説明

X線撮影装置

【課題】 X線照射部とX線検出器とをスタート位置に配置した後でも、容易に撮影開始位置または撮影終了位置を確認することが可能なX線検出装置を提供する。
【解決手段】 制御部は、スタート位置P3においてX線照射部回動部によりX線照射部3を角度θだけ回動させるとともに、コリメータランプを点灯させることにより、X線照射部3が撮影開始位置P1に配置されたときのX線照射領域またはX線照射部3が撮影終了位置P2に配置されたときのX線照射領域に対応する領域に光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線撮影装置に関し、特に、被検者の体軸方向に沿った長尺画像を撮影するX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなX線撮影装置は、被検者に向けて照射するX線照射部と、このX線照射部から照射されて被検者を通過したX線を検出するX線検出器と、これらのX線照射部とX線検出器とを被検者の体軸方向に移動させる移動機構とを備え、被検者の体軸方向に沿った長尺画像を撮影する構成を有する(特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
図1は、長尺画像を撮影するためのX線撮影装置の概要図である。
【0004】
このX線撮影装置は、被検者1を載置するためのテーブル2と、ファンビーム状のX線をビームの広がり方向が被検者1の体軸方向と直交する方向(図1における紙面と垂直な方向)となるようにして被検者1に向けて照射するX線照射部3と、このX線照射部3から照射され被検者1を通過したX線を検出するX線検出器としてのフラットパネルディテクタ4とを備える。このX線撮影装置においては、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4とを被検者1の体軸方向(図1における左右方向)に移動させることにより、複数の短冊状のX線画像を撮影し、この短冊状のX線画像を長辺側で結合することにより、被検者1の体軸方向に沿った長尺画像を取得する構成となっている。
【0005】
図2は、X線照射部3の概要図である。また、図3は、このX線照射部3により形成されるX線照射野Eを示す説明図である。
【0006】
このX線照射部3は、X線管31と、コリメータランプ32と、4枚のコリメータリーフ33と、ミラー34とを備える。X線管31から照射されたX線は、ミラー34を通過し、4枚のコリメータリーフによりその照射領域を制限されてX線照射野Eを形成する。これと同様に、コリメータランプ32から照射された光は、ミラー34により反射され、4枚のコリメータリーフによりその照射領域を制限されて、X線照射野Eに相当する光照射野を形成する。
【0007】
このX線撮影装置においては、図1に示す撮影開始位置P1から撮影終了位置P2までの距離pの撮影領域において、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4とを、同期して水平方向に一定速度で移動させる必要がある。このためには、撮影開始位置P1において、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4との移動速度が撮影時の一定速度に達している必要がある。これを可能とするために、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4との移動の開始位置であるスタート位置P3を距離qだけ撮影開始位置P1から離隔した位置に設定する。そして、このスタート位置P3から撮影開始位置P1までの領域を、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4とを一定速度まで加速するための助走領域としている。
【0008】
この場合において、オペレータが撮影操作を開始してからX線照射部3とフラットパネルディテクタ4とが撮影開始位置P1からスタート位置P3に移動する構成を採用した場合には、撮影操作の開始からX線照射を実行するまでの所要時間が長くなってしまうという問題が生ずる。このため、一般的には、X線撮影の開始に先立ち、コリメータランプ32を点灯するとともにコリメータリーフ33の位置を調整して得た光照射野に基づいてX線照射野を設定するとともに、撮影開始位置P1の設定と撮影終了位置P2の設定を完了した時点で、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4とが、スタート位置P3まで移動する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−236929号公報
【特許文献2】特開2010−213768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このようなX線撮影装置において、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4とがスタート位置P3まで移動した後に、オペレータが撮影開始位置P1または撮影終了位置P2の再確認を行いたい場合がある。このような場合に、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4とが撮影開始位置P1または撮影終了位置P2に配置されているのであれば、その位置でコリメータランプ32を点灯することにより、光照射野を利用して撮影開始位置P1や撮影終了位置P2を確認することができる。しかしながら、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4とがスタート位置P3まで移動している状態においては、このような方法で撮影開始位置P1や撮影終了位置P2を確認することはできない。
【0011】
このため、撮影開始位置P1や撮影終了位置P2の確認を行うために、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4とを、再度、撮影開始位置P1や撮影終了位置P2まで復帰させることも考えられるが、このためには、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4との移動のための時間が必要となる。このとき、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4とを高速で移動させた場合には、X線撮影装置に揺れが生じてしまうことから、画質の低下を防止するためには揺れが収まるまで待機する必要があり、長い時間を要する。これとは逆に、装置の揺れを防止するためにX線照射部3とフラットパネルディテクタ4とを低速で移動させた場合には、移動のために長い時間が必要となることになる。
【0012】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、X線照射部とX線検出器とをスタート位置に配置した後でも、容易に撮影開始位置または撮影終了位置を確認することが可能なX線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、X線管と、コリメータと、コリメータランプとを備え、ファンビーム状のX線をビームの広がり方向が被検者の体軸方向と直交する方向となるようにして前記被検者に向けて照射するX線照射部と、前記X線照射部から照射され前記被検者を通過したX線を検出するX線検出器とを備え、前記X線照射部と前記X線検出器とを被検者の体軸方向に移動させることにより、前記被検者の体軸方向に沿った長尺画像を撮影するX線撮影装置において、前記X線照射部を、スタート位置から撮影開始位置を介して撮影終了位置に至る範囲において、前記スタート位置から前記撮影開始位置までは加速しながら移動させるとともに、前記撮影開始位置から前記撮影終了位置までは一定速度で移動させるX線照射部移動手段と、前記X線照射部を前記被検者の体軸方向と直交する方向を向く軸を中心に回動させるX線照射部回動手段と、前記スタート位置において、前記X線照射部回動手段により前記X線照射部を回動させるとともに、前記コリメータランプを点灯させることにより、前記X線照射部が前記撮影開始位置に配置されたときのX線照射領域または前記X線照射部が前記撮影終了位置に配置されたときのX線照射領域に対応する領域に光を照射するX線照射野確認手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、X線照射部と撮影領域との距離をh、前記スタート位置と前記撮影開始位置または前記撮影終了位置との距離をDとしたときに、前記X線照射野確認手段は、前記X線照射部回動手段により前記X線照射部を下記の角度θだけ回動させる。
θ=tan−1[D/h]
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記X線照射野確認手段は、オペレータによる指令を受けて、前記X線照射部回動手段により前記X線照射部を回動させるとともに、前記コリメータランプを点灯させる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記X線照射野確認手段は、前記X線照射部が前記スタート位置に配置されたときに、前記X線照射部回動手段により前記X線照射部を回動させるとともに、前記コリメータランプを点灯させる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、X線照射部とX線検出器とをスタート位置に配置した後でも、撮影開始位置または撮影終了位置を確認することができる。このため、X線撮影を迅速に実行することを目的としてX線照射部とX線検出器とを予めスタート位置まで移動させる構成を採用した場合においても、容易に撮影開始位置または撮影終了位置を確認することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、撮影開始位置または撮影終了位置を確認する必要が生じたときに、オペレータが指令を行うことにより、撮影開始位置または撮影終了位置を確認することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、X線照射部がスタート位置に配置された時点で、撮影開始位置または撮影終了位置を確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】長尺画像を撮影するためのX線撮影装置の概要図である。
【図2】X線照射部3の概要図である。
【図3】このX線照射部3により形成されるX線照射野Eを示す説明図である。
【図4】長尺画像を撮影するためのX線撮影装置の概要図である。
【図5】この発明に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この発明に係るX線撮影装置は、被検者の体軸方向に沿った長尺画像を撮影するためのものであり、上述した図1乃至図3に示す構成を有する。そして、このX線撮影装置は、図4に示すように、X線照射部3が所定の角度θだけ回動する構成を有する。
【0022】
図5は、この発明に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【0023】
このX線撮影装置は、装置全体を制御する制御部60を備える。この制御部60は、上述したX線管31と、高電圧発生部51を介して接続されている。また、この制御部60は、上述したフラットパネルディテクタ4と、後述する短冊画像収集部62および長尺画像生成部63を備えた画像処理部61を介して接続されている。さらに、この制御部60は、上述したコリメータランプ32およびコリメータリーフ33を制御するためのコリメータ制御部52と接続されている。
【0024】
また、この制御部60は、X線照射部3を、図1および図4に示すスタート位置P3から撮影開始位置P1を介して撮影終了位置P2まで移動させるためのX線照射部移動部53と、X線照射部3を、図4に示すようにスタート位置P3で回動させるためのX線照射部回動部54と、フラットパネルディテクタ4を、図1および図4に示すスタート位置P3から撮影開始位置P1を介して撮影終了位置P2まで移動させるためのフラットパネルディテクタ移動部55と接続されている。また、この制御部60は、液晶表示装置等からなる表示部56と、キーボード等からなる入力部57とも接続されている。
【0025】
なお、この制御部60は、後述するように、スタート位置P3においてX線照射部回動部54によりX線照射部3を回動させるとともに、コリメータランプ32を点灯させることにより、X線照射部3が撮影開始位置P1に配置されたときのX線照射領域またはX線照射部3が撮影終了位置P2に配置されたときのX線照射領域に対応する領域に光を照射するX線照射野確認手段として機能する。
【0026】
このX線撮影装置により被検者の体軸方向に沿った長尺画像を撮影する場合においては、最初に、撮影開始位置P1と撮影終了位置P2を設定する。この場合においては、オペレータが必要な撮影条件に基づいて入力部57を操作することにより、撮影開始位置P1と撮影終了位置P2を設定する。撮影開始位置P1と撮影終了位置P2とが設定されれば、X線照射部移動部53がX線照射部3をスタート位置P3に移動させるとともに、フラットパネルディテクタ移動部55がフラットパネルディテクタ4をスタート位置P3に移動させる。これによりX線撮影を開始することが可能となる。
【0027】
この状態において、オペレータが撮影開始時または撮影終了時のX線照射領域を確認したい場合には、入力部57を操作することにより、制御部60に指令を出す。制御部60は、この指令を受け、X線照射部3を回動させるとともに、コリメータランプ32を点灯させる。すなわち、オペレータの指令を受けた制御部60は、スタート位置P3において、X線照射部回動部54によりX線照射部3を角度θだけ回動させる。また、制御部60は、この状態において、コリメータ制御部52によりコリメータランプ32を点灯させる。これにより、X線照射部3が撮影開始位置P1に配置されたときのX線照射領域、すなわち、撮影開始領域に対応する領域、あるいは、X線照射部3が撮影終了位置P2に配置されたときのX線照射領域、すなわち、撮影終了領域に対応する領域に光を照射することが可能となる。
【0028】
このときの、X線照射部3の回動角度θは、図4に示すように、テーブル2の表面とX線照射部の距離をh1、テーブル2の表面と被検者1における撮影領域との距離をh2、スタート位置P3と撮影開始位置P1との距離またはスタート位置P3と撮影終了位置P2との距離をDとしたときに、下記の式で表される。ここで、下記の距離(h1−h2)は、X線照射部3と被検者1における撮影領域との距離hと等価である。
【0029】
θ=tan−1[D/(h1−h2)]
【0030】
なお、オペレータが撮影開始時のX線照射領域を確認したい場合には、上述した距離Dにqを代入すればよい。また、オペレータが撮影終了時のX線照射領域を確認したい場合には、上述した距離Dに(q+p)を代入すればよい。
【0031】
撮影開始領域の確認が終了すれば、オペレータが入力部57を操作することにより撮影を開始する。このときには、制御部60がオペレータの指令を受け、X線照射部3を図1に示す元の状態まで回動させるとともに、コリメータランプ32を消灯させる。また、それと同時にX線照射部移動部53およびフラットパネルディテクタ移動部55が、X線照射部3とフラットパネルディテクタ4を、スタート位置P3から撮影開始位置P1まで加速させながら移動させる。そして、X線照射部3の回動完了後に加速しきった状態にし、撮影開始位置P1から撮影終了位置P2とまで定速で移動させる。
【0032】
このX線照射部3とフラットパネルディテクタ4の定速移動中に、画像処理部61における短冊画像収集部62が短冊状の画像を連続して収集する。より具体的には、広がり方向が被検者1の体軸方向と直交する方向となるようにして被検者1に向けて照射されるファンビーム状のX線における被検者の体軸方向の厚みに相当する距離だけX線照射部3とフラットパネルディテクタ4とが移動する毎に、X線の照射と収集が繰り返され、複数の短冊状画像が収集される。そして、複数の短冊状画像は、画像処理部61における長尺画像生成部63において、それらの短冊状画像の長辺側で結合される。これにより、被検者1の体軸方向に沿った長尺画像を取得することができる。この長尺画像は、表示部56に表示される。
【0033】
なお、上述した実施形態においては、X線照射野確認手段としての制御部60は、オペレータが入力部57を操作することによる指令を受けて、X線照射部回動部54によりX線照射部3を回動させるとともにコリメータランプ32を点灯させる構成を採用している。
【0034】
しかしながら、他の実施形態として、X線照射野確認手段としての制御部60が、X線照射部3がスタート位置P3に配置されたときに、自動的にX線照射部回動部54によりX線照射部3を回動させるとともに、コリメータランプ32を点灯させる構成を採用してもよい。このような構成を採用することにより、X線照射部3がスタート位置P3に配置された時点で、撮影開始位置または撮影終了位置を確認することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 被検者
2 テーブル
3 X線照射部
4 フラットパネルディテクタ
31 X線管
32 コリメータランプ
33 コリメータリーフ
34 ミラー
51 高電圧発生部
52 コリメータ制御部
53 X線照射部移動部
54 X線照射部回動部
55 フラットパネルディテクタ移動部
56 表示部
57 入力部
60 制御部
P1 撮影開始位置
P2 撮影終了位置
P3 スタート位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管と、コリメータと、コリメータランプとを備え、ファンビーム状のX線をビームの広がり方向が被検者の体軸方向と直交する方向となるようにして前記被検者に向けて照射するX線照射部と、前記X線照射部から照射され前記被検者を通過したX線を検出するX線検出器とを備え、前記X線照射部と前記X線検出器とを被検者の体軸方向に移動させることにより、前記被検者の体軸方向に沿った長尺画像を撮影するX線撮影装置において、
前記X線照射部を、スタート位置から撮影開始位置を介して撮影終了位置に至る範囲において、前記スタート位置から前記撮影開始位置までは加速しながら移動させるとともに、前記撮影開始位置から前記撮影終了位置までは一定速度で移動させるX線照射部移動手段と、
前記X線照射部を前記被検者の体軸方向と直交する方向を向く軸を中心に回動させるX線照射部回動手段と、
前記スタート位置において、前記X線照射部回動手段により前記X線照射部を回動させるとともに、前記コリメータランプを点灯させることにより、前記X線照射部が前記撮影開始位置に配置されたときのX線照射領域または前記X線照射部が前記撮影終了位置に配置されたときのX線照射領域に対応する領域に光を照射するX線照射野確認手段と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
X線照射部と撮影領域との距離をh、前記スタート位置と前記撮影開始位置または前記撮影終了位置との距離をDとしたときに、前記X線照射野確認手段は、前記X線照射部回動手段により前記X線照射部を下記の角度θだけ回動させるX線撮影装置。
θ=tan−1[D/h]
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記X線照射野確認手段は、オペレータによる指令を受けて、前記X線照射部回動手段により前記X線照射部を回動させるとともに、前記コリメータランプを点灯させるX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記X線照射野確認手段は、前記X線照射部が前記スタート位置に配置されたときに、前記X線照射部回動手段により前記X線照射部を回動させるとともに、前記コリメータランプを点灯させるX線撮影装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−249789(P2012−249789A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124002(P2011−124002)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】