説明

X線検査装置

【課題】未知の被検体に対しても、管電圧と管電流を容易に設定できるX線検査装置を提供する。
【解決手段】X線管11と、このX線管11の管電圧と管電流とを制御するX線制御部15と、被検体21を透過したX線22を検出するX線検出器12とを有するX線検査装置1において、X線検出器12で検出した被検体の透過画像からこの透過画像のコントラストとノイズとの比であるコントラスト対ノイズ比を算出し、このコントラスト対ノイズ比に基づいてX線管11の管電圧及び管電流の最適な値を求めてX線制御部15に出力する自動管電圧管電流設定部13bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて被検体の透過画像、断面像あるいは3次元画像を作成するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品やアルミ鋳物等の工業製品の内部を検査するためのX線検査装置が利用されている。例えば、X線検査装置の一種であるX線透視検査装置では、操作者がX線管の管電圧V及び管電流Iを手動で変更することができる。従って、操作者は透過画像を観察しながら被検体にあわせた管電圧V及び管電流Iを設定して最適な画像を得ている。
【0003】
具体的には、管電圧Vを増加させた場合、X線フォトンの1つ1つのエネルギーEが増大するとともに、フォトン数Nが増大する。また、管電流を増加させた場合、X線フォトンの1つ1つのエネルギーEは変わらず、フォトン数Nが増大する。
【0004】
X線透視検査装置において、X線検出器は、2次元の分解能でX線を検出するが、各検出素子の出力は各素子が受けるX線エネルギー総量(E×N)に比例する。そのため、透過画像は、各検出素子の出力に応じて、明暗を割り当てることで生成される。
【0005】
X線の透過能力はX線フォトンの1つ1つのエネルギーEが高くなるほど大きくなる。そこで、管電圧Vと管電流Iを手動で変更する場合、まず、被検体を透過させることのできる管電圧Vに比例するX線フォトンの1つ1つのエネルギーEを決定する。しかしながら、この管電圧Vに比例するエネルギーEが高すぎた場合、画像のコントラストが低下して最良の画像を得ることができない。
【0006】
そこで、管電圧Vを下げるが、このとき画像が暗くなるので管電流Iを増やして出力を補う。しかし、管電圧Vを下げすぎた場合、得られる画像は、コントラストが大きすぎて白とびや黒つぶれした画像となってしまう。
【0007】
このように、被検体の交換や観察視野変更の度に、管電圧V及び管電流Iの調整をすることは面倒で操作者の技量に依存する。そのため、従来、既知の被検体に関しては、管電圧V又は管電流Iの設定に、過去の観察で利用した管電圧V又は管電流Iの値を利用して調整していた。
【0008】
これに対し、未知の被検体に対しても、その透過画像に基づいて、最適なX線条件である管電圧Vや管電流Iを自動設定できる技術もある(たとえば、特許文献1及び2参照)。このような特許文献1及び2に記載の技術では、透過画像の中で被検体の観察しようとする範囲が、目視に適した明るさ範囲になる管電圧V及び管電流Iを最適なX線条件とし、この管電圧V及び管電流Iの値に自動で設定している。
【0009】
しかしながら、上述したように、明るさ調整のために管電圧V又は管電流Iを自動で設定する場合、管電流I、管電圧V及び画像の階調調整との分担に任意性が生じ、最適な管電圧Vや管電流Iが決まらないことが問題になることがある。具体的には、画像を明るくする際、管電圧Vを上げるか、あるいはウインドウレベルを下げるかの選択が決まらない等の問題が生じる。
【0010】
ここで、明るさやコントラストの調整は、画像の階調の調整で自由にできるため、管電圧V又は管電流Iは、明るさ調整に使うべきではないと考えることができる。そのため、管電圧V又は管電流Iは、明るさの調整に用いるのではなく、観察部分の構造に対して最大のSN比(シグナル対ノイズ比)を与えるように設定すべきであると考えられる。
【0011】
これに対し、特許文献3に記載の技術では、透過画像の観察部分の明るさBから、観察部分の減衰指数τとそのノイズστの比が最大となる管電圧Vと管電流Iを予測計算することで、観察部分の構造に対して最大のSN比を与える管電圧及び管電流を設定している。
【0012】
特許文献3に記載の発明では、まず、ある管電圧V及び管電流Iでの透過画像から直接その画像の減衰指数τとノイズστを計算するのでなく、その画像の明るさBと較正で得た被検体が無い状態で取得したAIR画像の明るさB0を用いて、他の全ての管電圧V及び管電流Iについての減衰指数τ及びノイズστを予測計算している。その後、このτ/στが最大となる管電圧V及び管電流Iを、最適な管電圧V及び管電流Iとして設定している。
【0013】
このようにして設定された管電圧V及び管電流Iは、τ/στが最大であるため、この管電圧V及び管電流Iにより得られた画像から求められたSN比は、観察部分の構造に対して最大のSN比になる。
【特許文献1】特開2002−14059号公報
【特許文献2】特開2003−173895号公報
【特許文献3】特開2004−317368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した特許文献3に記載の方法によれば、AIR画像の明るさB0を用いており、予め各管電圧VについてAIR画像の明るさB0を較正しておく必要がある。このように各管電圧について、予めAIR画像の明るさB0を較正しておくことは余計な作業が増え、面倒であるという問題がある。
【0015】
また、予測計算の結果がAIR画像の明るさB0の絶対値に依存するため、X線管の出力やX線検出器の経時変化による誤差が問題となり、頻繁に較正をしなければならないとういう問題がある。
【0016】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、未知の被検体に対しても、透過画像に基づいて観察部分の構造に対して最大のSN比を与える管電圧Vと管電流Iを設定することができるX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
画像の階調調整との分担に任意性が生じることにより最適な管電圧V及び管電流Iが決まらないという課題を解決するため、発明者は鋭意研究した結果、以下の知見を得た。
【0018】
第1に、物理的に最適なX線条件である管電圧V及び管電流Iは、観察部分の構造に対して最大のSN比(シグナル対ノイズ比)を与える条件である。また、管電圧V及び管電流Iは、透過画像の見易さとなる階調の調整とは無関係である。そのため、観察部分の構造に対して最大のSN比を与えるように管電圧Vと管電流Iを設定することが主であり、このようにVI決めした画像が視覚的に見やすくなるよう階調変換を行うのが従である。
【0019】
第2に、手動で物理的に最適な管電圧Vと管電流Iを設定するときの最大の問題点は、観察部分の見え具合が追跡できなくなってしまうことにある。具体的には、管電圧V及び管電流Iを変化させ、たとえば観察部分の構造である鋳物の中のボイドなどが最大のSN比で見えるようにする際、VI変化により階調が変化することにより、ボイドの見え具合が追跡できなくなってしまう。そのため、階調調整を行う必要が生じ記憶に頼ってSN比を評価しなければならなくなり、時間がかかり、煩わしく精度も低下するものとなる。
【0020】
上記課題を解決するため、第1の特徴に係る本発明は、X線管と、このX線管の管電圧と管電流とを制御するX線制御部と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを有するX線検査装置において、X線検出器で検出した被検体の透過画像からこの透過画像のコントラストとノイズとの比であるコントラスト対ノイズ比を算出する自動管電圧管電流設定部を有することを要旨としている。
【0021】
上記構成の本発明によれば、画像のコントラストとノイズの比で最適度を評価する。画像コントラストが大きいことは、被検体の構造がよく見えることで、シグナルSが大きいことである。したがって、請求項1記載の発明によれば、未知の被検体に対してもその透過画像に基づいて観察部分の構造に対して最大のSN比を与える管電圧Vと管電流Iを最適な設定値とすることが可能である。
【0022】
また、第2の特徴に係る本発明は、自動管電圧管電流設定部は、X線制御部に対して所定のルールに基づいて管電圧及び管電流の値の組み合わせを変更させ、組み合わせごとに取得した透過画像に基づいてコントラスト対ノイズ比を求め、求められたコントラスト対ノイズ比が最大となる管電圧及び管電流を選択して管電流及び管電圧の最適な値としてX線制御部に設定することを要旨としている。
【0023】
上記構成の本発明によれば、自動管電圧管電流設定部は、管電圧Vと管電流Iを変更しながら得られた透過画像の観察部分(ROI)に対して画像のコントラスト対ノイズ比(コントラスト/ノイズ)を計算し、この比が最大となる管電圧Vと管電流Iを求めて、最適な管電圧V及び管電流Iの値として設定する。画像コントラストが大きいことは、被検体の構造がよく見えることで、シグナルが大きいことである。したがって、第2の特徴に係る本発明によれば、未知の被検体に対してもその透過画像に基づいて観察部分の構造に対して最大のSN比を与える管電圧Vと管電流Iを最適な設定値とすることが可能である。
【0024】
また、第3の特徴に係る本発明は、自動管電圧管電流設定部は、各管電圧に対して許容される最大の管電流となるように管電圧と管電流の組み合わせを変更することを要旨とする。
【0025】
上記構成の本発明によれば、管電圧Vと管電流Iの設定を変更するとき、管電流I値は各管電圧V値に対する上限の値をとるように変化させているため、VI平面上の面領域でなく線領域の探索になり最適な管電圧V及び管電流Iを短時間で探すことができる。
【0026】
さらに、第4の特徴に係る本発明は、自動管電圧管電流設定部は、1つの管電圧と管電流の組み合わせにおいて取得した複数の透過画像の画素それぞれの明るさのこの複数透過画像間のばらつきの大きさを求めて画像のノイズとすることを要旨としている。
【0027】
上記構成の本発明によれば、画像のノイズを、画素それぞれの明るさを取得した複数枚の画像間のばらつきで求めることで、未知の被検体について、被検体に関わり無い一定の単純な計算で正確に画像のノイズを計算することが可能である。
【0028】
また、第5の特徴に係る本発明は、自動管電圧管電流設定部は、取得した透過画像の明るさの画素間のばらつきの大きさを求めて画像のコントラストとすることを要旨としている。
【0029】
上記構成の本発明によれば、画像コントラストを透過画像の明るさの画素間のばらつきで求めているので、未知の被検体について、その構造に関わり無く、一定の単純な計算で正確に画像コントラストを計算することが可能である。
【0030】
さらに、第6の特徴に係る本発明は、自動管電圧管電流設定部は、取得した透過画像の明るさの低周波成分を含まない空間でのばらつきの大きさを求めて画像のノイズとすることを要旨としている。
【0031】
上記構成の本発明によれば、画像のノイズを、取得した画像の明るさの低周波成分を含まない空間でのばらつきを求めることで、未知の被検体について、その構造に関わり無く、一定の単純な計算で画像のノイズを計算することが可能である。
【0032】
また、第7の特徴に係る本発明は、自動管電圧管電流設定部は、取得した透過画象の明るさの低周波成分を含んだ空間でのばらつきの大きさを求めて画像のコントラストとすることを要旨としている。
【0033】
上記構成の本発明によれば、画像コントラストを透過画像の明るさの低周波成分を含んだ空間でのばらつきで求めているので、未知の被検体について、その構造に関わり無く、一定の単純な計算で画像コントラストを計算することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
以上、説明したように本発明によれば、未知の被検体に対しても、管電圧と管電流を容易に設定できるX線検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、図面を用いて本発明について説明する。
【0036】
[第1の実施の形態]
(X線検査装置)
図1に示すように、第1の実施の形態に係るX線検査装置1は、X線管11、X線検出器12、コンピュータ13、表示部14、X線制御部15及び高圧発生部16を有している。
【0037】
X線管11は、被検体21を透過させて透過画像を得るために用いるX線ビーム22を発生させる。X線検出器12は、X線管11から発生したX線ビーム22が被検体21を透過したX線を2次元分解能で検出する。このX線検出器12は、たとえば、X線I.I.(Image Intensifier)とテレビカメラより成り、検出したX線像を12bitのディジタル信号として、接続されるコンピュータ13に送信する。コンピュータ13は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク、キーボード、マウス、各種インタフェース等を備えている。また、コンピュータ13は、図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るX線検査装置1を実現するため、ソフトウェア機能ブロックとして、画像のROI(関心領域)設定部13a、自動VI設定部(自動管電圧管電流設定部)13b及び階調変換部13cを有する。
【0038】
ROI設定部13aは、マウス等の入力手段により操作者に指定された領域を、透過画像中においてROIとして設定する。自動VI設定部13bは、マウス等の入力手段により操作者が入力したROI設定に基づいて、管電圧V及び管電流Iの値を設定する。また、自動VI設定部13bは、設定された管電圧V値及び管電流I値をX線制御部15に送信する。階調変換部13cは、X線検出器12で検出して得られた12bitの透過画像を8bitの透過画像に変換する。また、階調変換部13cは、変換した8bitの透過画像を表示部14に送信する。
【0039】
表示部14は、階調変換部13cで変換された透過画像を表示画像として表示する。
【0040】
X線制御部15は、自動VI設定部13bからの入力に基づいて、X線管11における管電圧Vと管電流Iを設定した値になるように高圧発生部16を制御する。高圧発生部16は、X線制御部15の制御に基づいて、X線を生成するための高電圧を発生させる。
【0041】
なお、図1に示すのは、X線検査装置1の概略図である。そのため、被検体を載置するテーブル、テーブルを移動させて視野や画像の倍率を変える機構部、また、X線の漏洩を防ぐ遮蔽箱等は省略している。
【0042】
(VI設定処理)
図2に示すフローチャートを用いて自動VI設定部13bにおける自動VI設定の処理について説明する。X線検査装置1は、自動VI設定により、管電圧V及び管電流Iを最適な値に設定する。
【0043】
操作者は、X線検査装置1を利用して観察する場合、まず、被検体21をテーブルに載置し、X線ビーム22を発生させるためにX線スイッチをONにする。X線スイッチがONにされると、X線管11からX線ビーム22が発生され、コンピュータ13は、被検体21の透過画像を動画像としてリアルタイムで表示部14に出力する。このとき、管電圧V及び管電流Iは最適な値に設定されていないため、得られる画像は最適な画像ではない。
【0044】
操作者は、被検体21の観察部位が視野に入るように図示しない機構を調整し、観察部位を含むようにROI(関心領域)を設定する。ROI設定部13aは、操作者により、マウス等の入力手段の操作によりたとえば正方形の図形が入力されると、この入力を記憶するとともに、表示されている透過画像に重ねてROIを表示させる。
【0045】
操作者の操作により「自動VI」の処理が開始されると、自動VI設定部13bは、初期値の管電圧V及び管電流IをX線制御部15に送信する(S01)。VI初期値(図3のP0)の管電圧V値は、例えば、自動VI処理を開始した時点で設定されていた管電圧Vの値から一定値減算した値を用いる。
【0046】
次に、自動VI設定部13bは、X線検出器12からKフレームの透過画像を入力し、メモリに記憶する(S02)。ここで、Kフレームとは、約10フレームであるが、10フレームに限られる必要はなく、任意の整数に設定することができる。
【0047】
続いて、自動VI設定部13bは、X線検出器12から入力したKフレームの透過画像から、画像ノイズNを算出する(S03)。この画像ノイズNは、Kフレームの透過画像間の画素それぞれの明るさのばらつきを求めることにより算出される時間での分散である。例えば、画像ノイズNの算出は、下記の式1および式2により求めることができる。
【0048】
画素(i,j)のノイズ=√{(B(i,j)−B(i,j)のフレーム間平均)2のフレーム間平均}・・・(1)
画像ノイズN=(画素(i,j)のノイズ)のROI内平均・・・(2)
なお、B(i,j)は画素(i,j)の濃度値である。
【0049】
ステップS03で画像ノイズNが算出されると、自動VI設定部13bは、K枚の透過画像から、画像コントラストCを算出する(S04)。この画像コントラストCは、透過画像の明るさの画素間のばらつきを求めることにより算出される空間での分散である。例えば、画像コントラストCの算出は、以下の式3,4により求めることができる。
【0050】
1フレームのコントラスト=√{(B(i,j)−B(i,j)のROI内平均)2のROI内平均}・・・(3)
画像コントラストC=(1フレームのコントラスト)のフレーム間平均・・・(4)
次に、CN比(コントラスト対ノイズ比)を求め、管電圧V及び管電流Iの値とともにメモリに記憶する(S05)。CN比は、画像コントラストC及び画像ノイズNによりC/Nの計算をすることにより求められる。
【0051】
続いて、終了条件を満たすか否かにより、自動VI設定の処理が終了されるか否かの判定を行う(S06)。終了条件としては、例えば、ステップS05で算出されたCN比とメモリに記憶されている前回以前のCN比の最大値との差が、予め定められる値以上小さかった場合、あるいは管電圧V値及び管電流I値が予め定めた終了値に達した場合、終了条件を満たすと判定する。
【0052】
ステップS06で終了でないと判定された場合、予め定めた次の管電圧V値及び管電流I値を設定する(S07)。図3は、ステップS07における管電圧V値及び管電流I値の設定順序を示している。図3は、横軸を管電圧Vとし、縦軸を管電流Iとしている。図3では、VI初期値P0からP1,P2・・・と、管電流Iの値の上限であるI上限ラインL1上を管電圧Vが一定間隔で上昇するように変化させる。ここで、I上限ラインL1は、X線制御部15により、X線管11の保護のために上限として設けられている値である各管電圧Vに対する管電流Iの上限の値を結んで設定されたラインであり、図3における点A,B,C,Dを結ぶラインである。ステップS07で次の管電圧V及び管電流Iの値が設定されると、ステップS02に戻ってステップS02〜S06の処理を繰り返す。
【0053】
一方、ステップS06で、終了と判定された場合、自動VI設定部13bは、メモリに記憶されているCN比とVI値との組み合わせから、CN比が最大の管電圧V及び管電流Iの値を最適VI値として採用して設定されるように、送信して自動VI設定の処理を終了する(S08)。
【0054】
上述した第1の実施の形態によれば、自動VI設定部13bは、管電圧V及び管電流Iを変更しながら得られた透過画像の観察部分(ROI)に対して、画像のコントラストCとノイズNとの比を求め、求められたCN比が最大となる管電圧Vと管電流Iとを求めて最適な管電圧V及び管電流Iの値として設定している。画像コントラストCが大きいことは、被検体の構造がよく見えることで、シグナルSが大きいことである。従って、未知の披検体に対しても、その透過画像に基づいて、観察部分の構造に対して最大のSN比を与える管電圧Vと管電流Iを容易に設定することができる。
【0055】
また、上述した第1の実施の形態によれば、得られた透過画像のばらつきから画像のコントラストCとノイズNを算出している。具体的に、第1の実施の形態によれば、複数の管電圧V及び管電流Iの値での透過画像から、直接算出した画像のコントラストC及びノイズNからCN比を求め、このCN比が最大となる管電圧V及び管電流Iを探索している。この方法によれば、上述した特許文献3で記載されるように面倒な較正を不要とし、また、X線管の出力や経時変化に基づく依存を問題としない。
【0056】
さらに、上述した第1の実施の形態によれば、画像ノイズを1枚の透過画像から求めるのではなく、画素それぞれの明るさのK枚の画像間のばらつき、すなわち画素明るさの時間変動から求めている。通常、1枚の画像からノイズを求めようとすると、被検体の構造でばらついているのか、ノイズなのか判別できなくなるので、予め構造のない部分を知って、ここでノイズを求める必要がある。本実施の形態のように、画像間のばらつきでノイズを求めることで、未知の被検体について、被検体にかかわり無い一定の単純な計算で正確に画像ノイズを求めることが出来る。
【0057】
さらにまた、上述した第1の実施の形態によれば、画像コントラストCを透過画像の明るさの画素間のばらつきにより算出している。一般的に、画像コントラストCは被検体の構造を知った上で、ある一部と他の一部との明るさの違いとして求める。しかしながら、第1の実施の形態では、平均値からの分散として、rms(root mean square)により算出している。そのため、未知の被検体についても、被検体の構造に依存せず、一定の単純な計算で正確に画像コントラストCを求めることが可能となる。
【0058】
また、上述した第1の実施の形態によれば、管電圧V及び管電流Iの値を変更する際、管電流Iの値が各管電圧Vの上限の値をとるように変更させる。このため、管電圧V及び管電流Iにより形成されるVI平面上の面領域でなく、線領域での探索になるため、短時間で最適な管電圧V及び管電流Iの値を求めることができる。ここで、管電流Iの上限ライン上に最適な管電圧V及び管電流Iの値が存在するのは、上述した特許文献3にも記載されているように、同じ管電圧Vでは、管電流Iが大きい程、SN比が向上し、CN比が増大するためである。
【0059】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係るX線検査装置における自動VI設定の処理を説明する。本発明の第2の実施の形態に係るX線検査装置は、上述した第1の実施の形態に係るX線検査装置1と同一の構成であるため、図1に示したX線検査装置1を用いて説明する。なお、第2の実施の形態に係るX線検査装置における自動VI設定の処理は、図2に示した第2の実施の形態に係るX線検査装置の処理と同一である為、図2に示したフローチャートを参照して説明する。
【0060】
第2の実施の形態に係るX線検査装置の自動VI設定の処理において、第1の実施の形態に係る自動VI設定の処理と異なる点は、ステップS03における画像ノイズの算出方法である。ステップS02でKフレームの透過画像の取得が終了すると、続いて、自動VI設定部13bは、X線検出器12から入力したKフレームの透過画像から、画像ノイズNを算出する(S03)。
【0061】
ステップS03で求められる画像ノイズNは、透過画像B(i,j)に画像空間でのハイパス(高周波通過)処理(ローカット処理)を施し、このハイパス処理した透過画像B’(i,j)に対し、透過画像の明るさの画素間のばらつきを求めることにより算出される空間での分散である。
【0062】
図4を参照してハイパス処理を説明する。図4(a)は、元画像Bのプロファイルである。まず、図4(a)に示すような元画像Bに対して、ローパス(低周波通過)処理を行うと、図4(b)に示すようななだらかなローパス画像Blpとなる。具体的には、元画像Bの各画素を、その画素を中心とする所定サイズの領域(例えば、5×5画素)の平均で置き換えることでローパス画像Blpが得られる。次に、元画像Bからこのローパス画像Blpを減算して、図4(c)に示すようなハイパス画像B’が得られる。なお、このようなハイパス処理はROI内の行なえばよい。
【0063】
このように、ハイパス処理により、ほとんどノイズのみの画像を得ることが出来る。その後、求められたハイパス画像B’のばらつきから画像ノイズを算出する。例えば、画像ノイズNの算出は、下記の式5,6により求めることが出来る。
【0064】
1フレームのノイズ=√{(B’(i,j)−B’(i,j)のROI内平均)2のROI内平均}・・・(5)
画像ノイズN=(1フレームのノイズ)のフレーム間平均・・・(6)
なお、B’(i,j)はハイパス処理した画像の画素(i,j)の濃度値である。
【0065】
上述した第2の実施の形態によれば、自動VI設定部13bは、管電圧V及び管電流Iを変更しながら得られた透過画像の観察部分(ROI)に対して、画像のコントラストCとノイズNとの比を求め、求められたCN比が最大となる管電圧Vと管電流Iとを求めて最適な管電圧V及び管電流Iの値として設定している。画像コントラストCが大きいことは、被検体の構造がよく見えることで、シグナルSが大きいことである。従って、未知の披検体に対しても、その透過画像に基づいて、観察部分の構造に対して最大のSN比を与える管電圧Vと管電流Iを容易に設定することができる。
【0066】
また、上述した第2の実施の形態によれば、得られた透過画像のばらつきから画像のコントラストCとノイズNを算出している。具体的に、第2の実施の形態によれば、複数の管電圧V及び管電流Iの値での透過画像から、直接算出した画像のコントラストC及びノイズNからCN比を求め、このCN比が最大となる管電圧V及び管電流Iを探索している。この方法によれば、上述した特許文献3で記載されるように面倒な較正を不要とし、また、X線管の出力や経時変化に基づく依存を問題としない。
【0067】
さらに、上述した第2の実施の形態によれば、画像ノイズを、ハイパス(高周波通過)処理した透過画像での明るさの空間での(画素間での)ばらつきとして求めている。通常、1枚の画像からノイズを求めようとすると、被検体の構造でばらついているのか、ノイズなのか判別できなくなるので、予め構造のない部分を知って、ここでノイズを求める必要がある。本実施の形態によれば、ハイパス処理することで被検体の構造によるばらつきの大部分を占める低周波成分を削除しており、未知の被検体について、その構造に関わり無く、一定の単純な計算で画像ノイズを求めることが出来る。
【0068】
さらにまた、上述した第2の実施の形態によれば、画像コントラストCを透過画像の明るさの空間でのばらつきにより算出している。一般的に、画像コントラストCは被検体の構造を知った上で、ある一部と他の一部との明るさの違いとして求める。しかしながら、第2の実施の形態では、平均値からの分散として、rms(root mean square)により算出している。そのため、未知の被検体についても、被検体の構造に依存せず、一定の単純な計算で正確に画像コントラストCを求めることが可能となる。
【0069】
また、上述した第2の実施の形態によれば、管電圧V及び管電流Iの値を変更する際、管電流Iの値が各管電圧Vの上限の値をとるように変更させる。このため、管電圧V及び管電流Iにより形成されるVI平面上の面領域でなく、線領域での探索になるため、短時間で最適な管電圧V及び管電流Iの値を求めることができる。ここで、管電流Iの上限ライン上に最適な管電圧V及び管電流Iの値が存在するのは、上述した特許文献3にも記載されているように、同じ管電圧Vでは、管電流Iが大きい程、SN比が向上し、CN比が増大するためである。
【0070】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態に係るX線検査装置も第1の実施の形態に係るX線検査装置1と同一の構成であるため、図1に示したX線検査装置1を用いて説明する。
【0071】
本発明の第3の実施の形態に係るX線検査装置1が第1の実施の形態に係るX線検査装置1と異なる点は、自動VI設定部13bにおける自動VI設定の処理である。第3の実施の形態に係るX線検査装置1の自動VI設定部13bでは、画像が明るすぎて飽和し又は暗すぎてCN比が計算できない場合を考慮してVI設定処理がされる。
【0072】
(VI設定処理)
図5に示すフローチャートを用いて、第3の実施の形態に係るX線検査装置1の自動VI設定部13bにおける自動VI設定の処理について説明する。
【0073】
操作者の操作により「自動VI」の処理が開始されると、自動VI設定部13bは、初期値の管電圧V及び管電流IをX線制御部15に送信する(S11)。
【0074】
VI初期値(図6のP0)の管電圧Vは、例えば、自動VI処理を開始した時点で設定されていた管電圧Vの値から一定値減算した値を用いる。
【0075】
次に、自動VI設定部13bは、X線検出器12から1フレームの透過画像を入力し、メモリに記憶する(S12)。
【0076】
続いて、自動VI設定部13bは、入力された透過画像が明る過ぎるか否かを判定する(S13)。明る過ぎるか否か判定は、例えば、透過画像におけるROI内の平均の明るさ、あるいはROI内の最大の明るさが規定値以上である場合、明る過ぎると判定する。又は、ROI内の画像の代わりに、画像全体の最大明るさで判定してもよい。
【0077】
ステップS13において、自動VI設定部13bが、入力された透過画像は明る過ぎると判定した場合、管電流Iを所定の値低い値に設定して(S14)ステップS12に戻り、ステップS12〜S14の処理を繰り返す。この所定の値とは、例えば、現在の管電流Iから所定の比率低い管電流Iの値である。このように、入力された透過画像が明る過ぎる場合、ステップS12〜S14の処理を繰り返すことで、入力される透過画像は次第に暗くなり、次のステップに進むことになる。
【0078】
一方、ステップS13において、自動VI設定部13bが、入力された透過画像は明る過ぎないと判定された場合、自動VI設定部13bは、入力された透過画像は暗過ぎるか否かを判定する(S15)。暗過ぎるか否かの判定は、例えば、透過画像におけるROI内の平均の明るさ、あるいはROI内の最小の明るさが規定値以下である場合、暗過ぎると判定する。
【0079】
ステップS15において、自動VI設定部13bが、入力された透過画像は暗過ぎると判定した場合、次の管電圧V及び管電流Iの値に設定する(S16)。図6は、ステップS16における管電圧V値及び管電流I値の設定順序を示している。図6は、横軸を管電圧Vとし、縦軸を管電流Iとしている。図6では、VI初期値P0からP1,P2・・・と、管電流Iの値の上限であるI上限ラインL1上を管電圧Vが一定間隔で上昇するように変化させる。ここで、I上限ラインL1は、第1の実施の形態で上述したように、X線制御部15により、X線管11の保護のために上限として設けられている値で、各管電圧Vに対する管電流Iの上限を結んで設定されたラインであり、図6における点A,B,C,E,Dを結ぶラインである。ステップS16で次の管電圧V及び管電流Iの値が設定されると、ステップS12に戻り、ステップS16,S12,S15の処理を繰り返すことで、取得される透過画像は次第に明るくなり、次のステップに進むことになる。
【0080】
具体的には、管電圧V及び管電流Iの設定がP0,P1,P2・・・のように変わると最初は通常、暗過ぎる状態から始まり、ある時点で暗すぎなくなり、また、点Eを越えると明る過ぎる状態になる。明る過ぎる状態の場合、ステップS13、S14、S12のループで管電流Iの値が修正され、飽和直前ラインL2をたどって管電圧V及び管電流Iの値が設定される。飽和直前ラインL2は、取得される画像の飽和を防止するために管電流に設定される管電流Iの上限の値であり、点E,Fで結ばれるラインである。実際には、VI設定の順序は、実質的に点A,B,C,E,Fで結ばれる修正上限ラインL3をたどることになる。
【0081】
一方、ステップS15において、自動VI設定部13bが、入力された透過画像は暗過ぎると判定されなかった場合、明る過ぎでもなく又暗すぎもしない状態である。このとき、自動VI設定部13bは、入力されるKフレームの透過画像をメモリ記憶する(S17)。ここで、Kフレームとは、第1の実施の形態の場合で上述したように例えば10フレーム程度である。
【0082】
次に、自動VI設定部13bは、CN比を求め、管電圧V及び管電流Iの値とともにメモリに記憶する(S18)。このCN比は、上述した第1の実施の形態と同様に、式1乃至式4を用いて、算出された画像のコントラストC及びノイズNを用いて求める。または、上述した第2の実施の形態と同様に、式3乃至式6を用いて、算出された画像のコントラストC及びノイズNを用いて求める。このとき、記憶する管電流Iの値としては、ステップS14で修正された値を用いる。
【0083】
続いて、終了条件を満たすか否かにより、自動VIの処理が終了されるか否かの判定を行う(S19)。例えば、終了条件は、今回のCN比が記憶されている前回以前のCN比より一定値以上小さかった場合、あるいは管電圧V値が予め定めた終了値に達した場合、終了条件を満たすと判定する。
【0084】
ステップS19で終了でないと判定された場合、ステップS16に進み、ステップS12〜S18の処理を繰り返す。
【0085】
一方、ステップS19で終了と判定された場合、自動VI設定部13bは、メモリに記憶されているCN比とVI値との組み合わせから、CN比が最大の管電圧V及び管電流Iの値を最適VIとして採用し、この管電圧V及び管電流Iが設定されるようにこの値をX線制御部15に送信して処理を終了する(S20)。
【0086】
上述した第3の実施の形態によれば、画像を飽和状態にしない条件をつけた上で最適なVI設定をすることができる。なお、ステップS13において明る過ぎるか否かの判定をROI内の最大の明るさで行なった場合には、ROI内を一箇所も飽和させない条件をつけた上での最適VI設定をすることができる。また、透過画像全体の最大の明るさで行った場合には、透過画像を一箇所も飽和させない条件をつけた上での最適VI設定をすることができる。
【0087】
[変形例1]
上述した第1乃至第3の実施の形態によれば、CN比をC÷Nの計算をして求められる値が最大となる管電圧V及び管電流Iを最適VIとしている。しかしながら、当然のことであるが、N÷Cの計算をして求められる値が最小となる管電圧V及び管電流Iを最適VIとしてもよい。
【0088】
また、ステップS08でCN比が最大の管電圧V及び管電流Iを選ぶとき、電圧V方向にローパスフィルタ処理を行ってから最大値を求めてもよい。ローパス(低周波通過)処理を行うことにより、CN比を算出する際の誤差が平滑化され、安定したCN比を得ることが可能となる。
【0089】
更に、上述した第1乃至第3の実施の形態によれば、予め定めた管電圧V及び管電流Iの組み合わせに対してCN比を求めているが、これに限られない。VI初期値P0は様々な決定方法がある。上述した各実施の形態では、管電圧Vの値を一定間隔で上昇させるように変化させているが、必ずしも一定間隔である必要は無い。また、必ずしも上昇方向に変化させる必要も無い。例えば、今回のCN比と前回のCN比の差分を考慮して、差分が小さいときに変化分ΔVを小さくするように管電圧Vの値を変化する方法もある。また、例えば、差分がプラスのときは、ΔVを前回と同符号に管電圧Vの値を変化させ、差分がマイナスのときは、ΔVを前回と符号を反転させて管電圧Vの値を変化させるようにすれば、自動的に管電圧Vの方向転換を行うことができる。このような方法を用いれば、最適VIをより短時間で求めることができる。
【0090】
さらに、上述した各実施の形態によれば、Kフレームの画像をメモリに蓄積して記憶しているが、この方法に限られない。例えば、1フレームの画像を次々に上書きして記憶する方法であっても、上書きされる前にそのフレームの計算が出来さえすればよい。
【0091】
また、K×Lフレームの画像を取得し、Lフレームずつ加算平均してKフレームの画像を得て、このKフレームを用いて各実施形態で示したようにCN比を算出するようにしてもよい。
【0092】
さらに、第2の実施の形態においては、Kは「1」でもよく、1フレームからでもノイズとコントラストが計算できる。
【0093】
[変形例2]
上述した第1乃至第3の実施の形態によれば、X線管11を保護するため、X線制御部15で上限値として制限されているI上限ラインL1の値を用いているが、これに限られず、それより低い管電流Iの値を設定してもよい。
【0094】
例えばX線焦点がμmオーダーのマイクロフォーカスX線管を用いる場合、このように管電流Iの値を設定することが有効になる。このようなX線管11では、X線制御部15の制限までIを上げると焦点サイズが大きくなることがあるので、焦点サイズを加味した管電流Iの上限ラインを設ける。また、単に、X線管11の安全に余裕を見込んで、通常の管電流Iの上限ラインから、低めに設定した管電流Iの値を利用してもよい。
【0095】
[変形例3]
上述した第1乃至第3の実施の形態において明記されていないが、ROIはどのような形状でもよく、画面全体をROIとしても良い。また、ROIは、操作者により任意に設定される代わりに、自動VI設定部13bが画像に合わせて自動的に設定しても良い。
【0096】
例えば、画面を碁盤目状に区切り、各区画面で明るさを平均し、最明部あるいは最暗部をROIとする。これにより、自動的に最明部あるいは最暗部のCN比を最大にする自動VI設定となる。
【0097】
また、最初は画面全体をROIとし、ある程度CN比が上がってから対象の輪郭を自動抽出し、この輪郭の中をROIとする方法であっても良い。
【0098】
[変形例4]
画像ノイズNの算出は、画素それぞれの明るさのKフレームの画像間のばらつきの大きさを表す量を求めればよく、第1及び第3の実施の形態で上述した式1,2には限られない。例えば、式1の代わりに下記の式7によっても、ばらつきの大きさを求めることができる。
【0099】
画素(i,j)のノイズ=|B(i,j)−B(i,j)のフレーム間平均|のフレーム間平均・・・(7)
また、例えば、1つの画素の明るさのKフレーム中の最大値Bmaxと最小値Bminの差を求めても、明るさの画像間のばらつきを求めたことになる。このとき、フレーム番号方向にローパス処理を行ってから最大値と最小値を求めると、安定した値を得ることができる。
【0100】
さらに、1つの画素の明るさをフレーム間で明るさ順にならべ、明るい方から所定の数値(例えば、3番目)をBmax、暗い方から所定の数値(例えば、3番目)をBminとして、この差を画素(i,j)のノイズとする方法もある。
【0101】
[変形例5]
画像ノイズNの算出は、ハイパス画像B’のROI内の明るさの画像間のばらつきの大きさを表す量を求めればよく、第2及び第3の実施の形態で上述した式5,6には限られない。例えば、式5の代わりに下記の式8によっても、ばらつきの大きさを求めることができる。
【0102】
1フレームのノイズ=|B’(i,j)−B’(i,j)のROI内の平均|のROI内の平均・・・(8)
また、例えば、画像の明るさのROI内の最大値B’maxと最小値B’minの差を求めても、明るさの画像間のばらつきを求めたことになる。
【0103】
さらに、画像の明るさをROI内で明るさ順にならべ、明るい方から所定の数値(例えば、3番目)をB’max、暗い方から所定の数値(例えば、3番目)をB’minとして、この差を画素(i,j)のノイズとする方法もある。
【0104】
[変形例6]
第2の実施の形態では、画像コントラストCの算出は、元の透過画像Bについて画素間のばらつきを求めているが、元画像Bを用いる代わりにローパス画像Blpのばらつきを求めてもよい。すなわち、元画像Bの低周波成分だけのばらつきを求めても、被検体のコントラストを代表とする量とすることが出来る。
【0105】
また、第1乃至第3の実施の形態で、画像コントラストCの算出は、透過画像の明るさの画素間のばらつきの大きさを表す値を求めればよく、第2の実施の形態で上述した式3,4には限られない。例えば、式3の代わりに下記の式9を用いても、明るさのばらつきの大きさを求めることができる。
【0106】
1フレームのコントラスト=|B(i,j)−B(i,j)のROI内平均|のROI内平均・・・(9)
また、例えば、ROI内の明るさの最大値Bmaxと明るさの最小値Bminの差を求めても、明るさの画像間のばらつきを求めたことになる。このとき、ROI内でローパスフィルタ処理を行ってから最大値と最小値を求めると、安定した値を得ることができる。
【0107】
さらに、明るさのヒストグラムを作り、面積で明るい方から所定の位置(例えば、10%の位置)をBmax、暗い方から所定の位置(例えば、10%の位置)をBminとして、この差を1フレームのコントラストとする方法もある。
【0108】
[変形例7]
画像ノイズNの算出は、元画像の明るさの低周波成分を含まない空間でのばらつきを表す量を求めればよい。また、画像コントラストCの算出は、元画像の明るさの低周波成分を含んだ空間でのばらつきを表す量を求めればよい。計算は、他にも様々な変形が可能である。
【0109】
図7を参照して画像コントラストCと画像ノイズNの算出方法の説明する。まず、ROIをサブROIであるRm,nに分割する。次に、各サブROI、Rm,nについて平均Bm,nと分散σm,nを、下記の式10,11で計算する。
【0110】
m,n=B(i,j)のRm,n内の平均・・・(10)
σm,n=√{(B(i,j)−Bm,n2のRm,n内の平均}・・・(11)
ここで、B(i,j)は、画素(i,j)の明るさである。
【0111】
次に、以下の式12,13で、1フレームのノイズとコントラストを計算し、これを、それぞれフレーム間平均して、画像ノイズと画像コントラストを計算する。
【0112】
1フレームのノイズ=σm,nのROI内の平均・・・(12)
1フレームのコントラスト=Bm,nのROI内の分散=√{(Bm,n−Bm,nのROI内平均)2のROI内平均}・・・(13)
[変形例8]
上述した第1乃至第3の実施の形態で、式1乃至式6で用いるB(i,j)は、明るさ、すなわち画素における画素値である。B(i,j)の変わりに、検出器の出力信号Bout(i,j)をそのまま用いてもよい。また、検出器の出力信号Bout(i,j)に補正を加えた方が、より精度を上げることができる。補正には種々の補正があるが、ここでは、AIR画像を用いたAIR補正とREF補正を述べる。
【0113】
AIR補正は、画素毎の感度の補正である。具体的には、下記の式14を用いる。
【0114】
1(i,j)=B(i,j)/BAIR(i,j)・・・(14)
ここで、BAIR(i,j)はある管電圧で被検体の無い状態で得たAIRの透過像である。この補正を行うことで、式3及び式4における画像コントラストの計算を正確に行うことができる。すなわち、ROI内での感度揺らぎを取り除いたばらつきを計算できる。
【0115】
REF補正は、X線強度の時間揺らぎの補正である。具体的には、下記の式15を用いる。
【0116】
2(i,j)=B1(i,j)/(B1(i,j)のROI内平均)・・・(15)
で表される。この補正を行うことで式1,2における画像ノイズの計算を正確に行うことができる。すなわち、ROI内で同期して変化するX線の揺らぎを取り除いた、画素ごとにランダムに変化するノイズだけを計算できる。
【0117】
なお、B(i,j)は、階調変換を行った後の値を用いても良い。また、階調変換をする場合、リニアな階調変換だけでなく、例えば対数変換等のノンリニアな変換を用いても良い。
【0118】
[変形例9]
上述した第1乃至第3の実施の形態では、X線検出器12の出力する透過画像を12bitとしているが、これに限られるものではない。
【0119】
また、X線検出器12はアナログ透過画像を出力するものでもよい。この場合は、ディジタル変換するためのキャプチャボードをコンピュータ13に付けて、このキャプチャボードを通して透過画像を取り込めばよい。
【0120】
さらに、X線検出器12は、X線I.I.とテレビカメラの組み合わせである必要はない。例えば、フラットパネルディテクターを使用しても良い。
【0121】
また、取得する画像は必ずしも2次元分解能に限られるものではない。1次元のラインセンサであっても、スキャンして2次元画像を得る場合、本発明を適用することができる。また、2次元画像を得なくとも、1次元データを1次元画像として扱えば、本発明を適用することができる。
【0122】
[変形例10]
上述した第1乃至第3の実施の形態では、自動VI設定部13bは、VIを自動的に順次設定して最適VIを探索しているが、VIの設定は操作者が手動で設定し、自動VI設定部13bは、透過画像を取得してCN比を計算して数値やグラフで表示させるようにすることもできる。例えば、横軸を時間、縦軸をCN比として、VIを変えたときのCN比の履歴を表示させる。この場合、操作者はCN比を表示される数値やグラフで確認しながら、VIを変更し、CN比が最大となるVIを設定する。これにより、コンピュータ13とX線制御部15の間の通信がないようなX線検査装置に本発明を適用することが可能となる。
【0123】
また、上述した各実施の形態による最適VI調整は、X線検査装置1に用いられているが、これに限られず、断層撮影装置に適用することもできる。断層撮影装置に用いる場合、円軌道、円弧軌道、直線軌道、多軌道等どのタイプの断層撮影装置であってもよく、また、コンピュータ断層撮影装置(CT)であってもよい。この場合、スキャン中に一番透過が悪くなるX線パスについて最適VI調整を行うようにする。
【0124】
[変形例11]
上述した第3の実施の形態によれば、ステップS18でCN比を求めるとき、Kフレームの透過画像を利用している。しかし、ステップS17で入力したKフレームの透過画像に加え、ステップS12で入力した1フレームの透過画像を加えた(K+1)フレームの透過画像を用いてもよい。
【0125】
また、上述した第3の実施の形態によれば、ステップS16におけるVI設定は、管電流I上限ライン上を、管電圧Vを上昇する方向に変化させて設定した。しかしながら、図5において、E点を通過した後は、前のV値での修正されたI値を用いるようにすることができる。これにより、ステップS13,14,12のループの回数を減らすことができ、最適VI設定の処理にかかる時間を短縮させることができる。
【0126】
また、明るすぎ、暗すぎへの対応は、様々な方法を用いることができる。
【0127】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線検査装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る自動VI設定処理を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る最適VIの探索を説明する図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るハイパス処理を説明する図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る自動VI設定処理を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る最適VIの探索を説明する図である。
【図7】本発明の変形例7に係るC,N算出を説明する図である。
【符号の説明】
【0129】
1…X線検査装置
11…X線管
12…X線検出器
13…コンピュータ
13a…ROI設定部
13b…自動VI設定部
13c…階調変換部
14…表示部
15…X線制御部
16…高圧発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管と、このX線管の管電圧と管電流とを制御するX線制御部と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを有するX線検査装置において、
前記X線検出器で検出した被検体の透過画像からこの透過画像のコントラストとノイズとの比であるコントラスト対ノイズ比を算出する自動管電圧管電流設定部
を有することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線検査装置において、
前記自動管電圧管電流設定部は、前記X線制御部に対して所定のルールに基づいて管電圧及び管電流の値の組み合わせを変更させ、組み合わせごとに取得した透過画像に基づいてコントラスト対ノイズ比を求め、求められたコントラスト対ノイズ比が最大となる管電圧及び管電流を選択して管電流及び管電圧の最適な値として前記X線制御部に設定する
ことを特徴とするX線検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線検査装置において、
前記自動管電圧管電流設定部は、各管電圧に対して許容される最大の管電流となるように管電圧と管電流の組み合わせを変更することを特徴とするX線検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載のX線検査装置において、
前記自動管電圧管電流設定部は、1つの管電圧と管電流の組み合わせにおいて取得した複数の透過画像の画素それぞれの明るさのこの複数透過画像間のばらつきの大きさを求めて画像のノイズとする
ことを特徴とするX線検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載のX線検査装置において、
前記自動管電圧管電流設定部は、取得した透過画像の明るさの画素間のばらつきの大きさを求めて画像のコントラストとする
ことを特徴とするX線検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載のX線検査装置において、
前記自動管電圧管電流設定部は、取得した透過画像の明るさの低周波成分を含まない空間でのばらつきの大きさを求めて画像のノイズとする
ことを特徴とするX線検査装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3または請求項6のいずれか1に記載のX線検査装置において、
前記自動管電圧管電流設定部は、取得した透過画象の明るさの低周波成分を含んだ空間でのばらつきの大きさを求めて画像のコントラストとする
ことを特徴とするX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−242935(P2006−242935A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337401(P2005−337401)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】