説明

X線検査装置

【課題】 X線検査装置におけるX軸方向移動ステージやY軸方向移動ステージが移動する際に変形が生じることを未然に防止して、スムーズに移動させることができる機構を、ロープによる簡単な構造で提供する。
【解決手段】 X線発生器AとX線検出器Bとが対向した状態で垂直に配置され、これらの間に検査すべきサンプルCを載置するテーブル1が水平面上で直角に交わるX軸並びにY軸方向に移動可能なX−Y移動ステージ上に組み付けられているX線検査装置において、前記X−Y移動ステージのX軸方向移動ステージまたはY軸方向移動ステージ若しくはその両方が、移動方向と直交する左右側部で少なくとも1本の有端状ロープ11によってステージ移動時に同期的に移動方向に引っ張られるように形成されている構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種サンプルのX線透視像を撮影し、撮影したX線透視像、あるいは、撮影した複数のX線透視像から構築したX線CT像を表示するX線検査装置(X線透視装置、X線CT装置ともいう)に関する。
【0002】
各種サンプルの透視検査を行うX線検査装置は、例えば特許文献1に示すように、X線発生器とX線検出器とを対向させた状態で垂直に配置させてこれらの間に検査すべきサンプルをおき、サンプルのX線透視像をX線検出器で検出するようにしている。サンプルは、一般的に水平面上で直角に交わるX軸並びにY軸方向に移動可能なX−Y移動ステージ上に組み付けられたテーブルに載置され、サンプル内の所望の観察点をX線検出器の視野内におくための位置決めを行う。
【0003】
図7並びに図8は従来のX線検査装置のテーブルの一例を示すものであって、互いに対向させた状態で垂直に配置させたX線発生器AとX線検出器Bとの間にサンプルCを置くためのテーブル1が配置されている。このテーブル1は水平面上で直角に交わるX軸並びにY軸方向に移動可能なX−Y移動ステージSに組み付けられている。即ち、テーブル1は左右平行な一対のX軸2、2に対して軸方向に沿って移動可能に取り付けられ、X軸2、2はその両端部を支えるスライド部材4で左右一対のY軸3、3に対して軸方向に沿って移動可能に取り付けられている。これによりテーブル1自体がX軸方向移動ステージを形成し、このテーブル1を支えるX軸2並びに前後のスライド部材4、4を連結する側枠8、8が略四角枠状のY軸方向移動ステージを形成している。
【0004】
X軸方向移動ステージ即ち、テーブル1の移動はモーターM1によって回動するネジ軸5と、テーブル1に取り付けられて前記ネジ軸5に噛み合うネジ受部6とによって行われ、Y軸方向移動ステージの移動はモーターM2によって回動するネジ軸7と、側枠8に取り付けられてネジ軸7に噛み合うネジ受部9とによって行われる。テーブル1には、X線が透過できるようにテーブル中央部を大きく切り欠いた開口部1cが形成されており、この開口部1cをX線透過可能な素材、例えばアルミニウムやカーボンからなる薄板10で塞がれている。また、図示は省略するが、X線検出器によって得られるX線透視画像の拡大率を可変とする目的で、前記X軸並びにY軸を含めたテーブル全体が、昇降機構によって昇降できるように構成する場合もある。
【特許文献1】特開2005−43275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の例で示したX線検査装置において、検査すべきサンプルが平面的に比較的小さい場合は、X軸方向移動ステージとなるテーブル1のX線透過用開口部1cも小さくてすむので、テーブルの剛性を十分維持できるが、大型の基板など平面的に大きなサンプルの場合は、開口部を大きくしなければならず、その結果、四角形の額縁のような形態となってテーブルの剛性が低下する。テーブルの剛性を高めるためにはテーブル全体を大きくする必要があり、軽量化やスペースの面で問題がある。
【0006】
また、上記テーブルや、Y軸方向移動ステージのような平面四角枠状の移動体を左右のレールにそって移動させる場合、移動体の剛性が低いと平行四辺形に変形しようとする力を受けてスムーズな走行に弊害をもたらすと共に変形が発生しやすい。殊に、上記したテーブルやY軸方向移動ステージのように、一端側に偏った位置に移動させるためのネジ軸5、7を設けた場合にはその傾向を大きく受けやすい。
そこで本発明は、X線検査装置におけるX軸方向移動ステージやY軸方向移動ステージが移動する際に変形が生じることを未然に防止して、スムーズに移動させることができる機構を、ロープによる簡単な構造で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち本発明にかかるX線検査装置にあっては、X線発生器とX線検出器とが対向した状態で垂直に配置され、これらの間に検査すべきサンプルを載置するテーブルが水平面上で直角に交わるX軸並びにY軸方向に移動可能なX−Y移動ステージ上に組み付けられているX線検査装置において、前記X−Y移動ステージのX軸方向移動ステージまたはY軸方向移動ステージ若しくはその両方が、移動方向と直交する左右側部で少なくとも1本の有端状ロープによって、ステージ移動時に同期的に移動方向に引っ張られるように形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、X軸方向移動ステージとはX軸方向にそって移動するテーブル自体をいい、Y軸方向移動ステージとはY軸方向に沿って移動するX軸やX軸上のテーブル並びにこれらに付設する部材全体をいう。
【0009】
前記ロープは、その両端部分がX軸方向移動ステージ又はY軸方向移動ステージの左右側部に沿って配置され、該ロープの一端が前記移動ステージの一側部に止着され、ロープの他端が前記移動ステージの他側部に止着され、何れか一方のロープ端部は他方のロープ端部の延長方向とは反対方向に延長されて反転滑車により反転されており、ロープの中間部は遠隔点の固定枠部分に取り付けられた遊滑車により緊張した状態で保持されている構造とするのがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、X軸方向移動ステージ又はY軸方向移動ステージの移動に伴って、移動方向と直交する左右側部の2点が有端状のロープによって同期的に移動方向に引っ張られて左右バランスよく移動することができ、これにより、移動時に四角枠状の移動ステージが変形することを緩和することができると共に、スムーズに走行させることができる、といった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1並びに図2は本発明の第1の実施例を示すものであり、図3は本発明の第2の実施例を示すものであり、図4は本発明の第3の実施例を示すものであり、図5は図4で示した実施例に若干の修正を加えた平面図であり、図6は本発明の更に別の実施例を示す斜視図である。
【0012】
図1並びに図2で示した第1の実施例では、互いに対向させた状態で垂直に配置させたX線発生器AとX線検出器B(図7参照)との間にサンプルを置くためのテーブル1が配置されている。このテーブル1は水平面上で直角に交わるX軸並びにY軸方向に移動可能なX−Y移動ステージSに組み付けられている。このX−Y移動ステージSの基本的な構成については、図7並びに図8で説明したのと同じであるので、同等の構成部分については同じ符号を附して説明する。
【0013】
テーブル1は左右平行な一対のX軸2、2に対して軸方向に沿って移動可能に取り付けられ、X軸2、2はその両端部を支えるスライド部材4で左右一対のY軸3、3に対して軸方向に沿って移動可能に取り付けられている。これによりテーブル1自体がX軸方向移動ステージを形成し、このテーブル1を支えるX軸2並びに前後のスライド部材4、4を連結する側枠8、8が略四角枠状のY軸方向移動ステージを形成している。前記Y軸3、3の一方はその両端部で装置のフレーム等の固定枠部分に連設された固定枠15a、15dに保持され、他方は固定枠15b、15cにより保持されている。
【0014】
X軸方向移動ステージの移動は、モーターM1によって回動するネジ軸5と、テーブル1に取り付けられて前記ネジ軸5に噛み合うネジ受部6とによって行われ、Y軸方向移動ステージの移動はモーターM2によって回動するネジ軸7と、側枠8に取り付けられてネジ軸7に噛み合うネジ受部9とによって行われる。テーブル1には、X線が透過できるようにテーブル中央部を大きく切り欠いた開口部1cが形成されており、この開口部1cをX線透過可能な素材、例えばアルミニウムやカーボンからなる薄板10で塞がれている。
【0015】
本実施例では、テーブル1を支えるX軸2、2並びに前後のスライド部材4、4を連結する左右の側枠8、8とによって四角枠状に形成されたY軸方向移動ステージの移動方向と直交する側面、即ち、左右の側枠8、8に、有端状の1本のロープ11の端部が固定ピン12a、12bによって止着されている。
ロープ11の一端部分(図中右側部分)は固定ピン12aから右側枠8に沿ってY軸方向移動ステージの移動方向に延設され、ロープ他端部(図中左側部分)は固定ピン12bから右側のロープ端部の延長方向とは反対方向に延長されて固定枠15cに設けた反転滑車13により反転されている。ロープ11の中間部は、遠隔点の固定枠部分に取り付けられた2つの遊滑車14a、14bにより緊張した状態で保持され、これによりロープ11は平面視コの字状に配置されている。
即ち、固定ピン12aから延びるロープ11は、右側のY軸3を支持する固定枠15aに取り付けられた遊滑車14aで左側のY軸3の方向に向かって直角に曲げられ、更にその延長部が固定枠15bに取り付けられた遊滑車14bで反転滑車13の方向に向かって直角に曲げられており、反転滑車13で反転されてその端部が固定ピン12bに止着されている。
【0016】
このような構成により、四角枠状のY軸方向移動ステージがモーターM2の駆動によってY軸3、3に沿って移動すると、左右側枠8、8に取り付けた固定ピン12a、12bも同時に同方向に移動する。この移動に伴ってこれら固定ピン12a、12bに連結したロープ11によって固定ピン12a、12bの2点がバランスよく同期的に移動方向に引っ張られることになる。移動時に四角枠状の移動ステージが変形することを緩和することができると共に、スムーズに走行させることができる。
【0017】
上記実施例では、一本のロープ11による例を示したが、図3に示すように上記ロープ11の構成と全く同じ構成のロープ11aをロープ11と共に左右対称的に配置するようにしてもよい。これにより、2本のロープ11、11aによって上記した効果を更に高めることができる。
【0018】
また、本発明では、ロープ11と滑車との組み合わせを図4に示すように構成することもできる。この実施例では、右側枠8に取り付けられた固定ピン12aから延びるロープ11は、装置のフレーム等の固定枠部分に取り付けられた反転滑車16で反転されて、左側のY軸3の略延長線上に固定された遊滑車18に向かって斜めに延長され、この遊滑車18で左側の固定ピン12bの方向に向かって曲げられて該固定ピン12bに止着されている。この実施例の場合でも前記実施例と同様に、Y軸方向移動ステージの移動に伴ってこれら固定ピン12a、12bに連結したロープ11によって固定ピン12a、12bの2点がバランスよく同期的に移動方向に引っ張られることになり、四角枠状のY軸方向移動ステージの移動時の変形を減ずることができる。またこの場合は、使用される滑車を2つに省略することができる。
しかしながらこの実施例では、ロープ11の斜めに延長された部分が、Y軸方向移動ステージを移動させた時にテーブル1の開口部1cの領域内に入りX線透過の弊害になるおそれがある。従って、図5に示すように、左右のY軸3、3の中間点に別の遊滑車17を設けてロープ11の一部がテーブル1の開口部1cに入ることを避けるように形成してもよい。尚、この場合は、ロープ11が左右のY軸3、3の中間点にある遊滑車17部分で緩やかに曲げられているので、この遊滑車17を省略して彎曲した固定ガイド面とすることもできる。
【0019】
図6は本発明にかかるロープの構成をX軸方向移動ステージに実施した例を示す。この実施例では、実質的にX軸方向移動ステージとなるテーブル1の移動方向と直交する左右側面1a、1bに、先の実施例と同じように有端状の1本のロープ11の端部が固定ピン20a、20bによって止着されている。
ロープ11の一端部分(図中上側部分)は固定ピン20aからテーブル1の右側面1aに沿って延長されて、スライド部材4に取り付けられた遊滑車21aで直角に曲げられている。更に、その延長部が他方のスライド部材4に取り付けられた遊滑車21bでテーブル1の方向に直角に折り返されて、右側枠8に固定されたスライド部材4に取り付けられた反転滑車22まで延長され、この反転滑車22で反転されてその端部が固定ピン20bに止着されている。
従ってこの実施例の場合も、先の実施例と同じように、テーブル1がモーターM1の駆動によってX軸2、2に沿って移動すると、左右側面1a、1bに取り付けた固定ピン20a、20bも同時に同方向に移動する。この移動に伴ってこれら固定ピン20a、20bに連結したロープ11によって固定ピン20a、20bの2点がバランスよく同期的に移動方向に引っ張られることになる。これにより、テーブル即ち、X軸方向移動ステージの変形が減ぜられると共に、X軸2、2に沿ってスムーズに移動させることが可能となる。
【0020】
上記実施例では、X軸方向移動ステージにロープ11を取り付けた場合と、Y軸方向移動ステージにロープ11を取り付けた例を個別に示したが、両方の移動ステージにロープ11取り付けて構成することも勿論可能である。その他本発明では、上記で説明したような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、開放型や密閉型のX線管を搭載したX線透視装置やX線検査装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態であるX線検査装置のX−Y移動ステージの構成を示す斜視図。
【図2】上記X−Y移動ステージの平面図。
【図3】本発明のおけるX−Y移動ステージの他の実施例を示す斜視図。
【図4】本発明のおけるX−Y移動ステージの更に他の実施例を示す平面図。
【図5】図4で示した実施例に若干の修正を加えた平面図。
【図6】本発明のおけるX−Y移動ステージの更に別の実施例を示す斜視図。
【図7】従来のX線検査装置の概略的な説明図。
【図8】従来のX線検査装置におけるX−Y移動ステージの斜視図。
【符号の説明】
【0023】
A: X線発生装置
B: X線検出器
S: X−Y移動ステージ
1: テーブル
2: X軸
3: Y軸
11: ロープ
13、16、22: 反転滑車
14a、14b、17、18、21a、21b: 遊滑車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生器とX線検出器とが対向した状態で垂直に配置され、これらの間に検査すべきサンプルを載置するテーブルが水平面上で直角に交わるX軸並びにY軸方向に移動可能なX−Y移動ステージ上に組み付けられているX線検査装置において、前記X−Y移動ステージのX軸方向移動ステージまたはY軸方向移動ステージ若しくはその両方が、移動方向と直交する左右側部で少なくとも1本の有端状ロープによってステージ移動時に同期的に移動方向に引っ張られるように形成されているX線検査装置。
【請求項2】
ロープの両端部分がX軸方向移動ステージ又はY軸方向移動ステージの左右側部に沿って配置され、該ロープの一端が前記移動ステージの一側部に止着され、ロープの他端が前記移動ステージの他側部に止着され、何れか一方のロープ端部は他方のロープ端部の延長方向とは反対方向に延長されて反転滑車により反転されており、ロープの中間部は遠隔点の固定枠部分に取り付けられた遊滑車により緊張した状態で保持されている請求項1に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−292383(P2008−292383A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139956(P2007−139956)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】