説明

X線撮影装置およびX線撮影方法

【課題】 X線物理や画像処理の専門知識を有しないオペレータがX線撮影を実施する場合においても、撮影条件や画像処理条件を容易に調整することが可能なX線撮影装置およびX線撮影方法を提供する。
【解決手段】 オペレータが、X線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調を入力する。制御部5は、記憶部8に記憶されたテーブル81を利用して、X線撮影時のX線管1の管電圧、管電流、X線照射時間を含むX線の撮影条件、および、画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅を含む画像処理条件を読み出す。そして、このX線撮影条件および画像処理条件に基づいて、X線管1および画像処理演算部52を制御してX線撮影を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線を照射するX線管と、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部で検出されたX線に基づいて表示部にX線撮影画像を表示するための画像処理演算部とを備えたX線撮影装置、および、このX線撮影装置によるX線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなX線撮影装置を利用してX線撮影を行う場合においては、X線撮影条件や、X線撮影された画像を表示するための画像処理条件を設定する必要がある。このX線撮影条件や画像処理条件は、被検者である患者に必要な診断の種類や撮影部位、あるいは、患者の体格等によって異なっている。
【0003】
従来、このような条件を設定する場合においては、オペレータが、X線管の管電圧、管電流およびX線照射時間等を指定するとともに、X線透視撮影を行う場合には、単位時間あたりのフレーム数を指定している。また、画像処理条件を設定する場合においては、オペレータが、表示部に画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅等を指定している。
【0004】
一方、X線管の管電圧、管電流およびX線照射時間等の撮影条件と、オペレータが手動で行うべき手動操作条件とを関連づけて記憶するようにした放射線撮影装置も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−254411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した撮影条件や画像処理条件を設定するためには、X線物理や画像処理の専門知識がなければ適正な条件を設定することはできない。また、専門知識がないオペレータが患者等にとって危険な設定を行うことを防止するために、オペレータが設定可能とされるパラメータが制限されている場合もある。このため、X線物理や画像処理の専門知識が十分ではなく、X線撮影に熟練していないオペレータでは、適正な撮影条件や画像処理条件を設定することは困難となる。
【0007】
もちろん、特許文献1に記載されたように、X線管の管電圧、管電流およびX線照射時間等が互いに異なる複数の撮影条件を予め設定しておき、オペレータがこれら複数の撮影条件の一つを選択するようにすれば、上述した問題は解消し得る。しかしながら、このような構成を採用した場合には、X線量をもう少し下げたいという要請や、表示部に表示される画像をもう少し明るくしたいという要請等、撮影条件や画像処理条件の細かな調整を行うことは不可能となる。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、X線物理や画像処理の専門知識を有しないオペレータがX線撮影を実施する場合においても、撮影条件や画像処理条件を容易に調整することが可能なX線撮影装置およびX線撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、X線を照射するX線管と、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部で検出されたX線に基づいて表示部にX線撮影画像を表示するための画像処理演算部と、を備えたX線撮影装置において、X線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を入力する入力部と、X線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態と、そのX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を得るためのX線撮影条件および画像処理条件との関係を記憶する記憶部と、前記入力部において入力されたX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態に基づいて、前記記憶部から、そのX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を得るためのX線撮影条件および画像処理条件を読み出し、このX線撮影条件および画像処理条件に基づいて前記X線管および前記画像処理演算部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記記憶部は、X線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態と、そのX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を得るためのX線撮影条件および画像処理条件との関係を記憶した複数のテーブルを備える。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記X線撮影画像の表示状態は、画像の明暗と画像の階調とを含む。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記X線撮影条件は、X線管の管電圧、管電流およびX線照射時間を含む。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記画像処理条件は、画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅を含む。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の発明において、前記X線撮影画像の表示状態は、透視時の画像の切替速度を含み、前記X線撮影条件は、X線透視撮影時の単位時間あたりの撮影フレーム数を含む。
【0015】
請求項7に記載の発明は、X線を照射するX線管と、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部で検出されたX線に基づいて表示部にX線撮影画像を表示するための画像処理演算部とを備えたX線撮影装置によるX線撮影方法において、X線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調と、そのX線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調を得るための、X線撮影時のX線管の管電圧、管電流、X線照射時間を含むX線の撮影条件、および、画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅を含む画像処理条件と、の関係を記憶する記憶工程と、X線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調を入力する入力工程と、前記入力工程において入力されたX線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調に基づいて、そのX線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調を得るための、X線管の管電圧、管電流、X線照射時間を含むX線撮影条件、および、画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅を含む画像処理条件を読み出す条件読み出し工程と、前記条件読み出し工程で読み出したX線撮影条件および画像処理条件に基づいて、前記X線管および前記画像処理演算部を制御し、X線撮影を行うX線撮影工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および請求項7に記載の発明によれば、オペレータがX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を入力することにより、自動的に線撮影条件および画像処理条件が選択され、X線撮影が実行される。このため、X線物理や画像処理の専門知識を有しないオペレータがX線撮影を実施する場合においても、撮影条件や画像処理条件を容易に調整することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、複数のテーブルにX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態と、そのX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を得るためのX線撮影条件および画像処理条件との関係を記憶しておくことにより、オペレータの選択に従って、速やかに撮影条件や画像処理条件を調整することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、オペレータが画像の明暗と画像の階調とを入力することにより、画像処理条件を容易に調整することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、オペレータの入力に従って、X線管の管電圧、管電流およびX線照射時間を含むX線撮影条件を容易に調整することが可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、オペレータの入力に従って、画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅を含む画像処理条件を容易に調整することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、X線撮影画像の表示状態は透視時の画像の切替速度を含み、X線撮影条件がX線透視撮影時の単位時間あたりのフレーム数を含むことから、X線透視撮影を行う場合においても、撮影条件や画像処理条件を容易に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係るX線撮影装置の概要図である。
【図2】オペレータが入力するX線量およびX線撮影画像の表示状態に係る条件100と、これにより設定されるX線撮影条件201および画像処理条件202を含むX線撮影装置の制御条件200との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るX線撮影装置の概要図である。
【0024】
このX線撮影装置は、X線透視撮影を実行するものであり、X線を照射するX線管1と、このX線管1を制御するためのX線管制御部51と、X線管1から照射されテーブル3上の被検体たる患者4を通過したX線を検出するフラットパネルディテクタ等のX線検出部2と、このX線検出部2で検出されたX線画像を画像処理する画像処理演算部52と、X線検出部2で検出され画像処理演算部52で画像処理されたデータに基づいてX線撮影画像を表示するための表示部7と、オペレータがX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を入力するための入力部6と、装置全体を制御する制御部5と、後述する複数のテーブル81を有する記憶部8とを備える。
【0025】
このX線撮影装置においては、制御部5がX線管制御部51に制御信号を送信することにより、X線管1に付与される管電圧、管電流、およびX線照射時間が制御される。また、制御部5が画像処理演算部52およびX線検出部2に指令を出すことにより、X線透視撮影時の単位時間あたりの撮影フレーム数や、表示部7に画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅を含む画像処理条件を制御する。なお、表示部7に表示する画像の輝度を制御するときには、IBS信号(自動輝度調整信号)を作成するための図示しないIBSゲート回路等も利用され、このIBS信号を利用して画像処理演算部52が輝度の制御を含む画像処理を実行する。
【0026】
このX線撮影装置においては、入力部6を利用してX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を入力する。このときに、オペレータが入力する情報は、従来のような管電圧や管電流等のX線管のX線発生条件や、輝度等の画像処理条件ではなく、X線撮影の目的に沿った、X線物理や画像処理の専門知識を有しないオペレータにとっても理解しやすい情報となっている。
【0027】
図2は、オペレータが入力するX線量およびX線撮影画像の表示状態に係る条件100と、これにより設定されるX線撮影条件201および画像処理条件202を含むX線撮影装置の制御条件200との関係を示す説明図である。
【0028】
この実施形態においては、オペレータが入力するX線量の条件は、「X線量が少ない/多い」の条件のみである。そして、この条件は、5段階となっている。一方、オペレータが入力するX線撮影画像の表示状態に係る条件は、「画像の明暗が暗い/明るい」、「画像の階調が狭い/広い」、そして、透視撮影時における「透視時の速度が遅い/速い」の三条件である。そして、これらの条件も、各々、5段階となっている。
【0029】
これに対して、これらの情報に基づいて設定されるX線撮影条件201は、X線管1に対する「管電圧」、「管電流」、「X線照射時間」および透視撮影時における「単位時間あたりの撮影フレーム数(fps)」となっている。また、これらの情報に基づいて設定される画像処理条件202は、表示部7に画像を表示するときの「輝度の中心値(Window Level)」および「輝度の幅(Window Width)」となっている。
【0030】
記憶部8には、オペレータが入力するX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態に関する選択条件と、そのX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を得るためのX線撮影条件および画像処理条件との関係を決定する複数のテーブル81が記憶されている。このテーブルの数は、例えば、図2に示すX線量およびX線撮影画像の表示状態に係る条件100のように、4種類のデータが各々5段階の条件をとる場合には、「5 (5の4乗)」個となる。これらのテーブル81のデータは、X線物理や画像処理等の専門情報を考慮し、また、撮影条件やそのときの撮影結果を考慮して、予め、処理条件を変更しながら実験的、経験的に求められたものである。そして、X線撮影を実行するときには、これらのテーブル81のデータが制御部5により読み出される。
【0031】
以上のような構成を有するX線撮影装置においては、X線透視撮影を行う前に、上述したテーブル81を記憶部8に記憶させておく。そして、X線撮影時において、オペレータが、入力部6を使用して、X線量およびX線撮影画像の表示状態に係る条件を入力する。このときには、例えば、「X線量がやや少なめ(2)で、画像はやや明るく(4)、階調ははっきり(5)、透視時の速度は普通程度(3)」等のように、X線撮影の目的に沿った理解しやすい情報を入力すればよい。
【0032】
入力部6より必要な条件の入力が完了すれば、制御部5は、入力されたX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態に基づいて、記憶部8から、そのX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を得るためのX線撮影条件および画像処理条件に対応するテーブル81を読み出す。そして、制御部5は、このテーブル81の情報に基づいて、X線管制御部51を介してX線管1を制御するとともに、画像処理演算部52を介してX線検出部2および表示部7を制御し、X線撮影と表示とを実行する。
【0033】
このように、この発明に係るX線撮影装置によれば、X線撮影の目的に沿った理解しやすい情報を入力するだけで、予め適切なデータが記憶されたテーブル81が選択され、X線撮影とX線撮影画像の表示とがなされる。このため、X線物理や画像処理の専門知識を有しないオペレータであっても、適切なX線撮影を実行することが可能となる。
【0034】
なお、上述した実施形態においては、このX線撮影装置としてX線透視撮影を実行するものについて説明したが、通常のX線撮影のみを行う場合には、表示状態として透視時の画像の切替速度を考慮する必要はなく、また、X線撮影条件としてX線透視撮影時の単位時間あたりの撮影フレーム数を選択する必要はない。
【符号の説明】
【0035】
1 X線管
2 X線検出部
3 テーブル
4 患者
5 制御部
6 入力部
7 表示部
8 記憶部
51 X線管制御部
52 画像処理演算部
81 テーブル
100 X線量およびX線撮影画像の表示状態に係る条件
200 X線撮影装置の制御条件
201 X線撮影条件
202 画像処理条件

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線管と、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部で検出されたX線に基づいて表示部にX線撮影画像を表示するための画像処理演算部と、を備えたX線撮影装置において、
X線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を入力する入力部と、
X線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態と、そのX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を得るためのX線撮影条件および画像処理条件との関係を記憶する記憶部と、
前記入力部において入力されたX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態に基づいて、前記記憶部から、そのX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を得るためのX線撮影条件および画像処理条件を読み出し、このX線撮影条件および画像処理条件に基づいて前記X線管および前記画像処理演算部を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記記憶部は、X線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態と、そのX線撮影時のX線量およびX線撮影画像の表示状態を得るためのX線撮影条件および画像処理条件との関係を記憶した複数のテーブルを備えるX線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記X線撮影画像の表示状態は、画像の明暗と画像の階調とを含むX線撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線撮影装置において、
前記X線撮影条件は、X線管の管電圧、管電流およびX線照射時間を含むX線撮影装置。
【請求項5】
請求項3に記載のX線撮影装置において、
前記画像処理条件は、画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅を含むX線撮影装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記X線撮影画像の表示状態は、透視時の画像の切替速度を含み、
前記X線撮影条件は、X線透視撮影時の単位時間あたりの撮影フレーム数を含むX線撮影装置。
【請求項7】
X線を照射するX線管と、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部で検出されたX線に基づいて表示部にX線撮影画像を表示するための画像処理演算部とを備えたX線撮影装置によるX線撮影方法において、
X線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調と、そのX線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調を得るための、X線撮影時のX線管の管電圧、管電流、X線照射時間を含むX線の撮影条件、および、画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅を含む画像処理条件と、の関係を記憶する記憶工程と、
X線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調を入力する入力工程と、
前記入力工程において入力されたX線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調に基づいて、そのX線撮影時のX線量、X線撮影画像の明暗、X線撮影画像の階調を得るための、X線管の管電圧、管電流、X線照射時間を含むX線撮影条件、および、画像を表示するときの輝度の中心値および輝度の幅を含む画像処理条件を読み出す条件読み出し工程と、
前記条件読み出し工程で読み出したX線撮影条件および画像処理条件に基づいて、前記X線管および前記画像処理演算部を制御し、X線撮影を行うX線撮影工程と、
を備えたことを特徴とするX線撮影方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−152198(P2011−152198A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14042(P2010−14042)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】