説明

X線検査装置

【課題】異物の高さ方向の位置を計測することができるX線検査装置を提供することである。
【解決手段】X線検査装置100は、固設された1個のX線照射装置200から照射されるX線を固設された2個のX線ラインセンサ400a,400bにより検出し、照射されるX線内に商品900を移送させることにより商品900内の異物910を検出するものである。X線検査装置100の制御部610は、X線ラインセンサ400a,400bにより作成された画像データD900a,D900bに基づいて商品900内の異物910の高さ方向の位置を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品にX線を照射し、物品内の異物を検出するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品内の異物を検出するためにX線検査装置等が使用されている。これらのX線検査装置に関して、日々研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、被測定物のX線透過量に基づき、所定の式から被測定物の質量を算出して、被測定物の質量測定の容易かつ簡便化を図るX線による質量測定方法及びX線質量測定装置について開示されている。
【0004】
特許文献1記載のX線質量測定装置においては、少なくとも被測定物の質量吸収係数(μm )及び前記被測定物に対する曝射X線量(I0 )からなる測定パラメータを設定する測定パラメータ設定部(10)と、前記被測定物に対し、前記設定された曝射X線量のX線を曝射するX線発生部(3)と、曝射された前記被測定物を透過する透過X線を検出するX線検出部(4)と、該X線検出部から得られた前記透過X線に基づき、透過データ(y)を導出するデータ処理部と、前記透過データから透過X線量(I)を算出する透過X線量算出部と、前記設定された前記測定パラメータ及び前記透過X線量に基づき、前記被測定物の全体質量(M)を算出する質量演算部と、を具備することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−296022公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のX線質量測定装置においては、所定の式を用いて被測定物の質量を算出することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のX線質量測定装置においては、異物の有無を検出することができるが、異物の位置(高さおよび水平位置を有する3次元情報)を正確に検出することはできない。
【0008】
特に、食品関係の生産ラインにおいて使用される場合、異物の混入位置を正確に特定することで、異物のみを確実に除去することができる。
【0009】
また、異物の位置(高さおよび水平位置を有する3次元情報)を検出する手法として、一般的なコンピュータ断層撮影(Computerized Tomography)の場合を考慮すると、X線源およびX線検出器を回転させて、多方向からX線を照射することにより異物の位置(高さおよび水平位置を有する3次元情報)を得る手法があるが、生産ラインにおいては、検査物が連続して移動するために十分な情報が得られないという問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、異物の高さ方向の位置を計測することができるX線検査装置を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、異物の高さ方向の位置を計測することができ、かつ大がかりな装置が不要でコスト抑制を図ることができるX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)
一局面に従うX線検査装置は、固設されたX線源から照射されるX線を固設されたX線検出器により検出し、照射されたX線内に被検査物を搬送ベルトにより搬送させることにより被検査物内の異物を検出するX線検査装置であって、搬送ベルトの搬送面と垂直に交差する方向に対して角度を有する少なくとも2つの方向から照射されたX線によりX線検出器で複数枚の画像データを作成し、該作成された画像データにおける同一異物に対する搬送方向の位置の差に基づいて被検査物内の異物の高さ方向の位置を計測する異物高さ計測部を含有するものである。
【0013】
X線検査装置においては、固設されたX線源からX線が照射され、当該X線が固設されたX線検出器により検出される。搬送ベルトにより照射されたX線内に被検査物が搬送される。また、搬送ベルトの搬送面と垂直に交差する方向に対して角度を有する少なくとも2つの方向から照射されたX線によりX線検出器で複数枚の画像データが作成される。そして、異物高さ計測部により該作成された画像データにおける同一異物に対する搬送方向の位置の差に基づいて被検査物内の異物の高さ方向の位置を計測する。
【0014】
この場合、異物高さ計測部において複数枚の画像データに基づいて異物の高さ方向の位置を計測することができる。すなわち、異物の位置の差に基づいて異物の高さ方向の位置を計測することができる。その結果、異物の除去または被検査物の除去を容易に行うことができる。
【0015】
(2)
X線源は、1個のX線源からなり、X線検出器は、X線源から搬送面に対して垂直に交差する位置からずれた位置に配置され、1個のX線源から照射されるX線を受ける複数のX線検出器からなってもよい。
なお、複数のX線検出器のうち少なくとも1のX線検出器が当該ずれた位置にあることが望ましい。また、搬送面に垂直に交差する位置から複数のX線検出器のそれぞれまでが、同じ距離に配置(左右対称配置)されなくてもよい。
【0016】
この場合、1個のX線源と複数のX線検出器から異物の高さを計測することができるので、X線源を移動させるような、大がかりな装置が不要となり、X線検査装置におけるコスト抑制を図ることができる。
【0017】
(3)
X線検出器は、1個のX線検出器からなり、X線源は、搬送面に対して垂直方向に交差する方向に対して角度を有する方向からX線を照射する複数のX線源からなってもよい。
【0018】
この場合、複数のX線源と1個のX線検出器から異物の高さを計測することができるので、X線源を移動させるような、大がかりな装置が不要となり、X線検査装置におけるコスト抑制を図ることができる。
【0019】
(4)
X線検出器およびX線源をそれぞれ1個ずつ有したX線源検出セットを複数備えてもよい。
【0020】
このようにX線源検出セットを複数備えた場合、異物高さ計測部による高さ計測時の誤差を低減することができ、さらに精度の高い異物の高さ方向の位置を計測することができる。
【0021】
(5)
搬送ベルトは搬送面上に所定間隔で設けられた位置基準を有し、異物高さ計測部は、搬送方向の異物の位置と位置基準に基づき被検査物内の異物の同一性を判定する判定部をさらに有してもよい。
【0022】
この場合、異物までの距離を計測する位置基準を搬送ベルトに設けるので、位置基準から搬送ベルト上に載置された被検査物内の異物までにおける距離を容易かつ確実に測定することができる。
【0023】
(6)
X線検出器により作成された画像データに対して、異物検出を行う複数のフィルタ処理部をさらに含み、異物高さ計測部は、複数のフィルタ処理部により処理されたそれぞれのフィルタ処理結果に基づいて被検査物内の異物の同一性を判定する判定部をさらに有してもよい。
【0024】
この場合、フィルタ処理部により複数の画像データ内において異物が明確に表示される画像データの重みを変化させることができる。その結果、異物の位置をより正確に認識するとともに、異物の同一性を判定することができる。
【0025】
(7)
異物高さ計測部は、被検査物の異物が複数存在する場合に画像データにおける当該異物の配置に応じて異物の同一性を判定する判定部をさらに有してもよい。
【0026】
この場合、異物高さ計測部は、被検査物に複数の異物が存在する場合であっても、フィルタ処理部により複数の画像データ内から異物が明確に表示された画像データの重みを変化させて、異物の位置をより正確に認識することができる。その結果、異物の同一性を判定することができ、異物のそれぞれの高さ方向の位置を正確に計測することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るX線検査装置においては、異物の高さ方向の位置を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るX線検査装置の一例を示す模式的外観図
【図2】本発明に係るX線検査装置の内部構造の一例を示す模式的斜視図
【図3】X線検査装置の制御システムの一例を示す模式図
【図4】図2に示したX線検査装置の内部構造の模式的側面図
【図5】X線ラインセンサから得られるそれぞれの画像データの一例を示す模式図
【図6】図2に示したX線検査装置の内部構造の他の例を示す模式的斜視図
【図7】本発明に係るX線検査装置の内部構造の一例を示す模式的斜視図
【図8】X線ラインセンサから得られるそれぞれの画像データの一例を示す模式図
【図9】図4に示したX線検査装置の内部構造のさらに他の例を示す模式的側面図
【図10】図4に示したX線検査装置の内部構造のさらに他の例を示す模式的側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施の形態において図面を用いて説明する。
(一実施の形態)
図1は、本発明に係るX線検査装置100の一例を示す模式的外観図であり、図2は、本発明に係るX線検査装置100の内部構造の一例を示す模式的斜視図である。
【0030】
図1に示すように、X線検査装置100には、X線検査室300および制御システム600が内蔵されている。
また、図1に示すように、X線検査装置100のX線検査室300を貫通するように、ベルトコンベア800が設けられている。
図1のX線検査室300の開口部(入口および出口)には、X線漏洩防止カーテン500が設けられている。それにより、X線検査室300からX線が外部に漏洩することを防止することができる。また、ベルトコンベア800の下流側には、振り分け装置(図示せず)が設けられる。
【0031】
作業者は、図1に示すX線検査装置100のタッチパネル画面700を操作することによりX線検査装置100を駆動させる。作業者は、ベルトコンベア800に被検査物である商品900(図2参照)を載置させて搬送させ、X線検査装置100のX線検査室300内において異物混入等がないか否かの検査を行う。以下、X線検査室300内の具体例について説明する。
【0032】
図2に示すように、X線検査室300の上方には、X線照射装置200が設けられ、ベルトコンベア800の内側にX線ラインセンサシステム400が内蔵されている。X線ラインセンサシステム400は、X線ラインセンサ400aおよびX線ラインセンサ400bからなる。X線ラインセンサ400aは、シンチレータおよびPDA(フォトダイオード)からなる多数のセンサから構成されており、同様に、X線ラインセンサ400bは、シンチレータおよびPDA(フォトダイオード)からなる多数のセンサから構成されている。X線ラインセンサ400aおよびX線ラインセンサ400bは、ベルトコンベア800の搬送方向(矢印L1の方向)に直交する向きに平行に配置されている。
【0033】
図2に示すように、X線照射装置200は、X線ラインセンサシステム400に向けて扇状のX線(領域S1)を照射する。この場合、商品900が、移動しつつ扇状のX線(領域S1)を受けるようベルトコンベア800上を搬送される。その結果、商品900を透過したX線がX線ラインセンサシステム400により検出されつつ、商品900が移動し、商品900全体の異物検査が行われる。図2においては、X線ラインセンサシステム400にX線ラインセンサ400a,400bと2個設けられるので、商品900の画像データがフィルタ処理を考慮しなければ、2個形成される。
【0034】
次に、図3は、X線検査装置100の制御システム600の一例を示す模式図である。
【0035】
図3に示すように、X線検査装置100の制御システム600は、制御部610、光電センサ621,622、X線照射装置200、X線ラインセンサ400a,400b、タッチパネル画面700、コンベアモータ830、モータエンコーダ840および振り分け装置出力端末860を含む。
【0036】
制御システム600では、光電センサ621,622、X線照射装置200、X線ラインセンサ400a,400b、タッチパネル画面700、コンベアモータ830、モータエンコーダ840および振り分け装置出力端末860と、制御部610とが、それぞれ接続して設けられている。
【0037】
制御部610は、CPU(中央演算処理装置)611、ROM(リードオンリメモリ)612、RAM(ランダムアクセスメモリ)613、HDD(ハードディスクドライブ)614およびFDD(フロッピー(登録商標)ディスクドライブ)615を含む。HDD614には、比較対象となる複数の画像データが保存される。
【0038】
また、CPU611、ROM612、RAM613、HDD614およびFDD615は、互いにアドレスバス、データバス等のバスラインを介して相互通信可能に接続されている。
【0039】
さらに、制御部610は、タッチパネル画面700からのキー入力データを取り込むキー入力回路(図示せず)、プリンタ等の外部機器に関するI/Oポート(図示せず)等を備えている。
【0040】
図3に示すように、CPU611は、X線照射装置200に対してX線の照射のオンオフを制御する。また、X線照射装置200からCPU611に対して帰還信号が与えられる。また、CPU611は、コンベアモータ830に装着されたモータエンコーダ840からの信号に基づいて、コンベアモータ830の駆動のオンオフ、搬送速度(インバータ)および回転方向(正回転、逆回転)を制御する。
【0041】
また、CPU611は、光電センサ621,622からの信号を受信する。光電センサ621,622は、同期センサの働きを有し、それぞれ、コンベアを挟んで配置される一対の投光器及び受光器から構成されている。CPU611は、光電センサ621,622からの信号に基づいて商品900がX線ラインセンサ400a,400bの上方に搬送されるタイミングを検知する。
【0042】
CPU611は、光電センサ621,622からの信号を受信し、商品900が扇状のX線の照射を通過する場合に、X線ラインセンサ400a,400bによるX線透過信号を短時間の間隔で取得し、それらのX線透過信号に基づいて商品900の画像データを作成(X線画像作成制御)し、上述したようにHDD614に保存する。また、CPU611は、画像データに対してフィルタ処理を行い、異物の種類に応じて画像データに現れやすいフィルタ処理を1つ選択または複数のフィルタ処理を用いて画像データを処理(フィルタ処理)する。
【0043】
続いて、CPU611は、処理された画像データに基づいて後述するように異物の高さを計測する(異物高さ測定)最後に、CPU611は、計測された異物の高さに応じて異物除去指示を振り分け装置出力端末860に対して指示する。
【0044】
次に、図4および図5を用いて高さ計測を行う具体的手法について説明を行う。図4は図2に示したX線検査装置100の内部構造の模式的側面図であり、図5はX線ラインセンサ400a,400bから得られるそれぞれの画像データの一例を示す模式図である。
【0045】
まず、図4に示すように、X線照射装置200から扇状のX線(領域S1)が角度θ1で照射され、X線照射装置200からベルトコンベア800上までの高さを距離H1とする。
【0046】
そして、X線照射装置200から扇状のX線(領域S1)の照射範囲においてX線ラインセンサ400a,400bが設けられる。X線ラインセンサ400a,400bの間隔は、距離V1であり、距離V1/2の鉛直上にX線照射装置200が配置される。
【0047】
次に、図5(a)に示すように、X線ラインセンサ400aから検出された画像データは、画像データD900aであり、図5(b)に示すように、X線ラインセンサ400bから検出された画像データは、画像データD900bである。
【0048】
この場合、図5(a)に示すように画像データD900a内において異物データD910aが画像データD900aの端部から距離V11の位置に現れる。また、図5(b)に示すように、画像データD900b内において異物データD910bが画像データD900bの端部から距離V12の位置に現れる。これは、X線照射装置200から照射される扇状のX線(領域S1)が角度θ1で照射され、角度θのX線がX線ラインセンサシステム400に入射されているからである。CPU611は、画像データD900a,D900bおよび異物データD910a,D910bの特徴から図5(a),(b)の異物データD910a,D910bが同一であるという推定を行う。
【0049】
ここで、X線照射装置200からX線ラインセンサ400aに照射されるX線と、X線照射装置200からX線ラインセンサ400bに照射されるX線との角度を角度θとすると、距離V11および距離V12の絶対値の差(以下、距離(V11−V12)と略記する。)の半分の値を用いて、異物の高さH11との関係は、角度θを用いた三角関数で表すと、tan(θ/2)=((V11−V12)/2)/H11で表すことができる。
【0050】
また、X線照射装置200およびX線ラインセンサシステム400の関係を角度θを用いた三角関数で表すと、tan(θ/2)=(V1/2)/H1で表すことができる。
【0051】
したがって、上2式から、左項を除去して、H11=(H1×(V11―V12))/V1で容易に求めることができる。本実施の形態においては、CPU611において当該式を用いて異物の高さH11が計測される。
【0052】
なお、図5(a),(b)においては、一種類のフィルタ処理を行った画像データを例示したが、これに限定されず、種々のフィルタ処理によって異物データD910a,D910bが現れる場合がある。そのため、異物の種類に応じてフィルタ処理を複数行うことが望ましい。すなわち、仮に商品900内に複数の種類の異なる異物が混入していた場合、画像データに対するフィルタを変更することにより、異物の種類によって明確に表示されるようになる。すなわち、複数の種類の異物が混入していたとしても、フィルタ画像から特徴を抽出することで、画像データD900a,D900b間で同一異物を判別することができる。したがって、異物データD910a,D910bに関して同一フィルタ処理による画像データを用いることが好ましい。さらに、異物910と異なる種別の異物がある場合には、他のフィルタ処理を用いることが好ましい。
【0053】
また、画像データD900a,D900bにおける画素ピッチPHによる誤差Zは、Z=(2×H1/(V11―V12))×PHで表すことができる。例えば、X線照射装置200の距離H1が460mmであり、X線ラインセンサ400aおよびX線ラインセンサ400bの距離(V11−V12)が200mmであり、画素ピッチPHが1mmである場合、異物高さを示す距離(異物の高さ)H11の誤差Zは、5mmとなる。
【0054】
続いて、CPU611は、異物910の正確な高さ方向の位置および水平方向の位置、サイズを、振り分け装置出力端末860から振り分け装置に指示を与える。その結果、振り分け装置により商品900の異物910が確実に除去される。
【0055】
例えば、商品900がミンチ肉等の場合、ミンチ肉が継続して搬送され、振り分け装置により、ミンチ肉の異物が混入している部分のみ、除去することができる。その結果、異物が混入していない部分を無駄に排除する必要がなくなり、コスト増加を防止することができる。
【0056】
また、商品900が薬箱の場合、能書き書が梱包されていない場合、または商品900の開封時に、能書き書が目に付く位置(高さおよび位置)にない場合、振り分け装置により正常ラインから排除し、能書き書が正常な位置に梱包された薬箱のみを正常ラインに排出することができる。それにより、購買者が能書き書を読まずに薬を飲むことを防止できる。
【0057】
(他の例)
図6は、図2に示したX線検査装置100の内部構造の他の例を示す模式的斜視図である。
【0058】
X線ラインセンサシステム400は、X線ラインセンサ400a,400b,400cを備える。X線ラインセンサ400aとX線ラインセンサ400bとの距離と、X線ラインセンサ400bとX線ラインセンサ400cとの距離とは異なるように設定される。
【0059】
その結果、3個の画像データの各相互の距離から異物の高さH11を計測することができ、異物の高さH11をより正確に計測することができる。
【0060】
(さらに他の例)
続いて、図7は、本発明に係るX線検査装置100の内部構造のさらに他の例を示す模式的斜視図であり、図8はX線ラインセンサ400a,400bから得られるそれぞれの画像データの一例を示す模式図である。
【0061】
図7に示すように、X線検査室300bのベルトコンベア800には、基準ラインKLが設けられている。当該基準ラインKLは、X線を阻害する物質からなる。なお、鉛は食品生産ラインで阻害されることが多いため、当該物質には、好ましくない。
【0062】
この場合、図8に示すように、基準ラインKLを設けることにより、商品900の画像データD900a,D900bにおける異物データD910a,D910bまでの距離V13および距離V14を正確に計測することができる。
【0063】
その結果、H11=(H1×(V13―V14))/V1で容易に求めることができる。
【0064】
(さらに他の例)
図9は、図4に示したX線検査装置の内部構造のさらに他の例を示す模式的側面図である。以下、図4に示したX線検査装置と異なる点について説明を行う。
【0065】
図9に示すように、X線ラインセンサシステム400は、X線ラインセンサ400a,400bの代わりにX線ラインセンサ400aのみを設け、1個のX線照射装置200の代わりに複数のX線照射装置200a,200bを設けてもよい。また、複数のX線照射装置200a,200bは、鉛直下方に照射軸を配置せず、斜め上方向から下方に向けて照射を行っている。
【0066】
さらに、複数のX線照射装置200a,200bからX線ラインセンサ400aに入射されるX線を交互にするため、シャッター装置550a,550bが設けられる。シャッター装置550a、550bには、シャッター551a,551bが設けられており、図9においては、シャッター551aがX線照射装置200aからのX線を遮蔽している。
【0067】
この場合、図9に示すように、角度θ3および角度θ4と、X線照射装置200a,200bからX線ラインセンサ400aまでの距離V15,V16と、X線照射装置200a,200bからベルトコンベア800までの距離H1に基づいて異物の高さH11を計測することができる。
【0068】
(さらに他の例)
図10は、図4に示したX線検査装置の内部構造のさらに他の例を示す模式的側面図である。以下、図4に示したX線検査装置と異なる点について説明を行う。
【0069】
図10に示すように、1個のX線照射装置200の代わりに複数のX線照射装置200a,200bを設けて、さらにX線ラインセンサシステム400のX線ラインセンサ400aには、X線照射装置200aからのみX線が照射され、X線ラインセンサ400bには、X線照射装置200bからのみX線が照射されてもよい。
【0070】
この場合、図10に示すように、角度θ5および角度θ6と、X線照射装置200a,200bからX線ラインセンサ400a,400bまでの距離V17,V18と、X線照射装置200a,200bからベルトコンベア800までの距離H1に基づいて異物の高さH11を計測することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態に係るX線検査装置100は、CPU611の異物高さ計測により、X線ラインセンサシステム400のうち一のX線ラインセンサ400aからの画像データD900aにおける異物データD910aと、他のX線ラインセンサ400bからの画像データD900bにおける異物データD910bとの距離の差(V11−V12)から異物の高さ方向の位置(H11)を計測することができる。
【0072】
また、異物を計測する基準ラインKLをベルトコンベア800に設けることにより、ベルトコンベア800上に載置された商品900内の異物910までの距離V11および距離V13の基準を正確にし、距離V13および距離V14を用いることができる。その結果、異物高さH11を正確に計測することができる。
【0073】
また、CPU611において複数のフィルタ処理を行うことにより、画像データD900a,D900bを複数作成することができ、例えば、フィルタ処理の種類に応じて画像データD900a,D900b上において明確になる異物、(鉄、アルミ、木材等)があるため、明確になる異物が表示された画像データD900a,D900bを用いて、または当該画像データD900a,D900bの比率を大きくして異物の位置をより正確に計測することができる。
【0074】
さらに、1個のX線照射装置200とX線ラインセンサシステム400により異物910の高さH11を計測することができるので、X線照射装置200を回動させるような大がかりな装置が不要となり、X線検査装置100におけるコスト抑制を図ることができる。また、即座に商品900の異物混入位置を確認して異物910のみの除去を確実に行うことができる。
【0075】
また、CPU611においてフィルタ処理を行った後の画像データD900における異物データD910a,D910bとの差を判定することにより、同一異物か否かの判定を行うことができる。例えば、多くの異物が商品900内に存在する場合であってもそれぞれ材質が異なる場合等、フィルタ処理による画像データにおいて異物それぞれの現れ方が異なり、異物のそれぞれに対する同一性を判定することができ、さらに同一性を判定した異物それぞれの高さを計測することができる。
【0076】
なお、上記の実施の形態においては、図2に商品900を例示したが、これに限定されず、他の任意の商品、例えば、連続的に運搬されるミンチ肉、小魚等、袋入りのせんべい、1段または複数段を有する饅頭等であってもよい。
【0077】
さらに、上記実施の形態においては、振り分け装置を用いることとしたが、これに限定されず、他の任意の装置、例えば異物除去装置等を用いてもよい。
【0078】
また、X線ラインセンサ400aおよびX線ラインセンサ400bの少なくとも1つが、X線照射装置200からベルトコンベア800に対する垂直の位置になければ異物の高さを計測することができるので、複数のX線ラインセンサのうち、一のX線ラインセンサが当該垂直の位置にあり、他のX線ラインセンサが当該垂直の位置からずれた位置にあってもよい。
【0079】
本実施の形態においては、X線照射装置200,200a,200bがX線源に相当し、X線照射装置200が1個のX線源に相当し、X線ラインセンサシステム400、X線ラインセンサ400aおよびX線ラインセンサ400bがX線検出器に相当し、商品900が被検査物に相当し、ベルトコンベア800が搬送ベルトに相当し、異物910が異物に相当し、X線検査装置100がX線検査装置に相当し、異物の高さ方向の位置が距離(異物の高さ)H11に相当し、画像データD900a,D900bが画像データに相当し、基準ラインKLが位置基準に相当し、搬送ベルトの搬送面と垂直に交差する方向に対して角度を有する方向とは、図4のV11の両端、または搬送ベルトの搬送面と垂直に交差する部分にX線ラインセンサを配置させないことに相当し、制御部610のCPU611が異物高さ計測部、判定部およびフィルタ処理装置に相当する。
【0080】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0081】
100 X線検査装置
200 X線照射装置
400 X線ラインセンサ
610 制御部
900 商品
910 異物
D900a,D900b 画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固設されたX線源から照射されるX線を固設されたX線検出器により検出し、前記照射されたX線内に被検査物を搬送ベルトにより搬送させることにより前記被検査物内の異物を検出するX線検査装置であって、
前記搬送ベルトの搬送面と垂直に交差する方向に対して角度を有する少なくとも2つの方向から照射されたX線により前記X線検出器で複数枚の画像データを作成し、該作成された画像データにおける同一異物に対する搬送方向の位置の差に基づいて前記被検査物内の異物の高さ方向の位置を計測する異物高さ計測部を含有することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記X線源は、1個のX線源からなり、
前記X線検出器は、前記X線源から前記搬送面に対して垂直に交差する位置からずれた位置に配置され、前記1個のX線源から照射されるX線を受ける複数のX線検出器からなることを特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線検出器は、1個のX線検出器からなり、
前記X線源は、前記搬送面に対して垂直方向に交差する方向に対して角度を有する方向からX線を照射する複数のX線源からなることを特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線検出器および前記X線源をそれぞれ1個ずつ有したX線源検出セットを複数備えることを特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記搬送ベルトは搬送面上に所定間隔で設けられた位置基準を有し、
前記異物高さ計測部は、前記搬送方向の異物の位置と前記位置基準に基づき前記被検査物内の異物の同一性を判定する判定部をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記X線検出器により作成された画像データに対して、異物検出を行う複数のフィルタ処理部をさらに含み、
前記異物高さ計測部は、前記複数のフィルタ処理部により処理されたそれぞれのフィルタ処理結果に基づいて前記被検査物内の異物の同一性を判定する判定部をさらに有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記異物高さ計測部は、前記被検査物の異物が複数存在する場合に前記画像データにおける当該異物の配置に応じて異物の同一性を判定する判定部をさらに有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のX線検査装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−133425(P2011−133425A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294906(P2009−294906)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】