説明

X線検査装置

【課題】直立搬送される被検査物がX線遮蔽部材を通過する際の衝突抵抗を緩和して転倒することを防止し、また、筐体外にX線が漏洩することを更に防止する。
【解決手段】被検査物Wの出入口4a,4bを備える筐体2と、被検査物Wを搬送路に沿って入口4aから出口4bに搬送する搬送手段6と、筐体2内にて被検査物WにX線を照射して検査するX線検査手段と、搬送路を遮断するように設けられ、搬送される被検査物Wが当接することにより被検査物Wを通過させるX線遮蔽部材10とを備えるX線検査装置1において、X線遮蔽部材10は、基端側15が搬送路外に位置し、先端側16が搬送路上にあるとともに基端側15より搬送方向Y下流側に位置したものが搬送路の幅方向Zに対向して設けられ、先端側16同士が搬送路のセンターラインL上にて当接していることで閉状態となり且つ閉状態に常時付勢されている一対の遮蔽板11a,11bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に搬送されてきた被検査物にX線を照射して前記被検査物を検査するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線検査装置は、例えば下記特許文献1に開示されるように、鉛を含有する樹脂などで形成された柔軟性を有するカーテンが、筐体の各開口部に設けられることによって筐体外にX線が漏洩することを防止している。
【0003】
ところが、上述したX線検査装置では、搬送される被検査物がカーテンを押し退けて筐体内に搬入又は搬出されるため、カーテンが切断されたり、擦り切れるという物理的な耐久性の問題があった。また、被検査物が通過する際に開いたカーテンは、自重により閉状態に戻るため、その間にX線が筐体外に漏洩する可能性もあり、さらには、カーテンの隙間から漏洩することも考えられる。さらに、例えば瓶やペットボトルに入った飲料品などのように直立搬送される背が高い被検査物の場合、垂下されたカーテンでは被検査物上部にかかる抵抗が大きくなり、この結果、被検査物がバランスを崩して倒れてしまうこともあった。
【0004】
また、下記特許文献2に開示されるX線検査装置には、図8に示すようなX線遮蔽部材(金属板)101が設けられている。図示のように、X線遮蔽部材101,101は二枚で一組をなし、鉛直軸線の周りに回転自在に設けられている。この構成によれば、X線遮蔽部材101,101が被検査物Wの上部から下部にかけて同じような衝突抵抗となり、被検査物上部のみに抵抗を受けることはなくなる。さらに、このX線遮蔽部材101,101は、図示しないバネなどによって閉状態に常時付勢されているため、被検査物W通過後には速やかに閉状態に戻ることができる。
【特許文献1】特開平11−160487号公報
【特許文献2】特開2004−132747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のX線検査装置では、図8に示すように、閉状態における二枚のX線遮蔽部材101,101が搬送路102の幅方向に直線状に配置されるため、被検査物W通過時の衝突抵抗が大きく、被検査物W上部にかかる抵抗を緩和させても上述したような直立搬送される背が高い被検査物などはバランスを崩して転倒してしまう。特に、搬送される被検査物Wが搬送路のセンターラインから外れているときは衝突抵抗が更に大きくなる。
【0006】
また、図8に示すように、直線状に配置されたX線遮蔽部材101,101では、被検査物Wとの接触時間が長くなり、それに伴いX線遮蔽部材101,101の開放時間も長くなるため、その間に筐体103外にX線が漏洩してしまうおそれもある。
【0007】
そこで本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、被検査物がX線遮蔽部材を通過する際の衝突抵抗を緩和して特に直立搬送される被検査物が転倒することを防止し、また、筐体外にX線が漏洩することを更に防止できるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のX線検査装置1は、被検査物Wの出入口となる開口4,4が設けられた筐体2と、
前記被検査物Wを所定の搬送路に沿って前記筐体2の前記入口4aから前記出口4bに搬送する搬送手段6と、
前記筐体2内の所定位置にて前記搬送路上の前記被検査物WにX線を照射し、その透過量に基づいて該被検査物Wを検査するX線検査手段と、
前記X線検査手段から照射されるX線を前記筐体2の前記出入口4(4a,4b)から外部に漏洩させないために前記搬送路を遮断するように設けられ、搬送される前記被検査物Wが当接することにより該被検査物Wを通過させるX線遮蔽部材10(20)と、を備えるX線検査装置1において、
前記X線遮蔽部材10(20)は、基端側15(23)が前記搬送路の外側に位置し、先端側16(24)が前記搬送路上にあるとともに前記基端側15(23)より搬送方向Yの下流側に位置するようにされたものが前記搬送路の幅方向Zに対向して設けられ、前記先端側16(24)同士が前記搬送路のセンターラインL上にて当接していることで閉状態となり、且つ前記閉状態に常時付勢されている一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)を有することを特徴としている。
【0009】
請求項2記載のX線検査装置1は、前記一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)の前記先端側16,16(24,24)同士の当接角度が略直角であることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載のX線検査装置1は、前記X線遮蔽部材10(20)の近傍には、前記遮蔽板11a,11b(21a,21b)の開状態を検知するための開放検知センサ18が設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載のX線検査装置1は、前記一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)における前記被検査物Wが当接する各面の下部にそれぞれ凸部12(22)が設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載のX線検査装置1は、前記X線遮蔽部材10(20)が前記搬送路に沿って複数設けられたX線検査装置1において、
前記一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)のいずれか一方の前記先端側16(24)が前記搬送路の前記センターラインLを超える位置まで延出し、前記延出した遮蔽板11a(21a)が前記搬送路に沿って互い違いとなって配置されるように前記X線遮蔽部材10(20)が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項6記載のX線検査装置1は、前記X線遮蔽部材10は、
前記遮蔽板11a(11b)が鉛入りシート材からなり、
前記遮蔽板11a(11b)の上部及び下部には該遮蔽板11a(11b)の幅方向に長い板バネ部材13a,13bが設けられ、前記遮蔽板11a(11b)が前記上下の板バネ部材13a,13bによって前記閉状態に付勢されていることを特徴としている。
【0014】
請求項7記載のX線検査装置1は、前記X線遮蔽部材20は、
前記遮蔽板21a(21b)が例えばステンレス鋼(SUS)材からなり、
前記遮蔽板21a(21b)が、リンク機構25を介して錘32と連結され、前記錘32の荷重によって前記閉状態に付勢されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるX線検査装置によれば、X線遮蔽部材を形成している一対の遮蔽板が、各先端側を搬送方向の下流側に突出させた略V字形状となる。そして、搬送される被検査物は一対の遮蔽板が形成している傾斜面に衝突するため、その時の衝突抵抗が緩和される。この結果、例えば、直立搬送される背が高い被検査物が遮蔽板との衝突時に転倒することを防ぐことができる。また、搬送路のセンターラインから外れて搬送されている被検査物が一対の遮蔽板の傾斜面にガイドされて中央に移動し、遮蔽板通過後にはセンターライン上に位置矯正される。これにより、被検査物の検査を常に正しい位置で行えるようになる。
【0016】
また、一対の遮蔽板の先端側同士の当接角度が略直角であることから、被検査物通過時における被検査物との接触時間が短くなる。すなわち、一対の遮蔽板の開放時間も短くなるため、筐体外にX線が漏洩することを更に防止できる。
【0017】
さらに、開放検知センサが設けられることにより、遮蔽板が開け放しの状態を検知することができ、遮蔽板の開け放しによるX線の漏洩を防いで安全性を高めることができる。
【0018】
また、一対の遮蔽板の各当接面の下部に凸部が設けられることで、搬送される被検査物下部が凸部に衝突するため、衝突時に被検査物のバランスが崩れない。この結果、被検査物の転倒を更に防止できる。
【0019】
さらに、X線遮蔽部材が搬送路に沿って複数設けられたときに、例えば、いずれか一方の遮蔽板に延出した遮蔽板が配置されたX線遮蔽部材と、他方の遮蔽板に延出した遮蔽板が配置されたX線遮蔽部材との間の空間は遮蔽性が高まり、筐体外にX線が漏洩することを更に防止できるようになる。
【0020】
また、板バネ部材によって遮蔽板を閉状態に常時付勢させることができる。さらに、板バネ部材の弾性力を被検査物にあわせて変更することができ、この結果、好適な開閉強度が得られるようになる。
【0021】
また、錘によって遮蔽板を閉状態に常時付勢させることができる。さらに、上記同様に被検査物にあわせて錘の重さを変更することで好適な開閉強度が得られる。これにより、従来より鉛材を用いていた遮蔽板(X線遮蔽部材)にSUSなどの鋼板を使用することが可能となり、X線遮蔽部材としての強度や耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
本発明によるX線検査装置は、例えば、瓶やペットボトルに入った飲料品などのように、直立搬送される背が高い被検査物にX線を照射し、異物検出など種々の検査を行うものである。
【0023】
まず、図1,4などを参照してX線検査装置1の装置構成について説明する。このX線検査装置1は、箱型の筐体2を有し、図示しない四本の脚部で設置面上に支持されている。この筐体2は、内部から有害な量のX線が外部に漏洩しないように放射線防護材料を用いて形成されている。また、筐体2の前面は開放されており、筐体2前面に前面開口を閉塞するための開閉自在な扉3が設けられている。さらに、筐体2の両側面には被検査物Wの出入口となる開口4,4が設けられている。そして、筐体2の両側面には、これらの開口4,4を覆うためのサイドカバー5,5が設けられている。また、サイドカバー5の内面には、筐体2の各開口4,4からX線が漏洩することを防ぐための後述するX線遮蔽部材10が設けられている。
【0024】
さらに、搬送手段としてのベルトコンベア6は、筐体2内に設けられ、且つ筐体2を搬送方向Yに貫通して設けられ、被検査物Wの搬送路を形成している。ベルトコンベア6は、搬送方向Yの両端にローラ7,7を備えており、これらローラ7,7間に無端状の搬送ベルト8が掛け回されている。そして、いずれか一方のローラ7aが駆動モータ9と接続されている。このベルトコンベア6は、前段の装置から搬送されてきた被検査物Wを入口開口4aから出口開口4bに搬送し、更に後段の装置へと送る。
【0025】
次に、このX線検査装置の光学系について説明する。図示しないが、筐体2内には、X線源及びX線検出器からなるX線検査手段が設けられている。X線源はX線を発生させ、このX線をX線検出器に向けて照射する。X線検出器は、多数の受光素子が前記搬送路の幅方向Zに一列に配設されたラインセンサを有している。また、X線検出器は、外部コンピュータと接続されており、X線検出器から出力された信号を所定のタイミングで取り込んで処理し、X線透過量に応じた明暗分布の画像を作成することにより、被検査物Wの様々な検査を行う。
【0026】
なお、このX線検査装置1では、前記X線源は、筐体2内におけるベルトコンベア6の斜め上方に設けられている。また、X線検出器は、ベルトコンベア6の斜め下方に設けられ、X線源に対向している。
【0027】
ここから、本発明の要旨であるサイドカバーに設けられる前述したX線遮蔽部材について各実施の形態ごとに説明する。
【0028】
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は本発明によるX線検査装置の第1の実施の形態を示す平断面図、図2(a),(b)は同実施の形態のX線遮蔽部材を示す正面図及び背面図、図3は同実施の形態のX線遮蔽部材の遮蔽板の動作を示す斜視図である。
【0029】
図1に示すように、X線遮蔽部材10は、筐体2の両側部に設けられたサイドカバー5,5の内面の搬送方向Yの上流側と下流側に設けられている。また、各X線遮蔽部材10は、前記搬送路を遮断するように設けられ、搬送路の幅方向Zに対向して設けられた一対の遮蔽板11a,11bを有している。図2に示すように、遮蔽板11a,11bは、鉛入りの樹脂シートが略矩形にカットされたものであり、表面側の下部に遮蔽板11a,11bの幅方向に長い略矩形の凸部12が一端のみ固定された片持ち状態で設けられている(図2(a)参照)。さらに、裏面側には、その上部及び下部に同じく遮蔽板11a,11bの幅方向に長い略矩形の板バネ部材13a,13bが設けられ、これらの板バネ部材13a,13bの間に各板バネ部材13a,13bを連結する連結部材14が設けられている(図2(b))参照)。
【0030】
図1に示すように、一対の遮蔽板11a,11bは、それぞれの基端側15が搬送路の外側に位置し、サイドカバー5の内側面から延出した支持部材17によって片持ち支持されている。また、先端側16は、搬送路のセンターラインL上にあって、基端側15より搬送方向Yの下流側に位置して互いに当接している。このとき、各遮蔽板11a,11bの先端側16,16同士の当接角度は略直角である。さらに、一対の遮蔽板11a,11bのうちの一方の遮蔽板11aは、搬送路のセンターラインLを僅かに超える位置まで延出する程度に他方の遮蔽板11bより長い。これら一対の遮蔽板11a,11bは、閉状態において搬送方向Yの下流側に突出した略V字形状をなしている。そして、これら一対の遮蔽板11a,11bは、搬送路に沿って並んで配置され、このとき、延出した遮蔽板11aは、搬送方向Yの上流側から順に搬送路を挟んで互い違いとなっている。
【0031】
また、図1に示すように、各一対の遮蔽板11a,11bの近傍には、この遮蔽板11a,11bの開状態を検知するための開放検知センサ18(例えばラインセンサなど)が設けられている。
【0032】
ここで、図3を参照して第1の実施の形態において被検査物WがX線遮蔽部材10を通過する際の遮蔽板21a(21b)の動作について説明する。なお、図3には一対の遮蔽板21a,21bのうち一方のみを示しており、他方の遮蔽板は同じ構成であるため省略している。
【0033】
図3に示すように、まず、サイドカバー5の入口4aまで搬送されてきた被検査物Wの下部が遮蔽板11a(11b)の凸部12に衝突する。更に被検査物Wが搬送方向Yに進むことで上下の板バネ部材13a,13bが弾性変形し、遮蔽板11a(11b)が被検査物Wの幅分だけ開いてこの被検査物Wを通過させる。そして、被検査物Wの通過と略同時に、弾性変形していた板バネ部材13,13bが復元し、遮蔽板11a(11b)は再び閉状態に戻る。なお、被検査物WがX線遮蔽部材10を通過するとき、搬送路のセンターラインLから外れて搬送されてきた被検査物Wを遮蔽板11a(11b)の傾斜面がガイドしてセンターラインL上に移動させることが可能となる。
【0034】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図4は本発明によるX線検査装置の第2の実施の形態を示す平断面図、図5は同実施の形態のX線遮蔽部材のリンク機構を示す正面図、図6,7は同実施の形態のX線遮蔽部材の遮蔽板及びリンク機構の動作を示す斜視図である。
【0035】
図4に示すように、X線遮蔽部材20は、筐体2の両側部に設けられたサイドカバー5,5の内面の搬送方向Yの上流側と下流側に設けられている。また、各X線遮蔽部材20は、前記搬送路を遮断するように設けられ、搬送路の幅方向Zに対向して設けられた一対の遮蔽板21a,21bを有している。この遮蔽板21a,21bの被検査物Wとの当接面の下部には、遮蔽板21a,21bの幅方向に長い略矩形の凸部22が設けられている。この遮蔽板21a,21bは、ステンレス鋼(SUS)材からなり、略矩形に形成されている。なお、これら一対の遮蔽板21a,21bは、後述するリンク機構25に連結されている。
【0036】
図4に示すように、一対の遮蔽板21a,21bは、それぞれの基端側23,23が搬送路の外側に位置し、サイドカバー5の内側面に設置されたリンク機構25に連結されている。また、先端側24,24は、搬送路のセンターラインL上にあって、基端側23より搬送方向Yの下流側に位置して互いに当接している。このとき、各遮蔽板21,21の先端側23,23同士の当接角度は略直角である。さらに、一対の遮蔽板21a,21bのうちの一方の遮蔽板21aは、搬送路のセンターラインLを僅かに超える位置まで延出する程度に他方の遮蔽板21bより長い。これら一対の遮蔽板21a,21bは、閉状態において搬送方向Yの下流側に突出した略V字形状をなしている。そして、これら一対の遮蔽板21a,21bは、搬送路に沿って並んで配置され、このとき、延出した遮蔽板21aは、搬送方向Yの上流側から順に搬送路を挟んで互い違いとなっている。
【0037】
ここで、図5を参照して前述したリンク機構25について説明する。なお、図5では、リンク連結された各部を説明するため便宜的に遮蔽板21a(21b)が搬送方向Yと直交する向きに取り付けられている。図5に示すように、各遮蔽板21a,21bの基端側23が連結されているリンク機構25は枠部材26の中に設けられている。本実施の形態では、一つの枠部材26の中に、搬送方向Yに沿って並んだそれぞれの一方の遮蔽板21a(21b)が連結される二つのリンク機構25,25が上下に設けられている。リンク機構25は、回動軸27と、短軸28と、ロッド部材29と、クランク部材30とで略構成されている。
【0038】
図5に示すように、回動軸27は、取付部材28を介して遮蔽板21a(21b)と連結されている。この回動軸27によって、遮蔽板21a(21b)は鉛直軸線の周りに回動自在となっている。短軸29は、取付部材28に設けられるとともに、回動軸27と異なる位置に設けられている。この短軸29の軸の向きは回動軸27と同じく鉛直方向である。短軸29にはロッド部材30の一端が連結されている。そして、ロッド部材30の他端は略L字形のクランク部材31の一端に連結されている。さらに、クランク部材31の他端側には錘32が設けられている。
【0039】
また、各一対の遮蔽部材21a,21bの近傍には、図示しないが上述した第1の実施の形態と同様に、遮蔽板21a,21bの開状態を検知するための例えばラインセンサなどからなる開放検知センサが設けられている。
【0040】
ここから、図6,7を参照して第2の実施の形態において被検査物WがX線遮蔽部材20を通過する際の遮蔽板21a(21b)及びリンク機構25の動作について説明する。なお、図6,7には一対の遮蔽板21a,21bのうち一方のみを示しており、他方の遮蔽板は同じ構成であるため省略している。
【0041】
図6に示すように、まず、サイドカバー5の入口4a(図5参照)まで搬送されてきた被検査物Wの下部が遮蔽板21a(21b)の凸部22に衝突し、更に被検査物Wが搬送方向Yに進むことで遮蔽板21a(21b)を押し開ける。このとき、図7に示すように、遮蔽板21a(21b)が開くことによって、回動軸27が鉛直軸線周りに回動し、これに連動する取付部材28と共に短軸29の位置が移動する。また、短軸29の移動に連動してロッド部材30が搬送方向Yと同方向(水平方向)に移動し、クランク部材31の一端を水平に引っ張る。これにより、クランク部材31は、その屈曲部を支点として他端側に設けられた錘32を引き上げる。この引き上げられた錘32によって遮蔽板21a(21b)が閉状態に付勢される。
【0042】
そして、被検査物Wが通過すると、略同時に錘32が下がり、リンク機構25の各部材が上述した動作と逆の動作を行うようになり、遮蔽板21a(21b)が再び閉状態に戻ることになる。なお、ここでも、上述した第1の実施の形態と同様に、被検査物WがX線遮蔽部材20を通過するとき、搬送路のセンターラインLから外れて搬送されてきた被検査物Wを遮蔽板21a(21b)の傾斜面がガイドしてセンターラインL上に移動させることが可能となる。
【0043】
上述した第1及び第2の各実施の形態によれば、一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)が、それぞれの先端側16,16(24,24)を搬送方向Yの下流側に突出させた略V字形状となっていることで、搬送される被検査物Wは一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)が形成している傾斜面に衝突するため、その時の衝突抵抗が緩和される。この結果、直立搬送される背が高い被検査物Wが遮蔽板11a,11b(21a,21b)との衝突時に転倒するのを防ぐことができる。また、搬送路のセンターラインLから外れて搬送されている被検査物Wが一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)の傾斜面にガイドされて中央に移動するため、遮蔽板11a,11b(21a,21b)通過後にはセンターラインL上に位置矯正される。これにより、被検査物Wの検査を常に正しい位置で行えるようになる。
【0044】
また、一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)の先端側16,16(24,24)同士の当接角度が略直角であることから、被検査物W通過時における被検査物Wとの接触時間が短くなる。すなわち、一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)の開放時間も短くなるため、筐体2外にX線が漏洩することを更に防止できる。
【0045】
さらに、開放検知センサ18が設けられることにより、遮蔽板11a,11b(21a,21b)が開け放しの状態を検知することができ、遮蔽板11a,11b(21a,21b)の開け放しによるX線の漏洩を防いで安全性を高めることができる。
【0046】
また、一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)の各当接面の下部に凸部12(22)が設けられることで、搬送される被検査物Wの下部が凸部12(22)に衝突するようになり、衝突時に被検査物Wのバランスが崩れず、被検査物Wの転倒を更に防止できる。
【0047】
さらに、X線遮蔽部材10(20)が搬送路に沿って複数設けられたときに、一対の遮蔽板11a,11b(21a,21b)のうち一方が延出した遮蔽板11a(21a)のX線遮蔽部材10(20)と、他方が延出した遮蔽板11a(21a)のX線遮蔽部材10を搬送路に沿って並べて配設することで、X線遮蔽部材10(20)の間の空間の遮蔽性が高まり、筐体2外にX線が漏洩することを更に防止できるようになる。
【0048】
特に、第1の実施の形態によれば、板バネ部材13a,13bによって遮蔽板11a(11b)を閉状態に常時付勢させることができ、板バネ部材13a,13bの弾性力を被検査物Wの種類などにあわせて変更することもできるため、遮蔽板11a(11b)に好適な開閉強度が得られるようになる。
【0049】
また、第2の実施の形態によれば、錘32の上下動によって遮蔽板21a(21b)を閉状態に常時付勢させることができる。さらに、第1の実施の形態と同様に、被検査物Wにあわせて錘32の重さを変更することで遮蔽板21a(21b)に好適な開閉強度が得られる。これにより、従来より鉛材を用いていた遮蔽板21a(21b)にSUS製の鋼板などを使用することが可能となり、強度や耐久性を向上させることができる。
【0050】
なお、上述した各実施の形態では、X線遮蔽部材10(20)が筐体2の両側面にあるサイドカバー5,5に設けられているが、このX線遮蔽部材10(20)は、筐体2内の搬送路上のどこに設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明によるX線検査装置の第1の実施の形態を示す平断面図である。
【図2】(a)同実施の形態のX線遮蔽部材を示す正面図である。 (b)同実施の形態のX線遮蔽部材を示す背面図である。
【図3】同実施の形態のX線遮蔽部材の遮蔽板の動作を示す斜視図である。
【図4】本発明によるX線検査装置の第2の実施の形態を示す平断面図である。
【図5】同実施の形態のX線遮蔽部材のリンク機構を示す正面図である。
【図6】同実施の形態のX線遮蔽部材の遮蔽板及びリンク機構の動作を示す正面図である。
【図7】同実施の形態のX線遮蔽部材の遮蔽板及びリンク機構の動作を示す正面図である。
【図8】(a),(b)従来のX線検査装置のX線遮蔽部材を示す平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…X線検査装置
2…筐体
4…開口
6…搬送手段としてのベルトコンベア
10,20…X線遮蔽部材
11a,11b,21a,21b…遮蔽板
11a,21a…上記遮蔽板のうち先端側が延出した遮蔽板
13a,13b…板バネ部材
15,23…基端側
16,24…先端側
18…開放検知センサ
25…リンク機構
32…錘
L…搬送路のセンターライン
W…被検査物
Y…搬送方向
Z…搬送路の幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物(W)の出入口となる開口(4)が設けられた筐体(2)と、
前記被検査物を所定の搬送路に沿って前記筐体の前記入口から前記出口に搬送する搬送手段(6)と、
前記筐体内の所定位置にて前記搬送路上の前記被検査物にX線を照射し、その透過量に基づいて該被検査物を検査するX線検査手段と、
前記X線検査手段から照射されるX線を前記筐体の前記出入口から外部に漏洩させないために前記搬送路を遮断するように設けられ、搬送される前記被検査物が当接することにより該被検査物を通過させるX線遮蔽部材(10,20)と、を備えるX線検査装置(1)において、
前記X線遮蔽部材は、基端側(15,23)が前記搬送路の外側に位置し、先端側(16,24)が前記搬送路上にあるとともに前記基端側より搬送方向(Y)の下流側に位置するようにされたものが前記搬送路の幅方向(Z)に対向して設けられ、前記先端側同士が前記搬送路のセンターライン(L)上にて当接していることで閉状態となり、且つ前記閉状態に常時付勢されている一対の遮蔽板(11a,11b,21a,21b)を有することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記一対の遮蔽板(11a,11b,21a,21b)の前記先端側(16,16,24,24)同士の当接角度が略直角であることを特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線遮蔽部材(10,20)の近傍には、前記遮蔽板(11a,11b,21a,21b)の開状態を検知するための開放検知センサ(18)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記一対の遮蔽板(11a,11b,21a,21b)における前記被検査物(W)が当接する各面の下部にそれぞれ凸部(12,22)が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記X線遮蔽部材(10,20)が前記搬送路に沿って複数設けられたX線検査装置(1)において、
前記一対の遮蔽板(11a,11b,21a,21b)のいずれか一方の前記先端側(16,24)が前記搬送路の前記センターライン(L)を超える位置まで延出し、前記延出した遮蔽板(11a,21a)が前記搬送路に沿って互い違いとなって配置されるように前記X線遮蔽部材(10,20)が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記X線遮蔽部材(10)は、
前記遮蔽板(11a,11b)が鉛入りシート材からなり、
前記遮蔽板の上部及び下部には該遮蔽板の幅方向に長い板バネ部材(13a,13b)が設けられ、前記遮蔽板が前記上下の板バネ部材によって前記閉状態に付勢されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記X線遮蔽部材(20)は、
前記遮蔽板(21a,21b)が鋼材からなり、
前記遮蔽板が、リンク機構(25)を介して錘(32)と連結され、前記錘の荷重によって前記閉状態に付勢されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−281482(P2008−281482A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127016(P2007−127016)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】