説明

X線レンズ位置決め装置、X線装置、およびX線レンズの位置決め方法

X線レンズを位置調整するための位置決め手段を提供する。
X線レンズの位置決め装置16は、レンズ取付部44と位置決め部42とを備える。位置決め部42は、X線源12のX線放射部(ホットスポット)36と概ね一致する回転中心を有する少なくとも一つの角度計ステージ64,66を備える。上記一つ以上の角度計ステージ64,66に加え、必要に応じて一つ以上の平行移動ステージ60,62をさらに設けることで、X線レンズ28の調節が容易となり、より直観的に調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線レンズ(Kumakhov lensとも呼ばれる)の位置決め装置および位置決め方法に関する。本発明はさらにX線レンズとX線レンズ位置決め装置とを備えるX線分光計またはX線回折計等のX線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
20年以上前のいわゆるX線レンズの登場により、金属学、地質学、化学、法医学の研究所および税関検査など様々な分野に広範囲の用途を持つ軽量の携帯用X線装置の基礎が形作られた。従来の光学レンズが可視または近可視光光子を方向修正するのと同じように、X線レンズはX線放射帯域の電磁放射を方向修正してX線ビームを平行にするか、あるいは集束させる。
【0003】
X線レンズは従来、複数のキャピラリ(毛細管)から形成される。各キャピラリはその前端部で捕捉されたX線を全外反射により他端部へガイドする。前端部での入射角が臨界角を越えない限り、この原則が当てはまる。臨界角を超えると、X線はもはやキャピラリ内に捕捉されない。このような場合、キャピラリはX線に対して透過性となる。
【0004】
X線レンズは当初、数メートルにわたる範囲の寸法を持つかさばる装置であった。このように大きな寸法は、主として個々のキャピラリを所定箇所に保持するのに必要な独立した支持構造に起因するものであった。ガラス延伸技術を用いて一またはそれ以上のガラスキャピラリ束からX線レンズが生産される場合に支持構造が省略されうることが認められると、X線レンズの工業的使用が可能になった。キャピラリの外被部を一緒に溶融することにより、独立した支持構造が不要となったからである。
【0005】
今日のX線レンズの工業的用途には、携帯用X線分光計と軽量X線回折計と他の多くの小型装置とが含まれる。このような装置は一般的に、X線源(X線管など)とX線レンズと検出器とを備える。X線源から発せられたX線は、X線レンズによりサンプル上の小さな点に集束する。検出器は、サンプルから戻るX線を検出して出力信号を発生させ、例えばサンプルに含有される化学元素を判断するためのスペクトル分析が可能となる。
【0006】
X線装置の効率を上げるには、X線レンズがX線装置の軸に対して正確に位置調整されなければならない。X線レンズが正しく位置調整されない場合には、あまりに多くのX線について入射角が臨界角を超えた結果、X線レンズにより捕捉されるX線束は大幅に減少することとなる。
【0007】
上述のようなX線レンズの位置調整は、非常に経験豊かなオペレータにとっても煩わしいものであった。従来の位置決め機構では、一方向の調節は別の方向の同時(誤)調節を伴うからである。このような相互の依存状態は、X線レンズの直観的な位置調整や、必要とされる多くの個別調節段階の妨げとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、X線レンズの調節を容易にするX線レンズ位置決め装置とX線レンズの位置決め方法が必要とされ、X線レンズ位置決め装置を備えるX線装置の必要性が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、X線レンズを位置調整するための位置決め装置が提供される。この位置決め装置は、レンズ取付部と、少なくとも一つの角度計ステージを有する位置決め部とを備え、前記少なくとも一つの前記角度計ステージは、X線源のX線放射部と概ね一致する回転中心を有する。
【0010】
上記角度計ステージは、回転中心が角度計機構の外側にある。この場合、回転中心は、X線源のX線放射部と基本的に一致するように選択される。一般的に、角度計機構は湾曲ガイド構造を備える。湾曲の中心点が固定されず、X線放射部に少なくとも近接している状態では、角度計ステージに取り付けられたあらゆるもの(X線レンズなど)がX線放射部を中心に回転することとなる。これによりレンズ位置調整が容易となる。
【0011】
上記態様においては、位置決め部は、第1軸を中心としてX線レンズを傾斜させるための第1角度計ステージと、第2軸を中心としてX線レンズを傾斜させるための第2角度計ステージとを備えることとする。第2軸は第1軸に対して垂直に延びていることとしてもよい。第1軸と第2軸とは、X線源のX線放射部とほぼ一致する点で相互に交差するように選択されてもよい。
【0012】
上記の二つの角度計ステージは、X線源に対して相互に前後に配置されることとする。このような配置である場合、第1角度計ステージはX線放射部から第1距離を有し、第2角度計ステージは、第1距離と異なるX線放射部から第2距離を有することとなる。したがって、第1傾斜軸と第2傾斜軸とのの交点に対して、二つの角度計ステージは異なる半径を有することとしてもよい。
【0013】
上記態様の一変形例では、第1角度計ステージは、第2角度計ステージから独立して作動可能である。言い換えると、第1傾斜軸は第2傾斜軸から分離されることとしてもよい。よって、第1角度計ステージと第2角度計ステージについてそれぞれ別々の作動機構が設けられることとしてもよい。
【0014】
上記態様の一変形例によれば、X線源により発生されるX線は、少なくとも一つの角度計ステージの外側で位置決め部を通過することとする。上記態様の別の変形例によれば、少なくとも一つの角度計ステージは内側X線通路を有することとする。前記内側X線通路は、少なくとも一つの角度計ステージの中心を通って延びていることとしてもよい。あるいは、前記内側X線通路は、少なくとも一つの角度計ステージの中心に対して偏心延出部を有していてもよい。
【0015】
上記の少なくとも一つの角度計ステージに加えて、位置決め部はさらに一つか二つまたはそれ以上の平行移動ステージを備えることとしてもよい。一例では、位置決め手段は、第1平行移動軸を有する第1平行移動ステージと、第2平行移動軸を有する第2平行移動ステージとを備えることとする。第2平行移動軸は、第1平行移動軸に対して斜めに、好ましくは垂直に延びている。第1平行移動軸と第2平行移動軸とは、ほぼ直角にX線レンズの長手軸と交差する平面に配置されることが好ましい。
【0016】
上記の第1および第2平行移動ステージに加えて、第3平行移動軸を有する第3平行移動ステージが設けられてもよい。第3平行移動軸は、第1および第2平行移動軸に対して垂直に延びていることとしてもよい。
【0017】
上記角度計ステージと同様に、平行移動ステージは相互に前後に配置されてもよい。X線源から放射されるX線の方向に、一つまたは二つの平行移動ステージが一つまたは二つの角度計ステージの上流または下流に配置されてもよい。
【0018】
第1平行移動ステージと第2平行移動ステージはそれぞれ別々の作動機構を備えるため、相互から独立して(少なくとも一つの角度計ステージからも独立して)作動可能である。したがって、位置決め装置の個々の位置決め軸は分離されていてもよい。一例を挙げると、この分離とは、第1軸に沿った平行移動は、この第1軸に対して垂直な第2軸を中心とする傾斜から独立している(入れ替え可能な構成のあらゆる変形例を含む)ことを意味する。
【0019】
上記位置決め装置はさらに、この位置決め装置をX線源のハウジングに連結するための第1中間部材を備えることとしてもよい。加えてあるいは代替例として、位置決め装置をサンプルハウジングに連結するための第2中間部材を備えることとしてもよい。
【0020】
上記位置決め装置は、X線源に面するように位置決め装置の端部に設けられるX線遮蔽部を備えていてもよい。この遮蔽部は、制限X線通路を画定して、X線通路の外側に漏れ出し得るすべてのX線を遮断する構造を持つことが好ましい。このようなX線遮蔽手段を設けることで、X線に対して基本的に透過性である材料(アルミニウムなど)により位置決め装置を製造することが可能となる。
【0021】
上記態様の一変形例では、位置決め装置はさらにX線レンズを備えることとする。X線レンズは位置決め装置の中心を通って延びており、上述したX線通路に位置調整されるか、あるいはこれを画定することとしてもよい。X線レンズは様々な形状や構造のものであってよい。例えば、1本以上のキャピラリ束を備えるX線レンズであってもよい。
【0022】
上記レンズ取付部により、上記位置決め部と位置決めされるレンズとの間の連結が可能となる。例えば、レンズ取付部は、レンズとレンズに固定装着された構造部材のいずれかに作用するクランプ力を発生させる構造を持つようになされることとする。
【0023】
本発明の別の態様によれば、X線装置が提供される。X線装置はX線放射部を有するX線源と、X線源から放射されたX線を方向修正するためのX線レンズと、X線レンズを位置調整するためのX線レンズ位置決め装置とを備え、この位置決め装置は、X線放射部と概ね一致する回転中心を有する少なくとも一つの角度計ステージを備えることとする。
【0024】
上記X線装置はさらに、X線源と少なくとも一つの角度計ステージとの間に配置されるX線遮蔽部を備えることとしてもよい。このX線遮蔽部によって、X線源から放射されたX線ビームが、X線レンズにより画定されるか、あるいはX線レンズと位置調整される、X線通路に制限されることが好ましい。
【0025】
本発明のさらに別の態様によれば、少なくとも一つの平行移動ステージと、X線源のX線放射部と概ね一致する回転中心を備える少なくとも一つの角度計ステージとを備えるX線レンズ位置決め装置を用いて、X線レンズを位置調整する方法が提供される。この位置決め方法は、X線放射部と概ね一致するように(好ましくは第1および第2平行移動ステージを個別に作動させることで)少なくとも一つの平行移動ステージを作動させるステップ(第1の操作ステップ)と、X線放射部を通って延びる既定の軸(位置決め装置と協働するいずれかの装置の光軸等、所定の軸)に対してX線レンズを位置調整するように、少なくとも一つの角度計ステージを作動させるステップ(第2の操作ステップ)とにより、X線レンズの入射焦点を位置決めする操作方法であることとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上記態様についての詳細、利点および変形例は、好適な実施例とともに図面を用いて以下に説明する。
【0027】
以下に、二つの角度計ステージと二つの平行移動ステージとを備える位置決め装置(X線レンズ位置決め装置)を備えるX線分光計の形の好適な実施例を参照して例示的に説明するが、これに限定されるものではなく、回折計などの他のX線装置や、異なる構造を有する(例えば平行移動ステージを含まない、一つのみまたは三つ含む)位置決め装置を用いても本発明が実施可能なことは明らかである。
【0028】
図1は、本実施例に係るX線回折計10の断面図である。X線回折計(分光計)10はX線管により構成されるX線源12を備える。X線回折計10はさらに、シャッタ14と、モジュール位置決め装置(レンズ位置決め装置、位置決め装置)16と、サンプル位置決め台22にサンプル20が配置されるサンプルハウジング18と、検出器24とを備える。
【0029】
X線源12の内部で発生するX線ビーム26は、光軸30に沿ってシャッタ14を通過する。X線源12に対して、また、光軸30に対して位置決め装置16により位置調整されるX線レンズ(またはKumakhov lens)28は、サンプル20上の小さな点にX線ビームを集束させる(図1の概略図ではサンプル20のサイズが誇張されている)。検出器24は、サンプル20から反射したX線を収集して、サンプル20に含有される化学元素を示すスペクトル信号を出力する。
【0030】
図1に示されるX線回折計10は、小型の卓上用設計であり、現場での分析のため持ち運び可能である。サンプルは、固体、粉末、加圧ペレット、液体、顆粒、フィルムおよびコーティングを含む広範囲の物理的形状であってよい。大気条件下におけるX線回折計10の一般的な元素検出は、アルミニウム(Al)からウラン(U)までが可能である。X線回折計10により、非常に低い元素濃度および20μmのサンプルサイズまでの質的および量的な元素分析が可能である。
【0031】
図1において、X線源12とシャッタ14とは、その構造をより明確に図示するため、X線回折計10の光軸30を中心として90°回転されている。従来のX線管と同様に、X線源12は、電子を放出する陰極32と、陰極32により放出された電子を収集する陽極34とを含む。こうして、陰極32から陽極34にわたる高電圧の結果、電流が生じることとなる。X線源12の内部での電子の流れは、陽極34上の非常に小さな点であるホットスポット(hot spot、X線放射部)36に集束する。陽極34と衝突する電子の運動エネルギーの消滅時にホットスポット36で発生するX線の一部の拡張を可能にするように、陽極34は、電子流に対する垂線から一般的に5度から15度離れた正確な角度を持つこととする。こうして発生されたX線ビーム26は、基本的に電子流の方向に対して垂直に、基本的に光軸30に沿って拡散角度で、ホットスポット36から放射される。
【0032】
X線源12から放射されたX線は、最初にX線源12のハウジング38に装着されたシャッタ14を通過する。シャッタ14は、X線源12の内部で発生されたX線ビーム26を選択的に遮断し、サンプル20への照射を「オン」または「オフ」に選択的に切り換えるための制御機構となる。
【0033】
レンズ位置決め装置16は(X線源12に対して)シャッタ14の下流に配置され、中間部材(図1には図示せず)によりシャッタ14に固定装着されている。位置決め装置16は、X線遮蔽部(遮蔽部)40と、X線レンズ28の位置決め部42と、Xレンズ28を位置決め部42に固定連結するためのレンズ取付部44とを備える。図1に概略的にのみ示された個々の部品であるX線遮蔽部40、位置決め部42、およびレンズ取付部44は、図2〜図4でさらに詳細に示されている。
【0034】
図3および図4から明らかとなるように、X線遮蔽部40は、位置決め装置16全体をシャッタ14(およびX線源12)に固定装着するための二つのねじ孔48を備える外側フランジ(フランジ部分)46(図2には図示せず)を有する。そのため外側フランジ46は、シャッタ14およびX線源12に対する位置決め装置16の中間部材として機能する。X線遮蔽部40は、X線ビームをX線レンズ28の入射開口部に制限し得るためのさらなる構造要素を備えることとしてもよい。
【0035】
X線レンズ(図2から図4には図示せず)は、管部材(管形部材)50の内部に固定的に取付けられている。また、管部材50はレンズ取付部44に固定連結されている。レンズ取付部44は、位置決め部42に装着されるベース部材52を備える。ベース部材52は、管部材50が通るための中央開口部を有する。外側ねじ部56を備える複数の凸部54は、ベース部材52の開口部から管部材50の軸方向に延出する。
【0036】
レンズ取付部44はさらに、管部材50が貫通して延びる中央開口部を備えるカラー部材58を備える。カラー部材58は、凸部54にねじ止めされ、外側ねじ部56と協働することができる。管部材50に対して垂直にカラー部材58を通って延びる追加のねじ(図示せず)により、カラー部材58がねじ止めされると、少なくとも一つの凸部54の自由端部は管部材50の方へ移動することができる。したがって、管部材50とレンズ取付部44との間のクランプ接続が確立されることとなる。
【0037】
位置決め部42は、レンズ取付部44の上流に配置され、二つの平行移動ステージ60,62に加えて二つの角度計ステージ64,66を備える。図2に示されるように、レンズ取付手段44のベース部材52は、第1平行移動ステージ60の底部に装着されている。
【0038】
個々の位置決めステージである二つの平行移動ステージ60,62および二つの角度計ステージ64,66は相互に前後に配置されている。最も下流の位置決めステージである第1平行移動ステージ60から始まり、第2平行移動ステージ62、第1角度計ステージ64の順に続き、最も上流の位置決めステージとして第2角度計ステージ66が配置されている。位置決めステージである二つの平行移動ステージ60,62および二つの角度計ステージ64,66の各々は、管部材50が通って延びる中央X線通路68,70,72,74をそれぞれ有する。
【0039】
二つの平行移動ステージ60,62の各々は、二重ダブテイルガイド(double-dovetail guide)を備える(図2の断面図ではダブテイルガイド76の一つのみが図示)。二つの平行移動ステージ60,62の各々について、対応するノブ78,80と戻りばねとを備える別々の微小ピッチ調節ねじがそれぞれ設けられている。
【0040】
第1平行移動ステージ60と第2平行移動ステージ62とは協働してxy平行移動ステージを形成する。したがって、第1平行移動ステージ60は、図2では、管部材50の軸に対して垂直かつ描画面に対して平行に延びる第1平行移動軸、すなわちx軸を有する。第2平行移動ステージ62は、x軸に対して垂直かつ管部材50の軸に対して垂直に延びる第2平行移動軸、すなわちy軸を有する。それぞれのノブ78,80により、第1および第2平行移動ステージ60,62は相互から独立して作動することができる。図示されていない代替実施例として、第1および第2平行移動軸の両方に対して垂直に延びる第3平行移動軸(z軸)を有する第3平行移動ステージが設けられていることとしてもよい。
【0041】
二つの角度計ステージ64,66は、二つの平行移動ステージ60,62の上流に配置されている。第1角度計ステージ64と第2角度計ステージ66とは協働して、共通回転中心の周りの二つの独立した回転を行うシータ・フィー角度計(theta-phi goniometer)を形成する。この共通回転中心は、図1に示されたホットスポット36、つまりX線源12のX線放射部により概ね決定される。
【0042】
各角度計ステージ64,66は、湾曲ダブテイルガイド(curved
dovetail guide)82,84をそれぞれ備え、戻りばねをそれぞれ備えるノブ86,88を介して、対応する微小ピッチねじにより調節される。二つの別々の調節ノブ86,88を設けることにより、第1および第2角度計ステージ64,66の各々を別々に作動させることが可能となる。
【0043】
第1角度計ステージ64の作動は、図1に示されたホットスポット36を通り、光軸30に対して垂直な図1の描画面に延びる第1傾斜軸を中心として、(X線レンズを備える)管部材50を傾斜させる。第2角度計ステージ66の作動も、ホットスポット36を通り、第1傾斜軸と図1の描画面の両方に対して垂直である第2傾斜軸を中心として管部材50を傾斜させる。第1角度計ステージ64は第2角度計ステージ66の下流に配置されているので、第1角度計ステージ64上の基準点のホットスポット36までの距離は、第2角度計ステージ66上の対応する基準点とホットスポット36との間の距離よりも長くなる。
【0044】
X線レンズを備える管部材50は、4本の分離軸(相互に垂直に延びる2本の平行移動軸と、相互に垂直に延びる2本の傾斜軸)すべてに対して位置決めされることとしてもよい。したがって、いずれかの平行移動軸に沿った平行移動は、傾斜軸を中心とする傾斜移動から独立しており、その逆も然りである。これにより、陽極34上のホットスポット36に対して、また、光軸30に対して、管部材50を通るX線レンズの位置調整をより簡単かつ直観的にすることができる。X線レンズを備える管部材50が位置決め装置16の中心(及び位置決め部42の中心)を通って延びていることにより、位置調整手順がさらに容易となる。
【0045】
図1に示されたX線レンズ28がX線源12のホットスポット36および光軸30に対して位置調整される場合、第1の操作ステップにおいて、X線レンズ28の入射焦点が基本的にホットスポット36と一致するように、この入射焦点がxy面に位置決めされる。そのため、この第1の位置決めを行う第1の操作ステップは、第1および第2平行移動ステージ60,62の作動のみを伴う。第2の位置決めを行う第2の操作ステップでは、光軸30と一致するように、X線レンズ28が傾斜してX線レンズ28の長手軸と位置調整されるように傾斜・回転される。第2の位置決めを行う第2の操作ステップは、第1および第2角度計ステージ64,66の一方または両方の調節を伴う。図2から図4に示されたノブ78,80,86,88は、手動操作用のものとして示されているが、本発明の代替実施例では、モータ作動によるものであってもよい。
【0046】
X線遮蔽部40(図1には概略的にのみ図示され、図2から図4には部分的にのみ示されている)は、フランジ部分46の開口部92を貫通するねじを介して第2角度計ステージ66の底面に装着されている。遮蔽部40は、管部材50の上流開口部90により画定される円形X線通路の外側に漏れ得るX線をすべて遮断する構造を有するため、位置決め部42をX線から効果的に遮蔽することができる。したがって、位置決め部42の個々の部品(平行移動ステージ60,62および角度計ステージ64,66など)は、X線による安全性の問題が生じることなく、概ねX線に対して透過性であるかほぼ透過性であるアルミニウムなどの従来の材料から製造することができる。
【0047】
本発明について具体的な実施例に基づき説明したが、上述の説明および図示された具体的な実施例に限定されないことは当業者にとって明らかである。よって、上記実施例の開示が単に例示的であることは言うまでもない。本発明は、特許請求の範囲のみにより限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例によるX線分光計の断面図を示す。
【図2】図1の実施例における位置決め装置の断面図を示す。
【図3】図2の位置決め装置における下流端部の斜視図を示す。
【図4】図2の位置決め装置における上流端部の斜視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線レンズを位置調整するX線レンズ位置決め装置であって、
位置決め部と、
レンズ取付部とを備え、
前記位置決め部が少なくとも一つの角度計ステージを備え、
前記少なくとも一つの前記角度計ステージがX線源のX線放射部と概ね一致する回転中心を有するX線レンズ位置決め装置。
【請求項2】
第1軸を中心として前記X線レンズを傾斜させる第1角度計ステージと、前記第1軸に対して概ね垂直である第2軸を中心として前記X線レンズを傾斜させる第2角度計ステージとを備える請求項1に記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項3】
前記第1角度計ステージが前記X線放射部から第1距離に配置され、前記第2角度計ステージが前記X線放射部から前記第1距離とは異なる第2距離に配置される請求項2に記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項4】
前記第1角度計ステージが前記第2角度計ステージから独立して作動する請求項2または3に記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの角度計ステージがX線通路を有する請求項1から4のいずれかに記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項6】
前記X線通路が、前記少なくとも一つの角度計ステージの概ね中心を通って延びている請求項5に記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項7】
前記位置決め部が、少なくとも一つの平行移動ステージをさらに備える請求項1から6のいずれかに記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項8】
前記位置決め部が、第1平行移動軸を有する第1平行移動ステージと、前記第1平行移動軸に対して概ね垂直である第2平行移動軸を有する第2平行移動ステージとを備える請求項7に記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つの平行移動ステージがX線通路を有する請求項7または8に記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項10】
前記X線通路が、前記少なくとも一つの平行移動ステージの概ね中心を通って延びている請求項9に記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項11】
前記X線源のハウジングおよびサンプルハウジングの少なくとも一つに連結する少なくとも一つの中間部材をさらに備える請求項1から10のいずれかに記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項12】
前記X線源に面するように端部に設けられたX線遮蔽部を有する請求項1から11のいずれかに記載の位X線レンズ置決め装置。
【請求項13】
前記位置決め部が、少なくとも部分的には概ねX線透過性を有する材料からなる請求項12に記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項14】
前記材料がアルミニウムである請求項13に記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項15】
前記位置決め部の概ね中心を通って延びるX線レンズをさらに備える請求項1から14のいずれかに記載のX線レンズ位置決め装置。
【請求項16】
X線放射部を有するX線源と、
該X線源から放射されたX線の方向修正をするためのX線レンズと、
該X線レンズを位置調整するX線レンズ位置決め装置とを備え、
該X線レンズ位置決め装置が、前記X線放射部と概ね一致する回転中心を有する少なくとも一つの角度計ステージを備えるX線装置。
【請求項17】
前記X線レンズが一つ以上のキャピラリ束を備える請求項16に記載のX線装置。
【請求項18】
前記X線源と前記少なくとも1つの角度計ステージとの間にX線遮蔽部をさらに備える請求項16または17に記載のX線装置。
【請求項19】
X線源のX線放射部に対してX線レンズを位置決めする方法であって、
前記X線レンズが、少なくとも一つの平行移動ステージと、少なくとも一つの角度計ステージとにより操作可能であって、
前記少なくとも一つの角度計ステージが、前記X線放射部と概ね一致する回転中心を有し、
a)前記少なくとも一つの平行移動ステージを操作して、前記X線放射部と概ね一致するように前記X線レンズの入射焦点を位置決めする第1の操作ステップと、
b)前記第1の操作ステップの後に前記少なくとも一つの角度計ステージを操作して、前記X線レンズの軸と前記X線放射部を通って延びる所定の軸とを合わせる第2の操作ステップとを備えるX線レンズの位置決め方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−505111(P2009−505111A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527359(P2008−527359)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008142
【国際公開番号】WO2007/022917
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508055951)ユニサンティス ヨーロッパ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】