説明

X線画像診断装置

【課題】X線画像診断装置において、保持装置とモニタとの衝突を防止し、衝突による故障の発生を防止する。
【解決手段】X線画像診断装置は、X線発生器2とX線検出器3とを保持して移動可能な保持装置4と、X線検出器3により検出されたX線画像を表示するモニタ5と、室内の天井側に設けられ、モニタ5を移動可能に支持するガイドレール6と、モニタ5をガイドレール6に沿って移動させる駆動部7a,7bと、保持装置4がモニタ5に対して設定距離内に接近したことを検出する検出部8と、検出部8の検出結果に基づき、モニタ5が保持装置4から退避する方向に移動するように駆動部7a,7bを駆動させる退避手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線画像診断装置に関し、特に、X線発生器やX線検出器を保持した保持装置がモニタに衝突することを防止することができるX線画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されているように、X線発生器やX線検出器を保持する保持装置と、患者が載置される寝台と、天井から吊り下げられてX線検出器で検出した患者のX線画像を表示するモニタとを備えたX線画像診断装置が普及している。
【0003】
このようなX線画像診断装置では、医師やX線技師がモニタに表示されたX線画像を見ながら保持装置を移動させており、見たい患部のX線画像をモニタに表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−82468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保持装置を移動させるストロークが大きくなった場合や見たい患部の場所によっては、移動させた保持装置がモニタに衝突する場合があり、このような衝突が繰り返されることによってX線画像診断装置の故障が発生する。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、保持装置とモニタとの衝突を防止することができ、衝突による故障の発生を防止することができるX線画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明の特徴は、X線画像診断装置において、X線発生器とX線検出器とを保持して移動可能な保持装置と、前記X線検出器により検出されたX線画像を表示するモニタと、室内の天井側に設けられ、前記モニタを移動可能に支持するガイドレールと、前記モニタを前記ガイドレールに沿って移動させる駆動部と、前記保持装置が前記モニタに対して設定距離内に接近したことを検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づき、前記モニタが前記保持装置から退避する方向に移動するように前記駆動部を駆動させる退避手段と、を備えることである。
【0008】
請求項4記載の発明の特徴は、X線画像診断装置において、X線発生器とX線検出器とを保持して移動可能な保持装置と、前記X線検出器により検出されたX線画像を表示するモニタと、室内の天井側に設けられ、前記モニタを移動可能に保持するガイドレールと、前記モニタを前記ガイドレールに沿って移動させる駆動部と、前記保持装置が前記モニタに対して第1設定距離内に接近したことを検出する第1検出部と、前記保持装置が前記モニタに対して前記第1設定距離より短い第2設定距離内に接近したことを検出する第2検出部と、前記第2検出部の検出結果に基づき、前記モニタを前記保持装置から退避する方向に移動するように前記駆動部を駆動させる退避手段と、前記第1検出部と前記第2検出部とが共に非検出となった場合に、退避する方向に移動した前記モニタを前記保持装置側へ戻る方向に移動するように前記駆動部を駆動させる戻し手段と、を備えることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、X線画像診断のために保持装置を移動させ、保持装置がモニタに設定距離まで近付いた場合に、モニタを自動的に保持装置から退避させることができ、保持装置とモニタとの衝突を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】ブロック図である。
【図3】フローチャート
【図4】本発明の第2の実施の形態をブロック図。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す斜視図。
【図6】ブロック図
【図7】フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を、図1ないし図3に基づいて説明する。X線画像診断装置は、寝台1と、X線発生器2とX線検出器3とを保持して移動可能な保持装置4と、モニタ5と、ガイドレール6と、駆動部であるモータ7a,7bと、検出部である近接センサ8とを備えている。
【0013】
寝台1上には患者が載せられ、この患者に対してX線透視及び撮影が行われる。
【0014】
X線発生器2とX線検出器3とは対向して配置され、X線発生器2で発生したX線が寝台1上の患者の患部に照射され、患者の患部を透過したX線がX線検出器3で検出され、X線検出器3で検出されたX線に基づいてX線画像が作成される。
【0015】
保持装置4は、床旋回アーム9と、スタンド10と、アームホルダ11と、C型アーム12との各パーツを連結して構成され、C型アーム12の一端側にX線発生器2が連結され、C型アーム12の他端側にX線検出器3が連結されている。
【0016】
床旋回アーム9は、一端側が略垂直な第1回転軸Z1の回りに回転可能に床面上に取付けられている。床旋回アーム9の他端側にはスタンド10の一端側が連結され、スタンド10の一端側は略垂直な第2回転軸Z2の回りに回転可能とされている。スタンド10の他端側にはアームホルダ11が連結され、アームホルダ11は略水平な第3回転軸Z3の回りに回転可能とされている。アームホルダ11にはC型アーム12が連結され、C型アーム12は、X線発生器2とX線検出器3とを結ぶ直線と交差する第4回転軸Z4の回りに回転可能とされている。なお、保持装置4を構成する各パーツの第1回転軸Z1〜第4回転軸Z4の回りの回転は、それぞれ各パーツ用モータ13(図2参照)を駆動させることにより行なわれる。
【0017】
モニタ5は、室内の天井部分にガイドレール6を介して保持されている。モニタ5には、X線検出器3で検出したX線に基づいて作成されたX線画像が表示される。
【0018】
ガイドレール6は、室内の天井部分に設置され、モニタ5を互いに直交する2方向に移動可能に保持している。
【0019】
モータ7a,7bは、モニタ5のガイドレール6への保持部側に設けられており、これらのモータ7a,7bが単独で又は同時に駆動されることにより、モニタ5がガイドレール6に沿って移動する。
【0020】
近接センサ8は、モニタ5における保持装置4に対向する側の縁部に取付けられ、保持装置4がモニタ5に対して設定距離内に接近したことを検出する。
【0021】
図2は、X線画像診断装置における保持装置4とモニタ5との衝突を防止するための構成を示すブロック図である。
【0022】
X線画像診断装置にはその各部を制御する制御部14が設けられ、この制御部14には、保持装置4の移動を指示する操作部15と、保持装置4を構成する各パーツを回転させる各パーツ用モータ13と、近接センサ8と、モータ7a,7bとが接続されている。
【0023】
図3は、X線画像診断装置における保持装置4とモニタ5との衝突を防止するための制御動作について説明するフローチャートである。
【0024】
医師やX線技師が操作部15を操作することにより保持装置4が移動を開始し、モニタ5に対して設定距離内に接近した保持装置4を近接センサ8が検出したか否かが判断される(S1)。
【0025】
保持装置4がモニタ5に対して設定距離内に接近したと判断された場合には(S1のYES)、モニタ5が保持装置4から退避する方向へ移動するようにモータ7a,7bの少なくとも一方が駆動される(S2)。これにより、モニタ5はガイドレール6に沿って保持装置4から退避する方向へ移動し、モニタ5が保持装置4から退避する方向に移動するようにモータ7a,7bの少なくとも一方を駆動させる退避手段が実行される。
【0026】
その後、近接センサ8による保持装置4の検出が終了したか否かが判断され(S3)、検出が終了しない場合には(S3のNO)、ステップ2に戻る。
【0027】
一方、近接センサ8により保持装置4の検出が終了したと判断された場合には(S3のYES)、モータ7a,7bの駆動が停止される(S4)。
【0028】
このような構成において、患者に対するX線の照射位置を変更する場合には、床旋回アーム9を第1回転軸Z1の回りに回転させたり、スタンド10を第2回転軸Z2の回りに回転させたり、アームホルダ11を第3回転軸Z3の回りに回転させたり、C型アーム12を第4回転軸Z4の回りに回転させることにより、保持装置4を移動させる。保持装置4を移動させることにより保持装置4がモニタ5に対して接離し、保持装置4がモニタ5に対して設定距離内に接近した場合には、近接センサ8により検出される。この検出結果に基づいてモータ7a,7bが自動的に駆動され、モニタ5は保持装置4から退避する方向に自動的に移動する。
【0029】
したがって、保持装置4を移動させた場合において、移動した保持装置4がモニタ5に衝突することを自動的に防止することができ、保持装置4とモニタ5とが衝突することによって保持装置4やモニタ5が故障するという事態の発生を防止することができる。
【0030】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図4に基づいて説明する。なお、第2の実施の形態及び以下に説明する他の実施の形態において、先行して説明した実施の形態の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0031】
第2の実施の形態の基本的構成は第1の実施の形態と同じであり、第1の実施の形態と異なる点は、第1の実施の形態で説明した近接センサ8が設けられておらず、保持装置4がモニタ5に対して設定距離内に接近したことを検出する検出部として、保持装置4の位置情報とモニタ5の位置情報とから、保持装置4とモニタ5との間の距離を演算する演算部23を設けた点である。
【0032】
図4は、X線画像診断装置における保持装置4とモニタ5との衝突を防止するための構成を示すブロック図である。
【0033】
X線画像診断装置にはその各部を制御する制御部14が設けられ、この制御部14には、保持装置4の移動を指示する操作部15と、保持装置4を構成する各パーツ(床旋回アーム9、スタンド10、アームホルダ11、C型アーム12)を回転させる各パーツ用モータ13と、保持装置4の位置情報を記憶する保持装置用位置情報記憶部21と、モニタ5の位置情報を記憶するモニタ用位置情報記憶部22と、保持装置用位置情報記憶部21に記憶された保持装置4の位置情報とモニタ用位置情報記憶部22に記憶されたモニタ5の位置情報とに基づいて保持装置4とモニタ5との間の距離を演算する演算部23とが接続されている。
【0034】
保持装置用位置情報記憶部21は、各回転軸Z1〜Z4の回転角度の情報を、保持装置4の位置情報として記憶している。モニタ用位置情報記憶部22は、モータ7a,7bの各回転軸に設置されている位置検出センサであるエンコーダの値をモニタ5の位置情報として記憶している。
【0035】
このような構成において、この第2の実施の形態においても、演算部23での演算結果により保持装置4とモニタ5とが設定距離内に接近したと判断された場合には、少なくとも一方のモータ7a,7bが駆動されてモニタ5が保持装置4から退避する方向へ移動する。
【0036】
これにより、保持装置4を移動させた場合において、移動した保持装置4がモニタ5に衝突することを自動的に防止することができ、保持装置4とモニタ5とが衝突することによって保持装置4やモニタ5が故障するという事態の発生を防止することができる。
【0037】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態を図5ないし図7に基づいて説明する。本実施の形態の基本的構成は第1の実施の形態と同じであり、異なる点は、モニタ5における保持装置4に対向する側の縁部に、第1検出部である第1近接センサ31と、第2検出部である第2近接センサ32とが設けられている点である。
【0038】
第1近接センサ31は、保持装置4がモニタ5に対して第1設定距離内に接近したことを検出する。
【0039】
第2近接センサ32は、保持装置4がモニタ5に対して第1設定距離より短い第2設定距離内に接近したことを検出する。
【0040】
図6は、X線画像診断装置における保持装置4とモニタ5との衝突を防止するための構成を示すブロック図である。
【0041】
X線画像診断装置にはその各部を制御する制御部14が設けられ、この制御部14には、保持装置4の移動を指示する操作部15と、保持装置4を構成する各パーツを回転させる各パーツ用モータ13と、第1近接センサ31と、第2近接センサ32と、モータ7a,7bとが接続されている。
【0042】
図7は、X線画像診断装置における保持装置4とモニタ5との衝突を防止するための制御動作について説明するフローチャートである。
【0043】
医師やX線技師が操作部15を操作することにより保持装置4が移動を開始し、モニタ5に対して第1設定距離内に接近した保持装置4を第1近接センサ31が検出したか否かが判断される(S11)。
【0044】
第1近接センサ31が保持装置4を検出した場合には(S11のYES)、モニタ5に対して第2設定距離内に接近した保持装置4を第2近接センサ32が検出したか否かが判断される(S12)。
【0045】
保持装置4がモニタ5に対して第2設定距離内に接近したと判断された場合には(S12のYES)、モニタ5が保持装置4から退避する方向へ移動するようにモータ7a,7bの少なくとも一方を駆動する(S13)。これにより、モニタ5はガイドレール6に沿って保持装置4から退避する方向へ移動し、モニタ5が保持装置4から退避する方向に移動するようにモータ7a,7bの少なくとも一方を駆動させる退避手段が実行される。
【0046】
その後、第2近接センサ32による保持装置4の検出が終了したか否かが判断され(S14)、検出が終了しない場合には(S14のNO)、ステップ13に戻る。
【0047】
一方、第2近接センサ32により保持装置4の検出が終了した場合には(S13のYES)、モータ7a,7bの駆動が停止される(S15)。
【0048】
ステップ15におけるモータ7a,7bの駆動が停止された後、第2近接センサ32が保持装置4を検出したか否か(S16)と、第1近接センサ31による保持装置4の検出が終了したか否か(S17)とが判断される。
【0049】
そして、第1近接センサ31による保持装置4の検出が終了したと判断された場合には(S17のYES)、モニタ5が保持装置4側へ戻る方向に移動するようにモータ7a,7bの少なくとも一方が駆動される(S18)。これにより、モニタ5はガイドレール6に沿って保持装置4側へ戻る方向に移動し、モニタ5が保持装置4側へ戻る方向に移動するようにモータ7a,7bの少なくとも一方を駆動させる戻し手段が実行される。
【0050】
モニタ5が保持装置4側へ戻る方向に移動した後、第1近接センサ31が保持装置4を検出したか否かが判断され(S19)、検出した場合には(S19のYES)モータ7a,7bの駆動が停止される(S20)。
【0051】
このような構成において、保持装置4をモニタ5に接近する方向へ移動させ、第2近接センサ32が保持装置4を検出した場合には、モータ7a,7bを駆動させてモニタ5を保持装置4から退避する方向に自動的に移動させることができる。これにより、移動した保持装置4がモニタ5に衝突することを自動的に防止することができ、保持装置4とモニタ5とが衝突することによって保持装置4やモニタ5が故障するという事態の発生を防止することができる。
【0052】
また、保持装置4をモニタ5から離反する方向へ移動させ、第1近接センサ31が保持装置4を検出しなくなった場合には、モータ7a,7bを駆動させてモニタ5を保持装置4に接近する方向へ自動的に戻すことができる。これにより、移動したモニタ5を元の位置に戻す作業の手間を省くことができる。
【符号の説明】
【0053】
2 X線発生器
3 X線検出器
4 保持装置
5 モニタ
6 ガイドレール
7a,7b 駆動部(モータ)
8 検出部(近接センサ)
21 検出部(演算部)
31 第1近接センサ
32 第2近接センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生器とX線検出器とを保持して移動可能な保持装置と、
前記X線検出器により検出されたX線画像を表示するモニタと、
室内の天井側に設けられ、前記モニタを移動可能に支持するガイドレールと、
前記モニタを前記ガイドレールに沿って移動させる駆動部と、
前記保持装置が前記モニタに対して設定距離内に接近したことを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記モニタが前記保持装置から退避する方向に移動するように前記駆動部を駆動させる退避手段と、
を備えることを特徴とするX線画像診断装置。
【請求項2】
前記検出部は、近接センサであることを特徴とする請求項1記載のX線画像診断装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記保持装置の位置情報と前記モニタの位置情報とに基づいて前記保持装置と前記モニタとの間の距離を演算する演算部であることを特徴とする請求項1記載のX線画像診断装置。
【請求項4】
X線発生器とX線検出器とを保持して移動可能な保持装置と、
前記X線検出器により検出されたX線画像を表示するモニタと、
室内の天井側に設けられ、前記モニタを移動可能に保持するガイドレールと、
前記モニタを前記ガイドレールに沿って移動させる駆動部と、
前記保持装置が前記モニタに対して第1設定距離内に接近したことを検出する第1検出部と、
前記保持装置が前記モニタに対して前記第1設定距離より短い第2設定距離内に接近したことを検出する第2検出部と、
前記第2検出部の検出結果に基づき、前記モニタを前記保持装置から退避する方向に移動するように前記駆動部を駆動させる退避手段と、
前記第1検出部と前記第2検出部とが共に非検出となった場合に、退避する方向に移動した前記モニタを前記保持装置側へ戻る方向に移動するように前記駆動部を駆動させる戻し手段と、
を備えることを特徴とするX線画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−19816(P2011−19816A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169041(P2009−169041)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】