説明

USA300市中感染メチシリン−耐性黄色ブドウ球菌の同定

本発明は、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のUSA300株の同定のための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
継続出願データ
本願は、本明細書に参考文献として援用されている、2005年11月10日に出願された米国仮出願番号第60/736,147号、及び2006年6月27日に出願された米国仮出願番号第60/816,803号の利益を請求する。
【0002】
背景
市中感染メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)感染症は、現在、主な臨床的関心事の原因である。静脈投与薬物使用者の間に米国で最初に同定され(Saravolatz他, Ann Intern Med, 1982; 97: 325-329)、次いで他の高いリスク集団、例えば囚人及び運動選手によって同定されたが、米国中の病院は、予め処置すべきリスク因子を持たない、若く、健康な集団に見られるCA-MRSA感染症の数が増加する傾向にあることに注目している(疫病管理予防センター, Morb Mortal Wkly Rep, 2003; 52: 793-795; 疫病管理予防センター, Morb Mortal Wkly Rep, 2003; 52: 992-996; Francis他, Clin Infect Dis, 2005; 40: 100-107; Kazakova他, N Engl J Med, 2005; 352: 468-475; Lindenmayer他, Arch Intern Med, 1998; 158: 895-899; Naimi他, JAMA 2003; 290: 2976-2984; 及びSaravolatz他, Ann Intern Med 1982; 97: 325-329)。Naimi他によって公表された有望なコホート群研究法は、CA-MRSA感染症を有する患者の年齢の中央値が、院内-感染MRSAを有する患者の年齢の中央値よりも著しく若いこと、すなわち、それぞれ、30代対70代にあることを見出した(Naimi他, JAMA 2003; 290: 2976-2984)。多数の研究はまた、CA-MRSA感染症が幼児及び子供の間で通常見られることを示している。このことは、再度、このような感染症に罹る可能性がもはや典型的なリスク集団に限定されないことを示唆している(Buckingham他, Pediatr Infect Dis J 2004; 23: 619-624; 疫病管理予防センター, Morb Mortal Wkly Rep 1999; 48 :707-710; Fridkin他, N Engl J Med 2005; 352: 1436-1444; Herold他, JAMA 1998; 279:593-598; Mishaan他., Pediatr Infect Dis J 2005; 24:201-206)。
【0003】
CA-MRSA株は、通常、SCCmec IV型要素を有し、複数の非-ラクタム抗生物質に対して感受性である。これは、SCCmec II型要素を有し、複数の可動遺伝子要素及び非-可動遺伝子要素の存在に因って様々な抗生物質に耐性である、ヘルスケア-関連株、例えばUSA 100単離物とは著しく異なる(McDougal他, J Clin Microbiol, 2003; 41: 5113-5120)。しかしながら、市中感染株は、典型的に、白血球破壊及び組織壊死を起こす細胞毒素を産生する、パントン-バレンタインロイコシデン(PVL)遺伝子、lukS及びlukFを有する(Genestier他, J Clin Invest, 2005; 115: 3117-3127)。PVLを産生する株は、皮膚膿瘍形成、せつ腫症及び重度の壊死性強膜炎に関連している(Lina他, Clin Infect Dis, 1999; 29: 1128-1132)。PVL遺伝子の存在は、増加した疾患の重度に関連することもある(Chambers, N Engl J Med, 2005; 352: 1485-1487; 及びEtienne, Clin Infect Dis, 2005; 41: 591-593)。その市中感染指定にもかかわらず、CA-MRSA株は、通常、病院環境内の患者から単離され、該患者の間で伝染する(Saiman他, Clin Infect Dis, 2003; 37: 1313-1319)。CA-MRSAはまた、増加した患者の疾病率及び死亡率、高価な治療、及びこれらの株の存在の活発な監視の価値を強調する広範囲の根絶方法に関連している(Rubin他, Emerg. Infect Dis, 1999; 5: 9-17)。
【0004】
MRSA株を特徴付けるために使用される分子タイピング法は、パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)、多座配列タイピング(MLST)、及び標的遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増福(Shopsin and Rreiswirth, Emerg. Infect Dis, 2001; 7: 323-326)を含む。PFGEによって、疫病管理予防センターによって、米国におけるCA-MRSA単離物は、これまで、パルス-フィールド型 (PFT) USA300 (ST8)、USA400 (ST1) として分類されてきた(McDougal他, J Clin Microbiol, 2003; 41: 5113-5120)、USA 1000 (ST59) 及びUSA 1100 (ST30) (McDougal他. 2005 Abstr. 105th Annu. Meeting Amer. Soc. Microbiol., abstr. C-043)。1997〜1999年のノースダコタ州及びミネソタ州の4人の子供における致命的感染症の原因である黄色ブドウ球菌MW2は、USA400 PFTに属するプロトタイプの市中感染MRSA株と考えられる(疫病管理予防センター, Morb Mortal Wkly Rep, 1999; 48: 707-710)。しかしながら、近年は、子供、スポーツ選手、囚人、軍事新兵、及び男性と性交渉をする男性を含む様々な地域集団中で同定されたUSA300単離物の数が驚く程に増加していることが明らかになっている(Begier他, Clin Infect Dis 2004; 39: 1446-1453; Buckingham他, Pediatr Infect Dis J, 2004; 23: 619-6243; Gonzalez他, Pediatrics 2005; 115: 642-648; Hidron他, Clin Infect Dis 2005; 41: 159-166; Miller他, N Engl J Med, 2005; 352: 1445-1453; Nguyen他, Emerg Infect Dis, 2005; 11: 526-532; 及びPan他, J Infect Dis 2005; 192: 811-818)。USA 300 CA-MRSA株の検出は、PFGE、MLST、及びPCR (すなわち、PVL) の使用を典型的に必要としてきた。それらは、総合すれば、時間を浪費し、ありきたりの臨床的検査に容易に利用できないかもしれない設備を必要とする。加えて、新しく記載されたアルギニン異化可動性要素(ACME)(Diep他, Lancet 2006; 367: 731-739) は、SCCmecb IVa型を有するUSA300株中に存在するにすぎないようである(McDougal他, Abstr. 46th 2 Intersci. Conf. Antimicrob. Agents Chemother., abstr. C2-603, 2006)。従って、USA300 CA-MRSA単離物の迅速同定のための統合された分子的アプローチの必要性がある。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)のUSA300株の同定方法であって、以下のステップ:
パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)毒素の遺伝子の存在又は非存在について、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析し;及び
保存的仮定上の遺伝子SACOL0058中のAT繰り返し領域の存在又は非存在について、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析すること、
を含み、
ここで、PVL毒素の遺伝子の存在、及び保存的仮想遺伝子SACOL0058中に少なくとも6個のAT繰り返しを含むAAT繰り返し領域の存在は、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌が、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌のUSA 300株であることを示す、前記方法を含む。
【0006】
本方法のある実施態様においては、保存的仮想遺伝子SACOL0058中のAT繰り返し領域の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析することは、AT繰り返し領域があるとすれば、保存的仮想遺伝子SACOL0058内の中のAT繰り返し領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い;及び、AT繰り返し領域を含む増福されたDNA断片の存在又は非存在について分析すること、を含む。ある実施態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは、6個以上のAT繰り返しが存在するときに、AT繰り返し領域を増幅するだけだろう。ある実施態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは、そこに取り込まれた1以上の固定(rocked)核酸塩基を有するフォワードプライマーである。ある実施態様では、フォワードオリゴヌクレオチドプライマーは、1以上の核酸が固定核酸塩基である、配列 TGCTCGACGTCAATATATATATAT(配列番号7)を有する。ある実施態様では、フォワードオリゴヌクレオチドプライマーは、配列 GLCTLCGALCGTCAALTALTATATATAT(配列番号5)(NLが固定核酸塩基を示す)を有する。ある実施態様では、オリゴヌクレオチドプライアーは、配列 5'-ACGATGATATTCCCGATAG-3'(配列番号8)又は5'-CAATTAACGATGATATTCCCGATAG-3' (配列番号:4) を有するリバースプライマーを含む。ある実施態様では、本方法は、増福されたDNA断片をシークエンシングすることを更に含む。
【0007】
本発明のある実施態様において、PVL毒素の遺伝子の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することは、PVL毒素の遺伝子を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い;及びPVL毒素の遺伝子の増幅されたDNA断片の存在又は非存在について分析すること、を含む。ある実施態様では、PVL毒素の遺伝子を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーは、5'-ATCATTAGGTAAAATGTCTGGACATGATCCA-3' (配列番号1) 及び5'-GCATCAACTGTATTGGATAGCAAAAGC-3' (配列番号:2) を含む。ある実施態様では、本方法は、増福されたDNA断片をシークエンシングすることを更に含む。
【0008】
本方法のある実施態様では、USA300株以外のメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌は、PVL毒素の遺伝子について6個未満のAT繰り返しを有するか及び/又は有さない。
【0009】
本方法のある実施態様において、パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)毒素の遺伝子の存在又は非存在について、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析すること、及びAT繰り返し領域の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することが単一容器実験で実施されること、を含む。
【0010】
本発明のある実施態様において、保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することは、保存的仮想遺伝子SACOL0058内にAT繰り返し領域があればそれを増福することができるオリゴヌクレオチドプライマーでポリメラーゼ連鎖反応を行い:及びAT繰り返し領域を含む増福されたDNA断片の存在又は非存在を分析すること、を含み、ここで、PVL毒素遺伝子の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することは、PVL毒素の遺伝子を増幅させることができるオリゴヌクレオチドプライマーでポリメラーゼ連鎖反応を行い;及びPVL毒素遺伝子の増幅されたDNA断片の存在又は非存在について分析すること、を含む。ある実施態様では、本方法は、保存的仮想遺伝子SACOL0058の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析することを更に含み、ここで、保存的仮想遺伝子SACOL0058の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析することは、保存的仮想遺伝子SACOL0058の少なくとも一部分を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーでポリメラーゼ連鎖反応を行い、及び保存的仮想遺伝子SACOL0058の少なくとも一部分を含む増幅されたDNA断片の存在又は非存在について分析すること、を含む。ある実施態様では、ポリメラーゼ連鎖反応は、単一-容器実験で起こる。
【0011】
本発明はまた、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌ゲノムの単離されたDNA断片を含み、ここで、該断片は、6以上のAT繰り返しを含むAT繰り返し領域を含み、該断片は、J1 SCCmec-染色体接合部を1.4 kb越えた位置にマッピングされる。ある実施態様では、該AT繰り返し領域内に6〜8のAT繰り返しが存在する。
【0012】
本発明はまた、メシチリン-耐性黄色ブドウ球菌遺伝子の単離されたDNA断片を含み、該断片は、6以上のAT繰り返しを有するAT繰り返し領域を含み、該断片は、黄色ブドウ球菌株COL (Genbank受入番号CP000046) のヌクレオチド69954〜70855に対応する領域を含む。ある実施態様では、該AT繰り返し領域内に6〜8のAT繰り返しが存在する。
【0013】
本発明はまた、配列TGLCTLCGALCGTCAALTALTATATATAT(配列番号5)(NLは固定核酸塩基を示す)を有する単離されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0014】
本発明はまた、5'-ACGATGATATTCCCGATAG-3' (配列番号3) 及び5'-CAATTAACGATGATATTCCCGATAG-3'(配列番号4)からなる群より選ばれる単離されたオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0015】
本発明はまた、黄色ブドウ球菌のDNAの保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマー対、及びPVL毒素遺伝子を増幅することができるオリゴヌクレオチドを有するキットを含む。ある実施態様では、本キットはまた、保存的仮想遺伝子SACOL0058の少なくとも一部分を増幅することができるプライマー対を含む。
【0016】
他に特定しない限り、「a」、「an」「the」及び「少なくとも1つ」は、交換的に使用され、1以上を意味する。
【0017】
発明の例証的実施態様の詳細な説明
本発明は、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のUSA300株を同定するための方法を提供する。本明細書で「S. aureus」、「staph」又は「staph A」とも称される黄色ブドウ球菌は、表在性皮膚損傷(例えば、おでき、ものもらい及びせつ腫症)から、より重度の感染症(例えば、肺炎、乳腺炎、静脈炎、髄膜炎及び尿管感染症)及び根深い感染症(例えば、骨髄炎及び心内膜炎)までの範囲の、ヒトにおける様々な感染症を引き起こすグム陽性菌である。メチシリンはβ-ラクタム抗生物質である。それは、黄色ブドウ球菌を含む感受性グラム陽性菌によって起こる感染症を治療するために従来用いられてきた。それは、ほとんどのペニシリンに抵抗性であるが、臨床的にもはや使用されていない。治療におけるその役割は、他の抗生物質、例えばフルクロキサシリン及びジクロキサシリンによってほとんどとって代わられてきた。しかしながら、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)という用語は、一般的に使用されてきたペニシリン-関連抗生物質に抵抗性の黄色ブドウ球菌株を記載するために使用され続けている。
【0018】
メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のUSA300株は、市中感染メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)の主な起源である。CA-MRSA感染症は、主な臨床的関心事の原因になっている。静脈麻薬の使用者の間で、米国で最初に同定され(Saravolatz他, Ann Intern Med, 1982; 97: 325-329)、次いで他の高リスク集団によって同定されたが、国内の病院は、予め処置されたリスク因子のない若年の健康な集団において、CA-MRSA感染症の数が増加傾向にあることに気付いていた(Centers for Disease Control and Prevention, Morb Mortal Wkly Rep, 2003; 52: 793-795; Centers for Disease Control and Prevention, Morb Mortal Wkly Rep, 2003; 52: 992-996; Francis他, Clin Infect Dis, 2005; 40: 100-107; Kazakova他, N Eng J Med, 2005; 352: 468-475; Lindenmayer他, Arch Intern Med, 1998; 158: 895-899; Naimi他, JAMA, 2003; 290: 2976-2984; 及びSaravolatz他, Ann Intern Med, 1982; 97: 325-329)。市中感染指定にもかかわらず、CA-MRSAは、他の起源からも獲得される。例えば、CA-MRSA株は、通常、病院設備内の患者から単離され、該患者間で伝染する。本発明の方法は、CA-MRSAを含むMRSAのUSA300株の同定及び診断のために使用することができる。本発明に関して、黄色ブドウ球菌は、標準的な微生物的方法、例えば、コロニー及び顕微鏡的形態学、凝固酵素試験又は凝集によって同定され得る。抗菌薬感受性も、標準的な微生物学的方法によって決定され得る。例えば、NCCLS、「Performance standards for antimicrobial susceptibility testing; fourteenth informational supplement」、NCCLS document M1OO-S14, Wayne, PA: NCCLS, 2004を参照。
【0019】
黄色ブドウ球菌USA300は、2000年に最初に単離されたメチシリン-耐性株である。USA300 CA-MRSAの完全なゲノム配列は公知である(Diep他, Lancet 2006; 367: 731-9)。それは、1つの環状染色体及び3つのプラスミドを有する。黄色ブドウ球菌(COL株)よりもより悪性であり、主な臓器を高度に侵襲する。それはまた、ヒトの多核性白血球による殺傷に対してより抵抗性であり、高度の宿主細胞溶解を生じる。USA300及びCOLは、共通の原種からの縦の系統で関連している。β-ラクタム及びシプロフロキサシンに対する抵抗性は、染色体的にコードされている。USA300における固有の遺伝子の全ては、病原性又は抵抗性決定因子をコードする可動性の遺伝的要素の5つの新規なアロタイプ内に群集する。最初の2つの遺伝的要素は、SCCmec IV要素及びACMEである。第3の遺伝的要素は、COLにおけるSEQ及びSEKに密接に関連する2つのエンテロトキシンをコードする、新規なブドウ球菌の病原性の島、SaPI5である。第4の遺伝的要素は、パントン・バレンタイン・ロイコシジンをコードする遺伝子を有する、プロファージphiSA2usaである。第5の遺伝的要素は、スタフィロキナーゼ及び走化性阻害タンパク質をコードする、プロファージphiSa3usaである。世界的ウェッブ expasy.org/sprot/hamap/STAA3.htmlを参照。
【0020】
本発明は、パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)毒素の遺伝子の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析し、及び保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析するための方法であって、PVL毒素の遺伝子の存在、及び保存的仮想遺伝子SACOL0058内に少なくとも6個のAT繰り返しを有するAT繰り返し領域の存在は、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌がメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌のUSA300株であることを示す、前記方法を含む。USA300単離物のみが6個以上のAT繰り返し、及びPVL毒素の遺伝子を含む。他のMRSA単離物、例えばUSA500(ST8)は、6個以上のAT繰り返しを示すことがあるが、これは、PVLとの組合せではない。更に、他の単離物(例えば、ST80)はPVLをコードするが、これは、6個未満のAT繰り返しとの組合せである。従って、これらの要素の組み合わせた検出は、USA300 MRSAの迅速かつ特異的な同定を提供する。
【0021】
市中感染MRSA株は、典型的に、パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)遺伝子、白血球破壊及び組織壊死を起こすサイトカインを産生するlukS及びlukFを有する(Genestier他, J Clin Invest, 2005; 115: 3117-3127)。PVLを産生する株は、皮膚膿瘍形成、せつ腫症及び重度の壊死性肺炎に関連している(Lina他, Clin Infect Dis, 1999; 29: 1128-1132)。PVL遺伝子の存在は、増加された疾患の重度に関連することもある(Chambers, N Engl J Med, 2005; 352: 1485-1487; 及びEtienne, Clin Infect Dis, 2005; 41: 591-593)。その市中感染指定にもかかわらず、CA-MRSA株は、通常、病院設備内の患者から単離され、該患者間で伝染する(Saiman他, Clin Infect Dis, 2003; 37: 1313-1319)。CA-MRSAは、増加した患者の疾病率及び死亡率、高い治療費、並びにこれらの株の存在について活発な監視の価値を強調する幅広い根絶手法にも関連している(Rubin他, Emerg Infect Dis, 1999; 5: 9-17)。
【0022】
本発明の方法は、パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)毒素遺伝子の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することを含む。パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)毒素遺伝子の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析するために、様々な方法のいずれも使用できる。例えば、核酸型ハイブリダイゼーションアッセイ、例えば、PVL EVIGENE(商標)(カタログ番号 KT104, AdvanDx, Woburn, MA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)型アッセイ(例えば、実施例1, Jarraud他, Infect Immun 2002: 70: 631-641; 及びLina他, Clin Infect Dis, 1999; 29: 1128-1132)、又はシークエンシング型アッセイ。
【0023】
好ましい実施態様では、PVL遺伝子の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することは、PVL毒素遺伝子を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーでPCRを行い、及びPVL毒素遺伝子の増幅されたDNA断片の存在又は非存在について分析することを含む。ある実施態様では、得られた増福されたDNA産物(複数)は、シークエンスすることができる。1つの実施態様では、使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、luk-PV-1、5'-ATCATTAGGTAAAATGTCTGGACATGATCCA-3' (配列番号1)、及びluk-PV-2、5'-GCATCAACTGTATTGGATAGCAAAAGC-3' (配列番号2) でよい。
【0024】
他のPVLプローブ及びプライマーも使用できる。例えば、PVLプローブ及びプライマーは、Ryan及びMcDonald., J Clin Microbiol, 2005; 43: 6147-6149によって記載されているように、Primer Express (ver. 2.0; Applied Biosystems, Mississauga, Ontario, Canada)、並びにOligo 6 (ver. 6.6.7.0; Molecular Biology Insights, Inc., Cascade, CO) 及び公的に入手可能な黄色ブドウ球菌由来のlukF-PV及びlukS-PV遺伝子配列(GenBank受入番号AB006796、X72700、AB009866及びAB045978)を用いてデザインすることができる。Ryan及びMcDonaldによって記載されているPVLプローブ又はプライマーはいずれも、本発明において使用できる。
【0025】
本発明に関して、PCR分析のためのゲノムDNAは、様々な方法のいずれかによって調製できる。例えば、Ausubel, F. M., R. Brent, R. E. Kingston, B. D. Moore, J. G. Seidman, J. A. Smith及びK. Struhl. 1987, Current protocols in molecular biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, New York, N. Y.に記載のような標準的な方法による抽出が使用できる。
【0026】
本発明の方法は、保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することを含む。保存的仮想遺伝子SACOL0058内の少なくとも6個(本明細書では、「6個超又は6個」、「6個又はそれ以上」及び「≧6個」とも称される)のAT繰り返しを有するAT繰り返し領域は、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌のUSA300株に見出される。
【0027】
黄色ブドウ球菌株COLの完全なゲノム配列は、入手可能である(Genebank受入番号CP000046)。J1 SCCmec-染色体接合部を約1.4 kb越えた位置にあるゲノム配列内に、保存的仮想遺伝子SACOL0058が存在する。保存的仮想遺伝子SACOL0058は、SCCmec要素に隣接する染色体領域にある。保存的仮想遺伝子SACOL0058の完全なヌクレオチド配列及びその仮想的アミノ酸配列は、図3に示され、受入番号NC_002951及び世界的ウェッブ ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nucleotide&dopt=graph&_from=61796 &_to=77239&val=NC_002951で見られる。黄色ブドウ球菌株COL内の保存的仮想遺伝子SACOL0058は、Genebank受入番号CP000046のヌクレオチド69954〜70855をその中に含む。本発明は、USA300単離物のみが、PVL毒素遺伝子の存在と組み合わせて6個以上のAT繰り返しの配列を含む、ことを証明している。
【0028】
保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域の存在又は非存在、及び存在するAT繰り返し数の決定についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析するために、様々な方法のいずれも使用できる。例えば、核酸型ハイブリダイゼーションアッセイ、PCR-型アッセイ、又はシークエンシング型アッセイも使用できる。
【0029】
好ましい実施態様では、保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域の存在又は非存在、及び存在するAT繰り返し数の決定についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することは、AT繰り返し領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーでPCRを行い、及びAT繰り返し領域の増幅されたDNA断片の存在又は非存在について分析することによって行われる。ある実施態様では、得られた増福されたDNA産物(複数)はシークエンシングできる。
【0030】
保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域に隣接する様々なプライマーが、この領域のゲノム配列に基いて選択できる。好ましい実施態様では、6個以上のAT繰り返しが存在するときにAT繰り返し領域を増幅するのみであるオリゴヌクレオチドプライマーが選択される。かかるプライマーは、そこに組み込まれる1個以上の固定核酸(LNA)オリゴヌクレオチドを有することがある。1個以上のLNA塩基は、フォワードプライマーに組み込まれる。フォワードオリゴヌクレオチドプライマーは、配列TGCTCGACGTCAATATATATATAT(配列番号7)又はその変異体を含むことがある。LNA塩基は、この配列の任意の1以上のヌクレオチドに配置される。例えば、1つの実施態様において、フォワードオリゴヌクレオチドプライマーは、配列TGLCTLCGALCGTCAALTALTATATATAT(配列番号5)(ここで、NLは固定核酸塩基を示す)を有することがある。リバースプライマーは、配列5'-ACGATGATATTCCCGATAG-3' (配列番号8) 又は5'-CAATTAACGATGATATTCCCGATAG-3' (配列番号4) を含むことがある。固定核酸(LNA)は、2'-O、4'-Cメチレン橋を含む新規な種類の核酸アナログである。この橋は、リボフラノースの可撓性を制限し、その構造を、高いハイブリダイゼーション能力及び例外的な生物学的安定性を与える、柔軟性のない二環性形成に固定する。LNAオリゴヌクレオチドを含む二重鎖は、DNA又はRNAオリゴヌクレオチドから構成される類似の二重鎖よりも相当熱的に安定である。LNAオリゴヌクレオチドは、ストリンジェントなアニーリング条件下で、改良された標的特異性を有する熱力学的に安定なプライマーを形成する(例えば、Vester and Wengel, Biochemistry 2004; 43: 13233-13241; McTigue他, Biochemistry, 2004; 43: 5388-5404; Jensen他, J. Chem. Soc, Perkin Trans, 2001; 2: 1224-1232; Christensen他, Biochem. J., 2001; 354: 481-484 (2001); 及び世界的ウェッブ proligo.com参照)。オリゴヌクレオチドの合成に使用するためのLNAは、例えば、Proligo LLC(Boulder, CO)から、商業的に入手可能である。標準的なDNAシンセサイザプラットフォームは、LNAを含むオリゴヌクレオチドの合成のために使用でき、DNA合成のために通常使用される試薬に変更は必要なく、LNAは、合成オリゴヌクレオチドを採用するほとんどのプラットフォームに適用できる。
【0031】
ある実施態様では、本発明は、保存的仮想遺伝子SACOL0058(図3に示される配列)の少なくとも一部分の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析することを更に含む。様々な方法のいずれも、保存的仮想遺伝子SACOL0058の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析するために使用できる。例えば、核酸型ハイブリダイゼーションアッセイ、PCR型アッセイ、制限マッピング、又はシークエンシング型アッセイが使用できる。好ましい実施態様では、保存的仮想遺伝子SACOL0058の少なくとも一部分の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することは、保存的仮想遺伝子SACOL0058の少なくとも一部分を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRを行うことによって行われる。ある実施態様では、得られた増福されたDNA産物(複数)はシークエンスすることができる。ATreg-1,5'-GAAAATGGAATAGAGTTGGCAGAC-3'(配列番号3)及びATreg-2,5'-CAATTAACGATGATATTCCCGATAG-3' (配列番号4) を含むがこれらに限定されない様々なプライマーは選択することができる。
【0032】
本発明は、本発明の方法において使用するための単離されたオリゴヌクレオチドプライマーを含む。例えば、本発明は、配列5'-ATCATTAGGTAAAATGTCTGGACATGATCCA-3' (配列番号1); 5'-GCATCAACTGTATTGGATAGCAAAAGC-3' (配列番号2); 5'-ACGATGATATTCCCG ATAG-3' (配列番号3); 5'-CAATTAACGATGATATTCCCGATAG-3' (配列番号4); 5'-TGCTCGACGTCAATATATATATAT (配列番号7)及び5'-ACGATGATATTCCCGATAG-3' (配列番号:8) を有するオリゴヌクレオチドプライマーを含む、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドプライマーのいずれかを含むがこれらに限定されない。
【0033】
本発明は、1以上の塩基が固定核酸塩基である、配列5'-TGCTCGACGTCAATATATATATAT(配列番号7)を有するオリゴヌクレオチドプライマーを含む。好ましい実施態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは、配列TGLCTLCGALCGTCAALTALTATATATAT(配列番号5)(ここで、NLは固定核酸塩基を示す)である。
【0034】
本発明はまた、黄色ブドウ球菌DNAの保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマー対、及びPVL毒素遺伝子を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーを含むキットを含む。ある実施態様では、本発明のキットはまた、保存的仮想遺伝子SACOL0058の少なくとも一部分を増幅することができるプライマー対を含む。
【0035】
本発明に関して、パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)毒素の遺伝子の存在又は非存在、保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域の存在又は非存在、及び保存的仮想遺伝子の存在又は非存在についてのメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌の分析は、様々な方法のいずれかで行うことができる。例えば、これらの分析の1以上は、別個に行うことができ、単一の反応容器内で複数の反応として行うことができ、又はマイクロアレイとして行うことができる。ある実施態様では、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌は、追加のマーカーの存在又は非存在について分析することができる。
【0036】
本発明の方法で使用できる試料は、血液、血液製品、組織、腹水、培養培地、体液、皮膚、膿、泌尿生殖器試料、糞、食料品、飲料、化粧品、医薬品、医療製品、床及び錠剤のような表面、並びに花粉及び塵のような浮遊微小粒子を含むがこれらに限定されない任意の起源から得られる。試料は、臨床的単離物、例えば、皮膚又は柔組織の感染症から得られる単離物、から得られる。試料は、前鼻孔、喉、会陰、脇又は皮膚を含むがこれらに限定されない体の部位のスワブ、例えば、鼻、から得られる。試料は、微生物、特に黄色ブドウ球菌を有すると疑われるものでよい。該試料は、微生物の存在について既に試験され、微生物に対する陽性を試験されている。
【0037】
本発明は、メチシリン-耐性USA300黄色ブドウ球菌遺伝子の単離されたDNA断片であって、6個以上のAT繰り返しを有する保存的仮想遺伝子SACOL0058のAT繰り返し領域を含む、前記断片を含む。かかる単離されたDNA断片は、6、7、8、9、10個又はそれ以上のAT繰り返しを有することがある。かかる単離されたDNA断片は、6〜8個のAT繰り返しを有することがある。本明細書で用いる用語「単離された」は、ポリヌクレオチドが、天然環境から得られるか、又は合成的に得られる、例えば組換え法によって、又は化学的もしくは酵素的に合成される、ことを意味する。単離されたポリヌクレオチドは、その天然遺伝的環境から得られたポリヌクレオチドを意味し、よって、他の外来的又は望ましくないコーディング配列がなく、遺伝子工学的に得られたタンパク質産生系内での使用に好適な形態である。本発明の単離されたポリヌクレオチドは、通常それらが関連している他のコーディング配列がないが、天然の5'及び3'非翻訳領域、例えばプロモーター及びターミネーターを含むことがある。好ましくは、ポリヌクレオチドは、精製される、すなわち、任意の他のポリヌクレオチド又はポリペプチド、及び関連する細胞産物又は他の不純物を本質的に含まない。
【0038】
本発明は、以下の実施例によって例証される。理解されたいが、具体例、材料、量、及び手法は、本明細書に記載の発明の範囲及び趣旨に従って広く解釈されるべきである。
【実施例】
【0039】
実施例 1
USA300市中感染メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)単離物の同定のための迅速マルチプレックスPCRアッセイ
近年の報告は、典型的なリスク因子を持たない患者における市中メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)の数の目立った増加に言及している。米国では、ほとんどの顕著なCA-MRSA株は、パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)細胞毒遺伝子をコードし、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)型USA300、多座配列8型(ST8)に属し、黄色ブドウ球菌カセット染色体(SSC)mec IV型を有する。現在、USA300のようなMRSAの分子的特徴付けは、多くの臨床的研究室の技術的能力を通常超えており、所定の同定を困難にする。本実施例では、44個のUSA300 MRSA単離物におけるSCCmec要素に隣接する染色体領域を分析した。「AT繰り返し」配列の名は、J1 SCCmec-染色体接合部の3'末端の1.4キロベース(kb)下流に位置する保存的仮想遺伝子SACOL0058内で同定された。USA300単離物のみが、PVLと共に6個以上の繰り返しの配列を含んだ。関連するUSA500又はイベリア株は、6個以上の繰り返しを有したが、PVL陰性であった。PVLを検出するためのプライマーと組み合わせて6個以上の繰り返しに特異的に固定核酸(LNA)プライマーを用いる、USA300株の同定に特異的なマルチプレックスPCRアッセイが開発された。マルチプレックスの結果は、DNAシークエンシングに従って100%であった。これは、これらの問題の単離物を速やかに同定するための手段として、この方法の有用性を示している。
【0040】
材料及び方法
細菌株。合計106個の黄色ブドウ球菌株(105個のMRSA、1個のMSSA)を本研究では試験した(表1)。MLST及びPFGE型に従って株を選択し、44個はUSA300に属した。これらの内で、30の単離物は、USA300-0114クローン複合体8(CC8:ST8)に属した(Enright他, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 2002; 99: 7687-7692);各々の単離物すべて疫学的に関連しないことが知られている。他の単離物は、MLST BURST分析によって決定されるUSA300株とのその遺伝的関連に基いて含まれた(世界的ウェッブ //mlst.netで入手可能)。
【0041】
パルスフィールドゲル電気泳動。すべての株はPFGEによって分析した。Goeringの迅速プロトコールに従って、細菌DNAを調製した(Goering, 1993. Pulsed Field Gel Electrophoresis, p. 185-196, D. H. Persing, T. F. Smith, F. C. Tenover, and T. J. White (著), Molecular Microbiology: Diagnostic Principles and Practice. ASM Press, Washington, DC)。公表された基準に (McDougal他, 「米国からのオキサシリン-耐性黄色ブドウ球菌単離物のパルスフィールドゲル電気泳動タイピング:国内データベースを確立」, J. Clin Microbiol. 2003; 41: 5113-5120)に従って、BioNumericsソフトウェア(v. 4.6, Applied Maths, Kortrijk, Belgium)を用いて、パルスフィールドパターンを分析した。
【0042】
PCR。MLSTウェッブサイトにEnright他によって記載された方法を用いるPCRのために染色体DNAを単離した(世界的ウェッブサイト //saureus.mlst.net/misc/info.aspを利用可能; また、Enright他 J Clin Microbiol, 2003; 38: 1008-1015参照)。
【0043】
PVL遺伝子の検出は、プライマーluk-PV-1、5'-ATCATTAGGTAAAATGTCTGGACATGATCCA-3' (配列番号1) 及びluk-PV-1、S'-GCATCAACTGTATTGGATAGCAAAAGC-3' (配列番号2)を用いて行った。これは、Lina他 (Lina他, Clin Infect Dis, 19199; 29: 1128-1132)によって記載された433塩基対(bp)産物を生じる。
【0044】
保存的仮想遺伝子SACOL005(黄色ブドウ球菌株COL, Geneban受入番号CP000046)を検出するために使用されるプライマー配列は、ATreg-1、5'-GAAAATGGAATAGAGTTGGCAGAC-3' (配列番号3) 及びATreg-2、5'-CAATTAACGATGATATTCCCGATAG-3' (配列番号4)であった。これは、902 bpの増幅産物を生じる。反応混合物(100 μl総体積)は、1.5 mM MgCl2、200 μM dNTPミックス、最終濃度0.5 mMのプライマー、2.5 U Taq DNAポリメラーゼ (Roche Diagnostics, Mannheim, Geramany) 及び1 μl (約1 μg) の鋳型DNAを含んだ。増福は、94℃で30秒間の変性、66℃で30秒間のアニーリング、72℃で1分30秒間の伸張、及び72℃で5分間の最終伸張を34サイクル行った。
【0045】
SACOL0058内で現れるAT繰り返し数を識別するためにデザインされたプライマーは、lnaAT-5'-TGLCTLGCALCGTCAALTALTATATATAT-3'(配列番号5)(プライマーの3'末端に追加のATでデザインされたヌクレオチド69490-69511)であった。該プライマー内の固定核酸オリゴヌクレオチド(LNA; Sigma-Proligo, Boulder, CO.)は(L)で示される(Vester and Wengel, Biochemistry 2004; 43: 13233-13241)。このプライマーは、SACOL0058の検出のために上記のようなPCR条件でATreg-2プライマーと結合したが、67℃で30秒間のアニーリング温度及び5 UのTaqポリメラーゼは、1,366 bpの大きさの産物を与えた。
【0046】
PVL、SACOL0058及びAT繰り返しの数を同時に検出するためのマルチプレックスPCRは、SACOL0058について、但し以下の濃度のプライマーを用いて行った:1反応につき、luk-PV-1、luk-PV-2及び0.05 μMのATreg-1、0.75 μMのATreg-2、0.5 μMのlnaAT、及び5 UのTaq DNAポリメラーゼ。
【0047】
増福反応は、1 X Tris-ホウ酸塩-EDTA (TBE) 緩衝液でのアガロースゲル電気泳動(1.5% SeaKem LE [FMC BioProducts, Rockland, Maine])によって視覚化した。
【0048】
ABI Prism(登録商標)3100 Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて、クレートン大学分子生物コア施設でPCTG産物をシークエンスした。
【0049】
結果
名称 USA300 AT-繰り返し配列の同定。MRSA単離物内のSCCmec染色体体領域は、組換え物であり、様々なSCCmec型を生じることが知られている(Hanssen and Ericson Sollid, FEMS Immunol Med Microbiol, 2006; 46:8-20)。本実施例は、SCCmecに直接隣接するゲノム領域のUSA300-特異的配列に焦点を当てている。これらの領域はまた高率の組換えに供されることがあるためである。
【0050】
様々なプライマーを用いて、SCCmecのorfXサイドの上流の約3 kbのゲノム配列の分析は、試験した30のUSA300-0114(CC8: ST8)株のすべてについて100%のホモロジーを示した。加えて、配列は、7個の非-USA300黄色ブドウ球菌ゲノム(MW2、COL、Mu50、N315、NCTC8325、MRSA252、及びMSSA476)と類似していた(世界的ウェッブ ncbi.nlm.nih.gov参照)。しかしながら、J1-SCCmec-染色体接合部を超えて伸びる3.3 Kbのゲノム配列の分析は(Ito他, Drug Resist. Updat, 2003; 6: 41-52)、試験したすべてのUSA300単離物においてアデニン-チミジン塩基対の6又は8反復のいずれかを含む領域を明らかにした。黄色ブドウ球菌株COL(CC8: ST250)との配列比較は、保存的仮想遺伝子SACOL0058内の、J1-SCCmec-染色体接合部から約1.4 kb下流のAT-繰り返し領域を見つけた。しかしながら、SACOL0058はCOL内の5個のAT繰り返しのみを含んだ。加えて、PCR分析は、PVL-陰性USA1OO、USA500及びUSA800単離物におけるSACOL0058の存在を明らかにした。SACOL0058は、原型的な市中感染USA400 MRSA株MW2(CC1: ST1)の染色体に存在しなかった。
【0051】
AT-繰り返し配列の存在及び程度を検出するための固定核酸PCR。典型的なオリゴヌクレオチドプライマーは、ヘアピン形成、プライマーダイマー化等を促進する複数の3'繰り返しの能力に起因して、AT-繰り返し検出には好適ではなかった。そのため、LNAオリゴヌクレオチドは、正確なハイブリダイゼーション、5個の繰り返しと6個以上の繰り返しとの識別を確実にするために使用した。この特異性は、LANオリゴヌクレオチドが、ストリンジェントなアニーリング条件下で改良された標的特異性を有する熱力学的に安定なプライマーを形成する2'-O、4'-Cメチレン橋で、修飾されるという事実から得られる(Vester and Wengel. 2004. Biochemistry 43: 13233-13241)。
【0052】
LNA-PCRプライマーは、6個以上の繰り返しを有する単離物における好適なリバースプライマーを使用したときに、正確なハイブリダイゼーション及びPCR増福を強く駆動するように、3'末端の6個のAT繰り返し及び5'末端近くのLNA-修飾塩基でデザインした(図1)。図2aに示されるように、増福は、6個以上(すなわち、6又は8個)のAT繰り返しを含む株のみで観察された。これらの結果は、DNA配列分析と100%一致した。LNA-PCRは、MLSTクローン複合体CC5及びCC8に属する様々な株(両グループの単一座変異体、及びCC8の二重又は三重座の変異体を含む)を試験するために使用した。USA300:ST8単離物に加えて、SACOL0058は、CC8:ST247 (イベリアのクローン)、CC8:ST250 (USA500)、CC5:ST5 (USA1OO及びUSA800) 並びにCC5:ST228単離体中で発見されたが、ブラジルのクローンCC8:ST239及びCC8:ST240の単離物には存在しなかった。しかしながら、先に述べたように、PVL遺伝子を有するUSA300のみは、6又は8個のAT繰り返しを有していた。試験したすべての単離物の結果を表1に示す。
【0053】
USA300 PFT単離物の迅速同定のためのマルチプレックスPCR。PCR反応の軽微な修飾を用いて、USA300単離物を他のMRSA株と識別する能力を有するマルチプレックスPCRアッセイをつくるためにプライマーを混合した。図2b、レーン2及び3に示すように、USA300株は、3つのPCR産物によって同定した:(i)SACOL0058、(ii) 6個以上のAT繰り返しのLNA型増福、及び (iii) PVL遺伝子。6個のAT繰り返しを含むUSA500:ST8単離物は、PVLバンドの非存在によってUSA300-0114単離物とは識別された(図2、レーン4)。mecA-陰性単離物、CRG-1112 (NCTC8325) は、SACOL0058(図2b、レーン4)については陽性対照であったが、株CRG-956 (USA400, MW2) は、PVLについて陽性対照として働いた(図2b、レーン6)。矛盾した増福産物が観察された場合に、それは、その些細な強度及びサイズの変化のために厄介であった。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
考察
USA300 CA-MRSAは、明確かつ顕著な臨床的関心事である。しかしながら、これらの株の決定的な定義は、完了するには専門家及び数日を必要とする試験とプロトコールとの組合せ(すなわち、PFGE、MLST、SCCmec、PVL)に典型的に関連している。加えて、近年、Diep他(Diep他, Lancet 2006; 367: 731-739)によって記載された新しく書かれたアルギニン異化可動性要素(ACME)は、SCCmec IVa型を有するUSA300株に存在するにすぎないように考えられる (McDougal他, Abstr. 46th Intersci. Conf. Antimicrob. Agents Chemother., abstr. C2-603, 2006) 。本明細書に記載のマルチプレックスアッセイは、他のMRSAから、様々なSCCmec IVサブ型を有するUSA300 CA-MRSA株を識別する(表1)。本実施例では、USA300単離物が、6又は8個のAT繰り返し、及びPVL遺伝子を含んだ。例によっては、関連する配列型、例えばUSA500 (ST8) を有する単離物は、6個以上のAT繰り返しを示したが、PVLと組み合わせては示さなかった。他の単離物(例えば、ST80)は、PVLをコードしたが、必ず、6個未満のAT繰り返しを含んだ。従って、マルチプレックスPCRによるこれらの要素を組合せた検出は、USA300単離物を、シークエンシングすることなく迅速かつ特異的に同定させる。任意のアッセイについて、この方法で検出することが困難であることを示す変異株が存在することがある。それにもかかわらず、本実施例の結果は、USA300 CA-MRS、すなわちA多くの病院及びコミュニティ施設での流行が増加している重大な病原体、を同定するための迅速、コスト効率の良い方法としてのLNAアッセイの能力を証明する。
【0058】
試験したCC8単離物では、SACOL0058は、ST8、ST247、1 247及びST250に存在したが、ST239及びST240では存在しなかった。このことは、Enright他によって考察されたMLST分析と一致した(Enright他, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 2002; 99: 7687-7692)。興味深いことに、SACOL0058はC5中にも見出された。
【0059】
Accelrys GCG(登録商標)トランスレーション・プログラム(San Diego, CA)による保存的仮想遺伝子SACOL0058のタンパク質配列分析は、5個のAT繰り返しを含むMRSA株が十分に機能的なタンパク質を有することがある、ことを示した。しかしながら、追加のAT繰り返し(すなわち、6個のAT繰り返し)は、アミノ酸286のストップコドンを産生する読み取り枠を生じた。8個のAT繰り返しについて、該タンパク質の最初の285のアミノ酸は、その後に分岐を有する元のアミノ酸に対する相同性を維持する。本実施例で提出したデータは黄色ブドウ球菌単離物中のSACOL0058の機能的役割に関する疑問を解決しないが、特にUSA300遺伝子型を含む株の中で該領域は保存され続けるようである。
【0060】
PVL遺伝子及びSACOL0058の存在についてPCRと組み合わせたAT-繰り返しPCRは、迅速、コスト効率の良い方法で、USA300 CA-MRSA株を同定する能力を有する。正確な結果は、最適化されたPCR条件に注意深く従って得られる。このことは、有用性のある診断上の及び調査データを、シークエンシングする必要なく迅速に収集させる。
【0061】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、ある条件下で、特定の利益を与えることがある発明の実施態様を意味する。しかしながら、同一又は他の条件下で他の実施態様も好ましい。更に、1以上の好ましい実施態用の記載は、他の実施態様が有用でないことを示唆しているのではなく、本発明の範囲から他の実施態様を排除するものではない。また、本明細書において、終点による数値範囲の記載は、その範囲内に含まれるすべての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、5等を含む)。
【0062】
本発明の上の説明は、本発明のすべての実施の開示された態様の各々を記載するものではない;むしろ、例証的実施態様のみを記載する。
【0063】
本明細書に引用された、すべての特許、特許出願及び刊行物、並びに電子的に入手可能な文献(例えば、例えばGenBank及びRefSeqにおけるヌクレオチド配列の提出、並びに例えばSwissProt、PIR、PRF、PDB、及びGenBank及びRefSeqでの注釈付きのコーディング部位からの翻訳におけるアミノ酸配列の提出)の完全な開示は、文献として援用される。先の詳細な説明及び実施例は、理解の明確性のみのために提供してきた。そこから不必要な限定は理解すべきでない。本発明は、示されかつ記載された正確な詳細に限定されない。当業者に明らかな変更がクレームによって定義される範囲内に含まれるだろう。
【0064】
すべての見出しは読み手の便宜のためであり、そのように特定しない限り、見出しに従うテキストの意味は、そのように特定しない場合には、限定するために使用してはならない。
【0065】
別個のステップを含む本明細書に開示された任意の方法について、ステップは、実行可能な順序で行うことができる。そして、好適には、2以上のステップの任意の組合せが同時に行われる。
【0066】
配列番号1-4、7、8:方性オリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5:合成オリゴヌクレオチドlnaATプライマーの配列
配列番号6:USA300 MRSA株内のAT繰り返し領域のゲノム配列
配列番号9:SACOL0058のヌクレオチド配列
配列番号10:SACOL0058の仮想タンパク質配列
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、黄色ブドウ球菌株COL(受入番号CP000046)に関してマルチプレックスPCRプライマーの位置を示す図である。黒色は、SCCmec耐性要素を示す。「DR」は、SCCmec要素に隣接する3'繰り返し領域を示す。灰色は、SACOL0058を含む3.3 kb染色体配列3' SCCmec及びAT繰り返し配列を示す。プライマーlnaAT (ヌクレオチド69490-69511) 及びATreg-2 (ヌクレオチド70831-70855) を用いるPCR増幅は、6個以上の繰り返しの存在を示す。SACOL0058は、ATreg-1 (ヌクレオチド69954-69977) 及びAtreg-2を用いて検出した。PVL遺伝子の増幅は、染色体内の別個の位置で起こる。下の黒色ボックスは、USA300 MRSA株 (配列番号6) で起こったであろうような、lnaATプライマー (配列番号5) とAT繰り返し配列とのハイブリダイゼーションを証明する。
【図2】図2のA及びBは、USA300 MRSA株のPCRアッセイを示す。図2のAは、USA300 MRSA株の固定核酸プライマー同定を示す。レーン1は、分子サイズ標準としての1 kb DNAラダーであり;レーン2及び3は、8及び6個の繰り返しをそれぞれ含む、USA300:ST8株 CRG-1130、CRG-1128であり;レーン4は、5個のAT繰り返しを含む、株CRG-930 (USA500:ST250) である。レーン5は、陰性対照である。図2のBは、マルチプレックスPCRアッセイが、他のMRSA由来のUSA300株を識別することを示す。レーン1は、分子サイズ標準としての1 kb DNAラダーであり;レーン2及び3は、8及び6個の各々の繰り返し、及びSACOL0058及びPVLを含む、USA300:ST8株 CRG-1130、CRG-1128であり(上のバンドはLNAプライマー増福産物 (1,365bp)を含み、真ん中のバンドは仮想的タンパク質SACOL0058産物 (933bp) を含み、下のバンドはPVL遺伝子産物 (433bp) を含む);レーン4は、5個のAT繰り返しを含む、株CRG-1112 (mecA-陰性) であり;レーン6は、MW2 (CC1:ST1)、SACOL0058陰性、PVLであり;レーン7は、陰性対照である。
【図3】図3は、保存的仮想SACOL0058遺伝子の、ヌクレオチド配列(配列番号9)及び仮想的タンパク質配列(配列番号10)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)のUSA300株を同定する方法であって、以下のステップ:
パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)毒素の遺伝子の存在又は非存在について、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析し;及び
保存的仮定遺伝子SACOL0058中のAT繰り返し領域の存在又は非存在について、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析すること、
を含み、
ここで、PVL毒素の遺伝子の存在、及び保存的仮想遺伝子SACOL0058中に少なくとも6個のAT繰り返しを含むAT繰り返し領域の存在は、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌が、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌のUSA300株であることを示す、前記方法。
【請求項2】
保存的仮想遺伝子SACOL0058中のAT繰り返し領域の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することが、以下のステップ:
AT繰り返し領域が存在する場合には、該遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーでポリメラーゼ連鎖反応を行い;及び
AT繰り返し領域を含む増幅されたDNA断片の存在又は非存在を分析すること、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
6個以上のAT繰り返しが存在するときに、前記オリゴヌクレオチドが、AT繰り返し領域を増幅するだけである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドプライマーが、フォワードプライマーに取り込まれた1以上の固定(locked)核酸塩基を有するフォワードプライマーを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記フォワードプライマーが、配列TGCTCGACGTCAATATATATATAT(配列番号7)を有し、1以上の核酸が固定核酸塩基である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記フォワードオリゴヌクレオチドプライマーが、TGLCTLCGALCGTCAALTALTATATATAT(配列番号5)(ここで、NLは固定核酸塩基を示す)を有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドが、配列5'-ACGATGATATTCCCGATAG-3'(配列番号8)又は5'-CAATTAACGATGATATTCCCGATAG-3'(配列番号4)を含む、請求項3記載の方法。
【請求項8】
増福されたDNA断片をシークエンシングすることを更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項9】
PVL毒素の遺伝子の存在又は非存在について、メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析することが、以下のステップ:
PVL毒素の遺伝子を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い;及び
PVL毒素の遺伝子の増幅されたDNA断片の存在又は非存在について分析すること、
を含む、前記方法。
【請求項10】
PVL毒素の遺伝子を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーが、5'-ATCATTAGGTAAAATGTCTGGACATGATCCA-3'(配列番号1)及び5'-GCATCAACTGTATTGGATAGCAAAAGC-3'(配列番号2)を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
増福されたDNA断片をシークエンシングすることを更に含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
USA300株以外のメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌が、6個未満のAT繰り返しを有し及び/又はPVL毒素の遺伝子を有さない、請求項1記載の方法。
【請求項13】
パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)毒素の遺伝子の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析し、及び保存的仮想遺伝子SACOL0058中のAT繰り返し領域の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析することが、単一の容器実験中で起こる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
保存的仮想遺伝子SACOL0058中のAT繰り返し領域の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析することが、以下のステップ:
AT繰り返し領域が存在する場合には、保存的仮想遺伝子SACOL0058内のAT繰り返し領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーでポリメラーゼ連鎖反応を行い、及び
AT繰り返し領域を含む増福されたDNA断片の存在又は非存在を分析すること、
を含み;
そして、PVL毒素の遺伝子の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌を分析するこが、以下のステップ:
PVL毒素の遺伝子を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーでポリメラーゼ連鎖反応を行い、及び
PVL毒素の遺伝子の増幅されたDNA断片の存在又は非存在を分析すること、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
保存的仮想遺伝子SACOL0058の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析することを更に含み、ここで、保存的仮想遺伝子SACOL0058の存在又は非存在についてメチシリン-耐性黄色ブドウ球菌DNAを分析することが、以下のステップ:
保存的仮想遺伝子SACOL0058の少なくとも1部分を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーでポリメラーゼ連鎖反応を行い;及び
保存的仮想遺伝子SACOL0058の少なくとも1部分を含む増幅されたDNA断片の存在又は非存在について分析すること、
を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ポリメラーゼ連鎖反応を行うことが、単一-容器実験中で起こる、請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
メチシリン-耐性USA300黄色ブドウ球菌遺伝子の単離されたDNA断片であって、6個以上のAT繰り返しを含む保存的仮想遺伝子SACOL0058のAT繰り返し領域を含む、前記DNA断片。
【請求項18】
前記AT繰り返し領域内に6〜8個の繰り返しが存在する、請求項17記載の単離されたDNA断片。
【請求項19】
配列TGLCTLCGALCGTCAALTALTATATATAT(配列番号5)(ここで、NLは固定核酸塩基を示す)を有する、単離されたオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項20】
5'-ACGATGATATTCCCGATAG-3'(配列番号3)及び5'-CAATTAACGATGATATTCCCGATAG-3'(配列番号4)からなる群より選ばれる単離されたオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項21】
黄色ブドウ球菌DNAの保存的仮想遺伝子SACOL0058のAT繰り返し領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマー対、及びPVL毒素の遺伝子を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマー、を含むキット。
【請求項22】
保存的仮想遺伝子SACOL0058の少なくとも1部分を増幅することができるプライマー対を更に含む、請求項21記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−515525(P2009−515525A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540210(P2008−540210)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/043780
【国際公開番号】WO2007/058939
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(506083040)クレイトン ユニバーシティ (6)
【Fターム(参考)】