説明

X線検査装置

【課題】X線漏洩を更に抑えて安全性を向上させ、第二のスリットを形成する散乱規制板の清掃が容易に行えて清掃性を向上させたX線検査装置を提供すること。
【解決手段】X線発生部2と、X線検出部4とを有し、X線発生部2とX線検出部4の間の検査空間7内を搬送方向Yに搬送される被検査物WにX線を照射し、その透過量から被検査物Wを検査するX線検査装置1であり、X線発生部2からのX線を検査空間7内の所定領域に照射するためにこの空間7の上面に形成された開口面21aを有した第一のスリット21と、検査空間7の上面からこの空間7内に突出し、第一のスリット21の開口面21aを挟んで対面して設けられた一対の散乱規制板22a,22bにより形成された第二のスリット28とを備え、一対の散乱規制板22a,22bをその間が清掃可能となるように検査空間7の上面から取り外し可能に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生部とX線検出部の間にて略閉塞された検査空間内を搬送される被検査物にX線を照射し、被検査物を透過したX線の透過量に基づいてこの被検査物の品質を検査するX線検査装置に係り、詳細には、X線発生部にて発生させたX線をX線検出部側に向けて照射するための第一のスリットと、第一のスリットの開口面からのX線の散乱を抑制する第二のスリットとを備えたX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線検査装置は、その筐体内を搬送される食品などの被検査物にX線を照射して、被検査物に混入している異物の検出や、被検査物の形状などが品質規格に適合するか否かなどを検査する装置である。図1に示すように、X線検査装置1は、筐体1aの上部にX線を発生させるX線発生部2を備えるとともに、X線発生部2の下方にはX線検出部4を備えている。筐体1aの前面には開閉可能な遮蔽扉8が設けられている。また、筐体1aの両側面は被検査物Wが搬入・搬出されるための搬入口11a及び搬出口11bとして開口されており、これらの開口部(搬入口11a及び搬出口11b)はX線の漏洩を防止するために遮蔽カーテンなどで遮蔽されている。
【0003】
また、X線検査装置1では、筐体1a内において、X線発生部2とX線検出部4の間が略閉塞された空間となり、この閉塞された空間が検査空間7となる。検査空間7の上面には、X線発生部2にて発生させたX線をX線検出部4側に向けて照射するために図示しないスリット(X線照射口)が形成されている。X線照射口となるスリットがあることにより、X線発生部2から発生したX線の散乱を抑えて、検査空間7からのX線の漏洩を抑制することができる。
【0004】
ところが、更に高い検査精度を得るためにX線強度を上げると、X線の漏洩防止の観点から上述したスリットだけでは不十分なことがあった。この場合、従来、X線発生部にて発生させたX線を、まず、第一のスリットを通過させ、次に、第二のスリットを通過させて照射することにより、X線の散乱を抑制していた。このような構成例は、例えば下記特許文献1,2などにある。
【0005】
下記特許文献1に開示されるX線異物検出装置は、図5に示すように、X線発生部101の底面側に、X線が通過する第一のスリット102aを有して筒状をなすX線曝射口102と、X線発生部101の底面側にてX線曝射口102の周りを囲むように突設されて、一側部が開口した枠をなす遮蔽部材103と、X線発生部101の底側に位置する支持部材104上にて、X線発生部101を摺動載置するように設けられ、X線発生部101の摺動に伴い遮蔽部材104を挿通支持可能にこの遮蔽部材104の開口部分と対向する一側部が開口した枠をなす載置台105と、支持部材104上に設けられ、X線曝射口102の周りを囲むように筒状をなし、X線発生部101の摺動に伴いX線曝射口102を挿通可能な切欠き106bを有するとともに、第一のスリット102aを介したX線を図示しないX線検出部側に向けて照射する第二のスリット106aを有したX線導出部106とを備えて構成されている。
【0006】
また、例えば下記特許文献2に開示されるX線検査装置のように、第一のスリットから下方に向けて突出する散乱規制部材が設けられ、散乱規制部材の下端が第二のスリットとなるものがある。このX線検査装置によれば、X線が、第一のスリットを通過した後に第二のスリットを通過することにより、X線の散乱を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−318060号公報
【特許文献2】特開2004−333266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のX線検査装置などには以下の問題がある。まず、上記特許文献1に開示されるX線異物検出装置では、第一のスリット102aを介した後に第二のスリット106aを介してX線を照射することによりX線の散乱を抑制することができるものの、これらの第一のスリット102a及び第二のスリット106aは検査空間の外部に設けられているため、最終的にX線が通過する第二のスリット106aと搬送される被検査物とは距離があり、背の低い被検査物から高い検査精度を得る場合にX線強度を上げることがあるが、それではX線の漏洩が増加する可能性があり危険であるため、この場合は安全面を考慮してX線強度を上げることができなかった。一般に、X線強度を上げるとは、管電圧又は管電流を上げることを意味する。管電圧を上げるとX線の透過力が向上し、管電流の値がそのままであっても遮蔽手段によるX線の遮蔽率が変化(低下)する。また、管電流を上げるとX線の照射量が増加し、管電圧の値がそのままであっても遮蔽手段によるX線の遮蔽量が変化(低減)する。したがって、管電圧、管電流のどちらを上げてもX線の漏洩量は増加するおそれがある。
【0009】
次に、上記特許文献2に開示されるX線検査装置のように、第一のスリットから下方に向けて突出する、つまり、検査空間内に突出する第二のスリットを備えたものでは、最終的にX線を照射する第二のスリットと被検査物との距離が縮まることにより、X線の散乱が抑制されるが、第二のスリット(散乱規制部材の隙間)は狭く、清掃性が悪いという問題があった。ここで、清掃性の問題を具体的に説明する。検査空間内に突出する散乱規制部材は、検査空間の上面に固定されており、通常は取り外すことができないようになっている。被検査物が食品である場合には搬送中に散乱規制部材と接触することがあり、散乱規制部材に被検査物のカスなどが付着することがある。この付着したカスなどを定期的にブラシなどで取り除かなければならないのだが、散乱規制部材の隙間は狭いことからこの隙間にブラシなどが入らず、カスなどが残ることがあり、不衛生となる。なお、スリットの幅が狭いほど遮蔽効果が高まるため、通常は5mm程度の幅に設定されている。
【0010】
また、散乱規制部材が固定されていることにより、被検査物の高さに応じて散乱規制部材の高さを変更することができないために汎用性が低く、背の低い被検査物から高い検査精度を得たい場合などには不向きという上記特許文献1と同様の問題があった。
【0011】
そこで本発明は、上述したような問題点を解消するために、装置(検査空間)の外部へのX線の漏洩を更に抑えて安全性を向上させ、第二のスリットを形成する散乱規制板の清掃が容易に行えることにより清掃性を向上させ、しかも、汎用性の高い散乱規制板を備えたX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明による請求項1記載のX線検査装置は、筐体1a内に、X線を発生させるX線発生部2と、該X線発生部2からのX線を受けるX線検出部4とを有し、
前記X線発生部2と前記X線検出部4の間にて略閉塞された空間となる検査空間7内を所定の搬送方向Yに搬送される被検査物WにX線を照射し、その透過量に基づいて該被検査物Wを検査するX線検査装置1であって、
前記X線発生部2にて発生させたX線を前記検査空間7内の所定の検査領域に照射するために該検査空間7の上面に形成された前記搬送方向Yと直交する方向を長手とする開口面21aを有した第一のスリット21と、
前記検査空間7の上面から該空間7内に突出するとともに前記第一のスリット21の前記開口面21aを前記搬送方向Yから挟むように対面して設けられた一対の散乱規制板22,22(22a,22b)により形成された第二のスリット28とを備え、
前記一対の散乱規制板22,22(22a,22b)が、該一対の散乱規制板22,22(22a,22b)の間が清掃可能となるように前記検査空間7の上面から取り外し可能に設けられたことを特徴としている。
【0013】
請求項2記載のX線検査装置は、前記一対の散乱規制板22a,22bの少なくともいずれか一方が、前記一対の散乱規制板22a,22bの間を広げるようにその上縁部を支点として回動可能に設けられたことを特徴としている。
【0014】
請求項3記載のX線検査装置は、前記請求項2記載のX線検査装置1が、閉じた状態のときに前記検査空間7を形成するように前記筐体1aの前面に設けられた遮蔽扉8が開いた状態のときに前記X線発生部2からのX線の発生を禁止するインターロックスイッチを備えており、
前記遮蔽扉8の裏面には、前記一対の散乱規制板22a,22bの間を広げるために回動された該散乱規制板22aに当接して前記遮蔽扉8が閉じることを妨げる突部31が設けられたことを特徴としている。
【0015】
請求項4記載のX線検査装置は、前記一対の散乱規制板22,22が、前記搬送方向Yと直交する方向にスライド可能に設けられたことを特徴としている。
【0016】
請求項5記載のX線検査装置は、前記一対の散乱規制板22,22が取り付けられているときにはX線強度を上げるように制御し、前記一対の散乱規制板22,22が取り付けられていないときにはX線強度を下げるように制御する制御手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のX線検査装置によれば、第二のスリットを形成する一対の散乱規制板を検査空間の上面から取り外すことができるため、特に一対の散乱規制板の間の清掃が容易となる。すなわち、清掃性が向上する。また、搬送される被検査物の高さに応じて、検査空間内に突出する第二のスリットの高さが変更可能となり、例えば、背の低い被検査物のときには長い散乱規制板を用いることで第二のスリットを低い位置に設定することができるようになる。これにより、第二のスリットと被検査物との距離が縮まり、X線強度を上げることができて高い検査精度を得ることができるとともに、X線の散乱を抑制することができる。これにより、X線の漏洩が更に抑制され、安全性が向上する。それに加えて、これらの散乱規制板は、背の高い被検査物のときには散乱規制板を取り外すことができ、汎用性の高いものである。
【0018】
また、一対の散乱規制板の少なくともいずれか一方が、一対の散乱規制板の間を広げるように回動可能に設けられていることにより、検査空間に取り付けられた状態であっても、従来は狭くて清掃困難であった一対の散乱規制板の間が容易に清掃可能となる。これにより、清掃にかかる時間と手間が軽減され、頻繁に清掃することができて衛生的となる。
【0019】
さらに、遮蔽扉の裏面に設けられている突部が、一対の散乱規制板の間を広げるために回動された散乱規制板、つまり、正規の位置にない散乱規制板に当接して遮蔽板が閉じることを妨げるため、例えば、散乱規制板を揺動させて清掃し、通常は清掃後に自重によって正規の位置に戻るはずの散乱規制板が何らかの原因で戻らなかったときに、遮蔽扉が閉じなくなる。遮蔽扉が閉じなければ、インターロックスイッチがONにならず、X線の発生を禁止する。これにより、安全性が向上する。
【0020】
また、一対の散乱規制板がスライド可能に設けられていることにより、これらの散乱規制板の取り付け・取り外しが更に容易となる。
【0021】
さらに、一対の散乱規制板が取り付けられているときにはX線強度を上げるように制御し、一対の散乱規制板が取り付けられていないときにはX線強度を下げるように制御することにより、被検査物の高さに応じたX線強度の設定を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるX線検査装置の一例を示す斜視図である。
【図2】一対の散乱規制板(第二のスリット)を示す正面図である。
【図3】(a),(b)散乱規制板が正規の位置にない状態を示す正面図である。
【図4】散乱規制板が正規の位置にないときの遮蔽扉を示す側面図である。
【図5】従来のX線検査装置のスリットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
本発明によるX線検査装置は、その筐体内を搬送される被検査物(主に生肉などの剥き出しの食品)に向けてX線を照射して、被検査物に混入している異物の検出や、被検査物の形状などが品質規格に適合するか否かなどの検査を行うものである。
【0024】
図1に示すように、X線検査装置1は、X線を発生させるX線発生部2と、X線発生部2からのX線を受けるX線検出部4と、被検査物W(図2参照)を所定の搬送方向Yに搬送する搬送部10とを備えている。
【0025】
X線発生部2は、X線を発生させるX線管3の周囲を遮蔽板にて覆うことにより、X線の漏洩を防止するように構成されている。遮蔽板は、鉛などのX線遮蔽材が内張りされた板である。X線発生部2は、X線検査装置1の筐体1a内の上部に設けられており、下方に向けてX線を照射する。このときのX線の態様は、X線管3から下方に広がる略円錘状となる。また、X線発生部2においては、X線を発生させたときに生じる熱を図示しない冷却フィンによって放熱している。
【0026】
X線検出部4は、筐体1a内の下部に設けられており、X線発生部2からのX線を受けるように構成されている。X線検出部4は、金属箱5内に収容されている。金属箱5の略平坦な上面にはスリット6が形成されている。スリット6は、搬送方向Yと直交する方向に長い長孔に、X線を透過させる樹脂材がシリコンなどで防水されて取り付けられてなる。スリット6は、後述する第一のスリット21及び第二のスリット28を通過してその態様が略面状となるX線を通過させる。金属箱5のスリット6を通過したX線は、金属箱5内のX線検出部4で受け、X線検出部4にてこのX線を光変換し、図示しないX線処理部に出力する。
【0027】
また、金属箱5は、搬送方向Yと直交する方向の面が筐体1aに固定されている。この実施の形態においては、金属箱5は溶接にて固定されている。その他、ボルトなどで固定されていてもよい。また、金属箱5は、筐体1aの脚部によって底面が固定されていてもよい。
【0028】
筐体1a内には、X線発生部2とX線検出部4の間に略閉塞された空間が形成されている。この空間は、X線を照射して被検査物Wを検査するための検査空間7となる。
【0029】
図3に示すように、筐体1aの前面には遮蔽扉8が設けられている。遮蔽扉8は、その底面の両端部に受部9,9が設けられている。この受部9,9が筐体1aの側面下部から搬送方向Yに突出して設けられている支持ピン10,10と係合することにより、遮蔽扉8は支持ピン10,10を回動軸として開閉可能となる。
【0030】
また、図示しないが、遮蔽扉8には、このX線検査装置1が備えるインターロックスイッチが設けられている。インターロックスイッチは、遮蔽扉8が開いた状態ではOFFとなり、遮蔽扉8が閉じた状態ではONとなる。インターロックスイッチがOFFのときには、図示しない制御手段によってX線発生部2からのX線の発生を禁止する。
【0031】
図1に示すように、筐体1aの両側面は、被検査物Wが搬入・搬出されるための搬入口11a及び搬出口11bとなるように開口形成されている。これらの搬入口11a及び搬出口11bは、X線の漏洩を防止するために図示しない遮蔽カーテンなどを用いて被検査物Wを通過可能として遮蔽されている。
【0032】
搬送部12は、搬入口11aから搬入されてきた被検査物Wを搬送し、筐体1a内の検査空間7を通過させるものである。また、検査空間7を通過した被検査物Wは搬出口11bから搬出され、後段の装置に送られる。搬送部12にはベルトコンベアが用いられている。搬送部としてのベルトコンベア12は、ローラ13(13a,13b,13c,13d)と、モータユニット14と、搬送ベルト15とから略構成されている。ベルトコンベア12のローラ13及び搬送ベルト15は、X線検出部4が収容された金属箱5に対して着脱自在に取り付けられている。ベルトコンベア12は、モータユニット14の駆動により、ローラ13dが回転し、各ローラ13a,13b,13c,13dに掛け回された搬送ベルト15を搬送される被検査物Wが搬送方向Yに進行するように循環させる。搬送ベルト15は金属箱5の上面に沿って循環するため、搬送ベルト15上に載せられた被検査物Wは金属箱5の上面を支持面として、X線発生部2からX線検出部4に至るX線の間を通過するようになる。
【0033】
図2に示すように、検査空間7の上面側には、この検査空間7の上面に形成された搬送方向Yと直交する方向を長手方向として長い開口面21aを有する第一のスリット21が形成されている。第一のスリット21の下部にある開口面21aは、X線発生部2にて発生させたX線を被検査物Wに向けて照射するためのX線照射口となる。第一のスリット21は、X線検出部4が有するスリット6の直上に位置している。なお、X線発生部2にて発生させたX線の態様は、上述したように、X線管3から下方に広がる略円錘状となる。この態様のX線を被検査物Wに向けて照射すると、X線の散乱が大きく、X線漏洩の可能性が高まり危険なため、X線の散乱を抑制する必要がある。第一のスリット21が形成されることで、X線の散乱が抑制されてそのX線照射口から照射することができる。なお、X線照射口の開口面21aには、防水性や防塵性を向上させるために、X線を透過する材質(例えば樹脂)のカバーを取り付けてもよい。
【0034】
また、検査空間7の上面には、この上面から検査空間7内に突出するとともに、検査空間7側から見た第一のスリット21の開口面21aを搬送方向Yから挟むように対面した一対の散乱規制板22,22(22a,22b)が設けられている。すなわち、一対の散乱規制板22a,22bは、第一のスリット21の開口面21aを搬送方向Yの上流側及び下流側から挟むように設けられていて、第一のスリット21の開口面21aからX線検出部4のスリットに向かっていくX線を遮ることなく照射するようになっている。一対の散乱規制板22a,22bのうち、一方の散乱規制板22aは、略矩形板状の本体部23と、本体部23の一縁部(上縁部)にヒンジ25を介して回動可能に本体部23と連結されている略矩形板状の取付部24と、本体部23の下縁部の一端部から略直角に突出するように設けられているストッパ片26とから構成されている。また、他方の散乱規制板22bは、略矩形板状の本体部23と、本体部23の一縁部(上縁部)が略直角に折曲されてなる略矩形板状の取付部24とから構成されている。
【0035】
一対の散乱規制板22a,22bは、それぞれの取付部24が支持板27を介してネジ止めなどされることにより、例えば清掃時などに容易に取り外し可能となるように検査空間7の上面に取り付けられている。検査空間7の上面に取り付けられている一対の散乱規制板22a,22bのうち、他方の散乱規制板22bは、本体部23が鉛直下向きに固定されるように取り付けられ、一方の散乱規制板22aは、本体部23を垂下させて取り付けられている。一方の散乱規制板22aは、この一方の散乱規制板22aと他方の散乱規制板22bの間を広げるように搬送方向Yに沿って回動可能に設けられている。また、一方の散乱規制板22aは、これを回動させても自重によって元の位置に戻るものである。このとき、一方の散乱規制板22aのストッパ片26が他方の散乱規制板22bと当接することにより、一対の散乱規制板22a,22bは一定の間隔をあけて配置されるようになる。
【0036】
一対の散乱規制板22a,22bのそれぞれの本体部23の下縁部により、第一のスリット21を通過したX線を被検査物Wに向けて照射するための第二のスリット28が形成されている。第二のスリット28が形成されることで、被検査物Wに近い位置から散乱が抑制されたX線を照射することができる。
【0037】
図3に示すように、上述した遮蔽扉8の裏面における所定位置には、遮蔽扉8を閉じた状態のときに検査空間7内に突出する略矩形板状の突部31が設けられている。この突部31は、X線検査装置1の誤作動によりX線が漏洩することを防止するための安全装置として機能するものである。
【0038】
ここでは、図3,4を参照して上述したX線の漏洩を防止するための安全装置について説明する。
図3(a)に示すように、一対の散乱規制板22a,22bの間を清掃するときなどには、散乱規制板22a,22bの間を広げるために、一方の散乱規制板22aを手などで回動させるが、清掃後は一方の散乱規制板22aから手を離せばこの散乱規制板22aは自重により元の位置、つまり、正規の位置に戻るものである。ところが、ヒンジ25に埃などが堆積していた場合などに手を離してもヒンジ25の回動状態が悪いことから散乱規制板22aが正規の位置に戻らず、中途位置に保持されてしまう。この状態で遮蔽扉8を閉じてX線を照射すれば、X線が散乱し、基準値を大幅に上回るX線が漏洩する可能性がある。通常、第二のスリット28を備えるときには、第一のスリット21から第二のスリット28までにX線の散乱を抑制することができるため、X線強度を上げて照射する。そのため、X線が漏洩する可能性は非常に高くなる。
【0039】
このような場合、図3(b)に示すように、遮蔽扉8を閉じようとしても、遮蔽扉8の突部31が、中途位置にある一方の散乱規制板22aに妨げられて遮蔽扉8を閉じることができなければ、X線検査装置1が備えるインターロックスイッチがONにならず、インターロックスイッチがONにならないため、X線発生部2からX線が発生することはない。このように、X線検査装置1では、一方の散乱規制板22aが正規の位置にないときに、突部31によって遮蔽扉8を閉じられないように構成して安全装置としている。
【0040】
上述した実施の形態によれば、第二のスリット28を形成する一対の散乱規制板22a,22bを検査空間7の上面から取り外すことができるため、特に一対の散乱規制板22a,22bの間の清掃が容易となる。また、搬送される被検査物Wの高さに応じて、検査空間7内に突出する第二のスリット28の高さが変更可能となり、例えば、背の低い被検査物Wのときには長い散乱規制板22a,22bを用いることで第二のスリット28を低い位置に設定することができるようになる。これにより、第二のスリット28と被検査物Wとの距離が縮まり、X線強度を上げることができて高い検査精度を得ることができるとともに、X線の散乱を抑制することができる。それに加えて、この散乱規制板22a,22bは、背の高い被検査物Wのときにはこのような散乱規制板22a,22bを取り外すことができるため、汎用性の高いものである。
【0041】
また、一方の散乱規制板22aが回動することにより、一対の散乱規制板22a,22bの間を広げることができるため、一対の散乱規制板22a,22bが検査空間7に取り付けられた状態のままであっても、この部分の清掃が容易となる。なお、このような清掃は、例えば、同じ品種の被検査物Wを検査するときなどに頻繁に行う清掃である。これに対して、一対の散乱規制板22a,22bを検査空間7の上面から取り外して行う清掃は、被検査物Wの品種を変えて検査するときなどのように、確実な清掃が求められるときに行う清掃である。
【0042】
なお、上述した実施の形態では、一対の散乱規制板22a,22bがネジ止めによって検査空間7の上面に取り付けられる構成としているが、一対の散乱規制板22,22が、被検査物Wの搬送方向Yと直交する方向にスライド可能に構成されてもよい。このような構成は、一対の散乱規制板22,22の上縁部に細長い略板状のスライド軸が設けられ、検査空間7の上面にこのスライド軸を挿通させるガイド溝が設けられることにより実現可能となる。この構成によれば、遮蔽扉8を開いて、これらの散乱規制板22,22を取り付けるときは奥に押し込むだけでよく、散乱規制板22,22を取り外すときは手前に引くだけでよいため、一対の散乱規制板22,22の取り付け・取り外しが更に容易となる。
【0043】
また、上述した実施の形態に、一対の散乱規制板22a,22bが取り付けられているときにはX線強度を上げるように制御し、一対の散乱規制板22a,22bが取り付けられていないときにはX線強度を下げるように制御する制御手段を更に備える構成としてもよい。この構成によれば、被検査物Wの高さに応じたX線強度の設定を自動化することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…X線検査装置
1a…筐体
2…X線発生部
4…X線検出部
7…検査空間
8…遮蔽扉
21…第一のスリット
21a…開口面
22…一対の散乱規制板
22a…一方の散乱規制板
22b…他方の散乱規制板
28…第二のスリット
31…突部
W…被検査物
Y…搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(1a)内に、X線を発生させるX線発生部(2)と、該X線発生部からのX線を受けるX線検出部(4)とを有し、
前記X線発生部と前記X線検出部の間にて略閉塞された空間となる検査空間(7)内を所定の搬送方向(Y)に搬送される被検査物(W)にX線を照射し、その透過量に基づいて該被検査物を検査するX線検査装置(1)であって、
前記X線発生部にて発生させたX線を前記検査空間内の所定の検査領域に照射するために該検査空間の上面に形成された前記搬送方向と直交する方向を長手とする開口面(21a)を有した第一のスリット(21)と、
前記検査空間の上面から該空間内に突出するとともに前記第一のスリットの前記開口面を前記搬送方向から挟むように対面して設けられた一対の散乱規制板(22,22)により形成された第二のスリット(28)とを備え、
前記一対の散乱規制板が、該一対の散乱規制板の間が清掃可能となるように前記検査空間の上面から取り外し可能に設けられたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記一対の散乱規制板(22a,22b)の少なくともいずれか一方が、前記一対の散乱規制板の間を広げるようにその上縁部を支点として回動可能に設けられたことを特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線検査装置(1)が、閉じた状態のときに前記検査空間(7)を形成するように前記筐体(1a)の前面に設けられた遮蔽扉(8)が開いた状態のときに前記X線発生部(2)からのX線の発生を禁止するインターロックスイッチを備えており、
前記遮蔽扉の裏面には、前記一対の散乱規制板(22a,22b)の間を広げるために回動された該散乱規制板(22a)に当接して前記遮蔽扉が閉じることを妨げる突部(31)が設けられたことを特徴とする請求項2記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記一対の散乱規制板(22,22)が、前記搬送方向(Y)と直交する方向にスライド可能に設けられたことを特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記一対の散乱規制板(22,22)が取り付けられているときにはX線強度を上げるように制御し、前記一対の散乱規制板が取り付けられていないときにはX線強度を下げるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−174868(P2011−174868A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40402(P2010−40402)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】