説明

Toll様受容体3に関連する組成物および方法

本発明は、Toll様受容体(TLR)ポリペプチドに関連する組成物および方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、TLR3関連疾患を管理することに関する。さらなる態様において、本発明は、炎症を予防および治療する方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、TLR3のアンタゴニスト、ドミナントネガティブ分子として作用するアミノ酸配列、および該アミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。付加的な態様において、本発明は、TLR3活性を評価するための生物学的材料の操作に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Toll様受容体(TLR)ポリペプチドに関連する組成物および方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、TLR3関連疾患を管理することに関する。さらなる態様において、本発明は、炎症を予防および治療する方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、TLR3のアンタゴニスト、ドミナントネガティブ分子として作用するアミノ酸配列、および該アミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。付加的な態様において、本発明は、TLR3活性を評価するための生物学的材料の操作に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Toll様受容体3(TLR3)は、炎症過程に関与することが示されている。炎症とは、サイトカインによって起こる、傷害に対する身体の防御反応である。炎症反応の過剰刺激は、種々の炎症性疾患における1つの要因である。例えば、関節の炎症は関節リウマチと関連している。空気を肺に輸送する小管の炎症は喘息と関連している。これらの症状を治療するには、非ステロイド性抗炎症薬が用いられ得る。しかし、これらの薬剤は、成否にばらつきがあると共に、有害な副作用を起こす場合が多い。したがって、副作用が限られた、炎症反応を管理するための組成物および方法を同定する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、Toll様受容体(TLR)ポリペプチドに関連する組成物および方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、TLR3関連疾患を管理することに関する。さらなる態様において、本発明は、炎症を予防および治療する方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、TLR3のアンタゴニスト、ドミナントネガティブ分子として作用するアミノ酸配列、および該アミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。付加的な態様において、本発明は、TLR3活性を評価するための生物学的材料の操作に関する。
【0004】
いくつかの態様において、本発明は、TLRポリペプチドのドミナントネガティブ阻害因子であるTLR3変異体であるアミノ酸配列を含む薬学的組成物に関する。さらなる態様において、該TLRは野生型TLR3またはTLR9である。さらなる態様において、該TLR3変異体はTIR欠失構築物ではない。さらなる態様において、該TLR3は、ジスルフィド結合形成し得るC末端およびN末端モチーフを含む。さらなる態様では、変異体がTLR3内のループ2内に存在する。さらなる態様において、アミノ酸配列はモチーフHANPGGIYを含む。
【0005】
いくつかの態様において、TLR3変異体は他のTLRと相互作用する。
【0006】
いくつかの態様において、本発明はSEQ ID NO.:1のポリペプチド変異体を含む組成物に関する。さらなる態様において、該変異体は、

からなる群より選択される1つまたは複数である。さらなる態様において、該変異体はTLRのドミナントネガティブ阻害因子である。さらなる好ましい態様において、該変異体は野生型TLR3またはTLR9のドミナントネガティブ阻害因子である。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、TLR3に対する抗体を含む薬学的組成物に関する。さらなる態様において、抗体はループ2に対する。さらなる態様において抗体はヒト化されている。
【0008】
付加的な態様において、本発明は、ループ1内にタグを含むTLR3ポリペプチドに関する。さらなる態様において、該タグはシステインアミノ酸を含む。さらなる態様において、該タグはヒ素含有フルオロフォアと複合体を形成する。
【0009】
いくつかの態様において、本発明は、置換または非置換モチーフX1X2NX4GGPX8X9(式中、X1、X2、X4、X8、およびX9はそれぞれ個々にかつ独立して天然または非天然アミノ酸である)を有するアミノ酸配列を含む薬学的組成物に関する。さらなる態様において、X1はH、R、またはNであり;X2はAまたはNであり;X4はPまたはVであり;X8はIまたはVであり;かつX9はY、H、Q、N、およびMである。さらなる態様において、該アミノ酸配列は、500、400、300、200、100、50、または25残基未満である。
【0010】
付加的な態様において、本発明は、以下の段階を含む、炎症性疾患を予防または治療する方法に関する:i) a) 炎症性疾患と診断されるか、または炎症性疾患のリスクがある対象、およびb) ドミナントネガティブTLR3分子を含む薬学的組成物、を提供する段階;ならびにii) 炎症反応が予防または治療される条件下で、該薬学的組成物を該対象に投与する段階。さらなる態様において、該炎症性疾患は、肺疾患、自己免疫疾患、線維性疾患、および腎疾患からなる群より選択される。さらなる態様において、該肺疾患は、喘息、喘息憎悪、微生物関連肺炎、サルコイドーシス、および嚢胞性線維症からなる群より選択される。さらなる態様において、該自己免疫疾患は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、および巨細胞性動脈炎からなる群より選択される。さらなる態様において、該腎疾患はループス腎炎である。さらなる態様において、該線維性疾患は肝線維症である。さらなる態様において、該ドミナントネガティブTLR3分子は、置換または非置換モチーフX1X2NX4GGPX8X9(式中、X1、X2、X4、X8、およびX9はそれぞれ個々にかつ独立して天然または非天然アミノ酸である)を有するアミノ酸配列である。さらなる態様において、X1はH、R、またはNであり;X2はAまたはNであり;X4はPまたはVであり;X8はIまたはVであり;かつX9はY、H、Q、N、およびMである。さらなる態様において、該アミノ酸配列は500残基未満である。さらなる態様において、本方法は、第2の治療薬を該対象に投与する段階をさらに含む。さらなる態様において、該第2の治療薬は、抗微生物薬、副腎皮質ステロイド、および免疫調節薬からなる群より選択される。さらなる態様において、該抗微生物薬は、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、および抗寄生虫薬からなる群より選択される。さらなる態様において、該免疫調節薬は、インターフェロンγ-1b、IFN-γ、アクティミューン(Actimmune)、タイサブリ(Tysabri)、ナタリズマブ、ゾレア(Xolair)、オマリズマブ、ニューラスタ(Neulasta)、ペグフィルグラスチム、ニューポジェン(Neupogen)、フィルグラスチム、アナキンラ、ヒュミラ(Humira)、アダリムマブ、エンブレル(Enbrel)、TNF、エタネルセプト、アレファセプト、レミケード(Remicade)、インフリキシマブ、ラプティバ(Raptiva)、エファリズマブ、サイモグロブリン(Thymoglobulin)、インファージェン(Infergen)、インターフェロン、ムロモナブ(Muromaonab)、ゼナパックス(Zenapax)、ダクリズマブ、およびバシリキシマブからなる群より選択される。さらなる態様において、該副腎皮質ステロイドは、デキサメタゾン(Decadron)、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(Medrol)、プレドニゾン、コルチゾン、ベタメタゾン、およびプレドニゾロンからなる群より選択される。さらなる態様において、該抗菌薬は、スルファニルアミド、トリメトプリム ペニシリンG、セファレキシン、セファクロル、セフィキシム、メロペネム、エルタペネム、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン エリスロマイシン、アジスロマイシン、およびクラリスロマイシン、クリンダマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、シプロフロキサシン スペクチノマイシン、バンコマイシン、リネゾリド、およびダプトマイシンからなる群より選択される。さらなる態様において、該抗ウイルス薬は、バカビル(bacavir)、アシクロビル、アジェネレース(agenerase)、アマタジン(amatadine)、アンプレナビル、クリキシバン(crixivan)、デラビルジン、デナビル(denavir)、ジダノシン、エファビレンツ、エピビル(epivir)、ファムシクロビル、ファムビル(famvir)、フォートベイス(fortovase)、ハイビッド(hivid)、インジナビル、リバビリン、インビラーゼ(invirase)、ラミブジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ノービア(norvir)、オセルタミビル、ペンシクロビル、リレンザ(relenza)、レスクリプター(rescriptor)、レトロビル(retrovir)、リトナビル、サキナビル、スタブジン、サスティバ(sustiva)、シムジン(symdine)、シンメトレル(symmetrel)、タミフル(tamiflu)、バラシクロビル、バルトレックス(valtrex)、ヴァイデックス(videx)、ビラセプト(viracept)、ビラミューン(viramune)、ザルシタビン、ゼリット(zerit)、ザイアジェン(ziagen)、ジドブジン、ゾビラックス(zovirax)、およびザナミビルからなる群より選択される。さらなる態様において、該抗真菌薬は、ニスタチン、クロトリマゾール、エコナゾール、シクロピロクスオラミン、ケトコナゾール、ミコナゾール、テルビナフィン、およびトルシクラートからなる群より選択される。さらなる態様において、該投与は、皮下、経口、静脈内、皮内、および鼻腔内経路からなる群より選択される。
【0011】
付加的な態様において、本発明は、以下の段階を含む、炎症性疾患を予防または治療する方法に関する:i) a) 炎症性疾患と診断されるか、または炎症性疾患のリスクがある対象、およびb) ドミナントネガティブTLR3アミノ酸配列をコードする核酸配列を含む薬学的組成物、を提供する段階;ならびにii) 炎症反応が予防または治療される条件下で、該薬学的組成物を該対象に投与する段階。さらなる態様において、該炎症性疾患は、肺疾患、自己免疫疾患、線維性疾患、および腎疾患からなる群より選択される。さらなる態様において、該肺疾患は、喘息、喘息憎悪、微生物関連肺炎、サルコイドーシス、および嚢胞性線維症からなる群より選択される。さらなる態様において、該自己免疫疾患は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、および巨細胞性動脈炎からなる群より選択される。さらなる態様において、該腎疾患はループス腎炎である。さらなる態様において、該線維性疾患は肝線維症である。さらなる態様において、該ドミナントネガティブTLR3アミノ酸配列は、置換または非置換モチーフX1X2NX4GGPX8X9(式中、X1、X2、X4、X8、およびX9はそれぞれ個々にかつ独立して天然または非天然アミノ酸である)を有するアミノ酸配列である。さらなる態様において、X1はH、R、またはNであり;X2はAまたはNであり;X4はPまたはVであり;X8はIまたはVであり;かつX9はY、H、Q、N、およびMである。さらなる態様において、該アミノ酸配列は500残基未満である。さらなる態様において、本方法は、第2の治療薬を該対象に投与する段階をさらに含む。さらなる態様において該第2の治療薬は、抗微生物薬、副腎皮質ステロイド、および免疫調節薬からなる群より選択される。さらなる態様において、抗微生物薬は、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、および抗寄生虫薬からなる群より選択される。さらなる態様において、該免疫調節薬は、インターフェロンγ-1b、IFN-γ、アクティミューン、タイサブリ、ナタリズマブ、ゾレア、オマリズマブ、ニューラスタ、ペグフィルグラスチム、ニューポジェン、フィルグラスチム、アナキンラ、ヒュミラ、アダリムマブ、エンブレル、TNF、エタネルセプト、アレファセプト、レミケード、インフリキシマブ、ラプティバ、エファリズマブ、サイモグロブリン、インファージェン、インターフェロン、ムロモナブ、ゼナパックス、ダクリズマブ、およびバシリキシマブからなる群より選択される。さらなる態様において、該副腎皮質ステロイドは、デキサメタゾン(Decadron)、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(Medrol)、プレドニゾン、コルチゾン、ベタメタゾン、およびプレドニゾロンからなる群より選択される。さらなる態様において、該抗菌薬は、スルファニルアミド、トリメトプリム ペニシリンG、セファレキシン、セファクロル、セフィキシム、メロペネム、エルタペネム、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン エリスロマイシン、アジスロマイシン、ならびにクラリスロマイシン、クリンダマイシン、キヌプリスチンおよびダルホプリスチン、シプロフロキサシン スペクチノマイシン、バンコマイシン、リネゾリド、ならびにダプトマイシンからなる群より選択される。さらなる態様において、該抗ウイルス薬は、バカビル、アシクロビル、アジェネレース、アマタジン、アンプレナビル、クリキシバン、デラビルジン、デナビル、ジダノシン、エファビレンツ、エピビル、ファムシクロビル、ファムビル、フォートベイス、ハイビッド、インジナビル、リバビリン、インビラーゼ、ラミブジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ノービア、オセルタミビル、ペンシクロビル、リレンザ、レスクリプター、レトロビル、リトナビル、サキナビル、スタブジン、サスティバ、シムジン、シンメトレル、タミフル、バラシクロビル、バルトレックス、ヴァイデックス、ビラセプト、ビラミューン、ザルシタビン、ゼリット、ザイアジェン、ジドブジン、ゾビラックス、およびザナミビルからなる群より選択される。さらなる態様において、該抗真菌薬は、ニスタチン、クロトリマゾール、エコナゾール、シクロピロクスオラミン、ケトコナゾール、ミコナゾール、テルビナフィン、およびトルシクラートからなる群より選択される。さらなる態様において、該投与は、皮下、経口、静脈内、皮内、および鼻腔内経路からなる群より選択される。
【0012】
いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含む、Toll様受容体3活性を阻害する方法に関する:i) a) TLR3を含む細胞、およびb) ドミナントネガティブTLR3アミノ酸配列、を提供する段階、ならびにii) TLR3活性が阻害される条件下で、該細胞と該アミノ酸配列を混合する段階。さらなる態様において、該アミノ酸配列は、置換または非置換モチーフX1X2NX4GGPX8X9(式中、X1、X2、X4、X8、およびX9はそれぞれ個々にかつ独立して天然または非天然アミノ酸である)を有するアミノ酸配列の変異体である。さらなる態様において、X1はH、R、またはNであり;X2はAまたはNであり;X4はPまたはVであり;X8はIまたはVであり;かつX9はY、H、Q、N、およびMである。さらなる態様において、該アミノ酸配列はΔTIRではない。さらなる態様において、該細胞は、HEK、HeLa、COS、およびチャイニーズハムスター卵巣細胞の群より選択される。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、以下の段階を含む、TLR3関連疾患を診断する方法に関する:a) i) TLR3をコードする細胞を有する対象、およびii) 本明細書に開示する核酸配列をコードする核酸配列を含む組成物、を提供する段階;b) 該TLR3活性が測定される条件下で、該細胞と該核酸配列を混合する段階。さらなる態様において、測定される該活性は阻害される。さらなる態様において、該細胞は、肺細胞、腎細胞、および滑膜線維芽細胞からなる群より選択される。さらなる態様において、該核酸配列は、野生型TLR3または野生型TLR3のドミナントネガティブ阻害因子である。
【0014】
付加的な態様において、本発明は、非ステロイド性抗炎症化合物および本明細書に開示するアミノ酸配列を含む薬学的組成物に関する。
【0015】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に開示する疾患を管理するための医薬品を製造するための、野生型Tのドミナントネガティブ阻害因子の使用に関する。
【0016】
付加的な態様において、本発明は、結合に関するスクリーニングにより分子阻害剤を同定するための試薬としての、変異体TLR分子を含む本明細書に開示する組成物の使用に関する。さらなる態様において、スクリーニングは、野生型TLRポリペプチドと変異体TLRポリペプチドとの間の相対的結合を関連づける段階を含む。さらなる態様では、サイトカイン産生の調節活性に関する細胞ベースのアッセイにおいて、変異体TLR分子を使用する。さらなる態様では、変異体TLR分子を生存対象に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
(図1)TLR3活性を検出するための細胞ベースのアッセイを示す。A) HEK 293T細胞における、野生型TLR3を発現するプラスミドの濃度増加が、ルシフェラーゼレポーター活性の活性化に及ぼす影響。ルシフェラーゼ活性は、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターから駆動されるウミシイタケルシフェラーゼの活性に対する、NF-kBエレメントを含むプロモーターから駆動されるホタルルシフェラーゼの比として表す。ホタルルシフェラーゼ活性の活性化は、2.5μg/mlのポリ(I:C)を細胞培養物に添加することを必要とする。挿入図は、HEK293細胞が内因性レベルのTLR3を発現しないことを実証するものである。B) TLR3細胞ベースのアッセイによって、野生型TLR3で認められる高レベルおよびTLR3内の内部ループが欠失している変異体から、ルシフェラーゼ活性の範囲が検出され得る。
(図2)3ECD内のジスルフィド結合の検出を示す。A) ジスルフィド結合形成に関与する、3ECDのN末端およびC末端部分の近傍の残基を示す3ECD構造(PDB id 2A0Z)。B) 広範な系統発生範囲にわたる種に由来するTLR3 ECD内のシステインの配列解析。ジスルフィド結合形成に関与するシステイン対を、ブラケット記号で示す。C)

ペプチドを含むm/z領域に注目した、TLR3タンパク質のトリプシン消化物の質量スペクトル。上部スペクトルは、ジスルフィド結合を含むペプチドのものである。下部スペクトルは、還元およびアルキル化型のペプチドである。D) 割り当てられたペプチド配列を確認するための、上記ペプチドのタンデム質量分光分析。
(図3)ジスルフィド結合形成に関与するシステインの変異の影響を示す。A) TLR3活性に及ぼす変異の影響の要約。変異体名はすべて、アミノ酸、TLR3における位置、および変異によって生じた残基を含む。活性はすべて、同一実験でアッセイした野生型TLR3に対して標準化する。B) 変異がタンパク質発現に影響を及ぼすかどうかを解析するための、抜粋した変異体のウェスタンブロット解析。pCDNAは、TLR3または変異体TLR3を発現させるために使用したプラスミドベクターである。C) TLR3に特異的なFITC標識モノクローナル抗体で染色したTLR3のインサイチュー局在性。試料の名称を左側に示し、撮像の種類を顕微鏡写真の上に示す。D) 細胞表面蛍光を観察する、いくつかのシステイン変異体のFACS解析の結果。TLR3を認識するモノクローナル抗体であるTLR3.7は、eBioSciences Inc.(カリフォルニア州、サンディゴ)による。横軸に示した蛍光強度を有する細胞の分布をグラフにする。影付きの領域は、TLR3を認識するモノクローナル抗体の免疫グロブリンアイソタイプによるシグナルである。「pc」はpcDNAに対応し、「WT」は野生型TLR3に対応する。
(図4)TLR3機能に対するループ1の役割の試験のデータを示す。A) ループ1の相対位置を示すTLR3の部分的モデル。B) 異なる種に由来するループ1内の配列の比較。ヒトループ1配列と異なる残基を太字で示す。見かけ上欠失している残基をダッシュ記号として示す。C) 野生型TLR3およびTLR3のループ1内の変異の活性アッセイ。D) ループ1における変異がタンパク質発現に影響を及ぼすかどうかを試験するウェスタンブロット解析。E) WTと比較した、ループ1を欠失させた変異体のインサイチュー局在性。顕微鏡写真の上に示したように、点状スポットでのTLR3の存在、核、および2つの結果を合わせたものが示される。下の顕微鏡写真中のバーは20μmを示す。
(図5)TLR3機能に対するループ2の役割の試験のデータを示す。A) ループ2の位置を示すTLR3の一部のモデル。B) 異なる種に由来するループ2内の配列の比較。ヒトループ2配列と異なる残基を黒字で示す。C) 野生型TLR3およびTLR3のループ2内の変異の活性アッセイ。D) ループ2における変異がタンパク質発現に影響を及ぼすかどうかを試験するウェスタンブロット解析。E) 野生型TLR3と比較した、ループ2を欠失させた変異体のインサイチュー局在性。顕微鏡写真の上に示したように、点状スポットでのTLR3の存在、核、および2つの結果を合わせたものが示される。下の顕微鏡写真中のバーは20μmを示す。
(図6)インビトロでのTLR3ECDによるポリ(I:C)結合を示す。A) pHに応じた、TLR3 ECDとポリ(I:C)との間の架橋。ポリ(I:C)は、32P-γ-ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いたキナーゼ処理によって放射標識した。架橋は、TLR3ECDとBSAの等量混合物を用いて行った。架橋生成物のリン光体像を左側の像に示し、クーマシーブルー染色ゲルを右側の像に示す。B) pHに応じた、RNA架橋に及ぼすポリ(I:C)長の影響。40-bpおよび20-bpのポリ(I:C)を別々に放射標識し、プローブとして使用した。リン光体像およびクーマシーブルー染色ゲル像を、それぞれ左側および右側に示す。C) 20-bpポリ(I:C)の2〜4倍で反応物に添加した競合物RNAによる、ポリ(I:C)に対するTLR3ECD結合の競合。使用したRNAを、そのRNAを添加したゲル像内のレーン上に示す。20-bpポリ(I:C)への架橋に及ぼす影響を、ゲル像の下に定量化した。
(図7)TLR3ECD内の推定上のRNA結合残基の試験のデータを示す。A) TLR3活性に及ぼすアミノ酸置換の影響の要約。293T細胞にトランスフェクションした、野生型または変異体TLR3をコードするプラスミドを、ルシフェラーゼ活性に及ぼす影響と共に収載する。各値は、最低6回の独立したトランスフェクションアッセイを表す。B) 細胞ベースのレポーターアッセイ法で活性について試験した変異体TLR3タンパク質のうちの一部のウェスタンブロット解析。C) トランスフェクション293T細胞における、細胞内位置に関する特定のTLR3変異体の解析。
(図8)Bellらによって報告されたTLR3ECD内のRNA結合部位の試験のデータを示す。A) TLR3に対するポリ(I:C)結合のモデル。ポリ(I:C)と密接に接触すると提唱される残基を示す。B) 推定上ポリ(I:C)と接触する荷電表面におけるアミノ酸変異の影響の要約。野生型または変異体TLR3をコードするプラスミドを293T細胞にトランスフェクションしたが、そのプラスミドを、ルシフェラーゼ活性に及ぼす影響と共に収載する。C) TLR3活性に影響を及ぼした、試験した変異体のうちの一部のウェスタンブロット解析。ウェスタンは、モノクローナル抗体、IMG315Aでプロービングした。
(図9)TLR3オリゴマー化を媒介すると考えられる残基の試験のデータを示す。A) pHに応じて調べたTLR3ECDの動的光散乱結果。B) TLR3ECDの溶出プロファイルのゲル濾過解析。hTLRECDのピークを含む画分は、SDS-PAGEおよび銀によるタンパク質染色によって検出した。C) TLR3活性に及ぼす、TLR3オリゴマー化に関与する残基の変異の影響。D) TLR3活性が欠損したE442Kの細胞内局在性。
(図10)ドミナントネガティブとして作用するTLR3変種の能力を評価する際のデータを示す。A) TLR3活性を活性化する、およびドミナントネガティブとして作用する変異体ΔTIRおよびY75Fの能力。これらのアッセイのすべてにおいて、1×は、プラスミドがトランスフェクション当たり15 ngで存在することを示す。ドミナントネガティブアッセイは、この濃度の2×および6×で行った。B) ポリ(I:C)誘導を高めていっても、ΔTIRのドミナントネガティブ効果を逆転させることができないことの実証。C) TLR3活性が欠損しているいくつかの変異体によるドミナントネガティブ性に関するアッセイの要約。解析に選択した変異体はまた、ウェスタンブロットにより決定して、十分に発現される変異体である。D) TIRドメインが欠失した(ΔTIR)構成に構築された、選択された変異体による結果の要約。変異体はTIRドメインの非存在下でNF-kBを活性化することができず、よってアッセイのバックグラウンドが低下するため、この構築はドミナントネガティブ結果を確認するのに有用である。
(図11)TLR3ECDサブユニット間の相互作用、およびdsRNAを伴ったそれらの相互作用のモデルを図示する。A) dsRNA(PDB id 1QC0)を伴わないおよび伴う3ECD(PDB id 2A0Z)の上面図および側面図。ECD二量体およびRNAとのその複合体は、手動でのドッキングによって得た。囲みパネルは、RNA結合状態での、2つのECD分子のC末端部分間の相互作用を強調したものである。しかし、この相互作用に関与するタンパク質をよりよく見えるようにするため、RNAは除去した。B) ECDリガンド結合がいかにして二量体化およびTIRドメインのその後の活性化をもたらし得るのかを図示する、全長TLR3の漫画モデル。
(図12)広範囲の脊椎動物にわたるTLR3ECD相同配列のアライメントを示す。本発明者らが同定したタンパク質間相互作用残基を赤色で強調し、RNA相互作用残基を黄色で強調する。
(図13)ヒト(homo sapiens) TLR3であるSEQ ID NO.:1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、toll様受容体(TLR)ポリペプチドに関連する組成物および方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、TLR3関連疾患を管理および診断することに関する。さらなる態様において、本発明は、炎症を予防および治療する方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、TLR3のアンタゴニスト、ドミナントネガティブ分子として作用するアミノ酸配列、および該アミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。付加的な態様において、本発明は、TLR3活性を評価するための生物学的材料の操作に関する。
【0019】
Toll様受容体(TLR)は、微生物が皮膚または腸管粘膜などの物理的障壁に侵入した場合にこれを認識し、免疫細胞応答を活性化することの多いI型膜貫通タンパク質である。ヒトおよびマウスでは共に13種のTLR(単純にTLR1〜TLR13と命名されている)が同定されており、これらの多くに相当する形態が、他の哺乳動物種でも見出されている。
【0020】
変異体遺伝子産物が、同じ細胞内の正常な野生型遺伝子産物に影響を及ぼす場合に、ドミナントネガティブ変異が起こる。これは通常、変異の産物が野生型産物と同じエレメントとなお相互作用できるが、その機能のいくつかの局面を遮断する場合に起こる。「ドミナントネガティブ阻害因子」等という用語は、ドミナントネガティブ変異の変異体遺伝子産物を意味する。本明細書で使用する場合、ドミナントネガティブ阻害因子が作製される様式を限定することは意図されないが、いくつかの態様では、それが合成によって生成されることを意図している。部分的な阻害または機能変化をもたらす変異体遺伝子産物を含むことも意図され、完全阻害を必要とすることは意図されない。
【0021】
疾患または状態と関連して使用する場合の「管理する」という用語は、予防薬または治療薬の投与を受けている患者に有益な効果をもたらすことを意味するが、この効果は疾患の治癒に至るわけではない。特定の態様では、疾患の進行または悪化を防ぐために、患者に1種または複数種の予防薬または治療薬を投与して疾患を管理する。
【0022】
本明細書で使用する「予防する」および「予防すること」という用語は、再発、伝播、または発症の予防を含む。本発明が完全な予防に限定されないことが意図される。いくつかの態様では、発症が遅延するか、または疾患の重症度が軽減される。
【0023】
本明細書において使用する「治療する」および「治療すること」という用語は、対象(例えば、患者)が治癒し、疾患が根絶される場合に限定されない。むしろ、本発明は、症状を単に軽減するおよび/または疾患進行を遅延させる治療も意図する。
【0024】
「炎症」または「炎症反応」等とは、傷害に対する、または感染病原体、アレルギー性因子、それ自体の組織に対する身体の免疫応答の調節の異常、非生物異物、もしくは化学刺激に対する身体の反応を意味する。症状は、組織への血漿および白血球(白血球細胞)の喪失を伴う罹患部分における血管の拡張によって起こる発赤、腫脹、発熱、および疼痛である。炎症は急性または慢性であり得る。炎症反応には、これらに限定されないが、結核、慢性胆嚢炎、気管支拡張症、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)、珪肺症およびその他の塵肺症、喘息、多発性硬化症、肝炎、慢性閉塞性肺疾患、花粉症およびその他のアレルギー、循環器疾患、移植異物、全身性エリテマトーデス、および1型糖尿病に起因するものが含まれる。
【0025】
「対象」とは、任意の動物、好ましくはヒト患者、家畜、または家庭内ペットを意味する。
【0026】
本発明のいくつかの態様は、本明細書に記載される酵素の変異体または変種型を提供する。基質特異性、安定性等を向上させるなどの目的で、本明細書に記載される酵素の活性を有するペプチドの構造を改変することが可能である。例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加などによりアミノ酸配列を変更した改変ペプチドを生成することができる。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンによる、アスパラギン酸のグルタミン酸による、スレオニンのセリンによる単独の置換、またはあるアミノ酸の構造的に関連したアミノ酸による類似の置換(すなわち、保存的変異)は、すべてではないものの場合によっては、得られた分子の生物活性に大きな影響を及ぼさないと考えられる。したがって、本発明のいくつかの態様は、保存的置換を含む、本明細書に記載される酵素の変種を提供する。保存的置換とは、側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。遺伝子のコードするアミノ酸を4つのファミリーに分類することができる:(1) 酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2) 塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン);(3) 非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);および(4) 非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、芳香族アミノ酸として一緒に分類される場合もある。同様に、アミノ酸レパートリーを以下のように分類することもできる:(1) 酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2) 塩基性(リジン、アルギニン ヒスチジン);(3) 脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)、セリンおよびスレオニンは任意に脂肪族-水酸基として別に分類される;(4) 芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);(5) アミド(アスパラギン、グルタミン);および(6) 硫黄含有(システインおよびメチオニン)(例えば、Stryer (ed.), Biochemistry, 2nd ed, WH Freeman and Co. [1981]を参照されたい)。ペプチドのアミノ酸配列における変化が機能的相同体を生じるかどうかは、本明細書に記載されるアッセイ法を使用して、変種ペプチドが野生型タンパク質と同様の様式で応答を生じる能力を評価することにより、容易に決定することができる。2つ以上の置換が起こったペプチドも、同様に容易に試験することができる。
【0027】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合する分子を指し、これには、二量体、三量体、および多量体抗体、ならびに組換え、加工、およびヒト化抗体が含まれる。また、抗体は抗体全体であってもよいし、抗体分子の機能的断片であってもよい。「抗体分子の機能的断片」という用語は、少なくともその抗原結合機能を保持する断片を示し、これにはFab、F(ab’)、F(ab’)2、scFv、dsFv、およびダイアボディが含まれる。種々の抗体を調製および使用するための技法は、当技術分野で周知である。例えば、抗体断片は、タンパク質分解酵素を使用して得ることができ(例えば、抗体全体をパパインで消化するとFab断片が生成され、ペプシン処理によりF(ab’)2断片が生成される)、好ましくは組換えDNA技法によって調製することができる。単離された抗体は、該抗体を含む任意の回収された組成物である。好ましくは、該抗体の濃度は血清中に見出される濃度よりも高い。
【0028】
本明細書において使用する「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含む、または配列を含まないキメラ抗体である。大部分に関して、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域による残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域による残基によって置換されている。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含む場合がある。これらの改変は一般に、抗体の性能をさらに精密にするためになされる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR残基のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列の残基である、少なくとも1つ、典型的に2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含み得る。ヒト化抗体を作製するために用いられる方法の例は、Winterらに対する米国特許第5,225,539号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0029】
重要なことには、抗体をヒト化するための初期の方法では、非ヒト抗体出発材料よりも親和性が低い抗体が得られる場合が多かった。抗体をヒト化するためのより最近のアプローチでは、CDRに対して変更を加えることによってこの問題に対処している。参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20040162413号を参照されたい。いくつかの態様において、本発明は、ドナーヘテロマー可変領域と等しいかまたはそれよりも高い抗原結合親和性を有する最適化されたヘテロマー可変領域(例えば、完全抗体他分子の一部であってもそうでなくてもよい)を提供し、ここで、ドナーヘテロマー可変領域は3つの軽鎖ドナーCDRを含み、最適化ヘテロマー可変領域は、a) i) 変化していない4つのヒト生殖系列軽鎖フレームワーク領域、およびii) 変化した3つの軽鎖可変領域CDRを含む変化した軽鎖可変領域を含み、変化した3つの軽鎖可変領域CDRの少なくとも1つは軽鎖ドナーCDR変種であり、軽鎖ドナーCDR変種は、3つの軽鎖ドナーCDRのうちの1つと比較して1つ、2つ、3つ、または4つの位置のみで異なるアミノ酸を含む(例えば、少なくとも1つの軽鎖ドナーCDR変種は、1つ、2つ、3つ、または4つのアミノ酸差を除けば軽鎖ドナーCDRの1つと同一である)。
【0030】
いくつかの態様において、本発明は、生物活性を有することが判明したヒトTLR3におけるアミノ酸残基に関する。具体的には、残基547〜554の変異により、NF-kB活性化によって測定されるTLR3生物活性が消失することを本発明者らは発見した。さらに、生物活性のあるヒトTLR3遺伝子と変異体ヒトTLR3遺伝子をコンピテントヒトHek293細胞に同時トランスフェクションすると、TLR3活性が消失し、変異体TLR3分子がドミナントネガティブ分子として作用する能力が実証された。TLR3変異体分子のアンタゴニスト活性はTLR3活性を妨げる独特の手段を提供し、これは炎症を含むTLR3媒介性疾患を予防および治療する上で有益なものになる。本発明者らはまた、変異体TLR3が、TLR9を含む他のTLRと相互作用することも同定した。
【0031】
ウイルスRNA、細菌RNA、または内因性壊死細胞に由来するリガンドによりTLR3が活性化されると、シグナル伝達カスケードが起こり、最終的にNF-kB活性化、ならびに下流での、例えばIL-6、RANTES、TNF-α、MCP-1を含む炎症促進性サイトカインおよびケモカインの分泌を引き起こす。炎症性サイトカインおよびケモカインが、局所的炎症反応およびその後の組織破壊を開始および維持するのに重要な役割を果たすことが、動物モデルで行われた実験から十分に確立されている。したがって、ドミナントネガティブTLR3分子などのアンタゴニストTLR3作用物質は、炎症状態を予防または治療するのに有益である。
【0032】
肺におけるTLR3の活性化は、局所的炎症反応の憎悪を媒介することが示唆されている。したがって、本明細書に記載されるドミナントネガティブTLR3分子の使用は、喘息、喘息憎悪、微生物関連肺炎、サルコイドーシス、および嚢胞性線維症を含む肺疾患の治療または予防に有益となり得る。
【0033】
関節リウマチ患者の滑液中に壊死細胞が存在すると、TLR3、および下流での炎症性メディエータの分泌が活性化されることが示されており、関節リウマチ患者における疾患転帰の調節におけるTLR3活性化の役割が示唆される。したがって、ドミナントネガティブTLR3分子は、RA、乾癬性関節炎、および巨細胞性動脈炎を含む自己免疫疾患の治療に有益である。
【0034】
肝臓におけるTLR3活性化は、肝臓損傷の媒介における重要な事象である。したがって、ドミナントネガティブTLR3分子などのTLR3アンタゴニスト分子の使用は、肝臓損傷を軽減することができ、肝線維症を含む肝臓損傷の予防または治療に用いることができる。
【0035】
ドミナントネガティブTLR3分子は、全身性エリテマトーデスおよびループス腎炎(腎臓におけるTLR3活性化とループス腎炎の動物モデルにおける疾患活性との間の関連性を前提とする)などの自己免疫疾患を治療するのに用いることができる。
【0036】
線維症易発性動物に由来する細胞が、TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生増加によって測定されるように、TLR3リガンドに対して非常に感受性が高いことを示す最近の知見に基づき、TLR3ドミナントネガティブ分子を線維化関連疾患の治療に用いることができる。
【0037】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に記載される疾患の治療または予防に関して同様に特許請求される抗微生物薬、副腎皮質ステロイド、および免疫調節薬を含む標準的治療と併用した、本明細書に記載されるヒトTLR3分子のドミナントネガティブをコードするDNAの使用に関する。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、上記疾患を治療または予防するための、本明細書に記載されるポリペプチド分子の使用に関する。
【0039】
他の態様において、本発明は、上記疾患を治療するための、皮下、経口、静脈内、皮内、または鼻腔内経路の使用によるドミナントネガティブ分子の投与に関する。
【0040】
Toll様受容体3(TLR3)の変異体および配列
ヒトTLR3細胞外ドメイン(ECD)の構造がX線結晶学によって解析され、TLR3機能に関するいくつかのモデルが得られている。(Choe, J., Kelker, M. S., and Wilson, I. A. (2005). Science 309, 581-585、およびBell, J. K., Botos, I., Hall, P. R., Askins, J., Shiloach, J., Segal, D. M., and Davies, D. R. (2005) Proc Natl Acad Sci USA 102, 10976-10980)。その構造から、推定上ジスルフィド結合形成に関与する4対のシステインが明らかになった。タンパク質の中央のソレノイド構造から突出する2つのループが存在する。本発明者らは、ジスルフィド結合形成、ポリ(I:C)結合、およびタンパク質間相互作用について組換えTLR3 ECDを調べた。本発明者らはまた、全長TLR3において、これらの特徴に影響を及ぼし得る残基に80を超える変異を作製し、それらをTLR3媒介性NF-κB活性化に及ぼす影響について調べた。TLR3活性に影響を及ぼしたいくつかの変異は、野生型TLR3のドミナントネガティブ阻害因子として作用する能力にも影響を及ぼした。推定上のRNA結合の喪失は、必ずしもドミナントネガティブ活性に影響しなかった。すべての結果から、TLR3の二量体が、RNAと結合しシグナル伝達を活性化する形態であるというモデルが支持される。
【0041】
先天性免疫受容体によって外来分子が認識されると、シグナル伝達カスケードの活性化、遺伝子発現の変化、およびエフェクター細胞によるサイトカインの産生が生じ得る。この経路の結果は、適応免疫経路におけるTリンパ球およびBリンパ球活性化の調節による免疫応答の結果を規定する。
【0042】
ヒトゲノムでは、少なくとも11種のTLRが同定されている。TLR3は、ポリ(I:C)、合成二本鎖(ds) RNA類似体、およびおそらくウイルス感染中に形成されるウイルスdsRNAを認識する。TLR3ノックアウトマウスは、サイトメガロウイルス感染に対して完全な応答を開始することができず、マウスにおける最初の感染後に細胞傷害性T細胞応答は減少した。これらの結果から、微生物攻撃に対する宿主免疫応答の調節におけるTLR3の役割が支持される。
【0043】
リガンドと結合すると、TLR3は、アダプタータンパク質を介して転写因子NF-κBを活性化することができ、NF-κBは核に移行して遺伝子発現を調節する。TLR3活性化の作用部位は、細胞内小胞内またはその近傍である可能性が高いが、ヒト胚性腎細胞ではいくらかの細胞表面発現も認められている。
【0044】
TLR3細胞外ドメインの構造は、2つのグループによりX線結晶学によって解明されており、いかにして構造が機能に影響を及ぼすかについて、いくつかの予測が導かれている。TLR3 ECDは、複数のロイシンリッチリピート(LRR)を有するタンパク質に特徴的なソレノイド馬蹄形の形状をしている。タンパク質構造におけるいくつかの特徴は、TLR3機能に影響を与え得る。表面荷電特性およびグリコシル化の位置に基づき、dsRNAと結合すると提唱される領域はグリコシル化されていないと提唱された。結晶充填による構造から、2つのサブユニットのC末端部分がイオン相互作用を介して相互作用することが示唆される。TLR3 ECDはまた、ソレノイドのN末端およびC末端の近傍に、ECD構造を安定化し得る4つのジスルフィド結合を含むと予測される。最後に、3ECDソレノイド内に、TLR3機能に寄与し得る2つの突出ループが存在する。
【0045】
3ECDの構造特性がいかにして機能に影響を与えるかの解析は、研究の活発な分野である。TLR3 ECDにおいて予測されるN結合型グリコシル化部位のすべてに変異を起こし、トランスフェクションHEK 293T細胞において、そのうちの2つがTLR3活性に重要であることが示されている。ジスルフィド結合形成に推定上関与するシステインのいくつかにも、変異が導入された。Bell et al., (2005) Proc Natl Acad Sci USA 102, 10976-10980は、TLR3の3ECD全体にわたる多くの変異の影響を調べ、2つの残基、H539EおよびN541Aが培養293T細胞において活性に影響を及ぼし、ゲルろ過ベースのアッセイにおいて組換え3ECDがdsRNAに結合するのを妨げることを実証した。H539EおよびN541A近傍の残基の徹底的な変異解析は、TLR3活性に対してより穏やかな影響を及ぼした。
【0046】
本発明者らは、TLR3において、ジスルフィド結合形成、二量体化、およびRNA結合に影響を及ぼすと予測される80を超える変異体を作製し、下流のレポーター発現のTLR3活性化に関する細胞ベースのアッセイでそれらの影響を調べた。ヒト細胞で産生されたTLR3 ECDの特性に関する生化学的アッセイも検討する。TLR3活性が減少した抜粋した変異体の影響を、タンパク質発現、細胞局在性に及ぼす影響、および同時トランスフェクションしたTLR3の野生型コピーのドミナントネガティブとして作用する能力について調べた。
【0047】
NF-kB活性化アッセイにより、TLR3機能を規定した。ヒト胚性腎(HEK) 293T細胞を使用して、TLR3における変異がどのようにTLR3の機能および局在性に影響を及ぼすかを解析した。293T細胞は検出可能なレベルの内因性TLR3を発現しないため(図1A、四角)、この細胞はこのアッセイ法に有用である。簡潔に説明すると、96ウェルプレートで〜80%コンフルエンスになるまで培養した細胞に、3つのプラスミドの混合物をトランスフェクションした:1つは野生型または変異体TLR3を発現させるためであり、2つ目はNF-kB結合部位を含むプロモーターから駆動されるホタルルシフェラーゼを発現させるためであり、3つ目はヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターからウミシイタケルシフェラーゼを発現させるためである。ウミシイタケルシフェラーゼはトランスフェクション対照となる。Invivogenから購入したポリ(I:C)を、TLR3媒介性NF-κB活性化を誘導するためのリガンドとして使用した。
【0048】
本発明者らのアッセイ法は、トランスフェクションにおいて最大75 ngまでのTLR3プラスミドに反応し得るが(図1A)、本発明者らの標準的アッセイ法は、シグナルが飽和しないようにするために、トランスフェクション当たり15 ngのプラスミドを使用する。ポリ(I:C)および緩衝液のみの対照で誘導したすべての試料について、ホタルルシフェラーゼ活性とウミシイタケルシフェラーゼ活性の比を算出した。ポリ(I:C)によって誘導されるTLR3活性化の倍率を、同一実験でアッセイした野生型対照(100%)に対して標準化した。本発明者らのアッセイのすべてにおいて、ポリ(I:C)の添加による、TLR3活性の最低限で4倍の誘導が検出された(図1B)。一例として、変異体TLR3は活性をバックグラウンドまで減少させ得る(図1B)。
【0049】
システインはジスルフィド結合形成に関与する。ECDの末端を覆うように推定上ジスルフィド結合を形成するシステインは、C28とC37、C95とC122、C649とC677、およびC651とC696である(図2A;1、2)。TLR3オルソログが同定されているすべての種においてシステインは保存されており、それらが形成するジスルフィド結合がTLR3機能にとって重要であることが示唆される(図2B)。
【0050】
本発明者らは最初に、質量分析を使用して、TLR3ECDのトリプシン消化断片においてジスルフィドの形成が検出され得るかどうかを決定することを試みた(図2C)。還元システインはヨードアセトアミドによってアセチル化され、ジスルフィド結合形成に関与するシステインはアセチル化されない。非還元トリプシン消化で得られたMSスペクトルは1526.81 m/zの位置にシグナルを生じ、これはジスルフィドが当初存在した場合の改変ペプチド

に相当する(図2C上部パネル)。このペプチドの配列および構造割り当てを確認するため、タンデムMSを行った(図2D)。ほぼ完全なC末端yイオン系列(y2〜y9)が認められ、ペプチド配列割り当てが確認された。より重要なことは、b系列イオンb10〜b13の観察がすべて、還元ペプチドで予測されるよりも2 Da低かったことである。これらの結果から、Cys28とCys37との間にジスルフィド結合が存在することが確認される。その他3対のジスルフィドは、再三の試みにもかかわらず認められず、それらが少ない量で存在し得るか、またはこれらのジスルフィドを含むペプチドが、使用した条件下でイオン化され得なかったことが示唆される。
【0051】
ジスルフィド結合の機能的関連性を評価するため、本発明者らは、関与する各システインをアラニンに変異させた。変異体C28A、C37A、C95A、C122A、C649A、C651A、およびC696Aはすべて、バックグラウンドに近いTLR3活性を生じた(図3A)。本発明者らはまた、セリンまたはメチオニンによるシステインのいくつかの置換が活性に影響を及ぼすかどうかを調べた。残基C37、C95、C122、C649、C651、およびC696における変化はいずれも、バックグランドかまたはそれに近い活性を生じた。したがって、ジスルフィド結合形成に関与するシステインはTLR3機能に重要である。対照的に、ジスルフィド結合形成に関与しないと予測されるシステイン残基(C242もしくはC356、またはその両方)の変異は、TLR3活性に最小限の影響を及ぼすにすぎなかった(図3A)。
【0052】
ジスルフィド形成システインの変異は、その発現、安定性、および/または細胞内局在性を含むTLR3のいくつかの特性に影響を及ぼす可能性が考えられる。TLR3発現が影響を受けるかどうかを調べるため、トランスフェクション細胞による溶解物を、TLR3特異的モノクローナル抗体を用いるウェスタンブロットに供した。システイン変異体はすべて、WTに匹敵するレベルで発現された(図3B)。変異体タンパク質がTLR3の細胞内局在性に影響を受けるかどうかを調べるため、本発明者らは、トランスフェクションHEK 293T細胞をTLR3について免疫染色し、TLR3が点状分布で細胞内酸性細胞小器官に局在することを確認した。スポットは、LysoTrackerによって染色され得る酸性小胞と共局在した。ジスルフィド結合形成に関与せず、細胞ベースのアッセイにおいて活性の有意な消失を起こさなかった変異体C242Aは、wt TLR3と同様の様相を有する(図3C)。ジスルフィド結合形成に関与する変異体の中で、C651AおよびC696Aは、野生型TLR3局在性と比較して明らかな変化を起こさなかったのに対し、C37AおよびC122Aは、分離したスポットではなくより拡散したシグナルを有した(図3C)。細胞質にわたって明るいシグナルも認められ、細胞内小胞への局在性がいくらか失われたことが示唆された。
【0053】
本発明者らは、蛍光活性化細胞選別により、変異体C37AおよびC122Aについて細胞表面分布も調べた。C37AおよびC122Aでは、細胞表面発現が減少している(図3D)。このデータから、TLR3においてジスルフィド結合形成に関与するシステインは活性に重要であり、変異体はWTに匹敵するレベルで発現されるが、細胞内局在性に影響を受けるものもあることが示唆される。この局在性の変化は、TLR3活性の喪失に寄与する。
【0054】
TLR3 ECDの中央のソレノイド構造から突出する構造は、TLR3機能にとって重要な特徴をもたらし得る。TLR9のLRR内のループは、リガンドであるCpG DNAと相互作用すると仮定されている。Bell, et al., (2003). Trends Immunol. 24, 528-533。TLR3は、ECDソレノイド内に2つのループを有する。ループ1と称される1つ目はLRR12内に存在し(残基335〜343)、セリン残基に富んでいる(図4AおよびB)。ループ1の配列を調べたところ、その配列および長さにばらつきがあることが明らかになった。例えば、哺乳動物のループ1は8残基から構成されるのに対し、魚類由来の等価物には6残基しかない(図4B)。
【0055】
本発明者らは最初に、ループ1の中央の6残基(SISLAS)を、F1AsH色素と結合し得る6残基:CCPGCCと置換した。例えば、Griffin et al., (1998). Science 281, 269-272を参照されたい。本発明者らの目的は、F1AsH色素への結合によってTLR3を蛍光標識することであった。しかし、この構築物、LI-TCMは、おそらくは立体的制約のために、F1AsH色素と十分に結合しなかった。それにもかかわらず、この構築物は、NF-κBレポーター活性に関してWTと同程度の活性を有した(図4C)。次に、本発明者らは、L1-4Mと命名した構築物において、TLR3ループ1内の残基の4つをQSISLASLからQSTALTSHに変更した。この場合も同様に、85%を超えるTLR3活性が保持された。最後に、本発明者らはループ1を完全に欠失させ(ΔL1)、得られた構築物が80%を超える野生型TLR3活性を保持することを見出した(図4C)。ウェスタン解析から、タンパク質がWTと同様に生成されることが示された(図4D)。局在性実験において、ΔL1はWTと識別不能な様式で細胞内小粒を形成した(図4E)。これらの結果から、ループ1はTLR3機能にとって必須ではないことが実証される。
【0056】
TLE3 ECD内の第2のループは、LRR20内に存在する(残基547〜554)(図5A)。ループ1とは異なり、いくつもの残基が高度に保存されている(図5B)。ループ2の先端にテトラシステインモチーフを挿入した場合、構築物L2-TCMは、WTの活性の82%を保持するタンパク質を生じた(図5C)。構築物L2-Fuguにおける、トラフグ由来の同等配列によるTLR3内のループ2配列の置換は、野生型機能の75%を保持し、ループ2配列にいくらかの柔軟性があることが確認された。しかし、構築物ΔL2におけるループ2の欠失は、バックグラウンドに近い活性を生じた(図5C)。ウェスタンブロットで検出した場合、ΔL2タンパク質は野生型レベルで発現され、タンパク質発現が欠陥の原因ではないことが示唆された(図5D)。さらに、ΔL2は見かけ上、WTと同様の点状スポットとして発現され、異なる細胞内局在性が欠陥の原因ではないことが示される(図5E)。
【0057】
ポリ(I:C)はTLR3 ECDと結合する。TLR3は、ウイルス感染中に生成され得るdsRNAに応答する。dsRNA結合は、直接、またはCD14などのアクセサリータンパク質を介して間接的に起こり得る。TLR3 ECDによるdsRNA結合に関するアッセイ法は限定されている。Choe et al., (2005) Science 309, 581-585は、ポリ(I:C)結合時のTLR3 ECDの電気泳動移動度シフトを実証し、Bellらは、ゲル濾過アッセイ法でTLR3 ECDとRNAとの複合体を観察した。本発明者らは、UV架橋アッセイ法を用いて、TLR3ECDと5’末端を放射標識したポリ(I:C)との相互作用を調べた。TLR3は酸性小胞に局在化するため、本発明者らは、反応のpHがTLR3とポリ(I:C)との相互作用に影響を及ぼすかどうかも評価した。内部対照を提供するため、BSAを同じモル比でTLR3ECDに添加した。TLR3ECDはポリ(I:C)と架橋されたが、BSAは架橋されなかった。本発明者らは、これらのアッセイで使用したポリ(I:C)が、NF-κβ活性のTLR3活性化を誘導できることに留意している。さらに、ポリ(I:C)との架橋は、酸性pHにおいてより効果的であった(図6A)。
【0058】
ポリ(I:C)の商業的調製物は質量が不均一であるため、本発明らは架橋アッセイ用に40 bpおよび20 bpのポリ(I:C)を調製した。いずれもTLR3ECDと架橋された(図6B)。最後に、TLR3ECDがポリ(I:C)を特異的に認識するかどうかを決定するため、放射標識した20-bpポリ(I:C)との架橋が他の潜在的リガンドによって競合され得るかどうかを調べた。使用した競合リガンドは、20-bpまたは40-bpの非標識ポリ(I:C)、21 bpの2種類のsiRNA、13-ntの高度に構造化されたRNA(Kim et al., 2000, Nat Struct Biol. 7, 415-423)、および-21/13と命名された33-nt一本鎖非修飾RNA(Siegel et al., (1997). Proc Natl Acad Sci USA 94, 11238-11243.)であった。ポリ(I:C)の2つの調製物は、標識リガンドの2〜4倍存在する場合に効果的な競合物であり、放射標識複合体を、競合物を欠く反応の40%未満まで減少させた(図6C)。2種類のsiRNAはより弱い競合物であり、ポリ(I:C)架橋を約1/3まで減少させた。構造化されたRNAおよび一本鎖RNAは、最も弱い競合物であった。これらの結果から、hTLR3ECDがアクセサリータンパク質の非存在下においてポリ(I:C)を特異的に認識し得るという生化学的証拠が提供される。
【0059】
TLR3 ECD内のいくつかの残基がdsRNAと接触すると提唱された。本発明者らは、予測される残基の大部分、およびTLR3 ECDのループ2近傍の塩基性残基のアラニン変異体を作製した。単一アミノ酸変化ではいずれも、TLR3活性に大きな影響を受けなかった(図7A)。TLR3において2つおよび3つの変異を組み合わせた場合にはいくらかの影響があったが、TLR3活性はWTの半分を超えるレベルで残存した。ウェスタンブロットから、単独変異体および多重変異体のうちのいくつかは、WTと同様の発現レベルおよびインサイチュー局在性を有することが示された(図7BおよびC)。さらに、個々のどの残基も、TLR3活性に重要である割り当てられ得なかった。
【0060】
TLR3のRNA結合表面は、3ECDソレノイドの側面でかつC末端側1/3上のアスパラギンリッチ表面であり得る。2つの残基、H539およびN541の変異は、細胞ベースのアッセイにおいてTLR3活性に重大な影響を及ぼした。潜在的接触部位をより良好に可視化するため、本発明者らはポリ(I:C)の構造の座標(PDB IDコード1QC0)を使用し、この分子をTLR3 ECDのこの部分にドッキングさせることを試みた(図8A)。残基R544、N540、N516、およびN466はいずれも、ポリ(I:C)と相互作用し得る区画内に存在する。興味深いことに、ポリ(I:C)ヘリックスの末端から見た場合、TLR3オリゴマー化に関与すると予測される残基E442およびK467はRNA分子の反対側にあり、ポリ(I:C)と接触する、および/またはポリ(I:C)結合によって影響を受ける可能性がある。
【0061】
本発明者らは、変異体H539EおよびN541A、ならびに推定上のRNA結合表面における他の変異を作製した。変異体H539EおよびN541Aは、バックグラウンドレベルに近いTLR3活性を有した(図8B)。さらに、Bellらによってこれまでに試験されていない隣接した変異、N466AおよびN540Aによっても、TLR3活性はバックグラウンドレベルまで減少した。
【0062】
本発明者らが試験したTLR3内の同じ位置におけるいくつかの変化は、おそらくは変更した残基の独自性に起因して、報告とは異なる影響を及ぼした。N515DおよびN516LはTLR3活性に影響を及ぼさないと報告されていた。本発明者らは、N515AおよびN516Aにより、TLR3活性がWTの47%および36%にまで減少することを見出した。また、変異体N572AはWTの55%の活性を有した。最後に、Bellらは、R489AおよびN517Aは50%を超える活性を有すると報告したが、R489AおよびN517Aによって、TLR3活性はほぼバックグラウンドにまで減少した。これらの変異体タンパク質のウェスタンブロットから、それらは293T細胞において産生されるものの、N515AなどのいくつかはWTと比較してわずかに少ない量で存在し、TLR3活性の減少に寄与した可能性があることが示された(図8C)。結果から、ソレノイドの側面上のLRR17〜20内にある豊富なアスパラギンを特徴とする荷電表面が、TLR3機能にとって重要であることが実証される。
【0063】
推定上のRNA結合区画は、TLR3 ECD内の推定上の二量体化ドメインと空間的に近く、これらの2つの活性間の関連性が示唆される。TLR ECDは、3-Dおよび2-D結晶格子のいずれにおいても二量体として存在し得る。しかし、その知見は、結晶形成に必要とされる高いタンパク質濃度に起因する可能性がある。したがって、本発明者らは、hTLR3ECDがより低いタンパク質濃度においてオリゴマー状態で存在し得るかどうかを、動的光散乱解析を用いて調べた。hTLR3ECD単量体の質量は、質量分析およびSDS-PAGEにより決定して〜100 kDである。PBS溶液中で、hTLR3ECD(25μg/ml)は、178±36 kDaのタンパク質に相当する流体力学半径を有した(図9A)。pH 6.0〜4.8に緩衝した酢酸ナトリウム中で試験した場合、溶液中のhTLR3ECDの質量は172 kDa〜230 kDaであり、リガンドが存在せず、かつ酸性小胞内で典型的に見出されるpHの溶液中で、hTLR3ECDが二量体として存在し得ることが実証された。本発明者らはまた、hTLR3ECDを分子量マーカーと比較してゲル濾過クロマトグラフィーに供したが、hTLR3ECDは196 kDaのピークとして溶出され、hTLR3ECDが主に二量体として存在することが確認された(図9B)。
【0064】
残基E442とK467およびまたK547とD575は、TLR3サブユニット間の相互作用の一部として塩橋を形成すると予測された。この予測を試験するために、いくつかのアミノ酸置換を作製した。変異体K467AおよびK467Eでは、TLR3活性はそれぞれWTの76%および60%まで減少するにすぎなかった(図9C)。変異体E442A、E442Dは野生型活性の62%超を維持したが、E442をリジンに変更すると、TLR3活性はWTの25%まで減少した。293T細胞におけるE442Kの局在性から、これがWTと同様に発現されることが示された(図9D)。また、K547AおよびD575A変異体は、NF-κB活性化によって測定されるタンパク質の活性にほとんど影響を及ぼさなかった(図9C)。しかし、本発明者らは、二重変異体E442K/K467Eが野生型TLR3活性の66%を有したことに留意している。このことから、E442Kで見られた活性の減少が、K467E変異によって部分的に相殺され得ることが示唆される。これらの結果は、442位の負荷電残基がTLR3機能にとって重要であることを確認するが、本発明者らの結果は、E442AもK467AもTLR3活性を有意に減少させなかったので、これらの残基が単純な塩橋を形成するという考えを支持しない。この位置におけるいくつかの変更が、2つのECD分子を含む相互作用のネットワークによってより良好に相殺され得る可能性がある。
【0065】
細胞内のTLR3のオリゴマー化状態を評価することの困難さを考慮して、本発明者らは、遺伝学的アッセイ法を使用して、TLR3の変異体型が野生型TLR3の活性を抑制し得るかどうか、すなわちドミナントネガティブとして作用し得るかどうかを評価した。変異体TLR3のドミナントネガティブ活性の機構的基礎は理解されておらず、本発明者らは、特許請求の範囲が任意の特定の機構によって限定されることを意図していないが、2つの有望な可能性が存在する:1) 変異体TLR3は野生型TLR3との結合に関して影響を受けないが、遺伝子発現を活性化するのに必要な他の活性を実行することができない。したがって、変異体タンパク質はWTを不活性状態に捕捉する。2) 変異体タンパク質は単量体として存在し、リガンドおよび/またはアクセサリー因子をWTから減少除去する能力を保持する。
【0066】
TLRファミリータンパク質は、細胞外ロイシンリッチリピート(LRR)、膜貫通領域(TM)、およびToll/IL-1受容体相同(TIR)ドメインを含む細胞質尾部からなる。ドミナントネガティブ性/二量体形成の基礎を調べるため、本発明者らは、TIRドメインを欠くTLR3の公知のドミナントネガティブ型であるΔTIRを使用した。Funami et al., (2004). Int. Immunol. 16, 1143-1154を参照されたい。ΔTIRはTLR3活性に関して不活性であるため、アッセイの出力はすべて、同時トランスフェクションした野生型TLR3による。野生型TIR3の2倍または6倍モル過剰において、ΔTIRは、同等量の空ベクターを負荷した野生型TLR3を含むアッセイと比較して、TLR3活性を26%および12%まで抑制した(図10A)。ΔTIRのドミナントネガティブ効果が、リガンドポリ(I:C)を減少除去することによって起こるのであれば、ポリ(I:C)濃度を上げていくことでドミナントネガティブ効果は少なくとも部分的に逆転するはずである。このことを試験するため、4倍または8倍高濃度のポリ(I:C)を細胞に添加したが、ΔTIRのドミナントネガティブ効果の有意な変化は認められず(図10B)、ドミナントネガティブ効果が、ΔTIRがリガンドを減少除去するためでなはないことが示唆された。ΔTIRがWTと1:1比で存在する場合にも、同様の結果が得られた。
【0067】
ドミナントネガティブ活性がタンパク質間相互作用に起因するのであれば、タンパク質間相互作用に影響を及ぼさずにRNA結合に影響を及ぼす変異はドミナントネガティブである。本発明者らは、変異体H539EおよびN466Aを試験した。変異体はいずれもドミナントネガティブとして作用する能力を保持し、WTの6モル過剰で存在する場合、TLR3活性をそれぞれ16%および17%まで減少させ、これはΔTIRの効果(14%)と匹敵するものであった(図10C)。
【0068】
本発明者らはまた、TIR機能を消失させる変異である変異体Y759Fも、ΔTIRと同様のレベルまでドミナントネガティブであることを見出した(図10A)。ΔTIRからの結果と考え合わせると、2つの特性がTLR3活性に必要である:ECD間およびTIR間の適切な相互作用。
【0069】
ドミナントネガティブアッセイ法を用いて、TLR3活性を有意に減少させたTLR3における種々の変異が、タンパク質間相互作用を保持し得るかどうかを評価した。システイン変異体C37AおよびC696Aは、WTの6倍モル過剰において、野生型TLR3活性をそれぞれ61%および76%まで減少させ得るにすぎなかった(図10C)。TIRドメインを欠く型として構築した場合、C37AおよびC696Aはいずれも不十分なドミナントネガティブであり(図10D)、ジスルフィド形成システインが適切なタンパク質間相互作用に必要であることが確認された。ジスルフィドは、タンパク質の安定性および/またはTLR3の適切な局在性に影響を及ぼすことにより、間接的にタンパク質間相互作用に寄与している可能性がある。
【0070】
ポリ(I:C)結合表面の右端にマッピングされ(図8A)、二量体化において作用することが予測される変異体E442Kもまた、不十分なドミナントネガティブであった。WTの6モル過剰において、E442Kは野生型TLR3活性を51%まで減少させ得るにすぎなかった(図10C)。E442KΔTIRと命名したE442KのΔTIR型も不十分なドミナントネガティブであり(図10D)、E442がタンパク質間相互作用に寄与するという仮説が支持された。
【0071】
変異体K467Eは、3ECD二量体化において役割を果たすと仮定された。しかし、この変異体はTLR3活性の60%を保持したため、本発明者らは、ΔTIRドメインを欠く場合にのみ、この変異体をドミナントネガティブに関して試験した。K467EΔTIRは、6倍モル過剰においてTLR3活性を27%まで阻害し、変異K457Eがドミナントネガティブ性に影響を及ぼさないことが示唆された(図10D)。
【0072】
TLR3活性に劇的に影響を及ぼした別の変異体はΔL2であった。ΔL2およびΔL2ΔTIRはいずれも、不十分なドミナントネガティブであった(図10C、10D)。これらの結果に基づき、本発明者らは、ポリ(I:C)結合表面の近傍にあるE442およびループ2が、TLR3サブユニット間の相互作用に必要であることを提唱する。
【0073】
変異体N517A、N540A、およびN541Aは、ドミナントネガティブ活性を部分的に保持し得るN517AおよびN541Aから、不十分なドミナントネガティブであるN540まで、WT TLR3の活性を阻害する異なった能力を有した。これらの結果から、推定的にポリ(I:C)と接触する3ECDのアスパラギンリッチ表面における残基のいくつかは、ドミナントネガティブ表現型をもたらすためのタンパク質相互作用に関与し得ることが示唆される。
【0074】
本発明者らは、組換えTLR3ECDタンパク質が、質量分光分析により決定して、C28およびC37を含む少なくとも1つのジスルフィド結合を含むと実証され得ることを見出す。さらに、推定的にジスルフィド結合形成に関与するシステインはいずれもTLR3活性に関与する。本発明者らはまた、3ECDのLRR12内のループ1がTLR3活性に不要であることを実証した。実際に、ループ1は、TLR3局在性を追跡するための特定のタグを挿入する場所として有用であり得る。本発明者らはまた、hTLR3ECDが、酸性小胞と同様のpH条件においてポリ(I:C)と架橋され得ること、および非dsRNAがTLR3とポリ(I:C)との間のこの架橋の不十分な競合物であることを実証した。また、TLR3ECDは、リガンドの存在しない溶液中で二量体として存在するようである。
【0075】
ポリ(I:C)結合に必要とされるTLR3 ECD残基とドミナントネガティブ性に必要とされるTLR3 ECD残基には重複があり、ドミナントネガティブ性の機構的基礎は、それらのECDドメインを介した野生型TLR3とそれに結合する非機能的タンパク質との間の相互作用による可能性が高い。ドミナントネガティブアッセイ法を使用して、下流のレポーター活性のTLR3活性化に重度に影響を及ぼした変異を、ドミナントネガティブとして作用する能力を保持するものと、保持し得ないものとに分離することができる。興味深いことに、TLR3における推定上のRNA結合表面のすべてではないもののいくつかは、TLR3のドミナントネガティブ効果に有益である。また、LRR20内のループ2はドミナントネガティブ性に有益であり、タンパク質間相互作用における役割が示唆される。本発明者らの変異解析により、3ECDサブユニット間の相互作用に関する特許請求の範囲が支持される。RNAと結合することが示唆される、H539およびN541を含む残基の大部分は、RNA結合と二量体化の活性間にかなりの重複を有する。
【0076】
本発明者らは、TLR3は、リガンドの非存在下において、主にループ2相互作用を介してオリゴマー化状態で存在し得ると考えている。しかし、リガンドが結合すると二量体において再構成が起こり、2分子はdsRNAを収容するように押されながら、2分子が互いの方向に向かって側方にスライドする(図11A)。このリガンド結合形態において、残基E442およびN517は主にdsRNAと相互作用して、複合体を安定化する。タンパク質サブユニットのスライディングによって得られた立体構造変化は、TIRドメインの相互作用を促進することができ、その後のその二量体化によりシグナル伝達経路の活性化が生じる(図11B)。
【0077】
薬学的組成物
活性化合物を含む組成物には、薬学的組成物の製造に有用なバルク薬剤組成物(例えば、低純度または非滅菌組成物)、および単位剤形の調製において使用できる薬学的組成物(すなわち、患者への投与に適した組成物)が含まれる。そのような組成物は任意に、本明細書に開示する、予防もしくは治療有効量の予防薬および/もしくは治療薬、またはそのような薬剤と薬学的に許容される単体の組み合わせを含む。好ましくは、本発明の組成物は、予防または治療有効量の活性化合物、および別の治療薬または予防薬、ならびに薬学的に許容される単体を含む。
【0078】
特定の態様において、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より詳細にはヒトにおける使用について、連邦政府もしくは州政府の管理機関によって承認されていること、または米国薬局方もしくは一般に認識されている他の薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、活性化合物と共に投与する希釈剤、補助剤、賦形剤、または媒体を指す。このような薬学的媒体は水および油などの液体であってよく、これには石油、動物、植物、または合成起源の油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等が含まれる。薬学的媒体は、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素等であってよい。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤を用いることもできる。患者に投与する場合、薬学的に許容される媒体は、好ましくは無菌である。活性化合物を静脈内投与する場合、水が媒体となり得る。生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射用液剤用の液体媒体として使用することができる。適切な薬学的媒体には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピルエチレングリコール、水、エタノール等の賦形剤も含まれる。本発明の組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤も含み得る。
【0079】
本発明の組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル剤、液体を含むカプセル剤、散剤、持続放出製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル、噴霧剤、懸濁剤の形態、または使用に適した任意の他の形態を取り得る。1つの態様において、薬学的に許容される媒体はカプセルである(例えば、米国特許第5,698,155号を参照されたい)。
【0080】
好ましい態様では、活性化合物および任意の別の治療薬または予防薬を、ヒトへの静脈内投与に適合させた薬学的組成物として、日常的手順に従って製剤化する。典型的に、静脈内投与用の活性化合物は、滅菌等張水性緩衝液中の液剤である。必要であれば、組成物は可溶化剤も含み得る。静脈内投与用の組成物は、注射部位の疼痛を緩和するために、リグノカインなどの局所麻酔薬を任意に含み得る。一般に、成分は、例えば活性薬剤の量を示すアンプルもしくは小袋などの密封容器中の凍結乾燥粉末もしくは無水濃縮物として、単位剤形中に別々にまたは混合して提供する。活性化合物を注入により投与する場合、活性化合物は、例えば滅菌した薬学的等級の水または生理食塩水を含む注入瓶で調剤することができる。活性化合物を注射により投与する場合には、成分が投与前に混合され得るように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0081】
経口送達用の組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、顆粒剤、散剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であってよい。経口投与組成物は、薬学的に美味な調製物を提供するために、1つまたは複数の任意の薬剤、例えば、フルクトース、アスパルテーム、またはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、冬緑油、またはチェリーなどの着香剤;着色剤;および保存剤を含み得る。さらに、錠剤または丸剤形態の場合には、胃腸管内での崩壊および吸収を遅延させ、長期にわたる持続作用を提供するために、組成物をコーティングすることができる。浸透活性駆動化合物を取り囲む選択的透過膜もまた、活性化合物の経口投与に適している。これらの後者のプラットフォームにおいて、カプセルを取り囲む環境からの液体が駆動化合物によって吸収され、これが膨潤して薬剤または薬剤組成物を開口部を通して移動させる。これらの送達プラットフォームは、即時放出製剤の急上昇特性とは対照的に、本質的にゼロ次送達特性を提供し得る。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの時間遅延物質を使用することもできる。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的媒体を含み得る。そのような媒体は、好ましくは薬学的等級のものである。
【0082】
さらに、活性化合物の効果を、適切な製剤により遅延または延長させることができる。例えば、活性化合物の緩徐に溶解するペレットを調製し、錠剤またはカプセル剤に組み込むことができる。いくつかの異なる溶解速度のペレットを作製し、ペレットの混合物をカプセルに充填することにより、技法を改善することもできる。錠剤またはカプセル剤を、予測可能な期間、溶解に抵抗するフィルムでコーティングすることもできる。化合物を、血清中に緩徐にしか分散させない油性または乳化媒体に溶解または懸濁することにより、非経口調製物でさえも長時間作用性とすることができる。
【0083】
本発明に従って使用するための薬学的組成物は、1つまたは複数の生理的に許容される担体または賦形剤を用いて、従来の様式で製剤化することができる。
【0084】
したがって、化合物および任意の別の治療薬または予防薬、ならびにそれらの生理的に許容される塩および溶媒和物を、吸入もしくは吹送(口または鼻のいずれによる)による投与、または経口、非経口、もしくは粘膜(頬側、膣、直腸、舌下など)投与用の薬学的組成物に製剤化することができる。1つの態様では、局所または全身非経口投与を用いる。
【0085】
経口投与用に、薬学組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、またはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、バレイショデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤と共に従来の手段で調製した錠剤またはカプセル剤の形態を取り得る。錠剤を、当技術分野で周知の方法によってコーティングすることもできる。経口投与用の液体調製物は、例えば、液剤、シロップ剤、または懸濁剤の形態をとってよく、またはこれらは、使用前に水またはその他の適切な媒体で構成するための乾燥生成物として提供することもできる。そのような液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食物脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油);および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物と共に従来の手段で調製することができる。調製物は適宜、緩衝塩、着香剤、着色剤、および甘味剤も含み得る。
【0086】
経口投与用の調製物を適切に製剤化して、活性化合物の制御放出を付与することができる。
【0087】
頬側投与用に、薬学的組成物は、従来の様式で製剤化した錠剤またはロゼンジ剤の形態をとり得る。
【0088】
吸入による投与用には、本発明に従って使用するための薬学的組成物を、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適切なガスを用いて、加圧パックまたは噴霧器からエアロゾルスプレー提示の形態で都合よく送達する。加圧エアロゾルの場合には、計量された量を送達するためのバルブを提供することにより、投与量単位を決定することができる。吸入器または吹送器において用いるための、例えばゼラチンのカプセルまたはカートリッジは、化合物の混合粉末およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤を含めて製剤化することができる。
【0089】
薬学的組成物は、注射による、例えばボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化することができる。注射用製剤は、例えばアンプルなどに入れて単位剤形として、または保存剤を添加して多用量容器中に提供することができる。薬学的組成物は、油性または水性媒体中の懸濁剤、液剤、または乳剤などの形態をとってよく、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤用物質を含み得る。または、有効成分は、使用前に適切な媒体、例えば発熱物質を含まない滅菌水で構成するための粉末形態であってもよい。
【0090】
薬学的組成物は、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む、坐剤または停留浣腸などの直腸用組成物として製剤化することができる。
【0091】
前述の製剤に加えて、薬学的組成物はデポー調製物として製剤化することもできる。そのような長時間作用製剤は、埋込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、薬学的組成物は、適切なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤として)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤化することができる。
【0092】
本発明はまた、薬学的組成物が、量を示すアンプルまたは小袋などの密封容器中に充填されることを提供する。1つの態様では、薬学的組成物を密封容器中の乾燥滅菌凍結乾燥粉末または無水濃縮物として提供し、薬学的組成物は、例えば水または生理食塩水で、患者への投与に適した濃度に再構成することができる。
【0093】
本発明の他の態様では、放射性同位体などの放射線療法剤を、カプセル内の液体として、また飲料として経口的に提供することができる。放射性同位体は、静脈内注射用に製剤化することもできる。熟練した癌研究者は、好ましい製剤および投与経路を決定することができる。
【0094】
薬学的組成物は、必要に応じて、有効成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含み得るパックまたはディスペンサー装置で提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックのように、金属箔またはプラスチック箔を含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与のための説明書を添付することができる。
【0095】
特定の好ましい態様において、パックまたはディスペンサーは、Physician's Desk Reference (56th ed. 2002、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)において決定される推奨投与量以下の製剤を含む1つまたは複数の単位剤形を含む。
【0096】
活性化合物および任意の別の治療薬または予防薬の投与方法には、これらに限定されないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、および皮下)、硬膜外、および粘膜(例えば、鼻腔内、直腸、膣、舌下、頬側、または経口経路)が含まれる。特定の態様では、活性化合物および任意の別の予防薬または治療薬を筋肉内、静脈内、または皮下投与する。活性化合物および任意の別の予防薬または治療薬は、注入またはボーラス注射によって投与することもでき、他の生物活性薬剤と共に投与することができる。投与は局所または全身であってよい。活性化合物および任意の予防薬または治療薬、ならびにそれらの生理的に許容される塩および溶媒和物は、吸入または吹送(口または鼻のいずれかによる)によって投与することもできる。好ましい態様では、局所または全身非経口投与を使用する。
【0097】
特定の態様では、活性化合物を治療が必要な領域に局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、限定的ではなく例えば、手術中の局所注入、例えば手術後の創傷包帯と組み合わせた局所適用により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはシラスティック(silastic)膜などの膜もしくは繊維を含む、多孔質材、非多孔質材、もしくはゼラチン材の埋込み物を用いて達成することができる。1つの態様において、投与は、炎症組織の部位(またはかつての部位)における直接注射によるものであってよい。
【0098】
例えば、吸入器もしくは噴霧器を用いて、かつエアロゾル化剤と共に製剤化することにより、またはフッ化炭素もしくは合成肺サーファクタント中での灌流により、肺投与を用いることもできる。特定の態様では、活性化合物を、慣例的な結合剤およびトリグリセリドなどの媒体と共に坐剤として製剤化することができる。
【0099】
別の態様では、活性化合物を小胞、特にリポソーム中に含めて送達することができる。
【0100】
さらに別の態様では、活性化合物を制御放出系で送達することができる。1つの態様では、ポンプを用いることができる。別の態様では、高分子材料を用いることができる。
【0101】
心臓状態の治療または予防において有効な活性化合物の量は、標準的な研究技法によって決定することができる。例えば、心臓状態の治療または予防において有効となる活性化合物の投与量は、例えば当業者に公知の動物モデルなどのモデルにおいて、活性化合物を動物に投与することによって決定することができる。加えて、インビトロアッセイを任意に使用して、最適な投与量範囲の同定を助けることもできる。
【0102】
特定の有効量の選択は、当業者に公知と思われるいくつかの要因の考慮に基づき、当業者によって(例えば、臨床試験を介して)決定され得る。そのような要因には、治療または予防しようとする疾患、関連する症状、患者の体重、患者の免疫状態、および当業者に公知のその他の要因が含まれる。
【0103】
製剤に使用すべき正確な用量は、投与経路および疾患関連消耗の重篤度にも依存し、開業医の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から推定することができる。
【0104】
ヒトなどの患者に投与する活性化合物の用量はかなり大きく変動し、個別の判断の対象となり得る。多くの場合、活性化合物の1日量を1日の様々な時間に投与することが実用的である。しかし、任意の所与の場合、投与する活性化合物の量は、活性成分の溶解性、用いる製剤、患者の状態(体重など)、および/または投与経路などの要因に依存することになる。
【0105】
単独の、または別の予防薬もしくは治療薬と併用した活性化合物の有効量の一般的範囲は、約0.001 mg/日〜約1000 mg/日、より好ましくは約0.001 mg/日〜750 mg/日、より好ましくは約0.001 mg/日〜500 mg/日、より好ましくは約0.001 mg/日〜250 mg/日、より好ましくは約0.001 mg/日〜100 mg/日、より好ましくは約0.001 mg/日〜75 mg/日、より好ましくは約0.001 mg/日〜50 mg/日、より好ましくは約0.001 mg/日〜25 mg/日、より好ましくは約0.001 mg/日〜10 mg/日、より好ましくは約0.001 mg/日〜1 mg/日である。当然のことながら、多くの場合、化合物の1日量を1日の様々な時間に分割して投与することが実用的である。しかし、任意の所与の場合、投与する活性化合物の量は、活性成分の溶解性、用いる製剤、対象の状態(体重など)、および/または投与経路などの要因に依存することになる。
【0106】
実施例
実施例1 突然変異誘発解析
TLR3に対する抗血清およびポリ(I:C)はImgenix Inc.(カリフォルニア州、サンディエゴ)から購入した。ジチオスレイトール(DTT)、ヨードアセトアミド、およびトリプシンはsigma Chemical Co.から購入した。すべての手順で使用する水は、Millipore Milli-Q UV plus精製システムを用いて精製した。質量分析に使用する有機溶媒はいずれもHPLC等級であり、他の化学物質は試薬等級であった。酸性膜を染色する蛍光色素であるLysotrackerは、Molecular Probes(オレゴン州、ユージーン)から購入した。40 bpポリ(I:C)は化学合成した。20-bpポリ(I:C)は、ポリイノシン酸およびポリシチジル酸を1 M NaOHで5分間処理した後、変性ゲルでバンドを分離し、20-ntバンドを切り出し、それらをアニーリングさせることによって作製した。
【0107】
TLR3におけるジスルフィド結合の生化学的証拠を得るため、本発明者らは質量分析を用いて、hTLR3ECDと命名した、ヒト細胞から精製された組換えTLR3 ECDを調べた。hTLR3ECDの1分割量を、Sechi, S., and Chait, B. T. Anal.Chem. 1998, 70, 5150-5158におけるプロトコールと同様に、還元しアルキル化した。もう一方の分割量を、10 uLの50 mM重炭酸アンモニウム、pH=8で希釈した。次に、各分割量を90℃で15分間熱変性させた。熱変性させたタンパク質を、配列決定等級の改変トリプシンにより37℃で一晩消化した。使用したトリプシンとタンパク質のモル比は1:40であった。各試料をC18 Zip Tip(Millipore)を用いて脱塩してから、ABI 4700 Proteomics Analyzer(Applied Biosystems、マサチューセッツ州、フラミンガム)を使用して質量分析(MS)により解析した。4-ヒドロキシ-α-シアノ桂皮酸(50%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸中の5 mg/ml)をマトリックスとして使用し、これを脱塩試料と1:1で混合し、MALDIプレート上にスポットした。スペクトルはいずれも手動で獲得した。タンデムMS実験については、加速を1 kVに設定し、衝突ガスは大気であった。
【0108】
野生型TLR3プラスミドは、以前にSun et al. (2006). J. Biol. Chem. 281, 11144-11151に記載された。部位特異的変異は、標的配列にアニーリングさせたオリゴヌクレオチドおよびQuickChangeキット(Stratagene Inc.、カリフォルニア州、サンディエゴ)を用いて作製した。オリゴヌクレオチドの配列は、請求に応じて入手可能である。変異解析によって生じたいくつかのクローンを配列決定して、変異を確認した。活性が影響を受けた変異体クローンを配列決定して、タンパク質に変異が存在すること、および意図しない変化が存在しないことを確認した。
【0109】
TLR3細胞外ドメインのモデルは、Bell et al. (2005) Proc Natl Acad Sci USA 102, 10976-10980によって決定された結晶構造に基づいた。Bell et al. (2006). Proc Natl Acad Sci USA 103, 8792-8797. (13)に基づき、2つのTLRECD分子を二量体になるようドッキングさせた。手動でのドッキングは、Quanta分子モデリング環境(バージョン2000、Accelrys)で行った。結果は、Pymol(バージョン0.99、DeLano Scientific LLC)を用いて表した。
【0110】
細胞をLabTek II CC2処理チャンバースライド(Nunc Intl.、イリノイ州、ネーパービル)にプレーティングし、Lipofectamine2000(Invitrogen、カリフォルニア州、カールスバッド)でプラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後に、各TLR3変異体をZeiss Axioplan蛍光顕微鏡を用いて免疫蛍光により可視化した。簡潔に説明すると、インキュベーターから細胞を取り出し、PBSでリンスしてから、PBS中の4%ホルムアルデヒドで固定し、0.1% Triton X-100で透過処理した。次に、細胞を抗TLR3 FITC結合モノクローナル抗体(Imgenex315A、カリフォルニア州、サンディエゴ)中、室温、暗下で少なくとも1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、Hoechst 33342色素(Molecular Probes、オレゴン州、ユージーン)で対比染色してから、緩衝グリセロール水性封入剤で封入した。
【0111】
上記の通り、293T細胞に野生型TLR3、変異体TLR3、または対照pcDNAを一過性にトランスフェクションした。トランスフェクションの36時間後に、passive lysis buffer(Promega Inc.)を用いて細胞を溶解し、染色体DNAを分解するために超音波処理した。各試料による等量のタンパク質をNuPAGE 4〜12% bis-trisゲル(Invitrogen)で分離し、PVDF膜にブロットし、抗TLR3 MAb IMG315A(Imgenex Inc.)でプロービングした。ブロットを、ペルオキシダーゼ結合二次抗体およびECL-plusウェスタンブロッティング検出システム(Amersham Biosciences)を用いて現像した。
【0112】
2×106個細胞/ウェルの濃度で、6ウェルコラーゲン被覆プレート(BD Biosciences)で培養した293T細胞を用いて、FACS解析を行った。Lipofectamine 2000(Invitrogen Inc.)を使用して、細胞に適切なプラスミド1μgをトランスフェクションした。トランスフェクションの18〜24時間後に細胞を回収し、氷冷FACS緩衝液(1×PBS(10 mMリン酸、150 mM NaCl、pH 7.4;+3%ウシ胎仔血清+0.04%アジ化ナトリウム)で2回洗浄してから、FACS緩衝液に〜2×107個細胞/mLで懸濁した。細胞を1μgのPE標識抗ヒトTLR3 mAb(TLR3.7、eBioscience、カリフォルニア州、サンディゴから購入)または陰性対照マウスIgG1対照抗体で4℃で30分間染色した。96ウェルプレートで培養した細胞に抗体を添加し、氷上、暗下で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄して非結合の抗体を除去した後、FACS緩衝液に再懸濁した。Viaprobe(BD Biosciences)を用いて死細胞を排除した。細胞を適切なチューブに移し、FACS Calibur装置(BD Biosciences)を用いて解析した。
【0113】
実施例2
TLR3を調節することで、いくつかの疾患例を挙げると、敗血症、関節炎、および喘息において致命的となるまたは衰弱させる可能性のある炎症反応を調節することができる。TLR3は、作用機序(MOA)の一部としてホモオリゴマーを形成する必要がある。このMOAから、野生型TLR3のシグナル伝達を抑制し得るTLR3の変異体型(いわゆるドミナントネガティブ変異体)を用いて、炎症反応を調節できることが示唆される。TLR3の細胞内シグナル伝達ドメインを欠くTLR3-ΔTIRを含むドミナントネガティブTLR3が報告されており、細胞外ドメインがドミナントネガティブ性に必要であることが示される(Ranjith-Kumar et al., 2007. J.B.C. 282, p. 7668)。他のドミナントネガティブは、TLR3の細胞外ドメインに変異を含む(同書)。
【0114】
驚いたことに、本発明者らは、細胞外ドメインの実質的な部分を欠くTLR3変異体を同定した。変異体TLR3Nは残基123〜590を欠いている(モチーフLLR4〜LLR 22の一部が欠失)。TLR3Nで欠損しているのは、ループ2、およびTLR3二量体化に必要であることが実証された以前に同定された残基のいくつかである(同書)。したがって、TLR3Nの解析により、TLR3シグナル伝達のドミナントネガティブ阻害の第2の経路が明らかになった。
【0115】
本発明者らは、TLR3Nが、シグナルペプチドならびにTLR3のN末端およびC末端キャップを両方含むことから、これを細胞膜に標的化できると予測する(Bell, J. K. et al., (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S. A. 102, 10976)。
【0116】
NF-kBまたはISREプロモーターのいずれかから駆動されるレポータールシフェラーゼを用いて、TLR3Nについてドミナントネガティブ性アッセイを行った。ウミシイタケルシフェラーゼをトランスフェクション対照として使用し、すべてのデータをウミシイタケ対照に対する倍率として標準化する。結果は一致する。加えて、TLR3NをTLR3ΔTIRと比較したところ、そのドミナントネガティブ活性はTLR3Δ-TIRのものに匹敵することが判明した。
【0117】
TLR3は炎症反応の重要な調節因子である。以前の変異体と異なるMOAを有する新たなドミナントネガティブ変異体TLR3の発見により、炎症反応の新たなクラスの調節因子の基礎が形成され得る。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
TLR3変異体ポリペプチドを含む薬学的組成物であって、該ポリペプチドがTLRタンパク質のドミナントネガティブ阻害因子である、薬学的組成物。
【請求項2】
TLRタンパク質が野生型TLR3またはTLR9である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
TLR3変異体ポリペプチドがループ2内に変異を含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
ポリペプチド変異体がSEQ ID. NO.:1において起こる、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
変異体が

からなる群より選択される1つまたは複数である、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
ポリペプチドがモチーフHANPGGIYを含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項7】
以下の段階を含む、炎症性疾患を予防または治療する方法:
i) 以下のものを提供する段階
a) 炎症性疾患と診断されるか、または炎症性疾患のリスクがある対象、および
b) ドミナントネガティブTLR3分子を含む薬学的組成物、ならびに
ii) 炎症反応が予防または治療される条件下で、該薬学的組成物を該対象に投与する段階。
【請求項8】
炎症性疾患が、肺疾患、自己免疫疾患、線維性疾患、および腎疾患からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
肺疾患が、喘息、喘息憎悪、微生物関連肺炎、サルコイドーシス、および嚢胞性線維症からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、および巨細胞性動脈炎からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
腎疾患がループス腎炎である、請求項8記載の方法。
【請求項12】
線維性疾患が肝線維症である、請求項8記載の方法。
【請求項13】
ドミナントネガティブTLR3分子が、置換または非置換モチーフX1X2NX4GGPX8X9を有するアミノ酸配列であり、式中、X1、X2、X4、X8、およびX9はそれぞれ個々にかつ独立して天然または非天然アミノ酸である、請求項7記載の方法。
【請求項14】
X1がH、R、またはNであり;
X2がAまたはNであり;
X4がPまたはVであり;
X8がIまたはVであり;ならびに
X9がY、H、Q、N、およびMである、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
ポリペプチドが500残基未満である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
第2の治療薬を対象に投与する段階をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項17】
第2の治療薬が、抗微生物薬、副腎皮質ステロイド、および免疫調節薬からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
抗微生物薬が、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、および抗寄生虫薬からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
免疫調節薬が、インターフェロンγ-1b、IFN-γ、アクティミューン(Actimmune)、タイサブリ(Tysabri)、ナタリズマブ、ゾレア(Xolair)、オマリズマブ、ニューラスタ(Neulasta)、ペグフィルグラスチム、ニューポジェン(Neupogen)、フィルグラスチム、アナキンラ、ヒュミラ(Humira)、アダリムマブ、エンブレル(Enbrel)、TNF、エタネルセプト、アレファセプト、レミケード(Remicade)、インフリキシマブ、ラプティバ(Raptiva)、エファリズマブ、サイモグロブリン(Thymoglobulin)、インファージェン(Infergen)、インターフェロン、ムロモナブ(Muromaonab)、ゼナパックス(Zenapax)、ダクリズマブ、およびバシリキシマブからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
副腎皮質ステロイドが、デキサメタゾン(Decadron)、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(Medrol)、プレドニゾン、コルチゾン、ベタメタゾン、およびプレドニゾロンからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項21】
抗菌薬が、スルファニルアミド、トリメトプリム ペニシリンG、セファレキシン、セファクロル、セフィキシム、メロペネム、エルタペネム、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン エリスロマイシン、アジスロマイシン、ならびにクラリスロマイシン、クリンダマイシン、キヌプリスチンおよびダルホプリスチン、シプロフロキサシン スペクチノマイシン、バンコマイシン、リネゾリド、ならびにダプトマイシンからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項22】
抗ウイルス薬が、バカビル(bacavir)、アシクロビル、アジェネレース(agenerase)、アマタジン(amatadine)、アンプレナビル、クリキシバン(crixivan)、デラビルジン、デナビル(denavir)、ジダノシン、エファビレンツ、エピビル(epivir)、ファムシクロビル、ファムビル(famvir)、フォートベイス(fortovase)、ハイビッド(hivid)、インジナビル、リバビリン、インビラーゼ(invirase)、ラミブジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ノービア(norvir)、オセルタミビル、ペンシクロビル、リレンザ(relenza)、レスクリプター(rescriptor)、レトロビル(retrovir)、リトナビル、サキナビル、スタブジン、サスティバ(sustiva)、シムジン(symdine)、シンメトレル(symmetrel)、タミフル(tamiflu)、バラシクロビル、バルトレックス(valtrex)、ヴァイデックス(videx)、ビラセプト(viracept)、ビラミューン(viramune)、ザルシタビン、ゼリット(zerit)、ザイアジェン(ziagen)、ジドブジン、ゾビラックス(zovirax)、およびザナミビルからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項23】
抗真菌薬が、ニスタチン、クロトリマゾール、エコナゾール、シクロピロクスオラミン、ケトコナゾール、ミコナゾール、テルビナフィン、およびトルシクラートからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項24】
投与が、皮下、経口、静脈内、皮内、および鼻腔内経路からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項25】
以下の段階を含む、炎症性疾患を予防または治療する方法:
i) 以下のものを提供する段階
a) 炎症性疾患と診断されるか、または炎症性疾患のリスクがある対象、および
b) ドミナントネガティブTLR3アミノ酸配列をコードする核酸配列を含む薬学的組成物、ならびに
ii) 炎症反応が予防または治療される条件下で、該薬学的組成物を該対象に投与する段階。
【請求項26】
炎症性疾患が、肺疾患、自己免疫疾患、線維性疾患、および腎疾患からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
肺疾患が、喘息、喘息憎悪、微生物関連肺炎、サルコイドーシス、および嚢胞性線維症からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、および巨細胞性動脈炎からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項29】
腎疾患がループス腎炎である、請求項25記載の方法。
【請求項30】
線維性疾患が肝線維症である、請求項25記載の方法。
【請求項31】
ドミナントネガティブTLR3アミノ酸配列が、置換または非置換モチーフX1X2NX4GGPX8X9を有するアミノ酸配列であり、式中、X1、X2、X4、X8、およびX9はそれぞれ個々にかつ独立して天然または非天然アミノ酸である、請求項25記載の方法。
【請求項32】
X1がH、R、またはNであり;
X2がAまたはNであり;
X4がPまたはVであり;
X8がIまたはVであり;ならびに
X9がY、H、Q、N、およびMである、
請求項31記載の方法。
【請求項33】
アミノ酸配列が500残基未満である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
第2の治療薬を対象に投与する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項35】
第2の治療薬が、抗微生物薬、副腎皮質ステロイド、および免疫調節薬からなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
抗微生物薬が、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、および抗寄生虫薬からなる群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
免疫調節薬が、インターフェロンγ-1b、IFN-γ、アクティミューン、タイサブリ、ナタリズマブ、ゾレア、オマリズマブ、ニューラスタ、ペグフィルグラスチム、ニューポジェン、フィルグラスチム、アナキンラ、ヒュミラ、アダリムマブ、エンブレル、TNF、エタネルセプト、アレファセプト、レミケード、インフリキシマブ、ラプティバ、エファリズマブ、サイモグロブリン、インファージェン、インターフェロン、ムロモナブ、ゼナパックス、ダクリズマブ、およびバシリキシマブからなる群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項38】
副腎皮質ステロイドが、デキサメタゾン(Decadron)、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(Medrol)、プレドニゾン、コルチゾン、ベタメタゾン、およびプレドニゾロンからなる群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項39】
抗菌薬が、スルファニルアミド、トリメトプリム ペニシリンG、セファレキシン、セファクロル、セフィキシム、メロペネム、エルタペネム、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン エリスロマイシン、アジスロマイシン、ならびにクラリスロマイシン、クリンダマイシン、キヌプリスチンおよびダルホプリスチン、シプロフロキサシン スペクチノマイシン、バンコマイシン、リネゾリド、ならびにダプトマイシンからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項40】
抗ウイルス薬が、バカビル、アシクロビル、アジェネレース、アマタジン、アンプレナビル、クリキシバン、デラビルジン、デナビル、ジダノシン、エファビレンツ、エピビル、ファムシクロビル、ファムビル、フォートベイス、ハイビッド、インジナビル、リバビリン、インビラーゼ、ラミブジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ノービア、オセルタミビル、ペンシクロビル、リレンザ、レスクリプター、レトロビル、リトナビル、サキナビル、スタブジン、サスティバ、シムジン、シンメトレル、タミフル、バラシクロビル、バルトレックス、ヴァイデックス、ビラセプト、ビラミューン、ザルシタビン、ゼリット、ザイアジェン、ジドブジン、ゾビラックス、およびザナミビルからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項41】
抗真菌薬が、ニスタチン、クロトリマゾール、エコナゾール、シクロピロクスオラミン、ケトコナゾール、ミコナゾール、テルビナフィン、およびトルシクラートからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項42】
抗寄生虫薬が、デクトマックス(dectomax)、イベルメクチン メトロニダゾール、パモ酸ピランテル、テトランドリン、およびヨドキシン(yodoxin)からなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項43】
投与が、皮下、経口、静脈内、皮内、および鼻腔内経路からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項44】
以下の段階を含む、Toll様受容体3活性を阻害する方法:
i) 以下のものを提供する段階
a) toll様受容体3を含む細胞、および
b) ドミナントネガティブTLR3アミノ酸配列、ならびに
ii) toll様受容体3活性が阻害される条件下で、該細胞と該アミノ酸配列を混合する段階。
【請求項45】
アミノ酸配列が、置換または非置換モチーフX1X2NX4GGPX8X9を有するアミノ酸配列の変異体であり、式中、X1、X2、X4、X8、およびX9はそれぞれ個々にかつ独立して天然または非天然アミノ酸である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
X1がH、R、またはNであり;
X2がAまたはNであり;
X4がPまたはVであり;
X8がIまたはVであり;ならびに
X9がY、H、Q、N、およびMである、
請求項45記載の方法。
【請求項47】
アミノ酸配列がΔTIRではない、請求項44記載の方法。
【請求項48】
細胞が、HEK、HeLa、COS、およびチャイニーズハムスター卵巣細胞の群より選択される、請求項44記載の方法。
【請求項49】
以下の段階を含む、Toll様受容体3関連疾患を診断する方法:
a) 以下のものを提供する段階
i) toll様受容体3をコードする細胞を有する対象、および
ii) 本明細書に開示する核酸配列をコードする核酸配列を含む組成物、
b) 該toll様受容体3活性が測定される条件下で、該細胞と該核酸配列を混合する段階。
【請求項50】
測定される活性が阻害される、請求項49記載の方法。
【請求項48】
細胞が、肺細胞、腎細胞、および滑膜線維芽細胞からなる群より選択される、請求項46記載の方法。
【請求項49】
核酸配列が、野生型TLR3のドミナントネガティブ阻害因子であるアミノ酸配列をコードする、請求項46記載の方法。
【請求項50】
SEQ ID. NO.:1のポリペプチド変異体を含む組成物。
【請求項51】
変異体が

からなる群より選択される1つまたは複数である、請求項50記載の組成物。

【公表番号】特表2010−509398(P2010−509398A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537183(P2009−537183)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/023825
【国際公開番号】WO2008/063493
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(509002040)ザ テキサス エー アンド エム ユニバーシティ システム (4)
【Fターム(参考)】