説明

X線装置用の近接センサ

レシーバ電極102と容量結合されるエミッタ電極104を有する容量型近接センサである。単位利得(unity gain)の増幅器の出力により駆動する第1のアクティブガード電極110は、前記レシーバ電極102に対し設けられ、このレシーバ電極の電位の障害物122に面していない部分を遮蔽し、接地シールド126は、前記エミッタ電極104に対し設けられ、このエミッタ電極の電位の障害物122に面していない部分を遮蔽する。第2のアクティブガード電極103は、エミッタ電極104とレシーバ電極102との間であり、カバー106のすぐ後ろに設けられ、これも前記増幅器108の出力により駆動する。第2のアクティブガード電極は、エミッタ電極104とレシーバ電極102との間にある短縮した電場線124をブロックするために働き、これによりセンサの精度及び信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、例えば電動式のスイングアーム(swing arm)が近くにある物体又は人間と衝突するのを避けるのに使用される容量型近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び図2を参照すると、標準的なX線システムは、ロボットアーム3により支持され、患者台2に近接するスイングアーム(C−アーム又はG−アーム)1を有する。スイングアーム1内に収容される、X線管4及びX線検出器5を備える。X線検出器5は、患者7を通過したX線6を入力し、それの強度分布を表す電気信号を発生させるように構成及び設計される。
【0003】
スイングアーム1を移動させることにより、X線管4及び検出器5は、患者7に対して何らかの所望の位置及び配向に置かれることができる。スイングアーム1の移動は、1つ以上のモータ(図示せず)により動かされ、患者、オペレータ及び/又は他の物体をスイングアームとの衝突から守るために、このスイングアーム1の円弧の危険箇所A、B、C及びDに近接センサが置かれる。
【0004】
本出願に普通に用いられる近接センサは、地面に対し容量性であり及び/又は静的に充電されることが可能である何らかの物体又は人間を検知することが可能である容量型近接センサとして知られている。容量型近接センサは、センサの面又は表面をコンデンサの一方のプレートとして、及び導電又は誘電性の標的物体の表面をコンデンサのもう一方のプレートとして使用する。静電容量はこの構成におけるコンデンサのプレート間の距離とは反対に変化し、標的の検知をトリガするためにある値が設定される。この検知の原理は、電場特性の変化の測定に基づいている。前記センサが物体を検知する場合、出力電圧が変化する。制御システムは、出力電圧があるレベルよりも下に落ちる場合、モータの速度を減少させ、衝突を避けるために最終的にそれを停止させるように、スイングアーム駆動モータの速度を制御するのに用いられる。
【0005】
図3をさらに詳細に参照すると、既知の容量型近接センサ装置は、エミッタ電極10を介して、検知又は"レシーバ"電極9に容量結合される100kHzの正弦波発振器8を有し、エミッタ電極10からレシーバ電極9へ進む(場の線11により示される)電場が作り出される。レシーバ電極9は、("無限大に近い")非常に高い入力インピーダンスと、非常に低い出力インピーダンスとを持つ増幅器12に接続されている。この増幅器12の利得はほぼ1である。レシーバ電極9は前記増幅器12の入力部に接続され、この増幅器12の出力部はガード電極13を駆動させるのに使用される。これにより、ガード電極13は、レシーバ電極9に印加される信号と同じであるが、その信号とは電気的には絶縁されている信号により駆動され、ガード電極13と接地との間の静電容量がレシーバ電極9と接地との間の静電容量を打ち消し、これによりセンサの感度が高められる。ガード電極13は、レシーバ電極9の電位の障害物に面していない全ての部分を遮蔽し、このガード方法は、"アクティブガード"として知られ、1×の増幅器の出力をガード電極13に接続することにより、このエリアの周りの空間は電位が無く、電場が生じないので、レシーバ電極9は、ガード電極13の方向にそれ自身の電位を"見る"。接地シールド15は、エミッタ電極10の電位の障害物14に面していない側に設けられる。増幅器12の出力は、信号調整手段16に入力され、その出力17は処理システム(図示せず)に送られる。
【0006】
前記センサの近くに接地している物体14がない場合、エミッタ電極10とレシーバ電極9との間の全容量結合は、レシーバ電極9に"着陸"し、その電位は最大まで上昇する。計測される電位は整流され、バッファリングされたDC電圧として前記処理システムへ送られる。接地した物体14が電極構造へ近づく場合、レシーバ電極9に存在する電位の一部が接地へ引っ込み、これにより接地した物体14が計測容積に入る場合、検知電位の減少及び対応するDC出力電圧の減少を生じさせる。電位の障害物の正確な位置、配向及び航行する向きを決めるために、スイングアームの保護カバー18内におけるキーとなる場所A、B、C及びDに幾つかのセンサが取り付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したセンサの構造は、エミッタ及びレシーバ電極9、10の近くに物体があることに対し非常に敏感な構造となり、カバー18は、これら電極9、10に非常に近いので、エミッタ10からレシーバ9への電場線11を短縮させてしまう。しかしながら、このセンサ構造では、物体(例えば血液又は造影媒体)がセンサのとても近くに、ちょうど電極9と10との間に位置する場合、これが2つの電極9、10の間における電場線を実際に短縮させることがあり、これは電位信号の動作を説明している図4に示されるように、センサの出力電圧の対応する急激な上昇、ときには物体が存在していないレベルさえも超える上昇を引き起こす。物体がちょうど2つの電極間にあるセンサに非常に近い場合、出力電圧は急激に上昇する。これは処理システムにより間違った状況であるとみなされ、これによりセンサは信頼できない。
【0008】
センサの出力感度に影響を及ぼす他の問題は、温度及び湿度の変化が原因による、材料特性(ε)の変動の結果として生じる。これはセンサ電極の計測容積において移動する物体が存在しないのにセンサの出力を変化させる、エミッタ電極からレシーバ電極への電場線の変化につながる。前記センサは上記変化を、このセンサに近づく又は離れるように移動する物体により引き起こされる同じ変化と区別することができないので、これはスイングアームを不必要に遅くする又は停止する、若しくは幾つかの場合には早くすることになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的はこれにより、近接センサを設けることであり、ここで、電場線の見せかけの短縮が少なくとも減少し、センサの動作の信頼性及び予測がこれによりかなり増大する。
【0010】
本発明によれば、エミッタ電極及びレシーバ電極、並びに前記エミッタ電極から前記レシーバ電極への電場を発生させる手段を有する近接センサを備え、センサの近くにある物体の検知は、センサの出力電圧の減少により示され、センサはさらに、前記エミッタ電極と前記レシーバ電極との間に置かれる電動のガード電極を有する。
【0011】
さらに本発明によれば、撮像システム用のスイングアームを備え、このスイングアームは放射線源及び検出器を有し、さらに上記近接センサを1つ以上有する。
【0012】
本発明は、上記スイングアーム、撮像されるべき被験者に対し所望の位置に前記スイングアームを移動させる動力手段、及び前記1つ以上の近接センサの出力に従って前記動力手段を制御する手段を有する撮像システムに拡張する。
【0013】
有益なことに、第2の電動のガード電極が、前記レシーバ電極に対して設けられ、レシーバ電極の電位の物体に面していない部分を遮蔽する。
【0014】
好ましくは、前記レシーバ電極は増幅器の入力部に接続され、この増幅器の出力が前記第1及び第2のガード電極を駆動させる。前記増幅器の利得は有利には実質的に一定である。接地シールドは前記エミッタ電極に対して有利に設けられ、エミッタ電極の電位の物体に面していない部分を遮蔽する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のこれら及び他の態様は、ここに記載される実施例から明らかであると共に、この実施例を参照して説明される。
【0016】
図5を参照すると、本発明の例示的な実施例による近接センサ100は、検知又はレシーバ電極102に容量結合されるエミッタ電極104に接続される100kHzの発振器101を有し、これら電極102、104は、前記カバー106のすぐ後ろに置かれている。レシーバ電極102は、単位利得(unity gain)の増幅器108の高インピーダンス入力部に接続され、この増幅器の低インピーダンス出力は、前記レシーバ電極102に対して設けられるアクティブガード電極110を駆動させる。この増幅器の出力は第1の信号調節手段112にも送られる。接地シールド126は、エミッタ電極104の電位の障害物122に面していない側に設けられる。第2の電動アクティブガード電極103は、図5に示されるように、カバー106のすぐ後ろの、レシーバ電極102とエミッタ電極104との間に設けられる。第2のアクティブガード電極103も前記増幅器108の出力により駆動される。このアクティブガード電極103及び検知電極102における電位は、これらの電位が異なる場合、検知又はレシーバ電極102が容量負荷と見えてしまうので、理論上は同じである。
【0017】
本発明の目的は、エミッタ電極104とレシーバ電極102との間にアクティブガード技術を用いることにより、不要な短縮した電場線をブロックすることにより達成される。何れかの短縮した電場線は、図3を参照して説明した従来の構成のようにレシーバ電極102ではなく、このレシーバ電極102とエミッタ電極104との間にある第2のアクティブガード電極103に当たる。結果として、レシーバ電極の電位は、湿度及び温度の変化に伴うセンサカバー106の材料変化により生じる電場線124の短縮(変化)にはもはや依存しないし、図5に図示されるように、センサの近くに物体があることにより電場線が短縮される可能性もない。
【0018】
使用中、センサ100の近くに物体122があることは、入力するための容量負荷を変化させる及びエミッタ電極104からレシーバ電極102への電場線124を乱す影響を持ち、これらは共に、例えば2つの装置を用いて物体の検知が行われるような、出力電位の対応する変化を引き起こす。結果として、従来技術と比較してより多くの物体の存在を検知することができるので、センサの信頼性が向上する。
【0019】
センサ100からの出力は、処理システム114に送られ、このシステムは正弦波の発振器101、第2の信号調整手段116、デジタル−アナログ変換器118及びアナログ−デジタル変換器120を有する。
【0020】
上述される実施例は、本発明を限定するのではなく説明するものであり、添付される特許請求の範囲により規定される本発明の範囲から外れることなく、当業者が多くの代替の実施例を考案することが可能であることに注意すべきである。この特許請求の範囲において、括弧内に置かれる参照番号が特許請求の範囲を限定するとは考えない。「有している」及び「有する」等の言葉は、何れかの請求項又は全体として明細書に挙げた要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。要素を単数で言及することがこれら要素の複数での言及又はその逆を排除するものではない。本発明は幾つかの別個の要素を有するハードウェアを用いると共に、適切にプログラムされたコンピュータを用いることで実施される。幾つかの手段を列挙する装置の特許請求の範囲において、これら手段の幾つかがハードウェアの同じアイテムにより具現化されてもよい。ある測定が相互に異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、これら測定の組み合わせが有利に使用されることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】X線のスイングアームの概略的な側面図。
【図2】X線のスイングアームの透視図。
【図3】従来技術による容量型近接センサの構造の原理を説明する概略図。
【図4】従来の近接センサの出力のグラフ図。
【図5】本発明の例示的な実施例による容量型近接センサの構造の原理を説明する概略図。
【図6】図5のセンサの出力のグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタ電極、レシーバ電極及び前記エミッタ電極から前記レシーバ電極への電場を発生させる手段を有する近接センサにおいて、前記近接センサの近傍にある物体の検知はセンサの出力電圧の減少により示され、前記エミッタ電極と前記レシーバ電極との間に置かれる電動ガード電極をさらに有する近接センサ。
【請求項2】
電位の物体に面していない部分を遮蔽する、前記レシーバ電極に対する第2の電動ガード電極をさらに有する請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
前記レシーバ電極は増幅器の入力部に接続され、前記増幅器の出力は前記第1及び
第2のガード電極を駆動させる請求項2に記載の近接センサ。
【請求項4】
前記増幅器の利得は実質的に一定である請求項3に記載の近接センサ。
【請求項5】
接地シールドは、前記エミッタ電極に対して設けられ、エミッタ電極の電位の物体に面していない部分を遮蔽する請求項1に記載の近接センサ。
【請求項6】
放射線源及び検出器を有するスイングアームであり、さらに請求項1に記載の近接センサを1つ以上有する撮像システム用のスイングアーム。
【請求項7】
請求項6に記載のスイングアーム、前記スイングアームを撮像されるべき被験者に対し所望の位置に移動させる動力手段、及び前記1つ以上の近接センサの出力に従って前記動力手段を制御する手段を有する撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−511954(P2008−511954A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529101(P2007−529101)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052799
【国際公開番号】WO2006/025003
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】