ＴＩＧ溶接ヘッド及び該ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置
【課題】 寸法精度にバラ付きがあるワークに対しても効率良くＴＩＧ溶接を実行し、溶接品質を向上させることができるＴＩＧ溶接ヘッドを提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するために本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３は、先端部の中心にタングステン電極２１、先端部の周囲にガスノズル２３を備えた溶接トーチ２５と、フィラーワイヤＦの供給を案内するワイヤガイド２７と、該ワイヤガイド２７を保持するフィラーホルダ２９とを備えたフィラーユニット３１と、上記溶接トーチ２５とフィラーユニット３１とを連結して一体に保持する連結アーム３３と、を具備し、上記ワイヤガイド２７には、フィラーワイヤＦがワークＷの被溶接部１７に対して所定の低い進入角度θで円弧状に繰り出されるように案内する円弧状屈曲部３９が形成されており、上記円弧状屈曲部３９の下流の近傍位置には、作用長Ｌが短かく、内部のガイド穴４７に絞り部４３と拡径部４５とが形成された先端チップ４１が取り付けられることによって構成されている。
【解決手段】 上記課題を解決するために本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３は、先端部の中心にタングステン電極２１、先端部の周囲にガスノズル２３を備えた溶接トーチ２５と、フィラーワイヤＦの供給を案内するワイヤガイド２７と、該ワイヤガイド２７を保持するフィラーホルダ２９とを備えたフィラーユニット３１と、上記溶接トーチ２５とフィラーユニット３１とを連結して一体に保持する連結アーム３３と、を具備し、上記ワイヤガイド２７には、フィラーワイヤＦがワークＷの被溶接部１７に対して所定の低い進入角度θで円弧状に繰り出されるように案内する円弧状屈曲部３９が形成されており、上記円弧状屈曲部３９の下流の近傍位置には、作用長Ｌが短かく、内部のガイド穴４７に絞り部４３と拡径部４５とが形成された先端チップ４１が取り付けられることによって構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、耐熱性に優れたタングステンを電極に使用し、該電極の周りにアルゴンやヘリウム等の不活性ガス（イナートガス）を流して溶接するＴＩＧ（Ｔｕｎｇｓｔｅｎ Ｉｎｅｒｔ Ｇａｓ）溶接に使用されるＴＩＧ溶接ヘッド及び該ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
ＴＩＧ溶接ヘッドは、下記の特許文献１に示すように先端にタングステン電極を備えた溶接トーチと、母材の被溶接部にフィラーワイヤを供給するフィラーユニットと、上記溶接トーチとフィラーユニットを連結して一体に保持する連結アームと、を具備している。
そして、上記フィラーワイヤは母材に対して４５°〜６０°の高い進入角度で斜め上方から直線的に供給されるか、屈曲部で一旦角度を変えてから母材の被溶接部に供給される。
【０００３】
また、上記ＴＩＧ溶接ヘッドは、３次元溶接ロボット等の自動溶接装置におけるロボットアームの先端部に取り付けられ、上記自動溶接装置を配置した自動溶接工程等において使用される。
そして、上記ＴＩＧ溶接ヘッドは、母材であるワークの被溶接部に沿って移動し、溶接トーチから発せられるアークによってワークの被溶接部に溶融池を形成し、上記フィラーユニットから供給されるフィラーワイヤを上記溶融池に挿入することによって所望の溶接が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００２−１５４０号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、上記ワークは、プレス成形等によって成形されるものが多く、寸法精度にバラ付きがある。したがって、ＴＩＧ溶接ヘッドがワークの被溶接部に沿って移動する際、上記フィラーユニットから供給されるフィラーワイヤの先端部と上記溶融池との間の隙間が変動し、フィラーワイヤの先端部が上記溶融池に突き当たってしまう場合がある。
このような場合には、上記フィラーワイヤは軸線方向に沿ってフィラーユニット側に押し戻される力を受けることになるが、上記高い進入角度と、屈曲部での力の作用方向の変化と、フィラーワイヤの直線案内作用長が長いこと等が関係して途中で座屈して詰まってしまい、ビードずれが発生することがある。そして、このようなビードずれが発生したワークは商品価値を失って不良品になってしまい、頻繁な不良品の発生は、加工コストが比較的高い溶接部品等の製造において大きな損失となる。
【０００６】
本発明は、このような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、フィラーワイヤの先端部が溶接池に突き当たっても座屈することなく円滑に進退することができ、しかもフィラーワイヤの進退方向をビードずれの発生が少なくなる方向に調整して、溶接品質を向上させることができるＴＩＧ溶接ヘッド及び該ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するべく本発明の請求項１によるＴＩＧ溶接ヘッドは、先端部の中心にタングステン電極、先端部の周囲にガスノズルを備えた溶接トーチと、フィラーワイヤの供給を案内するワイヤガイドと該ワイヤガイドを保持するフィラーホルダとを備えたフィラーユニットと、上記溶接トーチとフィラーユニットとを連結して一体に保持する連結アームと、を具備し、上記ワイヤガイドには、フィラーワイヤがワークの被溶接部に対して所定の低い進入角度で円弧状に繰り出されるように案内する円弧状屈曲部が形成されており、上記円弧状屈曲部の下流の近傍位置には、作用長が短かく、内部のガイド穴に絞り部と拡径部とが形成された先端チップが取り付けられていることを特徴とするものである。
【０００８】
また、請求項２によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項１記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記ワイヤガイドから繰り出されるフィラーワイヤの進入角度は、４５°より小さな角度に設定されていることを特徴とするものである。
【０００９】
また、請求項３によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項１または２に記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記連結アームの上記フィラーユニットとの連結部には、フィラーユニットの上下方向、前後方向及び左右方向への調整移動を可能にする長穴が形成された調整金具と、移動したフィラーユニットを正規の位置に戻す付勢手段とが設けられていることを特徴とするものである。
【００１０】
また、請求項４によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項３記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記調整金具は、長穴の形成方向や長さを異ならせた複数の調整金具を組み合わせることによって構成されていることを特徴とするものである。
【００１１】
また、請求項５によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項３または４に記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記付勢手段は、付勢力を異ならせた複数の付勢手段を予め用意しておき、ワークの種類や形状、大きさの違いあるいは使用条件に応じて最適なものを選択して使用するようにしたことを特徴とするものである。
【００１２】
また、請求項６によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項１〜５のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記フィラーユニットは、上記連結アームに対して接近離反方向にスライドして進退移動するように構成されていることを特徴とするものである。
【００１３】
また、請求項７によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項１〜５のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記フィラーユニットは、上記連結アームに対して揺動軸を中心に揺動して接近離反方向に進退移動するように構成されていることを特徴とするものである。
【００１４】
また、請求項８によるＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置は、溶接トーチと、フィラーユニットと、上記溶接トーチとフィラーユニットとを連結する連結アームと、を備えたＴＩＧ溶接ヘッドと、上記ＴＩＧ溶接ヘッドを先端部に備え、目標の溶接ポイントに向けて３次元的に移動するロボットアームと、上記ロボットアームの基端部に設けられ、上記ロボットアームに駆動力を付与する駆動装置と、上記ロボットアームの移動を制御するコントロール装置と、を具備し、上記ＴＩＧ接続ヘッドとして、請求項１〜７のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッドを使用したことを特徴とするものである。
【００１５】
そして、上記手段によって以下のような作用が得られる。まず、ワイヤガイドに対してフィラーワイヤがワークの被溶接部に対して所定の低い進入角度で円弧状に繰り出されるように案内する円弧状屈曲部を設けたことにより、フィラーワイヤは円弧状屈曲部に案内されて、無理なく自然に上記ワークの被溶接部に沿うように繰り出される。
また、上記円弧状屈曲部の下流の近傍位置に作用長が短く、内部のガイド穴に絞り部と拡径部とが形成された先端チップを取り付けたことにより、上記円弧状屈曲部を通過したフィラーワイヤは、絞り部において僅かにワイヤガイドのガイド穴に接して方向が規制された後、下流の拡径部ではガイド穴に接することなく、そのまま円弧状に繰り出されるようになる。
【００１６】
また、先端チップから繰り出されたフィラーワイヤの先端部が溶接トーチから発せられたアークによって形成される溶融池の底部に突き当たったとしても、上記フィラーワイヤに作用する力は、上述した所定の低い進入角度の円弧状の軌跡に沿った方向にかかるため、ワークの被溶接部とフィラーワイヤの先端部との間の隙間は大きく変動することなく、一定の範囲に抑えられる。したがって、上記隙間の大きな変動に起因して従来、生じていたビードのずれは発生しない。
【００１７】
また、上記フィラーワイヤの進入角度を４５°より小さな角度に設定した場合には、フィラーワイヤは上記円弧状の軌跡に沿って円滑に最も理想的な状態で繰り出されるようになる。
また、上記連結アームの上記フィラーユニットとの連結部に、フィラーユニットの上下方向、前後方向及び左右方向への調整移動を可能にする長穴が形成された調整金具を設けた場合には、フィラーワイヤが上記溶融池の底部に突き当たった時の後退方向の移動量の一部または全部が上記長穴によって吸収されるため、フィラーワイヤの座屈による詰まりは、より確実に防止されるようになる。
【００１８】
また、上記移動したフィラーユニットを正規の位置に戻す付勢手段を設けた場合には、上記フィラーワイヤが上記溶融池の底部に突き当たった時の後退方向の力の一部または全部が上記付勢手段の付勢力によるクッション作用によって吸収されるようになる。
また、移動したフィラーユニットは付勢手段の付勢力によって瞬時に元の正規の位置に復帰できるようになる。
【００１９】
また、上記調整金具を、長穴の形成方向や長さを異ならせた複数の調整金具を組み合わせることによって構成した場合には、フィラーユニットの３次元的な複雑な調整移動を比較的簡単な構成で実現できるようになる。
また、上記付勢手段の付勢力を異ならせたものを予め複数用意しておき、ワークの種類や形状、大きさの違いあるいは使用条件に応じて最適なものを選択して使用するように構成した場合には、ワークの種類や大きさあるいは使用条件が異なったとしても、常に最適な状態でフィラーユニットを保持できるようになる。
【００２０】
また、上記フィラーユニットを上記連結アームに対して接近離反方向にスライドして進退移動するように構成した場合には、フィラーワイヤが上記溶融池の底部に突き当たった時の衝撃の大部分を上記フィラーユニットのスライド方向の動きによって吸収することが可能になる。
また、上記フィラーユニットを上記連結アームに対して揺動軸を中心に揺動して接近離反方向に進退移動するように構成した場合には、フィラーワイヤが上記溶融池の底部に突き当たった時の衝撃の大部分を上記フィラーユニットの揺動方向の動きによって吸収することが可能になる。
【００２１】
また、上記構成のＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置によれば、ビードずれのない高品質の溶接部品等を効率良く大量に生産できるようになり、溶接部品等の歩留まりを大幅に向上させる。
【発明の効果】
【００２２】
本発明によるＴＩＧ溶接ヘッド及び該ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置によると、ワークの寸法精度に影響されることなく、フィラーワイヤの座屈による詰まりや、フィラーワイヤの先端部がワークの被溶接部から大きく離れることによって生ずるビードずれを効果的に防止して高品質の溶接部品等を効率良く大量に生産できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
【図１】本発明の第１の実施の形態を示す図で、ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置を示す側面図である。
【図２】本発明の第１の実施の形態を示す図で、フィラーユニットを後退させる負荷がかかっていない状態のＴＩＧ溶接ヘッドを示す側面図である。
【図３】本発明の第１の実施の形態を示す図で、フィラーユニットを後退させるスライド方向の負荷がかかっている状態のＴＩＧ溶接ヘッドを示す側面図である。
【図４】本発明の第１の実施の形態を示す図で、フィラーユニットを後退させる揺動方向の負荷がかかっている状態のＴＩＧ溶接ヘッドを示す側面図である。
【図５】本発明の第１の実施の形態を示す図で、ＴＩＧ溶接ヘッドの先端チップ周辺を拡大して示す側断面図である。
【図６】本発明の第１の実施の形態を示す図で、連結アームの構成部材を示す分解斜視図である。
【図７】本発明の第１の実施の形態を示す図で、連結アームの組付け状態を示す側面図である。
【図８】本発明の第１の実施の形態を示す図で、連結アームの組付け状態を示す平面図である。
【図９】本発明の第２の実施の形態を示す図で、ＴＩＧ溶接ヘッドを示す側面図である。
【図１０】本発明の第２の実施の形態を示す図で、ＴＩＧ溶接ヘッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２４】
以下、図１〜８に示す第１の実施の形態と、図９、１０に示す第２の実施の形態を例にとって、本発明を実施するための形態について説明する。
（１）第１の実施の形態（図１〜８参照）
最初に図１に基づいて本発明の自動溶接装置１の概略について説明する。
図示の自動溶接装置１は後述する本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３と、上記ＴＩＧ溶接ヘッド３を先端部に備え、目標の溶接ポイントに向けて３次元的に移動するロボットアーム５と、上記ロボットアーム５の基端部に設けられ、上記ロボットアーム５に駆動力を付与する駆動装置７と、上記ロボットアーム５の移動を制御するコントロール装置９と、を具備することによって構成されている。
【００２５】
また、図示の自動溶接装置１は、６軸独立関節型の溶接ロボットによって一例として構成されており、上記ロボットアーム５は、上腕１１と前腕１３と手首１５の３つの関節から構成されている。
また、上記駆動装置７は、旋回、上下揺動、前後揺動、回転、曲げ及びひねりを各別に実行する複数のモータＭによって構成されており、コントロール装置９への数値入力データ等に基づいて上記３つの関節１１、１３、１５が適宜の方向、そして角度、動作することによってＴＩＧ溶接ヘッド３をワークＷの被溶接部１７に倣うように移動させる。
【００２６】
本実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３は、トーチ本体１９の先端部中心にタングステン電極２１、トーチ本体１９の先端部周囲にガスノズル２３を備えた溶接トーチ２５と、フィラーワイヤＦの供給を案内するワイヤガイド２７と該ワイヤガイド２７を保持するフィラーホルダ２９とを備えたフィラーユニット３１と、上記溶接トーチ２５とフィラーユニット３１とを連結して一体に保持する連結アーム３３と、を具備することによって基本的に構成されている。
【００２７】
また、溶接トーチ２５のトーチ本体１９には、加熱された溶接トーチ２５を冷却するための冷却水Ｃを供給し排出するための冷却ホース３５が接続されており、上記ガスノズル２３には、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスＧをガスノズル２３内に供給するためのガスチューブ３７が接続されている。
尚、ガスノズル２３内に供給される不活性ガス（イナートガス）Ｇは、シールドガスとも呼ばれ、ワークＷの被溶接部１７への酸素（空気）の流入を防いでワークＷの酸化を防止する役割を有している。
【００２８】
ワイヤガイド２７は、フィラーワイヤＦの供給を案内する管状の部材で、該ワイヤガイド２７の先端寄りの部分に円弧状に屈曲された円弧状屈曲部３９が形成されている。この円弧状屈曲部３９は、フィラーワイヤＦがワークＷの被溶接部１７に対して所定の低い進入角度θ（４５°より小さな角度）で円弧状に繰り出されるように案内する役割を有している。
また、上記円弧状屈曲部３９の下流の近傍位置には、先端チップ４１が取り付けられている。
【００２９】
先端チップ４１は、作用長Ｌが短かく先端部が窄まった管状の部材で、先端チップ４１の内部には、図５に示すように絞り部４３と拡径部４５とを備えたガイド穴４７が形成されている。
因みに先端チップ４１の作用長Ｌを短かくすることで、上記円弧状屈曲部３９を通過したフィラーワイヤＦの円弧状の移送軌跡を規制することなく、自然な状態でフィラーワイヤＦを繰り出すことができるようになる。また、絞り部４３を形成することでフィラーワイヤＦとの接触長を短かくして接触抵抗を減少させ、拡径部４５を形成することで、上記フィラーワイヤＦの円弧状の移送軌跡をそのまま維持してワークＷの被溶接部１７に対して、無理なく円滑にフィラーワイヤＦを供給できるようになる。
【００３０】
フィラーホルダ２９は、両端部がそれぞれ逆方向に鉤状に屈曲した側面視Ｚ字状の支持アーム４９と、上記ワイヤガイド２７の取付け角度を調整するための傾斜した円弧状の長穴５１が２個ずつ、水平方向の長穴５２が１個ずつ、そしてガイドボルト５６を取り付けるための取付け穴５４Ａないしネジ穴５４Ｂがそれぞれ１個ずつ形成された２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂとを備えることによって構成されている。
尚、上記支持アーム４９とワイヤガイド２７間の固定と、上記支持アーム４９と上記２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂ間の固定と、上記２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂと後述する連結アーム３３間の固定は、固定ボルト５５を使用して行われている。
【００３１】
連結アーム３３は、上記溶接トーチ２５のトーチ本体１９を挟持状態で保持するアームブロック５７と、上記フィラーユニット３１の上下方向Ｚ、前後方向Ｙ及び左右方向Ｘへの調整移動を可能にする長穴５９、５９、…が形成された調整金具６１と、移動したフィラーユニット３１を正規の位置に戻す付勢手段の一例である２本の圧縮コイルバネ６３、６３と、上記圧縮コイルバネ６３に挿嵌して使用される２本の組付けボルト６５、６５と、を具備することによって構成されている。
【００３２】
アームブロック５７には、上記トーチ本体１９を挟持状態で受け入れるための受入れ穴６７と、該受入れ穴６７とアームブロック５７の基端面との間に形成されるすり割６９と、該すり割６９が形成された左右の翼片７１、７１を接続固定するための接続穴７３、７３とが形成されている。
そして、上記接続穴７３、７３には、図６〜８に示す接続固定ボルト７５が貫通状態で挿嵌され、接続固定ナット７７によって該アームブロック５７は、上記トーチ本体１９に対して強固に固定される。
【００３３】
調整金具６１は、長穴５９、５９、…の形成方向や長さを異ならせた３種類の調整金具６１Ａ、６１Ｂ、６１Ｃを組み合わせることによって構成されている。
調整金具６１Ａ、は側面視逆Ｔ字状をしたブロック状の部材で、垂直部７９には上下方向Ｚに延びる長穴５９Ａが形成され、水平部８１には上記２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂ間に取り付けられるガイドボルト５６を受け入れる前後方向Ｙに延びる長穴５９Ａと、上記２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂを当該連結アーム３３に締結固定する固定ボルト５５と螺合するネジ穴８３とが形成されている。
【００３４】
調整金具６１Ｂは、平面視コの字状に折り曲げられた板状の部材で、左右の耳部８５、８５と、これらの耳部８５、８５によって挟まれた端面部８７とによって構成されている。そして、上記端面部８７には左右方向Ｘに延びる２本の長穴５９Ｂ、５９Ｂが上下に間隔を隔てて形成されている。
調整金具６１Ｃは、矩形平板状の座金様の部材で、上下方向Ｚに延びる短い２本の長穴５９Ｃ、５９Ｃが上下に間隔を隔てて形成されている。
【００３５】
圧縮コイルバネ６３は、バネ力が違う一例として６種類の圧縮コイルバネ６３が予め用意されており、ワークＷの種類や形状、大きさの違いあるいは負荷の大きさ等の使用条件に応じて適宜、最適なものを選択して使用するようにする。
組付けボルト６５は、上記圧縮コイルバネ６３、調整金具６１Ａ、６１Ｂ、６１Ｃを挿嵌して使用する長寸のボルトで、上記アームブロック５７のすり割６９が形成されていない先端面側に形成されているネジ穴８９に螺合されることによって固定される。
そして、上記圧縮コイルバネ６３を上記組付けボルト６５に介在させることによって上記フィラーユニット３１は、上記連結アーム３３に対して接近離反方向に進退移動できるように構成されている。
【００３６】
尚、フィラーユニット３１に垂直方向の成分を含まないほとんど水平方向の力が作用した場合には、上述した長穴５９、５９、…と、圧縮コイルバネ６３とによる作用によって、図３に示すように上下の圧縮コイルバネに均等に負荷がかかってフィラーユニット３１は、水平方向にスライドして後退するようになる。
一方、フィラーユニット３１に垂直方向の成分を幾らか含んだ水平方向の力が作用した場合には、上述した長穴５９、５９、…と、圧縮コイルバネ６３とによる作用によって、図４に示すようにフィラーユニット３１は、揺動方向に揺動しながら後退するようになる。
【００３７】
次に、このようにして構成される第１の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３の作動態様について図２〜４及び図５に基づいて説明する。
ＴＩＧ溶接ヘッド３が図５中、Ａの方向に進行している時、通常はフィラーユニット３１から繰り出されたフィラーワイヤＦの先端は、ワークＷの被溶接部１７から１ｍｍ程度、上方に離れた位置を移動する。
したがって、フィラーワイヤＦの先端はワークＷの被溶接部１７に形成される溶融池９１の底部に突き当たることなく溶融し、上記被溶接部１７の形状に沿った美しいビード９３が形成される。
【００３８】
また、ワークＷが例えば自動車やオートバイのマフラーのようなプレス製品である場合には、寸法精度にバラ付きがあるため、上記フィラーワイヤＦの先端が上記溶融池９１の底部に突き当たって図５中、Ｂの後退方向に押し戻される力を受けることがある。
しかし、このような場合でも、上記調整板５３Ａ、５３Ｂの長穴５９、５９、…と圧縮コイルバネ６３、６３との作用によって当該フィラーワイヤＦは座屈して詰まることなくフィラーユニット３１と一体になって後退方向Ｂに移動する。
【００３９】
そして、この時、上記フィラーワイヤＦの先端部が、ワークＷの被溶接部１７から大きく離れることなく移動するため、上記通常時と同様の美しいビード９３がそのまま継続して形成されて行く。
したがって、フィラーワイヤＦの詰まりに起因する溶接作業の中断は生ぜず、ビードずれのない高精度のＴＩＧ溶接が効率良く実行されて高品質の溶接部品ないし溶接製品が歩留まり良く製造されるようになる。
【００４０】
（２）第２の実施の形態（図９、１０参照）
次に、上記第１の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３と部分的構成を異にする第２の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３Ａの構造を図９に基づいて説明する。
尚、第２の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３Ａの基本的構成は、上記第１の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３と同様であるので、ここでは第１の実施の形態と異なる構成に絞って説明する。
【００４１】
即ち、本実施の形態では、調整金具９５と付勢手段９７とアームブロック１０３の構造が上記第１の実施の形態による調整金具６１と付勢手段６３とアームブロック５７の構造と相違している。
具体的には、調整金具９５は、上記調整金具６１と同様、長穴５９、５９、…の形成方向や長さを異ならせた３種類の調整金具９５Ａ、９５Ｂ、９５Ｃを組み合わせることによって構成されている。
【００４２】
調整金具９５Ａは、側面視逆Ｔ字状をしたブロック状の部材で、垂直部１０９には、後述する揺動軸９９と嵌合する嵌合穴１１１が形成され、水平部１１３には、上記調整金具６１Ａの水平部８１と同様に前後方向Ｙに延びる長穴１５９Ａと図示しないネジ穴とが形成されている。
調整金具９５Ｂは、上記調整金具６１Ｂと同様、平面視コの字状に折り曲げられた板状の部材で、左右の耳部１１５、１１５には前後方向Ｙに延びる長穴１５９Ｂが形成されている。
【００４３】
また、上記調整金具９５Ｂの端面部１１７には、上記調整金具６１Ｂと同様の左右方向Ｘに延びる図示しない長穴が形成されている。
調整金具９５Ｃは、上記調整金具６１Ｃと同様の矩形平板状の座金様の部材で、上下方向Ｚに延びる図示しない長穴が形成されている。
また、本実施の形態では、付勢手段として捩りコイルバネ９７が使用されており、該捩りコイルバネ９７の一端は、上記調整金具９５Ａに係止され、捩りコイルバネ９７の他端は、上記調整金具９５Ｂあるいは次に述べるアームブロック１０３に係止されている。
【００４４】
アームブロック１０３は、上記アームブロック５７と基本的には同様の構成を有しており、上記アームブロック５７の構成に加えて、アームブロック１０３の先端部に上記調整金具９５Ａの垂直部１０９を受け入れるスリット１０５と、上記調整金具９５Ｂの耳部１１５に形成されていたのと同様の前後方向Ｙに延びる長穴１０７が形成されている。
【００４５】
そして、このような構成のＴＩＧ溶接ヘッド３Ａを採用することによって、上記フィラーユニット３１は、上記連結アーム３３のアームブロック１０３に対して前後方向Ｙに移動しながら揺動軸９９を中心に揺動して接近離反方向に進退移動するように構成されている。
また、このような構成のＴＩＧ溶接ヘッド３Ａを使用した場合にも、上記第１の実施の形態と同様の作動態様が実行され、高品質の溶接部品ないし溶接製品が歩留まり良く製造されるようになる。
【００４６】
尚、本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３及び該ＴＩＧ溶接ヘッド３を備えた自動溶接装置１は、上述した実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での設計変更が可能である。
例えば、自動溶接装置１のロボットアーム５は、多関節式のロボットアーム５に限らず、直交座標系や円筒座標系のスライド式やスライドと旋回を組み合わせた方式のロボットアーム５等を採用することも可能である。
【００４７】
また、調整金具６１の構成も種々採用でき、１種類や２種類あるいは４種類以上の調整金具６１を使用する構成であっても構わないし、付勢手段６３の構成も板バネ等、他のバネ部材を使用した構成や、ゴム材の弾性反発力を利用した構成等、種々の構成が採用可能である。
また、本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３は、既存のＴＩＧ溶接ヘッドと差し替えてその全部を使用する他、既存のＴＩＧ溶接ヘッドの一部の構成部材（例えば、ワイヤガイドと先端チップと連結アーム）を本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３の構成部材（例えば、ワイヤガイド２７と先端チップ４１と連結アーム３３）と差し替えて使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【００４８】
本発明のＴＩＧ溶接ヘッド及び該ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置は、ＴＩＧ溶接を行っている溶接現場等で利用でき、特にプレス製品等、寸法精度にバラ付きがあるワークに対しても効率良くＴＩＧ溶接を実行し、溶接部品ないし溶接製品の溶接品質を向上させたい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【００４９】
１ 自動溶接装置
３ ＴＩＧ溶接ヘッド
５ ロボットアーム
７ 駆動装置
９ コントロール装置
１１ 上腕
１３ 前腕
１５ 手首
１７ 被溶接部
１９ トーチ本体
２１ タングステン電極
２３ ガスノズル
２５ 溶接トーチ
２７ ワイヤガイド
２９ フィラーホルダ
３１ フィラーユニット
３３ 連結アーム
３５ 冷却ホース
３７ ガスチューブ
３９ 円弧状屈曲部
４１ 先端チップ
４３ 絞り部
４５ 拡径部
４７ ガイド穴
４９ 支持アーム
５１ 長穴
５２ 長穴
５３ 調整板
５４Ａ 取付け穴
５４Ｂ ネジ穴
５５ 固定ボルト
５６ ガイドボルト
５７ アームブロック
５９ 長穴
６１ 調整金具
６３ 圧縮コイルバネ（付勢手段）
６５ 組付けボルト
６７ 受入れ穴
６９ すり割
７１ 翼片
７３ 接続穴
７５ 接続固定ボルト
７７ 接続固定ナット
７９ 垂直部
８１ 水平部
８３ ネジ穴
８５ 耳部
８７ 端面部
８９ ネジ穴
９１ 溶融池
９３ ビード
９５ 調整金具
９７ 捩りコイルバネ（付勢手段）
９９ 揺動軸
１０１ 揺動長穴
１０３ アームブロック
１０５ スリット
１０７ 長穴
１０９ 垂直部
１１１ 嵌合穴
１１３ 水平部
１１５ 耳部
１１７ 端面部
１５９ 長穴
Ｗ ワーク
Ｍ モータ
Ｆ フィラーワイヤ
Ｃ 冷却水
Ｇ 不活性ガス
Ｌ 作用長
Ｚ 上下方向
Ｙ 前後方向
Ｘ 左右方向
Ａ 進行方向
Ｂ 後退方向
θ 進入角度
【技術分野】
【０００１】
本発明は、耐熱性に優れたタングステンを電極に使用し、該電極の周りにアルゴンやヘリウム等の不活性ガス（イナートガス）を流して溶接するＴＩＧ（Ｔｕｎｇｓｔｅｎ Ｉｎｅｒｔ Ｇａｓ）溶接に使用されるＴＩＧ溶接ヘッド及び該ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
ＴＩＧ溶接ヘッドは、下記の特許文献１に示すように先端にタングステン電極を備えた溶接トーチと、母材の被溶接部にフィラーワイヤを供給するフィラーユニットと、上記溶接トーチとフィラーユニットを連結して一体に保持する連結アームと、を具備している。
そして、上記フィラーワイヤは母材に対して４５°〜６０°の高い進入角度で斜め上方から直線的に供給されるか、屈曲部で一旦角度を変えてから母材の被溶接部に供給される。
【０００３】
また、上記ＴＩＧ溶接ヘッドは、３次元溶接ロボット等の自動溶接装置におけるロボットアームの先端部に取り付けられ、上記自動溶接装置を配置した自動溶接工程等において使用される。
そして、上記ＴＩＧ溶接ヘッドは、母材であるワークの被溶接部に沿って移動し、溶接トーチから発せられるアークによってワークの被溶接部に溶融池を形成し、上記フィラーユニットから供給されるフィラーワイヤを上記溶融池に挿入することによって所望の溶接が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００２−１５４０号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、上記ワークは、プレス成形等によって成形されるものが多く、寸法精度にバラ付きがある。したがって、ＴＩＧ溶接ヘッドがワークの被溶接部に沿って移動する際、上記フィラーユニットから供給されるフィラーワイヤの先端部と上記溶融池との間の隙間が変動し、フィラーワイヤの先端部が上記溶融池に突き当たってしまう場合がある。
このような場合には、上記フィラーワイヤは軸線方向に沿ってフィラーユニット側に押し戻される力を受けることになるが、上記高い進入角度と、屈曲部での力の作用方向の変化と、フィラーワイヤの直線案内作用長が長いこと等が関係して途中で座屈して詰まってしまい、ビードずれが発生することがある。そして、このようなビードずれが発生したワークは商品価値を失って不良品になってしまい、頻繁な不良品の発生は、加工コストが比較的高い溶接部品等の製造において大きな損失となる。
【０００６】
本発明は、このような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、フィラーワイヤの先端部が溶接池に突き当たっても座屈することなく円滑に進退することができ、しかもフィラーワイヤの進退方向をビードずれの発生が少なくなる方向に調整して、溶接品質を向上させることができるＴＩＧ溶接ヘッド及び該ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するべく本発明の請求項１によるＴＩＧ溶接ヘッドは、先端部の中心にタングステン電極、先端部の周囲にガスノズルを備えた溶接トーチと、フィラーワイヤの供給を案内するワイヤガイドと該ワイヤガイドを保持するフィラーホルダとを備えたフィラーユニットと、上記溶接トーチとフィラーユニットとを連結して一体に保持する連結アームと、を具備し、上記ワイヤガイドには、フィラーワイヤがワークの被溶接部に対して所定の低い進入角度で円弧状に繰り出されるように案内する円弧状屈曲部が形成されており、上記円弧状屈曲部の下流の近傍位置には、作用長が短かく、内部のガイド穴に絞り部と拡径部とが形成された先端チップが取り付けられていることを特徴とするものである。
【０００８】
また、請求項２によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項１記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記ワイヤガイドから繰り出されるフィラーワイヤの進入角度は、４５°より小さな角度に設定されていることを特徴とするものである。
【０００９】
また、請求項３によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項１または２に記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記連結アームの上記フィラーユニットとの連結部には、フィラーユニットの上下方向、前後方向及び左右方向への調整移動を可能にする長穴が形成された調整金具と、移動したフィラーユニットを正規の位置に戻す付勢手段とが設けられていることを特徴とするものである。
【００１０】
また、請求項４によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項３記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記調整金具は、長穴の形成方向や長さを異ならせた複数の調整金具を組み合わせることによって構成されていることを特徴とするものである。
【００１１】
また、請求項５によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項３または４に記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記付勢手段は、付勢力を異ならせた複数の付勢手段を予め用意しておき、ワークの種類や形状、大きさの違いあるいは使用条件に応じて最適なものを選択して使用するようにしたことを特徴とするものである。
【００１２】
また、請求項６によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項１〜５のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記フィラーユニットは、上記連結アームに対して接近離反方向にスライドして進退移動するように構成されていることを特徴とするものである。
【００１３】
また、請求項７によるＴＩＧ溶接ヘッドは、請求項１〜５のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッドにおいて、上記フィラーユニットは、上記連結アームに対して揺動軸を中心に揺動して接近離反方向に進退移動するように構成されていることを特徴とするものである。
【００１４】
また、請求項８によるＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置は、溶接トーチと、フィラーユニットと、上記溶接トーチとフィラーユニットとを連結する連結アームと、を備えたＴＩＧ溶接ヘッドと、上記ＴＩＧ溶接ヘッドを先端部に備え、目標の溶接ポイントに向けて３次元的に移動するロボットアームと、上記ロボットアームの基端部に設けられ、上記ロボットアームに駆動力を付与する駆動装置と、上記ロボットアームの移動を制御するコントロール装置と、を具備し、上記ＴＩＧ接続ヘッドとして、請求項１〜７のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッドを使用したことを特徴とするものである。
【００１５】
そして、上記手段によって以下のような作用が得られる。まず、ワイヤガイドに対してフィラーワイヤがワークの被溶接部に対して所定の低い進入角度で円弧状に繰り出されるように案内する円弧状屈曲部を設けたことにより、フィラーワイヤは円弧状屈曲部に案内されて、無理なく自然に上記ワークの被溶接部に沿うように繰り出される。
また、上記円弧状屈曲部の下流の近傍位置に作用長が短く、内部のガイド穴に絞り部と拡径部とが形成された先端チップを取り付けたことにより、上記円弧状屈曲部を通過したフィラーワイヤは、絞り部において僅かにワイヤガイドのガイド穴に接して方向が規制された後、下流の拡径部ではガイド穴に接することなく、そのまま円弧状に繰り出されるようになる。
【００１６】
また、先端チップから繰り出されたフィラーワイヤの先端部が溶接トーチから発せられたアークによって形成される溶融池の底部に突き当たったとしても、上記フィラーワイヤに作用する力は、上述した所定の低い進入角度の円弧状の軌跡に沿った方向にかかるため、ワークの被溶接部とフィラーワイヤの先端部との間の隙間は大きく変動することなく、一定の範囲に抑えられる。したがって、上記隙間の大きな変動に起因して従来、生じていたビードのずれは発生しない。
【００１７】
また、上記フィラーワイヤの進入角度を４５°より小さな角度に設定した場合には、フィラーワイヤは上記円弧状の軌跡に沿って円滑に最も理想的な状態で繰り出されるようになる。
また、上記連結アームの上記フィラーユニットとの連結部に、フィラーユニットの上下方向、前後方向及び左右方向への調整移動を可能にする長穴が形成された調整金具を設けた場合には、フィラーワイヤが上記溶融池の底部に突き当たった時の後退方向の移動量の一部または全部が上記長穴によって吸収されるため、フィラーワイヤの座屈による詰まりは、より確実に防止されるようになる。
【００１８】
また、上記移動したフィラーユニットを正規の位置に戻す付勢手段を設けた場合には、上記フィラーワイヤが上記溶融池の底部に突き当たった時の後退方向の力の一部または全部が上記付勢手段の付勢力によるクッション作用によって吸収されるようになる。
また、移動したフィラーユニットは付勢手段の付勢力によって瞬時に元の正規の位置に復帰できるようになる。
【００１９】
また、上記調整金具を、長穴の形成方向や長さを異ならせた複数の調整金具を組み合わせることによって構成した場合には、フィラーユニットの３次元的な複雑な調整移動を比較的簡単な構成で実現できるようになる。
また、上記付勢手段の付勢力を異ならせたものを予め複数用意しておき、ワークの種類や形状、大きさの違いあるいは使用条件に応じて最適なものを選択して使用するように構成した場合には、ワークの種類や大きさあるいは使用条件が異なったとしても、常に最適な状態でフィラーユニットを保持できるようになる。
【００２０】
また、上記フィラーユニットを上記連結アームに対して接近離反方向にスライドして進退移動するように構成した場合には、フィラーワイヤが上記溶融池の底部に突き当たった時の衝撃の大部分を上記フィラーユニットのスライド方向の動きによって吸収することが可能になる。
また、上記フィラーユニットを上記連結アームに対して揺動軸を中心に揺動して接近離反方向に進退移動するように構成した場合には、フィラーワイヤが上記溶融池の底部に突き当たった時の衝撃の大部分を上記フィラーユニットの揺動方向の動きによって吸収することが可能になる。
【００２１】
また、上記構成のＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置によれば、ビードずれのない高品質の溶接部品等を効率良く大量に生産できるようになり、溶接部品等の歩留まりを大幅に向上させる。
【発明の効果】
【００２２】
本発明によるＴＩＧ溶接ヘッド及び該ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置によると、ワークの寸法精度に影響されることなく、フィラーワイヤの座屈による詰まりや、フィラーワイヤの先端部がワークの被溶接部から大きく離れることによって生ずるビードずれを効果的に防止して高品質の溶接部品等を効率良く大量に生産できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
【図１】本発明の第１の実施の形態を示す図で、ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置を示す側面図である。
【図２】本発明の第１の実施の形態を示す図で、フィラーユニットを後退させる負荷がかかっていない状態のＴＩＧ溶接ヘッドを示す側面図である。
【図３】本発明の第１の実施の形態を示す図で、フィラーユニットを後退させるスライド方向の負荷がかかっている状態のＴＩＧ溶接ヘッドを示す側面図である。
【図４】本発明の第１の実施の形態を示す図で、フィラーユニットを後退させる揺動方向の負荷がかかっている状態のＴＩＧ溶接ヘッドを示す側面図である。
【図５】本発明の第１の実施の形態を示す図で、ＴＩＧ溶接ヘッドの先端チップ周辺を拡大して示す側断面図である。
【図６】本発明の第１の実施の形態を示す図で、連結アームの構成部材を示す分解斜視図である。
【図７】本発明の第１の実施の形態を示す図で、連結アームの組付け状態を示す側面図である。
【図８】本発明の第１の実施の形態を示す図で、連結アームの組付け状態を示す平面図である。
【図９】本発明の第２の実施の形態を示す図で、ＴＩＧ溶接ヘッドを示す側面図である。
【図１０】本発明の第２の実施の形態を示す図で、ＴＩＧ溶接ヘッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２４】
以下、図１〜８に示す第１の実施の形態と、図９、１０に示す第２の実施の形態を例にとって、本発明を実施するための形態について説明する。
（１）第１の実施の形態（図１〜８参照）
最初に図１に基づいて本発明の自動溶接装置１の概略について説明する。
図示の自動溶接装置１は後述する本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３と、上記ＴＩＧ溶接ヘッド３を先端部に備え、目標の溶接ポイントに向けて３次元的に移動するロボットアーム５と、上記ロボットアーム５の基端部に設けられ、上記ロボットアーム５に駆動力を付与する駆動装置７と、上記ロボットアーム５の移動を制御するコントロール装置９と、を具備することによって構成されている。
【００２５】
また、図示の自動溶接装置１は、６軸独立関節型の溶接ロボットによって一例として構成されており、上記ロボットアーム５は、上腕１１と前腕１３と手首１５の３つの関節から構成されている。
また、上記駆動装置７は、旋回、上下揺動、前後揺動、回転、曲げ及びひねりを各別に実行する複数のモータＭによって構成されており、コントロール装置９への数値入力データ等に基づいて上記３つの関節１１、１３、１５が適宜の方向、そして角度、動作することによってＴＩＧ溶接ヘッド３をワークＷの被溶接部１７に倣うように移動させる。
【００２６】
本実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３は、トーチ本体１９の先端部中心にタングステン電極２１、トーチ本体１９の先端部周囲にガスノズル２３を備えた溶接トーチ２５と、フィラーワイヤＦの供給を案内するワイヤガイド２７と該ワイヤガイド２７を保持するフィラーホルダ２９とを備えたフィラーユニット３１と、上記溶接トーチ２５とフィラーユニット３１とを連結して一体に保持する連結アーム３３と、を具備することによって基本的に構成されている。
【００２７】
また、溶接トーチ２５のトーチ本体１９には、加熱された溶接トーチ２５を冷却するための冷却水Ｃを供給し排出するための冷却ホース３５が接続されており、上記ガスノズル２３には、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスＧをガスノズル２３内に供給するためのガスチューブ３７が接続されている。
尚、ガスノズル２３内に供給される不活性ガス（イナートガス）Ｇは、シールドガスとも呼ばれ、ワークＷの被溶接部１７への酸素（空気）の流入を防いでワークＷの酸化を防止する役割を有している。
【００２８】
ワイヤガイド２７は、フィラーワイヤＦの供給を案内する管状の部材で、該ワイヤガイド２７の先端寄りの部分に円弧状に屈曲された円弧状屈曲部３９が形成されている。この円弧状屈曲部３９は、フィラーワイヤＦがワークＷの被溶接部１７に対して所定の低い進入角度θ（４５°より小さな角度）で円弧状に繰り出されるように案内する役割を有している。
また、上記円弧状屈曲部３９の下流の近傍位置には、先端チップ４１が取り付けられている。
【００２９】
先端チップ４１は、作用長Ｌが短かく先端部が窄まった管状の部材で、先端チップ４１の内部には、図５に示すように絞り部４３と拡径部４５とを備えたガイド穴４７が形成されている。
因みに先端チップ４１の作用長Ｌを短かくすることで、上記円弧状屈曲部３９を通過したフィラーワイヤＦの円弧状の移送軌跡を規制することなく、自然な状態でフィラーワイヤＦを繰り出すことができるようになる。また、絞り部４３を形成することでフィラーワイヤＦとの接触長を短かくして接触抵抗を減少させ、拡径部４５を形成することで、上記フィラーワイヤＦの円弧状の移送軌跡をそのまま維持してワークＷの被溶接部１７に対して、無理なく円滑にフィラーワイヤＦを供給できるようになる。
【００３０】
フィラーホルダ２９は、両端部がそれぞれ逆方向に鉤状に屈曲した側面視Ｚ字状の支持アーム４９と、上記ワイヤガイド２７の取付け角度を調整するための傾斜した円弧状の長穴５１が２個ずつ、水平方向の長穴５２が１個ずつ、そしてガイドボルト５６を取り付けるための取付け穴５４Ａないしネジ穴５４Ｂがそれぞれ１個ずつ形成された２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂとを備えることによって構成されている。
尚、上記支持アーム４９とワイヤガイド２７間の固定と、上記支持アーム４９と上記２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂ間の固定と、上記２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂと後述する連結アーム３３間の固定は、固定ボルト５５を使用して行われている。
【００３１】
連結アーム３３は、上記溶接トーチ２５のトーチ本体１９を挟持状態で保持するアームブロック５７と、上記フィラーユニット３１の上下方向Ｚ、前後方向Ｙ及び左右方向Ｘへの調整移動を可能にする長穴５９、５９、…が形成された調整金具６１と、移動したフィラーユニット３１を正規の位置に戻す付勢手段の一例である２本の圧縮コイルバネ６３、６３と、上記圧縮コイルバネ６３に挿嵌して使用される２本の組付けボルト６５、６５と、を具備することによって構成されている。
【００３２】
アームブロック５７には、上記トーチ本体１９を挟持状態で受け入れるための受入れ穴６７と、該受入れ穴６７とアームブロック５７の基端面との間に形成されるすり割６９と、該すり割６９が形成された左右の翼片７１、７１を接続固定するための接続穴７３、７３とが形成されている。
そして、上記接続穴７３、７３には、図６〜８に示す接続固定ボルト７５が貫通状態で挿嵌され、接続固定ナット７７によって該アームブロック５７は、上記トーチ本体１９に対して強固に固定される。
【００３３】
調整金具６１は、長穴５９、５９、…の形成方向や長さを異ならせた３種類の調整金具６１Ａ、６１Ｂ、６１Ｃを組み合わせることによって構成されている。
調整金具６１Ａ、は側面視逆Ｔ字状をしたブロック状の部材で、垂直部７９には上下方向Ｚに延びる長穴５９Ａが形成され、水平部８１には上記２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂ間に取り付けられるガイドボルト５６を受け入れる前後方向Ｙに延びる長穴５９Ａと、上記２枚の調整板５３Ａ、５３Ｂを当該連結アーム３３に締結固定する固定ボルト５５と螺合するネジ穴８３とが形成されている。
【００３４】
調整金具６１Ｂは、平面視コの字状に折り曲げられた板状の部材で、左右の耳部８５、８５と、これらの耳部８５、８５によって挟まれた端面部８７とによって構成されている。そして、上記端面部８７には左右方向Ｘに延びる２本の長穴５９Ｂ、５９Ｂが上下に間隔を隔てて形成されている。
調整金具６１Ｃは、矩形平板状の座金様の部材で、上下方向Ｚに延びる短い２本の長穴５９Ｃ、５９Ｃが上下に間隔を隔てて形成されている。
【００３５】
圧縮コイルバネ６３は、バネ力が違う一例として６種類の圧縮コイルバネ６３が予め用意されており、ワークＷの種類や形状、大きさの違いあるいは負荷の大きさ等の使用条件に応じて適宜、最適なものを選択して使用するようにする。
組付けボルト６５は、上記圧縮コイルバネ６３、調整金具６１Ａ、６１Ｂ、６１Ｃを挿嵌して使用する長寸のボルトで、上記アームブロック５７のすり割６９が形成されていない先端面側に形成されているネジ穴８９に螺合されることによって固定される。
そして、上記圧縮コイルバネ６３を上記組付けボルト６５に介在させることによって上記フィラーユニット３１は、上記連結アーム３３に対して接近離反方向に進退移動できるように構成されている。
【００３６】
尚、フィラーユニット３１に垂直方向の成分を含まないほとんど水平方向の力が作用した場合には、上述した長穴５９、５９、…と、圧縮コイルバネ６３とによる作用によって、図３に示すように上下の圧縮コイルバネに均等に負荷がかかってフィラーユニット３１は、水平方向にスライドして後退するようになる。
一方、フィラーユニット３１に垂直方向の成分を幾らか含んだ水平方向の力が作用した場合には、上述した長穴５９、５９、…と、圧縮コイルバネ６３とによる作用によって、図４に示すようにフィラーユニット３１は、揺動方向に揺動しながら後退するようになる。
【００３７】
次に、このようにして構成される第１の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３の作動態様について図２〜４及び図５に基づいて説明する。
ＴＩＧ溶接ヘッド３が図５中、Ａの方向に進行している時、通常はフィラーユニット３１から繰り出されたフィラーワイヤＦの先端は、ワークＷの被溶接部１７から１ｍｍ程度、上方に離れた位置を移動する。
したがって、フィラーワイヤＦの先端はワークＷの被溶接部１７に形成される溶融池９１の底部に突き当たることなく溶融し、上記被溶接部１７の形状に沿った美しいビード９３が形成される。
【００３８】
また、ワークＷが例えば自動車やオートバイのマフラーのようなプレス製品である場合には、寸法精度にバラ付きがあるため、上記フィラーワイヤＦの先端が上記溶融池９１の底部に突き当たって図５中、Ｂの後退方向に押し戻される力を受けることがある。
しかし、このような場合でも、上記調整板５３Ａ、５３Ｂの長穴５９、５９、…と圧縮コイルバネ６３、６３との作用によって当該フィラーワイヤＦは座屈して詰まることなくフィラーユニット３１と一体になって後退方向Ｂに移動する。
【００３９】
そして、この時、上記フィラーワイヤＦの先端部が、ワークＷの被溶接部１７から大きく離れることなく移動するため、上記通常時と同様の美しいビード９３がそのまま継続して形成されて行く。
したがって、フィラーワイヤＦの詰まりに起因する溶接作業の中断は生ぜず、ビードずれのない高精度のＴＩＧ溶接が効率良く実行されて高品質の溶接部品ないし溶接製品が歩留まり良く製造されるようになる。
【００４０】
（２）第２の実施の形態（図９、１０参照）
次に、上記第１の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３と部分的構成を異にする第２の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３Ａの構造を図９に基づいて説明する。
尚、第２の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３Ａの基本的構成は、上記第１の実施の形態によるＴＩＧ溶接ヘッド３と同様であるので、ここでは第１の実施の形態と異なる構成に絞って説明する。
【００４１】
即ち、本実施の形態では、調整金具９５と付勢手段９７とアームブロック１０３の構造が上記第１の実施の形態による調整金具６１と付勢手段６３とアームブロック５７の構造と相違している。
具体的には、調整金具９５は、上記調整金具６１と同様、長穴５９、５９、…の形成方向や長さを異ならせた３種類の調整金具９５Ａ、９５Ｂ、９５Ｃを組み合わせることによって構成されている。
【００４２】
調整金具９５Ａは、側面視逆Ｔ字状をしたブロック状の部材で、垂直部１０９には、後述する揺動軸９９と嵌合する嵌合穴１１１が形成され、水平部１１３には、上記調整金具６１Ａの水平部８１と同様に前後方向Ｙに延びる長穴１５９Ａと図示しないネジ穴とが形成されている。
調整金具９５Ｂは、上記調整金具６１Ｂと同様、平面視コの字状に折り曲げられた板状の部材で、左右の耳部１１５、１１５には前後方向Ｙに延びる長穴１５９Ｂが形成されている。
【００４３】
また、上記調整金具９５Ｂの端面部１１７には、上記調整金具６１Ｂと同様の左右方向Ｘに延びる図示しない長穴が形成されている。
調整金具９５Ｃは、上記調整金具６１Ｃと同様の矩形平板状の座金様の部材で、上下方向Ｚに延びる図示しない長穴が形成されている。
また、本実施の形態では、付勢手段として捩りコイルバネ９７が使用されており、該捩りコイルバネ９７の一端は、上記調整金具９５Ａに係止され、捩りコイルバネ９７の他端は、上記調整金具９５Ｂあるいは次に述べるアームブロック１０３に係止されている。
【００４４】
アームブロック１０３は、上記アームブロック５７と基本的には同様の構成を有しており、上記アームブロック５７の構成に加えて、アームブロック１０３の先端部に上記調整金具９５Ａの垂直部１０９を受け入れるスリット１０５と、上記調整金具９５Ｂの耳部１１５に形成されていたのと同様の前後方向Ｙに延びる長穴１０７が形成されている。
【００４５】
そして、このような構成のＴＩＧ溶接ヘッド３Ａを採用することによって、上記フィラーユニット３１は、上記連結アーム３３のアームブロック１０３に対して前後方向Ｙに移動しながら揺動軸９９を中心に揺動して接近離反方向に進退移動するように構成されている。
また、このような構成のＴＩＧ溶接ヘッド３Ａを使用した場合にも、上記第１の実施の形態と同様の作動態様が実行され、高品質の溶接部品ないし溶接製品が歩留まり良く製造されるようになる。
【００４６】
尚、本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３及び該ＴＩＧ溶接ヘッド３を備えた自動溶接装置１は、上述した実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での設計変更が可能である。
例えば、自動溶接装置１のロボットアーム５は、多関節式のロボットアーム５に限らず、直交座標系や円筒座標系のスライド式やスライドと旋回を組み合わせた方式のロボットアーム５等を採用することも可能である。
【００４７】
また、調整金具６１の構成も種々採用でき、１種類や２種類あるいは４種類以上の調整金具６１を使用する構成であっても構わないし、付勢手段６３の構成も板バネ等、他のバネ部材を使用した構成や、ゴム材の弾性反発力を利用した構成等、種々の構成が採用可能である。
また、本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３は、既存のＴＩＧ溶接ヘッドと差し替えてその全部を使用する他、既存のＴＩＧ溶接ヘッドの一部の構成部材（例えば、ワイヤガイドと先端チップと連結アーム）を本発明のＴＩＧ溶接ヘッド３の構成部材（例えば、ワイヤガイド２７と先端チップ４１と連結アーム３３）と差し替えて使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【００４８】
本発明のＴＩＧ溶接ヘッド及び該ＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置は、ＴＩＧ溶接を行っている溶接現場等で利用でき、特にプレス製品等、寸法精度にバラ付きがあるワークに対しても効率良くＴＩＧ溶接を実行し、溶接部品ないし溶接製品の溶接品質を向上させたい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【００４９】
１ 自動溶接装置
３ ＴＩＧ溶接ヘッド
５ ロボットアーム
７ 駆動装置
９ コントロール装置
１１ 上腕
１３ 前腕
１５ 手首
１７ 被溶接部
１９ トーチ本体
２１ タングステン電極
２３ ガスノズル
２５ 溶接トーチ
２７ ワイヤガイド
２９ フィラーホルダ
３１ フィラーユニット
３３ 連結アーム
３５ 冷却ホース
３７ ガスチューブ
３９ 円弧状屈曲部
４１ 先端チップ
４３ 絞り部
４５ 拡径部
４７ ガイド穴
４９ 支持アーム
５１ 長穴
５２ 長穴
５３ 調整板
５４Ａ 取付け穴
５４Ｂ ネジ穴
５５ 固定ボルト
５６ ガイドボルト
５７ アームブロック
５９ 長穴
６１ 調整金具
６３ 圧縮コイルバネ（付勢手段）
６５ 組付けボルト
６７ 受入れ穴
６９ すり割
７１ 翼片
７３ 接続穴
７５ 接続固定ボルト
７７ 接続固定ナット
７９ 垂直部
８１ 水平部
８３ ネジ穴
８５ 耳部
８７ 端面部
８９ ネジ穴
９１ 溶融池
９３ ビード
９５ 調整金具
９７ 捩りコイルバネ（付勢手段）
９９ 揺動軸
１０１ 揺動長穴
１０３ アームブロック
１０５ スリット
１０７ 長穴
１０９ 垂直部
１１１ 嵌合穴
１１３ 水平部
１１５ 耳部
１１７ 端面部
１５９ 長穴
Ｗ ワーク
Ｍ モータ
Ｆ フィラーワイヤ
Ｃ 冷却水
Ｇ 不活性ガス
Ｌ 作用長
Ｚ 上下方向
Ｙ 前後方向
Ｘ 左右方向
Ａ 進行方向
Ｂ 後退方向
θ 進入角度
【特許請求の範囲】
【請求項１】
先端部の中心にタングステン電極、先端部の周囲にガスノズルを備えた溶接トーチと、
フィラーワイヤの供給を案内するワイヤガイドと該ワイヤガイドを保持するフィラーホルダとを備えたフィラーユニットと、
上記溶接トーチとフィラーユニットとを連結して一体に保持する連結アームと、を具備し、
上記ワイヤガイドには、フィラーワイヤがワークの被溶接部に対して所定の低い進入角度で円弧状に繰り出されるように案内する円弧状屈曲部が形成されており、上記円弧状屈曲部の下流の近傍位置には、作用長が短かく、内部のガイド穴に絞り部と拡径部とが形成された先端チップが取り付けられていることを特徴とするＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項２】
上記ワイヤガイドから繰り出されるフィラーワイヤの進入角度は、４５°より小さな角度に設定されていることを特徴とする請求項１記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項３】
上記連結アームの上記フィラーユニットとの連結部には、フィラーユニットの上下方向、前後方向及び左右方向への調整移動を可能にする長穴が形成された調整金具と、移動したフィラーユニットを正規の位置に戻す付勢手段とが設けられていることを特徴とする請求項１または２に記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項４】
上記調整金具は、長穴の形成方向や長さを異ならせた複数の調整金具を組み合わせることによって構成されていることを特徴とする請求項３記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項５】
上記付勢手段は、付勢力を異ならせた複数の付勢手段を予め用意しておき、ワークの種類や形状、大きさの違いあるいは使用条件に応じて最適なものを選択して使用するようにしたことを特徴とする請求項３または４に記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項６】
上記フィラーユニットは、上記連結アームに対して接近離反方向にスライドして進退移動するように構成されていることを特徴とする請求項１〜５のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項７】
上記フィラーユニットは、上記連結アームに対して揺動軸を中心に揺動して接近離反方向に進退移動するように構成されていることを特徴とする請求項１〜５のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項８】
溶接トーチと、フィラーユニットと、上記溶接トーチとフィラーユニットとを連結する連結アームと、を備えたＴＩＧ溶接ヘッドと、
上記ＴＩＧ溶接ヘッドを先端部に備え、目標の溶接ポイントに向けて３次元的に移動するロボットアームと、
上記ロボットアームの基端部に設けられ、上記ロボットアームに駆動力を付与する駆動装置と、
上記ロボットアームの移動を制御するコントロール装置と、を具備し、
上記ＴＩＧ接続ヘッドとして、請求項１〜７のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッドを使用したことを特徴とするＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置。
【請求項１】
先端部の中心にタングステン電極、先端部の周囲にガスノズルを備えた溶接トーチと、
フィラーワイヤの供給を案内するワイヤガイドと該ワイヤガイドを保持するフィラーホルダとを備えたフィラーユニットと、
上記溶接トーチとフィラーユニットとを連結して一体に保持する連結アームと、を具備し、
上記ワイヤガイドには、フィラーワイヤがワークの被溶接部に対して所定の低い進入角度で円弧状に繰り出されるように案内する円弧状屈曲部が形成されており、上記円弧状屈曲部の下流の近傍位置には、作用長が短かく、内部のガイド穴に絞り部と拡径部とが形成された先端チップが取り付けられていることを特徴とするＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項２】
上記ワイヤガイドから繰り出されるフィラーワイヤの進入角度は、４５°より小さな角度に設定されていることを特徴とする請求項１記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項３】
上記連結アームの上記フィラーユニットとの連結部には、フィラーユニットの上下方向、前後方向及び左右方向への調整移動を可能にする長穴が形成された調整金具と、移動したフィラーユニットを正規の位置に戻す付勢手段とが設けられていることを特徴とする請求項１または２に記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項４】
上記調整金具は、長穴の形成方向や長さを異ならせた複数の調整金具を組み合わせることによって構成されていることを特徴とする請求項３記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項５】
上記付勢手段は、付勢力を異ならせた複数の付勢手段を予め用意しておき、ワークの種類や形状、大きさの違いあるいは使用条件に応じて最適なものを選択して使用するようにしたことを特徴とする請求項３または４に記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項６】
上記フィラーユニットは、上記連結アームに対して接近離反方向にスライドして進退移動するように構成されていることを特徴とする請求項１〜５のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項７】
上記フィラーユニットは、上記連結アームに対して揺動軸を中心に揺動して接近離反方向に進退移動するように構成されていることを特徴とする請求項１〜５のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッド。
【請求項８】
溶接トーチと、フィラーユニットと、上記溶接トーチとフィラーユニットとを連結する連結アームと、を備えたＴＩＧ溶接ヘッドと、
上記ＴＩＧ溶接ヘッドを先端部に備え、目標の溶接ポイントに向けて３次元的に移動するロボットアームと、
上記ロボットアームの基端部に設けられ、上記ロボットアームに駆動力を付与する駆動装置と、
上記ロボットアームの移動を制御するコントロール装置と、を具備し、
上記ＴＩＧ接続ヘッドとして、請求項１〜７のいずれかに記載のＴＩＧ溶接ヘッドを使用したことを特徴とするＴＩＧ溶接ヘッドを備えた自動溶接装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２０１０−２４７１８４（Ｐ２０１０−２４７１８４Ａ）
【公開日】平成２２年１１月４日（２０１０．１１．４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−９９１５０（Ｐ２００９−９９１５０）
【出願日】平成２１年４月１５日（２００９．４．１５）
【出願人】（５０９１０８４８９）
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年１１月４日（２０１０．１１．４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年４月１５日（２００９．４．１５）
【出願人】（５０９１０８４８９）
【Ｆターム（参考）】
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