説明

TOP2A遺伝子異常を用いた高リスク乳癌患者の予後を行う方法

患者から得られた組織試料中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および決定された状態に対応する予め決定されたハザード比に基づいて、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率を推定する工程を含む、乳癌患者の予後を行う第一例示方法。患者から得られた組織試料中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および決定された状態に対応する予め決定されたカプランーマイヤープロットに基づいて、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率を推定する工程を含む、乳癌患者の予後を行う第二例示方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、乳癌患者の予後に関する。より具体的には、本発明は、TOP2A遺伝子異常の状態(存在または非存在、存在する場合、種類は増幅または欠失である)を決定することによってかかる予後を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
TOP2A遺伝子は、HER2と同じアンプリコン中の染色体17q21に位置し、酵素トポイソメラーゼIIαをコードする [Jarvinen TAH, Tanner M, Bar-lund M, Borg A, Isola J. 「Characterization of Topoisomerase IIa Gene Amplification and Deletion in Breast Cancer.」 Genes Chromosomes Cancer 1999;26: 142-150参照]。この酵素はDNAトポロジーの調節に関与し、転写、複製および組換えプロセス中の遺伝的物質の統合に重要である。これらのプロセス中に、トポイソメラーゼIIαは二重鎖DNAの切断および再結合を触媒する[Osheroff N. 「Biochemical basis for the interactions of type I and type II topoisomerases with DNA.」 Pharmacol Ther 1989;41(1-2):223-41 ; Roca J. 「The mechanisms of DNA topoisomerases.」 (概説) Trends Biochem Sci 1995;20(4):156-60; Wang JC. 「Cellular roles of DNA topoisomerases: a molecular perspective.」 Nat Rev Mol Cell Biol 2002;3(6):430-40]。トポイソメラーゼIIαの発現は細胞周期依存性であり、停止細胞株中よりも指数関数的な増殖の顕著な高いレベルを有する [Lynch BJ, Guinee DG, Jr., Holden JA. 「Human DNA topoisomerase II-alpha: a new marker of cell proliferation in invasive breast cancer.」 Hum Pathol 1997;28(10):1180-8; Hsiang YH, Wu HY, Liu LF. 「Proliferation-dependent regulation of DNA topoisomerase II in cultured human cells.」 Cancer Res 1988;48(11):3230-5]。酵素量が細胞増殖と相関することが示されている[Heck MM, Earnshaw WC. 「Topoisomerase II: A specific marker for cell proliferation.」 J Cell Biol 1986; 103(6 Pt 2):2569-81]。
【0003】
癌遺伝子活性化の主な遺伝的機構は、タンパク質過剰発現をもたらす遺伝子増幅を介するものであり、腫瘍に選択的増殖の利点を提供する[Callagy G, Pharoah P, Chin SF, Sangan T, Daigo Y, Jackson L, et al. 「Identification and validation of prognostic markers in breast cancer with the complementary use of array-CGH and tissue microarrays.」 J Pathol 2005;205(3):388-96]。TOP2A遺伝子の増幅は乳癌患者の7〜14%で報告され、同様の頻度の欠失も報告されている [Callagy et al, 前掲; Olsen KE, Knud-sen H, Rasmussen BB, Balslev E, Knoop A, Ejlertsen B, et al. 「Amplification of HER2 and TOP2A and deletion of TOP2A genes in breast cancer investigated by new FISH probes.」 Acta Oncol 2004;43(1):35-42; Harris L, Dressier L, Cowan D, Berry D, Cirrin-cione C, Broadwater G, et al. 「The role of HER-2 + Topo IIa Amplification in predicting benefit form CAF dose escalation CALGB 8541.」 ASCO Annual Meeting 2004, Abstract no. 9505]。比較して、HER2癌遺伝子は乳癌患者の20〜30%で増幅される[Hayes DF, Thor AD. 「c-erbB-2 in breast cancer: development of a clinically useful marker.」 Semin Oncol 2002;29(3):231-45]。
【0004】
トポイソメラーゼIIαはアントラサイクリンの薬理学的標的であり[Tewey KM, Rowe TC, Yang L, Halligan BD, Liu LF. 「Adriamycin-induced DNA damage mediated by mammalian DNA topoisomerase II.」 Science 1984;226(4673):466-8; Hortobagyi GN. 「Anthracyclines in the treatment of cancer. An overview.」 Drugs 1997;54 Suppl 4:1-7]、いくつかの研究によってTOP2A遺伝子異常、特に増幅が乳癌患者のアントラサイクリンベースの化学治療に応答することが予測されることが示されている[Harris et al., 前掲; Di Leo A, Gancberg D, Larsimont D, Tanner M, Jarvinen T, Rouas G, et al. 「HER-2 amplification and topoisomerase IIalpha gene aberrations as predictive markers in node-positive breast cancer patients randomly treated either with an anthracycline-based therapy or with cyclophosphamide, methotrexate, and 5-fluorouracil.」 Clin Cancer Res 2002;8(5):1107-16; Park K, Kim J, Lim S, Han S. 「Topoisomerase II-alpha (topoII) and HER2 amplification in breast cancers and response to preoperative doxorubicin chemotherapy.」 Eur J Cancer 2003;39(5):631-4; Press MF, Mass RD, Zhou JY, Sullivan-Halley J, Villalobos IE, Lieberman G, et al. 「Association of topoisomerase II-alpha (TOP2A) gene amplification with responsiveness to anthracycline-containing chemotherapy among women with metastatic breast cancer entered in the Herceptin H0648g pivotal clinical trial.」 In: ASCO Annual Meeting; 2005; 2005. Abstract No. 9543; Tanner MM, Isola JJ, Wiklund T, Erikstein B, Kellokumpu-Lehtinen P, Malmstrom P, et al. 「Topoisomerase IIa gene amplification predicts favorable outcome of tailored and dose-escalated anthracyclin-based adjuvant chemotherapy in HER-2 positive breast cancer. Results from the randomized trial SBG 9401.」 In: ASCO Annual Meeting; 2005; 2005. Abstract No. 9518; Knoop AS, Knudsen H, Balslev E, Rasmus-sen BB, Overgaard J, Nielsen KV, et al. 「Retrospective analysis of topoisomerase IIa amplifications and deletions as predictive markers in primary breast cancer patients randomly assigned to cyclophosphamide, methotrexate, and fluorouracil or cyclophosphamide, epirubicin, and fluorouracil: Danish Breast Cancer Cooperative Group. J Clin Oncol 2005;23(30):7483-90]。TOP2A欠失の患者に関して利用可能なデータはほとんどないがこの患者集団の良好な処置結果の傾向もまた観察されている[Harris et al., 前掲; Knoop et al.,前掲]。TOP2A遺伝子異常の予測特性とは対照的に、予後値にはほとんど注意が払われていない。これまでの研究はTOP2A増幅のみと関連する被験体を扱うことを公表している[Callagy et al., 前掲]。
【0005】
最近、Callagyら[前掲]は、乳癌を異なる予後集団に分類するために使用され得る分子マーカーを同定するために組織マイクロアレイに蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)技術を使用する研究を公表した。この研究で、TOP2AおよびHER2増幅は疾患の有害結果と関連する有意な予後を有することが示された。同じ研究で、トポイソメラーゼIIαは免疫組織化学(IHC)を用いて測定された。TOP2A増幅とトポイソメラーゼIIαとの間での有意な相関が見出された。トポイソメラーゼIIαの過剰発現はTOP2A増幅の場合の93%で存在した。しかし、反対に、過剰発現の場合の20%だけが増幅した。不幸にも、従って、TOP2A欠失の予後値に情報は提供されていない。
【0006】
他の研究は同様な相関を示していない[Petit T, Wilt M, Velten M, Millon R, Rodier JF, Borel C, et al. 「Comparative value of tumour grade, hormonal receptors, Ki-67, HER-2 and topoisomerase II alpha status as predictive markers in breast cancer patients treated with neoadjuvant anthracycline-based chemotherapy.」 Eur J Cancer 2004;40(2):205-11; Mueller RE, Parkes RK, Andrulis I, O'Malley FP. 「Amplification of the TOP2A gene does not predict high levels of topoisomerase II alpha protein in human breast tumor samples.」 Genes Chromosomes Cancer 2004;39(4):288-97; Dur-becq V, Desmed C, Paesmans M, Cardoso F, Di Leo A, Mano M, et al. 「Correlation between topoisomerase-IIalpha gene amplification and protein expression in HER-2 amplified breast cancer.」 Int J Oncol 2004;25(5):1473-9]。
【0007】
トポイソメラーゼIIα過剰発現と確立された予後因子との間の相関はいくつかの研究で調査されている[Rudolph P, MacGrogan G,Bonichon F, Frahm SO, de Mascarel I, Trojani M, et al. 「Prognostic significance of Ki-67 and topoisomerase IIalpha expression in infiltrating ductal carcinoma of the breast. A multivariate analysis of 863 cases.」 Breast Cancer Res Treat 1999;55(1):61-71; Hellemans P, van Dam PA, Geyskens M, van Oosterom AT, Buytaert P, Van Marck E. Immunohistochemical study of topoisomerase II-alpha expression in primary ductal carcinoma of the breast. J Clin Pathol 1995;48(2): 147-50; Rudolph P, Olsson H, Bonatz G, Ratjen V, Bolte H, Baldetorp B, et al. 「Correlation between p53, c-erbB-2, and topoisomerase II alpha expression, DNA ploidy, hormonal receptor status and proliferation in 356 node-negative breast carcinomas: prognostic implications.」 J Pathol 1999;187(2):207-16; Depowski PL, Rosenthal SI, Brien TP, Stylos S, Johnson RL, Ross JS. 「Topoisomerase IIalpha expression in breast cancer: correlation with outcome variables.」 Mod Pathol 2000;13(5):542-7; Kalogeraki A, leromonachou P, Kafousi M, Giannikaki E, Vrekoussis T, Zoras O, et al. 「Topoisomerase II alpha expression in breast ductal invasive carcinomas and correlation with clinicopathological variables.」 In Vivo 2005;19(5):837-40]。これらの研究のほとんどは酵素の過剰発現と疾患の有害結果との間のある種類の相関を示した。結節陰性乳癌患者のポリクローナル抗血清(Ki-S4)標本染色を用いて、Rudolph, McGroganら[前掲]およびRudolph, Olssonら[前掲]は、トポイソメラーゼIIα過剰発現が生存の予後因子と独立したことを示した。
【0008】
(発明の要旨)
乳癌患者の予後を行う利用可能な方法を、現在当該技術分野で利用可能なものを越えて拡張するために、このような予後を行う新規方法が本明細書に開示され、該予後はTOP2A遺伝子の異常状態の決定に基づく(用語「状態」は、異常の存在または非存在のことをいい、異常が存在する場合、異常の種類は増幅または欠失である)。本発明による態様は、患者から得られた組織試料中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および決定された状態に対応する予め決定されたハザード比またはカプラン-マイヤー推定量プロットの再発無しの生存(RFS)または全生存(OS)のいずれかに基づいて、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率を推定する工程を含み得る。
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明は、乳癌患者の予後のための新規方法を提供し、該予後はTOP2A遺伝子の異常状態の決定に基づく。
【0010】
用語「予後」は、特に特定の状況に関して、将来起きそうであると判断されるもの、より具体的には疾患の可能性のあるもしくは予測される発症または良好になる機会の判断の記載を意味する。
【0011】
用語「遺伝子異常」とは、遺伝子のDNA配列の任意の変化または遺伝子関連配列/領域、例えば、遺伝子の調節性染色体領域の変化を意味する。本発明の文脈において用語「遺伝子」は、遺伝単位に対応するゲノム配列の特定の場所を指定する領域を意味し、調節性領域、転写領域および/または他の機能配列領域と関連する。好ましい遺伝子異常は、限定されないが、被験体ゲノムの、遺伝子の全DNA配列、遺伝子配列の断片/一部および/または遺伝子関連配列もしくは該配列の一部の増幅、複製、および/または欠失から選択され得る。
【0012】
決定される異常状態の配列/遺伝子/領域は、本明細書で「標的配列/遺伝子/領域」または「目的の配列/遺伝子/領域」と呼ばれる。
【0013】
本発明の文脈で用語「被験体」は、疾患を有するか、疾患を有する疑いのあるヒトを含む任意の哺乳動物を意味する。用語「被験体」は、本明細書で用語「患者」と相互可能に使用される。
【0014】
従って、本発明の第一側面は、TOP2A遺伝子の異常状態を決定することで乳癌患者の予後を行うことに関する。遺伝子の異常状態は、癌患者から得られた組織試料または細胞試料のような、試料中で遺伝子解析を行うことで決定される。用語「異常状態」は、異常の存在または非存在を意味し、存在する場合は、種類は異常である。異常が非存在である場合、本明細書で遺伝子は正常と呼ばれる。例えば、遺伝子の増幅または欠失の非存在が正常コピー数の遺伝子の存在によって反映される。
【0015】
遺伝子の異常状態を推定するために、参照ゲノム配列が使用され得る。用語「参照配列」とは、目的の遺伝子/配列/領域と同一でない配列を意味する。目的の遺伝子と同じ染色体に位置する参照配列を適用することで、所定の染色体の特異的倍数性レベルは、ゲノム標的配列(異常状態が決定される配列)が増幅、欠失または正常であるかを決める。好ましい参照配列の例を以下に記載する。
【0016】
目的の遺伝子の異常状態の決定は、好ましくは遺伝子解析を用いて行われ、用語「遺伝子解析」は遺伝子の解析に適切であり得る任意の解析、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション、RT-PCRを意味する。
【0017】
遺伝子解析を行うために、様々なプローブが使用され得る。本明細書で使用される場合「プローブ」は、検出または視覚化される遺伝子関連領域/配列に結合し得る任意の分子または分子の組成物を意味する。
【0018】
異なる態様において、本発明は、異なる種類のプローブ、例えば、
−検出される領域、すなわち、異常状態が決定される遺伝子関連ゲノム配列、タンパク質またはRNA分子等の遺伝子産物の配列に特異的に結合することができる任意のプローブを意味する特異的プローブ;
−他のプローブまたは分子で検出される領域の相互作用をブロック、抑制、または妨げることができる任意のプローブを意味するブロッキングプローブ
に関し得、
異なる態様において、プローブの起源はまた、異なり得、例えば、
−ヌクレオチドまたはそのアナログから単に形成された骨格を有する天然核酸塩基配列含有オリゴマー、ポリマー、またはポリマーセグメントの任意の分子を含む核酸プローブ;本明細書で使用される場合「ヌクレオチド」は、プリンまたはピリミジン塩基およびリン酸基に結合したリボースまたはデオキシリボース糖からなる任意のいくつかの化合物を意味する。ヌクレオチドは核酸の基本構造サブユニットである。核酸プローブの例はDNAおよび/またはRNAの配列を含むプローブであり得る。
−天然核酸分子でないか、または少なくとも1つの修飾ヌクレオチド、もしくはヌクレオチドの修飾から直接派生されるサブユニットから構成される任意の分子を意味する核酸アナログプローブ。核酸アナログプローブの例はPNA配列を含むプローブであり得、ここで「PNA」はペプチド核酸の省略である。
−例えば、抗体、レセプター、リガンド、成長因子、DNA結合タンパク質または目的領域に結合し得る任意の他のタンパク質等の全タンパク質分子から作製されたタンパク質プローブ、または
−上記タンパク質由来の短いペプチド配列を含むペプチドプローブまたは天然および/または非天然アミノ酸残基を含む合成ぺプチド配列を含むペプチドプローブ
である。
【0019】
本発明の核酸プローブは、オリゴデオキシ核酸(例えばDNA)、オリゴリボ核酸(例えばRNA、mRNA、siRNA)およびそれらの断片等の天然核酸分子から構成され得る。核酸アナログプローブは核酸プローブと同じ目的領域に結合し得るか、改変天然核酸分子から作製されるか、または合成分子であり得る。改変天然分子の非限定例は、ロックド核酸(LNA)または例えばペプチド核酸(PNA)等をベースにしたポリアミドの合成分子または他の核酸アナログもしくは核酸模倣物であり得る。
【0020】
プローブは標的領域、例えばTOP2A遺伝子、動原体領域等の対象ゲノムの参照配列を検出するために適切な任意の長さを有し得る。通常、プローブは種々の大きさ(例えば、それぞれ約50bp〜約500bp)のより小さな断片から構成され、プローブは全体で、約30kb〜約2Mbの距離におよぶ。プローブは通常、独自の断片と繰り返し断片の両方を含む。このような繰り返し断片がプローブ配列に望ましくない場合、これらは例えば、ブロッキングプローブの使用によって除去またはブロックされ得る。
【0021】
PNAプローブと同様に、核酸アナログプローブは、通常短く、十分に定義されたプローブであり、典型的に約10〜25個の核酸塩基を含む。PNAプローブは通常、いくつかの個々のプローブから構成され、それぞれは10〜25核酸塩基単位を有する。
【0022】
核酸プローブ、核酸アナログプローブおよびタンパク質プローブは、別々の解析または同じ解析で組み合わせて使用され得る。非限定例は、目的配列の検出のための1〜2の核酸プローブ、および参照配列またはタンパク質もしくはRNA等の参照遺伝子の産物の検出のための核酸、核酸アナログプローブまたはタンパク質プローブいずれかの使用であり得る。
【0023】
いくつかの好ましい態様において、プローブが標識され得る。
【0024】
プローブ標識は、当該技術分野で周知の異なる方法を用いて、例えば、酵素または化学プロセスの手段によって行われ得る。当業者に公知の任意の標識方法は本発明の目的でプローブを標識するために使用され得る。
【0025】
プローブは、目的遺伝子の配列、または別の参照配列に結合し、ストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る。ハイブリダイゼーションの当業者は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを負わせるまたは調節するために一般に使用される因子としては、ホルムアミド濃度(または他の化学変性試薬)、塩濃度(すなわち、イオン強度)、ハイブリダイゼーション温度、界面活性剤濃度、pHおよびカオトロピック剤の存在または非存在が挙げられることを認識する。プローブ/マーカー配列組み合わせの最適ストリンジェンシーは、しばしば、前記ストリンジェンシー因子のいくつかを固定し、次に単一のストリンジェンシー因子の変更効果を決定する周知の技術によって見出される。同じストリンジェンシー因子を調節して、PNAのハイブリダイゼーションはイオン強度とかなり独立することを除いてPNAの核酸へのハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを調節し得る。アッセイに最適なストリンジェンシーは、所望の程度の識別が達成されるまで各ストリンジェンシー因子を調べることによって実験で決定され得る。一般に、核酸夾雑を生じるバックグラウンドが標的配列により密接に関連すればするほど、より注意してストリンジェンシーが調節されなければならない。従って、適切なハイブリダイゼーション条件は、所望の程度の識別が達成される条件を含み、アッセイは正確(アッセイに所望される許容範囲内)で再現可能な結果を生じる。それにも関わらず、慣例実験および本明細書に提供される開示以下の補助により、当業者は本明細書に記載される方法および組成物を利用するアッセイを実施するための適切なハイブリダイゼーション条件を容易に決定し得る。
【0026】
非限定例のストリンジェント条件は以下の実験手順に記載され、さらなる非限定例はPeptide Nucleic Acids, Protocols and Applications,第2版、Peter E Nielsen編,Horizon Scientific Press, 2003の第11章に見られ得る。
【0027】
参照配列に結合するプローブは、目的遺伝子、すなわちTOP2A遺伝子が位置する染色体の動原体領域に対して標的とされ得る。同じ染色体に参照を適用して、所定の染色体の特異的倍数性レベルは、ゲノムプローブが増幅、欠失または正常であるかを決める。核酸プローブ、核酸アナログプローブの両方、およびタンパク質プローブが使用され得る。ヒトの動原体DNAに高いホモロジーがあるにも関わらず、参照配列としてFISHアッセイの使用のためのヒト染色体特異的動原体を含むクローンを同定および構築した。プローブ長は、動原体繰り返し配列に対して標的とされたプローブが使用される場合にシグナル強度の減少なしに劇的に減少され得る。動原体参照プローブの使用の利点は、これらがSINEおよびLINEを含まないのでバックグラウンド染色に寄与しないということである。
【0028】
例えばTOP2A遺伝子が位置する染色体17の動原体領域は、参照プローブとして直接使用され得るクローン配列に由来するFISHプローブによって特異的に同定されることが分かった。しかし、合成ぺプチド核酸(PNA)プローブは、非特異的なバックグラウンドの減少と共に、そのDNA特異性および高いシグナル強度のために、FISHの動原体検出に選ばれ得る。PNAは、骨格がDNAのデオキシリボースホスホジエステル骨格の代わりにペプチドを模倣する合成オリゴヌクレオチドである。PNA構築物について、約10〜25塩基の配列が有用である。あるいは、座特異的プローブ(LSP)が参照として使用され得る。これは好ましくは目的遺伝子より反対の染色体腕に位置され得、全腕の欠失が生じる場合に参照比に対して不正確なプローブを排除する。参照プローブは癌においてゲノム異常と任意に関係する領域に位置すべきではない。
【0029】
多くの遺伝子解析が公知であり、上記プローブが首尾よく使用され得る。これらの多くの解析は既に、実験室のルーチンの一部になっている。本発明による方法に使用される正確な解析は注意深く、目的配列およびプローブの性質に従って選択されるべきである。
【0030】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は、細胞中の特定DNA配列の数、大きさおよび/または位置を決定するための重要なツールであり、本発明の方法に適用され得る。典型的に、ハイブリダイゼーション反応は配列を蛍光で染色し、その位置、大きさおよび/または数が蛍光顕微鏡、フローサイトメトリーまたは他の適切な装置を用いて決定され得る。全ゲノムから数キロベースの範囲のDNA配列は、市販装置と組み合わせて、現在のハイブリダイゼーション技術を用いて研究され得る。比較的ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)で、全ゲノムを染色し、異常コピー数を有する領域を検出するために正常参照ゲノムと比較される。m-FISH技術(マルチカラーFISH)において、それぞれ別の正常染色体を別の色で染色する(Eils et al, Cytogenetics Cell Genet 82:160-71(1998))。プローブを異常材料に使用する場合、プローブによって、異常な染色体が染色され、これらが派生した正常染色体を演繹する(Macville M et al., Histochem Cell Biol. 108:299-305(1997))。FISH系染色は十分に区別でき、ハイブリダイゼーションシグナルが伸展の中期および間期核の両方で見られ得る。核酸プローブを用いた単FISHおよびマルチカラーFISHは、新生児診断、白血病診断、および腫瘍細胞遺伝学を含む、分子細胞遺伝学として一般に公知の種々の臨床適用に利用されている。該適用の他の遺伝子解析法はRT-PCRおよびCISH(発色インサイチュハイブリダイゼーション)であり得る。特に、FISHおよびCISHの組み合わせが、例えば蛍光標識または発色原標識でプローブを標識して、次にFISHシグナルをCISHシグナルに変換するか、その逆によって使用され得る。あるいは、プローブは、FISHシグナルまたはCISHシグナルの別々の検出ができるように蛍光および発色原標識の両方で標識され得る。
【0031】
遺伝子解析は好ましくは組織試料、例えば生検試料を使用して行われる。解析を実施する最も単純な方法は、パラフィン包埋組織の相当数の切片を切り、各切片にプローブをハイブリダイズすることであり得る。あるいは、凍結組織が使用され得るかまたは刻印(imprint)する。ハイブリダイゼーションには標準条件だけが要求される。ほとんどのプローブについて、例えば動原体プローブ等の内部参照が好ましくは含まれるべきである。遺伝子プローブおよび参照プローブは、例えば、それぞれ例えば緑および赤等の異なる色を生じる標識で異なって標識されるべきである。このような標識の非限定例はテキサスレッドおよびフルオレセインの蛍光標識であり得る。青色DAPIは、組織局在および同定を補助する対比染色に使用され得る。また、対照ヘマトキシリン-エオシン切片の利用可能性も有用であり得る。
【0032】
遺伝子の異常状態は、試料中に存在する目的の配列の実際のコピー数、例えば、遺伝子、すなわちTOP2A遺伝子または該遺伝子関連配列のコピー数として測定され得る。また、遺伝子の異常状態は、試料中の遺伝子産物の実際量、例えば、遺伝子に対応するRNAまたはタンパク質の全量として測定され得る。また、遺伝子の異常状態は、目的配列の量が参照配列の量と相関する割合として報告され得る。いくつかの態様において、後者の評価の使用が好ましい。遺伝子の異常レベルは目的の状態、すなわち、乳癌と相関し、従ってこのような状態または疾患およびその発現を記載および/または予測するために使用され得る。遺伝子の異常状態は、しばしばカットオフ値と呼ばれる。
【0033】
正常細胞において、ヒト遺伝子のそれぞれの2つのコピーが存在する。理論的には、相補的DNA鎖に結合するプローブ由来の2つのシグナルが可視化されるべきである。しかし、いくつかの態様において、インサイチュハイブリダイゼーションによる遺伝子解析を行うために調製される試料では、パラフィン包埋組織の切片を切るために、核全体が存在しない。従って、理論的シグナル数と実際のシグナル数との間の差が観察され得、細胞あたりの正常シグナル数と異常シグナル数との間のカットオフ値が経験的に決定されなければならない。参照プローブを用いて、2つの参照プローブシグナルは正常細胞で見られるべきで、理論的には遺伝子プローブのシグナルと参照プローブのシグナルとの間の比は1であるべきである。しかし、技術的、生物学的および統計的理由で、この絶対値は、例えば、HER2 FISH(添付文書, Dako HER2 FISH pharmDxTM kit, code K5331)の場合に0.8〜2.0の範囲のような範囲として決定される。FISHアッセイは、1つ以上の参照プローブの有無で行われ得る。参照プローブなしで、標的遺伝子プローブからの1色のシグナルのみがスコア化され、正常遺伝子配列と増幅遺伝子配列との間のカットオフ値は4〜5であるが、理論値は2である。欠失は、参照プローブまたは参照試料なしのアッセイでスコア化され得ない。
【0034】
FISHアッセイは、遺伝子プローブに加えて、1つ以上の参照プローブ、例えば異なる蛍光標識を用いて異なって標識されたTOP2A遺伝子プローブおよび動原体プローブを含み得る。次に、遺伝子コピー数は参照プローブを用いて計算され得る。各遺伝子コピーのシグナルおよび対応する参照配列のシグナルを検出し、割合を計算する。既に言及したように、参照配列は、倍数性レベルの測定値であるので、染色体コピー数を示す。正常遺伝子コピー数の最も受け入れられているカットオフ値は、0.8〜2.0の割合で示される。遺伝子欠失は、0.8未満の割合で示され、遺伝子増幅は、2.0より大きい割合で示される。
【0035】
本発明によれば、TOP2A遺伝子について、0.8〜2のカットオフ値が正常遺伝子コピー数を示し、患者の良好な再発無しの生存または全生存を予測し、一方で減少(0.8未満のカットオフ値)または増大した遺伝子コピー数(2より大きいカットオフ値)で反映される遺伝子の異常の存在は、患者の不良な再発無しの生存または全生存等の不良な予後を予測する。
【0036】
TOP2A遺伝子の決定された異常状態の予後値は、非限定の実施例によって本明細書に例示され、実施例の部分で詳細にさらに議論される。
【0037】
特定の態様において、本発明は、
1.患者から得られた組織試料中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および
決定された状態に対応する予め決定されたハザード比に基づいて、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率を推定する工程
を含む、乳癌患者の予後を行う方法;
2.患者から得られた組織試料中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および
決定された状態に対応する予め決定されたカプラン−マイヤープロットに基づいて、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率を推定する工程
を含む、乳癌患者の予後を行う方法
に関する。
【0038】
1つの態様において、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率は、決定された状態に対応する予め決定されたハザード比に基づいて決定され得る。別の態様において、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率はまた、決定された状態に対応する予め決定されたカプラン−マイヤープロットに基づいて決定され得る。
【0039】
いくつかの態様において、後の患者の再発無しの生存および全生存の両方は予め決定されたハザード比およびカプラン−マイヤープロットに基づいて決定され得る。
【0040】
1つの態様において、予め決定されたハザード比は、
それぞれの患者から得られた組織試料セット中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および
続いて、患者の再発無しの生存期間または全生存期間の追跡研究を行う工程
を含む、工程を行うことによって計算される。
【0041】
本発明の文脈において用語「決定された状態」は、試料中で決定された遺伝子の異常状態を意味する。
【0042】
1つの態様において、決定された状態がTOP2A増幅に対応する。
【0043】
別の態様において、決定された状態がTOP2A欠失に対応する。
【0044】
別の態様において、決定された状態が正常TOP2Aに対応する。
【0045】
上記のように、TOP2A遺伝子の異常状態の決定は、当該技術分野で公知の遺伝子解析のいずれかによって行われ得る。1つの好ましい態様において、決定工程は、組織試料のFISH解析の実施を含み得る。別の好ましい態様において、CISH解析を含み得る。
【0046】
1つの態様において、インサイチュハイブリダイゼーションによるTOP2A遺伝子の異常状態の解析は、プローブ混合物を使用する工程を含み得る。混合物中のプローブ数は限定されず、2つ以上の異なるまたは同じプローブを含み得る。1つの態様において、プローブの混合物であり得、少なくとも1つのプローブは遺伝子の一部を標的とし、少なくとも1つの別のプローブは染色体17の動原体領域の一部を標的とし、両方のプローブはDNAプローブ等の核酸プローブである。別の態様において、ハイブリダイゼーションプローブの混合物は、核酸プローブおよび核酸アナログプローブ、好ましくはDNAプローブおよびPNAプローブの混合物の両方を含み得、好ましくは、DNAプローブはTOP2A領域の一部を標的とし、PNAプローブは染色体17の動原体領域を標的とする。好ましくは、プローブが標識される。好ましくはDNAプローブはPNAプローブとは異なって標識される。標識は、任意の標識、例えば、発光、蛍光、発色、または任意の他の領域の酵素標識であり得る。いくつかの態様において、プローブの混合物は好ましくはTOP2A領域の一部を標的としたテキサスレッド標識DNAプローブおよび染色体17の動原体領域を標的としたフルオレセイン標識ペプチド核酸(PNA)プローブの混合物を含み得る。
【0047】
インサイチュハイブリダイゼーションを用いた試料の解析および結果の評価は、手動または部分的もしくは完全自動化プロトコルを用いて行われ得る。
【0048】
本発明の一態様において、該方法は画像解析システムの使用をさらに企図する。
【0049】
多くの試料の結果の手動読み取りは非常に時間がかかる。従って、自動化システムが入手できることは非常に役立ち得る。例えば、多くの分野のハイブリダイゼーションの読み取りは、高速度スキャン装置を用いた蛍光画像解析によって補助される。MetaSystemsは、使用され得る画像解析システムの販売元の例である。
【0050】
上記の全態様は、以下に記載される実施例によって例示される。
【実施例】
【0051】
実施例1
デンマーク人乳癌共同群(Danish Breast Cancer Cooperative Group)(DBCG)治験89-Dのデータに基づき、下記の遡及的分析の目的は、本発明による予後方法の実施に使用され得る有用な統計学的データが得られるように、高リスク乳癌患者における増幅および欠失の両方のTOP2A異常の予後値、ならびにHER2状態を調査することであった。
【0052】
患者および方法
DBCG 89-D研究の詳細は、別に、Knoop et al.[前掲]に公表されている。簡単に、初期浸潤乳癌と診断された女性は、I: 閉経前、結節陰性で悪性度2もしくは3の腫瘍≦5cmを有する; II: 閉経前で受容体陰性もしくは不明腫瘍>5cmを有するか、もしくは陽性腋窩リンパ節を有する、またはIII: 閉経後で受容体陰性腫瘍>5cmを有するか、もしくは陽性腋窩リンパ節を有する場合、研究に適格であった。乳房切除術または腫瘍摘出術後、患者を、CMF(シクロホスファミド600mg/m2、メトトレキサート40mg/m2および5-フルオロウラシル600mg/m2)またはCEF(シクロホスファミド600mg/m2、エピルビシン60mg/m2および5-フルオロウラシル600mg/m2)のいずれかの化学療法計画に無作為化した。合計で980名の患者を研究に登録した。これらのうち、18名の患者は、化学療法を全く受けず、研究から除外した(図1参照)。放射線療法を、ランペクトミー後の残留乳房(48Gy+追加10Gy)、または腫瘍が>5cmの場合は乳房切除術後の胸壁(48Gy)に対して、および結節陽性疾患の局所結節(48Gy)に対して与えた。すべての場合において、1週あたり5画分に2Gyを投与した。CMFおよびCEF群では、それぞれ206名(40.0%)および173名(38.7%)が放射線療法を受けた。DBCG 89-D研究および遡及的TOP2A研究は、ヘルシンキ宣言に従って行ない、デンマーク倫理委員会(Danish Ethical Committees)に承認された。
【0053】
組織の調製
化学療法を受けた962名の患者のうち、806名の患者から組織塊が利用可能であった(図1参照)。免疫組織化学(IHC)および蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)のため、利用可能なパラフィン包埋腫瘍から連続的な4μmの連続切片を切断し、染色を行なうまで低温保存した。すべての分析は、デンマークのロスキルデ病院の病理学科で行なわれた。
【0054】
HER2免疫組織化学
切断してから5日以内に、HercepTestTM(Dako、Glostrup、Denmark)の製造業者手順の手順に従ってTechmate免疫染色装置(Dako、Glostrup、Denmark)を用いて切片を染色した。各場合で、キットに供給された陽性対照、ならびに施設内対照が陰性対照とともに含まれた。HercepTestTMについて推奨されたとおりに、結果を0、1+、2+および3+にスコア化した。
【0055】
TOP2AおよびHER2 FISH
TOP2A FISH pharmDxTMキットおよびHER2 FISH pharmDxTMキット(Dako、Glostrup、Denmark)を各々、製造業者の手順に従って別々の組織スライドにおいて使用した。FISH pharmDxTM Kit に含まれた既製TOP2A FISH Probe Mixは、PNA(ペプチド核酸)[Nielsen PE、Egholm M編. Peptide Nucleic Acids: Protocols and Applications. Norfolk NR18 0EH、England: Horizon Scientific Press; 1999]とDNA技術の組合せに基づく。このProbe Mixは、TOP2A領域の合計227kbにわたるテキサスレッド標識DNAプローブの混合物、および染色体17の動原体領域を標的としたフルオレセイン標識PNAプローブの混合物からなる。2つの標的への特異的ハイブリダイゼーションにより、各TOP2A遺伝子に明白な赤色蛍光シグナルおよび染色体17の各動原体領域に明白な緑色蛍光シグナルの形成がもたらされる。バックグラウンド染色を低減させるため、Probe Mixは、非標識PNAブロッキングプローブもまた含有する。試薬は、45%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、300mmol/L NaCl、5mmol/Lリン酸、およびブロッキング剤を含有するハイブリダイゼーション溶液中に液体形態で提供される。2つのFISH pharmDxTMキットの作業手順は、Olsen et alによる刊行物[前掲]に記載されている。60個までの遺伝子シグナル(または60+に最も近い数)が、同定可能な境界を有する核において計測された。比を、動原体17についてのシグナルの数で割った遺伝子プローブ(それぞれHER2およびTOP2A)由来のシグナルの数として計算した。比が≧2であるときの各場合を、増幅されたHER2またはTOP2A FISHとしてスコア化した。比が<0.8であった場合をTOP2A欠失が存在するとみなす。
【0056】
HER2状態
HER2 FISHおよびHER2 IHCをすべての腫瘍検体において行なった。HER2増幅(比≧2)を有するHER2(3+)陽性腫瘍またはHER2(2+)陽性腫瘍をHER2陽性とみなした。HER2増幅のない(比<2)HER2(0および1+)またはHER2(2+)陽性腫瘍をHER2陰性とみなした。
【0057】
すべてのスライドの検査は盲検で行なった、すなわち、腫瘍の大きさ、悪性腫瘍の悪性度、受容体状態、陽性リンパ節の数、補助療法、臨床結果などに関するデータは、検査員には知られていなかった。
【0058】
統計学的解析
主な目的の結果は、無作為化から最初の移動性(loco-)局所再発、遠位再発、二次悪性腫瘍または死亡までの期間として計算される再発無しの生存(RFS)、および無作為化から死亡までの期間として計算される全生存(OS)であった。追跡時間を潜在的追跡のカプラン・マイヤー推定値[Schemper M、Smith TL. “A note on quantifying follow-up in studies of failure time.”Control Clin Trials 1996;17(4):343-6]で定量した。クロス表およびカイ二乗検定を用いて、TOP2A-状態および古典的予後変量およびHER2-状態間の関係を調査した。カプラン・マイヤー積限法に従って生存曲線を作成し、ログランク検定を用いて比較した。逆方向(backward)選択でCox比例ハザードモデルを使用し、多変量生存分析を行なった(Per Kragh Andersen、Ornulf Borgan、Richard D.Gill、Niels Keiding : Statistical Models Based on Counting Processes、Springer-Verlag (1992)、VII.2)。
【0059】
比例ハザード仮定は、グラフにより、および各共変量について個々に時間依存的成分を含むことにより評価された。ホルモン受容体-状態および悪性腫瘍の悪性度は、比例ハザードの仮定を妨害することがわかった。これは、2つの変量について階層化(stratify)することにより考慮された。
【0060】
TOP2A増幅患者、TOP2A欠失患者およびTOP2A正常患者からなる3つの亜群、ならびにHER2陽性患者および陰性患者からなる2つの亜群においてCox比例ハザード回帰分析を別々に行なった。与えられた特性の予後値を、ハザード比(HR)によって定量した。2つ以上の自由度を有する相互作用項の全体的な有意性をWald検定によって評価した。
【0061】
潜在的な選択の偏りの課題に取り組んだ。2つの群(利用可能な組織塊を有する患者対利用可能な組織塊のない患者)の各々について臨床的および病理学的変量値の分布を得、群間でベースライン値に差はないという仮定をカイ二乗検定によって試験した。RFSおよびOSを、ログランク検定により、利用可能な組織を有する群と利用可能な組織のない群との間で比較した。
【0062】
すべての患者の記録を、疾患状態および死亡に関して2004年12月31日に更新し、したがって、すべての検査患者は、2005年1月1日に生存していることがわかった。
【0063】
結果
研究に対する患者の配置を図1に示す。最初に無作為化した980名の患者のうち156名の患者(16%)に組織塊はなかった。カプラン・マイヤープロットおよびログランク検定を使用し、組織が利用可能か否かに依存してRFSおよびOSに関する有意差はないことが示された。閉経期状態では、腫瘍の大きさ、陽性リンパ節の数、ホルモン受容体状態および悪性腫瘍の悪性度に有意差が見られた。組織塊は、高齢、陽性リンパ節がより多い、腫瘍の大きさがより大きい、および悪性腫瘍の悪性度がより高い患者で、より頻繁に利用可能であった。
【0064】
TOP2A FISH試験は、806個の利用可能な組織塊のうち773個(96%)について首尾よく完了した。HER2 FISHおよびHER2 IHC試験では、806個の利用可能な組織塊のうち805個が首尾よく分析された。利用可能なTOP2A試験結果を有する患者では、メジアン潜在的追跡期間は、RFSでは9.4年およびOSでは11.1年であった。773名の患者のうち92名(11.9%)にTOP2Aの増幅および87名(11.3%)に欠失が見られた。ベースライン患者の特徴ならびにHER2状態を含む臨床的および病理学的特徴と関連するTOP2A状態の分布を表1に示す。TOP2A状態と年齢を含む臨床的および病理学的特徴のいくつかとの間に有意な相関が見られた。TOP2A異常を有する女性の割合は、年齢とともに増加し、その結果、閉経前女性よりも閉経後において高いことが示された。さらに、TOP2A異常を有する女性の割合は、腫瘍の大きさおよび陽性リンパ節の数とともに増加する。また、TOP2A異常は、ホルモン受容体陽性腫瘍間よりもホルモン受容体陰性または不明腫瘍間でより高頻度に見られた。TOP2A異常と手術年齢、腫瘍の大きさおよび陽性リンパ節の数との関係を図2〜4に示す。
【0065】
HercepTestスコアおよびHER2増幅に関連するTOP2A異常の分布を表2および3に示す。両方の場合で、TOP2AとHER2試験結果の間に有意な相関が見られた(カイ二乗検定; p<0.0001)。HER2状態と関連するTOP2A増幅および欠失の分布を表4に示す。HercepTestおよびHER2 FISHデータに関して、驚くべきことではないが、TOP2A状態とHER2状態の間に有意な相関が見られ(カイ二乗検定; p<0.0001)、TOP2A異常はHER2陽性腫瘍間でより多かった。TOP2A異常は、246個のHER2陽性腫瘍のうち139個(56.5%)および527個のHER2陰性腫瘍のうち40個(7.6%)に見られた。
【0066】
TOP2A異常およびHER2状態に関連する生存機能、RFSおよびOSに対するカプラン・マイヤー推定量(estimator)プロットを、図5a、5b、6aおよび6bに示し、表2〜4に要約する。表1は、TOP2A異常に関連する臨床的および病理学的特徴を示す(N=773)。
【0067】



【0068】

【0069】

【0070】

【0071】
RFSおよびOSの両方について、ログランク検定により、TOP2A異常と生存との間の関係が示された。増幅および欠失を有する患者は、正常TOP2A状態を有する患者と比べて、有意な(p<0.0001)生存の低下を有した。生存曲線は、欠失を有する患者は、増幅または正常TOP2A腫瘍を有する患者よりもさらに不良な予後を有したことを示すようである。同様に、陽性HER2状態は、RFSおよびOSの両方について、陰性HER2状態を有する患者と比べ、統計学的に有意な生存の低下(p<0.0001)を伴った。
【0072】
基本Coxモデルを、処置、閉経期状態、腫瘍の大きさ、陽性リンパ節の数、HER2陽性度およびTOP2A状態に適応した。さらに、TOP2A状態と処置とHER2状態それぞれの間の相互作用項がモデルに含まれた。先に記載されたように、ホルモン受容体-状態および悪性腫瘍の悪性度は、比例ハザードの仮定を妨害することがわかり、モデルをこれらの2つの変量に従って階層化した。このモデルは、RFSおよびOSの両方の分析において使用され、767名の患者の集団に対して行なわれた。RFSでは、TOP2A遺伝子異常を有する患者は、TOP2A正常と比べ、有意により不良な予後を有することが示された(欠失ハザード比(HR)=1.43、95%信頼区間 (CI)0.80〜2.57; 増幅HR=2.69、95%CI 1.18〜6.14、p=0.0357)。OSについての結果は、同様の有意な関係を示した(欠失HR=1.98、95%CI 1.09〜3.57; 増幅HR=2.40、95%CI 1.05〜5.52、p=0.0124)。RFSおよびOSに対するCoxモデルに基づくHRおよび95%信頼限界を表5および6に示す。HER2状態に関する同様の分析は、OSに関して有意であることが示されただけであった(HER2+ HR=1.44、95%CI 1.06〜1.95、p=0.0212)。
【0073】

【0074】

【0075】
考察
いくつかの研究により、TOP2A遺伝子異常とアントラサイクリンベース化学療法に対する感受性との間の関係が示された[Harris et al.,前掲; Di Leo et al.,前掲; Park et al.,前掲; Press et al.,前掲; Tanner et al.,前掲、Knoop et al.,前掲]が、これまでに、TOP2A増幅の予後特性を調べたのは1つの研究だけであった[Callagy et al.,前掲]。本発明の研究は、乳癌の予後に関連するTOP2A遺伝子異常(欠失および増幅)を調査した最初のものである。本発明の研究の結果は、TOP2A遺伝子異常が、リンパ節状態、腫瘍の大きさ、年齢、ER/PR受容体状態およびHER2状態などの確立された予後因子のいくつかと有意に関連していることを示す。さらに、本発明の研究のデータは、TOP2A異常を有する患者の割合は年齢に伴って増加し、閉経前患者よりも閉経後でより高い頻度をもたらしたことを示す。確立された臨床的予後因子との関係に加え、本明細書において、TOP2A異常は独立した予後値を有することが示される。Cox比例ハザードモデルを使用し、本発明者らは、TOP2A遺伝子異常は、RFS(p=0.04)およびOS(p=0.01)の両方に関して有意により不良な予後と関連していることを見出した。本発明者らは、Coxモデルを使用したTOP2A異常とHER2状態との間に有意な相互作用はないことを見出し、TOP2Aの独立した予後値を強調する。本発明の研究の単変量生存分析は、正常TOP2A状態を有する患者と比べて、増幅および欠失を有する患者が有意な生存の低下を有したため、RFSおよびOSの両方に対する負の有意な効果を示す。また、生存曲線は、欠失を有する患者が増幅されたまたは正常TOP2A状態を有する患者よりも、さらにより不良な予後を有したことを示す。
【0076】
DBCG 89-D研究における異なる予後の変量を、RFSのHRに基づいてランク付けした場合、ランク付けは以下のとおり: 陽性リンパ節の数>TOP2A状態>閉経期状態>腫瘍の大きさ>HER2状態であった。ランク付けにより、陽性リンパ節の数は、最大の予後影響を及ぼした変量の1つであることが示され、これは充分確立された情報である[Goldhirsch A,Glick JH,Gelber RD,Senn HJ. “Meeting highlights: International Consensus Panel on the Treatment of Primary Breast Cancer.”J Natl Cancer Inst 1998;90(21):1601-8]。TOP2A状態が2番目であることがわかったのは、いくぶんより驚くべきことであった。しかしながら、このランク付けは、他の予後因子との相互作用およびHRの95%信頼区間の大きさのため、注意して解釈すべきである。トポイソメラーゼIIα過剰発現を使用し、Rudolph et alは、結節陰性乳癌を有する863名の患者由来の腫瘍組織の遡及的研究において同様のランク付け順序を示した[Rudolph,MacGrogan et al.,前掲]。DBCG 89-D研究におけるランク付けをOSについて繰返す場合、結果はRFSと同様である。
【0077】
単変量および多変量分析の両方に基づき、DBCG 89-D研究の結果は、TOP2A異常の有意な予後値を示す。TOP2A異常が乳癌において既に確立された予後因子と関連しているだけでなく、独立した予後値を有することも示された。本発明によるいくつかの方法に従って、個々の乳癌患者の予後を実施するため、図5a、5bに示されたものなどの生存機能、RFSおよびOSに関する所定のカプラン・マイヤー推定量プロットが使用され得る。最初に、患者から採取された組織試料におけるTOP2A遺伝子の異常の状態を、上記のようにして決定する。これは、例えば、上記のTOP2A FISH pharmDxTM Kitを使用し、組織試料においてTOP2A FISH分析を実施することを含み得る。正確なTOP2A異常状態(正常、増幅または欠失)が決定されたら、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率を推定するため、カプラン・マイヤー推定量プロットにおける適切な曲線(決定された状態に対応する)を検討する。あるいは、表5〜6に示したものなどの決定された状態に対応する予め決定されたハザード比が、かかる確率の計算に使用され得る。あるいは、臨床医が、マーカー状態に基づいて自身の専門的予後評価を行なう根拠として本明細書に提供するデータを使用してもよい。
【0078】
TOP2A遺伝子異常を使用する高リスク乳癌患者の予後を実施するための新規な方法を開示した。本発明の本質は、開示された方法だけでなく、これらの方法を実施するのに必要とされる、または使用可能な種々の系、アセンブリおよびデバイスもまた含む。ここで、当業者は、前述の記載から、本発明の態様の広い技術が種々の形態で実施され得ることを認識することができる。したがって、本発明を特定の実施例または態様に関して記載したが、特許請求の範囲に記載の発明は、かかる特定の実施例または態様に不当に限定されることが意図されず、限定されるべきでないことを理解されたい。実際、診断病理学または関連分野の当業者に自明の本発明を実施するための記載された様式の種々の変形が、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0079】
実施例2
本発明者らは、773名の患者のデータセットを分析した。追跡期間の最後までカプラン・マイヤー生存分析を実施した。352名のCEF(シクロホスファミド-エピルビシン-5-フルオロウラシル 処置)患者および421名のCMF(シクロホスファミド-メトトレキサート-5-フルオロウラシル)患者とした。352名のCEF患者のうち、269名がTOP2A正常、46名がTOP2A増幅および37名がTOP2A欠失であった。本発明者らは、CEFにおいて、再発無しの生存について3つの亜群(TOP2A増幅、正常、欠失)間に有意差はない(p=0.1423)が、全生存については統計学的有意差がある(p=0.0022)ことを見出した。各処置について別々に、767名の患者をカプラン・マイヤー生存プロットに供し、1つのプロットはCEFおよび別のプロットはCMFとした。各プロットは3つの異なる亜群を示すはずである。
【0080】
p値の報告および考察
767名の患者を含むデータ資料において、カプラン・マイヤー生存プロット(KM-プロット)を使用し、各処置(CEFおよびCMF)に対して単変量分析を行なう。TOP2A状態の3つの群に従って曲線を階層化し、層間の生存曲線の均質性を試験するため、ログランク検定を計算する。さらに、それぞれ正常と増幅および欠失腫瘍を比較するログランク試験を行なう。
【0081】
RFSのKM-プロット
CMFで処置した患者間では、KM-プロットは、TOP2A状態の3つの群間の有意差を示す(図7)。ログランク検定によるp値はp<0.0001である。
【0082】
CEFで処置した患者の群では、この差は検索されず、この群におけるp値はp=0.1386である(図8)。
【0083】
以下の表は、各カプラン・マイヤー曲線について、正常と欠失および増幅を別々に比較した場合のログランク検定によるp値を示す。
【0084】
以下の表7は、層をペアワイズで比較した場合のRFSのp値を示す。
【0085】

【0086】
以下の表8は、TOP2Aの各群を無作為化して処置群に分けた後、5年および10年の2つの時点でのリスクのある患者の数、95%信頼限界でのRFSを示す。
【0087】

【0088】
再発無しの生存は、CEFで処置されたTOP2A増幅または欠失腫瘍を有する患者について、これらの患者群のRFSがTOP2A正常と異ならない様式で改善される。
【0089】
OSのKM-プロット
全生存を見ると、再度、本発明者らは、CMFで処置された患者間にp<0.0001のp値を有するTOP2A状態の差を見出す。KM-プロットを図9に示す。RFSとは対照的に、この差は、CEFで処置された患者群においてなお有意である(図10)。ログランク検定によるp値はp=0.0024である。ペアワイズ比較によるOSのp値を以下の表9に示す。
【0090】

【0091】
CEFでの処置がTOP2A正常と同じレベルのOSをもたらすのは、TOP2A増幅の場合だけであった。しかし、欠失患者に対するOSにおける相対的改善はあまり顕著でない。
【0092】
表10は、処置部門(arm)による各TOP2A群について、リスクのある患者の数ならびに5年および10年生存を示す。
【0093】

【0094】
まとめおよび結論
CEFで処置された患者群では、再発無しの生存(RFS)に関するカプラン・マイヤープロットは、TOP2A欠失、正常または増幅腫瘍を有する患者間に差を示さない(p=0.1386)。全生存(OS)に関して、同じ患者群で、3つのTOP2A群間に有意差が見られる(p=0.0024)。CMF部門では、RFSおよびOSの両方についてTOP2A群間に有意差があり(p<0.0001)、このとき、正常TOP2A遺伝子状態を有する患者は最良の生存を有するようである。
【0095】
カプラン・マイヤープロットは、CEFでの処置により、欠失および増幅腫瘍の両方を有する患者について、RFSおよびOSが改善されることを示す。TOP2A増幅腫瘍を有する患者では、CEFでの処置により、TOP2A正常と同じレベルのRFSおよびOSがもたらされる。TOP2A欠失腫瘍を有する患者は、RFSおよびOSにおいて増幅患者と同じ相対的改善を有するが、TOP2A増幅および正常腫瘍を有する患者と同じ生存レベルには達していないようである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は本発明による方法に従って実施される例示研究の患者の配置のチャートを示す。
【図2】図2は図1の例示研究で研究された患者(患者数、N=773)についてTOP2A状態と手術年齢との間の関連を示す棒グラフを示す;略号:Del-欠失;Amp-増幅;Nor-正常。
【図3】図3は図1の例示研究で研究された患者(患者数、N=773)についてTOP2A状態と腫瘍サイズとの間の関連を示す棒グラフを示す;略号:Del-欠失;Amp-増幅;Nor-正常。
【図4】図4は図1の例示研究で研究された患者(患者数、N=773)についてTOP2A状態と陽性リンパ節数との間の関連を示す棒グラフを示す;略号:Del-欠失;Amp-増幅;Nor-正常。
【図5】図5(a)は図1の例示研究で研究された患者の再発無しの生存(RFS)のカプラン−マイヤー推定量プロットを示す;患者数(N=767)は決定されたTOP2A異常に対してプロットされる。図5(b)は図1の例示研究で研究された患者の全生存(OS)のカプラン−マイヤー推定量プロットを示す;患者数(N=767)は決定された種々のTOP2A異常に対してプロットされる。
【図6】図6(a)は図1の例示研究で研究された患者の再発無しの生存(RFS)のカプラン−マイヤー推定量プロットを示す;患者数(N=767)は決定されたHER2状態に対してプロットされる。図6(b)は図1の例示研究で研究された患者の全生存(OS)のカプラン−マイヤー推定量プロットを示す;患者数(N=767)は決定されたHER2状態に対してプロットされる。
【図7】図7はCMF(シクロホスファミド メトトレキサート 5-フルオロウラシル)で処置された患者の再発無しの生存(RFS)のカプラン−マイヤー推定量プロットを示す;患者数(N=418)は決定されたHER2状態に対してプロットされる。
【図8】図8はCEF(シクロホスファミド エピルビシン 5-フルオロウラシル)で処置された患者の再発無しの生存(RFS)のカプラン−マイヤー推定量プロットを示す;患者数(N=349)は決定されたHER2状態に対してプロットされる。
【図9】図9はCMF(シクロホスファミド メトトレキサート 5-フルオロウラシル)で処置された患者の全生存(OS)のカプラン−マイヤー推定量プロットを示す;患者数(N=418)はCMF(N=418)で処置される場合のTOP2AによるOSの決定されたHER2状態比較に対してプロットされる。
【図10】図10はCEF(シクロホスファミド エピルビシン 5-フルオロウラシル)で処置された患者の全生存(OS)のカプラン−マイヤー推定量プロットを示す;患者数(N=349)はTOP2AによるOSの決定されたHER2状態比較に対してプロットされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から得られた組織試料中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および
決定された状態に対応する予め決定されたハザード比に基づいて、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率を推定する工程
を含む、乳癌患者の予後を行う方法。
【請求項2】
決定された状態がTOP2A増幅に対応する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
決定された状態がTOP2A欠失に対応する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
決定された状態が正常TOP2Aに対応する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
異常状態を決定する工程が組織試料の蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)解析の実施を含む、請求項1〜4いずれか記載の方法。
【請求項6】
組織試料の蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)解析の実施が、TOP2A領域の一部を標的としたテキサスレッド標識DNAプローブを含むプローブ混合物および染色体17の動原体領域を標的としたフルオレセイン標識ペプチド核酸(PNA)プローブを含むプローブ混合物を用いる工程を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
予め決定されたハザード比が
それぞれの患者から得られた組織試料セット中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および
続いて、患者の再発無しの生存期間または全生存期間の追跡研究を行う工程
を含む、工程を行うことによって計算される、請求項1〜4いずれか記載の方法。
【請求項8】
患者から得られた組織試料中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および
決定された状態に対応する予め決定されたカプラン−マイヤープロットに基づいて、後の患者の再発無しの生存または全生存のいずれかの確率を推定する工程
を含む、乳癌患者の予後を行う方法。
【請求項9】
決定された状態がTOP2A増幅に対応する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
決定された状態がTOP2A欠失に対応する、請求項8記載の方法。
【請求項11】
決定された状態が正常TOP2Aに対応する、請求項8記載の方法。
【請求項12】
異常状態を決定する工程が組織試料の蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)解析の実施を含む、請求項8〜11いずれか記載の方法。
【請求項13】
組織試料の蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)解析の実施が、TOP2A領域の一部を標的としたテキサスレッド標識DNAプローブを含むプローブ混合物および染色体17の動原体領域を標的としたフルオレセイン標識ペプチド核酸(PNA)プローブの混合物を用いる工程を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
予め決定されたカプラン−マイヤープロットが
それぞれの患者から得られた組織試料セット中のTOP2A遺伝子の異常状態を決定する工程、および
続いて、患者の再発無しの生存期間または全生存期間の追跡研究を行う工程
を含む、工程を行うことによって計算される、請求項8〜11いずれか記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−532022(P2009−532022A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501854(P2009−501854)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000160
【国際公開番号】WO2007/112746
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(506006795)ダコ デンマーク アクティーゼルスカブ (10)
【Fターム(参考)】