説明

UV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法

(A)ポリカーボネートジオール、(B)3官能性アルコールおよび(C)ジイソシアネートを、(D)一般式CH=CRCO(OC2nR′または一般式CH=CRCO(OC2mOCOCH=CHで表わされる(メタ)アクリレート化合物および(E)アルキレン基が低級アルキル基で置換されたアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート化合物の存在下で反応させて得られたウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート溶液に、(F)水酸基含有(メタ)アクリレートを添加してウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応を行い、好ましくは粘度(25℃)が150,000〜1,000,000mPa・sのUV硬化型液状ポリウレタン樹脂を製造する。この際、ウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応の前または後には、(G)光重合開始剤および(H)分子量500〜2000のヒンダードフェノール系酸化防止剤が添加されて、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂を形成させる。このUV硬化型液状ポリウレタン樹脂は、高シール性に富む断面形状のHDD用ガスケット等を自動塗布ロボットで効率良く製造することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法に関する。さらに詳しくは、自動ロボットに適用可能であり、HDD用ガスケットの成形材料等として好適に使用し得るUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法に関する。
【背景技術】
(A)重量平均分子量Mw7,000〜40,000のウレタンアクリレートオリゴマー、(B)末端置換ポリエーテルまたはポリエーテルポリエステルのモノアクリレートおよび(C)光重合開始剤よりなり、25℃での粘度が4,000〜100,000センチポアズであるガスケット用組成物が提案されており(WO96/10594公報)、このガスケット用組成物は、自動塗布ロボットで塗布した後紫外線照射することで、発生ガス成分が少なく、精密機器向けのガスケットが簡便に加工できるとされているが、このような組成物粘度では高シール性が要求されるガスケット形状を簡便に加工することが難しい。すなわち、液粘度が低いため、シール性能を十分に発揮できるガスケットの断面高さを得ることができない。
そこで、無機充填剤の添加により高チキソトロピー性を付与した光硬化型液状材料を使用することで、高シール性に富む断面山形状のHDD用ガスケットを、自動塗布ロボットで効率良く製造する方法も提案されているが(特開2001−225392号公報、特開2003−105320号公報)、これらの方法では親水性の高い無機充填剤が存在することになるため、高湿度バリア性が求められる昨今のHDD用ガスケットの製造には不向きであるといえる。
【発明の開示】
本発明の目的は、高シール性に富む断面形状のHDD用ガスケット等を自動塗布ロボットで効率良く製造することが可能なUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法を提供することにある。
かかる本発明の目的は、(A)分子量500〜5000のポリカーボネートジオール、(B)3官能性アルコールおよび(C)ジイソシアネート化合物を、(D)一般式CH=CRCO(OC2nR′(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、R′は水素原子、アルコキシル基またはフェノキシ基であり、nは1〜12、pは1〜5の整数である)または一般式CH=CRCO(OC2mOCOCR=CH(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、mは2〜12、qは1〜14の整数である)で表わされる(メタ)アクリレート化合物および(E)アルキレン基が低級アルキル基で置換されたアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート化合物の存在下で反応させて得られたウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート溶液に、(F)水酸基含有(メタ)アクリレートを添加してウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応を行い、好ましくは粘度(25℃)が150,000〜1,000,000mPa・sのUV硬化型液状ポリウレタン樹脂を製造することによって達成される。この際、ウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応の前または後には、(G)光重合開始剤および(H)分子量500〜2000のヒンダードフェノール系酸化防止剤が添加されて、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂を形成させる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、これら両者の併用を妨げない。
UV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造に際しては、上記(A)、(B)および(C)成分を(D)および(E)成分の存在下で反応させてウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート溶液を調製することがまず行われる。
(A)成分のポリカーボネートジオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール類またはこれらのジオール類としゅう酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸との反応生成物と、ジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、フェニルトルイルカーボネート、フェニルクロロフェニルカーボネート、2−トリル−4−トリルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、炭酸エチレン等の芳香族系カーボネートまたは脂肪族系カーボネートとを重縮合反応して得られるもの、例えば次の一般式で表わされる化合物
HO(C2nOCOO)2nOH
や、アルキレンカーボネート(R′O)COとアルキレングリコールHOROHとのエステル交換反応で得られるもの、例えば次の一般式で表わされる化合物
HO(ROCOO)ROH
等の分子中にカーボネート構造を2つ以上有する化合物であって、その分子量が500〜5000、好ましくは1000〜3000のものが用いられる。これ以下の分子量のものを用いると、ガスケット材料に適したゴム弾性のものが得られず、一方これ以上の分子量のものを用いると、十分なゴム強度のものが得られない。
(B)成分の3官能性アルコールとしては、分子量が100〜2000、好ましくは122〜1000のものが用いられ、例えば一般式
CHCHC{CH〔OCHCH(CH)〕OH}
で表わされるトリメチロールプロパン(n=0)またはそのプロペンオキシド付加物が用いられる。また、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物等の他のアルキレンオキシド付加物を用いることもできる。3官能性アルコールを用いないと、後記比較例1の結果に示されるように、ガスケット加工性(塗出後の液だれ、硬化後の粘着性)や耐圧縮永久歪特性に劣るようになる。
また、(C)成分のジイソシアネート化合物としては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、トリレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが好んで用いられる。脂肪族ジイソシアネートを用いると、芳香族ジイソシアネートに比べ反応性が低く、未反応成分として残り易いためにジイソシアネート化合物として適当ではない。
これらの(A)、(B)、(C)3成分は、ウレタンオリゴマーを形成させるので、(A)成分100重量部当り(B)成分が約0.5〜10重量部、好ましくは約1〜8重量部、(C)成分が約20〜60重量部、好ましくは約25〜50重量部であって、NCO/OH当量比が1.01〜2.00、好ましくは1.05〜1.12となるような当量比で用いられる。
約40〜120℃、好ましくは約80〜100℃で行われるウレタンオリゴマーの形成反応に際しては、好ましくは(D)成分および(E)成分の共存下での反応が行われる。
(D)成分の(メタ)アクリレート化合物としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレートまたはこれらに対応するメタクリレート等が用いられ、好ましくは2−エチルヘキシルアクリレートが用いられる。また、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等も用いられる。これらの(メタ)アクリレート化合物は、ウレタンオリゴマー化反応の溶媒として作用すると共に、硬化物のガラス転移点を下げ、また極性(親水性)を低下させるという働きをなしている。これらの(D)成分は、(A)成分100重量部当り約10〜200重量部、好ましくは約20〜100重量部の割合で用いられる。
また、(E)成分のアルキレン基が低級アルキル基で置換されたアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の炭素数4〜12のアルキレングリコールのアルキレン基が炭素数1〜5の低級アルキル基でモノまたはジ置換されたアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、例えば2,2−ジ低級アルキル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、好ましくは硬度や吸水性の上昇の少ない2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)ジ(メタ)アクリレート等が用いられる。(E)成分は、オリゴマー化反応の溶媒として作用するばかりではなく、UV照射の際の硬化反応性やUV硬化物の特性をも改良し、これを用いないと後記比較例6の結果に示されるように、引張強さの低下、耐圧縮永久歪特性の低下、硬化後の粘着性などがみられるようになる。これらの(E)成分は、(A)成分100重量部当り約1〜20重量部、好ましくは約2〜15重量部の割合で用いられる。これに対し、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなエチレンオキサイド系のジ(メタ)アクリレートは、極性が高くなるため、高湿度バリア用途には不向きである。
これらの(D)、(E)各成分は、直接ウレタンオリゴマーの合成反応には関与しないため、ウレタンオリゴマーの合成後に添加することは可能である。しかしながら、ウレタンオリゴマーの合成反応では、重合(高分子量化)に伴う粘度上昇が著しく、反応を均一に進めるための攪拌・混合が困難となってくる。このため、ウレタンオリゴマーの合成反応に関与することなく、かつ最終的に希釈剤として添加する必要のある(D)、(E)各成分をウレタンオリゴマーの合成反応の前に添加しておき、これらの希釈剤溶液中でウレタンオリゴマーの合成反応が行われるという形式がとられている。
このような各成分から得られたウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート溶液には、前記(F)成分が添加され、(F)成分によるウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応が約40〜120℃、好ましくは約80〜100℃で行われる。
(F)成分の水酸化含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の分子量が100〜400のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが一般に使用される。水酸化含有(メタ)アクリレートは、その水酸基がウレタンオリゴマーの末端イソシアネート基と反応してウレタンオリゴマーの分子鎖末端をウレタン化すると共に、そこに(メタ)アクリレート基を導入するために用いられ、これを用いないと後記比較例7の結果に示されるように、UVによる硬化が不十分となる。この水酸化含有(メタ)アクリレートは、生成したウレタンオリゴマー中の末端イソシアネート基に対して、NCO/OH当量比が0.01〜0.90となるような割合で用いられる。
(G)成分の光重合開始剤としては、一般に用いられているベンゾインアルキルエーテル系、アセトフェノン系、プロピオフェノン系、アントラキノン系、チオキサントン系等の光重合開始剤、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、ビスアシルホスフィンオキサイド等が、生成したウレタンアクリレートオリゴマー100重量部当り約0.1〜10重量部の割合で用いられる。また、必要に応じて、なるべく少ない量の増感剤を併用することもできる。
また、(H)成分のヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリチルテトラキス〔3−(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオールビス〔3−(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔3−(3−第3ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等の分子量が500〜2000のものが用いられ、このような範囲の分子量を有するものであれば、市販品、例えばチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製品イルガノックス1010、イルガノックス1076等をそのまま用いることができる。分子量が500以下のものは、酸化防止剤自体がガス発生成分となり、例えばHDDのような精密機器部品への使用には不向きである。一方、分子量2000以上のものは、液状ポリウレタン樹脂との溶解性に乏しく、十分な酸化防止効果を発揮できない。これらの酸化防止剤は、生成したウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して約0.1〜10重量部、好ましくは約1〜5重量部の割合で用いられる。
(G)成分の光重合開始剤と(H)成分のヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応の前または後に添加することができ、またその一方をこの反応の前に、他方をこの反応の後に添加することもできる。ただし、ウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応後では非常に高粘度になるため、末端(メタ)アクリレート化反応の前に添加しておくことが好ましい。
ウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応の結果得られるUV硬化型液状ポリウレタン樹脂は、粘度(25℃)が150,000〜1,000,000mPa・s、好ましくは170,000〜800,000mPa・sを有するように調製される。このような粘度への調整は、
(1)ウレタンオリゴマーと反応性希釈剤である(D)成分(メタ)アクリレート化合物との比を調整する(後記比較例2参照)
(2)ウレタンオリゴマー自体の分子量を選択する
(3)ウレタンオリゴマー自体の構造を選択する(後記比較例5参照)
(4)反応性希釈剤である(D)成分(メタ)アクリレート化合物の構造(種類)を選択する
などの方法によって行われる。これよりも高粘度のものでは吐出性(加工効率)が悪く、一方これよりも低粘度のものでは塗布後の液だれがみられるばかりではなく、所望の断面山形状への成形が困難となる。
このように高粘度を示す本発明のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂は、自動塗布ロボット、例えばX−Y−Z軸塗布ロボットを用いて約30〜80℃、好ましくは40〜80℃の温度で金属板等の基板上に塗布した後、紫外線(UV)照射により硬化反応させ、次いで約100〜180℃での高温処理を施すことによって、ガスケットを製造することができる。紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等が用いられる。紫外線照射条件は、使用される照射装置によっても異なるが、一般には約1000〜10000mJ/cmの照射量、約10秒間乃至約5分間の照射時間が用いられる。紫外線照射は、不活性ガス雰囲気あるいは空気中雰囲気等の酸素濃度を低下させた雰囲気中で行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
次に、実施例について本発明を説明する。
【実施例1】
攪拌装置、冷却器および温度計を備えた四口フラスコに、ポリカーボネートジオール(クラレ製品クラレポリオールC−1015N;平均分子量約1000)100部(重量、以下同じ)、前記一般式で表わされるトリメチロールプロパンのプロピレンオキシド付加物(分子量400)1.3部、2−エチルヘキシルアクリレート93.2部および2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート5.0部を仕込み、80℃迄加熱した後、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート31.3部(NCO/OH当量比1.2)を加え、80〜100℃で60分間ウレタン化反応を行い、ウレタンオリゴマーのアクリレート溶液を得た。
このようにして得られたウレタンオリゴマーアクリレート溶液に、2−ヒドロキシエチルアクリレート9.7部(生成したウレタンオリゴマー中の末端イソシアネート基に対する当量比NCO/OH 0.5)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.5部およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製品イルガノックス1010)2.5部を加え、80〜100℃で60分間ウレタンオリゴマーの末端アクリレート化反応を実施し、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂Aを得た。
【実施例2】
実施例1において、2−エチルヘキシルアクリレートの代りに、フェノキシエチルアクリレート93.2部を用い、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂Bを得た。
比較例1
実施例1において、トリメチロールプロパン誘導体を用いずに、2−エチルヘキシルアクリレート量を88.1部に、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート量を4.6部に、また4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート量を26.3部にそれぞれ変更し、ウレタンオリゴマーのアクリレート溶液を得た。
このようにして得られたウレタンオリゴマーアクリレート溶液に、2−ヒドロキシエチルアクリレート8.2部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.3部およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010)2.3部を加え、80〜100℃で60分間ウレタンオリゴマーの末端アクリレート化反応を実施し、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂Cを得た。
比較例2
実施例1において、2−エチルヘキシルアクリレート量を44.3部に、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート量を4.0部にそれぞれ変更し、ウレタンオリゴマーのアクリレート溶液を得た。
このようにして得られたウレタンオリゴマーアクリレート溶液に、2−ヒドロキシエチルアクリレート8.0部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0部およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010)2.0部を加え、80〜100℃で60分間ウレタンオリゴマーの末端アクリレート化反応を実施し、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂Dを得た。
比較例3
実施例1において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加せずに、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂Eを得た。
比較例4
実施例1において、低分子量タイプのヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製品イルガノックス1135;分子量約400)が2.5部用いられ、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂Fを得た。
比較例5
実施例1において、ポリカーボネートジオールの代りに、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とから導かれたポリエステルポリオール(クラレ製品クラレポリオールP−1010;平均分子量約1000)を同量用い、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂Gを得た。
比較例6
実際例1において、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレートを用いずに、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂Hを得た。
比較例7
実際例1において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを用いずに、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂Iを得た。
以上の実施例および各比較例で得られたUV硬化型液状ポリウレタン樹脂A〜Iをそれぞれガラス製型に流し込み、その後直ちに8000mJ/cmの照射量で2〜3分間紫外線照射し、次いで150℃で7時間高温処理して、硬さ、引張特性、圧縮永久歪、吸水性および発生ガス量評価用のシート(厚さ2mm)を得た。
硬さ、引張特性:JIS K6253,JIS K6251準拠
圧縮永久歪:JIS K6262準拠
吸水性:室温の水中に24時間浸漬し、そのときの重量増加率を測定
発生ガス量:短冊状に切断した試験片約1.5gを動的ヘッドスペース法で、110℃、18時間の条件下で熱抽出し、GC/MSを用いて発生ガス量を測定
また、UV硬化型液状ポリウレタン樹脂A〜Iをそれぞれ、内径1.43mmのノズルを接続した自動塗布ロボットを用い、60℃に加温しながら、吐出圧100kPa、描画速度40mm/秒の条件下で、長方形(70×100mm)アルミニウム板の四辺外周内側に沿って、ガスケット状軌跡を描く線状体を断面山形状となるように塗布した後、直ちに照射量8000mJ/cm、照射時間15秒間での紫外線照射および150℃、7時間の高温処理を順次行い、擬似ガスケットカバーを得た。
この際、加工効率を示す吐出性(○:良好、×:悪い)、塗布後の液だれの有無、硬化後の粘着性(○:タックなし、×:タックあり、××:タック大)および加工硬化されたガスケットの形状(高さ/幅比)を評価した。
得られた結果は、次の表に示される。


なお、末端アクリレート化していない比較例7のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂Iでは、25℃の液粘度が40×10mPa・s、吐出性(加工効率)○、塗出後の液だれなし、硬化後の粘着性××であったが、UVによる硬化が不十分なため、硬化後の特性値の測定ができなかった。
【産業上の利用可能性】
本発明に係るUV硬化型液状ポリウレタン樹脂は、自動塗布ロボットを用いて高温で金属板上等に塗布することにより、断面形状が十分な高さの山形状のものを得ることができ、しかもUV照射ランプを用いた硬化工程における高温環境下でも液だれがなく、塗布直後の高い断面山形状を維持させることが可能であり、結果として高さ/幅比が大きく、高さの高い断面山形状のガスケット、より具体的には金属基板と接する部分の幅が約0.5〜3.0mm、金属基板面からの高さが約0.5〜2.0mmで、高さ/幅比が0.5〜2.0程度の断面山形状のガスケット、換言すればシール性の高いガスケットを得ることを可能としている。
また、このような組成を有するUV硬化型液状ポリウレタン樹脂は、反応性希釈剤成分である特定構造のモノ(メタ)アクリレートが持つ適度の極性基の存在により、酸化皮膜を有する金属基板との接着性が高く、金属基板、特にステンレス鋼板へのクロメート処理等を必要とはせず、また塗布面への接着剤処理やプライマー処理といった特別の工程を必要とせず、直接金属基板への塗布およびUV照射するだけで、強力な接着力を得ることができる。
さらに、このようにして得られたガスケットは、ポリカーボネート構造のもつ高い分子間凝集力により、低吸水性・高湿度バリア性をも示し、また耐熱性にもすぐれており、特に特定構造の酸化防止剤を添加することで耐熱性はさらに向上し、高温処理しても熱分解することなく未反応低分子成分のみの除去が可能となり、こうして得られた低アウトガス性ガスケットはHDD用等の精密機器での使用に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子量500〜5000のポリカーボネートジオール、(B)3官能性アルコールおよび(C)ジイソシアネート化合物を、(D)一般式CH=CRCO(OC2nR′(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、R′は水素原子、アルコキシル基またはフェノキシ基であり、nは1〜12、pは1〜5の整数である)または一般式CH=CRCO(OC2mOCOCR=CH(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、mは2〜12、qは1〜14の整数である)で表わされる(メタ)アクリレート化合物および(E)アルキレン基が低級アルキル基で置換されたアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート化合物の存在下で反応させて得られたウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート溶液に、(F)水酸基含有(メタ)アクリレートを添加し、ウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応を行うことを特徴とするUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項2】
(G)光重合開始剤および(H)分子量500〜2000のヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加した後、ウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応が行われる請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項3】
ウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応が行われた後、(G)光重合開始剤および(H)分子量500〜2000のヒンダードフェノール系酸化防止剤が添加される請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項4】
(G)光重合開始剤および(H)分子量500〜2000のヒンダードフェノール系酸化防止剤の一方をウレタンオリゴマーの末端(メタ)アクリレート化反応の前に添加し、他方をこの反応の後に添加する請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項5】
(B)成分の3官能性アルコールがトリメチロールプロパンまたはそのアルキレンオキシド付加物である請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項6】
(B)成分の3官能性アルコールが(A)成分のポリカーボネートジオール100重量部当り0.5〜10重量部の割合で用いられる請求項1または5記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項7】
(C)成分のジイソシアネートが芳香族ジイソシアネートである請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項8】
(C)成分のジイソシアネートが(A)成分のポリカーボネートジオール100重量部当り20〜60重量部の割合で、かつNCO/OH当量比が1.01〜2.00となる割合で用いられる請求項1または7記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項9】
(D)成分の(メタ)アクリレート化合物が(A)成分のポリカーボネートジオール100重量部当り10〜200重量部の割合で用いられる請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項10】
(E)成分が2,2−ジ低級アルキル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレートである請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項11】
(E)成分の低級アルキル基置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート化合物が(A)成分のポリカーボネートジオール100重量部当り1〜20重量部の割合で用いられる請求項1または10記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項12】
(F)成分の水酸基含有(メタ)アクリレートが生成したウレタンオリゴマー中の末端イソシアネート基に対して、NCO/OH当量比が0.01〜0.90となる割合で用いられる請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項13】
(G)成分の光重合開始剤が生成したウレタンアクリレートオリゴマー100重量部当り0.1〜10重量部の割合で用いられる請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項14】
(H)成分のヒンダードフェノール系酸化防止剤が生成したウレタンアクリレートオリゴマー100重量部当り0.1〜10重量部の割合で用いられる請求項1記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂の製造法。
【請求項15】
請求項1記載の方法で得られた、粘度(25℃)が150,000〜1,000,000mPa・sのUV硬化型液状ポリウレタン樹脂。
【請求項16】
ガスケット成形材料として用いられる請求項15記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂。
【請求項17】
HDD用ガスケット成形材料として用いられる請求項16記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂。
【請求項18】
自動塗布ロボットに適用可能な請求項15、16または17記載のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂。
【請求項19】
請求項15のUV硬化型液状ポリウレタン樹脂を30〜80℃の温度で基板上に塗布し、紫外線照射して硬化反応させ、次いで100〜180℃で高温処理を施すことを特徴とするガスケットの製造法。

【国際公開番号】WO2004/090010
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505296(P2005−505296)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004986
【国際出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】