X線回折測定装置
【課題】 回折X線の強度にかかわらず、回折環を精度よく測定できるようにする。
【解決手段】 コントローラCTは、レーザ光の照射位置をイメージングプレート28の中心周りに回転させるとともに径方向に変化させている状態で、イメージングプレート28の同一回転角度でレーザ光の強度又は受光信号の増幅率を同一にするとともに、イメージングプレート28が所定角度ずつ変化するごとにレーザ光の強度又は受光信号の増幅率を変化させる。コントローラCTは、イメージングプレート28の回転角度が基準角度から所定角度ずつ変化するごとに受光信号を順次取得して、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を1周分検出し、検出した1周分の径方向位置における受光信号に基づいて、最適なレーザ光の強度又は受光信号の増幅率を設定する。
【解決手段】 コントローラCTは、レーザ光の照射位置をイメージングプレート28の中心周りに回転させるとともに径方向に変化させている状態で、イメージングプレート28の同一回転角度でレーザ光の強度又は受光信号の増幅率を同一にするとともに、イメージングプレート28が所定角度ずつ変化するごとにレーザ光の強度又は受光信号の増幅率を変化させる。コントローラCTは、イメージングプレート28の回転角度が基準角度から所定角度ずつ変化するごとに受光信号を順次取得して、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を1周分検出し、検出した1周分の径方向位置における受光信号に基づいて、最適なレーザ光の強度又は受光信号の増幅率を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にX線を照射し、測定対象物にて回折したX線を受光面で受光して、受光面に形成される回折環を測定するX線回折測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象物の残留応力をX線回折により測定することはよく行われている。また、下記特許文献1に示されているように、鉄元素の大部分の配列構造である体心立方格子構造(以下、フェライトという)と面心立方格子構造(以下、オーステナイトという)との割合を、測定対象物をX線回折した際のフェライトによる回折積分強度とオーステナイトによる回折積分強度を測定することによって測定することも行われている。鉄中のオーステナイトの割合が変化すると鉄の特性が変わるため、この割合には、鉄の使用用途ごとに最も望ましいとされる割合がある。そして、この割合は鉄を加熱し冷却するときの条件により変化するため、製造条件を一定にすることが重要であるが、製造された鉄のオーステナイトの割合を精度よく測定することも重要なことである。
【0003】
X線回折測定装置においては、装置が小型化できX線の照射時間を短くすることが可能なものとして、下記特許文献2に示されている装置がある。この装置は、測定対象物に対してX線を所定の角度で照射し、測定対象物にて回折したX線(以下、回折X線という)を、感光性を有するイメージングプレートで受光し、イメージングプレートに形成された環状のX線回折像(以下、回折環という)の形状を分析するcosα法により、測定対象物の残留応力を算出している。下記特許文献2では、測定対象物の残留応力を求めることのみが説明されているが、下記特許文献2で示されたX線回折測定装置でも、回折環の半径方向におけるフェライト及びオーステナイトによる回折積分強度を測定することで鉄中のオーステナイトの割合を測定できる。下記特許文献2では回折環の形状を測定する際、二つの方法が示されている。一つの方法は、He−Neレーザ光などの励起光でイメージングプレート上を走査し、回折環から輝尽発光により発生する光の強度を光電子倍増管によって増幅して検出し、回折環の画像を得る方法である。他の一つ方法は、X線CCDで回折X線を受光し、X線CCDの各画素が出力する信号から回折環の画像を得る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−230921号公報
【特許文献2】特開2005−241308号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の2つの方法では、フェライトの回折X線の強度は強いために、フェライトによる回折環の画像は明確に得られるが、鉄中のオーステナイトの割合は微量であるためオーステナイトの回折X線の強度は弱く、オーステナイトによる回折環の画像を明確に得ることができない。すなわち、フェライトによる回折環の形状やフェライトによる回折積分強度は精度よく求めることができるが、オーステナイトによる回折環の形状やオーステナイトによる回折積分強度は精度よく求めることができないという問題がある。また、測定対象物が鉄以外の物質であっても、回折X線の強度が弱い場合は、回折環の形状や回折積分強度を精度よく求めることができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、その目的は、測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線を受光面で受光し、回折X線により受光面に形成される回折環を測定するX線回折測定装置において、回折X線の強度にかかわらず、回折環を精度よく測定できるようにしたX線回折測定装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、この実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器(13)と、中央にX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブル(27)と、テーブルに固定されていて、測定対象物にて回折したX線の回折光を受光する受光面を有し、回折光の像である回折環を記録する回折光受光器(28)と、レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、レーザ光を回折光受光器の受光面に照射するとともに、レーザ光の照射によって回折光受光器から出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置(PUH)と、テーブルを、貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段(24,25)と、回転手段によるテーブルの回転における基準位置からの回転角度を検出する回転角度検出回路(26)と、テーブルを、回折光受光器の受光面に平行な方向に、レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段(15,17,18,22)と、移動手段によるテーブルの移動位置を検出する位置検出回路(21)と、レーザ光源を駆動制御するとともにレーザ光源から出射されるレーザ光の強度を変更可能なレーザ駆動回路(34)と、フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力する増幅回路(44)とを備え、X線出射器から測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によって回折光受光器に記録された回折環を測定するX線回折測定装置において、回転手段及び移動手段を制御して回折環が記録された回折光受光器を回転及び移動させて、レーザ検出装置から出射されるレーザ光の回折光受光器における照射位置を回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる照射位置制御手段(CT,S208,S210,S218)と、照射位置制御手段により回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を回折光受光器の中心周りに回転させるとともに中心からの径方向の距離を変化させている状態で、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるときレーザ光の強度を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとにレーザ光の強度が変化するようにレーザ駆動回路を制御するレーザ強度制御手段(CT,S222〜S228)と、テーブルの回転角度が所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における増幅回路からの受光信号であって、回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する受光信号取得手段(CT,S230)と、受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、テーブルの回転角度が同一であり、かつ回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出するピーク検出手段(CT,S314,S316)と、ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となるレーザ光の強度を最適レーザ強度として設定する最適レーザ強度設定手段(S244)とを設けたことにある。
【0008】
上記のように構成した第1の発明においては、レーザ強度制御手段が、照射位置制御手段により回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるときレーザ光の強度を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとにレーザ光の強度を変化させ、受光信号取得手段が、テーブルの回転角度が所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における増幅回路からの受光信号であって、回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する。この取得した受光信号を用いて、ピーク検出手段が、回折光受光器の径方向に分布した複数の受光信号のうちで受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を所定角度ずつ1周分検出することにより、回折光受光器に記録された回折X線の像である回折環が検出される。そして、最適レーザ強度定手段が、ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となるレーザ光の強度を最適レーザ強度として設定する。このように受信信号の大きさがピークとなる径方向位置を所定角度ずつ1周分検出し、この1周分の径方向位置の受光信号を用いて、最適なレーザ光の強度が設定されるので、簡単に最適なレーザ光の強度を設定できる。その結果、第1の発明によれば、回折X線の強度が弱い場合でも、回折X線の強度に相当する受光信号のピーク値が大きくなるようにレーザ光強度を設定することができるので、回折X線による回折環を精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などを精度よく求めることができるようになる。
【0009】
また、第2の発明は、前記第1の発明と同様なX線出射器(13)、テーブル(27)、回折光受光器(28)、レーザ検出装置(PUH)、回転手段(24,25)、回転角度検出回路(26)、移動手段(15,17,18,22)、位置検出回路(21)、照射位置制御手段(CT,S210,S252,S256)、受光信号取得手段(CT,S270)及びピーク検出手段(CT,S314,S316)を備えるとともに、前記第1の発明におけるレーザ駆動回路、増幅回路、レーザ強度制御手段及び最適レーザ強度設定手段に代えて、レーザ光源を駆動制御するレーザ駆動回路(34)と、フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力するとともに受光信号の増幅率を変更可能な増幅回路(44)と、照射位置制御手段により回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき受光信号の増幅率を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに受光信号の増幅率が変化するように増幅回路を制御する増幅率制御手段(CT,S260〜S266)と、ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる受光信号の増幅率を最適増幅率として設定する最適増幅率設定手段(CT,S284)とを設けたことにある。
【0010】
この第2の発明においても、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を所定角度ずつ1周分検出し、この1周分の径方向位置の受光信号を用いて、最適な受光信号の増幅率が設定されるので、簡単に最適な受光信号の増幅率を設定できる。その結果、この第2の発明によっても、回折X線の強度が弱い場合でも、回折X線の強度に相当する受光信号のピーク値が大きくなるように受光信号の増幅率を設定することができるので、回折X線による回折環を精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などを精度よく求めることができるようになる。
【0011】
また、第3の発明は、前記第1の発明と同様なX線出射器(13)、テーブル(27)、回折光受光器(28)、レーザ検出装置(PUH)、回転手段(24,25)、回転角度検出回路(26)、移動手段(15,17,18,22)、位置検出回路(21)及びレーザ駆動回路(34)を備えるとともに、前記第1の発明における増幅回路に代えて、フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力するとともに受光信号の増幅率を変更可能な増幅回路(44)を備えている。さらに、第3の発明は、前記第1の発明の照射位置制御手段、レーザ強度制御手段、受光信号取得手段、ピーク検出手段及び最適レーザ強度設定手段と同様な第1照射位置制御手段(CT,S208,S210,S218)、レーザ強度制御手段(CT,S222〜S228)、第1受光信号取得手段(CT,S230)、第1ピーク検出手段(CT,S314、S316)及び最適レーザ強度設定手段(CT,S244)を備えるとともに、前記第2の発明の照射位置制御手段、増幅率制御手段、受光信号取得手段、ピーク検出手段及び最適増幅率設定手段と同様な第1照射位置制御手段(CT,S210,S252,S256)、増幅率制御手段(CT,S260〜S268)、第2受光信号取得手段(CT,S270)、第2ピーク検出手段(CT,S314、S316)及び最適増幅率設定手段(CT,S284)を備えている。そして、この場合には、レーザ強度制御手段は、受光信号の増幅率を一定に保ったまま、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるときレーザ光の強度を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとにレーザ光の強度が変化するようにレーザ駆動回路を制御し、増幅率制御手段は、最適レーザ強度設定手段によって設定された最適レーザ強度にレーザ光の強度を保ったまま、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき受光信号の増幅率を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに受光信号の増幅率が変化するように増幅回路を制御するようにして、最適なレーザ光の強度の設定後に、最適な受信信号の増幅率を設定する。
【0012】
上記のように構成した第3の発明においても、信号の大きさがピークとなる径方向位置を所定角度ずつ1周分検出し、1周分の径方向位置の受光信号を用いて、最適なレーザ光の強度及び受光信号の増幅率がそれぞれ設定されるので、簡単に最適なレーザ光の強度及び受光信号の増幅率をそれぞれ設定できる。したがって、第3の発明においても、回折X線の強度が弱い場合でも、回折X線の強度に相当する受光信号のピーク値が大きくなるようにレーザ光の強度及び受光信号の増幅率を設定することができるので、回折X線による回折環を精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などを精度よく求めることができるようになる。また、この第3の発明によれば、レーザ光の強度が受光信号の増幅率の前に設定される。この場合、レーザ光の強度の変化幅は受光信号の増幅率の変化幅に比べて小さいので、ピーク値を最も大きくなる近辺の値にすることができるとともに、回折環の半径方向の信号強度曲線におけるノイズ成分を小さくすることができる。すなわち、前記第3の発明とは逆に、ピーク値が最も大きくなる近辺の値に先に信号の増幅率を変更して同増幅率を最適に設定した後、レーザ強度を上げても、ピーク値が飽和して変化しなくなる。これに対して、第3の発明のように、先にレーザ光の強度の最適値を決めれば、そのようなことはなく、最適なレーザ強度が決められたうえで、信号レベルを最適(最大)に設定することができる。その結果、受光信号のS/N比も良好となる。
【0013】
また、前記第1及び第3の発明においては、最適レーザ強度設定手段は、レーザ強度制御手段がレーザ光の強度を順次増加させた状態で、レーザ光の強度の変化に対する受光信号の大きさの変化量を算出し、受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前のレーザ光の強度を最適レーザ強度として設定し、受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させたレーザ光の強度の最大値を最適レーザ強度として設定するとよい。また、前記第2及び第3の発明においては、最適増幅率設定手段は、増幅率制御手段が受光信号の増幅率を順次増加させた状態で、受光信号の増幅率の変化に対する受光信号の大きさの変化量を算出し、受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の受光信号の増幅率を最適増幅率として設定し、受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させた受光信号の増幅率の最大値を最適増幅率として設定するとよい。
【0014】
このように、受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなかったときは、変化前のレーザ光の強度又は受光信号の増幅率を最適レーザ強度又は最適増幅率として設定することにより、ピーク値の飽和を避けたうえで、ピーク値を最も大きくなる近辺の値にすることができる。その結果、回折環以外の部分の反射によるレーザ光の受光信号のノイズ成分を小さく抑えることができ、X線回折による回折環をより精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などをより精度よく求めることができるようになる。特に、第3の発明のように、レーザ光の強度及び受光信号の増幅率の両方の設定を行う場合には、一方を大きな値に設定すると、その一方の最適値によりピーク値が飽和してもう一方が変更不能となることがあるが、そのような事態を回避し易くなる。
【0015】
また、本発明においては、前記測定対象物が鉄である場合は、ピーク検出手段、第1ピーク検出手段又は第2ピーク検出手段によって検出されるピークは、フェライトの回折環によるものであるとよい。これによれば、フェライトの回折環においてピーク値を最も大きくなる近辺の値に設定すれば、オーステナイトによる回折環においてもピーク値を十分大きくすることができ、オーステナイトによる回折環の形状やオーステナイトによる回折積分強度を精度よく求めることができる。
【0016】
さらに、本発明の実施にあたっては、本発明は、X線回折測定装置の発明に限定されることなく、X線回折測定方法の発明としても実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置の全体概略図である。
【図2】図1のX線回折測定装置の本体部分を拡大した拡大図である。
【図3】イメージングプレートから測定対象物までの距離と、受光センサにおける受光位置との関係を説明する説明図である。
【図4】図1のコントローラによって実行される回折環撮像プログラムを示すフローチャートである。
【図5A】図1のコントローラによって実行される最適設定プログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図5B】前記最適設定プログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図6】図1のコントローラによって実行されるピーク検出プログラムを示すフローチャートである。
【図7A】図1のコントローラによって実行される回折環読取りプログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図7B】前記回折環読取りプログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図8】図1のコントローラによって実行される回折環消去プログラムを示すフローチャートである。
【図9】イメージングプレートに撮像された回折環を説明する説明図である。
【図10】イメージングプレートの移動限界位置からの移動距離と、イメージングプレートにおけるレーザ光の照射位置の半径方向距離(半径値)との関係を説明するための図である。
【図11】読取りポイントの軌跡を説明する説明図である。
【図12】(A)はレーザ光の強度の変化を説明するための説明図であり、(B)は増幅率の変化を説明するための説明図である。
【図13】信号強度のピークを説明するために、受光曲線の一例を示したグラフである。
【図14】(A)は最適なレーザ光強度及び増幅率を決定する第1の方法を説明するための説明であり、(B)は最適なレーザ光強度及び増幅率を決定する第2の方法を説明するための説明図である。
【図15】半径位置に対する信号強度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置の構成について図1及び図2を用いて説明する。このX線回折測定装置は、測定対象物OBの特性を評価するために、X線を測定対象物OBに照射するとともに、同照射による測定対象物OBからの回折X線により形成される回折環の形状及び回折環ごとの回折X線の強度を読み取る。このX線回折測定装置は、箱状に形成されたフレームFRを有し、フレームFRの底面の角部から下方へ支持脚11が延設されている。すなわち、フレームFRの底面は、X線回折測定装置の設置面FLよりも上方に位置する。フレームFRの下方には、昇降機12が設けられている。昇降機12は、測定対象物OBを固定するための昇降ステージ12aを有する。昇降ステージ12aは、上下に昇降可能となっている。フレームFRの底面であって、昇降機12の上方に位置する部分には開口部が設けられていて、昇降ステージ12aを上昇させることにより、固定した測定対象物OBをフレームFRの内部へ搬入することができる。
【0019】
フレームFR内の上部には、X線制御回路14によって制御されて、X線を出射するX線出射器13が固定されている。X線出射器13から出射されたX線の光軸と、測定対象物OBの法線とが所定の角度θ(例えば、30°)をなすように、X線出射器13の出射口の向きが設定されている。
【0020】
X線制御回路14は、後述するコントローラCTによって制御され、X線出射器13から一定の強度のX線が出射されるように、X線出射器13に供給する駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器13は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路14は、この冷却装置に供給する駆動信号も制御する。これにより、X線出射器13の温度が一定に保たれる。
【0021】
X線出射器13の下方には、移動ステージ15が設けられている。移動ステージ15は、ステージ送り装置16により、X線出射器13から出射されたX線の光軸に垂直な方向に移動可能となっている。ステージ送り装置16は、移動ステージ15に固定された図示しないナットに螺合するスクリューロッド17と、スクリューロッド17を回転させるフィードモータ18とを備えている。スクリューロッド17は、X線出射器13から出射されたX線の光軸に垂直な方向に延設されている。そして、スクリューロッド17の一端部が、フレームFRに固定されたフィードモータ18の出力軸に連結され、他端部が、フレームFRに固定された軸受部19に回転可能に支持される。また、移動ステージ15は、それぞれフレームFRに固定された、対向する1対の板状のガイド20,20により挟まれていて、スクリューロッド17の軸線方向に沿って移動可能となっている。すなわち、フィードモータ18を正転又は逆転駆動すると、フィードモータ18の回転運動が移動ステージ15の直線運動に変換される。フィードモータ18内には、エンコーダ18aが組み込まれている。エンコーダ18aは、フィードモータ18が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路21及びフィードモータ制御回路22へ出力する。
【0022】
位置検出回路21及びフィードモータ制御回路22は、コントローラCTからの指令により作動開始する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動して移動ステージ15をフィードモータ18側へ移動させる。位置検出回路21は、エンコーダ18aから出力されるパルス信号が入力されなくなると移動ステージ15が移動限界位置に達したことを表す信号をフィードモータ制御回路22に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21から移動限界位置に達したことを表す信号を入力するとフィードモータ18への駆動信号の出力を停止する。上記の移動限界位置を移動ステージ15の原点位置とする。したがって、位置検出回路21は、移動ステージ15が図1〜3にて左上方向に移動して移動限界位置に達したとき「0」を表す位置信号を出力し、移動ステージ15が移動限界位置から右下方向へ移動するとき、移動限界位置からの移動距離xを表す信号を位置信号として出力する。
【0023】
フィードモータ制御回路22は、コントローラCTから移動ステージ15の移動先の位置を表す設定値を入力すると、その設定値に応じてフィードモータ18を正転又は逆転駆動する。位置検出回路21は、エンコーダ18aが出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして、位置検出回路21は、カウントしたパルス数を用いて移動ステージ15の現在の位置(移動限界位置からの移動距離x)を計算し、コントローラCT及びフィードモータ制御回路22に出力する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21から入力した移動ステージ15の現在の位置が、コントローラCTから入力した移動先の位置と一致するまでフィードモータ18を駆動する。
【0024】
また、フィードモータ制御回路22は、移動ステージ15の移動速度を表す設定値をコントローラCTから入力する。そして、エンコーダ18aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ15の移動速度を計算し、前記計算した移動ステージ15の移動速度がコントローラCTから入力した移動速度になるようにフィードモータ18を駆動する。
【0025】
一対のガイド20,20の上端は、板状の上壁23によって連結されている。上壁23には、貫通孔23aが設けられていて、貫通孔23aには、X線出射器13の出射口の先端部が挿入されている。なお、X線出射器13の出射口の先端が移動ステージ15に当接しないように、X線出射器13及び移動ステージ15の位置が設定されている。
【0026】
また、移動ステージ15には、スピンドルモータ24が組み付けられている。スピンドルモータ24内には、エンコーダ18aと同様のエンコーダ24aが組み込まれている。すなわち、エンコーダ24aは、スピンドルモータ24が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路25及び回転角度検出回路26へ出力する。さらに、エンコーダ24aは、スピンドルモータ24が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、コントローラCT及び回転角度検出回路26へ出力する。
【0027】
スピンドルモータ制御回路25及び回転角度検出回路26は、コントローラCTからの指令により作動開始する。スピンドルモータ制御回路25は、コントローラCTから、スピンドルモータ24の回転速度を表す設定値を入力する。そして、エンコーダ24aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いてスピンドルモータ24の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラCTから入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ24に供給する。回転角度検出回路26は、エンコーダ24aから出力されたパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値を用いてスピンドルモータ24の回転角度すなわちイメージングプレート28の回転角度θpを計算して、コントローラCTに出力する。そして、回転角度検出回路26は、エンコーダ24aから出力されたインデックス信号を入力すると、カウント値を「0」に設定する。すなわち、インデックス信号を入力した位置が回転角度0°の位置である。
【0028】
スピンドルモータ24の出力軸の先端部には、円板状のテーブル27が固定されている。テーブル27の中心軸と、スピンドルモータ24の出力軸の中心軸とは一致している。テーブル27は、下面中央部から下方へ突出した突出部27aを有していて、突出部27aの外周面には、ねじ山が形成されている。突出部27aの中心軸は、スピンドルモータ24の出力軸の中心軸と一致している。テーブル27の下面には、イメージングプレート28が組み付けられている。イメージングプレート28は、表面に蛍光体が塗布された円形のプラスチックフィルムである。イメージングプレート28の中心部には、貫通孔28aが設けられていて、この貫通孔28aに突出部27aを通し、突出部27aにナット状の固定具29をねじ込むことにより、イメージングプレート28が、固定具29とテーブル27の間に挟まれて固定される。固定具29は、円筒状の部材で、内周面に、突出部27aのねじ山に対応するねじ山が形成されている。イメージングプレート28は、フィードモータ18によって駆動されて、移動ステージ15、スピンドルモータ24及びテーブル27と共に原点位置から回折環を撮像する回折環撮像位置へ移動する。また、イメージングプレート28は、スピンドルモータ24によって駆動されて回転しながら、フィードモータ18によって駆動されて、移動ステージ15、スピンドルモータ24及びテーブル27と共に撮像した回折環を読み取る回折環読取り領域内、回折環を消去する回折環消去領域内を移動する。
【0029】
また、移動ステージ15、スピンドルモータ24の出力軸、テーブル27及び固定具29には、X線出射器13から出射されたX線を通過させる貫通孔がそれぞれ設けられている。これらの貫通孔の中心軸と、テーブル27の回転軸は一致している。すなわち、これらの貫通孔の中心軸と、X線出射器13から出射されるX線の光軸とが一致するとき、X線が測定対象物OBに照射される。このように、X線を測定対象物OBに照射するときのイメージングプレート28の位置が、回折環撮像位置である。
【0030】
フィードモータ18の下方には、測定対象物OBにて反射したX線を受光する複数の受光素子からなる受光センサ31(例えば、X線CCD)が組み付けられている。受光センサ31は、測定対象物OB及びイメージングプレート28からフィードモータ18側に十分離れている。これにより、イメージングプレート28が回折環撮像位置にあるとき、受光センサ31は、測定対象物OBにて反射したX線を直接受光できる。受光センサ31の受光面は、測定対象物OBの上面と平行である。受光センサ31の受光面におけるX線の受光位置は、図3に示すように、測定対象物OBの高さに対応している。言い換えれば、イメージングプレート28と測定対象物OBとの距離Lに対応している。受光センサ31は、それぞれの受光素子が受光した受光信号をセンサ信号取り出し回路32へ出力する。
【0031】
センサ信号取り出し回路32は、コントローラCTからの指令により作動開始し、受光センサ31から入力した受光信号を用いて受光センサ31の受光面における受光信号のピーク位置を算出して受光位置を表す受光位置信号としてコントローラCTへ出力する。
【0032】
また、受光センサ31の下方には、レーザ検出装置PUHが組み付けられている。レーザ検出装置PUHは、回折環を撮像したイメージングプレート28にレーザ光を照射して、イメージングプレート28から入射した光の強度を検出する。レーザ検出装置PUHは、測定対象物OB及びイメージングプレート28からフィードモータ18側に十分離れている。すなわち、イメージングプレート28が回折環撮像位置にあるとき、測定対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置PUHによって遮られないようになっている。レーザ検出装置PUHは、レーザ光源33と、コリメートレンズ35、反射鏡36、偏光ビームスプリッタ37、1/4波長板38及び対物レンズ39を備えている。
【0033】
レーザ光源33は、レーザ駆動回路34によって制御されて、イメージングプレート28に照射するレーザ光を出射する。
【0034】
レーザ駆動回路34は、コントローラCTによって制御され、レーザ光源33から所定の強度のレーザ光が出射されるように、駆動信号を制御して供給する。レーザ駆動回路34は、後述するフォトディテクタ51から出力された受光信号を入力して、受光信号の強度が所定の強度になるようにレーザ光源33に出力する駆動信号を制御する。これにより、イメージングプレート28に照射されるレーザ光の強度が一定に維持される。また、レーザ駆動回路34は、コントローラCTから供給される複数の切換えパルスレベル(図12(A)のパルスのレベルに相当)及び1つの設定パルスレベルを記憶する記憶領域を備えており、コントローラCTの指示によりローレベルの直流信号に切換えパルスレベル又は設定パルスレベルのパルスを加算した出力信号を所定の短時間だけ出力し、その後に出力信号をローレベルの直流信号に戻す。
【0035】
コリメートレンズ35は、レーザ光源33から出射されたレーザ光を平行光に変換する。反射鏡36は、コリメートレンズ35にて平行光に変換されたレーザ光を、偏光ビームスプリッタ37に向けて反射する。偏光ビームスプリッタ37は、反射鏡36から入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。1/4波長板38は、偏光ビームスプリッタ37から入射したレーザ光を直線偏光から円偏光に変換する。対物レンズ39は、1/4波長板38から入射したレーザ光をイメージングプレート28の表面に集光させる。
【0036】
対物レンズ39には、フォーカスアクチュエータ40が組み付けられている。フォーカスアクチュエータ40は、対物レンズ39をレーザ光の光軸方向に移動させるアクチュエータである。なお、対物レンズ39は、フォーカスアクチュエータ40が通電されていないときに、その可動範囲の中心に位置する。
【0037】
対物レンズ39によって集光されたレーザ光を、イメージングプレート28の表面であって、回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じる。すなわち、回折環を撮像した後、イメージングプレート28にレーザ光を照射すると、イメージングプレート28の蛍光体が回折X線の強度に応じた光であって、レーザ光の波長よりも波長が短い光を発する。イメージングプレート28に照射されて反射したレーザ光の反射光及び蛍光体から発せられた光は、対物レンズ39及び1/4波長板38を通過して、偏光ビームスプリッタ37にて反射する。偏光ビームスプリッタ37の反射方向には、集光レンズ41、シリンドリカルレンズ42及びフォトディテクタ43が設けられている。集光レンズ41は、偏光ビームスプリッタ37から入射した光を、シリンドリカルレンズ42に集光する。シリンドリカルレンズ42は、透過した光に非点収差を生じさせる。フォトディテクタ43は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として、増幅回路44へ出力する。
【0038】
増幅回路44は、フォトディテクタ43から出力された受光信号(a,b,c,d)をそれぞれ同じ増幅率で増幅して受光信号(a’,b’,c’,d’)を生成して、フォーカスエラー信号生成回路45及びSUM信号生成回路48へ出力する。増幅回路44は、コントローラCTから増幅率が指示されない状態では、初期の予め決められたあまり大きくない増幅率に設定されているが、コントローラCTから指示が入力すると、指示に従って増幅率が設定される(図12(B)の階段状に変化する増幅率を参照)。
【0039】
本実施形態においては、非点収差法によるフォーカスサーボ制御を用いる。フォーカスエラー信号生成回路45は、増幅された受光信号(a’,b’,c’,d’)を用いて、演算によりフォーカスエラー信号を生成する。すなわち、フォーカスエラー信号生成回路45は、(a’+c’)−(b’+d’)の演算を行い、この演算結果をフォーカスエラー信号としてフォーカスサーボ回路46へ出力する。フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)は、レーザ光の焦点位置のイメージングプレート28の表面からのずれ量を表している。
【0040】
フォーカスサーボ回路46は、コントローラCTにより制御され、フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路47に出力する。ドライブ回路47は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ40を駆動して、対物レンズ39をレーザ光の光軸方向に変位させる。この場合、フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)の値が常に一定値(例えば、ゼロ)となるようにフォーカスサーボ信号を生成することにより、イメージングプレート28の表面にレーザ光を集光させ続けることができる。
【0041】
SUM信号生成回路48は、受光信号(a’,b’,c’,d’)を合算してSUM信号(a’+b’+c’+d’)を生成し、A/D変換回路49に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート28にて反射したレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート28にて反射したレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、イメージングプレート28に入射した回折X線の強度に相当する。
【0042】
A/D変換回路49は、コントローラCTによって制御され、SUM信号生成回路48からSUM信号を入力し、入力したSUM信号の瞬時値をデジタルデータに変換してコントローラCTに出力する。
【0043】
また、レーザ検出装置PUHは、集光レンズ50及びフォトディテクタ51を備えている。集光レンズ50は、レーザ光源33から出射されたレーザ光の一部であって、偏光ビームスプリッタ37を透過せずに反射したレーザ光をフォトディテクタ51の受光面に集光する。フォトディテクタ51は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。従って、フォトディテクタ51は、レーザ光源33が出射したレーザ光の強度に対応した受光信号をレーザ駆動回路34へ出力する。
【0044】
また、対物レンズ39に隣接して、LED52が設けられている。LED52は、LED駆動回路53によって制御されて、可視光を発して、イメージングプレート28に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路53は、コントローラCTによって制御され、LED52に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
【0045】
コントローラCTは、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された図4に示す回折環撮像プログラム、図5A及び図5Bに示す最適設定プログラム、図6に示すピーク検出プログラム、図7A及び図7Bに示す回折環読取りプログラム、並びに図8の回折環消去プログラムを実行する。コントローラCTには、作業者が各種パラメータ、作業指示などを入力するための入力装置55と、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果などを視覚的に知らせるための表示装置54とが接続されている。コントローラCTは、A/D変換回路49から出力されたSUM信号のデジタルデータを処理することによりイメージングプレート28の蛍光体が発した光の強度を検出する。
【0046】
次に、上記のように構成したX線回折測定装置を用いて、測定対象物OBの回折X線による回折環の形状及び回折環ごとの回折X線の強度を測定する手順について説明する。まず、作業者は、測定対象物OBを昇降機12の昇降ステージ12aに取り付け、昇降ステージ12aを上昇させて、測定対象物OBをフレームFR内にセットする。そして、作業者が、入力装置55を用いて測定対象物OBの材質(例えば、本実施形態の場合には鉄)を入力し、測定開始を指示すると、コントローラCTは、回折環撮像プログラムを実行する。また、鉄のように複数の結晶構造(フェライト及びオーステナイト)を含む場合には、複数の結晶構造の比率を測定するか否かも入力装置55を用いて入力する。なお、本実施形態においては、この比率の測定を行うことも入力する。
【0047】
コントローラCTは、図4に示すように、ステップS100にて、回折環撮像プログラムを開始すると、ステップS102にて、スピンドルモータ制御回路25に対して、イメージングプレート28を低速回転させ、エンコーダ24aからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート28の回転を停止させる。これにより、測定開始時において、イメージングプレート28の回転角度が0°に設定される。なお、回折環撮像プログラムにおける以降の処理においては、イメージングプレート28を回転させない。次に、コントローラCTは、ステップS104にて、フィードモータ制御回路22を制御することにより、フィードモータ18を作動させて、位置検出回路21との協働によりイメージングプレート28を回折環撮像位置へ移動させる。
【0048】
次に、コントローラCTは、ステップS106にて、センサ信号取り出し回路32の作動を開始させる。次に、コントローラCTは、ステップS108にて、X線制御回路14を制御してX線の出射を開始させる。これにより、X線が測定対象物OBに照射され、測定対象物OBの表面にて反射したX線が受光センサ31に受光される。次に、コントローラCTは、ステップS110にて、センサ信号取り出し回路32から受光位置信号を入力し、前記入力した受光位置信号を用いてイメージングプレート28と測定対象物OBとの距離Lを算出する。そして、コントローラCTは、ステップS112にて、前記算出した距離Lが所定の基準範囲内にあるか否か判定する。距離Lが基準範囲外であれば、「No」と判定して、ステップS114にて、X線制御回路14を制御して測定対象物OBへのX線の照射を停止させる。
【0049】
そして、コントローラCTは、ステップS116にて、表示装置54に、測定対象物OBの高さ方向の位置が不適切である旨を表示するとともに、昇降機12の昇降ステージ12aの高さ調整に関する情報を表示する。すなわち、昇降ステージ12aを、どの程度上昇又は下降させるべきかを表示する。そして、後述のステップS126にて、回折環撮像プログラムを終了する。この場合、作業者は、昇降ステージ12aの高さを調整した後、入力装置55を用いて、再度、測定開始を指示する。上記のステップS108〜S114までの所要時間は僅かなので、イメージングプレート28には回折環が撮像されない。また、受光センサ31が測定対象物OBにて反射したX線を受光しない場合は、ステップS116にて、測定対象物OBの高さ方向の位置が不適切である旨の表示がなされるのみであって、昇降ステージ12aの高さ調整に関する情報は表示されない。この場合、測定対象物OBの位置は、極めて不適切な位置にあると考えられ、昇降ステージ12aの高さ調整の方向を目視で判断できる。
【0050】
一方、ステップS112の判定処理時に、距離Lが所定の基準範囲内である場合には、コントローラCTは、ステップS112にて「Yes」と判定して、ステップS118に処理を進め、センサ信号取り出し回路32の作動を停止させる。そして、コントローラCTは、ステップS120にて時間計測を開始し、ステップS122にて所定の設定時間を経過したか否かを判定する。時間計測開始から所定の設定時間を経過していなければ、ステップS122にて「No」と判定して判定処理を実行し続ける。すなわち、コントローラCTは、時間計測開始から所定の設定時間を経過するまで待機する。そして、時間計測開始から所定の設定時間を経過すると、コントローラCTは、ステップS122にて「Yes」と判定して、ステップS124にてX線制御回路14を制御してX線出射器13によるX線の照射を停止させ、ステップS126にて回折環撮像プログラムの実行を終了する。
【0051】
これにより、イメージングプレート28には回折環が撮像される。図9はこのイメージングプレート28に撮像された回折環を示しており、本実施形態のように測定物質が鉄である場合には、内側にフェライトによる回折環が形成され、外側にオーステナイトによる回折環が形成される。なお、フェライトによる回折X線の強度はオーステナイトによる回折X線の強度に比べて大きく、イメージングプレート28上には、フェライトによる回折環がオーステナイトによる回折環に比べて幅広かつ顕著に撮像される。言い換えれば、後述するレーザ光の照射による輝尽発光の強度は、フェライトによる回折環の場合の方がオーステナイトによる回折環の場合よりも大きい。
【0052】
次に、コントローラCTは、図5A及び図5Bの最適設定プログラムを実行するとともに、このプログラムに並行して図6のピーク検出プログラムを実行する。最適設定プログラムは、レーザ光の照射によるフェライトによる回折環からの輝尽発光の強度を表すSUM信号を用いて、レーザ駆動回路34によるレーザ光源33のレーザ光の強度の最適値と、増幅回路44によるSUM信号の増幅率の最適値とを求めるプログラムである。この最適値を求める理由は、前述のようにオーステナイトによる回折環がフェライトによる回折環に比べて顕著に形成されないために、レーザ光の照射によるオーステナイトの回折環からの輝尽発光の強度が小さいが、小さくても、オーステナイトの回折環からの輝尽発光の強度の測定が的確に行われるようにするために行われる。また、ピーク検出プログラムは、前記SUM信号の回折環の半径方向のピーク位置を検出するプログラムである。
【0053】
最適設定プログラムの実行は図5AのステップS200にて開始され、コントローラCTは、ステップS202にて、レーザ駆動回路34に複数の切換えパルスレベルH(1)〜H(NL)を出力してレーザ駆動回路34に記憶させる。複数の切換えパルスレベルH(1)〜H(NL)は、所定角度θLごとの周方向の測定位置にそれぞれ対応している。値NLは1周当たりの測定値の数を表し、角度をラジアン単位にすると、所定角度θLと値NLはθL・NL=2πの関係にある。複数の切換えパルスレベルH(1)〜H(NL)は、予めコントローラCTに記憶されている値を用いてもよいが、作業者が入力装置55を用いて入力してもよい。なお、後述する実際の回折環の測定の場合に比べれば、所定角度θLは比較的大きく、値NLはそれほど大きくはない。
【0054】
次に、コントローラCTは、ステップS204にて、回折環基準半径Rを算出する。回折環基準半径Rは、測定対象物OBの残留応力が「0」である場合の回折環の半径である。回折環基準半径Rは、測定対象物OBの材質及びイメージングプレート28から測定対象物OBまでの距離Lに依存する。すなわち、残留応力が「0」であるので、回折角θaは材質によって決定される。距離Lと回折環基準半径Rとは比例関係にあるので、予め材質ごとに、回折角θaを記憶しておけば、回折環基準半径Rを、R=L・tan(θa)の演算によって算出できる。なお、測定対象物OBの回折角θaが不明である場合には、その測定対象物OBの粉末を測定対象物OBに一様に付着させ、上記の回折環撮像プログラムを実行して、回折環を撮像すればよい。そして、このときの回折環の半径Rと距離Lからなる上記式を用いて回折角θaを求めればよい。
【0055】
本実施形態の場合には、フェライト及びオーステナイトの2種類の結晶構造を含む鉄を測定対象物OBとしているので、回折角度はフェライト及びオーステナイト用の2種類の回折角度が予め記憶されているか、入力装置55を用いて入力するとよい。したがって、回折環基準半径Rとして前述したフェライト及びオーステナイトによる2つの回折環の回折環基準半径R1,R2が計算される。しかし、この最適設定プログラムの処理においては、前述のように、レーザ光の照射によるフェライトによる回折環からの輝尽発光の強度を表すSUM信号を用いて、レーザ光の強度の最適値及びSUM信号の増幅率の最適値を求めるので、この最適設定プログラムでは、フェライトによる回折環の回折基準半径R1のみが利用される。したがって、このステップS204においては、フェライトの回折環基準半径R1を計算するのみで、オーステナイトの回折環基準半径R2を必ずしも計算する必要はない。
【0056】
前記ステップS204の処理後、コントローラCTは、ステップS206にて、位置検出回路21の作動を開始させる。そして、ステップS208にて、フィードモータ制御回路22に、イメージングプレート28を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21と協働してフィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させる。このイメージングプレート28が読取り開始位置にある状態では、対物レンズ39の中心すなわちレーザ光の照射位置が前記計算したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ小さい位置に位置する。なお、所定距離αは、撮像したフェライトによる回折環の半径が回折環基準半径R1からずれる可能性のある距離よりもやや大きい距離である。これにより、後述の処理により、フェライトによる回折環の測定が十分に内側から開始されて、フェライトによる回折環が確実に検出される。
【0057】
ここで、移動ステージ15の移動限界位置から図1〜3の右下方向への移動距離xを表す位置検出回路21からの位置信号と、イメージングプレート28の中心からレーザ光の照射位置(対物レンズ39の中心位置)までの距離(すわちレーザ光の照射位置の半径値r)との関係について説明しておく。移動ステージ15すなわちイメージングプレート28が移動限界位置にある状態において、図10(A)に示すように、イメージングプレート28の中心から対物レンズ39の中心位置までの距離をRoとする。なお、この場合、対物レンズ39は前記イメージングプレート28の中心位置から図1〜3にて左上方向にあり、また前記距離Roは予め測定されてコントローラCTに記憶されている。一方、図10(B)に示すように、イメージングプレート28を移動限界位置から図1〜3の右下方向へ距離xだけ移動させると、レーザ光の照射位置の半径値rは、r=x+Roで表される。この場合、距離xは、前述のように位置検出回路21から出力される位置信号によって示されるので、今後の処理において、レーザ光の照射位置の半径値rは、位置検出回路21から出力される位置信号によって表された距離xに予め記憶されている値Roを加算することになる。
【0058】
そして、前記のように、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させる場合には、図10(C)に示すように、レーザ光の照射位置は、回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ内側に位置するので、この場合の半径値rは距離R1−αに等しくなるはずである。したがって、イメージングプレート28を駆動限界位置から図1〜3の右下方向へ移動させる距離xは、x=R1−α−Roに等しくなる。すなわち、前記ステップS208における読取り開始位置への移動処理においては、位置検出回路21から出力される位置信号により表される距離x(=R1−α−Ro)だけ、テーブル27を図1〜3の右下方向へ移動させればよい。
【0059】
次に、コントローラCTは、ステップS210にて、スピンドルモータ制御回路25に対して、所定の一定回転速度でイメージングプレート28を回転させることを指示する。スピンドルモータ制御回路25は、エンコーダ24aからのパルス信号を用いて回転速度を計算しながら、前記指示された一定回転速度でイメージングプレート28が回転するようにスピンドルモータ24の回転を制御する。したがって、イメージングプレート28は前記所定の一定回転速度で回転し始める。次に、コントローラCTは、ステップS212にて、レーザ駆動回路34を制御してレーザ光源33によるレーザ光のイメージングプレート28に対する照射を開始させる。この場合、コントローラCTは、レーザ光の強度が図12(A)に示す低レベルLV1になるように、レーザ駆動回路34が低レベルの直流駆動信号でレーザ光源33を駆動するようにレーザ駆動回路34を制御する。したがって、この状態では、イメージングプレート28には、低レベルLV1の強度でレーザ光が照射されることになる。
【0060】
次に、コントローラCTは、ステップS214にて、フォーカスサーボ回路46に対して、フォーカスサーボ制御の開始を指示する。これにより、フォーカスサーボ回路46は、増幅回路44及びフォーカスエラー信号生成回路45からのフォーカスエラー信号を用いて、ドライブ回路47を介してフォーカスアクチュエータ40を駆動制御することにより、フォーカスサーボ制御を開始する。その結果、対物レンズ39が、レーザ光の焦点がイメージングプレート28の表面に合うように光軸方向に駆動制御される。ステップS216の処理後、コントローラCTは、ステップS216にて、回転角度検出回路26及びA/D変換回路49の作動を開始させる。これにより、回転角度検出回路26は、スピンドルモータ24(イメージングプレート28)の基準位置からの回転角度θpをコントローラCTに出力し始め、A/D変換回路49は、SUM信号の瞬時値のディジタルデータをコントローラCTに出力し始める。
【0061】
次に、コントローラCTは、ステップS218にて、フィードモータ制御回路22に対して、イメージングプレート28の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を読取り開始位置から軸受部19側(図1,2の右下方向)へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で相対移動し始める。なお、この状態では、レーザ光の照射位置は、前記ステップS210,S212の処理により、相対的にイメージングプレート28上を螺旋状に回転している。
【0062】
前記ステップS218の処理後、コントローラCTは、ステップS220にて、周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定する。後述する処理により、イメージングプレート28を回転させると同時に径方向に移動させながら、イメージングプレート28にハイレベルのレーザ光を断続的に照射する。このレーザ光の照射は前述した2πを値NLで除した所定角度θLずつである。したがって、図11に示すように、ハイレベルのレーザ光の照射位置である読取りポイントは、螺旋状の軌跡上における所定角度θLずつ離れた位置であり、前記周方向変数n及び半径方向番号mを用いてP(n,m)のように表される。そして、周方向番号nは、読取りポイントP(n,m)がそれぞれ1周する間に「1」からNLまで変化する。半径方向番号mは、読取りポイントP(n,m)がそれぞれ1周するごとに「1」ずつ増加する。なお、読取りポイントP(1,1)は、前述したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ小さい位置に対応している。
【0063】
次に、コントローラCTは、ステップS222にて、回転角度検出回路26がエンコーダ24aからのインデックス信号を入力したか否かを判定する。回転角度検出回路26がインデックス信号を入力していなければ、コントローラCTはステップS222にて「No」と判定して、ステップS222の判定処理を繰り返し実行し続ける。回転角度検出回路26がインデックス信号を入力すると、コントローラCTは、ステップS222にて「Yes」と判定して、ステップS224にて、回転角度検出回路26からイメージングプレート28の現在の回転角度θpを取り込む。そして、コントローラCTは、ステップS226にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される所定の回転角度θL(n)(この場合、n=1であるのでθL(1))との差の絶対値|θp−θL(n)|が所定の許容値未満であるか否か判定する。この場合、所定の回転角度θL(1)〜θL(NL)は予めコントローラCTに記憶されているもので、前述した所定角度θLごとの角度である。前記絶対値|θp−θL(n)|が所定の許容値未満でなければ、コントローラCTは、ステップS226にて「No」と判定してステップS224,S226の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラCTは、現在の回転角度θpが所定の回転角度θL(n)にほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度θL(n)にほぼ一致すると、コントローラCTは、ステップS226にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−θL(n)|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS228に進む。
【0064】
ステップS228においては、コントローラCTは、レーザ駆動回路34に対して、変数nによって指定される切換えパルスレベルH(n) (この場合、n=1であるのでH(1))の出力を指示する。この指示に応答して、レーザ駆動回路34は、前記ステップS212による低レベルの直流駆動信号に前記切換えパルスレベルH(n)のパルスを重畳したパルス信号でレーザ光源33を駆動制御する。この場合のパルス信号は、予め決められた所定幅を有する。これにより、レーザ光源33から切換えパルスレベルH(n)に応じた強度のパルス状のレーザ光が、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)
(この場合、n=1、m=1であるのでP(1,1))で指定される位置に照射される。次に、コントローラCTは、ステップS230にて、前記パルス状のレーザ光の照射中に、A/D変換回路49からSUM信号を取り込んで、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。また、このステップS230においては、位置検出回路21からの位置信号を取り込んで、位置信号によって表される距離xに所定距離Roを加算して半径値rを計算して、読取りポイントP(n,m)の半径値r(n,m)として前記信号強度S(n,m)に対応させてメモリに記憶する。これにより、レーザ光源33から切換えパルスレベルH(n)に応じた強度のパルス状のレーザ光による、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対するX線回折光の強度を表す信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径値を表す半径値r(n,m)と共にメモリに記憶される。
【0065】
次に、コントローラCTは、ステップS232にて、前記記憶した信号強度S(n,m)が、所定の基準値以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)が所定の基準値以上であれば、コントローラCTは、ステップS232にて「Yes」と判定して、ステップS236に進む。一方、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、コントローラCTは、ステップS232にて「No」と判定して、ステップS234にて、前記記憶した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を消去した後、ステップS236に進む。この信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)の消去は、所定の基準値より小さな信号強度S(n,m)は回折X線強度の回折環半径方向のピーク位置の検出に不要であるからである。
【0066】
ステップS236においては、コントローラCTは、周方向番号nに「1」を加算する。そして、コントローラCTは、ステップS238にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値NLより大きいか、すなわちイメージングプレート28が1回転したか否かを判定する。この場合、n=2であり、周方向番号nは値NL以下であるので、コントローラCTは、ステップS238にて「No」と判定して、ステップS224に戻る。
【0067】
そして、前述したステップS224〜S238の処理を、周方向番号nが値NLよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS224〜S238の繰り返し処理により、回転角度θL(1)〜θL(NL)にそれぞれ対応した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに記憶される。この場合、ステップS228の処理により、周方向番号nによって指定される切換えパルスレベルH(n)は順次大きくなるので、図12(A)に示すように、回転角度θL(1)〜θL(NL)が大きくなるに従ってハイレベルの強度が大きくなるパルス状のレーザ光が、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)で指定される位置に照射される。ただし、この場合も、ステップS232,S234の処理により、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0068】
このようなステップS222〜S238の循環処理により、周方向番号nが値NLよりも大きくなると、コントローラCTは、ステップS238にて「Yes」と判定して、ステップS240にて、後述のピーク検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラCTは、ステップS240にて「No」と判定し、ステップS242にて周方向番号nを「1」に戻すとともに、半径方向番号mに「1」を加算する(この場合、m=2になる)。そして、コントローラCTは、前述したステップS222〜S238の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度θL(1)〜θL(NL)に対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をメモリに記憶する。そして、終了指令の指示があるまで、このようなステップS222〜S242の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θL(1)〜θL(NL)に対応した周方向番号n(=1〜NL)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0069】
そして、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラCTは、ステップS240にて「Yes」と判定し、ステップS244にて最適レーザ強度設定処理を実行する。この最適レーザ強度設定処理について説明する前に、最適設定プログラムと並行して実行されているピーク検出プログラムについて説明しておく。
【0070】
ピーク検出プログラムの実行は図6のステップS300にて開始され、コントローラCTは、ステップS302にて変数tを「1」に初期設定する。この変数tは、後述するステップS304〜318からなる実質的なピーク検出処理を2回連続して行わせるための変数であり、ピーク検出処理の回数を表す。次に、コントローラCTは、ステップS304にて、周方向番号nを「1」に初期設定する。なお、この周方向番号nは、最適設定プログラムの場合と同様に所定角度θLごとの周方向位置を示すものであるが、最適設定プログラムに用いられる周方向番号nとは独立したものである。
【0071】
前記ステップS304の処理後、コントローラCTは、ステップS306にて、詳しくは後述するピーク半径rp(t,n)が存在するか、すなわちピーク半径rp(t,n)が検出済みであるかを判定する。この場合、ピーク半径rp(t,n)は、変数tによって1回目のピーク検出か2回目のピーク検出かが表され、変数nによって検出されたピーク半径の回転角度θL(n)が表される。ピーク半径rp(t,n)が検出済みであれば、コントローラCTは、ステップS306にて「Yes」と判定して、ステップS308にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS310にて周方向番号nが所定数より大きいか否かを判定する。この場合の所定数は、1周の測定位置数を表す値NLである。周方向番号nが所定数以下であれば、コントローラCTは、ステップS310にて「No」と判定してステップS306に戻る。周方向番号nが所定数より大きければ、コントローラCTはステップS310にて「Yes」と判定して、周方向番号nを「1」に戻すためにステップS304に戻る。
【0072】
一方、ピーク半径rp(t,n)が未検出であれば、コントローラCTは、ステップS306にて「No」と判定して、ステップS312にて前記図5AのステップS230の処理によって記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)の数が所定数以上でなければ、コントローラCTは、ステップS312にて「No」と判定して、前述したステップS308,S310の処理を実行してステップS306又はステップS304に戻る。このステップS312の判定処理は、信号強度S(n,m)の数が少ない場合には後述するピーク検出処理を実行しても無駄であるからである。なお、前記図5AのステップS234の処理によって消去された信号強度S(n,m)は、記憶した信号強度S(n,m)としてカウントされない。
【0073】
一方、前記記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるときは、コントローラCTは、ステップS312にて「Yes」と判定して、ステップS314にて、ピークの有無を判定する。すなわち、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径値r(n,m)及び信号強度S(n,m)を用いて、SUM信号の値のピークの有無を判定する。具体的には、図13に示すように、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径値r(n,m)を横軸に取り、その半径値r(n,m)に対応させて信号強度S(n,m)を縦軸に取った受光曲線において、信号強度S(n,m)にピークが存在するか、すなわち信号強度S(n,m)が増加した後に減少したかを判定するとよい。そして、ピークが存在しなければ、コントローラCTは、ステップS314にて「No」と判定して、前述したステップS308,S310の処理を実行してステップS306又はステップS304に戻る。
【0074】
このように、ステップS304〜S314を繰り返し実行している間に、並行して実行されている最適設定プログラムの処理により、さらに半径値r(n,m)及び信号強度S(n,m)が取り込まれてメモリに次々に記憶されていく。このため、ステップS314にてピークが検出されるようになり、検出されると、コントローラCTは、ステップS314にて「Yes」と判定して、ステップS316にて、ピークの半径値r(n,m)をピーク半径rp(t,n)としてメモリに記憶する。次に、コントローラCTは、ステップS318にて、取得したピーク半径rp(t,n)の数が所定数以上であるか否かを判定する。この場合の所定数も、1周の測定位置数を表す値NLである。そして、取得したピーク半径rp(t,n)の数が所定数より小さければ、コントローラCTは、ステップS318にて「No」と判定し、前述したステップS308,S310の処理を実行してステップS306又はステップS304に戻る。
【0075】
このようにステップS304〜S318を繰り返すことで、取得したピーク半径rp(t,n)の数が増えていき所定数に達すると、すなわち周方向の全ての読取りポイントP(n,m)にてピーク半径rp(t,n)が取得されると、コントローラCTは、ステップS318にて「Yes」と判定し、ステップS320にて本測定かつ比率測定有りか否かを判定する。ここで、本測定とは、詳しくは後述する、フェライト及びオーステナイトによる回折環の実際の測定を意味する。また、比率測定とは、詳しくは後述する、フェライトの回折積分強度とオーステナイトの回折積分強度との比率の測定を意味する。この場合、このピーク検出プログラムは最適設定プログラムと並行して行われているもので、本測定ではないので、コントローラCTは、ステップS320にて「No」と判定して、ステップS324にてピーク検出の終了を示す終了指令を出力する。
【0076】
この終了指令の出力後、コントローラCTはステップS326にてレーザ照射の停止が指示された否かを判定する。なお、このステップS326の判定処理は、前記終了指令後における所定の短時間内にレーザ照射の停止が指示されたかを判定するもので、短時間内にレーザ照射の停止の指示がなされない場合には、「No」と判定される。言い換えれば、ステップS326の判定処理は、前記ステップS324の終了指令の直後に行われるのではなく、所定の短時間だけ待って、その短時間内にレーザ照射停止の指示があったかを判定するものである。このレーザ照射の停止の指示は、詳しくは後述する、最適設定プログラムの図5BのステップS290及び回折環読取りプログラムの図7BのステップS458にて出力されるものであり、この場合、レーザ照射の停止の指示は短時間内に出力されることはない。したがって、この場合、コントローラCTは、ステップS326にて「No」と判定し、ステップS328にて変数tに「1」を加算してステップS304に戻る。したがって、このピーク検出プログラムにおいては、コントローラCTは、ステップS304〜S318からなる2回目のピーク検出処理を実行し始める。
【0077】
ここで、図5Aの最適設定プログラムの説明に戻る。前述のように終了指令が出力されると、コントローラCTは、ステップS240にて「Yes」と判定し、ステップS244にて最適レーザ強度設定処理を実行する。この最適レーザ強度設定処理においては、前記ピーク検出プログラムの図6のステップS316の処理により取得した1周分の読取りポイントP(n,m)に対応したピーク半径rp(t,n)(t=1、n=1〜NL)と、前記最適設定プログラムの図5AのステップS230にて対にしてメモリに記憶した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)とが利用される。まず、ピーク半径rp(t,n)(t=1、n=1〜NL)にそれぞれ等しい半径値r(n,m)を抽出し、この半径値r(n,m)に対応した信号強度S(n,m)を抽出する。その結果、フェライトによる回折環に関して半径方向の信号強度がピークである1周分の信号強度S(n,m)が抽出される。そして、この場合、周方向番号nは1〜NLの間で変化し、ステップS228の処理により、周方向番号nが「1」ずつ増加するごとにレーザ光源33によるレーザ光の強度は図12(A)に示すように変化する。したがって、横軸にレーザ光の強度(n=1〜NL)を取り、前記抽出した信号強度S(n,m)をピーク値として取って、レーザ光の強度に対するピーク値の変化をグラフにすると、図14に示すようになる。
【0078】
レーザ光の強度の最適値を設定するために、図14(A)に示すように、レーザ光の強度の変化に対するピーク値の変化の割合ΔP(すなわち、レーザ光の強度を一定の変化量で変化させている状態におけるピーク値の変化量ΔP)が設定値を下回ったときの、変化前のレーザ光の強度を最適値として設定する。また、レーザ光の強度を増加させても、図14(B)に示すように最後までピーク値の変化の割合ΔPが設定値を下回らないことがあり得るが、この場合にはレーザ光の強度の最適値をピーク値の最大値に対応した値に設定する。これらの最適値は、周方向番号nによって指定される切換えパルスレベルH(n)に対応するので、実際には、最適値に対応した切換えパルスレベルH(n)が最適レーザ強度として設定される。そして、この設定された最適レーザ強度は、レーザ駆動回路34に出力されてレーザ駆動回路34に記憶され、今後の処理(すなわち最適増幅率の設定と回折環の測定処理)におけるハイレベルのレーザ光の強度である設定パルスレベルとして利用される。
【0079】
前記ステップS244による最適レーザ強度設定処理後、コントローラCTは、図5BのステップS246にて、前記記憶した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をクリアする。次に、コントローラCTは、ステップS248にて、フィードモータ制御回路22を制御してフィードモータ18の作動を停止させることにより、イメージングプレート28を停止させ、ステップS250にて、フォーカスサーボ回路46に対してフォーカスサーボ制御の停止を指示することにより、フォーカスサーボ制御を停止させる。そして、コントローラCTは、前述した図5AのステップS208,S214,S210と同様なステップS252,S254,S256の処理により、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させ、フォーカスサーボ制御を開始させ、かつイメージングプレート28の移動を開始させる。これにより、前記場合と同様に、レーザ光がイメージングプレート28上にフォーカスサーボ制御された状態で、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、回転しながら、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。なお、位置検出回路21の作動、イメージングプレート28の回転、低レベルLV1でのレーザ光の照射、回転角度検出回路26の作動、及びA/D変換回路49の作動は、以前と同様のまま継続されている。
【0080】
前記ステップS256の処理後、コントローラCTは、前記ステップS220,S222の処理と同様に、ステップS258にて周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定し、ステップS260の処理により、回転角度検出回路26がエンコーダ24aからのインデックス信号を入力したことを条件にステップS262以降に進む。
【0081】
ステップS262においては、コントローラCTは、増幅回路44に対して周方向番号nによって指定される増幅率g(n)(この場合、n=1であるのでg(1))を出力して、増幅回路44の増幅率を前記増幅率g(n)に設定する。この増幅率g(n)は、図12(B)に示すように周方向番号nの1〜Ngまでの増加に対して順次所定量ずつ増加するものであり、コントローラCT内に予め記憶されている。なお、これらの増幅率g(1)〜g(Ng)を入力装置55を用いて作業者が入力するようにしてもよい。これらの複数の増幅率g(1)〜g(Ng)は、所定角度θgごとの周方向の測定位置にそれぞれ対応している。値Ngは1周当たりの測定値の数を表し、角度をラジアン単位で表すと、所定角度θgと値Ngとはθg・Ng=2πの関係にある。なお、所定角度θg及び値Ngは前述した所定角度θL及び値NLと同じであっても、異なってもよいが、後述する実際の回折環の測定の場合に比べれば、所定角度θgは比較的大きく、値Ngはそれほど大きくはない。
【0082】
次に、コントローラCTは、ステップS264にて、前述したステップS224の場合と同様に、回転角度検出回路26からイメージングプレート28の現在の回転角度θpを取り込む。そして、コントローラCTは、ステップS226にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される所定の回転角度θg(n) (この場合、n=1であるのでθg(1))との差の絶対値|θp−θg(n)|が所定の許容値未満であるか否か判定する。この場合、所定の回転角度θg(1)〜θg(Ng)は予めコントローラCTに記憶されているもので、前述した所定角度θgごとの角度である。ただし、この所定の回転角度θg(1)〜θg(Ng)は、所定角度θg及び値Ngと所定角度θL及び値NLがたとえそれぞれ等しくても、前述した所定の回転角度θg(1)〜θg(Ng)とはそれぞれ異なる。これは、ハイレベルのパルス状のレーザ光が照射される位置を前記場合と異ならせるためである。前記絶対値|θp−θg(n)|が所定の許容値未満でなければ、コントローラCTは、ステップS260にて「No」と判定してステップS264,S266の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラCTは、現在の回転角度θpが所定の回転角度θg(n)にほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度θg(n)にほぼ一致すると、コントローラCTは、ステップS264にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−θg(n)|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS268に進む。
【0083】
ステップS268においては、コントローラCTは、レーザ駆動回路34に対して、前記ステップS244の処理によって設定されたレーザ駆動回路34に記憶させた設定パルスレベルに対応したパルスの出力を指示する。この指示に応答して、レーザ駆動回路34は、前記ステップS212による低レーザの直流駆動信号に前記設定パルスレベルを有する所定幅のパルスを重畳したパルス信号でレーザ光源33を駆動制御する。これにより、レーザ光源33から設定パルスレベルに応じた強度のパルス状のレーザ光が、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)(この場合、n=1,m=1であるのでP(1,1))で指定される位置に照射される。次に、コントローラCTは、ステップS270にて、前記ステップS230の場合と同様に、前記パルス状のレーザ光の照射中に、A/D変換回路49からSUM信号を取り込むとともに、位置検出回路21から取込んだ位置信号によって表された距離xを用いて半径値rを計算して、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。これにより、レーザ光源33から設定パルスレベルに応じた強度のパルス状のレーザ光による、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対する回折X線の強度を表す信号強度S(n,m)であって、増幅回路44にて設定された増幅率g(n)で増幅された信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径値を表す半径値r(n,m)と共にメモリに記憶される。
【0084】
次に、コントローラCTは、前述したステップS232,S234の処理と同様なステップS272,S274の処理により、所定の基準値未満の信号強度S(n,m)及び同信号強度S(n,m)に対応した半径値r(n,m)を消去する。そして、コントローラCTは、ステップS276にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS278にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値Ngより大きいか、すなわちイメージングプレート28が1回転したか否かを判定する。この場合、n=2であり、周方向番号nは値Ng以下であるので、コントローラCTは、ステップS278にて「No」と判定して、ステップS262に戻る。ステップS262においては、増幅回路44の増幅率が、周方向番号nによって指定される増幅率g(n)(この場合、g(n)=2)すなわち順次高くなる増幅率g(n)に設定される。
【0085】
そして、前述したステップS262〜S278の処理を、周方向番号nが値Ngよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS262〜S278の繰り返し処理により、回転角度θg(1)〜θg(Ng)にそれぞれ対応した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに記憶される。この場合、ステップS262の処理により、変数nによって指定される増幅回路44の増幅率g(n)は順次大きくなるので、図12(B)に示すように、回転角度θg(1)〜θg(Ng)が大きくなるに従って大きくなる信号強度S(n,m)がコントローラCTに入力される。なお、この場合におけるパルス状のレーザ光の強度は常に一定である。
【0086】
このようなステップS262〜S278の循環処理により、周方向番号nが値Ngよりも大きくなると、コントローラCTは、ステップS278にて「Yes」と判定して、前記ステップS240と同様なステップS280の処理により、ピーク検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラCTは、ステップS280にて「No」と判定し、前記ステップS242と同様なステップS282の処理により、周方向番号nを「1」に戻すとともに、半径方向番号mに「1」を加算する(この場合、m=2になる)。そして、コントローラCTは、前述したステップS260〜S278の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度θg(1)〜θg(Ng)に対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をメモリに記憶する。そして、終了指令の指示があるまで、このようなステップS260〜S282の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θg(1)〜θg(Ng)に対応した周方向番号n(=1〜Ng)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0087】
そして、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラCTは、ステップS280にて「Yes」と判定し、ステップS284にて最適増幅率設定処理を実行する。この最適レーザ強度設定処理について説明する前に、並行して実行されているピーク検出プログラムについてふたたび説明しておく。
【0088】
前述のように、ピーク検出プログラムにおいては、コントローラCTは、ステップS328の処理によって変数tを「2」に設定した状態で、前述したステップS304〜S318からなる2回目のピーク検出処理を実行している。なお、この場合、1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数は値Ngに等しいので、ステップS310,S318の所定数は値Ngである。そして、前記ステップS304〜S318の繰返し処理により、取得したピーク半径rp(t,n)の数が増えて所定数すなわち値Ngに達すると、コントローラCTはステップS318にて「Yes」と判定し、前記場合と同様に、ステップS320にて本測定かつ比率測定有りか否かを判定する。この場合も、本測定ではないので、コントローラCTは、ステップS320にて「No」と判定して、ステップS324にてピーク検出の終了を示す終了指令を出力する。この終了指令の出力後、コントローラCTは前記場合と同様に、ステップS326にてレーザ照射の停止が指示されたか否かを判定するが、この場合には、後述する図5BのステップS290の処理によってレーザ照射停止の指示が前記所定の短時間内に出力されるので、その時点で、コントローラCTは、ステップS326にて「Yes」と判定して、ステップS330にてピーク検出プログラムの実行を終了する。
【0089】
ここで、図5Bの最適設定プログラムの説明にふたたび戻る。前述のように終了指令が出力されると、コントローラCTは、ステップS280にて「Yes」と判定し、ステップS284にて最適増幅率設定処理を実行する。この最適増幅率設定処理においても、前記ピーク検出プログラムの図6のステップS316の処理により取得した1周分の読取りポイントP(n,m)に対応したピーク半径rp(t,n)(t=1、n=1〜Ng)と、前記最適設定プログラムの図5BのステップS270にて対にしてメモリに記憶した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)とが利用される。この場合も、前記最適レーザ強度設定処理と同様に、まず、ピーク半径rp(t,n)(t=2、n=1〜Ng)にそれぞれ等しい半径値r(n,m)を抽出し、この半径値r(n,m)に対応した信号強度S(n,m)を抽出する。そして、この場合も、周方向番号nは1〜Ngの間で変化し、ステップS262の処理により、周方向番号nが「1」ずつ増加するごとに増幅回路44の増幅率g(n)が図12(B)に示すように変化する。したがって、横軸にレーザ光の強度(n=1〜Ng)を取り、前記抽出した信号強度S(n,m)をピーク値として取って、レーザ光の強度に対するピーク値の変化をグラフにすると、図14に示すようになる。
【0090】
そして、この場合も、図14(A)に示すように、増幅回路44の増幅率を最適値に設定するために、増幅率の変化に対するピーク値の変化の割合ΔP(すなわち、増幅率を一定の変化量で変化させている状態におけるピーク値の変化量ΔP)が設定値を下回ったときの、変化前の増幅率を最適値として設定する。また、この場合も、図14(B)に示すように最後までピーク値の変化の割合ΔPが設定値を下回らない場合には、増幅率の最適値をピーク値の最大値に対応した値に設定する。これらの最適値は、周方向番号nによって指定される増幅率g(n)に対応するので、実際には、最適値に対応した増幅率g
(n)が最適増幅率として設定される。そして、この設定された最適増幅率は、増幅回路44に出力されて増幅回路44に記憶され、今後の処理(すなわち回折環の測定処理)における増幅回路44の増幅率、すなわちフォトディテクタ43からの受光信号の増幅率として利用される。
【0091】
前記ステップS284による最適増幅率設定処理後、コントローラCTは、図5BのステップS286にて、フォーカスサーボ回路46に対してフォーカスサーボ制御の停止を指示することにより、フォーカスサーボ制御を停止させる。次に、コントローラCTは、ステップS288にて、レーザ駆動回路34を制御して、レーザ光源33によるレーザ光の照射を停止させる。さらに、コントローラCTは、ステップS290にて、A/D変換回路49及び回転角度検出回路26の作動を停止させ、ステップS292にて、フィードモータ制御回路22を制御してフィードモータ18の作動を停止させることにより、イメージングプレート28を停止させて、ステップS294にて最適設定プログラムの実行を終了する。なお、位置検出回路21の作動及びイメージングプレート28の回転は、以前と同様のまま継続されている。
【0092】
最適設定プログラムの実行が終了すると、コントローラCTは、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムの実行を開始する。この場合も、回折環読取りプログラムの実行に並行して、図6のピーク検出プログラムも実行される。回折環読取りプログラムの実行は図7AのステップS400にて開始され、コントローラCTは、ステップS402にて回折環基準半径Rを計算する。この回折環基準半径Rの計算は、前述した最適設定プログラムの図5AのステップS204の処理とほぼ同様であり、イメージングプレート28から測定対象物OBまでの距離Lと、測定対象物OBに関する回折角θaとを用いて、R=L・tan(θa)の演算によって回折環基準半径Rが計算される。本実施形態においては、鉄が測定対象物OBであり、この場合、フェライト及びオーステナイトの2種類の結晶構造による回折環が測定されるので、フェライト及びオーステナイト用の回折環基準半径R1,R2が計算されて、その後の処理に利用される。なお、前記図5AのステップS204の処理によってフェライト及びオーステナイトの2種類の回折環基準半径R1,R2が計算されて記憶されていれば、このステップS402にてこれらの回折環基準半径R1,R2を計算することなく、今後の処理において前記計算されて記憶されている2種類の回折環基準半径R1,R2を利用することもできる。また、前記図5AのステップS204の処理によってフェライトの回折環基準半径R1のみが計算されて記憶されている場合には、このフェライトの回折環基準半径R1を計算することなく、オーステナイトの回折環基準半径R2のみを計算するようにしてもよい。
【0093】
前記ステップS402の処理後、コントローラCTは、前述した図5AのステップS208,S212と同様なステップS404,S406の処理により、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させ、かつレーザ光の照射を開始する。この場合も、読取り開始位置はフェライトの回折環基準半径R1から所定距離αだけ内側位置である。次に、コントローラCTは、前述した図5AのステップS214,S216と同様なステップS408,S410の処理により、フォーカスサーボ制御を開始し、かつ回転角度検出回路26の作動及びA/D変換回路49の作動を開始させる。そして、コントローラCTは、前述した図5AのステップS218の処理と同様なステップS412の処理により、イメージングプレート28を図1及び図2の右下方向に一定速度で移動させ始める。これにより、前記場合と同様に、レーザ光がイメージングプレート28上にフォーカスサーボ制御された状態で、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、回転しながら、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。ただし、この状態では、レーザ光の照射レベルは低レベルLV1である(図12(A)参照)。
【0094】
前記ステップS412の処理後、コントローラCTは、前記ステップS220,S222の処理と同様に、ステップS414にて周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定し、ステップS416の処理により、回転角度検出回路26がエンコーダ24aからのインデックス信号を入力したことを条件にステップS418以降に進む。
【0095】
ステップS418においては、コントローラCTは、前述したステップS224の場合と同様に、回転角度検出回路26からイメージングプレート28の現在の回転角度θpを取り込む。そして、コントローラCTは、ステップS226にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される所定の回転角度θ(n)との差の絶対値|θp−θ(n)|が所定の許容値未満であるか否か判定する。この場合、周方向番号nによって指定される回転角度θ(n)は、周方向番号nの1〜Nまでの「1」ずつの増加にしたがって所定角度θずつ増加する角度であり、所定の回転角度θ(1)〜θ(N)は予めコントローラCTに記憶されている。値Nは1周当たりの測定値の数を表し、角度をラジアン単位で表すと、所定角度θと値Nとはθ・N=2πの関係にある。なお、所定角度θは前述した所定角度θL,θgに比べて小さく、値Nは前述したNL,Ngに比べて大きい。これは、実際の回折環の測定では、最適なレーザ光強度及び増幅率の設定の場合に比べて測定ポイント数を多くするためである。
【0096】
前記絶対値|θp−θ(n)|が所定の許容値未満でなければ、コントローラCTは、ステップS420にて「No」と判定してステップS418,S420の処理を繰返し実行する。すなわち、コントローラCTは、現在の回転角度θpが所定の回転角度θ(n)にほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度θ(n)にほぼ一致すると、コントローラCTは、ステップS420にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−θ(n)|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS422に進む。
【0097】
ステップS422においては、コントローラCTは、前述した図5BのステップS268の処理と同様に、レーザ駆動回路34に対して、前記ステップS244の処理によってレーザ駆動回路34に記憶させた設定パルスレベルに対応したパルスの出力を指示する。この指示に応答して、レーザ駆動回路34は、前記ステップS212による低レーザの直流駆動信号に前記設定パルスレベルを有する所定幅のパルスを重畳したパルス信号でレーザ光源33を駆動制御する。これにより、レーザ光源33から設定パルスレベルに応じた強度のパルス状のレーザ光が、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)で指定される位置に照射される。次に、コントローラCTは、ステップS424にて、前記ステップS230の場合と同様に、前記パルス状のレーザ光の照射中に、A/D変換回路49からSUM信号を取り込むとともに、位置検出回路21から位置信号を取り込んで、位置信号によって表された距離xを用いて半径値rを計算し、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。この場合、前記SUM信号の生成に利用されるフォトディテクタ43から増幅回路44に供給される受光信号は、前記図5BのステップS284の最適増幅率設定処理によって増幅回路44に記憶された増幅率により増幅されている。
【0098】
これにより、レーザ光源33から設定パルスレベルに応じた強度のパルス状のレーザ光による、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対する回折X線の強度を表す信号強度S(n,m)であって、増幅回路44にて最適な増幅率で増幅された信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径値を表す半径値r(n,m)と共にメモリに記憶される。
【0099】
次に、コントローラCTは、前述したステップS232,S234の処理と同様なステップS426,S428の処理により、所定の基準値未満の信号強度S(n,m)及び同信号強度S(n,m)に対応した半径値r(n,m)を消去する。そして、コントローラCTは、ステップS430にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS432にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値Nより大きいか、すなわちイメージングプレート28が1回転したか否かを判定する。この場合、周方向番号nは「1」であり、値N以下であるので、コントローラCTは、ステップS432にて「No」と判定して、ステップS418に戻る。そして、前述したステップS418〜S432の処理を、周方向番号nが値Nよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS418〜S432の繰り返し処理により、回転角度θ(1)〜θ(N)にそれぞれ対応した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに記憶される。
【0100】
このようなステップS418〜S432の循環処理により、周方向番号nが値Nよりも大きくなると、コントローラCTは、ステップS432にて「Yes」と判定して、前記ステップS240と同様なステップS434の処理により、ピーク検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラCTは、ステップS434にて「No」と判定し、前記ステップS242と同様なステップS436の処理により、周方向番号nを「1」に戻すとともに、半径方向番号mに「1」を加算する。そして、コントローラCTは、前述したステップS416〜S432の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度θ(1)〜θ(N)に対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をメモリに記憶する。このような終了指令の指示があるまでのステップS416〜S436の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θ(1)〜θ(N)に対応した周方向番号n(=1〜N)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0101】
そして、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラCTは、ステップS434にて「Yes」と判定し、図7BのステップS438に進む。ステップS438以降の処理について説明する前に、並行して実行されているピーク検出プログラムについて説明しておく。
【0102】
ピーク検出プログラムは、この場合も、図6のステップS300にて開始され、コントローラCTは、ステップS302にて変数tを「1」に設定した後、前述の場合と同様にステップS304〜S318からなるピーク検出処理を実行している。なお、この場合、1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数は値Nに等しいので、ステップS310,S318の所定数は値Nである。そして、前記ステップS304〜S318の繰返し処理により、取得したピーク半径rp(t,n)の数が増えて所定数すなわち値Nに達すると、コントローラCTはステップS318にて「Yes」と判定し、ステップS320にて本測定かつ比率測定有りか否かを判定する。この場合、鉄に関する回折環の測定であり、かつフェライトとオーステナイトの比率の測定を含むので、コントローラCTは、ステップS320にて「Yes」と判定して、ステップS322に進む。
【0103】
鉄のフェライト及びオーステナイトの回折環を測定する本実施形態においては、前記ステップS304〜S318からなるピーク検出処理により、フェライトの回折環に関する1周分のピーク半径rp(t,n)(t=1,n=1〜N)が計算される。また、この場合には、フェライトの回折環のピーク半径を実際に測定するのであるから、ステップS316の処理においては、実際のピークが2つの信号強度S(n,m)の間に存在する場合には、半径値を補間演算により計算してピーク半径rp(t,n)とするのがよい。
【0104】
ステップS322においては、コントローラCTは、位置検出回路21からテーブル27(すなわちイメージングプレート28)の位置を入力して、この入力した位置を用いてイメージングプレート28が読取り終了位置を超えているかを判定する。このイメージングプレート28の読取り終了位置とは、対物レンズ39の中心位置すなわちレーザ光の照射位置が回折環基準半径から前記所定距離αだけ外側にある状態である。具体的には、この場合の測定対象はフェライトの回折環であるので、対物レンズ39の中心位置が前記計算したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ外側に位置している状態である。そして、イメージングプレート28が読取り終了位置を超えていなければ、ステップS322にて「No」と判定し続けて、ステップS322の判定処理を繰り返し実行する。
【0105】
この状態では、次のステップS324の処理による終了指令が出力されない。したがって、コントローラCTは、図7AのステップS434にて「No」と判定して、ステップS436の処理によって周方向番号nを「1」に戻すとともに半径方向番号mを「1」ずつ増加させながら、ステップS416〜S436の循環処理により、信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をさらに蓄積記憶していく。なお、この場合も、ステップS426,S428の処理により、信号強度S(n,m)が基準値より小さければ、信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。このように1周分のピーク半径rp(t,n)が検出された後も信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を蓄積記憶する理由は、回折環(この場合、フェライトの回折環)に関する回折積分強度を計算するために、図15に示すように半径方向に分布する回折環の信号強度Sを取得するためである。
【0106】
そして、イメージングプレート28が読取り終了位置を超えると、コントローラCTは、図6のステップS322にて「Yes」と判定して、ステップS324にてピーク検出の終了を示す終了指令を出力する。この終了指令の出力後、コントローラCTは前記場合と同様に、ステップS326にてレーザ照射の停止が指示されたか否かを判定するが、この場合には、後述する図7BのステップS454の処理までレーザ照射の停止の指示はされないので、前記所定の短時間内ではされない。したがって、この場合、コントローラCTは、ステップS326にて「No」と判定し、ステップS328にて変数tに「1」を加算してステップS304に戻る。したがって、このピーク検出プログラムにおいては、コントローラCTは、ステップS304〜S318からなる2回目のピーク検出処理及びステップS320,S322の測定終了判定処理を実行し始める。
【0107】
前記終了指令の出力により、コントローラCTは、図7AのステップS434にて「Yes」と判定し、図7BのステップS438に進む。ステップS438においては、コントローラCTは、前記ステップS424の処理によりって蓄積記憶した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を測定済みの回折環の信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)として保存する。なお、この場合の保存される信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)において、変数nは周方向番号nに対応し、変数mは半径方向番号mに対応する。そして、最初の信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)(例えば、S1(n,m)及び半径値r1(n,m))はフェライトの回折環に関するデータである。
【0108】
次に、コントローラCTは、ステップS440にて全ての回折環の読取りが終了したかを判定する。この場合、1つの回折環(フェライトの回折環)の読取りが終了しただけで、他の回折環(オーステナイトの回折環)が残っているので、コントローラCTは、ステップS440にて「No」と判定し、ステップS442以降の処理を実行する。ステップS442においては、コントローラCTは、既に保存した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をクリアする。
【0109】
次に、コントローラCTは、前記図5BのステップS248,S250の処理と同様なステップS444,S446の処理により、イメージングプレート28の移動を停止させるとともに、フォーカスサーボ制御を停止させる。そして、コントローラCTは、ステップS448にて、イメージングプレート28を次の読取り開始位置へ移動させる。このイメージングプレート28の次の読取り開始位置とは、対物レンズ39の中心位置が次の回折環基準半径R2(本実施形態ではオーステナイトの回折基準半径R2)から所定距離αだけ内側にある位置である。前記ステップS448の処理後、コントローラCTは、前記ステップS254と同様なステップS450の処理により、フォーカスサーボ制御を開始させる。
【0110】
このステップS450のフォーカスサーボ制御の開始後、コントローラCTは、図7AのステップS412に戻り、前述のように、イメージングプレート28を図1及び図2の右下方向に一定速度で移動させ始める。これにより、レーザ光がイメージングプレート28上にフォーカスサーボ制御された状態で、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、回転しながら、オーステナイトの回折環基準半径R2から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。そして、前述したフェライトの回折環の場合と同様に、ステップS414による周方向番号n及び半径方向番号mの「1」への初期設定後、ピーク検出プログラムの実行によって終了指令が出力されるまで、ステップS416〜S436の循環処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θ(1)〜θ(N)に対応した周方向番号n(=1〜N)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0111】
この状態では、前述したように、コントローラCTは、ステップS304〜S318からなる2回目のピーク検出処理及びステップS320,S322の測定終了判定処理を、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムと並行して実行している。そして、前述のように、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラCTは、ステップS434にて「Yes」と判定し、前述した場合と同様に、図7BのステップS438に進む。なお、この場合の、ステップS322による測定終了判定処理は、2つ目の回折環(本実施形態ではオーステナイトの回折環)に関する判定処理であり、読取り終了位置は、レーザ照射位置(すなわち測定位置)がオーステナイトの回折環基準半径R2よりも所定距離αだけ外側に移動した位置である。
【0112】
そして、レーザ光の照射位置が読取り終了位置を超えると、コントローラCTは、ステップS322にて「Yes」と判定して、ステップS324にて終了指令を出力する。この終了指令の出力後、コントローラCTは前記場合と同様に、ステップS326にてレーザ照射停止が指示された否かを判定するが、この場合には、後述する図7BのステップS454の処理によってレーザ照射停止の指示が前記所定の短時間内に出力されるので、その時点で、ステップS326にて「Yes」と判定して、ステップS330にてピーク検出プログラムの実行を終了する。
【0113】
ふたたび、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムの説明に戻ると、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があって、コントローラCTが、ステップS434にて「Yes」と判定して、ステップS438に進むと、ステップS438においては、前記ステップS424の処理によりって蓄積記憶した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を測定済みの回折環の信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)として保存する。なお、この場合の保存される信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)は、オーステナイトの回折環に関する信号強度S2(n,m)及び半径値r2(n,m)である。
【0114】
次に、コントローラCTは、前述のように、ステップS440にて全ての回折環の読取りが終了したかを判定する。この場合、2つ目の回折環の測定が終了したので、すなわち本実施形態におけるオーステナイトの回折環の測定が終了したので、コントローラCTは、ステップS440にて「Yes」と判定し、ステップS452以降の処理を実行する。
【0115】
すなわち、コントローラCTは、前記図5BのステップS286〜S292の処理と同様なステップS452〜S458の処理により、フォーカスサーボ制御を停止させ、レーザ光の照射を停止させ、A/D変換回路49及び回転角度検出回路26の作動を停止させ、かつイメージングプレート28を停止させて、ステップS460に回折環読取りプログラムの実行を終了する。なお、位置検出回路21の作動及びイメージングプレート28の回転は、以前と同様のまま継続される。
【0116】
なお、上記説明では、複数の結晶構造(本実施形態ではフェライトとオーステナイト)の比率の測定を行うことを入力したので、図6のピーク検出プログラムのステップS306〜S318からなる1周分のピーク半径rp(t,n)の検出後も、ステップS320にて「Yes」との判定のもとに、ステップS322にてレーザ光の照射位置(測定位置)が読取り終了位置を超えたか否かを判定するようにした。しかし、複数の結晶構造の比率の測定が不要であり、前記比率を測定することを入力しなければ、コントローラCTは、本測定時においても、ステップS320にて「No」と判定して、1周分のピーク半径rp(t,n)の検出直後に、ステップS324に進む。
【0117】
前記回折環読取りプログラムの実行が終了すると、コントローラCTは、イメージングプレート28に撮像された回折環を消去する図8の回折環消去プログラムを実行する。回折環消去プログラムの実行はステップS500にて開始され、コントローラCTは、ステップS502にて、フィードモータ制御回路22に、イメージングプレート28を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21と協働してフィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート28が消去開始位置にある状態では、LED52から出力される可視光の中心が前記計算したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離γだけ小さい位置に位置する。具体的には、この位置は、イメージングプレート28が駆動限界位置にある状態において、イメージングプレート28の中心からLEDの可視光の中心までの距離をRo’とすると、位置検出回路21から出力される位置がR1−γ−Ro’になる位置である。なお、所定距離γは、前記所定距離αよりも若干大きく、フェライトによって撮像された回折環の半径よりは余裕をもってずれた位置である。これにより、後述の処理により、フェライトによって撮像された回折環が確実に消去される。
【0118】
次に、コントローラCTは、ステップS504にて、LED駆動回路53を制御してLED52による可視光のイメージングプレート28に対する照射を開始させる。次に、コントローラCTは、ステップS506にて、フィードモータ制御回路22に対して、イメージングプレート28の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を消去開始位置から軸受部19側(図1,2の右下方向)へ一定速度で移動させる。これにより、LED52による可視光が、イメージングプレート28において、回転しながら、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離γ(γ>α)だけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。
【0119】
前記ステップS506の処理後、コントローラCTは、ステップS508にて位置検出回路21からイメージングプレート28の位置を表す位置信号を入力し、ステップS510にて、イメージングプレート28の現在の位置が消去終了位置を超えているか否かを判定する。この終了位置は、フェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離γだけ大きな位置である。具体的には、位置検出回路21から出力される位置がR1+γ−Ro’になる位置である。そして、イメージングプレート28の現在の位置が消去終了位置を超えるまで、コントローラCTは、ステップS510にて「No」と判定して、ステップS508,S510の処理を繰り返し実行する。これにより、回転するイメージングプレート28に対し、前記回折環基準半径R1から所定距離γだけ内側から所定距離γだけ外側まで、LED52による可視光が照射されるので、フェライトによる回折X線によって形成された回折環は内側から徐々に消去されていく。
【0120】
そして、イメージングプレート28の現在の位置が消去終了位置を超えると、コントローラCTは、ステップS510にて「Yes」と判定して、ステップS512にてフィードモータ制御回路22にイメージングプレート28の移動停止を指示し、ステップS514にてLED駆動回路53にLED52による可視光の照射停止を指示する。これにより、フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18の作動を停止させることによりイメージングプレート28の移動を停止させる。LED駆動回路53は、LED52による可視光の照射を停止させる。この状態では、フェライトによって撮像された回折環は完全に消去されている。
【0121】
前記ステップS514の処理後、コントローラCTは、ステップS516にて次の消去位置、すなわちさらに消去する回折環が存在するか否かを判定する。この場合、本実施形態では、イメージングプレート28にはフェライトによる回折環とオーステナイトによる回折環が存在するので、コントローラCTは、ステップS516にて「No」と判定して、ステップS502に戻る。そして、前述したステップS502〜S510の処理により、オーステナイトによって撮像された回折環が消去される。なお、この場合のステップS502の消去開始位置はオーステナイトの回折環基準半径R2から所定距離γだけ内側位置であり、ステップS510の消去終了位置はオーステナイトの回折環基準半径R2から所定距離γだけ外側位置である。具体的には、消去開始位置は位置検出回路21から出力される位置がR2−γ−Ro’になる位置であり、消去終了位置は位置検出回路21から出力される位置がR2+γ−Ro’になる位置である。その後、ステップS512,S514の処理により、イメージングプレート28の移動が停止するとともに、LED52による可視光の照射も停止する。
【0122】
前記ステップS514の処理後、コントローラCTは、ステップS516にて、ふたたび次の消去位置の存在を判定するが、この場合、オーステナイトによる回折X線によって形成された回折環が消去されているので、同ステップS516にて「No」すなわち次の消去位置は存在しないと判定して、ステップS518に進む。ステップS518においては、コントローラCTは、位置検出回路21の作動を停止させる。次に、コントローラCTは、ステップS520にて、スピンドルモータ制御回路25に対してイメージングプレート28の回転停止を指示する。この指示に応答して、スピンドルモータ制御回路25は、スピンドルモータ24の作動を停止させて、イメージングプレート28の回転を停止させる。前記イメージングプレート28の回転停止後、コントローラCTは、ステップS522にて回折環消去プログラムの実行を終了する。
【0123】
前記回折環消去プログラムの実行を終了すると、コントローラCTは、図示しないプログラムの実行により、フェライトの回折環のピーク半径rp(1,n)及びオーステナイトの回折環のピーク半径rp(2,n)を用いて、cosα法により、残留応力を算出して表示装置54に表示する。また、残留応力の計算では、フェライトの回折環のピーク半径rp(1,n)及びオーステナイトの回折環のピーク半径rp(2,n)のうちのいずれか一方のピーク半径を用いるのみでもよい。また、コントローラCTは、ピーク半径rp(1,n),rp(2,n)を用いて、フェライト及びオーステナイトの回折環の画像データを作成して、フェライト及びオーステナイトの回折環を表示装置54に表示する。これにより、回折環の真円からのずれ具合から測定対象物OB(鉄)の残留応力を認識できる。
【0124】
また、コントローラCTは、フェライトに関する全ての強度信号S1(n,m)から全ての強度信号S1(n,m)の中の最小値(すなわち、回折環が形成されていない箇所の信号強度)を減算した値を合計して、合計値を測定時における周方向番号nの最大値Nで除算して、フェライトの回折環に関する回折積分強度(図15の半径R1近傍の斜線領域の面積に対応)を計算する。また、オーステナイトに関する全ての強度信号S2(n,m)から全ての強度信号S2(n,m)の中の最小値(すなわち、回折環が形成されていない箇所の信号強度)を減算した値を合計して、合計値を測定時における周方向番号nの最大値Nで除算して、オーステナイトの回折環に関する回折積分強度(図15の半径R2近傍の斜線領域の面積に対応)を計算する。そして、フェライトの回折積分強度と、オーステナイトの回折積分強度との比により、鉄の中に含まれるフェライトとオーステナイトとの比率を取得する。この場合も、この比率と共に図15に示すようなフェライト及びオーステナイトの信号強度の分布を表示装置54に表示するようにするとよい。これらの残留応力及び比率により、鉄の特性を評価することができる。
【0125】
上記のように動作するX線回折測定装置においては、図5A及び図5Bの最適設定プログラム及び図6のピーク検出プログラムの実行により、イメージングプレート28に記録された回折X線の像である回折環がそれぞれ検出されるとともに、受光信号の大きさが最適となるレーザ光の強度及び受光信号の増幅率が設定される。したがって、上記実施形態によれば、回折X線の強度が弱い場合でも、回折X線の強度に相当する受光信号のピーク値が大きくなるようにレーザ光の強度及び受光信号の増幅率を設定することができるので、回折X線による回折環を精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などを精度よく求めることができるようになる。また、レーザ光の強度の変化幅は受光信号の増幅率の変化幅に比べて小さいので、ピーク値を最も大きくなる近辺の値にすることができるとともに、回折環の半径方向の信号強度曲線におけるノイズ成分を小さくすることができる。すなわち、上記実施形態とは逆に、ピーク値が最も大きくなる近辺の値に先に信号の増幅率を変更して同増幅率を最適に設定した後、レーザ強度と上げても、ピーク値が飽和して変化しなくなる。これに対して、上記実施形態によれば、先にレーザ光の強度の最適値を決めれば、そのようなことはなく、最適なレーザ強度が決められたうえで、信号レベルを最適(最大)に設定することができる。その結果、受光信号のS/N比も良好となる。
【0126】
また、上記実施形態の図5A及び図5Bの最適設定プログラムのステップS244の最適レーザ強度設定処理及びステップS284の最適増幅率設定処理においては、信号強度S(n,m)(ピーク値)の変化量が予め決められた所定値に達しなかったときは変化前のレーザ光の強度又は受光信号の増幅率に設定することにより、ピーク値の飽和を避けたうえで、ピーク値を最も大きくなる近辺の値にすることができる。その結果、上記実施形態によれば、周囲のX線回折による回折環以外の部分による反射による受光信号のノイズ成分を小さく抑えることができ、X線回折による回折環をより精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などをより精度よく求めることができるようになる。特に、レーザ光の強度及び受光信号の増幅率の両方の設定を行うために、一方を大きな値に設定すると、その一方の最適値によりピーク値が飽和してもう一方が変更不能となることがあるが、そのような事態を回避し易くなる。
【0127】
また、上記実施形態においては、前記測定対象物は鉄であり、図6のピーク検出プログラムによって検出されるピークは、フェライトの回折環によるものである。これにより、フェライトの回折環においてピーク値を最も大きくなる近辺の値に設定すれば、オーステナイトによる回折環においてもピーク値を十分大きくすることができ、オーステナイトによる回折環の形状やオーステナイトによる回折積分強度を精度よく求めることができる。
【0128】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0129】
上記実施形態では、最適なレーザ強度及び信号増幅率を設定する際、イメージングプレート28を回転するとともに移動し、同じ回転位置でレーザ強度及び信号増幅率が同一になるようにレーザ強度及び信号増幅率を変化させた。しかし、レーザ強度及び信号増幅率を同一にしてサム信号SUMの信号強度のピーク値を求めることができれば、どのような方法を用いてもよい。例えば、まず、レーザ強度又は信号増幅率を設定し、イメージングプレート28を回転させずに半径方向に移動させながらサム信号SUMの信号強度を取得して、半径方向のピーク値を取得する。次に、イメージングプレート28を微小量回転させる。その後に、レーザ強度又は信号増幅率を次の値に設定して、前記のように、イメージングプレート28を回転させずに半径方向に移動させながらサム信号SUMの信号強度を取得して、半径方向のピーク値を取得する。このような操作を繰り返し行って、サム信号SUMの信号強度がピークとなる半径位置のサム信号SUMの信号強度の中で、サム信号SUMの信号強度が上記実施形態と同様に最適となる回転角度に対応したレーザ強度及び信号増幅率を採用するようにしてもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、レーザ強度及び信号増幅率の両方を最適になるように設定したが、測定対象物が同じ物質であって前回の検査時とレーザ強度又は信号増幅率の最適値が大きく変化しない場合には、一方を前回の値にそのまま固定し、レーザ強度及び信号増幅率のいずれか他方のみを変化させて最適値に設定するようにしてもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、レーザ強度及び信号増幅率の最適値をレーザ強度及び信号増幅率の変化に対するピーク値の変化が設定値に達しないときには変化前の値とした。しかし、これに代えて、測定対象物が特定されていて(本実施形態のように鉄が特定されていて)、ピーク値がほぼわかっている場合には、レーザ強度及び信号増幅率の一方のみ又は両方を変更してピーク値として予め決められている所定値を超えた時点で、その時のレーザ強度及び信号増幅率を最適値とすればよい。
【0132】
また、上記実施形態では、特定の構造の比率を測定する場合、イメージングプレート28を回転させて回折環のそれぞれの回転位置で半径方向の信号強度の曲線を得て、各回転位置での回折積分強度を算出し、この値を平均して回折積分強度としたが、特定の構造の比率のみを測定する場合で精度よりも高速測定が重要視されるときは、イメージングプレート28を回転させずに、移動のみをさせ、特定の回転位置での半径方向の信号強度の曲線を得て、回折積分強度を算出するようにしてもよい。
【0133】
上記実施形態においては、最適なレーザ光の強度及び受光信号の増幅率を設定するために、図5A及び図5Bの最適設定プログラムと並行して実行される図6のピーク検出プログラムのステップS314,S316の処理により、半径値r(n,m)及び信号強度S(n,m)を用いてSUM信号の値のピークを検出するとともに、ピークの半径値をピーク半径rp(t,n)として記憶するようにした。そして、図5AのステップS244における最適レーザ強度設定処理及び図5BのステップS284における最適増幅率設定処理により、前記ピーク半径rp(t,n)にそれぞれ等しい半径値r(n,m)を抽出して、この半径値r(n,m)に対応した回折環を表すピークである1周分の信号強度S(n,m)を抽出し、抽出した1周分の信号強度S(n,m)を用いて最適なレーザ光の強度及び受光信号の増幅率を決定するようにした。
【0134】
しかし、この場合には、ピーク(回折環)の位置に対応した1周分の信号強度S(n,m)を抽出することができれば、ピークの半径値は不要であるので、ピーク半径rp(t,n)を用いる必要はない。このピーク半径rp(t,n)の採用に代えて、前記SUM信号値のピークの検出時に、検出ピークに対応した1周分の信号強度S(n,m)を記憶しておいたり、1周分の信号強度S(n,m)を指定可能な変数n,mの情報を記憶しておいたりしてもよい。ただし、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムと並行して図6のピーク検出プログラムが実行される場合には、ピーク半径rp(t,n)は必要であるので、図6のステップS314,S316の処理は上記実施形態で説明したように動作する必要がある。
【0135】
また、上記実施形態においては、受光センサ31によって受光した反射光の受光位置を用いて、測定対象物OBの高さ方向の位置が、所定の範囲内にあるか否かを判定し、所定の範囲内になければ、作業者が昇降ステージ12aの高さを調整するようにした。しかし、受光センサ31の受光位置が表す測定対象物OBの高さ方向の位置が所定の範囲内にあるように、昇降ステージ12aの高さが自動的に調整されるように構成してもよい。これによれば、作業者がセットした測定対象物OBの高さ方向の位置が、受光センサ31が反射光を受光できる範囲にありさえすれば、作業者が昇降ステージ12aの高さを調整する必要が無いので、作業効率を向上させることができる。なお、例えば上記従来のX線検出装置のように、イメージングプレートと測定対象物との距離が常に一定になるように構成されていれば、受光センサ31は不要である。
【0136】
また、上記実施形態においては、受光センサ31の受光位置を用いて、回折環基準半径Rを算出し、撮像した回折環の半径が回折環基準半径Rからずれる可能性のある領域を想定して、読取り開始位置を決定するようにした。しかし、回折環基準半径Rを算出することなく、常に一定の領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート28の全領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。また、LED53による可視光の照射についても同様に、常に一定の領域にLED53から発せられた可視光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート28の全領域にLED53からの可視光を照射するようにしてもよい。ただし、この場合、上記実施形態よりも測定時間が長くなる。
【0137】
また、上記実施形態においては、レーザ検出装置PUHは、フォーカスサーボ制御されるようにしたが、イメージングプレート28を回転させた際のイメージングプレート28の受光面と対物レンズ39との距離の変動が微小であれば、フォーカスサーボ制御は不要である。
【符号の説明】
【0138】
13…X線出射器、15…移動ステージ、18…フィードモータ、21…位置検出回路、24…スピンドルモータ、26…回転角度検出回路、27…テーブル、28…イメージングプレート、31…受光センサ、33…レーザ光源、34…レーザ駆動回路、39…対物レンズ、43…フォトディテクタ、44…増幅回路、48…SUM信号生成回路、49…変換回路、52…LED、54…表示装置、55…入力装置、CT…コントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にX線を照射し、測定対象物にて回折したX線を受光面で受光して、受光面に形成される回折環を測定するX線回折測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象物の残留応力をX線回折により測定することはよく行われている。また、下記特許文献1に示されているように、鉄元素の大部分の配列構造である体心立方格子構造(以下、フェライトという)と面心立方格子構造(以下、オーステナイトという)との割合を、測定対象物をX線回折した際のフェライトによる回折積分強度とオーステナイトによる回折積分強度を測定することによって測定することも行われている。鉄中のオーステナイトの割合が変化すると鉄の特性が変わるため、この割合には、鉄の使用用途ごとに最も望ましいとされる割合がある。そして、この割合は鉄を加熱し冷却するときの条件により変化するため、製造条件を一定にすることが重要であるが、製造された鉄のオーステナイトの割合を精度よく測定することも重要なことである。
【0003】
X線回折測定装置においては、装置が小型化できX線の照射時間を短くすることが可能なものとして、下記特許文献2に示されている装置がある。この装置は、測定対象物に対してX線を所定の角度で照射し、測定対象物にて回折したX線(以下、回折X線という)を、感光性を有するイメージングプレートで受光し、イメージングプレートに形成された環状のX線回折像(以下、回折環という)の形状を分析するcosα法により、測定対象物の残留応力を算出している。下記特許文献2では、測定対象物の残留応力を求めることのみが説明されているが、下記特許文献2で示されたX線回折測定装置でも、回折環の半径方向におけるフェライト及びオーステナイトによる回折積分強度を測定することで鉄中のオーステナイトの割合を測定できる。下記特許文献2では回折環の形状を測定する際、二つの方法が示されている。一つの方法は、He−Neレーザ光などの励起光でイメージングプレート上を走査し、回折環から輝尽発光により発生する光の強度を光電子倍増管によって増幅して検出し、回折環の画像を得る方法である。他の一つ方法は、X線CCDで回折X線を受光し、X線CCDの各画素が出力する信号から回折環の画像を得る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−230921号公報
【特許文献2】特開2005−241308号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の2つの方法では、フェライトの回折X線の強度は強いために、フェライトによる回折環の画像は明確に得られるが、鉄中のオーステナイトの割合は微量であるためオーステナイトの回折X線の強度は弱く、オーステナイトによる回折環の画像を明確に得ることができない。すなわち、フェライトによる回折環の形状やフェライトによる回折積分強度は精度よく求めることができるが、オーステナイトによる回折環の形状やオーステナイトによる回折積分強度は精度よく求めることができないという問題がある。また、測定対象物が鉄以外の物質であっても、回折X線の強度が弱い場合は、回折環の形状や回折積分強度を精度よく求めることができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、その目的は、測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線を受光面で受光し、回折X線により受光面に形成される回折環を測定するX線回折測定装置において、回折X線の強度にかかわらず、回折環を精度よく測定できるようにしたX線回折測定装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、この実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器(13)と、中央にX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブル(27)と、テーブルに固定されていて、測定対象物にて回折したX線の回折光を受光する受光面を有し、回折光の像である回折環を記録する回折光受光器(28)と、レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、レーザ光を回折光受光器の受光面に照射するとともに、レーザ光の照射によって回折光受光器から出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置(PUH)と、テーブルを、貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段(24,25)と、回転手段によるテーブルの回転における基準位置からの回転角度を検出する回転角度検出回路(26)と、テーブルを、回折光受光器の受光面に平行な方向に、レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段(15,17,18,22)と、移動手段によるテーブルの移動位置を検出する位置検出回路(21)と、レーザ光源を駆動制御するとともにレーザ光源から出射されるレーザ光の強度を変更可能なレーザ駆動回路(34)と、フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力する増幅回路(44)とを備え、X線出射器から測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によって回折光受光器に記録された回折環を測定するX線回折測定装置において、回転手段及び移動手段を制御して回折環が記録された回折光受光器を回転及び移動させて、レーザ検出装置から出射されるレーザ光の回折光受光器における照射位置を回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる照射位置制御手段(CT,S208,S210,S218)と、照射位置制御手段により回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を回折光受光器の中心周りに回転させるとともに中心からの径方向の距離を変化させている状態で、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるときレーザ光の強度を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとにレーザ光の強度が変化するようにレーザ駆動回路を制御するレーザ強度制御手段(CT,S222〜S228)と、テーブルの回転角度が所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における増幅回路からの受光信号であって、回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する受光信号取得手段(CT,S230)と、受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、テーブルの回転角度が同一であり、かつ回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出するピーク検出手段(CT,S314,S316)と、ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となるレーザ光の強度を最適レーザ強度として設定する最適レーザ強度設定手段(S244)とを設けたことにある。
【0008】
上記のように構成した第1の発明においては、レーザ強度制御手段が、照射位置制御手段により回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるときレーザ光の強度を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとにレーザ光の強度を変化させ、受光信号取得手段が、テーブルの回転角度が所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における増幅回路からの受光信号であって、回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する。この取得した受光信号を用いて、ピーク検出手段が、回折光受光器の径方向に分布した複数の受光信号のうちで受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を所定角度ずつ1周分検出することにより、回折光受光器に記録された回折X線の像である回折環が検出される。そして、最適レーザ強度定手段が、ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となるレーザ光の強度を最適レーザ強度として設定する。このように受信信号の大きさがピークとなる径方向位置を所定角度ずつ1周分検出し、この1周分の径方向位置の受光信号を用いて、最適なレーザ光の強度が設定されるので、簡単に最適なレーザ光の強度を設定できる。その結果、第1の発明によれば、回折X線の強度が弱い場合でも、回折X線の強度に相当する受光信号のピーク値が大きくなるようにレーザ光強度を設定することができるので、回折X線による回折環を精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などを精度よく求めることができるようになる。
【0009】
また、第2の発明は、前記第1の発明と同様なX線出射器(13)、テーブル(27)、回折光受光器(28)、レーザ検出装置(PUH)、回転手段(24,25)、回転角度検出回路(26)、移動手段(15,17,18,22)、位置検出回路(21)、照射位置制御手段(CT,S210,S252,S256)、受光信号取得手段(CT,S270)及びピーク検出手段(CT,S314,S316)を備えるとともに、前記第1の発明におけるレーザ駆動回路、増幅回路、レーザ強度制御手段及び最適レーザ強度設定手段に代えて、レーザ光源を駆動制御するレーザ駆動回路(34)と、フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力するとともに受光信号の増幅率を変更可能な増幅回路(44)と、照射位置制御手段により回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき受光信号の増幅率を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに受光信号の増幅率が変化するように増幅回路を制御する増幅率制御手段(CT,S260〜S266)と、ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる受光信号の増幅率を最適増幅率として設定する最適増幅率設定手段(CT,S284)とを設けたことにある。
【0010】
この第2の発明においても、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を所定角度ずつ1周分検出し、この1周分の径方向位置の受光信号を用いて、最適な受光信号の増幅率が設定されるので、簡単に最適な受光信号の増幅率を設定できる。その結果、この第2の発明によっても、回折X線の強度が弱い場合でも、回折X線の強度に相当する受光信号のピーク値が大きくなるように受光信号の増幅率を設定することができるので、回折X線による回折環を精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などを精度よく求めることができるようになる。
【0011】
また、第3の発明は、前記第1の発明と同様なX線出射器(13)、テーブル(27)、回折光受光器(28)、レーザ検出装置(PUH)、回転手段(24,25)、回転角度検出回路(26)、移動手段(15,17,18,22)、位置検出回路(21)及びレーザ駆動回路(34)を備えるとともに、前記第1の発明における増幅回路に代えて、フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力するとともに受光信号の増幅率を変更可能な増幅回路(44)を備えている。さらに、第3の発明は、前記第1の発明の照射位置制御手段、レーザ強度制御手段、受光信号取得手段、ピーク検出手段及び最適レーザ強度設定手段と同様な第1照射位置制御手段(CT,S208,S210,S218)、レーザ強度制御手段(CT,S222〜S228)、第1受光信号取得手段(CT,S230)、第1ピーク検出手段(CT,S314、S316)及び最適レーザ強度設定手段(CT,S244)を備えるとともに、前記第2の発明の照射位置制御手段、増幅率制御手段、受光信号取得手段、ピーク検出手段及び最適増幅率設定手段と同様な第1照射位置制御手段(CT,S210,S252,S256)、増幅率制御手段(CT,S260〜S268)、第2受光信号取得手段(CT,S270)、第2ピーク検出手段(CT,S314、S316)及び最適増幅率設定手段(CT,S284)を備えている。そして、この場合には、レーザ強度制御手段は、受光信号の増幅率を一定に保ったまま、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるときレーザ光の強度を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとにレーザ光の強度が変化するようにレーザ駆動回路を制御し、増幅率制御手段は、最適レーザ強度設定手段によって設定された最適レーザ強度にレーザ光の強度を保ったまま、回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき受光信号の増幅率を同一にするとともに、テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに受光信号の増幅率が変化するように増幅回路を制御するようにして、最適なレーザ光の強度の設定後に、最適な受信信号の増幅率を設定する。
【0012】
上記のように構成した第3の発明においても、信号の大きさがピークとなる径方向位置を所定角度ずつ1周分検出し、1周分の径方向位置の受光信号を用いて、最適なレーザ光の強度及び受光信号の増幅率がそれぞれ設定されるので、簡単に最適なレーザ光の強度及び受光信号の増幅率をそれぞれ設定できる。したがって、第3の発明においても、回折X線の強度が弱い場合でも、回折X線の強度に相当する受光信号のピーク値が大きくなるようにレーザ光の強度及び受光信号の増幅率を設定することができるので、回折X線による回折環を精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などを精度よく求めることができるようになる。また、この第3の発明によれば、レーザ光の強度が受光信号の増幅率の前に設定される。この場合、レーザ光の強度の変化幅は受光信号の増幅率の変化幅に比べて小さいので、ピーク値を最も大きくなる近辺の値にすることができるとともに、回折環の半径方向の信号強度曲線におけるノイズ成分を小さくすることができる。すなわち、前記第3の発明とは逆に、ピーク値が最も大きくなる近辺の値に先に信号の増幅率を変更して同増幅率を最適に設定した後、レーザ強度を上げても、ピーク値が飽和して変化しなくなる。これに対して、第3の発明のように、先にレーザ光の強度の最適値を決めれば、そのようなことはなく、最適なレーザ強度が決められたうえで、信号レベルを最適(最大)に設定することができる。その結果、受光信号のS/N比も良好となる。
【0013】
また、前記第1及び第3の発明においては、最適レーザ強度設定手段は、レーザ強度制御手段がレーザ光の強度を順次増加させた状態で、レーザ光の強度の変化に対する受光信号の大きさの変化量を算出し、受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前のレーザ光の強度を最適レーザ強度として設定し、受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させたレーザ光の強度の最大値を最適レーザ強度として設定するとよい。また、前記第2及び第3の発明においては、最適増幅率設定手段は、増幅率制御手段が受光信号の増幅率を順次増加させた状態で、受光信号の増幅率の変化に対する受光信号の大きさの変化量を算出し、受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の受光信号の増幅率を最適増幅率として設定し、受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させた受光信号の増幅率の最大値を最適増幅率として設定するとよい。
【0014】
このように、受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなかったときは、変化前のレーザ光の強度又は受光信号の増幅率を最適レーザ強度又は最適増幅率として設定することにより、ピーク値の飽和を避けたうえで、ピーク値を最も大きくなる近辺の値にすることができる。その結果、回折環以外の部分の反射によるレーザ光の受光信号のノイズ成分を小さく抑えることができ、X線回折による回折環をより精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などをより精度よく求めることができるようになる。特に、第3の発明のように、レーザ光の強度及び受光信号の増幅率の両方の設定を行う場合には、一方を大きな値に設定すると、その一方の最適値によりピーク値が飽和してもう一方が変更不能となることがあるが、そのような事態を回避し易くなる。
【0015】
また、本発明においては、前記測定対象物が鉄である場合は、ピーク検出手段、第1ピーク検出手段又は第2ピーク検出手段によって検出されるピークは、フェライトの回折環によるものであるとよい。これによれば、フェライトの回折環においてピーク値を最も大きくなる近辺の値に設定すれば、オーステナイトによる回折環においてもピーク値を十分大きくすることができ、オーステナイトによる回折環の形状やオーステナイトによる回折積分強度を精度よく求めることができる。
【0016】
さらに、本発明の実施にあたっては、本発明は、X線回折測定装置の発明に限定されることなく、X線回折測定方法の発明としても実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置の全体概略図である。
【図2】図1のX線回折測定装置の本体部分を拡大した拡大図である。
【図3】イメージングプレートから測定対象物までの距離と、受光センサにおける受光位置との関係を説明する説明図である。
【図4】図1のコントローラによって実行される回折環撮像プログラムを示すフローチャートである。
【図5A】図1のコントローラによって実行される最適設定プログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図5B】前記最適設定プログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図6】図1のコントローラによって実行されるピーク検出プログラムを示すフローチャートである。
【図7A】図1のコントローラによって実行される回折環読取りプログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図7B】前記回折環読取りプログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図8】図1のコントローラによって実行される回折環消去プログラムを示すフローチャートである。
【図9】イメージングプレートに撮像された回折環を説明する説明図である。
【図10】イメージングプレートの移動限界位置からの移動距離と、イメージングプレートにおけるレーザ光の照射位置の半径方向距離(半径値)との関係を説明するための図である。
【図11】読取りポイントの軌跡を説明する説明図である。
【図12】(A)はレーザ光の強度の変化を説明するための説明図であり、(B)は増幅率の変化を説明するための説明図である。
【図13】信号強度のピークを説明するために、受光曲線の一例を示したグラフである。
【図14】(A)は最適なレーザ光強度及び増幅率を決定する第1の方法を説明するための説明であり、(B)は最適なレーザ光強度及び増幅率を決定する第2の方法を説明するための説明図である。
【図15】半径位置に対する信号強度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置の構成について図1及び図2を用いて説明する。このX線回折測定装置は、測定対象物OBの特性を評価するために、X線を測定対象物OBに照射するとともに、同照射による測定対象物OBからの回折X線により形成される回折環の形状及び回折環ごとの回折X線の強度を読み取る。このX線回折測定装置は、箱状に形成されたフレームFRを有し、フレームFRの底面の角部から下方へ支持脚11が延設されている。すなわち、フレームFRの底面は、X線回折測定装置の設置面FLよりも上方に位置する。フレームFRの下方には、昇降機12が設けられている。昇降機12は、測定対象物OBを固定するための昇降ステージ12aを有する。昇降ステージ12aは、上下に昇降可能となっている。フレームFRの底面であって、昇降機12の上方に位置する部分には開口部が設けられていて、昇降ステージ12aを上昇させることにより、固定した測定対象物OBをフレームFRの内部へ搬入することができる。
【0019】
フレームFR内の上部には、X線制御回路14によって制御されて、X線を出射するX線出射器13が固定されている。X線出射器13から出射されたX線の光軸と、測定対象物OBの法線とが所定の角度θ(例えば、30°)をなすように、X線出射器13の出射口の向きが設定されている。
【0020】
X線制御回路14は、後述するコントローラCTによって制御され、X線出射器13から一定の強度のX線が出射されるように、X線出射器13に供給する駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器13は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路14は、この冷却装置に供給する駆動信号も制御する。これにより、X線出射器13の温度が一定に保たれる。
【0021】
X線出射器13の下方には、移動ステージ15が設けられている。移動ステージ15は、ステージ送り装置16により、X線出射器13から出射されたX線の光軸に垂直な方向に移動可能となっている。ステージ送り装置16は、移動ステージ15に固定された図示しないナットに螺合するスクリューロッド17と、スクリューロッド17を回転させるフィードモータ18とを備えている。スクリューロッド17は、X線出射器13から出射されたX線の光軸に垂直な方向に延設されている。そして、スクリューロッド17の一端部が、フレームFRに固定されたフィードモータ18の出力軸に連結され、他端部が、フレームFRに固定された軸受部19に回転可能に支持される。また、移動ステージ15は、それぞれフレームFRに固定された、対向する1対の板状のガイド20,20により挟まれていて、スクリューロッド17の軸線方向に沿って移動可能となっている。すなわち、フィードモータ18を正転又は逆転駆動すると、フィードモータ18の回転運動が移動ステージ15の直線運動に変換される。フィードモータ18内には、エンコーダ18aが組み込まれている。エンコーダ18aは、フィードモータ18が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路21及びフィードモータ制御回路22へ出力する。
【0022】
位置検出回路21及びフィードモータ制御回路22は、コントローラCTからの指令により作動開始する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動して移動ステージ15をフィードモータ18側へ移動させる。位置検出回路21は、エンコーダ18aから出力されるパルス信号が入力されなくなると移動ステージ15が移動限界位置に達したことを表す信号をフィードモータ制御回路22に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21から移動限界位置に達したことを表す信号を入力するとフィードモータ18への駆動信号の出力を停止する。上記の移動限界位置を移動ステージ15の原点位置とする。したがって、位置検出回路21は、移動ステージ15が図1〜3にて左上方向に移動して移動限界位置に達したとき「0」を表す位置信号を出力し、移動ステージ15が移動限界位置から右下方向へ移動するとき、移動限界位置からの移動距離xを表す信号を位置信号として出力する。
【0023】
フィードモータ制御回路22は、コントローラCTから移動ステージ15の移動先の位置を表す設定値を入力すると、その設定値に応じてフィードモータ18を正転又は逆転駆動する。位置検出回路21は、エンコーダ18aが出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして、位置検出回路21は、カウントしたパルス数を用いて移動ステージ15の現在の位置(移動限界位置からの移動距離x)を計算し、コントローラCT及びフィードモータ制御回路22に出力する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21から入力した移動ステージ15の現在の位置が、コントローラCTから入力した移動先の位置と一致するまでフィードモータ18を駆動する。
【0024】
また、フィードモータ制御回路22は、移動ステージ15の移動速度を表す設定値をコントローラCTから入力する。そして、エンコーダ18aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ15の移動速度を計算し、前記計算した移動ステージ15の移動速度がコントローラCTから入力した移動速度になるようにフィードモータ18を駆動する。
【0025】
一対のガイド20,20の上端は、板状の上壁23によって連結されている。上壁23には、貫通孔23aが設けられていて、貫通孔23aには、X線出射器13の出射口の先端部が挿入されている。なお、X線出射器13の出射口の先端が移動ステージ15に当接しないように、X線出射器13及び移動ステージ15の位置が設定されている。
【0026】
また、移動ステージ15には、スピンドルモータ24が組み付けられている。スピンドルモータ24内には、エンコーダ18aと同様のエンコーダ24aが組み込まれている。すなわち、エンコーダ24aは、スピンドルモータ24が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路25及び回転角度検出回路26へ出力する。さらに、エンコーダ24aは、スピンドルモータ24が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、コントローラCT及び回転角度検出回路26へ出力する。
【0027】
スピンドルモータ制御回路25及び回転角度検出回路26は、コントローラCTからの指令により作動開始する。スピンドルモータ制御回路25は、コントローラCTから、スピンドルモータ24の回転速度を表す設定値を入力する。そして、エンコーダ24aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いてスピンドルモータ24の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラCTから入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ24に供給する。回転角度検出回路26は、エンコーダ24aから出力されたパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値を用いてスピンドルモータ24の回転角度すなわちイメージングプレート28の回転角度θpを計算して、コントローラCTに出力する。そして、回転角度検出回路26は、エンコーダ24aから出力されたインデックス信号を入力すると、カウント値を「0」に設定する。すなわち、インデックス信号を入力した位置が回転角度0°の位置である。
【0028】
スピンドルモータ24の出力軸の先端部には、円板状のテーブル27が固定されている。テーブル27の中心軸と、スピンドルモータ24の出力軸の中心軸とは一致している。テーブル27は、下面中央部から下方へ突出した突出部27aを有していて、突出部27aの外周面には、ねじ山が形成されている。突出部27aの中心軸は、スピンドルモータ24の出力軸の中心軸と一致している。テーブル27の下面には、イメージングプレート28が組み付けられている。イメージングプレート28は、表面に蛍光体が塗布された円形のプラスチックフィルムである。イメージングプレート28の中心部には、貫通孔28aが設けられていて、この貫通孔28aに突出部27aを通し、突出部27aにナット状の固定具29をねじ込むことにより、イメージングプレート28が、固定具29とテーブル27の間に挟まれて固定される。固定具29は、円筒状の部材で、内周面に、突出部27aのねじ山に対応するねじ山が形成されている。イメージングプレート28は、フィードモータ18によって駆動されて、移動ステージ15、スピンドルモータ24及びテーブル27と共に原点位置から回折環を撮像する回折環撮像位置へ移動する。また、イメージングプレート28は、スピンドルモータ24によって駆動されて回転しながら、フィードモータ18によって駆動されて、移動ステージ15、スピンドルモータ24及びテーブル27と共に撮像した回折環を読み取る回折環読取り領域内、回折環を消去する回折環消去領域内を移動する。
【0029】
また、移動ステージ15、スピンドルモータ24の出力軸、テーブル27及び固定具29には、X線出射器13から出射されたX線を通過させる貫通孔がそれぞれ設けられている。これらの貫通孔の中心軸と、テーブル27の回転軸は一致している。すなわち、これらの貫通孔の中心軸と、X線出射器13から出射されるX線の光軸とが一致するとき、X線が測定対象物OBに照射される。このように、X線を測定対象物OBに照射するときのイメージングプレート28の位置が、回折環撮像位置である。
【0030】
フィードモータ18の下方には、測定対象物OBにて反射したX線を受光する複数の受光素子からなる受光センサ31(例えば、X線CCD)が組み付けられている。受光センサ31は、測定対象物OB及びイメージングプレート28からフィードモータ18側に十分離れている。これにより、イメージングプレート28が回折環撮像位置にあるとき、受光センサ31は、測定対象物OBにて反射したX線を直接受光できる。受光センサ31の受光面は、測定対象物OBの上面と平行である。受光センサ31の受光面におけるX線の受光位置は、図3に示すように、測定対象物OBの高さに対応している。言い換えれば、イメージングプレート28と測定対象物OBとの距離Lに対応している。受光センサ31は、それぞれの受光素子が受光した受光信号をセンサ信号取り出し回路32へ出力する。
【0031】
センサ信号取り出し回路32は、コントローラCTからの指令により作動開始し、受光センサ31から入力した受光信号を用いて受光センサ31の受光面における受光信号のピーク位置を算出して受光位置を表す受光位置信号としてコントローラCTへ出力する。
【0032】
また、受光センサ31の下方には、レーザ検出装置PUHが組み付けられている。レーザ検出装置PUHは、回折環を撮像したイメージングプレート28にレーザ光を照射して、イメージングプレート28から入射した光の強度を検出する。レーザ検出装置PUHは、測定対象物OB及びイメージングプレート28からフィードモータ18側に十分離れている。すなわち、イメージングプレート28が回折環撮像位置にあるとき、測定対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置PUHによって遮られないようになっている。レーザ検出装置PUHは、レーザ光源33と、コリメートレンズ35、反射鏡36、偏光ビームスプリッタ37、1/4波長板38及び対物レンズ39を備えている。
【0033】
レーザ光源33は、レーザ駆動回路34によって制御されて、イメージングプレート28に照射するレーザ光を出射する。
【0034】
レーザ駆動回路34は、コントローラCTによって制御され、レーザ光源33から所定の強度のレーザ光が出射されるように、駆動信号を制御して供給する。レーザ駆動回路34は、後述するフォトディテクタ51から出力された受光信号を入力して、受光信号の強度が所定の強度になるようにレーザ光源33に出力する駆動信号を制御する。これにより、イメージングプレート28に照射されるレーザ光の強度が一定に維持される。また、レーザ駆動回路34は、コントローラCTから供給される複数の切換えパルスレベル(図12(A)のパルスのレベルに相当)及び1つの設定パルスレベルを記憶する記憶領域を備えており、コントローラCTの指示によりローレベルの直流信号に切換えパルスレベル又は設定パルスレベルのパルスを加算した出力信号を所定の短時間だけ出力し、その後に出力信号をローレベルの直流信号に戻す。
【0035】
コリメートレンズ35は、レーザ光源33から出射されたレーザ光を平行光に変換する。反射鏡36は、コリメートレンズ35にて平行光に変換されたレーザ光を、偏光ビームスプリッタ37に向けて反射する。偏光ビームスプリッタ37は、反射鏡36から入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。1/4波長板38は、偏光ビームスプリッタ37から入射したレーザ光を直線偏光から円偏光に変換する。対物レンズ39は、1/4波長板38から入射したレーザ光をイメージングプレート28の表面に集光させる。
【0036】
対物レンズ39には、フォーカスアクチュエータ40が組み付けられている。フォーカスアクチュエータ40は、対物レンズ39をレーザ光の光軸方向に移動させるアクチュエータである。なお、対物レンズ39は、フォーカスアクチュエータ40が通電されていないときに、その可動範囲の中心に位置する。
【0037】
対物レンズ39によって集光されたレーザ光を、イメージングプレート28の表面であって、回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じる。すなわち、回折環を撮像した後、イメージングプレート28にレーザ光を照射すると、イメージングプレート28の蛍光体が回折X線の強度に応じた光であって、レーザ光の波長よりも波長が短い光を発する。イメージングプレート28に照射されて反射したレーザ光の反射光及び蛍光体から発せられた光は、対物レンズ39及び1/4波長板38を通過して、偏光ビームスプリッタ37にて反射する。偏光ビームスプリッタ37の反射方向には、集光レンズ41、シリンドリカルレンズ42及びフォトディテクタ43が設けられている。集光レンズ41は、偏光ビームスプリッタ37から入射した光を、シリンドリカルレンズ42に集光する。シリンドリカルレンズ42は、透過した光に非点収差を生じさせる。フォトディテクタ43は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として、増幅回路44へ出力する。
【0038】
増幅回路44は、フォトディテクタ43から出力された受光信号(a,b,c,d)をそれぞれ同じ増幅率で増幅して受光信号(a’,b’,c’,d’)を生成して、フォーカスエラー信号生成回路45及びSUM信号生成回路48へ出力する。増幅回路44は、コントローラCTから増幅率が指示されない状態では、初期の予め決められたあまり大きくない増幅率に設定されているが、コントローラCTから指示が入力すると、指示に従って増幅率が設定される(図12(B)の階段状に変化する増幅率を参照)。
【0039】
本実施形態においては、非点収差法によるフォーカスサーボ制御を用いる。フォーカスエラー信号生成回路45は、増幅された受光信号(a’,b’,c’,d’)を用いて、演算によりフォーカスエラー信号を生成する。すなわち、フォーカスエラー信号生成回路45は、(a’+c’)−(b’+d’)の演算を行い、この演算結果をフォーカスエラー信号としてフォーカスサーボ回路46へ出力する。フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)は、レーザ光の焦点位置のイメージングプレート28の表面からのずれ量を表している。
【0040】
フォーカスサーボ回路46は、コントローラCTにより制御され、フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路47に出力する。ドライブ回路47は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ40を駆動して、対物レンズ39をレーザ光の光軸方向に変位させる。この場合、フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)の値が常に一定値(例えば、ゼロ)となるようにフォーカスサーボ信号を生成することにより、イメージングプレート28の表面にレーザ光を集光させ続けることができる。
【0041】
SUM信号生成回路48は、受光信号(a’,b’,c’,d’)を合算してSUM信号(a’+b’+c’+d’)を生成し、A/D変換回路49に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート28にて反射したレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート28にて反射したレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、イメージングプレート28に入射した回折X線の強度に相当する。
【0042】
A/D変換回路49は、コントローラCTによって制御され、SUM信号生成回路48からSUM信号を入力し、入力したSUM信号の瞬時値をデジタルデータに変換してコントローラCTに出力する。
【0043】
また、レーザ検出装置PUHは、集光レンズ50及びフォトディテクタ51を備えている。集光レンズ50は、レーザ光源33から出射されたレーザ光の一部であって、偏光ビームスプリッタ37を透過せずに反射したレーザ光をフォトディテクタ51の受光面に集光する。フォトディテクタ51は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。従って、フォトディテクタ51は、レーザ光源33が出射したレーザ光の強度に対応した受光信号をレーザ駆動回路34へ出力する。
【0044】
また、対物レンズ39に隣接して、LED52が設けられている。LED52は、LED駆動回路53によって制御されて、可視光を発して、イメージングプレート28に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路53は、コントローラCTによって制御され、LED52に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
【0045】
コントローラCTは、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された図4に示す回折環撮像プログラム、図5A及び図5Bに示す最適設定プログラム、図6に示すピーク検出プログラム、図7A及び図7Bに示す回折環読取りプログラム、並びに図8の回折環消去プログラムを実行する。コントローラCTには、作業者が各種パラメータ、作業指示などを入力するための入力装置55と、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果などを視覚的に知らせるための表示装置54とが接続されている。コントローラCTは、A/D変換回路49から出力されたSUM信号のデジタルデータを処理することによりイメージングプレート28の蛍光体が発した光の強度を検出する。
【0046】
次に、上記のように構成したX線回折測定装置を用いて、測定対象物OBの回折X線による回折環の形状及び回折環ごとの回折X線の強度を測定する手順について説明する。まず、作業者は、測定対象物OBを昇降機12の昇降ステージ12aに取り付け、昇降ステージ12aを上昇させて、測定対象物OBをフレームFR内にセットする。そして、作業者が、入力装置55を用いて測定対象物OBの材質(例えば、本実施形態の場合には鉄)を入力し、測定開始を指示すると、コントローラCTは、回折環撮像プログラムを実行する。また、鉄のように複数の結晶構造(フェライト及びオーステナイト)を含む場合には、複数の結晶構造の比率を測定するか否かも入力装置55を用いて入力する。なお、本実施形態においては、この比率の測定を行うことも入力する。
【0047】
コントローラCTは、図4に示すように、ステップS100にて、回折環撮像プログラムを開始すると、ステップS102にて、スピンドルモータ制御回路25に対して、イメージングプレート28を低速回転させ、エンコーダ24aからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート28の回転を停止させる。これにより、測定開始時において、イメージングプレート28の回転角度が0°に設定される。なお、回折環撮像プログラムにおける以降の処理においては、イメージングプレート28を回転させない。次に、コントローラCTは、ステップS104にて、フィードモータ制御回路22を制御することにより、フィードモータ18を作動させて、位置検出回路21との協働によりイメージングプレート28を回折環撮像位置へ移動させる。
【0048】
次に、コントローラCTは、ステップS106にて、センサ信号取り出し回路32の作動を開始させる。次に、コントローラCTは、ステップS108にて、X線制御回路14を制御してX線の出射を開始させる。これにより、X線が測定対象物OBに照射され、測定対象物OBの表面にて反射したX線が受光センサ31に受光される。次に、コントローラCTは、ステップS110にて、センサ信号取り出し回路32から受光位置信号を入力し、前記入力した受光位置信号を用いてイメージングプレート28と測定対象物OBとの距離Lを算出する。そして、コントローラCTは、ステップS112にて、前記算出した距離Lが所定の基準範囲内にあるか否か判定する。距離Lが基準範囲外であれば、「No」と判定して、ステップS114にて、X線制御回路14を制御して測定対象物OBへのX線の照射を停止させる。
【0049】
そして、コントローラCTは、ステップS116にて、表示装置54に、測定対象物OBの高さ方向の位置が不適切である旨を表示するとともに、昇降機12の昇降ステージ12aの高さ調整に関する情報を表示する。すなわち、昇降ステージ12aを、どの程度上昇又は下降させるべきかを表示する。そして、後述のステップS126にて、回折環撮像プログラムを終了する。この場合、作業者は、昇降ステージ12aの高さを調整した後、入力装置55を用いて、再度、測定開始を指示する。上記のステップS108〜S114までの所要時間は僅かなので、イメージングプレート28には回折環が撮像されない。また、受光センサ31が測定対象物OBにて反射したX線を受光しない場合は、ステップS116にて、測定対象物OBの高さ方向の位置が不適切である旨の表示がなされるのみであって、昇降ステージ12aの高さ調整に関する情報は表示されない。この場合、測定対象物OBの位置は、極めて不適切な位置にあると考えられ、昇降ステージ12aの高さ調整の方向を目視で判断できる。
【0050】
一方、ステップS112の判定処理時に、距離Lが所定の基準範囲内である場合には、コントローラCTは、ステップS112にて「Yes」と判定して、ステップS118に処理を進め、センサ信号取り出し回路32の作動を停止させる。そして、コントローラCTは、ステップS120にて時間計測を開始し、ステップS122にて所定の設定時間を経過したか否かを判定する。時間計測開始から所定の設定時間を経過していなければ、ステップS122にて「No」と判定して判定処理を実行し続ける。すなわち、コントローラCTは、時間計測開始から所定の設定時間を経過するまで待機する。そして、時間計測開始から所定の設定時間を経過すると、コントローラCTは、ステップS122にて「Yes」と判定して、ステップS124にてX線制御回路14を制御してX線出射器13によるX線の照射を停止させ、ステップS126にて回折環撮像プログラムの実行を終了する。
【0051】
これにより、イメージングプレート28には回折環が撮像される。図9はこのイメージングプレート28に撮像された回折環を示しており、本実施形態のように測定物質が鉄である場合には、内側にフェライトによる回折環が形成され、外側にオーステナイトによる回折環が形成される。なお、フェライトによる回折X線の強度はオーステナイトによる回折X線の強度に比べて大きく、イメージングプレート28上には、フェライトによる回折環がオーステナイトによる回折環に比べて幅広かつ顕著に撮像される。言い換えれば、後述するレーザ光の照射による輝尽発光の強度は、フェライトによる回折環の場合の方がオーステナイトによる回折環の場合よりも大きい。
【0052】
次に、コントローラCTは、図5A及び図5Bの最適設定プログラムを実行するとともに、このプログラムに並行して図6のピーク検出プログラムを実行する。最適設定プログラムは、レーザ光の照射によるフェライトによる回折環からの輝尽発光の強度を表すSUM信号を用いて、レーザ駆動回路34によるレーザ光源33のレーザ光の強度の最適値と、増幅回路44によるSUM信号の増幅率の最適値とを求めるプログラムである。この最適値を求める理由は、前述のようにオーステナイトによる回折環がフェライトによる回折環に比べて顕著に形成されないために、レーザ光の照射によるオーステナイトの回折環からの輝尽発光の強度が小さいが、小さくても、オーステナイトの回折環からの輝尽発光の強度の測定が的確に行われるようにするために行われる。また、ピーク検出プログラムは、前記SUM信号の回折環の半径方向のピーク位置を検出するプログラムである。
【0053】
最適設定プログラムの実行は図5AのステップS200にて開始され、コントローラCTは、ステップS202にて、レーザ駆動回路34に複数の切換えパルスレベルH(1)〜H(NL)を出力してレーザ駆動回路34に記憶させる。複数の切換えパルスレベルH(1)〜H(NL)は、所定角度θLごとの周方向の測定位置にそれぞれ対応している。値NLは1周当たりの測定値の数を表し、角度をラジアン単位にすると、所定角度θLと値NLはθL・NL=2πの関係にある。複数の切換えパルスレベルH(1)〜H(NL)は、予めコントローラCTに記憶されている値を用いてもよいが、作業者が入力装置55を用いて入力してもよい。なお、後述する実際の回折環の測定の場合に比べれば、所定角度θLは比較的大きく、値NLはそれほど大きくはない。
【0054】
次に、コントローラCTは、ステップS204にて、回折環基準半径Rを算出する。回折環基準半径Rは、測定対象物OBの残留応力が「0」である場合の回折環の半径である。回折環基準半径Rは、測定対象物OBの材質及びイメージングプレート28から測定対象物OBまでの距離Lに依存する。すなわち、残留応力が「0」であるので、回折角θaは材質によって決定される。距離Lと回折環基準半径Rとは比例関係にあるので、予め材質ごとに、回折角θaを記憶しておけば、回折環基準半径Rを、R=L・tan(θa)の演算によって算出できる。なお、測定対象物OBの回折角θaが不明である場合には、その測定対象物OBの粉末を測定対象物OBに一様に付着させ、上記の回折環撮像プログラムを実行して、回折環を撮像すればよい。そして、このときの回折環の半径Rと距離Lからなる上記式を用いて回折角θaを求めればよい。
【0055】
本実施形態の場合には、フェライト及びオーステナイトの2種類の結晶構造を含む鉄を測定対象物OBとしているので、回折角度はフェライト及びオーステナイト用の2種類の回折角度が予め記憶されているか、入力装置55を用いて入力するとよい。したがって、回折環基準半径Rとして前述したフェライト及びオーステナイトによる2つの回折環の回折環基準半径R1,R2が計算される。しかし、この最適設定プログラムの処理においては、前述のように、レーザ光の照射によるフェライトによる回折環からの輝尽発光の強度を表すSUM信号を用いて、レーザ光の強度の最適値及びSUM信号の増幅率の最適値を求めるので、この最適設定プログラムでは、フェライトによる回折環の回折基準半径R1のみが利用される。したがって、このステップS204においては、フェライトの回折環基準半径R1を計算するのみで、オーステナイトの回折環基準半径R2を必ずしも計算する必要はない。
【0056】
前記ステップS204の処理後、コントローラCTは、ステップS206にて、位置検出回路21の作動を開始させる。そして、ステップS208にて、フィードモータ制御回路22に、イメージングプレート28を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21と協働してフィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させる。このイメージングプレート28が読取り開始位置にある状態では、対物レンズ39の中心すなわちレーザ光の照射位置が前記計算したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ小さい位置に位置する。なお、所定距離αは、撮像したフェライトによる回折環の半径が回折環基準半径R1からずれる可能性のある距離よりもやや大きい距離である。これにより、後述の処理により、フェライトによる回折環の測定が十分に内側から開始されて、フェライトによる回折環が確実に検出される。
【0057】
ここで、移動ステージ15の移動限界位置から図1〜3の右下方向への移動距離xを表す位置検出回路21からの位置信号と、イメージングプレート28の中心からレーザ光の照射位置(対物レンズ39の中心位置)までの距離(すわちレーザ光の照射位置の半径値r)との関係について説明しておく。移動ステージ15すなわちイメージングプレート28が移動限界位置にある状態において、図10(A)に示すように、イメージングプレート28の中心から対物レンズ39の中心位置までの距離をRoとする。なお、この場合、対物レンズ39は前記イメージングプレート28の中心位置から図1〜3にて左上方向にあり、また前記距離Roは予め測定されてコントローラCTに記憶されている。一方、図10(B)に示すように、イメージングプレート28を移動限界位置から図1〜3の右下方向へ距離xだけ移動させると、レーザ光の照射位置の半径値rは、r=x+Roで表される。この場合、距離xは、前述のように位置検出回路21から出力される位置信号によって示されるので、今後の処理において、レーザ光の照射位置の半径値rは、位置検出回路21から出力される位置信号によって表された距離xに予め記憶されている値Roを加算することになる。
【0058】
そして、前記のように、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させる場合には、図10(C)に示すように、レーザ光の照射位置は、回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ内側に位置するので、この場合の半径値rは距離R1−αに等しくなるはずである。したがって、イメージングプレート28を駆動限界位置から図1〜3の右下方向へ移動させる距離xは、x=R1−α−Roに等しくなる。すなわち、前記ステップS208における読取り開始位置への移動処理においては、位置検出回路21から出力される位置信号により表される距離x(=R1−α−Ro)だけ、テーブル27を図1〜3の右下方向へ移動させればよい。
【0059】
次に、コントローラCTは、ステップS210にて、スピンドルモータ制御回路25に対して、所定の一定回転速度でイメージングプレート28を回転させることを指示する。スピンドルモータ制御回路25は、エンコーダ24aからのパルス信号を用いて回転速度を計算しながら、前記指示された一定回転速度でイメージングプレート28が回転するようにスピンドルモータ24の回転を制御する。したがって、イメージングプレート28は前記所定の一定回転速度で回転し始める。次に、コントローラCTは、ステップS212にて、レーザ駆動回路34を制御してレーザ光源33によるレーザ光のイメージングプレート28に対する照射を開始させる。この場合、コントローラCTは、レーザ光の強度が図12(A)に示す低レベルLV1になるように、レーザ駆動回路34が低レベルの直流駆動信号でレーザ光源33を駆動するようにレーザ駆動回路34を制御する。したがって、この状態では、イメージングプレート28には、低レベルLV1の強度でレーザ光が照射されることになる。
【0060】
次に、コントローラCTは、ステップS214にて、フォーカスサーボ回路46に対して、フォーカスサーボ制御の開始を指示する。これにより、フォーカスサーボ回路46は、増幅回路44及びフォーカスエラー信号生成回路45からのフォーカスエラー信号を用いて、ドライブ回路47を介してフォーカスアクチュエータ40を駆動制御することにより、フォーカスサーボ制御を開始する。その結果、対物レンズ39が、レーザ光の焦点がイメージングプレート28の表面に合うように光軸方向に駆動制御される。ステップS216の処理後、コントローラCTは、ステップS216にて、回転角度検出回路26及びA/D変換回路49の作動を開始させる。これにより、回転角度検出回路26は、スピンドルモータ24(イメージングプレート28)の基準位置からの回転角度θpをコントローラCTに出力し始め、A/D変換回路49は、SUM信号の瞬時値のディジタルデータをコントローラCTに出力し始める。
【0061】
次に、コントローラCTは、ステップS218にて、フィードモータ制御回路22に対して、イメージングプレート28の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を読取り開始位置から軸受部19側(図1,2の右下方向)へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で相対移動し始める。なお、この状態では、レーザ光の照射位置は、前記ステップS210,S212の処理により、相対的にイメージングプレート28上を螺旋状に回転している。
【0062】
前記ステップS218の処理後、コントローラCTは、ステップS220にて、周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定する。後述する処理により、イメージングプレート28を回転させると同時に径方向に移動させながら、イメージングプレート28にハイレベルのレーザ光を断続的に照射する。このレーザ光の照射は前述した2πを値NLで除した所定角度θLずつである。したがって、図11に示すように、ハイレベルのレーザ光の照射位置である読取りポイントは、螺旋状の軌跡上における所定角度θLずつ離れた位置であり、前記周方向変数n及び半径方向番号mを用いてP(n,m)のように表される。そして、周方向番号nは、読取りポイントP(n,m)がそれぞれ1周する間に「1」からNLまで変化する。半径方向番号mは、読取りポイントP(n,m)がそれぞれ1周するごとに「1」ずつ増加する。なお、読取りポイントP(1,1)は、前述したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ小さい位置に対応している。
【0063】
次に、コントローラCTは、ステップS222にて、回転角度検出回路26がエンコーダ24aからのインデックス信号を入力したか否かを判定する。回転角度検出回路26がインデックス信号を入力していなければ、コントローラCTはステップS222にて「No」と判定して、ステップS222の判定処理を繰り返し実行し続ける。回転角度検出回路26がインデックス信号を入力すると、コントローラCTは、ステップS222にて「Yes」と判定して、ステップS224にて、回転角度検出回路26からイメージングプレート28の現在の回転角度θpを取り込む。そして、コントローラCTは、ステップS226にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される所定の回転角度θL(n)(この場合、n=1であるのでθL(1))との差の絶対値|θp−θL(n)|が所定の許容値未満であるか否か判定する。この場合、所定の回転角度θL(1)〜θL(NL)は予めコントローラCTに記憶されているもので、前述した所定角度θLごとの角度である。前記絶対値|θp−θL(n)|が所定の許容値未満でなければ、コントローラCTは、ステップS226にて「No」と判定してステップS224,S226の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラCTは、現在の回転角度θpが所定の回転角度θL(n)にほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度θL(n)にほぼ一致すると、コントローラCTは、ステップS226にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−θL(n)|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS228に進む。
【0064】
ステップS228においては、コントローラCTは、レーザ駆動回路34に対して、変数nによって指定される切換えパルスレベルH(n) (この場合、n=1であるのでH(1))の出力を指示する。この指示に応答して、レーザ駆動回路34は、前記ステップS212による低レベルの直流駆動信号に前記切換えパルスレベルH(n)のパルスを重畳したパルス信号でレーザ光源33を駆動制御する。この場合のパルス信号は、予め決められた所定幅を有する。これにより、レーザ光源33から切換えパルスレベルH(n)に応じた強度のパルス状のレーザ光が、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)
(この場合、n=1、m=1であるのでP(1,1))で指定される位置に照射される。次に、コントローラCTは、ステップS230にて、前記パルス状のレーザ光の照射中に、A/D変換回路49からSUM信号を取り込んで、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。また、このステップS230においては、位置検出回路21からの位置信号を取り込んで、位置信号によって表される距離xに所定距離Roを加算して半径値rを計算して、読取りポイントP(n,m)の半径値r(n,m)として前記信号強度S(n,m)に対応させてメモリに記憶する。これにより、レーザ光源33から切換えパルスレベルH(n)に応じた強度のパルス状のレーザ光による、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対するX線回折光の強度を表す信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径値を表す半径値r(n,m)と共にメモリに記憶される。
【0065】
次に、コントローラCTは、ステップS232にて、前記記憶した信号強度S(n,m)が、所定の基準値以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)が所定の基準値以上であれば、コントローラCTは、ステップS232にて「Yes」と判定して、ステップS236に進む。一方、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、コントローラCTは、ステップS232にて「No」と判定して、ステップS234にて、前記記憶した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を消去した後、ステップS236に進む。この信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)の消去は、所定の基準値より小さな信号強度S(n,m)は回折X線強度の回折環半径方向のピーク位置の検出に不要であるからである。
【0066】
ステップS236においては、コントローラCTは、周方向番号nに「1」を加算する。そして、コントローラCTは、ステップS238にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値NLより大きいか、すなわちイメージングプレート28が1回転したか否かを判定する。この場合、n=2であり、周方向番号nは値NL以下であるので、コントローラCTは、ステップS238にて「No」と判定して、ステップS224に戻る。
【0067】
そして、前述したステップS224〜S238の処理を、周方向番号nが値NLよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS224〜S238の繰り返し処理により、回転角度θL(1)〜θL(NL)にそれぞれ対応した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに記憶される。この場合、ステップS228の処理により、周方向番号nによって指定される切換えパルスレベルH(n)は順次大きくなるので、図12(A)に示すように、回転角度θL(1)〜θL(NL)が大きくなるに従ってハイレベルの強度が大きくなるパルス状のレーザ光が、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)で指定される位置に照射される。ただし、この場合も、ステップS232,S234の処理により、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0068】
このようなステップS222〜S238の循環処理により、周方向番号nが値NLよりも大きくなると、コントローラCTは、ステップS238にて「Yes」と判定して、ステップS240にて、後述のピーク検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラCTは、ステップS240にて「No」と判定し、ステップS242にて周方向番号nを「1」に戻すとともに、半径方向番号mに「1」を加算する(この場合、m=2になる)。そして、コントローラCTは、前述したステップS222〜S238の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度θL(1)〜θL(NL)に対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をメモリに記憶する。そして、終了指令の指示があるまで、このようなステップS222〜S242の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θL(1)〜θL(NL)に対応した周方向番号n(=1〜NL)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0069】
そして、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラCTは、ステップS240にて「Yes」と判定し、ステップS244にて最適レーザ強度設定処理を実行する。この最適レーザ強度設定処理について説明する前に、最適設定プログラムと並行して実行されているピーク検出プログラムについて説明しておく。
【0070】
ピーク検出プログラムの実行は図6のステップS300にて開始され、コントローラCTは、ステップS302にて変数tを「1」に初期設定する。この変数tは、後述するステップS304〜318からなる実質的なピーク検出処理を2回連続して行わせるための変数であり、ピーク検出処理の回数を表す。次に、コントローラCTは、ステップS304にて、周方向番号nを「1」に初期設定する。なお、この周方向番号nは、最適設定プログラムの場合と同様に所定角度θLごとの周方向位置を示すものであるが、最適設定プログラムに用いられる周方向番号nとは独立したものである。
【0071】
前記ステップS304の処理後、コントローラCTは、ステップS306にて、詳しくは後述するピーク半径rp(t,n)が存在するか、すなわちピーク半径rp(t,n)が検出済みであるかを判定する。この場合、ピーク半径rp(t,n)は、変数tによって1回目のピーク検出か2回目のピーク検出かが表され、変数nによって検出されたピーク半径の回転角度θL(n)が表される。ピーク半径rp(t,n)が検出済みであれば、コントローラCTは、ステップS306にて「Yes」と判定して、ステップS308にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS310にて周方向番号nが所定数より大きいか否かを判定する。この場合の所定数は、1周の測定位置数を表す値NLである。周方向番号nが所定数以下であれば、コントローラCTは、ステップS310にて「No」と判定してステップS306に戻る。周方向番号nが所定数より大きければ、コントローラCTはステップS310にて「Yes」と判定して、周方向番号nを「1」に戻すためにステップS304に戻る。
【0072】
一方、ピーク半径rp(t,n)が未検出であれば、コントローラCTは、ステップS306にて「No」と判定して、ステップS312にて前記図5AのステップS230の処理によって記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)の数が所定数以上でなければ、コントローラCTは、ステップS312にて「No」と判定して、前述したステップS308,S310の処理を実行してステップS306又はステップS304に戻る。このステップS312の判定処理は、信号強度S(n,m)の数が少ない場合には後述するピーク検出処理を実行しても無駄であるからである。なお、前記図5AのステップS234の処理によって消去された信号強度S(n,m)は、記憶した信号強度S(n,m)としてカウントされない。
【0073】
一方、前記記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるときは、コントローラCTは、ステップS312にて「Yes」と判定して、ステップS314にて、ピークの有無を判定する。すなわち、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径値r(n,m)及び信号強度S(n,m)を用いて、SUM信号の値のピークの有無を判定する。具体的には、図13に示すように、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径値r(n,m)を横軸に取り、その半径値r(n,m)に対応させて信号強度S(n,m)を縦軸に取った受光曲線において、信号強度S(n,m)にピークが存在するか、すなわち信号強度S(n,m)が増加した後に減少したかを判定するとよい。そして、ピークが存在しなければ、コントローラCTは、ステップS314にて「No」と判定して、前述したステップS308,S310の処理を実行してステップS306又はステップS304に戻る。
【0074】
このように、ステップS304〜S314を繰り返し実行している間に、並行して実行されている最適設定プログラムの処理により、さらに半径値r(n,m)及び信号強度S(n,m)が取り込まれてメモリに次々に記憶されていく。このため、ステップS314にてピークが検出されるようになり、検出されると、コントローラCTは、ステップS314にて「Yes」と判定して、ステップS316にて、ピークの半径値r(n,m)をピーク半径rp(t,n)としてメモリに記憶する。次に、コントローラCTは、ステップS318にて、取得したピーク半径rp(t,n)の数が所定数以上であるか否かを判定する。この場合の所定数も、1周の測定位置数を表す値NLである。そして、取得したピーク半径rp(t,n)の数が所定数より小さければ、コントローラCTは、ステップS318にて「No」と判定し、前述したステップS308,S310の処理を実行してステップS306又はステップS304に戻る。
【0075】
このようにステップS304〜S318を繰り返すことで、取得したピーク半径rp(t,n)の数が増えていき所定数に達すると、すなわち周方向の全ての読取りポイントP(n,m)にてピーク半径rp(t,n)が取得されると、コントローラCTは、ステップS318にて「Yes」と判定し、ステップS320にて本測定かつ比率測定有りか否かを判定する。ここで、本測定とは、詳しくは後述する、フェライト及びオーステナイトによる回折環の実際の測定を意味する。また、比率測定とは、詳しくは後述する、フェライトの回折積分強度とオーステナイトの回折積分強度との比率の測定を意味する。この場合、このピーク検出プログラムは最適設定プログラムと並行して行われているもので、本測定ではないので、コントローラCTは、ステップS320にて「No」と判定して、ステップS324にてピーク検出の終了を示す終了指令を出力する。
【0076】
この終了指令の出力後、コントローラCTはステップS326にてレーザ照射の停止が指示された否かを判定する。なお、このステップS326の判定処理は、前記終了指令後における所定の短時間内にレーザ照射の停止が指示されたかを判定するもので、短時間内にレーザ照射の停止の指示がなされない場合には、「No」と判定される。言い換えれば、ステップS326の判定処理は、前記ステップS324の終了指令の直後に行われるのではなく、所定の短時間だけ待って、その短時間内にレーザ照射停止の指示があったかを判定するものである。このレーザ照射の停止の指示は、詳しくは後述する、最適設定プログラムの図5BのステップS290及び回折環読取りプログラムの図7BのステップS458にて出力されるものであり、この場合、レーザ照射の停止の指示は短時間内に出力されることはない。したがって、この場合、コントローラCTは、ステップS326にて「No」と判定し、ステップS328にて変数tに「1」を加算してステップS304に戻る。したがって、このピーク検出プログラムにおいては、コントローラCTは、ステップS304〜S318からなる2回目のピーク検出処理を実行し始める。
【0077】
ここで、図5Aの最適設定プログラムの説明に戻る。前述のように終了指令が出力されると、コントローラCTは、ステップS240にて「Yes」と判定し、ステップS244にて最適レーザ強度設定処理を実行する。この最適レーザ強度設定処理においては、前記ピーク検出プログラムの図6のステップS316の処理により取得した1周分の読取りポイントP(n,m)に対応したピーク半径rp(t,n)(t=1、n=1〜NL)と、前記最適設定プログラムの図5AのステップS230にて対にしてメモリに記憶した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)とが利用される。まず、ピーク半径rp(t,n)(t=1、n=1〜NL)にそれぞれ等しい半径値r(n,m)を抽出し、この半径値r(n,m)に対応した信号強度S(n,m)を抽出する。その結果、フェライトによる回折環に関して半径方向の信号強度がピークである1周分の信号強度S(n,m)が抽出される。そして、この場合、周方向番号nは1〜NLの間で変化し、ステップS228の処理により、周方向番号nが「1」ずつ増加するごとにレーザ光源33によるレーザ光の強度は図12(A)に示すように変化する。したがって、横軸にレーザ光の強度(n=1〜NL)を取り、前記抽出した信号強度S(n,m)をピーク値として取って、レーザ光の強度に対するピーク値の変化をグラフにすると、図14に示すようになる。
【0078】
レーザ光の強度の最適値を設定するために、図14(A)に示すように、レーザ光の強度の変化に対するピーク値の変化の割合ΔP(すなわち、レーザ光の強度を一定の変化量で変化させている状態におけるピーク値の変化量ΔP)が設定値を下回ったときの、変化前のレーザ光の強度を最適値として設定する。また、レーザ光の強度を増加させても、図14(B)に示すように最後までピーク値の変化の割合ΔPが設定値を下回らないことがあり得るが、この場合にはレーザ光の強度の最適値をピーク値の最大値に対応した値に設定する。これらの最適値は、周方向番号nによって指定される切換えパルスレベルH(n)に対応するので、実際には、最適値に対応した切換えパルスレベルH(n)が最適レーザ強度として設定される。そして、この設定された最適レーザ強度は、レーザ駆動回路34に出力されてレーザ駆動回路34に記憶され、今後の処理(すなわち最適増幅率の設定と回折環の測定処理)におけるハイレベルのレーザ光の強度である設定パルスレベルとして利用される。
【0079】
前記ステップS244による最適レーザ強度設定処理後、コントローラCTは、図5BのステップS246にて、前記記憶した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をクリアする。次に、コントローラCTは、ステップS248にて、フィードモータ制御回路22を制御してフィードモータ18の作動を停止させることにより、イメージングプレート28を停止させ、ステップS250にて、フォーカスサーボ回路46に対してフォーカスサーボ制御の停止を指示することにより、フォーカスサーボ制御を停止させる。そして、コントローラCTは、前述した図5AのステップS208,S214,S210と同様なステップS252,S254,S256の処理により、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させ、フォーカスサーボ制御を開始させ、かつイメージングプレート28の移動を開始させる。これにより、前記場合と同様に、レーザ光がイメージングプレート28上にフォーカスサーボ制御された状態で、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、回転しながら、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。なお、位置検出回路21の作動、イメージングプレート28の回転、低レベルLV1でのレーザ光の照射、回転角度検出回路26の作動、及びA/D変換回路49の作動は、以前と同様のまま継続されている。
【0080】
前記ステップS256の処理後、コントローラCTは、前記ステップS220,S222の処理と同様に、ステップS258にて周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定し、ステップS260の処理により、回転角度検出回路26がエンコーダ24aからのインデックス信号を入力したことを条件にステップS262以降に進む。
【0081】
ステップS262においては、コントローラCTは、増幅回路44に対して周方向番号nによって指定される増幅率g(n)(この場合、n=1であるのでg(1))を出力して、増幅回路44の増幅率を前記増幅率g(n)に設定する。この増幅率g(n)は、図12(B)に示すように周方向番号nの1〜Ngまでの増加に対して順次所定量ずつ増加するものであり、コントローラCT内に予め記憶されている。なお、これらの増幅率g(1)〜g(Ng)を入力装置55を用いて作業者が入力するようにしてもよい。これらの複数の増幅率g(1)〜g(Ng)は、所定角度θgごとの周方向の測定位置にそれぞれ対応している。値Ngは1周当たりの測定値の数を表し、角度をラジアン単位で表すと、所定角度θgと値Ngとはθg・Ng=2πの関係にある。なお、所定角度θg及び値Ngは前述した所定角度θL及び値NLと同じであっても、異なってもよいが、後述する実際の回折環の測定の場合に比べれば、所定角度θgは比較的大きく、値Ngはそれほど大きくはない。
【0082】
次に、コントローラCTは、ステップS264にて、前述したステップS224の場合と同様に、回転角度検出回路26からイメージングプレート28の現在の回転角度θpを取り込む。そして、コントローラCTは、ステップS226にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される所定の回転角度θg(n) (この場合、n=1であるのでθg(1))との差の絶対値|θp−θg(n)|が所定の許容値未満であるか否か判定する。この場合、所定の回転角度θg(1)〜θg(Ng)は予めコントローラCTに記憶されているもので、前述した所定角度θgごとの角度である。ただし、この所定の回転角度θg(1)〜θg(Ng)は、所定角度θg及び値Ngと所定角度θL及び値NLがたとえそれぞれ等しくても、前述した所定の回転角度θg(1)〜θg(Ng)とはそれぞれ異なる。これは、ハイレベルのパルス状のレーザ光が照射される位置を前記場合と異ならせるためである。前記絶対値|θp−θg(n)|が所定の許容値未満でなければ、コントローラCTは、ステップS260にて「No」と判定してステップS264,S266の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラCTは、現在の回転角度θpが所定の回転角度θg(n)にほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度θg(n)にほぼ一致すると、コントローラCTは、ステップS264にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−θg(n)|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS268に進む。
【0083】
ステップS268においては、コントローラCTは、レーザ駆動回路34に対して、前記ステップS244の処理によって設定されたレーザ駆動回路34に記憶させた設定パルスレベルに対応したパルスの出力を指示する。この指示に応答して、レーザ駆動回路34は、前記ステップS212による低レーザの直流駆動信号に前記設定パルスレベルを有する所定幅のパルスを重畳したパルス信号でレーザ光源33を駆動制御する。これにより、レーザ光源33から設定パルスレベルに応じた強度のパルス状のレーザ光が、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)(この場合、n=1,m=1であるのでP(1,1))で指定される位置に照射される。次に、コントローラCTは、ステップS270にて、前記ステップS230の場合と同様に、前記パルス状のレーザ光の照射中に、A/D変換回路49からSUM信号を取り込むとともに、位置検出回路21から取込んだ位置信号によって表された距離xを用いて半径値rを計算して、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。これにより、レーザ光源33から設定パルスレベルに応じた強度のパルス状のレーザ光による、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対する回折X線の強度を表す信号強度S(n,m)であって、増幅回路44にて設定された増幅率g(n)で増幅された信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径値を表す半径値r(n,m)と共にメモリに記憶される。
【0084】
次に、コントローラCTは、前述したステップS232,S234の処理と同様なステップS272,S274の処理により、所定の基準値未満の信号強度S(n,m)及び同信号強度S(n,m)に対応した半径値r(n,m)を消去する。そして、コントローラCTは、ステップS276にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS278にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値Ngより大きいか、すなわちイメージングプレート28が1回転したか否かを判定する。この場合、n=2であり、周方向番号nは値Ng以下であるので、コントローラCTは、ステップS278にて「No」と判定して、ステップS262に戻る。ステップS262においては、増幅回路44の増幅率が、周方向番号nによって指定される増幅率g(n)(この場合、g(n)=2)すなわち順次高くなる増幅率g(n)に設定される。
【0085】
そして、前述したステップS262〜S278の処理を、周方向番号nが値Ngよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS262〜S278の繰り返し処理により、回転角度θg(1)〜θg(Ng)にそれぞれ対応した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに記憶される。この場合、ステップS262の処理により、変数nによって指定される増幅回路44の増幅率g(n)は順次大きくなるので、図12(B)に示すように、回転角度θg(1)〜θg(Ng)が大きくなるに従って大きくなる信号強度S(n,m)がコントローラCTに入力される。なお、この場合におけるパルス状のレーザ光の強度は常に一定である。
【0086】
このようなステップS262〜S278の循環処理により、周方向番号nが値Ngよりも大きくなると、コントローラCTは、ステップS278にて「Yes」と判定して、前記ステップS240と同様なステップS280の処理により、ピーク検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラCTは、ステップS280にて「No」と判定し、前記ステップS242と同様なステップS282の処理により、周方向番号nを「1」に戻すとともに、半径方向番号mに「1」を加算する(この場合、m=2になる)。そして、コントローラCTは、前述したステップS260〜S278の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度θg(1)〜θg(Ng)に対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をメモリに記憶する。そして、終了指令の指示があるまで、このようなステップS260〜S282の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θg(1)〜θg(Ng)に対応した周方向番号n(=1〜Ng)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0087】
そして、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラCTは、ステップS280にて「Yes」と判定し、ステップS284にて最適増幅率設定処理を実行する。この最適レーザ強度設定処理について説明する前に、並行して実行されているピーク検出プログラムについてふたたび説明しておく。
【0088】
前述のように、ピーク検出プログラムにおいては、コントローラCTは、ステップS328の処理によって変数tを「2」に設定した状態で、前述したステップS304〜S318からなる2回目のピーク検出処理を実行している。なお、この場合、1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数は値Ngに等しいので、ステップS310,S318の所定数は値Ngである。そして、前記ステップS304〜S318の繰返し処理により、取得したピーク半径rp(t,n)の数が増えて所定数すなわち値Ngに達すると、コントローラCTはステップS318にて「Yes」と判定し、前記場合と同様に、ステップS320にて本測定かつ比率測定有りか否かを判定する。この場合も、本測定ではないので、コントローラCTは、ステップS320にて「No」と判定して、ステップS324にてピーク検出の終了を示す終了指令を出力する。この終了指令の出力後、コントローラCTは前記場合と同様に、ステップS326にてレーザ照射の停止が指示されたか否かを判定するが、この場合には、後述する図5BのステップS290の処理によってレーザ照射停止の指示が前記所定の短時間内に出力されるので、その時点で、コントローラCTは、ステップS326にて「Yes」と判定して、ステップS330にてピーク検出プログラムの実行を終了する。
【0089】
ここで、図5Bの最適設定プログラムの説明にふたたび戻る。前述のように終了指令が出力されると、コントローラCTは、ステップS280にて「Yes」と判定し、ステップS284にて最適増幅率設定処理を実行する。この最適増幅率設定処理においても、前記ピーク検出プログラムの図6のステップS316の処理により取得した1周分の読取りポイントP(n,m)に対応したピーク半径rp(t,n)(t=1、n=1〜Ng)と、前記最適設定プログラムの図5BのステップS270にて対にしてメモリに記憶した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)とが利用される。この場合も、前記最適レーザ強度設定処理と同様に、まず、ピーク半径rp(t,n)(t=2、n=1〜Ng)にそれぞれ等しい半径値r(n,m)を抽出し、この半径値r(n,m)に対応した信号強度S(n,m)を抽出する。そして、この場合も、周方向番号nは1〜Ngの間で変化し、ステップS262の処理により、周方向番号nが「1」ずつ増加するごとに増幅回路44の増幅率g(n)が図12(B)に示すように変化する。したがって、横軸にレーザ光の強度(n=1〜Ng)を取り、前記抽出した信号強度S(n,m)をピーク値として取って、レーザ光の強度に対するピーク値の変化をグラフにすると、図14に示すようになる。
【0090】
そして、この場合も、図14(A)に示すように、増幅回路44の増幅率を最適値に設定するために、増幅率の変化に対するピーク値の変化の割合ΔP(すなわち、増幅率を一定の変化量で変化させている状態におけるピーク値の変化量ΔP)が設定値を下回ったときの、変化前の増幅率を最適値として設定する。また、この場合も、図14(B)に示すように最後までピーク値の変化の割合ΔPが設定値を下回らない場合には、増幅率の最適値をピーク値の最大値に対応した値に設定する。これらの最適値は、周方向番号nによって指定される増幅率g(n)に対応するので、実際には、最適値に対応した増幅率g
(n)が最適増幅率として設定される。そして、この設定された最適増幅率は、増幅回路44に出力されて増幅回路44に記憶され、今後の処理(すなわち回折環の測定処理)における増幅回路44の増幅率、すなわちフォトディテクタ43からの受光信号の増幅率として利用される。
【0091】
前記ステップS284による最適増幅率設定処理後、コントローラCTは、図5BのステップS286にて、フォーカスサーボ回路46に対してフォーカスサーボ制御の停止を指示することにより、フォーカスサーボ制御を停止させる。次に、コントローラCTは、ステップS288にて、レーザ駆動回路34を制御して、レーザ光源33によるレーザ光の照射を停止させる。さらに、コントローラCTは、ステップS290にて、A/D変換回路49及び回転角度検出回路26の作動を停止させ、ステップS292にて、フィードモータ制御回路22を制御してフィードモータ18の作動を停止させることにより、イメージングプレート28を停止させて、ステップS294にて最適設定プログラムの実行を終了する。なお、位置検出回路21の作動及びイメージングプレート28の回転は、以前と同様のまま継続されている。
【0092】
最適設定プログラムの実行が終了すると、コントローラCTは、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムの実行を開始する。この場合も、回折環読取りプログラムの実行に並行して、図6のピーク検出プログラムも実行される。回折環読取りプログラムの実行は図7AのステップS400にて開始され、コントローラCTは、ステップS402にて回折環基準半径Rを計算する。この回折環基準半径Rの計算は、前述した最適設定プログラムの図5AのステップS204の処理とほぼ同様であり、イメージングプレート28から測定対象物OBまでの距離Lと、測定対象物OBに関する回折角θaとを用いて、R=L・tan(θa)の演算によって回折環基準半径Rが計算される。本実施形態においては、鉄が測定対象物OBであり、この場合、フェライト及びオーステナイトの2種類の結晶構造による回折環が測定されるので、フェライト及びオーステナイト用の回折環基準半径R1,R2が計算されて、その後の処理に利用される。なお、前記図5AのステップS204の処理によってフェライト及びオーステナイトの2種類の回折環基準半径R1,R2が計算されて記憶されていれば、このステップS402にてこれらの回折環基準半径R1,R2を計算することなく、今後の処理において前記計算されて記憶されている2種類の回折環基準半径R1,R2を利用することもできる。また、前記図5AのステップS204の処理によってフェライトの回折環基準半径R1のみが計算されて記憶されている場合には、このフェライトの回折環基準半径R1を計算することなく、オーステナイトの回折環基準半径R2のみを計算するようにしてもよい。
【0093】
前記ステップS402の処理後、コントローラCTは、前述した図5AのステップS208,S212と同様なステップS404,S406の処理により、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させ、かつレーザ光の照射を開始する。この場合も、読取り開始位置はフェライトの回折環基準半径R1から所定距離αだけ内側位置である。次に、コントローラCTは、前述した図5AのステップS214,S216と同様なステップS408,S410の処理により、フォーカスサーボ制御を開始し、かつ回転角度検出回路26の作動及びA/D変換回路49の作動を開始させる。そして、コントローラCTは、前述した図5AのステップS218の処理と同様なステップS412の処理により、イメージングプレート28を図1及び図2の右下方向に一定速度で移動させ始める。これにより、前記場合と同様に、レーザ光がイメージングプレート28上にフォーカスサーボ制御された状態で、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、回転しながら、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。ただし、この状態では、レーザ光の照射レベルは低レベルLV1である(図12(A)参照)。
【0094】
前記ステップS412の処理後、コントローラCTは、前記ステップS220,S222の処理と同様に、ステップS414にて周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定し、ステップS416の処理により、回転角度検出回路26がエンコーダ24aからのインデックス信号を入力したことを条件にステップS418以降に進む。
【0095】
ステップS418においては、コントローラCTは、前述したステップS224の場合と同様に、回転角度検出回路26からイメージングプレート28の現在の回転角度θpを取り込む。そして、コントローラCTは、ステップS226にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される所定の回転角度θ(n)との差の絶対値|θp−θ(n)|が所定の許容値未満であるか否か判定する。この場合、周方向番号nによって指定される回転角度θ(n)は、周方向番号nの1〜Nまでの「1」ずつの増加にしたがって所定角度θずつ増加する角度であり、所定の回転角度θ(1)〜θ(N)は予めコントローラCTに記憶されている。値Nは1周当たりの測定値の数を表し、角度をラジアン単位で表すと、所定角度θと値Nとはθ・N=2πの関係にある。なお、所定角度θは前述した所定角度θL,θgに比べて小さく、値Nは前述したNL,Ngに比べて大きい。これは、実際の回折環の測定では、最適なレーザ光強度及び増幅率の設定の場合に比べて測定ポイント数を多くするためである。
【0096】
前記絶対値|θp−θ(n)|が所定の許容値未満でなければ、コントローラCTは、ステップS420にて「No」と判定してステップS418,S420の処理を繰返し実行する。すなわち、コントローラCTは、現在の回転角度θpが所定の回転角度θ(n)にほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度θ(n)にほぼ一致すると、コントローラCTは、ステップS420にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−θ(n)|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS422に進む。
【0097】
ステップS422においては、コントローラCTは、前述した図5BのステップS268の処理と同様に、レーザ駆動回路34に対して、前記ステップS244の処理によってレーザ駆動回路34に記憶させた設定パルスレベルに対応したパルスの出力を指示する。この指示に応答して、レーザ駆動回路34は、前記ステップS212による低レーザの直流駆動信号に前記設定パルスレベルを有する所定幅のパルスを重畳したパルス信号でレーザ光源33を駆動制御する。これにより、レーザ光源33から設定パルスレベルに応じた強度のパルス状のレーザ光が、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)で指定される位置に照射される。次に、コントローラCTは、ステップS424にて、前記ステップS230の場合と同様に、前記パルス状のレーザ光の照射中に、A/D変換回路49からSUM信号を取り込むとともに、位置検出回路21から位置信号を取り込んで、位置信号によって表された距離xを用いて半径値rを計算し、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。この場合、前記SUM信号の生成に利用されるフォトディテクタ43から増幅回路44に供給される受光信号は、前記図5BのステップS284の最適増幅率設定処理によって増幅回路44に記憶された増幅率により増幅されている。
【0098】
これにより、レーザ光源33から設定パルスレベルに応じた強度のパルス状のレーザ光による、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対する回折X線の強度を表す信号強度S(n,m)であって、増幅回路44にて最適な増幅率で増幅された信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径値を表す半径値r(n,m)と共にメモリに記憶される。
【0099】
次に、コントローラCTは、前述したステップS232,S234の処理と同様なステップS426,S428の処理により、所定の基準値未満の信号強度S(n,m)及び同信号強度S(n,m)に対応した半径値r(n,m)を消去する。そして、コントローラCTは、ステップS430にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS432にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値Nより大きいか、すなわちイメージングプレート28が1回転したか否かを判定する。この場合、周方向番号nは「1」であり、値N以下であるので、コントローラCTは、ステップS432にて「No」と判定して、ステップS418に戻る。そして、前述したステップS418〜S432の処理を、周方向番号nが値Nよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS418〜S432の繰り返し処理により、回転角度θ(1)〜θ(N)にそれぞれ対応した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに記憶される。
【0100】
このようなステップS418〜S432の循環処理により、周方向番号nが値Nよりも大きくなると、コントローラCTは、ステップS432にて「Yes」と判定して、前記ステップS240と同様なステップS434の処理により、ピーク検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラCTは、ステップS434にて「No」と判定し、前記ステップS242と同様なステップS436の処理により、周方向番号nを「1」に戻すとともに、半径方向番号mに「1」を加算する。そして、コントローラCTは、前述したステップS416〜S432の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度θ(1)〜θ(N)に対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をメモリに記憶する。このような終了指令の指示があるまでのステップS416〜S436の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θ(1)〜θ(N)に対応した周方向番号n(=1〜N)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0101】
そして、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラCTは、ステップS434にて「Yes」と判定し、図7BのステップS438に進む。ステップS438以降の処理について説明する前に、並行して実行されているピーク検出プログラムについて説明しておく。
【0102】
ピーク検出プログラムは、この場合も、図6のステップS300にて開始され、コントローラCTは、ステップS302にて変数tを「1」に設定した後、前述の場合と同様にステップS304〜S318からなるピーク検出処理を実行している。なお、この場合、1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数は値Nに等しいので、ステップS310,S318の所定数は値Nである。そして、前記ステップS304〜S318の繰返し処理により、取得したピーク半径rp(t,n)の数が増えて所定数すなわち値Nに達すると、コントローラCTはステップS318にて「Yes」と判定し、ステップS320にて本測定かつ比率測定有りか否かを判定する。この場合、鉄に関する回折環の測定であり、かつフェライトとオーステナイトの比率の測定を含むので、コントローラCTは、ステップS320にて「Yes」と判定して、ステップS322に進む。
【0103】
鉄のフェライト及びオーステナイトの回折環を測定する本実施形態においては、前記ステップS304〜S318からなるピーク検出処理により、フェライトの回折環に関する1周分のピーク半径rp(t,n)(t=1,n=1〜N)が計算される。また、この場合には、フェライトの回折環のピーク半径を実際に測定するのであるから、ステップS316の処理においては、実際のピークが2つの信号強度S(n,m)の間に存在する場合には、半径値を補間演算により計算してピーク半径rp(t,n)とするのがよい。
【0104】
ステップS322においては、コントローラCTは、位置検出回路21からテーブル27(すなわちイメージングプレート28)の位置を入力して、この入力した位置を用いてイメージングプレート28が読取り終了位置を超えているかを判定する。このイメージングプレート28の読取り終了位置とは、対物レンズ39の中心位置すなわちレーザ光の照射位置が回折環基準半径から前記所定距離αだけ外側にある状態である。具体的には、この場合の測定対象はフェライトの回折環であるので、対物レンズ39の中心位置が前記計算したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ外側に位置している状態である。そして、イメージングプレート28が読取り終了位置を超えていなければ、ステップS322にて「No」と判定し続けて、ステップS322の判定処理を繰り返し実行する。
【0105】
この状態では、次のステップS324の処理による終了指令が出力されない。したがって、コントローラCTは、図7AのステップS434にて「No」と判定して、ステップS436の処理によって周方向番号nを「1」に戻すとともに半径方向番号mを「1」ずつ増加させながら、ステップS416〜S436の循環処理により、信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をさらに蓄積記憶していく。なお、この場合も、ステップS426,S428の処理により、信号強度S(n,m)が基準値より小さければ、信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。このように1周分のピーク半径rp(t,n)が検出された後も信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を蓄積記憶する理由は、回折環(この場合、フェライトの回折環)に関する回折積分強度を計算するために、図15に示すように半径方向に分布する回折環の信号強度Sを取得するためである。
【0106】
そして、イメージングプレート28が読取り終了位置を超えると、コントローラCTは、図6のステップS322にて「Yes」と判定して、ステップS324にてピーク検出の終了を示す終了指令を出力する。この終了指令の出力後、コントローラCTは前記場合と同様に、ステップS326にてレーザ照射の停止が指示されたか否かを判定するが、この場合には、後述する図7BのステップS454の処理までレーザ照射の停止の指示はされないので、前記所定の短時間内ではされない。したがって、この場合、コントローラCTは、ステップS326にて「No」と判定し、ステップS328にて変数tに「1」を加算してステップS304に戻る。したがって、このピーク検出プログラムにおいては、コントローラCTは、ステップS304〜S318からなる2回目のピーク検出処理及びステップS320,S322の測定終了判定処理を実行し始める。
【0107】
前記終了指令の出力により、コントローラCTは、図7AのステップS434にて「Yes」と判定し、図7BのステップS438に進む。ステップS438においては、コントローラCTは、前記ステップS424の処理によりって蓄積記憶した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を測定済みの回折環の信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)として保存する。なお、この場合の保存される信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)において、変数nは周方向番号nに対応し、変数mは半径方向番号mに対応する。そして、最初の信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)(例えば、S1(n,m)及び半径値r1(n,m))はフェライトの回折環に関するデータである。
【0108】
次に、コントローラCTは、ステップS440にて全ての回折環の読取りが終了したかを判定する。この場合、1つの回折環(フェライトの回折環)の読取りが終了しただけで、他の回折環(オーステナイトの回折環)が残っているので、コントローラCTは、ステップS440にて「No」と判定し、ステップS442以降の処理を実行する。ステップS442においては、コントローラCTは、既に保存した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をクリアする。
【0109】
次に、コントローラCTは、前記図5BのステップS248,S250の処理と同様なステップS444,S446の処理により、イメージングプレート28の移動を停止させるとともに、フォーカスサーボ制御を停止させる。そして、コントローラCTは、ステップS448にて、イメージングプレート28を次の読取り開始位置へ移動させる。このイメージングプレート28の次の読取り開始位置とは、対物レンズ39の中心位置が次の回折環基準半径R2(本実施形態ではオーステナイトの回折基準半径R2)から所定距離αだけ内側にある位置である。前記ステップS448の処理後、コントローラCTは、前記ステップS254と同様なステップS450の処理により、フォーカスサーボ制御を開始させる。
【0110】
このステップS450のフォーカスサーボ制御の開始後、コントローラCTは、図7AのステップS412に戻り、前述のように、イメージングプレート28を図1及び図2の右下方向に一定速度で移動させ始める。これにより、レーザ光がイメージングプレート28上にフォーカスサーボ制御された状態で、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、回転しながら、オーステナイトの回折環基準半径R2から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。そして、前述したフェライトの回折環の場合と同様に、ステップS414による周方向番号n及び半径方向番号mの「1」への初期設定後、ピーク検出プログラムの実行によって終了指令が出力されるまで、ステップS416〜S436の循環処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θ(1)〜θ(N)に対応した周方向番号n(=1〜N)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0111】
この状態では、前述したように、コントローラCTは、ステップS304〜S318からなる2回目のピーク検出処理及びステップS320,S322の測定終了判定処理を、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムと並行して実行している。そして、前述のように、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラCTは、ステップS434にて「Yes」と判定し、前述した場合と同様に、図7BのステップS438に進む。なお、この場合の、ステップS322による測定終了判定処理は、2つ目の回折環(本実施形態ではオーステナイトの回折環)に関する判定処理であり、読取り終了位置は、レーザ照射位置(すなわち測定位置)がオーステナイトの回折環基準半径R2よりも所定距離αだけ外側に移動した位置である。
【0112】
そして、レーザ光の照射位置が読取り終了位置を超えると、コントローラCTは、ステップS322にて「Yes」と判定して、ステップS324にて終了指令を出力する。この終了指令の出力後、コントローラCTは前記場合と同様に、ステップS326にてレーザ照射停止が指示された否かを判定するが、この場合には、後述する図7BのステップS454の処理によってレーザ照射停止の指示が前記所定の短時間内に出力されるので、その時点で、ステップS326にて「Yes」と判定して、ステップS330にてピーク検出プログラムの実行を終了する。
【0113】
ふたたび、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムの説明に戻ると、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があって、コントローラCTが、ステップS434にて「Yes」と判定して、ステップS438に進むと、ステップS438においては、前記ステップS424の処理によりって蓄積記憶した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を測定済みの回折環の信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)として保存する。なお、この場合の保存される信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)は、オーステナイトの回折環に関する信号強度S2(n,m)及び半径値r2(n,m)である。
【0114】
次に、コントローラCTは、前述のように、ステップS440にて全ての回折環の読取りが終了したかを判定する。この場合、2つ目の回折環の測定が終了したので、すなわち本実施形態におけるオーステナイトの回折環の測定が終了したので、コントローラCTは、ステップS440にて「Yes」と判定し、ステップS452以降の処理を実行する。
【0115】
すなわち、コントローラCTは、前記図5BのステップS286〜S292の処理と同様なステップS452〜S458の処理により、フォーカスサーボ制御を停止させ、レーザ光の照射を停止させ、A/D変換回路49及び回転角度検出回路26の作動を停止させ、かつイメージングプレート28を停止させて、ステップS460に回折環読取りプログラムの実行を終了する。なお、位置検出回路21の作動及びイメージングプレート28の回転は、以前と同様のまま継続される。
【0116】
なお、上記説明では、複数の結晶構造(本実施形態ではフェライトとオーステナイト)の比率の測定を行うことを入力したので、図6のピーク検出プログラムのステップS306〜S318からなる1周分のピーク半径rp(t,n)の検出後も、ステップS320にて「Yes」との判定のもとに、ステップS322にてレーザ光の照射位置(測定位置)が読取り終了位置を超えたか否かを判定するようにした。しかし、複数の結晶構造の比率の測定が不要であり、前記比率を測定することを入力しなければ、コントローラCTは、本測定時においても、ステップS320にて「No」と判定して、1周分のピーク半径rp(t,n)の検出直後に、ステップS324に進む。
【0117】
前記回折環読取りプログラムの実行が終了すると、コントローラCTは、イメージングプレート28に撮像された回折環を消去する図8の回折環消去プログラムを実行する。回折環消去プログラムの実行はステップS500にて開始され、コントローラCTは、ステップS502にて、フィードモータ制御回路22に、イメージングプレート28を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21と協働してフィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート28が消去開始位置にある状態では、LED52から出力される可視光の中心が前記計算したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離γだけ小さい位置に位置する。具体的には、この位置は、イメージングプレート28が駆動限界位置にある状態において、イメージングプレート28の中心からLEDの可視光の中心までの距離をRo’とすると、位置検出回路21から出力される位置がR1−γ−Ro’になる位置である。なお、所定距離γは、前記所定距離αよりも若干大きく、フェライトによって撮像された回折環の半径よりは余裕をもってずれた位置である。これにより、後述の処理により、フェライトによって撮像された回折環が確実に消去される。
【0118】
次に、コントローラCTは、ステップS504にて、LED駆動回路53を制御してLED52による可視光のイメージングプレート28に対する照射を開始させる。次に、コントローラCTは、ステップS506にて、フィードモータ制御回路22に対して、イメージングプレート28の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を消去開始位置から軸受部19側(図1,2の右下方向)へ一定速度で移動させる。これにより、LED52による可視光が、イメージングプレート28において、回転しながら、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離γ(γ>α)だけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。
【0119】
前記ステップS506の処理後、コントローラCTは、ステップS508にて位置検出回路21からイメージングプレート28の位置を表す位置信号を入力し、ステップS510にて、イメージングプレート28の現在の位置が消去終了位置を超えているか否かを判定する。この終了位置は、フェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離γだけ大きな位置である。具体的には、位置検出回路21から出力される位置がR1+γ−Ro’になる位置である。そして、イメージングプレート28の現在の位置が消去終了位置を超えるまで、コントローラCTは、ステップS510にて「No」と判定して、ステップS508,S510の処理を繰り返し実行する。これにより、回転するイメージングプレート28に対し、前記回折環基準半径R1から所定距離γだけ内側から所定距離γだけ外側まで、LED52による可視光が照射されるので、フェライトによる回折X線によって形成された回折環は内側から徐々に消去されていく。
【0120】
そして、イメージングプレート28の現在の位置が消去終了位置を超えると、コントローラCTは、ステップS510にて「Yes」と判定して、ステップS512にてフィードモータ制御回路22にイメージングプレート28の移動停止を指示し、ステップS514にてLED駆動回路53にLED52による可視光の照射停止を指示する。これにより、フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18の作動を停止させることによりイメージングプレート28の移動を停止させる。LED駆動回路53は、LED52による可視光の照射を停止させる。この状態では、フェライトによって撮像された回折環は完全に消去されている。
【0121】
前記ステップS514の処理後、コントローラCTは、ステップS516にて次の消去位置、すなわちさらに消去する回折環が存在するか否かを判定する。この場合、本実施形態では、イメージングプレート28にはフェライトによる回折環とオーステナイトによる回折環が存在するので、コントローラCTは、ステップS516にて「No」と判定して、ステップS502に戻る。そして、前述したステップS502〜S510の処理により、オーステナイトによって撮像された回折環が消去される。なお、この場合のステップS502の消去開始位置はオーステナイトの回折環基準半径R2から所定距離γだけ内側位置であり、ステップS510の消去終了位置はオーステナイトの回折環基準半径R2から所定距離γだけ外側位置である。具体的には、消去開始位置は位置検出回路21から出力される位置がR2−γ−Ro’になる位置であり、消去終了位置は位置検出回路21から出力される位置がR2+γ−Ro’になる位置である。その後、ステップS512,S514の処理により、イメージングプレート28の移動が停止するとともに、LED52による可視光の照射も停止する。
【0122】
前記ステップS514の処理後、コントローラCTは、ステップS516にて、ふたたび次の消去位置の存在を判定するが、この場合、オーステナイトによる回折X線によって形成された回折環が消去されているので、同ステップS516にて「No」すなわち次の消去位置は存在しないと判定して、ステップS518に進む。ステップS518においては、コントローラCTは、位置検出回路21の作動を停止させる。次に、コントローラCTは、ステップS520にて、スピンドルモータ制御回路25に対してイメージングプレート28の回転停止を指示する。この指示に応答して、スピンドルモータ制御回路25は、スピンドルモータ24の作動を停止させて、イメージングプレート28の回転を停止させる。前記イメージングプレート28の回転停止後、コントローラCTは、ステップS522にて回折環消去プログラムの実行を終了する。
【0123】
前記回折環消去プログラムの実行を終了すると、コントローラCTは、図示しないプログラムの実行により、フェライトの回折環のピーク半径rp(1,n)及びオーステナイトの回折環のピーク半径rp(2,n)を用いて、cosα法により、残留応力を算出して表示装置54に表示する。また、残留応力の計算では、フェライトの回折環のピーク半径rp(1,n)及びオーステナイトの回折環のピーク半径rp(2,n)のうちのいずれか一方のピーク半径を用いるのみでもよい。また、コントローラCTは、ピーク半径rp(1,n),rp(2,n)を用いて、フェライト及びオーステナイトの回折環の画像データを作成して、フェライト及びオーステナイトの回折環を表示装置54に表示する。これにより、回折環の真円からのずれ具合から測定対象物OB(鉄)の残留応力を認識できる。
【0124】
また、コントローラCTは、フェライトに関する全ての強度信号S1(n,m)から全ての強度信号S1(n,m)の中の最小値(すなわち、回折環が形成されていない箇所の信号強度)を減算した値を合計して、合計値を測定時における周方向番号nの最大値Nで除算して、フェライトの回折環に関する回折積分強度(図15の半径R1近傍の斜線領域の面積に対応)を計算する。また、オーステナイトに関する全ての強度信号S2(n,m)から全ての強度信号S2(n,m)の中の最小値(すなわち、回折環が形成されていない箇所の信号強度)を減算した値を合計して、合計値を測定時における周方向番号nの最大値Nで除算して、オーステナイトの回折環に関する回折積分強度(図15の半径R2近傍の斜線領域の面積に対応)を計算する。そして、フェライトの回折積分強度と、オーステナイトの回折積分強度との比により、鉄の中に含まれるフェライトとオーステナイトとの比率を取得する。この場合も、この比率と共に図15に示すようなフェライト及びオーステナイトの信号強度の分布を表示装置54に表示するようにするとよい。これらの残留応力及び比率により、鉄の特性を評価することができる。
【0125】
上記のように動作するX線回折測定装置においては、図5A及び図5Bの最適設定プログラム及び図6のピーク検出プログラムの実行により、イメージングプレート28に記録された回折X線の像である回折環がそれぞれ検出されるとともに、受光信号の大きさが最適となるレーザ光の強度及び受光信号の増幅率が設定される。したがって、上記実施形態によれば、回折X線の強度が弱い場合でも、回折X線の強度に相当する受光信号のピーク値が大きくなるようにレーザ光の強度及び受光信号の増幅率を設定することができるので、回折X線による回折環を精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などを精度よく求めることができるようになる。また、レーザ光の強度の変化幅は受光信号の増幅率の変化幅に比べて小さいので、ピーク値を最も大きくなる近辺の値にすることができるとともに、回折環の半径方向の信号強度曲線におけるノイズ成分を小さくすることができる。すなわち、上記実施形態とは逆に、ピーク値が最も大きくなる近辺の値に先に信号の増幅率を変更して同増幅率を最適に設定した後、レーザ強度と上げても、ピーク値が飽和して変化しなくなる。これに対して、上記実施形態によれば、先にレーザ光の強度の最適値を決めれば、そのようなことはなく、最適なレーザ強度が決められたうえで、信号レベルを最適(最大)に設定することができる。その結果、受光信号のS/N比も良好となる。
【0126】
また、上記実施形態の図5A及び図5Bの最適設定プログラムのステップS244の最適レーザ強度設定処理及びステップS284の最適増幅率設定処理においては、信号強度S(n,m)(ピーク値)の変化量が予め決められた所定値に達しなかったときは変化前のレーザ光の強度又は受光信号の増幅率に設定することにより、ピーク値の飽和を避けたうえで、ピーク値を最も大きくなる近辺の値にすることができる。その結果、上記実施形態によれば、周囲のX線回折による回折環以外の部分による反射による受光信号のノイズ成分を小さく抑えることができ、X線回折による回折環をより精度よく測定でき、回折環の形状、回折積分強度などをより精度よく求めることができるようになる。特に、レーザ光の強度及び受光信号の増幅率の両方の設定を行うために、一方を大きな値に設定すると、その一方の最適値によりピーク値が飽和してもう一方が変更不能となることがあるが、そのような事態を回避し易くなる。
【0127】
また、上記実施形態においては、前記測定対象物は鉄であり、図6のピーク検出プログラムによって検出されるピークは、フェライトの回折環によるものである。これにより、フェライトの回折環においてピーク値を最も大きくなる近辺の値に設定すれば、オーステナイトによる回折環においてもピーク値を十分大きくすることができ、オーステナイトによる回折環の形状やオーステナイトによる回折積分強度を精度よく求めることができる。
【0128】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0129】
上記実施形態では、最適なレーザ強度及び信号増幅率を設定する際、イメージングプレート28を回転するとともに移動し、同じ回転位置でレーザ強度及び信号増幅率が同一になるようにレーザ強度及び信号増幅率を変化させた。しかし、レーザ強度及び信号増幅率を同一にしてサム信号SUMの信号強度のピーク値を求めることができれば、どのような方法を用いてもよい。例えば、まず、レーザ強度又は信号増幅率を設定し、イメージングプレート28を回転させずに半径方向に移動させながらサム信号SUMの信号強度を取得して、半径方向のピーク値を取得する。次に、イメージングプレート28を微小量回転させる。その後に、レーザ強度又は信号増幅率を次の値に設定して、前記のように、イメージングプレート28を回転させずに半径方向に移動させながらサム信号SUMの信号強度を取得して、半径方向のピーク値を取得する。このような操作を繰り返し行って、サム信号SUMの信号強度がピークとなる半径位置のサム信号SUMの信号強度の中で、サム信号SUMの信号強度が上記実施形態と同様に最適となる回転角度に対応したレーザ強度及び信号増幅率を採用するようにしてもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、レーザ強度及び信号増幅率の両方を最適になるように設定したが、測定対象物が同じ物質であって前回の検査時とレーザ強度又は信号増幅率の最適値が大きく変化しない場合には、一方を前回の値にそのまま固定し、レーザ強度及び信号増幅率のいずれか他方のみを変化させて最適値に設定するようにしてもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、レーザ強度及び信号増幅率の最適値をレーザ強度及び信号増幅率の変化に対するピーク値の変化が設定値に達しないときには変化前の値とした。しかし、これに代えて、測定対象物が特定されていて(本実施形態のように鉄が特定されていて)、ピーク値がほぼわかっている場合には、レーザ強度及び信号増幅率の一方のみ又は両方を変更してピーク値として予め決められている所定値を超えた時点で、その時のレーザ強度及び信号増幅率を最適値とすればよい。
【0132】
また、上記実施形態では、特定の構造の比率を測定する場合、イメージングプレート28を回転させて回折環のそれぞれの回転位置で半径方向の信号強度の曲線を得て、各回転位置での回折積分強度を算出し、この値を平均して回折積分強度としたが、特定の構造の比率のみを測定する場合で精度よりも高速測定が重要視されるときは、イメージングプレート28を回転させずに、移動のみをさせ、特定の回転位置での半径方向の信号強度の曲線を得て、回折積分強度を算出するようにしてもよい。
【0133】
上記実施形態においては、最適なレーザ光の強度及び受光信号の増幅率を設定するために、図5A及び図5Bの最適設定プログラムと並行して実行される図6のピーク検出プログラムのステップS314,S316の処理により、半径値r(n,m)及び信号強度S(n,m)を用いてSUM信号の値のピークを検出するとともに、ピークの半径値をピーク半径rp(t,n)として記憶するようにした。そして、図5AのステップS244における最適レーザ強度設定処理及び図5BのステップS284における最適増幅率設定処理により、前記ピーク半径rp(t,n)にそれぞれ等しい半径値r(n,m)を抽出して、この半径値r(n,m)に対応した回折環を表すピークである1周分の信号強度S(n,m)を抽出し、抽出した1周分の信号強度S(n,m)を用いて最適なレーザ光の強度及び受光信号の増幅率を決定するようにした。
【0134】
しかし、この場合には、ピーク(回折環)の位置に対応した1周分の信号強度S(n,m)を抽出することができれば、ピークの半径値は不要であるので、ピーク半径rp(t,n)を用いる必要はない。このピーク半径rp(t,n)の採用に代えて、前記SUM信号値のピークの検出時に、検出ピークに対応した1周分の信号強度S(n,m)を記憶しておいたり、1周分の信号強度S(n,m)を指定可能な変数n,mの情報を記憶しておいたりしてもよい。ただし、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムと並行して図6のピーク検出プログラムが実行される場合には、ピーク半径rp(t,n)は必要であるので、図6のステップS314,S316の処理は上記実施形態で説明したように動作する必要がある。
【0135】
また、上記実施形態においては、受光センサ31によって受光した反射光の受光位置を用いて、測定対象物OBの高さ方向の位置が、所定の範囲内にあるか否かを判定し、所定の範囲内になければ、作業者が昇降ステージ12aの高さを調整するようにした。しかし、受光センサ31の受光位置が表す測定対象物OBの高さ方向の位置が所定の範囲内にあるように、昇降ステージ12aの高さが自動的に調整されるように構成してもよい。これによれば、作業者がセットした測定対象物OBの高さ方向の位置が、受光センサ31が反射光を受光できる範囲にありさえすれば、作業者が昇降ステージ12aの高さを調整する必要が無いので、作業効率を向上させることができる。なお、例えば上記従来のX線検出装置のように、イメージングプレートと測定対象物との距離が常に一定になるように構成されていれば、受光センサ31は不要である。
【0136】
また、上記実施形態においては、受光センサ31の受光位置を用いて、回折環基準半径Rを算出し、撮像した回折環の半径が回折環基準半径Rからずれる可能性のある領域を想定して、読取り開始位置を決定するようにした。しかし、回折環基準半径Rを算出することなく、常に一定の領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート28の全領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。また、LED53による可視光の照射についても同様に、常に一定の領域にLED53から発せられた可視光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート28の全領域にLED53からの可視光を照射するようにしてもよい。ただし、この場合、上記実施形態よりも測定時間が長くなる。
【0137】
また、上記実施形態においては、レーザ検出装置PUHは、フォーカスサーボ制御されるようにしたが、イメージングプレート28を回転させた際のイメージングプレート28の受光面と対物レンズ39との距離の変動が微小であれば、フォーカスサーボ制御は不要である。
【符号の説明】
【0138】
13…X線出射器、15…移動ステージ、18…フィードモータ、21…位置検出回路、24…スピンドルモータ、26…回転角度検出回路、27…テーブル、28…イメージングプレート、31…受光センサ、33…レーザ光源、34…レーザ駆動回路、39…対物レンズ、43…フォトディテクタ、44…増幅回路、48…SUM信号生成回路、49…変換回路、52…LED、54…表示装置、55…入力装置、CT…コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央に前記X線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに固定されていて、前記測定対象物にて回折した前記X線の回折光を受光する受光面を有し、前記回折光の像である回折環を記録する回折光受光器と、
レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、前記レーザ光を前記回折光受光器の受光面に照射するとともに、前記レーザ光の照射によって前記回折光受光器から出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを、前記貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段と、
前記回転手段によるテーブルの回転における基準位置からの回転角度を検出する回転角度検出回路と、
前記テーブルを、前記回折光受光器の受光面に平行な方向に、前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段によるテーブルの移動位置を検出する位置検出回路と、
前記レーザ光源を駆動制御するとともに前記レーザ光源から出射されるレーザ光の強度を変更可能なレーザ駆動回路と、
前記フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力する増幅回路とを備え、
前記X線出射器から測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によって前記回折光受光器に記録された回折環を測定するX線回折測定装置において、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記回折光受光器を回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記回折光受光器における照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる照射位置制御手段と、
前記照射位置制御手段により前記回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、前記回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき前記レーザ光の強度を同一にするとともに、前記テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに前記レーザ光の強度が変化するように前記レーザ駆動回路を制御するレーザ強度制御手段と、
前記テーブルの回転角度が前記所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における前記増幅回路からの受光信号であって、前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する受光信号取得手段と、
前記受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、前記テーブルの回転角度が同一であり、かつ前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出するピーク検出手段と、
前記ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の前記受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる前記レーザ光の強度を最適レーザ強度として設定する最適レーザ強度設定手段と
を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線回折測定装置において、
前記最適レーザ強度設定手段は、前記レーザ強度制御手段がレーザ光の強度を順次増加させた状態で、前記レーザ光の強度の変化に対する前記受光信号の大きさの変化量を算出し、前記受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の前記レーザ光の強度を最適レーザ強度として設定し、前記受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させたレーザ光の強度の最大値を最適レーザ強度として設定することを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項3】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央に前記X線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに固定されていて、前記測定対象物にて回折した前記X線の回折光を受光する受光面を有し、前記回折光の像である回折環を記録する回折光受光器と、
レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、前記レーザ光を前記回折光受光器の受光面に照射するとともに、前記レーザ光の照射によって前記回折光受光器から出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを、前記貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段と、
前記回転手段によるテーブルの回転における基準位置からの回転角度を検出する回転角度検出回路と、
前記テーブルを、前記回折光受光器の受光面に平行な方向に、前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段によるテーブルの移動位置を検出する位置検出回路と、
前記レーザ光源を駆動制御するレーザ駆動回路と、
前記フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力するとともに受光信号の増幅率を変更可能な増幅回路とを備え、
前記X線出射器から測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によって前記回折光受光器に記録された回折環を測定するX線回折測定装置において、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記回折光受光器を回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記回折光受光器における照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる照射位置制御手段と、
前記照射位置制御手段により前記回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、前記回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき前記受光信号の増幅率を同一にするとともに、前記テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに前記受光信号の増幅率が変化するように前記増幅回路を制御する増幅率制御手段と、
前記テーブルの回転角度が前記所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における前記増幅回路からの受光信号であって、前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する受光信号取得手段と、
前記受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、前記テーブルの回転角度が同一であり、かつ前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出するピーク検出手段と、
前記ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の前記受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる前記受光信号の増幅率を最適増幅率として設定する最適増幅率設定手段と
を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線回折測定装置において、
前記最適増幅率設定手段は、前記増幅率制御手段が受光信号の増幅率を順次増加させた状態で、前記受光信号の増幅率の変化に対する前記受光信号の大きさの変化量を算出し、前記受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の前記受光信号の増幅率を最適増幅率として設定し、前記受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させた受光信号の増幅率の最大値を最適増幅率として設定することを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項5】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央に前記X線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに固定されていて、前記測定対象物にて回折した前記X線の回折光を受光する受光面を有し、前記回折光の像である回折環を記録する回折光受光器と、
レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、前記レーザ光を前記回折光受光器の受光面に照射するとともに、前記レーザ光の照射によって前記回折光受光器から出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを、前記貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段と、
前記回転手段によるテーブルの回転における基準位置からの回転角度を検出する回転角度検出回路と、
前記テーブルを、前記回折光受光器の受光面に平行な方向に、前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段によるテーブルの移動位置を検出する位置検出回路と、
前記レーザ光源を駆動制御するとともに前記レーザ光源から出射されるレーザ光の強度を変更可能なレーザ駆動回路と、
前記フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力するとともに受光信号の増幅率を変更可能な増幅回路とを備え、
前記X線出射器から測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によって前記回折光受光器に記録された回折環を測定するX線回折測定装置において、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記回折光受光器を回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記回折光受光器における照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる第1照射位置制御手段と、
前記第1照射位置制御手段により前記回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、前記受光信号の増幅率を一定に保ったまま、前記回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき前記レーザ光の強度を同一にするとともに、前記テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに前記レーザ光の強度が変化するように前記レーザ駆動回路を制御するレーザ強度制御手段と、
前記レーザ強度制御手段がレーザ光の強度を変化させている状態で、前記テーブルの回転角度が前記所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における前記増幅回路からの受光信号であって、前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する第1受光信号取得手段と、
前記第1受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、前記テーブルの回転角度が同一であり、かつ前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出する第1ピーク検出手段と、
前記第1ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の前記第1受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる前記レーザ光の強度を最適レーザ強度として設定する最適レーザ強度設定手段と、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記回折光受光器を回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記回折光受光器における照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる第2照射位置制御手段と、
前記第2照射位置制御手段により回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、前記最適レーザ強度設定手段によって設定された最適レーザ強度に前記レーザ光の強度を保ったまま、前記回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき前記受光信号の増幅率を同一にするとともに、前記テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに前記受光信号の増幅率が変化するように前記増幅回路を制御する増幅率制御手段と、
前記増幅率制御手段が受光信号の増幅率を変化させている状態で、前記テーブルの回転角度が前記所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における前記増幅回路からの受光信号であって、前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する第2受光信号取得手段と、
前記第2受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、前記テーブルの回転角度が同一であり、かつ前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出する第2ピーク検出手段と、
前記第2ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の前記第2受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる前記受光信号の増幅率を最適増幅率として設定する最適増幅率設定手段と
を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のX線回折測定装置において、
前記最適レーザ強度設定手段は、前記レーザ強度制御手段がレーザ光の強度を順次増加させた状態で、前記レーザ光の強度の変化に対する前記受光信号の大きさの変化量を算出し、前記受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の前記レーザ光の強度を最適レーザ強度として設定し、前記受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させたレーザ光の強度の最大値を最適レーザ強度として設定し、
前記最適増幅率設定手段は、前記増幅率制御手段が受光信号の増幅率を順次増加させた状態で、前記受光信号の増幅率の変化に対する前記受光信号の大きさの変化量を算出し、前記受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の前記受光信号の増幅率を最適増幅率として設定し、前記受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させた受光信号の増幅率の最大値を最適増幅率として設定することを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項1】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央に前記X線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに固定されていて、前記測定対象物にて回折した前記X線の回折光を受光する受光面を有し、前記回折光の像である回折環を記録する回折光受光器と、
レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、前記レーザ光を前記回折光受光器の受光面に照射するとともに、前記レーザ光の照射によって前記回折光受光器から出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを、前記貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段と、
前記回転手段によるテーブルの回転における基準位置からの回転角度を検出する回転角度検出回路と、
前記テーブルを、前記回折光受光器の受光面に平行な方向に、前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段によるテーブルの移動位置を検出する位置検出回路と、
前記レーザ光源を駆動制御するとともに前記レーザ光源から出射されるレーザ光の強度を変更可能なレーザ駆動回路と、
前記フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力する増幅回路とを備え、
前記X線出射器から測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によって前記回折光受光器に記録された回折環を測定するX線回折測定装置において、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記回折光受光器を回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記回折光受光器における照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる照射位置制御手段と、
前記照射位置制御手段により前記回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、前記回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき前記レーザ光の強度を同一にするとともに、前記テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに前記レーザ光の強度が変化するように前記レーザ駆動回路を制御するレーザ強度制御手段と、
前記テーブルの回転角度が前記所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における前記増幅回路からの受光信号であって、前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する受光信号取得手段と、
前記受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、前記テーブルの回転角度が同一であり、かつ前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出するピーク検出手段と、
前記ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の前記受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる前記レーザ光の強度を最適レーザ強度として設定する最適レーザ強度設定手段と
を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線回折測定装置において、
前記最適レーザ強度設定手段は、前記レーザ強度制御手段がレーザ光の強度を順次増加させた状態で、前記レーザ光の強度の変化に対する前記受光信号の大きさの変化量を算出し、前記受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の前記レーザ光の強度を最適レーザ強度として設定し、前記受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させたレーザ光の強度の最大値を最適レーザ強度として設定することを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項3】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央に前記X線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに固定されていて、前記測定対象物にて回折した前記X線の回折光を受光する受光面を有し、前記回折光の像である回折環を記録する回折光受光器と、
レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、前記レーザ光を前記回折光受光器の受光面に照射するとともに、前記レーザ光の照射によって前記回折光受光器から出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを、前記貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段と、
前記回転手段によるテーブルの回転における基準位置からの回転角度を検出する回転角度検出回路と、
前記テーブルを、前記回折光受光器の受光面に平行な方向に、前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段によるテーブルの移動位置を検出する位置検出回路と、
前記レーザ光源を駆動制御するレーザ駆動回路と、
前記フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力するとともに受光信号の増幅率を変更可能な増幅回路とを備え、
前記X線出射器から測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によって前記回折光受光器に記録された回折環を測定するX線回折測定装置において、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記回折光受光器を回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記回折光受光器における照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる照射位置制御手段と、
前記照射位置制御手段により前記回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、前記回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき前記受光信号の増幅率を同一にするとともに、前記テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに前記受光信号の増幅率が変化するように前記増幅回路を制御する増幅率制御手段と、
前記テーブルの回転角度が前記所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における前記増幅回路からの受光信号であって、前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する受光信号取得手段と、
前記受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、前記テーブルの回転角度が同一であり、かつ前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出するピーク検出手段と、
前記ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の前記受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる前記受光信号の増幅率を最適増幅率として設定する最適増幅率設定手段と
を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線回折測定装置において、
前記最適増幅率設定手段は、前記増幅率制御手段が受光信号の増幅率を順次増加させた状態で、前記受光信号の増幅率の変化に対する前記受光信号の大きさの変化量を算出し、前記受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の前記受光信号の増幅率を最適増幅率として設定し、前記受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させた受光信号の増幅率の最大値を最適増幅率として設定することを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項5】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央に前記X線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに固定されていて、前記測定対象物にて回折した前記X線の回折光を受光する受光面を有し、前記回折光の像である回折環を記録する回折光受光器と、
レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、前記レーザ光を前記回折光受光器の受光面に照射するとともに、前記レーザ光の照射によって前記回折光受光器から出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを、前記貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段と、
前記回転手段によるテーブルの回転における基準位置からの回転角度を検出する回転角度検出回路と、
前記テーブルを、前記回折光受光器の受光面に平行な方向に、前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段によるテーブルの移動位置を検出する位置検出回路と、
前記レーザ光源を駆動制御するとともに前記レーザ光源から出射されるレーザ光の強度を変更可能なレーザ駆動回路と、
前記フォトディテクタからの受光信号を増幅して出力するとともに受光信号の増幅率を変更可能な増幅回路とを備え、
前記X線出射器から測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によって前記回折光受光器に記録された回折環を測定するX線回折測定装置において、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記回折光受光器を回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記回折光受光器における照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる第1照射位置制御手段と、
前記第1照射位置制御手段により前記回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、前記受光信号の増幅率を一定に保ったまま、前記回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき前記レーザ光の強度を同一にするとともに、前記テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに前記レーザ光の強度が変化するように前記レーザ駆動回路を制御するレーザ強度制御手段と、
前記レーザ強度制御手段がレーザ光の強度を変化させている状態で、前記テーブルの回転角度が前記所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における前記増幅回路からの受光信号であって、前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する第1受光信号取得手段と、
前記第1受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、前記テーブルの回転角度が同一であり、かつ前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出する第1ピーク検出手段と、
前記第1ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の前記第1受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる前記レーザ光の強度を最適レーザ強度として設定する最適レーザ強度設定手段と、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記回折光受光器を回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記回折光受光器における照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させる第2照射位置制御手段と、
前記第2照射位置制御手段により回折光受光器におけるレーザ光の照射位置を前記回折光受光器の中心周りに回転させるとともに前記中心からの径方向の距離を変化させている状態で、前記最適レーザ強度設定手段によって設定された最適レーザ強度に前記レーザ光の強度を保ったまま、前記回転角度検出回路によって検出されるテーブルの回転角度が同一の回転角度であるとき前記受光信号の増幅率を同一にするとともに、前記テーブルの回転角度が前記同一の回転角度から所定角度ずつ変化するごとに前記受光信号の増幅率が変化するように前記増幅回路を制御する増幅率制御手段と、
前記増幅率制御手段が受光信号の増幅率を変化させている状態で、前記テーブルの回転角度が前記所定角度ずつ変化したそれぞれの状態における前記増幅回路からの受光信号であって、前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号をそれぞれ取得する第2受光信号取得手段と、
前記第2受光信号取得手段によって取得された受光信号であって、前記テーブルの回転角度が同一であり、かつ前記回折光受光器の径方向に分布したレーザ光の複数の照射位置にそれぞれ対応した複数の受光信号のうちで、受光信号の大きさがピークとなる径方向位置を前記所定角度ずつ1周分検出する第2ピーク検出手段と、
前記第2ピーク検出手段により検出された1周分の径方向位置の前記第2受光信号取得手段によって取得された受光信号のうちで、受光信号の大きさが最適となる前記受光信号の増幅率を最適増幅率として設定する最適増幅率設定手段と
を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のX線回折測定装置において、
前記最適レーザ強度設定手段は、前記レーザ強度制御手段がレーザ光の強度を順次増加させた状態で、前記レーザ光の強度の変化に対する前記受光信号の大きさの変化量を算出し、前記受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の前記レーザ光の強度を最適レーザ強度として設定し、前記受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させたレーザ光の強度の最大値を最適レーザ強度として設定し、
前記最適増幅率設定手段は、前記増幅率制御手段が受光信号の増幅率を順次増加させた状態で、前記受光信号の増幅率の変化に対する前記受光信号の大きさの変化量を算出し、前記受光信号の大きさの変化量が予め決められた所定値に達しなくなったときに変化前の前記受光信号の増幅率を最適増幅率として設定し、前記受光信号の大きさの変化量が前記所定値に達しなくなるときがなかったときは、前記増加させた受光信号の増幅率の最大値を最適増幅率として設定することを特徴とするX線回折測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−251775(P2012−251775A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122139(P2011−122139)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]