説明

X線検出器

【課題】 被検者に不快感を与えることなく可搬性を向上させる。
【解決手段】 電子カセッテ11は第1、第2の筐体21、22を有し、これらの上下面は平坦面とする。筐体21、22は第1、第2の筐体本体23、24と、これらの筐体本体23、24の開口を塞ぐ第1、第2の蓋体25、26とから構成する。第1の筐体21の第1の蓋体25はX線を透過させる材料から形成し、第2の筐体22は金属製とする。筐体本体23、24の対向面23a、24aには、相互に嵌脱可能な電気コネクタ27、28をそれぞれ取り付ける。筐体本体23、24の側面23b、24bには相互に締結される締結部29、30をそれぞれ設ける。第2の筐体本体24の端面24cの近傍には把持用筒部31を形成し、第2の蓋体26には把持用筒部31に連通する把持用孔部32を形成し、中心線C−Cはこれらの中心を通り、更に電子カセッテ11の重心G又はその近傍を通るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部に二次元状に配列された光電変換素子を有するカセッテ型の放射線画像撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線写真システムは工業用の非破壊検査や医療診断の場で広く利用されており、放射線発生手段から放射線を被写体に照射し、被写体を透過した放射線の強度分布を放射線検出手段で検出して、被写体の放射線画像を得ている。このシステムは感光性フィルムと蛍光体を組み合わせて撮影する方法、所謂フィルム/スクリーン方法を利用している。このフィルム/スクリーン方法では、放射線を照射した際に発光する希土類の蛍光体をシート状にして、感光性フィルムの両面に密着保持し、被写体を透過した放射線を蛍光体で可視光に変換して、その可視光を感光性フィルムで捉え、感光性フィルム上に形成した潜像を化学処理で現像して可視化している。
【0003】
近年のデジタル技術の進歩に伴い、放射線画像を電気信号に変換する方法を利用した放射線画像記録再生システムが提案されている(特許文献1,2参照)。このシステムは放射線画像を電気信号に変換してその電気信号を画像処理し、可視画像としてCRT等に再生して高画質の放射線画像を得ている。そして、放射線画像を電気信号に変換する際には、被写体を透過した放射線の強度分布を一旦蓄積性蛍光体の中に潜像として蓄積し、その後に蛍光体にレーザー光等の励起光を照射することによる生ずる潜像に対応した蛍光を光電的に読み取り、可視像として出力している。
【0004】
また、半導体プロセス技術の進歩に伴い、半導体センサを使用した放射線画像撮影システムが開発されている。このシステムは従来の感光性フィルムを使用する放射線写真システムと比較して極めて広いダイナミックレンジを有しており、放射線の露光量の変動に影響され難い放射線画像を得ることができるという利的な利点を有している。また、このシステムは従来の感光性フィルムを使用するシステムのような化学処理を必要としないので、出力画像を即時的に得ることができるという利点も有している。
【0005】
このような半導体センサを使用した放射線画像撮影システムは、放射線を被写体に照射する放射線発生手段、被写体を透過した放射線を検出する放射線検出手段、この放射線検出手段からの画像信号をデジタル処理する画像処理手段、放射線画像を表示する表示手段等から構成されている。放射線検出手段は二次元の格子状に配列された複数の光電変換素子から構成され、放射線発生手段と共に撮影室に定置されている。
【0006】
現在では、被写体のより広範囲の部位を迅速に撮影するため、放射線検出手段として薄型軽量で可搬性を有する放射線画像撮影装置、所謂電子カセッテが開発されている。例えば図11に示すように、電子カセッテ1の筐体2の内部には、放射線を可視光に変換する蛍光体3と、格子状に配列され可視光を電気信号に変換する光電変換素子4と、この光電変換素子4を上面に形成した基板5と、この基板5を支持する基台6と、電子部品7aを備えて電気信号を処理する回路基板7と、光電変換素子4と回路基板7を電気的に接続する配線8とが配置されている。
【0007】
この電子カセッテ1を使用する際には、検者は被検者の撮影部位に応じて電子カセッテ1の設置の仕方を変化させている。例えば、被検者の四肢を撮影する場合には、電子カセッテ1を床等に水平に設置して、その上面に被検者の撮影部位を載せている。また、被検者Sの肩関節の軸位像を撮影する場合には、図12に示すように被検者Sに脇の下に電子カセッテ1を抱え込ませ、放射線Rを対向側(上方)から照射している。
【0008】
次に、図15を用いて、別の従来例の電子カセッテの構成を説明する。図15は従来例の電子カセッテの側面断面図であり、この電子カセッテ400は、X線を可視光に変換する蛍光体451a、この可視光を電気信号に変換する格子状に配列された複数の光電変換素子451b及びこの光電変換素子をその上に形成した基板451cから構成される撮像素子451と,基板451cを支持する基台452と,光電変換された電気信号を処理する電子部品453aを搭載した回路基板453と、光電変換素子451bと回路基板453とを電気的に接続する配線454と、光電変換素子451b及び回路基板453に電源を供給するための電源回路460及び電源用配線461と、これらを収納する筐体55と、等から構成されている。尚、電源回路460は具体的には例えば、バッテリとDC/DC電源回路との組合せ、あるいは図示しない電源ケーブルで外部から所定電圧を供給されて各種電圧を生成するDC/DC電源、等から構成される。
【0009】
このような電子カセッテは従来の感光性フィルム内蔵のカセッテに比較すると、重量が大きくなると共に、誤って落下させた場合破壊される可能性がある。そこで、落下させることを減らす等の目的から把手をつけることが考えられる。
【0010】
カセッテに把手を付けた従来技術として、蓄積性蛍光体パネルを内包するカセッテに把手をつけた例が開示されている(特許文献3参照)。ここでは、蓄積性蛍光パネルを取り出す辺の反対側に把手を設け、比較的力の弱い者でもカセッテの運搬を容易とすることを目的としている。
【0011】
また、X線照射ポジションに電子カセットを手で動かしやすいように、ハンドル(把手)が取り付けられた電子カセッテが開示される(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭55−12429号公報
【特許文献2】特開昭56−11395号公報
【特許文献3】特開平11−338079号公報
【特許文献4】特開平06−342099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のように、検者は電子カセッテ1を床等に水平に配置したり、被検者に脇の下に抱え込ませたりするので、電子カセッテ1には高い可搬性が必要となっている。そこで、電子カセッテ1の可搬性を向上させるためには、上述の公知技術の他、図13に示すように筐体2の両側面に形成した孔2aに、アーム状の把手9を回動自在に取り付けた鞄状の電子カセッテ1’や、図14に示すように筐体2の一端面に枠状の把手10を一体に設けた電子カセッテ1”が考えられる。
【0014】
しかしながら、このような電子カセッテ1’、1”は床等に水平に設置する場合には問題はないが、例えば図12に示すように電子カセッテ1’、1”を被検者Sに脇の下に抱え込ませる場合等、被検者の特定部位を特定の方向から撮影する際には、把手9、10が被検者Sにとって邪魔になる、または把手9、10の存在により電子カセッテの所望の配置が困難になるという問題が生ずる。従って、従来考えられている電子カセッテ1は、可搬性に優れると共に、撮影の自由度が低下することや被検者に不快感を与えることのないように構成されることが望ましい。
【0015】
また、上述の公報記載の従来例はカセッテの運搬又は移動に適するように、単にカセッテに把手を設けたことを開示するのみで、電子カセッテに特有の性質を考慮して電子カセッテに把手を付属させた構成を開示するものではない。特に、電子カセッテの場合には、半導体センサ他の電子部品等が外部からの衝撃により壊れる可能性があること、電磁ノイズ等によるSN比の低下を極力抑制可能な構造であること、又は重量のある電子カセッテを被検者が保持して撮影する場合等における電子カセッテの保持又は配置の容易性又は多様性等の撮影の便宜性、等を考慮する必要がある。
【0016】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、被検者の不快感又は撮影の自由度の低下を防止又は抑制しつつ可搬性に優れた放射線画像撮影装置を提供することにある。
【0017】
または、本発明の目的は、電子カセッテに特有の性質を考慮して適切に把手を付属させた電子カセッテを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、被写体を透過した放射線を検出する放射線画像撮影装置において、被写体を透過した放射線を検出する光電変換素子を二次元状に配列して成る検出面を有する検出手段と、該検出手段からの電気信号を処理する回路基板と、前記検出手段及び前記回路基板に電力を供給する電源と、前記検出手段、前記回路基板及び前記電源を内包する筐体とから成り、該筐体は前記検出手段の前記検出面に対して法線方向から見た外形が略長方形であり、外形の一辺の近傍に把持用孔部を有することを特徴とする放射線画像撮影装置である。
【0019】
請求項2に係る発明は、前記筐体は共に略直方体形状の第1の筐体と第2の筐体から成り、前記第1の筐体は少なくとも前記検出手段を内包し、前記第2の筐体は前記把持用孔部を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置である。
【0020】
請求項3に係る発明は、前記第1の筐体と前記第2の筐体の当接面は共に実質的に同一の大きさの長方形であることを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置である。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記検出手段の前記検出面側に位置する前記筐体の前記把持用孔部を含む面は平坦面であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の放射線画像撮影装置である。
【0022】
請求項5に係る発明は、前記筐体の重心は前記把持用孔部の中心線上又はその近傍に位置することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置である。
【0023】
請求項6に係る発明は、前記筐体は前記回路基板及び/又は前記電源を前記把持用孔部の近傍に内包することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置である。
【0024】
請求項7に係る発明は、前記第2の筐体は前記回路基板及び/又は前記電源を内包することを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置である。
【0025】
請求項8に係る発明は、前記把持用孔部の近傍の前記筐体の一辺側において、前記検出面の反対側に位置する前記筐体の底面が厚み方向に凹形状であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置である。
【0026】
請求項9に係る発明は、前記検出手段の前記検出面の反対側に位置する前記筐体の底面が厚み方向に傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置である。
【0027】
請求項10に係る発明は、被写体を透過した放射線を検出する放射線画像撮影装置において、前記被写体を透過した放射線を検出するための複数の光電変換素子が配列されて構成された実質的に長方形をなす検出面を有する検出手段と、該検出手段を内包する筐体とから構成され、前記筐体は、前記検出手段の前記検出面の法線方向から見たとき、前記検出面の長辺に並ぶ領域に把手部を有することを特徴とする放射線画像撮影装置である。
【0028】
請求項11に係る発明は、被写体を透過した放射線を検出する放射線画像撮影装置において、前記被写体を透過した放射線を検出するための複数の光電変換素子が配列されて構成された実質的に長方形をなす検出面を有する検出手段と、前記検出面の短辺に並ぶ領域に配置され、前記検出手段からの電気信号を読み取る読取回路部と、前記検出面の長辺に並ぶ領域に配置され、前記検出手段を駆動する駆動回路部と、前記検出手段、前記読取回路部及び前記駆動回路部を内包する筐体とから構成され、前記筐体は、前記検出面の法線方向から見たとき、前記検出面の長辺に並ぶ領域に把手部を有することを特徴とする放射線画像撮影装置である。
【0029】
請求項12に係る発明は、前記検出手段、前記読取回路部及び前記駆動回路部に電力を供給する電源を更に有し、該電源を、前記検出面の法線方向から見たとき、前記検出面の長辺に並ぶ領域に配置したことを特徴とする請求項11記載の放射線画像撮影装置である。
【0030】
請求項13に係る発明は、前記読取回路部は前記検出面の2つの短辺の各々に並ぶ領域に配置され、前記検出面をその長辺方向に実質的に2等分してできる各領域を、該各領域に隣接する読取回路部が読み取るように構成したことを特徴とする請求項11又は12記載の放射線画像撮影装置である。
【0031】
請求項14に係る発明は、前記把手部は前記筐体に設けられた穴部から構成されることを特徴とする請求項10乃至13の何れかに記載の放射線画像撮影装置である。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明に係る放射線画像撮影装置によれば、被検者の不快感又は撮影の自由度の低下を防止又は抑制しつつ可搬性に優れた放射線画像撮影装置を提供することができる。
【0033】
または、電子カセッテに特有の性質を考慮して適切に把手を付属させた電子カセッテを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】X線画像撮影システムの構成図である。
【図2】電子カセッテの第1の実施の形態の平面図である。
【図3】第1の筐体と第2の筐体を分離した斜視図である。
【図4】電子カセッテの断面図である。
【図5】電子カセッテの第2の実施の形態の分解斜視図である。
【図6】電子カセッテの第3の実施の形態の斜視図である。
【図7】電子カセッテの第4の実施の形態の側面図である。
【図8】電子カセッテの第5の実施の形態の平面図である。
【図9】第5の実施の形態の電子カセッテの使用状態の説明図である。
【図10】電子カセッテの第6の実施の形態の平面図である。
【図11】従来例の断面図である。
【図12】従来例の使用状態の説明図である。
【図13】従来例の斜視図である。
【図14】従来例の斜視図である。
【図15】従来例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を図1〜図10に図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。図1はX線画像撮影システムの構成図であり、第1の実施の形態のX線画像撮影装置としての電子カセッテ11が床等に水平に配置され、電子カセッテ11の上方にはX線発生装置12が設置されている。電子カセッテ11には画像信号を処理する画像処理手段13が接続され、この画像処理手段13にはX線画像を表示するモニタ14が接続されている。
【0036】
図2は電子カセッテ11の平面図、図3は分解斜視図であり、電子カセッテ11は分離と結合が可能とされ、共に直方体形状の第1の筐体21と第2の筐体22を有し、これらの筐体21、22は中心線C−Cに関して対称とされ、厚みも中心線C−Cに対して同一とされ、上下面は凹凸のない平坦面とされている。第1、第2の筐体21、22は、それぞれトレイ状の第1、第2の筐体本体23、24と、これらの筐体本体23、24の開口を塞ぐ第1、第2の蓋体25、26とから構成されている。第1の筐体21の第1の蓋体25はX線を透過させる材料から作成され、第2の筐体22は金属製とされている。
【0037】
双方の筐体本体23、24の対向面23a、24aは同一の大きさの長方形とされ、これらの対向位置には嵌脱可能な電気コネクタ27、28がそれぞれ取り付けられている。また、双方の筐体本体23、24の側面23b、24bには、例えば溝と突片から成り相互に締結される締結部29、30がそれぞれ設けられている。そして、第2の筐体本体24の端面24cの近傍には把持用筒部31が形成され、第2の蓋体26には把持用筒部31に連通する把持用孔部32が形成されている。これらの把持用筒部31と把持用孔部32は平面的に長方形で垂直方向に連通するように形成され、これらの中心は中心線C−C上に位置し、中心線C−Cは電子カセッテ11の重心G又はその近傍に形成されている。すなわち、電子カセッテ11は実質的にその中心線C−C上に、重心Gと把持用筒部31又は把持用孔部32の中心とが位置するように構成されている。
【0038】
図4は電子カセッテ11の断面図であり、第1の筐体21の内部の上方には、蛍光板41、光電変換素子42及び基板43から成るX線検出パネル44が金属製の基台45の上に配置され、基台45の下方には電子部品46を有して電気信号を処理する回路基板47が支持されている。光電変換素子42と回路基板47はフレキシブル回路基板48により接続され、回路基板47は基台45の下面に設けられた突起45aに固定されている。
【0039】
蛍光板41は金属化合物の蛍光体を樹脂板に塗布したものが用いられ、基板43に接着によって一体化されている。基板43には半導体素子との化学作用のないこと、半導体プロセスの温度に耐えること、寸法安定性を有すること等の必要性からガラス板が多用され、光電変換素子42は基板43上に半導体プロセスにより二次元配列的に形成されている。
【0040】
一方、第2の筐体22の内部には回路基板47に電力を供給するための電源49が配置され、回路基板47と電源49は電気コネクタ27、28を介して接続されている。なお、電源49は平面コの字形状とされ、第2の筐体本体24の把持用筒部31を囲むように配置されている。
【0041】
この第1の実施の形態では、電子カセッテ11の第1、第2の筐体21、22を直方体とし、第2の筐体22には相互に連通する把持用筒部31と把持用孔部32を設けたので、検者は手指を把持用筒部31と把持用孔部32に挿し込んで電子カセッテ11を容易に搬送することができる。また、電子カセッテ11は突出する部分を持たないので、被検者の肩関節の軸位像を撮影する際に被検者に抱えられた場合でも、被検者に不快感を与えることはない。更に、第1、第2の筐体21、22の上下面は凹凸のない平坦面としたので、水平に設置して被検者を第1、第2の蓋体25、26の上面に横臥させた場合でも、同様に被検者に不快感を与えることはない。
【0042】
そして、把持用筒部31と把持用孔部32の中心を通る中心線C−Cが電子カセッテ11の重心G又はその近傍を通るように形成したので、検者が電子カセッテ11を把持した際に電子カセッテ11に重心Gからのずれに伴う回転モーメントが作用することがなく、検者は電子カセッテ11を容易に把持できる。また、電源49は把持用筒部31を囲むように配置したので、実装スペースを有効に利用して薄型の電子カセッテ11を実現できる。更には、第2の筐体22は金属製としたので、電磁シールド効果を有し、電源49の電気回路から発生する電磁ノイズがフレキシブル回路基板48等に侵入して、S/N性能を損うことを防止できる。
【0043】
なお、第2の筐体22には電源49だけを配置したが、回路基板47又はその一部を配置することも可能であり、この場合には電磁ノイズによる影響を大きく減少させることができる。
【0044】
図5は第2の実施の形態の分解斜視図であり、電子カセッテ51は第1の実施の形態の筐体本体23、24を一体化した形状の金属製の筐体本体52と、第1の実施の形態の蓋体25、26を一体化した形状の金属製の蓋体53とを有し、筐体本体52と蓋体53には第1の実施の形態と同様な形状の把持用筒部54と把持用孔部55が、第1の実施の形態と同様な位置にそれぞれ形成されている。筐体本体52の内部には、第1の実施の形態と同様なX線検出パネル44等と電源49が配置されている。蓋体53には、X線検出パネル44のX線検出領域に対向する位置に開口53aが形成されており、この開口53aはX線透過性に優れた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の材料から成るカバー56により閉塞されている。
【0045】
この第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様な効果を達成できる上に、一体の筐体本体52と一体の蓋体53とから構成しているので、曲げ等の力に対する強度が第1の実施の形態よりも向上する。また、X線検出パネル44等と電源49を共通の筐体本体52の内部に配置したので、電気回路を接地する点で有効となる。
【0046】
図6は第3の実施の形態の斜視図であり、第2の実施の形態の電子カセッテ51とは形状において若干異なる電子カセッテ51’とされ、筐体本体52’の下面には厚み方向に凹んで、端面52aから把持用筒部54の内部に連通する凹状部57が形成されている。
【0047】
この第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様な効果を達成できる上に、検者が電子カセッテ51’を持ち上げる際に手指を凹状部57に容易に掛けることができ、可搬性を更に向上させることができる。
【0048】
図7は第4の実施の形態の側面図であり、第2の実施の形態とは形状において若干異なる電子カセット51”とされ、第2の実施の形態に加えて、筐体本体52”の底面の両端部に厚み方向に傾斜する傾斜面58、59がそれぞれ形成されている。
【0049】
この第4の実施の形態は、第2の実施の形態と同様な効果を達成できる上に、
検者は水平状態にある筐体本体52”の傾斜面58、59に手指を容易に掛けることが可能となり、可搬性を更に向上させることができる。また、筐体本体52”の両端部の一部が鈍角になるので、被検者Sに対して柔軟に当って不快感を与えることはない。
【0050】
以上説明したように第1乃至第4の実施の形態に係る放射線画像撮影装置は、筐体の外形を検出手段の検出面に対して法線方向から見て略長方形とし、外形の一辺の近傍に把持用孔部を設けたので、検者は把持用孔部に手指を通して搬送することができ、搬送性が向上する。また、外形的に突出した部分を持ないので、被検者の脇の下等に抱え込まれた場合でも被検者に不快感を与えることはない。
【0051】
検出手段の検出面側に位置する把持用孔部を含む筐体の面(上面)を平坦面とすれば、水平状態で被検者を載せた場合に被検者に不快感を与えることはない。
【0052】
また、重心を把持用孔部の中心線上又はその近傍に位置させれば、把持された際にモーメントが作用することがなく、可搬性が更に向上する。
【0053】
更に、電源を把持用孔部の近傍に内包すれば、実装スペースを有効に利用でき、薄型化が可能となる。
【0054】
そして、把持用孔部の近傍の筐体の一辺側において、検出面の反対側に位置する筐体の面(底面)を厚み方向に対して凹形状とするか、或いは検出手段の検出面の反対側に位置する筐体の面(底面)に厚み方向に対して傾斜面を設ければ、水平に設置された場合でも検者の手指が容易に掛けられ、可搬性が更に向上する。
【0055】
図8は第5の実施の形態の電子カセッテ200の平面図であり、フレーム(筐体)201は、電子カセッテ200の外形を形成するものであり、軽量の金属あるいは樹脂等で構成される。X線検出パネル(センサ部)202の検出面は長方形状に形成されており、そのサイズは好適には例えば17×14インチ(43×35cm)である。このサイズであれば大人の胸部撮影も可能である。また、他のサイズとして、一般に四肢やマンモグラムの撮影で使用される感光性フィルムのサイズである10×12インチ(24×30cm)を用いてもよい。尚、X線検出パネル202は第1の実施の形態のX線検出パネル44と同様に構成されている。このX線検出パネル202から、光電変換によって生じた電荷を読出すための後述の回路が、例えばX線検出パネル202の側面から背面にわたって配置される。
【0056】
X線検出パネルからの電荷の読出しは、ドライブ回路(駆動回路部)によって選択された列の複数の光電変換素子が発生し蓄積した電荷を、各々行方向に放電させ、各行に対応して設置されたアンプ回路(読出回路部)によって読み取る方式によって行われる。電荷を行方向に読み出しアンプ回路で読み取ったデータ(アナログ信号)をすべて同時にA/D変換する場合には多数のA/D変換器が必要になるが、マルチプレックス回路を設けて時分割でA/D変換することにより、必要なA/D変換器の数を削減することも可能である。図8に示した電子カセッテにおいては、X線検出パネル202の上側に、光電変換素子列を選択するドライブ回路204が配置され、ドライブ回路204によって選択された光電変換素子列に対応する各電荷を読み取るためのアンプ回路203がX線検出パネル202の左右両側に配置されている。
【0057】
検出面が実質的に長方形をなすX線検出パネルに対して、ドライブ回路とアンプ回路を長方形のどの辺に隣接して配置するかには様々な選択肢があるが、図8のように配置することが好適と考えられる。この判断要因として次の2点が挙げられる。
【0058】
要因1:ドライブ回路での列選択の際には配線抵抗により遅延やスイッチ不良が問題となり得るので、ドライブ回路はなるべく物理的に近い距離の光電変換素子をドライブすることが好ましい。
【0059】
要因2:アンプ回路での電荷読み取りの際には配線抵抗や配線容量が問題となり得るので、アンプ回路はなるべく物理的に近い距離の光電変換素子から電荷を読み取ることが好ましい。
【0060】
まず、上記要因1からアンプ回路の配置を考えると、図8に示したようにアンプ回路を対向する両辺に配置し、例えばX線検出パネルの左側半分は左側のアンプ回路203で読み取り、X線検出パネルの右側半分は右側のアンプ回路203で読み取ることが望ましい。ただし、この要因だけでは、アンプ回路203をX線検出パネル202の短辺側に配置する場合と長辺側に配置する場合とのいずれが有利かの判断は保留せざるを得ない。次に、上記要因2からドライブ回路の配置を考えると、同様に1つの列又は行をその両側からドライブすることが望ましいといえる。
【0061】
次に、カセッテを使用した臨床の放射線撮影には、フレーム201の外縁からX線検出パネル202の外縁までの距離が例えば5mm前後(又はそれ以下)である辺(筐体側面)が少なくとも1辺あることが望まれている。フレーム201の外縁からX線検出パネル202の外縁までの距離を小さくすることによって、上述(図12)のようにカセッテを脇の下に配置して肩を上方から撮影する際に肩を広範囲に撮影することや、マンモグラムにおいて乳房を広範囲に撮影することが可能になる。
【0062】
以上の条件又は前提から次の2つの選択が考えられる。
【0063】
選択1:X線検出パネル202の長辺の一つに隣接してドライブ回路を配置し、他の長辺側には回路を配置せずにX線検出パネル202の外縁をフレーム201にできるだけ近づける。X線検出パネル202の2つの短辺の近傍には各々アンプ回路を配置し、X線検出パネル202をその長辺方向に実質的に2等分してできる各領域を、各領域に隣接するアンプ回路が読み取る。
【0064】
選択2:X線検出パネル202の長辺の一つに隣接してアンプ回路を配置し、
他の長辺側には回路を配置せずにX線検出パネル202の外縁をフレーム201にできるだけ近づける。X線検出パネル202の2つの短辺の近傍には各々ドライブ回路を配置し、X線検出パネル202をその長辺方向に実質的に2等分してできる各領域を、各領域に隣接するドライブ回路が駆動する。
【0065】
上記選択1又は2のどちらがより好適であるかは、それぞれの場合のS/N比への貢献度(どちらがS/N比を高められるか)を、各ケースの配線長に基づいて見積もることにより、決定することができる。このような見積もりの結果、図8に示す選択1が最良の選択となることがわかった。また、この見積もりによる選択の正しさは実験によって実証された。
【0066】
以上のようにドライブ回路及びアンプ回路の配置が決まったので、次に、大きな部品である電源の配置を考える。尚、この電源はX線検出パネル202、アンプ回路203及びドライブ回路204等に電力を供給する。電源から放射される電磁ノイズは、X線検出パネルや各回路に影響を及ぼす種々の電磁ノイズのうち、対策すべき主要な要素である。電源の配置にあたっては、アナログ回路はデジタル回路よりノイズ耐性が低いことから、小型軽量が必須の電子カセッテにおいて、電源はデジタル回路であるドライブ回路よりアナログ回路であるアンプ回路からより長い距離をおいて配置されるのが好ましい。よって、図8のように電源205をドライブ回路204に並べて配置するのが好適である。
【0067】
次に、電子カセッテの把手の配置を考える。電子カセッテを、その把手を把持して運搬する際、電子カセッテが何かと衝突して衝撃を受けることを極力避けるためには、把手を把持して電子カセッテを吊り下げた際の鉛直(重力)方向の長さが短いことが好ましい。従って、図2又は図3に示されるようにX線検出パネルの長辺に並べて把手を配置することが好適である。さらに把手は、図8において、X線検出パネル202の長辺をできるだけ近づけたフレーム201の部分には配置できないため、X線検出パネル202の他の長辺にならべて設けることになる。また、把手は、電子カセッテに接触する被写体(被検者)に違和感を与えないよう、フレームから出っ張ることなく、フレームに設けた穴部又は凹部であることが好適である。よって、図8のように、ドライブ回路204と並び且つ電源205と緩衝しないフレーム201の領域に把手用穴(把手部)206を設けることが最適である。
【0068】
以上の説明では把手の配置を、電子カセッテの他の構成要素の好適な配置から決定したが、決定された把手の配置は次の要因からも好ましいことがわかる。すなわち、既述のように被写体が電子カセッテを手で保持した状態で、その身体の一部分が撮影されることがあり、その際、縦長の人体は縦長の部位が多いため、電子カセッテは縦長に保持されて撮影されることが多い。よって、X線検出パネル202の長辺に並べて把手(把手用穴206)を配置することは、図9に示すように被検者が電子カセッテを縦長の配置で保持し易くなり、望ましい。
【0069】
尚、以上ではその検出面が長方形をなしたX線検出パネル202の1つの長辺の近傍のみにドライブ回路を配置する例を説明したが、このことは必須要件ではなく、X線検出パネル202の2つの長辺の近傍に各々ドライブ回路を配置し、X線検出パネル202をその短辺方向に実質的に2等分してできる各領域を、各領域に隣接するドライブ回路が駆動するように構成してもよい。この場合でも、電源の発生する電磁ノイズを考慮すれば、やはり電源をX線検出パネル202の短辺でなく長辺の1つに並べて設けることが適切な選択となり、また、上述の理由又は電源の配置効率等の観点から、電源がその近傍に配置される長辺の近傍に把手部を設けることが有利であることにかわりはない。
【0070】
以上説明したように、第5の実施の形態では、その検出面が長方形をなしたX線検出パネル202の長辺側に把手を配置することにより、S/N比の高いセンサ駆動を実現でき、電源の発生する電磁ノイズの悪影響を低減でき、又は電子カセッテが被写体によって保持されて撮影が行われる際、多くの場合、特に電子カセッテが縦長に保持される場合、被写体が電子カセッテを手で保持することが容易になる、等の効果が生じる。
【0071】
図10は第6の実施の形態の電子カセッテ200’の平面図であり、図8に示した第5の実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。第5の実施の形態と異なる点は、第5の実施の形態では把手部としてフレーム201に穴部又は凹部を形成して把手用穴206を構成したのに対し、本実施の形態では略直方体形状のフレーム201’(筐体)の一側面に把手部207を取り付けたことである。本実施の形態においても、その検出面が長方形をなしたX線検出パネル202の長辺側に把手部を配置することは第5の実施の形態と同様である。尚、このような把手部の中に配置された電源からフレーム201’内の上述の電気回路等に電力が供給されるように構成したり、または図10に示されるように、フレーム201’と把手部207とが連続した内部スペースを有し、電源がフレーム201’内及び把手部内にわたって配置されるように構成したりすれば、構成要素の配置効率又はノイズ低減の点で効果的であることは第5の実施の形態と同様である。勿論、電源の全部又は一部が把手部207内に配置されることは必須ではなく、電源の全部が例えばドライブ回路204に隣接してフレーム201’内に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
11、51、51’、51” 電子カセッテ
12 X線発生装置
21、22 筐体
23、24、52、52’、52” 筐体本体
25、26、53 蓋体
27、28 電気コネクタ
29、30 締結部
31、54 把持用筒部
32、55 把持用孔部
41 蛍光板
42 光電変換素子
43 基板
44 X線検出パネル
47 回路基板
49 電源
57 凹状部
58、59 傾斜面
S 被検者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を検出する放射線画像撮影装置において、被写体を透過した放射線を検出する光電変換素子を二次元状に配列して成る検出面を有する検出手段と、該検出手段からの電気信号を処理する回路基板と、前記検出手段及び前記回路基板に電力を供給する電源と、前記検出手段、前記回路基板及び前記電源を内包する筐体とから成り、該筐体は前記検出手段の前記検出面に対して法線方向から見た外形が略長方形であり、外形の一辺の近傍に把持用孔部を有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記筐体は共に略直方体形状の第1の筐体と第2の筐体から成り、前記第1の筐体は少なくとも前記検出手段を内包し、前記第2の筐体は前記把持用孔部を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記第1の筐体と前記第2の筐体の当接面は共に実質的に同一の大きさの長方形であることを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記検出手段の前記検出面側に位置する前記筐体の前記把持用孔部を含む面は平坦面であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記筐体の重心は前記把持用孔部の中心線上又はその近傍に位置することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記筐体は前記回路基板及び/又は前記電源を前記把持用孔部の近傍に内包することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記第2の筐体は前記回路基板及び/又は前記電源を内包することを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記把持用孔部の近傍の前記筐体の一辺側において、前記検出面の反対側に位置する前記筐体の底面が厚み方向に凹形状であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記検出手段の前記検出面の反対側に位置する前記筐体の底面が厚み方向に傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
被写体を透過した放射線を検出する放射線画像撮影装置において、前記被写体を透過した放射線を検出するための複数の光電変換素子が配列されて構成された実質的に長方形をなす検出面を有する検出手段と、該検出手段を内包する筐体とから構成され、前記筐体は、前記検出手段の前記検出面の法線方向から見たとき、前記検出面の長辺に並ぶ領域に把手部を有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項11】
被写体を透過した放射線を検出する放射線画像撮影装置において、前記被写体を透過した放射線を検出するための複数の光電変換素子が配列されて構成された実質的に長方形をなす検出面を有する検出手段と、前記検出面の短辺に並ぶ領域に配置され、前記検出手段からの電気信号を読み取る読取回路部と、前記検出面の長辺に並ぶ領域に配置され、前記検出手段を駆動する駆動回路部と、前記検出手段、前記読取回路部及び前記駆動回路部を内包する筐体とから構成され、前記筐体は、前記検出面の法線方向から見たとき、前記検出面の長辺に並ぶ領域に把手部を有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項12】
前記検出手段、前記読取回路部及び前記駆動回路部に電力を供給する電源を更に有し、該電源を、前記検出面の法線方向から見たとき、前記検出面の長辺に並ぶ領域に配置したことを特徴とする請求項11記載の放射線画像撮影装置。
【請求項13】
前記読取回路部は前記検出面の2つの短辺の各々に並ぶ領域に配置され、前記検出面をその長辺方向に実質的に2等分してできる各領域を、該各領域に隣接する読取回路部が読み取るように構成したことを特徴とする請求項11又は12記載の放射線画像撮影装置。
【請求項14】
前記把手部は前記筐体に設けられた穴部から構成されることを特徴とする請求項10乃至13の何れかに記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−248382(P2011−248382A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191695(P2011−191695)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2004−137312(P2004−137312)の分割
【原出願日】平成13年5月30日(2001.5.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】