説明

X線診断装置及び画像処理装置

【課題】脳血管の潅流の観察を簡便且つ高精度に実施することができるX線診断装置及び画像処理装置の提供。
【解決手段】撮影部10は、複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとを発生するためにX線管12とX線検出器13とを有する。発生部26は、複数のマスク画像と複数のコントラスト画像とを減算処理し、複数の撮影角度に関する複数の血管画像のデータを発生する。発生部28は、複数の血管画像を再構成処理して動脈領域と静脈領域と毛細血管領域とを含む血管ボリュームデータを発生する。発生部30は、血管ボリュームデータから動脈領域と静脈領域とを除去して毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する。発生部32は、毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して毛細血管画像のデータを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潅流に関する画像のデータを発生するX線診断装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脳血管のうちの毛細血管に関する潅流を視覚化した毛細血管画像がある。毛細血管画像は、例えば脳血管インターベンションにおいて、治療が完了したか否かを判断することにおいて大変有用である。一般的に毛細血管画像は、例えば特許文献1を利用して、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)により発生される。具体的には、X線CT装置により発生されたボリュームデータをCT値に基づく絶対的な閾値により閾値処理をして、動脈・静脈領域(動脈領域と静脈領域とを含む領域)と毛細血管領域とを分離して、毛細血管領域を抽出する。そして、抽出された毛細血管領域に基づいて毛細血管画像が発生される。しかし、インターベンションを実施する手技室にX線CT装置が設置されていない病院においては、患者を手技室からX線CT装置が設置されているCT室まで移動させなければならない。これは患者にとっても技師にとっても手間である。
【0003】
X線診断装置(アンギオ装置)により毛細血管画像を発生できれば、このような患者を移動させる手間を省くことができる。X線診断装置により発生されたボリュームデータのコントラストは、種々の理由(造影剤の動脈注入、線量等)により、X線CT装置により発生されたボリュームデータのコントラストに比して安定しない。従ってX線診断装置は、X線CT装置と同等の処理(CT値に基づく絶対的な閾値による動脈・静脈領域と毛細血管領域との分離)ができない。そのため、X線診断装置により脳血管の潅流を観察する際、動脈と静脈とが障害になり、観察の精度が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10―11604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、脳血管の潅流の観察を簡便且つ高精度に実施することができるX線診断装置及び画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面に係るX線診断装置は、複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとを発生するためにX線管とX線検出器とを有する撮影部と、前記複数のマスク画像と前記複数のコントラスト画像とを減算処理し、前記複数の撮影角度に関する複数の血管画像のデータを発生する第1発生部と、前記複数の血管画像を再構成処理して動脈領域と静脈領域と毛細血管領域とを含む血管ボリュームデータを発生する第2発生部と、前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈領域とを除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する第3発生部と、前記毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して毛細血管画像のデータを発生する第4発生部と、を具備する。
【0007】
本発明の第2の局面に係るX線診断装置は、複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとを発生するためにX線管とX線検出器とを有する撮影部と、前記複数のマスク画像を再構成処理してマスクボリュームデータを発生する第1発生部と、前記複数のコントラスト画像を再構成処理してコントラストボリュームデータを発生する第2発生部と、前記コントラストボリュームデータと前記マスクボリュームデータとを減算処理し、動脈領域と静脈領域と毛細血管領域とを含む血管ボリュームデータを発生する第3発生部と、前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈領域とを除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する第4発生部と、前記毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して毛細血管画像のデータを発生する第5発生部と、を具備する。
【0008】
本発明の第3の局面に係るX線診断装置は、複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとを発生するためにX線管とX線検出器とを有する撮影部と、前記複数のマスク画像と前記複数のコントラスト画像とを減算処理して前記複数の撮影角度に関する複数の血管画像を発生する第1発生部と、前記複数の血管画像を再構成処理して血管ボリュームデータを発生する第2発生部と、前記血管ボリュームデータに含まれる血管領域を動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分する区分部と、前記血管ボリュームデータに基づいて第1カラー画像のデータ又は第2カラー画像のデータを発生する部であって、前記第1カラー画像は、色情報が割り付けられた前記動脈・静脈領域と色情報が割り付けられていない前記毛細血管領域とを含み、前記第2カラー画像は、色情報が割り付けられていない前記動脈・静脈領域と色情報が割り付けられた前記毛細血管領域とを含む第3発生部と、を具備する。
【0009】
本発明の第4の局面に係る画像処理装置は、複数の撮影角度に関する複数の血管画像のデータを記憶する記憶部と、前記複数の血管画像を再構成処理して、動脈領域と静脈領域と毛細血管領域とを含む血管ボリュームデータを発生する第1発生部と、前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈領域とを除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する第2発生部と、前記毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して毛細血管画像のデータを発生する第3発生部と、を具備する。
【0010】
本発明の第5の局面に係る画像処理装置は、複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと前記複数の撮影角度に関する複数のコントラスト画像のデータを記憶する記憶部と、前記複数のマスク画像を再構成処理してマスクボリュームデータを発生する第1発生部と、前記複数のコントラスト画像を再構成処理してコントラストボリュームデータを発生する第2発生部と、前記コントラストボリュームデータと前記マスクボリュームデータとを減算処理し、動脈領域と静脈領域と毛細血管領域とを含む血管ボリュームデータを発生する第3発生部と、前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈領域とを除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する第4発生部と、前記毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して毛細血管画像のデータを発生する第5発生部と、を具備する。
【0011】
本発明の第6の局面に係る画像処理装置は、複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとを記憶する記憶部と、前記複数のマスク画像と前記複数のコントラスト画像とを減算処理して前記複数の撮影角度に関する複数の血管画像を発生する第1発生部と、前記複数の血管画像を再構成処理して血管ボリュームデータを発生する第2発生部と、前記血管ボリュームデータに含まれる血管領域を動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分する区分部と、前記血管ボリュームデータに基づいて第1カラー画像のデータ又は第2カラー画像のデータを発生する部であって、前記第1カラー画像は、色情報が割り付けられた前記動脈・静脈領域と色情報が割り付けられていない前記毛細血管領域とを含み、前記第2カラー画像は、色情報が割り付けられていない前記動脈・静脈領域と色情報が割り付けられた前記毛細血管領域とを含む第3発生部と、を具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脳血管の潅流の観察を簡便且つ高精度に実施することができるX線診断装置及び画像処理装置を提供することが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるX線診断装置の構成を示す図。
【図2】図1のシステム制御部の制御による第1実施形態の処理の典型的な流れを示す図。
【図3】図2のステップSA5を説明するための図。
【図4】図2のステップSA5を説明するための他の図。
【図5】図2のステップSA5を説明するための他の図。
【図6】図2のステップSA5を説明するための他の図。
【図7】図2のステップSA5を説明するための他の図。
【図8】図2のステップSA7を説明するための図。
【図9】本発明の第2実施形態に係わるX線診断装置の構成を示す図。
【図10】図9のシステム制御部の制御による第2実施形態の処理の典型的な流れを示す図。
【図11】本発明の第3実施形態に係るX線診断装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わるX線診断装置と画像処理装置とを説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係わるX線診断装置の構成を示す図である。図1に示すようにX線診断装置1は、撮影部10と画像処理装置20とを有する。
【0016】
図1に示すように、撮影部10は、Cアーム11を有する。Cアーム11は、X線管12とX線検出器13とを搭載する。X線管12は、高電圧発生器14から高電圧が印加されることによりX線を発生する。また、X線管12には、X線絞り器15が取り付けられている。X線絞り器15は、X線管12から発生されたX線の照射野を限定する。
【0017】
X線検出器13は、X線管12から発生され被検体Pを透過するX線を検出して、画像信号を出力する。X線検出器13は、マトリクス状に配置された複数の半導体検出素子を有するフラットパネルディテクタ(FPD)で構成される。なおFPDに代えて、X線検出器13は、イメージインテンシファイアとTVカメラとの組み合わせから構成されてもよい。
【0018】
Cアーム11は、被検体Pに対する撮影角度を自由に変更できるように、XYZ直交3軸各々に関して回転可能に設けられている。典型的には、撮影角度は、XYZ直交3軸に対する撮影軸SAの交差角として定義される。慣習的には、第1斜位(RAO)、第2斜位(LAO)、第3斜位(LPO)、第4斜位(RPO)それぞれの角度として定義される。撮影軸SAは、X線管12のX線焦点からX線検出器13の検出面中心を通る直線として定義される。典型的には、Z軸は、被検体Pの体軸に略一致するものとして定義される。Y軸は、撮影軸SAに一致する。Z軸とY軸とX軸とは、アイソセンタ(撮影不動点)で交差する。Cアーム11は、Cアーム駆動部16からの駆動信号に応じた撮影角度に移動する。
【0019】
撮影制御部17は、後述するシステム制御部40からの制御に応じて高電圧発生器14とCアーム駆動部16とを制御することにより、被検体Pの撮影領域をX線撮影する。具体的には、撮影制御部17は、所定の線量のX線をX線管12が発生するように高電圧発生器14を制御する。また、撮影制御部17は、所定の撮影角度にCアーム11が位置するようにCアーム駆動部16を制御する。撮影制御部17は、複数の撮影角度が登録されている角度テーブルを保持している。撮影制御部17は、システム制御部40からの制御を受けてCアーム11をZ軸回りに回転させ、Cアーム11が角度テーブルに登録されている撮影角度に一致したと判断した時、X線管12からX線を発生させる。例えば、隣合う撮影角度θnの間隔Δθは、1周360°あたりの撮影回数をNとすると、Δθ=N/360°である。この場合、撮影角度θnは、θn=θs+Δθ×n/360°である(但し、θsは初期角度、n=0、1、…、N−1)。撮影回数Nは、例えば、100〜200である。なお、被検体の撮影領域は、被検体の頭部であるとする。
【0020】
画像処理装置20は、A/D変換部22、記憶部24、血管画像発生部26、血管ボリュームデータ発生部28、毛細血管ボリュームデータ発生部30、毛細血管画像発生部32、D/A変換部34、表示部36、操作部38、及びシステム制御部40を有する。
【0021】
A/D変換部22は、X線検出器13に接続されている。A/D変換部22は、X線検出器13から出力される画像信号をデジタル化し、X線画像のデータを発生する。なお、造影剤が注入されていない被検体Pに関するX線画像をマスク画像、造影剤が注入された被検体Pに関するX線画像をコントラスト画像と呼ぶことにする。マスク画像とコントラスト画像とは、それぞれ複数の撮影角度θnで撮影される。複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとは、撮影角度θnに関連付けられて記憶部24に記憶される。
【0022】
血管画像発生部26は、複数のコントラスト画像のデータと複数のマスク画像のデータとを減算処理する。この減算処理により、造影剤により造影された血管に関する複数の画像(以下、血管画像と呼ぶことにする)のデータを発生する。減算処理の対象となるコントラスト画像とマスク画像とは、同一の撮影角度θnに関する。血管画像のデータは、撮影角度θnに関連付けられて記憶部24に記憶される。
【0023】
血管ボリュームデータ発生部28は、複数の血管画像のデータを再構成処理して、造影された血管に関するボリュームデータ(以下、血管ボリュームデータと呼ぶことにする)を発生する。血管ボリュームデータに含まれる血管領域は、動脈に関する血管領域(以下、動脈領域と呼ぶことにする)、静脈に関する血管領域(以下、静脈領域と呼ぶことにする)、及び毛細血管に関する血管領域(以下、毛細血管領域と呼ぶことにする)を含む。血管ボリュームデータは、記憶部24に記憶される。
【0024】
毛細血管ボリュームデータ発生部30は、血管ボリュームデータから動脈領域と静脈領域とを除去して毛細血管領域のみに関するボリュームデータ(以下、毛細血管ボリュームデータと呼ぶことにする)を発生する。毛細血管ボリュームデータの発生処理については、後で詳述する。毛細血管ボリュームデータは、記憶部24に記憶される。
【0025】
毛細血管画像発生部32は、毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して、毛細血管に関する2次元の画像(以下、毛細血管画像と呼ぶことにする)のデータを発生する。毛細血管画像のデータは、記憶部24に記憶される。
【0026】
D/A変換部34は、表示部36に接続される。D/A変換部34は、毛細血管画像のデータをアナログ化して、表示部36を駆動させるための画像信号を生成する。表示部36は、D/A変換部34により生成された画像信号が表す毛細血管画像を表示する。表示部36は、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスが適宜利用可能である。なお、表示部36の表示デバイスと画像処理装置20とをDVI(digital visual interface)ケーブル等で接続する場合、デジタル信号のまま出力可能である。この場合、D/A変換部34は不要である。
【0027】
操作部38は、操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部38としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0028】
システム制御部40は、X線診断装置1の中枢として機能し、X線診断装置1の各部を制御する。例えば、システム制御部40は、操作部38から撮影開始指示が供給されることを契機として、撮影制御部17を制御して複数の撮影角度θnでX線撮影させる。また、システム制御部40は、操作部38から毛細血管画像の表示要求が供給されることを契機として、画像処理装置20内の各部を制御して毛細血管画像を表示させる。
【0029】
次にシステム制御部40の制御のもとに行なわれる第1実施形態に係わるX線診断装置1の処理の流れについて説明する。図2は、この処理の典型的な流れを示す図である。
【0030】
(ステップSA1) 技師により操作部38を介して撮影開始ボタンが押されることを契機としてシステム制御部40は、造影剤が注入されていない被検体Pを複数の撮影角度θnで複数回X線撮影する。これにより複数の撮影角度θnに関する複数のマスク画像のデータが収集される。記憶部24は、マスク画像のデータを撮影角度θnに関連付けて記憶する。
【0031】
(ステップSA2) ステップSA1が終了すると、技師は、被検体の脳血管を造影させるために、被検体に造影剤を注入する。造影剤が注入されてから所定期間経過するとシステム制御部40は、造影剤の注入された被検体を複数の撮影角度θnで複数回X線撮影する。これにより複数の撮影角度θnに関する複数のコントラスト画像のデータが収集される。なお、ステップSA1の撮影角度θnとステップSA2の撮影角度θnとは同一角度である。記憶部24は、コントラスト画像のデータを撮影角度θnに関連付けて記憶する。
【0032】
(ステップSA3) ステップSA2が終了すると、技師により操作部38を介して毛細血管画像の表示要求がなされることを契機として、又は自動的にシステム制御部40は、血管画像発生部26に血管画像の発生処理を行なわせる。まず血管画像発生部26は、記憶部24から同一撮影角度θnに関するマスク画像とコントラスト画像とを読み出す。次に血管画像発生部26は、コントラスト画像からマスク画像を減算することにより、血管画像のデータを発生する。血管画像発生部26は、このように複数のマスク画像と複数のコントラスト画像とを減算処理して、複数の血管画像のデータを発生する。記憶部24は、発生された血管画像のデータを撮影角度θnに関連づけて記憶する。
【0033】
なお、ステップSA2とステップSA3とは、1つの撮影角度θnずつ繰り返し行なわれてもよい。
【0034】
(ステップSA4) ステップSA3が終了すると、システム制御部40は、血管ボリュームデータ発生部28に血管ボリュームデータの発生処理を行なわせる。血管ボリュームデータ発生部28は、記憶部24から複数の撮影角度θnに関する複数の血管画像のデータを読み出し、読み出された複数の血管画像のデータを再構成処理する。再構成処理により、単一の血管ボリュームデータが発生される。記憶部24は、血管ボリュームデータを記憶する。
【0035】
(ステップSA5) ステップSA4が終了すると、システム制御部40は、毛細血管ボリュームデータ発生部30に毛細血管ボリュームデータの発生処理を行なわせる。毛細血管ボリュームデータの発生処理方法は、大きく分けて第1の方法と第2の方法とがある。第1の方法は、血管ボリュームデータから、動脈領域と静脈領域とに関するボリュームデータ(以下、動脈・静脈ボリュームデータと呼ぶことにする)を減算することにより、毛細血管ボリュームデータを発生する方法である。第2の方法は、閾値処理を行なうことにより血管ボリュームデータから動脈領域と静脈領域とを除去し、毛細血管ボリュームデータを発生する方法である。以下、動脈領域と静脈領域とを特に区別しない時は、動脈領域と静脈領域とをまとめて動脈・静脈領域と呼ぶことにする。
【0036】
まずは、毛細血管ボリュームデータ発生部30により行なわれる第1の方法(血管ボリュームデータから動脈・静脈ボリュームデータを減算する方法)について説明する。図3は、第1の方法を説明するための図である。図3に示すように、血管ボリュームデータV1は、全ての血管領域、すなわち毛細血管領域R1と、動脈・静脈領域R2とを含む。通常、動脈領域と静脈領域とは、連結していないが、説明の簡単のためまとめて1つの符号で表す。毛細血管領域R1は、複数の連結領域の集合である。毛細血管領域R1を構成する複数の連結領域のそれぞれは、動脈・静脈領域R2の大きさに比して、微小な大きさを有する。動脈・静脈ボリュームデータV2は、毛細血管領域R1を含まず、動脈・静脈領域R2のみ含む。従って血管ボリュームデータV1から動脈・静脈ボリュームデータV2が減算されることにより、毛細血管ボリュームデータV3が発生される。
【0037】
動脈・静脈ボリュームデータの発生方法としては、様々な方法が可能である。以下、動脈・静脈ボリュームデータの発生方法の具体例を説明する。
【0038】
まず複数の撮影角度θnに関する複数のコントラスト画像のデータをそれぞれ2値化し、2値化された複数のコントラスト画像のデータを縮小(shrinking)処理する。この縮小処理は、処理対象のピクセル(以下、中心ピクセルと呼ぶことにする)がピクセル値“0”の場合、中心ピクセルの全ての近傍ピクセルをピクセル値“0”に置き換える処理である。そして縮小処理された複数の画像のデータを拡大(expansion)処理する。拡大処理は、縮小処理の逆である。すなわち、拡大処理は、中心ピクセルがピクセル値“1”の場合、中心ピクセルの全ての近傍ピクセルをピクセル値“1”に置き換える処理である。この縮小処理と拡大処理とが行なわれることによって、コントラスト画像から微小な連結領域の集合、すなわち毛細血管領域が除去される。なお、縮小処理と拡大処理とは、1回ずつ行なわれてもよいし、複数回の縮小処理の後、同数回の拡大処理を行なってもよい。なお、縮小処理と拡大処理とは、それぞれモルフォロジー演算の一種であるエロージョン(erosion)処理とダイレーション(dilation)処理とであってもよい。そして毛細血管領域が除去された複数のコントラスト画像が再構成処理され、動脈・静脈ボリュームデータが発生される。
【0039】
上記の縮小・拡大処理はデータを2値化する必要があった。次にデータを2値化しない縮小・拡大処理の例を説明する。縮小処理においては、中心ピクセルのピクセル値をその近傍ピクセルのピクセル値の平均値に置き換える。拡大処理においては、置き換えられた中心ピクセルのピクセル値(平均値)を、近傍ピクセルのピクセル値に置き換える。このようなデータの2値化を必要としない縮小・拡大処理により、サイズの大きい動脈領域や静脈領域が縮小・拡大された場合、そのピクセル値は、ほぼ変化しない。一方、サイズの小さい毛細血管領域が縮小・拡大された場合、そのピクセル値は、小さくなる。これにより、コントラスト画像から毛細血管領域が除去され、動脈・静脈領域が残る。
【0040】
次に毛細血管ボリュームデータ発生部30により行なわれる第2の方法(血管ボリュームデータに閾値処理する方法)について説明する。この発生処理は、毛細血管領域に関するボクセル値Vcと静脈領域に関するボクセル値Vvと動脈領域に関するボクセル値Vaとの間に成り立つ、ボクセル値の相対的な大小関係を利用する。この場合、ボクセル値の相対的な大小関係は、Vc<Vv<Vaである。つまり、ボクセル値Vcとボクセル値Vvとの間のボクセル値を閾値とした閾値処理により、毛細血管領域と動脈・静脈領域とを分離できる。この閾値以上のボクセル値を有する血管ボリュームデータ中のボクセルを、例えば、ボクセル値“0”に設定する。これにより血管ボリュームデータから動脈・静脈領域が除去され、毛細血管ボリュームデータが発生される。
【0041】
この閾値の設定方法には、様々な方法がある。図4は、閾値の設定方法の一例を示す図である。図4に示すように、例えば、まず静脈領域R3にROI(region of interest)を3次元的に設定する。次に設定されたROIに関するヒストグラムを算出する。次に、算出されたヒストグラムから静脈領域R3に関するボクセル値を特定する。そして、特定されたボクセル値のうちの所定のボクセル値を閾値に設定する。閾値の設定方法としては、例えば、静脈のヒストグラムのピーク値から特定する方法とヒストグラムの面積から算出する方法とがある。1番目の方法の手順は、図5に示すように、1.静脈のヒストグラムの近似曲線ALを算出し、2.近似曲線ALの度数の最大値Pを特定し、3.最大値P/20となる度数を有するボクセル値を閾値Th1に設定する。2番目の方法の手順は、図6に示すように、1.静脈のヒストグラムの近似曲線ALを算出し、2.近似曲線ALの全体を積分して面積Sを算出し、3.近似曲線ALのボクセルの最大値Maxから最小値Minへ向けて近似曲線ALを積分していき、面積がS×0.95となるボクセル値を閾値Th2に設定する。
【0042】
ROIの設定方法は、技師により操作部38を介して3次元的に設定されてもよい。また、自動的に設定されてもよい。自動的にROIを指定する場合、静脈の主要部を含む領域をROIに設定するとよい。これは、静脈の主要部(例えば、内頸静脈)の形状と位置とは、ほとんど個人差がないことに起因する。内頸静脈に関する領域をROIに設定する場合は、血管ボリュームデータの下(すなわち被検体の首側)半分をROIに設定するとよい。また、閾値は、技師により操作部38を介して任意に設定されてもよい。この場合、図4に示すスライダーバー381のつまみ382が操作部38を介して移動されることにより、スライダーバー381に対するつまみ382の位置に応じた値に閾値が設定される。
【0043】
第2の方法に関する他のROIの自動設定方法として、図7に示す方法がある。まず、図7(a)に示すように、血管ボリュームデータV1中に自動的に断面71を設定する。断面71は、例えば、アキシャル断面である。また、断面71は、血管ボリュームデータV1の下半分、例えば、Z軸に沿って下から1/4の位置に設定されるとよい。断面71が設定されると、図7(b)に示すように、断面71に関する画像73を生成する。画像73は、静脈領域R3と動脈領域R4とを含む。画像73が生成されると、図7(c)に示すように、画像73に関するヒストグラムを生成する。画像73に関するヒストグラムには、静脈に関するヒストグラム74と動脈に関するヒストグラム75とが含まれている。静脈に関するヒストグラム74は、動脈に関するヒストグラム75よりもボクセル値が小さい方へシフトしている。次に静脈に関するヒストグラム74に基づいて、動脈・静脈領域と毛細血管領域とを分離するための閾値Th3を設定する。閾値Th3は、上述した方法により設定される。
【0044】
(ステップSA6) ステップSA5が終了すると、システム制御部40は、毛細血管画像発生部32に毛細血管画像の発生処理を行なわせる。毛細血管画像発生部32は、毛細血管ボリュームデータに3次元画像処理をして毛細血管画像のデータを発生する。3次元画像処理としては、MPR(multi planar reconstruction)処理やボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、MIP(maximum intensity projection)等が挙げられる。なお、毛細血管画像の視点位置や視線方向は、技師により38操作部を介して任意に設定可能である。
【0045】
(ステップSA7) ステップSA6が終了すると、システム制御部40は、表示部36に表示処理を行なわせる。表示部36は、毛細血管画像を表示する。閾値処理による毛細血管画像を表示する際、表示部36は、図8に示すように、毛細血管に関するピクセル値p1よりも小さいピクセル値を有するピクセルに最小グレイレベル“0”を割り付ける。そして表示部36は、上述のように設定された閾値Th4以上のピクセル値を有するピクセルに最大グレイレベル“255”を割り付ける。
【0046】
上記構成により第1実施形態に係わるX線診断装置1と画像処理装置20とは、血管ボリュームデータから静脈領域と動脈領域とを除去して、毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生することが可能である。このために、X線診断装置1と画像処理装置20とは、X線診断装置において動脈・静脈領域と毛細血管領域との間に普遍的に成立する相対関係を利用する。相対関係は、動脈・静脈領域と毛細血管領域との位置関係や形状の大小関係、ボクセル値の大小関係等である。すなわち、X線診断装置1と画像処理装置20とは、撮影毎に動脈・静脈領域や毛細血管領域の絶対的なボクセル値が異なっていても、安定した精度で血管ボリュームデータから静脈領域と動脈領域とを除去できる。
【0047】
そしてX線診断装置1と画像処理装置20とは、毛細血管ボリュームデータに基づいて毛細血管領域のみを含む毛細血管画像のデータを発生する。毛細血管画像を観察することにより、術者は、動脈や静脈に邪魔されず、毛細血管のみを観察することできる。かくして第1実施形態によれば、脳血管の潅流の観察を簡便且つ高精度に実施することができるX線診断装置1及び画像処理装置20を提供することが可能となる。
【0048】
なお、ハードウェア構成的には、X線診断装置1(画像処理装置20)は、再構成処理をするためのコンピュータ、すなわち再構成処理部を備えている。血管ボリュームデータ発生部28は、この再構成処理部を用いて、複数の血管画像のデータを再構成処理して血管ボリュームデータを発生する。
【0049】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係わるX線診断装置について説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0050】
図9は、第2実施形態に係わるX線診断装置2の構成を示す図である。
【0051】
図9に示すように、X線診断装置2の画像処理装置50は、A/D変換部22、記憶部24、マスクボリュームデータ発生部52、コントラストボリュームデータ発生部54、血管ボリュームデータ発生部56、毛細血管ボリュームデータ発生部30、毛細血管画像発生部32、D/A変換部34、表示部36、操作部38、及びシステム制御部40を有する。
【0052】
マスクボリュームデータ発生部52は、複数の撮影角度θnに関する複数のマスク画像のデータを再構成処理し、造影剤の注入されていない被検体に関するボリュームデータ(以下、マスクボリュームデータと呼ぶことにする)を発生する。マスクボリュームデータは、記憶部24に記憶される。
【0053】
コントラストボリュームデータ発生部54は、複数の撮影角度θnに関する複数のコントラスト画像のデータを再構成処理し、造影剤の注入された被検体に関するボリュームデータ(以下、コントラストボリュームデータと呼ぶことにする)を発生する。コントラストボリュームデータは、記憶部24に記憶される。
【0054】
血管ボリュームデータ発生部56は、コントラストボリュームデータからマスクボリュームデータを減算し、造影剤により造影された血管に関するボリュームデータ(以下、血管ボリュームデータと呼ぶことにする)を発生する。血管ボリュームデータは、記憶部24に記憶される。
【0055】
次にシステム制御部40の制御のもとに行なわれる第2実施形態に係わるX線診断装置2の処理の流れについて説明する。図10は、この処理の典型的な流れを示す図である。
【0056】
(ステップSB1) 技師により操作部38を介して撮影開始ボタンが押されることを契機としてシステム制御部40は、造影剤の注入されていない被検体Pを複数の撮影角度θnで複数回X線撮影する。これにより複数の撮影角度θnに関する複数のマスク画像のデータが収集される。記憶部24は、マスク画像のデータを撮影角度θnに関連付けて記憶する。
【0057】
(ステップSB2) ステップSB1が終了すると、システム制御部40は、マスクボリュームデータ発生部52にマスクボリュームデータの発生処理を行なわせる。マスクボリュームデータ発生部52は、記憶部24から複数の撮影角度θnに関する複数のマスク画像を読み出し、読み出された複数のマスク画像を再構成処理する。この再構成処理により、マスクボリュームデータが発生される。記憶部24は、発生されたマスクボリュームデータを記憶する。
【0058】
(ステップSB3) ステップSB2が終了すると、技師は、被検体Pの脳血管を造影させるために、被検体Pに造影剤を注入する。そして技師により操作部38を介して撮影開始ボタンが押されることを契機としてシステム制御部40は、造影剤の注入された被検体Pを複数の撮影角度θnで複数回X線撮影する。これにより複数の撮影角度θnに関する複数のコントラスト画像のデータが収集される。なお、ステップSB1の撮影角度θnとステップSB3の撮影角度θnとは同一角度である。記憶部24は、コントラスト画像のデータを撮影角度θnに関連付けて記憶する。
【0059】
(ステップSB4) ステップSB3が終了すると、技師により操作部38を介して毛細血管画像の表示要求がなされることを契機として、又は自動的にシステム制御部40は、コントラストボリュームデータ発生部54にコントラストボリュームデータの発生処理を行なわせる。コントラストボリュームデータ発生部54は、記憶部24から複数の撮影角度θnに関する複数のコントラスト画像を読み出し、読み出された複数のコントラスト画像を再構成処理し、コントラストボリュームデータを発生する。記憶部24は、発生されたコントラストボリュームデータを記憶する。
【0060】
なお、ステップSB1〜ステップSB4の順番は、上記の順番に限定されない。例えば、ステップSB1→ステップSB3→ステップSB2→ステップSB4の順番や、ステップSB1→ステップSB3→ステップSB4→ステップSB2の順番に行なってもよい。
【0061】
(ステップSB5) ステップSB4が終了すると(換言すれば、マスクボリュームデータとコントラストボリュームデータとが発生されると)、システム制御部40は、血管ボリュームデータ発生部56に血管ボリュームデータの発生処理を行なわせる。血管ボリュームデータ発生部56は、記憶部24からマスクボリュームデータとコントラストボリュームデータとを読み出し、読み出されたコントラストボリュームデータからマスクボリュームデータを減算する。この減算処理により、血管ボリュームデータが発生される。記憶部24は、血管ボリュームデータを記憶する。
【0062】
(ステップSB6) ステップSB5が終了すると、システム制御部40は、毛細血管ボリュームデータ発生部30に毛細血管ボリュームデータの発生処理を行なわせる。毛細血管ボリュームデータ発生部30は、第1実施形態のステップSA4と同様の方法により、毛細血管ボリュームデータを発生する。記憶部24は、毛細血管ボリュームデータを記憶する。
【0063】
(ステップSB7) ステップSB6が終了すると、システム制御部40は、毛細血管画像発生部32に毛細血管画像の発生処理を行なわせる。毛細血管画像発生部32は、第1実施形態のステップSA6と同様の方法により、毛細血管画像のデータを発生する。記憶部24は、毛細血管画像のデータを記憶する。
【0064】
(ステップSB8) ステップSB7が終了すると、システム制御部40は、表示部に表示処理を行なわせる。表示部は、第1実施形態のステップSA7と同様の方法により、毛細血管画像を表示する。
【0065】
上記構成により第2実施形態に係わるX線診断装置2と画像処理装置50とは、コントラストボリュームデータからマスクボリュームデータを減算することにより、毛細血管領域と静脈領域と動脈領域とを含む血管ボリュームデータを発生する。そしてX線診断装置2と画像処理装置50とは、血管ボリュームデータから静脈領域と動脈領域とを除去して、毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生することが可能である。かくして、第2実施形態によれば、脳血管の潅流の観察を簡便且つ高精度に実施することができるX線診断装置2及び画像処理装置50を提供することが可能となる。
【0066】
なお、ハードウェア構成的には、X線診断装置2(画像処理装置50)は、再構成処理をするための再構成処理部を備えている。マスクボリュームデータ発生部52は、この再構成処理部を用いて、複数のマスク画像のデータを再構成処理してマスクボリュームデータを発生する。また、コントラストボリュームデータ発生部54は、再構成処理部を用いて、複数のコントラスト画像のデータを再構成処理してコントラストボリュームデータを発生する。
【0067】
(変形例)
変形例に係わる毛細血管ボリュームデータ発生部30は、マスクボリュームデータ中の硬膜の位置を特定し、血管ボリュームデータ中の基準点(例えば、血管ボリュームデータの中心点)から見て硬膜の位置よりも頭蓋骨側にある血管領域を除去する。これにより静脈領域を除去してもよい。
【0068】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態に係わるX線診断装置について説明する。なお以下の説明において、第1及び第2実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0069】
図11は、第3実施形態に係わるX線診断装置3の構成を示す図である。
【0070】
図11に示すように、X線診断装置3の画像処理装置60は、A/D変換部22、記憶部24、血管画像発生部26、血管ボリュームデータ発生部28、区分部62、カラー画像発生部64、D/A変換部34、表示部36、操作部38、及びシステム制御部40を有する。
【0071】
区分部62は、血管ボリュームデータに含まれる血管領域を動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分する。区分処理としては、大きく分けて第1の区分処理と第2の区分処理とがある。まず第1の区分処理について説明する。第1の区分処理において区分部62は、血管ボリュームデータから動脈・静脈ボリュームデータと毛細血管ボリュームデータとを生成する。これにより血管ボリュームデータに含まれる血管領域が動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分される。次に第2の区分処理について説明する。第2の区分処理において区分部62は、血管領域を動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分するために、血管ボリュームデータに閾値処理をする。閾値は、ステップSA4において説明した如何なる方法により設定されてもよい。このように設定された閾値に基づく閾値処理により、血管領域が動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分される。区分部62は、動脈・静脈領域と毛細血管領域との識別のために、例えば、動脈・静脈領域に関するボクセルに第1識別子を割り付け、毛細血管領域に関するボクセルに第2識別子を割り付ける。
【0072】
カラー画像発生部64は、血管領域ボリュームデータに基づいて第1カラー画像のデータ又は第2カラー画像のデータを発生する。
【0073】
第1カラー画像は、血管領域のうちの動脈・静脈領域にカラー情報が割り付けられ、毛細血管領域にカラー情報が割り付けられていない血管画像である。より詳細には、カラー画像発生部64は、血管領域ボリュームデータを再構成処理し、カラー情報が割り付けられていない血管画像のデータを発生する。この際、カラー画像発生部64は、第1識別子が割り付けられたボクセルに由来するピクセルには第1識別子を、第2識別子が割り付けられたボクセルに由来するピクセルには第2識別子を割り付ける。識別子の再割り付けにより、血管画像上の血管領域が動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分される。そしてカラー画像発生部64は、第1識別子が割り付けられたピクセルにカラー情報を割り付け、第2識別子が割り付けられたピクセルにグレイレベルを割り付ける。これにより第1カラー画像のデータが発生される。毛細血管領域には、ステップSA7のように設定されたグレイレベルが割り付けられる。第1カラー画像中の動脈・静脈領域は、割り付けられたカラー情報に応じたカラーで表示される。第1カラー画像中の毛細血管領域は、割り付けられたグレイレベルに応じたグレイで表示される。
【0074】
一方、第2カラー画像は、血管領域のうちの動脈・静脈領域にカラー情報が割り付けられず、毛細血管領域にカラー情報が割り付けられている血管画像である。第2カラー画像のデータも、第1カラー画像と略同様の処理により発生される。すなわち、カラー画像発生部64は、第1識別子が割り付けられたピクセルにグレイレベルを割り付け、第2識別子が割り付けられたピクセルにカラー情報を割り付ける。第2カラー画像中の動脈・静脈領域は、割り付けられたグレイレベルに応じたグレイで表示される。第2カラー画像中の毛細血管領域は、割り付けられたカラー情報に応じたカラーで表示される。
【0075】
なお、カラーは、操作部38を介して任意に設定可能である。第1カラー画像を生成するのか、第2カラー画像を生成するのかは、操作部38を介して任意に設定可能である。
【0076】
上記構成により第3実施形態に係わるX線診断装置3と画像処理装置60とは、血管ボリュームデータに含まれる血管領域を動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分する。このために、X線診断装置3と画像処理装置60とは、X線診断装置において動脈・静脈領域と毛細血管領域との間に普遍的に成立する、上述の相対関係を利用する。従って、X線診断装置3と画像処理装置60とは、撮影毎に動脈・静脈領域や毛細血管領域の絶対的なボクセル値が異なっていても、安定した精度で血管領域から動脈・静脈領域と毛細血管領域とを区分できる。そして、X線診断装置3と画像処理装置60とは、動脈・静脈領域がカラーで表示される第1カラー画像のデータ又は、毛細血管領域がカラーで表示される第2カラー画像のデータを発生する。第1カラー画像又は第2カラー画像を観察することで、術者は、動脈・静脈領域と毛細血管領域とを視覚的に区別して視認できる。かくして、第3実施形態によれば、脳血管の潅流の観察を簡便且つ高精度に実施することができるX線診断装置3及び画像処理装置60を提供することが可能となる。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上本発明によれば、脳血管の潅流の観察を簡便且つ高精度に実施することができるX線診断装置及び画像処理装置の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…X線診断装置、10…撮影部、11…Cアーム、12…X線管、13…X線検出器、14…高電圧発生器、15…X線絞り器、16…Cアーム駆動部、17…撮影制御部、20…画像処理装置、22…A/D変換部、24…記憶部、26…血管画像発生部、28…血管ボリュームデータ発生部、30…毛細血管ボリュームデータ発生部、32…毛細血管画像発生部、34…D/A変換部、36…表示部、38…操作部、40…システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとを発生するためにX線管とX線検出器とを有する撮影部と、
前記複数のマスク画像と前記複数のコントラスト画像とを減算処理し、前記複数の撮影角度に関する複数の血管画像のデータを発生する第1発生部と、
前記複数の血管画像を再構成処理して動脈領域と静脈領域と毛細血管領域とを含む血管ボリュームデータを発生する第2発生部と、
前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈領域とを除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する第3発生部と、
前記毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して毛細血管画像のデータを発生する第4発生部と、
を具備するX線診断装置。
【請求項2】
前記毛細血管画像を表示する表示部をさらに備える、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記第3発生部は、前記血管ボリュームデータから、前記動脈領域と前記静脈領域とに関する動脈・静脈ボリュームデータを減算する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記第3発生部は、画像処理により前記血管ボリュームデータから前記毛細血管領域を除去して、前記動脈・静脈ボリュームデータを発生する、請求項3記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記第3発生部は、前記静脈領域のボクセル値と前記毛細血管領域のボクセル値との間のボクセル値を閾値に設定し、前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈流域とを除去するために、前記閾値に基づいて前記血管ボリュームデータを閾値処理する、請求項1記載のX線診断装置。
【請求項6】
複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとを発生するためにX線管とX線検出器とを有する撮影部と、
前記複数のマスク画像を再構成処理してマスクボリュームデータを発生する第1発生部と、
前記複数のコントラスト画像を再構成処理してコントラストボリュームデータを発生する第2発生部と、
前記コントラストボリュームデータと前記マスクボリュームデータとを減算処理し、動脈領域と静脈領域と毛細血管領域とを含む血管ボリュームデータを発生する第3発生部と、
前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈領域とを除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する第4発生部と、
前記毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して毛細血管画像のデータを発生する第5発生部と、
を具備するX線診断装置。
【請求項7】
複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとを発生するためにX線管とX線検出器とを有する撮影部と、
前記複数のマスク画像と前記複数のコントラスト画像とを減算処理して前記複数の撮影角度に関する複数の血管画像を発生する第1発生部と、
前記複数の血管画像を再構成処理して血管ボリュームデータを発生する第2発生部と、
前記血管ボリュームデータに含まれる血管領域を動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分する区分部と、
前記血管ボリュームデータに基づいて第1カラー画像のデータ又は第2カラー画像のデータを発生する部であって、前記第1カラー画像は、色情報が割り付けられた前記動脈・静脈領域と色情報が割り付けられていない前記毛細血管領域とを含み、前記第2カラー画像は、色情報が割り付けられていない前記動脈・静脈領域と色情報が割り付けられた前記毛細血管領域とを含む第3発生部と、
を具備するX線診断装置。
【請求項8】
前記区分部は、前記血管領域を前記動脈・静脈領域と前記毛細血管領域とに区分するために、前記血管ボリュームデータから前記毛細血管領域を除去して前記動脈・静脈領域に関する動脈・静脈ボリュームデータを発生し、前記血管ボリュームデータから前記動脈・静脈領域を除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する、請求項7記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記区分部は、前記動脈・静脈領域のうちの静脈領域のボクセル値と前記毛細血管領域のボクセル値との間のボクセル値を閾値に設定し、前記閾値に基づいて前記血管ボリュームデータを閾値処理することにより、前記血管領域を前記動脈・静脈領域と前記毛細血管領域とに区分する、請求項7記載のX線診断装置。
【請求項10】
複数の撮影角度に関する複数の血管画像のデータを記憶する記憶部と、
前記複数の血管画像を再構成処理して、動脈領域と静脈領域と毛細血管領域とを含む血管ボリュームデータを発生する第1発生部と、
前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈領域とを除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する第2発生部と、
前記毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して毛細血管画像のデータを発生する第3発生部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項11】
前記毛細血管画像を表示する表示部をさらに備える、請求項10記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第2発生部は、前記血管ボリュームデータから、前記動脈領域と前記静脈領域とを含む動脈・静脈ボリュームデータを減算する、請求項10記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記第2発生部は、前記血管ボリュームデータから前記毛細血管領域を画像処理により除去して、前記動脈・静脈ボリュームデータを発生する、請求項12記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記第2発生部は、前記静脈領域のボクセル値と前記毛細血管領域のボクセル値との間のボクセル値を閾値に設定し、前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈流域とを除去するために、前記閾値に基づいて前記血管ボリュームデータを閾値処理する、請求項10記載の画像処理装置。
【請求項15】
複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと前記複数の撮影角度に関する複数のコントラスト画像のデータを記憶する記憶部と、
前記複数のマスク画像を再構成処理してマスクボリュームデータを発生する第1発生部と、
前記複数のコントラスト画像を再構成処理してコントラストボリュームデータを発生する第2発生部と、
前記コントラストボリュームデータと前記マスクボリュームデータとを減算処理し、動脈領域と静脈領域と毛細血管領域とを含む血管ボリュームデータを発生する第3発生部と、
前記血管ボリュームデータから前記動脈領域と前記静脈領域とを除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する第4発生部と、
前記毛細血管ボリュームデータを3次元画像処理して毛細血管画像のデータを発生する第5発生部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項16】
複数の撮影角度に関する複数のマスク画像のデータと複数のコントラスト画像のデータとを記憶する記憶部と、
前記複数のマスク画像と前記複数のコントラスト画像とを減算処理して前記複数の撮影角度に関する複数の血管画像を発生する第1発生部と、
前記複数の血管画像を再構成処理して血管ボリュームデータを発生する第2発生部と、
前記血管ボリュームデータに含まれる血管領域を動脈・静脈領域と毛細血管領域とに区分する区分部と、
前記血管ボリュームデータに基づいて第1カラー画像のデータ又は第2カラー画像のデータを発生する部であって、前記第1カラー画像は、色情報が割り付けられた前記動脈・静脈領域と色情報が割り付けられていない前記毛細血管領域とを含み、前記第2カラー画像は、色情報が割り付けられていない前記動脈・静脈領域と色情報が割り付けられた前記毛細血管領域とを含む第3発生部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項17】
前記区分部は、前記血管領域を前記動脈・静脈領域と前記毛細血管領域とに区分するために、前記血管ボリュームデータから前記毛細血管領域を除去して前記動脈・静脈領域に関する動脈・静脈ボリュームデータを発生し、前記血管ボリュームデータから前記動脈・静脈領域を除去して前記毛細血管領域に関する毛細血管ボリュームデータを発生する、請求項16記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記区分部は、前記動脈・静脈領域のうちの静脈領域のボクセル値と前記毛細血管領域のボクセル値との間のボクセル値を閾値に設定し、前記閾値に基づいて前記血管ボリュームデータを閾値処理することにより、前記血管領域を前記動脈・静脈領域と前記毛細血管領域とに区分する、請求項16記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−156288(P2011−156288A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22507(P2010−22507)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】