説明

X線検出器

【課題】用途に応じて検出面を好適な形状配置、面積で構成でき、高い信号読み出しの動作帯域を維持しつつ、多数の検出モジュールを接続することができるX線検出器を提供する。
【解決手段】モジュールごとにX線画像データを検出するX線検出器50であって、各々が直列に接続され、内部クロックφに基づいて自ら検出したX線画像データを同期して読み出すとともに、読み出されたX線画像データを転々と転送する複数の検出モジュール1を備え、複数の検出モジュール1の各々は、転送されたX線画像データを受け取り、受け取ったX線画像データを内部クロックφにより同期し直して、自ら検出したX線画像データとともに転送する。これにより、測定ごとのデータ転送方式の変更や制御機器3側への負担なしに、任意の位置に検出モジュール1を配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュールごとにX線画像データを検出するX線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトダイオードで検出部が一体化されたシングル・フォトン・カウンティング方式のX線検出器を構成しようとすると、その大きさには限界がある。これは半導体ウェハのサイズの限界および半導体チップに一定の割合で存在する欠陥により、大面積の検出面を構成するのが困難なためである。その結果、実現できる最大限の大きさでモジュール単位の検出部を構成せざるを得ない。さらに大きい検出面が必要になる場合には、複数の検出モジュールを電気的・機械的に相互に接続し、各々の検出面を継ぎ合わせるのが一般的である。例えば、各検出モジュールを同一平面上に検出面を形成するように配置し、透過イメージまたはX線回折パターンを投影する。
【0003】
特許文献1記載の検出器は、等間隔で並んだ取り付けのためのレールを配したフレームを用いて複数のイメージング・モジュールを固定、配置している。ただし、各々のイメージング・モジュールからのデータの取り出し方法は開示されていない。特許文献2記載の検出器は、複数のイメージング・デバイスをタイルして大きい検出面を形成している(FIG.5a)。各イメージング・デバイスからのデータは、マスター・マルチプレクサを介して送信される。特許文献3記載の検出器は、複数ディテクタにより同一平面内の検出面を形成している。
【0004】
検出モジュールの配置には、まず、所望の配置に合わせた各検出モジュールの固定機構が必要となる。そして、各検出モジュールからのデータ読み出し方法を決める必要がある。データの読み出し方法としては、検出モジュールからの信号を一旦、バスラインに送出し、共通のバスラインで順次、送り出す方法が知られている。
【0005】
たとえば、複数の検出モジュールをタテ・ヨコに並べ、一つの検出面を作り上げ、各検出モジュールの信号出力をバス接続してデータを取り出す方式がある。この方式では、一体化したプリント配線板でバス接続の線路を形成することが、信号の取り出し速度を維持する上で欠かせないため、検出モジュールの並べ方に応じた専用のバス接続配線板を、そのつど設計、製作しなければならない。
【0006】
たとえば、非特許文献1には、複数の検出モジュールの構成方法が開示されている(P.126参照)。非特許文献1記載の個々の検出モジュールは、Bank Control Board(BCB)に3つずつ接続されている。そして、BCB同士はパラレルケーブルで接続され、信号ラインは3.3VのTTLによるバスラインを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/025605号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0164888号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第1997/5629524号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】”The PILATUS 1M detector”, J. Synchrotron Rad. (2006). 13, 120.130, Ch. Broennimann et al., P.126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
X線の検出面を条件に応じて形成したいという要請がある。たとえば、X線CTや一般的なX線回折法では、試料に対して等距離の円周上に検出面を配置すべき場合がある。従来の回折法では、モータ駆動されるゴニオメータのアーム上に配置された検出器を動かし、試料位置から様々な角度に現れる回折パターンを連続的に捕えていた。しかし、円周上または球面上に連続的に検出面を形成できれば、短時間で一度に情報を得ることができる。そして、試料分析の高速化や経時変化する試料分析が可能になる。また、検出モジュールの配置を測定条件によって変更できればさらに望ましい。
【0010】
しかしながら、上記の特許文献記載の検出器では、複数の検出モジュールの配置が、所定の平面状の検出面を形成するものに限られてしまい、条件に応じて検出面を作り出すことは難しい。そして、適したデバイスの配置を実現しやすいデータ読み取り方式が採用されているとも言えない。
【0011】
また、非特許文献1記載の複数の検出モジュールの構成方法では、シングルエンドのバスラインの転送動作クロックの周波数の限界が、一般的に100MHz程度である(参考文献「LVDSオーナーズ・マニュアル」ナショナルインスツルメンツ、p.5-3)。そして、バス・ドライバ・デバイスの駆動能力にも限りがあることから、バス・ライン長を一定以上、長くすることができない。検出モジュールを接続するためのボード(BCB)は、検出モジュール接続数が固定であることもあり、このままでは個別検出モジュールを自由配置できない。以上から、非特許文献1記載の方式では、個別に要請される検出モジュールの構成配置に対して、自在に対応することは難しい。また、転送動作クロックに限界があることから、多数モジュールを接続した場合の多数ピクセル・データに対応することが難しい。
【0012】
なお、信号の伝送速度を考慮すれば、例えばLVDSのような高速の信号伝送方式を、1対1接続で使用することが望ましいとも考えられる(参考文献「LVDSオーナーズ・マニュアル」ナショナルインスツルメンツ、p.5-3)。しかし、各検出モジュールからの伝送信号ラインを制御機器(例えばコンピュータ)に1対1で接続するとすれば、検出モジュールと同数の制御機器が必要となる。
【0013】
処理側でも、一旦分散されて転送されたデータを、あらためてひと纏まりのものとして処理しなければならない等、運用上の制約が避けられない。また、各検出モジュール間の同期動作や、取得した画像の全体再構成を行うには、当然に別途手間を要する。
【0014】
また、シングルエンド方式の配線では、信号の伝播、駆動能力の点で構成できるバス配線路の大きさおよび伝播速度に限界がある。このため、作製しうる複数モジュールによる検出面の大きさ、ないしはデータ取り出しの速度が制約される。このように、従来方式では、各々の検出モジュールから、画像データを処理、制御できる機器までのデータの転送方法により、検出モジュールの並べ方に制約がある。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、用途に応じて検出面を好適な形状配置、面積で構成でき、高い信号読み出しの動作帯域を維持しつつ、多数の検出モジュールを接続することができるX線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係るX線検出器は、モジュールごとにX線画像データを検出するX線検出器であって、各々が直列に接続され、内部クロックに基づいて自ら検出したX線画像データを同期して読み出すとともに、前記読み出されたX線画像データを転々と転送する複数の検出モジュールを備え、前記複数の検出モジュールの各々は、前記転送されたX線画像データを受け取り、前記受け取ったX線画像データを前記内部クロックにより同期し直して、前記自ら検出したX線画像データとともに転送することを特徴としている。
【0017】
このように本発明のX線検出器は、検出モジュールが内部クロックに同期し直してX線画像データを転送する。これにより、測定ごとのデータ転送方式の変更や制御機器側への負担なしに、任意の位置に検出モジュールを配置できる。その結果、応用方法に応じて検出モジュールの円周上の配置、球面上の配置またはライン上の配置等を設計でき、短時間で効率的にデータを収集できる。
【0018】
たとえば、X線を用いたイメージ取得の分野、特に観察対象から様々な角度で広がるX線を同時に検出し、処理する光学配置を必要とする分野で有効である。X線回折では、試料を中心とした円周上で観察されるX線の強度情報を、その出現位置とともに特定する必要があり有効である。また、X線CTでは、X線を試料の周り全周において照射すると共にイメージ取得をする必要があるため、有効である。
【0019】
(2)また、本発明に係るX線検出器は、前記複数の検出モジュールの各々が、前記転送の同期に用いる転送クロックおよび前記転送を制御する転送制御信号を前記X線画像データとともに転送し、前記内部クロックによって前記転送クロックをリタイミングすることで同期し直すことを特徴としている。このように、検出モジュールが転送クロックを内部クロックでリタイミングすることで、同期し直してX線画像データを転送できる。
【0020】
(3)また、本発明に係るX線検出器は、前記X線画像データの転送の出力側末端の検出モジュールが、前記複数の検出モジュールを制御する制御機器に前記X線画像データを転送することを特徴としている。これにより、制御機器は、同期されたX線画像データを受け取り、一旦分散されて転送されたデータを、あらためてひと纏まりのものとして効率的に処理することができる。
【0021】
(4)また、本発明に係るX線検出器は、前記複数の検出モジュールの各々を接続するラインとして、前記X線画像データの転送に対して順方向に前記転送制御信号を伝達する順方向制御ラインと、前記X線画像データの転送に対して逆方向に前記転送制御信号を伝達する逆方向制御ラインとを備えることを特徴としている。これにより、画像データの流れとは別方向からの信号の伝送が可能になる。たとえば制御機器から信号によってX線画像データ転送の動作を制御しうる。
【0022】
(5)また、本発明に係るX線検出器は、前記複数の検出モジュールの各々を接続し、前記転送制御信号を前記X線画像データの出力側および入力側の双方向に対して通信を行うためのシリアル通信ラインを備えることを特徴としている。これにより、単なる信号のやり取りだけでなく、テキストメッセージからなるコマンドの送信が可能になる。その結果、検出モジュールへの複雑な動作制御が可能となる。
【0023】
(6)また、本発明に係るX線検出器は、前記複数の検出モジュールの各々が、入力信号を一時的に記憶する入力側ラインバッファと、出力信号を一時的に記憶する出力側ラインバッファとを備えることを特徴としている。これにより、検出モジュール同士の接続により生じうる距離による信号の減衰や入出力時に生じうる信号の歪を解消でき、制御機器に信号が到達した時点での信号の品質を保証できる。
【0024】
(7)また、本発明に係るX線検出器は、前記複数の検出モジュールの各々が、差動信号により前記データ転送を行うことを特徴としている。これにより、転送ケーブルを構成する信号ラインをすべて差動信号ラインとすれば、画像データ読み出しのための転送クロックの周波数を高くすることができる。特に、多数の検出モジュールの接続により生じうる画像データ量の増大に対して、転送時間を短縮して対処できる。
【0025】
(8)また、本発明に係るX線検出器は、前記複数の検出モジュールの各々が、シングル・フォトン・カウンティング方式でX線を検出することを特徴としている。これにより、X線回折による分析分野に有効なX線検出器を構成できる。そして、X線回折による分析手法に特有の検出面配置を構成すれば、多量のデータで高速の分析を実現できる。
【0026】
(9)また、本発明に係るX線検出器は、前記検出モジュールが、前記X線画像データの転送の入力側末端に位置していることを認識する位置確認ポートを更に備えることを特徴としている。これにより、接続の末端に位置する検出モジュールに特有の動作をさせ、高速の転送開始動作が可能になる。
【0027】
(10)また、本発明に係るX線検出器は、前記検出モジュールが、試料に対してX線の検出面を円周上に形成するように配置されていることを特徴としている。これにより、X線CTやX線回折を用いる場合に、試料に対して等距離の円周上に検出面を配置できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のX線検出器によれば、測定ごとのデータ転送方式の変更や制御機器側への負担なしに、任意の位置に検出モジュールを配置できる。その結果、応用方法に応じて検出モジュールの円周上の配置、球面上の配置またはライン上の配置等を設計でき、短時間で効率的にデータを収集できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るX線検出器システムの構成を示す概略図である。
【図2】検出モジュールの概略構成を示すブロック図である。
【図3】検出モジュールの詳細構成の例を示すブロック図である。
【図4】(a)リタイミング回路の動作を示す概略図である。(b)リタイミング回路による信号相互の動作関係を示す図である。
【図5】(a)〜(c)いずれもX線画像データの転送例を示す図である。
【図6】画像データの転送動作を示す信号のタイミング図である。
【図7】(a)〜(c)いずれも検出モジュールの配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
(X線検出器システム)
図1は、X線検出器システム100の構成を示す概略図である。X線検出器システム100は、X線検出器50および制御機器3により構成されている。X線検出器50は、複数の検出モジュール1を順次、直列に接続して構成される。X線検出器50は、モジュールごとにX線画像データを検出する。X線検出器50は、データ転送の出力側末端の検出モジュール1を介して通信ケーブル4で制御機器3に接続されており、読み出したX線画像データを制御機器3に送出する。制御機器3は、X線検出器50を制御するとともに、受け取ったX線画像データを保存、処理する。複数の検出モジュール1は、いずれも上記の構造を有している。
【0032】
同一の構造を持つ検出モジュール1の出力ポートTxOutが、隣接する他の検出モジュールの入力ポートTxInに対して、転送ケーブル2を介して互いに直列接続している。各々の検出モジュール1の配置は、例えばバス回路基板のような特定のハードウェアに制限されることがないため、任意の位置への自由配置が可能である。
【0033】
(検出モジュール)
図2は、検出モジュール1の概略構成を示すブロック図である。検出モジュール1は、検出部7、転送部6、入力ポートTxInおよび出力ポートTxOutを備えている。検出部7は、X線を検出し、X線画像データとして保持する。検出部7は、シングル・フォトン・カウンティング方式でX線を検出し、X線画像データに変換する。
【0034】
転送部6には、検出部7からの画像データが伝送される画像データラインDataOutおよび検出部7へ制御信号が伝送される画像制御線DataCtrlが接続されている。また、検出モジュール1の外部からのデータを一旦受信するための入力ポートTxIn、外部に対してデータを送り出すための出力ポートTxOutも接続されている。転送部6は、検出部7から内部クロックφに基づいてX線画像データを同期して読み出し、自ら読み出したX線画像データおよび受け取ったデータを外部に転送する。入力ポートTxInは、転送されたデータが入力されるポートである。出力ポートTxOutは、転送されるデータを出力するポートである。
【0035】
また、検出部7および転送部6は、いずれも検出モジュール1内部で内部クロックφを共有し、これにより同期して動作する。このように、各検出モジュール1は、内部クロックφを用いて自らの内部の制御、動作を行う。
【0036】
図3は、検出モジュールの詳細構成の例を示すブロック図である。検出部7は、転送制御回路TL、転送データ回路TD、転送クロック回路TCを備えている。転送制御回路TLは、自らの画像データの出力完了を契機に、転送制御ライン31を経由して転送開始を促す信号(次出力開始信号)を転送先の検出モジュール1に送出する。転送データ回路TDは、転送開始を促す信号が認識されたときには、転送データライン32を経由して転送クロックに同期させて、画像信号を転送ケーブル2に出力する。転送クロック回路TCは、転送クロックの入力に応じて、転送クロックライン33を経由してクロック信号を送出する。
【0037】
転送部6は、転送クロック用、転送画像データ用および転送制御信号用それぞれのリタイミング回路RCを備えている。検出モジュール1では、入力ポートTxInから入ってきた信号およびデータを、一旦、これらのリタイミング回路RCで、自らの内部クロックφを用いて同期し直し、出力ポートTxOutに出力する。
【0038】
これにより、複数の検出モジュール1の間で、露光の同期を取りつつ、一つの検出モジュール1から画像データの転送終了時に、隣接する次の検出モジュール1に画像データの転送を促す動作が可能となる。そして、互いにタイミングの異なる内部クロックφを持つ検出モジュール1同士が接続しているX線検出器50でも、画像データ信号の読み取り同期のための転送クロックライン33と、画像データを送るための転送データライン32との間のタイミングが常に保証される。
【0039】
図3に示すように、各々の検出モジュール1は、転送ケーブル2で交互に接続される。転送ケーブル2は、転送クロックライン33、転送データライン32および転送制御ライン31の三種類の信号線で構成されている。転送クロックライン33は、画像データ信号の読み取り同期のための転送クロック信号を伝送する。転送データライン32は、一つ以上の信号線からなる画像データを伝送する。転送制御ライン31は、各々の検出モジュール1のデータ送出を制御する制御信号を伝送する。
【0040】
転送ケーブル2を通って、入力ポートTxInから入力された信号は、すべて、一旦、転送部6に入る。転送部6内のリタイミング回路RCは、上記の通り、検出モジュール1の内部クロックφによりリタイミングして出力ポートから出力する。また、各検出モジュール1は、検出モジュール1ごとのデータの切れ目を示す信号も出力する。このために、Camera Linkのような規格の伝送ラインを使用してもよい。
【0041】
このようにして、互いに接続された検出モジュール1は、各々が独自に自ら検出した画像データを転送する機能を有し、なおかつ、受け取った画像データを中継転送する機能を有している。このようにして、特に拡張のためのハードウェアの調整なしに、任意台数の検出モジュール1を任意の位置に自由配置してX線検出器50を構成できる。
【0042】
検出モジュール1は、転送制御ライン31に、転送データライン32と同一方向に送出される順方向制御ライン12と、転送データライン32とは逆方向に送出される逆方向制御ライン13を含むことが好ましい。これにより、制御機器3から直接、画像転送開始の指令を出すような双方向に対応した制御を、X線検出器50の構成に応じて行うことができる。
【0043】
また、転送制御ライン31の順方向制御ライン12と逆方向制御ライン13に、双方向に対して通信を行うためのシリアル通信ラインを含めることが好ましい。制御機器3から検出モジュール1へ文字列による命令、制御を行うことが可能となる。
【0044】
転送部6の入力ポートTxInの直後および出力ポートTxOutの直前のそれぞれに、入力用および出力用のラインバッファ10を備えることが好ましい。これにより、検出モジュール1間の転送で生じる信号の減衰や歪を取り除き、制御機器3に信号が到達した時点での信号の品質を保証できる。なお、前後の位置関係は、信号の入出力の順序により決まり、信号の入力側が前、信号の出力側が後である。
【0045】
また、転送ケーブル2の中の各信号ラインを、差動信号ラインで構成することが好ましい。これにより、画像データ読み出しのための転送クロックの周波数を高くすることができる。特に、多数の検出モジュールの接続により生じうる画像データ量の増大に対して、転送時間を短縮して対処できる。
【0046】
検出モジュール1は、X線画像データの転送の入力側末端に位置していることを認識する位置確認ポート11を備えることが好ましい。これにより、接続の末端に位置する検出モジュールに特有の動作をさせ、高速の転送開始動作が可能になる。
【0047】
たとえば、後述の図5に示す構成では、第一のモジュール20のみが、転送クロックTxClkを送出できる。また、X線に対する露光終了の時点から最初にデータ転送を開始することもできる。このように、位置確認ポート11により、通信で特定の検出モジュールに対して転送開始を促す場合と比べて、早くデータ転送を開始できる。
【0048】
各検出モジュール1は、出力ポートを通る信号線から、自らの画像データの出力完了を転送先の検出モジュール1に伝える信号(次出力開始信号)を出力する。このように次出力開始信号が送出されると、その列全体が順次芋づる式に転送を開始する。したがって、各検出モジュール1は入出力の上流側に信号を送出しない。
【0049】
各検出モジュール1は、入力ポート側に入力側ラインバッファを、出力ポート側に出力側ラインバッファを備えている。入力側ラインバッファは、入力信号を一時的に記憶する。出力側ラインバッファは、出力信号を一時的に記憶する入力側ラインバッファ、出力側ラインバッファの各々は、使用される検出モジュール間のケーブルの信号ラインの特性に合った駆動能力を有する。
【0050】
(リタイミング)
図4(a)は、リタイミング回路RCの動作を示す概略図であり、図4(b)は、リタイミング回路RCによる信号相互の動作関係を示す図である。図4(a)は、個々のリタイミング回路RCを簡略化して示している。図4(a)に示す動作状態では、リタイミング回路RCに対して、入力信号InTxと出力信号OutTx、および、内部クロックφが入力されている。
【0051】
これら信号の相互の動作関係を図4(b)に示す。内部クロックφに対して全く同期していない入力信号InTxが、Highとして最初の内部クロックφの立ちあがりタイミング15で認識されると、リタイミング回路RCは出力信号OutTxとしてHighを出力する。また、一旦Highとなった入力信号InTxがLowとなったことを最初に認識しうる内部クロックφの立ち上がりタイミング17で認識されると、リタイミング回路RCは出力信号OutTxからLowを出力する。このようにして、入力された信号を、自らの内部クロックφのタイミングにあった信号に変換できる。
【0052】
(データ転送の動作例)
図5(a)〜(c)は、いずれもX線画像データの転送例を示す図である。図5(a)は、まず、第一のモジュール20の画像データを、第二のモジュール21、第三のモジュール22を経由して、最後に、通信ケーブル4を通って制御機器3に、送り込む態様を示している。なお、第一のモジュール20、第二のモジュール21、第三のモジュール22は、いずれも検出モジュール1として構成されているが、便宜上、転送順に区別する。
【0053】
第一のモジュール20が自らの画像データを全て送り終えたら、たとえば転送制御ライン31を通して、第二のモジュール21に対して転送開始を促す信号(図示せず)を送り込むことで、第二のモジュール21が自らの画像データを送り始めることができる。その動作を、図5(b)に示す。
【0054】
同様に、第二のモジュール21が自ら検出した画像データを全て送り終えたら、第三のモジュール22に対して送出完了を伝えることにより、第三のモジュール22が自ら検出した画像データを送り始めることができる。その動作を、図5(c)に示す。以上の一連の動作により、データ転送のためのハードウェアを別途用意することなく、任意数の検出モジュール1を接続した状態で画像取得を行うことが可能となる。
【0055】
図6は、図5に示す画像データの転送動作を示す信号のタイミング図である。図6に示す例では、転送クロックTxClkCは、通信ケーブル4で伝送される。データTxDataCは通信ケーブル4において転送データライン32の中のひとつの信号ライン上で送出される。
【0056】
信号ExEndは、第一のモジュール20において、X線に対する露光の終了を示す信号、すなわち、画像データの転送開始を促す信号であり(図示せず)、この信号は、第一のモジュール20の内部の信号でも、外部から与えられる信号でもかまわない。信号TxNext1は、第一のモジュール20が第二のモジュール21に対して、転送制御ライン31を通して転送開始を促す信号である。同様に、信号TxNext2は、第二のモジュール21が第三のモジュール22に対して、転送制御ライン31を通して転送開始を促す信号である。
【0057】
転送クロックTxClkCは、制御機器3において、転送データライン32の信号を読み取るために用いられる。たとえば、転送クロックTxClkCにより転送クロックTxClkCの立ち上がりが転送データライン32の実データ部分の中央に位置するよう、タイミングが維持されることが望ましい。
【0058】
ところが、個々の検出モジュール1においては、その内部クロックφを、同一の動作周波数で生成することは可能であるものの、動作のタイミングをそろえることは困難であるため、そのままでは各々の検出モジュールが送出する画像データ信号のタイミングは、そろってはいない。
【0059】
一方、図1に示す構成では、各々のモジュールが転送クロックTxClkを独自に送出したとすると、検出モジュール間のデータ送出切り替えの時点で、各転送クロックTxClk同士の間の内部クロックφのタイミングのずれに起因するタイミングのずれが生じ、転送クロックTxClkCにおいて、クロック信号に不ぞろいのタイミングが発生してしまう。
【0060】
このため、転送クロックTxClkを送出するのは、X線検出器50を構成する検出モジュール1のうちの一つであることが望ましい。図5に示す例では、第一のモジュール20が転送クロックTxClkを送出し、その内部では、図3に示す転送クロック回路TCが、転送クロックライン33を使って、クロック信号を送出する。それ以外のモジュールでは、転送クロックライン33は無効となっている。
【0061】
図6に示す態様で、信号ExEndが第一のモジュール20で認識されたときには、第一のモジュール20は、自らが生成する転送クロックTxClkに同期させて、画像信号を転送データ回路TDから、転送データライン32を経由して、転送ケーブル2内のデータTxDataに出力する。図5(a)には、この状態が示されている。
【0062】
図6に示す例では、画像データTxData1に示されている。第一のモジュール20の画像データ転送が終了すると、第一のモジュール20は、転送制御回路TLにおいて信号TxNext1を、転送制御ライン31を経由して、第二のモジュール21に送出する。信号TxNext1を受けた第二のモジュール21は、自ら検出した画像データTxData2の送出を開始する。
【0063】
画像データ送出開始までの時間30は、予め取り決められた転送クロックTxClkのクロック数に基づいて決まる。これにより、常に転送クロックTxClkCに対して、同期したタイミングと、一定間隔のクロック数で間の置かれた画像データを、転送ケーブル2内のデータTxDataCにおいて送出することが可能となる。このようにして、第二のモジュール21と第三のモジュール22の間においても、同様に動作が行なわれ、信号TxNext2を受けた第三のモジュール22は、自ら検出した画像データTxData3を送出する。
【0064】
以上のような手順を踏むことにより、多数の検出モジュールを接続する場合でも、制御機器3での読み出しタイミングが保証された読み出しクロックおよび画像データを伝送できる。
【0065】
(検出モジュールの配置例)
このように、検出モジュール1を、一連の転送ケーブル2に接続することで、様々な形態の検出モジュールの配置に対応できる。図7(a)〜(c)は、検出モジュールの配置例を示す図である。図7(a)〜(c)では、制御機器3から見て接続を行う順番を、破線矢印で示している。図7(a)は、縦横N×Mでの同一平面配置、図7(b)は、同一面での横一線配置、図7(c)は、円周上に検出面を配した配置を示している。なお、モジュール間をつなぐ転送ケーブル2の長さ、屈曲度が許す範囲であれば、その他の配置を取ることも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 検出モジュール
2 転送ケーブル
3 制御機器
4 通信ケーブル
6 転送部
7 検出部
10 ラインバッファ
11 位置確認ポート
12 順方向制御ライン
13 逆方向制御ライン
15 タイミング
17 タイミング
20 第一のモジュール(検出モジュール)
21 第二のモジュール(検出モジュール)
22 第三のモジュール(検出モジュール)
30 画像データ送出開始までの時間
31 転送制御ライン
32 転送データライン
33 転送クロックライン
50 X線検出器
100 X線検出器システム
DataOut 画像データライン
DataCtrl 画像制御線
RC リタイミング回路
TC 転送クロック回路
TD 転送データ回路
TL 転送制御回路
TxIn 入力ポート
TxOut 出力ポート
ExEnd 信号
InTx 入力信号
OutTx 出力信号
TxClk 転送クロック
TxClkC 転送クロック
TxData1、TxData2、TxData3 画像データ
TxDataC データ
TxNext1 信号
TxNext2 信号
φ 内部クロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュールごとにX線画像データを検出するX線検出器であって、
各々が直列に接続され、内部クロックに基づいて自ら検出したX線画像データを同期して読み出すとともに、前記読み出されたX線画像データを転々と転送する複数の検出モジュールを備え、
前記複数の検出モジュールの各々は、前記転送されたX線画像データを受け取り、前記受け取ったX線画像データを前記内部クロックにより同期し直して、前記自ら検出したX線画像データとともに転送することを特徴とするX線検出器。
【請求項2】
前記複数の検出モジュールの各々は、前記転送の同期に用いる転送クロックおよび前記転送を制御する転送制御信号を前記X線画像データとともに転送し、前記内部クロックによって前記転送クロックをリタイミングすることで同期し直すことを特徴とする請求項1記載のX線検出器。
【請求項3】
前記X線画像データの転送の出力側末端の検出モジュールは、前記複数の検出モジュールを制御する制御機器に前記X線画像データを転送することを特徴とする請求項1または請求項2記載のX線検出器。
【請求項4】
前記複数の検出モジュールの各々を接続するラインとして、前記X線画像データの転送に対して順方向に前記転送制御信号を伝達する順方向制御ラインと、前記X線画像データの転送に対して逆方向に前記転送制御信号を伝達する逆方向制御ラインとを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線検出器。
【請求項5】
前記複数の検出モジュールの各々を接続し、前記転送制御信号を前記X線画像データの出力側および入力側の双方向に対して通信を行なうためのシリアル通信ラインを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかにX線検出器。
【請求項6】
前記複数の検出モジュールの各々は、入力信号を一時的に記憶する入力側ラインバッファと、出力信号を一時的に記憶する出力側ラインバッファとを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のX線検出器。
【請求項7】
前記複数の検出モジュールの各々は、差動信号により前記データ転送を行うことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のX線検出器。
【請求項8】
前記複数の検出モジュールの各々は、シングル・フォトン・カウンティング方式でX線を検出することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のX線検出器。
【請求項9】
前記検出モジュールは、前記X線画像データの転送の入力側末端に位置していることを認識する位置確認ポートを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のX線検出器。
【請求項10】
前記検出モジュールは、試料に対してX線の検出面を円周上に形成するように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のX線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−137379(P2012−137379A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289688(P2010−289688)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】