X線断層画像によるはんだ電極の検査方法およびこの方法を用いた基板検査装置
【課題】はんだ電極の検査の精度を確保しつつ、処理効率を可能な限り向上できるようにする。
【解決手段】トモシンセシスによる画像再構成およびX線CTによる画像再構成の双方を実行する機能を具備する検査装置によりBGA部品11のはんだ電極10の検査を行う場合に、あらかじめ、毎時の撮影対象とする検査領域毎に、トモシンセシスによる画像再構成を行った場合に、再構成に用いる複数のX線透視画像におけるはんだ電極10の裏側の部品12の投影範囲に重複が生じるかどうかを、基板1のCADデータを用いて判別する。ここで重複が生じると判別された検査領域には、X線CTによる画像再構成を行うように決定し、重複は生じないと判別された検査領域には、トモシンセシスによる画像再構成を行うように決定し、これらの決定結果を登録する。
【解決手段】トモシンセシスによる画像再構成およびX線CTによる画像再構成の双方を実行する機能を具備する検査装置によりBGA部品11のはんだ電極10の検査を行う場合に、あらかじめ、毎時の撮影対象とする検査領域毎に、トモシンセシスによる画像再構成を行った場合に、再構成に用いる複数のX線透視画像におけるはんだ電極10の裏側の部品12の投影範囲に重複が生じるかどうかを、基板1のCADデータを用いて判別する。ここで重複が生じると判別された検査領域には、X線CTによる画像再構成を行うように決定し、重複は生じないと判別された検査領域には、トモシンセシスによる画像再構成を行うように決定し、これらの決定結果を登録する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、両面実装基板を検査対象として、この基板に実装される電子部品と基板側電極(ランドまたはパッドと呼ばれるもの)とを接続するはんだ電極の状態を、X線による断層画像を用いて検査する方法、およびこの方法を用いた基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の検査は、部品本体の裏面に設けられたボール状のはんだ電極の集合体(一般にBGA(Ball Grid Aray)と呼ばれる。)のような、外観検査が困難なはんだ電極を対象に、形状の適否や、「ボイド」と呼ばれる空洞部の有無などを判別する用途に適している。はんだ電極の断層画像を再構成する具体的な手法としては、X線CTを用いた方法(特許文献1参照。)、およびトモシンセシスの原理を用いた方法(特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特許第3694833号公報
【特許文献2】特表2004−515762号公報
【0004】
トモシンセシスによる画像再構成では、X線源およびX線検出器を対象物を挟むように配置し、両者間の関係を変更しながら複数回の投影処理を実行し、生成された画像をディジタル処理により平均化する。この場合の投影処理は、断層画像の生成対象とする複数の断面(以下、「目標断面」という。)の中の1つを基準にして、この基準断面内の任意の点が常にX線検出器の同一座標に投影されるように、毎時の投影におけるX線源およびX線検出器の位置を調整して行われるので、基準断面内の点は画像の平均化によって強調されるが、その他の断面の点は種々の位置にばらついて投影され、平均化された画像ではボケた状態になる。また基準断面以外の各目標断面についても、その断面内の各点の座標が同一になるように基準断面につき生成された画像を補正して平均化処理を行うので、同様に、目標断面内の各点が強調され、その他の断面の点がぼけた状態の画像を得ることができる。よって、いずれの目標断面についても、多少のノイズは残るが、目的断面が明瞭化された画像を得ることができる。
【0005】
一方、X線CTによる画像再構成では、目標断面毎に、対向配備されたX線源およびX線検出器の間に、両者を結ぶ軸線が目標断面の法線に直交する関係になるようにして対象物を配備し、この対象物に対するX線源およびX線検出器の方位を微小角度単位で変更しながら投影を繰り返す。そして、生成された多数のX線透視画像を用いて、目標断面の各点のX線吸収係数を求める演算を実行する。
【0006】
ただし、特許文献1に開示された方法では、厚みの薄い基板を対象に、その厚み方向に直交する断面を生成する点や、一部領域の拡大断面を生成する点などを考慮して、上記の一般的手法とは若干異なる処理を行っている。簡単に説明すると、基板を回転テーブルにより回転させるとともに、この回転軸に対して斜めに交わる方向に、X線源およびX線検出器を対向配備して撮影を行い、生成された各X線透視画像を、回転軸に対して垂直になる方向から透過を行った画像に変換し、変換後の画像を用いて吸収係数の算出のための演算を実行する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トモシンセシスによる処理とX線CTによる処理とを比較すると、生成される断層画像の精度の面では、X線CTの方が圧倒的に優れている。しかし、X線CTでは、多数の投影処理が必要である上に、演算が複雑になるため、断層画像を再構成するのにかなりの時間が必要になる。これに対し、トモシンセシスによれば、投影処理の回数は、X線CTに比べるとはるかに少なく、また演算も簡単であるので、短い時間で処理を完了することができる。
【0008】
このような点から、多数の基板の製造および検査を行う事業所では、検査の効率を上げるために、できる限りトモシンセシス方式の断層撮影による検査を実行することを、希望している。ただし、あくまでも、検査の精度を確保できることが前提となる。
【0009】
トモシンセシス方式による画像再構成では、目標断面以外の面の比較的大きな範囲にX線の吸収率が高い構成物があると、断層画像の画質が低下して、検査の精度を確保できなくなる可能性がある。断層画像の再構成に使用される複数の画像においては、上記の構成物の各点はそれぞれ画像毎に異なる位置に投影されるが、投影される対象が異なっても、毎時同じ座標にX線の吸収率が高い点が投影されると、これらの投影結果が平均化処理によって強調され、明瞭な画像として現れるからである。
検査対象のはんだ電極が投影される範囲内に、上記のような検査対象外の投影像によるノイズが生じると、検査の精度を確保するのは困難になる。したがって、このような場合には、トモシンセシスを適用するのをあきらめて、X線CTによる断層画像を生成する必要がある。
【0010】
発明者は、上記のようなノイズの具体例として、両面実装基板におけるはんだ電極の検査を行う場合に、検査対象のはんだ電極の裏側に実装されている部品により生じるノイズに着目した。はんだ電極の裏側に部品が存在しても、この部品の投影範囲が画像間で重なり合わない場合には、顕著なノイズが生じるおそれはない。しかし、裏側の部品のサイズや実装位置によっては、各方位からのX線に対して部品が投影される範囲が重複する場合があり、この重複部分の投影像が重畳されて、顕著なノイズが生じる可能性がある。
【0011】
この発明は、上記の実情を考慮して、両面実装基板を対象にはんだ電極の検査を行う場合に、裏側の部品に起因したノイズが生じるか否かによって、X線CTによる画像再構成とトモシンセシス手法による画像再構成とを自動的に切り替えて実行することによって、検査の精度を確保しつつ、処理効率を可能な限り向上できるようにすることを、第1の課題とする。
【0012】
さらにこの発明では、各被検査部位に適した画像再構成の手法を決定する処理を、部品の配置状態を示すデータを用いて自動で実施できるようにすることを、第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による検査方法では、それぞれ異なる高さ位置に配置されたX線源およびX線検出器と、これらの間で検査対象の基板を水平に支持する基板支持部と、検査対象の基板に対するX線源およびX線検出器の相対位置を調整して基板のX線透視画像を生成する制御処理部とを具備し、目標断面に対するX線源の方位として相反する関係にある一対の方位の組み合わせが1組以上生じるように、前記相対位置の調整を行って複数のX線透視画像を生成し、各X線透視画像を目標断面の投影範囲を基準に統合して目標断面の断層画像を生成するトモシンセシスによる画像再構成と、トモシンセシスより多くのX線透視画像を生成して、これらの画像を用いて目標断面のX線吸収係数分布を求めることによって断層画像を生成するX線CTによる画像再構成とを、切り替えて実行できるようにした検査装置を準備する。
【0014】
さらに、この方法では、検査対象の両面実装基板の構成を示すデータを、検査に先立ち制御処理部に入力し、データ入力後の制御処理部において、あらかじめ定めた撮影対象領域毎に、前記2種類の画像再構成のいずれを実行するかを入力データを用いて決定して、その決定結果を登録した後、検査対象の基板の各撮影対象領域に対し、それぞれ登録された画像再構成により断層画像を自動生成して検査を実行する。
【0015】
上記の制御処理部により行われる一撮影対象領域に対する画像再構成の内容を決定する処理では、この撮影対象領域に対しトモシンセシスによる画像再構成を実行すると仮定して、複数のX線透視画像を、画像生成時の目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、その組み合わせに係るX線透過画像を目標断面の投影範囲を基準に位置合わせしたときに撮影対象領域内の被検査部位の裏側の部品の投影範囲に重複する部分が生じるか否かを、前記入力データから求めた裏側の部品のサイズと、各画像生成時の目標断面に対するX線が撮影対象領域の裏側の基板面を通過する範囲の大きさとの関係に基づき判別する。そして、所定数の組み合わせについて裏側の部品の投影範囲に重複が生じるという判別結果が得られたときはX線CTによる画像再構成を実行する旨を決定し、投影範囲の重複が生じると判別された組み合わせが所定数に満たないときは、トモシンセシスによる画像再構成を実行する旨を決定する。
【0016】
上記方法の好ましい態様では、一撮影対象領域に対する画像再構成の内容を決定する処理において、仮定のトモシンセシスによる毎時の透視撮影を、目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、この組み合わせにつきX線源の方位の相反が生じている方向について、目標断面の所定位置に照射される各方位からのX線の照射角度と当該目標断面の高さとに基づき、撮像対象領域の裏側の基板面を通過するX線の通過範囲の大きさを求め、求められた大きさと入力データから求めた裏側の部品のサイズとを比較する。そして、所定数の組み合わせにおいて、X線の通過範囲より部品の方が大きくなる場合には裏側の部品の投影範囲の重複が生じると判別して、X線CTによる画像再構成を実行する旨を決定する。
【0017】
上記の方法によれば、検査に先立ち、裏側の部品に起因するノイズが顕著になる可能性が高い撮影対象領域に対しては、X線CTによる画像再構成を実行するように登録がなされ、それ以外の撮影対象領域に対しては、トモシンセシスによる画像再構成を実行するように、設定を行うことができる。よって検査の際には、設定されたデータに基づき、撮影対象領域毎に適切な画像生成処理を自動的に選択して実行するので、どの被検査部位についても、検査に支障のない断層画像を生成でき、検査の精度を確保することができる。また、裏側の部品によるノイズが顕著になるおそれのない被検査部位に対しては、トモシンセシスによる画像再構成が行われるので、検査の効率を向上することができる。
【0018】
またこの方法では、検査対象の両面実装基板の構成を示すデータ(基板の厚み、各部品の位置および大きさなど)を制御処理部に入力することによって、トモシンセシスによる検査が可能であるかどうかを、テスト撮影を行うことなく、簡単に判別することができる。
【0019】
なお、上記方法では、個々のはんだ電極をそれぞれ個別に撮影してもよいが、BGAを構成するはんだ電極など、微小なものを検査対象とする場合には、複数のはんだ電極を含む領域を1つの撮影対象領域としてもよい。この場合には、部品単位で撮影対象領域を定めることもできる。
【0020】
上記の方法が適用された基板検査装置は、それぞれ異なる高さ位置に配置されたX線源およびX線検出器と、これらの間で検査対象の基板を水平に支持する基板支持部と、検査対象の基板にはんだ電極を介して実装された電子部品が撮影されるように、基板に対するX線源およびX線検出器の相対位置を調整して複数回の透視撮影を実行し、生成された複数のX線透視画像からはんだ電極の断層画像を生成する制御処理部と、制御処理部が生成した断層画像を用いてはんだ電極の状態を検査する検査部とを具備する。
【0021】
制御処理部には、目標断面に対するX線源の方位として相反する関係にある一対の方位の組み合わせが1組以上生じるように、相対位置の調整を行って複数のX線透視画像を生成し、各X線透視画像を目標断面の投影範囲を基準に統合して目標断面の断層画像を生成するトモシンセシスによる画像再構成を実行する第1処理部と、トモシンセシスよりも多くのX線透視画像を生成して、これらの画像を用いて目標断面のX線吸収係数分布を求めることによって断層画像を生成するX線CTによる画像再構成を実行する第2処理部と、あらかじめ定めた撮影対象領域毎に、第1および第2のいずれの処理部による画像再構成を実行するかを決定して、その決定結果を示す情報を登録する登録手段と、登録された情報に基づき、撮影対象領域毎にその領域に対して決定した処理部に画像再構成処理を実行させる制御手段とが含まれる。
【0022】
上記の登録手段は、両面実装基板のはんだ電極が検査対象となるとき、その両面実装基板の構成を示すデータの入力を受け付けて、撮影対象領域毎に、前出の画像再構成の内容を決定する処理を実行する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、両面実装基板に実装された電子部品のはんだ電極を対象に、X線による断層画像を用いた検査を行う場合に、裏側の面に実装される部品に起因するノイズにより検査の精度を確保するのが困難な撮影対象領域に対しては、X線CTによる画像生成処理への切替を自動的に行って、高精度の断層画像を生成する一方で、このようなノイズが生じない撮影対象領域に対しては、トモシンセシスにより簡単かつ高速に断層画像を生成するようにしたので、検査の精度を確保しつつ、検査効率を向上することができる。また各撮影対象領域に適用する画像再構成の手法を、基板の構成データを用いて自動的に決定することができるので、ユーザに負担をかけることなく、短時間で設定を完了することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、この発明が適用されたX線利用の基板検査装置の概略構成を示す。
この基板検査装置は、外観検査が困難な箇所を対象に、X線による断層画像を生成し、生成された画像を用いて検査を行うもので、検査対象の基板1を支持する基板支持テーブル2、X線管3、フラットパネルディテクタ4(以下、「FPD4」と略す。)、CCDカメラ5、変位センサ6、および図2に示すコントローラ20などにより構成される。
【0025】
なお、図中の10は、具体的な検査対象の例としてのはんだ電極を示し、11は、はんだ電極10により基板1に接続される部品(以下、「BGA部品11」という。)を示す。図1では、便宜上、各はんだ電極10を誇張して描いているが、実際のはんだ電極10は微小なもので、BGA部品11の裏面に多数配備される。
【0026】
また、この実施例の基板1は、両面実装基板であって、各面とも、種々の部品が実装され、BGA部品11も、双方の面に実装される場合がある。したがって、下面側のBGA部品11のはんだ電極10に対する断層画像が生成される場合もあるが、この実施例では、便宜上、上面側のはんだ電極10を検査対象とする場合に限定して説明する。また、以下では、検査対象のBGA部品11が実装される面を表面といい、他方を裏面という。
【0027】
基板支持テーブル2は、基板1を、水平な姿勢にして支持する。なお。この支持は、基板裏面の部品が実装されていない端縁部に対して行われ、裏面の部品は、基板支持テーブル2の図示しない収容空間に収容される。X線管3は、円錐状のX線ビーム(コーンビーム)を出射するタイプのもので、基板支持テーブル2の上方に配備される。FPD4は、基板1を透過したX線を受けて2次元のX線透視画像を生成するもので、図示しない支持ホルダにより、通常は、検出面4Aが真上を向くように、水平な姿勢で支持されている。ただし、X線CT用の撮影を行う場合には、図中の一点鎖線で示すように、FPD4は、検出面4AがX線管3の方を向くように傾いた姿勢で支持される。
【0028】
基板支持テーブル2およびFPD4は、それぞれ図2に示すXYステージ8,9により、X軸方向(図1の左右方向とする。)およびY軸方向(図1の紙面に直交する方向とする。)に移動可能に支持される。一方、X線管3は、所定高さ位置に、X線の出射面を真下に向けて固定配備される。
【0029】
CCDカメラ5および変位センサ6は、FPD4より下方の所定位置に、それぞれ受光面を基板1に向けて配置される。CCDカメラ5は、基板1の下面の所定範囲を撮像する。変位センサ6は、レーザーダイオードやフォトダイオードが組み込まれた光学式のセンサであって、受光面から基板1の裏面までの距離(計測対象位置に部品がある場合には、その部品までの距離となる。)を計測する。CCDカメラ5により生成された画像は、基板1の位置決め処理に使用され、変位センサ6による検出信号は、目標断面の高さ位置の調整に使用される。
【0030】
上記のCCDカメラ5および変位センサ6は、上面が開口された収容部(図示せず。)内に配備されている。収容部の開口部は、通常はシャッタ7により閉じられており、カメラ5による撮像や変位センサ6による距離計測を実行するときのみ開放される。これによりX線透過撮影時に、CCDカメラ5や変位センサ6にX線の影響が及ぶのを防止することができる。
【0031】
なお、この実施例では、X線検出器としてFPD4を使用しているが、これに限らず、イメージインテンシファイヤ(II)やCCD等を使用してもよい。
【0032】
図2は、上記の基板検査装置の全体構成を示すブロック図である。
この基板検査装置のコントローラ20は、汎用のパーソナルコンピュータを利用して製作されるもので、CPUを含む制御部21、メモリ22、演算処理装置23、モニタ24、操作部25などを具備する。このコントローラ20には、図1に示したX線管3およびFPD4のほか、CCDカメラ5、基板1の移動用のXYステージ8、FPD4の移動用のXYステージ9、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)26などが接続される。
【0033】
PLC26は、制御部21からの指令に応じて、CCDカメラ5、変位センサ6、シャッタ7を駆動し、撮像や距離計測を行わせる。また、変位センサ6からの検出信号を取り込んで、これを距離データに換算し、制御部21に出力する。一方、CCDカメラ5からの画像信号は、PLC26を経由せずに、コントローラ20内の図示しない画像用インターフェースを介して制御部21に入力される。
【0034】
メモリ22は、ハードディスク等の大容量メモリであって、制御や検査に関するプログラム、検査対象の基板のCADデータ、および検査の実行に必要な各種設定データが格納される。また、検査に用いられた断層画像を保存するための画像データベースもメモリ22内に設けられる。
【0035】
演算処理装置23は、X線CTによる断層画像の再構成に係る演算を実行するためのもので、高性能のCPUを含む演算回路が搭載された基板として構成される。
【0036】
上記構成において、検査対象の基板1は、図示しない上流の搬送機構から基板支持テーブル2に搬入される。制御部21は、XYステージ8を用いてこの基板1を初期位置に合わせた後、基板1のあらかじめ定められた複数の検査領域に対する透視撮影を開始する。
【0037】
上記の基板1を初期位置に合わせる処理では、CCDカメラ5により基板1の一角部に形成された基準マークを撮像し、画像中の基準マークがあらかじめ定めた基準位置に合致するように、X,Yの各軸方向における基板1の位置を調整する。
【0038】
各検査領域に対する透視撮影の前にも、一旦、対象とする検査領域の中心がX線管3の光軸Lに合うように基板1を位置決めした後に、透視撮影に応じた位置に基板1を移動させる。この透視撮影前の位置合わせでも、CCDカメラ5により基板1の裏面の画像を生成し、この画像があらかじめ登録されたモデルの画像に合致するように、X,Yの各軸方向における基板1の位置を調整する。
【0039】
また制御部21は、上記の位置合わせが終了すると、透視撮影のための移動を開始する前に、変位センサ6により計測された距離データに基づき、あらかじめ定めた基準断面の高さを修正し、この修正に合わせて、透視撮影時のXYステージ8,9の移動量などの制御パラメータを調整する。検査すべき断面の高さは基板1やはんだ電極10等の厚みに応じて定められるが、基板の反りなどによって、この断面が本来の高さ位置からずれる可能性があるからである。
【0040】
なお、基準断面以外の各目標断面の高さは、それぞれ基準断面からの距離により表されるので、基準断面の高さが修正されることによって、すべての目標断面の高さを調整することができる。このように、検査領域毎に、基板1の位置合わせおよび基準断面の高さ調整を行ってから透視撮影を開始することにより、目的とする断層画像を精度良く生成することができる。
【0041】
この実施例でいう検査領域は、はんだ電極10を包含する仮想の3次元領域(部品11と基板1とに挟まれた領域)であり、透視撮影の対象とされる。実際のはんだ電極10は微小であるので、1つの検査領域には複数のはんだ電極10が含まれるが、この実施例では、はんだ電極10を誇張しているので、1つ1つのはんだ電極10に個別に検査領域が設定されるものとする。
【0042】
この実施例の基板検査装置では、X線CTによる画像再構成と、トモシンセシスによる画像再構成とを実行することが可能であって、検査領域毎にいずれか一方の画像再構成処理を実行するようにしている。
いずれの方法でも、高さの異なる複数の目標断面を設定して、X線源3およびFPD4の各中心点を結ぶ直線が検査領域を斜めに横切るように調整し、基板1に対するX線管3およびFPD4の関係を変更して複数回の透視撮影を行う。ただし、撮影回数、および画像再構成のための演算処理は、トモシンセシスとX線CTとでは、全く異なる。
【0043】
図3は、トモシンセシスを実行する場合の投影処理の具体例を示す。
この図は、X線源3、FPD4、および基準断面Tを真上から俯瞰したと想定して、三者間の関係の変化を表したものである。なお、基準断面Tとして、複数の目標断面の中から任意の断面を選択することができる。
【0044】
この実施例では、基準断面T内の一点O(この実施例では中心点とするが、これに限定されるものではない。)を基準点に設定し、X,Yの各軸方向において、それぞれX線管3の光軸Lに対する距離が等しい関係にある4点P1,P2,P3,P4に基準点Oが順に移動するように基板1の位置を変更する。また、これらの点P1,P2,P3,P4に基準点Oが合わせられたときに、この点Oが投影される位置(点Q1,Q2,Q3,Q4)にFPD4の中心点Rが置かれるように、基板1の移動に合わせてFPD4を移動させ、移動毎に透視撮影を行う。具体的には、基準点Oが点P1に移動したときには中心点Rは点Q1に移動し、基準点Oが点P2に移動したときには中心点Rは点Q2に移動し、基準点Oが点P3に移動したときには中心点Rは点Q3に移動し、基準点Oが点P4に移動したときには中心点Rは点Q4に移動する。
【0045】
この実施例のX線管3からは、円錐状のビームが出射されているので、各方位に対するX線の照射角度は均一になる。また、光軸Lに対する点P1〜P4の距離が等しいので、点Q1〜Q4の光軸Lに対する距離も等しくなる。
【0046】
なお、基板1やFPD4を位置決めする場所は、X,Y軸の正負が示す4方位に限定されるものではない。たとえば、上記の4方位のほかに、X,Yの各軸に対しそれぞれ45度傾いた方位をあわせた計8方位において、光軸Lに対する距離が等しい関係にある各点を、それぞれ基準点Oの位置決め点として設定し、これらの点に対応させて、FPD4の位置決め点を設定してもよい。
【0047】
また上記の例のように、光軸Lに対する基準点Oの距離が一定になるように基板1を移動させる場合には、基準点Oは、光軸Lを中心にした円の円周に沿って移動していると考えられるが、基準点Oの軌道は円軌道に限定されるものではない。たとえば基準点Oの位置が楕円または矩形状の軌道をもって変化するように、毎時の基板1の位置を定めてもよい。
【0048】
以下では、図3に示した方法で基板1およびFPD4を移動させることを前提に、基準断面Tの位置を、基準点Oが合わせられる点P1〜P4を用いて示し、FPD4の位置を点Q1〜Q4を用いて示すことにする。
図4では、基準断面Tが点P1の位置に置かれたときの投影状態と、点P2の位置に置かれたときの投影状態とを、対比させて示す。また各位置で生成されるX線透視画像A1,A2の模式図を、それぞれの位置に対応づけて示している。
【0049】
図4中、12は、基板1を挟んで検査領域に対向する位置に実装されている部品である(以下、「裏面部品12」という。)。この例では、説明を簡単にするために、基準断面T内にあるはんだ電極10の構成点、および裏面部品12の上面(基板1に接する面)について、それぞれFPD4の検出面4Aおよび各X線透視画像A1,A2における投影範囲を、傾斜方向が異なる斜線パターンにより示す。なお、対応関係を明確にするため、検出面4Aの投影範囲と画像A1,A2中の投影範囲には、それぞれ同一の符号(S1,U1、またはS2,U2)を付す。また、画像A1,A2の背景部分(各投影範囲の外側部分)は、一般には黒色で表されるが、この例では、各投影範囲を確認しやすいように、紙面の地の色(白色)とする。
【0050】
また以下では、S1,S2を「はんだ電極10の投影範囲」といい、U1,U2を「裏面部品12の投影範囲」というが、S1,S2は、あくまでも基準断面T内のはんだ部分の投影範囲であり、はんだ電極10全体の投影像を表すものではない。U1,U2も、裏面部品12の基板1に接する底面(図示上は上側の面となる。)の投影範囲であり、裏面部品12の全体の投影像を表すものではない。
【0051】
この実施例のX線管3からは、各方位に均一に広がる円錐状のビームが照射され、また基準断面Tの基準点Oが常にFPD4の中心点Rに投影されるように、基板1とFPD4との位置が調整されている。したがって、基板1が移動して基準点Oの位置が変わっても、この基準点Oを含む基準断面T内の各点は、常に検出面4Aの同一座標に投影される。これに対し、裏面部品12の構成点は、基準断面Tとは異なる高さにあるため、毎回異なる座標に投影される。よって、毎時の透視撮影におけるはんだ電極10の投影範囲S1,S2は同一になるが、裏面部品12の投影範囲U1,U2は、異なるものになる。
【0052】
基準断面Tが点P3の位置にあるときと、点P4の位置にあるときとの関係も、図4の例と同様になり、それぞれ図5中に符号A3,A4で示すようなX線透視画像が得られる。
【0053】
この実施例によるトモシンセシス方式の画像再構成処理では、基準断面Tを点P1,P2,P3,P4に位置合わせして生成した4枚のX線透視画像A1〜A4の各画素を、座標が対応する関係にあるもの毎に組み合わせ、これらの組み合わせ毎に、それぞれその組に属する4つの画素中で濃度が最も低い画素のデータ(すなわち4画素の中でX線透過率が一番高いことを示すデータ)の画像データを選択する。そして、各組に共通する座標に選択された画像データをあてはめることによって、基準断面Tの断層画像を生成する。
【0054】
さらに、基準断面T以外の目標断面については、その断面と基準断面Tとの距離に基づき、上記の画像A1〜A4が当該目標断面を基準断面とした場合の画像になるように、各画素の座標を変更する(すなわち、目標断面内の各点の投影点の座標が一致するように画像A1〜A4を補正する。)。そして、補正後の4枚の画像を用いて、基準断面Tの場合と同様に、座標が対応する関係にある画素の組み合わせ毎に、濃度が最も低い画素の画像データを選択する方法によって、目標断面の断層画像を生成する。
【0055】
なお、基準断面Tについても、必ずしもその断面T内の各点が同一座標に投影されるように基板1やFPD4の位置を定める必要はない。ただし、その場合には、基準断面Tについても、画像A1〜A4を上記と同様に補正する必要がある。
【0056】
つぎに図5〜7を用いて、断層画像の再構成の具体例と裏面部品12が及ぼす影響について説明する。なお、この例では、図3の方法により撮影された基準断面TのX線透視画像A1〜A4を用いた画像再構成を示すが、これらの画像を補正して再構成処理を行う場合にも、画像再構成に及ぼす裏面部品12の影響は、図5〜7に示すのと同様になる。
【0057】
図5〜7では、基準断面Tを点P1,P2,P3,P4に位置合わせして生成したX線透視画像A1,A2,A3,A4を、図3に示した4点P1,P2,P3,P4の位置関係に合わせて配置するとともに、これらの画像の中央に、各画像により再構成された断層画像Bを配置している。
【0058】
各画像A1〜A4中のS1〜S4は、はんだ電極10の投影範囲であり、U1〜U4は裏面部品12の投影範囲である。図4を用いて説明したように、基準断面Tにおけるはんだ電極10の構成点は、いずれのX線透視画像A1〜A4でもそれぞれ同一の座標に投影されるが、裏面部品12の構成点が投影される座標は、画像によって変動する。
【0059】
図5の例では、いずれの画像A1〜A4でも、裏面部品12は、はんだ電極10の投影範囲S1〜S4の外側(背景部分)に投影される。また、各画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4は、いずれも他の範囲に重複していない。
【0060】
したがって、対応関係にある4画素のうち濃度が最小の画素のデータを選択する方法によれば、画像間で一致するはんだ電極10の投影範囲S1〜S4については、いずれの画像のデータが選択されたとしても、はんだ電極10を表すデータが選択される。これに対し、背景部分については、いずれかの画像で部品12が投影されたために濃度が高くなった箇所があっても、他の部品12が投影されていない画像における同一箇所の濃度の方が低いため、部品12の投影状態を表すデータが選択されることはない。よって、断層画像Bには、はんだ電極10の画像Sが明瞭に現れるが、裏面部品12の画像が現れることはない。
【0061】
なお、図5では、断層画像B中の部品12の投影範囲U1〜U4に対応する部分を点線枠で示す。一般的な画像の平均化処理による画像再構成を行った場合には、これら点線枠の範囲に、うっすらとした画像が現れる可能性がある。
【0062】
図6は、裏面部品12の投影範囲U1〜U4が、図5の例より大きくなった場合のX線透視画像A1,A2,A3,A4、およびこれらの画像A1〜A4により再構成された断層画像Bを示す。
この例では、いずれの画像A1〜A4でも、はんだ電極10の投影範囲S1〜S4と裏面部品12の投影範囲U1〜U2との間に重なりが生じている。投影範囲が重なる部分では、他の部分より濃度が高くなるため、画像の白みが強くなる。しかし、各画像A1〜A4における重なり部分の出現範囲を比較すると、撮影時のX線管3の方位が直交する関係にある画像間には共通に含まれる箇所はあるものの、撮影時のX線管3の方位が相反する関係にある画像間に共通に含まれる箇所はない。したがって、画像A1〜A4の裏面部品12の投影範囲U1〜U4のすべてに共通する箇所は存在しないから、はんだ電極10の投影範囲S1〜S4については、常に裏面部品12の投影範囲に重なっていない画像のデータが選択される。また背景部分についても、図5の例と同様に、常に背景を表すデータが選択されるから、断層画像B中に裏面部品12による画像が現れることはない。
【0063】
図7は、裏面部品12の投影範囲U1〜U4がさらに大きくなった場合のX線透視画像A1,A2,A3,A4、およびこれらの画像A1〜A4により再構成された断層画像Bを示す。
【0064】
この例では、各X線透視画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4が、はんだ電極10の投影範囲S1〜S4の半分以上の範囲に重複し、その結果、画像の中心部分が裏面部品12の4つの投影範囲U1〜U4に共通に含まれている。投影範囲U1〜U4に共通に含まれる箇所では、裏面部品12による濃度が加味された画像データが選択されるため、再構成された断層画像Bの対応箇所に、周囲より濃度の高いノイズNが現れる。
【0065】
つぎに、X線CTによる画像再構成では、FPD4を、図1に一点鎖線で示したように傾けて、基板1およびFPD4の位置を種々に変化させる。位置が変化しても、FPD4およびX線管3の各中心点を結ぶ軸線は、目標断面を特定の基準点の位置で斜めに横切る状態に維持される。また、基板1、X線管3、およびFPD4の関係が、X線源3およびFPD4を固定して、基準点を軸に目標断面を所定の角度単位ずつ回転させた場合と同様に変化するように、基板1およびFPD4の位置を変更し、位置変更の都度、X線管3およびFPD4を駆動して透視撮影を行わせる。
【0066】
毎時の撮影により生成されたX線透視画像は、演算処理装置23に入力され、前出の特許文献1に開示されたのと同様の方法、すなわち各入力画像を、基板1の法線方向に直交する方向から透視を行った状態を表す画像に変換し、変換後の各画像を用いて、目標断面R内の複数点のX線吸収係数を算出する方法により、目標断面の断層画像が生成される。
【0067】
なお、X線CTでは、上記の手法による複数回の透視撮影および画像再構成を、目標断面毎に実行する必要がある。
【0068】
X線CTによる画像再構成では処理に時間がかかるが、複雑な演算によって、基準断面T以外の構成物を除去するので、高精度の断層画像を得ることができる。
これに対し、トモシンセシスによる画像再構成では、ノイズNが生じる場合があるが、X線CTに比べると、透視撮影の回数がはるかに少ないため、短時間で撮影を完了することができる。また画像再構成のための演算も簡単で、制御部21のみで実行することができる。さらに、複数の面の断層画像が必要な場合でも、いずれか1つの面を対象に透視撮影を行えば、その撮影により得たX線透視画像を他の高さの面のX線透視画像に変換し、その高さにおける断層画像を再構成することができる。
【0069】
このように、トモシンセシスによる画像再構成を行えば、処理時間を大幅に短縮することができるので、現場のユーザは、できるだけトモシンセシスによる画像再構成を行うことを希望している。しかし、図7に示したようなノイズNが生じる場合には、はんだ電極10に欠陥があるという誤判別が生じる可能性があるので、トモシンセシスによる検査をあきらめて、X線CTによる精度の高い断層画像を用いた検査を行う必要がある。
【0070】
そこで、この実施例では、検査前のティーチングにおいて、検査領域毎に、この領域に対しトモシンセシスによる画像再構成を行った場合に、裏面部品12に起因するノイズNが生じるかどうかを判別し、その判別結果に応じて、2種類の画像再構成方法のいずれかを実行するかを決定するようにしている。この判別処理は、制御部21により、基板1のCADデータを用いて自動的に実施される。以下、この判別処理の原理について、図8〜11を用いて説明する。
【0071】
図8は、図3,4に示した撮影処理を、基板1を静止させ、X線管3およびFPD4を相対的に移動させるものに置き換えて、基準断面T内の基準点Oに対する方位が相反する2方向からのX線と、基準断面Tおよび裏面部品12との関係を示したものである。図中の直線m1は、基準点Oを点P1に合わせて透視撮影を行ったとき(図4の左手の撮影状態)の点Oに対するX線の進行方向に相当し、直線m2は、基準点Oを点P2に合わせて透視撮影を行ったとき(図4の右手の撮影状態)の点Oに対するX線の進行方向に相当する。以下、直線m1に対応する方位からのX線による透過撮影を「第1撮影」といい、直線m2に対応する方位からのX線による透過撮影を「第2撮影」という。
【0072】
直線m1,m2が示す方向からのX線は、それぞれ基板1の裏面を、点n1,n2の位置で通過し、FPD4の検出面4Aの中心点Rに達する。したがって、点n1,n2は、基準点Oと同じ位置、すなわち点Rに投影される。
【0073】
図8において、基準点Oを通る鉛直方向の軸Gを基準に、基板1の裏面より下にある各点のFPD4の検出面4Aに対する投影状態を説明すると、点n1から点n2までの範囲(以下、「n1−n2間」という。)にある各点は、第1撮影、第2撮影のいずれにおいても、軸Gから見て、中心点Rより手前の位置に投影される。これに対し、点n1より左側に位置する点は、第1撮影において、中心点Rより外側に投影される。また、点n2間より右側に位置する点は、第2撮影において、中心点Rより外側に投影される。
【0074】
図8では、実装範囲がn1−n2間に含まれる裏面部品12を実線で示すとともに、実装範囲がn1−n2より大きい裏面部品12を、一点鎖線で示している。
【0075】
図9は、図8に示した2種類の部品12について、第1および第2の撮影における投影範囲U1,U2を、FPD4の断面内にそれぞれ方向の異なる斜線パターンとして示したものである。また、図中のa,bは、基板1に接する裏面部品12の底面の端縁の位置を示し、a1,b1は第1撮影における点a,bの投影位置を、a2,b2は第2撮影における点a,bの投影位置を、それぞれ示す。
【0076】
図9(1)は、図8に実線で示した裏面部品12の投影状態を示す。この部品12では、点a,bがともにn1−n2間にあるので、第1撮影、第2撮影とも、これらの点a,bは、軸Gから見て中心点Rより手前位置に投影される。したがって、この場合には、投影範囲U1,U2間に重複が生じることはない。
【0077】
図9(2)は、図8に一点鎖線で示した裏面部品12の投影状態を示す。この部品12では、点a,bがそれぞれn1−n2間より外側に位置するため、第1撮影では点aが、第2撮影では点bが、それぞれ中心点Rより遠くに投影される。したがって、いずれの投影範囲U1,U2も中心点Rを超えてしまうから、投影範囲U1,U2間に重複が生じる。
【0078】
すなわち、上記の例の場合には、裏面部品12の幅wがn1−n2間の距離より小さい場合には、第1撮影における裏面部品12の投影範囲U1と第2撮影における裏面部品12の投影範囲U2が重複することはないが、裏面部品12の幅wがn1−n2間の距離を超える場合には、投影範囲U1,U2に重複が生じる。
【0079】
ここで、図8に戻って、基準点Oに対する各方位からのX線の照射角度を、軸Gに対する直線m1,m2の角度θ1,θ2により表し、基準断面Tの高さをhとすると、n1−n2間の距離dfは、下記の(1)式により求められる。
df=h・(tanθ1+tanθ2) ・・・(1)
【0080】
上記において、角度θ1,θ2はあらかじめ定められており(この実施例では、θ1=θ2である。)、基準断面Tの高さhも、目標断面の設定において定められる。したがって、これらの値を(1)式にあてはめることにより、n1−n2間の距離dfを求めることができる。さらに、裏面部品12の幅wを、たとえば基板1のCADデータから求め、そのwの値をdfと比較すれば、この部品12の投影範囲U1,U2が重複するかどうかを判別することができる。
【0081】
なお、裏面部品12が直方体状である場合には、底面以外の各断面は、底面の投影範囲よりも手前側(X線管3に近い側)にずれた範囲に投影されるので、基板1に接する部品12の底面の投影範囲U1,U2に重複が生じていなければ、その他の断面の投影範囲に重複が生じることもない。
【0082】
ただし、裏面部品12の幅wがn1−n2間の距離dfより小さい場合でも、常に図8の例のように、部品12の底面全体がn1−n2間に含まれるように位置するとは限らない。この点に鑑み、裏面部品12の底面の一方の端部はn1−n2間にあるが、他端はn1−n2間の外にある場合にも、上記の部品12の幅wと距離dfとの比較による判別が可能であるかどうかについて、検討する必要がある。
【0083】
図10は、上記の検討の結果を示す図である。この図では、図8中に実線で示した部品12が、右方向に距離d1だけずれたものとして、直線m1に対応する方位からのX線による第1撮影で生成されたX線透視画像A1と、直線m2に対応する方位からのX線による第2撮影で生成されたX線透視画像A2とを示している。この場合、各画像A1,A2における裏面部品12の投影範囲U1,U2は、部品12が図8の位置にある場合の投影範囲U1´,U2´(一点鎖線で示す。)に対して、それぞれ一定距離d2だけ右方向にずれる。
このように、n1−n2に対する部品12の位置がずれても、各画像A1,A2における部品12の投影範囲U1,U2は、同じ方向に、実際の部品のずれに応じた一定量d2ずつずれるだけである。したがって、投影範囲U1´,U2´に重複が生じていないならば、投影範囲U1,U2に重複が生じることもない。
【0084】
したがって、裏面部品12の位置にかかわらず、前出の(1)式により求めたn1−n2間の距離dfと裏面部品12の幅wとを比較することによって、第1撮影および第2撮影における裏面部品12の投影範囲U1,U2に重複が生じるかどうかを容易に判別することができる。
【0085】
さらに基準断面Tを点P3に合わせ、FPD4を点Q3に合わせた状態での透視撮影(以下、「第3撮影」という。)と、基準断面Tを点P4に合わせ、FPD4を点Q3に合わせた状態での透視撮影(以下、「第4撮影」という。)についても、第1撮影および第2撮影の組み合わせにつき実施したのと同様の方法によって、裏面部品12の投影範囲U3,U4に重複が生じるかどうかを判別することができる。
【0086】
先の図5〜7に示したように、この実施例のトモシンセシスによる画像構成処理では、各透視撮影を、基準点Oに対するX線の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせた場合(すなわち第1撮影と第2撮影とを組み合わせ、第3撮影と第4撮影とを組み合わせる。)に、少なくともいずれか一方の組み合わせで裏面部品12の投影範囲に重複が生じていなければ、ノイズNは発生しない。
【0087】
したがって、組み合わせ毎に、前出の裏面部品12の幅wと距離dfとを比較した結果、少なくとも一方の組み合わせにおいてw<dfとなれば、4枚のX線透視画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4のすべての間に重複箇所が生じることはなく、ノイズNは発生しない。よって、このような関係が成立する検査領域に対しては、トモシンセシスによる画像再構成を適用することができる。
【0088】
一方、いずれの組み合わせにおいても、w>dfとなる場合には、毎時の撮影における裏面部品12の投影範囲U1〜U4には、図7の例のような重複が生じ、ノイズNが発生する。したがって、このような関係が成立する検査領域に対しては、X線CTによる画像再構成を適用する必要がある。
【0089】
透視撮影の回数が増えた場合も同様に、X線源の方位が対向する関係にある複数の撮影の組毎に、その組み合わせにつきX線源の方位の相反が生じている方向について、各方位から基準点Oに対するX線が基板1の裏面を通過する位置n1,n2間の距離と部品の幅wとを比較する。この場合にも、すべての組み合わせにおいて裏面部品12の投影範囲に重複が生じない限り、ノイズNが生じることはない。よって、撮影回数に関わらず、撮影時の目標断面に対するX線の方位が対向する関係にある撮影の組み合わせ毎に、上記のwとdfとを比較することによって、トモシンセシスによる画像再構成が可能であるかどうかを判断することができる。
【0090】
なお、図8〜10では、説明の便宜のために、はんだボール10の中心を通る水平面を基準断面Tとして、裏面部品12によるノイズの有無を判別するための原理を説明したが、実際の判別処理では、複数の目標断面のうち最も基板1に近い位置にある断面(すなわちhの値が最も小さい断面)を対象に(1)式を実行する必要がある。(1)式によれば、hの値が小さいほど距離dfも小さくなるから、最も低い断面を演算の対象とすることにより、dfの最小値を求めることができる。裏面部品の幅wがこの最小のdfよりも小さい場合には、いずれの断面についても、裏面部品の投影範囲の重複によるノイズは生じない。反対に、幅wが最小のdf以上であれば、いずれの断面でも、裏面部品の投影範囲の重複によるノイズが生じることになる。
この距離dfの算出に用いる断面は、実際の撮影における基準断面Tとしてもよいが、算出に用いた断面以外の断面を基準断面Tとしても、特段の問題は生じない。
【0091】
つぎに、図8〜10の例では、基準断面Tに対応する裏面部品12を1つとしたが、裏面側の部品配置によっては、図11に示すように、方位が相反する2方向からのX線が透過する範囲に、複数の部品12が存在する可能性もある。このような場合も、部品12間の距離Dが所定のしきい値以内であれば、これらの部品を1つとみなし、各部品の幅および距離Dを加算した値をwとして、上記の判別処理を実行してもよい。
【0092】
また、上記の判別では、裏面部品12を直方体であると想定しているが、部品の底面より上面の方が面積が広くなるなど、裏面部品12の形状が直方体以外のものになる場合には、この部品に外接する直方体を想定し、その直方体の幅をwとするのが望ましい。また、X,Y以外の方向でX線源の方位の相反が生じている場合には、その方向に平行な辺を持つ直方体を部品に外接させて、幅wを求めるとよい。
【0093】
また上記の例では、基板支持ステージ2に支持された基板1の上面側のはんだ電極10を検査する場合について検討したが、基板1の下面側のはんだ電極10を検査する場合にも同様に、基板1に最も近い断面を対象に、その断面内の基準点に対する方位が相反する撮影の組み合わせ毎に、上記(1)式により求めた距離dfと上面側の部品の幅とを比較することによって、当該部品によるノイズが生じるか否かを判別することができる。ただし、この場合の(1)式では、基板の上面から演算対象の断面までの距離をhとする必要がある。
【0094】
図12は、ティーチングの手順を示す。この実施例のティーチングでは、ユーザが簡単な指示を行うことにより、自動的に、はんだ電極10の検査の対象とする検査領域の割り付けと、断層画像の再構成の手法とが設定される。
【0095】
まずステップ1では、検査対象の基板1のCADデータを入力する。ステップ2では、基板1およびはんだ電極10の厚みに基づき、はんだ電極10の観測に適した目標断面の数および基準断面の高さを設定する。なお、目標断面間の間隔は固定されているものとするが、この間隔は適宜変更可能である。
【0096】
この実施例では、検査領域の面積として、FPD4に投影可能な広さに相当する一定の値を設定しており、ステップ3では、CADデータからBGA部品11の情報を抽出し、この情報と上記の一定の面積とを用いて、検査領域の割り付けを行う。なお、BGA部品11の大きさによっては、1つの部品に複数の検査領域が割り付けられる。
この後は、設定された検査領域に順に着目し、領域毎にステップ4〜11を実行する。
【0097】
まずステップ4では、ステップ2で設定した目標断面のうちの基板1に最も近い断面(最も低い位置にあるもの)を演算の対象に設定する。ステップ5では、この演算対象の断面の高さhと、X線の照射角度とを用いて、前出のn1−n2間の距離dfを算出し、算出されたdfの値を部品の幅wに対する判定基準値として設定する。なお、高さhは、基準断面Tの高さ、目標断面間の間隔、および基板1の厚みにより割り出すことができる。
【0098】
また、この例でも、図3に示した方法に基づき4回の撮影を行うものとして、X線管3の方位が相反する関係にある撮影の組み合わせ(第1撮影と第2撮影、および第3撮影と第4撮影)毎に、判定基準値dfを求める。
【0099】
ステップ6では、着目中の検査領域に対し、本体全体または本体の一部が基板1を挟んで対向する関係にある部品をCADデータに基づき特定し、その部品について、各撮影の組み合わせに対応する方向(X方向およびY方向)毎に、部品幅wを読み出す。なお、部品の形状等の問題から、部品に外接する直方体を設定する場合には、CADデータが示す部品の大きさや実装方向などに基づき、wの値を算出する必要がある。
【0100】
ステップ7では、ステップ5で求めた判定基準値dfとステップ6で特定した部品12の幅wとを比較することにより、各方位からのX線による裏面部品12の投影範囲U1〜U4に重複が生じるかどうかを判別する。具体的には、撮影時のX線管3の方位が相反する関係にある撮影の組み合わせ、すなわち第1撮影および第2撮影の組み合わせと、第3撮影および第4撮影の組み合わせとについて、それぞれ部品の幅wとdfとの大小関係をチェックし、少なくともいずれか一方の組み合わせでw<dfとなった場合には、投影範囲U1〜U4間に重複は生じないと判断する。一方、いずれの組み合わせでも、w≧dfとなった場合には、投影範囲U1〜U4間に重複が生じると判断する。
【0101】
上記の処理において、4つの投影範囲U1〜U4に重複部分があると判断された場合(ステップ8が「YES」の場合)には、着目中の検査領域に対しX線CTを実行するように決定する(ステップ9)。他方、各投影範囲U1〜U4間に重複が生じないと判断された場合(ステップ8が「NO」の場合)には、着目中の検査領域に対しトモシンセシスを実行するように決定する(ステップ10)。
【0102】
以下、同様に、ステップ3で割り付けられた検査領域毎に、各画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4間に重複が生じるかどうかを判断し、その結果に応じて、画像再構成の方法を決定する。ここで決定された方法は、検査領域の位置や大きさ等の情報に対応づけられてメモリ22に登録される。
【0103】
すべての検査領域に対する処理が終了すると、ステップ11が「YES」となり、ティーチングを終了する。
【0104】
この後、検査モードに移行すると、検査対象の基板1が基板支持テーブル2に搬入され、初期の位置決めが行われる都度、上記の手順により登録された情報に基づき、各検査領域に対する透視撮影や断層画像の再構成が行われる。この場合には、たとえば、まずトモシンセシス方式の画像再構成を行うようにして、対象となる検査領域を順に処理した後に、X線CT方式の画像再構成に切り替えて、残りの検査領域に対する処理を実行することで、処理の効率化をはかることができる。
【0105】
なお、上記の実施例では、裏面部品12の幅wをCADデータから導出したが、この種のデータを取得する方法は、CADデータからの読込に限定されるものではない。たとえば、検査の前に、CCDカメラ5により基板1を撮像し、ユーザが生成された画像を参照しながら、部品の位置や大きさを手入力で設定する場合には、その入力データを用いて部品の幅wを特定してもよい。たとえば、部品毎にその部品を包含する大きさのウィンドウを設定する場合であれば、このウィンドウの設定データが示すウィンドウ枠の幅を、部品幅wとして使用してもよい。
【0106】
このように、上記の実施例では、トモシンセシス方式の画像再構成において、対応関係にある画素のうち最も濃度の低い画素のデータを選択するようにしたので、4枚のX線透視画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4に重複が生じることを、X線CTを実行する条件とした。しかし、一般的なトモシンセシスの手法に従って、各画像A1〜A4を平均化する場合には、第1撮影と第2撮影との組み合わせ、および第3撮影と第4撮影との組み合わせのいずれか一方において、裏面部品12の投影範囲が重複する状態(w≧dfとなる状態)になると判断したときに、X線CTを実行するようにしてもよい。
【0107】
また、撮影の回数を4回より多くする場合にも、基準断面Tに対する方位が相反する関係にある撮影の組み合わせ毎に、裏面部品12の投影範囲の重複の有無を判別し、所定数以上の組み合わせにおいて重複するという判断がなされた場合に、X線CTを実行するようにしてもよい。また、裏面部品12の投影範囲が重複すると判断された組み合わせの数が上記の所定数に満たなくとも、ある程度の値に達している場合には、警報を出力するなどして、X線CT、トモシンセシスのいずれを実行するかをユーザに選択させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】X線断層撮影による基板検査装置の構成例を示す説明図である。
【図2】上記の基板検査装置のブロック図である。
【図3】トモシンセシスによる透視撮影を行う場合のX線管、FPD、目標断面の位置関係を示す説明図である。
【図4】目標断面に対する方位が相反する関係にある透視撮影による投影状態と、生成されるX線透視画像とを、対応づけて示す説明図である。
【図5】4回の撮影により生成されたX線透視画像と再構成された断層画像との関係を示す説明図である。
【図6】4回の撮影により生成されたX線透視画像と再構成された断層画像との関係を示す説明図である。
【図7】4回の撮影により生成されたX線透視画像と再構成された断層画像との関係を示す説明図である。
【図8】第1撮影および第2撮影におけるX線の通過位置と部品の端縁位置との関係を示す説明図である。
【図9】図8に示した2種類の部品を対象に、第1撮像および第2撮像における投影範囲の関係を示す説明図である。
【図10】裏面部品が図8の状態よりずれた場合の部品の投影範囲の変化を示す説明図である。
【図11】X線が透過する範囲に複数の部品が位置する例を示す説明図である。
【図12】ティーチングの手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0109】
1 基板
3 X線管
4 フラットパネルディテクタ(FPD)
8,9 XYステージ
10 はんだ電極
12 裏面部品
20 制御装置
21 制御部
22 メモリ
T 目標断面
O 基準断面Tの中心点
R FPD4の中心点
U1,U2,U3,U4 裏面部品12の投影範囲
【技術分野】
【0001】
この発明は、両面実装基板を検査対象として、この基板に実装される電子部品と基板側電極(ランドまたはパッドと呼ばれるもの)とを接続するはんだ電極の状態を、X線による断層画像を用いて検査する方法、およびこの方法を用いた基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の検査は、部品本体の裏面に設けられたボール状のはんだ電極の集合体(一般にBGA(Ball Grid Aray)と呼ばれる。)のような、外観検査が困難なはんだ電極を対象に、形状の適否や、「ボイド」と呼ばれる空洞部の有無などを判別する用途に適している。はんだ電極の断層画像を再構成する具体的な手法としては、X線CTを用いた方法(特許文献1参照。)、およびトモシンセシスの原理を用いた方法(特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特許第3694833号公報
【特許文献2】特表2004−515762号公報
【0004】
トモシンセシスによる画像再構成では、X線源およびX線検出器を対象物を挟むように配置し、両者間の関係を変更しながら複数回の投影処理を実行し、生成された画像をディジタル処理により平均化する。この場合の投影処理は、断層画像の生成対象とする複数の断面(以下、「目標断面」という。)の中の1つを基準にして、この基準断面内の任意の点が常にX線検出器の同一座標に投影されるように、毎時の投影におけるX線源およびX線検出器の位置を調整して行われるので、基準断面内の点は画像の平均化によって強調されるが、その他の断面の点は種々の位置にばらついて投影され、平均化された画像ではボケた状態になる。また基準断面以外の各目標断面についても、その断面内の各点の座標が同一になるように基準断面につき生成された画像を補正して平均化処理を行うので、同様に、目標断面内の各点が強調され、その他の断面の点がぼけた状態の画像を得ることができる。よって、いずれの目標断面についても、多少のノイズは残るが、目的断面が明瞭化された画像を得ることができる。
【0005】
一方、X線CTによる画像再構成では、目標断面毎に、対向配備されたX線源およびX線検出器の間に、両者を結ぶ軸線が目標断面の法線に直交する関係になるようにして対象物を配備し、この対象物に対するX線源およびX線検出器の方位を微小角度単位で変更しながら投影を繰り返す。そして、生成された多数のX線透視画像を用いて、目標断面の各点のX線吸収係数を求める演算を実行する。
【0006】
ただし、特許文献1に開示された方法では、厚みの薄い基板を対象に、その厚み方向に直交する断面を生成する点や、一部領域の拡大断面を生成する点などを考慮して、上記の一般的手法とは若干異なる処理を行っている。簡単に説明すると、基板を回転テーブルにより回転させるとともに、この回転軸に対して斜めに交わる方向に、X線源およびX線検出器を対向配備して撮影を行い、生成された各X線透視画像を、回転軸に対して垂直になる方向から透過を行った画像に変換し、変換後の画像を用いて吸収係数の算出のための演算を実行する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トモシンセシスによる処理とX線CTによる処理とを比較すると、生成される断層画像の精度の面では、X線CTの方が圧倒的に優れている。しかし、X線CTでは、多数の投影処理が必要である上に、演算が複雑になるため、断層画像を再構成するのにかなりの時間が必要になる。これに対し、トモシンセシスによれば、投影処理の回数は、X線CTに比べるとはるかに少なく、また演算も簡単であるので、短い時間で処理を完了することができる。
【0008】
このような点から、多数の基板の製造および検査を行う事業所では、検査の効率を上げるために、できる限りトモシンセシス方式の断層撮影による検査を実行することを、希望している。ただし、あくまでも、検査の精度を確保できることが前提となる。
【0009】
トモシンセシス方式による画像再構成では、目標断面以外の面の比較的大きな範囲にX線の吸収率が高い構成物があると、断層画像の画質が低下して、検査の精度を確保できなくなる可能性がある。断層画像の再構成に使用される複数の画像においては、上記の構成物の各点はそれぞれ画像毎に異なる位置に投影されるが、投影される対象が異なっても、毎時同じ座標にX線の吸収率が高い点が投影されると、これらの投影結果が平均化処理によって強調され、明瞭な画像として現れるからである。
検査対象のはんだ電極が投影される範囲内に、上記のような検査対象外の投影像によるノイズが生じると、検査の精度を確保するのは困難になる。したがって、このような場合には、トモシンセシスを適用するのをあきらめて、X線CTによる断層画像を生成する必要がある。
【0010】
発明者は、上記のようなノイズの具体例として、両面実装基板におけるはんだ電極の検査を行う場合に、検査対象のはんだ電極の裏側に実装されている部品により生じるノイズに着目した。はんだ電極の裏側に部品が存在しても、この部品の投影範囲が画像間で重なり合わない場合には、顕著なノイズが生じるおそれはない。しかし、裏側の部品のサイズや実装位置によっては、各方位からのX線に対して部品が投影される範囲が重複する場合があり、この重複部分の投影像が重畳されて、顕著なノイズが生じる可能性がある。
【0011】
この発明は、上記の実情を考慮して、両面実装基板を対象にはんだ電極の検査を行う場合に、裏側の部品に起因したノイズが生じるか否かによって、X線CTによる画像再構成とトモシンセシス手法による画像再構成とを自動的に切り替えて実行することによって、検査の精度を確保しつつ、処理効率を可能な限り向上できるようにすることを、第1の課題とする。
【0012】
さらにこの発明では、各被検査部位に適した画像再構成の手法を決定する処理を、部品の配置状態を示すデータを用いて自動で実施できるようにすることを、第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による検査方法では、それぞれ異なる高さ位置に配置されたX線源およびX線検出器と、これらの間で検査対象の基板を水平に支持する基板支持部と、検査対象の基板に対するX線源およびX線検出器の相対位置を調整して基板のX線透視画像を生成する制御処理部とを具備し、目標断面に対するX線源の方位として相反する関係にある一対の方位の組み合わせが1組以上生じるように、前記相対位置の調整を行って複数のX線透視画像を生成し、各X線透視画像を目標断面の投影範囲を基準に統合して目標断面の断層画像を生成するトモシンセシスによる画像再構成と、トモシンセシスより多くのX線透視画像を生成して、これらの画像を用いて目標断面のX線吸収係数分布を求めることによって断層画像を生成するX線CTによる画像再構成とを、切り替えて実行できるようにした検査装置を準備する。
【0014】
さらに、この方法では、検査対象の両面実装基板の構成を示すデータを、検査に先立ち制御処理部に入力し、データ入力後の制御処理部において、あらかじめ定めた撮影対象領域毎に、前記2種類の画像再構成のいずれを実行するかを入力データを用いて決定して、その決定結果を登録した後、検査対象の基板の各撮影対象領域に対し、それぞれ登録された画像再構成により断層画像を自動生成して検査を実行する。
【0015】
上記の制御処理部により行われる一撮影対象領域に対する画像再構成の内容を決定する処理では、この撮影対象領域に対しトモシンセシスによる画像再構成を実行すると仮定して、複数のX線透視画像を、画像生成時の目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、その組み合わせに係るX線透過画像を目標断面の投影範囲を基準に位置合わせしたときに撮影対象領域内の被検査部位の裏側の部品の投影範囲に重複する部分が生じるか否かを、前記入力データから求めた裏側の部品のサイズと、各画像生成時の目標断面に対するX線が撮影対象領域の裏側の基板面を通過する範囲の大きさとの関係に基づき判別する。そして、所定数の組み合わせについて裏側の部品の投影範囲に重複が生じるという判別結果が得られたときはX線CTによる画像再構成を実行する旨を決定し、投影範囲の重複が生じると判別された組み合わせが所定数に満たないときは、トモシンセシスによる画像再構成を実行する旨を決定する。
【0016】
上記方法の好ましい態様では、一撮影対象領域に対する画像再構成の内容を決定する処理において、仮定のトモシンセシスによる毎時の透視撮影を、目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、この組み合わせにつきX線源の方位の相反が生じている方向について、目標断面の所定位置に照射される各方位からのX線の照射角度と当該目標断面の高さとに基づき、撮像対象領域の裏側の基板面を通過するX線の通過範囲の大きさを求め、求められた大きさと入力データから求めた裏側の部品のサイズとを比較する。そして、所定数の組み合わせにおいて、X線の通過範囲より部品の方が大きくなる場合には裏側の部品の投影範囲の重複が生じると判別して、X線CTによる画像再構成を実行する旨を決定する。
【0017】
上記の方法によれば、検査に先立ち、裏側の部品に起因するノイズが顕著になる可能性が高い撮影対象領域に対しては、X線CTによる画像再構成を実行するように登録がなされ、それ以外の撮影対象領域に対しては、トモシンセシスによる画像再構成を実行するように、設定を行うことができる。よって検査の際には、設定されたデータに基づき、撮影対象領域毎に適切な画像生成処理を自動的に選択して実行するので、どの被検査部位についても、検査に支障のない断層画像を生成でき、検査の精度を確保することができる。また、裏側の部品によるノイズが顕著になるおそれのない被検査部位に対しては、トモシンセシスによる画像再構成が行われるので、検査の効率を向上することができる。
【0018】
またこの方法では、検査対象の両面実装基板の構成を示すデータ(基板の厚み、各部品の位置および大きさなど)を制御処理部に入力することによって、トモシンセシスによる検査が可能であるかどうかを、テスト撮影を行うことなく、簡単に判別することができる。
【0019】
なお、上記方法では、個々のはんだ電極をそれぞれ個別に撮影してもよいが、BGAを構成するはんだ電極など、微小なものを検査対象とする場合には、複数のはんだ電極を含む領域を1つの撮影対象領域としてもよい。この場合には、部品単位で撮影対象領域を定めることもできる。
【0020】
上記の方法が適用された基板検査装置は、それぞれ異なる高さ位置に配置されたX線源およびX線検出器と、これらの間で検査対象の基板を水平に支持する基板支持部と、検査対象の基板にはんだ電極を介して実装された電子部品が撮影されるように、基板に対するX線源およびX線検出器の相対位置を調整して複数回の透視撮影を実行し、生成された複数のX線透視画像からはんだ電極の断層画像を生成する制御処理部と、制御処理部が生成した断層画像を用いてはんだ電極の状態を検査する検査部とを具備する。
【0021】
制御処理部には、目標断面に対するX線源の方位として相反する関係にある一対の方位の組み合わせが1組以上生じるように、相対位置の調整を行って複数のX線透視画像を生成し、各X線透視画像を目標断面の投影範囲を基準に統合して目標断面の断層画像を生成するトモシンセシスによる画像再構成を実行する第1処理部と、トモシンセシスよりも多くのX線透視画像を生成して、これらの画像を用いて目標断面のX線吸収係数分布を求めることによって断層画像を生成するX線CTによる画像再構成を実行する第2処理部と、あらかじめ定めた撮影対象領域毎に、第1および第2のいずれの処理部による画像再構成を実行するかを決定して、その決定結果を示す情報を登録する登録手段と、登録された情報に基づき、撮影対象領域毎にその領域に対して決定した処理部に画像再構成処理を実行させる制御手段とが含まれる。
【0022】
上記の登録手段は、両面実装基板のはんだ電極が検査対象となるとき、その両面実装基板の構成を示すデータの入力を受け付けて、撮影対象領域毎に、前出の画像再構成の内容を決定する処理を実行する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、両面実装基板に実装された電子部品のはんだ電極を対象に、X線による断層画像を用いた検査を行う場合に、裏側の面に実装される部品に起因するノイズにより検査の精度を確保するのが困難な撮影対象領域に対しては、X線CTによる画像生成処理への切替を自動的に行って、高精度の断層画像を生成する一方で、このようなノイズが生じない撮影対象領域に対しては、トモシンセシスにより簡単かつ高速に断層画像を生成するようにしたので、検査の精度を確保しつつ、検査効率を向上することができる。また各撮影対象領域に適用する画像再構成の手法を、基板の構成データを用いて自動的に決定することができるので、ユーザに負担をかけることなく、短時間で設定を完了することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、この発明が適用されたX線利用の基板検査装置の概略構成を示す。
この基板検査装置は、外観検査が困難な箇所を対象に、X線による断層画像を生成し、生成された画像を用いて検査を行うもので、検査対象の基板1を支持する基板支持テーブル2、X線管3、フラットパネルディテクタ4(以下、「FPD4」と略す。)、CCDカメラ5、変位センサ6、および図2に示すコントローラ20などにより構成される。
【0025】
なお、図中の10は、具体的な検査対象の例としてのはんだ電極を示し、11は、はんだ電極10により基板1に接続される部品(以下、「BGA部品11」という。)を示す。図1では、便宜上、各はんだ電極10を誇張して描いているが、実際のはんだ電極10は微小なもので、BGA部品11の裏面に多数配備される。
【0026】
また、この実施例の基板1は、両面実装基板であって、各面とも、種々の部品が実装され、BGA部品11も、双方の面に実装される場合がある。したがって、下面側のBGA部品11のはんだ電極10に対する断層画像が生成される場合もあるが、この実施例では、便宜上、上面側のはんだ電極10を検査対象とする場合に限定して説明する。また、以下では、検査対象のBGA部品11が実装される面を表面といい、他方を裏面という。
【0027】
基板支持テーブル2は、基板1を、水平な姿勢にして支持する。なお。この支持は、基板裏面の部品が実装されていない端縁部に対して行われ、裏面の部品は、基板支持テーブル2の図示しない収容空間に収容される。X線管3は、円錐状のX線ビーム(コーンビーム)を出射するタイプのもので、基板支持テーブル2の上方に配備される。FPD4は、基板1を透過したX線を受けて2次元のX線透視画像を生成するもので、図示しない支持ホルダにより、通常は、検出面4Aが真上を向くように、水平な姿勢で支持されている。ただし、X線CT用の撮影を行う場合には、図中の一点鎖線で示すように、FPD4は、検出面4AがX線管3の方を向くように傾いた姿勢で支持される。
【0028】
基板支持テーブル2およびFPD4は、それぞれ図2に示すXYステージ8,9により、X軸方向(図1の左右方向とする。)およびY軸方向(図1の紙面に直交する方向とする。)に移動可能に支持される。一方、X線管3は、所定高さ位置に、X線の出射面を真下に向けて固定配備される。
【0029】
CCDカメラ5および変位センサ6は、FPD4より下方の所定位置に、それぞれ受光面を基板1に向けて配置される。CCDカメラ5は、基板1の下面の所定範囲を撮像する。変位センサ6は、レーザーダイオードやフォトダイオードが組み込まれた光学式のセンサであって、受光面から基板1の裏面までの距離(計測対象位置に部品がある場合には、その部品までの距離となる。)を計測する。CCDカメラ5により生成された画像は、基板1の位置決め処理に使用され、変位センサ6による検出信号は、目標断面の高さ位置の調整に使用される。
【0030】
上記のCCDカメラ5および変位センサ6は、上面が開口された収容部(図示せず。)内に配備されている。収容部の開口部は、通常はシャッタ7により閉じられており、カメラ5による撮像や変位センサ6による距離計測を実行するときのみ開放される。これによりX線透過撮影時に、CCDカメラ5や変位センサ6にX線の影響が及ぶのを防止することができる。
【0031】
なお、この実施例では、X線検出器としてFPD4を使用しているが、これに限らず、イメージインテンシファイヤ(II)やCCD等を使用してもよい。
【0032】
図2は、上記の基板検査装置の全体構成を示すブロック図である。
この基板検査装置のコントローラ20は、汎用のパーソナルコンピュータを利用して製作されるもので、CPUを含む制御部21、メモリ22、演算処理装置23、モニタ24、操作部25などを具備する。このコントローラ20には、図1に示したX線管3およびFPD4のほか、CCDカメラ5、基板1の移動用のXYステージ8、FPD4の移動用のXYステージ9、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)26などが接続される。
【0033】
PLC26は、制御部21からの指令に応じて、CCDカメラ5、変位センサ6、シャッタ7を駆動し、撮像や距離計測を行わせる。また、変位センサ6からの検出信号を取り込んで、これを距離データに換算し、制御部21に出力する。一方、CCDカメラ5からの画像信号は、PLC26を経由せずに、コントローラ20内の図示しない画像用インターフェースを介して制御部21に入力される。
【0034】
メモリ22は、ハードディスク等の大容量メモリであって、制御や検査に関するプログラム、検査対象の基板のCADデータ、および検査の実行に必要な各種設定データが格納される。また、検査に用いられた断層画像を保存するための画像データベースもメモリ22内に設けられる。
【0035】
演算処理装置23は、X線CTによる断層画像の再構成に係る演算を実行するためのもので、高性能のCPUを含む演算回路が搭載された基板として構成される。
【0036】
上記構成において、検査対象の基板1は、図示しない上流の搬送機構から基板支持テーブル2に搬入される。制御部21は、XYステージ8を用いてこの基板1を初期位置に合わせた後、基板1のあらかじめ定められた複数の検査領域に対する透視撮影を開始する。
【0037】
上記の基板1を初期位置に合わせる処理では、CCDカメラ5により基板1の一角部に形成された基準マークを撮像し、画像中の基準マークがあらかじめ定めた基準位置に合致するように、X,Yの各軸方向における基板1の位置を調整する。
【0038】
各検査領域に対する透視撮影の前にも、一旦、対象とする検査領域の中心がX線管3の光軸Lに合うように基板1を位置決めした後に、透視撮影に応じた位置に基板1を移動させる。この透視撮影前の位置合わせでも、CCDカメラ5により基板1の裏面の画像を生成し、この画像があらかじめ登録されたモデルの画像に合致するように、X,Yの各軸方向における基板1の位置を調整する。
【0039】
また制御部21は、上記の位置合わせが終了すると、透視撮影のための移動を開始する前に、変位センサ6により計測された距離データに基づき、あらかじめ定めた基準断面の高さを修正し、この修正に合わせて、透視撮影時のXYステージ8,9の移動量などの制御パラメータを調整する。検査すべき断面の高さは基板1やはんだ電極10等の厚みに応じて定められるが、基板の反りなどによって、この断面が本来の高さ位置からずれる可能性があるからである。
【0040】
なお、基準断面以外の各目標断面の高さは、それぞれ基準断面からの距離により表されるので、基準断面の高さが修正されることによって、すべての目標断面の高さを調整することができる。このように、検査領域毎に、基板1の位置合わせおよび基準断面の高さ調整を行ってから透視撮影を開始することにより、目的とする断層画像を精度良く生成することができる。
【0041】
この実施例でいう検査領域は、はんだ電極10を包含する仮想の3次元領域(部品11と基板1とに挟まれた領域)であり、透視撮影の対象とされる。実際のはんだ電極10は微小であるので、1つの検査領域には複数のはんだ電極10が含まれるが、この実施例では、はんだ電極10を誇張しているので、1つ1つのはんだ電極10に個別に検査領域が設定されるものとする。
【0042】
この実施例の基板検査装置では、X線CTによる画像再構成と、トモシンセシスによる画像再構成とを実行することが可能であって、検査領域毎にいずれか一方の画像再構成処理を実行するようにしている。
いずれの方法でも、高さの異なる複数の目標断面を設定して、X線源3およびFPD4の各中心点を結ぶ直線が検査領域を斜めに横切るように調整し、基板1に対するX線管3およびFPD4の関係を変更して複数回の透視撮影を行う。ただし、撮影回数、および画像再構成のための演算処理は、トモシンセシスとX線CTとでは、全く異なる。
【0043】
図3は、トモシンセシスを実行する場合の投影処理の具体例を示す。
この図は、X線源3、FPD4、および基準断面Tを真上から俯瞰したと想定して、三者間の関係の変化を表したものである。なお、基準断面Tとして、複数の目標断面の中から任意の断面を選択することができる。
【0044】
この実施例では、基準断面T内の一点O(この実施例では中心点とするが、これに限定されるものではない。)を基準点に設定し、X,Yの各軸方向において、それぞれX線管3の光軸Lに対する距離が等しい関係にある4点P1,P2,P3,P4に基準点Oが順に移動するように基板1の位置を変更する。また、これらの点P1,P2,P3,P4に基準点Oが合わせられたときに、この点Oが投影される位置(点Q1,Q2,Q3,Q4)にFPD4の中心点Rが置かれるように、基板1の移動に合わせてFPD4を移動させ、移動毎に透視撮影を行う。具体的には、基準点Oが点P1に移動したときには中心点Rは点Q1に移動し、基準点Oが点P2に移動したときには中心点Rは点Q2に移動し、基準点Oが点P3に移動したときには中心点Rは点Q3に移動し、基準点Oが点P4に移動したときには中心点Rは点Q4に移動する。
【0045】
この実施例のX線管3からは、円錐状のビームが出射されているので、各方位に対するX線の照射角度は均一になる。また、光軸Lに対する点P1〜P4の距離が等しいので、点Q1〜Q4の光軸Lに対する距離も等しくなる。
【0046】
なお、基板1やFPD4を位置決めする場所は、X,Y軸の正負が示す4方位に限定されるものではない。たとえば、上記の4方位のほかに、X,Yの各軸に対しそれぞれ45度傾いた方位をあわせた計8方位において、光軸Lに対する距離が等しい関係にある各点を、それぞれ基準点Oの位置決め点として設定し、これらの点に対応させて、FPD4の位置決め点を設定してもよい。
【0047】
また上記の例のように、光軸Lに対する基準点Oの距離が一定になるように基板1を移動させる場合には、基準点Oは、光軸Lを中心にした円の円周に沿って移動していると考えられるが、基準点Oの軌道は円軌道に限定されるものではない。たとえば基準点Oの位置が楕円または矩形状の軌道をもって変化するように、毎時の基板1の位置を定めてもよい。
【0048】
以下では、図3に示した方法で基板1およびFPD4を移動させることを前提に、基準断面Tの位置を、基準点Oが合わせられる点P1〜P4を用いて示し、FPD4の位置を点Q1〜Q4を用いて示すことにする。
図4では、基準断面Tが点P1の位置に置かれたときの投影状態と、点P2の位置に置かれたときの投影状態とを、対比させて示す。また各位置で生成されるX線透視画像A1,A2の模式図を、それぞれの位置に対応づけて示している。
【0049】
図4中、12は、基板1を挟んで検査領域に対向する位置に実装されている部品である(以下、「裏面部品12」という。)。この例では、説明を簡単にするために、基準断面T内にあるはんだ電極10の構成点、および裏面部品12の上面(基板1に接する面)について、それぞれFPD4の検出面4Aおよび各X線透視画像A1,A2における投影範囲を、傾斜方向が異なる斜線パターンにより示す。なお、対応関係を明確にするため、検出面4Aの投影範囲と画像A1,A2中の投影範囲には、それぞれ同一の符号(S1,U1、またはS2,U2)を付す。また、画像A1,A2の背景部分(各投影範囲の外側部分)は、一般には黒色で表されるが、この例では、各投影範囲を確認しやすいように、紙面の地の色(白色)とする。
【0050】
また以下では、S1,S2を「はんだ電極10の投影範囲」といい、U1,U2を「裏面部品12の投影範囲」というが、S1,S2は、あくまでも基準断面T内のはんだ部分の投影範囲であり、はんだ電極10全体の投影像を表すものではない。U1,U2も、裏面部品12の基板1に接する底面(図示上は上側の面となる。)の投影範囲であり、裏面部品12の全体の投影像を表すものではない。
【0051】
この実施例のX線管3からは、各方位に均一に広がる円錐状のビームが照射され、また基準断面Tの基準点Oが常にFPD4の中心点Rに投影されるように、基板1とFPD4との位置が調整されている。したがって、基板1が移動して基準点Oの位置が変わっても、この基準点Oを含む基準断面T内の各点は、常に検出面4Aの同一座標に投影される。これに対し、裏面部品12の構成点は、基準断面Tとは異なる高さにあるため、毎回異なる座標に投影される。よって、毎時の透視撮影におけるはんだ電極10の投影範囲S1,S2は同一になるが、裏面部品12の投影範囲U1,U2は、異なるものになる。
【0052】
基準断面Tが点P3の位置にあるときと、点P4の位置にあるときとの関係も、図4の例と同様になり、それぞれ図5中に符号A3,A4で示すようなX線透視画像が得られる。
【0053】
この実施例によるトモシンセシス方式の画像再構成処理では、基準断面Tを点P1,P2,P3,P4に位置合わせして生成した4枚のX線透視画像A1〜A4の各画素を、座標が対応する関係にあるもの毎に組み合わせ、これらの組み合わせ毎に、それぞれその組に属する4つの画素中で濃度が最も低い画素のデータ(すなわち4画素の中でX線透過率が一番高いことを示すデータ)の画像データを選択する。そして、各組に共通する座標に選択された画像データをあてはめることによって、基準断面Tの断層画像を生成する。
【0054】
さらに、基準断面T以外の目標断面については、その断面と基準断面Tとの距離に基づき、上記の画像A1〜A4が当該目標断面を基準断面とした場合の画像になるように、各画素の座標を変更する(すなわち、目標断面内の各点の投影点の座標が一致するように画像A1〜A4を補正する。)。そして、補正後の4枚の画像を用いて、基準断面Tの場合と同様に、座標が対応する関係にある画素の組み合わせ毎に、濃度が最も低い画素の画像データを選択する方法によって、目標断面の断層画像を生成する。
【0055】
なお、基準断面Tについても、必ずしもその断面T内の各点が同一座標に投影されるように基板1やFPD4の位置を定める必要はない。ただし、その場合には、基準断面Tについても、画像A1〜A4を上記と同様に補正する必要がある。
【0056】
つぎに図5〜7を用いて、断層画像の再構成の具体例と裏面部品12が及ぼす影響について説明する。なお、この例では、図3の方法により撮影された基準断面TのX線透視画像A1〜A4を用いた画像再構成を示すが、これらの画像を補正して再構成処理を行う場合にも、画像再構成に及ぼす裏面部品12の影響は、図5〜7に示すのと同様になる。
【0057】
図5〜7では、基準断面Tを点P1,P2,P3,P4に位置合わせして生成したX線透視画像A1,A2,A3,A4を、図3に示した4点P1,P2,P3,P4の位置関係に合わせて配置するとともに、これらの画像の中央に、各画像により再構成された断層画像Bを配置している。
【0058】
各画像A1〜A4中のS1〜S4は、はんだ電極10の投影範囲であり、U1〜U4は裏面部品12の投影範囲である。図4を用いて説明したように、基準断面Tにおけるはんだ電極10の構成点は、いずれのX線透視画像A1〜A4でもそれぞれ同一の座標に投影されるが、裏面部品12の構成点が投影される座標は、画像によって変動する。
【0059】
図5の例では、いずれの画像A1〜A4でも、裏面部品12は、はんだ電極10の投影範囲S1〜S4の外側(背景部分)に投影される。また、各画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4は、いずれも他の範囲に重複していない。
【0060】
したがって、対応関係にある4画素のうち濃度が最小の画素のデータを選択する方法によれば、画像間で一致するはんだ電極10の投影範囲S1〜S4については、いずれの画像のデータが選択されたとしても、はんだ電極10を表すデータが選択される。これに対し、背景部分については、いずれかの画像で部品12が投影されたために濃度が高くなった箇所があっても、他の部品12が投影されていない画像における同一箇所の濃度の方が低いため、部品12の投影状態を表すデータが選択されることはない。よって、断層画像Bには、はんだ電極10の画像Sが明瞭に現れるが、裏面部品12の画像が現れることはない。
【0061】
なお、図5では、断層画像B中の部品12の投影範囲U1〜U4に対応する部分を点線枠で示す。一般的な画像の平均化処理による画像再構成を行った場合には、これら点線枠の範囲に、うっすらとした画像が現れる可能性がある。
【0062】
図6は、裏面部品12の投影範囲U1〜U4が、図5の例より大きくなった場合のX線透視画像A1,A2,A3,A4、およびこれらの画像A1〜A4により再構成された断層画像Bを示す。
この例では、いずれの画像A1〜A4でも、はんだ電極10の投影範囲S1〜S4と裏面部品12の投影範囲U1〜U2との間に重なりが生じている。投影範囲が重なる部分では、他の部分より濃度が高くなるため、画像の白みが強くなる。しかし、各画像A1〜A4における重なり部分の出現範囲を比較すると、撮影時のX線管3の方位が直交する関係にある画像間には共通に含まれる箇所はあるものの、撮影時のX線管3の方位が相反する関係にある画像間に共通に含まれる箇所はない。したがって、画像A1〜A4の裏面部品12の投影範囲U1〜U4のすべてに共通する箇所は存在しないから、はんだ電極10の投影範囲S1〜S4については、常に裏面部品12の投影範囲に重なっていない画像のデータが選択される。また背景部分についても、図5の例と同様に、常に背景を表すデータが選択されるから、断層画像B中に裏面部品12による画像が現れることはない。
【0063】
図7は、裏面部品12の投影範囲U1〜U4がさらに大きくなった場合のX線透視画像A1,A2,A3,A4、およびこれらの画像A1〜A4により再構成された断層画像Bを示す。
【0064】
この例では、各X線透視画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4が、はんだ電極10の投影範囲S1〜S4の半分以上の範囲に重複し、その結果、画像の中心部分が裏面部品12の4つの投影範囲U1〜U4に共通に含まれている。投影範囲U1〜U4に共通に含まれる箇所では、裏面部品12による濃度が加味された画像データが選択されるため、再構成された断層画像Bの対応箇所に、周囲より濃度の高いノイズNが現れる。
【0065】
つぎに、X線CTによる画像再構成では、FPD4を、図1に一点鎖線で示したように傾けて、基板1およびFPD4の位置を種々に変化させる。位置が変化しても、FPD4およびX線管3の各中心点を結ぶ軸線は、目標断面を特定の基準点の位置で斜めに横切る状態に維持される。また、基板1、X線管3、およびFPD4の関係が、X線源3およびFPD4を固定して、基準点を軸に目標断面を所定の角度単位ずつ回転させた場合と同様に変化するように、基板1およびFPD4の位置を変更し、位置変更の都度、X線管3およびFPD4を駆動して透視撮影を行わせる。
【0066】
毎時の撮影により生成されたX線透視画像は、演算処理装置23に入力され、前出の特許文献1に開示されたのと同様の方法、すなわち各入力画像を、基板1の法線方向に直交する方向から透視を行った状態を表す画像に変換し、変換後の各画像を用いて、目標断面R内の複数点のX線吸収係数を算出する方法により、目標断面の断層画像が生成される。
【0067】
なお、X線CTでは、上記の手法による複数回の透視撮影および画像再構成を、目標断面毎に実行する必要がある。
【0068】
X線CTによる画像再構成では処理に時間がかかるが、複雑な演算によって、基準断面T以外の構成物を除去するので、高精度の断層画像を得ることができる。
これに対し、トモシンセシスによる画像再構成では、ノイズNが生じる場合があるが、X線CTに比べると、透視撮影の回数がはるかに少ないため、短時間で撮影を完了することができる。また画像再構成のための演算も簡単で、制御部21のみで実行することができる。さらに、複数の面の断層画像が必要な場合でも、いずれか1つの面を対象に透視撮影を行えば、その撮影により得たX線透視画像を他の高さの面のX線透視画像に変換し、その高さにおける断層画像を再構成することができる。
【0069】
このように、トモシンセシスによる画像再構成を行えば、処理時間を大幅に短縮することができるので、現場のユーザは、できるだけトモシンセシスによる画像再構成を行うことを希望している。しかし、図7に示したようなノイズNが生じる場合には、はんだ電極10に欠陥があるという誤判別が生じる可能性があるので、トモシンセシスによる検査をあきらめて、X線CTによる精度の高い断層画像を用いた検査を行う必要がある。
【0070】
そこで、この実施例では、検査前のティーチングにおいて、検査領域毎に、この領域に対しトモシンセシスによる画像再構成を行った場合に、裏面部品12に起因するノイズNが生じるかどうかを判別し、その判別結果に応じて、2種類の画像再構成方法のいずれかを実行するかを決定するようにしている。この判別処理は、制御部21により、基板1のCADデータを用いて自動的に実施される。以下、この判別処理の原理について、図8〜11を用いて説明する。
【0071】
図8は、図3,4に示した撮影処理を、基板1を静止させ、X線管3およびFPD4を相対的に移動させるものに置き換えて、基準断面T内の基準点Oに対する方位が相反する2方向からのX線と、基準断面Tおよび裏面部品12との関係を示したものである。図中の直線m1は、基準点Oを点P1に合わせて透視撮影を行ったとき(図4の左手の撮影状態)の点Oに対するX線の進行方向に相当し、直線m2は、基準点Oを点P2に合わせて透視撮影を行ったとき(図4の右手の撮影状態)の点Oに対するX線の進行方向に相当する。以下、直線m1に対応する方位からのX線による透過撮影を「第1撮影」といい、直線m2に対応する方位からのX線による透過撮影を「第2撮影」という。
【0072】
直線m1,m2が示す方向からのX線は、それぞれ基板1の裏面を、点n1,n2の位置で通過し、FPD4の検出面4Aの中心点Rに達する。したがって、点n1,n2は、基準点Oと同じ位置、すなわち点Rに投影される。
【0073】
図8において、基準点Oを通る鉛直方向の軸Gを基準に、基板1の裏面より下にある各点のFPD4の検出面4Aに対する投影状態を説明すると、点n1から点n2までの範囲(以下、「n1−n2間」という。)にある各点は、第1撮影、第2撮影のいずれにおいても、軸Gから見て、中心点Rより手前の位置に投影される。これに対し、点n1より左側に位置する点は、第1撮影において、中心点Rより外側に投影される。また、点n2間より右側に位置する点は、第2撮影において、中心点Rより外側に投影される。
【0074】
図8では、実装範囲がn1−n2間に含まれる裏面部品12を実線で示すとともに、実装範囲がn1−n2より大きい裏面部品12を、一点鎖線で示している。
【0075】
図9は、図8に示した2種類の部品12について、第1および第2の撮影における投影範囲U1,U2を、FPD4の断面内にそれぞれ方向の異なる斜線パターンとして示したものである。また、図中のa,bは、基板1に接する裏面部品12の底面の端縁の位置を示し、a1,b1は第1撮影における点a,bの投影位置を、a2,b2は第2撮影における点a,bの投影位置を、それぞれ示す。
【0076】
図9(1)は、図8に実線で示した裏面部品12の投影状態を示す。この部品12では、点a,bがともにn1−n2間にあるので、第1撮影、第2撮影とも、これらの点a,bは、軸Gから見て中心点Rより手前位置に投影される。したがって、この場合には、投影範囲U1,U2間に重複が生じることはない。
【0077】
図9(2)は、図8に一点鎖線で示した裏面部品12の投影状態を示す。この部品12では、点a,bがそれぞれn1−n2間より外側に位置するため、第1撮影では点aが、第2撮影では点bが、それぞれ中心点Rより遠くに投影される。したがって、いずれの投影範囲U1,U2も中心点Rを超えてしまうから、投影範囲U1,U2間に重複が生じる。
【0078】
すなわち、上記の例の場合には、裏面部品12の幅wがn1−n2間の距離より小さい場合には、第1撮影における裏面部品12の投影範囲U1と第2撮影における裏面部品12の投影範囲U2が重複することはないが、裏面部品12の幅wがn1−n2間の距離を超える場合には、投影範囲U1,U2に重複が生じる。
【0079】
ここで、図8に戻って、基準点Oに対する各方位からのX線の照射角度を、軸Gに対する直線m1,m2の角度θ1,θ2により表し、基準断面Tの高さをhとすると、n1−n2間の距離dfは、下記の(1)式により求められる。
df=h・(tanθ1+tanθ2) ・・・(1)
【0080】
上記において、角度θ1,θ2はあらかじめ定められており(この実施例では、θ1=θ2である。)、基準断面Tの高さhも、目標断面の設定において定められる。したがって、これらの値を(1)式にあてはめることにより、n1−n2間の距離dfを求めることができる。さらに、裏面部品12の幅wを、たとえば基板1のCADデータから求め、そのwの値をdfと比較すれば、この部品12の投影範囲U1,U2が重複するかどうかを判別することができる。
【0081】
なお、裏面部品12が直方体状である場合には、底面以外の各断面は、底面の投影範囲よりも手前側(X線管3に近い側)にずれた範囲に投影されるので、基板1に接する部品12の底面の投影範囲U1,U2に重複が生じていなければ、その他の断面の投影範囲に重複が生じることもない。
【0082】
ただし、裏面部品12の幅wがn1−n2間の距離dfより小さい場合でも、常に図8の例のように、部品12の底面全体がn1−n2間に含まれるように位置するとは限らない。この点に鑑み、裏面部品12の底面の一方の端部はn1−n2間にあるが、他端はn1−n2間の外にある場合にも、上記の部品12の幅wと距離dfとの比較による判別が可能であるかどうかについて、検討する必要がある。
【0083】
図10は、上記の検討の結果を示す図である。この図では、図8中に実線で示した部品12が、右方向に距離d1だけずれたものとして、直線m1に対応する方位からのX線による第1撮影で生成されたX線透視画像A1と、直線m2に対応する方位からのX線による第2撮影で生成されたX線透視画像A2とを示している。この場合、各画像A1,A2における裏面部品12の投影範囲U1,U2は、部品12が図8の位置にある場合の投影範囲U1´,U2´(一点鎖線で示す。)に対して、それぞれ一定距離d2だけ右方向にずれる。
このように、n1−n2に対する部品12の位置がずれても、各画像A1,A2における部品12の投影範囲U1,U2は、同じ方向に、実際の部品のずれに応じた一定量d2ずつずれるだけである。したがって、投影範囲U1´,U2´に重複が生じていないならば、投影範囲U1,U2に重複が生じることもない。
【0084】
したがって、裏面部品12の位置にかかわらず、前出の(1)式により求めたn1−n2間の距離dfと裏面部品12の幅wとを比較することによって、第1撮影および第2撮影における裏面部品12の投影範囲U1,U2に重複が生じるかどうかを容易に判別することができる。
【0085】
さらに基準断面Tを点P3に合わせ、FPD4を点Q3に合わせた状態での透視撮影(以下、「第3撮影」という。)と、基準断面Tを点P4に合わせ、FPD4を点Q3に合わせた状態での透視撮影(以下、「第4撮影」という。)についても、第1撮影および第2撮影の組み合わせにつき実施したのと同様の方法によって、裏面部品12の投影範囲U3,U4に重複が生じるかどうかを判別することができる。
【0086】
先の図5〜7に示したように、この実施例のトモシンセシスによる画像構成処理では、各透視撮影を、基準点Oに対するX線の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせた場合(すなわち第1撮影と第2撮影とを組み合わせ、第3撮影と第4撮影とを組み合わせる。)に、少なくともいずれか一方の組み合わせで裏面部品12の投影範囲に重複が生じていなければ、ノイズNは発生しない。
【0087】
したがって、組み合わせ毎に、前出の裏面部品12の幅wと距離dfとを比較した結果、少なくとも一方の組み合わせにおいてw<dfとなれば、4枚のX線透視画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4のすべての間に重複箇所が生じることはなく、ノイズNは発生しない。よって、このような関係が成立する検査領域に対しては、トモシンセシスによる画像再構成を適用することができる。
【0088】
一方、いずれの組み合わせにおいても、w>dfとなる場合には、毎時の撮影における裏面部品12の投影範囲U1〜U4には、図7の例のような重複が生じ、ノイズNが発生する。したがって、このような関係が成立する検査領域に対しては、X線CTによる画像再構成を適用する必要がある。
【0089】
透視撮影の回数が増えた場合も同様に、X線源の方位が対向する関係にある複数の撮影の組毎に、その組み合わせにつきX線源の方位の相反が生じている方向について、各方位から基準点Oに対するX線が基板1の裏面を通過する位置n1,n2間の距離と部品の幅wとを比較する。この場合にも、すべての組み合わせにおいて裏面部品12の投影範囲に重複が生じない限り、ノイズNが生じることはない。よって、撮影回数に関わらず、撮影時の目標断面に対するX線の方位が対向する関係にある撮影の組み合わせ毎に、上記のwとdfとを比較することによって、トモシンセシスによる画像再構成が可能であるかどうかを判断することができる。
【0090】
なお、図8〜10では、説明の便宜のために、はんだボール10の中心を通る水平面を基準断面Tとして、裏面部品12によるノイズの有無を判別するための原理を説明したが、実際の判別処理では、複数の目標断面のうち最も基板1に近い位置にある断面(すなわちhの値が最も小さい断面)を対象に(1)式を実行する必要がある。(1)式によれば、hの値が小さいほど距離dfも小さくなるから、最も低い断面を演算の対象とすることにより、dfの最小値を求めることができる。裏面部品の幅wがこの最小のdfよりも小さい場合には、いずれの断面についても、裏面部品の投影範囲の重複によるノイズは生じない。反対に、幅wが最小のdf以上であれば、いずれの断面でも、裏面部品の投影範囲の重複によるノイズが生じることになる。
この距離dfの算出に用いる断面は、実際の撮影における基準断面Tとしてもよいが、算出に用いた断面以外の断面を基準断面Tとしても、特段の問題は生じない。
【0091】
つぎに、図8〜10の例では、基準断面Tに対応する裏面部品12を1つとしたが、裏面側の部品配置によっては、図11に示すように、方位が相反する2方向からのX線が透過する範囲に、複数の部品12が存在する可能性もある。このような場合も、部品12間の距離Dが所定のしきい値以内であれば、これらの部品を1つとみなし、各部品の幅および距離Dを加算した値をwとして、上記の判別処理を実行してもよい。
【0092】
また、上記の判別では、裏面部品12を直方体であると想定しているが、部品の底面より上面の方が面積が広くなるなど、裏面部品12の形状が直方体以外のものになる場合には、この部品に外接する直方体を想定し、その直方体の幅をwとするのが望ましい。また、X,Y以外の方向でX線源の方位の相反が生じている場合には、その方向に平行な辺を持つ直方体を部品に外接させて、幅wを求めるとよい。
【0093】
また上記の例では、基板支持ステージ2に支持された基板1の上面側のはんだ電極10を検査する場合について検討したが、基板1の下面側のはんだ電極10を検査する場合にも同様に、基板1に最も近い断面を対象に、その断面内の基準点に対する方位が相反する撮影の組み合わせ毎に、上記(1)式により求めた距離dfと上面側の部品の幅とを比較することによって、当該部品によるノイズが生じるか否かを判別することができる。ただし、この場合の(1)式では、基板の上面から演算対象の断面までの距離をhとする必要がある。
【0094】
図12は、ティーチングの手順を示す。この実施例のティーチングでは、ユーザが簡単な指示を行うことにより、自動的に、はんだ電極10の検査の対象とする検査領域の割り付けと、断層画像の再構成の手法とが設定される。
【0095】
まずステップ1では、検査対象の基板1のCADデータを入力する。ステップ2では、基板1およびはんだ電極10の厚みに基づき、はんだ電極10の観測に適した目標断面の数および基準断面の高さを設定する。なお、目標断面間の間隔は固定されているものとするが、この間隔は適宜変更可能である。
【0096】
この実施例では、検査領域の面積として、FPD4に投影可能な広さに相当する一定の値を設定しており、ステップ3では、CADデータからBGA部品11の情報を抽出し、この情報と上記の一定の面積とを用いて、検査領域の割り付けを行う。なお、BGA部品11の大きさによっては、1つの部品に複数の検査領域が割り付けられる。
この後は、設定された検査領域に順に着目し、領域毎にステップ4〜11を実行する。
【0097】
まずステップ4では、ステップ2で設定した目標断面のうちの基板1に最も近い断面(最も低い位置にあるもの)を演算の対象に設定する。ステップ5では、この演算対象の断面の高さhと、X線の照射角度とを用いて、前出のn1−n2間の距離dfを算出し、算出されたdfの値を部品の幅wに対する判定基準値として設定する。なお、高さhは、基準断面Tの高さ、目標断面間の間隔、および基板1の厚みにより割り出すことができる。
【0098】
また、この例でも、図3に示した方法に基づき4回の撮影を行うものとして、X線管3の方位が相反する関係にある撮影の組み合わせ(第1撮影と第2撮影、および第3撮影と第4撮影)毎に、判定基準値dfを求める。
【0099】
ステップ6では、着目中の検査領域に対し、本体全体または本体の一部が基板1を挟んで対向する関係にある部品をCADデータに基づき特定し、その部品について、各撮影の組み合わせに対応する方向(X方向およびY方向)毎に、部品幅wを読み出す。なお、部品の形状等の問題から、部品に外接する直方体を設定する場合には、CADデータが示す部品の大きさや実装方向などに基づき、wの値を算出する必要がある。
【0100】
ステップ7では、ステップ5で求めた判定基準値dfとステップ6で特定した部品12の幅wとを比較することにより、各方位からのX線による裏面部品12の投影範囲U1〜U4に重複が生じるかどうかを判別する。具体的には、撮影時のX線管3の方位が相反する関係にある撮影の組み合わせ、すなわち第1撮影および第2撮影の組み合わせと、第3撮影および第4撮影の組み合わせとについて、それぞれ部品の幅wとdfとの大小関係をチェックし、少なくともいずれか一方の組み合わせでw<dfとなった場合には、投影範囲U1〜U4間に重複は生じないと判断する。一方、いずれの組み合わせでも、w≧dfとなった場合には、投影範囲U1〜U4間に重複が生じると判断する。
【0101】
上記の処理において、4つの投影範囲U1〜U4に重複部分があると判断された場合(ステップ8が「YES」の場合)には、着目中の検査領域に対しX線CTを実行するように決定する(ステップ9)。他方、各投影範囲U1〜U4間に重複が生じないと判断された場合(ステップ8が「NO」の場合)には、着目中の検査領域に対しトモシンセシスを実行するように決定する(ステップ10)。
【0102】
以下、同様に、ステップ3で割り付けられた検査領域毎に、各画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4間に重複が生じるかどうかを判断し、その結果に応じて、画像再構成の方法を決定する。ここで決定された方法は、検査領域の位置や大きさ等の情報に対応づけられてメモリ22に登録される。
【0103】
すべての検査領域に対する処理が終了すると、ステップ11が「YES」となり、ティーチングを終了する。
【0104】
この後、検査モードに移行すると、検査対象の基板1が基板支持テーブル2に搬入され、初期の位置決めが行われる都度、上記の手順により登録された情報に基づき、各検査領域に対する透視撮影や断層画像の再構成が行われる。この場合には、たとえば、まずトモシンセシス方式の画像再構成を行うようにして、対象となる検査領域を順に処理した後に、X線CT方式の画像再構成に切り替えて、残りの検査領域に対する処理を実行することで、処理の効率化をはかることができる。
【0105】
なお、上記の実施例では、裏面部品12の幅wをCADデータから導出したが、この種のデータを取得する方法は、CADデータからの読込に限定されるものではない。たとえば、検査の前に、CCDカメラ5により基板1を撮像し、ユーザが生成された画像を参照しながら、部品の位置や大きさを手入力で設定する場合には、その入力データを用いて部品の幅wを特定してもよい。たとえば、部品毎にその部品を包含する大きさのウィンドウを設定する場合であれば、このウィンドウの設定データが示すウィンドウ枠の幅を、部品幅wとして使用してもよい。
【0106】
このように、上記の実施例では、トモシンセシス方式の画像再構成において、対応関係にある画素のうち最も濃度の低い画素のデータを選択するようにしたので、4枚のX線透視画像A1〜A4における裏面部品12の投影範囲U1〜U4に重複が生じることを、X線CTを実行する条件とした。しかし、一般的なトモシンセシスの手法に従って、各画像A1〜A4を平均化する場合には、第1撮影と第2撮影との組み合わせ、および第3撮影と第4撮影との組み合わせのいずれか一方において、裏面部品12の投影範囲が重複する状態(w≧dfとなる状態)になると判断したときに、X線CTを実行するようにしてもよい。
【0107】
また、撮影の回数を4回より多くする場合にも、基準断面Tに対する方位が相反する関係にある撮影の組み合わせ毎に、裏面部品12の投影範囲の重複の有無を判別し、所定数以上の組み合わせにおいて重複するという判断がなされた場合に、X線CTを実行するようにしてもよい。また、裏面部品12の投影範囲が重複すると判断された組み合わせの数が上記の所定数に満たなくとも、ある程度の値に達している場合には、警報を出力するなどして、X線CT、トモシンセシスのいずれを実行するかをユーザに選択させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】X線断層撮影による基板検査装置の構成例を示す説明図である。
【図2】上記の基板検査装置のブロック図である。
【図3】トモシンセシスによる透視撮影を行う場合のX線管、FPD、目標断面の位置関係を示す説明図である。
【図4】目標断面に対する方位が相反する関係にある透視撮影による投影状態と、生成されるX線透視画像とを、対応づけて示す説明図である。
【図5】4回の撮影により生成されたX線透視画像と再構成された断層画像との関係を示す説明図である。
【図6】4回の撮影により生成されたX線透視画像と再構成された断層画像との関係を示す説明図である。
【図7】4回の撮影により生成されたX線透視画像と再構成された断層画像との関係を示す説明図である。
【図8】第1撮影および第2撮影におけるX線の通過位置と部品の端縁位置との関係を示す説明図である。
【図9】図8に示した2種類の部品を対象に、第1撮像および第2撮像における投影範囲の関係を示す説明図である。
【図10】裏面部品が図8の状態よりずれた場合の部品の投影範囲の変化を示す説明図である。
【図11】X線が透過する範囲に複数の部品が位置する例を示す説明図である。
【図12】ティーチングの手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0109】
1 基板
3 X線管
4 フラットパネルディテクタ(FPD)
8,9 XYステージ
10 はんだ電極
12 裏面部品
20 制御装置
21 制御部
22 メモリ
T 目標断面
O 基準断面Tの中心点
R FPD4の中心点
U1,U2,U3,U4 裏面部品12の投影範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面実装基板を対象に、この基板に実装される電子部品と基板側電極とを接続するはんだ電極の断層画像をX線を用いて生成し、この断層画像を用いて前記はんだ電極の状態を検査する方法であって、
それぞれ異なる高さ位置に配置されたX線源およびX線検出器と、これらの間で検査対象の基板を水平に支持する基板支持部と、検査対象の基板に対するX線源およびX線検出器の相対位置を調整して基板のX線透視画像を生成する制御処理部とを具備し、目標断面に対するX線源の方位として相反する関係にある一対の方位の組み合わせが1組以上生じるように、前記相対位置の調整を行って複数のX線透視画像を生成し、各X線透視画像を前記目標断面の投影範囲を基準に統合して目標断面の断層画像を生成するトモシンセシスによる画像再構成と、前記トモシンセシスよりも多くのX線透視画像を生成して、これらの画像を用いて前記目標断面のX線吸収係数分布を求めることによって断層画像を生成するX線CTによる画像再構成とを、切り替えて実行できるようにした検査装置を準備し、
検査対象の両面実装基板の構成を示すデータを、検査に先立ち前記制御処理部に入力し、
前記データ入力後の制御処理部において、あらかじめ定めた撮影対象領域毎に、前記2種類の画像再構成のいずれを実行するかを前記入力データを用いて決定して、その決定結果を登録した後、検査対象の基板の各撮影対象領域に対し、それぞれ前記登録された画像再構成により断層画像を自動生成して検査を実行し、
一撮影対象領域に対する画像再構成の内容を決定する処理では、
この撮影対象領域に対し前記トモシンセシスによる画像再構成を実行すると仮定して、前記複数のX線透視画像を、画像生成時の目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、その組み合わせに係るX線透視画像を前記目標断面の投影範囲を基準に位置合わせしたときに前記撮影対象領域内の被検査部位の裏側の部品の投影範囲に重複する部分が生じるか否かを、前記入力データから求めた裏側の部品のサイズと、各画像生成時の目標断面に対するX線が前記撮像対象領域の裏側の基板面を通過する範囲の大きさとの関係に基づき判別し、所定数の組み合わせについて前記投影範囲の重複が生じるという判別結果が得られたときは前記X線CTによる画像再構成を実行する旨を決定し、前記投影範囲の重複が生じるという判別結果が得られた組み合わせが所定数に満たないときは、前記トモシンセシスによる画像再構成を実行する旨を決定する、
ことを特徴とするX線断層画像によるはんだ電極の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法であって、
前記一撮影対象領域に対する画像再構成の内容を決定する処理において、
前記仮定のトモシンセシスによる毎時の透視撮影を、目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、この組み合わせにつき前記X線源の方位の相反が生じている方向について、前記目標断面の所定位置に照射される各方位からのX線の照射角度と当該目標断面の高さとに基づき、前記撮像対象領域の裏側の基板面に対するX線の通過範囲の大きさを求め、求められた大きさと前記入力データから求めた裏側の部品のサイズとを比較し、
所定数の組み合わせにおいて、X線の通過範囲より部品の方が大きくなる場合には前記裏側の部品の投影範囲の重複が生じると判別して、X線CTによる画像再構成を実行する旨を決定する、X線断層画像によるはんだ電極の検査方法。
【請求項3】
それぞれ異なる高さ位置に配置されたX線源およびX線検出器と、これらの間で検査対象の基板を水平に支持する基板支持部と、検査対象の基板にはんだ電極を介して実装された電子部品が撮影されるように、前記基板に対するX線源およびX線検出器の相対位置を調整して複数回の透視撮影を実行し、生成された複数のX線透視画像から前記はんだ電極の断層画像を生成する制御処理部と、前記制御処理部が生成した断層画像を用いて前記はんだ電極の状態を検査する検査部とを具備し、
前記制御処理部には、目標断面に対するX線源の方位として相反する関係にある一対の方位の組み合わせが1組以上生じるように、前記相対位置の調整を行って複数のX線透視画像を生成し、各X線透視画像を前記目標断面の投影範囲を基準に統合して目標断面の断層画像を生成するトモシンセシスによる画像再構成を実行する第1処理部と、前記トモシンセシスよりも多くのX線透視画像を生成して、これらの画像を用いて前記目標断面のX線吸収係数分布を求めることによって断層画像を生成するX線CTによる画像再構成を実行する第2処理部と、あらかじめ定めた撮影対象領域毎に、第1および第2のいずれの処理部による画像再構成を実行するかを決定して、その決定結果を示す情報を登録する登録手段と、前記登録手段により登録された情報に基づき、撮影対象領域毎にその領域に対して決定した処理部に画像再構成処理を実行させる制御手段とが含まれており、
前記登録手段は、両面実装基板のはんだ電極が検査対象となるとき、その両面実装基板の構成を示すデータの入力を受け付けて、撮影対象領域毎に、この撮影対象領域に対し前記トモシンセシスによる画像再構成を実行すると仮定して、前記複数のX線透視画像を画像生成時の目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、その組み合わせに係るX線透視画像を前記目標断面の投影範囲を基準に位置合わせしたときに前記撮影対象領域の裏側の部品の投影範囲に重複する部分が生じるか否かを、前記入力データから求めた裏側の部品のサイズと、各画像生成時の目標断面に対するX線が前記被検査部位の裏側の基板面を通過する範囲の大きさとの関係に基づき判別し、所定数の組み合わせについて前記投影範囲の重複が生じるという判別結果が得られたときは前記X線CTによる画像再構成を実行する旨を決定し、前記投影範囲の重複が生じるという判別結果が得られた組み合わせが所定数に満たないときは、前記トモシンセシスによる画像再構成を実行する旨を決定する、基板検査装置。
【請求項1】
両面実装基板を対象に、この基板に実装される電子部品と基板側電極とを接続するはんだ電極の断層画像をX線を用いて生成し、この断層画像を用いて前記はんだ電極の状態を検査する方法であって、
それぞれ異なる高さ位置に配置されたX線源およびX線検出器と、これらの間で検査対象の基板を水平に支持する基板支持部と、検査対象の基板に対するX線源およびX線検出器の相対位置を調整して基板のX線透視画像を生成する制御処理部とを具備し、目標断面に対するX線源の方位として相反する関係にある一対の方位の組み合わせが1組以上生じるように、前記相対位置の調整を行って複数のX線透視画像を生成し、各X線透視画像を前記目標断面の投影範囲を基準に統合して目標断面の断層画像を生成するトモシンセシスによる画像再構成と、前記トモシンセシスよりも多くのX線透視画像を生成して、これらの画像を用いて前記目標断面のX線吸収係数分布を求めることによって断層画像を生成するX線CTによる画像再構成とを、切り替えて実行できるようにした検査装置を準備し、
検査対象の両面実装基板の構成を示すデータを、検査に先立ち前記制御処理部に入力し、
前記データ入力後の制御処理部において、あらかじめ定めた撮影対象領域毎に、前記2種類の画像再構成のいずれを実行するかを前記入力データを用いて決定して、その決定結果を登録した後、検査対象の基板の各撮影対象領域に対し、それぞれ前記登録された画像再構成により断層画像を自動生成して検査を実行し、
一撮影対象領域に対する画像再構成の内容を決定する処理では、
この撮影対象領域に対し前記トモシンセシスによる画像再構成を実行すると仮定して、前記複数のX線透視画像を、画像生成時の目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、その組み合わせに係るX線透視画像を前記目標断面の投影範囲を基準に位置合わせしたときに前記撮影対象領域内の被検査部位の裏側の部品の投影範囲に重複する部分が生じるか否かを、前記入力データから求めた裏側の部品のサイズと、各画像生成時の目標断面に対するX線が前記撮像対象領域の裏側の基板面を通過する範囲の大きさとの関係に基づき判別し、所定数の組み合わせについて前記投影範囲の重複が生じるという判別結果が得られたときは前記X線CTによる画像再構成を実行する旨を決定し、前記投影範囲の重複が生じるという判別結果が得られた組み合わせが所定数に満たないときは、前記トモシンセシスによる画像再構成を実行する旨を決定する、
ことを特徴とするX線断層画像によるはんだ電極の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法であって、
前記一撮影対象領域に対する画像再構成の内容を決定する処理において、
前記仮定のトモシンセシスによる毎時の透視撮影を、目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、この組み合わせにつき前記X線源の方位の相反が生じている方向について、前記目標断面の所定位置に照射される各方位からのX線の照射角度と当該目標断面の高さとに基づき、前記撮像対象領域の裏側の基板面に対するX線の通過範囲の大きさを求め、求められた大きさと前記入力データから求めた裏側の部品のサイズとを比較し、
所定数の組み合わせにおいて、X線の通過範囲より部品の方が大きくなる場合には前記裏側の部品の投影範囲の重複が生じると判別して、X線CTによる画像再構成を実行する旨を決定する、X線断層画像によるはんだ電極の検査方法。
【請求項3】
それぞれ異なる高さ位置に配置されたX線源およびX線検出器と、これらの間で検査対象の基板を水平に支持する基板支持部と、検査対象の基板にはんだ電極を介して実装された電子部品が撮影されるように、前記基板に対するX線源およびX線検出器の相対位置を調整して複数回の透視撮影を実行し、生成された複数のX線透視画像から前記はんだ電極の断層画像を生成する制御処理部と、前記制御処理部が生成した断層画像を用いて前記はんだ電極の状態を検査する検査部とを具備し、
前記制御処理部には、目標断面に対するX線源の方位として相反する関係にある一対の方位の組み合わせが1組以上生じるように、前記相対位置の調整を行って複数のX線透視画像を生成し、各X線透視画像を前記目標断面の投影範囲を基準に統合して目標断面の断層画像を生成するトモシンセシスによる画像再構成を実行する第1処理部と、前記トモシンセシスよりも多くのX線透視画像を生成して、これらの画像を用いて前記目標断面のX線吸収係数分布を求めることによって断層画像を生成するX線CTによる画像再構成を実行する第2処理部と、あらかじめ定めた撮影対象領域毎に、第1および第2のいずれの処理部による画像再構成を実行するかを決定して、その決定結果を示す情報を登録する登録手段と、前記登録手段により登録された情報に基づき、撮影対象領域毎にその領域に対して決定した処理部に画像再構成処理を実行させる制御手段とが含まれており、
前記登録手段は、両面実装基板のはんだ電極が検査対象となるとき、その両面実装基板の構成を示すデータの入力を受け付けて、撮影対象領域毎に、この撮影対象領域に対し前記トモシンセシスによる画像再構成を実行すると仮定して、前記複数のX線透視画像を画像生成時の目標断面に対するX線源の方位が相反する関係にあるもの毎に組み合わせ、組み合わせ毎に、その組み合わせに係るX線透視画像を前記目標断面の投影範囲を基準に位置合わせしたときに前記撮影対象領域の裏側の部品の投影範囲に重複する部分が生じるか否かを、前記入力データから求めた裏側の部品のサイズと、各画像生成時の目標断面に対するX線が前記被検査部位の裏側の基板面を通過する範囲の大きさとの関係に基づき判別し、所定数の組み合わせについて前記投影範囲の重複が生じるという判別結果が得られたときは前記X線CTによる画像再構成を実行する旨を決定し、前記投影範囲の重複が生じるという判別結果が得られた組み合わせが所定数に満たないときは、前記トモシンセシスによる画像再構成を実行する旨を決定する、基板検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−115462(P2009−115462A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285358(P2007−285358)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]