説明

X線撮影装置

【課題】X線管及びX線検出器の対を複数備えたX線撮影装置において、撮影時に、X線技師がX線管及びX線検出器の各対の回動軸の方向、回動の向きを容易に視認できるようにする。
【解決手段】操作部11に複数個のメモリスイッチ12a〜12iが設けられ、X線管及びX線検出器の対5、6;7、8の回動軸の方向及び回動の向きを示すように配列される。X線管及びX線検出器の対毎の、対応する回動軸の方向、回動の向き及び回動角度を指定するデータの組が対応するメモリスイッチに登録される。メモリスイッチが所定の順序で押下げ操作され、登録されたX線管及びX線検出器の各対のデータの組を含む動作命令が制御部14に送信される。メモリスイッチには、それが押下げ操作されたときに、それに応答してX線管及びX線検出器のいずれの対が動作するのかを表示する表示手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ被検体を間に挟んで互いに対向配置されたX線管及びX線検出器の対からなる複数の撮影系を備え、各撮影系の光軸を被検体の体軸のまわり及び体軸との交差軸のまわりに回動させて、前記撮影系を目標位置まで移動させ、被検体を一度に多方向から撮影するX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体を一度に多方向から撮影するX線撮影装置として、バイプレーンX線撮影装置が存在する。バイプレーンX線撮影装置は、被検体を臥位に支持する天板と、2本のCアームと、各Cアームの両端に取り付けられ、互いに対向配置されたX線管及びX線検出器の対とを備えている。そして、被検体が各Cアームに挟まれ、X線管及びX線検出器の対がそれぞれ被検体を間に挟んで対向するように配置されるとともに、撮影動作のたびに、各Cアームが動かされることにより、X線管及びX線検出器の各対が、当該対の中心を通る回動軸のまわりに回動せしめられて、指定された目標位置まで移動せしめられた後、目標位置においてX線撮影がなされる。
【0003】
この場合、X線技師は、医師から受け取った撮影メニューに従い、撮影動作のたびに、バイプレーンX線撮影装置の操作ボタンを操作して、2本のCアームを動作させている。しかしながら、従来の構成では、X線技師は、各CアームのX線管及びX線検出器の対が、目標位置まで、天板上の被検体に対してどのように回動するのかを視覚的に認識することが容易ではなかった。
【0004】
一方、単一のCアームを備えたX線撮影装置において、Cアーム、すなわち、X線管及びX線検出器の対が、目標位置まで天板上の被検体に対してどのように回動するのかを容易に視認可能にするべく、操作部に複数個のメモリスイッチを設け、メモリスイッチの配置によってCアームの回動軸の方向及び回動の向きを表示するとともに、各メモリスイッチに、当該回動軸の方向及び回動の向き、並びに回動角度を指定するデータの組を登録し、各メモリスイッチの押下げ操作によって、登録されたデータの組をCアームの駆動部に送信するようにしたものが存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そこで、このメモリスイッチをバイプレーンX線撮影装置に適用することも考えられるが、この場合、各メモリスイッチを、基本的に、2本のCアームのうちの一方のみの動きにしか対応させることができず、このため、撮影時に2本のCアームの回動軸の方向又は回動の向きが異なる場合に対応することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−150137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、X線管及びX線検出器の対からなる撮影系を複数備えたX線撮影装置において、撮影時に、X線技師が、X線管及びX線検出器の各対の回動軸の方向、回動の向きを容易に認識できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、被検体を多方向から撮影するX線撮影装置であって、被検体を臥位に支持する天板と、前記被検体を間に挟んで対向配置されたX線管及びX線検出器の複数の対と、前記複数の対をそれぞれ支持する複数の支持体と、前記複数の支持体をそれぞれ独立に動かす駆動部と、前記X線管及び前記X線検出器の複数の対のそれぞれを、所定の順序で前記対の中心を通る回動軸のまわりに回動させて目標位置まで移動させるための動作命令を発する操作部と、前記動作命令を受信したとき、前記駆動部に対し制御信号を送信し、前記X線管及び前記X線検出器の各対を前記目標位置まで移動させる制御部と、を備えたX線撮影装置において、前記操作部が、前記X線管及び前記X線検出器の対の前記回動軸の方向及び回動の向きを示すように配列された複数個のメモリスイッチと、を備え、前記所定の順序で前記メモリスイッチが操作されることにより、前記メモリスイッチに登録された前記X線管及び前記X線検出器の各対の前記データの組を含む前記動作命令が前記制御部に送信されるようになっており、前記複数個のメモリスイッチは、中央のメモリスイッチを中心にして放射状に配置され、前記メモリスイッチ又はその近傍には、当該メモリスイッチが操作されたときに、それに応答して前記X線管及び前記X線検出器の前記複数の対のうちのいずれの対が動作するのかを表示する表示手段が設けられていることを特徴とするX線撮影装置を構成したものである。
【0009】
上記構成において、前記中央のメモリスイッチが、前記天板上に横たわる前記被検体を表示するマークを有することが好ましく、さらに、前記複数個のメモリスイッチは、前記中央のメモリスイッチと、前記中央のメモリスイッチのマークの体軸に一致する直径方向に対置された2個のメモリスイッチと、前記体軸に直角な直径方向に対置された2個のメモリスイッチと、前記マークの体軸方向に対して45°の角度をなす2つの直径方向のそれぞれに対置された各2個のメモリスイッチと、から構成されることが好ましい。また、前記表示手段は、前記X線管及び前記X線検出器の複数の対のそれぞれに対応する複数個のLEDからなり、前記メモリスイッチ毎に、前記複数個のLEDは半径方向に並んで配置されることが好ましい。
【0010】
また好ましくは、前記X線撮影装置は、前記X線管及び前記X線検出器の2つの対を備え、前記複数の支持体は2本のCアームからなり、前記Cアームの両端に前記X線管及び前記X線検出器が取り付けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線管及びX線検出器の対を複数備えたX線撮影装置において、その操作部に、X線管及びX線検出器の対の回動軸の方向及び回動の向きを示すように配列された複数個のメモリスイッチが設けられ、X線管及びX線検出器の対毎の、対応する回動軸の方向、回動の向き及び回動角度を指定するデータの組が対応するメモリスイッチに登録され、メモリスイッチがX線管及びX線検出器の各対の移動順序に従って押下げ操作されることにより、メモリスイッチに登録されたX線管及びX線検出器の各対のデータの組を含む動作命令が制御部に送信され、さらには、メモリスイッチ又はその近傍に、当該メモリスイッチが押下げ操作されたときに、それに応答してX線管及びX線検出器の複数の対のうちのいずれの対が動作するのかを表示する表示手段が設けられる。こうして、メモリスイッチの配列、並びに各メモリスイッチの表示手段によって、操作者は、X線管及びX線検出器の各対の目標位置までの移動時の回動軸の方向及び回動の向きを、容易に視覚的に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施例によるX線撮影装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のX線撮影装置のメモリスイッチを示す平面図であり、(A)はメモリスイッチの配列を説明する図であり、(B)はフロンタルCアームの動作時のLEDの点灯状態を説明する図であり、(C)はラテラルCアームの動作時のLEDの点灯状態を説明する図である。
【図3】メモリスイッチに登録されたフロンタルCアームの回動軸の方向、回動の向き及び回動角度のデータの組の一例を示す表である。
【図4】メモリスイッチに登録されたフロンタルCアームの回動軸の方向、回動の向き及び回動角度のデータの組が指定する目標位置の一例を示す図である。
【図5】メモリスイッチに登録されたフロンタルCアームの回動軸の方向、回動の向き及び回動角度のデータの組が指定する目標位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例によるX線撮影装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、本発明によるX線撮影装置は、被検体Mを臥位に支持する天板1、及び天板1を長手方向に水平移動させ、また昇降させる天板駆動装置2と、被検体Mを間に挟んで対向配置されたX線管及びX線検出器の2つの対5;6、7;8と、これらの2つの対5;6、7;8をそれぞれ支持する2本の支持体3、4を備えている。支持体3、4は、この実施例ではCアームからなり、Cアーム3、4の両端に、X線管5、7及びX線検出器6、8が取り付けられる。X線検出器6、8は、この実施例では、イメージ増倍管(I.I.)及びTVカメラ、またはフラットパネル型検出器(FPD)からなっている。
【0014】
X線撮影装置は、また、2本のCアーム3、4をそれぞれ独立に動かす駆動部9、10を備えている。第1の駆動部9は、床面に設置された基台9aと、基台9aに固定された支柱部9bとから構成され、支柱部9bに第1のCアーム3が取り付けられる。そして、第1のCアーム3は、第1のCアーム3が形成する円弧の中心を通りかつこの円弧を含む平面上に位置する被検体Mの体軸のまわりの回動運動と、第1のCアーム3の円弧の中心を通りかつこの円弧を含む平面に垂直な軸まわりの回動運動が可能になっている。第1のCアーム3は、一般にフロンタルCアームと呼ばれる。
【0015】
一方、第2の駆動部10は、天井に吊設され、天板1の長手方向に平行にのびる2本のレール10a、10aと、これらのレール10a、10aにスライド運動可能に取り付けられた移動体10bとから構成され、移動体10bに第2のCアーム4が取り付けられる。そして、第2のCアーム4は、天板1の長手方向に沿った水平移動と、第2のCアーム4が形成する円弧の中心を通りかつこの円弧を含む平面上に位置する垂直軸まわりの回動運動と、第2のCアーム4が形成する円弧の中心を通りかつこの円弧を含む平面に垂直な軸まわりの回動運動が可能になっている。第2のCアーム4は、一般にラテラルCアームと呼ばれる。
【0016】
また、X線撮影装置は、フロンタルCアーム3及びラテラルCアーム4のそれぞれの回動軸の方向及び回動の向き及び回動角度を検出することによって、関係するX線管及びX線検出器の各対5;6、7;8の位置を検出する(図示されない)位置検出器と、フロンタル及びラテラルCアーム3、4、よってX線管及びX線検出器の各対5;6、7;8のそれぞれを、所定の順序で対5;6、7;8の中心を通る回動軸のまわりに回動させて目標位置まで移動させるための動作命令を発する操作部11と、動作命令を受信したとき、位置検出器からの検出信号をモニターしながら、駆動部9、10に対し制御信号を送信し、X線管及びX線検出器の各対5;6、7;8を目標位置まで移動させる制御部14を備えている。制御部14はCPU16を有している。
【0017】
操作部11は、フロンタル及びラテラルCアーム3、4、よってX線管及びX線検出器の対5;6、7;8の回動軸の方向及び回動の向きを示すように配列された複数個のメモリスイッチ12と、フロンタル及びラテラルCアーム3、4それぞれについての、よってX線管及びX線検出器の対5;6、7;8毎の、当該Cアーム、よって当該対を目標位置まで移動させるための回動軸の方向、回動の向き及び回動角度を指定するデータの組の入力を受けるとともに、フロンタル及びラテラルCアーム3、4のそれぞれについて、よってX線管及びX線検出器の対5;6、7;8毎に、データの組を対応するメモリスイッチ12a〜12iに登録するデータ登録部13を備えている。
【0018】
そして、所定の順序でメモリスイッチ12a〜12iが押下げ操作されることにより、メモリスイッチ12a〜12iに登録されたX線管及びX線検出器の各対5;6、7;8のデータの組を含む動作命令が制御部14に送信される。
【0019】
図2(A)は、メモリスイッチの配列を示す平面図である。メモリスイッチ12a〜12iは、図2(A)に示すように、天板上に横たわる被検体Mを表示するマーク15を有する中央のメモリスイッチ12aを中心にして放射状に配置される。すなわち、この実施例では、メモリスイッチ12a〜12iは、中央のメモリスイッチ12aと、中央のメモリスイッチ12aのマーク15の体軸に一致する直径方向に対置された2個のメモリスイッチ12b、12fと、マーク15の体軸に直角な直径方向に対置された2個のメモリスイッチ12d、12hと、マーク15の体軸方向に対して45°の角度で傾斜する2つの直径方向のそれぞれに対置された各2個のメモリスイッチ12c、12g及び12e、12iと、から構成される。
この場合、中央のメモリスイッチ12aにマーク15を設けずに、中央のメモリスイッチ12aを中心にして、メモリスイッチ12b〜12iを互いに45°の角度をなすように放射状に配置してもよい。
【0020】
そして、フロンタル及びラテラルCアーム3、4の回動軸の方向及び回動の向きと、メモリスイッチ12a〜12iの配列との対応関係は次のように設定される。
一般に、Cアームについては、回動軸の方向及び回動の向きに関し、Cアームを被検体Mの体軸(又は体軸に平行な軸)のまわりに、被検体Mの頭側から見て左回りに回動させることを「LAO」(左前傾位)と称し、逆に右回りに回動させることを「RAO」(右前傾位)と称する。また、Cアームを被検体Mの体軸に垂直な軸のまわりに、被検体Mの頭側へ回動させることを「CRAN」(CRANIAL)と称し、逆に足側へ回動させることを「CAUD」(CAUDIAL)と称する。
【0021】
そして、フロンタルCアーム3については、メモリスイッチ12bは「CRAN」だけを示す位置に配置され、メモリスイッチ12cは「CRAN」及び「LAO」を示す位置に配置され、メモリスイッチ12iは「CRAN」及び「RAO」を示す位置に配置される。さらに、メモリスイッチ12dは「LAO」だけを示す位置に配置され、メモリスイッチ12aはどの回動方向に対しても回動角度が0°であることを示す位置に配置され、メモリスイッチ12hは「RAO」だけを示す位置に配置される。同様に、メモリスイッチ12e、12f、12gは、それぞれ、「CAUD」及び「LAO」を示す位置、「CAUD」だけを示す位置、及び「CAUD」及び「RAO」を示す位置に配置される。
【0022】
また、ラテラルCアーム4についても、フロンタルCアーム3と同様に、メモリスイッチ12bは「CRAN」だけを示す位置に配置され、メモリスイッチ12cは「CRAN」及び「LAO」を示す位置に配置され、メモリスイッチ12iは「CRAN」及び「RAO」を示す位置に配置される。さらに、メモリスイッチ12dは「LAO」だけを示す位置に配置され、メモリスイッチ12aはどの回動方向に対しても回動角度が0°であることを示す位置に配置され、メモリスイッチ12hは「RAO」だけを示す位置に配置される。同様に、メモリスイッチ12e、12f、12gは、それぞれ、「CAUD」及び「LAO」を示す位置、「CAUD」だけを示す位置、及び「CAUD」及び「RAO」を示す位置に配置される。
【0023】
再び図1を参照して、データ登録部13は、フロンタル及びラテラルCアームの種別を入力するためのCアーム選択キー、回動軸の方向及び回動の向きのデータ(LAO、RAO、CRAN、CAUD)と、回動角度のデータを入力するためのデータ入力キーからなるキーアレイ13aと、キーアレイ13aから入力されたデータを登録するデータ登録キー13bと、これらのキーの操作状態を表示するディスプレイ13cを有している。
【0024】
そして、各メモリスイッチ12a〜12iへのデータの組の登録は次のようにして実行される。例えば、フロンタルCアーム3については、まず、キーアレイ13aのCアーム選択キーによってフロンタルCアームが選択された後、フロンタルCアーム3の1つの目標位置を指定するデータの組(回動軸の方向及び回動の向きのデータと、回動角度のデータ)がデータ入力キーによって入力される。その後、そのデータを登録すべきメモリスイッチが押下げられる。このとき、ディスプレイ13c上には、押下げられたメモリスイッチの識別子と、入力された目標位置を指定するデータの組が表示される。そして、それらの情報が確認されると、データ登録キー13bが押下げられる。それによって、制御部14のCPU16を介して、メモリ15に、メモリスイッチにデータの組が関係づけられて格納される。他のメモリスイッチに対しても同様の操作が実行され、それによって、この実施例の場合、最大9個のメモリスイッチに異なるデータの組が登録され得る。
【0025】
図3には、フロンタルCアームについて、各メモリスイッチ12a〜12iに登録されたデータの組の一例を示した。各メモリスイッチ12a〜12iに登録されたデータの組が指定する目標位置は、図4〜図5に示すとおりである。
ラテラルCアーム4についても、フロンタルCアーム3と同様にして、各メモリスイッチ12a〜12iに対して対応する目標位置を指定するデータの組が登録される。
こうして、この実施例では、9×9=81通りのフロンタル及びラテラルCアーム3、4の目標位置の組み合わせをメモリスイッチに登録することができる。
【0026】
さらに、メモリスイッチ12a〜12iには、それぞれ、当該メモリスイッチ12a〜12iが押下げ操作されたときに、それに応答して、フロンタル及びラテラルCアーム3、4のうちのいずれが、よってX線管及びX線検出器の2つの対5;6、7;8のうちのいずれの対が動作するのかを表示する表示手段が設けられる。表示手段は、この実施例では、Cアームの数、よってX線管及びX線検出器の対の個数に対応する個数(この実施例では2個)のLED13a〜13i、14a〜14iからなっている。そして、メモリスイッチ12a〜12i毎に、2個のLED13a〜13i、14a〜14iは半径方向に並んで配置される。この場合、2個のLED13a〜13i、14a〜14iは、異なる形状を有すること又は異なる発色をすること又はその両方によって互いに容易に視覚的に区別され得ることが好ましい。
【0027】
そして、フロンタルCアーム3が動作可能な場合にメモリスイッチ12a〜12iが押下げ操作されたときは、メモリスイッチ12a〜12iの第1のLED13a〜13iが点灯する一方、ラテラルCアーム4が動作可能な場合にメモリスイッチ12a〜12iが押下げ操作されたときは、メモリスイッチ12a〜12iの第2のLED14a〜14iが点灯する。
【0028】
こうして、各メモリスイッチ12a〜12iに対して図3に示すようにデータ登録がなされている場合に、例えば、図2(B)に示すように、フロンタルCアーム3が動作可能な場合にメモリスイッチ12cが押下げ操作されたとき、第1のLED13cが点灯し、それによって、X線技師は、フロンタルCアーム3が、被検体Mに対して、メモリスイッチ12cによって示される方向に回動することを容易に視認することができる。また、このメモリスイッチ12cの押下げ操作により、フロンタルCアーム3を「CRAN=30°」及び「LAO=30°」回動させるための動作命令がCPU16(制御部14)に送信される。そして、CPU16は、この動作命令に基づいて、フロンタルCアーム3の駆動部9に対し制御命令を送信する。駆動部9は、この制御命令に従ってフロンタルCアーム3を動かして図4C(a)(b)に示す目標位置まで移動させる。
【0029】
次に、図2(C)に示すように、ラテラルCアーム4が動作可能な場合にメモリスイッチ12iが押下げ操作されたとき、第2のLED14iが点灯し、それによって、ラテラルCアーム4が、被検体Mに対して、メモリスイッチ12iによって示される方向に回動することを容易に視認することができる。また、メモリスイッチ12iの押下げ操作により、フロンタルCアーム3の場合と同様、ラテラルCアーム4を、メモリスイッチ12iに登録されたデータに基づいて回動させるための動作命令がCPU16に送信される。そして、CPU16は、この動作命令に基づいて、ラテラルCアーム4の駆動部10に対し制御命令を送信する。駆動部10は、この制御命令に従ってラテラルCアーム4を動かして目標位置まで移動させる。
【0030】
以上、本発明の好ましい1実施例について説明したが、本発明の構成は上述の実施例に限定されない。例えば、上述の実施例では、メモリスイッチにデータを登録するデータ登録部が備えられるが、データ登録部を備えずに、操作部に設けた操作レバー等によってラテラル及びフロンタルCアームをそれぞれ予め目的位置まで移動させ、そこで、対応するメモリスイッチを長押しすることにより、メモリスイッチへのデータ登録を行う構成とすることもできる。
また、上述の実施例では、X線管及びX線検出器の各対の位置を検出する位置検出器が備えられ、制御部は、位置検出器からの検出信号をモニターしながらX線管及びX線検出器の対を移動させるが、制御部がX線管及びX線検出器の各対をオープンループで制御するように構成すれば、位置検出器は不要となる。
また、上述の実施例では、メモリスイッチは押下げ操作式スイッチからなっているが、タッチスクリーン式ディスプレイ上にこれらのスイッチを設けることもできる。また、操作部11にジョイスティックを設けるとともに、ジョイスティックにメモリスイッチを組み込んでもよい。
【0031】
また、上述の実施例では、複数個のメモリスイッチは、中央のメモリスイッチ、並びに中央のメモリスイッチから放射状に配列された8個のメモリスイッチの合計9個のメモリスイッチから構成されているが、Cアーム、よってX線管及びX線検出器の対の回動軸の方向および回動の向きを表示する位置に複数個のメモリスイッチが配置されておれば、メモリスイッチの個数や、配列パターンは任意に設定できる。
また、X線撮影装置として2本のCアームを備えたX線撮影装置を例示したが、X線管及びX線検出器の対を支持する支持体はCアームに限定されない。
【符号の説明】
【0032】
1 天板
2 天板鼓動装置
3 フロンタルCアーム
4 ラテラルCアーム
5、7 X線管
6、8 X線検出器
9 駆動部
9a 支柱
9b 基台
10 駆動部
10a レール
10b 移動体
11 操作部
12a〜12i メモリスイッチ
13 データ登録部
13a キーアレイ
13b データ登録キー
13c ディスプレイ
14 制御部
15 メモリ
16 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を多方向から撮影するX線撮影装置であって、
被検体を臥位に支持する天板と、
前記被検体を間に挟んで対向配置されたX線管及びX線検出器の複数の対と、
前記複数の対をそれぞれ支持する複数の支持体と、
前記複数の支持体をそれぞれ独立に動かす駆動部と、
前記X線管及び前記X線検出器の複数の対のそれぞれを、所定の順序で前記対の中心を通る回動軸のまわりに回動させて目標位置まで移動させるための動作命令を発する操作部と、
前記動作命令を受信したとき、前記駆動部に対し制御信号を送信し、前記X線管及び前記X線検出器の各対を前記目標位置まで移動させる制御部と、を備えたX線撮影装置において、
前記操作部が、
前記X線管及び前記X線検出器の対の前記回動軸の方向及び回動の向きを示すように配列された複数個のメモリスイッチと、を備え、
前記所定の順序で前記メモリスイッチが操作されることにより、前記メモリスイッチに登録された前記X線管及び前記X線検出器の各対の前記データの組を含む前記動作命令が前記制御部に送信されるようになっており、前記複数個のメモリスイッチは、中央のメモリスイッチを中心にして放射状に配置され、前記メモリスイッチ又はその近傍には、当該メモリスイッチが操作されたときに、それに応答して前記X線管及び前記X線検出器の前記複数の対のうちのいずれの対が動作するのかを表示する表示手段が設けられていることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
前記中央のメモリスイッチが、前記天板上に横たわる前記被検体を表示するマークを有することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記複数個のメモリスイッチは、前記中央のメモリスイッチと、前記中央のメモリスイッチのマークの体軸に一致する直径方向に対置された2個のメモリスイッチと、前記体軸に直角な直径方向に対置された2個のメモリスイッチと、前記マークの体軸方向に対して45°の角度をなす2つの直径方向のそれぞれに対置された各2個のメモリスイッチと、から構成されることを特徴とする請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記X線管及び前記X線検出器の複数の対のそれぞれに対応する複数個のLEDからなり、前記メモリスイッチ毎に、前記複数個のLEDは半径方向に並んで配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記X線管及び前記X線検出器の2つの対を備え、前記複数の支持体は2本のCアームからなり、前記Cアームの両端に前記X線管及び前記X線検出器が取り付けられることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−167112(P2010−167112A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12703(P2009−12703)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】