説明

TMS研究用コイルの位置決め方法及び装置

【課題】一度患者の頭が位置付けされると、前記患者の頭の座標系に対する前記患者の頭の簡単な位置付けと、TMSコイルの簡単な位置付けを提供可能な装置。
【解決手段】位置決めアセンブリは、TMSコイルの重さをサポートし、オペレータが、患者の運動限界位置(MTP)及び/または治療位置(TXP)を探すためにTMSコイルを自由に動かすことを可能にする。TXPが前記MTPと位置合せされ、MTPが決定されると、位置決めアセンブリはTXPの位置をみつけるには磁石位置を一度調節するだけでよく、ここでコイルはTMS治療の間ロックされる。患者の頭の各座標方向で異なる調整可能な要素の位置を記録することにより、以降の臨床通院でその患者用に前記TMSコイルを正確に再度位置付けすることが、高価なイメージング装置の使用なしに可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に対して正確に医療器具を位置付けるための方法と装置に関するものであり、より詳しくは経頭蓋磁気刺激コイルを正確に且つ繰返可能に患者の治療位置に配置するための位置決めシステムと方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経頭蓋磁気刺激(TMS)研究用のコイルの配置及び位置付けのための現在の方法は、手動の方法、または、位置決め基準用の三次元空間座標を決定するために高価で複雑なイメージングまたは計算システムを必要とする、研究用に設計されたものである。これらの技術は、厳しい臨床上の制約を有する。手動の方法は、繰り返し正確に配置するための便利な手段を提供しないが、画像診断法に基づく3次元空間の方法は高価で時間がかかり、臨床用途には役立たない。効率的で安価な形式でTMS研究及び治療用にオペレータが繰り返し正確にコイルを配置することができる簡単な方法を提供する臨床用途のための位置決め技術が必要とされている。
【0003】
手動方法
従来の手動配置及び位置記録の技術による手動方法では、患者の頭の治療位置、または運動限界位置(MTP)等の治療位置を探すために使用される位置が、所望される運動反応が得られるまで患者の解剖学的ランドマークによって限定される予測エリアの近辺でコイルを移動することによって決定される。前記位置は、例えば患者の頭上にインクマークを付けてマークされる。たとえば、うつ病治療のためにTMSコイルを使用するケースでは、TMS療法位置は、MTPから前方向の線に沿って所定の距離(一般に認められる距離)、コイルを動かすことによって決定される。次に前記治療位置(TXP)が患者に(インクで)マークされ、次の療法セッションにおいて容易に分かるようにする。
【0004】
TMS研究用に使用されるローカリゼーションの最も一般の方法はジョージらによる「Daily Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation (rTMS) Improves Mood in Depression」, NeuroReport, Vol. 6, No. 14, October 1995, pp. 1853−1856、及びPascual−Leoneらによる「Rapid−Rate Transcranial Magnetic Stimulation of Left Dorsolateral Prefrontal Cortex in Drug−Resistant Depression」, The Lancet, Vol. 348, July 27,1996, pp. 233−237に記載される。簡単に言うと、これらの方法において、コイルは、まず左の運動皮質エリア上で対側の短母指外転筋(APB)の刺激が得られるまで移動される。この位置は、運動限界位置(MTP)であって、通常、左の聴覚道(外耳道等)と頭頂部の間の線上にあり頭頂部から約1/2〜2/3の距離に位置する。うつ病治療のための左の前頭前皮質の興奮刺激の場合、たとえば、前記TXPは、前記MTPから開始し、鼻の頂点から鼻根点(鼻梁すぐ上の隆起)の間の中心点の方へ5cmを移動した位置にある。前記MTPを決定するための技術の更なる詳細は、関連する米国特許出願である、2003年11月17日付け出願の出願番号第10/714,741号明細書にも記載されるが、ここに言及することにより本明細書に取り込まれる。
【0005】
このような手動方法の欠点は、前記MTPから前記TXPへの線を正確に決定するのは困難で、患者に付けたマークは治療セッションとセッションの間で洗い落とされる可能性があり、外見的にも望ましくなく、治療セッションの間、コイルを前記TXPにおいて保持するのは楽ではなく、また本技術はオペレータへの依存度が高く、繰返し正確に位置決めするのには役立たない。
患者にマークを付ける問題に関しては、患者の代わりに水泳帽や同様の密着する帽子にマークを付けることが教示されている。もちろん、このアプローチでは後続の治療セッションで慎重な位置合せを必要とし、おおざっぱで不正確且つオペレータへの依存度が高いものである。さらに、このようなアプローチは、正確なコイル配置とコイルを適切に保持するための機構も更に必要とする。
【0006】
複雑なイメージング/計算システム
カナダのモントリオール市のRogue Research、Incによって開発され、Magstimによって配給されるBrainsight(商標)システムは複雑で、主に研究目的のために設計されている。このシステムは、内部解剖学的組織と外部ランドマーク間の空間関係を決定するためにMRIまたはPETシステムからの診断のイメージを使用し、正確な位置決めが必要な療法および他の研究のために外部ランドマークに位置合せする。この方法は研究目的のために有用であるが、非常に非実用的且つ複雑で、一般的な臨床診療では利用できない。さらに、この種の技術は、一般にイメージの上へ座標系をかぶせるために用いられ、特定の治療用に特定の治療位置を識別するためのものではない。
【0007】
TMSコイルを保持するためのロボットのアーム
米国特許第6,266、556号明細書および米国特許出願第2003/0050527号明細書では、TMSコイルに動作可能に連結するロボットアームの方法が記載されるが、これは患者に対するTMSコイルを位置決め、及びTMS治療の間コイルを保持するためのものである。コイル配置のためにロボットアームを使用している同様の技術が、Tannerらによる米国特許出願第2003/0004392号明細書、およびTannerの米国特許出願2003/0065243号明細書において開示される。これらの特許出願明細書は、さらに刺激モデルを使用して適当な刺激位置を決定するための患者の脳の空間構造をモデル化する技術を開示する。これらの技術はコイルの制御された移動および配置を提供するものであるが、費用が高く、臨床環境で特定の患者の頭に対してコイルを繰返し配置することは提供しない。その結果、上述した手動および/または複雑な画像技術を、コイルの配置のために前記患者に対して使用する必要もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、臨床環境で正確に且つ繰返可能にTMS療法のためにコイル配置を行う単純で経済的、且つ直覚的な方法の必要性は、従来技術では満たされていない。本発明は、この必要性について取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、患者の頭の簡単な位置決めと、前記頭の位置決めができた後に前記患者の頭の座標系に関連して前記TMSコイルの簡単な位置決めとを提供する機械的装置を使用することにより、従来技術の上記の制約について取り組むものである。前記TMSコイルは、前記患者の頭の座標系中の治療位置で固定され、前記座標系の位置は次の臨床セッションために記録される。典型的な実施形態において、前記位置決めアセンブリは、前記TMSコイル(強磁性の心材を使用する設計の場合約5ポンド)の重さをサポートして、オペレータが治療位置および/または患者の運動限界位置(MTP)を探す際に自由に前記TMSコイルを移動することが可能な機械システムである。一旦MTPが決定されると、前記位置決めアセンブリは治療位置(TXP)を位置決めするために磁石位置を一度調整するだけでよく、そこでTMS療法の間、前記コイルはロックされる。
前記患者の頭の座標系のそれぞれの座標方向において異なる調節可能な要素の位置を記録することにより、次からの臨床通院の際に前記患者用に正確に前記TMSコイルを位置決めすることが高価なイメージング装置の使用なしに行うことが出来る。本明細書において記載されている典型的な実施形態は、治療を受ける患者に対して経頭蓋磁気刺激(TMS)コイルを繰返可能に配置するための装置を説明するものである。本発明の装置は、3つの基礎要素を含むものであるが、それぞれTMS技術に特有のものである。ヘッドセットアセンブリは前記患者の頭を受け入れて、その位置を固定するものであるが、一方、コイル位置決めアセンブリは、前記ヘッドセットアセンブリを受け入れて、固定位置で前記ヘッドセットアセンブリおよび前記患者の頭を保持し、前記固定位置に基づいて定義する座標系内での前記TMSコイルの位置決めを制御して、治療の間、治療位置で前記TMSコイルを保持する。前記患者の解剖学的ランドマークと位置合せされる位置で適用されるアライメント・ストリップは、前記ヘッドセットアセンブリ内で前記患者の頭と位置合せするための少なくとも1つの位置合せマークを含む。これらの要素の各々が一緒に機能して、前記患者の頭に対して前記コイルアセンブリを座標中に配置することを可能し、後続の治療の際に前記座標を再現することにより治療を繰り返し行うことができるようになる。
【0010】
記載される典型的な実施形態では、緊急時または治療休止の際に患者を前記ヘッドセットアセンブリと前記コイル位置決めアセンブリから素早く取り外すことを可能にするように、簡易脱着式紐によって、前記患者の頭はヘッドセットアセンブリ中に保持される。前記コイル位置決めアセンブリは、前記患者の解剖学的ランドマークと前記コイル位置決めアセンブリを位置合せする照準合わせ機構を更に含み、患者の鼻を通る枢支軸を定義する。前記照準合わせ機構は、例えば、前記患者の目の端に位置合せ可能な位置合せマークを含んでもよい。前記コイル位置決めアセンブリは、また、前記TMSコイルをサポートするジンバル取付台を含むことができる。また、前記ジンバル配置と前記コイルの重さ用のカウンターバランスを、前記患者の頭にかかる重さを相殺するために使用してもよい。前記ジンバル配置は、前記TMSコイルが患者の頭に配置されるように、前記TMSコイルのロールを調整する機構を更に含んでもよい。他方、前記コイル位置決めアセンブリは、前記ジンバル取付台の代わりに、前記TMSコイルをサポートするボールとソケットを有しても良い。
【0011】
本発明は、治療を受ける患者に対して繰返可能に経頭蓋磁気刺激(TMS)コイルを配置するために本発明の要素を使用する多数の方法も含む。たとえば、本発明による第1の方法は、
前記患者の頭を固定位置に固定する工程と、
前記固定位置に関する座標系を定義する工程と、
前記TMSコイル用に前記患者の治療位置を見つける工程と、
前記座標系で前記治療位置の座標を記録する工程と、
治療の間に前記TMSコイルを前記治療位置で機械的にサポートする工程と、を有する。
【0012】
この方法の典型的な実施形態において、前記患者の頭を固定位置に固定する工程は、
前記患者の後頭部を受け入れるためのクッションと、
前記患者の頭を頷く方向および左右方向で制止させるアライメント紐とを有するヘッドセットアセンブリに前記患者の頭を配置する工程と、
位置合せマークを有するアライメント・ストリップを、前記位置合せマークと前記患者の解剖学的ランドマークとの位置が合う位置に適用する工程と、
第1のアライメント紐を前記患者の後頭部から頭頂部上を経て、アライメント・ストリップ上のアライメント位置まで巻きつける工程と、
前記患者の顔が正中矢状面の左右方向で中央に位置するように、前記アライメント紐の一対の横側紐を前記患者の後頭部からそれぞれの側面を囲むようにアライメント・ストリップ上のアライメント位置まで巻きつける工程と、を有する。
【0013】
例えば、前記アライメント・ストリップは前記患者の額に適用され、前記位置合せマークは前記患者の鼻と位置合わせされる。この場合、前記方法は、前記横側紐が前記アライメント紐の位置合せマークにおいて同じ長さになるまで、患者の頭の位置を調整する工程を更に有する。
【0014】
本発明の方法によると、前記治療位置を見つける工程は、前記正中矢状面に対して左または右の上斜面の角度を調整する第1調整機構を調整する工程と、前記左または右の上斜面での前後距離を調整するための第2の調整機構を調整する工程をさらに有するものである。運動限界位置を探す際に、たとえば、これらの第1と第2の調整機構は、前記正中矢状面に対して異なる角度のそれぞれの上斜面での座標のグリッドパターンと、各当該上斜面内の異なる位置とを定義するために、前記治療位置の1つと前記治療位置のインジケータが見つかるまで交互に前後方向で調整してもよい。一旦、前記運動限界位置が見つかると、例えば、うつ病のための治療位置は、前記左上斜面の前方向に5cmまたは患者の頭のサイズの関数である距離だけ第2の調整機構を単に調整することによりすぐに見つけることができる。
【0015】
本発明のさらなる実施形態によると、前記固定位置での患者の頭を固定する工程は患者の快適さと皮質興奮性に最適で、且前記患者の肩にかかる頭の重さを減らすような、横軸に対する角度で前記患者の頭を配置する工程を有する。典型的な実施形態において、前記角度は横軸から約30°〜45°である。
【0016】
以下の図面の詳細な説明に基づき、上記及び他の特徴および利点が当業者にとって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態による前記位置決めアセンブリおよび椅子の斜視図である。
【図2】図2は、患者の頭が治療位置に配置される、図1の前記位置決めアセンブリと椅子の側面図である。
【図3】図3は、本発明による、前記患者の頭に配置される使い捨てのヘッドセットの斜視図である。
【図4】図4は、図3の前記使い捨てヘッドセットの背面図である。
【図5】図5は、前記患者の鼻との位置合せ線を提供する、前記患者の額に適用される両面の粘着性のストリップである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の例証を示す実施形態の詳細な説明が図1〜5を参照しながら説明される。この説明は本発明の可能な実施の詳細な例を提供するものであるが、これらの詳細は例示のためだけのものであり、当然のことながら、本発明の範囲を制限するものではない。
【0019】
本発明は、TMS療法を使用して、脳脊髄疾患状態の治療用のTMSコイルを配置するために設計されたものである。本発明の典型的な実施形態は、うつ病治療のための左の前頭前皮質の興奮刺激に関連して説明されるが、当業者であれば、本発明の装置および技術が、他の多くの中枢神経系疾患用の他の多くの中枢神経系疾患標的のTMS療法に適用するために用いてもよいことが分かる。たとえば、本発明の位置決め装置は、うつ病治療における低頻度の抑制刺激のために患者の右前頭前皮質の上にTMSコイルを配置するために用いてもよい。当業者であれば、本発明の位置決め装置はさらに以下の治療用のTMSコイルを位置付けるために使用されてもよい:癲癇(発作場所の上)、精神分裂症(ウェルニッケ野で)、パーキンソン病、トゥレット・シンドローム、側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、注意欠陥/過活動性障害、肥満症、双極性障害/躁病、不安障害(広場恐怖症を有するまたは有さないパニック、対人恐怖、別名、社会不安障害、急性ストレス障害、全般性不安障害)、(心的)外傷後ストレス障害、(DSMの不安障害の1つ)、強迫神経症(DSMの不安障害の1つ)、痛み(片頭痛、三叉神経痛)、慢性疼痛障害(糖尿病性ニューロパシによる痛み等の神経因性疼痛、帯状疱疹後神経痛、線維筋痛及び局所筋筋膜痛症候群などの特発性痛み障害)、脳卒中後のリハビリテーション(神経再現性誘発)、耳鳴り、統合を補助するための移植神経の刺激、物質関連障害(アルコール、コカイン、アンフェタミン、カフェイン、ニコチン、大麻の依存、乱用および禁断症状の診断)、脊髄損傷および再生/リハビリテーション、頭部外傷、睡眠妨害反転(DARPA)、一次性睡眠障害(一次性不眠、一次性睡眠過剰、概日リズム睡眠障害)、認識の強化、痴呆、月経前不快気分障害(PMS)、薬物送達システム(薬に対する細胞膜の透過性の変更)、蛋白合成の誘導(転写および翻訳の誘導)、どもり、失語症、嚥下困難、本態性振戦、磁気発作治療(MST)、および脳の特定ロケーションに磁場を印加することにより治療可能な中枢神経系障害。当然のことながら、各々のケースにおいて、治療位置は変化可能であるが、各々のケースにおいて、本発明の位置決め装置は、治療の間に治療位置で繰返可能に治療ロケーションを見つけ、前記TMSコイルを保持するのに役立つ。
【0020】
本発明の位置決めアセンブリ10の典型的実施形態の斜視図が図1において示され、また本発明の位置決めアセンブリ10の側面図が図2において示される。これらの図にて示されるように、本発明の位置決めアセンブリ10は寄り掛かりいす12を含み、これは前記患者の頭および上体が治療の間、前記コイル位置決めアセンブリ18の前板16に平行となる前頭面に位置するように調整する背もたれ14を有する。前記コイル位置決めアセンブリ18は前記椅子フレーム20にロックされ、前記椅子12の背もたれ14は、図2に図示されるように、22の位置にロックされる。また前記椅子12は、患者快適さをさらに補助するために大型の着脱可能なアームレスト24および調節可能な座席クッション26を含んでもよい。調整機構28,30はそれぞれ、前記椅子背もたれ14および座席クッション26の調整を可能にする。また、1つの治療室から別の治療室への位置決めアセンブリ10の移動を容易にするために、車輪31が椅子12に、また図示されるように前記コイル位置決めアセンブリにも提供されるのが好ましい。
【0021】
典型的な実施形態において、コイル位置決めアセンブリ18の椅子背もたれ14および前板16は、横軸に30°〜45°のように、予め定められた角度にある。実際の前頭面角は、治療の間の患者の快適さを助けるために入念に選ばれる。実験を通して、約30°〜45°が所望されることがわかっているのは、この範囲であると、患者が治療の間、室内を見ることができ、それにより不安が減少されるからであるが、この事は、例えばうつ病の治療を受ける患者にとっては重要な点である。このようなリクライニング位置は、既存のTMS治療の間の位置と同様であり、患者もより快適であると感じるので、それによって新しい治療装置についての任意の不安を制御する。また、前記角度により、前記患者の頭の大部分の重さは前記ヘッドセットアセンブリにかかり、前記患者の肩の上にかかる重さを制限するとともに、落ち込みやそわそわを制限し、患者の快適さをさらに向上させる。もちろん、当業者であれば、他の角度が前頭面のために所望され、使用され、これには水平姿勢が含まれることが理解される。
【0022】
一旦前記患者が前記椅子12に快適に座ると、前記背もたれ14は、前記コイル位置決めアセンブリ18の前記前板16に平行の前頭面の位置においてロックされ、前記患者の頭は、前記コイル位置決めアセンブリのヘッドレストアセンブリ34上に着脱自在にロックされる使い捨てヘッドセットアセンブリ32に配置される。典型的な実施形態では、前記ヘッドレストアセンブリ32は、緊急の場合または前記治療を休止する必要がある際に前記患者を前記治療装置から迅速に取り外す必要が生じた場合の迅速なリリースを助ける形で着脱自在に設置される。たとえば、VELCRO(商標)パッチ36を、前記ヘッドセットアセンブリ32の背面に設置し、図4で示すように対応するVELCRO(商標)パッチ(図示せず)を前記ヘッドセットアセンブリ34に設置してもよい。このような分離特徴は、望ましくは、万が一発作が起こった時に前記患者が簡単に横側に転がることを可能にする。また、アライメントペグを前記ヘッドレストアセンブリ34に設置して、前記使い捨てヘッドセットアセンブリ32のベース部分40(図4)のアライメントノッチ38及び/または穴39を受け入れるようにしてもよい。前記ヘッドレストアセンブリ34への前記ヘッドセットアセンブリ32の適合は、患者の頭の正確な位置決めと再位置決めを可能にするために正確であるのが好ましい。
【0023】
図3は、前記使い捨てヘッドセット32の斜視図を示し、図4は前記使い捨てのヘッドセット32の背面図を示す。図示するように、前記ヘッドセット32は、患者が治療のための椅子12に寄りかかる時に、前記患者の後頭部を受け入れて、クッションで支えるクッション42,44を含む。使用の間、前記患者の後頭部は前記クッション42の上に載せられ、前記患者の首は前記クッション44の上に載せられる。3つの紐またはリボン46,48および50は、それから前記患者の頭を療法位置に位置合せするのを助けるために用いる。典型的な実施形態では、これらの紐は、DuPont Corporationから入手可能なTYVEKTM製のものである。
【0024】
前記患者の頭を前記治療位置に位置合せするために、図5に示されるタイプの使い捨て両面粘着性のストライプ52は、その中心線54が前記患者の鼻の中央と位置合わせされるように前記患者の額に適用される。このストリップは、図示されるように右左両方方向の55、56、上/下方向の57でマークされ、紐46,48および50を受け入れるための基準座標の役目をし、次回からの療法セッションで前記患者の正確な再配置を可能にする。特に、前記患者の頭の位置は、人体を左右の半分に分け、鼻を通る平面で前記患者の体に垂直な正中矢状面を定義するように調整される。これを行うために、前記横側紐46および48は、前記患者の後頭部から前部までを巻きつける。前記紐46,48は、それぞれ、徐々に増大する位置合わせマーク58,60を含り、前記患者のこめかみ部分の回りに優しく配置され、前記額ストリップ52の近くに位置づけされる。各々のリボンの位置合せマーク58、60が中心線で同等になるように前記頭が少し移動される(言い換えれば、頭が中心に置かれ、左または右に傾いていない)。前記紐46、48は次に、前記中心線に沿って切断されて、それぞれ、図5に示すように位置55,56で前記前記額ストリップ52に付着され、前記患者の頭の左右運動を制限するものである。一方、前記紐46、48は、それぞれ、位置55,56で前記額ストリップ52に付着され、これらの端は後ろに折り重ねてもよい。前記患者の頭を頷き方向に位置合わせするには、図5に示されるように前記紐50を前記患者の頭頂部を超えて優しく引っ張り、位置57で前記額ストリップ52に付着させ、余分な紐は切断するか後ろに折り重ねる。これにより、以後の頷き運動が制限する。前記紐50の位置合せマーク62が、このアライメントのために使用できる。前記額ストリップ52上の接着剤の粘着特性は、前記患者の頭が前記ヘッドセットアセンブリ32から急遽リリースする必要が生じたときに前記紐46,48および50が容易に取り外し可能となるように考慮して選択されるのが好ましい。
【0025】
一旦、前記紐46,48および50が前記額ストリップ52に適用されると、図1及び2に示されるように、次に前記患者の頭のそれぞれの横側で「U」字型の照準合わせ装置またはアライメントガイド64がその各端がホルダー66に嵌入されることによって前記患者の顔の上に配置される。前記照準合わせ装置64は、好ましくは、透明なプラスチック製で、オペレータが前記患者の目の端に位置合せできるように、前記照準合わせ装置64を通して見ることができる位置合せマーク68を含む(目の中心など、横方向の解剖学的ランドマーク(図2を参照))。前記照準合わせ装置は、前記位置合せマーク68が前記患者の目の端または他の選択された解剖学的ランドマークに合わせられるまで、前後方向にクランク70を回すことによって前記照準合わせ装置64を前後方向で前記解剖学的ランドマークと位置合わせされるように調整する。一旦この調整が行われると、前記照準合わせ装置64は取りはずされ、前記照準合わせ装置64のための設定値(位置)が記録される。典型的な実施形態において、前記照準合わせ装置64のための設定値は、図3に示されるように、前記ヘッドセットアセンブリ32のラベル72に記録される。これによって、設定値が個々の患者およびそのヘッドセット32にリンクすることができ、それはラベル74上の情報で識別されることが好ましい。当業者であれば、レーザまたは他の光学的手段もこの解剖学的位置合わせ工程を実行するために用いられることがわかる。この点までの位置合わせプロセスは、わずか1分程度で行われる。
【0026】
一旦前記患者の頭が前記ヘッドセットアセンブリ32において位置合わせされると、安定器76(図1)は前記患者の頭の横で、前記TMSコイルアセンブリの反対側に押し上げられ、前記患者の頭に前記TMSコイルが配置される間、小さな力が前記患者の頭の反対側にかけられた際に前記患者の頭が横方向に動くのを防ぐ。前記患者は、固定した繰返可能な位置にあり、円筒状、または他の座標系(デカルト等)がTMSコイル配置をガイドするために使用できる。さらに、枢支軸が前記患者の鼻の中心を通じて定義されているが、これは前記TMSコイルアセンブリを正確に配置するのに有用である。以下に説明されるように、うつ病治療における左の前頭前皮質の興奮刺激の場合、前記患者の鼻を通る正中矢状面はこの枢支軸によって回転され、前記患者の鼻上の枢支軸、前記運動限界位置(MTP)および治療位置(TXP)を含む左の上斜面が定義される。これらの点がすべて同じ面において定義されるので、一旦前記MTPが見つかると、前記TXPのロケーションは大幅に単純化される。もちろん、他の脳脊髄疾患のための他のTMS治療が実行される場合、異なる治療位置および面が特定され、前記枢支軸に対して補われる。
【0027】
次の工程は、確立されたサーチ技術を使用して、前記患者のMTPを位置決めする。本発明によれば、コネクター80を有する前記コイルアセンブリ78は、前後の調整ポストで支えられるジンバル配置に取り付けられるが、これらは一緒に前記コイルアセンブリ78の重さをサポートし、すべての軸における自由な移動を可能にする。特に、前記ジンバル配置82は、前記患者の頭に対する前記コイルアセンブリ78の設置にために前記コイルアセンブリ78のピッチ、ロール、及びヨーの調整を可能にする。前記ジンバル配置82は、前記前頭面に垂直で傾斜して配置され(例えば30°)、前記コイルの重さに対するカウンターバランス86を含み(カウンターウェイト、定荷重ばね、作用力調整可能なカムなど)、前記ジンバル配置および前後調整ポスト84が前後方向で容易に移動できるように補助する。典型的な実施形態において、カウンターバランス86はさらに、療法セッションの間に前記患者の快適さをさらに増加して、前記患者の頭に対してコイルアセンブリ78の重さに反対に作用するのを助ける。前記ジンバル配置82はさらに、前記前頭面に平行な面上で移動可能なターンテーブル88に載置され、前記患者の鼻の枢支軸で通して出る左の上斜面の角度を定義する。前記ターンテーブルも、前記コイルの重さ(カウンターウェイト、定荷重ばね、作用力調整可能なカムなど)に対するカウンターバランスを含み、新規斜角位置を定義する前頭面に平行な平面において前記ジンバル配置82が容易に移動するのを補助する。前記ターンテーブル88は、ノブ90をゆるめ、前記ターンテーブル88を(したがって、前記ジンバル配置82と前後調整ポスト84)前記患者の頭に対して異なる左上斜角に回動する。前記ターンテーブル88は、その下側の放射状のスライド92(これが緩められると、前記コイルアセンブリ78、前記ジンバル配置82および前後調整ポストが前記患者の頭の方にスライドが可能になり、前記コイルアセンブリに取り付けられる)が、予測運動限界位置(MTP)と同じ平面にくるように配置される。たとえば、右の上斜角は25°及び左の聴覚道(外耳道等)から頭の頭頂部に向かって約1/2〜2/3の距離の選択点から開始される。前記患者のMTP94は次に確立されたサーチ技術を使って決定されるが、これは、前記放射状のスライド92の位置を調整し、前記コイルアセンブリ78が前記患者の頭と接触するようにスライドできるようにし、次に前記予測MTPをグリッドにおいて探すものである。具体的には、前記サーチは前記予想MTP位置について、前記ターンテーブル88の角度位置を調整し、且つ前記調整ポスト84を徐々に上/下に動かすことによって前(鼻の方へ)/後(後頭部の方へ)位置を調整し、左の上斜角を徐々に調整して行われる。前記コイルアセンブリ78が最終的なMTP94に位置すると(例えば、ターンテーブル角度及び前後調整ポスト84の前後の位置の調整によって定義されるグリッドのパターン化されたサーチの間に見つかったグリッド位置における充分な親指痙攣に基づく)、前記ターンテーブルはノブ90を使用してロックされ、前後調整ポスト84はノブ96を使用して位置にロックされるので、それによって、前記患者の鼻、前記MTP94、およびうつ病治療の場合の治療位置(TXP)98を含む左上斜面で前記位置決めアセンブリの回転点をロックする。前記調整ポスト84の設定値およびターンテーブルからの左上斜角測定は、次に、後続の治療ためにラベル72に記録される。前記TMS測定のためのパワーレベルは、周知の技術を使用して前記MTP94で決定される。
【0028】
これで、前記MTP92及び患者の鼻の中心点を含む左の上斜面に、以降のすべてのコイル運動が置かれる。特に、うつ病治療用のTXP98は、前記前後調整ポストを調整することにより、前記コイルアセンブリを前記斜面に沿った前方向に5cm移動することにより見つけることができる。ただし、当業者であれば、前記MTP94からTXP98までの距離が前記患者の頭部のサイズの関数であることが理解される。さらに、上述したように、本発明の位置決めアセンブリ10は、前記患者の任意の解剖学的ランドマークをターゲットとして設定可能背、これによっても内部組織に相対的な繰り返し可能な位置を再現することができる。たとえば、うつ病治療のためにTXP98を見つけるために使用するMTP94をサーチするかわりに、本発明のシステムは、精神分裂症を治療するためのエリア、または他の中枢神経系障害のための他の治療位置を見つけるために使用されてもよい。
【0029】
一旦前記TXP98が見つかると、次の工程は、前記コイルアセンブリ78が前記患者の頭に快適に取り付けられるようにこれを調整することである。前記ジンバルアセンブリ78は、前記コイルアセンブリ78のピッチおよびヨーを調整するために前記患者の頭に向かって移動される。前記ジンバル配置82のこのような調節は、磁場の印加点に影響を及ぼさずに前記コイルアセンブリを空間で固定する。前記コイルアセンブリ78のロールもまた、前記ジンバルアセンブリ82の調整ノブ100を回すことにより調整でき、前記TXPにおいて前記患者の頭に対する前記コイルアセンブリの取り付けに影響する前記コイルアセンブリ78の任意のロールを調整する。前記ロールが度において測定されるのが好ましいのは、前記ロール方向の解剖学的組織に対する方向の変化が、前記TXP98における前記患者の脳の皺の方向に応じて、印加される磁場に影響を及ぼす可能性があるからである。このコイル回転(ロール)設定値も、前記ヘッドセットアセンブリ32のラベル72に記録される。前記コイルアセンブリは、今、前記TXPに位置し、患者の治療を開始できる状態にある。
【0030】
前記ターンテーブルの角度位置および前記前後調整ポストの前後位置は、通常目盛で示されるが、前記位置はまた、位置フィードバックを有する位置検出器を使用して示されてもよい。次の療法セッションにおけるこれらの測定値の使用は、前記患者の配置および位置決めの所要時間を大幅に短縮させる。前記ヘッドセットアセンブリ32のラベル72に記録することに加えて、これらの位置は、位置フィードバックを有する位置検出器を使用して自動的に読みとられて、読み込み値は前記患者の記録に入れられるように処理される、デジタル形式に記録されてもよい。位置フィードバックを有する位置検出器は、他の調整のためにも使用されてもよい。さらに、手動の調整は、モーター駆動ユニット自動的に行うようにすることもできる。もちろん、前記位置は手動で読みとられて、前記患者の医療記録を含む医療データベースにオペレータによって入力されてもよい。
【0031】
前記手順が高度に繰返可能であるので、前記患者の座標中の記録された位置(横眼角位置、左の上斜角、位置、およびコイル回転(ロール)位置)は、前記患者が同じ位置決めおよび/または座標系を使う他のシステムを使用して治療するのを容易にするためにも使用される。さらに、本発明の前記使い捨てヘッドセットアセンブリ32によって、頭のTMS手法、または他の医療手法のために前記患者を繰返可能に配置することができる。
【0032】
本発明は、たとえば、MTP、TXPおよび鼻の中心点を含む位置合わせ平面を提供する能力によって特徴づけられる。本発明の機構は、MTPからTXPへ迅速に位置決めを行うのを容易にするための平面を確定する。前記患者の頭と位置合わせされる円筒状の座標系が、このような位置決めに使用され、特に、円筒状の軸が関与する前記患者ランドマークを通じて投射される場合に使用される。
【0033】
当業者であれば、多くの追加の修正が本発明の新規の教示および長所から逸脱することなしに、典型的な実施形態に施すことが可能であることは容易に理解される。たとえば、前述の定荷重ばねは、前記コイルの重さを相殺するために両方の運動方向で同等の力を適用するロールコイルから構成されてもよい。プーリー・システムを、周知の方法で重力のつりあいおもりとして使用することもできる。
【0034】
当業者であれば、本発明の手動の機械的調整が、手動または、位置フィードバックを有する電子関節アーム(ロボットアーム等)によって取って代わられ、前記座標が記録用のソフトウエアを使用して読み込まれ且つ処理されることが可能であることが理解される。換言すれば、前記ソフトウェアは、実際の座標を前記患者の座標系に変換して、治療の間、前記TMSコイルをその位置に保持する。
【0035】
また、当業者であれば、本発明のジンバルアセンブリは、前記コイルアセンブリの三次元移動の正確な制御を許す適切なボールとソケットに置き換えられてもよいことが理解される。
【0036】
別の有意な本発明の特徴は、その迅速なリリース能力である。前記患者を位置に保持している唯一のものは、前記ヘッドセットアセンブリ32であり、これは、VELCRO(商標)及び穴および/またはみぞ穴を有するペグアライメントによって前記位置決めアセンブリ18に連結される。前記ヘッドセットアセンブリ32は、そのため、患者が発作を起こしたり、治療を何らかの理由で休止する必要が生じるなどの突発事態において、前記位置決めアセンブリから簡単に取り外しすることができる。さらに、前記患者の頭は、単に前記額ストリップ52上の接着剤から紐46,48および50を引っ張ることによって前記ヘッドセットアセンブリ32から直ちに取りはずすことができる。代わりの、別の前記ヘッドセットアセンブリの必要性はない。この場合、前記位置決めアセンブリ18は、前記患者の頭を受け入れる等角のクッションと、前記患者の頭を位置合わせするための調整紐を含んでもよい。
【0037】
したがって、そのような任意の修正も、添付される典型的な請求項によって定義される本発明の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経頭蓋磁気刺激(TMS)コイルと、
治療を受ける患者の頭を受け入れるヘッドセットアセンブリと、
前記ヘッドセットアセンブリおよび前記患者の頭を繰返可能な位置に保持し、治療位置を探し出すための前記患者の鼻を通る枢支軸を提供し、前記繰返可能な位置に関して定義された座標系内で前記TMSコイルの位置決めを制御して前記治療位置を探し出し、治療の間、前記位置に前記TMSコイルを保持するコイル位置決めアセンブリと
を有する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224387(P2011−224387A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146642(P2011−146642)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【分割の表示】特願2006−549391(P2006−549391)の分割
【原出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(510244798)ニューロネティクス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】