説明

VEGF類縁体および使用方法

内皮細胞のVEGF媒介活性化または増殖を阻害する修飾VEGFタンパク質を開示する。この類縁体は、癌、炎症性疾患、眼疾患、および皮膚疾患などの血管新生関連疾患における内皮細胞のVEGF媒介性活性化を阻害するために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本出願は、血管新生に関連する病態および疾患の処置のための、血管新生を阻止または減少させるために血管内皮成長因子(VEGF)受容体アンタゴニストとしてのVEGF類縁体の設計および使用に関する。本出願はまた、KDRなどの天然受容体に対して受容体結合親和性が増加しているVEGF類縁体を開示する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年10月6日に出願された米国仮出願60/723,917および2006年5月25日に出願された米国仮出願60/808,106の利益を主張し、それらは、参照としてその全体が本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血管内皮成長因子(VEGF)類は、血管およびリンパ管の発育を調節する。それらは、低酸素状態と形質転換成長因子、インターロイキン類および血小板誘導成長因子などの成長因子による刺激とに応答して内皮細胞、造血細胞および間質細胞により主として産生される。
【0004】
哺乳動物において、VEGF類は、遺伝子ファミリーによりコードされ、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−Dおよび胎盤様成長因子(PlGF)を含む。関連の高いタンパク質としては、VEGF−Eと称されるオルフウィルスコード化VEGF様タンパク質およびVEGF−Fと称される一連のヘビ毒を含む。VEGF類およびVEGF関連タンパク質は、シスチンノット成長因子の血小板誘導成長因子(PDGF)スーパー遺伝子ファミリーのメンバーである。PDGFスーパー遺伝子ファミリーの全てのメンバーは、PDGFと高度の構造相同性を共有する(参照としてその全体が本明細書に組み込まれているU.S. Patent Application 09/813,398を参照)。
【0005】
VEGF−A、VEGF−BおよびPlGFは、主として血管形成を必要とするが、一方、VEGF−CおよびVEGF−Dは、リンパ管形成を必須とする。血管新生は、新規な血管またはリンパ管が、先在する血管から発生することによって形成する過程である。この過程は、VEGF類が、内皮細胞、内皮細胞のシグナル伝達活性化に対する受容体に結合する際に開始される。活性化内皮細胞は、既存の血管周囲の基底膜に小さな孔を溶解させる酵素を産生する。次いで内皮細胞は、新規な血管を形成するために既存の血管の溶解孔を介して増殖および遊走を開始する(Alberts et al., 1994, Molecular Biology of the Cell. Garland Publishing, Inc., New York, N. Y. 1294 pp)。
【0006】
3つのIII型受容体チロシンキナーゼは、新生血管中のVEGF類:fms様チロシンキナーゼ(Flt−1、VEGFR1としても知られている)、キナーゼドメイン受容体またはキナーゼ挿入ドメイン含有受容体(KDR、VEGFR2およびFlk−1としても知られている)およびFlt−4(VEGFR3としても知られている)により活性化される。KDRは、血管新生シグナル伝達において主要な受容体であるが、Flt−1は血管形態形成の調節に関連し、Flt−4はリンパ管形成を調節する。これらの受容体は、走化性を媒介する単球におけるFlt−1の発現などの2,3の例外を除いて内皮細胞に殆ど独占的に発現される(Barleon et al., 1996, Blood. 87: 3336-3343)。
【0007】
VEGF受容体は、Fms、KitおよびPDGF受容体と密接に関連する。それらは、7つの細胞外免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、膜間(TM)ドメイン、調節性膜近傍ドメイン、短ペプチドにより断続される細胞内チロシンキナーゼドメイン、キナーゼ挿入ドメイン、次いで下流シグナル伝達分子の補充に関与する幾つかのチロシン残基を担持する配列からなる。Flt−1およびKDRの細胞外ドメインの突然変異分析により、第二および第三のIg様ドメインは、それぞれリガンド結合および受容体二量化を明らかに調節する第一および第四のIgドメインとでVEGFの高親和性リガンド結合ドメインを構成することを示す(Davis-Smyth et al., 1998, J. Biol. Chem. 273: 3216-3222;Fuh et l., 1998, J. Biol. Chem. 273: 11197-11204;およびShinkai et al., 1998, J. Biol. Chem. 273: 31283-31288)。受容体チロシンキナーゼ類は、リガンド媒介受容体二量化の際に活性化される(Hubbard, 1991, Prog. Biophys. Mol. Biol. 71: 343-358;Jiang and Hunter, 1999, Curr. Biol. 9: R568-R571;およびLemmon and Schlessinger, 1998, Methods Mol. Biol. 84: 49-71)。VEGF受容体のシグナル特異性は、ニューロピリン類、硫酸ヘパリン、インテグリン類またはカドヘリン類などの共受容体の補充の際にさらに調節される。
【0008】
VEGF分子は、血管新生中に1つ以上のチロシンキナーゼ受容体と相互作用する。例えば、VEGF−Aは、主としてKDRおよびFlt−1を介して作用する。VEGF−CおよびVEGF−Dは、KDRおよびVEGFR3に特異的なリガンドである。PlGFおよびVEGF−Bは、Flt−1にのみに結合すると考えられている。ウィルス性VEGF−E変異体は、KDRを活性化する。VEGF−F変異体は、VEGFR3またはKDRのいずれかと相互作用する。
【0009】
2つの古典的受容体に加えて、VEGFの生物活性および血管新生を調節する幾つかの膜または可溶性受容体がある。例えば、ニューロピリン−1およびニューロピリン−2は、それぞれKDRおよびFlt−1の双方と相互作用し、これら受容体のシグナル伝達を刺激する。VEGF−A、VEGF−B、PlGF−2のアイソフォームは、ニューロピリン−1に結合することが示されている(Soker et al., 1998, Cell. 92: 735-745;Makinen et al., 1999, J. Biol. Chem. 274: 21217-21222;およびMigdal et al., 1998, J. Biol. Chem. 273: 22272-22278)。ニューロピリンと相互作用できるVEGFアイソフォーム、すなわち、エクソン7または6および7を有するこれらのアイソフォームもまた、硫酸ヘパリンと相互作用できる。
【0010】
VEGF−Aは、VEGFタンパク質について最良に特性化されているが、VEGF−AとKDRとFlt−1との間の相互作用の分子的根拠は、十分に理解されていない。VEGFR1は、KDRよりも50倍高い親和性でVEGF−Aに結合するが、KDRは、VEGF−A血管新生効果、すなわち、分裂促進性、走化性および管形成誘導の主要なトランスデューサであると考えられている。しかしながら、Flt−1が、造血および単球の補充において重要な役割を有する増殖証拠があり、腫瘍血管系に向かい、血管新生を促進し得る他の骨髄由来細胞がある(Hattori et al., 2002, Nature Med. 8: 841-849;Gerber et al., 2002, Nature. 417: 954-958;およびLuttun et l., 2002, Nature Med. 8: 831-840)。さらに、幾つかの場合、Flt−1は、腫瘍細胞により発現され、走化性シグナルを媒介でき、したがって可能性として癌増殖におけるこの受容体の役割を拡張する(Wey et al., 2005, Cancer. 104: 427-438)。
【0011】
単一のVEGF−Aホモダイマーは、2つのKDR受容体の二量化および細胞質部分の自己リン酸化を誘導する。以前の研究により、糖タンパク質ホルモンに対する相似性により、VEGF−Aの周辺ループにおける荷電アミノ酸残基もまた、そのそれぞれの受容体との高親和性静電的相互作用を提供する上で重要であることを示唆した(Szkudlinski et al., 1996, Nat. Biotechnol. 14(10): 1257-63;Fuh et al., 上記文献;Muller et al., 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94(14): 7192-7;Keyt et al., 1996, J. Biol. Chem. 271(10): 5638-46)。しかしながら、VEGF−Aにおける多くの突然変異は、受容体結合親和性に対して主要な効果を有さないことに注目すべきである。VEGFの周辺ループの突然変異により、本質的に機能喪失を生じている。さらに、以前のKDRに対して2倍超の結合親和性を増加させるようなアミノ酸置換がないように思われる。
【0012】
血管新生は、創傷治癒、心筋梗塞修復、および排卵などの有益な生物学的事象の原因である。一方、血管新生はまた、固形腫瘍の成長および転移などの疾患を引き起こすか、または寄与する原因となる(Isayeva et al., 2004, Int. J. Oncol. 25(2): 335-43;Takeda et al., 2002, Ann Surg. Oncol. 9(7): 610-16);アテローム硬化症、未熟児網膜症などの疾患に見られる眼の異常新血管新生、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、および加齢関連黄斑変性(Yoshida et al., 1999, Histol Histopathol. 14(4): 1287-94;Aiello, 1997, Ophthalmic Res. 29(5): 354-62);リウマチ様関節炎、骨関節炎、敗血症性関節炎などの慢性炎症病態;神経変性疾患(Ferrara, N., 2004, Endocr. Rev. 25: 581-611);胎盤機能不全、すなわち子癇前症(Ferrara、上記文献);および皮膚炎、乾癬、いぼ、皮膚悪性疾患、褥瘡性潰瘍、うっ血性潰瘍、化膿性肉芽腫、血管腫、カポジ肉腫、過形成性瘢痕、およびケロイド(Arbister, 1996, J. Am. Acad. Dermatol. 34(3): 486-97)などの皮膚疾患の原因である。リウマチ様関節炎、例えば、内皮細胞が活性化され、接着分子およびケモカインを発現して、血液から組織へと白血球の遊走に導く。内皮細胞の浸透性が増加して、関節の浮腫形成および腫脹に導く(Middleton et al., 2004, Arthritis Res. Ther. 6(2): 60-72)。
【0013】
VEGF、特にVEGF−Aは、血管新生の増加、減少、および/または調節不全に関連する多くの疾患よおび病態に関係している(Binetruy-Tourniere et al., 2000, EMBO J. 19(7): 1525-33)。例えば、VEGFは、腫瘍関連血管新生を刺激することにより固形腫瘍成長および転移の促進に関係している(Lu et al., 2003, J. Biol. Chem. 278(44): 43496-43507)。VEGFはまた、眼内新血管新生および浸透性の重要な媒介物質である。遺伝子導入マウスにおけるVEGFの過度発現により、ヒト眼疾患に見られるように、臨床的網膜内および網膜下新血管新生、および血管造影法により検出可能な漏出性眼内血管の形成を生じる(Miller, 1997, Am. J. Pathol. 151(1): 13-23)。さらに、VEGFは、原因不明女性不妊症および子宮内膜症の女性の腹腔内液中に確認されており(Miedzybrodzki et al., 2001, Ginekol. Pol. 72(5): 427-430)、精巣および副精巣におけるVEGFの過度発現は、遺伝子導入マウスにおいて不妊症を引き起こすことが判明している(Korpelainen et al., 1998, J. Cell Biol. 143(6): 1705-1712)。最近、VEGF−Aは、滑液中およびリウマチ様関節炎(RA)患者の血清中に確認されており、その発現は、疾患重症度と相関している(Clavel et al., 2003, Joint Bone Spine. 70(5): 321-6)。このような多種多様の障害および疾患に病原性血管新生の関与を考慮すると、血管新生の阻止、特にVEGFシグナル伝達の阻止は、所望の治療目標である。
【0014】
血管新生の阻止および腫瘍抑制は、KDRに対するVEGFの結合を遮断するペプチド(Binetruy-Tourniere et al., 2000, EMBO J. 19(7): 1525-33);VEGFに対する抗体(Kim et al., 1993, Nature 362, 841-844;Kanai et al., 1998, J. Cancer 77, 933-936;Margolin et al., 2001, J. Clin. Oncol. 19, 851-856);KDRに対する抗体(Lu et al., 2003、上記文献;Zhu et al., 1998, Cancer Res. 58, 3209-3214;Zhu et al., 2003, Leukemia 17, 604-611;Prewett et al., 1999, Cancer Res. 59, 5209-5218);可溶性受容体(Holash et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99,11393-11398;Clavel et al.,上記文献);チロシンキナーゼ阻害剤(Fong et al., 1999, Cancer Res. 59, 99-106;Wood et al., 2000, Cancer Res. 60, 2178-2189;Grosios et al., 2004, Inflamm Res. 53(4): 133-42 );抗VEGF免疫毒素(Olson et al., 1997, Int. J. Cancer 73, 865-870);リボザイム(Pavco et al., 2000, Clin. Cancer Res. 6, 2094-2103);アンチセンス媒介VEGF抑制(Forster et al., 2004, Cancer Lett. 20; 212(1): 95-103);RNA干渉(Takei et al., 2004, Cancer Res. 64(10): 3365-70;Reich et al., 2003, Mol Vis. 9: 210-6);および硫酸下、低分子量グリコールスプリットヘパリン(Pisano et al., 2005, Glycobiology. 15(2)1-6)など、VEGF
−AおよびKDRの相互作用を妨げ、および/またはKDRシグナル伝達経路を遮断する薬剤を用いることにより達成されている。しかしながら、これらの処置の幾つかは、望ましくない副作用を生じている。例えば、VEGFを標的とするモノクローナル抗体であるGenentech社のアバスチン(Avastin)は、何人にかの大腸癌患者において重篤な動脈血栓塞栓性事象を増加させ、非小細胞肺癌患者において重篤で、幾つかの場合、重篤な喀血、および致死さえも生じることが報告されている(Ratner, 2004, Nature Biotechnol. 22(10): 1198)。さらに最近、胃腸管系穿孔が、アバスチン(2005年9月23日付けでGenentech Press社の発表)により処置された卵巣癌患者の11%(試験女性44人のうち5人)に見られたことを、Genentech社は報告している。同様に、最初のVEGF標的薬物であるPfizer社の受容体チロシンキナーゼ阻害剤SU5416は、血栓塞栓性事象を含む重症の毒性を示したので、Pfizer社は開発を中止した(Ratner、上記文献)。有効な抗血管新生処置の開発からの利益を受ける多種多様の患者および幾つかの公知の抗血管新生処置の欠点を考慮すると、新規な抗血管新生療法の必要性が残っている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
本発明は、VEGF類縁体およびそれをコードする核酸を包含し、それらは、野生型VEGFと比較して1つ以上の天然VEGF受容体に対して強力な結合親和性を示す。本発明はまた、受容体結合親和性および生物活性の分離を示すVEGF類縁体およびそれをコードする核酸を包含する。特に、開示された類縁体のin vivoおよびin vitroの生物活性は、野生型VEGFと比較して、実質的に減少するが、一方、1つ以上の天然受容体に対する結合親和性は、野生型VEGFと比較して、ほぼ同じか、または実質的に増加している。VEGF類縁体は、KDRなどの天然受容体に対する受容体結合親和性において少なくとも約3倍から4倍の増加を立証できる。
【0016】
本発明の一実施形態において、VEGF類縁体は、修飾されたVEGFホモダイマーまたはヘテロダイマーである。これらの分子は、VEGF分子の一方または双方のサブユニットに存在し得る少なくとも1つの突然変異を含有する。本発明の一実施形態において、1つ以上の突然変異を含有するVEGF類縁体は、VEGF−Aである。VEGF−A類縁体は、任意のVEGF−Aアイソフォーム、例えば、121、145、148、165、183、189、または206のアミノ酸のアイソフォームであり得る。一実施形態において、本発明のVEGF−A類縁体は、VEGF165bのアイソフォームである。別の実施形態において、1つ以上の突然変異を含有する本発明のVEGF分子は、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−DまたはPlGFである。
【0017】
本発明は、1つ以上のサブユニットにおける1つ以上の突然変異を含有するVEGF融合タンパク質を含む。本発明のVEGF融合タンパク質としては、少なくとも1つのサブユニット、すなわち、限定はしないが、他のシスチン成長因子または糖タンパク質など、異なるタンパク質の少なくとも1つのサブユニットに融合されたサブユニットが挙げられる。例えば、本発明は、VRGF分子が、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、PDGFまたはPlGFサブユニットに融合されたVEGF−Aサブユニット;VEGF−A、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、PDGFまたはPlGFサブユニットに融合されたVEGF−Bサブユニット;VEGF−A、VEGF−B、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、PDGFまたはPlGFサブユニットに融合されたVEGF−Cサブユニット;VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−E、VEGF−F、PDGFまたはPlGFサブユニットに融合されたVEGF−Dサブユニット;またはVEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、またはPDGFサブユニットに融合されたPlGFサブユニットを含有するキメラVEGF類縁体を含む。サブユニットは、リンカーペプチドにより任意に分離できる。本発明はまた、一緒に融合された同じVEGF、すなわちVEGF165bに融合されたVEGF165サブユニットの異なるアイソフォームを含む。
【0018】
一実施形態において、VEGF類縁体は単鎖分子である。例えば、本発明のVEGF類縁体は、2つのVEGFサブユニット、すなわち、リンカーペプチドを介して一緒に結合されたモノマー類を含む。1つまたは両結合サブユニットは、1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有することができる。さらに、結合サブユニットは、異なるVEGFタンパク質サブユニットであり、同じサブユニットの異なるアイソフォームであり得る。例えば、本発明は、I83Kアミノ酸置換を有するVEGF165サブユニットにGSリンカーを介して結合された野生型VEGF165サブユニットを含む。
【0019】
本発明の別の実施形態において、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、またはPlGFサブユニット、あるいは1つ以上の突然変異を含む二量体は、毒素に融合される。この実施形態のペプチドは、腫瘍細胞のターゲティングおよび破壊に有用であり得る。
【0020】
本発明のVEGF類縁体としては、44位、67位、72位、73位、83位、および87位の群からのリシンまたはアルギニンなどの1つ以上の塩基性アミノ酸置換が挙げられる。本発明の一実施形態において、VEGF類縁体は、83位に塩基性アミノ酸置換および任意に44位、67位、72位および73位に1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有する。例えば、本発明は、I83K突然変異を有するVEGF類縁体を含む。本発明はまた、例えば、72位、73位および83位に塩基性アミノ酸を有するVEGF類縁体を含む。
【0021】
本明細書に記載された塩基性アミノ酸置換を有するVEGF類縁体は、KDRに対する受容体結合親和性をさらに増加させるために、および/またはニューロピリン−1に対する受容体結合親和性を減少させるために追加のアミノ酸置換を含有できる。例えば、本発明は、ニューロピリン−1結合部位を破壊するように作用する146位および160位において突然変異を含む。
【0022】
本発明の類縁体はまた、安定性の増加および血清中半減期の増加を付与する追加のアミノ酸置換を含有できる。例えば、本発明は、111位および148位における置換のようなタンパク分解的切断部位を除去するアミノ酸置換を含む。
【0023】
本発明のVEGF受容体アンタゴニストは、野生型VEGFと比較して血漿中半減期の増加を示すことができる。これは、半減期を増加させるために当技術分野に公知の方法によりVEGF類縁体をさらに修飾することによって達成できるか、あるいは、血漿中半減期の増加をVEGF類縁体固有の特徴としてもよい。本発明のVEGF受容体アンタゴニストはまた、野生型VEGFと比較して、吸収速度が増加および/または作用時間が減少するものであってもよい。
【0024】
本発明の修飾類縁体は、VEGF受容体アンタゴニストとして作用し、したがって血管新生に関連する広いスペクトルの疾患および病態を患っている患者に対して待望の解決策を提供する。VEGF受容体アンタゴニストは、固形腫瘍癌、血管腫、リウマチ様関節炎、骨関節炎、敗血症性関節炎、喘息、アテローム硬化症、特発性肺線維症、血管再狭窄、動静脈形成異常、髄膜腫、血管新生緑内障、乾癬、カポジ症候群(Kaposi’s Syndrome)、血管線維腫、血友病関節、過形成性瘢痕、オースラー−ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、強皮症、トラコーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、血管接着病状(vascular adhesion pathologies)、滑膜炎、皮膚炎、神経変性疾患、子癇前症、原因不明女性不妊症、子宮内膜症、原因不明男性不妊症、翼状皮膚、創傷、ただれ、皮膚潰瘍、胃潰瘍、および十二指腸潰瘍を含むがこれらに限定されない血管新生に関連する疾患の処置のために、単独、または、別のVEGF受容体アンタゴニスト、抗癌薬、もしくは抗血管新生薬と組み合わせて患者に投与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、血管内皮成長因子(VEGF)受容体アンタゴニストとして驚くべき活性を示すVEGFファミリーの修飾血管新生成長因子を提供する。VEGF受容体アンタゴニストとして、本発明の化合物は、「抗血管新生」の性質を有する。「修飾」されるとは、タンパク質が、対象の野生型VEGF、すなわち、ヒトVEGFまたは動物VEGFとは異なるアミノ酸配列を含有するが、その配列が他の種の既知のVEGF配列と同一であるように変化していないことを意味する。用語の「突然変異」および「置換」は、修飾アミノ酸残基を称するために本明細書において同義に用いられる。用語の「修飾VEGF分子」、「修飾VEGFタンパク質」、「VEGF類縁体」、「VEGF受容体アンタゴニスト」、「VEGFキメラ」、「VEGF融合タンパク質」および「VEGF単鎖分子」は、修飾VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、およびPlGF類縁体分子を称するために本明細書において同義に用いられる。
【0026】
「アンタゴニスト」は、血管新生の誘導など、VEGFの天然の生物学的活性を遮断、阻止または軽減するように作用する分子を称するために本明細書において同義に用いられる。本明細書に用いられる用語「抗血管新生」とは、本発明の修飾VEGF分子が、血管新生の過程、または新規な血管またはリンパ管が先在する血管から形成する過程を遮断、阻止または軽減することを意味する。本発明のVEGF類縁体の活性が、VEGFが受容体に結合する際に通常生じる正常なVEGF/受容体シグナル伝達を破壊する。したがって、本発明の類縁体は、VEGF受容体アンタゴニストである。理論に拘束されるものではないが、本発明のVEGF類縁体は、シグナル伝達に必要なKDRの二量化を破壊すると考えられる。
【0027】
血管新生の阻止は、完全または部分的であり得る。VEGF受容体アンタゴニストは、血管新生をin vitroまたはin vivoで少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、および少なくとも約100%阻止できる。血管新生の阻止は、当技術分野に知られた方法により当業者により測定できる。血管新生の阻止測定は、陰性および/または陽性対照の使用を含むことができる。例えば、当業者は、本発明のVEGF類縁体により処置された対象における血管新生をVEGF類縁体により処置されなかった同様の対象と比較することによって、本発明のVEGF類縁体はVEGF誘導血管新生を阻止すると結論付けることができる。
【0028】
本発明の修飾VEGF分子は、野生型VEGFと比較して、1つ以上の天然VEGF受容体に対して受容体結合親和性の増加した、または同様の受容体結合親和性を示す。本明細書に用いられるように、天然VEGF受容体は、VEGFと特異的に相互作用する非修飾受容体である。例えば、内因性VEGF受容体は天然VEGF受容体である。本発明の一実施形態において、この天然受容体はKDRである。KDRは、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−EおよびVEGF−Fの受容体である。別の実施形態において、天然受容体はFlt−1である。Flt−1は、VEGF−A、VEGF−BおよびPlGFの受容体である。
【0029】
「受容体結合親和性」とは、in vitroまたはin vivoで受容体に結合するリガンドの能力のことであり、限定はしないが、競合的結合アッセイおよび直接的結合アッセイなど、当技術分野で容易に利用できる方法によって評価できる。本明細書に用いられるように、受容体結合親和性とは、限定はしないが、Flt−1(VEGF−R1としても知られている)、KDR(VEGF−R2としても知られている)およびFlt−4(VEGF−R3としても知られている)など、天然VEGF受容体に結合するVEGF分子の能力のことである。例えば、本発明の修飾VEGF−A分子は、野生型VEGF−Aと比較してKDRに対して受容体結合親和性の増加または同様の結合親和性を示す。一実施形態において、本発明の修飾VEGF分子の受容体結合親和性の増加は、野生型VEGFよりも少なくとも約1.25培、少なくとも約1.5培、少なくとも約1.75培、少なくとも約2培、少なくとも約3培、少なくとも約4培、少なくとも約5培、少なくとも約6培、少なくとも約7培、少なくとも約8培、少なくとも約9培または少なくとも約10培大きい。
【0030】
別の実施形態において、修飾VEGFは、KDRおよび/または野生型VEGFと同様または同等の血管新生に関与する他の受容体に対する受容体結合親和性を示す。同様または同等の受容体結合親和性は、野生型のVEGF親和性の少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%、もしくはそれ以上である。例えば、本発明は、野生型VEGFにより示される受容体結合親和性の約75%から85%、約85%から95%および約95%から100%を示すVEGF−A類縁体を含む。
【0031】
本発明はまた、少なくとも1つの天然受容体に対して増加した、または同様の受容体結合親和性を示すが、別の天然受容体に対して受容体結合親和性の減少を示すVEGF類縁体を含む。例えば、本発明のVEGA−A類縁体は、野生型VEGF−Aと比較してKDRに対して増加または同様の受容体結合親和性を示し得るが、野生型VEGF−Aと比較してFlt−1、ニューロピリン−1またはニューロピリン−2に対して受容体結合親和性の減少を示し得る
【0032】
本発明のVEGF類縁体はまた、野生型VEGF−Aと比較して生物活性の減少を示す。「生物活性」とは、限定はしないが、内皮細胞における細胞増殖を誘導するためのVEGFの能力など、in vivoおよびin vitroでVEGFの天然の生物学的活性のことである。生物活性の減少は、血管新生の減少を生じる。本発明の一実施形態において、本発明のVEGF類縁体は、同じアイソフォームの野生型VEGFと比較して生物活性の減少を示す。例えば、本発明のVEGF165類縁体は、野生型VEGF165と比較して生物活性の減少を示すことができ、VEGF165b類縁体は、野生型VEGF165bと比較して生物活性の減少を示すことができる。
【0033】
生物活性は、限定はしないが、VEGFへの曝露の際にヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)などの内皮細胞の生存度をアッセイするin vitro生存度アッセイなど、当技術分野で知られた幾つかの方法によりアッセイできる。野生型VEGFへの曝露から生じるものと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上の内皮細胞生存度の減少は、生物活性の減少を示す。
【0034】
生物活性は、さらにin vivoで評価できる。例えば、生物活性は、腫瘍周囲の血管新生の増加欠如を検出することにより腫瘍対象者においてin vivoで評価できる。血管新生増加欠如の検出は、限定はしないが、in vivoマトリゲル(matrigel)遊走アッセイ、ディスク血管新生アッセイ、マウスの背部皮膚ひだチャンバーを含むアッセイ、角膜移植および血管新生のスポンジインプラントモデルなど、当技術分野で知られた幾つかの方法により達成できる。一実施形態において、血管新生は、腫瘍およびその周囲の血管新生と未処置対象の同様のタイプの腫瘍、サイズおよび位置とを比較することにより評価される。当技術分野に知られている生検法は、組織を取り出し、血管形成に関して分析するために使用できる。
【0035】
受容体結合親和性と生物活性との「解離」とは、受容体結合親和性および生物活性が相関していない概念のことである。比較すると、受容体結合親和性および生物活性は、野生型VEGF−Aなどの野生型VEGFタンパク質に相関する。受容体結合親和性の増加により、例えば、野生型VEGF−Aに対する生物活性の増加を生じることが予想されるであろう。一方、本発明の修飾VEGF分子は、野生型VEGFと比較して同様の受容体結合親和性または受容体結合親和性の増加を示すが、野生型VEGFと比較して生物活性の減少を示す。
【0036】
哺乳動物のVEGF類は、関連遺伝子ファミリーの選択的スプライシングのため複数アイソフォームで産生される。本発明は、血管新生に関与するVEGFアイソフォームに相当するVEGF類縁体を記載する。本発明のVEGF類縁体は、他に指定されない限り、任意のVEGFアイソフォームを用いて創製できる。
【0037】
VEGF−Aは、限定はしないが、それぞれ121、145、148、165、183、189、および206のアミノ酸などのアイソフォームで存在できる。3つの主要なmRNA種は、VEGF121、VEGF165およびVEGF189である。本明細書に用いられるように、VEGF121(配列番号6)、VEGF145(配列番号8)、VEGF148(配列番号10)、VEGF165(配列番号4)、VEGF165b(配列番号13)、VEGF183(配列番号15)、VEGF189(配列番号17)、およびVEGF206(配列番号19)は、抗血管新生特性を有するように修飾できるVEGF−Aのアイソフォームである。本明細書に記載されたアミノ酸位置は、配列番号3のリーダー配列などのリーダー配列を欠くVEGF分子に基づいている。リーダー配列を有するVEGF−Aアイソフォームのアミノ酸配列は、配列番号2、5、7、9、12、14、16および18の配列である。
【0038】
VEGF−Aの種々のアイソフォームは、110のアミノ酸の共通したアミノ末端ドメインを共有する。VEGF−Aアイソフォームは、エキソン2〜5によりコード化された受容体結合ドメインを有する。アイソフォーム間で最も著しい相違は、エキソン6a、6b、7aおよび7bによりコード化されるニューロピリンおよびヘパリン結合ドメインに見られる。
【0039】
最も共通するVEGF−Aアイソフォームは、VEGF165である。VEGF165をコードする核酸は、配列番号1の配列である。最近、カルボキシ末端にエキソン8の代わりに、エキソン9によりコード化された配列を含有するVEGF165bと称される内因性スプライス変異体が記載された。このタンパク質をコードする核酸分子は、配列番号11の配列である。VEGF165b(リーダー配列を有する配列番号12;リーダー配列の無い配列番号13)は、VEGF165により加えられると内皮細胞におけるVEGFシグナル伝達を阻止した(参照としてその全体が本明細書に組み込まれているWoolard et al., 2004, Cancer Research. 64: 7822-7835を参照;またU.S. 2005/0054036を参照)。
【0040】
本発明の一実施形態において、VEGF類縁体はVEGF−A類縁体である。VEGF−A類縁体としては、「修飾VEGF−Aタンパク質」、「VEGF−A受容体アンタゴニスト」、「VEGF−Aキメラ」、「VEGF−A融合タンパク質」および「VEGF−A単鎖分子」が挙げられる。VEGF−A類縁体は、少なくとも1つの修飾VEGF−Aサブユニットを含有するVEGF−A分子である。
【0041】
VEGF−Bは、2つのアイソフォーム、VEGF−B167(配列番号48)およびVEGF−B186(配列番号50)で存在する(Makinen et al., 1999, J. Biol. Chem. 274: 21217-21222)。本発明の一実施形態において、VEGF類縁体はVEGF−B類縁体である。VEGF−B類縁体としては、「修飾VEGF−Bタンパク質」、「VEGF−B類縁体」、「VEGF−B受容体アンタゴニスト」、「VEGF−Bキメラ」、「VEGF−B融合タンパク質」および「VEGF−B単鎖分子」が挙げられる。VEGF−B類縁体は、少なくとも1つの修飾VEGF−Bサブユニットを含有するVEGF−B分子である。
【0042】
VEGF−Cは、21−kd活性タンパク質を形成するためにタンパク分解的に切断されるプロペプチド(配列番号51)として産生される(Nicosia, 1998, Am. J. Path. 153: 11-16)。本発明の一実施形態において、VEGF類縁体はVEGF−C類縁体である。VEGF−C類縁体としては、「修飾VEGF−Cタンパク質」、「VEGF−C類縁体」、「VEGF−C受容体アンタゴニスト」、「VEGF−Cキメラ」、「VEGF−C融合タンパク質」および「VEGF−C単鎖分子」が挙げられる。VEGF−C類縁体は、少なくとも1つの修飾VEGF−Cサブユニットを含有するVEGF−C分子である。
【0043】
VEGF−Dはまた、活性タンパク質を形成するためにタンパク分解的に切断されるプロペプチド(配列番号52)として産生される。VEGF−Dは、VEGF−Cと48%同一である(Nicosia,上記文献)。本発明の一実施形態において、VEGF類縁体はVEGF−D類縁体である。VEGF−D類縁体としては、「修飾VEGF−Dタンパク質」、「VEGF−D類縁体」、「VEGF−D受容体アンタゴニスト」、「VEGF−Dキメラ」、「VEGF−D融合タンパク質」および「VEGF−D単鎖分子」が挙げられる。VEGF−D類縁体は、少なくとも1つの修飾VEGF−Dサブユニットを含有するVEGF−D分子である。
【0044】
胎盤成長因子(PlGF)は、3つのアイソフォーム、PlGF−1(配列番号54)、PlGF−2(配列番号56)およびPlGF−3(配列番号58)で存在する。PlGF−2は、他の2つのアイソフォームに不在するヘパリンおよびニューロピリン−1結合性を付与するエキソン6コード化ペプチドを含有する。PlGF−1およびPlGF−2の双方は、内皮細胞遊走を誘導できるものとして報告されている(Migdal et al., 1998, J. Biol. Chem. 273: 22272-22278)。本発明の一実施形態において、VEGF類縁体はPlGF類縁体である。別の実施形態において、VEGF類縁体はPlGF−1またはPlGF−2である。PlGF類縁体としては、「修飾PlGFタンパク質」、「PlGF類縁体」、「PlGF受容体アンタゴニスト」、「PlGFキメラ」、「PlGF融合タンパク質」および「PlGF単鎖分子」が挙げられる。PlGF類縁体は、少なくとも1つの修飾PlGFサブユニットを有するPlGF分子である。
【0045】
本発明のVEGF類縁体は、修飾動物またはヒトVEGF分子である。本発明の一実施形態において、VEGF類縁体は、哺乳動物のVEGF分子である。本発明の別の実施形態において、VEGF類縁体は、鳥類のVEGF分子である。本発明のVEGF類縁体としては、限定はしないが、修飾霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、マウス、ラットおよびウサギVEGF分子が挙げられる。一実施形態において、動物VEGF類縁体はVEGF−A類縁体である。例えば、本発明の動物VEGF−A類縁体は、動物VEGF165または動物VEGF165b類縁体であり得る。
【0046】
ヒト以外の種の修飾VEGF分子は、本明細書に開示された修飾ヒトVEGF分子のものに相当する位置に置換を有し、限定はしないが、DNASIS、ALIONment、SIMおよびGap、BestFit、FrameAlign、ならびにCompareなどのGCGプログラムなど、任意のアラインメントプログラムを用いて同定できる。当業者によって認識できるように、塩基性アミノ酸により置換されるための相当するアミノ酸は、ヒトVEGF−Aのものと同一ではないと思われる。例えば、グルタメート(E)が、アスパルテート(D)などの動物における異なる酸性アミノ酸に相当し得ることを、当業者により認識するであろう。
【0047】
別の実施形態において、相当するアミノ酸は、規定された構造内、例えば、外部ループ構造上の同じ一般的な位置に配置されるものとして同定される。タンパク質の構造は、タンパク質のアミノ酸に基づくソフトウェアを用いて予測できる。したがって、当業者は、関連タンパク質において相当する位置を確認するためにタンパク質の折りたたみおよびループ構造を予測するソフトウェアを使用できる。
【0048】
VEGF受容体アンタゴニストの設計
本発明に包含されるVEGF受容体アンタゴニストは、他の種のVEGFタンパク質における塩基性残基を同定するために、対象のVEGFのアミノ酸配列を他の種のものに比較することにより設計できる。例えば、VEGF−Aの場合、ヒトVEGF−Aを別の種のものに比較することにより設計できる。このような方法は、参照としてその全体が本明細書に組み込まれているU.S. 6,361,992に開示されている。また、種々の種からVEGFの相対的な生物活性に対して考慮することができ、その種は比較およびアミノ酸置換のために選択できる。関連糖タンパク質の構造に基づきさらなる相同性モデリングは、表面曝露アミノ酸残基を同定するために有用である。相同性モデリングは、限定はしないが、タンパク質モデリングコンピュータソフトウェアの使用など、一般に当技術分野に公知の方法により実施できる。
【0049】
本発明はまた、修飾VEGFタンパク質を提供し、修飾VEGFは、野生型VEGFよりも結合親和性の増加および/または生物活性の減少を有する別の種からVEGFタンパク質において同じアミノ酸位置に相当する位置に置換されたアミノ酸を含む。例えば、ヘビ毒VEGF−Fは、高親和性でKDRに結合し、in vitroで血管内皮細胞の増殖を強力に刺激する。ヒトVEGF−Aをヘビ毒VEGFに比較でき、ヒトVEGF−Aタンパク質を、ヘビ毒およびヒト配列が異なる1つ以上の位置におけるアミノ酸置換により設計でき、ヒトVEGF−Aタンパク質を、選択された変更により構築でき、修飾ヒトVEGF−Aをヒトに投与できる。ヘビ毒VEGF−Fは、KDR結合親和性の増加および生物活性を示すが、すなわち、ヒトVEGFと比較して、結合親和性と生物活性とは相関しているが、受容体結合親和性を増加させるが、生物活性に対する効果を減少させるか、または有さないアミノ酸置換を同定するために、アミノ酸置換を経験的に試験し得ることを当業者は解するであろう。受容体結合親和性を増加させ、および/または生物活性に対する効果を減少させるか、または有さないアミノ酸置換は、次に受容体結合親和性を増加させ、および/または生物活性を減少させることが知られている1つ以上の他のアミノ酸置換と組合わせることができる。
【0050】
本発明の別の実施形態において、修飾VEGF分子は、天然の節足動物に存在するVEGF相同体の同じアミノ酸位置に相当する位置で置換された1つ以上のアミノ酸を含有できる。節足動物において、単一成長因子は、高等生物におけるPDGFおよびVEGFにより実施されたタスクを実施する。受容体結合親和性を増加させるが、生物活性に対する効果を減少させるか、または有さないか、あるいは、受容体結合親和性に対する効果が殆どないが、生物活性を減少させるアミノ酸置換を同定するために、アミノ酸置換を経験的に試験し得ることを当業者は解するであろう。
【0051】
さらに、本発明は、修飾VEGFを提供し、修飾VEGFは、異なるVEGFまたはVEGFアイソフォームにおける同じアミノ酸か、または同一種または異種からのPDGFファミリーにおかえるタンパク質などの密接に関連する糖タンパク質に相当する位置に置換された塩基性アミノ酸を含む。例えば、VEGF165は、同一種からのPDGFおよび任意の配列相違に基づくVEGFタンパク質に成されたアミノ酸置換と比較できる。当業者は、DNASIS、ALIONment、SIMおよびGap、BestFit、FrameAlign、ならびにCompareなどのGCGプログラムなど、任意のアラインメントプログラムの使用など、当技術分野に公知の方法を用いて、VEGFタンパク質またはVEGF関連タンパク質の2つ以上の配列を比較できる。
【0052】
本発明の別の態様において、本明細書に記載されたアミノ酸置換は、VEGF−E(配列番号60)、VEGF−F(配列番号62)およびPDGF(配列番号63および配列番号64)などの密接に関連したタンパク質に取り込むことができる。例えば、E67、E72、E73,I83およびQ87からなる群から選択された1つ以上の塩基性アミノ酸置換は、同一種からのPDGFアイソフォームおよびPDGFアイソフォームに成されたアミノ酸置換と比較できる。
【0053】
本発明のVEGF類縁体は、野生型VEGF−Aと比較してFlt−1受容体に対する受容体結合親和性の減少を示すように設計できる。これらの類縁体は、Flt−1に対する受容体結合親和性の減少を示すが、それらは、野生型VEGF−Aと比較してKDRに対する受容体結合親和性を増加させ得るか、または同等であり得る。
【0054】
本発明のVEGF類縁体は、限定はしないが、野生型VEGFと比較してニューロピリン−1またはニューロピリン−2など、共受容体に対する受容体結合親和性の減少を示すように設計できる。ニューロピリン−1またはニューロピリン−2に対する受容体結合親和性の減少を有する類縁体は、野生型VEGFと比較してKDR、Flt−1またはVEGR3に対する受容体結合親和性を増加させるか、または同様にすることができる。例えば、VEGF類縁体は、ニューロピリン−1に対する受容体結合親和性の減少およびKDRおよび/またはFlt−1に対する受容体結合親和性の増加を示すように設計できる。本発明の一実施形態において、ニューロピリン−1に対する受容体結合親和性の減少を示すVEGF−Aは、VEGF165bスプライス変異体において設計された類縁体である。別の実施形態において、VEGF−B167およびPlGF−2類縁体は、ニューロピリン−1に対する受容体結合親和性の減少およびFlt−1に対する結合親和性の増加を示すように設計できる。
【0055】
本発明の一実施形態において、VEGF類縁体は、VEGFニューロピリン結合部位を破壊することによって、野生型VEGFと比較してニューロピリン−1またはニューロピリン−2に対する受容体結合親和性の減少を示すように設計される。これは、ニューロピリン−1受容体結合ドメインの多数のシステインアミノ酸残基を還元することによって達成できる。例えば、VEGF165類縁体は、配列番号4の146位および/または160位におけるシステイン残基を、ジスルフィド架橋の破壊を引き起こすセリンのようなアミノ酸で置換することによりVEGF165のニューロピリン1結合部位を破壊するように設計できる。配列番号4の146位および/または160位におけるシステイン残基の置換により、ニューロピリン−1結合を破壊するが、ヘパリン結合を破壊しない。146位および/または160位における突然変異は、1つ以上の突然変異と連結して、本明細書に記載されるようにKDR、Flt−1および/またはVEGFR3に対する受容体結合親和性を増加、維持または回復させることができる。
【0056】
同様に、本発明は、野生型VEGFと比較してニューロピリン−2に対する受容体結合親和性の減少を示すVEGF類縁体を含む。例えば、本発明は、ニューロピリン−2に対する受容体結合親和性の減少を示すが、野生型VEGF−CまたはVEGF−Dと比較してそれぞれKDRおよび/またはVEGFR3に対して増加または同様の結合親和性を示すVEGF−CまたはVEGF−D類縁体を含む。
【0057】
本発明はまた、安定性の増強および耐プロテアーゼを示すVEGF類縁体を含む。一実施形態において、配列番号4のA111位およびA148におけるアミノ酸置換により、耐プロテアーゼを改善するためにVEGF−A類縁体に取り込まれる。本発明はまた、VEGF−CプロペプチドおよびVEGF−Dプロペプチドの切断をそれぞれ防止する突然変異を含有するVEGF−CまたはVEGF−D類縁体を含む。例えば、本発明はまた、耐セリンプロテアーゼプラスミンおよび/または耐プラスミノーゲンファミリーの他のメンバーを誘導する1つ以上の突然変異を含有するVEGF−CおよびVEGF−D類縁体を含む。
【0058】
本発明の別の実施形態において、1つ以上のVEGF受容体、好ましくはKDRに対する受容体結合親和性の増加を示すVEGF−D類縁体は、アンタゴニストの性質を示す天然VEGF分子を創製できる。例えば、腎組織から単離されたアイソフォームであるVEGF165bを修飾して、受容体結合親和性の増加およびタンパク質の生物活性の減少に関連するアミノ酸置換を取り込むことができる。同様に、当業者は、VEGF165bの性質を含有するVEGFの合成または新規なアイソフォームにおいて本発明のアミノ酸置換を取り込むことができるであろう。特に本発明の突然変異は、エキソン8によってコード化されたアミノ酸(CDKPRR;配列番号71)に加え、またはその代わりに、アミノ酸SLTRKD(配列番号70)、すなわちエキソン9と呼ばれているものによりコード化されたアミノ酸を含有する他のVEGFタンパク質により使用できる。
【0059】
アミノ酸置換
本発明のVEGF類縁体は、受容体結合親和性の増強および生物活性の減少を付与する1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有する。本発明の一実施形態において、VEGF類縁体は、限定はしないが、VEGF−Aアンタゴニストなど、VEGF受容体アンタゴニストである。
【0060】
本発明の修飾VEGF分子は、1つ以上のサブユニット、すなわち、VEGFのモノマーにおいて塩基性アミノ酸置換を有することができる。塩基性アミノ酸は、アミノ酸リシン(K)、アルギニン(R)およびヒスチジン(H)、およびこれら任意の3種のアミノ酸の修飾であり得る任意の他の塩基性アミノ酸、通常天然には見られない合成塩基性アミノ酸、または中性pHで陽性に荷電された任意の他のアミノ酸を含む。他の中で好ましいアミノ酸は、リシンおよびアルギニンからなる群から選択される。
【0061】
一実施形態において、本発明の修飾VEGF分子は、少なくとも1つの修飾サブユニットを含み、修飾サブユニットは、野生型ヒトVEGF165(配列番号4)、VEGF121(配列番号6)、VEGF145(配列番号8)、VEGF148(配列番号10)、VEGF165b(配列番号13)、VEGF183(配列番号15)、VEGF189(配列番号17)またはVEGF206(配列番号19)のI83位に塩基性アミノ酸置換を含む。例えば、本発明は、VEGF−Aアイソフォームのアミノ酸配列に相当する配列番号4、6、8、10、13、15、17または19におけるI83Kアミノ酸置換を含む。
【0062】
本発明はまた、他のVEGF分子、すなわち、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−DおよびPlGFにおける83位、VEGF−B167(配列番号48)またはVEGF−B186(配列番号50)のI83位およびPlGF−1(配列番号54)、PlGF−2(配列番号56)またはPlGF−3(配列番号58)の191位などに相当する位置に塩基性アミノ酸置換を含む。
【0063】
本発明は、ヒト以外の動物における修飾VEGF分子を含み、1つ以上のサブユニットにおいてVEGF分子は、ヒトのVEGF−Aの83位に相当する位置に塩基性アミノ酸置換を含有する。一実施形態において、修飾動物VEGFは修飾VEGF−A分子である。例えば、本発明は、霊長類の(配列番号22)のI83位、ウシの(配列番号25)のI82位、イヌの(配列番号28)のI82位、ニワトリの(配列番号31)のI83位、ウマの(配列番号I82)のI82位、マウスの(配列番号37)のI82位、ブタの(配列番号40)のI82位、ラットの(配列番号43)のI82位およびヒツジの(配列番号46)のI82位に塩基性アミノ酸置換を含む。
【0064】
本発明はまた、限定はしないが、配列番号4のI83位に相当するアミノ酸置換を含有するVEGF−E、VEGF−FおよびPDGFなど、修飾VEGF関連タンパク質を考慮する。例えば、VEGF−F(配列番号62)は、I83のアミノ酸置換を含むように修飾できる。
【0065】
本発明の修飾VEGF分子は、野生型VEGF−Aなどの野生型VEGFと比較して、VEGFの結合親和性をさらに増加させるか、またはVEGFの生物活性を減少させる塩基性アミノ酸置換を含有できる。VEGF165(配列番号4)、VEGF121(配列番号6)、VEGF145(配列番号8)、VEGF148(配列番号10)、VEGF165b(配列番号13)、VEGF183(配列番号15)、VEGF189(配列番号17)またはVEGF206(配列番号19)の44位、67位、72位、73位および/または87位のうちの1つ以上に塩基性アミノ酸置換を有するVEGF分子は、野生型VEGFと比較してKDRに対する結合親和性を増加できる。例えば、本発明は、塩基性アミノ酸修飾E44R、E44K、E72K、E73R、E73K、Q87R、Q87KおよびE67Kを含む。
【0066】
本発明の一実施形態において、配列番号4の44位、67位、72位、73位および/または87位に相当する塩基性アミノ置換は、配列番号4の83位に相当する塩基性アミノ酸置換と結合してVEGF受容体アンタゴニストを産生する。例えば、本発明の修飾アミノ酸は、72+73+83、44+83、72+83、73+83、44+72+83、44+73+83、44+72+73+83、44+83+87、83+87、67+72+73+83、44+67+83、67+72+83、67+73+83、44+67+72+83、44+67+73+83、44+67+72+73+83、44+67+83+87および67+83+87の位置に塩基性アミノ酸置換を含む。
【0067】
本発明の別の実施形態において、類縁体は、E44、E67、E72、E73およびQ87の位置に1つ以上の塩基性アミノ酸および任意にI83位に塩基性アミノ酸置換を含有するVEGF165b分子である。VEGF−Aアイソフォームが、VEGF165bである場合、他のVEGF165において受容体結合親和性の増加を別に生じ得るのみの単一アミノ酸修飾を取り込むことにより、VEGF165など、野生型VEGF−Aと比較して結合親和性の増加および生物活性の減少を有する本発明のVEGF類縁体を作出することは可能である。
【0068】
例えば、本発明は、A44、E67、G72、Q73およびS87の位置に1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有する修飾VEGF−B類縁体(配列番号48および50)ならびにE44、E67、E72、E73およびQ87の位置に1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有する修飾VEGF−F類縁体(配列番号62)を含む。
【0069】
本発明の修飾動物、すなわち、非ヒトVEGF−A分子は、野生型動物VEGFと比較して修飾動物VEGF分子の結合親和性を増加させるか、または生物活性を減少させるために、さらなるアミノ酸修飾を同様に含有できる。本発明は、上記のとおり配列番号4のI83に相当するアミノ酸置換と関連するこれらの修飾の使用を含む。例えば、本発明は、霊長類(尾長マカクザル)のVEGF−A(配列番号22)のE44位、E67位、E72位、E73位、I83位、およびI87位からなる群から選択される1つ以上の塩基性アミノ酸置換;ウシのVEGF−A(配列番号25)のE43位、E66位、E71位、E72位、I82位、およびQ86位からなる群から選択される1つ以上の塩基性アミノ酸置換;イヌのVEGF−A(配列番号28)のE43位、E66位、E71位、E72位、I82位、およびQ86位からなる群から選択される1つ以上の塩基性アミノ酸置換;鳥類(ニワトリ)のVEGF−A(配列番号31)のE44位、E67位、E72位、E73位、I83位、およびQ87位からなる群から選択される1つ以上の塩基性アミノ酸置換;ウマのVEGF−A(配列番号34)のE43位、E66位、E71位、E72位、I82位、およびQ86位からなる群から選択される1つ以上の塩基性アミノ酸置換;マウスのVEGF−A(配列番号37)のE43位、E66位、E71位、E72位、I82位、およびQ86位からなる群から選択される1つ以上の塩基性アミノ酸置換;ブタのVEGF−A(配列番号40)のE43位、E66位、E71位、E72位、I82位、およびQ86位からなる群から選択される1つ以上の塩基性アミノ酸置換;ラットのVEGF−A(配列番号43)のE43位、E66位、E71位、E72位、I82位、およびQ86位からなる群から選択される1つ以上の塩基性アミノ酸置換;およびヒツジのVEGF−A(配列番号46)のE43位、E66位、E71位、E72位、I82位、およびQ86位からなる群から選択される1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含む。
【0070】
1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有するVEGF類縁体はまた、共受容体結合部位を破壊するように設計されたアミノ酸置換と組合わせることができる。一実施形態において、本発明のVEGF類縁体は、破壊されたニューロピリン−1結合部位を含有する。ニューロピリン−1結合部位は、VEGF165(配列番号04)のアミノ酸111から165を含む。このドメインは、エキソン6および7によりコード化されたヘパリン結合ドメインを重なる。本発明は、ニューロピリン−1結合部位ドメインを破壊するが、硫酸ヘパリンを結合するヘパリン結合ドメインの能力を破壊しないものの中またはその近辺(すなわち、約5つのアミノ酸内)で任意のアミノ酸修飾を含む。このようなアミノ酸修飾は、当業者により経験的に判定できる。
【0071】
本発明の一実施形態において、ニューロピリン−1結合ドメインは、ドメイン中の多数のシステインアミノ酸残基を還元することにより、すなわち、VEGA−Aのアミノ酸111から165の間の多数のシステインアミノ酸残基を還元することにより破壊される。例えば、VEGF165類縁体は、配列番号4の146位および/または160位におけるシステイン残基を、ジスルフィド架橋の破壊を引き起こすセリンなどのアミノ酸で置換することによりニューロピリン−1結合部位を破壊するように設計できる。配列番号:4の146位および160位におけるシステイン残基の置換により、ニューロピリン−1結合を破壊するが、ヘパリン結合を破壊しない。ニューロピリン−1結合部位もまた、146位または160位におけるアミノ酸ペプチドを終了させることにより破壊することができる。
【0072】
本発明はまた、146位および160位におけるシステイン残基がジスルフィド架橋を形成できないように、配列番号4の146位および160位におけるアミノ酸周囲のアミノ酸の修飾を含むことができる。例えば、本発明は、限定はしないが、ジスルフィド架橋の形成を破壊できる136位から165位を通して1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0073】
本発明の修飾VEGF類縁体は、本明細書に記載された配列番号4のE44、E67、E72、E73、I83およびQ87に相当する1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有する。例えば、本発明は、E44B+C146X、E44B+C160X、E44B+C146X+C160X、E67B+C146X、E67B+C160X、E67B+C146X+C160X、E44B+E67B+C146X、E44B+E67B+C160X、E44B+E67B+C146X+C160X、E72B+C146X、E72B+C160X、E72B+C146X+C160X、E73B+C146X、E73B+C160X、E73B+C146X+C160X、E72B+E73B+C146X、E72B+E73B+C160X、E72B+E73B+C146X+C160X、I83B+C146X、I83B+C160X、I83B+C146X+C160X、Q87B+C146X、Q87B+C160X、Q87B+C146X+C160X、E44B+E67B+E72B+C146X、E44B+E67B+E72B+C160X、E44B+E67B+E72B+C146X+C160X、E44B+E67B+E73B+C146X、E44B+E67B+E73B+C160X、E44B+E67B+E73B+C146X+C160X、E44B+E67B+E72B+E73B+C146X、E44B+E67B+E72B+E73B+C160X、E44B+E67B+E72B+E73B+C146X+C160X、E67B+E72B+E73B+C146X、E67B+E72B+E73B+C160X、E67B+E72B+E73B+C146X+C160X、E44B+E72B+E73B+C146X、E44B+E72B+E73B+C160X、E44B+E72B+E73B+C146X+C160X、E44B+I83B+C146X、E44B+I83B+C160X、E44B+I83B+C146X+C160X、E67B+I83B+C146X、E67B+I83B+C160X、E67B+I83B+C146X+C160X、E44B+E67B+I83B+C146X、E44B+E67B+I83B+C160X、E44B+E67B+I83B+C146X+C160X、E72B+I83B+C146X、E72B+I83B+C160X、E72B+I83B+C146X+C160X、E73B+I83B+C146X、E73B+I83B+C160X、E73B+I83B+C146X+C160X、E72B+E73B+I83B+C146X、E72B+E73B+I83B+C160X、E72B+E73B+I83B+C146X+C160X、I83B+Q87B+C146X、I83B+Q87B+C160X、I83B+Q87B+C146X+C160X、E44B+E67B+E72B+I83B+C146X、E44B+E67B+E72B+I83B+C160X、E44B+E67B+E72B+I83B+C146X+C160X、E44B+E67B+E73B+I83B+C146X、E44B+E67B+E73B+I83B+C160X、E44B+E67B+E73B+I83B+C146X+C160X、E44B+E67B+E72B+E73B+I83B+C146X、E44B+E67B+E72B+E73B+I83B+C160X、E44B+E67B+E72B+E73B+I83B+C146X+C160X、E67B+E72B+E73B+I83B+C146X、E67B+E72B+E73B+I83B+C160X、E67B+E72B+E73B+I83B+C146X+C160X、E44B+E72B+E73B+I83B+C146X、E44B+E72B+E73B+I83B+C160XおよびE44B+E72B+E73B+I83B+C146X+C160Xの位置にアミノ酸置換を有するVEGF類縁体を含み、式中、Bは塩基性アミノ酸であり、Xはシステイン以外の任意のアミノ酸である。一実施形態において、Xはセリンである。
【0074】
本発明の修飾タンパク質はまた、さらなる置換、特に増強されたタンパク質の性質を変えない保存的置換を含有できる。しかしながら、典型的にこのような修飾タンパク質は、上記に掲げたもの以外の位置に5つ未満の置換を含有し、上記に掲げた位置以外の位置に相当する野生型VEGFサブユニットと完全なアミノ酸配列同一性を示すことができる。
【0075】
当業者により認識できるように、本発明に開示された全てのアミノ酸置換およびペプチド修飾は、VEGFタンパク質と関連タンパク質との間に高度の相同性のため、種に無関係に任意のVEGFタンパク質または関連タンパク質に取り込むことができる。当業者は、限定はしないが、アミノ酸配列アラインメントソフトウェアの使用など、当技術分野に公知の方法を用いて本明細書に記載されたアミノ酸置換を相互に関連させることができる。
【0076】
血清中増加半減期を有するVEGF類縁体
本発明のVEGF類縁体は、野生型VEGFと比較して血清中増加半減期を有し得る。一実施形態において、野生型VEGFと比較して受容体結合親和性を増加させるか、または維持し、生物活性を減少させる修飾はまた、野生型VEGFと比較してVEGFの血漿中半減期を増加させる。別の実施形態において、本発明の修飾VEGFタンパク質を、野生型VEGFと比較して血漿中半減期を増加させるようにさらに修飾する。
【0077】
タンパク質、特に糖タンパク質の半減期を増加させるために使用できる当技術分野に公知の多くの修飾が存在する。例えば、本発明の修飾VEGFタンパク質は、アルファ鎖またはベータ鎖のいずれかにN−グリコシル化部位および/またはO−グリコシル化部位を含む配列など、潜在的なグリコシル化部位を有する少なくとも1つの配列をさらに含むことができる。潜在的なグリコシル化認識を提供する配列は、いずれかのサブユニット上にN末端またはC末端伸長であり得る。代表的な修飾タンパク質は、ANITV(配列番号72)およびANITVNITV(配列番号73)からなる群から選択されるサブユニット上のN末端伸長を含有する。
【0078】
半減期の増加はまた、hCGのカルボキシル末端伸長ペプチドなどのペプチド伸長の使用により提供できる。参照としてその全体が本明細書に組み込まれているUS 09/519,728を参照されたい。VEGF類縁体のサブユニットは、CTEPに対して当技術分野に公知の任意の方法、例えば、ペプチド結合により、または限定はしないが、ペプチドリンカーなど、タンパク質のアミノ末端とカルボキシル末端との間の共有結合を形成できるヘテロ二官能性試薬により共有結合できる。
【0079】
本発明の別の実施形態において、本発明の塩基性アミノ酸置換は、1つ以上のタンパク分解的切断部位を除去することにより安定性および血清中半減期を増加させる1つ以上のアミノ酸置換と結合する。一実施形態において、追加のアミノ酸置換はタンパク分解的切断を減少させる。別の実施形態において、追加のアミノ酸置換はタンパク分解的切断を防止する。本発明は、プラスミンおよびプラスミノーゲンファミリーの他のメンバーに対する抵抗性を誘導する1つ以上の突然変異を含有するVEGF類縁体を含む。本発明の一実施形態において、VEGF分子の少なくとも1つのサブユニットは、VEGF165(配列番号4)またはVEGF165b(配列番号13)のA111Pおよび/またはA148Pなどのアミノ酸のA111位および/またはA148位に相当するアミノ酸置換を含有する。例えば、本発明は、A111位にアミノ酸置換を含有するVEGF121、VEGF145、VEGF148、VEGF183、VEGF189およびVEGF206を含む。本発明は、プロテアーゼ切断を阻止するか、または減少させるVEGF−B、VEGF−C、VEGF−DおよびPlGFにおいて1つ以上の突然変異を含む。例えば、本発明は、生物活性に必要なVEGF−CおよびVEGF−Dの切断を防止するアミノ酸置換を含む。
【0080】
別の実施形態において、半減期は、VEGFモノマー類を結合することによって、ならびに融合タンパク質を構築することによって増加させることができる。結合部位を干渉することなくVEGF類縁体のサイズの増加により、分子の半減期を増加させることができる。
【0081】
半減期の増加は、限定はしないが、他の適切な化学基のPEG化または結合などの架橋により提供できる。このような方法は、U.S. Patent 5,612,034、U.S. Patent 6,225,449、およびU.S. Patent 6,555,660に記載されているとおり当技術分野に知られており、それらの各々が参照としてその全体が本明細書に組み込まれている。半減期は、多数の分子内負電荷残基、例えば、多数のグルタメート残基および/またはアスパルテート残基を増加させることによっても増加できる。このような変化は、部位特異的突然変異誘発により、または他の中でGEFTおよびGEFTTからなる群から選択される挿入など、1つ以上の負電荷残基を含有するアミノ酸配列の前記修飾VEGFへの挿入により達成できる。
【0082】
タンパク質の半減期は、タンパク質安定性の測定であり、タンパク質濃度で半分の減少に必要な時間を示す。本明細書に記載された修飾VEGF分子の血清中半減期は、経時的に対象からのサンプル中のVEGF濃度を測定するために好適な任意の方法により、例えば、限定はしないが、修飾VEGFの投与後、経時的に採取された血清サンプル中のVEGF濃度を測定するために抗VEGF抗体を用いる免疫アッセイにより、または標識VEGFの投与後、対象から採取されたサンプル中、標識VEGF分子、すなわち、放射性標識分子の検出により測定することができる。
【0083】
本発明のVEGF類縁体の吸収速度は、作用時間の増加または減少を生じ得る。吸収速度の増加および作用時間の減少を有するVEGF類縁体は、皮下投与または投与経路に関連する吸収量を相殺することにより吸収の遅速および/または作用時間の増加に一般的関連する他の投与経路によってVEGF類縁体製薬組成物を受ける患者にとって有利となり得る。
【0084】
リンカー
本発明のVEGF類縁体は、リンカーペプチドにより分離された2種以上のモノマーを含有できる。リンカーペプチドは、単鎖コンフォメーションでVEGF類縁体を形成するために使用できる。種々のタイプのリンカーが、VEGF受容体を結合でき、VEGF受容体アンタゴニストとして作用するVEGF単鎖分子を形成するために本発明に使用できることを当業者は認識することができる。リンカーペプチドは、VEGF受容体を結合する単鎖分子の能力を妨げてはならない。
【0085】
リンカーペプチドは、約2から約50またはそれ以上の長さのアミノ酸の範囲であり得る。例えば、リンカーは、約2つのアミノ酸、約3つのアミノ酸、約4つのアミノ酸、約5つのアミノ酸、約6つのアミノ酸、約7つのアミノ酸、約8つのアミノ酸、約9つのアミノ酸、約10のアミノ酸、約10〜15のアミノ酸、または約15〜20のアミノ酸からなり得る。本発明の一実施形態において、リンカーはGly−Serであるか、またはGly−Serを含有する。別の実施形態において、リンカーは、グリシンに富むポリペプチド鎖である。
【0086】
リンカーを含有するVEGF分子は、本明細書に記載された方法を用いて構築できる。リンカーペプチドを含有する本発明のVEGF類縁体分子が、本明細書に記載された任意の突然変異を1種以上のモノマーにおいて含むことができることを、当業者は認識できるであろう。さらに1種以上のリンカーペプチドを含有するVEGF類縁体は、2種以上のタイプのVEGFタンパク質またはアイソフォームを結合できる。例えば、本発明は、限定はしないが、I83B置換を含有する修飾VEGF165モノマーに結合された野生型VEGF165モノマーを有する修飾VEGF単鎖分子;I83B置換を含有する修飾VEGF165bに結合された野生型VEGF165モノマー;および修飾VEGF−Fモノマーに融合された修飾VEGF165モノマーを含む。
【0087】
VEGF融合タンパク質
本発明はまた、融合タンパク質、すなわち、1つ以上の修飾VEGFタンパク質または断片を含有するキメラを含む。「融合タンパク質」および「キメラ」は、本明細書において同義に用いられる。本明細書に用いられるVEGF部分は、本発明の1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有するVEGFタンパク質またはタンパク質断片である。VEGF融合タンパク質は、1つ以上のVEGF部分を有することができる。
【0088】
このような融合タンパク質は、適切なコード化フレーム内において当技術分野に公知の方法により、互いに所望のアミノ酸配列をコードし、本明細書に記載された任意の手段により融合タンパク質を発現する適切な核酸配列を結合させることにより作製できる。あるいは、このような融合タンパク質は、タンパク質合成技法により、例えば、ペプチドシンセサイザーを用いて作製できる。
【0089】
本発明の融合タンパク質は、本明細書に記載された1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有する少なくとも1つのVEGFタンパク質またはタンパク質断片を含有する。一実施形態において、融合タンパク質は、VEGF165(配列番号4)、VEGF165b(配列番号13)、VEGF121(配列番号6)、VEGF145(配列番号8)、VEGF148(配列番号10)、VEGF183(配列番号15)、VEGF189(配列番号17)またはVEGF206(配列番号19)のI83位に1つの塩基性アミノ酸置換を含有する。別の実施形態において、融合タンパク質は、別のVEGFタンパク質、例えば、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−DまたはPlGFのアイソフォームにおいて配列番号4のI83Kに相当する位置に少なくとも1つの塩基性アミノ酸置換を含有する。当業者により認識できるように、ヒトまたは動物VEGFタンパク質またはその断片は、本発明の融合タンパク質に使用できる。
【0090】
本発明の一実施形態において、2つの異なるVEGFタンパク質サブユニットまたはそれらの断片が融合される。例えば、本発明は、VEGF−Bサブユニットまたはその断片、VEGF−Cサブユニットまたはその断片、VEGF−Dサブユニットまたはその断片、またはPlGFサブユニットまたはその断片に融合されたVEGF−Aサブユニットまたはその断片;VEGF−Aサブユニットまたはその断片、VEGF−Cサブユニットまたはその断片、VEGF−Dサブユニットまたはその断片、またはPlGFサブユニットまたはその断片に融合されたVEGF−Bサブユニットまたはその断片;VEGF−Aサブユニットまたはその断片、VEGF−Bサブユニットまたはその断片、VEGF−Dサブユニットまたはその断片、またはPlGFサブユニットまたはその断片に融合されたVEGF−Cサブユニットまたはその断片;VEGF−Aサブユニットまたはその断片、VEGF−Bサブユニットまたはその断片、VEGF−Cサブユニットまたはその断片、またはPlGFサブユニットまたはその断片に融合されたVEGF−Dサブユニットまたはその断片;およびVEGF−Aサブユニットまたはその断片、VEGF−Bサブユニットまたはその断片、VEGF−Cサブユニットまたはその断片、またはVEGF−Dサブユニットまたはその断片に融合されたPlGFサブユニットまたはその断片を含む。
【0091】
本発明は、同じVEGFタンパク質またはその断片の2つ以上の異なるアイソフォームからなる融合タンパク質を含む。例えば、本発明は、VEGF121サブユニットまたはその断片、VEGF145サブユニットまたはその断片、VEGF148サブユニットまたはその断片、VEGF165bサブユニットまたはその断片、VEGF183サブユニットまたはその断片、VEGF189サブユニットまたはその断片、またはVEGF206サブユニットまたはその断片に融合されたVEGF165サブユニットまたはその断片からなる融合タンパク質を含む。本発明はまた、VEGF121サブユニットまたはその断片、VEGF145サブユニットまたはその断片、VEGF148サブユニットまたはその断片、VEGF165サブユニットまたはその断片、VEGF183サブユニットまたはその断片、VEGF189サブユニットまたはその断片、またはVEGF206サブユニットまたはその断片に融合されたVEGF165bサブユニットまたはその断片を含む。
【0092】
本発明の塩基性アミノ酸置換は、タンパク質の1つ以上のサブユニットに存在できる。例えば、VEGF165サブユニットおよびVEGF165bサブユニットを含有する融合タンパク質は、VEGF165サブユニットにアミノ酸置換のみを含有できる。本発明は、I83Kアミノ酸置換を含有するVEGF165に、GSリンカーによって融合された野生型VEGF165サブユニットを含む。当業者により認識できるように、1つの突然変異サブユニットを含有する本発明の融合タンパク質は、双方の配向性で創製でき、すなわち、突然変異を含有するサブユニットは、融合タンパク質のN末端またはC末端のいずれかであり得る。
【0093】
本発明の別の実施形態において、VEGFサブユニットまたはその断片を、関連タンパク質サブユニットまたはその断片に融合する。例えば、VEGFサブユニットまたはその断片は、PDGFサブユニットもしくは他の糖タンパク質サブユニットまたはその断片に融合できる。
【0094】
通常の当業者により認識できるように、本明細書に記載された融合タンパク質は、ヒトまたは動物VEGF配列を用いて構築できる。さらに、融合タンパク質は、動物VEGFサブユニットに融合されたヒトVEGFサブユニットを用いて構築できる。
【0095】
VEGF融合タンパク質は、VEGF類縁体であることを理解する必要がある。本明細書に検討された全ての修飾、例えば、受容体結合親和性をさらに増加させる修飾、半減期および安定性を増加させる修飾、プロテアーゼ切断を減少または阻止する修飾、およびニューロピリン−1結合部位などの共受容体結合部位を破壊する修飾は、VEGF融合タンパク質の1つ以上のサブユニットに取り込ませることができる。
【0096】
本発明の融合タンパク質は、2つ以上のVEGFサブユニットまたはVEGF関連タンパク質サブユニットを分離するリンカーを含有することもできる。このリンカーは、融合タンパク質のペプチドに、ならびにそのペプチド間で共有結合できる。
【0097】
VEGFおよび毒素融合タンパク質
本発明は、毒素および1つ以上の修飾VEGFサブユニット、すなわち、本明細書に記載された1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含有するモノマー類を含む融合タンパク質を提供する。例えば、VEGFモノマー、すなわち、VEGF−毒素融合タンパク質のサブユニットは、44、67、72、73、83および87(配列番号4または配列番号13)からなる群からアミノ酸位置に相当する1つ以上のアミノ酸位置に塩基性アミノ酸を含有することができる。本発明のVEGFおよび毒素融合タンパク質は、毒素および1つ以上のVEGFサブユニットを分離するリンカー配列を任意に含有できる。
【0098】
本明細書に用いられる用語「毒素」とは、生物起源の毒性物質のことである。本発明の毒素は、当技術分野に知られた可溶性毒素であり得る。可溶性毒素を含む融合タンパク質は、腫瘍を標的にするために使用できる。このような融合タンパク質もまた、診断目的のために使用できる。
【0099】
毒素の例としては、限定はしないが、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素(PE)、ジフテリア(Diphtheria)毒素(DT)、リシン毒素、アブリン毒素、炭疽毒素類、志賀毒素、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、コレラ毒素、マイトトキシン、パリトキシン、シグアトキシン、テクスチロトキシン(textilotoxin)、バトラコトキシン、アルファコノトキシン、タイポキシン(taipoxin)、テトロドトキシン、アルファチチューストキシン(alpha tityustoxin)、サキシトキシン、アナトキシン、ミクロシスチン、アコニチン、エクスフォリアチン毒素(exfoliatin toxin)AおよびB、エンテロトキシン、毒物ショック症候群毒素(TSST−1)、ペスト菌(Y.pestis)毒素およびガス壊疽毒素などが挙げられる。
【0100】
一実施形態において、本発明は、修飾VEGFに融合した毒素および製薬的に許容できる担体を含む製薬組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、血管新生に関連する疾患または病態の処置および防止のための薬剤製造のために可溶性毒素を含む修飾VEGF融合タンパク質の使用を提供する。
【0101】
理論に拘束されるものではないが、本発明のVEGF−毒素融合タンパク質は、VEGF受容体ならびに周囲の内皮細胞および腫瘍細胞を標的とし、死滅させることにより血管新生、腫瘍の成長および/または癌の拡大を防止するか、または軽減させると考えられている。
【0102】
VEGF受容体アンタゴニストの発現および/または合成
本発明は、本発明の修飾VEGFタンパク質をコードする核酸、ならびに核酸を発現するベクターおよび宿主細胞を含む。
【0103】
本明細書に用いられる用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」とは、一本鎖または二本鎖形態におけるデオキシリボヌクレオチド類またはリボヌクレオチド類およびそのポリマーのことである。本発明は、本発明の修飾VEGF分子をコードする核酸分子を含む。例えば、本発明は、修飾VEGF165分子をコードする核酸分子を含む。野生型VEGF165分子をコードする配列番号1の核酸分子は、突然変異のVEGF165核酸分子が修飾タンパク質をコードするような当技術分野に公知の方法により変異化できる。同様に、野生型VEGF165bをコードする配列番号11の核酸分子は、本発明のVEGF165b分子をコードするような当技術分野に公知の方法により変異化できる。
【0104】
対象の特定の修飾VEGFをコードする核酸、または塩基性アミノ酸置換を含有するタンパク質の部分をコードするその核酸の領域が、構成され、修飾され、または単離されたら、次にその核酸を、修飾VEGFタンパク質のin vivoまたはin vitro合成を方向付けることができる適切なベクターにクローン化できる。あるいは、本発明のVEGF類縁体をコードする核酸は、対象の発現ベクターにおいて直接クローン化または修飾できる。このベクターは、挿入された遺伝子、またはハイブリッド遺伝子の転写を方向付けし、調節するのに必要な機能性要素を有するように考慮されている。これらの機能性要素としては、限定はしないが、プロモーター、プロモーターの転写活性を調節できるエンハンサーなど、プロモーターの上流または下流領域、複製の起源、プロモーターに隣接する挿入物のクローン化を促進させる適切な制限部位、ベクターを含有する細胞または挿入物を含有するベクターを選択するために役立ち得る耐抗体遺伝子または他のマーカー、RNAスプライス接合部、転写終結領域、または挿入遺伝子またはハイブリッド遺伝子の発現を促進させるのに役立ち得る任意の他の領域が挙げられる(一般にSambrook et al., Moleculr Cloning: A Laboratory Mannual, 2nd ed. (1989)を参照)。異なる宿主細胞における核酸発現のための適切なプロモーターは、当技術分野に周知であり、発現の用いられるベクター−宿主系に依って容易に互換できる。代表的なベクターおよび宿主細胞は、参照としてその全体が本明細書に組み込まれているU.S. 6,361,992に記載されている。
【0105】
核酸挿入物の発現に有用である通常の当業者に知られている多数の大腸菌(Escherichia coli)発現ベクターがある。使用に好適な他のベクターとしては、枯草菌(Bacillus subtilis)などの桿菌、サルモネラ菌(Salmonella)、セラチア菌(Serratia)、および種々のシュードモナス菌(Pseudomonas)種などの他の腸内細菌科に由来の発現ベクターが挙げられる。これらの発現ベクターは、典型的に宿主細胞と適合した発現制御配列(例えば、複製起源)を含有する。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(Trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダに由来のプロモーター系など、種々多数の周知のプロモーターが存在する。これらのプロモーターは典型的に、任意にオペレーター配列による発現を制御し、例えば、転写および翻訳を開始および完結させるためにリボソーム結合部位配列を有する。必要ならば、アミノ末端メチオニンは、Metコドン5’の挿入および下流核酸挿入物によるインフレームにより提供できる。また、核酸挿入物のカルボキシ末端伸長は、標準的なオリゴヌクレオチドの変異誘発手法を用いて除去できる。
【0106】
さらに、酵母発現系を用いることができる。酵母発現系には幾つかの利点がある。第一に、酵母分泌系で産生されたタンパク質は、正確なジスルフィドペアリングを示すという証拠が存在する。第二に、翻訳後のグリコシル化は、酵母分泌系により効率的に実施される。酵母(Saccharomyces cerevisiae)プレ−プロ−アルファ−因子リーダー領域(MF”−1遺伝子によりコード化された)は、酵母からのタンパク質分泌を方向付けるためにルーチン的に使用される(Brake, et al., "varies-Factor-Directed Synthesis and Secretion of Mature Foreign Proteins in Saccharomyces cerevisiae." Proc. Nat. Acad. Sci., 81: 4642-4646 (1984))。プレ−プロ−アルファ−因子のリーダー領域は、シグナルペプチドおよびKEX2遺伝子によりコード化された酵母プロテアーゼに関する認識配列を含むプロセグメントを含有する。この酵素は、Lys−Argジペプチド切断シグナル配列のカルボキシル側の前駆体タンパク質を切断する。VEGFコード化配列は、インフレームでプレ−プロ−アルファ−因子リーダー領域に融合できる。次にこの構成体を、アルコールデヒドロゲナーゼIプロモーターまたは解糖プロモーターなど、強力な転写プロモーターの制御下に置く。この核酸コード化配列は、翻訳終結コドンに次いで転写終結シグナルが続く。あるいは、核酸コード化配列は、アフィニティークロマトグラフィによる融合タンパク質の精製を容易にするために使用できるSj26またはベータ−ガラクトシダーゼなどの第二のタンパク質コード化配列に融合できる。融合タンパク質の成分を分離するためにプロテアーゼ切断部位の挿入により、酵母の発現に用いられる構成体に適用できる。効率的な翻訳後のグリコシル化および組換えタンパク質の発現はまた、バキュロウィルス系で達成できる。
【0107】
哺乳動物細胞は、折りたたみおよびシステインペアリングなどの重要な翻訳後修飾に好都合である環境でタンパク質の発現、複雑な炭水化物構造の添加、および活性なタンパク質の分泌を可能にする。哺乳動物細胞における活性なタンパク質の発現に有用なベクターは、強力なウィルスまたは他のプロモーターとポリアデニル化シグナルとの間にタンパク質コード化配列の挿入を特徴とする。このベクターは、耐ヒグロマイシン、耐ゲンタマイシンを付与する遺伝子、もしくは選択性マーカーとしての使用に好適な他の遺伝子または表現型、または遺伝子増幅のために耐メトトレキサートを含有できる。キメラタンパク質コード化配列は、耐メトトレキサートコード化ベクターを用いるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系、または好適な選択性マーカーを用いる他の細胞系に導入できる。形質転換細胞にベクターDNAの存在は、サザンブロット解析により確認することができる。挿入コード化配列に相当するRNAの産生は、ノーザンブロット解析により確認できる。無処置ヒトタンパク質を分泌できる多くの他の好適な宿主細胞系としては、当技術分野において開発されており、CHO細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、ジャーカット細胞などが挙げられる。これらの細胞に対する発現ベクターは、複製起源、プロモーター、エンハンサーなどの発現対照配列、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列などの必要な情報処理部位を含むことができる。代表的な発現対照配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウィルス、ウシパピローマウィルスなどに由来のプロモーターである。対照の核酸セグメントを含有するベクターは、細胞宿主のタイプに依って変わる周知の方法により宿主細胞に移入させることができる。例えば、塩化カルシウムの変換は、通常、原核細胞に利用されるが、一方、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、またはリポフェクチン媒介トランスフェクションまたは電気穿孔は、他の細胞宿主に用いることができる。
【0108】
遺伝子またはハイブリッド遺伝子の発現は、in vivoであってもin vitroであってもよい。in vivo合成は、ベクターに関して宿主細胞として役立ち得る原核細胞または真核細胞を形質転換することを含む。例えば、真菌を形質転換する技法は文献に周知であり、例えば、Beggs(同書)、Hinnen et al., (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1929-1933, 1978)、Yelton et al., (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 1740-1747, 1984)、およびRussell(Nature 301: 167-169, 1983)により記載されている。電気穿孔など、クローン化DNA配列を真菌細胞に導入する他の技法(Becker and Guarente, Methods in Enzymol. 194: 182-187, 1991)を使用できる。宿主細胞の遺伝子型は、一般に発現ベクターに存在する選択性マーカーにより補足される遺伝子欠陥を含有する。特定の宿主および選択性マーカーの選択は、通常の当技術分野レベルに十分に入る。
【0109】
本発明の修飾VEGFおよびVEGF融合タンパク質を含むクローン化DNA配列は、例えば、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションにより培養哺乳動物細胞に導入できる(Wigler et al., Cell 14: 725, 1978; Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7: 603, 1981;Graham and Van der Eb, Virology 52: 456, 1973)。電気穿孔など、哺乳動物細胞へクローン化DNA配列を導入する他の技法(Neumann et al., EMBO T. 1: 841-845, 1982)、またはリポフェクションもまた使用できる。クローン化DNAを組込んだ細胞を確認するために、選択性マーカーは一般に、対象の遺伝子またはcDNAと共に細胞に導入される。培養哺乳動物細胞の使用に好ましい選択性マーカーは、ネオマイシン、ヒグロマイシン、およびメトトレキサートなどの耐薬物を付与する遺伝子を含む。この選択的マーカーは、増幅可能な選択性マーカーであり得る。特に好ましい増幅可能な選択性マーカーは、DHFR遺伝子である。好ましい増幅可能な選択性マーカーは、DHFR(U.S. Patent 6,291,212を参照)、cDNA(Simonsen and Levinson, Pro. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2495-2499, 1983)である。選択性マーカーは、Thilly(Mammalian Cell Technology、Butterworth Publishers社、ストーンハム、マサチューセッツ州)によりレビューされており、選択性マーカーの選択は、通常の当技術分野のレベルに十分に入る。
【0110】
あるいは、遺伝子発現は、in vitro発現系に生じることができる。例えば、in vitro転写系は、市販されており、比較的大量のmRNAを合成するためにルーチン的に使用される。このようなin vitro転写系において、修飾VEGFをコードする核酸は、転写プロモーターに隣接する発現ベクターにクローン化されるであろう。例えば、ブルースクリプトIIクローニングおよび発現ベクターは、強力な原核細胞転写プロモーターによりフランクされる複数のクローニング部位を含有する(Stratagene Cloning Systems社、La Jolla、カリフォルニア州)。ブルースクリプトベクターなどのDNAテンプレートからRNAのin vitro合成用の全て必要な試薬を含有するキットを入手できる(Stratagene Cloning Systems社、La Jolla、カリフォルニア州)。このようなシステムによりin vitroで生成されるRNAは、次にin vitroで翻訳されて所望のVEGF類縁体を生成できる(Stratagene Cloning Systems社、La Jolla、カリフォルニア州)。
【0111】
VEGF受容体アンタゴニストを生成する別の方法は、タンパク質化学技法により2つのペプチド類またはポリペプチド類を一緒に結合することである。ペプチド類またはポリペプチド類は、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(t−ブチルオキシカルボニル)化学を用いる現在利用できる実験室装置を用いて化学的に合成できる(Applied Biosystems社、フォスターシティー、カリフォルニア州)。当業者は、ハイブリッドVEGFタンパク質に相当するペプチドまたはポリペプチドは、標準的な化学反応により合成できることを容易に認識できる。例えば、ペプチドまたはポリペプチドを合成でき、その合成樹脂から切断されないが、一方、ハイブリッドペプチドの他の断片を合成でき、続いて樹脂から切断され、それによって他の断片上に機能的に遮断される末端基を暴露する。ペプチド縮合反応により、これら2つの断片は、ハイブリッドペプチドを形成するために、それぞれカルボキシル末端およびアミノ末端にペプチド結合を介して共有結合できる(Grant, G. A., "Synthetic Peptides: A User Duide," W. H. Freeman and Co., N. Y. (1992)およびBodansky, M and Trost, B. Ed., "Principles of Peptide Synthesis," Springer-Verlag Inc., N. Y. (1993))。あるいは、ペプチドまたはポリペプチドは、上記のとおりin vivoにより独立して合成できる。単離されたら、これら独立したペプチド類またはポリペプチド類は、同様のペプチド縮合反応を介してVEGFを形成するために結合できる。例えば、より大きなペプチド断片、ポリペプチド類または全体のタンパク質ドメインを生成するために、クローン化または合成ペプチドセグメントの酵素的または化学的結合より、比較的短いペプチド断片を結合させることができる(Abrahmsen, L. et al., Biochemistry, 30: 4151(1991);Dawson, et al., "Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation," Science, 266: 776-779 (1994))。
【0112】
本発明はまた、アンタゴニスト活性を有する修飾VEGFの断片を提供する。本発明のポリペプチド断片は、ペプチド類を産生できる発現系においてペプチド類をコードする核酸をクローニングにより得られた組換えタンパク質であり得る。例えば、アミノまたはカルボキシル末端アミノ酸は、天然またはVEGFタンパク質および上記の多数の利用できるアッセイのうちの1つで試験されたそれぞれの活性から連続的に除去できる。別の例において、本発明の修飾タンパク質は、アミノ末端またはカルボキシ末端アミノ酸の一部、または修飾VEGFの精製を容易にできるビオチンなど、ポリペプチド断片または他の部分で置換されたタンパク質の内部領域さえも有することができる。例えば、コード化領域の発現がハイブリッドポリペプチドを生じるように、修飾VEGFは、発現ベクターに2つのポリペプチド断片をコードするそれぞれの核酸をクローニングするペプチドを介してマルトース結合タンパク質に融合できる。ハイブリッドポリペプチドは、アミロースアフィニティーカラム上を通過させることによりアフィニティー精製でき、次いで、修飾VEGFは、ハイブリッドポリペプチドを特異的プロテアーゼ因子Xaにより切断することによりマルトース結合領域から分離できる(例えば、New England Biolabs Product社のカタログ、1996年、164頁を参照)。
【0113】
本発明のVEGF類縁体は、ヘテロダイマーであってもホモダイマーであってもよい。一実施形態において、VEGF類縁体は、1つ以上のVEGFサブユニットを含有する融合タンパク質である。本発明のVEGF融合タンパク質は、ペプチド類を結合させることにより分離された2つ以上のVEGFサブユニットを含有する単鎖タンパク質であり得る。別の実施形態において、本発明のVEGF類縁体は、毒素に融合された1つ以上のVEGFサブユニットを含有する融合タンパク質である。本発明のVEGF類縁体およびVEGF類縁体融合タンパク質は、当技術分野に知られた手段により単離され、精製できる。
【0114】
本発明のVEGF類縁体の全ては、少なくとも1つのVEGFサブユニットにおける少なくとも1つの塩基性アミノ酸置換を含有する。本発明の一実施形態において、本発明のVEGF類縁体は、少なくとも1つまたは少なくとも2つのVEGFサブユニットにおいて、少なくとも2つの塩基性アミノ酸置換、少なくとも3つの塩基性アミノ酸置換、少なくとも4つの塩基性アミノ酸置換または少なくとも5つの塩基性アミノ酸置換を含有する。
【0115】
本発明は、VEGF活性断片、すなわち、完全長でないタンパク質であるペプチドを含有するVEGF類縁体を含む。本発明の修飾VEGFの活性断片はまた、直接合成できるか、またはより大きく修飾されたVEGFタンパク質の化学的破壊または機械的破壊により得ることができる。活性断片は、関連する活性、例えば、結合活性または調節活性を有する天然アミノ酸配列に由来する、少なくとも5連続アミノ酸、少なくとも10連続アミノ酸、少なくとも20連続アミノ酸、少なくとも30連続アミノ酸、少なくとも40連続アミノ酸、少なくとも50連続アミノ酸、少なくとも60連続アミノ酸、少なくとも70連続アミノ酸、少なくとも80連続アミノ酸、少なくとも90連続アミノ酸、少なくとも100連続アミノ酸、少なくとも110連続アミノ酸、少なくとも120連続アミノ酸、少なくとも130連続アミノ酸、少なくとも140連続アミノ酸、少なくとも150連続アミノ酸、少なくとも160連続アミノ酸のアミノ酸配列として定義される。他の配列に結合されようとなかろうと、この断片はまた、修飾VEGFと比較してペプチドの活性が著しく変化または損なわれないという条件で、挿入、削除、置換、または特定の領域もしくは特定のアミノ酸残基の他の選択された修飾を含むことができる。これらの修飾は、その生体寿命および/または生物活性などを増加させるためにジスルフィド結合できるアミノ酸を除去/添加するように何らかの追加の性質を提供する。いずれの場合においても、当該ペプチドは、結合ドメインなどにおいて結合活性、結合調節などの生物活性を有さなければならない。VEGFの機能的または活性領域は、ホルモンの特定領域の変異誘発、次いで発現ポリペプチドの発現および試験により確認できる。このような方法は、当業熟練実務者にとって容易に明らであり、受容体をコードする核酸の部位特異的変異誘発を含むことができる(Zoller, M. J. et al.)。
【0116】
使用方法
本発明は、VEGF媒介血管新生を軽減させるように本明細書に記載されたVEGF−A165およびVEGF−A165b類縁体などのVEGF類縁体と、細胞発現キナーゼドメイン受容体(KDR)とを接触させることを含み、VEGF媒介血管新生を軽減させる方法を包含する。本発明の方法により標的化されるKDR発現細胞は、原核細胞および真核細胞のいずれか、または双方を含むことができる。このような細胞はin vitroで維持できるか、またはそれらがin vivoで、例えば、癌または別の血管新生関連疾患と診断された患者または対象に存在し得る。
【0117】
本発明は、本明細書に記載された任意のVEGF受容体アンタゴニストの治療的有効量により、血管新生関連疾患または病態と診断された患者を処置する方法を含み、前記血管新生関連疾患または病態が軽減されるか、または阻止されるように前記患者に前記VEGF類縁体または融合タンパク質を投与することを含む。血管新生の軽減を測定するために、患者の結果を、プラセボ投与の患者と比較できる。代表的な血管新生関連疾患としては、本出願を通して記載されており、限定はしないが、腫瘍および新生物、血管腫、リウマチ様関節炎、骨関節炎、敗血症性関節炎、喘息、アテローム硬化症、特発性肺線維症、血管再狭窄、動静脈形成異常、髄膜腫、血管新生緑内障、乾癬、カポジ症候群、血管線維腫、血友病関節、過形成性瘢痕、オースラー−ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、強皮症、トラコーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、血管接着病状、滑膜炎、皮膚炎、子宮内膜症、翼状皮膚、糖尿病性網膜症、角膜損傷または移植に関連する新血管新生、創傷、ただれ、および潰瘍(皮膚、胃および十二指腸)からなる群から選択される疾患が挙げられる。
【0118】
血管新生の増加、血管新生の減少、あるいは血管新生調節不全により引き起こされるか、または悪化する疾患患者は、VEGF類縁体単独または既知のVEGF受容体アンタゴニスト、抗血管新生療法、抗癌療法、あるいは疾患または病態を処置するために知られた他の療法と組合わせて処置できる。本明細書に用いられる用語「療法」は、限定はしないが、既知の薬物を含む。既知のVEGF受容体アンタゴニストまたは抗血管新生療法としては、限定はしないが、VEGF/KDR相互作用を妨げ、および/またはVEGFのKDRへの結合を遮断するペプチド類のようなKDRシグナル伝達経路を遮断する薬剤、VEGFに対する抗体、KDRに対する抗体、可溶性受容体、チロシンキナーゼ阻害剤、抗VEGF免疫毒素、リボザイム、アンチセンス媒介VEGF抑制剤、および硫酸化低分子量グリコールスプリットヘパリンが挙げられる。
【0119】
本発明のVEGF類縁体が、別の療法と組合わせて使用される場合、それらの療法の結合により相乗効果をもたらす。さらに、本発明のVEGF類縁体は、望ましくない副作用に関連した薬物と組合わせ得る。VEGF類縁体とこのような薬物との結合により、副作用を有する薬物の有効投与量は、生じる副作用の確率を低減するように低下させることができる。
【0120】
本発明は、癌と診断された患者を、本明細書に記載された任意のVEGF受容体アンタゴニストの治療的有効量により処置する方法を含み、前記癌の拡がりを軽減するか、または阻止するように、前記患者に前記アンタゴニストを投与することを含む。本発明は、癌と診断された患者を、本明細書に記載された任意のVEGF受容体アンタゴニストの治療的有効量により処置する方法を含み、腫瘍の成長を軽減するか、または阻止するように、前記患者に前記アンタゴニストを投与することを含む。一実施形態において、VEGF類縁体は、VEGF誘導血管新生を軽減させるか、または防止し、血管新生を阻止することによって機能する。別の実施形態において、VEGF類縁体は、腫瘍細胞、内皮細胞および/またはVEGF受容体などの血管細胞を標的にするか、または死滅させることによって血管新生を防止するか、または軽減させるVEGF−毒素融合タンパク質である。
【0121】
本発明の方法により処置可能な癌としては、限定はしないが、膀胱癌、乳癌、肝癌、骨癌、腎癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、腎癌、肺癌、脳癌および皮膚癌からなる群から選択されるものなど、全ての固形腫瘍および転移癌が挙げられる。本発明は、限定はしないが、本発明のVEGF類縁体単独で、当技術分野に公知の方法(U.S. Patent 6,596,712を参照)により化学療法と併用するか、または放射線療法と併用した癌の処置を含む。例えば、VEGF類縁体は、セシウム放射線、イリジウム放射線、ヨウ素放射線、またはコバルト放射線により使用できる。
【0122】
本発明は、不妊症と診断された患者を、本明細書に記載された任意のVEGF受容体アンタゴニストの治療的有効量により処置する方法を含み、不妊症が当業者により処置されると思われるように前記患者に前記アンタゴニストを投与することを含む。不妊症は、卵母細胞の定量、受精率、胚盤胞形成率、および胚芽形成率など、当技術分野に公知の定量的および定性的パラメータにより測定できる。このような不妊症疾患としては、限定はしないが、原因不明女性不妊症、および子宮内膜症、原因不明男性不妊症など、患者の受精脳を損なうVEGF発現に関連する疾患が挙げられる。本発明は、限定はしないが、VEGF類縁体単独の投与、または他の抗VEGF処置、抗血管新生処置、および/または不妊症処置と組合わせた投与により不妊症の処置を含む。
【0123】
本発明はまた、血管新生関連眼疾患と診断された患者を、本明細書に記載された任意のVEGF受容体アンタゴニストの治療的有効量により処置する方法を含み、前記眼疾患が軽減されるか、または阻止されるように前記患者に前記アンタゴニストを投与することを含む。このような眼疾患としては、限定はしないが、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、および加齢性黄斑変性など異常な眼内新血管新生に関連する眼疾患が挙げられる。本発明は、限定はしないが、VEGF類縁体単独の投与、または他の抗VEGF処置、抗血管新生処置、および/または他の眼疾患処置と組合わせた投与により血管新生関連眼疾患の処置を含む。例えば、本発明のVEGF類縁体は、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、および加齢関連黄斑変性の処置のために、VEGFに結合してVEGFの活性を阻止することにより作用するPEG化抗VEGFアプタマーであるPfizer社のMacugen(ペガプタニブ)と共に患者に投与できるであろう。
【0124】
本発明はまた、血管新生関連の炎症病態または自己免疫疾患と診断された患者を、本明細書に記載された任意のVEGF受容体アンタゴニストの治療的有効量により処置する方法を含み、前記炎症病態が軽減されるか、または阻止されるように前記患者に前記アンタゴニストを投与することを含む。このような炎症病態または疾患としては、限定はしないが、全てのタイプの関節炎、特にリウマチ様関節炎ならびに骨関節炎、喘息、肺線維症および皮膚炎など、VEGFの発現およびVEGFによる細胞の活性化に関連する炎症障害が挙げられる。本発明は、限定はしないが、VEGF類縁体単独の投与、または他の抗VEGF処置、抗血管新生処置、炎症療法、および/または自己免疫疾患処置と組合わせた投与により血管新生関連の炎症病態または自己免疫疾患の処置を含む。
【0125】
本発明の別の実施形態において、本発明の修飾VEGFタンパク質は、診断薬として使用される。本発明のVEGF類縁体またはVEGF受容体は、タンパク質またはペプチドアレイにおけるなど、合成表面にディスプレイできる。このようなアレイは、当技術分野に周知であり、血管新生に関与することが知られているKDRおよび他の受容体に結合するVEGF類縁体をスクリーンするために使用できる。本明細書に開示されたVEGF類縁体は、KDRおよび血管新生に関与することが知られている他の受容体に結合する推定上のVEGF類縁体の能力を評価するための陽性対照として使用できる。本発明はまた、血管新生に関与し得る推定上のVEGF受容体をスクリーンするために本発明のVEGF類縁体を含むアレイを含む。
【0126】
本明細書に記載された類縁体の特性化に好適なアッセイは、参照としてその全体が本明細書に組み込まれているPCT/US/99/05908に記載されている。例えば、種々の免疫アッセイは、限定はしないが、ラジオイムノアッセイなどの技法を用いる競合的結合アッセイおよび非競合的アッセイシステム、ELISA、サンドイッチ免疫アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュ免疫アッセイ、ウェスタンブロット、沈殿反応、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、タンパク質Aアッセイ、および免疫電気泳動アッセイなどが使用できる。
【0127】
製薬製剤
本発明は、本発明の有効量の治療薬を対象に投与することによる診断法および処置法を提供する。対象は、限定はしないが、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物であり、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。特定の実施形態において、非ヒト哺乳動物が対象である。
【0128】
本発明の製薬組成物は、製薬的に許容できる担体と組合わせて本発明の1種以上の修飾VEGFタンパク質の有効量を含む。当該組成物は、標的にされる特定の疾患の処置に好適な他の既知の薬物を含む。本発明のVEGF受容体アンタゴニストの有効量とは、化合物の不在下で生じると思われるものと比較して、内皮細胞のVEGF刺激を遮断、阻止または軽減する量のことであり;言い換えれば、化合物の不在下で生じると思われるものと比較して、内皮の血管新生活性を減少させる量のことである。この有効量(および投与様式)は、個々の根拠に基づいて判定される;すなわち、使用される特定の治療用VEGF受容体アンタゴニストおよび対象の考慮事項(サイズ、年齢、全身の健康状態)、処置を受ける病態(癌、関節炎、眼疾患など)、処置を受ける症状の重症度、求められる成績、使用される特定の担体または製薬製剤、投与経路、および当業者に明白と思われる他の因子に基づくであろう。この有効量は、当技術分野に公知である技法を用いて当業者により決定することができる。本明細書に記載された化合物の治療的有効量は、当技術分野に公知のin vitro試験、動物モデル、または他の用量応答試験を用いて判定できる。本発明のVEGFタンパク質は、単独または他の療法と併用して使用できる。治療的有効量は、VEGF類縁体が別の療法と併用して使用される場合に軽減できる。
【0129】
本発明の製薬組成物は、皮内投与、皮下投与、経口投与、直腸投与、膣投与、非経口投与、腹腔内投与、局所投与、肺投与、鼻腔内投与、舌下投与、眼投与、くも膜下投与、硬膜外投与、または別の投与経路に好適な製剤に調製、包装、または販売できる。化合物は、任意の好適な経路により、例えば、輸液またはボーラス注入、上皮または皮膚粘膜内層(すなわち、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜など)を介して投与でき、ならびに他の生物活性剤と共に投与できる。投与は、全身であっても局所的であってもよい。例えば、本発明の製薬組成物は、ミクロ注入を介して腫瘍に局所的に投与できる。さらに、投与は単回投与でも連続投与であってもよい。
【0130】
製薬使用に関して、本発明のVEGF類縁体は、製薬的に許容できる担体と組合わせて使用でき、製薬的に許容できる希釈剤または賦形剤を任意に含むことができる。さらに、本発明のVEGF類縁体は、限定はしないが、抗VEGF療法、抗血管新生療法、抗癌療法、不妊症療法、自己免疫疾患療法、炎症療法、眼疾患療法、および皮膚疾患療法など、他の公知の療法と併用して使用できる。
【0131】
したがって、本発明は、対象への投与に好適な製薬組成物を提供する。担体は、その組成物が非経口投与に適合させる場合に液体であっても、または経口投与に処方された固体、すなわち、錠剤または丸剤であってもよい。さらに、担体は、その組成物が吸入に適合させる場合に噴霧可能な液体または固体の形態であり得る。非経口的に投与される場合、組成物は、許容できる非経口用担体で無発熱物質である必要がある。あるいは、活性化合物は、既知の方法を用いてリポソーム中で処方またはカプセル化できる。他の考慮された製剤としては、突出ナノ粒子および免疫学的ベースの製剤が挙げられる。
【0132】
リポソームは、閉じ込め水性容量を含有する完全閉鎖脂質二層膜である。リポソームは、単層(単一膜)であっても多層(複数膜二層を特徴とする玉ねぎ様構造で、各層が水により次の層から分離されている)であってもよい小胞である。この二層は、疎水性「尾部」領域と親水性「頭部」領域とを有する2つの脂質単層を含む。二層膜において、脂質単層の疎水性(非極性)「尾部」は二層の中心に向けられており、一方、親水性(極性)「頭部」は水相に向けられている。
【0133】
本発明のリポソームは、当技術分野に公知の任意の方法により形成できる。幾つかの方法が、本発明のリポソームを形成するために使用できる。例えば、複数多層小胞(MLV)、安定な複数多層小胞(SPLV)、小型の複数単層小胞(SUV)、または逆相蒸発複数小胞(REV)を使用できる。しかしながら、複数MLVは、利用されるフィルターサイズに依ってサイズの大きな複数単層小胞(LUV)を形成するフィルターを通して押出されることが好ましい。一般に、30、50、60、100、200または800nmのポアのポリカーボネートフィルターを使用できる。その関連部分が参照として本明細書に組み込まれている、Cullis et al. のU.S. Pat. No. 5,008,050に開示されている本法において、リポソーム懸濁液を、押出しデバイスを反復して通過させることができるため、均質なサイズ分布のリポソーム集団を生じる。
【0134】
例えば、ろ過は、ストレートスルー膜フィルター(Nucleporeポリカーボネートフィルター)または湾曲パスフィルター(例えば、0.1μmサイズのNucleopore Membrafilフィルター(混合セルロースエステル))を通すか、または均質化などの代替サイズ減少技法により実施できる。リポソームのサイズは、直径が約0.03から上記の約2ミクロン;好ましくは、約0.05から上記の0.3ミクロン、最も好ましくは約0.1から約0.2ミクロンと変わり得る。このサイズ範囲は、複数のMLV、SPLV、またはLUVであるリポソームを含む。
【0135】
本発明のリポソーム製剤に使用できる脂質としては、合成または天然リン脂質が挙げられ、他の中でもとりわけ、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、スフィンゴミエリン(SPM)およびカルジオリピンを単独でまたは組合わせて、かつまたコレステロールとの組合わせで挙げることができる。本発明に有用なリン脂質としてはまた、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)およびジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)挙げることができる。他の実施形態において、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、または水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)もまた使用できる。ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)およびジアラキドノイルホスファチジルコリン(DAPC)も同様に使用できる。
【0136】
リポソームの調製中、脂質を懸濁させるために有機溶媒も使用できる。本発明に使用される好適な勇気溶媒としては、脂質を可溶化する、種々の極性および誘電性を有するもの、例えば、他にもあるが中でも、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチレンクロリド、およびベンゼン:メタノール(70:30)などの溶媒混合物が挙げられる。その結果、脂質を含有する溶液(脂質および他の成分が全体に均一に分散している混合物)が形成される。溶媒は一般に、それらの生体適合性、低毒性、および可溶化能力に基づいて選択される。
【0137】
本発明のVEGF受容体アンタゴニストをリポソーム内に封入するために、関連部分が参照として本明細書に組み込まれているU.S. Patent No. 5,380,531に記載された方法が、本発明の類縁体と共に使用できる。
【0138】
本発明のVEGF類縁体を含有するリポソームは、持続放出製剤、ならびに反復投与を必要とする多数の疾患状態または薬理学的病態の治療において、哺乳動物、特にヒトに治療的に使用できる。本発明の薬剤を含有するリポソームの投与様式により、VEGF類縁体を送達できる生体内の部位および細胞が決定され得る。
【0139】
本発明のリポソームは、単独で投与できるが、一般には、意図された投与経路および標準的な製薬実践に関して選択された製薬担体と混合して投与される。該製剤は、非経口的に、例えば、静脈内に注入できる。非経口的投与では、それらは、例えば、他の溶質、例えば、等張が必要であるか、または望ましいならば、該溶液を等張にする上で十分な塩類またはグルコースを含有し得る滅菌水溶液の形態で使用できる。本発明のリポソームは、皮下に、または筋肉内に使用することもできる。該製剤の特定の性質に依存して、他の使用法も、当業者に予想できると思われる。
【0140】
経口投与様式では、本発明のリポソーム製剤は、錠剤、カプセル剤、舐剤、トローチ剤、散剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤および懸濁剤などの形態で使用できる。錠剤の場合、使用できる担体としては、乳糖、クエン酸ナトリウムおよびリン酸塩が挙げられる。澱粉、滑剤、およびタルクなどの種々の崩壊剤が、一般に錠剤中に使用される。カプセル形態における経口投与では、有用な希釈剤は、乳糖および高分子量ポリエチレングリコールである。水性懸濁剤が経口投与に必要な場合、該活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と組み合わされる。所望の場合、一定の甘味剤および/または芳香剤を添加できる。
【0141】
局所投与様式では、本発明の製薬製剤は、液剤、懸濁剤、ゲル剤、油剤、軟膏剤または軟膏などの投与形態に組み込むことができる。このような局所製剤の調製は、例えば、Gennaro et al.(1995) Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishingによって例示される製薬製剤の技術に記載されている。局所適用では、該組成物は、粉末またはスプレー、特に、エアロゾル形態におけるものとしても投与し得る。疾患状態または薬理学的病態の治療におけるヒトへの投与では、処方医師が、所与のヒト対象に対する薬剤の適切な投与量を最終的に決定することになり、これは、個体の年齢、体重および応答、ならびに使用される薬剤の薬物動態によって変わることが予想され得る。
【0142】
本発明の製薬組成物は、生分解性ミクロスフェアなどのバイオポリマーのデポー製剤をさらに含む。薬剤の放出速度を制御し、薬剤を体内の特定の部位に標的化し、それによって、治療的応答を最適化し、毒性の副作用を減少させ、反復注入の不都合を除くために、生分解性ミクロスフェアが用いられる。生分解性ミクロスフェアは、移植および除去に外科的操作を必要としない点で、大型ポリマーインプラントに対して利点を有する。
【0143】
本発明の文脈で用いられる生分解性ミクロスフェアは、該タンパク質の放出を遅らせ、作用部位における治療的有効量を、長期間保持するポリマーによって形成される。該ポリマーは、エチルセルロース、ポリスチレン、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(乳酸)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)から選択できる。PLGAコポリマーは、再生可能な徐放特性を有する合成生分解性および生体適合性ポリマーの1つである。PLGAコポリマーの利点は、それらの分解速度が、数ヶ月から数年の範囲であり、ポリマーの分子量およびポリグリコール酸残基に対するポリ乳酸の比率の関数であることである。米国では、LupronおよびZoladex、欧州では、Enantone Depot、Decapeptil、およびPariodel LAなど、非経口適用にPLGAを用いているいくつかの製品が、現在市販されている(レビューに関しては、Yonsei, Med J. 2000 Dec; 41(6):720-34を参照)。
【0144】
本発明の製薬組成物はさらに、鼻上皮の密着帯を通す透過性の増加が示されていることから、経鼻投与に好適な製剤で、調製、充填、または販売できる(Pietro and Woolley, The Science behind Nastech's intranasal delivery technology. Manufacturing Chemist, August, 2003)。このような製剤は、該活性成分を含み、約0.5ナノメートルから約7ナノメートル、好ましくは、約1ナノメートルから約6ナノメートルの範囲の直径を有する乾燥粒子を含み得る。このような組成物は、パウダーを分散させるために噴射剤の流れを向けることのできるドライパウダーリザバーを含むデバイスを用いるか、または密封容器内に低沸点噴射剤中に溶解または懸濁させた該活性剤を含むデバイスなどの自己噴射溶媒/パウダー分散容器を用いた投与のために、ドライパウダーの形態が便利である。このようなパウダーは、好ましくは、該粒子の少なくとも98重量%が0.5ナノメートル超の直径を有し、該粒子の少なくとも95%の数が7ナノメートル未満の直径を有する粒子を含む。より好ましくは、該粒子の少なくとも95重量%が1ナノメートル超の直径を有し、該粒子の少なくとも90%の数が6ナノメートル未満の直径を有する。ドライパウダー組成物は、好ましくは、砂糖などの微細な固体粉末希釈剤を含み、単位用量形態で便利に提供される。
【0145】
経鼻送達用に処方された本発明の製薬組成物は、溶液または懸濁液の小滴の形態における該活性成分も提供できる。このようなこのような製剤は、該活性成分を含む水性または希釈アルコール溶液または懸濁液の任意に滅菌したものとして、調製、充填、または販売できる。このような製剤は、限定はしないが、サッカリンナトリウムなどの芳香剤、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、またはメチルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤など、1種以上の添加成分を、さらに含む。この投与経路で提供される小滴は、約0.1ナノメートルから約200ナノメートルの範囲の平均直径を有することが好ましい。
【0146】
鼻腔内投与に好適な他の製剤は、該活性剤を含み、約0.2マイクロメートルから500マイクロメートルの範囲の平均直径を有する粗パウダーである。このような製剤は、スナッフを用いる、すなわち、鼻近くに保持したパウダーの容器から、鼻通路を通しての急速な吸入による様式で投与される。
【0147】
経鼻投与に好適な製剤は、例えば、約0.1%(w/w)の低さおよび100%(w/w)の高さの該活性剤を含み得、さらに、本明細書に記載された1種以上の添加成分を含み得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は吸入によって投与できる。吸入療法では、該活性成分は、用量計測吸入器による投与に有用な溶液中に、またはドライパウダー吸入器に好適な形態にあり得る。他の実施形態において、該組成物は、気管支洗浄による投与に好適である。
【0149】
経口投与に好適な製剤としては、硬または軟ゼラチンカプセル剤、丸剤、コーティング錠剤などの錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤または吸入剤、およびそれらの放出制御形態が挙げられる。
【0150】
本発明のVEGFアンタゴニストは、急性的に投与できる(すなわち、炎症に至るイベントの発症中、またはそれからまもなく)か、または投与しなければ生じると考えられる症状の進行を低減または寛解させるために、変性疾患の過程の間に投与できる。投与のタイミングおよび間隔は、対象の症状によって変わり、当業者によって決定されるとおり、数時間から数日の間隔で、数時間、数日、数週間またはより長期の時間経過にわたって投与できる。毎日の典型的な療法は、一日当たり約0.01μg/kg体重から、一日当たり約1mg/kg体重から、一日当たり約10mg/kg体重から、一日当たり約100mg/kg体重から、および一日当たり約1g/kg体重からであり得る。
【0151】
本発明のVEGF受容体アンタゴニストは、VEGFタンパク質、タンパク質製剤および治療される疾患を考慮して、静脈内、経口、経鼻、眼内、筋肉内、くも膜下内、または任意の好適な経路により投与できる。炎症性関節炎の治療のためには、修飾VEGFを滑液内に直接注入できる。固形腫瘍の治療のためには、修飾VEGFを腫瘍内に直接注入できる。皮膚疾患の治療のためには、修飾VEGFを、局所に、例えば、ローションまたはスプレーの形態で適用できる。くも膜下内投与、すなわち、脳腫瘍の治療のための投与は、脳内への直接注入を含み得る。あるいは、血液−脳関門を透過し、血液−脳関門を越えて該活性剤を輸送する能力のために選択されるペプチドまたは非タンパク質様部分である第2の分子(「担体」)に、修飾VEGFを結合または共役させることができる。好適な担体の例は、参照として本明細書にそれらの全体が組み込まれている、U.S. Patent Nos. 4,902,505、同5,604,198および同5,017,566に開示されている。
【0152】
本発明のVEGF受容体アンタゴニストを投与する代替法は、修飾VEGFタンパク質をコードする核酸配列を担持するベクターを対象に投与することによって実施され、該ベクターは、該タンパク質の発現および分泌を指示することができる。好適なベクターは、典型的には、DNAウィルス、RNAウィルス、およびレトロウィルスなどのウィルスベクターである。ベクター送達系を利用し、遺伝子療法を実施する方法は、当技術分野に知られている(最近のレビューに関しては、Lundstrom, 2003, Trends Biotechnol. 21(3): 117-22を参照)。
【0153】
遺伝子導入動物
受容体結合親和性、および任意にアンタゴニスト性を増加させた修飾VEGF構築体を含有する遺伝子導入非ヒト動物の作出が、本発明の一実施形態において考慮されている。
【0154】
遺伝子導入非ヒト動物の成功した作出は、例えば、内容の全体が参照として本明細書に組み込まれている、U.S. Patent 6,291,740 (September 18, 2001発行);U.S. Patent 6,281,408 (August 28, 2001発行);およびU.S. Patent 6,271,436 (August 7, 2001発行)などの多数の特許および刊行物に記載されている。
【0155】
乳牛、ブタ、ヤギ、ウマ、畜牛、およびヒツジを含む家畜哺乳動物などの動物の遺伝子組立てを変更する能力により、多数の商業的適用が可能になる。これらの適用としては、容易な採集形態で大量の外来性タンパク質を発現する(例えば、乳汁または血液内への発現)動物の作出、体重増加、飼料効率、屠体組成、乳汁産生または乳汁含量、疾病耐性および特定の微生物による感染に対する耐性を有する動物の作出および成長速度または生殖性能が増大した動物の作出が挙げられる。ゲノム内に外来DNA配列を含有する動物は遺伝子導入動物と称される。
【0156】
遺伝子導入動物作出のための最も広く用いられている方法は、受精胚の前核内へのDNAの微量注入である(Wall et al., J. Cell. Biochem. 49:113 [1992])。遺伝子導入動物作出の他の方法としては、胚へのレトロウィルスまたはレトロウィルスベクターの感染が挙げられる。移植前と移植後双方のマウス胚への、野生型または組換えレトロウィルスの感染が報告されている(Janenich, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 73:1260 [1976];Janenich et al., Cell 24: 519 [1981]; Stuhlmann et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:7151 [1984]; Jahner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6927 [1985]; Van der Putten et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 6148-6152 [1985];Stewart et al., EMBO J. 6: 383-388 [1987])。
【0157】
胚へのレトロウィルス感染の代替手段は、マウス胚の胞胚腔内へのウィルスまたはウィルス産生細胞の注入である(Jahner, D. et al., Nature 298: 623 [1982])。妊娠中期マウスの子宮内レトロウィルス感染を用いたマウスの生殖系への導入遺伝子の導入が報告されている(Jahner et al.,上記文献[1982])。遺伝子導入動物を作出するための、ウシ胚およびヒツジ胚へのレトロウィルスまたはレトロウィルスベクターの感染が報告されている。これらのプロトコルは、レトロウィルス粒子、またはレトロウィルス粒子を受精卵または初期胚の周囲空間内に流し入れる増殖停止(すなわち、マイトマイシンC処理した)細胞の微量注入を含む(PCT International Application WO 90/08832 [1990];およびHaskell and Bowen, Mol. Reprod. Dev.、40:386 [1995])。PCT International Application WO 90/08832には、2から8細胞期におけるヒツジ胚の周囲空間内への野生型ネコ白血病ウィルスBの注入が記載されている。注入胚由来の胎仔では、複数部位の組み込みが示されている。
【0158】
U.S. Patent 6,291,740(September 18, 2001発行)には、分裂細胞に形質導入するレトロウィルスベクターを用いた、成熟前卵母細胞および成熟した未受精卵母細胞(すなわち、受精前卵母細胞)への外来DNAの導入による遺伝子導入動物の作出が記載されている。この特許には、種々の組換えタンパク質の、サイトメガロウィルスプロモーターに駆動された、ならびに、マウス乳腺腫瘍LTRの発現に関する方法および組成物も記載されている。
【0159】
U.S. Patent 6,281,408(August 28, 2001発行)には、胚性幹細胞を用いて遺伝子導入動物を作出する方法が記載されている。簡単に述べると、遺伝子導入動物を作出するために、胚性幹細胞が、桑実胚と共に細胞共培養混合物中で用いられる。共培養前に、例えば、電気穿孔、微量注入またはレトロウィルス送達により、外来遺伝子材料を胚性幹細胞内に導入する。この様式でトランスフェクトされたES細胞は、ネオマイシンなどの選択マーカーにより、遺伝子の組み込みのために選択される。
【0160】
U.S. Patent 6,271,436(August 7, 2001発行)には、始原生殖細胞の単離、これらの細胞を培養して始原生殖細胞由来の細胞系を作出すること、始原生殖細胞と培養した細胞系双方の形質転換、およびこれらの形質転換した細胞および細胞系を用いて遺伝子導入動物を作出すること、を含む方法を用いる遺伝子導入動物の作出が記載されている。遺伝子導入動物を作出する効率は大いに増大し、それにより、遺伝子導入非齧歯類動物種の作出における相同的組換えの使用が可能になる。
【0161】
修飾VEGFタンパク質を含有するキット
さらなる実施形態において、本発明は、例えば、治療的または非治療的適用のために使用できるVEGF類縁体および/またはVEGF類縁体融合タンパク質を含有するキットを提供する。該キットはラベルを有する容器を含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、および試験管が挙げられる。該容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成できる。該容器は、上記のものなど、治療的または非治療的適用のために有効なVEGF類縁体またはVEGF融合タンパク質を含む組成物を保持する。該容器上のラベルは、該組成物が特定の療法、または非治療的適用に使用されることを示し、また、上記のものなどのin vivoまたはin vitro使用に関する指示も示し得る。
【0162】
本発明のキットは典型的に、上記の容器、ならびに、緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用を説明した添付文書などを含む、商業的に、および使用者の立場から望ましい材料を含む1つ以上の他の容器を含む。また、本発明のキットは、野生型VEGF165またはVEGF165bなどの野生型VEGFからなる対照も含むことができる。
【0163】
本発明を説明し例示するために、以下の実施例が提供されている。したがって、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。当業者は、他の多くの実施形態もまた、上記の本明細書および請求項に記載されている本発明の範囲に入ることを理解するであろう。
【実施例】
【0164】
実施例
実施例1:VEGF受容体アンタゴニストの設計
本発明のVEGF−Aアンタゴニストは、野生型VEGF−Aに比較して、受容体結合親和性を増加させ、生物活性を低下させるために設計された。これを行った一つの方法は、VEGF−Aのループに正電荷を加えることによるものであった。超アンタゴニストを設計するためのこのアプローチは、はしないが、相同性モデリング、配列比較、電荷スキャニング変異誘発、ならびに、結合モノマーの文脈におけるモノマーの結合および変異の導入など、当技術分野に知られた種々の方法の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0165】
バミン(Vammin)または蛇毒VEGFは、高親和性でKDR−IgGに結合し、in vitroで血管内皮細胞の増殖を強力に刺激することが示されている(参照としてその全体が本明細書に組み込まれている、Yamazaki et al., 2003, J. Biol. Chem. 278, 51985-51988を参照)。VEGF−A受容体アンタゴニストは、バミンに対するVEGF165の相同性に基づいて設計された。VEGF165は、72位と73位にグルタメート残基を有するが、一方、バミンは、これらの位置に、グリシンおよびリシンをそれぞれ含有する。72位および73位に2つの塩基性アミノ酸残基を含有するようにVEGF−Aを修飾することによって、該修飾VEGF−Aは、野生型VEGF−Aに比較して、結合親和性の有意な増加を示した(図3A)。
【0166】
実施例2:VEGF受容体アンタゴニストの特性化
VEGF類縁体、I83K、E44R、E72RE73R、E67KおよびQ87Kを作出し、野生型VEGFに比較して、KDRに結合する能力および細胞増殖を減少させるそれらの能力に関してアッセイした。
【0167】
方法
酵母細胞によって発現したVEGF類縁体を、固定化KDR−Fcと共にインキュベートし、KDR−Fcに結合する該類縁体の能力をアッセイした。結合アッセイは以下のとおり実施した。
1.Nunc MaxiSorp(商標)96マイクロウェルプレートを、150ng/ウェルのKDR−Fc(R&D System社)および100μlの50mM炭酸水素ナトリウム緩衝液(15mM NaCO+35mM NaHCO)、pH9.6でコーティングした。試験した各VEGF類縁体および野生型VEGFは、別々のプレートを用いた。
2.該プレートを、4℃で一晩インキュベートした。
3.翌日、該ウェルを洗浄用緩衝液(PBS中0.05%のツウィーン(tween))中で、3回洗浄した。
4.該ウェルを、3%のBSA、0.03%のツウィーンを有するPBSによって、室温で1時間ブロックした。
5.ブロックした後、該ウェルを、洗浄用緩衝液(PBS中0.05%のツウィーン)中で、3回洗浄した。
6.VEGF−A(野生型または変異体)を、種々の濃度で、50μlの結合用緩衝液(PBS中、1%のBSAおよび0.03%のツウィーン)中、ウェルに加えた。
7.50μlの結合用緩衝液(PBS中、1%のBSAおよび0.03%のツウィーン)中、各ウェルに、70,000cpm/ウェルで、125I−標識VEGF−A(野生型または変異体)(PerkinElmer)を加えた。
8.該ウェルの内容物を混合し、室温で2時間、緩やかに振とうさせながらインキュベートした。
9.該ウェルを、洗浄用緩衝液(PBS中0.05%のツウィーン)で3回洗浄した。
10.各ウェルに、120μlの溶解用緩衝液(0.2MのNaOH+0.5%のSDS)を加えた。プレートを、室温で20分間、激しく振とうさせた。
11.各ウェルからの溶解用緩衝液を個々の管に移した。該ウェルをさらに2回、溶解用緩衝液で洗浄し、対応する管の溶解溶液緩衝液と合わせた。
12.野生型VEGF−Aおよび種々のVEGF−A変異体に関する結合の測定は、ガンマカウンターによるカウントによって判定した。
【0168】
VEGF類縁体の存在下でHUVEC内皮細胞の増殖する能力を、以下のとおりアッセイした。
1.成長因子を有するMedia−200を用い、HUVEC内皮細胞(継代6)を、3,000細胞/ウェルで96ウェルプレート内に接種し、一晩インキュベートした。
2.一晩のインキュベーション後、該培地を取り出し、2%の透析FBS(Invitrogen社)を有するMedia 199(Invitrogen社)を加えた。
3.細胞を20時間インキュベートした。
4.野生型VEGF−AおよびVEGF−A類縁体を、96ウェルプレートにおいて、2%の透析FBSを有するMedia 199中、200ng/ウェルで出発して連続希釈した。
5.各ウェルから培地を取り出し、200μl/ウェルの希釈VEGF培地に替えた。
6.細胞を、37℃で72時間インキュベートした。
7.Promega社のCellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayを用いて、細胞増殖を分析した。簡単に述べると、CellTiter緩衝液を解凍し、CellTiter−Glo基質中に移し、十分に混合させて基質混合物を作製した。各ウェルから100μlの増殖培地を取り出して、新たな96ウェルプレートに入れ、100μlの基質混合物と十分に混合させた。該プレートを2分間振とうし、室温でさらに10分間インキュベートした。
8.組込み時間を250mSに設定したプレートリーダー(Tecan社)を用いて、プレートを発光シグナルに関して読み取った。
【0169】
分析
KDR−Fcに対するI83K類縁体の受容体結合親和性は、野生型VEGF−Aのものよりわずかに小さかった(図1A)。しかし、I83K類縁体は、野生型VEGF−Aに比較して、内皮細胞増殖の有意な減少を示した(図1B)。VEGF−A類縁体、E44R、EE72/73RR、E67KおよびQ87Kは全て、野生型VEGF−Aに比較して、受容体細胞結合親和性の増加を示した(図2A、3A、4、5、および6)。しかし、類縁体E44RおよびEE72/73RRは、内皮細胞増殖にほとんど変化無しから変化無しを示した(図2Bおよび3B)。これらの結果は、I83Kを含むVEGF165類縁体が、VEGF−A受容体アンタゴニストとして有効に機能できることを示している。さらに、VEGF−A類縁体、E44RおよびEE72/73RRは、I83Kに加えた場合、単独で内皮細胞増殖を減少することはできなかったが、これらの修飾は、受容体結合親和性をさらに増加させる可能性を有する。
【0170】
本出願において説明された刊行物、特許および特許出願は全て、参照として本明細書に組み込まれている。先の明細書において、本発明を、その一定の好ましい実施形態に関連して記載し、詳細は例示を目的として記載してあるとしても、本発明には、さらなる実施形態が可能であり、本明細書に記載された一定の詳細を、本発明の基本的原理から逸脱することなく、相当に変更できることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図面の簡単な説明
【図1A】I83K突然変異体および野生型VEGF−AのKDRに対する結合の比較を示すグラフである。
【図1B】I83K VEGF−A突然変異体の存在下でのHUVEC−2内皮細胞の増殖の減少を、野生型VEGF−Aと比較して示すグラフである。
【図2A】E44R類縁体および野生型VEGF−AのKDRに対する結合の比較を示すグラフである。
【図2B】E44R VEGF−A類縁体のの存在下でのHUVEC−2細胞の増殖を、野生型VEGF−Aと比較したグラフである。
【図3A】E72R+E73R VEGF突然変異体および野生型VEGF−AのKDRに対する結合の比較を示すグラフである。
【図3B】E72R+E73R VEGF突然変異体の存在下でのHUVEC−2細胞の増殖を、野生型VEGF−Aと比較したグラフである。
【図4】E44RおよびEE72/73RR突然変異体の結合を野生型VEGF−Aと比較したグラフである。
【図5】Q87K突然変異体の結合を野生型VEGF−Aと比較したグラフである。
【図6】E67K突然変異体の結合を野生型VEGF−Aに比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの突然変異を含み、該突然変異により受容体アンタゴニストとして作用する修飾血管内皮成長因子(VEGF)であって、前記突然変異が受容体結合親和性と生物活性との分離をもたらす、修飾VEGF。
【請求項2】
前記アンタゴニストの天然VEGF受容体に対する受容体結合親和性が、野生型VEGFの天然VEGF受容体に対する受容体結合親和性よりも高い、請求項1に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項3】
前記天然VEGF受容体がFlt−1またはKDRである、請求項2に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項4】
受容体結合親和性が、少なくとも約3倍から4倍増加している、請求項2に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項5】
受容体結合親和性が、少なくとも約2倍増加している、請求項2に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項6】
前記アンタゴニストの生物活性が、野生型VEGFの生物活性と比較して減少している、請求項1に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項7】
ホモダイマーまたはヘテロダイマーとして発現される、請求項1に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項8】
前記ホモダイマーまたはヘテロダイマーの各サブユニットが、少なくとも1つの突然変異を含有する、請求項7に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項9】
前記ホモダイマーまたはヘテロダイマーの1つのサブユニットが、少なくとも1つの突然変異を含有する、請求項8に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項10】
1つ以上のVEGFサブユニットを含む融合タンパク質として発現される、請求項1に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項11】
前記1つ以上のVEGFサブユニットの各々が、少なくとも1つの突然変異を含有する、請求項10に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項12】
少なくとも1つのVEGFサブユニットが、少なくとも1つの突然変異を含有する、請求項10に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項13】
リンカーペプチドをさらに含む、請求項10に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項14】
毒素をさらに含む、請求項10に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項15】
前記突然変異が、配列番号4の83位に相当する位置における塩基性アミノ酸置換である、請求項1に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項16】
前記塩基性アミノ酸がI83Kである、請求項15に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項17】
前記塩基性アミノ酸がI83Rである、請求項15に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項18】
配列番号4の44位、67位、72位、73位および87位からなる群に相当する1つ以上の追加の塩基性アミノ酸置換を含有する、請求項15に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項19】
前記追加の置換が、E72RおよびE73Rからなる群から選択される、請求項18に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項20】
前記追加の置換が、E72KおよびE73Kからなる群から選択される、請求項18に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項21】
前記追加の置換が、E44RまたはE44Kである、請求項18に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項22】
前記追加の置換が、Q87KまたはQ87Lである、請求項18に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項23】
前記追加の置換が、E67Kである、請求項18に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項24】
前記VEGF−A受容体アンタゴニストと天然VEGF受容体との相互作用が、血管新生を阻害する、請求項1に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項25】
前記天然VEGF受容体がKDRである、請求項24に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項26】
アミノ酸E72R+E73R+I83Kを含有する、請求項18に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項27】
アミノ酸E44R+E72R+E73R+I83Kを含有する、請求項18に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項28】
ニューロピリン−1結合を妨害する配列番号4の111〜165位に相当するアミノ酸において1つ以上の追加のアミノ酸置換を含有する、請求項15または18に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項29】
前記追加のアミノ酸置換が、ヘパリン硫酸結合を妨害しない、請求項28に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項30】
配列番号4のC146またはC160に相当する位置にアミノ酸置換を含有する、請求項28に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項31】
前記アミノ酸置換が、C146SまたはC160Sである、請求項30に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項32】
配列番号4のC146およびC160に相当する位置にアミノ酸置換を含有する、請求項28に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項33】
前記アミノ酸置換が、C146SおよびC160Sである、請求項32に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項34】
前記アンタゴニストのプロテアーゼ切断を減少させる、または防止する1つ以上の追加のアミノ酸置換を含有する、請求項15または18に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項35】
前記プロテアーゼがプラスミンである、請求項34に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項36】
前記1つ以上の追加のアミノ酸置換が、配列番号4のA111位およびA148位に相当する位置の群から選択される、請求項34に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項37】
前記アミノ酸置換が、A111PまたはA148Pである、請求項36に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項38】
前記アミノ酸置換が、A111PおよびA148Pである、請求項36に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項39】
前記毒素が、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素(PE)、ジフテリア(Diphtheria)毒素(DT)、リシン毒素、アブリン毒素、炭疽毒素類、志賀毒素、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、コレラ毒素、マイトトキシン、パリトキシン、シグアトキシン、テクスチロトキシン、バトラコトキシン、アルファコノトキシン、タイポキシン、テトロドトキシン、アルファチチューストキシン、サキシトキシン、アナトキシン、ミクロシスチン、アコニチン、エクスフォリアチン毒素A、エクスフォリアチンB、エンテロトキシン、毒物ショック症候群毒素(TSST−1)、ペスト菌(Y.pestis)毒素およびガス壊疽毒素からなる群から選択される、請求項14に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項40】
前記サブユニットの少なくとも1つが、VEGF−Aサブユニットである、請求項8〜12のいずれか一項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項41】
前記VEGF−Aサブユニットが、VEGF165サブユニットである、請求項40に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項42】
前記VEGF−Aサブユニットが、VEGF165bである、請求項40に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項43】
前記VEGF−Aサブユニットが、VEGF121サブユニットである、請求項40に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項44】
前記VEGF−Aサブユニットが、VEGF145である、請求項40に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項45】
前記VEGF−Aサブユニットが、VEGF148サブユニットである、請求項40に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項46】
前記VEGF−Aサブユニットが、VEGF183である、請求項40に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項47】
前記VEGF−Aサブユニットが、VEGF189サブユニットである、請求項40に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項48】
前記VEGF−Aサブユニットが、VEGF206である、請求項40に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項49】
前記サブユニットの少なくとも1つが、VEGF−Bサブユニットである、請求項8〜12のいずれか一項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項50】
前記VEGF−Bサブユニットが、VEGF−B167サブユニットである、請求項49に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項51】
前記VEGF−Bサブユニットが、VEGF−B186である、請求項49に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項52】
前記サブユニットの少なくとも1つが、VEGF−Cサブユニットである、請求項8〜12のいずれか一項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項53】
前記サブユニットの少なくとも1つが、VEGF−Dサブユニットである、請求項8〜12のいずれか一項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項54】
前記サブユニットの少なくとも1つが、PlGFサブユニットである、請求項8〜12のいずれか一項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項55】
前記PlGFサブユニットが、PlGF−1である、請求項54に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項56】
前記PlGFサブユニットが、PlGF−2である、請求項54に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項57】
血管新生が部分的に阻害される、請求項1〜56のいずれか一項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項58】
血管新生が凡そほぼ完全に阻害される、請求項1〜56のいずれか一項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項59】
請求項1〜58のいずれか一項に記載のVEGF受容体アンタゴニストを含む製薬組成物。
【請求項60】
製薬的に許容できる担体をさらに含む、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
エアロゾル送達用に処方される、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
鼻内スプレーとして処方される、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
経口投与用に処方される、請求項60に記載の組成物。
【請求項64】
錠剤、ピル、またはカプセルとして処方される、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
デポー剤または座薬として処方される、請求項60に記載の組成物。
【請求項66】
抗VEGF用薬物、抗血管新生薬、抗癌剤、不妊症用薬物、自己免疫疾患治療薬、抗炎症剤、眼疾患用薬物、および皮膚疾患用薬物からなる群から1種以上の追加の薬物をさらに含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項67】
癌と診断された患者を、請求項1〜58のいずれか一項に記載のVEGF受容体アンタゴニストの治療的有効量により処置する方法であって、前記癌の転移を軽減または阻害するように前記患者に前記アンタゴニストを投与する工程を含む方法。
【請求項68】
前記癌が、膀胱、乳房、肝臓、骨、腎臓、大腸、卵巣、前立腺、膵臓、肺、脳、乳房、および皮膚からなる群から選択される固形腫瘍癌である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
血管新生関連眼疾患と診断された患者を、請求項1〜58のいずれか一項に記載のVEGF受容体アンタゴニストの治療的有効量により処置する方法であって、前記眼疾患を軽減または阻害するように前記患者に前記アンタゴニストを投与することを含む方法。
【請求項70】
前記眼疾患が、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、黄斑変性症、および角膜損傷または移植に関連する新血管新生からなる群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
血管新生関連疾患または病態と診断された患者を、請求項1〜58のいずれか一項に記載のVEGF受容体アンタゴニストの治療的有効量により処置する方法であって、前記血管新生関連疾患を軽減または阻害するように前記患者に前記アンタゴニストを投与することを含む方法。
【請求項72】
前記疾患または病態が、血管腫、リウマチ様関節炎、骨関節炎、敗血症性関節炎、喘息、アテローム硬化症、特発性肺線維症、血管再狭窄、動静脈形成異常、髄膜腫、血管新生緑内障、乾癬、カポジ症候群、血管線維腫、血友病関節、過形成性瘢痕、オースラー−ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、強皮症、トラコーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、血管接着病状、滑膜炎、皮膚炎、原因不明女性不妊症、子宮内膜症、原因不明男性不妊症、翼状皮膚、創傷、ただれ、皮膚潰瘍、胃潰瘍、および十二指腸潰瘍からなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
VEGFの一方または双方のサブユニットが、半減期を延長させる修飾を含む、請求項1に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項74】
前記半減期を延長させる修飾が、N末端またはC末端伸長である、請求項73に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項75】
前記半減期を延長させる修飾がPEG化である、請求項73に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項76】
前記融合タンパク質が、一緒に融合された2つのVEGFまたはVEGF関連タンパク質サブユニットを含有する、請求項10に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項77】
前記2つのVEGFまたはVEGF関連タンパク質サブユニットが、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、PDGFまたはPlGFサブユニットに融合されたVEGF−Aサブユニット;VEGF−A、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、PDGFまたはPlGFサブユニットに融合されたVEGF−Bサブユニット;VEGF−A、VEGF−B、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、PDGFまたはPlGFサブユニットに融合されたVEGF−Cサブユニット;VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−E、VEGF−F、PDGFまたはPlGFサブユニットに融合されたVEGF−Dサブユニット;およびVEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、またはPDGFサブユニットに融合されたPlGFサブユニットからなる群から選択される、請求項76に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項78】
配列番号13のE44B、E67B、E72B、E73B、I83BおよびQ87Bからなる群から選択される1つ以上の突然変異を含み、Bが塩基性アミノ酸である、VEGF165b受容体アンタゴニスト。
【請求項79】
前記アンタゴニストが、野生型VEGF165または野生型VEGF165bと比較して、受容体結合親和性の増加している、請求項78に記載のVEGF165b受容体アンタゴニスト。
【請求項80】
ニューロピリン−1結合を妨害する1つ以上の突然変異を含み、かつ配列番号4のE44、E67、E72、E73、I83およびQ87からなる群から1つ以上の塩基性アミノ酸置換を含むVEGF受容体アンタゴニスト。
【請求項81】
前記ニューロピリン−1結合を妨害する1つ以上の突然変異が、C146SおよびC160Sからなる群から選択される、請求項80に記載のVEGF受容体アンタゴニスト。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−511492(P2009−511492A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534722(P2008−534722)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/039181
【国際公開番号】WO2007/044534
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(506327911)トロフォゲン,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】