定されるわけではない。一つの好ましい態様において、リンカーはヘキサエチレングリコールリンカーである。この場合、dsRNAは固相合成によって生成され、ヘキサエチレングリコールリンカーは標準方法(例えば、Williams, D.J., and K.B. Hall, Biochem. (1996) 35:14665-14670)によって組み込まれる。特定の態様において、アンチセンス鎖の5'末端およびセンス鎖の3'末端はヘキサエチレングリコールリンカーを介して化学連結される。別の態様において、dsRNAの少なくとも一つのヌクレオチドは、ホスホロチオエート基またはホスホロジチオエート基を含む。dsRNAの末端における化学結合は、好ましくは、三重らせん結合によって形成される。表3および表4は、本発明の修飾RNAi薬剤の例を示す。
【0073】
ある特定の態様において、化学結合は、一つのまたはいくつかの結合基によって形成されてもよい。そのような結合基は、好ましくは、ポリ-(オキシホスフィニコオキシ-1,3-プロパンジオール)-および/またはポリエチレングリコール鎖である。他の態様において、化学結合はまた、プリンの代わりに二本鎖構造に導入されたプリン類似体によって形成されてもよい。さらなる態様において、化学結合は、二本鎖構造に導入されたアザベンゼン単位によって形成されてもよい。なおさらなる態様において、化学結合は、二本鎖構造に導入されたヌクレオチドの代わりに分枝ヌクレオチド類似体によって形成されてもよい。ある特定の態様において、化学結合は紫外線によって誘導されてもよい。
【0074】
さらに別の態様において、二つの一本鎖の一つまたは両方にあるヌクレオチドは、細胞酵素、例えば、ある特定のヌクレアーゼの活性化を阻止または阻害するように修飾されてもよい。細胞酵素の活性化を阻害する技法は当技術分野において公知であり、2'-アミノ修飾、2'-アミノ糖修飾、2'-F糖修飾、2'-F修飾、2'-アルキル糖修飾、無電荷主鎖修飾、モルホリノ修飾、2'-O-メチル修飾、およびホスホルアミダートを含むが、それらに限定されるわけではない(例えば、Wagner, Nat. Med. (1995)1:1116-8参照)。従って、dsRNAにあるヌクレオチドの少なくとも一つの2'-ヒドロキシル基は、化学基、好ましくは、2'-アミノ基または2'-メチル基によって置換される。また、少なくとも一つのヌクレオチドは、ロックドヌクレオチドを形成するように修飾されてもよい。そのようなロックドヌクレオチドは、リボースの2'-酸素とリボースの4'-炭素をつなぐメチレン架橋を含有する。ロックドヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに導入すると相補配列に対する親和性が改善し、融解温度が数度上昇する。
【0075】
本明細書において提供されたdsRNA分子の修飾は、インビボならびにインビトロでdsRNA分子の安定性にプラスの影響を及ぼし、(罹患)標的側へのdsRNA分子の送達も改善する。さらに、そのような構造修飾および化学修飾は、投与の際に、dsRNA分子に対して生理学的反応にプラスの影響を及ぼすことがあり、例えば、好ましくは、サイトカイン放出が抑制される。そのような化学修飾および構造修飾は当技術分野において公知であり、とりわけ、Nawrot(2006) Current Topics in Med Chem, 6, 913-925に例示される。
【0076】
リガンドとdsRNAを結合すると、dsRNAの細胞吸収ならびに特定の組織への標的化を強化することができる。ある特定の場合において、細胞膜への直接浸透を容易にするために、疎水性リガンドがdsRNAに結合される。または、dsRNAに結合されるリガンドは、受容体を介したエンドサイトーシスの基質である。これらのアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞浸透を容易にするために用いられてきた。例えば、コレステロールは様々なアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合されており、非結合類似体と比較してかなり活性の高い化合物が得られた。M. Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002, 12, 103参照。オリゴヌクレオチドに結合されことのある他の親油性化合物には、1-ピレン酪酸、1,3-bis-O-(ヘキサデシル)グリセロール、およびメントールが含まれる。受容体を介したエンドサイトーシスのためのリガンドの一例は、葉酸である。葉酸は、葉酸受容体を介したエンドサイトーシスによって細胞に進入する。葉酸を有するdsRNA化合物は、葉酸受容体を介したエンドサイトーシスによって効率的に細胞に輸送される。葉酸をオリゴヌクレオチドの3'末端に取り付けると、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みが増大する(Li, S.; Deshmukh, H. M.; Huang, L. Pharm. Res. 1998, 15, 1540)。オリゴヌクレオチドに結合されことのある他のリガンドには、ポリエチレングリコール、炭水化物クラスター、架橋結合剤、ポルフィリン結合体、および送達ペプチドが含まれる。
【0077】
ある特定の場合において、カチオン性リガンドをオリゴヌクレオチドに結合させると、ヌクレアーゼ耐性が改善することが多い。カチオン性リガンドの代表例は、プロピルアンモニウムおよびジメチルプロピルアンモニウムである。興味深いことに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、カチオン性リガンドがオリゴヌクレオチド全体に分散された時にmRNAに対して高い結合親和性を保持していると報告された。M. Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002, 12, 103およびこの中の参考文献を参照されたい。
【0078】
本発明のリガンド結合dsRNAは、ペンダント反応性官能基を有するdsRNA、例えば、連結分子をdsRNAに取り付けたものを用いて合成されてもよい。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、様々な任意の保護基を用いて合成されたリガンド、または連結部分が取り付けられたリガンドと直接反応されてもよい。本発明の方法は、一部の好ましい態様では、リガンドと適切に結合しており、固体支持体材料にさらに取り付けられうるヌクレオシド単量体を用いることによって、リガンド結合dsRNAの合成を容易にする。そのようなリガンド-ヌクレオシド結合体、任意で固体支持体材料に取り付けられたリガンド-ヌクレオシド結合体は、本発明の方法の一部の好ましい態様に従って、選択された血清結合リガンドと、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの5'位に位置する連結部分の反応を介して調製される。ある特定の場合において、dsRNAの3'末端にアラルキルリガンドが取り付けられているdsRNAは、最初に、長鎖アミノアルキル基を介して単量体基本要素を多孔質ガラス支持体に共有結合によって取り付けることによって調製される。次いで、固体支持体に結合された単量体基本要素には、標準的な固相合成法を介してヌクレオチドが結合される。単量体基本要素は、ヌクレオシドまたは固相合成と適合する他の有機化合物でもよい。
【0079】
本発明の結合体において用いられるdsRNAは、都合よくかつ日常的に、固相合成の周知の技法によって作製することができる。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などの他のオリゴヌクレオチドを調製するために類似の技法を使用することも知られている。
【0080】
特定の修飾オリゴヌクレオチドの合成に関する開示は、以下の米国特許:ポリアミン結合オリゴヌクレオチドに関する、米国特許第5,218,105号;修飾主鎖を有するオリゴヌクレオチドに関する、米国特許第5,541,307号;キラルリン結合を有するオリゴヌクレオチドを調製するためのプロセスに関する、米国特許第5,521,302号;ペプチド核酸に関する、米国特許第5,539,082号;β-ラクタム主鎖を有するオリゴヌクレオチドに関する、米国特許第5,554,746号;オリゴヌクレオチド合成のための方法および材料に関する、米国特許第5,571,902号;アルキルチオ基を有するヌクレオシドに関する、米国特許第5,578,718号。ここで、これらの基は、ヌクレオシドの様々な任意の位置に取り付けられた他の部分とのリンカーとして用いられうる;高キラル純度のホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチドに関する、米国特許第5,587,361号;2'-O-アルキルグアノシン、および2,6-ジアミノプリン化合物を含む関連化合物を調製するためのプロセスに関する、米国特許第5,506,351号;N-2置換プリンを有するオリゴヌクレオチドに関する、米国特許第5,587,469号;3-デアザプリンを有するオリゴヌクレオチドに関する、米国特許第5,587,470号;結合4'-デスメチルヌクレオシド類似体に関する、米国特許第5,608,046号;主鎖修飾オリゴヌクレオチド類似体に関する、米国特許第5,610,289号;とりわけ、2'-フルオロ-オリゴヌクレオチドを合成する方法に関する、米国特許第6,262,241号において見出されうる。
【0081】
本発明のリガンド結合dsRNAおよび配列特異的連結ヌクレオシドを有するリガンド分子において、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドは、適当なDNA合成機において、標準的なヌクレオチド前駆体もしくはヌクレオシド前駆体、または既に連結部分を有するヌクレオチド結合前駆体もしくはヌクレオシド結合前駆体、既にリガンド分子を有するリガンド-ヌクレオチド結合前駆体もしくはリガンド-ヌクレオシド結合前駆体、または非ヌクレオシドリガンドを有する基本要素を用いて組み立てられてもよい。
【0082】
既に連結部分を有するヌクレオチド結合前駆体を使用する時に、配列特異的な連結ヌクレオシドの合成は典型的には完了しており、次いで、リガンド分子と連結部分を反応させて、リガンド結合オリゴヌクレオチドを形成する。様々な分子、例えば、ステロイド、ビタミン、脂質、およびレポーター分子を有するオリゴヌクレオチド結合体が以前に述べられている(Manoharan et al., PCT出願WO93/07883参照)。好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチドまたは連結ヌクレオシドは、市販のホスホルアミダイトに加えて、リガンド-ヌクレオシド結合体に由来するホスホルアミダイトを用いて自動合成装置によって合成される。
【0083】
オリゴヌクレオチドのヌクレオシドへの2'-O-メチル基、2'-O-エチル基、2'-O-プロピル基、2'-O-アリル基、2'-O-アミノアルキル基、または2'-デオキシ-2'-フルオロ基の組み込みは、高いハイブリダイゼーション特性をオリゴヌクレオチドに付与する。さらに、ホスホロチオエート主鎖を含有するオリゴヌクレオチドは、高いヌクレアーゼ安定性を有する。従って、ホスホロチオエート主鎖、または2'-O-メチル基、2'-O-エチル基、2'-O-プロピル基、2'-O-アミノアルキル基、2'-O-アリル基、もしくは2'-デオキシ-2'-フルオロ基のいずれかまたは両方を含むように、本発明の官能化連結ヌクレオシドを増やすことができる。
【0084】
一部の好ましい態様において、5'末端にアミノ基を有する本発明の官能化ヌクレオシド配列がDNA合成機を用いて調製され、次いで、選択されたリガンドの活性エステル誘導体と反応される。活性エステル誘導体は当業者に周知である。代表的な活性エステルには、N-ヒドロスクシンイミドエステル、テトラフルオロフェノールエステル、パラフルオロフェノールエステル、およびペンタクロロフェノールエステルが含まれる。アミノ基および活性エステルが反応すると、選択されたリガンドが連結基を介して5'位に取り付けられたオリゴヌクレオチドが得られる。5'末端にあるアミノ基は、5'-アミノ修飾物質C6試薬を用いて調製することができる。好ましい態様において、リガンド分子は、リガンド-ヌクレオシドホスホルアミダイトを用いてオリゴヌクレオチドの5'位に結合されてもよく、ここで、リガンドは5'-ヒドロキシ基に直接、またはリンカーを介して間接的に連結される。そのようなリガンド-ヌクレオシドホスホルアミダイトは、5'末端にリガンドを有するリガンド結合オリゴヌクレオチドを得るために、典型的には自動合成法の終わりに用いられる。
【0085】
本発明の方法の一つの好ましい態様において、リガンド結合オリゴヌクレオチドの調製は、どの前駆体分子上にリガンド分子を構築するか、適切な前駆体分子を選択することから始まる。典型的には、前駆体は、一般的に用いられるヌクレオシドの適切に保護された誘導体である。例えば、本発明のリガンド結合オリゴヌクレオチドを合成するための合成前駆体には、分子の核酸塩基部分において保護されうる、2'-アミノアルコキシ-5'-ODMT-ヌクレオシド、2'-6-アミノアルキルアミノ-5'-ODMT-ヌクレオシド、5'-6-アミノアルコキシ-2'-デオキシ-ヌクレオシド、5'-6-アミノアルコキシ-2保護ヌクレオシド、3'-6-アミノアルコキシ-5'-ODMT-ヌクレオシド、および3'-アミノアルキルアミノ-5'-ODMT-ヌクレオシドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのようなアミノ連結保護ヌクレオシド前駆体を合成するための方法は当業者に公知である。
【0086】
多くの場合において、本発明の化合物の調製中に保護基が用いられる。本明細書において用いられる「保護された」なる用語は、示された部分に保護基が付いていることを意味する。本発明の一部の好ましい態様において、化合物は一つまたは複数の保護基を含有する。本発明の方法では多種多様な保護基を使用することができる。一般的に、保護基は、化学官能基を、特定の反応条件に対して不活性にし、分子の残りに実質的に損傷を与えることなく、分子内のそのような官能基に付け、そのような官能基から除去することができる。
【0087】
代表的なヒドロキシル保護基ならびに他の代表的な保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Chapter 2, 2d ed., John Wiley & Sons, New York, 1991、およびOligonucleotides And Analogues A Practical Approach, Ekstein, F. Ed., IRL Press, N.Y, 1991に開示される。
【0088】
酸処理に対して安定なアミノ保護基は塩基処理によって選択的に除去され、置換に選択的に利用できる反応性アミノ基を作製するのに用いられる。そのような基の例は、Fmoc(E. Atherton and R. C. Sheppard in The Peptides, S. Udenfriend, J. Meienhofer, Eds., Academic Press, Orlando, 1987, volume 9, p.1)、およびNsc基によって例示される様々な置換スルホニルエチルカルバメート(Samukov et al., Tetrahedron Lett., 1994, 35:7821)である。
【0089】
さらなるアミノ保護基には、カルバメート保護基、例えば、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル(Teoc)、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エトキシカルボニル(Bpoc)、t-ブトキシカルボニル(BOC)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびベンジルオキシカルボニル(Cbz);アミド保護基、例えば、ホルミル、アセチル、トリハロアセチル、ベンゾイル、およびニトロフェニルアセチル;スルホンアミド保護基、例えば、2-ジニトロベンゼンスルホニル;ならびにイミンおよび環式イミド保護基、例えば、フタルイミドおよびジチアスクシノイル(dithiasuccinoyl)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらのアミノ保護基の同等物もまた本発明の化合物および方法に含まれる。
【0090】
多くの固体支持体は市販されており、当業者であれば、固相合成段階において用いられる固体支持体を容易に選択することができる。ある特定の態様において、普遍的な支持体(universal support)が用いられる。普遍的な支持体があると、珍しいヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの3'末端に位置するオリゴヌクレオチドを調製することが可能になる。普遍的な支持体のさらなる詳細については、Scott et al., Innovations and Perspectives in solid-phase Synthesis, 3rd International Symposium, 1994, Ed. Roger Epton, Mayflower Worldwide, 115-124]を参照されたい。さらに、塩基加水分解を容易に受けるsyn-1,2-アセトキシホスフェート(acetoxyphosphate)基を介して、オリゴヌクレオチドが固体支持体に結合している時には、さらに穏やかな反応条件下で、普遍的な支持体からオリゴヌクレオチドを切断できると報告されている。Guzaev, A. I.; Manoharan, M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2380参照。
【0091】
ヌクレオシドは、リンを含有するヌクレオシド間共有結合、またはリンを含有しないヌクレオシド間共有結合によって連結される。識別のために、そのような結合ヌクレオシドは、リガンドを有するヌクレオシドまたはリガンド-ヌクレオシド結合体と特徴付けることができる。配列内のヌクレオシドとアラルキルリガンドが結合している連結ヌクレオシドは、類似の非結合dsRNA化合物と比較して高いdsRNA活性を示す。
【0092】
本発明のアラルキル-リガンド結合オリゴヌクレオチドはまた、リンカー基が間に入ることなく、リガンドがヌクレオシドまたはヌクレオチドに直接取り付けられている、オリゴヌクレオチド結合体および連結ヌクレオシドを含む。リガンドは、好ましくは、連結基を介して、リガンドのカルボキシル基、アミノ基、またはオキソ基に取り付けられてもよい。典型的な連結基は、エステル基、アミド基、またはカルバメート基でありうる。
【0093】
本発明のリガンド結合オリゴヌクレオチドにおいて使用されることが予想される好ましい修飾オリゴヌクレオチドの具体例には、修飾主鎖または非天然ヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。本明細書で定義されたように、修飾主鎖またはヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドには、主鎖にリン原子を保持しているもの、および主鎖にリン原子を保持していないものが含まれる。本発明の目的では、糖間主鎖にリン原子を有さない修飾オリゴヌクレオチドもオリゴヌクレオシドと見なされうる。
【0094】
特定のオリゴヌクレオチド化学修飾を以下で説明する。ある特定の化合物において全ての位置が均一に修飾される必要はない。逆に、1つのdsRNA化合物に、またはその1個のヌクレオチドにも、複数の修飾を組み込むことができる。
【0095】
好ましい修飾ヌクレオシド間結合または主鎖には、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルホスホネートならびに3'-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3'-アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートを含むホスホルアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3'-5'連結を有するボラノホスフェート、これらの2'-5'連結類縁体、および隣接するヌクレオシド単位の対が3'-5'から5'-3'または2'-5'から5'-2'に連結されている極性が逆転したものが含まれる。様々な塩、混合塩および遊離酸型も含まれる。
【0096】
前述のリン原子含有結合の調製に関する代表的な米国特許には、米国特許第4,469,863号;同第5,023,243号;同第5,264,423号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号、および同第5,466,677号が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0097】
リン原子を含まない好ましい修飾ヌクレオシド間結合または主鎖(すなわち、オリゴヌクレオチド)は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキル糖間結合、または1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環糖間結合によって形成される主鎖を有する。これらには、モルホリノ結合(部分的にはヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;ならびに混合N、O、SおよびCH2成分の部分を有するその他を有するものが含まれる。
【0098】
前記オリゴヌクレオシドの調製に関する代表的な米国特許には、米国特許第5,034,506号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,264,562号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,602,240号および同第5,663,312号が含まれるが、それらに限定されるわけでない。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0099】
他の好ましいオリゴヌクレオチドミメティックにおいて、糖およびヌクレオシド間結合、すなわち、ヌクレオシド単位の主鎖は両方とも新規の基で置換される。核酸塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。そのようなオリゴヌクレオチドの1つであるオリゴヌクレオチドミメティックは、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されており、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖主鎖がアミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置換されている。核酸塩基は保持されており、主鎖のアミド部分の原子に直接または間接的に結合している。PNA化合物の開示は、例えば、米国特許第5,539,082号において見られる。
【0100】
本発明の一部の好ましい態様は、ホスホロチオエート結合およびヘテロ原子主鎖を含むオリゴヌクレオシド、特に、上で引用した米国特許第5,489,677号の--CH2--NH--O--CH2--、--CH2--N(CH3)--O--CH2--[メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として知られる]、--CH2--O--N(CH3)--CH2--、--CH2--N(CH3)--N(CH3)--CH2--、および--O--N(CH3)--CH2--CH2--[ここで、天然ホスホジエステル主鎖は--O--P--O--CH2--と表す]、ならびに上で引用した米国特許第5,602,240号のアミド主鎖を用いる。同様に好ましいものは、上で引用した米国特許第5,034,506号のモルホリノ主鎖構造を有するオリゴヌクレオチドである。
【0101】
本発明のリガンド結合オリゴヌクレオチドにおいて用いられるオリゴヌクレオチドは、さらにもしくはまたは、核酸塩基(当技術分野において単に「塩基」と呼ぶことが多い)修飾または置換を含んでもよい。本明細書において用いられる「非修飾」または「天然」核酸塩基には、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチル誘導体および他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピル誘導体および他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなどの他の合成核酸塩基および天然核酸塩基が含まれる。
【0102】
さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示される核酸塩基、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, 858-859頁, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示される核酸塩基、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示される核酸塩基、およびSanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, 289-302頁, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, 1993に開示される核酸塩基が含まれる。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明のオリゴヌクレオチドの結合親和性を高めるのに特に有用である。これらには、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6およびO-6置換プリンが含まれる。5-メチルシトシン置換は核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃高めることが明らかにされており(同上、276-278頁)、現在のところ好ましい塩基置換であり、さらに具体的には2'-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合に好ましい塩基置換である。
【0103】
前記の修飾核酸塩基ならびに他の修飾核酸塩基のいくつかの調製に関する代表的な米国特許には、前記の米国特許第3,687,808号ならびに米国特許第5,134,066号;同第5,459,255号;同第5,552,540号;同第5,594,121号および同第5,596,091号が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0104】
ある特定の態様において、本発明のリガンド結合オリゴヌクレオチドにおいて用いられるオリゴヌクレオチドは、さらにもしくはまたは、一つまたは複数の置換糖部分を含んでもよい。好ましいオリゴヌクレオチドは、2'位に、以下:OH;F;O-、S-、もしくはN-アルキル、O-、S-、もしくはN-アルケニル、またはO、S-、もしくはN-アルキニルの1つを含み、ここで、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換C1-C10アルキルまたはC2-C10アルケニルおよびアルキニルでもよい。特に好ましいものは、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2であり、式中、nおよびmは1〜約10である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、2'位に、以下:C1-C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール(alkaryl)、アラルキル、O-アルカリールまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2 CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善する基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善する基、および同様の特性を有する他の置換基の1つを含む。好ましい修飾には、2'-メトキシエトキシ[2'-O--CH2CH2OCH3 、これは2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとも知られる]、すなわちアルコキシアルコキシ基が含まれる。さらに好ましい修飾には、1998年1月30日に出願された米国特許第6,127,533号に記載の、2'-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、2'-DMAOEとしても知られるO(CH2) 2ON(CH3) 2基が含まれる。米国特許第6,127,533号の内容は参照により組み入れられる。
【0105】
他の好ましい修飾には2'-メトキシ(2'-O--CH3)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)および2'-フルオロ(2'-F)が含まれる。同様の修飾を、オリゴヌクレオチドの他の位置、特に、3'末端ヌクレオチドにある糖の3'位に、または2'-5'連結オリゴヌクレオチド中に行ってもよい。
【0106】
本明細書において用いられる、「糖置換基」または「2'-置換基」なる用語は、酸素原子のある、または酸素原子の無いリボフラノシル部分の2'位に取り付けられた基を含む。糖置換基には、フルオロ、O-アルキル、O-アルキルアミノ、O-アルキルアルコキシ、保護O-アルキルアミノ、O-アルキルアミノアルキル、O-アルキルイミダゾール、および式(O-アルキル) mのポリエーテルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。式中、mは1〜約10である。これらのポリエーテルの中で好ましいものは、直鎖および環式ポリエチレングリコール(PEG)、ならびに(PEG)含有基、例えば、クラウンエーテル、とりわけ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Delgardo et. al.(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 1992, 9:249)に開示されるものである。さらなる糖修飾は、Cook (Anti-fibrosis Drug Design, 1991, 6:585-607)に開示される。フルオロ、O-アルキル、O-アルキルアミノ、O-アルキルイミダゾール、O-アルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノ置換は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,166,197号、発明の名称「2'置換および5'置換を有するピリミジンヌクレオチドを有するオリゴマー化合物(Oligomeric Compounds having Pyrimidine Nucleotide(s) with 2' and 5' Substitutions)」に記載されている。
【0107】
本発明に適したさらなる糖置換基には、2'-SRおよび2'-NR2基が含まれる。式中、それぞれのRは独立して、水素、保護基、または置換もしくは非置換アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。2'-SRヌクレオシドは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,670,633号に開示される。2'-SR単量体シントンの組み込みは、Hamm et al. (J. Org. Chem., 1997, 62:3415-3420)に開示される。2'-NR ヌクレオシドは、Goettingen, M., J. Org. Chem., 1996, 61, 6273-6281;およびPolushin et al., Tetrahedron Lett., 1996, 37, 3227-3230に開示される。本発明に適したさらなる代表的な2'置換基には、以下の式IまたはIIの一つを有するものが含まれる:

式中、
Eは、C1-C10アルキル、N(Q3)(Q4)またはN=C(Q3)(Q4)であり;Q3およびQ4はそれぞれ独立して、H、C1-C10アルキル、ジアルキルアミノアルキル、窒素保護基、テザーもしくは非テザー結合体基、固体支持体へのリンカーであり;またはQ3およびQ4は一緒になって、NおよびOより選択される少なくとも一つのさらなるヘテロ原子を含んでもよい、窒素保護基または環構造を形成し;
q1は、1〜10の整数であり;
q2は、1〜10の整数であり;
q3は、0または1であり;
q4は、0、1または2であり;
Z1、Z2、およびZ3はそれぞれ独立して、C4-C7シクロアルキル、C5-C14アリール、またはC3-C15ヘテロシクリルであり、
式中、前記ヘテロシクリル基中のヘテロ原子は、酸素、窒素、および硫黄より選択され;
Z4は、OM1、SM1、またはN(M1) 2であり;M1はそれぞれ独立して、H、C1-C8アルキル、C1-C8ハロアルキル、C(=NH)N(H)M2、C(=O)N(H)M2、またはOC(=O)N(H)M2であり;M2は、HまたはC1-C8アルキルであり;
Z5は、C1-C10アルキル、C1-C10ハロアルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C6-C14アリール、N(Q3)(Q4)、OQ3、ハロ、SQ3、またはCNである。
【0108】
式Iの代表的な2'-O-糖置換基は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,172,209号、発明の名称「キャップ2'-オキシエトキシオリゴヌクレオチド(Capped 2'-Oxyethoxy Oligonucleotides)」に開示される。式IIの代表的な環式2'-O-糖置換基は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,271,358号、発明の名称「立体構造的に予め組織化されたRNA標的化2'修飾オリゴヌクレオチド(RNA Targeted 2'-Modified Oligonucleotides that are Conformationally Preorganized)」に開示される。
【0109】
リボシル環にO-置換を有する糖も本発明に適している。環Oの代表的な置換には、S、CH2、CHF、およびCF2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0110】
オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル糖の代わりに、糖ミメティック、例えば、シクロブチル部分を有してもよい。そのような修飾糖の調製に関する代表的な米国特許には、米国特許第5,359,044号;同第5,466,786号;同第5,519,134号;同第5,591,722号;同第5,597,909号;同第5,646,265号、および同第5,700,920号が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0111】
オリゴヌクレオチド上の他の位置に、特に、3'末端ヌクレオチドにある糖の3'位に、さらなる修飾も加えることができる。例えば、本発明のリガンド結合オリゴヌクレオチドのさらなる修飾の一つは、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを増強する一つまたは複数のさらなる非リガンド部分または結合体の、オリゴヌクレオチドへの化学連結を伴う。そのような部分には、脂質部分、例えば、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86:6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール残基もしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10:111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-リン酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0112】
本発明はまた、オリゴヌクレオチド内の特定の位置に関してキラル的に実質的に純粋なオリゴヌクレオチドを用いた組成物も含む。キラル的に実質的に純粋なオリゴヌクレオチドの例には、少なくとも75%のSpまたはRpであるホスホロチオエート結合を有するもの(Cook et al., 米国特許第5,587,361号)、およびキラル的に実質的に純粋な(SpまたはRp)アルキルホスホネート結合、ホスホルアミダート結合、またはホスホトリエステル結合を有するもの(Cook, 米国特許第5,212,295号および同第5,521,302号)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0113】
ある特定の場合において、オリゴヌクレオチドは非リガンド基によって修飾されてもよい。オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを増強するために、多数の非リガンド分子がオリゴヌクレオチドに結合されており、そのような結合を行うための手順は科学文献において入手することができる。そのような非リガンド部分は、脂質部分、例えば、コレステロール(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール残基もしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10:111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-リン酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923)を含んでいた。代表的な結合プロトコールは、配列の一つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するオリゴヌクレオチドの合成を伴う。次いで、適切なカップリング試薬または活性化試薬を用いて、アミノ基と、結合体化されている分子とを反応させる。結合反応は、固体支持体に結合しているオリゴヌクレオチドを用いて行われてもよく、または溶相中でオリゴヌクレオチドを切断した後に行われてもよい。HPLCによるオリゴヌクレオチド結合体を精製することによって、典型的には、純粋な結合体が得られる。コレステロール結合体の使用は、このような部分が第V因子タンパク質の産生部位である肝臓組織への標的化を高めることができるので特に好ましい。
【0114】
または、結合体化されている分子は、分子に存在するアルコール基を介して、またはリン酸化されうるアルコール基を有するリンカーを取り付けることによって、ホスホルアミダイトなどの基本要素に変換することができる。
【0115】
重要なことに、これらのアプローチはそれぞれ、リガンド結合オリゴヌクレオチドの合成に使用することができる。アミノ連結オリゴヌクレオチドは、カップリング試薬を用いて、NHSまたはペントフルオロフェノラートエステルとしてリガンドを活性化した後に、リガンドと直接カップリングすることができる。アミノヘキサノールリンカーをカルボキシル基の一つに取り付け、その後に、末端アルコール官能基を亜リン酸化することによって、リガンドホスホルアミダイトを合成することができる。合成されたオリゴヌクレオチドに存在するクロロアセチルリンカーに結合するために、システアミンなどの他のリンカーも利用することができる。
【0116】
本発明の主旨の一つは、本発明のdsRNA分子を含む薬学的組成物を提供することである。そのような薬学的組成物はまた、そのようなdsRNA分子の個々の鎖または(a)本発明のdsRNA分子に含まれるセンス鎖もしくはアンチセンス鎖の少なくとも一つをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含むベクターを含んでもよい。また、本明細書において定義されたdsRNA分子を発現する、または含む細胞および組織は薬学的組成物としても用いられてもよい。そのような細胞または組織は移植法において特に有用でありうる。これらの手法は異種移植も含んでよい。
【0117】
一つの態様において、本発明は、本明細書に記載のdsRNAおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。dsRNAを含む薬学的組成物は、線維障害、癌、または炎症などの、TGF-β受容体I型遺伝子の発現または活性に関連する疾患または障害を治療するのに有用である。
【0118】
本発明の薬学的組成物は、TGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するのに十分な投与量で投与される。本発明者らは、本発明のdsRNAを含む組成物の有効性が改善されているため、本発明のdsRNAを含む組成物を低い投与量で投与できることを見出した。TGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害または完全に抑制するために、1日に受容者の体重1キログラムあたりdsRNA 5mgの最大投与量で十分である。
【0119】
一般に、dsRNAの適当な用量は、1日に受容者の体重1キログラムあたり0.01〜5.0ミリグラム、好ましくは、1日に体重1キログラムあたり0.1〜200マイクログラムの範囲、より好ましくは、1日に体重1キログラムあたり0.1〜100マイクログラムの範囲、さらにより好ましくは、1日に体重1キログラムあたり1.0〜50マイクログラムの範囲、最も好ましくは、1日に体重1キログラムあたり1.0〜25マイクログラムの範囲となる。薬学的組成物は1日1回投与されてもよく、あるいはdsRNAは1日を通して適当な間隔で2、3、4、5、6、もしくはそれ以上の部分用量で、またはさらには持続注入を用いて投与されてもよい。その場合、各部分用量に含まれるdsRNAは、1日合計投与量に達するために、対応して少ない用量でなければならない。数日にわたる送達のために、例えば、数日間にわたってdsRNAの持続放出を提供する従来の持続放出製剤を用いて、投与量単位を配合することもできる。持続放出製剤は当技術分野において周知である。本態様において、投与量単位は1日用量の対応する倍量を含む。
【0120】
当業者であれば、疾患または障害の重症度、過去の治療、被験者の全身の健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むが、それらに限定されるわけではない特定の因子が、被験者を有効に治療するために必要とされる用量およびタイミングに影響しうることを理解するであろう。さらに、治療上有効な量の組成物による被験者の治療は、1回の治療および一連の治療を含みうる。本発明に含まれる個々のdsRNAについての有効な投与量およびインビボでの半減期の推定は、従来の方法を用いて、または適当な動物モデルを用いたインビボ試験に基づいて行うことができる。
【0121】
マウス遺伝学の進歩は、線維症、癌、または炎症などの様々なヒト疾患を試験するための多くのマウスモデルを生み出した。そのようなモデルは、dsRNAのインビボ試験、ならびに治療上有効な用量の決定のために用いられる。
【0122】
本発明により含まれる薬学的組成物は、経口経路、または静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、経皮投与、気道投与(エアゾール剤)、直腸投与、腟投与、ならびに局所投与(頬投与および舌下投与を含む)を含む非経口経路を含むが、それらに限定されるわけではない、当技術分野において公知の任意の手段によって投与することができる。好ましい態様において、薬学的組成物は静脈内に投与される。
【0123】
筋肉内、皮下、および静脈内での使用のために、本発明の薬学的組成物は、一般に、適切なpHおよび等張性に緩衝化された、滅菌した水溶液または懸濁液に溶解して提供される。適当な水性ビヒクルにはリンガー溶液および等張性塩化ナトリウムが含まれる。好ましい態様において、担体は水性緩衝液のみからなる。この文脈において、「のみ」とは、TGF-β受容体遺伝子を発現する細胞におけるdsRNAの取り込みに影響を及ぼしうる、またはdsRNAの取り込みを仲介しうる補助剤またはカプセル化物質が存在しないことを意味する。そのような物質には、例えば、ミセル構造、例えば、下記のリポソームまたはキャプシドが含まれる。dsRNAを細胞培養に導入するためには、マイクロインジェクション、リポフェクション、ウイルス、ウイロイド、キャプシド、キャプソイド、または他の補助剤が必要とされるが、驚いたことに、これらの方法および薬剤はインビボでのdsRNA取り込みには必要でない。本発明による水性懸濁液は、懸濁剤、例えば、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドンおよびトラガカントゴム、ならびに湿潤剤、例えば、レシチンを含んでもよい。水性懸濁液に適当な保存剤には、エチルp-ヒドロキシベンゾエートおよびn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートが含まれる。
【0124】
本発明により有用な薬学的組成物はまた、インプラントおよびマイクロカプセル送達系を含む、dsRNAが身体から急速に排泄されないように保護するカプセル化製剤、例えば、徐放製剤も含まれる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製する方法は当業者に明らかであろう。これらの材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により感染細胞に標的化されたリポソームを含む)もまた薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,522,811号;PCT公開WO91/06309;および欧州特許公報EP-A-43075に記載のように調製することができる。
【0125】
さらに、本発明は、本発明のRNAi薬剤を含有する装置、例えば、血液と接触する装置を提供する。血液と接触する装置の例には、血管移植片、ステント、整形外科プロテーゼ、心臓プロテーゼ、および体外循環システムが含まれる。
【0126】
そのような化合物の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって、例えば、LD50(集団の50%が死亡する用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を求めることによって確かめることができる。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0127】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトで使用するための範囲の投与量の処方において使用することができる。本発明の組成物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全く無く、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動してもよい。本発明の方法に用いられるどの化合物でも、最初に、細胞培養アッセイから治療上有効な量を概算することができる。化合物、または適宜、標的配列のポリペプチド産物が、細胞培養に記載のようにIC50(すなわち、症状の最大半量阻害となる試験化合物濃度)を含む循環血漿中濃度範囲となる(例えば、ポリペプチドが低濃度となる)用量が動物モデルにおいて処方されてもよい。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をさらに正確に求めることができる。例えば、高速液体クロマトグラフィーによって、血漿中濃度を測定することができる。
【0128】
前記のように、本発明のdsRNAを個々にまたは複数で投与することに加えて、本発明のdsRNAは、線維症、炎症、または癌、特に肝癌などの増殖性障害の治療において有効な他の公知の薬剤と組み合わせて投与することができる。どのような状況でも、投与を行う医師は、当技術分野において公知のまたは本明細書に記載の効力の標準的な尺度を用いて観察された結果に基づいて、dsRNA投与の量およびタイミングを調節することができる。
【0129】
本発明のRNAi薬剤はまた、フィブリノゲン受容体アンタゴニストを含むが、それらに限定されるわけではない適当な抗血小板剤(例えば、不安定狭心症の治療用もしくは予防用、または血管形成術後の再閉塞および再狭窄の予防用)、様々な血管異常の治療における相乗効果を実現するための、抗凝固剤、例えば、アスピリン、血栓溶解剤、例えば、プラスミノゲンアクチベーター、またはストレプトキナーゼ、あるいはアテローム性動脈硬化症の治療用または予防用の、抗高コレステロール血症薬(例えば、HMG CoA還元酵素阻害剤、例えば、ロバスタチンおよびシンバスタチン、HMG CoA合成酵素阻害剤など)を含む抗高脂血症剤と同時投与されてもよい。例えば、冠状動脈疾患に罹患している患者、および血管形成術に供された患者は、フィブリノゲン受容体アンタゴニストおよび本発明のRNAi薬剤の同時投与から利益を得るだろう。
【0130】
一つの態様において、本発明は、TGF-β受容体遺伝子、特に、TGF-β受容体I型遺伝子の発現によって仲介される病理学的状態を有する対象を治療するための方法を提供する。そのような状態は、線維障害、望ましくない炎症事象、または増殖性障害などの障害を含む。この態様において、dsRNAは、TGF-β受容体タンパク質の発現を制御するための治療剤として作用する。本発明は、TGF-β受容体遺伝子、特に、TGF-β受容体I型遺伝子がサイレンシングされるように、本発明の薬学的組成物を患者(例えば、ヒト)に投与する工程を含む。本発明のdsRNAは高い特異性があるので、TGF-β受容体I型遺伝子のmRNAを特異的標的とする。
【0131】
本発明の化合物は、以下を含む、抗凝固療法または抗凝固予防の適応症である状態において特に有用である。
【0132】
本発明の化合物は、肝線維症および肝硬変、腎線維症、脾臓線維症、膵臓および肺の嚢胞性線維症、注射線維症、心内膜心筋線維症、肺の特発性肺線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、腎性全身性線維症、びまん性実質性肺疾患、精管切除後疼痛症候群、および関節リウマチなどの線維性疾患を治療または予防するのに有用である。または、TGF-β受容体発現の本発明の阻害剤、具体的には、TGF-β受容体I発現の本発明の阻害剤は、癌、例えば、肝癌、例えば、肝細胞癌HCCの治療において用いられうる。だが、本明細書において提供される手段および方法を用いて、さらなる癌または増殖性障害も治療されうる。そのような増殖性障害は原発性癌/腫瘍を含むだけでなく、続発性腫瘍(すなわち、転移事象のために発症した腫瘍)も含む。本発明の特に好ましい態様において、本発明の化合物を用いて治療される腫瘍/癌は、脳、乳房、肺、前立腺、または肝臓の癌である。
【0133】
従って、本発明は、線維症、望ましくない炎症事象、および/または不必要な細胞増殖を治療するための、ヒトに投与される、特に静脈内投与によって投与される抗TGF-β受容体dsRNAの使用を提供する。
【0134】
本発明により含まれる薬学的組成物は、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、経皮投与、気道(エアゾール剤)、鼻投与、直腸投与、腟投与、局所投与(頬投与および舌下投与を含む)、ならびに硬膜外投与を含む、経口経路または非経口経路を含むが、それらに限定されるわけではない当技術分野において公知の任意の手段によって投与することができる。好ましい態様において、薬学的組成物は、注入または注射によって静脈内投与される。
【0135】
さらに別の局面において、本発明は、哺乳動物においてTGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するための方法を提供する。本発明は、標的TGF-β受容体遺伝子がサイレンシングされるように、本発明の組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。本発明のdsRNAは高い特異性があるために、標的TGF-β受容体遺伝子のRNA(一次RNAまたはプロセシングされたRNA)を特異的標的とする。本発明のdsRNAを用いて、これらのTGF-β受容体I型遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法は、本明細書の他の場所に記載のように行うことができる。
【0136】
本発明の別の局面において、DNAベクターまたはRNAベクターに挿入された転写単位から、TGF-β受容体遺伝子の発現活性を調節するTGF-β受容体特異的dsRNA分子が発現される。これらの導入遺伝子は、直鎖構築物、環状プラスミド、またはウイルスベクターとして導入されてもよく、これらは宿主ゲノムに統合される導入遺伝子として組み込まれ、遺伝してもよい。導入遺伝子は染色体外プラスミドとして遺伝することが可能となるよう構築することもできる。
【0137】
dsRNAの個々の鎖は二つの別々の発現ベクター上のプロモーターによって転写され、標的細胞中に同時形質移入されうる。または、dsRNAの個々の鎖はそれぞれ、両方とも同じ発現プラスミド上に位置するプロモーターによって転写されうる。好ましい態様において、dsRNAはステム構造およびループ構造を有するように、リンカーポリヌクレオチド配列によって連結された逆方向反復として発現される。
【0138】
組換えdsRNA発現ベクターは、好ましくは、DNAプラスミドまたはウイルスベクターである。dsRNA発現ウイルスベクターは、アデノ関連ウイルス;アデノウイルスまたはアルファウイルスならびに当技術分野において公知の他のウイルスを基に構築しうるが、それらに限定されるわけではない。レトロウイルスは様々な遺伝子を、インビトロおよび/またはインビボで、上皮細胞を含む多くの異なる細胞型に導入するために用いられている。細胞のゲノムに挿入された遺伝子を形質導入および発現可能な組換えレトロウイルスベクターは、組換えレトロウイルスゲノムをPA317およびPsi-CRIPなどの適当なパッケージング細胞株に形質移入することにより生成することができる。組換えアデノウイルスベクターは、感受性宿主(例えば、ラット、ハムスター、イヌ、およびチンパンジー)の多様な細胞および組織に感染させるために用いることができ、感染のために有糸分裂が活発な細胞を必要としないという利点も有する。
【0139】
本発明のDNAプラスミドまたはウイルスベクターのいずれかにおいてdsRNA発現を駆動するプロモーターは、真核生物RNAポリメラーゼI(例えば、リボソームRNAプロモーター)、RNAポリメラーゼII(例えば、CMV初期プロモーターもしくはアクチンプロモーターもしくはU1 snRNAプロモーター)、または好ましくはRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えば、U6 snRNAもしくは7SK RNAプロモーター)、あるいは原核生物プロモーター、例えば、T7プロモーターでもよい。但し、T7プロモーターは、発現プラスミドがT7プロモーターからの転写に必要とされるT7 RNAポリメラーゼもコードすることを条件とする。プロモーターは導入遺伝子発現を膵臓にも誘導することができる(例えば、膵臓のインスリン調節配列(Bucchini et al.、1986、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:2511-2515参照)。
【0140】
加えて、導入遺伝子の発現は、例えば、特定の生理的調節因子、例えば、循環グルコース濃度、またはホルモンに感受性の調節配列などの、誘導性調節配列および発現システムを用いることにより、正確に調節することができる。細胞または哺乳動物における導入遺伝子発現の制御に適した、そのような誘導性発現システムには、エクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量化の化学誘導物質、およびイソプロピル-ベータ-D1-チオガラクトピラノシド(EPTG)による調節が含まれる。当業者であれば、dsRNA導入遺伝子の所期の使用に基づき、適当な調節/プロモーター配列を選択することができるだろう。
【0141】
好ましくは、dsRNA分子を発現することができる組換えベクターは以下に記載するとおりに送達され、標的細胞の中に残る。または、dsRNA分子の一過的発現を提供するウイルスベクターを用いることもできる。そのようなベクターを必要に応じて繰り返し投与することができる。dsRNAはいったん発現されれば標的RNAに結合し、その機能または発現を調節する。dsRNA発現ベクターの送達は、静脈内投与もしくは筋肉内投与などの全身送達でもよく、患者から外植した標的細胞に投与した後に患者に再導入することによるものでもよく、または所望の標的細胞への導入を可能にする任意の他の手段によるものでもよい。
【0142】
dsRNA発現DNAプラスミドを、典型的にはカチオン性脂質担体(例えば、オリゴフェクタミン)または非カチオン性脂質担体(例えば、Transit-TKO(商標))との複合体として標的細胞に形質移入する。単一のA TGF-β受容体遺伝子または複数のA TGF-β受容体遺伝子の異なる領域を標的とするdsRNA仲介性ノックダウンのために、1週間以上にわたって複数回、脂質形質移入することも本発明によって企図される。本発明のベクターを宿主細胞にうまく導入できたかは様々な公知の方法を用いてモニターすることができる。例えば、一過的形質移入のシグナルは、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカーなどのレポーターにより得ることができる。エクスビボ細胞の安定な形質移入は、形質移入した細胞に、ハイグロマイシンB耐性などの特定の環境因子(例えば、抗生物質および薬物)に対する耐性を与えるマーカーを用いて確実に行うことができる。
【0143】
一つの態様において、前記方法は、dsRNAを含む組成物を投与する工程を含む。ここで、dsRNAは、治療しようとする哺乳動物のTGF-β受容体I型遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む。前記で指摘したように、本明細書において定義されたdsRNA分子の少なくとも一本の鎖をコードする核酸分子を含むベクターおよび細胞は薬学的組成物としても用いられてもよく、従って、本明細書において開示された、医療介入を必要とする被験体を治療する方法において用いられてもよい。治療しようとする生物/対象がヒトなどの哺乳動物である場合、組成物は、経口経路、または静脈内投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、皮下投与、経皮投与、気道投与(エアゾール剤)、鼻投与、直腸投与、腟投与、ならびに局所投与(頬投与および舌下投与を含む)を含む非経口経路を含むが、それらに限定されるわけではない、当技術分野において公知の任意の手段によって投与されてもよい。好ましい態様において、組成物は、静脈内注入または静脈内注射によって投与される。さらなる投与手段は、非限定的であるが、前記で示されている。薬学的組成物および(ヒト)対象を治療する対応する方法に関するこれらの態様は、遺伝子療法アプローチのようなアプローチにも関することも注目すべきである。本明細書において提供されたTGF-β受容体I型特異的dsRNA分子、または本発明のこれらのdsRNA分子の個々の鎖をコードする核酸分子をベクターに挿入し、ヒト患者のための遺伝子療法ベクターとして用いることもできる。遺伝子療法ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号参照)または定位注射(例えば、Chen et al. (1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054-3057参照)によって対象に送達することができる。遺伝子療法ベクターの薬学的製剤は、許容される希釈剤中に遺伝子療法ベクターを含んでもよく、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた徐放性マトリックスを含んでもよい。または、例えば、レトロウイルスベクターなど、完全な遺伝子送達ベクターを組換え細胞から完全な状態で生成しうる場合は、薬学的製剤は、遺伝子送達システムを生成する一つまたは複数の細胞を含んでもよい。
【0144】
また、dsRNA分子を導入するための手段および方法も提供されている。例えば、ポリマー担体とガラクトースおよびラクトースなどのリガンドとの使用、または様々な高分子への葉酸の取り付けを含む、グリコシル化分子および葉酸修飾分子による標的送達は、葉酸受容体に送達しようとする分子の結合を可能にする。例えば、インビボでsiRNAを送達するRGD修飾ナノ粒子を含む、抗体以外のペプチドおよびタンパク質による標的送達、または短いシクロデキストリン、アダマンチン(adamantine)-PEGを含む多成分(非ウイルス)送達系が公知である。だが、抗体の(一価)Fabフラグメント(もしくはそのような抗体の他のフラグメント)または単鎖抗体を含む、抗体または抗体フラグメントを用いた標的送達も想定される。標的送達のための注射アプローチは、とりわけ、ハイドロダイナミック(hydrodynamic)静脈内注射を含む。また、dsRNAのコレステロール結合体も標的送達に使用することができ、これによって、親油性(lipohilic)基に結合すると細胞取り込みが増強され、オリゴヌクレオチドの薬物動態および組織生体内分布が改善される。また、カチオン性送達系も公知であり、これによって、合成ベクターは、ポリアニオン核酸との複合体形成および負に荷電した細胞膜との相互作用を容易にする正味の正(カチオン)電荷を有する。そのようなカチオン送達系はまた、カチオンリポソーム送達系、カチオンポリマー、およびペプチド送達系も含む。dsRNA/siRNAの細胞取り込みのための他の送達系はアプタマー-ds/siRNAである。また、遺伝子療法アプローチもまた、本発明のdsRNA分子またはこれをコードする核酸分子を送達するために使用することができる。そのような系は、非病原性ウイルス、改変ウイルスベクター、ならびにナノ粒子またはリポソームを用いた送達を含む。dsRNAの細胞取り込みのための他の送達法は、体外、例えば、エクスビボで細胞、器官、または組織を処理することである。これらの技術のいくつかは、Akhtar (2007), Journal of Clinical Investigation 117, 3623-3632、Nguyen et al. (2008), Current Opinion in Moleculare Therapeutics 10, 158-167、Zamboni (2005), Clin Cancer Res 11, 8230-8234、またはIkeda et al. (2006), Pharmaceutical Research 23, 1631-1640などの刊行物に記載および要約されている。
【0145】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、適当な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献はその全体が参照により組み入れられる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が支配することになる。加えて、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0146】
ここで、前記で提供された本発明の態様および物品を以下の非限定的な実施例を用いて例示する。
【実施例】
【0147】
TGF-β受容体遺伝子のジーンウォーキング
ヒトTGF-β受容体Iを標的とするsiRNAを特定するために、siRNAの設計を行った。最初に、ヒト(Homo sapiens)TGF-β受容体Iの公知のmRNA配列(NM_004612.2、L11695.1)をコンピュータ分析によって調べて、これらの配列と交差反応するRNAi薬剤を生じる19ヌクレオチドの相同配列を特定した。
【0148】
RNAi薬剤を特定する際に、選択は、fastAアルゴリズムを用いて、本発明者らが包括的なヒトトランスクリプトームと見なしたヒトRefSeqデータベース(リリース24)にある他の任意の配列と少なくとも2個のミスマッチを有する19mer配列に限定した。
【0149】
このように特定された配列は、表1および表3にあるRNAi薬剤を合成するための基礎となった。
【0150】
dsRNA合成
試薬の供給元
試薬の供給元が本明細書において具体的に示されていない場合、そのような試薬は、分子生物学用の品質/純度基準にある分子生物学試薬のどの供給業者からでも入手することができる。
【0151】
siRNA合成
一本鎖RNAは、固相合成によって、Expedite8909合成機(Applied Biosystems, Applera Deutschland GmbH, Darmstadt, Germany)および固体支持体として多孔質ガラス(CPG, 500Å, Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を用いて、1μmoleスケールで作製した。RNAおよび2'-O-メチルヌクレオチド含有RNAは、それぞれ、対応するホスホルアミダイトおよび2'-O-メチルホスホルアミダイト(Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を用いた固相合成によって作製した。これらの基本要素は、例えば、Current protocols in nucleic acid chemistry, Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載の標準的なヌクレオシドホスホルアミダイト化学を用いて、オリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択された部位に組み込まれた。ホスホロチオエート結合は、ヨウ素酸化剤溶液を、アセトニトリル(1%)に溶解したBeaucage試薬の溶液(Chruachem Ltd, Glasgow, UK)と交換することによって導入した。さらなる補助試薬はMallinckrodt Baker(Griesheim, Germany)から入手した。
【0152】
陰イオン交換HPLCによる粗オリゴリボヌクレオチドの脱保護および精製は、確立した手順に従って行った。収率および濃度は、分光光度計(DU 640B、Beckman Coulter GmbH, Unterschleibheim, Germany)を用いて、それぞれのRNAの溶液の、波長260nmでのUV吸収によって求めた。二本鎖RNAを、アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)に溶解した等モルの相補鎖溶液を混合することによって作製し、水浴中で85〜90℃で3分間加熱し、室温まで3〜4時間冷却した。アニーリングしたRNA溶液を使用するまで-20℃で保管した。
【0153】
活性試験
前記のsiRNAの活性をHeLaS3細胞において試験した。
【0154】
分枝DNAによって、TGFβ受容体特異的siRNAアッセイとインキュベートした細胞から単離された総mRNA中のTGFβ受容体I型mRNAを定量するために、HeLa培養細胞を使用した。
【0155】
HeLaS3細胞は、American Type Culture Collection (Rockville, Md., カタログ番号CCL-2.2)から入手し、加湿インキュベーター(Heraeus HERAcell, Kendro Laboratory Products, Langenselbold, Germany)内で、10%ウシ胎仔血清(FCS)(Biochrom AG, Berlin, Germany, カタログ番号S0115)、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100mg/ml(Biochrom AG, Berlin, Germany, カタログ番号A2213)を含有するように添加したHam's F12(Biochrom AG, Berlin, Germany, カタログ番号FG 0815)中で、5%CO2を含む雰囲気中で37℃で培養した。細胞播種およびsiRNA形質移入は同時に行った。siRNAで形質移入するために、HeLaS3細胞を、96ウェルプレート内で1.5x104細胞/ウェルの密度で播種した。siRNA形質移入は、製造業者の説明のようにリポフェクタミン2000(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany, カタログ番号11668-019)を用いて行った。第一の単一用量実験において、siRNAを30nMの濃度で形質移入した。第二の単一用量実験において、ほとんどの活性siRNAを300pMで再分析した。300pMの単一用量スクリーニングからの、TGFβ受容体に対する最も有効なsiRNAを、用量反応曲線によってさらに特徴付けた。用量反応曲線のために、形質移入は前記の単一用量スクリーニングと同様に行ったが、以下のsiRNA濃度(nM):24、6、1.5、0.375、0.0938、0.0234、0.0059、0.0015、0.0004および0.0001nMを使用した。形質移入後に、細胞を、加湿ンキュベーター(Heraeus GmbH, Hanau, Germany)内で、37℃および5%CO2で24時間インキュベートした。TGFβ受容体mRNAを測定するために、細胞を採取し、mRNAのbDNA定量のために、QuantiGene Screen Assay Kit(カタログ番号:QG0004, Panomics, Inc., Fremont, USA)の製造業者により推奨される手順に従って53℃で溶解した。その後、溶解産物50μlを、ヒトTGFβ受容体およびヒトGAPDHに特異的なプローブセット(プローブセットの配列については、添付の表5および表6を参照されたい)とインキュベートし、QuantiGeneの製造業者のプロトコールに従って処理した。化学発光を、Victor2-Light(Perkin Elmer, Wiesbaden, Germany)においてRLU(相対発光単位)として測定し、ヒトTGFβ受容体プローブセットを用いて得られた値を、各ウェルについて、それぞれのヒトGAPDH値に対して規準化した。非関連対照siRNAを負の対照として使用した。
【0156】
siRNAの安定性
siRNAの安定性は、各一本鎖の半減期を測定することによって、ヒト血清またはマウス血清を用いたインビトロアッセイにおいて求めた。
【0157】
測定は、30μlヒト血清またはマウス血清(Sigma Aldrich)と混合した3μl 50μM siRNA試料を用いて、各時点について三通り行った。混合物を、37℃で、0分、30分、1h、3h、6h、24h、または48hインキュベートした。非特異的分解の対照として、siRNAを、30μlの1xPBS pH6.8と48hインキュベートした。4μlのプロテイナーゼK(20mg/ml)、25μlのプロテイナーゼK緩衝液、および33μlのMillipore水を65℃で20分間添加することによって、反応を停止した。その後に、試料を、0.2μm96ウェルフィルタープレートに通して、3000rpmで20分間、スピンフィルターに供し、50μlのMillipore水で2回洗浄し、再度スピンフィルターに供した。
【0158】
一本鎖の分離および残存する完全長産物(FLP)の分析のために、試料を、変性条件下で、溶出剤A 20mM Na3PO4を含む10% ACN pH=11および溶出剤B 1 M NaBrを含む溶出剤Aを用いて、イオン交換 Dionex Summit HPLCに通して流した。以下の勾配を適用した。

【0159】
注入ごとに、Dionex Chromeleon 6.60 HPLCソフトウェアによってクロマトグラムは自動的に統合され、必要に応じて手作業で調節した。全てのピーク面積は内部標準(IS)ピークに対して補正し、t=0分でのインキュベーションに対して規準化した。それぞれの一本鎖について、別々に三通り、ピーク下面積および結果として生じた残存するFLPを計算した。鎖の半減期(t1/2)は、三通りの、FLPの半分が分解した時点の平均[h]と定義した。
【0160】
サイトカイン誘導
siRNAの潜在的なサイトカイン誘導は、インビトロPBMCアッセイにおいてINF-aおよびTNF-aの放出を測定することによって求めた。
【0161】
ヒト末梢血単核球(PBMC)は、形質移入日に、Ficoll遠心分離によって2人の提供者のバフィーコート血液から単離した。細胞を、Gene Porter2(GP2)またはDOTAPを用いた、Opti-MEM中で最終濃度130nMのsiRNAによって、37℃で24時間、四通り形質移入した。アッセイにおいてINF-aおよびTNF-aを誘導することが分かっているsiRNA配列、ならびにCpGオリゴを濃度500nMで正の対照として使用した。
【0162】
INF-aおよびTNF-aは、プールした四つ一組の上清中で、それぞれ二回、サンドイッチELISAによって測定した。誘導の程度は、最大値5を有するスコアの正の対照と比較して表した。
【0163】
siRNAの特異性
siRNAの特異性は、そのオフターゲティング能力のインシリコ予測によって求めた。
【0164】
オフターゲティング能力は、最も関連性のあるオフターゲット遺伝子と比べて測定し、数値特異性スコアによって表した。最も関連性のあるオフターゲット遺伝子は、siRNAのアンチセンス鎖とのミスマッチの数および分布に基づいて特定した。全ての潜在的なオフターゲット遺伝子を確かめるために、fastAアルゴリズムを用いて、アンチセンス配列に対して最も高い相補性を有する潜在的な標的領域があるかどうか、全てのヒト転写物(RefSeqデータベース、リリース24)を検索した。
【0165】
最も小さな特異性スコアを特徴とする最も関連性のあるオフターゲット遺伝子を特定するために、fastAアウトプットファイルを、さらににperlスクリプトよって分析した。高特異性スコアが最も好ましいと定義し、少なくとも3のスコアが特異的であるとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトTGF-β受容体I型遺伝子の発現をインビトロで少なくとも80%阻害することができる、二本鎖リボ核酸分子。
【請求項2】
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖リボ核酸分子であって、該アンチセンス鎖が該センス鎖に少なくとも部分的に相補的であり、該センス鎖が、TGF-β受容体をコードするmRNAの少なくとも一部と少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、該配列が、(i)該センス鎖のうちの該アンチセンス鎖との相補性領域に位置し、かつ(ii)長さ30ヌクレオチド未満である、請求項1記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項3】
センス鎖が、SEQ ID No:1、117、103、31、81、99、23、13、29、および7に示した核酸配列からなる群より選択され、かつアンチセンス鎖が、SEQ ID No:2、118、104、32、82、100、24、14、30、および8に示した核酸配列からなる群より選択される、請求項1または2記載の二本鎖リボ核酸分子であるか、または二本鎖リボ核酸分子が、SEQ ID NO:1/2、117/118、103/104、31/32、81/82、99/100、23/24、13/14、29/30、および7/8からなる群より選択される配列ペアを含む、請求項1または2記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項4】
少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項5】
修飾ヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、5'-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド(locked nucleotide)、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ修飾ヌクレオチド、2'-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミダート、および非天然塩基を含むヌクレオチドからなる群より選択される、請求項4記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項6】
センス鎖が、SEQ ID No:151、249、261、231、275、253、211、265、181、185、209、299、295、279、および219に示した核酸配列からなる群より選択され、かつアンチセンス鎖が、SEQ ID No:152、250、262、232、276、254、212、266、182、186、210、300、296、280、および220に示した核酸配列からなる群より選択される、請求項4または5記載の二本鎖リボ核酸分子であるか、または二本鎖リボ核酸分子が、SEQ ID NO:151/152、249/250、261/262、231/232、275/276、253/254、211/212、265/266、181/182、185/186、209/210、299/300、295/296、279/280、および219/220からなる群より選択される配列ペアを含む、請求項4または5記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子に含まれるセンス鎖および/またはアンチセンス鎖をコードする、核酸配列。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子に含まれるセンス鎖もしくはアンチセンス鎖のうちの少なくとも一つをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結した調節配列を含む、または請求項7記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項7記載の核酸分子、または請求項8記載のベクターを含む、細胞、組織、または非ヒト生物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項7記載の核酸分子、請求項8記載のベクター、または請求項9記載の細胞もしくは組織を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
薬学的に許容される担体、安定剤、および/または希釈剤をさらに含む、請求項10記載の薬学的組成物。
【請求項12】
以下の工程を含む、細胞、組織、または生物においてTGF-β受容体遺伝子の発現を阻害するための方法:
(a)細胞、組織、または生物に、請求項1〜6のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項7記載の核酸分子、請求項8記載のベクターを導入する工程;および
(b)工程(a)で生成した細胞、組織、または生物を、TGF-β受容体遺伝子のmRNA転写物を分解するのに十分な時間維持し、それにより該細胞におけるTGF-β受容体遺伝子の発現を阻害する工程。
【請求項13】
以下の工程を含む、線維性疾患、炎症事象、または増殖性疾患を治療、予防、または管理する方法:
該治療、予防、または管理を必要としている対象に、治療的または予防的有効量の請求項1〜6のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項7記載の核酸分子、請求項8記載のベクター、および/または請求項10もしくは11記載の薬学的組成物を投与する工程。
【請求項14】
対象がヒトである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
線維性疾患、炎症事象、または増殖性疾患の治療において使用するための、請求項1〜6のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項7記載の核酸分子、請求項8記載のベクター、および/または請求項10もしくは11記載の薬学的組成物。
【請求項16】
線維性疾患、炎症事象、または増殖性疾患の治療のための薬学的組成物を調製するための、請求項1〜6のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子の使用、請求項7記載の核酸分子の使用、請求項8記載のベクターの使用、および/または請求項9記載の細胞もしくは組織の使用。
【請求項17】
線維性疾患が、肝線維症、肝硬変、腎線維症、脾臓線維症(fibrosis of the spleen)、膵臓および肺の嚢胞性線維症、注射線維症(injection fibrosis)、心内膜心筋線維症、肺の特発性肺線維症、縦隔線維症、骨髄線維症(myleofibrosis)、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(progressive massive fibrosis)、腎性全身性線維症、びまん性実質性肺疾患(diffuse parenchymal lung disease)、精管切除後疼痛症候群(post-vasectomy pain syndrome)、および関節リウマチからなる群より選択される、請求項12〜14のいずれか一項記載の方法、請求項15記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の細胞、請求項10記載の薬学的組成物、または請求項16記載の使用。
【請求項18】
増殖性疾患が癌性疾患である、請求項12〜14のいずれか一項記載の方法、請求項15記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項9記載の細胞、請求項10記載の薬学的組成物、または請求項16記載の使用。
【請求項19】
癌性疾患が、肝癌、脳癌、乳癌、肺癌、および前立腺癌からなる群より選択される、請求項記載の方法、請求項18記載の、二本鎖リボ核酸分子、細胞、薬学的組成物、または使用。
【請求項20】
肝癌が、肝細胞癌(HCC)、肝芽腫、混合型肝癌、間葉組織に由来する癌、肝臓肉腫(liver sarcoma)、または胆管癌からなる群より選択される、請求項記載の方法、19記載の、二本鎖リボ核酸分子、細胞、薬学的組成物、または使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−527893(P2011−527893A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517872(P2011−517872)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058660
【国際公開番号】WO2010/006973
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】