説明

TNFアンタゴニスト

TNF結合ポリペプチドは、改善した結合特性および改善した有効性を有するヒトテトラネクチンC型レクチン様ドメイン(CTD)に基づく。ポリペプチドは、アミノ酸配列KRWSRYF(配列番号1)を有するTNF結合ドメインを含む。さらに、本発明のポリペプチドの調製法を提供する。ポリペプチドは、医薬組成物の調製および関節リウマチの治療などのTNFが介在する病変を有する対象の治療に用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、TNFに結合し、そのアンタゴニストとして作用しうるポリペプチドおよび関連化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子(TNF)は、単球およびマクロファージを含む多数の細胞型により産生されるホモ三量体サイトカインであり、当初は特定のマウスの腫瘍の壊死を誘導する機能に基づき同定された。TNFは、免疫および炎症反応の主要な介在物質の一つであり、例えば、人口の約0.5−1%に影響を与える一般的な自己免疫炎症性疾患である関節リウマチの発症に重要な役割を果たすことが知られている。さらに、TNFは、内毒素性ショック、脳マラリアおよび移植片対宿主反応を含む、広範囲の病状の発症に関することも知られている。溶解性および生物活性型のTNFは、3つの同一の17kDのタンパク質サブユニット(ホモ三量体)からなり、それに対し膜結合型は、3つの同一の26kDのサブユニットからなる。
【0003】
組換えまたは修飾タンパク質は、新規クラスの治療薬である。現在までに、TNFアンタゴニストの機能を果たす数種の組換えまたは修飾タンパク質が開示されている。特に、TNFに結合し、中和する抗体は、TNF活性を阻害するための手段として求められている。インフリキシマブ(レミケード)およびエタナーセプト(エンブレル)は、関節リウマチの治療について米国およびヨーロッパ両方で製造承認を受けた2つのTNFアンタゴニストの例である。2つの製品は、乾癬およびクローン病の治療についても効果を示している。インフリキシマブはマウス可変領域ならびにヒトIgG1およびκ定常領域でのキメラ抗体であり、溶解性および膜貫通型のTNFに結合することによりTNFの生物活性を中和し、かかる受容体とTNFの結合を阻害する。インフリキシマブの構造は、自然に分泌される抗体の構造と同様である。エタナーセプトは、p75のTNF受容体の細胞外ドメインおよびヒンジならびにヒトIgG1のFcドメインを構成する融合タンパク質である。
【0004】
WO2004/0398は、TNFとの結合能を有するヒトテトラネクチンC型レクチン様ドメイン(CTLD)に基づく4種の特異的結合ポリペプチドを開示している。タンパク質は、ループ1領域(配列番号79のテトラネクチンアミノ酸番号116−122)中のアミノ酸配列KVRSRYF、およびPRHT、PTNN、PTNR、またはループ3/4領域(配列番号79のテトラネクチンアミノ酸番号146−149)中のPNNRで野生型CTLDと異なっている(例えば、WO2004/0398、表4、46頁)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、改善した結合特性および改善した有効性を有するヒトテトラネクチンC型レクチン様ドメインに基づく特異的TNF結合タンパク質を同定し、かつ、単離した。同定されたTNF結合タンパク質は、インビボでのTNFの阻害能および中和能に関して上記の先行技術の動脈内のTNF結合タンパク質に基づくCTLDより優れている。これは、例えば、下記の実施例から分かるように、マウス繊維芽細胞株アッセイにおいて、TNFアルファ媒介性細胞傷害の阻害能により明らかにされた。さらに、単離された特異的TNF結合タンパク質はまた、商業的に入手可能なTNFアンタゴニスト、インフリキシマブ(レミケード)およびエタナーセプト(エンブレル)と比べて優れたTNF拮抗特性を有することが明らかにされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、最初の態様において、本発明は、アミノ酸配列KRWSRYF(配列番号1)を含むTNF結合ドメインを含む、腫瘍壊死因子(TNF)との結合能を有するポリペプチドに関する。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、上記のポリペプチドをコードする配列を含む核酸、ならびに特異的ポリペプチドが発現されるかかる条件下で前記核酸を発現すること、および特異的ポリペプチドを回収することを含む本発明の特異的ポリペプチドの調製法を提供する。
【0008】
本発明に記載のポリペプチドを、医薬組成物の調製、およびTNFが介在する病変を有する対象の治療法、例えば、有効量の本発明の特異的結合剤を対象に投与することを含む関節リウマチの治療法において用いてもよい。
【0009】
本発明のこれらおよび別の態様をさらに詳細に以下において記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、TNFと高いアフィニティーおよび低い解離速度(off−rate)で結合し、高い腫瘍壊死因子(TNF)中和能を有するポリペプチドに関する。
【0011】
上記のとおり、本発明のポリペプチドは、テトラネクチンC型レクチン様ドメイン(CTLD)の骨格構造に由来する。C型レクチン様ドメイン(CTLD)は、タンパク質ドメインファミリーであり、多数の動物種から単離された多数のタンパク質で同定されている。最初に、CTLDドメインを、いわゆるC型レクチン(カルシウム依存性炭水化物結合タンパク質)と「糖認識ドメイン」(「CRD」)に共通するドメインとして同定した。さらに近年、かかるドメインは、テトラネクチンなどの多数の真核生物のタンパクの間で共有され、そのうちのいくつかは糖部分と結合せず、したがって、標準ドメインがCTLDと称されることが明らかになっている。CTLDは、約120個のアミノ酸残基からなり、特徴として、2または3個の鎖内ジスルフィド架橋を含む。
【0012】
CTLDドメインは、リガンド結合タンパク質ユニットのランダム化ライブラリーの作成に適するものとして、すでにWO/0248189に開示されている。ライブラリーを、CTLDのループ領域を一部または全部、1つまたはそれ以上のランダム化ポリペプチド断片で置換したテトラネクチンCTLD骨格構造を組み合わせることにより構築した。
【0013】
本発明のポリペプチドを、かかるランダム化ライブラリーシステムを用いて構築し、その際にテトラネクチンのCTLDドメインを新規TNF結合ポリペプチドの構築に用いた。本発明に記載のTNF結合ポリペプチドは、一連の注意して取り扱われたインビトロでのエボリューション工程を介して、その高い結合アフィニティーおよびインビボでのTNFの阻害能および中和能を有するに至った。一般に、該方法は、連続するアフィニティーおよび結合速度の成熟工程を介して、特異性に富むが、アフィニティーに乏しい第一の候補ポリペプチドを採用することを暗示する。本発明のポリペプチドは、選択および成熟工程を数回行った「結果」である。
【0014】
本発明は、TNFとの結合能を有し、好ましくは中和能を有する配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。そのアミノ酸配列は、テトラネクチンCTLD骨格(配列番号79のアミノ酸番号116−122)のいわゆるループ1領域にて作り出される。かかる配列は、特に、高いTNF中和活性を含む、有利な特性を提供する。アミノ酸配列は、以下の表1に記載している:
【表1】

【0015】
本発明のTNF結合ポリペプチドは、TNFの一部との結合能を有する。本発明にしたがって、「腫瘍壊死因子(TNF)との結合能を有する」なる語は、TNFに結合する特異的ポリペプチドをいう。有用な実施態様において、本発明のTNF結合ポリペプチドは、表面プラズモン共鳴により決定される、好ましくは、1×10−8M以下であるTNFに対する結合アフィニティー(Kd)を有する。別の有用な実施態様において、Kd値は、1×10−9M、1×10−10M、1×10−11M、1×10−12M、1×10−13M、1×10−14M未満、さらには1×10−15M未満でさえある。さらに有用な実施態様において、本発明に記載のTNF結合ポリペプチドについてのK−off速度は、表面プラズモン共鳴により決定される1×10−3−1未満例えば、1×10−5−1未満を含め1×10−4−1未満、さらには1×10−6−1未満である。本明細書に用いられる「K−off」なる語は、TNF結合ポリペプチド/TNF複合体からの本発明に記載のTNF結合ポリペプチドの解離のための解離速度定数を意図とする。本明細書に用いられる「表面プラズモン共鳴」なる語は、例えばBIAコアシステム(ファーマシア バイオセンサー(Pharmacia Biosensor)AB、ウプサラ、スウェーデン)を用いてバイオセンサーマトリクス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより実時間生物特異的相互作用の分析を可能にする光学的現象をいう。
【0016】
好ましくは、本発明のTNF結合ポリペプチドは、TNFの生物活性および/または別のTNF関連活性を部分的にまたは完全に遮断、阻害または中和するような手段で、TNFとの結合能を有する。本明細書に用いられる、「中和する」なる表現は、インビボまたはインビトロで測定されるTNFの阻害または生物活性の減少を意味する。本発明に記載のポリペプチドのTNF中和または拮抗作用は、以下の実施例に記載のネズミ繊維芽細胞L929細胞株アッセイまたはHUVECアッセイなどのインビトロアッセイにより示唆されうる。別法として、インビボでの動物実験、例えば、以下の実施例に記載のTg197トランスジェニックマウス系を適用することによりTNF拮抗作用を測定することが適当であってもよい。
【0017】
本明細書において用いられる「腫瘍壊死因子」(本明細書にてTNFと省略)なる語は、溶解性および生物活性型が、3個の同一の17kDの非共有結合タンパク質サブユニットからなり、それに対し膜結合型が、3個の同一の26kDタンパク質サブユニットからなるヒトサイトカインを意図とする。特に、該語は、エントリー名「TNFA_HUMAN」およびExPASyの一次アクセッション番号P01375:the proteomics server for in−depth protein knowledge and analysis Nucleic Acids Res.31:3784−3788(2003)(インターネットアドレスhttp://www.expasy.orgでアクセス可能)の下に記載されるタンパク質を意図とする。TNFの構造は、例えば、Pennica D.ら(1984)Nature 312:724−729にさらに記載される。頻繁に用いられるTNFの同義語は、TNF−アルファ、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー2、TNF−αおよびカケクチンを含む。
【0018】
上記のとおり、本発明のポリペプチドは、実質的にKRWSRYF(配列番号1)として示されるようなアミノ酸配列を含む。「実質的に示されるような」により、本発明のポリペプチドは、本発明のアミノ酸配列KRWSRYFと同一又は高度の相同性を示すアミノ酸配列を含むであろうことを意味する。「高度の相同性」により、配列KRWSRYFの7個のアミノ酸の中から1、2、3またはさらに4個を別のアミノ酸で置換してもよいことが考えられる。したがって、本発明にしたがって本発明のポリペプチドは、アミノ酸配列KRWSRYF(配列番号1)と少なくとも約43%、57%、71%、86%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでいてもよい。好ましくは、アミノ酸の置換は、元のアミノ酸配列を有するポリペプチドと同様の機能的および化学的特徴を有するポリペプチドをもたらす保存的置換である。自然に分泌されるアミノ酸残基は、共通の側鎖の特徴に基づく(重複する)クラスに分類してもよい:
(1)疎水性:アラニン(Ala;A)、バリン(Val;V)、ロイシン(Leu;L)、イソロイシン(Ile;I)、プロリン(Pro;P)、トリプトファン(Trp;W)、フェニルアラニン(Phe;F)、チロシン(Tyr;Y)およびメチオニン(Met;M);
(2)親水性:セリン(Ser;S)、トレオニン(Thr;T)、アスパラギン(Asn;N)、グルタミン(Glu;Q)、グルタミン酸(Glu;E)、アスパラギン酸(Asp;D)、リシン(Lys;K)、アルギニン(Arg;R)、ヒスチジン(His;H);
(3)芳香族:トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、フェニルアラニン(Phe;F);
(4)酸性:アスパラギン酸(Asp;D)、グルタミン酸(Glu;E);
(5)塩基性:リシン(Lys;K)、アルギニン(Arg;R)、ヒスチジン(His;H);
(6)荷電性:アスパラギン酸(Asp;D)、グルタミン酸(Glu;E)、リシン(Lys;K)、アルギニン(Arg;R)、ヒスチジン(His;H);および
(7)鎖配向に影響を与える残基:グリシン(Gly;G)、プロリン(Pro;P)。
【0019】
保存的アミノ酸置換は、上記のアミノ酸クラスの一つのメンバーを同じクラスの他のメンバーと交換することを含む。保存的変化は、典型的には、生体系での合成によるよりもむしろ化学ペプチド合成により組み込まれる、特殊なアミノ酸残基を包含しうる。
【0020】
下記の実施例から明らかであるように、上記の配列KRWSRYFに加えて、さらに共通のアミノ酸配列モチーフPXPXN(配列番号2)(ここで、XおよびXは、各々独立して、アミノ酸残基である)を含む本発明のポリペプチドが、特に、高いTNF中和活性を含む有意な特性を有していることを本発明者らにより見出された。
【0021】
さらなる実施態様において、本発明に記載のポリペプチドは、さらに共通のアミノ酸配列モチーフXPXPXNX(配列番号3)(ここで、XはS、T、N、Q、E、D、K、RおよびHから選択される親水性アミノ酸であり;XおよびXは、各々独立して、アミノ酸残基であり、Xは、M、A、V、L、P、W、F、YおよびCからなる群より選択される疎水性アミノ酸である)を含む。さらに有用な実施態様において、本発明に記載のポリペプチドは、アミノ酸配列XPXPXNX(配列番号3)(Xは、S、T、N、Q、E、D、K、RおよびHから選択される疎水性アミノ酸であり;XおよびXは、各々独立して、アミノ酸残基であり、Xは、W、FおよびYからなる群より選択される芳香族アミノ酸である)をさらに含む。
【0022】
現在好ましい実施態様において、本発明に記載のポリペプチドは、以下の表2に示すような配列番号2−28からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:
【表2】

【0023】
配列モチーフPXPXNが、全ての同定された配列(配列番号4−28)において見出されうることが表2から明確に分かる。そのため、保存的置換などのアミノ酸置換は、前述の表2に示される上記のアミノ酸配列に適用してもよいことを意図とする。したがって、配列番号4−28の13個のアミノ酸中の1、2、3、4、5、6、7、8、9またはさらに10個は別のアミノ酸により置換されてもよいことを意図とする。したがって、本発明にしたがって本発明のポリペプチドは、アミノ酸配列番号4−28のいずれかと少なくとも約23%、31%、38%、46%、54%、62%、69%、77%、85%または92%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列をさらに含んでいてもよい。好ましくは、アミノ酸の置換は、元のアミノ酸配列を有するポリペプチドと同様の機能的および化学的特徴を有するポリペプチドをもたらす保存的置換である。
【0024】
当業者は、本発明に記載の様々な同定されたアミノ酸配列を特異的結合剤構造中に挿入してもよいことを分かるであろう。したがって、本発明に記載の得られたアミノ酸配列は、一部を形成するか、または適当なタンパク様骨格に保有されていてもよく、ただし、得られたポリペプチドは上記のTNFとの結合能、および好ましくは、TNF生物活性の中和能を保持する。しかしながら、好ましい実施態様において、本発明の生じたアミノ酸配列を保有する構造は、一般に、C型レクチン様ドメイン(CTLD)またはその実質的部分であろうし、生じたアミノ酸配列(配列番号1)は、ヒトテトラネクチンのループ1領域(配列番号79のアミノ酸番号116−122)のようなCTLDのループ1領域に対応する位置に位置される。同様に、C型レクチン様ドメイン(CTLD)またはその実質的部分は、配列番号2−28から選択される生じたアミノ酸配列をさらに含んでいてもよく、好ましくは、ヒトテトラネクチンのループ1領域(配列番号79のアミノ酸番号116−122)のようなCTLDのループ3/4領域に対応する位置に位置される。
【0025】
現在好ましい実施態様において、本発明のアミノ酸配列は、ヒトテトラネクチンなどのテトラネクチン由来CTLD骨格と結合し、そのため、そこに保有されている。好ましくは、ヒトテトラネクチン由来CTLDドメインは、実質的に配列番号79の残基50−181として示されるようなアミノ酸配列である。
【0026】
下記の実施例から明らかであるように、本発明に記載のポリペプチド(ここで、テトラネクチン由来C型レクチン様ドメインは、実質的に配列番号79の残基50−181として示されるようなアミノ酸配列であり、残基番号165のアスパラギン酸はグリシンに変異されている)が、特に、優れたTNF中和特性を有していることが本発明者らによりさらに見出された。
【0027】
一の実施態様において、本発明に記載のポリペプチドは、TN3−2−B1−C22(配列番号29)、TN3−2−B1−C31(配列番号30)、TN3−2−B1−C24(配列番号31)、TN3−2−B1−C22−7(配列番号32)、TN3−2−B1−c22−1(配列番号33)、TN3−2−B1−c22−2(配列番号34)、TN3−2−B1−c22−3(配列番号35)、TN3−2−B1−c22−4(配列番号36)、TN3−2−B1−c22−6(配列番号37)、TN3−2−B1−c22−7(配列番号38)、TN3−2−B1−c22−8(配列番号39)、TN3−2−B1−c22−9(配列番号40)、TN3−2−B1−c22−10(配列番号41)、TN3−2−B1−c22−11(配列番号42)、TN3−2−B1−c22−12(配列番号43)、TN3−2−B1−c22−13(配列番号44)、TN3−2−B1−c22−14(配列番号45)、TN3−2−B1−c22−15(配列番号46)、TN3−2−B1−c22−16(配列番号47)、TN3−2−B1−c7(配列番号48)、TN3−2−B1−C19(配列番号49)、TN3−2−B1−C1(配列番号50)、TN3−2−B1−C20(配列番号51)、TN3−2−B1−C53(配列番号52)およびTN3−2−B1−C29(配列番号53)などのポリペプチドを含む、テトラネクチンから誘導されるCTLD骨格に基づく単量体TNF結合ポリペプチドである。
【0028】
改善した有効性または中和能を提供し、毒性を減少させ、免疫源性を減少させ、血中濃度半減期を延ばしおよび/またはタンパク質分解から保護するために、有用な実施態様において、本発明のポリペプチドは、N末端もしくはC末端を介してビヒクルまたはアミノ酸残基の一つの側鎖と結合していてもよい。ビヒクルの例として、Fcドメイン、ポリエチレングリコール(PEG)のような線状ポリマー、ポリリシン、デキストラン;分岐鎖ポリマー;液体;コレステロール基(例えば、ステロイド);炭水化物もしくはオリゴ糖;または天然もしくは合成タンパク質、ヒト血清アルブミンを含むポリペプチドもしくはペプチドが挙げられる。ビヒクルと結合している本発明に記載のポリペプチドの一例は、実施例5に見られるGG−I10−TN−2−B1−C22−7と命名されたペグ化TNF結合ポリペプチドである。
【0029】
特に好ましい実施態様において、本発明のTNF結合ポリペプチドは、多量体化ドメインに保有されるかまたは多量体化ドメインと結合している。本明細書において、「多量体化ドメイン」なる語は、別の、類似のまたは同一の多量体化ドメインと相互作用しうるペプチド、タンパク質またはタンパク質の一部である。相互作用は、多量体タンパク質またはポリペプチドを生成する形態である。かかる相互作用は、多量体化ドメインの成分間の共有結合ならびに水素結合力、疎水性力、ファンデルワールス力および塩橋により引き起こされてもよい。有用な実施態様において、多量体化ドメインペプチドは、二量体化ドメイン、三量体化ドメイン、四量体化ドメイン、五量体化ドメインまたは六量体化ドメインである。三量体化ドメインの一例は、WO95/31540に開示され、コレクチンネック領域を含むポリペプチドを記載している。コレクチンネック領域を構成するアミノ酸配列は、選択されるポリペプチドに結合してもよい。次いで、三量体は、適当な条件下で、コレクチンネック領域のアミノ酸配列を含む3つのポリペプチドで形成されうる。
【0030】
現在好ましい実施態様において、C型レクチン様ドメインは、テトラネクチン由来三量体化ドメインに保有され、テトラネクチン由来三量体ドメインと結合している。より明確には、すでにWO98/56906に詳細に記載されていたテトラネクチン三量体構造要素(以下、TTSEという)を含む。TTSEのアミノ酸配列は、配列番号80に示される。TTSEの三量体化効果は、比較的高温でさえ非常に安定である三重αへリックスコイルドコイル三量体を形成する2つの別のTTSEのコイルドコイル構造と相互作用するコイルドコイル構造により引き起こされる。TTSEなる語はまた、タンパク質のテトラネクチンファミリーの自然に分泌される一員のTTSEの変種、αへリックスコイルドコイル三量体を形成するTTSEの機能に相当な程度悪影響を与えることのないアミノ酸配列に修飾される変種を含むことも意図とする。したがって、本発明に記載のポリペプチドは、三量体化ドメインとしてTTSEを含んでいてもよく、少なくとも87%、例えば、少なくとも92%を含む、配列番号80の配列と少なくとも68%、例えば、少なくとも75%のアミノ酸配列の同一性を有する配列を含む。本明細書にしたがって、TTSE(配列番号50)の残基番号50システインは、望ましくない多量体化をもたらしうる、望ましくない鎖間ジスルフィド架橋の形成を回避するためにセリン、トレオニン、メチオニンまたは別の適当なアミノ酸残基に有利に変異させてもよい。
【0031】
さらなる実施態様において、TTSE三量体化ドメイン(配列番号50)は、(i)ポリヒスチジン配列および/または血液凝固因子Xの切断部位の取り込み、(ii)Cys50をSerで置換すること、および(iii)C−末端KGS配列を含むことにより修飾してもよい。かかる修飾TTSEは、配列番号81として得、TripAと命名される。
【0032】
本発明に基づく異なる三量体ポリペプチドのいくつかの例は、以下の実施例で提供され、上記のTTSE三量体化ドメインが適用される。これらは、TNF結合ポリペプチドに基づく三量体CTLD:TN2−2−B1−C22(配列番号54)、TN2−2−B1−C31(配列番号55)、TN2−2−B1−C24(配列番号56)、TN2−2−B1−C22−7(配列番号57)、TN2−2−B1−c22−1(配列番号58)、TN2−2−B1−c22−2(配列番号59)、TN2−2−B1−c22−3(配列番号60)、TN2−2−B1−c22−4(配列番号61)、TN2−2−B1−c22−6(配列番号62)、TN2−2−B1−c22−7(配列番号63)、TN2−2−B1−c22−8(配列番号64)、TN2−2−B1−c22−9(配列番号65)、TN2−2−B1−c22−10(配列番号66)、TN2−2−B1−c22−11(配列番号67)、TN2−2−B1−c22−12(配列番号68)、TN2−2−B1−c22−13(配列番号69)、TN2−2−B1−c22−14(配列番号70)、TN2−2−B1−c22−15(配列番号71)、TN2−2−B1−c22−16(配列番号72)、TN2−2−B1−c7(配列番号73)、TN2−2−B1−C19(配列番号74)、TN2−2−B1−C1(配列番号75)、TN2−2−B1−C20(配列番号76)、TN2−2−B1−C53(配列番号77)、TN2−2−B1−C29(配列番号78)およびGG−I10−TN−2−B1−C22−7(配列番号79)を含む。
【0033】
本発明にしたがって、本発明に記載のTNF結合ポリペプチドは、三量体化ドメインのN−末端またはC−末端アミノ酸残基のいずれかと結合していてもよい。しかしながら、特定の実施態様において、本発明のTNF結合ポリペプチドを単量体の三量体化ドメインのN−末端およびC−末端の両方に結合することが有利であってもよいことも想定され、それにより、TNFとの結合能および中和能を有する6つの特定のポリペプチドを含む三量体ポリペプチドを提供する。
【0034】
可動性分子リンカーは、所望により、共有結合間、本発明のTNF結合ポリペプチドおよび三量体化ドメインの間に介在してもよいことが分かるであろう。特定の実施態様において、リンカーは約1−20個のアミノ酸残基のポリペプチド配列である。リンカーは10個未満のアミノ酸、最も好ましくは、5、4、3、2または1個であってもよい。特定の場合において、9、8、7または6個のアミノ酸が適当であることがあってもよい。有用な実施態様において、リンカーは本質的に非免疫原性であり、タンパク分解的切断をする傾向にはなく、他の残基と相互作用することが知られているアミノ酸残基を含まない(例、システイン残基)。
【0035】
さらに、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離した核酸を提供する。核酸は、DNAおよびRNAを含む。好ましい態様において、本発明は、アミノ酸配列の配列番号1、配列番号2−28、配列番号29−53として示されるようなアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む本発明のポリペプチド、より好ましくは完全な三量体ポリペプチドの配列番号54−78をコードする核酸を提供する。
【0036】
本発明はまた、プラスミド、ベクター、上記の少なくとも1つの核酸を含む転写または発現カセットの形態の構築物を提供する。必要に応じて、プロモーター配列、転写終結配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、標識遺伝子および他の配列を含む適当な調節配列を含む、適当なベクターを選択または構築しうる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス、例えば、ファージ、またはファージミドであってもよい。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:2nd edition,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照する。
【0037】
本発明はまた、上記の1つまたはそれ以上の構築物を含む組換え宿主細胞を提供する。適当な宿主細胞は、バクテリア、哺乳類細胞、酵母およびバキュロウイルス系を含む。異種ポリペプチドの発現の技術に利用可能な哺乳類細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、NSOマウスメラノーマ細胞およびその他多数を含む。一般に、好ましいバクテリアの宿主はイー・コリ(E.coli)である。
【0038】
本発明のポリペプチドの発現は、適当な条件下で、例えば、以下の実施例2に詳細に記載の核酸を含む組換え宿主細胞を培養することにより都合よく達成されてもよい。好ましくは、発現は、望ましいタンパク質をインビトロで容易に単離され、再折りたたみしてもよい発現系で行われる。一般的事項として、高収率のタンパク質を得ることができ、効率的精製および再折りたたみ方法が利用可能であるので、系に基づくイー・コリを含む原核生物の発現系が好まれる。したがって、適当または好ましい発現系を選択することは、必要以上の実験をすることなく、当業者の能力および裁量の範囲で十分である。同様に、本発明のポリペプチドの一次アミノ酸配列が選択されると、選択される宿主のコドンバイアスのような因子、宿主の分泌シグナル配列の必要性、シグナル配列内のプロテイナーゼ切断部位の導入などを考慮して、当業者は容易に望ましいタンパク質をコードするだろう組換えDNA構築物などの適当なポリヌクレオチドを設計しうる。これらの組換えDNA構築物は、選択される宿主に適当な発現ベクターのメンバーのインフレームに挿入されてもよい。適当または好ましい発現ベクターの選択は、再度、技術者の能力および判断の十分な範囲内の事柄である。好ましくは、発現ベクターは、組換え構築物の発現を促進する強力なプロモーターを含むであろう。最後に、本発明のポリペプチドを、当業者に周知な適当な標準的な製法を用いて単離し、所望により、例えば、凍結乾燥などさらに処理してもよい。本発明のポリペプチドはまた、当業者に周知である適当な物質および反応条件を選択することにより化学合成で製造してもよい。
【0039】
本発明のポリペプチドは、通常、ポリペプチドに加えて少なくとも1つの成分、および所望により、別の治療成分を含んでいてもよい、医薬組成物の形態で投与されるであろう。したがって、本発明に記載、および本発明にしたがって用いられる医薬組成物は、活性成分に加えて、当業者に周知な医薬上許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤または他の物質を含んでいてもよい。物質は、他の成分と混合可能であり、その受容者に無害という意味では許容してもよい。一般に、医薬組成物の調製法は、活性成分およびさらなる成分に付随する工程を含む。
経口投与の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液剤の形態であってもよい。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバンドなどの固体担体を含んでいてもよい。液剤の医薬組成物は、一般に、水、石油、動物もしくは植物油、鉱物油または合成油などの液体担体を含む。生理学的なセイライン溶液、デキストロースもしくは他のサッカリド溶液またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールを含んでいてもよい。
【0040】
静脈注射、または苦痛の部位への注射について、活性成分は、発熱物質遊離であり、適当なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水性溶液の形態であるだろう。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射、リンガー注射、乳酸加リンガー液などの等張性ビヒクルを用いて適当な溶液を十分に調製しうる。保存料、安定剤、緩衝液、抗酸化剤および/または他の添加剤を、必要に応じ含んでいてもよい。
医薬組成物は、治療状況により同時または連続的に単独または他の治療と併用して投与してもよい。他の治療は、適量の非ステロイド性抗炎症薬(例、アスピリン、パラセタモール、イブプロフェンまたはケトプロフェン)などの鎮痛剤またはモルヒネなどの鎮静剤、あるいは制吐剤の投与を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の治療用途は、本発明の治療上有効量のポリペプチドまたは医薬組成物を対象に投与することにより、TNFが介在する病変を有する対象を治療することを含む。
【0042】
上記のように、TNFは、免疫および炎症反応の主要な介在物質の一つであり、例えば、TNFが介在する広範囲の疾患の発症に重要な役割を果たすことが知られている。本明細書に用いられる、「TNFが介在する疾患」または「TNFが介在する病変」は、TNF関連病変または疾患をいう。TNF関連病変または疾患は以下を含むが、これに限定されるものではない:
(A)急性および慢性免疫ならびに自己免疫病変、例えば、関節リウマチ(RA)、若年性慢性関節炎(JCA)、甲状腺炎、移植片対宿主拒絶反応(GVHD)、強皮症、糖尿病、グレーブス病、アレルギーであるが、これに限定されず、同種移植に付随する急性もしくは慢性免疫疾患、例えば、腎移植、心臓移植、骨髄移植、肝移植、膵臓移植、小腸移植、肺移植および皮膚移植であるが、これに限定されるものではない;
(B)急性もしくは慢性細菌感染、急性および慢性寄生および/または感染症、悪液質、自己免疫疾患、AIDS認知症および感染症を含む、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの細菌性、ウイルス性または真菌性の後天性免疫不全症候群(AIDS)による敗血症候群、悪液質、循環虚脱およびショックを含む感染症であるが、これに限定されるものではない;
(C)サルコイドーシス、慢性炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、およびクローン病などの慢性炎症性疾患であるが、これに限定されない;播種性血管内凝固症候群、アテローム性動脈硬化、川崎病などの血管炎症性疾患であるが、これに限定されるものではなく、および結節性多発動脈炎、ウェーゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・ショーンライン紫斑病、巨細胞動脈炎および腎臓の顕微鏡的血管炎などの血管炎症候群であるが、これに限定されるものではない;慢性活動性肝炎;シェーングレン症候群;強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および脊椎炎、病原性関節炎および脊椎炎、反応性関節炎および炎症性大腸炎に付随する関節炎などの脊椎関節症;ならびに、ブドウ膜炎などの炎症性疾患;
(D)多発性硬化症および急性横断性脊髄炎などの脱髄疾患;重症筋無力症;皮質脊髄系の障害などの錐体外路系および小脳疾患;大脳基底核疾患または小脳疾患;ハンチントン舞踏病、老年性舞踏病などの運動過剰障害;中枢神経系(CNS)ドーパミン受容体を阻害する薬剤により誘導される障害などの薬物性運動障害;パーキンソン病などの運動不全障害;進行性核上麻痺;小脳の構造的病変などの小脳および脊髄小脳疾患;脊髄小脳変性症(精髄性運動失調症、フリードライヒ失調症、小脳皮質変性症、多系統萎縮症(メンチェル(Menchel)、デジェリンートーマス(Dejerine−Thomas)、シャイ・ドレーガーおよびマシャドジョセフ(MachadoJoseph)));および全身性疾患(レフサム病、無βリポタンパク血症、運動失調、毛細血管拡張症、およびミトコンドリア多系統疾患);神経原性筋萎縮症などの運動単位の障害(筋萎縮性側索硬化症、乳児脊髄性筋萎縮症および若年性脊髄性筋萎縮症などの前角細胞変性症);アルツハイマー病;中年のダウン症候群;びまん性レヴィー小体疾患;レヴィー小体型老年性認知症;ウェルニッケ・コルサコフ症候群;慢性アルコール依存症;原発性胆汁性肝硬変;特発性間質性肺炎および他の繊維性肺疾患;溶血性貧血;クロイツフェルト・ヤコブ病;亜急性硬化性全脳炎、ハレルフォルデン・スパッツ病;ならびにボクサー認知症、またはその一部を含む神経変性疾患であるが、これに限定されるものではない;
(E)TNF分泌腫瘍を含む悪性疾患またはTNFを含む他の悪性腫瘍、例えば、白血病(急性、慢性骨髄性、慢性リンパ性および/または骨髄胃形成症候群);リンパ腫(悪性リンパ腫(バーキットリンパ腫または菌状息肉腫)などのホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)であるが、これに限定されるものではない;
(F)過剰のTNFを含む、悪液質症候群ならびに他の病変および疾患、例えば、癌の悪液質、寄生虫症および心不全であるが、これに限定されるものではない;ならびに
(G)アルコール性肝炎および他の形態の慢性肝炎
【0043】
本発明のポリペプチドは、一般に、血流中への注入またはTNFが介在する疾患の部位に直接注入することで、適当な経路を介して、それを必要とする対象または患者に直接投与してもよい。
【0044】
例えば、診断目的、アッセイ方法および診断キットについて、本発明のポリペプチドはまた、検出可能なまたは機能的標識で標識してもよい。検出可能な標識は、125I、131Iおよび99Tcなどの放射性標識、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、アミノメチルクマリンおよびフィコエリトリンなどの蛍光プローブを含み、タンパク質の標識化の分野において知られている一般的な化学物質を用いて本発明のポリペプチドに結合させてもよい。標識はまた、セイヨウワサビペルオキシダーゼなどの酵素標識を含む。さらに標識は、特定の同族検出部、例えば、標識化アビジンとの結合を介して検出されてもよいビオチンなどの化学部分を含む。機能的標識は、TNF発症領域の部位を標的とするために設計される物質を含む。かかる機能的標識は、リシンなどの毒および細菌カルボキシペプチダーゼまたはニトロ還元酵素などの酵素を含み、TNF発症領域の部位でプロドラッグを活性剤に変換しうる。
【0045】
したがって、本発明はまた、(i)試料を本発明に記載のポリペプチドと接触させること、および(ii)TNFとポリペプチドの結合を検出することを含む、試料中のTNFを検出するためのアッセイ法を提供する。
【0046】
この度、本発明は、以下の限定されない実施例および図面において説明するために記載されるであろう。
【0047】
(図面の記載)
図1は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C22を完全な三量体形態(TN2B1C22)および単量体(TN3−2−B1−c22)として用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
図2は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C22−7を単量体(TN3−B1−C22−7)として用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
図3は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C31を完全な三量体形態(TN2B1C31)として用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
図4は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C24を完全な三量体形態(TN2B1C24)として用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
図5は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C22−8、TN2−2−B1−C22−14、TN2−2−B1−C22−2、TN2−2−B1−C22−7、TN2−2−B1−C22−12、TN2−2−B1−C22−19を用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
図6は、エンブレルおよびレミケードと比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C22−8、TN2−2−B1−C22−7およびTN2−2−B1−C31を用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
図7は、エンブレルおよびレミケードと比較して、TN3−2−B1−C31、TN3−2−B1−C22−7、TN3−2−B1−C22−8を用いるHUVECアッセイにおけるTNF誘導性IL6およびIL8産生の阻害を示す。
図8は、ペグ化GG−I10−TN−2−B1−C22−7(20KPEG−GG−I10−TN−2−B1−C22−7)、非ペグ化GG−I10−TN−2−B1−C22−7(GG C22−7)、および未変異TN−2−B1−C22−7(C22−7)(配列番号32)を用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。エンブレルおよびレミケードを、対照として用いた。
図9は、3種類の異なる濃度:マウス当たり12.3、25および50μgでTN2−2−B1−C31を注射されたマウスのTNF誘導性IL−6産生の阻害を示す。30分後マウスは、3μgのヒトTNFを静脈注射された。
図10は、三種類の異なる濃度:マウス当たり12.5、25および50μgでTN2−2−B1−C31を注入されたマウスのTNF誘導性MCP−1産生の阻害を示す。30分後マウスは、3μgのヒトTNFを静脈注射された。
図11は、三種類の異なる量のTN2−2−B1−C31(図中の「ボレアン(Borean)構築物」をいう)、セイライン溶液(陰性対照)、野生型テトラネクチン(陰性対照)およびレミケード(陽性対照)で処理したマウスの異なる群の関節炎患者のスコアを示す。
【実施例】
【0048】
実施例1:TNF結合ポリペプチドの単離および構築
テトラネクチン(配列番号6)C型レクチン様ドメイン(CTLD)の骨格構造は、すでにWO/0248189に開示され、TNF結合ポリペプチドの単離および構築に用いられた。発達したTNF結合ポリペプチドは、一連の注意して取り扱われたインビトロでの成熟工程を介してその有効性に至った。特異性は高いが、弱いアフィニティーの第一候補分子は、アフィニティーおよび結合動的成熟の連続的な工程を介して得、得られた候補は、成熟の第三および第四工程からの「結果」である。成熟は、本質的にWO/0248189に記載のファージディスプレイ技術を用いて行われた。
TNF結合クローンに基づく同定された単量体CTLDを、対応する配列番号ならびにループ1およびループ3/4のアミノ酸配列と一緒に、以下の表3に記載する。
【表3】

同定されたクローンはまた、テトラネクチン三量化構造要素(TTSE;配列番号80)を用いて三量体形態で生産された。上記の同定されたクローンの対応する三量体バージョンは、以下の表4に記載される。
【表4】

【0049】
実施例2:TNF結合ポリペプチドの生産および精製
本発明のTNF結合ポリペプチドは、典型的には、以下の方法を用いて生産および精製された。TNF結合ポリペプチドのコード化配列を含有するプラスミドベクターを含むBL21−AIの単一コロニーから、0.2%L−アラビノースで誘導し、発現を4時間継続する前に、100μg/mLのAmpを有する2xTY中の6Lの培養物をA600=0.8に成長させる。
細胞を収集し、封入体を回収する。6Lの培養液からパックした細胞ペレットを、超音波処理により100mLの50mMのTris−HCl pH8.0、25w/v%スクロース、1mMのEDTA、(リーシス−バッファー)で均質化する。次いで、試料を室温で15分間静置する前に100mLのリーシス−バッファー当たり100mgのリゾチームを添加し、合わせる。次いで、試料を合間に合わせながら2−5分間超音波分解する。100mLの0.2MのNaCl、1w/v%デオキシコール酸塩、1w/v%のノニデット(Nonidet)P40のNa塩、20mMのTris−HCl、pH7.5、2mMのEDTA(デタージェント−バッファー)を添加し、試料を合わせ、再度、超音波分解する。封入体を4℃、8000rpmで25分間遠心分離により回収する。上清を捨て、ペレットは100mLの0.5w/v%のトリトン(Triton)X−100、pH8の1mMのEDTA中で再懸濁した。封入体を4℃、8000rpmで25分間遠心分離により回収する。トリトンX−100バッファー洗浄を再度繰り返す。封入体を、4℃、12000rpmで5分間遠心分離により回収する。
封入体を50mLの6Mのグアニジン、50mMのTris pH8.0、50mMのDTT中で再懸濁する。溶液は、セファデックスG−25ファインマトリックス(Fine matrix)カラム上で8Mの尿素、50mMのTris pH8.0、500mMのNaCl、5mMのβ−mercに変換されるバッファーである。
次いで、タンパク質をNiNTA IMACカラム(キアゲン製NiNTAアガロース)上で捕捉し、カラムは、8Mの尿素、50mMのTris pH8.0、500mMのNaCl、5mMのβ−mercで洗浄する。次いで、タンパク質を8Mの尿素、50mMのTris pH8.0、500mMのNaCl、5mMのβ−merc、20mMのEDTA中で溶出する。
NiNTA IMAC捕捉カラムからの捕捉溶出液を、1Lスケールで希釈による再折りたたみに用いる。3Mの尿素、50mMのグリシン pH9.5、250mMのNaCl、2mMのCaCl、0.3mMのシスタミンを含む1Lの再折りたたみバッファーを濾過し、7℃の令書にある2Lの瓶に入れる。マグネット攪拌棒を加え、攪拌は250rpmで行う。次いで、変性捕捉溶出タンパク質溶液を、蠕動ポンプを用いて100μL/分の一定流量で再折りたたみバッファーに滴下する。再折りたたみが終了する時点の最終タンパク質濃度は250μg/mLである。
多量体は、8Mの尿素、50mMの酢酸ナトリウム pH4.5、2mMのTris、2mMのCaClから8Mの尿素、50mMの酢酸ナトリウム pH4.5、2mMのTris、2mMのCaCl、400mMのNaClの勾配(室温)でSP−セファロース(アマシャム)上にて除去される。次いで、カラムは、全マトリックス容量の約400mlのセファデックスG−25ファインマトリックスで充填され、1Lの1Mの尿素、25mMのNaCl、25mMのTris、pH7.0は10ml/分で平衡に用いられる。
SP−セファロースから溶出液を、約8ml/分の流速でセファデックスG−25ファインマトリックスに適用する。タンパク質は、約8ml/分の流速で1Mの尿素、25mMのNaCl、25mMのTris、pH7.0を用いて溶出される。溶出液を貯蔵し、タンパク質濃度を測定する。
1:250%w/w(mgのGrB/mgの三量体TNF結合ポリペプチド)の割合に相当するグランザイムBを添加する。添加後、溶液を徐々に合わせ、25℃で24時間インキュベートする。温浸後、固体尿素を8Mの尿素溶液を産生する溶液に添加し、pHを1Mの酢酸ナトリウムでpH4.5に合わせる。
TNF結合ポリペプチドを、8Mの尿素、50mMの酢酸ナトリウム pH4.5、2mMのTris、2mMのCaClから8Mの尿素、50mMの酢酸ナトリウム pH4.5、2mMのTris、2mMのCaCl、1000mMのNaClの勾配(室温)でスクロース15Sカラム(アマシャム)上にて研磨し、かつ、濃縮する。最後に、溶出した単量体フラクションは、セファデックスG−25ファインマトリックス上でゲル濾過により25mMの酢酸ナトリウム pH5.0、50mMのNaCl、50mMのスクロース中で製剤化される。かかる工程収率は95%以上であり、タンパク質は、可視可能なまたはA410で追跡した場合に測定可能な沈殿をすることなく複数の解凍−凍結サイクルに耐える。
【0050】
実施例3:TNF結合ポリペプチドの生物活性
表4に示されるTNF結合ポリペプチド、すなわち、TN2−2−B1−C22、TN2−2−B1−C31、TN2−2−B1−C24、TN2−2−B1−C22−7、TN2−2−B1−C22−2、TN2−2−B1−C22−8、TN2−2−B1−C22−12、TN2−2−B1−C22−14、TN2−2−B1−C22−19ならびに単量体TN3−2−B1−C22およびTN3−2−B1−C22−7(それぞれTN2−2−B1−C22およびTN2−2−B1−C22−7に対応する)の選択は、L929腫瘍細胞株、ネズミ線維芽細胞様細胞を用いて、TNFの生物活性を阻害する機能を測定することによりアッセイされた。選択したクローンのTNF中和活性は、商業的に入手可能なTNFアンタゴニストのレミケード(エタナーセプト)、エンブレル(インフリキシマブ)および溶解性TNF受容体II(TNF RII/TNFRSF1B、R&D Systems カタログ番号1089−R2−025/CF)と比較した。
TNF阻害アッセイを、以下のアッセイプロトコルにしたがって実施した:L929細胞(ECACC番号:85011425)を、アッセイの準備前日に3x10/mlで蒔く。試験体を添加する前に、細胞を接着させ、集密となるようにさせなければならない。平底96ウェルマイクロタイタープレート(ヌンクロン(Nunclon);Cat番号167008)のウェルに75μlの容量の細胞懸濁液を分注する。EILSAリーダーのブランクとして、1列の8個のウェルを細胞のない状態にしておく。細胞を添加する時点で、1μg/mlのアクチノマイシンDの最終培養濃度を得るために、試験試料を2μg/mlのアクチノマイシンDを含有する培養液で希釈する。20μg/mlで(必要ならば37℃に加温しながら)PBS中のアクチノマイシンD(シグマ)を溶解し、5mlの(または適当な)量にて−20℃で保存する。必要に応じてヒトTNFを解凍し、培養液で4μg/mlに希釈する−解凍した濃縮溶液は、4℃で最大2週間安定である。培養液中で試験試料の一連の希釈物を作製する(TNF QCの場合、3倍希釈が適している)。次いで、試験試料をヒトTNFを含む種々の溶液1:1で希釈する。各希釈について、75μlの容量を3回、L929細胞に添加する。各プレート上で、陰性対照(すなわち、組織培養液のみ)および陽性対照(阻害薬を有しないヒトTNF)を含む。試験試料の添加後、37℃、5%のCOで16時間マイクロタイタープレートをインキュベートする。細胞増殖を、CellTiter96非放射性細胞増殖アッセイキット(プロメガ)の部分としてMTT(臭化3−[4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル]−2,5−ジ−フェニル−テトラゾリウム)を用いて測定する:MTS−およびPMS溶液を解凍する。150μlの容量で培養した細胞を含有する1個の96ウェルプレートに十分な量の試薬を調製するために、3.0mlのMTS溶液を無菌法を用いて琥珀色の試薬瓶から取り出し、試験管に移し替える。細胞を含有する培養プレートに添加する直前に150μlのPMS溶液を3.0mlのMTS溶液に添加する。合わせたMTS/PMS溶液の完全混合を確実にするために試験管を穏やかに回転させる。培養液中150μlの細胞を含有する96ウェルアッセイプレートの各ウェルに30μlの合わせたMTS/PMS溶液をピペットで添加する。加湿された5%CO雰囲気下において、37℃で1−4時間プレートをインキュベートする。ELISAプレートリーダーを用いて490nmで吸光度を記録する。
上記TNF阻害アッセイからの結果を、図1、2、3、4、5および6に示す。三量体クローンTN2B1C22、TN2B1C31およびTN2B1C24(対応する単量体TN3−2−B1−C22、TN3−2−B1−C31およびTN3−2−B1−C24)全て、レミケード(インフリキシマブ)および溶解性TNF受容体II(RII)と比べて同等またはより良いTNF中和能力を有することが図1、3および4から明確である。特に、TN2−2−B1−C22およびTN2−2−B1−C31はエンブレルよりさらに優れていることが図1および3から見ることができる。図1は、TN2B1C22(すなわち、TN3−2−B1−C22)の単量体型のTNF阻害能は、レミケードと同等であることを示す。TN2B1C22−7(すなわち、TN3−B1−C22−7)の単量体型は、レミケードより優れていることが図2から分かる。
【0051】
実施例4:HUVECアッセイ
ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)は、臍帯から単離された初代非形質転換ヒト細胞である。細胞は数継代の培養液中で保持しうる。臍帯内皮細胞はTNFに感受性がある。TNFによる細胞の活性化の後に、細胞はIL8およびIL6のような炎症性サイトカインを産生し始める。これらの反応は、細菌感染後の一次防御を表す。TNR結合ポリペプチドの有効性を調べるために、本発明者らは、IL6およびIL8の産生を誘導するTNFの阻害を試験した。
HUVEC細胞(カンブレックス(Cambrex)Lot.Nr.2f1828)を、アッセイの準備前日にEGM−2培地に蒔く。試験前に細胞を接着させ、集密になるようにさせなければならない。ウェル当たり200μlの5x10/mLのHUVEC細胞懸濁液は、平底96ウェルマイクロタイタープレート(ヌンクロン;Cat.番号167008)のウェルにピペットで添加する。試験試料を培養液で希釈する。試験試料を以下のとおり調製する:望ましい濃度でTNF結合ポリペプチド、エンブレルまたはレミケードを15分間インキュベートする。次いで、3ng/mlのヒトTNFを有しており、100μlの溶液をHUVEC細胞に添加し、最終濃度1ng/mlのTNFを得る。希釈の正確な範囲は、試験試料の性質および標的の感受性による。各プレートは、陰性対照(すなわち、組織培養液のみ)および陽性対照を含む。試験試料の添加後、マイクロタイタープレートを37℃、5%COで16−24時間インキュベートする。
翌日、上清をウェルから収集し、IL6およびIL8(10倍希釈)Elisaを、ヒトIL−6&IL−8−ELISA(96ウェル)のプロトコルにしたがってTNF誘導性サイトカインを測定するために実施する。以下の物質:ヒト組換えIL−6:Cat.番号206−IL−010(R&D Systems)、モノクローナル抗ヒトIL−6抗体 コード番号MAB 206(R&D Systems)、ビオチン化抗ヒトIL−6抗体 Cat.番号BAF206(R&D Systems)、ヒト組換えIL−8:Cat.番号208−IL(R&D Systems)、モノクローナル抗ヒトIL−8抗体 コード番号MAB208(R&D Systems)、ビオチン化抗ヒトIL−8抗体Cat.番号BAF208(R&D Systems)をELISAに用いる。
TNF結合ポリペプチドTN3−2−B1−C31、TN3−2−B1−C22−7、TN3−2−B1−C22−8を、上記HUVECアッセイで試験した。かかる実験結果を図6および7に示す。かかる図から分かるように、TNF結合ポリペプチドTN3−2−B1−C31、TN3−2−B1−C22−7、TN3−2−B1−C22−8は、好ましくは、IL8(図6)およびIL6(図7)の誘導を阻害しうる。TNF結合ポリペプチドTN3−2−B1−C22−7(C22−7)およびTN3−2−B1−C22−8(C22−8)は、かかる試験においてエンブレルと同程度であり、有意にレミケードより優れている。
【0052】
実施例5:ペグ化TNF結合ポリペプチドGG−I10−TN−2−B1−C22−7
三量体TNF結合ポリペプチドGG−I10−TN−2−B1−C22−7(配列番号79)を、溶液がセファデックスG−25ファインマトリックスカラム上の下記のペグ化バッファーに交換したバッファーであることを除き、基本的に実施例2の記載のとおりに調製した。
かかる構築物は、配列の最初の9残基のアミノ酸の欠失、およびN末端に2個のグリシン残基を付加することによりペグ化を行った。20mMのNaCNBHを含む8M尿素、50mMのNaHPO、pH6.0、50mMのNaCl中のGG−I10−TN−2−B1−C22−7の0.5mg/mL溶液は、10モル過剰の20kDaの平均分子量を有するメトキシ ポリ(エチレングリコール)−ブチル−アルデヒド(mPEG−ALD)を添加された。反応物を約20℃で一晩攪拌した。その後、タンパク質とmPEG−ALDの間の反応進行度をSDS−PAGEで測定した。
ペグ化GG−I10−TN−2−B1−C22−7を非反応性単量体から分離するために、陽イオン交換カラムに付した。8M尿素、50mMの酢酸ナトリウム、pH4.5、2mMのCaClで平衡化した1mLのスクロース15Sカラム(アマシャム)に反応混合物を充填し、8M尿素、50mMの酢酸ナトリウム pH4.5、2mMのCaClから8Mの尿路、50mMの酢酸ナトリウム pH4.5、2mMのCaCl、1000mMのNaClの線状勾配を、非ペグ化タンパク質からペグ化タンパク質を分画するために用いた。
L929アッセイを、ペグ化GG−I10−TN−2−B1−C22−7(20KPEG−GG−I10−TN−2−B1−C22−7)、非ペグ化GG−I10−TN−2−B1−C22−7(GG C22−7)および未変異TN−2−B1−C22−7(C22−7)(配列番号32)を用いて実施例3に記載のとおり実施した。エンブレルおよびレミケードを対照として用いた。
図8から分かるように、インビトロアッセイのペグ化物質の有効性は、非ペグ化物質と有意に異なってはいなかった。
【0053】
実施例6:マウスにおける炎症性サイトカイン誘導のインビボ阻害
マウスは、3種の異なる濃度:マウス当たり12.5、25および50μgでTNF結合ポリペプチドTN2−2−B1−C31を注入された。30分後マウスは、3μgのヒトTNFを静脈注射された。対照において正常に見られるように、ヒトTNFは、IL−6およびMCP−1などの炎症性サイトカイン産生を誘導する。しかしながら、図9および10から分かるように、TNF結合ポリペプチドTN2−2−B1−C31は、かかる炎症性サイトカインの誘導を阻害しうる。
【0054】
実施例6:関節リウマチ誘発のインビボ防止
Tg197トランスジェニックマウス系は、ヒトTNFを発現する。マウスは5個のヒトTNFコピーを持っており、3ないし4週の年齢で多発性関節炎を発症する。疾患は、足関節の腫れおよび変形を伴って4週で臨床的に検出可能である。これは、重度の関節破壊および8ないし10週の年齢の後脚の脚運動の機能障害をもたらす。進行性体重減少は共通するものである。TNF中和剤の適当な投与は、疾患の発症を予防する。Tg197ネズミ関節炎モデル中の多発性関節炎の予防における本発明のTNF結合ポリペプチドの有効性を試験するために、TN−2−B1−C31を年齢および体重が一致するTg197マウスの群に投与した。処置は3−4週で予防を開始した。TNF結合ポリペプチドを、5週間腹腔内(i.p.)に3種の用量:3.3、1.0および0.5mg/kgで週に3回投与した。2回目の腹腔内注射前および実験の終了までに血液試料を得た。
関節炎の重症度を、AS−0からAS−3の範囲の関節炎スコアで評価し、表した(ここで、0は関節炎がなく、3は関節中の軟骨破壊および骨破壊により完全に足が不自由となっている)。
図11は、異なる量のTN2−2−B1−C31(図中の「ボレアン構築物」をいう)、セイライン溶液(陰性対照)、野生型テトラネクチン(陰性対照)およびレミケード(陽性対照)で処置した異なる群のマウスの関節炎スコアを示す。図11から分かるように、TN2−2−B1−C31の量が高いほど関節炎スコアはさらに低くなる。これは、TN2−2−B1−C31が関節リウマチの治療に有効であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C22を完全な三量体形態(TN2B1C22)および単量体(TN3−2−B1−c22)として用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
【図2】図2は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C22−7を単量体(TN3−B1−C22−7)として用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
【図3】図3は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C31を完全な三量体形態(TN2B1C31)として用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
【図4】図4は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C24を完全な三量体形態(TN2B1C24)として用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
【図5】図5は、エンブレル、レミケードおよびTNF受容体IIフラグメント(RII)と比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C22−8、TN2−2−B1−C22−14、TN2−2−B1−C22−2、TN2−2−B1−C22−7、TN2−2−B1−C22−12、TN2−2−B1−C22−19を用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
【図6】図6は、エンブレルおよびレミケードと比較して、TNFアンタゴニストTN2−2−B1−C22−8、TN2−2−B1−C22−7およびTN2−2−B1−C31を用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。
【図7】図7は、エンブレルおよびレミケードと比較して、TN3−2−B1−C31、TN3−2−B1−C22−7、TN3−2−B1−C22−8を用いるHUVECアッセイにおけるTNF誘導性IL6およびIL8産生の阻害を示す。
【図8】図8は、ペグ化GG−I10−TN−2−B1−C22−7(20KPEG−GG−I10−TN−2−B1−C22−7)、非ペグ化GG−I10−TN−2−B1−C22−7(GG C22−7)、および未変異TN−2−B1−C22−7(C22−7)(配列番号32)を用いるL929細胞アッセイにおけるTNFの阻害を示す。エンブレルおよびレミケードを、対照として用いた。
【図9】図9は、3種類の異なる濃度:マウス当たり12.3、25および50μgでTN2−2−B1−C31を注射されたマウスのTNF誘導性IL−6産生の阻害を示す。30分後マウスは、3μgのヒトTNFを静脈注射された。
【図10】図10は、三種類の異なる濃度:マウス当たり12.5、25および50μgでTN2−2−B1−C31を注入されたマウスのTNF誘導性MCP−1産生の阻害を示す。30分後マウスは、3μgのヒトTNFを静脈注射された。
【図11】図11は、三種類の異なる量のTN2−2−B1−C31(図中の「ボレアン構築物」をいう)、セイライン溶液(陰性対照)、野生型テトラネクチン(陰性対照)およびレミケード(陽性対照)で処理したマウスの異なる群の関節炎患者のスコアを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍壊死因子(TNF)との結合能を有するポリペプチドであって、アミノ酸配列KRWSRYF(配列番号1)を含むポリペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が、C型レクチン様ドメインの一部を形成する請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
C型レクチン様ドメインがテトラネクチンに由来する請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
テトラネクチン由来C型レクチン様ドメインが、実質的に配列番号79の残基50−181として示されるようなアミノ酸配列である請求項3記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号79の残基番号165のアスパラギン酸がグリシンに変異される請求項4記載のポリペプチド。
【請求項6】
およびXが、各々独立して、アミノ酸残基であるアミノ酸配列PXPXN(配列番号2)をさらに含む請求項1記載のポリペプチド。
【請求項7】
が、S、T、N、Q、E、D、K、RおよびHから選択される親水性アミノ酸であり;XおよびXが、各々独立して、アミノ酸残基であり、XがM、A、V、L、P、W、F、YおよびCからなる群より選択される疎水性アミノ酸である、アミノ酸配列XPXPXNX(配列番号3)をさらに含む請求項1記載のポリペプチド。
【請求項8】
が、S、T、N、Q、E、D、K、RおよびHから選択される親水性アミノ酸であり;XおよびXが、各々独立して、アミノ酸残基であり、XがW、FおよびYからなる群より選択される芳香族アミノ酸である、アミノ酸配列XPXPXNX(配列番号3)をさらに含む請求項1記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27および配列番号28からなる群より選択されるアミノ酸配列をさらに含む請求項1記載のポリペプチド。
【請求項10】
TN3−2−B1−C22(配列番号29)、TN3−2−B1−C31(配列番号30)、TN3−2−B1−C24(配列番号31)、TN3−2−B1−C22−7(配列番号32)、TN3−2−B1−c22−1(配列番号33)、TN3−2−B1−c22−2(配列番号34)、TN3−2−B1−c22−3(配列番号35)、TN3−2−B1−c22−4(配列番号36)、TN3−2−B1−c22−5(配列番号37)、TN3−2−B1−c22−6(配列番号38)、TN3−2−B1−c22−7(配列番号39)、TN3−2−B1−c22−8(配列番号40)、TN3−2−B1−c22−10(配列番号41)、TN3−2−B1−c22−11(配列番号42)、TN3−2−B1−c22−12(配列番号43)、TN3−2−B1−c22−13(配列番号44)、TN3−2−B1−c22−14(配列番号45)、TN3−2−B1−c22−15(配列番号46)、TN3−2−B1−c22−16(配列番号47)、TN3−2−B1−c7(配列番号48)、TN3−2−B1−C19(配列番号49)、TN3−2−B1−C1(配列番号50)、TN3−2−B1−C20(配列番号51)、TN3−2−B1−C53(配列番号52)およびTN3−2−B1−C29(配列番号53)からなる群より選択される請求項9記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記C型レクチン様ドメインが、テトラネクチン由来三量体化ドメインと結合している請求項3記載のポリペプチド。
【請求項12】
テトラネクチン由来三量体化ドメインが、配列番号80の配列と少なくとも68%のアミノ酸配列の同一性を有する配列を含む請求項11記載のポリペプチド。
【請求項13】
アミノ酸配列の同一性が、少なくとも75%、例えば、少なくとも92%を含む少なくとも87%である請求項12記載のポリペプチド。
【請求項14】
テトラネクチン由来三量体化ドメインがアミノ酸配列番号81を含む請求項11記載のポリペプチド。
【請求項15】
TN2−2−B1−C22(配列番号54)、TN2−2−B1−C31(配列番号55)、TN2−2−B1−C24(配列番号56)、TN2−2−B1−C22−7(配列番号57)、TN2−2−B1−c22−1(配列番号58)、TN2−2−B1−c22−2(配列番号59)、TN2−2−B1−c22−3(配列番号60)、TN2−2−B1−c22−4(配列番号61)、TN2−2−B1−c22−6(配列番号62)、TN2−2−B1−c22−7(配列番号63)、TN2−2−B1−c22−8(配列番号64)、TN2−2−B1−c22−9(配列番号65)、TN2−2−B1−c22−10(配列番号66)、TN2−2−B1−c22−11(配列番号67)、TN2−2−B1−c22−12(配列番号68)、TN2−2−B1−c22−13(配列番号69)、TN2−2−B1−c22−14(配列番号70)、TN2−2−B1−c22−15(配列番号71)、TN2−2−B1−c22−16(配列番号72)、TN2−2−B1−c7(配列番号73)、TN2−2−B1−C19(配列番号74)、TN2−2−B1−C1(配列番号75)、TN2−2−B1−C20(配列番号76)、TN2−2−B1−C53(配列番号77)、TN2−2−B1−C29(配列番号78)およびGG−I10−TN−2−B1−C22−7(配列番号79)からなる群より選択される請求項11記載のポリペプチド。
【請求項16】
請求項1−15のいずれか一に記載のポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸。
【請求項17】
請求項16記載の単離された核酸を含む発現ベクター。
【請求項18】
請求項17記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
請求項1−15のいずれか記載のTNFとの結合能を有するポリペプチドの調製法であって、(i)前記ポリペプチドを発現するかかる条件下で請求項16記載の単離された核酸を発現し、および(ii)ポリペプチドを回収する工程を含む方法。
【請求項20】
請求項1−15のいずれか記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項21】
TNFが介在する病変を有する対象を治療する方法であって、有効量の請求項1−15のいずれか記載のポリペプチドまたは請求項20記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項22】
TNFが介在する病変が、関節リウマチ、乾癬およびクローン病からなる群より選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
試料中のTNFを検出するアッセイ方法であって、(i)請求項1−15のいずれか記載のポリペプチドと前記試料を接触させること、および(ii)前記ポリペプチドに対するTNFの結合を検出することを含む方法。
【請求項24】
医薬として使用するための請求項1−15のいずれか記載のポリペプチド。
【請求項25】
TNFが介在する疾患を治療するための請求項1−15のいずれか記載のポリペプチド。
【請求項26】
医薬品の調製における請求項1−15記載のポリペプチドの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−520214(P2008−520214A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541691(P2007−541691)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000742
【国際公開番号】WO2006/053568
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(307018335)
【氏名又は名称原語表記】Borean Pharma ApS
【Fターム(参考)】