説明

X線分析装置

【課題】X線分析装置において、より確実に装置外部へのX線漏洩を防止する。
【解決手段】X線管12を有するX線分析装置において、前記X線管12が所定の取り付け位置に取り付けられているかを検知するX線管位置検知手段23と、前記X線管位置検知手段23により、X線管12が取り付けられていないことが検知されたとき、電源100からX線管12への電力供給をオフする電力供給制御手段42とを有する。これにより、X線管12が所定の位置に取り付けられていない場合は、電源100からX線管12へ電力が供給されないため、X線漏洩をより確実に防止することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線分析装置において、X線の装置外部への漏洩を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線分析装置にはX線が装置外部に漏洩することを防止するための安全装置、及びこのような安全装置が適切に作動していない場合にはX線の電源をオフするインターロック回路が設けられている。例えば、安全装置として、X線照射室を遮蔽する遮蔽蓋や、遮蔽蓋をロックする遮蔽蓋ロック機構、遮蔽蓋が閉じられているかどうかを検出する遮蔽蓋開閉センサがある。インターロック回路は、遮蔽蓋開閉センサによって遮蔽蓋の開放状態が検知された場合X線管に電力を供給する電源をオフする。これによりX線照射室外部へのX線の漏洩が防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のX線分析装置は、ロック機構により遮蔽蓋がロックされているか否かを検知する手段を備えていない。このため、ユーザが遮蔽蓋を閉じた後、ロックすることを忘れた場合でも、X線管へ電力が供給される。従って、X線照射中に誤って遮蔽蓋が開けられた場合、遮蔽蓋センサが蓋の開放を検知し、インターロック回路によりX線管への電力供給を遮断するまでのわずかな時間にX線が漏洩するおそれがある。
【0004】
また、X線分析装置では、装置全体を覆うカバーが開けられた場合にX線の照射を停止できる設計とすることが、安全規格の一つとして定められている。そこで、従来、装置カバーの開閉を検知する手段が安全装置として設けられている。X線分析装置では複数のカバーが取り付けられるのが通常であるため、従来の装置では開閉検知手段も各カバーごとに設置されている。しかし、複数のセンサを用いることになれば、装置全体としてセンサ故障に起因する故障率が上昇する。また、個々のセンサまでの配線が必要となり、装置の構造の複雑化を招く。
【0005】
さらに、X線分析装置では、X線管が装置内の所定の位置に設置されている場合に、X線漏洩が規定値以下となるように設計されている。従って、X線分析装置のメンテナンスの後等にX線管が所定の位置から外れて設置されている場合には安全装置やインターロック回路は役に立たない。
【0006】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、X線分析装置において、より確実に装置外部へのX線漏洩を防止する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明の第一の態様に係るX線分析装置は、X線管を有するX線分析装置において、
a)前記X線管が所定の取り付け位置に取り付けられているかを検知するX線管位置検知手段と、
b)前記X線管位置検知手段により、X線管が取り付けられていないことが検知されたとき、電源からX線管への電力供給をオフする電力供給制御手段と、
を有することを特徴としている。
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明の第二の態様に係るX線分析装置は、X線管を有するX線分析装置において、X線管と電源を繋ぐコネクタはX線管が所定の位置に取り付けられた場合にのみ接続可能であることを特徴としている。
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明の第三の態様に係るX線分析装置は、X線照射室を覆う遮蔽蓋と、前記遮蔽蓋が閉じられた状態でロックする遮蔽蓋ロック手段とを有する、1又は2の態様に記載のX線分析装置において、
a)前記遮蔽蓋ロック手段によるロック状態を検知する遮蔽蓋ロック検知手段と、
b)前記遮蔽蓋ロック検知手段により、前記遮蔽蓋の非ロック状態が検知されたとき電源からX線管への電力供給をオフする電力供給制御手段と、
を有することを特徴としている。
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明の第四の態様に係るX線分析装置は、複数の装置カバーを有する1〜3のいずれかの態様に記載のX線分析装置において、
a)前記複数の装置カバーは、特定カバーを取り外した場合にのみ他の全てのカバーを取り外し可能な構造をとり、
b)前記特定カバーにのみカバー開閉検知手段と、
c)前記カバー開閉検知手段により、前記特定カバーの開放状態が検知されたとき電源からX線管への電力供給をオフする電力供給制御手段と、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第一及び第二の態様に係るX線分析装置によると、X線管が所定の位置に取り付けられていない場合は、電源からX線管へ電力が供給されないため、X線漏洩をより確実に防止することが可能になる。
【0012】
また、本発明の第三の態様に係るX線分析装置によると、X線照射室を覆う遮蔽蓋のロックがかかっておらず、遮蔽蓋を開放可能な状態ではX線管に電力が供給されない。このため、装置外へのX線漏洩を未然に防止することが可能になる。
【0013】
また、本発明の第四の態様に係るX線分析装置によると、複数の装置カバーを有する場合でも、特定カバーに対する開閉検知手段によって、複数のカバーの全てが閉じられたか否かを検知することが可能になる。これにより、従来と同様のX線漏洩効果をより少ない検知手段で得ることができる。検知手段を削減することにより、インターロック回路全体として検知手段の故障に起因する故障率を減少させることが可能になる。従って、従来より簡易な構造で、従来と同様に、もしくはさらに確実にX線漏洩を防止することができるようになる。複数のカバーのうちのいずれかを特定カバーとしても良く、複数のカバーとは別に特定カバーを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係るX線分析装置の分解斜視図。
【図2】本発明の実施例に係るX線分析装置の内部構造を示す概略図。
【図3】本発明の実施例に係るX線分析装置のX線管、フォトセンサ、ヒートシンクの位置関係を示す模式図。
【図4】本発明の実施例に係るX線分析装置の遮蔽蓋ロック機構を示す模式図。a)は遮蔽蓋ロック機構の正面図。b)は遮蔽蓋ロック機構の側面図。c)は遮蔽蓋ロック機構の平面図。
【図5】本発明の実施例に係るX線分析装置の要部構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本実施例に係るX線分析装置の分解斜視図である。X線分析装置は、装置本体1と、この装置本体1の前下部、左右側部、上後部を覆う複数の装置カバー(フロントアンダーカバー2、左カバー3、右カバー4、フロントカバー5、リアトップカバー6)とを備えている。また、装置本体1の前半部の上部にはX線照射室7が設けられている。
【0017】
いずれの装置カバーもねじによって装置本体1に取り付けられている。このとき、フロントアンダーカバー2を取り付けるねじ8aのねじ穴8bは左カバー3及び右カバー4を装置本体1に取り付けると左カバー3及び右カバー4によってそれぞれ覆われる(図1では左カバー3側のねじ穴8bのみ示す)。左カバー3を取り付けるねじ9aのねじ穴9b、右カバー4を取り付けるためのねじのねじ穴(図示せず)、フロントカバー5を取り付けるねじのねじ穴(図示せず)は、いずれもリアトップカバー6を取り付けるとリアトップカバー6で覆われる。従って、左カバー3、右カバー4、フロントカバー5を開けるためには、リアトップカバー6を取り外す必要がある。また、フロントアンダーカバー2を開けるためには左カバー3及び右カバー4を取り外す必要がある。
【0018】
このような構造では、装置本体1のいずれのカバーを開けるためにもリアトップカバー6を取り外す必要が生じる。本実施例では、リアトップカバー6のみにカバー開閉センサ43(図5にのみ示す)が設けられ、このセンサがリアトップカバ6ーが開くのを検出した場合にX線の照射を停止する構成がとられている。カバー開閉センサ43は、例えばリアトップカバー6が装置本体1に取り付けられると当該リアトップカバー6によって押下される機械式スイッチから構成されている。
【0019】
図2は装置本体1の内部構造を示す概略図である。X線照射室7の下部の装置本体内には、X線管12、及びX線検出器13が配置されている。X線管12で発生するX線は、X線照射口21(図3にのみ表示)から試料11に照射され、X線照射に応じて試料から放出される特性X線はX線検出器13で検出される。また、装置本体1の後部の内部には、液体窒素ボンベ14が配置されている。X線照射室7は遮蔽蓋18で覆われており、遮蔽蓋18の閉鎖状態はロック機構19によってロックされる。
【0020】
図3は、X線管12の詳細図である。X線管12には多数のフィン22aからなるヒートシンク22が設けられている。また、X線管12の取付部には透過型のフォトセンサ23が設けられている。X線管11が所定の位置に取り付けられると、ヒートシンク22のフィン22aの一つがフォトセンサ23の発光素子と受光素子の間に入り込み、発光素子の光を遮断する。これにより、X線管12が所定の位置に取り付けられたか否かが検知される。即ち、フォトセンサがX線管位置検知手段として機能する。
【0021】
図4は、遮蔽蓋ロック機構19の構造を示した模式図である。a)は遮蔽蓋ロック機構19の正面図、b)は側面図、c)は装置上部から見た平面図を示している。
【0022】
遮蔽蓋ロック機構19は、U字型のロック金具31、フック32、ストッパ33、マイクロスイッチ34,ソレノイド35、ソレノイド内部の動作軸36を備えている。ロック金具31は遮蔽蓋18に取り付けられている。遮蔽蓋18を閉鎖するとまず、ロック金具31にフック32が係止される。これにより、遮蔽蓋18が上方向に開かなくなる。この状態で遮蔽蓋ロック機構19を動作させると、ソレノイドの動作軸36がマイクロスイッチ34の方向に移動して動作軸36の端部(以下、動作端37とする)がフック32とストッパ33との間に入り込む。これにより、フック32の回動が阻止され、ロック金具31に対するフック32の係止状態が解除不能になり、ロックがかかる。
【0023】
ソレノイドの動作端37がフック32とストッパ33の間に入り込むと、マイクロスイッチ34のアクチュエーター部が動作端37によって押される。マイクロスイッチ34はアクチュエーター部が受ける力により、遮蔽蓋18がロック状態であることを検知する。即ち、マイクロスイッチ34が遮蔽蓋ロック検知手段として機能する。
【0024】
図5は、本発明の実施例に係るX線分析装置の要部構成を示すブロック図である。本実施例のX線分析装置は、X線管12、X線管12と電源100を繋ぐコネクタ41、電源100からX線管12への電力供給を制御する電力供給制御部42、カバー開閉センサ43、フォトセンサ22、マイクロスイッチ34等を備えている。
【0025】
電力供給制御部42は、カバー開閉センサ43、フォトセンサ22、マイクロスイッチ34からの検知結果に基づき、X線管12への電力供給をオフする。もっとも、X線管12はコネクタ41を電源100につなぐことによって電力の供給を受けることができる。
【0026】
具体的には、電力供給制御部42は、カバー開閉センサ43によりリアトップカバー6が開放されたことが検知されると、X線管12への電力供給をオフする。従って、従来の装置では複数のカバーごとに設けていたカバー開閉センサの数を一つに削減しつつ、全てのカバーが開いていないかの検知をすることが可能になり、従来のX線分析装置と同等に、もしくはさらに確実にX線漏洩を防止することができるようになる。
また、電力供給制御部42は、フォトセンサ22によりX線管12が所定位置に取り付けられていないことが検知されるとX線管12への電力供給をオフする。さらに、電力供給制御部42は、マイクロスイッチ34により遮蔽蓋18がロック状態にないことが検知されると、X線管12への電力供給をオフする。
【0027】
なお、本実施例では、カバー開閉センサ43、フォトセンサ22、マイクロスイッチ34が断線を起こしている場合にも、電力供給制御部42はX線管12への電力の供給をオフする。これにより、カバー開閉センサ等の故障によってカバーの開放等が検知できない場合にX線管12へ電力が供給されることがなく、X線の漏洩を未然に防止できる。
【0028】
以上、実施例を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明を行ったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、次のような変更が可能である。
上記実施例では、特定カバーをリアトップカバーのみにしたが、装置カバーの一部であれば、2枚以上の装置カバーを特定カバーにしても良い。又、装置カバーとは別に特定カバーを設けても良い。
特定カバー、X線管位置検知手段、遮蔽蓋ロック検知手段は上記した実施例に限らず、フォトセンサ、マイクロスイッチ、磁気センサ等、適宜のセンサを用いることができる。
また、上記実施例では、X線管の取り付け位置を検知することによってX線照射を制御しているが、X線管が所定の位置に取り付けられた場合にのみ、X線管への電力供給用のコネクタと電源との接続が可能になるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1…装置本体
2…フロントアンダーカバー
3…左カバー
4…右カバー
5…フロントカバー
6…リアトップカバー
7…X線照射室
8a、9a…ねじ
8b、9b …ねじ穴
11…試料
12…X線管
13…X線検出器
14…液体窒素ボンベ
15…遮蔽蓋
16…ロック機構
21…X線照射口
22…ヒートシンク
22a…フィン
23…フォトセンサ
31…ロック金具
32…フック
33…ストッパ
34…マイクロスイッチ
35…ソレノイド
36…動作軸
37…動作端
41…コネクタ
42…電力供給制御部
43…カバー開閉センサ
100…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管を有するX線分析装置において、
a)前記X線管が所定の取り付け位置に取り付けられているかを検知するX線管位置検知手段と、
b)前記X線管位置検知手段により、X線管が取り付けられていないことが検知されたとき、電源からX線管への電力供給をオフする電力供給制御手段と、
を有することを特徴とするX線分析装置。
【請求項2】
X線管を有するX線分析装置において、X線管と電源を繋ぐコネクタはX線管が所定の位置に取り付けられた場合にのみ接続可能であることを特徴とするX線分析装置。
【請求項3】
X線照射室を覆う遮蔽蓋と、前記遮蔽蓋が閉じられた状態でロックする遮蔽蓋ロック手段とを有する、請求項1又は2に記載のX線分析装置において、
a)前記遮蔽蓋ロック手段によるロック状態を検知する遮蔽蓋ロック検知手段と、
b)前記遮蔽蓋ロック検知手段により、前記遮蔽蓋の非ロック状態が検知されたとき電源からX線管への電力供給をオフする電力供給制御手段と、
を有することを特徴とするX線分析装置。
【請求項4】
複数の装置カバーを有する請求項1〜3のいずれかに記載のX線分析装置において、
a)前記複数の装置カバーは、特定カバーを取り外した場合にのみ他の全てのカバーを取り外し可能な構造をとり、
b)前記特定カバーにのみカバー開閉検知手段と、
c)前記カバー開閉検知手段により、前記特定カバーの開放状態が検知されたとき電源からX線管への電力供給をオフする電力供給制御手段と、
を有することを特徴とするX線分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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