説明

X線回折・熱分析同時測定装置

【課題】透過法によるX線回折測定ができる構造を前提として、被測定試料と標準試料の周囲環境を同じにして高精度な熱分析測定を実現する。
【解決手段】被測定試料に対しX線を照射してX線回折測定を実施するとともに、当該被測定試料および標準試料を加熱して熱分析測定を同時に実施する機能を備えたX線回折・熱分析同時測定装置であり、被測定試料および標準試料を加熱する加熱炉を備えている。この加熱炉は、円筒形状をしており、中心軸が水平方向に配置され、一端面から他端面へとX線を透過可能な構成をしている。さらに、被測定試料および標準試料を加熱する加熱炉内に配置され、これら各試料から伝えられる熱を検出する感熱板30と、感熱板30の感熱面に設けられた被測定試料を保持する第1試料保持部31と、感熱板30の感熱面に設けられた標準試料を保持する第2試料保持部32とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被測定試料に対しX線を照射してX線回折測定を実施するとともに、当該被測定試料および標準試料を加熱して熱分析測定を同時に実施する機能を備えたX線回折・熱分析同時測定装置(XRD−DSC)に関し、特に各試料の保持部の改良に特徴を有している。
【背景技術】
【0002】
X線回折・熱分析同時測定装置については、例えば、特許文献1、2や非特許文献1をはじめ多くの文献にその原理や構造が開示されている。
それら従来のX線回折・熱分析同時測定装置が備える試料保持部は、特許文献2に開示された反射方式のX線回折測定を実施する構成にあっては、被測定試料と標準試料の各保持部を水平配置で横に並べて設けた構造となっているが(特許文献2の図1参照)、特許文献1に開示された透過方式のX線回折測定を実施する構成にあっては、被測定試料と標準試料の各保持部を一定角度傾斜させて縦方向(斜め上下方向)に並べて設けた構造となっていた(特許文献1の図2参照)。また、非特許文献1の第91頁、図1Aには、透過型同時測定用DSCの試料保持部として、被測定試料と標準試料の各保持部を縦方向(上下方向)に並べて設けた構造が開示されている。
【0003】
このうち、特に特許文献1の図2に示された構造にあっては、被測定試料と標準試料の各保持部を囲む包囲ブロック内に熱源が設けられており、各保持部の周囲から被測定試料と標準試料が加熱される。また、非特許文献1に開示された試料保持部も同様の加熱構造であると推測される。
このような構造にあっては、被測定試料と標準試料の周囲に存在する気体(空気)は加熱に伴い上昇していくため、上記特許文献1や非特許文献1に開示されたような各試料の保持部が縦方向に並べて設けられた従来の構成では、包囲ブロック内の空気の対流の影響を受け、各保持部の周囲の温度雰囲気が僅かながらも変わってしまい、その変化が熱分析測定の結果に影響を及ぼしてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−48415号公報
【特許文献2】特開平10−019815号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】熱量測定・熱分析ハンドブック 第2版、平成22年1月25日、丸善株式会社 発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、透過法によるX線回折測定ができる構造を前提として、被測定試料と標準試料の周囲環境を同じにして高精度な熱分析測定を実現できるX線回折・熱分析同時測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、被測定試料に対しX線を照射してX線回折測定を実施するとともに、当該被測定試料および標準試料を加熱して熱分析測定を同時に実施する機能を備えたX線回折・熱分析同時測定装置において、
円筒形状をしており、中心軸が水平方向に配置され、内部に配置される被測定試料および標準試料を周囲から均等に加熱するとともに、一端面側からX線を入射して前記被測定試料に照射し、且つ当該被測定試料を透過してきた回折X線を他端側から取り出すことが可能な構成をした加熱炉と、
前記加熱炉内に配置され、前記各試料から伝えられる熱を検出する感熱板と、
前記感熱板の感熱面に設けられ、前記被測定試料を保持する第1試料保持部と、
前記感熱板の感熱面に設けられ、前記標準試料を保持する第2試料保持部と、を含み、
前記感熱板は、前記感熱面を水平面に対して垂直に配置してあり、
前記第1試料保持部と第2試料保持部は、前記加熱炉の中心軸と交叉する鉛直線を中心として左右対称位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成の本発明は、加熱炉が一端面側からX線を入射して前記被測定試料に照射し、且つ当該被測定試料を透過してきた回折X線を他端側から取り出すことが可能な構成をしているため、透過法によるX線回折測定の実施が可能である。
かかる構造を前提として、水平面に対して垂直に配置された感熱板の感熱面に設けた第1試料保持部と第2試料保持部が、加熱炉の中心を通る鉛直線を中心として左右対称に配置されているので、第1試料保持部に装着された被測定試料と、第2試料保持部に装着された標準試料とが、加熱炉内で対称性をもって同じ熱雰囲気におかれる。よって、被測定試料と標準試料とを同じ環境下で昇温して高精度な熱分析測定を実現することができる。
【0009】
さらに、本発明のX線回折・熱分析同時測定装置は、感熱板の感熱面と対向して加熱炉の端面に装着される炉体蓋を備えた構成とすることもできる。その場合、炉体蓋は、第1試料保持部および第2試料保持部と対向する、加熱炉の中心軸と交叉する鉛直線を中心とした左右対称位置に、同一形状の透過窓がそれぞれ形成してあり、且つ各透過窓にX線を透過する特性を有した同一の窓材が貼られた構成とすることが好ましい。
【0010】
透過法によるX線回折測定を実現するためには、炉体蓋における被測定試料を保持する第1試料保持部と対向する部位にのみX線の透過窓を形成しておけばよいが、上記のごとく炉体蓋において、第1試料保持部および第2試料保持部と対向する、加熱炉の中心軸と交叉する鉛直線を中心とした左右対称位置に透過窓を設けることで、各試料保持部の周囲を対称性をもった同じ熱雰囲気とすることができる。よって、炉体蓋を各試料保持部の周囲に存在しても、被測定試料と標準試料とを同じ環境下で昇温して高精度な熱分析測定を実現することができる。
【0011】
第1試料保持部および第2試料保持部には、ともに複数の弾力性を有する保持爪が、加熱炉の中心軸と交叉する鉛直線を中心として左右対称となるように設けてあり、これら各保持爪に囲まれた領域に、被測定試料を入れた第1試料容器および標準試料を入れた第2試料容器をそれぞれ押し込み、各試料容器の周囲をそれぞれ各保持爪により挟持して、各試料容器のX線照射面を水平面に対して垂直に配置した状態で保持し、且つ、各保持爪の弾性力をもって各試料容器をそれぞれ押圧して当該各試料容器の底面を感熱板の感熱面に密接させる構成とすることができる。
【0012】
複数の保持爪は、第1試料保持部および第2試料保持部に、加熱炉の中心軸と交叉する鉛直線を中心として左右対称となるように設けてあるので、各試料保持部は対称性を保った構造となる。そして、被測定試料を入れた第1試料容器と標準試料を入れた第2試料容器は、ともに各保持爪に囲まれた領域へ押し込むだけの簡単な操作で、各保持爪の弾性力をもって挟持される。
各保持爪に挟持された各試料容器は、X線照射面を水平面に対して垂直に配置した状態で保持され、しかも既述したように、各試料容器を保持する各試料保持部が、加熱炉の中心軸と交叉する鉛直線を中心として左右対称位置にそれぞれ配置されているので、被測定試料と標準試料とを、加熱炉内で対称性をもって同じ熱雰囲気におくことができる。
さらに、各試料容器は、各保持爪の弾性力をもって押圧されて、底面が感熱板の感熱面に密接するので、各試料容器内の試料の熱を各試料容器の底面を介して感熱板に効率的に伝えることができ、各試料の温度を高感度で検出することが可能となる。
【0013】
ここで、第1試料保持部および第2試料保持部に設けた各保持爪は、感熱板と同じ材料で形成され、同感熱板の感熱面に溶接することが好ましい。
各保持爪を感熱板と同じ材料で形成することで、熱膨張差による感熱板からの各保持爪の剥離を抑制することができ、耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
上述したように本発明によれば、被測定試料と標準試料の周囲環境を同じにして高精度な熱分析測定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】X線回折・熱分析同時測定装置の概要を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るX線回折・熱分析同時測定装置に組み込まれる試料加熱装置の構成を一部切り欠いて示す斜視図である。
【図3】同試料加熱装置の外観を示す斜視図である。
【図4】同試料加熱装置のケース前蓋を開いた状態の外観を示す斜視図である。
【図5】同試料加熱装置における加熱炉内の構成を示す斜視図である。
【図6】同試料加熱装置における加熱炉内の構成を示す正面図である。
【図7】(a)は感熱板と第1、第2試料保持金具を分解して示す斜視図、(b)は感熱板に第1、第2試料保持金具を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図8】(a)は第1、第2試料保持部に第1、第2試料容器を装着した状態を示す斜視図、(b)は試料容器が試料保持金具に保持された状態の切断斜視図である。
【図9】第1、第2試料容器を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照してX線回折・熱分析同時測定装置の概要を説明する。図1は被測定試料を透過してきた回折X線を検出する透過型のX線回折・熱分析同時測定装置の概略構成を示している。X線源1から放射されたX線を、点収束型のX線集光ミラー2(多層膜ミラー)によって収束するとともに、スリット3、4、5により拡散を抑えて被測定試料Sの表面に照射する。そして、被測定試料Sを透過してきた回折X線をX線検出器6に入射させてその入射角度(回折角)とX線強度を検出する。これと同時に、被測定試料Sとその横に配置した標準試料(図示せず)を加熱して熱分析測定を行う。
【0017】
X線回折測定と熱分析測定を同時に行うために、被測定試料と標準試料は密封型の試料加熱装置内に配置されている。
図2〜図6は、試料加熱装置の構成を示す図である。
試料加熱装置は、角筒状の本体ケース10と、その後端開口部を閉塞するケース後蓋11と、前端開口部を閉塞するケース前蓋12とで内部が密封されている。本体ケース10の正面中央部には、X線の入射側窓枠13が設けてあり、この入射側窓枠13の中央にはX線の透過窓13aが形成してある。この透過窓13aからX線源1からのX線が入射する。また、本体ケース10の背面中央部には、X線の出射側窓枠14が設けてあり、この出射側窓枠14の中央にもX線の透過窓14aが形成してある。試料を透過してきた回折X線は、この透過窓14aから出射してX線検出器6へと導かれる。各透過窓13a、14aには、アルミニウムやカプトン、ポリイミドなどのX線を透過する特性を有した薄膜の窓材が貼られており、これにより内部の密封状態が保たれている。
【0018】
ケース前蓋12の裏面は炉体取付台15が設けてあり、この炉体取付台15に外側断熱筒16、内側断熱筒17および円筒形状の加熱炉20が装着されている。これら外側断熱筒16、内側断熱筒17および加熱炉20は、同芯円状に配設されており、加熱炉20の外周を内側断熱筒17で覆い、さらにその外周を外側断熱筒16で覆ってある。炉体取付台15の底部にはキャスター18が取り付けてあり、ケース前蓋12と一体に本体ケース10内から引き出すことができるようになっている(図4参照)。このように引き出した状態で、後述する第1試料容器41、第2試料容器42を加熱炉20内に挿入配置する。
【0019】
加熱炉20は、中心軸が水平方向に配置され、内部に配置される被測定試料および標準試料を周囲から均等に加熱する構造となっている。さらに、加熱炉20は、一端面側からX線を入射して前記被測定試料に照射し、且つ当該被測定試料を透過してきた回折X線を他端側から取り出すことができ、透過法によるX線回折測定が可能な構成をしている。
【0020】
加熱炉20の内部には、コンスタンタン等の熱電対素材でできた感熱板30が、加熱炉20の中心軸と直交して配設してあり、この感熱板30の裏面に図示しない熱電対がスポット溶接されている。そして、この感熱板30の表面を感熱面として、その感熱面に被測定試料を保持する第1試料保持部31と、標準試料を保持する第2試料保持部32とが形成されている(図2、図5、図6参照)。
【0021】
各試料保持部31、32には、加熱炉20の背面側から後述する第1試料容器41および第2試料容器42が挿入配置できるようになっており、加熱炉20の背面側の端面には、炉体蓋21が着脱自在となっている(図5参照)。炉体蓋21は、ねじ等の締結具をもって加熱炉20の背面側の端面に装着される。
ここで、炉体蓋21には、第1試料保持部31および第2試料保持部32と対向する、加熱炉20の中心軸と交叉する鉛直線を中心とした左右対称位置に、同一形状(図5では円形)の透過窓21a、21bがそれぞれ形成してある。これらの透過窓21a、21bには、アルミニウムやカプトン、ポリイミドなどのX線を透過する特性を有した薄膜の同一窓材が貼られている。
なお、加熱炉20の正面側は、断熱板22によって閉塞されている。この断熱板22にも透過窓(図示せず)が形成してあり、これらの透過窓にはアルミニウムやカプトン、ポリイミドなどのX線を透過する特性を有した薄膜の窓材が貼られている。
【0022】
次に、この感熱板30の感熱面に形成した第1試料保持部31と第2試料保持部32について、詳細に説明する。
上述した加熱炉20は、中心軸が水平となるなるように配置される。感熱板30の正面は、この加熱炉20の中心軸と直交して(加熱炉20を横断するように)、加熱炉20内に配設されている。そして、被測定試料を保持する第1試料保持部31と標準試料を保持する第2試料保持部32は、感熱板30の感熱面に設けられており、加熱炉20の中心軸と交叉する鉛直線を中心として左右対称位置にそれぞれ配置されている(図6参照)。
このような配置とすることで、第1試料保持部31に装着された被測定試料と、第2試料保持部32に装着された標準試料とが、加熱炉20内で対称性をもって同じ熱雰囲気におかれる。よって、被測定試料と標準試料とを同じ環境下で昇温して高精度な熱分析測定を実現することができる。
【0023】
図7、図8は第1試料保持部および第2試料保持部の具体的構成を説明するための図であり、図9はこれら各試料保持部に装着される第1、第2試料容器の構成を説明するための図である。
各試料保持部31、32には、第1、第2試料保持金具33、34が取り付けてある。本実施形態では、これら各試料保持金具33、34を感熱板30と同じ材料で形成し、感熱板30の感熱面にスポット溶接にて固着してある。各試料保持金具33、34を感熱板30と同じ材料で形成することで、熱膨張差による感熱板30からの各試料保持金具33、34の剥離を抑制することができ、耐久性が向上する。
【0024】
各試料保持金具33、34は、ともに環状の台座部35と、その内周縁の複数箇所から起立して設けられた保持爪36とで構成されている。これら各保持爪36は弾力性を有しており、当該各保持爪36の内側に押し込まれた各試料容器41、42の周囲を各保持爪36が挟持して保持する。
第1、第2試料容器41、42は、図9に示すように、有底円筒状の容器本体43と、この容器本体43の開口部から内部へ挿入される円盤状の蓋体44とで構成されている。容器本体43の底面中央部にはX線の透過孔43aが形成してあり、同様に蓋体44の中央部にもX線の透過孔44aが形成してある。
なお、第1、第2試料保持部31、32の中央部にもX線の透過孔31a、32aが形成してあり(図7参照)、上記各試料容器41、42の透過孔43a、44aはこれらの透過孔31aまたは32aと対向して配置される。
【0025】
試料45(被測定試料または標準試料)は、X線を透過する特性を有する材料(例えば、アルミ箔やポリイミドフィルム)からなる保持薄膜46でサンドイッチした状態で、容器本体43に挿入される。試料45の表面側には蓋体44を挿入配置し、続いて容器本体43の周壁部分43bをカシメ加工して、試料45を容器本体43内に保持する。
【0026】
本実施形態では、保持爪36は台座部35の内周縁の4箇所から起立して設けてある。これら4本の保持爪36は、図6に示すように、鉛直線からほぼ45゜の角度位置に設けてあり、各保持爪36で均等な弾性力をもって第1または第2試料容器41、42を保持する。ここで、第1、第2試料保持部31、32において、各保持爪36は、加熱炉20の中心軸と交叉する鉛直線を中心として左右対称となるように設けてあり、これにより各試料保持部31、32の対称性が保たれている。
【0027】
第1、第2試料保持部31、32では、それぞれ第1、第2試料容器41、42の正面(X線照射面)を、水平面に対して垂直に配置した状態で保持している。しかも、既述したように、各試料保持部31、32は、加熱炉20の中心を通る鉛直線を中心として左右対称に配置されているので、各試料容器41、42に挿入されている被測定試料と標準試料とを、加熱炉20内で対称性をもって同じ熱雰囲気におくことができる。
【0028】
また、各試料保持部31、32に設けられた各保持爪36は、弾性力をもって各試料容器41、42をそれぞれ押圧して当該各試料容器41、42の底面を感熱板30の感熱面に密接させる。よって、各試料容器41、42内の試料の熱を各試料容器41、42の底面を介して感熱板30に効率的に伝えることができ、各試料の温度を高感度で検出することが可能となる。
【0029】
上述した構成の試料加熱装置を試料の配置部に搭載したX線回折・熱分析同時測定装置によれば、次のようにしてX線回折測定と熱分析測定を同時に実施することができる。
まず、X線回折測定は、X線源1からのX線を、図2に示す試料加熱装置の入射側窓枠13に形成された透過窓13aを介して、第1試料保持部31に保持された第1試料容器41内の被測定試料に正面から照射することにより実行される。X線の照射により被測定試料から発生した回折X線(透過X線)は、図2に示す出射側窓枠14に形成された透過窓14aを介してX線検出器6へと導かれ、その入射角度(回折角)とX線強度が検出される。
これと同時に、試料加熱装置に設けた加熱炉20を作動させて、その内部にある第1試料保持部31に保持された第1試料容器41内の被測定試料と、第2試料保持部32に保持された第2試料容器42内の標準試料とを加熱し、感熱板30に溶接された熱電対で各試料の温度変化が検出される。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、第1、第2試料容器は、図9に示したような構成以外にも公知の各種試料容器を適用することができる。その場合、保持爪は、採用された試料容器の外周形状に合わせて配置することが好ましく、弾性力をもって試料容器の外周を挟持し、当該試料容器の底面を感熱板に密接させるように構成する。
また、加熱炉やその周囲の構造は、図2に示した以外の公知の構造を採用してもよく、X線回折測定のための光学系も、図1に示した以外の公知の構造を採用することは自由である。
【符号の説明】
【0031】
1:X線源、2:X線集光ミラー、6:X線検出器、
10:本体ケース、11:ケース後蓋、12:ケース前蓋、13:入射側窓枠、13a:透過窓、14:出射側窓枠、14a:透過窓、15:炉体取付台、16:外側断熱筒、17:内側断熱筒、18:キャスター、
20:加熱炉、21:炉体蓋、21a,21b:透過窓、
30:感熱板、31:第1試料保持部、32:第2試料保持部、31a,32a:透過孔、33:第1試料保持金具、34:第2試料保持金具、35:台座部、36:保持爪、
41:第1試料容器、42:第2試料容器、43:容器本体、44:蓋体、43a,44a:透過孔、45:試料、46:保持薄膜、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定試料に対しX線を照射してX線回折測定を実施するとともに、当該被測定試料および標準試料を加熱して熱分析測定を同時に実施する機能を備えたX線回折・熱分析同時測定装置において、
円筒形状をしており、中心軸が水平方向に配置され、内部に配置される被測定試料および標準試料を周囲から均等に加熱するとともに、一端面側からX線を入射して前記被測定試料に照射し、且つ当該被測定試料を透過してきた回折X線を他端側から取り出すことが可能な構成をした加熱炉と、
前記加熱炉内に配置され、前記各試料から伝えられる熱を検出する感熱板と、
前記感熱板の感熱面に設けられ、前記被測定試料を保持する第1試料保持部と、
前記感熱板の感熱面に設けられ、前記標準試料を保持する第2試料保持部と、を含み、
前記感熱板は、前記感熱面を水平面に対して垂直に配置してあり、
前記第1試料保持部と第2試料保持部は、前記加熱炉の中心軸と交叉する鉛直線を中心として左右対称位置にそれぞれ配置されていることを特徴とするX線回折・熱分析同時測定装置。
【請求項2】
前記感熱板の感熱面と対向して前記加熱炉の端面に装着される炉体蓋を備えた請求項1のX線回折・熱分析同時測定装置であって、
前記炉体蓋は、前記第1試料保持部および第2試料保持部と対向する、前記加熱炉の中心軸と交叉する鉛直線を中心とした左右対称位置に、同一形状の透過窓がそれぞれ形成してあり、且つ各透過窓にX線を透過する特性を有した同一の窓材が貼られていることを特徴とするX線回折・熱分析同時測定装置。
【請求項3】
前記第1試料保持部および第2試料保持部には、ともに複数の弾力性を有する保持爪が、前記加熱炉の中心軸と交叉する鉛直線を中心として左右対称となるように設けてあり、これら各保持爪に囲まれた領域に、前記被測定試料を入れた第1試料容器および前記標準試料を入れた第2試料容器をそれぞれ押し込み、各試料容器の周囲をそれぞれ各保持爪により挟持して、各試料容器のX線照射面を水平面に対して垂直に配置した状態で保持し、且つ、各保持爪の弾性力をもって各試料容器をそれぞれ押圧して当該各試料容器の底面を前記感熱板の感熱面に密接させる構成であることを特徴とする請求項1又は2のX線回折・熱分析同時測定装置。
【請求項4】
前記第1試料保持部および第2試料保持部に設けた各保持爪は、前記感熱板と同じ材料で形成され、同感熱板の感熱面に溶接されていることを特徴とする請求項3のX線回折・熱分析同時測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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