説明

VAR機能と一体化した電気メータ

【課題】VAR発生ユニットを電気メータと一体化し、電力システムにおける電力品質を制御する。
【解決手段】一態様では電気メータ200は、交流回路網に対する複数の電力関連パラメータを求め、電気メータ200と一体化されたVAR発生ユニット205は、複数の電力関連パラメータを用いて交流回路網に所望の大きさの無効電力を注入し、力率を補正する。また、VAR発生ユニットは、複数の電力関連パラメータを用いて交流回路網内の電圧レベルの電圧安定化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に配電に関し、より詳細には電力システムにおける電力品質を制御するための、電気メータとボルトアンペア無効電力(VAR)発生ユニットとの一体化に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に配電は、需要家への電気の供給の最終段階である。通常は配電システム(たとえば変電所、電力線、柱上変圧器、配電線、電力量計など)は、送電システム(たとえば発電所、変圧器、高電圧送電線など)から発生された電気を運び、需要家に供給する。一般に送電および配電効率は、数メガワットの電力が失われるレベルにある。電力の損失は主として、技術的損失、非技術的損失、および商業的損失を含む多種多様な要因による。技術的損失はI2R損失、変圧器による損失、不平衡負荷、および過負荷による損失を含み、非技術的損失は、改竄されたメータ、未請求需要家、および電線からの直接盗電を含み、商業的損失はメータおよび料金請求の欠陥を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7274187号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様では、システムが提供される。システムは、交流回路網に対する複数の電力関連パラメータを求める電気メータを備える。電気メータと一体化されたVAR発生ユニットは、複数の電力関連パラメータを用いて交流回路網に所望の大きさの無効電力を注入し、力率を補正する。
【0005】
本発明の第2の態様では、交流回路網における電力品質を制御するためのシステムが開示される。本発明のこの態様ではシステムは、交流回路網に対する複数の電力関連パラメータを求める電気メータを備える。電気メータと一体化された静的VAR発生ユニットは、複数の電力関連パラメータを用いて交流回路網に所望の大きさの無効電力を注入し、力率を補正し、交流回路網内の電圧レベルの電圧安定化を行う。静的VAR発生ユニットは、コンデンサと、コンデンサを交流回路網に接続するスイッチシステムと、スイッチシステムによるコンデンサの交流回路網への接続を制御するコントローラとを備える。静的VAR発生ユニットは、電気メータの上流側または下流側の位置にて、交流回路網に所望の大きさの無効電力を注入する。静的VAR発生ユニットは、コンデンサの大きさと、コントローラによって実施される所定の制御方式との関数として求められる動作範囲内で電圧安定化を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】配電システムとの使用における電気メータの概観を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による、VAR発生ユニットと一体化された電気メータの概略図である。
【図3】本発明の他の実施形態による、VAR発生ユニットと一体化された電気メータの概略図である。
【図4】本発明の一実施形態による図2〜3に示されるスイッチシステムの詳細を示す概略図である。
【図5】図2〜4に示される本発明の実施形態による電気メータにおいて行われる機能のいくつかを示す概略ブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態による、VAR発生ユニットと並列に結合された電気メータを示す概略ブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による、電気メータから上流側に配置され、直列に結合されたVAR発生ユニットを示す概略ブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態による、電気メータから下流側に配置され、直列に結合されたVAR発生ユニットを示す概略ブロック図である。
【図9】本発明の別の実施形態による、VAR発生ユニットと一体化された別の電気メータの概略図である。
【図10】図9に示される本発明の実施形態による電気メータにおいて行われる機能のいくつかを示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の様々な実施形態は、VAR発生ユニットを電気メータと一体化することにより、電力システムにおける電力品質を制御することを対象とする。一実施形態ではVAR発生ユニットは、電気メータによって求められる複数の電力関連パラメータを用いて交流回路網に所望の大きさの無効電力を注入し、力率を補正する。他の実施形態ではVAR発生ユニットは、複数の電力関連パラメータを用いて交流回路網内の電圧レベルの電圧安定化を行う。他の実施形態ではVAR発生ユニットは、複数の電力関連パラメータを用いて交流回路網内の電圧レベルの所望の大きさの高調波補償を行う。一実施形態ではVAR発生ユニットは、電気メータによって求められる複数の電力関連パラメータを用いて交流回路網内に所望の大きさの有効電力を注入する。これらの実施形態ではVAR発生ユニットは、電気メータと並列にまたは直列に配置することができる。並列であろうと直列であろうとVAR発生ユニットは、電気メータの上流側または下流側に配置することができる。他の実施形態では、電気メータおよびVAR発生ユニットは、所定の電力損失の場合に交流回路網内の電圧を持続するためにライドスルー構成要素を有するように構成することができる。他の実施形態では、電気メータおよびVAR発生ユニットは、交流回路網に追加の電力を注入する電力注入装置(たとえば、電池)を有するように構成することができる。他の実施形態では、電気メータおよびVAR発生ユニットは、交流回路網に対する複数の電力関連パラメータを求めるために電気メータによって用いられる、所定の電気的パラメータを測定する、交流回路網内に配置された測定デバイス(たとえば電圧検出デバイス、および電流センサ)と共に構成することができる。
【0008】
本発明の様々な実施形態の技術的効果には、電力システムにおける力率、および需要家に対する電力品質(たとえば信頼性、および需要家の快適性)の改善が含まれる。本発明の様々な実施形態に関連する他の技術的効果には、電力システムでの電力の損失の低減、ならびに送電および配電効率の改善が含まれる。
【0009】
図面を参照すると図1は、ユーティリティ供給者120および需要家ユーティリティ線130との使用における、電気メータ110を有する配電システム100の概観を示す概略図である。図1に示されるように、電気メータ110は需要家ユーティリティ線130に結合され、需要家ユーティリティ線130からはユーティリティ供給者120からの電気サービス(たとえば、電力供給)が受け取られる。図を容易にするために配電システム100は、変電所、電力線、柱上変圧器、配電線を含まずに示されているが、当業者には配電システムは、これらの構成要素およびここに列挙されていないその他を有し得ることが理解されることに留意されたい。電気メータ110は、需要家ユーティリティ線130に対する電気使用量および/または需要情報を監視し記憶することができる。電気メータ110はさらに、需要家ユーティリティ線130に対するステータス情報を監視し記録することができる。ユーティリティ供給者120は、信号経路140を通して電気メータ110と対話することができる。信号経路140には、有線および無線の多種多様な方法を利用することができる。たとえば電気メータ110は、電話線、自動検針(AMR)システム、光ポート、Recommended Standard(RS)−232ライン、無線システム、電力線搬送(PLC)を通して、または他の通信の手段を通して通信することができる。さらにハンドヘルドデバイスなどの受信デバイスも、電気メータ110と通信することができる。これらの受信デバイスは、その後に、収集した情報をユーティリティ供給者120に通信することができる。受信デバイスの例は、電話などのセルラデバイス、携帯情報端末(PDA)、ノートブックコンピュータ、専用の受信器、またはハンドヘルドデバイスを含むことができる。受信デバイスおよびそれらの態様はまた、自動検針システムで利用されるものを含む移動車両に組み込むことができる。これらのタイプの受信デバイスは、1つまたは複数の電気メータ110を見に行く職員によって利用することができる。
【0010】
本発明の一実施形態では電気メータ110は、電力システムにおける電力品質を制御するようにVAR発生ユニットと一体化される。本明細書で用いられる、VAR発生ユニットを電気メータ110と一体化することとは、電気メータ110内に組み込まれたVAR発生ユニットを有する、外部的にメータに結合されることを含むことができ、またはメータ内に組み立てられたいくつかの構成要素およびメータの外部に結合されたいくつかの構成要素を有することができる。さらに本明細書にて述べられる様々な実施形態との関連において用いられる「VAR発生」という用語は、VAR発生、VAR吸収、およびVAR発生ユニットの補助システムへの接続の場合には有効電力の発生および吸収(たとえば電池の放電または再充電、太陽電池パネルからラインへの電力の注入)を含む。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態による、VAR発生ユニット205と一体化された電気メータ200の概略ブロック図である。図2に示されるように電気メータ200は、ラインL1、L2、L3、およびNを通してユーティリティ線210に結合される。図2はラインL1、L2、L3、およびNを通してユーティリティ線210に結合された電気メータ200を示しており、これは工業用途(すなわち、3相)に応用可能であるが、当業者には電気メータ200は、ラインL1およびNを有する住宅用途(すなわち、単相)、および多相の用途においてユーティリティ線210に結合できることが理解されよう。
【0012】
図2に示されるように電気メータ200は、ラインL1、L2、およびL3での電流を測定する電流測定デバイス215を含む。一実施形態では電流測定デバイス215は、変流器とすることができるが、当業者には、たとえばホール効果センサ、分流器、ロゴスキーコイル、および光ファイバ電流センサなどの他の電流測定デバイスを用い得ることが理解されよう。測定電流信号を表す出力は、電流測定デバイス215のそれぞれからメータマイクロプロセッサ220に供給される。
【0013】
電流測定デバイス215から測定電流信号を受け取ることに加えて、メータマイクロプロセッサ220は、電気メータ200の内部または外部に配置することができる他の測定デバイス(図示せず)から供給される他の測定値を受け取ることができる。メータマイクロプロセッサ220によって受け取ることができる他の入力の非網羅的な列挙には、電圧測定値、相電圧測定値、遠隔切断リレーステータス信号、負荷制御リレーステータス信号、電池ステータス信号、リセット信号、アーミング信号、メータ上のいずれかの押しボタンからのテスト信号、端子カバー取り外し検出信号、ならびに自動検針(AMR)、電力線搬送通信(PLCC)、WiFiなどのメータの通信媒体に関連する任意の信号が含まれる。
【0014】
測定信号の受け取りに応答して、メータマイクロプロセッサ220は、以下に説明するように、電力品質を制御するのに用いられる電力関連パラメータを求めるために、このデータに対して様々な処理動作を行う。当業者には、以下に述べる信号処理動作の任意のものを行うために電気メータ200の内部に2つ以上の処理ユニットが存在し得ることが理解されよう。利用することができる計測処理ユニットの例示の非網羅的な列挙には、システムオンチップ(SOC)計測チップ、および用途向け処理ユニット(applications processing unit)が含まれ、これらは共に市販されている。
【0015】
図2は電気メータ200はさらに、電力量計測デバイスからの消費量、診断、およびステータスデータを自動収集し、そのデータを課金、トラブルシューティング、および分析のために中央データベース(図示せず)に伝達するのを容易にするAMR構成要素225を含むことを示している。AMR構成要素225は、電流測定デバイス215および他の測定デバイスからの測定データ、およびメータマイクロプロセッサ220によって行われる様々な消費量計算値を、遠隔の場所(図示せず)に供給する。電気メータ200と遠隔サイトの間の通信を容易にするために、電話方式のプラットフォーム(有線および無線)、無線周波数(RF)、または電力線伝送をベースとするハンドヘルド、モバイル、およびネットワーク技術を用いることができる。
【0016】
図2に示されるように電気メータ200はさらに、メータは作動状態で設置されたままとするが、メータに結び付けられた需要家から電気サービスを取り除くことを可能にする切断スイッチ230を含む。図に示されていないが切断スイッチ230は、スイッチの遠隔作動を可能にする双方向通信デバイスを有することができ、それにより電気サービスを再接続および切断することができる。
【0017】
当業者には、本発明の様々な実施形態の例示を単純にするために、図2には電気メータ200に関連するすべての特徴および機能は示されていないことが理解されよう。たとえば当業者には、電気メータ200は、図2に示されるもの以外に他のリレーを有し得ることが理解されよう。加えて電気メータ200は、異なる電気サービスを測定するように構成することができる。また電気メータ200は、様々なパラメータを表示するためのLCDまたは他の手段を有することができる。電気メータ200はまた、メータマイクロプロセッサ220に十分な電力が供給されているかどうかなどの、異なる条件を検出するための追加の検出回路をもつこともできる。電気メータ200が含むことができる他の構成要素には、データおよび命令を記憶するためのメモリ、通信インターフェース、電源、および様々なスイッチがある。
【0018】
図2に戻ると、データバス235を通じて電気メータに結合されたVAR発生ユニット205は、複数の電力関連パラメータを用いて電力システムの交流回路網(すなわちラインL1、L2、およびL3)に所望の大きさの無効電力を注入し、力率を補正する。加えてVAR発生ユニット205は、複数の電力関連パラメータを用いてラインL1、L2、およびL3での電圧レベルの電圧安定化を行う。さらにVAR発生ユニット205は、複数の電力関連パラメータを用いてラインL1、L2、およびL3での電圧レベルの所望の大きさの高調波補償を行う。加えてVAR発生ユニット205は、複数の電力関連パラメータを用いて交流回路網に有効電力を注入することができる。所望の大きさの無効電力または有効電力の注入、力率の補正、電圧安定化の実行、および高調波補償の注入の、より詳細な説明は以下で述べる。
【0019】
図2に示されるようにVAR発生ユニット205は、コンデンサ240などの蓄積素子、コンデンサをラインL1、L2、およびL3に接続するスイッチシステム245、およびスイッチシステム245によるコンデンサ240のラインL1、L2、およびL3への接続を制御するコントローラ250を含む。以下は、コンデンサ240、スイッチシステム245、およびコントローラ250についてのより詳細な説明、ならびにVAR発生ユニット205を形成するためにも用いることができる様々な構成である。一実施形態ではVAR発生ユニット205は、静的VAR発生ユニットとすることができる。VAR発生ユニット205は電気メータ200と一体化されるので、これは小型の静的VAR発生ユニット、または超小型の静的VAR発生ユニットとすることができる。
【0020】
図2はさらに、電気メータ200およびVAR発生ユニット205は、交流回路網での所定の電力損失の場合に、交流回路網内の電圧を持続するために用いられるライドスルー構成要素255を有するように構成することができる。図2に示されるようにライドスルー構成要素255は、ライドスルーコンデンサ260または他の形の蓄積素子を含むことができる。他の実施形態ではライドスルー構成要素255は、供給源270およびDC/DCコンバータ275から形成される電池システム265に結合されたライドスルーコンデンサ260を備えることができる。当業者には、2つ以上の電池265を用い得ることが理解されよう。他の実施形態ではライドスルー構成要素255は、ライドスルーコンデンサ260なしで電池システム265を備えることができる。以下は、ライドスルー構成要素255、およびそれがどのようにラインL1、L2、およびL3での電圧を持続するために用いることができるかについてのより詳細な説明である。
【0021】
他の実施形態では電池265は、交流回路網に追加の電力を注入する電力注入装置として働くように、直接または間接に、電気メータ200およびVAR発生ユニット205と共に用いることができる。電池265の使用が適する1つのシナリオは、需要家が、完全なバックアップ発電機を有することを必要としない、バックアップ機能をもつことを望む場合である。この実施形態では電池265は、非限定的に電池、太陽電池、燃料電池を含む供給源から形成することができる。以下は、電池265、およびそれがどのようにラインL1、L2、およびL3に追加の電力を注入するために用いることができるかについてのより詳細な説明である。
【0022】
図3は、本発明の他の実施形態による、VAR発生ユニット205と一体化された電気メータ200の概略ブロック図である。具体的にはこの実施形態では、電気メータ200およびVAR発生ユニット205は、複数の電力関連パラメータを求めるために電気メータによって用いられる、所定の電気的パラメータを測定する、交流回路網(ラインL1、L2、およびL3に関する)内に配置された測定デバイス300と共に構成される。図3では、測定デバイス300は、ラインL1、L2、およびL3での電流を測定する電流測定デバイス305を含む。一実施形態では、電流測定デバイス305は変流器とすることができるが、当業者には、たとえばホール効果センサ、分流器、ロゴスキーコイル、および光ファイバ電流センサなどの他の電流測定デバイスを用い得ることが理解されよう。さらに当業者には、測定デバイス300は、その測定値を電気メータ200に出力する他のデバイス(たとえば電圧検出デバイス、相電圧検出デバイスなど)を含み得ることが理解されよう。
【0023】
図4は、本発明の一実施形態による、図2および図3に示されるスイッチシステムの詳細を示す概略ブロック図である。図4の実施形態に示されるように、スイッチシステムは、任意のタイプの通常のスイッチとすることができるスイッチSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、およびSW6から形成されるフルブリッジインバータスイッチを含む。スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、およびSW6は、それぞれインダクタI1、I2、およびI3から形成される誘導性結合接続を通じて、コンデンサ240をラインL1、L2、およびL3に接続する。具体的には、スイッチSW1およびSW2はインダクタI1を通じてラインL1に結合され、スイッチSW3およびSW4はインダクタI2を通じてラインL2に結合され、スイッチSW5およびSW6はインダクタI3を通じてラインL3に結合される。動作時はコンデンサ240は、ラインL1によりSW1およびSW2、ラインL2によりSW3およびSW4、ラインL3によりSW5およびSW6を閉じることにより力率補正静電容量値に設定される。図4に示される構成は、適切な位相と振幅の擬似正弦波波形を供給するように、スイッチSW1〜SW6を適切に制御することによって、所望の大きさの無効電力または有効電力を注入し、力率を補正し、電圧安定化を行うことができる。一実施形態では図4に示される構成は、メータ200からの測定した高調波成分を用い、どのレベルの高調波補償を実施するかをコントローラ250に決定させることにより、高調波補償電流を注入することができる。
【0024】
図5は、本発明の一実施形態による、図2〜4に示されるメータマイクロプロセッサ220において行われる機能のいくつかを示す概略ブロック図である。具体的には図5は、交流回路網内に実装された様々な測定デバイス(たとえば、電流および電圧測定デバイス)によって供給される値に基づいて上述の複数の電力関連パラメータを求めるために、メータマイクロプロセッサ220によって行われる処理機能のいくつかを示す。メータマイクロプロセッサ220によって行われる処理機能のそれぞれは、論理構成要素600、605、610、615、620、625、630、および635によって表される。
【0025】
メータマイクロプロセッサ220によって行われる処理機能の1つは、電気メータ200がユーティリティ線接続に関連付けられた、電力システムの電力量消費を求めることを含む。図5に示されるように、論理構成要素600は、この機能を行う。一般に電力量消費は、負荷側電圧と電流の関数として求められる。一実施形態では電力量消費は、特定の時間にわたって瞬時電圧と電流の積を収集することによって求められる。始めに、電圧および電流値の瞬時測定サンプルから、式Wattsi=Vi×Ii(ただし「V」は電圧を表し、「I」は電流を表し、「i」は瞬時値を表す)を用いて瞬時電力すなわちワットが算出される。以下の式により、特定の期間にわたって電力の瞬時値が合計されて電力量消費すなわちワット時が得られる。
【0026】
【数1】

論理構成要素605は、電圧と電流の瞬時サンプル値から、需要家側での負荷の力率を求める。一実施形態では力率は、電圧と電流の瞬時サンプルデータのゼロクロスの時点の間の時間遅延を検出することによって求められる。電圧と電流の間の位相遅延がΦであるとき、力率は位相遅延の余弦として算出され、力率=cos(Φ)によって得られる。
【0027】
論理構成要素610は、有効電力および無効電力を求める。一般に有効電力および無効電力は、力率の関数として求められる。一実施形態では有効電力および無効電力は、以下の式すなわち、有効電力=Vrms×Irms×力率によって求められ、ただし力率はcos(Φ)として求められ、VrmsおよびIrmsは、メータマイクロプロセッサ220内にあるマイクロコントローラ(図示せず)にて算出されるライン電圧および負荷電流の二乗平均平方根値である。システムにおける無効電力は、力率を用いて、無効電力=Vrms×Irms×√(1−力率2)、すなわちVrms×Irms×sin(Φ)として計算される。力率、有効電力、および無効電力の計算式は、3相電力量計の場合は異なる形をとることに留意されたい。
【0028】
論理構成要素615は、電力システムが力率1にて動作するのを可能にするために必要なコンデンサ240(図2〜4)に対する力率補正静電容量値を求める。コンデンサ240(図2〜4)を力率1を近似する力率補正静電容量値に設定することにより、コンデンサ240は、ユーティリティから需要家側に供給される無効電力の大きさを制御することができる。これは需要家負荷によって引き出される電流を最小にするのに役立ち、システム効率を改善する。
【0029】
需要家側に供給される無効電力の大きさ制御することは、改善された力率により、同じ大きさの電力量を伝達するのに、低力率の場合に比べて負荷によって引き出される電流が低減されるので有益である。損失は電流の二乗に比例するので、電流消費の低減により、送電および配電損失は大幅に低減される。いくつかの場合では電気に対する経費は、有効電力のコストと無効電力のコストのように2つの部類に分けられる。低力率の負荷の場合は、同じ有効電力を伝送するための無効電力のコストが高くなる。無効電力経費は、電気的負荷を低減し、浪費される電力量を最小にし、効率を改善し、電気料金を低減する力率補正コンデンサの導入によって、著しく小さくすることができる。当業者には、力率1に到達する(たとえば1)ことは常には必要ないことが理解されよう。ほぼ1より大きな値に力率を増加することによって、コスト効率のより解決策を得ることができる。
【0030】
一実施形態では力率補正静電容量値は、負荷側電圧、電流、および力率の関数として求められる。一実施形態では力率補正静電容量値は、電気メータ200によって計算された無効電力と、値Ccapの静電容量によって供給することができる無効電力とが等しいと置くことによって求められる。必要な静電容量の値を求めるために用いることができる式は、Ccap=計算された無効電力/(Vrms2×ω)によって与えられ、ただし「ω」は2Πf(fは、一般に電源の周波数(たとえば50Hzまたは60Hzのいずれかとすることができる))として計算される。
【0031】
論理構成要素620は、需要家が受け取る電力量の品質の具体的な改善(たとえばフリッカの低減、機器始動時の過電圧の低減)を需要家にもたらす電圧調整を計算する。一般に電圧調整は、結合ポイントにて発生される無効電力量(定常状態および動的)の大きさを制御する、電圧測定値に対する閉ループ制御によって求められる。
【0032】
論理構成要素625は、ラインL1、L2、およびL3に注入されるべき高調波補償電流を計算する。一般に論理構成要素625は、メータ200内で測定された高調波成分を計算する。コントローラ250は、どのレベルの高調波補償をラインL1、L2、およびL3に注入するかを決定する。
【0033】
論理構成要素630は、フリッカ軽減スキームを計算する。不快な光強度の変動であるフリッカは、「大きな」時間変動負荷によって引き起こされる電力品質問題である。フリッカ軽減スキームは、ラインL1、L2、およびL3での高調波および電圧変動を補償するようになる。論理構成要素630は一般に、結合ポイントにて注入される無効電力を制御することによって、フリッカ軽減スキームを計算する。
【0034】
論理構成要素635は、スイッチ制御アルゴリズム/パターンを決定する。一般にスイッチ制御アルゴリズム/パターンは、所望の基本波波形(振幅および位相)を近似することを可能にするものであるが、高調波成分も可能である。論理構成要素635は、スイッチSW1〜SW6に適時にオンおよびオフ制御をもたらすことにより、スイッチ制御アルゴリズム/パターンを決定する。
【0035】
図5に関連して述べる機能に関して、当業者には、メータマイクロプロセッサ220は、本発明の様々な実施形態に関連して上述したものに加えて、他の処理機能を行い得ることが理解されよう。たとえばメータマイクロプロセッサ220は、電気メータ200の改竄、電気メータ200に関連する様々なリレーを閉じるまたは開くのに条件が適しているかどうか、ライン側電圧と負荷側電圧との間の位相関係、を判定することできる論理構成要素を有することができる。
【0036】
さらに当業者には、電気メータ200は、本明細書で前に述べたものより多くの機能を行い得ることが理解されよう。例として電気メータ200は、消費者による電気サービスの総使用量、サービスの使用率、ワットで示される電気量を求めることができる。これらは電気メータ200によって算出することができる使用統計のわずかな列挙のみである。他の良く知られた統計は、本発明の様々な実施形態の範囲に含まれる。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態による、VAR発生ユニット205と並列に結合された電気メータ200を示す概略ブロック図である。加えて図6は、ライドスルー構成要素255および電池バックアップ265が、VAR発生ユニット205と並列に結合されていることを示す。この並列構成内でVAR発生ユニット205は、電気メータ200の上流側または下流側の位置において、有効電流、無効電流を注入し、電圧レベルの電圧安定化を行い、電圧レベルの所望の大きさの高調波補償を行うことができる。上流側注入はユーティリティ用途に適しており、下流側注入は需要家用途に適している。図6での様々な注入位置は、データライン700、705、および710によって表される。具体的にはデータライン700は、需要家設備725に電力供給720を供給するユーティリティ線715に、電気メータ200の上流側の位置にて注入を行い、一方、データライン705および710は、電気メータ200の下流側で注入を行う。データライン700は、電圧、無効電力、高調波、フリッカなどの所望の制御変数の任意のものを制御し、改善し、または調節するために、電気メータ200の上流側で注入する。データライン705に関しては、注入は切断スイッチ230(図2〜4)の上流側となり得るので、注入は電気メータに帰還され、切断スイッチが開かれたときでも、需要家に電圧を制御するための柔軟性を与える。これは、バックアップ電力を電力供給720の状態および切断スイッチ230(図2〜4)の状態と協調させることができるように、電気メータ200の下流側で注入する、データライン710への変形である。図6に示されないが、電気メータ200に戻す注入、または需要家設備725に給電するユーティリティ線715への注入を容易にするために、スイッチング機構を用いることができる。この実施形態ではスイッチング機構は、需要家に複数の動作構成を提供するために用いられる。
【0038】
図7は、本発明の一実施形態による、電気メータ200から上流側に配置され、それに直列に結合された、VAR発生ユニット205を示す概略ブロック図である。この直列構成ではVAR発生ユニット205は、電気メータ200の上流側の位置において、有効電流、無効電流を注入し、電圧レベルの電圧安定化を行い、電圧レベルの所望の大きさの高調波補償を行うことができる。この実施形態では、完全なライドスルー機能を得ることが望ましい用途において、電気メータ200の上流側での注入を行うことができる。
【0039】
図8は、本発明の一実施形態による、電気メータ200から下流側に配置され、それに直列に結合されたVAR発生ユニット205を示す概略ブロック図である。この直列構成ではVAR発生ユニット205は、電気メータ200の下流側の位置にて、有効電流、無効電流を注入し、電圧レベルの電圧安定化を行い、電圧レベルの所望の大きさの高調波補償を行うことができる。この実施形態では、ユーティリティではなく需要家がその需要を制御することが望ましい用途において、電気メータの下流側での注入を行うことができる。
【0040】
図9は、本発明の他の実施形態による、VAR発生ユニットと一体化された他の電気メータの概略図である。この実施形態ではVAR発生ユニット900は、図2〜4に示される実施形態とは対照的に異なるスイッチシステムおよびコンデンサ構成を使用する。図9の実施形態に示されるように、スイッチシステムは、少なくとも1つのサイリスタ505から形成される電力電子スイッチ500を含む。用いることができるサイリスタの例としては、シリコン制御整流器(SCR)、およびトライオード交流(AC)スイッチ(TRIAC)が含まれる。一実施形態では電力電子スイッチ500は、逆並列接続されたサイリスタ、TRIAC、双方向スイッチ、および逆並列接続された単方向スイッチのうちの少なくとも1つから形成される。
【0041】
図9に示されるように駆動回路905は、コントローラ250からメータマイクロプロセッサ220によって求められた予め計算された(α)の点孤角を有する点孤角パルスを受け取る。駆動回路905は、点孤角パルスを用いてコンデンサ240を活動化する。コンデンサ240の制御に加えて、駆動回路905は、コンデンサ240からの電気メータ200の制御回路の分離をもたらす。駆動回路は、対応するコンデンサ240を駆動するのに用いることができる任意の良く知られた駆動回路とすることができる。あるいは、コンデンサ240を駆動するのに用いることができる駆動回路を設計することは、当業者の範囲内である。
【0042】
図9に示されるVAR発生ユニット900のこのトポロジーは、単相電力量計に適していることに留意されたい。当業者にはVAR発生ユニット900は、単相電力量計に限定されず、1、2、3、...N相システムに応用できることが理解されよう。たとえば3相電力量計の場合はVAR発生ユニット900は、ライドスルーコンデンサ260および電池バックアップシステム265を除いて図4に示されるVAR発生ユニット205の形をとることになる。
【0043】
図10は、図9に示される本発明の実施形態によるメータマイクロプロセッサ220において行われるいくつかの機能を示す概略ブロック図である。この実施形態ではメータマイクロプロセッサ220は、論理構成要素600、605、610、615、および640によって表される処理機能を含む。論理構成要素600(電力量消費を計算する)、605(力率を計算する)、610(有効電力および無効電力を計算する)、および615(力率補正静電容量値を計算する)は、図5に関連して上述したのと同じであり、したがって図10に示す実施形態に対する別の説明は述べない。
【0044】
論理構成要素640は、コンデンサ240(図9)を活動化するための点孤角パルス(α)を求める。一般に点孤角パルス(α)は、論理構成要素615によって求められる力率補正静電容量の関数として求められる。一実施形態では点孤角パルス(α)は、取り付けられた静電容量の最大値に対する必要な静電容量の値の関数、α=f(Ccap、Cinst)として求められ、ただし、Cinstはメータ内の取り付けられた静電容量の最大値であり、その値は製造の時点で電気メータ処理ユニットに供給されるようになる。
【0045】
本発明の様々な実施形態では、電気メータ200およびVAR発生ユニット205の諸部分は、専らハードウェアの実施形態、専らソフトウェアの実施形態、またはハードウェアおよびソフトウェア要素の両方を含んだ実施形態の形で実装することができる。一実施形態では、電気メータ200およびVAR発生ユニット205によって行われる処理機能は、非限定的にファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含むソフトウェアにて実装することができる。
【0046】
さらに、電気メータ200およびVAR発生ユニット205によって行われる処理機能は、コンピュータまたは任意の命令実行システム(たとえば処理ユニット)によってまたはそれに関連して使用されるためのコンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形をとることができる。この説明のために、コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、コンピュータまたは命令実行システムによってまたはそれに関連して使用されるためのプログラムを含むまたは記憶することができる、任意のコンピュータ可読記憶媒体とすることができる。
【0047】
コンピュータ可読媒体は、電子、磁気、光、電磁、赤外線、または半導体システム(または装置、またはデバイス)とすることができる。コンピュータ可読媒体の例としては、半導体または固体メモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、ハード磁気ディスク、および光ディスクが含まれる。光ディスクの現在の例には、コンパクトディスク−リードオンリメモリ(CD−ROM)、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)、およびデジタルビデオディスク(DVD)が含まれる。
【0048】
本明細書で用いられる専門用語は特定の実施形態の説明のためのみであり、本開示を限定するものではない。本明細書で用いられる単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明らかに示さない限り複数形も含むものである。さらに「comprises」(備える)、および/または「comprising」という語句は本明細書で用いられるときは、記載された特徴、整数値、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するものであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数値、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことが理解されよう。
【0049】
本開示についてその好ましい実施形態に関連して具体的に示し述べてきたが、当業者なら変形形態および修正形態を思い付くであろうことが理解されよう。したがって添付の特許請求の範囲は、すべてのこのような修正形態および変更形態を、本開示の趣旨に含まれるものとして包含するものであることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0050】
100 配電システム
110 電気メータ
120 ユーティリティ供給者
130 需要家ユーティリティ線
140 信号経路
200 電気メータ
205 VAR発生ユニット
210 ユーティリティ線
215 電流測定デバイス
220 メータマイクロプロセッサ
225 AMR構成要素
230 切断スイッチ
235 データバス
240 コンデンサ
245 スイッチシステム
250 コントローラ
255 ライドスルー構成要素
260 ライドスルーコンデンサ
265 電池
270 供給源
275 DC/DCコンバータ
300 測定デバイス
305 電流測定デバイス
500 電力電子スイッチ
505 サイリスタ
600 論理構成要素
605 論理構成要素
610 論理構成要素
615 論理構成要素
620 論理構成要素
625 論理構成要素
630 論理構成要素
635 論理構成要素
700 データライン
705 データライン
710 データライン
715 ユーティリティ線
720 電力供給
725 需要家設備
900 VAR発生ユニット
905 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流回路網に対する複数の電力関連パラメータを求める電気メータ(200)と、
前記電気メータ(200)と一体化されたVAR発生ユニット(205)であって、前記複数の電力関連パラメータを用いて前記交流回路網に所望の大きさの無効電力を注入し、力率を補正する、VAR発生ユニット(205)と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記VAR発生ユニット(205)が前記電気メータ(200)と並列に結合された、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記VAR発生ユニット(205)が前記電気メータ(200)と直列に結合された、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記VAR発生ユニット(205)が、コンデンサ(240)と、前記コンデンサ(240)を前記交流回路網に接続するスイッチシステム(245)と、前記スイッチシステム(245)による前記コンデンサ(240)の前記交流回路網への接続を制御するコントローラ(250)とを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記VAR発生ユニット(205)が、前記交流回路網内の電圧レベルの電圧安定化を行う、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記電圧安定化が、前記コンデンサ(240)の大きさと、前記コントローラ(250)によって実施される所定の制御方式との関数として求められる動作範囲内で行われる、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記VAR発生ユニット(205)が、前記交流回路網内の電圧レベルの所望の大きさの高調波補償を行う、請求項4記載のシステム。
【請求項8】
前記VAR発生ユニット(205)に結合され、前記交流回路網内の電圧を持続するライドスルー構成要素(255)をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記VAR発生ユニット(205)に結合され、前記交流回路網に追加の電力を注入する電力注入装置(265)をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
交流回路網における電力品質を制御するためのシステムであって、
前記交流回路網に対する複数の電力関連パラメータを求める電気メータ(200)と、
前記電気メータ(200)と一体化された静的VAR発生ユニット(205)であって、前記複数の電力関連パラメータを用いて前記交流回路網に所望の大きさの無効電力を注入し、力率を補正し、前記交流回路網内の電圧レベルの電圧安定化を行う、静的VAR発生ユニット(205)と
を備え、
前記静的VAR発生ユニット(205)は、コンデンサ(240)と、前記コンデンサ(240)を前記交流回路網に接続するスイッチシステム(245)と、前記スイッチシステム(245)による前記コンデンサ(240)の前記交流回路網への接続を制御するコントローラ(250)とを備え、前記静的VAR発生ユニット(205)は、前記電気メータ(200)の上流側または下流側の位置にて前記交流回路網に所望の大きさの無効電力を注入し、前記静的VAR発生ユニット(205)は、前記コンデンサ(240)の大きさと、前記コントローラによって実施される所定の制御方式との関数として求められる動作範囲内で前記電圧安定化を行う、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143139(P2012−143139A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−285350(P2011−285350)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】